JP2004149816A - 伸線前の熱処理が省略可能な伸線加工性に優れた熱間圧延線材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】C :0.55〜0.95%、Si:0.1〜0.35%、Mn:0.2〜1.20%を含有し;パーライト組織、またはパーライト及びフェライトの混合組織を有する平均線径5.0mm未満の熱間圧延線材であって、4m長さの線材における機械的特性が下記(1)〜(3)を満足するものであることを特徴とする伸線前の熱処理が省略可能な伸線加工性に優れた熱間圧延線材。(1)引張強さの最小値(TSmin:MPa)≧1000×[C]+200×[Mn]−10D+40 式中、[ ]は、各元素の含有量(%)を、Dは、熱間圧延線材の線径(mm)を夫々、意味する。(2)TSσ×3≦100MPa ここで、TSσは引張強さの標準偏差を表す。(3)破断絞りの最小値 (RA min)≧30%
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、伸線前の熱処理が省略可能であり、熱間圧延ままで優れた伸線加工性を有する線材であって、平均線径が5.0mm未満の熱間圧延線材に関するものである。本発明の熱間圧延線材は、線材全体における引張強さの最小値が適切に制御されているのみならず、引張強さのバラツキも少なく、且つ、破断絞りの最小値も制御されている為、スチールコード、ビードワイヤ等のゴム補強用鋼線、PC鋼線、ワイヤロープ、ばね用鋼線等の高強度鋼線を製造する素材として非常に有用である。
【0002】
【従来の技術】
スチールコード、ビードワイヤ等のゴム補強用鋼線、ワイヤロープ、ばね用鋼線等は通常、炭素含有量が0.6〜0.8%程度の高炭素鋼[JISG 3502(SWRS72A,SWRS82A)、JISG 3505相当のピアノ線材や硬鋼線材]を熱間圧延した後、冷却条件を制御することによりφ5.0〜6.4mm程度の熱間圧延線材とし、次いで脱スケール(デスケール)、皮膜処理してからφ3.0mm程度まで伸線(一次伸線)し、鉛パテンティング処理(LP)またはエアパテンティング処理(AP)等の中間焼鈍処理を行なった後、二次伸線することにより製造される。この様な工程で製造される鋼線の線径は、φ1.5mm以下のものが多く、φ1.0mm以下のものもある。また、ビードワイヤを製造するには、二次伸線の後、更にブルーイングめっき処理がなされる。更にスチールコードでは、LP工程、めっき工程を施した後、φ0.2mmにまで湿式伸線して製造される。
【0003】
このうちLPまたはAPの中間焼鈍処理は、伸線加工性(伸線加工性が良好であるとは、伸線中に材料劣化等による断線が発生しないこと、鋼線の捻回試験において異常断線が発生しないこと等をいう)に適した微細なパーライト組織を得るために行われるが、生産性の向上や省エネルギー対策、ひいてはコストの低減化を目的として、中間焼鈍処理の省略が可能な熱間圧延線材[ダイレクトパテンティング材(DD材)]のニーズが非常に高まっている。そこで、伸線限界を向上させて線材の伸線加工性を高める方法が種々提案されている。
【0004】
例えば特許文献1には、伸線ダイス寿命に優れ、かつ断線回数も少ない鋼線材として、高炭素鋼線材のC当量と引張強さ、粗パーライト占有率の関係を規定した線材が提案されている。しかしながら、この技術は、JIS規格品の圧延線材径(5.5〜5.0mm線径程度)を前提として、これを主にφ1.35mm前後の最終熱処理線径まで伸線する方法について提案されたものであって、φ1.0mm未満の鋼線を対象としておらず、圧延線材の径をJIS規格品よりも一層細くすることにより伸線加工性を高めることは全く意図していない。
【0005】
一方、後者の考え方(圧延線材の径をJIS規格品よりも一層細くすることにより伸線加工性を高めるという考え方)に沿って提案された技術として特許文献2が挙げられる。上記特許文献は、熱間圧延後のオーステナイト結晶粒度を調整すると共に、特に初析フェライト/初析セメンタイトのアスペクト比及びパーライトコロニーのサイズを制御することによって熱間圧延まま線材の伸線加工性が向上されることが開示されており、その為には、熱間圧延後の線径を4.5mm以下とすることが必要であると記載されている。
【0006】
しかしながら、上記文献では、伸線加工性向上のみに着目しており、鋼線自体の商品価値(機械的特性のバラツキがないこと)については全く考慮していない。前述した通り、ビードワイヤは二次伸線処理後にブルーイングめっきされるが、機械的特性は伸線ままの特性に左右されており、一方、ばね線に至っては、二次伸線処理したものがそのまま、ばね用鋼線として市場に出回ることになる。従って、伸線加工性に優れることは勿論のこと、更に機械的特性のバラツキがない高強度鋼線を提供することは極めて重要である。
【0007】
一般に圧延線材の機械的特性は線材の長さ(部位)によって異なり、引張強さや絞りが高い値を示す部分と、低い部分が混在している。上記公報では、所望の組織を得る為の制御手段として、線径を4.5mm以下とすること以外は実質的に何も開示されておらず、そうすると、局所的に強度の高い部分や延性の低い部分に対する制御が不充分であり、これが伸線中の断線発生起点となって断線を招く恐れがあること、鋼線の強度がJIS規格の範囲から外れてしまう恐れがあることが本発明者らの検討結果により明らかになった。実際のところ、上記文献には、「JIS規格品と同程度の線径を有する線材と同じ圧延条件によって製造できる」旨記載されているが、線径4.5mm以下といった細線材は、線材自体の熱量が少ない為、通常線径(φ5.5mm程度)と同じ条件で衝風冷却すると線材の冷却速度が速くなり、表層部(極端な場合には全面)に硬質の過冷組織が発生してしまい、断線の発生が多くなると考えられる。
【0008】
一方、ダイレクトパテンティング材の提供を意図したものではないが、特許文献3には、熱間圧延後のコイルを徐冷することによって直接軟質化を可能にする方法として、熱間圧延後の冷却コンベア上のコイルの冷却速度を、鋼材の成分、徐冷開始時のオーステナイト粒径、線径、リングピッチ、徐冷カバーの温度を制御する方法が開示されている。しかしながら、上記文献にはもともと、本発明の如く「伸線加工性に極めて優れた熱間圧延線材を提供する為に、機械的特性のバラツキが少ない線材とする」という発想はない為、前記特許文献1と同様、局所的に強度の極端に低い部分や延性の低い部分に対する制御が未だ不充分である。
【0009】
【特許文献1】
特公平3−60900号公報(特許請求の範囲、実施例)
【特許文献2】
特開2001−181789号公報(特許請求の範囲、
【0056】、実施例)
【特許文献3】
特開2001−179325号公報(【0001】、【0004】、【0020】〜【0026】、図1)。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事情に着目してなされたものであり、その目的は、パテンティング処理等の熱処理を省略したとしても熱間圧延ままで、平均線径5.0mm未満の熱間圧延線材を1.0mm前後の線径まで高い延性を確保したまま伸線することが可能であり、機械的特性に優れている(引張強度及び延性の最小値が高く、引張強度のバラツキも少ない)結果、鋼線の強度バラツキが非常に小さく制御されており、従来材に比べて断線等の製造性を劣化させず、ピアノ線、硬鋼線として使用可能な熱間圧延線材を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決し得た本発明に係る伸線前の熱処理が省略可能な伸線加工性に優れた熱間圧延線材は、C:0.55〜1.0%(質量%の意味、以下同じ)、Si:0.1〜0.35%、Mn:0.2〜1.20%(更に、Cu:0.08〜0.15%を含有してもよい)を含有し、パーライト組織、またはパーライト及びフェライトの混合組織を有する平均線径5.0mm未満の熱間圧延線材であって、4m長さの線材における機械的特性が下記(1)〜(3)を満足するものであるところに要旨を有するものである。
【0012】
(1)引張強さの最小値(TSmin:MPa)≧1000×[C]+200[Mn]−10D+40
式中、[ ]は、各元素の含有量(%)を、
Dは、熱間圧延線材の線径(mm)を夫々、意味する。
【0013】
(2)TSσ×3≦100MPa
ここで、TSσは引張強さの標準偏差を表す。
【0014】
(3)破断絞りの最小値 (RA min)≧30%
ここで、上記線材が、更に下記(4)〜(7)を満足するものは本発明の好ましい態様である。
【0015】
(4)線材横断面におけるビッカース硬さの標準偏差(Hvσ)≦20Hv
(5)上記線材は平均線径に対して太い側に+0.25mm以下である。
【0016】
(6)線材円弧長1mmの円周方向上に存在する疵であって、
深さが0.005〜0.03mmを満足する疵の数≦5個、且つ、
深さが0.03mmを超える疵は無し。
【0017】
(7)線材表面に存在するスケール量:0.35〜0.95%
尚、本発明では、上記線材をφ1.0mm前後に伸線した場合、鋼線の強度バラツキ(最大値と最小値の差)が190MPa以下であり、断線も発生しない熱間圧延線材の提供を第一の目標値として掲げており、更には、上記鋼線を更にφ1.0mm前後→0.75〜0.9mmまで伸線したとしても、当該鋼線の強度バラツキが190MPa以下を満足し、且つ断線も発生しない様な、極めて伸線加工性に優れた熱間圧延線材の提供を第二の目標値として掲げるものである。ここで、鋼線の強度バラツキの目標値を190MPa以下と定めたのは、JIS規格で強度バラツキを最も小さく規定しているのはピアノ線で、JISG 3522でφ1.0mm、SWP−Aは2060〜2260MPa(強度バラツキは200MPa)の範囲内であることを考慮した為である。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、従来材に比べ、熱延ままで、伸線加工性が一層高められており、しかも機械的特性にも優れた熱間圧延線材(引張強度及び延性が高く、これらのバラツキも少ない線材)を提供すべく、特に平均線径が5.0mm未満の熱間圧延線材について鋭意検討してきた。その結果、この様な熱間圧延線材を得る為には、熱間圧延条件を制御したり巻取後の冷却速度を調整する等といった従来の制御方法のみでは不充分であり、コイル(リング)疎部及びコイル密部の平均冷却速度を夫々、適切に制御することによって始めて得られることを見出し、本発明を完成した。
【0019】
以下、本発明線材について説明する。
【0020】
上述した通り、本発明に係る「伸線前の熱処理が省略可能な伸線加工性に優れた熱間圧延線材」は、▲1▼鋼中成分は、C:0.55〜1.0%、Si:0.1〜0.35%、Mn:0.2〜1.2%を含有するものであり、▲2▼組織は、パーライト組織、またはパーライト及びフェライトの混合組織を有する線径5.0mm未満の熱間圧延線材であって、4m長さの線材における機械的特性が上記(1)〜(3)を満足するものであるところに特徴がある。
【0021】
まず、本発明では、平均線径(線材断面における長径と短径の合計を2で除したもの)5.0mm未満の熱間圧延線材を対象としている。本発明の適用対象である高炭素鋼線において、中間焼鈍を省略して伸線後の線径が1.0mm前後の鋼線を得る為には、伸線加工率を低減することが有効であることから、本発明では、JIS規格品(φ5.0〜5.5mm)よりも線径の小さい5.0mm未満の熱間圧延線材を使用する。尚、熱間圧延線材の平均線径は小さい程、伸線加工性は向上するが、必要以上に線材を細くしても、伸線加工歪が充分に小さくなってしまう他、圧延時の製造時間が極端に長くなってしまい製造コストの増加を招く等の弊害をもたらす。好ましくはφ3.5mm以上の線材を使用することが推奨される。
【0022】
更に本発明では、連続した4m長さの線材をサンプリングし、その機械的特性[後記する(1)〜(3)]を、「伸線加工性の非常に優れた熱間圧延線材」を得る為の指標として定めている。ここで、サンプリング長さを4m(概ね線材コイル一周の長さに相当する)に設定した理由は、線材コイル全体の機械的特性値を推定する為には、4m長さが最小限必要であるという実験結果に基づくものであり、これよりも短いと誤差が生じ易く、これよりも長いと実用的でない観点から定めた。
【0023】
具体的には、線材コイル全体のうち、任意に連続した4m長さをサンプリングし、JIS9B号試験片を連続して16本(n=16)採取したときの各機械的特性値を測定すればよい。
【0024】
次に、本発明線材を特徴付ける下記(1)〜(3)の機械的特性について説明する。
【0025】
(1) 引張強さの最小値( TS min : MPa )≧ 1000 × [C] + 200 × [Mn]−10D+40
式中、[ ]は、各元素の含有量(%)を、
Dは、熱間圧延線材の線径(mm)を夫々、意味する。
【0026】
本発明の如く高炭素鋼線材における伸線加工性を確保する為には、TSminを適切に制御することが必要である。TSminが高過ぎると断線率が上昇してしまい、一方、TSminが低過ぎると、伸線加工性向上に有用な組織が得られない。本発明者らは、熱間圧延線材の線径(D)に応じて所望の伸線性を得る為に最低限必要なTSminが存在することを見出し、このTSminを、強度向上に寄与する化学成分(C,Mn)の含有量([C]及び[Mn])と、熱間圧延線材の線径(D)との関係で定めた[上式(1)]。好ましくはTSmin≧1000×[C]+200×[Mn]−10D+65、より好ましくはTSmin≧1000×[C]+200×[Mn]−10D+100である。
【0027】
尚、本発明においてTSminを定めるに当たり、[C]及び[Mn]、並びに線径(D)を指標としたのは、本発明で規定する成分系において強度を決定する主な元素はC及びMnであり、Siは本発明の成分範囲では強度決定に寄与しないこと;線径が太くなると伸線減面率が高くなり、加工硬化量が増加する為、線材に必要なTSは低くなることを考慮し、線径に応じてTSを決定した次第である。
【0028】
尚、本発明ではTSminは高ければ高い程良く、その上限は、[C]及び[Mn]とDとの関係では特に定めていない。しかしながら、あまり高すぎると、伸線加工性に悪影響を及ぼす過冷組織[パーライト単独組織、またはパーライトとフェライトの混合組織以外の組織(マルテンサイト組織)]が発生し易くなるので、過冷組織のない組織とする。
【0029】
ここで、「パーライトとフェライトの混合組織」とは、パーライトを主体とする組織であって、フェライトを含む組織を意味し、具体的には、面積率でフェライトが20%以下(好ましくは15%以下)で残部がパーライトである組織を意味する。
【0030】
(2) 引張強さの標準偏差( TS σ )×3≦100 MPa
上述した通り、本発明の圧延線材は平均線径が5.0mm未満と非常に細い。圧延線径が細くなると、所定の鋼線を製造する際、例えば衝風冷却床上で圧延線材同士が絡んでだんご状になり易くなり、一定の衝風を線材にあてたつもりでも均一に当たり難くなり、リング内での強度バラツキが発生し易い。この様なバラツキをもった圧延線材を伸線した場合、伸線中に断線が発生する恐れがある。前述した通り、ビードワイヤは伸線後、ブルーイングめっきされるものの、機械的性質は伸線ままの特性に左右される為、ユーザー側で、伸線後の強度の上下限を規定しているところがある。また、ばね線に至っては、そのままばね用鋼線として製品となる為、例えばピアノ線では、JIS規格で強度の上下限が定められている。
【0031】
特に本発明の如く、中間熱処理を省略して熱間圧延線材からデスケール・皮膜処理後直接伸線する場合、圧延線材の強度バラツキが問題となる。即ち、圧延線材の代表サンプルを用いて引張強度を確認し、伸線加工度に基づけば目標とする鋼線の強度を達成できると予測したとしても、圧延線材のバラツキが大きいと鋼線の目標強度を外れてしまう。この様な問題は、圧延線材のバラツキのみに起因する訳ではなく、例えば伸線条件のバラツキによっても生じ得るが、本発明者らが確認したところ、伸線条件を極力一定にしたとしても、圧延線材のバラツキが大きいと上記問題が発生することが判明した。
【0032】
そこで本発明では、鋼線の強度バラツキを抑えるべく、圧延線材のバラツキ(TSσ)を、TSσ×3≦100MPaと定めた。鋼線のバラツキの規格は、品種や線径等によっても異なるが、本発明で対象とするφ1.0mm前後の鋼線であって、JIS規格で強度バラツキ(最大値と最小値の差)を最も小さく規定しているのはSWP−B種(190MPa)である。本発明では、「φ1.0mm前後の鋼線における強度バラツキ≦190MPaで、断線が発生しないこと」を目標値として定めており、その為には、TSσを上記範囲に制御すれば良いことを突き止めた。好ましくはTSσ×3≦95MPa、より好ましくはTSσ×3≦90MPaである。
【0033】
(3) 破断絞りの最小値( RA min )≧30%
熱間圧延線材の破断絞りは、伸線加工後初期の伸線加工性を支配しており、本発明ではRAminを30%以上と定めた。RA minが30%未満になると、伸線初期に断線する頻度が高くなる。RA minは大きい程好ましく、35%以上、より好ましくは40%以上とすることが推奨される。
【0034】
尚、RAのバラツキ(RAσ)については、本発明線材では特に制御しなくともよく、上記(1)〜(3)の要件を満足する限り、所望の特性[即ち、φ1.0mm前後の鋼線における鋼線強度のバラツキ(最大値と最小値の差)が190MPa以下]を満足することを実験により確認している。
【0035】
更に、本発明線材におけるビッカース硬さ、許容寸法、疵、及びスケール量は、更に下記(4)〜(7)の要件を満足していることが推奨される。
【0036】
(4) 線材横断面におけるビッカース硬さの標準偏差( Hv σ )≦20 Hv
鋼材断面内の微細組織が均一でなく、硬さのバラツキが20Hvを超えて大きくなると、横断面内での変形能に差が生じ、伸線中に断線が発生する恐れがある。本発明において、更に鋼の偏析度を制御する(後記する)と熱間圧延線材の横断面におけるビッカース硬さの標準偏差(Hvσ)は20Hv以下(好ましくは15Hv以下、より好ましくは10Hv以下)に抑制されるので、上述した問題は回避される。特に後記する実施例で実証する通り、上記(1)〜(3)の要件に加えてビッカース硬さのバラツキをも制御された線材は、より過酷な伸線試験[2ダイス分伸線(真歪みで0.6〜0.7)]を施しても断線は見られず、極めて良好な伸線加工性を有していることが明らかになった。
【0037】
尚、ビッカース硬さの測定に当たっては、線材2mを3分割したものを埋込用サンプルとして使用する。尚、荷重は1kgfとする。測定箇所は、D/2部を1箇所、D/4部を4箇所、D/8部を4箇所の合計9箇所とし、夫々のビッカース硬さを測定して算出する。
【0038】
(5) 平均線径に対して太い側に+ 0.25 mm以下(寸法公差が+ 0.25 mm以下)熱間圧延線材は真円ではなく寸法にバラツキがあり、例えばピアノ線の許容寸法はJIS規格で±0.30mmと定められている。線材の線径が細径になると、単質当たりの長さが長くなり、伸線時の第1ダイスへの負担が増加する。特に寸法がプラス側(ダイスと当たる側で太い側)にばらつくとダイス摩耗も大きくなってしまう為、問題となる。本発明では圧延ローラの表面粗さを適切に制御する等の方法により、平均線径に対して+0.25mm以下(好ましくは+0.20mm以下、より好ましくは+0.15mm以下)に制御されるので、この様な問題は生じない。
【0039】
尚、線材の寸法公差は、2m長さのサンプルから任意に3点をとり、測定した。
【0040】
(6) 疵深さが0.005〜0.03mmの疵の数≦5個、且つ
疵深さが0.03mmを超える疵=0
鋼片加熱時間を適切に制御する等の方法を採用すると、熱間圧延線材の円弧長1mmの円周方向上に存在する疵(単に「疵」と呼ぶ場合がある)を調べたとき、▲1▼深さが0.005〜0.03mmを満足する疵の数が5個以下であり、且つ、▲2▼深さが0.03mmを超える疵は存在しない、という特性も満足する。
【0041】
ここで、本発明における「疵」は、上記の如く定義した通りであるが、より詳細には、前述の方法で作製した埋込用サンプルを用い、表層部を光学顕微鏡で観察した場合、線材表面における接線と同一方向で且つその幅が最も広い部分(図1中のWに相当)が1μm以上であるものを意味する。
【0042】
また、本発明における「疵深さ」とは、上記疵の深さが最大となる深さ点をa1とし、a1点を通る半径方向直線が表面円周と交差する点をa2としたときのa1−a2間の距離を意味する。
【0043】
これらの定義における理解を一層深める為に、図2(線材の横断面図)を用いて説明する。まず、本発明における「疵深さ」は、図2において疵の深さが最大となる深さ点をa1、該a1点を半径方向直線が表面円周と交差する点をa2としたときのa1−a2間の距離(図中、Lに相当)を意味する。また、疵の数は、円弧長1mm(図中、α部に相当)の範囲に存在する上記疵を対象とし、カウントしたものである。
【0044】
上記▲1▼及び▲2▼の要件を満足するものは、特に脱スケール処理としてMD(メカニカルデスケーリング)処理する場合に有用であり、MD性が著しく改善される。
【0045】
この点について、もう少し詳しく説明する。周知の通り、熱間圧延線材を伸線するに当たっては通常、脱スケール処理が施されるが、この脱スケール処理には、化学的除去(酸洗等)と、機械的除去(曲げを与えて表面に繰り返し伸びと圧縮を加える方法であり、以下、MDと略す)に大別される。後者のMDを施す場合、表面の歪みは、線径(d)及びロール径(D)と下式の関係があることが知られている。
【0046】
歪み=[d/(D+d)]×100
即ち、ロール径(D)が同じMDローラの場合、線径(d)が細くなるほど、脱スケールされ難くなるのである。MD性を改善する目的で種々の方法が提案されているが、本発明の如く高炭素鋼材の場合、スケール厚さを厚くして処理するといった従来の方法だけでは、線材の細径化による歪み量低下を充分補足することができないことが分かった。本発明者らはMD性を改善するに当たり、特に「疵」に着目して調べたところ、表面の疵がくさび状になって存在するとスケールを剥離させ難くなること(「くさび効果」);特に疵の深さが深い程、この「くさび効果」は大きいが、一方、疵の深さはあまり深くなくとも当該疵の数が多くなると「くさび効果」が大きくなることが明らかになった。これに対し、本発明線材は、上記▲1▼及び▲2▼を満足しており、「くさび効果」は殆ど見られず、MD性が著しく改善されたものとなる。
【0047】
(7) 線材表面に存在するスケール量:0.35〜0.95%
前述した通り、スケール厚さが厚い程、MD性は改善することが知られている。しかしながら、スケール厚さが厚すぎると歩留まりが悪くなるのみならず、MDの代わりに酸洗等の化学的デスケールを実施すると酸洗性が悪くなってしまう。本発明では、更に衝風量を調節して冷却速度を制御する等の方法により、線材の表面に付着しているスケール量は0.35〜0.95%(好ましくは0.37%以上、0.90%以下;より好ましくは0.40%以上、0.75%以下)の範囲に制御され、これにより良好なMD性を確保できることが分かった。
【0048】
尚、スケール量は、30cm×10本を採取し、酸(塩酸)でスケール除去した後のスケール量(質量%)を測定する。
【0049】
次に、本発明線材を構成する化学成分及び組織について説明する。
【0050】
C:0.55〜1.0%
Cは強度向上に有効であり、伸線時の加工硬化に寄与する元素である。C含有量が少ないと、鋼線に必要な強度が確保できず、伸線性を阻害する初析フェライトが発生し易くなる為、本発明では0.55%以上添加する。好ましくは0.59%以上、より好ましくは0.65%以上である。一方、1.0%を超えると、熱間圧延後の冷却過程において、断線の起点となる初析セメンタイトを抑制することが困難である。好ましくは0.95%以下である。
【0051】
尚、上記(4)に規定するビッカース硬さのバラツキ(Hvσ)を満足する為には、中心偏析による硬さのバラツキを小さくすべく偏析度を制御することが必要である。具体的には、鋼中C量を、[Cmax]/[C0]≦1.30([Cmax]は、鋳造された鋼材横断面中C量の最大値を意味し;[C0]は、溶製段階におけるCの鍋下値(レードル値)を意味する)を満足する様に制御することが推奨される。尚、[Cmax]/[C0]は小さければ小さい程良く、好ましくは1.25以下、より好ましくは1.20以下に制御することが推奨される。
【0052】
Si:0.1〜0.35%
Siは通常、脱酸剤として添加される元素である。この様な作用を有効に発揮させる為には、0.1%以上の添加が必要であり、好ましくは0.12%以上である。但し、0.35%を超えて添加しても、所望の脱酸作用は得られないので、その上限を0.35%に定めた。好ましくは0.30%以下である。
【0053】
Mn:0.2〜1.20%
MnもSiと同様、溶製時の脱酸剤として添加される元素である。更に焼入れ性向上作用が大きい為、優れた強度向上作用を発揮し、線材断面内の均一性を高めることもできる。この様な作用を有効に発揮させるに0.2%以上(好ましくは0.3%以上)添加する。但し、過剰に添加すると、熱延圧延後の冷却過程で偏析を起こし、伸線加工性に有害なマルテンサイト等の過冷組織が発生し易くなる為、その上限を1.20%に定めた。好ましくは1.1%以下である。
【0054】
本発明線材は上記成分を含有し、残部:実質的に鉄及び不純物であるが、本発明の作用を一層高める目的で、更に下記元素を添加したり制御することが推奨される。
【0055】
Cu:0.08〜0.15%
Cuは、線材のフェライト脱炭抑制に寄与すると共に、脱スケール性を高める元素である。この様な作用を有効に発揮させる為には0.08%以上(より好ましくは0.10%以上)添加することが好ましい。しかしながら、過剰に添加すると鋳造時に粒界析出などにより内部割れが発生する恐れがある他、熱間圧延時に焼入れ性が高くなって過冷組織が発生する等の不具合が生じる為、その上限を0.15%(より好ましくは0.13%以下)とすることが推奨される。
【0056】
Al:0.015%以下
Alが多量に存在すると、Al2O3、MgO−Al2O3等の巨視的酸化物系介在物が多く発生し、当該介在物を起因とする断線が多発する為、その上限を0.015%(より好ましくは0.010%以下)とすることが推奨される。
【0057】
更に高強度・高靭性等を付与する目的で、本発明の作用を損なわない範囲で、下記元素を制御/添加することもできる。
【0058】
Cr:0.5%以下(0%を含まない),及び/又はNi:0.5%以下(0%を含まない)
Cr及びNiはいずれも、焼入性を高めて強度向上に寄与する元素である。この様な作用を有効に発揮させる為には、Crを0.05%以上、Niを0.05%以上添加することが推奨される。但し、過剰に添加するとマルテンサイトが発生し易くなる為、その上限をCr:0.5%(より好ましくは0.3%),Ni:0.5%(より好ましくは0.2%)とすることが推奨される。これらの元素は単独で添加しても良いし、併用しても構わない。
【0059】
N:0.002〜0.010%以下
Nは、TiやAl等と結合し、圧延時のオーステナイト結晶粒を微細化させる元素であり、この様な作用を有効に発揮させる為に0.002%以上(より好ましくは0.003%以上)添加することが推奨される。但し、過剰に添加すると鋳造時に割れが多く発生する為、上限をN:0.010%(より好ましくは0.008%)に定めた。
【0060】
Ti≦0.1%,Nb≦0.3%及びV≦0.3%よりなる群から選択される少なくとも一種の元素
これらの元素は、析出強化により線材の引張強度を高める作用があり、このうちNb及びVは、更に圧延時の冷却中に窒化物を析出して鋼中の固溶Nを減少させる作用もある為、伸線加工性や冷間加工性が向上する。この様な作用を有効に発揮させる為には、Ti:0.002%以上(より好ましくは0.004%以上)、Nb:0.001%以上(より好ましくは0.002%以上)、V:0.001%以上(より好ましくは0.002%以上)添加することが好ましい。但し、過剰に添加すると靭性・延性が劣化する為、その上限を、Ti:0.1%(好ましくは0.05%),Nb:0.3%(好ましくは0.2%),V:0.3%(好ましくは0.2%)とすることが推奨される。これらの元素は単独で添加しても良いし、併用しても構わない。
【0061】
B≦0.05%
Bは、鋼中に固溶するフリーBとして存在することにより、第2相フェライトの生成を抑制し、伸線性を向上させる他、BNを生成し、それが核生成サイトとなってパーライト変態促進作用も有している。この様な作用を有効に発揮させる為には、Bを0.0008%以上(より好ましくは0.0015%以上)添加することが推奨される。但し、0.05%を超えて添加しても、Bが化合物として析出し、靭性・延性が劣化してしまう。より好ましくは0.02%以下である。
【0062】
P:0.03%以下
Pは鋼の靭性・延性を劣化させる元素であり、伸線やその後の撚り工程における断線を防止する為に、その上限を0.03%(より好ましくは0.02%)とすることが推奨される。
【0063】
S:0.03%以下
SもPと同様、鋼の靭性・延性を劣化させる元素であり、Mnと結合してMnSを生成し、伸線時における断線の起点となる為、その上限を0.03%(より好ましくは0.02%)とすることが推奨される。
【0064】
次に、本発明に係る線材を製造する方法について説明する。
【0065】
本発明で規定する所定の機械的特性値を得る為には、上記成分を満足する鋼片を加熱し、所定の平均線径(5.0mm未満)まで熱間圧延した後、コンベアに搬送された線材を調整冷却すると共に、コイル(リング)疎部の平均冷却速度を7〜12℃/sec、コイル密部の平均冷却速度を当該コイル疎部の平均冷却速度に対して60%以上に制御する(但し、下限を5℃/secとする)ことが必要である。特に本発明では、コイル疎部とコイル密部の平均冷却速度を適切に制御することによって一リング内における冷却速度を均一となる様に調整することが極めて重要であり、その為に、衝風量等を適切に調節したり、圧延速度とコンベアの搬送速度を制御しつつ調節したところに特徴がある。
【0066】
以下、各工程について説明する。
【0067】
まず、上記成分を満足する鋼片を加熱する。尚、前述した通り、上記(4)に規定するビッカース硬さのバラツキ(Hvσ)を満足する為には、中心偏析による硬さのバラツキを小さくすべく偏析度を制御することが必要であり、鋼中C量を、[Cmax]/[C0]≦1.30(好ましくは1.25以下、より好ましくは1.20以下)に制御することが推奨される。
【0068】
また、加熱条件は特に限定されず、熱延まま線材を製造するのに通常実施される条件(例えば900〜1250℃)を採用することができる。
【0069】
尚、上記(5)に規定する線材の許容寸法、及び上記(6)に規定する疵を満足する為には、特に鋼片加熱時間を短くすることが推奨され、具体的には3時間未満(好ましくは2時間未満)とすることが好ましい。或いは、表面粗さの小さい圧延ミル[例えばRmax≦150μm(好ましくは125μm以下)]を使用したり、圧延時における最終仕上げローラーの状態を適切に管理する方法も有効である。
【0070】
次に、所定の平均線径(5.0mm未満)まで熱間圧延するが、熱間圧延条件も特に限定されず、所望の機械的特性が得られる様、適宜、適切な条件を実施することができる。例えば仕上圧延温度を850〜1000℃に制御することが推奨される。
【0071】
次いで、圧延後の線材をコンベア(例えばステルモアコンベア)上で冷却を実施するが、本発明では、コイル密部とコイル疎部の平均冷却速度を適切に調節することが極めて重要である。即ち、強度バラツキが小さい鋼線を得る為には、これらの平均冷却速度を適切に制御し、一リング内で均一な冷却速度が得られる様に調整することが不可欠である。本発明の圧延線材は平均線径が5.0mm未満と非常に細いものであるが、圧延線径が細くなると、所定の鋼線を製造する際、例えば衝風冷却床上で圧延線材同士が絡んでだんご状になり易くなり、一定の衝風を線材にあてたつもりでも均一に当たり難くなり、リング内での強度バラツキが発生し易い。即ち、リングの重なりが多い部分(リングが密に存在する部分)は充分冷却されず、リングの重なりが少ない部分(リングが疎に存在する部分)は急冷されるといった様に冷却速度にムラが生じており、特に冷却速度の遅い部分が主な原因となって、TSのバラツキとなって現われる。そこで本発明では、コイル疎部とコイル密部の冷却速度を適切に制御した次第であり、これにより、いずれの線材部分においても一定の冷却速度とすることができ、バラツキの少ない鋼線が得られる結果、伸線加工性を著しく高めることが可能になった。
【0072】
図3は、本発明におけるコイル密部及びコイル疎部の概念を説明するための概略図である。図3に示す通り、「コイル密部」とは、コンベア上でリングの重なりが最も多い部分(コイルの流れ方向に対して端部に位置する)を意味し、一方、「コイル疎部」とは、コンベア上でリングの重なりが最も少ない部分(コイルの流れ方向に対して中央部に位置する)を意味する。
【0073】
本発明では、仕上圧延温度からA1変態点温度近傍(約670℃)の範囲において、コイル疎部の平均冷却速度を7〜12℃/sec(好ましくは8℃/sec以上、10℃/sec以下)とする。また、コイル密部の平均冷却速度はコイル疎部の平均冷却速度に対して60%以上(好ましくは70%以上)とする。コイル疎部及びコイル密部の平均冷却速度が上記範囲を下回ると、破断絞りが低下してしまい、一方、コイル疎部及びコイル密部の平均冷却速度が上記範囲を超えると、伸線加工性に悪影響を及ぼすマルテンサイト組織が発生してしまう。尚、コイル密部の平均冷却速度の上限は、コイル疎部と同様、12℃/sec以下、好ましくは10℃/sec以下とすることが推奨される。
【0074】
尚、前述した特許文献3では、熱間圧延後の冷却コンベア上のコイルの冷却速度を徐冷するに当たり、軟質化のために最も影響がある温度域(750〜650℃)の間の平均冷却速度を、コイル密部およびコイル疎部に分けて、dやL等との関係で制御する方法が開示されているが、その実態は、特許文献5の図1に示す通り、当該温度域を0.05〜2.0℃に徐冷するというものであり、本発明の制御手段とは相違している。
【0075】
コイル疎部とコイル密部の冷却速度は、衝風冷却法や溶融塩浴法による冷却方法によって制御することができ、特に制限されないが、本発明では、主に衝風量を調節する等して冷却速度を制御する。具体的にはコンベア速度や衝風量を調節する等の方法が挙げられる。
【0076】
以下実施例に基づいて本発明を詳述する。ただし、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施することは全て本発明の技術範囲に包含される。
【0077】
【実施例】
実施例1[上記 (1) 〜 (4) の特性について]
表1に示す鋼種A〜Kの鋼片を溶製して鍛造し、分塊圧延(155mmビレット)した後、1000℃で加熱し、熱間圧延することにより表2に示す5.0mm未満の線材(No.1〜22)を得た(巻取温度850〜1000℃)。このうち鋼種Kは、鋳造段階で[Cmax]/[C0]を1.35に調整したものであり、偏析度の悪いものである。
【0078】
得られた線材をステルモア冷却設備にかけ、ステルモアコンベアの搬送速度と衝風量を調整して2tコイルを圧延した(各線材におけるコイル疎部及びコイル密部の平均冷却速度を夫々、表2に記載する)。
【0079】
この様にして得られた線材コイルについて、圧延先端部から長さ20mを切捨てた後、4mを採取してJIS9B号試験片を16本調製し、引張試験を実施することにより引張強さの最小値(TSmin)、引張強さの標準偏差(TSσ)、及び破断絞りの最小値(RA min)を夫々測定した。
【0080】
また、前述した方法により埋込用サンプルを作製してビッカース硬さを測定すると共に、この埋込用サンプルをピクリン酸で腐食し、線材横断面のD/4部(4ヶ所)及びD/2部(2ヶ所)を、光学顕微鏡により組織観察した。
【0081】
更にこれらの線材コイルについて、伸線径1.2mm若しくは1.0mmまで伸線を行ったときの断線の有無を調べる(断線無しを「○」、断線有りを「×」で評価する)と共に、JIS G3521の捻り試験に準じた捻回試験を行ない(異常断線が発生しないものを「○」、異常断線が発生したものを「×」で評価する)、伸線加工性を評価した(伸線評価▲1▼)。
【0082】
更に、この評価法で伸線加工性が良好であると認められた線材につき、更に過酷な条件下における伸線性を評価すべく、2ダイス分伸線(φ1.2mm→φ0.9mm、若しくはφ1.0mm→φ0.7mm)を行ない、同様に伸線加工性を評価した(伸線評価▲2▼)。尚、上記の伸線は、厳しい条件とする為、すべてダイスのアプローチ角度は20°とした。
【0083】
これらの結果を表3に示す。
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
【表3】
【0087】
まず、表3のNo.1〜9は、本発明の要件を満足する鋼種及び条件で製造した例であり、上記(1)〜(4)の特性を満足しており、伸線加工性は、伸線評価▲1▼及び▲2▼のいずれにおいても良好であり、鋼線の強度バラツキも190MPa以下を満足している。
【0088】
これに対し、表3のNo.10〜21は、本発明で規定する鋼種/製造条件を満足していない為、以下の問題がある。
【0089】
No.10はMn量が多い鋼種I、No.11はC量が多い鋼種Jを夫々用いたものであり、コイル密部の平均冷却速度が遅い為、圧延材を束ねる結束時に破断が生じ、製品化することができなかった(従って、機械的特性の測定及び伸線加工性の評価は実施できず)。
【0090】
No.12〜14は、鋼中成分は本発明の要件を満足しているが、コイル疎部の平均冷却速度が速い為、部分的にマルテンサイトが発生して過冷組織が生じた例であり、更に上記(4)に規定するビッカース硬さのバラツキ(Hvσ)をも満足していない為、伸線中に断線が発生した。
【0091】
また、No.15はコイル疎部とコイル密部の平均冷却速度が遅い例、No.16はコイル密部の平均冷却速度が遅い例であり、いずれもRAminが低く、TSσも大きく、伸線中に断線が見られた。
【0092】
同様にNo.17は、コイル疎部とコイル密部の平均冷却速度が遅い為、TSmin及びRAminが低く、伸線中に断線が見られた。
【0093】
No.18は、コイル疎部とコイル密部の平均冷却速度が夫々、適切に制御されている為、Tsmin、TSσ、及びRAminが本発明の範囲を満足し、且つ、組織も適切に制御されており、伸線評価▲1▼における伸線加工性は良好であるが、コイル密部の平均冷却速度が若干遅い為、HVσが大きくなり、伸線評価▲2▼における伸線加工性に劣るものであった。
【0094】
No.19は、偏析度の大きい鋼種Kを用いた為、やはり部分的にマルテンサイトが発生して過冷組織が生じ、上記(5)に規定するビッカース硬さのバラツキ(Hvσ)を満足せず、伸線中に断線が発生した。
【0095】
No.20は、コイル密部の平均冷却速度が適切に制御されていない為、TSσが大きく、伸線中に断線が見られた。
【0096】
No.21〜22は、JIS規格のSWP−A、φ1.0mmの強度規格(190MPa以下)を狙って作製したものである(従って、伸線評価▲2▼は実施せず)。
【0097】
このうちNo.21は、コイル密部の平均冷却速度が適切に制御されていない為、TSσを満足せず、伸線はできたが、鋼線の強度バラツキが大きく、JIS規格を満足することができなかった。これに対し、No.22はコイル疎部及びコイル密部の平均冷却速度が適切に制御されている為、本発明の要件を満足する線材が得られており、線材強度もJIS規格を満足することができた。
【0098】
実施例2[上記 (5) の特性について]
本実施例では、線材の寸法公差について調べた。
【0099】
表1の鋼種Aを用い、表2のNo.1と同じ条件で圧延することにより表4のNo.1〜4を得た(2tコイルを10束作製)。但し、表4のNo.2〜3については、寸法公差を意図的に変化させる目的で、仕上ロールでの隙調整を通常より悪くして表4に示す寸法の線材を得た。
【0100】
これらの線材について、単釜伸線機にてφ4.0mm→φ3.4mmの伸線を線速30m/minで行なった。20t分伸線した後の鋼線の増径をマイクロメータで測定し、No.1の増径量(+0.1mm)を100としてNo.2〜4の増径量を夫々、算出して比較した。
【0101】
これらの結果を表4に示す。
【0102】
【表4】
【0103】
まず、表4のNo.1〜2はいずれも、仕上ロールの隙調整が適切になされた例であり、上記(5)の特性を満足しており、ダイス摩耗が低減された。
【0104】
これに対し、表4のNo.3〜4は、仕上ロールの隙調整が適切になされていない為、圧延線材の寸法(長径)が0.25mmを超えて著しく増加している為、ダイス摩耗量が大きく、鋼線の径も著しく増加していた。これではダイス替えを頻繁に行なう必要があり、工業生産として成り立たない。
【0105】
実施例3[上記 (6) 及び (7) について]
本実施例では、MDによる脱スケール性について調べた。
【0106】
表1の鋼種AまたはHを用い、表2のNo.1、8〜9と同じ条件で処理することにより表4のNo.1〜5を得た。このうち表4のNo.1〜4は、鋼種Aを用いた例、表4のNo.5は、鋼種H(Cu添加鋼)を用いた例であり、いずれも本発明で規定する成分を満足するものである。また、表4のNo.1〜3は、基本的には同じ条件で製造した例であるが、No.2〜3については、線材表面の疵を意図的に変化させる目的で、鋼板の加熱時間を夫々、4.5時間、5時間と変化させた。また、表4のNo.4は、スケール量を意図的に変化させる目的で、表2のNo.8の圧延条件と同じであるが、圧延時の線材載値温度を825℃と低くした。
【0107】
これらの線材について、前述した方法により上記(6)に規定する疵、及び上記(7)に規定するスケール量を夫々、調べた。当該線材について、MD機(2プレーン型リバースベンディングタイプ)でメカニカルデスケール(MD)を行なった後、30cm×10本をサンプリングし、上記と同じ方法で残留スケール量を測定した。
【0108】
これらの結果を表5に示す。
【0109】
【表5】
【0110】
表5より以下の様に考察することができる。
【0111】
まず、表5のNo.1及び5はいずれも、本発明の要件を満足する鋼種及び条件で製造した例であり、本発明で規定する疵及びスケール量を満足しており、残留スケール量も少ない為、MD性が極めて優れたものである。
【0112】
これに対し、表5のNo.2〜3は、スケール量は本発明の範囲を満足するが疵は本発明の要件を満足しない為、MD後、目視でスケールが確認できる程、MD性が悪い。
【0113】
表5のNo.4は、載値温度が低かったのでスケール量が少ない例であり、No.1及び5に比べて残留スケール量が約2倍に増加しており、MD性に劣っていた。
【0114】
【発明の効果】
本発明は上記の様に構成されているので、パテンティング処理等の熱処理を省略したとしても熱間圧延ままで、平均線径5.0mm未満の熱間圧延線材を1.0mm前後の線径まで高い延性を確保したまま伸線することが可能であり、機械的特性に優れている(引張強度及び延性の最小値が高く、引張強度のバラツキも少ない)結果、鋼線の強度バラツキが非常に小さく制御されており、従来材に比べて断線等の製造性を劣化させず、ピアノ線、硬鋼線として使用可能な熱間圧延線材を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における疵の概念を説明するための概略図である。
【図2】本発明における疵深さ及び疵の数を説明するための概略図である。
【図3】本発明におけるコイル疎部とコイル密部を説明するための概略図である。
Claims (6)
- C :0.55〜1.0%(質量%の意味、以下同じ)、
Si:0.1〜0.35%、
Mn:0.2〜1.20%を含有し、
パーライト組織、またはパーライト及びフェライトの混合組織を有する平均線径5.0mm未満の熱間圧延線材であって、
4m長さの線材における機械的特性が下記(1)〜(3)を満足するものであることを特徴とする伸線前の熱処理が省略可能な伸線加工性に優れた熱間圧延線材。
(1)引張強さの最小値(TSmin:MPa)≧1000×[C]+200×[Mn]−10D+40
式中、[ ]は、各元素の含有量(%)を、
Dは、熱間圧延線材の線径(mm)を夫々、意味する。
(2)TSσ×3≦100MPa
ここで、TSσは引張強さの標準偏差を表す。
(3)破断絞りの最小値 (RA min)≧30% - ビッカース硬さの標準偏差(Hvσ)は20Hv以下である請求項1に記載の熱間圧延線材。
- 平均線径に対して太い側に+0.25mm以下である請求項1または2に記載の熱間圧延線材。
- 線材円弧長1mmの円周方向上に存在する疵であって、
深さが0.005〜0.03mmを満足する疵の数は5個以下であり、且つ、深さが0.03mmを超える疵は存在しないものである請求項1〜3のいずれかに記載の熱間圧延線材。 - 線材表面に存在するスケール量は0.35〜0.95%である請求項1〜4のいずれかに記載の熱間圧延線材。
- 更に、
Cu:0.08〜0.15%
を含有するものである請求項1〜5のいずれかに記載の熱間圧延線材。
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