JP3434080B2 - デスケーリング用線材 - Google Patents

デスケーリング用線材

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JP3434080B2 JP09731195A JP9731195A JP3434080B2 JP 3434080 B2 JP3434080 B2 JP 3434080B2 JP 09731195 A JP09731195 A JP 09731195A JP 9731195 A JP9731195 A JP 9731195A JP 3434080 B2 JP3434080 B2 JP 3434080B2
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は伸線性に優れたデスケー
リング用高炭素鋼線材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来高炭素鋼線材は熱間圧延後インライ
ン熱処理工程を経て線材とし、その後酸洗またはメカニ
カルデスケーリングをし鋼表面に付着したスケール除去
を行い、さらに表面潤滑処理の後、冷間での引き抜き加
工による伸線と中間熱処理を繰り返すことにより細い線
径に加工し、最終パテンティング処理を行いさらに引き
抜き加工で高強度のワイヤとするなどして使用されてい
る。
【0003】従って最終製品を製造するにあたっては、
熱間圧延後の線材の加工性が優れているほど、中間熱処
理工程が省略できるために製造コストを低減することが
容易となる。
【0004】熱間圧延線材の機械的性質を調整する方法
として、衝風冷却によるステルモア法や冷却媒体として
溶融塩を用いる方法などがある。溶融塩を用いるものと
しては特公昭59−37725があるが、加工性を良く
する事より、鉛パテンティング相当の高強度が得られる
ような直接熱処理法である。
【0005】またベイナイトを利用するものとしては特
開平6−17190、特開平6−17191、特開平6
−17192などが開示されているが、これらはベイナ
イト組織を80%以上とし、所定の強度延性に調整する
ことを特徴とする加工性の優れた鋼線材である。しか
し、この公報に示されるベイナイト率を80%以上にす
ることは、5.0mmφ以上の線径では極めて困難であ
るという問題点がある。
【0006】さらに加工性の優れた鋼線材の場合、多段
の加工を連続して行うために鋼表面のスケール特性が重
要な因子となり、これまでのような熱処理後の組織制御
だけでは伸線加工性を十分に制御することはできない。
【0007】鋼線材のスケール除去方法には、酸洗法と
メカニカルデスケーリング法がある。酸洗法はスケール
除去が十分行えるため広く採用されているが、酸を用い
るため公害等の問題が生じる場合があり、メカニカルデ
スケーリング法が適用されることが多くなっている。
【0008】一方メカニカルデスケーリング法は多ロー
ルで線材に曲げ加工を加えスケールを除去する方法であ
るが、そのスケール除去能力は、表面性状に大きく影響
される。
【0009】このため、特開昭52-10829号では、線材を
熱間圧延後700℃以上で保温または加熱し、スケール
量を0.6%以上と厚くし、かつFeOの多いスケールをつく
ることが提案されている。しかしながら加工性の優れた
鋼線材では、初期の強度が低く高い延性を示すためスケ
ールの密着性が良くなり、残留スケールが生じやすくな
る。このため従来の方法だけではメカニカルデスケーリ
ング性を十分制御することはできない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明においては、C
量が重量%で0.6%以上含まれる高炭素鋼の分野にお
いて、鋼材のスケール除去をメカニカルデスケーリング
法で行った場合に、十分にスケールが除去され、さらに
引き抜きダイスを用いた伸線加工において線径が3.0
mmφ以上の線径において、真歪みで3.7以上の加工
性を有する、伸線加工性に優れたデスケーリング用線材
を提供することを課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】線材における加工性を向
上するために、引張試験から得られる応力−歪み曲線の
最大変形応力、全伸び、降伏比を調整することによって
線材の加工性を向上できる。
【0012】さらにメカニカルデスケーリングを行った
場合、スケールの剥離は線材とスケールの界面に生じる
割れの伝搬によって生じる。この割れの伝搬は、線材表
面の凹凸と関係があり、界面凹凸が少ない方が割れが伝
搬しやすい。またメカニカルデスケーリング後に残存し
たスケール部分には、線材とスケールの界面に凹凸がみ
られる。
【0013】そこで本発明の前記課題は、熱間圧延によ
って得られC量が重量%で0.6%以上の鋼線材にお
いて、引張試験における真応力−真歪み曲線が規定され
た特性を持ち、さらに線材横断面における線材の鋼−ス
ケール界面粗さが規定された範囲内にあることを特徴と
する伸線性に優れたデスケーリング用線材を提供するこ
とにより解決される。
【0014】すなわち本発明の要旨とするところは (1)熱間圧延によって得られC量が重量%で0.6
%以上の鋼線材において、引張試験における真応力−真
歪み曲線が以下の特徴を持ち、 最大変形応力が800MPa以上1200MPa以下 全伸びが20%以上 降伏比σ0.2/σu.t.s.が0.5以上 (但し、σ0.2は0.2%耐力、σu.t.s.は最大変形応
力を示す) さらに線材横断面における線材の鋼−スケール界面粗度
の最大高さが10μm以下であることを特徴とする伸線性
に優れたデスケーリング用線材。
【0015】(2)鋼成分が重量%で C:0.6〜1.5% Si:0.1〜2.0% Mn:0.1〜2.0% を含有することを特徴とする前記(1)記載のデスケー
リング用線材。
【0016】(3)鋼成分が下記の1種以上添加するこ
とを特徴とする前記(2)のデスケーリング用線材。 Cr:0.1〜2.0% Ni:0.1〜2.0% Cu:0.1〜2.0% Mo:0.1〜2.0% Co:0.01〜2.0%。
【0017】(4) 鋼成分が下記の1種以上添加する
ことを特徴とする前記(2)または(3)記載のデスケ
ーリング用線材。 Ti:0.005〜0.03% Nb:0.005〜0.03% V:0.005〜0.03% Al:0.005〜0.03% B:0.0001〜0.003%。
【0018】(5)鋼成分が P:0.02%以下 S:0.02%以下 であることを特徴とする前記(2)または(3)または
(4)記載のデスケーリング用線材。
【0019】
【作用】本発明の構成要件の限定理由について述べる。
化学成分の限定理由は次のとおりである。Cは経済的か
つ有効な強化元素である。鋼線としての必要強度を確保
するためには、Cは少なくとも0.6%以上とすること
が必要である。高すぎると延性が低下するため、上限は
1.5%とする。
【0020】Siは鋼の脱酸のために必要な元素であ
り、従ってその含有量があまりに少ないときは脱酸効果
が不十分になるので下限を0.1%とする。また、Si
は熱処理後に形成されるパーライト中のフェライト相に
固溶しパテンティング後の強度を上げるが、反面フェラ
イトの延性を低下させるので、伸線加工性に悪影響を与
えない上限として2.0%とした。
【0021】Mnは鋼の焼入れ性を確保するために0.
1%以上添加する。しかし、多量のMn添加は偏析を引
き起こしパテンティングの際にベイナイト、マルテンサ
イトなどの過冷組織が発生しその後の伸線性を害するた
め上限を2.0%とした。Sは多量に含まれると線材の
延性を害するのでその含有量を0.02%以下とするの
が望ましい。Pは多量に含まれると線材の延性を害する
のでその含有量を0.02%以下とするのが望ましい。
【0022】Crはセメンタイトの異常部分の出現を抑
制しさらに、パーライトを微細にする効果を持ってい
る。しかし、多量の添加は熱処理後のフェライト中の転
位密度を上昇させるため、引き抜き加工後の極細線の延
性を著しく劣化させることになる。従って、Crの添加
量はその効果が期待できる0.1%以上とし、上限はフ
ェライト中の転位密度を増加させ延性を劣化させること
の無い2.0%以下とする。
【0023】NiはCrと同じ効果があるため、必要に
よりその効果を発揮する0.1%以上添加する。Niも
添加量が多くなりすぎるとフェライト相の延性を低下さ
せるので上限を2.0%とする。
【0024】Cuは線材の腐食疲労特性を向上させる元
素であるので、必要によりその効果を発揮する0.1%
以上添加することが望ましい。Cuも添加量が多くなり
すぎるとフェライト相の延性を低下させるので上限を
2.0%とする。
【0025】Moは線材の焼入れ性を向上させるために
添加する元素で、必要によりその効果を発揮する0.1
%以上添加することが望ましい。Moも添加量が多くな
りすぎると焼入れ性が高まり、偏析部にミクロマルテン
サイトが析出するので上限を2.0%とする。
【0026】Coは線材の延性を向上させるために添加
する元素で、必要によりその効果を発揮する0.01%
以上添加することが望ましい。Coも添加量が多くなり
すぎると焼入れ性が高まり、偏析部にミクロマルテンサ
イトが析出しやすくなるので上限を2.0%とする。
【0027】Ti、Nb、V、Alはγ粒径を微細にし
その後に形成される組織単位を微細にし、靱性値を向上
することができるので、その効果を発揮する0.005
%以上を添加し、上限はその他の特性に悪影響を与える
ことのない0.03%以下とする。
【0028】Bは焼入れ性を改善するのに添加し、その
効果が認められる0.0001%以上添加し、上限は焼
入れ性が高くなりすぎるためその処理が困難となる0.
003%以下とする。
【0029】真応力−真歪み曲線における最大変形応力
は材料組織の微細化の程度に対応する。このため、均一
に安定した変形となるには最低でも800MPa以上の
強度が必要で、加工硬化が小さくなるためには1200
MPa以下に調整する必要がある。引張強さと伸線加工
限界の関係を図1に示す。但し、伸線加工限界は真歪み
である。
【0030】真応力−真歪み曲線における全伸びは、材
料の均一性の指標となるもので、真歪みで3.8以上を
確保するためには少なくとも20%以上の加工性を確保
する必要がある。全伸びと伸線加工限界の関係を図2に
示す。
【0031】真応力−真歪み曲線における降伏比は、セ
メンタイトの形状に依存し、セメンタイトが分断されて
いるほど降伏比が小さくなる。加工硬化率を小さくする
には、セメンタイトが分断されている方がよいので、少
なくとも降伏比を0.5以上に調整する必要がある。降
伏比と伸線加工限界の関係を図3に示す。
【0032】この様な真応力−真歪み曲線の特性を達成
する方法としては、圧延後の調整冷却によって得られる
パーライト組織、ベイナイト組織、これらの混合組織の
いずれでも良い。
【0033】また圧延後、調整冷却を行うことで得られ
る組織に、焼き戻し、焼き鈍しして真応力−真歪み曲線
の特性を満足させても良い。
【0034】さらに線材圧延方向横断面における線材の
鋼−スケール界面粗さはメカニカルデスケーリング時の
スケール剥離性に及ぼす重要な因子である。界面凹凸が
大きい場合には割れの伝搬が生じにくく、メカニカルデ
スケーリング後スケールが残存してしまう。伸線加工性
に優れた線材においては、従来の線材に比較し絞り値が
大きく、線材表面で局所変形しやすくなり、一層のデス
ケーリングの改善が必要である。後工程での加工の障害
となる残留スケール量は、図4に示すように通常0.050
%以下とされており、上限は残留スケール量が後工程で
の支障とならない限界として10μmとした。
【0035】
【実施例】本発明においては、圧延後の調整冷却によっ
てベイナイト組織、パーライト組織およびこれらの混在
組織と造り分けを行いセメンタイトの形態を調整する方
法で線材を製造した。
【0036】表1に供試鋼の化学成分を示す。これらの
供試鋼を122mm角のビレットに製造後、熱間圧延に
よって4.5〜16.0mmφに圧延し、調整冷却を行
い表2に示す組織の線材とした。
【0037】これらの熱間圧延後の線材をG.L.=2
00mmで試験を行い真応力−真歪み曲線を求めた。こ
の真応力−真歪み曲線から求められる最大変形応力。全
伸び、降伏比を表2に示す。
【0038】これらの供試鋼の生引き性の試験は、乾式
伸線を用いて行った。伸線は、各パスにおける減面率が
15〜20%の間となるようにして伸線加工を行った。
生引き性は伸線限界まで加工を行い、真ひずみで3.8
以上の加工が可能であった場合を○、加工ができなかっ
た場合を×で表2に示した。
【0039】メカニカルデスケーリング(MD)性の評
価は、引張歪みを6%付与することによりスケールを除
去し、試料重量に対するスケール量の百分率で表示し
た。
【0040】線材圧延方向横断面における線材の鋼−ス
ケール界面粗さは、JIS B0601の方法により、
断面の顕微鏡観察から最大高さを測定した。
【0041】表3に示す1〜45は本発明鋼の例であ
り、46〜50は比較鋼の例である。
【0042】本発明例は、最大変形応力、全伸び、降伏
比がいずれも本発明に従った条件を満足しており線材圧
延方向横断面の鋼−スケール界面粗度の最大高さが10μ
m以下であるため、生引き性に優れ、メカニカルデスケ
ーリング後の残留スケール量が低く、いずれも0.050%
以下に押さえられている。また、真応力−真歪み曲線の
代表的な例を図5に示す。
【0043】比較鋼46、47は最大変形応力が高く、
全伸びが低いことが本発明と異なる。比較鋼48は降伏
比が低いことが本発明と異なる。比較鋼49はテンパー
処理を行っているが、処理条件が不適切なため全伸びが
ひくいことが本発明と異なる。
【0044】比較鋼50は線材圧延方向横断面の鋼−ス
ケール界面粗さの最大高さがいずれも10μm以上で、メ
カニカルデスケーリング後の残留スケール量がいずれも
0.050%以上と高い値を示している点が本発明と異な
る。
【0045】このように比較鋼はいずれも本発明と異な
っており、伸線性の優れたデスケーリング用線材とし
て、適用することは難しい。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
【表3】
【0049】
【発明の効果】以上述べたごとく本発明法にしたがって
製造された線材は、従来法にくらべより一段とデスケー
リング性が改善されており、これにより熱間圧延後の3
mmφから16mmφの線材において、従来法に比べ伸
線加工性に優れたデスケーリング用線材を得ることがで
き、中間熱処理工程が省略でき、製造コストを低減する
ことが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】は引張強さと加工限界歪みの関係を示す図であ
る。
【図2】は全伸びと伸線限界歪みの関係を示す図であ
る。
【図3】は降伏比と伸線加工限界の関係を示す図であ
る。
【図4】は残留スケール量と鋼−スケール界面粗さの関
係を示す図である。
【図5】は真応力−真歪み曲線示す図である。

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】熱間圧延によって得られC量が重量%で
    0.6%以上の鋼線材において、引張試験における真応
    力−真歪み曲線が下記の特徴を持ち、 最大変形応力が800MPa以上1200MPa以下 全伸びが20%以上 降伏比σ0.2/σu.t.s.が0.5以上 (但し、σ0.2は0.2%耐力、σu.t.s.は最大変形応
    力を示す) さらに線材横断面における線材の鋼−スケール界面粗度
    の最大高さが10μm以下であることを特徴とする伸線性
    に優れたデスケーリング用線材。
  2. 【請求項2】 鋼成分が重量%で C:0.6〜1.5% Si:0.1〜2.0% Mn:0.1〜2.0% を含有することを特徴とする請求項1記載のデスケーリ
    ング用線材。
  3. 【請求項3】 鋼成分が下記の1種以上添加することを
    特徴とする請求項2記載のデスケーリング用線材。 Cr:0.1〜2.0% Ni:0.1〜2.0% Cu:0.1〜2.0% Mo:0.1〜2.0% Co:0.01〜2.0%
  4. 【請求項4】 鋼成分が下記の1種以上添加することを
    特徴とする請求項2または3記載のデスケーリング用線
    材。 Ti:0.005〜0.03% Nb:0.005〜0.03% V:0.005〜0.03% Al:0.005〜0.03% B:0.0001〜0.003%
  5. 【請求項5】 鋼成分が P:0.02%以下 S:0.02%以下 であることを特徴とする請求項2または3または4記載
    のデスケーリング用線材。
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