JP5698573B2 - 光触媒、スラリー状混合物、成形部材及び塗料 - Google Patents

光触媒、スラリー状混合物、成形部材及び塗料 Download PDF

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本発明は、光触媒、スラリー状混合物、成形部材及び塗料に関する。
酸化チタンや酸化タングステンは、高い光触媒活性を有することが知られている。このような光触媒活性を有する化合物(以下、単に「光触媒化合物」と記すことがある)は、バンドギャップエネルギー以上のエネルギーの光が照射されると、電子や正孔を生成するため、光触媒化合物の近傍において、酸化還元反応が強く促進される。また、光触媒化合物の表面は、水に濡れ易い親水性を呈するため、雨等の水滴で洗浄される、いわゆるセルフクリーニング作用を有することが知られている。
光触媒化合物としては、主に酸化チタンが研究されてきたが、酸化チタンはバンドギャップが3〜3.2eVであるため、主に波長400nm以下の紫外線によって光触媒活性が得られる。一方、酸化タングステン(例えばWO)は、バンドギャップが約2.5eVであるため、可視光応答性の光触媒活性を有する。
ここで、種々の波長の光による応答性を得たり、特定の光触媒反応を進み易くしたりする目的で、光触媒化合物の結晶構造を変化させる技術が検討されている。例えば、特許文献1では、Ti原子を含有するペロブスカイト型構造を有する結晶からなる光触媒が開示されている。また、特許文献2では、ZrOを構成成分とする複合金属酸化物の結晶からなる光触媒が開示されている。また、特許文献3では、AMWO(式中、Aはアルカリ金属及び/又は水素であり、MはV、Nb及びTaのうち1種以上である)を構成成分とする複合金属酸化物の結晶からなる光触媒が開示されている。
特開2004−283769号公報 特開2007−075678号公報 特開2000−189806号公報
しかしながら、特許文献1〜3の技術では、光触媒のバンドギャップの大きさについては着目しているものの、光触媒活性の大きさには着目しておらず、その光触媒活性が弱く且つ不充分である点で問題がある。加えて、特許文献1〜3の光触媒では、光触媒活性が不安定になり易い点でも問題がある。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、優れた光触媒活性を安定的に有する光触媒と、それを用いたスラリー状混合物、成形部材及び塗料を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、光触媒にナシコン(NASICON、ナトリウム超イオン電導体)型構造を有する結晶を含有することにより、光触媒の光触媒活性が高められながらも、光触媒の耐熱性が高められることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
(1) ナシコン型構造を有する結晶を含有する光触媒。
(2) 前記ナシコン型構造が、一般式A(XO(式中、第一元素AはLi、Na、K、Cu、Ag、Mg、Ca、Sr及びBaからなる群から選択される1種以上とし、第二元素EはZn、Al、Fe、Ti、Sn、Zr、Ge、Hf、V、Nb及びTaからなる群から選択される1種以上とし、第三元素XはSi、P、S、Mo及びWからなる群から選択される1種以上とし、係数mは0以上4以下とする)で表される(1)記載の光触媒。
(3) 前記第二元素として、Ti、Zr及びVから選ばれる1種以上を含む(2)記載の光触媒。
(4) 前記第三元素として、P、S、Mo及びWから選ばれる1種以上を含む(2)又は(3)記載の光触媒。
(5) Zn、Ti、Zr、W及びPから選ばれる1種以上の成分を含む化合物結晶を更に含有する(1)から(4)のいずれか記載の光触媒。
(6) 前記化合物結晶が、TiO、WO、ZnO、TiP及びこれらの固溶体から選ばれる1種以上の結晶を含有する、(5)記載の光触媒。
(7) 前記光触媒に含まれる結晶の平均粒径が、10nm以上10μm以下の範囲内である(1)から(6)のいずれかに記載の光触媒。
(8) F成分、Cl成分、Br成分、S成分、N成分、及びC成分からなる群より選ばれる1種以上の非金属元素成分の含有量が、前記光触媒の全質量に対する質量比で20.0%以下である(1)から(7)のいずれか記載の光触媒。
(9) Ag、Au、Pd、Re及びPtからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属粒子が、前記光触媒の全質量に対する質量比で5.0%以下含まれている(1)から(8)のいずれか記載の光触媒。
(10) 前記光触媒の全質量に対する質量比で、
希土類成分 0〜20%及び/又は
遷移金属成分 0〜10%
が含まれている(1)から(9)のいずれか記載の光触媒。
(11) 紫外領域から可視領域までの波長の光によって触媒活性が発現される(1)から(10)のいずれか記載の光触媒。
(12) (1)から(11)のいずれかに記載の光触媒と、溶媒と、を含有するスラリー状混合物。
(13) 前記光触媒の含有量が、混合物全体の2質量%以上である(12)に記載のスラリー状混合物。
(14) (1)から(11)のいずれか記載の光触媒を含有する成形部材。
(15) (1)から(11)のいずれかに記載の光触媒を含有する塗料。
(16) (15)に記載の塗料を部材に塗布することで作られる塗膜形成部材。
本発明によれば、光触媒にナシコン型構造を有する結晶を含有することにより、光触媒の光触媒活性が高められながらも、光触媒の耐熱性が高められる。そのため、優れた光触媒活性を有し、且つ焼成条件による光触媒活性の変動の少ない光触媒と、それを用いたスラリー状混合物、成形部材及び塗料を提供できる。
本発明の実施例1の光触媒についてのXRDパターンである。 本発明の実施例1の光触媒における、紫外線照射前後におけるメチレンブルーによる着色の変化を示す図である。 実施例7の焼結体についてのXRDパターンである。 実施例7の焼結体のメチレンブルー分解活性試験の結果を示すグラフである。 実施例9の焼結体についてのXRDパターンである。 実施例9の焼結体の親水性試験の結果を示すグラフである。 実施例13の加熱後の微粒子についてのXRDパターンである。
以下、本発明の一実施形態を説明するが、これに本発明が限定されるものではない。
本発明の光触媒は、ナシコン型構造を有する結晶(以下、「ナシコン型結晶」と記すことがある)を含有する。ナシコン型の結晶構造は、後述する一般式A(XOで表すことが可能な構造であり、EO八面体とXO四面体とが頂点を共有するように連結することで、三次元の網目構造を形成する構造である。その構造の中には、Aイオンが存在しうる二つのサイトがあり、これらのサイトは連続する三次元のトンネルを形成している。この結晶構造の最大の特徴は、Aイオンが結晶内を容易に動くことである。このような構造を取ることにより、光触媒の光触媒活性が高められ、且つ光触媒の耐熱性が高められるため、優れた光触媒活性を安定的に有する光触媒を得ることができる。ここで、本発明の光触媒が光触媒活性を高められる理由としては、Aイオンが結晶内を動き易いことにより、光の照射により生じた電子とホールとの再結合の確率が低減されるためであると推察される。また、本発明の光触媒が耐熱性を高められる理由としては、ナシコン型結晶は相転移がなく熱的に安定であり、焼成等の加熱条件によって光触媒特性が失われ難いためであると推察される。
以下、本発明の光触媒の実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の趣旨を限定するものではない。
[ナシコン型結晶]
まず、本発明の光触媒が有するナシコン型結晶について説明する。
本発明の光触媒が有するナシコン型結晶は、一般式A(XO(式中、第一元素AはLi、Na、K、Cu、Ag、Mg、Ca、Sr及びBaからなる群から選択される1種以上とし、第二元素EはZn、Al、Fe、Ti、Sn、Zr、Ge、Hf、V、Nb及びTaからなる群から選択される1種以上とし、第三元素XはSi、P、S、Mo及びWからなる群から選択される1種以上とし、係数mは0以上4以下とする)で表されることが好ましい。この一般式で表される化合物は、安定的にナシコン型構造をとるため、光触媒特性を高め易くすることができる。
ここで、第一元素Aは、Li、Na、K、Cu、Ag、Mg、Ca、Sr及びBaからなる群から選択される1種以上であることが好ましい。これらのイオンが結晶内のトンネルを形成するサイトに存在することで、これらのイオンが結晶内を容易に動くことができる。そのため、光の照射により生じた電子とホールとの再結合の確率が低減されることで、ナシコン型結晶の光触媒特性が向上する。特に、第一元素AとしてCu及びAgの少なくともいずれかを含む場合は、上述の光触媒特性に加えて、光照射がなくても高い抗菌性を発現できるので、これらの少なくともいずれかを含ませることがより好ましい。なお、第一元素Aは、原料として例えばLiCO、LiNO、LiF、NaO、NaCO、NaNO、NaF、NaS、NaSiF、KCO、KNO、KF、KHF、KSiF、CuO、CuCl、AgCl、MgCO、MgF、CaCO、CaF、Sr(NO、SrF、BaCO、Ba(NO等を用いることができる。
また、第二元素Eは、Zn、Al、Fe、Ti、Sn、Zr、Ge、Hf、V、Nb及びTaからなる群から選択される1種以上であることが好ましい。これらは、安定なナシコン型の結晶構造を取るのに必要不可欠な成分であり、且つ、結晶の伝導帯の構成に関与して2.5〜4eVの範囲を有するバンドギャップを形成する成分である。そのため、これらのうち少なくともいずれかの元素を含有することで、紫外光のみならず可視光にも応答する光触媒を得ることが可能である。また、光触媒効率を上げる観点で、Ti、Zr及びVから選ばれる1種以上を含むことがより好ましく、Tiを含むことが最も好ましい。特に、Tiを含むことにより、バンドギャップは2.8〜3.4eVの範囲になるため、紫外光と可視光の両方に応答する光触媒を容易に得られる。ここで、第二元素Eの全体に対するTi、Zr及びVから選ばれる1種以上の化学量論比は、好ましくは0.1、より好ましくは0.3、最も好ましくは0.5を下限とすることが好ましい。特に、第二元素Eの全体に対するTi、Zr及びVから選ばれる1種以上の化学量論比を高めることにより、光触媒特性をより高め易くすることができる。なお、第二元素Eは、原料として例えばZnO、ZnFAl、Al(OH)、AlF、FeO、Fe、TiO、SnO、SnO、SnO、ZrO、ZrF、GeO、Hf、V、Nb、Ta等を用いることができる。
また、第三元素Xは、Si、P、S、Mo及びWから選ばれる1種以上を含むことが好ましい。これらの元素は、安定なナシコン型結晶構造を取るのに必要不可欠な成分であり、且つ、ナシコン型結晶のバンドギャップの大きさを調整できる効果があるので、これらの元素のうち少なくともいずれかを含有することが好ましい。その中でも特に、ナシコン型結晶の形成が容易である点から、P、S、Mo及びWから選ばれる1種以上を含むことがより好ましい。なお、第三元素Xは、SiO、KSiF、NaSiF、Al(PO、Ca(PO、Ba(PO、Na(PO)、BPO、HPO、NaS,Fe,CaS、WO、MoO等を用いることができる。
上記一般式における係数mは、E又はXの種類によって適宜設定されるが、0以上4以下の範囲内である。mがこの範囲にあることで、ナシコン型結晶構造が保たれ、熱的及び化学的な安定性が高くなり、環境の変化による光触媒特性の劣化が少なくなり、且つ他の材料との複合化の際に加熱による光触媒特性の低下が起こり難くなる。ここで、mが4を超えると、ナシコン型構造が維持できなくなるため、光触媒特性が低下する。
ナシコン型結晶としては、例えばRTi(PO、M0.5Ti(PO、RZr(PO、M0.5Zr(PO、RGe(PO、M0.5Ge(PO、RAlZn(PO、RTiZn(PO、R(PO、Al0.3Zr(PO、RFe(PO、RSn(SiO、RNbAl(PO、La1/3Zr(PO、Fe(MoO及びFe(SO(式中、RはLi、Na、K及びCuからなる群から選択される1種以上とし、MはMg、Ca、Sr及びBaからなる群から選択される1種以上とする)が挙げられる。
[化合物結晶]
本発明の光触媒は、ナシコン型結晶に加えて他の化合物結晶を含有してもよい。これにより、ナシコン型結晶が有する光触媒特性や機械的特性等の特性が調整されるため、光触媒を所望の用途に用い易くすることができる。ここで、化合物結晶は、所望とする特性に応じて適宜選択されるものであるが、Zn、Ti、Zr、W及びPから選ばれる1種以上の成分を含む化合物結晶を更に含有することが好ましい。これらの化合物結晶がナシコン型結晶の近傍に存在することで、光触媒の光触媒特性をより高めることができる。その中でも、TiO、WO、ZnO、TiP及びこれらの固溶体から選ばれる1種以上の結晶を含有することがより好ましい。本発明の光触媒は、それ自体が光触媒特性を有するこれらの結晶を混合しなくても、高い光触媒特性をもたらすことができる。しかし、これらの結晶を添加することで、光触媒特性を有する結晶の量が増加されるため、光触媒の光触媒特性をより増強できる。なお、化合物結晶は、生成されたナシコン型結晶に人為的に加えられるものであってもよく、ナシコン型結晶の生成過程における副産物を用いたものであってもよい。
なお、本発明における固溶体とは、2種類以上の金属固体又は非金属固体が互いの中に原子レベルで溶け込んで全体が均一の固相になっている状態のことをいい、混晶と言う場合もある。溶質原子の溶け込み方によって、結晶格子の隙間より小さい元素が入り込む侵入型固溶体、母相原子と入れ代わって入る置換型固溶体等がある。
ここで、化合物結晶の含有量は、所望とする特性に応じて適宜設定できる。ここで、化合物結晶の量が過小であると、光触媒特性や機械的特性等が調整され難くなる。一方で、光触媒結晶の量が過剰であると、光触媒全体としての耐熱性が損なわれ易い。そこで、混合する化合物結晶の量の下限は、光触媒の全質量に対する質量比で0.5%であることが好ましく、より好ましくは3.0%、最も好ましくは10.0%である。他方、混合する化合物結晶の量の上限は、光触媒の全質量に対する質量比で95.0%であることが好ましく、より好ましくは80.0%、最も好ましくは60.0%である。
ここで、光触媒に含まれるナシコン型結晶及び/又は化合物結晶の平均粒径は、球近似したときの平均径が、10nm以上10μm以下であることが好ましい。その中でも特に、有効な光触媒特性を引き出すためには、結晶のサイズを10nm〜3μmの範囲とすることが好ましく、10nm〜1μmの範囲とすることがより好ましく、10nm〜300nmの範囲とすることが最も好ましい。結晶の平均径は、例えばX線回折装置(XRD)の回折ピークの半値幅より、シェラー(Scherrer)の式:
D=0.9λ/(βcosθ)
を用いて見積もることができる。ここで、Dは結晶の大きさであり、λはX線の波長であり、θはブラッグ角(回折角2θの半分)である。特に、XRDの回折ピークが弱かったり、回折ピークが他のピークと重なったりする場合は、走査型電子顕微鏡(SEM)又は透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて測定した結晶粒子の面積から、これを円と仮定してその直径を求めることでも見積もることができる。顕微鏡を用いて結晶の粒径の平均値を算出する際には、無作為に100個以上の結晶の直径を測定することが好ましい。なお、ナシコン型結晶及び/又は化合物結晶の大きさは、例えばナシコン型結晶を形成する際の原料の粒度や焼成工程における熱処理条件をコントロールすることで、所望の大きさに制御できる。
[非金属元素成分及び金属元素成分]
本発明の光触媒には、F成分、Cl成分、Br成分、S成分、N成分及びC成分からなる群より選ばれる1種以上の非金属元素成分が含まれていてもよい。これら非金属元素成分は、ナシコン型結晶に固溶し、又はその近傍に存在することで、光触媒の光触媒特性が向上する成分であり、光触媒中に任意に含有できる成分である。しかし、これら非金属元素成分の含有量が合計で20.0%を超えると、光触媒の機械的特性が著しく悪くなり、光触媒特性も低下し易くなる。従って、良好な機械的特性及び光触媒特性を確保するために、光触媒の全質量に対する非金属元素成分の含有量の合計は、好ましくは20.0%、より好ましくは10.0%、さらに好ましくは5.0%、最も好ましくは3.0%を上限とする。
これらの非金属元素成分は、例えば第一元素Aや第二元素Eのフッ化物、塩化物、臭化物、硫化物、窒化物、炭化物等の形で、ナシコン型結晶の原料中に導入することが好ましい。これにより、非金属元素成分をナシコン型結晶に固溶し易くできる。一方で、非金属元素成分を、以下に述べる金属元素成分のフッ化物、塩化物、臭化物、硫化物、窒化物、炭化物等の形で、ナシコン型結晶の原料中に添加してもよく、生成されたナシコン型結晶に添加してもよい。これにより、非金属元素成分及び金属元素の双方によって光触媒特性が向上するため、より光触媒特性の高い光触媒を得ることができる。
非金属元素成分の原料は、特に限定されないが、N成分の原料としてAlN、SiN等、S成分の原料としてNaS,Fe,CaS等、F成分の原料としてZrF、AlF、NaF、CaF等、Cl成分の原料としてNaCl、AgCl等、Br成分の原料としてNaBr等、C成分の原料としてTiC、SiC又はZrC等を用いることができる。なお、これらの原料は、2種以上を組み合わせて添加してもよいし、単独で添加してもよい。
また、本発明の光触媒には、Ag、Au、Pd、Re及びPtから選ばれる1種の金属元素成分が含まれていてもよい。これらの金属元素成分は、ナシコン型結晶に固溶し、又はその近傍に存在することで、光触媒の光触媒特性が向上する成分であり、光触媒中に任意に含有できる成分である。しかし、これら金属元素成分の含有量の合計が5.0%を超えると、光触媒の機械的特性が著しく悪くなり、光触媒特性もかえって低下し易くなる。従って、良好な機械的特性及び光触媒特性を確保するために、光触媒の全質量に対する金属元素成分の含有量の合計は、好ましくは10.0%、より好ましくは5.0%、最も好ましくは1.0%を上限とする。金属元素成分の原料は、特に限定されないが、例えばAgO、AuCl、PtCl等を用いることができる。
ここで、金属元素成分の粒子径や形状は、ナシコン型結晶の組成等に応じ、適宜設定されてよいが、ナシコン型結晶の光触媒機能を最大に発揮するには、金属元素成分の平均粒子径は、できるだけ小さい方がよい。従って、金属元素成分の平均粒子径の上限は、好ましくは5.0μmであり、より好ましくは1.0μmであり、最も好ましくは0.1μmである。
また、本発明の光触媒には、希土類成分が含まれていてもよい。これらの希土類成分は、ナシコン型結晶に固溶し、又はその近傍に存在することで、光触媒特性を向上させる成分であり、光触媒中に任意に添加できる成分である。しかし、希土類成分の含有量の合計が30%を超えると、ガラスの安定性が著しく悪くなる。従って、光触媒の全質量に対する、光触媒成分の合計量は、好ましくは30%、より好ましくは20%、最も好ましくは10%を上限とする。本発明の光触媒で用いられる希土類成分としては、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、及びLuからなる群より選択される1種以上が挙げられる。これら希土類成分は、原料として例えばLa、La(NO・XHO(Xは任意の整数)、Gd、GdF、Y、YF、CeO、CeF、Nd、Dy、Yb、Lu等を用いてガラスセラミックスに導入することができる。
また、本発明の光触媒には、遷移金属成分が含まれていてもよい。これらの遷移金属成分は、ナシコン型光触媒結晶に固溶するか、又はその近傍に存在することで、光触媒特性の向上に寄与し、且つ一部の波長の可視光を吸収して光触媒に外観色を付与する成分であり、光触媒中の任意成分である。特に、遷移金属成分の合計量を10%以下にすることで、光触媒の安定性を高め、光触媒の外観の色を容易に調節することができる。従って、酸化物換算組成の全質量に対する、遷移金属成分の合計量は、好ましくは10%、より好ましくは5%、最も好ましくは3%を上限とする。また、これらの成分を添加する場合は、好ましくは0.01%、より好ましくは0.03%、最も好ましくは0.05%を下限とする。本発明の光触媒で用いられる遷移金属成分としては、Cr、Mn、Co、及びNiからなる群より選択される1種以上が挙げられる。
[光触媒の物性]
本発明の光触媒は、紫外領域から可視領域までのいずれかの波長の光、又はそれらが複合した波長の光によって触媒活性が発現される。より具体的には、紫外領域から可視領域までのいずれかの波長の光を照射したときに、メチレンブルー等の有機物を分解する特性を有する。これにより、光触媒の表面に付着した汚れ物質や細菌等が酸化又は還元反応により分解されるため、光触媒を防汚用途や抗菌用途等に用いることができる。ここで、光触媒のメチレンブルーの分解活性指数は、3.0nmol/L/min以上が好ましく、3.5nmol/L/min以上がより好ましく、4.0nmol/L/min以上がさらに好ましく、5.0nmol/L/min以上が最も好ましい。なお、本発明でいう紫外領域の波長の光は、波長が可視光線より短く軟X線よりも長い不可視光線の電磁波のことであり、その波長はおよそ10〜400nmの範囲にある。また、本発明でいう可視領域の波長の光は、電磁波のうち、ヒトの目で見える波長の電磁波のことであり、その波長はおよそ400nm〜700nmの範囲にある。また、本発明でいう光触媒は、分解活性指数が5.0nmol/L/min以上のものに限られず、有機物を分解する特性を有するものを広く指す。
また、本発明の光触媒は、優れた耐熱性を有する。これにより、光触媒を高温下で加熱処理した場合や光触媒を長時間に亘り加熱処理した場合にも光触媒特性が失われ難くなるため、光触媒の使用温度の幅を広げ、且つ応用製品の幅を広げることができる。すなわち、焼成等の加熱処理の条件や回数によらず、安定した光触媒特性を有する光触媒を得ることができる。ここで、900℃の大気中で1時間加熱する加熱試験を行った後における光触媒のメチレンブルーの分解活性指数は、3.0nmol/L/min以上が好ましく、4.0nmol/L/min以上が好ましく、5.0nmol/L/min以上が最も好ましい。
また、本発明の光触媒は、表面が親水性を呈することが好ましい。これにより、光触媒の表面がセルフクリーニング作用を有するため、光触媒の表面を水で容易に洗浄でき、汚れによる光触媒特性の低下を抑制することができる。ここで、紫外領域から可視領域までのいずれかの波長の光、又はそれらが複合した波長の光を照射した際の、光触媒の表面と水滴との接触角は、30°以下が好ましく、25°以下がより好ましく、20°以下が最も好ましい。
[光触媒の製造方法]
次に、本発明の光触媒を好適に作製できる好適な製造方法について説明する。
この製造方法は、例えば、原料組成物を混合する混合工程、及び混合された原料組成物を焼成することによりナシコン型結晶を生成させる焼成工程を含む固相法を用いることができる。これにより、混合された原料組成物に含まれる各成分が互いに拡散して固相反応を起こすことでナシコン型結晶が形成されるため、ナシコン型結晶の単位体積あたりの密度を高め、機械的強度に優れた光触媒を得ることができる。
以下、各工程の詳細を説明する。
(混合工程)
混合工程では、所定の原料組成物を混合する。具体的には、所望のナシコン型結晶の化学量論比に応じて第一元素A、第二元素E及び第三元素Xの原料組成物を調合し、均一に混合する。
ここで用いられる原料組成物は、ガラス相を含有していてもよく、結晶相を含有していてもよい。特に、原料組成物がガラス相を含有することで、焼成工程における原料組成物の流動性が高められる。そのため、焼成工程における化学反応を進め易くできる。一方、原料組成物が結晶相を含有することで、結晶相が焼成工程の生成物の結晶成長する際の核になり易くなる。そのため、焼成工程をより短い時間で行い易くできる。
混合した原料組成物は、必要に応じてボールミル等で粒径及び/又は粒度分布を調整する。これにより、原料組成物の粒度が揃えられるため、焼成工程において固相反応を進み易くすることができる。従って、所望の化学量論比を有するナシコン型結晶を生成し易くできる。原料組成物の粒子径は、焼成工程における固相反応の起こし易さ等に応じて適宜設定できる。具体的には、焼成工程における焼成時間を短くできる点で平均粒子径は出来るだけ小さい方が好ましい。そこで、原料組成物の平均粒子径の上限は、好ましくは100μm、より好ましくは50μm、最も好ましくは10μmである。なお、原料組成物の平均粒子径は、例えばレーザー回折散乱法によって測定した時のD50(累積50%径)の値を使用できる。具体的には日機装株式会社の粒度分布測定装置MICROTRAC(MT3300EXII)よって測定した値を用いることができる。
(焼成工程)
焼成工程では、原料組成物を加熱して焼成を行うことで、ナシコン型結晶を生成する。ここで、焼成工程の具体的な工程は、特に限定されないが、粉粒体を設定温度へと徐々に昇温させる工程、粉粒体を設定温度に一定時間保持する工程、粉粒体を室温へと徐々に冷却する工程を含んでよい。
ここで、原料組成物は、所定の厚み・寸法に成形して基材上に配置することが好ましい。これにより、ナシコン型結晶を有する光触媒を所望の形状及び厚さで形成できる。ここで、原料組成物を基材上に配置する場合の厚さは、光触媒に十分な機械的強度を付与する観点では、好ましくは0.05mm、より好ましくは0.1mm、最も好ましくは0.3mmを下限とする。但し、光触媒を粉末状にして用いる場合(例えば、他の材料に混練するような場合)等は、この範囲に限定されない。一方、原料組成物を成形する場合の厚さは、焼成時間の短縮化を図り、且つ光触媒へのひび割れの形成を低減する観点では、好ましくは3mm、より好ましくは2mm、最も好ましくは1mmを上限とする。
ここで、基材上に配置された原料組成物を焼成する前に200℃以上の温度に加熱して仮焼を行うことが好ましい。これにより、原料組成物に含まれていた水分や有機物等が分解され、ガス化して排出されるため、原料組成物の粒子同士の密着性を高め、ナシコン型結晶を形成し易くできる。このとき、仮焼温度の下限は、有機物の分解を充分に進められる点で、好ましくは200℃、より好ましくは250℃、最も好ましくは300℃とする。一方、仮焼温度の上限は、原料組成物の溶融によって有機物の蒸発が抑えられることを低減できるで、好ましくは1200℃、より好ましくは1150℃、最も好ましくは1000℃とする。仮焼時間は、原料組成物に含まれる不純物の種類により異なるが、例えば2〜12時間程度の時間をかけて行うことが好ましい。
焼成工程における焼成の条件は、原料組成物の組成等に応じ、適宜設定されてよい。具体的には、焼成時の雰囲気温度は、基材の耐熱性を考慮しつつ1400℃以下の温度範囲で適宜選択できる。従って、焼成温度の上限は、好ましくは1400℃であり、より好ましくは1350℃であり、最も好ましくは1300℃である。
焼成工程における焼成時間は、原料組成物の組成や焼成温度等に応じて設定する。昇温速度を遅くすれば、焼成温度まで加熱するだけでよい場合もあるが、目安としては高い温度の場合は短く、低い温度の場合は、長く設定することが好ましい。具体的には、ナシコン型結晶をある程度まで成長させ、且つ十分な量のナシコン型結晶を析出させ得る点で、好ましくは30分、より好ましくは1時間、最も好ましくは2時間を下限とする。一方、焼成時間が24時間を越えると、目的のナシコン型結晶相が大きくなりすぎて十分な光触媒特性が得られなくなるおそれがある。従って、焼成時間の上限は、好ましくは24時間、より好ましくは18時間、最も好ましくは12時間とする。なお、ここで言う焼成時間とは、焼成工程のうち焼成温度が一定(例えば、上記設定温度)以上に保持されている期間の長さを指す。
焼成工程は、例えばガス炉、マイクロ波炉、電気炉等の中で、空気交換しつつ大気中で行うことが好ましい。ただし、この条件に限らず、上記の工程を、不活性ガス雰囲気、還元ガス雰囲気、酸化ガス雰囲気にて行ってもよい。
なお、光触媒の製造方法は、上述の固相法に限定されず、ゾルゲル法をはじめとする液相法等を用いてもよい。液相法を用いることにより、均一な粒径を有する結晶相が形成されるため、溶媒やバインダー等に溶解することで均一なスラリー状混合物を得ることができる。また、原料として有機金属塩溶液を用い、これを火炎中に噴霧して、微粒子状の光触媒やその原料組成物を形成してもよい。これにより、光触媒を粉砕しなくとも微粒子状の光触媒が得られるため、基材への塗布や成形部材の作製を行い易くできる。
[光触媒の用途]
本発明の光触媒は、その内部及び表面に光触媒活性を持つナシコン型結晶相が析出しているため、優れた光触媒活性と可視光応答性を有するとともに、耐熱性にも優れている。すなわち、光触媒機能が要求される様々な物品に加工できる。
(スラリー状混合物)
本発明の光触媒は、粉砕して粉粒体を形成し、これを任意の溶媒等と混合することで、スラリー状混合物を調製してもよい。これにより、光触媒の基材上への塗布が容易になるため、様々の基材に光触媒を持たせることができる。具体的には、光触媒からなる粉粒体に、好ましくは無機若しくは有機のバインダー及び/又は溶媒を添加することによりスラリー状混合物を調製できる。
ここで、無機バインダーは、特に限定されるものではないが、紫外線や可視光線を透過する性質のものが好ましく、例えば、珪酸塩系バインダー、リン酸塩系バインダー、無機コロイド系バインダーや、アルミナ、シリカ及びジルコニア等の微粒子等を挙げることができる。
また、有機バインダーは、例えば、プレス成形やラバープレス、押出成形又は射出成形用の成形助剤として汎用されている市販のバインダーを用いることができる。具体的には、アクリル樹脂、エチルセルロース、ポリビニルブチラール、メタクリル樹脂、ウレタン樹脂、ブチルメタアクリレート、及び、ビニル系共重合物等が挙げられる。
また、溶媒は、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール(IPA)、酢酸、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、アセトン、及び、ポリビニルアルコール(PVA)等の公知の溶媒が使用できる。その中でも特に、環境負荷を軽減できる点で、アルコール又は水を用いることが好ましい。
また、スラリーの均質化を図るために、溶媒と適量の分散剤とを併用してもよい。分散剤としては、特に限定されないが、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、ヘキサン及びシクロヘキサン等の炭化水素類、セロソルブ、カルビトール、テトラヒドロフラン(THF)及びジオキソラン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン類、並びに、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸−n−ブチル及び酢酸アミル等のエステル類等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明のスラリー状混合物には、その用途に応じて、上記成分以外に例えば硬化速度や比重等を調節するための添加剤成分を適宜配合できる。
本発明のスラリー状混合物における光触媒の含有量は、その用途に応じて適宜設定できる。そのため、スラリー状混合物における光触媒の含有量は、特に限定されるものではないが、その一例を挙げれば、十分に光触媒特性を発揮させる観点から、好ましくは2質量%、より好ましくは3質量%、最も好ましくは5質量%を下限とし、スラリーとしての流動性と機能性を確保する観点から、好ましくは80質量%、より好ましくは70質量%、最も好ましくは65質量%を上限とする。
本発明の光触媒及びこれを含有するスラリー状混合物は、光触媒機能性素材として、例えば塗料、成形/固化が可能な混練物等に配合して使用できる。特に、本発明の光触媒を塗料に配合して用いることが好ましい。これにより、塗料を部材に塗布することで形成される塗膜は、光触媒特性が高められながらも化学的な安定性が高められるため、より光触媒特性及び耐候性に優れた塗膜形成部材を得ることができる。
(成形部材)
本発明の光触媒は、加熱を行って光触媒を粉砕した粉粒体を固化させることで、任意の形状の成形部材を形成してもよい。このとき、光触媒に含まれるナシコン型結晶は、固化時に加熱されても他の結晶相への転移が起こり難い。すなわち、固化時の加熱による光触媒特性の低下が抑制されながらも、成形する際の形状選択の自由度が高められるため、所望の光触媒特性を有しつつ、様々な形状を有する光触媒機能性成形部材を形成できる。
ここで、成形部材は、例えば光触媒のみから形成してもよく、基材を含んでもよく、さらに任意のバインダー等を含有してもよい。
また、成形部材の形成方法は、特に限定されるものではないが、例えば成形した光触媒を焼結させる方法や、成形した光触媒を加熱しながらプレスする方法を用いることができる。これにより、光触媒を構成する粒子同士が結合されるため、成形部材の機械的強度を高めることができる。なお、光触媒を一旦上述のスラリー状混合物の形態にしてから、所望の形状に成形して成形部材を作製することも可能である。
焼結や加熱プレスにおける焼成温度及び時間は、光触媒の組成や、光触媒に混合された添加物の種類及び量等に応じて、適宜設定することができる。このうち焼成温度は、1600℃以下の温度範囲で適宜選択できる。焼成温度が1600℃を超えると、ナシコン型構造を有する結晶相が他の結晶相へと転移し易くなる。従って、焼成温度の上限は、好ましくは1600℃であり、より好ましくは1500℃であり、最も好ましくは1400℃である。
また、焼結や加熱プレスにおける焼成時間は、焼成温度に応じて設定する必要があるが、焼成温度が高い場合は焼成時間を短く設定し、焼成温度が低い場合は焼成時間を長く設定することが好ましい。
以上述べたように、本発明の光触媒は、光触媒特性を有するナシコン型結晶を含有するものであるため、優れた光触媒活性を有し、且つ優れた耐熱性を有する光触媒機能性材料として有用なものである。また、本発明の光触媒は、例えばスラリー状、固形状等の任意の形態にも加工しやすい。従って、その用途や、適用される基材等の種類や形状に応じて最適な形態で提供でき、様々な光触媒機能性部材や親水性部材への適用が可能である。
次に、実施例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は以下の実施例によって何ら制約を受けるものではない。
実施例(No.1〜No.6):
本発明の実施例(No.1〜No.6)のナシコン型結晶の組成と、紫外線を照射する場合(紫外線照射あり)と紫外線を照射しない場合(紫外線照射なし)におけるナシコン型結晶によるメチレンブルーの脱色の程度の結果を、表1〜表2に示した。
本発明の実施例(No.1〜No.6)では、第一元素A、第二元素E及び第三元素Xの原料として各々相当する酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、フッ化物、塩化物、メタリン酸化合物等の高純度の原料(例えば、TiO、ZrO、Fe、NaHPO、Mg(PO、NHPO、Al(OH)、SiO等)を選定し、第一元素A、第二元素E及び第三元素Xのモル比が各実施例に記載された化学量論比に等しくなるように秤量して均一に混合した後、大気中で300℃〜700℃の温度範囲で2〜12時間仮焼した。次いで、仮焼した原料組成物をジェットミルで粉砕することで、粒子サイズを10μm以下にした。この原料組成物を大気中で700℃〜1300℃の範囲の温度まで昇温し、この温度で2〜12時間に亘り保持して焼成を行い、その後、ボールミルで粉砕して、粒子サイズが10μm以下の粉末サンプルを得た。
ここで、実施例(No.1〜No.6)で得られた粉末サンプルに生成した結晶相の種類は、X線回折装置(フィリップス社製、商品名:X’Pert−MPD)で同定した。
また、実施例(No.1〜No.6)の粉末サンプルの光触媒特性は、次のように評価した。すなわち、サンプルを0.5g取ってポリスチレン製の容器に入れ、濃度0.01mmol/Lのメチレンブルー水溶液を注入してから、照度1mW/cmの紫外線(東芝ライテック株式会社製 型番:FL10BLB)を3〜10時間にわたって照射した。そして、紫外線照射前のサンプルの色と紫外線照射後のサンプルの色とを目視で比較し、下記の5段階の判定基準でメチレンブルーの分解力を評価した。また、比較として、紫外線を照射しない場合のサンプルの色の変化を、紫外線を照射する場合と同様に評価した。
(判定基準)
5:僅かに薄い,ほぼ変化がない
4:やや薄い
3:薄い
2:かなり薄い
1:透明に近い,ほぼ透明
その結果、実施例(No.1〜No.6)の焼成体には、いずれも表1〜表2に表されるような、所望のナシコン型結晶が析出していた。このことは、図1に示した実施例(No.1)の焼成体についてのXRDパターンにおいて、入射角2θ=24.2°付近をはじめ、「●」で表される入射角にピークが生じていることからも明らかである。
また、実施例(No.1〜No.6)の焼成体の光触媒特性をメチレンブルーの脱色により評価したところ、表1〜表2に示すように、いずれのガラスセラミックス成形体も光の照射によりメチレンブルーの脱色現象が起こったことから、光触媒特性を有することが確認された。このため、本発明の実施例(No.1〜No.6)の焼成体は、光触媒として機能するものであることが推察された。なお、紫外線を照射する場合と紫外線を照射しない場合における実施例(No.1)の焼成体についての色の変化を図2に示す。図2(a)は紫外線を照射する場合の焼成体であり、図2(b)は紫外線を照射しない場合の焼成体である。紫外線を照射しなかった場合は、メチレンブルーの吸着によるサンプルの青色への着色が明確に観察されたが、紫外線照射した場合は、サンプルの着色が見られなかった。これらのことから、上述の紫外線照射した場合のメチレンブルー溶液の脱色は、メチレンブルーのサンプルへの吸着によるものではなく、確実に光触媒効果によるものと裏付けられた。
実施例(No.7):
NHPO、TiO及びCa(POからなる出発原料を、ナシコン型結晶Ca0.5Ti(POの化学量論比に等しくなるようによく混合した後、白金坩堝に入れて700℃で16時間加熱してから室温まで放冷した。これを瑪瑙乳鉢で粉砕した後、更に遊星型ボールミルで粉砕して、平均粒子径5μmの粉体を得た。この粉体2gを40MPaの圧力で2分間プレスしてφ20mmのペレットを形成し、このペレットに対して冷間等方圧プレス(CIP)装置を用いて2tの圧力で2分間プレスした。その後、得られたペレットを1300℃で2時間加熱して、バルクの焼結体を得た。得られた焼結体についてX線回折(XRD)法で結晶構造を解析したところ、図3に示すような回折パターンが得られた。これにより、焼結体にナシコン型結晶Ca0.5Ti(POが生成していることが確認された。
上述の焼結体に対して、以下のようにメチレンブルー分解活性試験を行って光触媒特性を評価した。得られたバルクの焼結体を3mlのメチレンブルー水溶液(濃度0.01mmol/L)に浸し、ブラックライト蛍光ランプ(東芝ライテック社製 FL10−BLB)を用いて照度1mW/cmの紫外線を焼結体に照射し、30分ごとにメチレンブルー(MB)溶液の吸光度を測定した。ここで、各照射時間における吸光度を照射前のものと比較し、その比率をもってMBの分解能力を評価した。また、サンプル自身によるMB濃度の吸着を確認するために、紫外線を照射せずに同様の評価を行った。その結果、図4に示すように、紫外線を照射したサンプルは、紫外線を照射しなかったサンプルよりもMB濃度の減少が大きかったため、紫外線の照射によってMBが分解されることが確認された。
実施例(No.8〜No.10):
本発明の実施例(No.8〜No.10)のナシコン型結晶の組成と、紫外線を4時間照射する場合(紫外線4時間照射後)と紫外線を照射しない場合(紫外線照射前)における光触媒の表面と水滴との接触角の結果を、表3に示した。
本発明の実施例(No.8〜No.10)では、NHPO、TiO、NaCO、Mg(PO及びCa(POからなる原料を、第一元素A、第二元素E及び第三元素Xのモル比が各実施例に記載された化学量論比に等しくなるようにボールミルで混合し、大気中で700℃の仮焼温度で4時間仮焼してから粉砕し、1000℃〜1200℃の範囲で12時間焼成した。その後、遊星型ボールミルで粉砕して、平均粒子径が5μmの粉体を得た。この粉体を2g取り、内径20mmのグラファイトからなるダイに充填し、放電プラズマ焼結(SPS)装置(住友石炭鉱業株式会社製 SPA−1030)を用いて、真空雰囲気中で上下方向に30MPaの圧力をかけながら、1000℃で5分間焼結を行い、バルクの焼結体を得た。得られた焼結体を研磨した後、4.6wt%のHF水溶液で1分間エッチング処理し、物性の評価用サンプルを得た。この評価用サンプルに対してX線回折(XRD)法で結晶構造を解析したところ、結晶相として、それぞれNaTi(PO、Mg0.5Ti(POとCa0.5Ti(POの結晶相が形成されていることが確認された。一例として、実施例(No.9)のXRDパターンを図5に示す。
また、この評価用サンプルについて、θ/2法を用いてサンプル表面と水滴との接触角を測定する親水性試験を行った。すなわち、紫外線照射前及び照射後の焼結体の表面にそれぞれ水を滴下し、焼結体の表面から水滴の頂点までの高さhと、水滴の試験片に接している面の半径rと、を接触角計(協和界面科学株式会社製 DM501)を用いて測定し、θ=2tan−1(h/r)の関係式より、水との接触角θを求めた。なお、紫外線照射は、ブラックライト蛍光ランプ(東芝ライテック社製 FL10−BLB)を用い、照度1mW/cmで、紫外線を0分(すなわち照射せず)、30分、60分、120分、180分及び240分照射したサンプルを作製した。その結果、いずれの実施例も紫外線の照射によって水との接触角が大幅に減少したことから、この焼結体が親水性を有することが示された。一例として、実施例(No.9)の接触角の紫外線照射時間による変化を図6に示す。
実施例(No.11〜No.13):
本発明の実施例(No.11〜No.13)では、原料として有機金属塩溶液を用いた。この有機金属塩溶液を、ナノ粒子合成装置(FCM−MINI、ホソカワミクロン株式会社)のスプレーノズルに供給して火炎中に噴霧することで、実施例(No.11)ではNaTi(POに対応する組成の微粒子を、実施例(No.12)ではMg0.5Ti(POに対応する組成の微粒子を、実施例(No.13)ではCa0.5Ti(POに対応する組成の微粒子を、それぞれ作製した。このとき形成された微粒子の平均粒子径は30〜50nmであった。ここで、X線回折(XRD)法を用いて結晶相の種類を解析したところ、実施例(No.11)ではNaTi(POが生成したが、実施例(No.12、No.13)はともに非晶質であった。
次いで、実施例(No.11)の微粒子に対して、結晶性を高めるために750℃で30分間加熱した。また、実施例(No.12、No.13)に対して、結晶を生成させるためにそれぞれ800℃と850℃で30分加熱した。その結果、一例として図7の実施例(No.13)のX線回折(XRD)パターンが示すように、加熱後の微粒子にはナシコン型結晶が生成していることが確認された。
また、実施例(No.11〜No.13)で得られた微粒子を0.05g取り、ポリスチレン製の容器に入れ、3mlの濃度0.01mmol/Lのメチレンブルー水溶液を注入してから、照度1mW/cmの紫外線(東芝ライテック株式会社製 型番:FL10BLB)を60分間照射した。その結果、メチレンブルー水溶液の色が淡くなったことから、紫外線の照射によってメチレンブルーが分解されたことが明らかになった。
以上、本発明を例示の目的で詳細に説明したが、本実施例はあくまで例示の目的のみであって、本発明の思想及び範囲を逸脱することなく多くの改変を当業者により成し得ることが理解されよう。

Claims (15)

  1. 光触媒活性を有するナシコン型構造を有する結晶を含有し、
    前記ナシコン型構造が、一般式A (XO
    (式中、第一元素AはLi、Na、K、Mg、Ca、Sr及びBaからなる群から選択される1種以上とし、
    第二元素EはAl、Fe、Ti、Zr及びHfからなる群から選択される1種以上とし、
    第三元素XはSi及びPからなる群から選択される1種以上とし、
    係数mは0以上4以下とする)
    で表される光触媒。
  2. 前記第二元素として、Ti及びrから選ばれる1種以上を含む請求項記載の光触媒。
  3. 前記第三元素として、Pを含む請求項又は記載の光触媒。
  4. Zn、Ti、Zr、W及びPから選ばれる1種以上の成分を含む化合物結晶を更に含有する請求項1からのいずれか記載の光触媒。
  5. 前記化合物結晶が、TiO、WO、ZnO、TiP及びこれらの固溶体から選ばれる1種以上の結晶を含有する、請求項記載の光触媒。
  6. 前記光触媒に含まれる結晶の平均粒径が、10nm以上10μm以下の範囲内である請求項1からのいずれかに記載の光触媒。
  7. F成分、Cl成分、Br成分、S成分、N成分、及びC成分からなる群より選ばれる1種以上の非金属元素成分の含有量が、前記光触媒の全質量に対する質量比で20.0%以下である請求項1からのいずれか記載の光触媒。
  8. Ag、Au、Pd、Re及びPtからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属粒子が、前記光触媒の全質量に対する質量比で5.0%以下含まれている請求項1からのいずれか記載の光触媒。
  9. 前記光触媒の全質量に対する質量比で、
    希土類成分 0〜20%及び/又は
    遷移金属成分 0〜10%
    が含まれている請求項1からのいずれか記載の光触媒。
  10. 紫外領域の光によって触媒活性が発現される請求項1からのいずれか記載の光触媒。
  11. 請求項1から10のいずれかに記載の光触媒と、溶媒と、を含有するスラリー状混合物。
  12. 前記光触媒の含有量が、混合物全体の2質量%以上である請求項11に記載のスラリー状混合物。
  13. 請求項1から10のいずれか記載の光触媒を含有する成形部材。
  14. 請求項1から10のいずれかに記載の光触媒を含有する塗料。
  15. 請求項14に記載の塗料を部材に塗布することで作られる塗膜形成部材。
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