以下、本発明による最良の形態について、添付の図を用いながら詳細に説明する。なお、以下の各図において、共通な機能を有する要素には同一符号を付して示し、一度説明したものについては、その重複する説明を省略する。
先ず、添付の図1は、本発明の一実施の形態になる液晶表示装置であって、特に、直視タイプの薄型映像表示装置における液晶パネル170と、当該液晶パネル170の背面から光(バックライト)を投射する原理を説明する。即ち、映像表示装置の表示画面を構成する大型の液晶パネル170の背面側には、当該パネルに対して斜め方向から背面光(バックライト)を投写するための、以下に詳細に説明する背面光投射装置(ユニット)100が、離隔されて配置されており、これにより、当該背面光投射装置(ユニット)100、更には、その駆動回路からの発熱(即ち、発熱源)が、直接、液晶パネル170へ熱を伝達することを防止する。なお、ここでは、薄型映像表示装置の外形を構成する筐体200の内側背面に、平面反射板5が取り付けた例が示されている。
続いて、添付の図2は、液晶表示装置の背面側から斜めに拡大して投写する傾斜投写光学系を構成する上記背面光投射装置(ユニット)100を含めて、液晶表示装置を模式的に示している。この背面光投射装置(ユニット)100は、比較的短距離で光源からの光を液晶パネル170に投射可能に構成された短距離傾斜投写光学系であり、その構成の詳細については後述する。この図2においては、説明を分かり易くするために、各構成要素は実際の寸法を無視して模式的に示されている。また、以下の実施例では、光変調部として、透過型の液晶パネルを用いた例について説明する。
図2において、例えば、テレビジョン放送の受信により得られた映像信号を基に、カラー表示を行う画像表示用液晶パネル170を、その背後から照明(バックライトを照射)する背面光投射装置(ユニット)100は、液晶パネルとは反対の側から、以下の構成要件が、順次配置されて構成されている。即ち、略白色光を出射する光源110と、当該光源110から射出される偏りのない光を、所望の偏光方向に揃え、もって、所定の偏光光に変換するための偏光変換素子130と、当該偏光変換素子130からの偏光光(白色光)を光変調して調光する液晶パネル150(光変調部)と、当該液晶パネル150で調光された光束を画像表示用液晶パネル170に向けて、超短距離から、斜め方向に拡大して投写する拡大投写投写装置10と、そして、当該投写装置10からの光束を上記画像表示用液晶パネル170の入射面にほぼ垂直に入射するように変換するフレネルレンズシート(光方向変換部)160とを含んで構成されている。なお、拡大投写装置10は、自由曲面ミラーや自由曲面レンズを含み、その詳細は後にも述べるが、ここでは、概念的にレンズとして表示している。尚、本実施形態に係る背面光投射装置(ユニット)100は、液晶パネル170に、この液晶パネル170の表示面積よりも約2〜15%大きい拡大光学像を投射するように構成されている。換言すれば、かかる背面光投射装置(ユニット)100は、約2〜15%オーバースキャンして拡大光学像を液晶パネル170に投射するものである。これにより、背面光投射装置(ユニット)100または平面反射板5等の各種光学部品の取り付け誤差による影響(例えば、液晶パネル170の一部に拡大光学像が投射されないことによる「画像欠け」)を低減もしくは防止することができる。
また、画像表示用液晶パネル170は、背面光投射装置(ユニット)100から照射された光を、パネル駆動回路192を介して、例えば、上述した映像信号191に基づいて光変調(光強度変調)し、もって、表示画像の画像光(カラー)を形成して出射する。なお、ここでは、その一例として、横縦比16:9、画素数1920x1080、画面サイズ(画面表示有効領域の対角寸法L1)が27〜60インチ程度の大画面直視型液晶TVに用いられるアクティブマトリックス駆動のTFT(Thin Film Transistor)型液晶パネルが採用されている。一般に、TFT型液晶パネルのコントラスト比は1000:1程度である。なお、画像表示用液晶パネル170は、入射側および出射側に偏光板を有しているが、ここでは図示を省略している。
また、光源110は、例えば、略白色光を出射する高圧水銀ランプなどの高輝度ランプ101と、当該ランプ101を背後から覆い、ランプからの白色光を反射して平行光に変換するための回転放物面形状のリフレクタ102とを含んで構成されている。本実施の形態では、光源110から射出される光は、後述するように、画像表示用液晶パネル170と較べて十分に小さな照明用の液晶パネル150(即ち、光変調してコントラストを高める調光を行う)に照射されることから、高圧水銀ランプなどの放電ランプを用いることができる。
そして、ランプ101から射出された光は、例えば、回転放物面形状の反射面を有するリフレクタ102によって反射されて光軸115に略平行な光となり、即ち、光源110から略平行の光束が射出される。この光源110から射出された光は、その後、偏光変換素子130に入射する。
偏光変換素子130は、上記光源110から射出された偏りのない光の偏光面を、所定の偏光方向に揃え、所定の偏光光に変換する。そして、この偏光変換素子130で所定偏光光とされた光は、次いで、液晶パネル150に入射することとなる。
この液晶パネル150は、パネル駆動回路195を介して入力した上記映像信号191に基づいて、光変調(光強度変調)を行うものであり、当該光変調(光強度変調)によって画素毎に濃淡のある光学像(以下、「調光像」という)を形成する。なお、ここでは、当該パネルの価格を低減するため、例えば、横縦比16:9、WVGAの画素数852x480(更にコストを優先する場合、WQVGAの画素数400x240を用いてもよい)、画面サイズ(画面表示有効領域の対角寸法L2)が0.4〜1.3インチ程度の、所謂、シングルマトリックス駆動のTN型液晶パネル(透過型液晶パネル)を用いる。
なお、このような液晶パネルとしては、上記に代えて、例えば、背面投射型表示装置に用いられている液晶パネルを適用することもできる。通常、背面投射型画像表示装置に用いられている液晶パネルには、フルカラー表示のために赤、緑、青色の映像に対応するRGB信号が供給される。しかしながら、本実施の形態では、液晶パネル150は、上述したように光変調(光強度変調)を行うためのものであり、フルカラー表示を考慮する必要は無く、即ち、画素毎に光強度を変調すればよいため、RGB信号ではなく輝度信号(Y信号)が供給される。より具体的には、本実施形態では、画像表示用液晶パネル170には映像信号としてパネル駆動回路192からRGB信号が供給されており、一方、照明用の液晶パネル150には映像信号としてパネル駆動回路195から輝度信号が供給されることとなる。また、この輝度信号としては、ここでは図示しないY/C分離回路で分離し、かつ、図示しない映像処理回路で所定の信号処理(例えば、コントラスト調整、ガンマ補正等)が為されたY信号を用いてもよい。また、画像表示用液晶パネル170に供給されるRGB信号をマトリクス演算して得られるY信号を用いてもよい。勿論、照明用の液晶パネル150に対して、映像信号であるRGB信号のいずれかを、周期的に、順次、供給するようにしてもよい。
一般に、TN型液晶パネルのコントラスト比は、700:1程度であり、TFT型のそれより低い。しかし、本発明になる上記の構成によれば、コントラスト比は、液晶パネル150のコントラスト比と、画像表示用液晶パネル170のコントラスト比との積で決定される。そのことからも、価格が比較的安い(コントラスト比の低い)パネルを用いながらも、確実に、そのコントラスト比を格段に向上させることが可能となる。また、更にパネル価格を下げる目的で、画像表示用液晶パネル170の解像度に比べて解像度の低いWVGAのパネルを用いることも可能である。なお、この場合、液晶パネル150の1の画素が画像表示用液晶パネル170の複数の画素に対応することとなる。しかしながら、このように液晶パネル150の画素数が少なくても、その対応画素領域のサイズは十分に小さいことから、高精細な調光としては、十分に許容することが可能である。なお、液晶パネル150は、入射側及び出射側に偏光板を有しているが、ここでは図示を省略している。
また、上述したパネル駆動回路195は、スケーリング機能(図示せず)を有しており、映像信号191に対して、液晶パネル150の解像度に対応してスケーリングなどの画像処理を行う。その後、周知の平均輝度情報、黒レベル領域検出、白レベル領域検出などの画像情報分析機能(図示せず)を用い、これらの分析情報により、液晶パネル150を駆動し、光変調された調光像(光学像)を形成させる。また、パネル駆動回路195から画像表示用液晶パネル170に供給されるRGB信号に対応する輝度信号を(必要に応じ、液晶パネル150の解像度に対応してスケーリング処理をして)液晶パネル150に供給してもよい。
そして、拡大投写投写装置10は、上記液晶パネル150で形成された調光像を、上記画像表示用液晶パネル170に向けて、超短距離から、斜め方向に拡大して投写する。なお、ここで、通常の投写装置を用いた場合、奥行き寸法が厚くなりってしまい、装置の大型化につながってしまうことから、本発明では、その詳細は後述するが、当該奥行き寸法を極力薄くするために、特に、斜め投写が可能な投写装置を用いている。
ところで、上記の投写装置10は、液晶パネル150の調光像を画像表示用液晶パネル170に写像することから、次の条件を満足させる必要がある。
液晶パネル150は、最も小さいもので、現在0.48インチ(対角寸法)程度であり、0.4インチが限度と考えられている。そこで、液晶パネル150の画面サイズをL2=0.4インチとし、画像表示用液晶パネル170の画面サイズをL1=60インチとすればL1/L2=150となる。L1/L2が150を越えると画像表示用液晶パネル170に照射される明るさが暗くなるという問題が生じる。従って、L1/L2を150以下とするのが望ましい。なお、下限は、液晶パネル150の画面サイズによるが、画像表示用液晶パネル170の画面サイズに近づけると、コストダウンにつながらないことから、少なくともL1/L2=10以上とするのが望ましい。一般に投写型画像表示装置に用いられる上限に近い画面サイズL2=1.3インチのパネルを液晶パネル150とし、画像表示用液晶パネル170の画面サイズをL1=27インチとすればL1/L2=20程度となり、上記を満足することができる。
尚、本実施形態に係る背面光投射装置(ユニット)100において、液晶パネル150は必ずしも用いる必要は無く、液晶パネル150に代えて、例えば図20に示されるように液晶パネル170の表示面の形状に相似する開口形状を持つ開口絞り210を設けてもよい。例えば、液晶パネル170の表示面のアスペクト比が16:9である場合には開口絞り210の開口形状のアスペクト比を16:9とし、液晶パネル170の表示面のアスペクト比が4:3である場合には開口絞り210の開口形状のアスペクト比を4:3とする。この開口絞り210により光源からの光を整形し、適切な形状の光学像を液晶パネル170に投射するようにしている。本実施例の場合、図20に示されるように、図2のパネル駆動回路195は不要となる。
次に、上記のフレネルレンズシート160は、投写装置10からの斜め光が画像表示用液晶パネル170の入射面に対して略垂直に入射するように変換するための、所謂、光方向変換部である。このフレネルレンズシート160を構成する基材161の一方の面(ここでは、画像表示用液晶パネル170側とは逆側の面)には、入射角が所定値以内の光を屈折して出射させる屈折型フレネルレンズ162と、入射角が所定値以上の光を全反射して出射させる全反射型フレネルレンズ167とが、同心円状に複数形成されている。そして、屈折型フレネルレンズ162および全反射型フレネルレンズ167により、投写装置10からの斜め光を、その入射角度に応じて屈折又は全反射することにより、画像表示用液晶パネル170の入射面に略垂直に入射するようにする(なお、更に詳細は後述する)。
以上述べたように、上述した実施の形態になる液晶表示装置、即ち、直視タイプの薄型映像表示装置によれば、大型の液晶パネル170の背面側において、当該パネルから離隔されて配置された背面光投射装置(ユニット)100から、当該パネルに対して斜め方向から高輝度ランプ101の光を拡大して背面光(バックライト)として投写することから、当該背面光投射装置(ユニット)100やその駆動回路を含めた発熱源から液晶パネル170への熱伝達を抑制する。このことから、液晶パネル170やその一部に取り付けた偏光板が、当該発熱によって劣化されることを防止することができる。
また、背面光(バックライト)の斜め拡大投写を可能にする背面光投射装置(ユニット)100では、特に、サイズの小さな液晶パネル150を用い、液晶パネル150の一つの画素を画像表示用液晶パネル170の複数画素に対応させ、映像信号に基づいて光変調を行って調光像を形成する。そして、当該調光像を投写装置10で拡大して画像表示用液晶パネル170に投写する。これによれば、画像表示装置としてのコントラスト比は、液晶パネル150のコントラスト比と画像表示用液晶パネル170のコントラスト比との積となるため、コントラスト比を格段に向上させることが可能となる。
また、画像表示用液晶パネル170に較べて十分小さな液晶パネル150を用いることによれば、上記に加えて、光源110のサイズも小さくすることができる。従って、画像表示用液晶パネル170と同サイズの高価な液晶パネル、更には、LEDを複数個並列配置して構成した光源(バックライト)を用いる従来技術に較べ、上述した背面光投射装置(ユニット)100やフレネルレンズシート160が追加的に必要となるが、しかしながら、上述したように、その投写装置として低解像度の液晶パネルが使用できるので、背面光投射装置(ユニット)100のコストを、従来の、2/3〜1/2程度に低減することができる。そして、更なる装置のコスト低減を図るためには、上述した光変調(光強度変調)を行うための構成要件である液晶パネル150を削除することも可能であろう。さらに、液晶パネル150や光源110それぞれを交換可能な方式とすることで、サービス性も大幅に向上することも可能であろう。
また、上記では、光変調(光強度変調)用の液晶パネル150の1画素に対して、画像表示用液晶パネル170の複数の画素を対応させるようにした構成について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、光変調用液晶パネルの1画素に対してカラー画像表示用液晶パネルの1画素(1画素は一組のR画素、G画素、B画素を含む)を対応させるように構成しても良いことは言うまでもない。また、上記の光源101として、高圧水銀ランプを用いた例について説明したが、本発明はこれに限定されず、それに代えて、白色光のLEDやレーザ発光素子を用いてもよい。なお、その際、1個のLEDやレーザでは光量が不足する場合には、複数のLEDやレーザを配列したものを用いることも可能であろう。
加えて、上記では、光変調(光強度変調)用の液晶パネル150として透過型の液晶パネルを用いた例について説明したが、これに代えて、例えば、反射型の光変調素子である、反射型液晶パネル(LCOS:Liquid Crystal on Silicon)や微小ミラーなどを用いてもよい。
次に、添付の図3〜9を参照しながら、上記液晶表示装置において採用される、特に、装置の奥行き寸法を極力低減するため、その一部に配置した自由曲面ミラーの反射を利用して液晶表示装置の背面側の短距離から斜めに拡大して投写する短距離傾斜投写光学系について説明する。
<短距離傾斜投写光学系>
まず、添付の図3は、上記投写光学系の基本的な構成を示す断面図であり、当該光学系の構成をXYZ直交座標系におけるYZ断面で示している。ここで、XYZ直交座標系の原点は、光変調(光強度変調)用の液晶パネル150の表示画面の中央とし、Z軸は画像表示用液晶パネル170の法線8と平行であるものとする。Y軸は画像表示用液晶パネル170の表示画面の短辺と平行であり、画像表示用液晶パネル170の縦(上下)方向と等しいものとする。X軸は、画像表示用液晶パネル170の表示画面の長辺と平行であり、画像表示用液晶パネル170の横(左右)方向と等しいものとする。また、添付の図4は投写装置を構成する投写レンズの斜視図であり、図4は投写レンズにおける光路の折り曲げを省略して示した投写レンズの断面図である。
まず、図3に示すように、拡大投写装置10は、液晶パネル150からフレネルレンズシート160、画像表示用液晶パネル170に向かう光路上において、液晶パネル150側から順に配置された、投写レンズ2と、第1反射ミラーとしての自由曲面ミラー4と、第2反射ミラーとしての平面反射ミラー5とを含んで構成されている。そして、上記の構成によれば、光変調(光強度変調)用液晶パネル150の表示画面上の調光像は、投写レンズ2により画像表示用液晶パネル170に向けて投写される。このとき、直線的に投写すると所定の距離が必要となり、画像表示装置の奥行き寸法が大きく、つまり、画像表示装置の奥行きが厚くなる。そこで、投写レンズ2から画像表示用液晶パネル170に向かう光路(例えば、光線21、22、23で示される光路)を、自由曲面ミラー4と平面反射ミラー5とで折り返し、画像表示装置の奥行きを極力低減するようにしている。さらに、液晶パネル150の画面の中央から出て画像表示用液晶パネル170の画面中央に向かう光線21(以下、「画面中央光線」と言う)を、画像表示用液晶パネル170の入射面に対して非垂直(一般に、このような投写は「斜め投写」と呼ばれる)として、画像表示装置の奥行きを低減している。
また、投写レンズ2は、上記の図3、更には、添付の図4からも明らかなように、回転対称な面形状を有する複数の屈折レンズから構成される前群12と、少なくとも一方の面が回転非対称の自由曲面の形状を有するレンズ(以下、「自由曲面レンズ」と称する)を含む後群13とから構成されている。
なお、上記の図3において、図示された投写レンズ2からは、液晶パネル150の位置が画像表示用液晶パネル170の法線8の方向に延長しており、そのため、装置の奥行きが拡大する必要があるように思われるが、しかしながら、例えば、添付の図4に示すように、X軸(即ち、画像表示用液晶パネルの長辺)に平行に配置された前群12の途中に光路折り曲げミラー14を配置し、前群12の光軸9(即ち、投写レンズの光軸)をZ軸方向(即ち、画像表示用液晶パネルの法線8に平行な方向)に折り曲げることにより、奥行き寸法の増大を防止することが出来る。勿論、本発明はこれに限定されるものではなく、自由曲面ミラー4と投写レンズ2の後群13との間、あるいは、投写レンズ2の前群12と後群13の間に光路を折り曲げる光路折り曲げミラーを配置してもよい。
なお、上述した実施の形態では、上記図3に示すように、液晶パネル150は、その表示画面の中央が投写レンズ2の光軸9上に位置するように配置されている。従って、液晶パネル150の表示画面の中央から出て投写レンズ2の入射瞳の中央を通って画像表示用液晶パネル170の画面中央に向かう画面中央光線21は、投写レンズ2の光軸に沿って進む。この画面中央光線21は、自由曲面ミラー4の反射面上の点P2で反射された後、平面反射ミラー5上の点P5で反射されて、画像表示用液晶パネル170の画面中央の点P8に画像表示用液晶パネルの入射面の法線8に対して所定の角度(θs)で、すなわち、斜めに入射される。
なお、このことは、投写レンズ2の光軸9に沿って通過した光線が画像表示用液晶パネル170に対して斜めに入射していることであり、実質的に投写レンズ2の光軸が画像表示用液晶パネル170に対して斜めに設けられていることを意味しており、このような方法で画像表示用液晶パネルに斜め入射させることによれば、投写した長方形の形状が台形になる、所謂、台形歪と共に、その他にも、光軸に対して回転対称でないことにより、種々の収差が生じる。そこで、本実施の形態では、これ等の歪や収差を、拡大投写装置10を構成する投写レンズ2の後群13と自由曲面ミラー4の反射面とで補正する。
上記の図3に示す断面内において、液晶パネル150の画面下端から投写レンズ2の入射瞳の中央を通って射出され、これに対応する画像表示用液晶パネル170の画面上端の点P9に入射する光線を光線22とする。また、液晶パネル150の画面上端から投写レンズ2の入射瞳の中央を通って射出され、これに対応する画像表示用液晶パネル170の画面下端の点P7に入射する光線を光線23とする。この図3を見ると、点P3から点P6を経由して点P9に到る光路長は、点P1から点P4を経由して点P7に到る光路長よりも長くなっている。これは、投写レンズ2から見て、画像表示用液晶パネル170の像点P9が像点P7よりも遠くにあることを意味している。そこで、画像表示用液晶パネル170の像点P9に対応する物点(液晶パネル150の表示画面上の点)がより投写レンズ2に近い点に、また、像点P7に対応する物点がより投写レンズ2から遠い点にあれば、像面の傾きを補正できる。そのためには、液晶パネル150の表示画面の中央における法線ベクトルを、投写レンズ2の光軸に対し傾けるようにする。具体的には、上記法線ベクトルを、YZ平面内において、画像表示用液晶パネル170の位置する方へ向けるように傾ければよい。光軸に対して傾いた像平面を得るのに物平面を傾ける方法は知られている。しかしながら、実用的な大きさの画角では、物平面の傾きによる像面は光軸に対して非対称な変形を生じ、回転対称な投写レンズでは補正が困難である。そこで、本実施形態では、回転対称でない、すなわち回転非対称の自由曲面を用い、非対称な像面の変形に対応している。このため、物平面を傾けることで低次の像面の歪を大きく低減でき、自由曲面による収差補正を補助する上で効果的である。尚、図3では、平面反射ミラー5は鉛直方向に対して傾斜して設けられているが、図1に示すように垂直に設けてもよい。
次に、上述した拡大投写装置10の各光学要素の作用について説明する。
投写レンズ2は、その前群12が液晶パネル150の表示画面上の調光像を画像表示用液晶パネル170に投写するための主レンズであり、回転対称な光学系における基本的な収差を補正する。投写レンズ2の後群13は、回転非対称の自由曲面レンズを含んでいる。ここでは、自由曲面レンズは、上記図3、図4、そして、図5から明らかなように、その光出射方向に対して凹面を向くように湾曲されている。そして、自由曲面レンズの、画像表示用液晶パネル170の下端に向かう光線23が通過する部分の曲率を、画像表示用液晶パネル170の上端に向かう光線22が通過する部分の曲率よりも大きくしている。
自由曲面ミラー4は、回転非対称な自由曲面形状の反射面を有している。ここでは、自由曲面ミラー4は、その一部が光の反射方向に対して凸を向くように湾曲された、回転非対称の凸面ミラーとしている。具体的には、自由曲面ミラー4の、画像表示用液晶パネル170の下方に向かう光を反射する部分(P1)の曲率を、画像表示用液晶パネル170の上方に向かう光を反射する部分(P3)の曲率よりも大きくしている。換言すれば、自由曲面ミラー4のYZ断面(画像表示用液晶パネル170の画面縦方向の断面)において、画面中央光線21が自由曲面ミラー4で反射される位置P2に対して、P1−P2間の寸法とP3−P2間の寸法とを異ならせ、次式が成立するようにしている。
また、自由曲面ミラー4の、画像表示用液晶パネル170の下方に向かう光を反射する部分(P1)が該光の反射方向に凸の形状を為し、画像表示用液晶パネル170の上方に向かう光を反射する部分(P3)が光の反射方向に凹の形状をなすようにしてもよい。
上記の構成によれば、上記自由曲面レンズと自由曲面ミラーの作用により、主として、斜め入射によって生じる収差の補正が行われる。すなわち、本実施の形態では、自由曲面ミラー4が主として台形歪を補正し、投写レンズ2の後群13が、主として像面の歪みなどの非対称な収差の補正を行なう。
このように、本実施の形態は、投写レンズ2が回転非対称の自由曲面レンズを少なくとも一枚含み、自由曲面ミラー4が回転非対称の自由曲面形状の反射ミラーをなしている。これによって、斜め投写によって生じる台形歪と収差の両方を補正可能としている。
次に、以上述べた投写装置の光学系について、図6、図7と共に、以下の表1〜表4を用いて、その具体的な数値を例示しながら説明する。
まず、図6と図7は、数値例に基づく本実施の形態に係わる投写装置の光学系の光線図を示しており、前述したXYZ直交座標において、図6はYZ断面を、図7はXZ断面での構成を示している。投写レンズ2は、上記の図4でも述べたように、前群12の途中に光路折り曲げミラー14が配置されているが、この図6では、この光路折り曲げミラー14の図示を省略しており、光学系をZ軸方向に展開して示しており、このことは図5でも同様である。即ち、光路折り曲げミラーは、その設置の位置や角度において任意性があり、また、各光学要素の機能に影響を及ぼすものではない。従って、以下の説明では、光路折り曲げミラーを省略して説明することにする。
上記図5の下側に示した液晶パネル150から射出した光は、複数のレンズを含む投写レンズ2のうち、まず、回転対称形状の面のみを有するレンズのみで構成される前群12を通過する。そして、回転非対称の自由曲面レンズを含む後群13を通り、自由曲面ミラー4の反射面で反射される。その反射光は、平面反射ミラー5で反射された後、画像表示用液晶パネル170に入射される。
ここで、投写レンズ2の前群12は、全て回転対称な形状の屈折面を持つ複数のレンズで構成されており、各屈折面のうち4つは回転対称な非球面であり、他は球面である。ここに用いられた回転対称な非球面は、各面ごとのローカルな円筒座標系を用いて、次の数式で表される。
ここで、rは光軸からの距離であり、Zはサグ量を表している。また、cは頂点での曲率、kは円錐定数、AからJはrのべき乗の項の係数である。
投写レンズ2の後群13にある自由曲面レンズは、各面の面頂点を原点とするローカルな直交座標系(x、y、z)を用い、X、Yの多項式を含む次の式で表わされる。
ここで、ZはX、Y軸に垂直な方向で自由曲面の形状のサグ量を表わしており、cは頂点での曲率、rはX、Y軸の平面内での原点からの距離、kは円錐定数、C(m、n)は多項式の係数である。
以下の表1は、本実施形態に係る光学系の数値データを示している。
表1において、S0〜S23は、図5に示された符号S0〜S23にそれぞれ対応している。ここで、S0は液晶パネル150の表示面、すなわち物面を示しており、S23は自由曲面ミラー4の反射面を示している。またS24は、図5では示されていないが、画像表示用液晶パネル170の入射面、すなわち像面を示している。なお、上記の図5において、上の図は本実施の形態に係る投写レンズ2および自由曲面ミラー4のYZ断面図を、下の図は、その光学系のXZ断面図をそれぞれ表している。
また、この表1において、Rdは各面の曲率半径であり、図5の中で面の左側に曲率の中心がある場合は正の値で、逆の場合は負の値で表わしている。また表1においてTHは面間距離であり、そのレンズ面の頂点から次のレンズ面の頂点までの距離を示す。あるレンズ面に対して、次のレンズ面が図5の中で左側に位置するときには面間距離は正の値、右側に位置する場合は負の値で表している。さらに、表1においてS5、S6、S17、S18は回転対称な非球面であり、表1では面の番号の横に*を付けて分かり易く示している。
これら4つ面の非球面の係数を以下の表2に示している。
また、上記の表1において、S19からS22は、投写レンズ2の後群13に含まれる自由曲面レンズの各屈折面であり、S23は、上述したように自由曲面ミラー4の反射面であって、面の番号の横に#を付けて示している。
これら5つの自由曲面の形状を表す係数の値を表3に示す。
本実施の形態では、映像表示素子11の表示画面である物面を、投写レンズ2の光軸に対して−1.163度傾けている。傾けの方向は、図6の断面内で物面の法線が反時計回りに回転する方向を正の値で表わすことにする。従って、本実施例では物面を図6の断面内で、投写レンズ2の光軸に垂直な位置から時計回り方向に1.163度傾けていることになる。
S23の自由曲面ミラー4は、そのローカル座標の原点を投写レンズ2の光軸上に置いている。そして、自由曲面ミラー4のローカル座標の原点での法線、すなわちZ軸を、投写レンズ2の光軸と平行な位置から29度傾けて配置している。傾き方向は、前記物面と同様に、図6の断面内で反時計回りに回転する方向を正とし、従って反時計回りに傾けていることになる。これによって、液晶パネル150の画面中央から出てほぼ投写レンズ2の光軸に沿って進んできた画面中央光線は、S23で反射後、投写レンズ2の光軸に対して前記傾き角度の2倍の58度だけ傾いた方向に進む。ここで、S23の座標原点を通り、投写レンズ2の光軸対するS23の傾き角度の2倍だけ傾いた方向を、反射後の新たな光軸とし、以後の面はこの光軸上に配置されるものとする。表1のS23に示した面間隔の値−400は、次のS24が、S23の右側にあり前記反射後の光軸に沿って400mmの距離の点にローカル座標の原点を配置されていることを示している。以下の面も同じ規則により配置されている。
本実施例における、各面のローカル座標系の傾け又は偏心の様子を表4に示す。
この表4において、面番号の右側に傾き角度、偏心の値を示しており、ADEは図6の断面と平行な面内での傾きの大きさであり、その表示規則は上に示した通りである。また、YDEは偏心の大きさであり、偏心は図6の断面と平行な面内でかつ光軸に垂直な方向で設定され、図6の断面にける下方への偏心を正とする。尚、本実施例においては、YDEを0(即ち、偏心なし)としている。
本発明では、全ての光学要素の傾きや偏心は、図示した断面に平行な断面内での方向で設定される。
上記の表1〜表3から、本実施の形態では、曲率cとコーニック係数kが0となっていることがわかる。斜め入射による台形歪は、斜め入射の方向に極端に大きく発生し、これと垂直な方向に歪量は小さい。従って、斜め入射の方向とこれに垂直な方向とでは、大幅に異なる機能が必要であり、回転対称で全方向に機能する上記曲率cやコーニック係数kを利用しないことにより、非対称な収差を良好に補正することができる。
なお、上記表1〜4に示した数値は、液晶パネル150の画面上における16×9の範囲の光変調された光学像(調光像)を画像表示用液晶パネル170の画面上における1452.8×817.2の大きさに投写する場合の一例である。
このときの図形歪を、添付の図8に示す。この図7の縦方向は、上記図6の上下方向、即ち、Y軸の方向である。また、その横方向は画像表示用液晶パネル170上でY軸と直交する方向であり、図の長方形の中央が画面の中央と一致している。図は、画面の縦方向を4分割、横方向を8分割した直線の曲がりの状態を表示し、もって、図形歪の様子を示している。
本数値実施例により得られるスポットダイアグラムを、添付の図9に示す。この図9では、液晶パネル150の表示画面上、X,Y座標の値で、(8,4.5)、(0,4.5)、(4.8,2.7)、(8,0)、(0,0)、(4.8、−2.7)、(8、−4.5)、(0、−4.5)の8点から射出した光束のスポットダイアグラムを、その上から順に示しており、その単位はmmである。また、各スポットダイアグラムの横方向は、画像表示用液晶パネル170上でのX方向であり、縦方向は画像表示用液晶パネル170上でのY方向である。このように、両者ともに、良好な性能を維持していることが分かる。
以上、拡大投写装置の一実施例について詳細に述べた。なお、上記の例では、投写レンズ2から出射された光線は自由曲面ミラー4で反射され、さらに平面反射ミラー5で折り返されて画像表示用液晶パネル170に向かうように構成されているが、しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、投写レンズの配置位置によっては、上記した折り返し用の平面反射ミラーを省略してもよいことは言うまでもない。
<フレネルレンズシート>
次に、光方向変換部としてのフレネルレンズシート160の一実施例について説明する。
図10は、フレネルレンズシートの模式構成図であり、特に、図10(a)図はフレネルレンズシートを投写装置側から見たときの斜視構成図を、図10(b)図はG−G線に沿った断面構成図をそれぞれ示している。
これらの図10に示すように、フレネルレンズシート160は、画像表示用液晶パネル170の画面略中央側に対応して位置する屈折領域160Dと、画像表示用液晶パネル170の画面周縁側に対応して位置し、屈折領域160Dを取り囲むように配置された全反射領域160Eとで構成されている。屈折領域160Dには、基材161の画像表示用液晶パネル170側とは逆側の面上に、複数の屈折型フレネルレンズ162が同心円状に複数形成されている。屈折型フレネルレンズ162は、投写装置10から投写された入射角が所定値以内の光線L61を屈折し、もって、画像表示用液晶パネル170へ向かって垂直に出射させる機能を有する。また、全反射領域160Eには、基材161の画像表示用液晶パネル170側とは逆側の面上に、複数の全反射型フレネルレンズ167が同心円状に複数形成されており、この全反射型フレネルレンズ167は、投写装置10から投写された入射角が所定値以上の光線L66を全反射し、もって、画像表示用液晶パネル170へ向かって垂直に出射させる機能を有する。
周知のように、フレネルレンズシートを屈折型フレネルレンズのみで構成すると、フレネルレンズシートに入射する入射角(法線とのなす角度)が大きくなると共に、フレネルレンズの入射面での反射が生じ易くなり、反射ロスが大幅に増加し、そのため、画面の周縁部が暗くなる。そこで、本実施例では、例えば、WO2004/049059号公報に記載された技術を適用し、即ち、画像表示用液晶パネル170の周縁部で、投写装置10からの入射角が所定値以上となる領域に、全反射型プリズムを配置する。
まず、屈折領域160Dにおける屈折型フレネルレンズ162の動作について、以下に説明する。上記フレネルレンズシート160の屈折領域160Dにおける任意の断面での各屈折型フレネルレンズのプリズム面163を繋ぎ合わせると、一つの曲線(すなわち、包絡線)が得られる。この得られた包絡線の全ての断面における集合は、一つの仮想的な面を形成する。以下、この仮想面を「オリジナル面」と言う。
屈折領域160Dを構成する屈折型フレネルレンズに付随するオリジナル面は、投写型画像表示装置では、一般に球面とされるが、しかしながら、本実施形態では、例えば、特開2006−154719号公報で開示されたフレネルレンズシートの技術を適用し、即ち、投写装置10から画像表示液晶パネル170に入射する光線の入射角に応じた非球面形状とする。
このとき、各プリズム面のフレネル角は、屈折領域160Dにおいて、下部よりも上部の方が大きく設定される。これにより、フレネルレンズシート160の屈折領域160Dの入射面に入射された光線は、画像表示用液晶パネル170の略全面に亘って、画像表示用液晶パネル170の入射面にほぼ垂直に入射するようにその角度が変換される。
次に、上記した屈折領域160Dに形成される屈折型フレネルレンズ162において、同心円状に形成された複数のプリズム面163の面形状(所謂、フレネルレンズのオリジナル面)を設定する方法について、図11の模式図を参照して詳細に説明する。なお、上述したように、屈折領域160Dを構成する屈折型フレネルレンズのプリズム面は、ある一点(回転軸)を中心とする同心円状に形成されている。そして、各屈折型フレネルレンズのプリズム面のフレネル角(すなわち、プリズム面とフレネルレンズシート160の主平面とのなす角度)を定めるためのオリジナル面は、非球面形状である。ここでオリジナル面とは、上述したように、各プリズム面のフレネル角を定めるためのものであり、フレネルレンズシート160の屈折領域160D全体を一つのレンズとしたときの、当該レンズ面を指す。すなわち、屈折型フレネルレンズのプリズム面のフレネル角を設定する場合には、まずフレネルレンズシート160の屈折領域160D全体がある一つのレンズ特性をもつものと想定し、そのレンズの面形状をオリジナル面として設定する。そして、そのオリジナル面の屈折領域160D各点に対応する形状(例えば、当該各点におけるオリジナル面の接線)を屈折領域160Dの面上に展開する。これにより、屈折領域160Dの各点におけるプリズム面のフレネル角が設定される。従って、フレネルレンズシートの屈折領域160D全体における各プリズム面を、そのフレネル角に応じて繋ぎ合わせた曲線、すなわちフレネルレンズシートの屈折領域160D全体における全プリズム面の集合を含む包絡線が、上記オリジナル面を表している。つまり、屈折領域160Dの各点のプリズム面における光の屈折方向は、その各プリズムに対応する上記オリジナル面の形状によって定まる。なお、上記回転軸は、フレネルレンズシート160の主平面(図11のXY面)と直交するものとする(図のZ軸を含む面)。また、この回転軸は、フレネルレンズシート160に入射する光線25と、フレネルレンズシート160を左右に等しく垂直に分割する面165(YZ面に平行な面)とが交わる点P15とを含む。すなわち、回転軸はフレネルレンズシート160の主平面に垂直な(画像表示用液晶パネル170の法線8と平行な)軸、すなわち、図10の軸166となる。
但し、上記において、入射する光線25は画像表示用液晶パネル170上の位置によってその入射角度(入射面の法線に対する角度)が変化することから、ここでは、上記によって求められる軸166も複数個が存在することとなる。なお、これら複数の軸の中から、そのほぼ中央にある軸を屈折型フレネルレンズの回転軸(即ち、屈折型フレネルレンズを構成する同心円状プリズムの中心位置)とする。
続いて、上記各プリズム面のフレネル角の形状(角度)を次のように求める。
まず、画像表示用液晶パネル170への入射光線を屈折領域160Dのプリズム面で屈折させながら、上記法線方向(出射角が0度)に出射させるためのプリズムの角度を、屈折領域160D各点のそれぞれについてスネルの法則により求める。次に、当該求めたプリズム面を連続させて、上記屈折型フレネルレンズのオリジナル面(非球面)を形成する。
なお、この求められるオリジナル面は、以下の非球面式により近似される。
ここで、ZはZ軸に平行な面のサグ量、rは回転軸からの距離、cは頂点での曲率、kはコーニック定数(円錐定数)、AからFはrのべき乗の項の係数(非球面係数)である。
このとき、更に、近似した非球面係数と実際の光線出射角との比較を行い、出射角が略0度になるように、回転軸の位置や非球面係数に、適宜、必要な修正及び/又は変更を加える。
このように、上記で求められる要素、即ち、屈折型フレネルレンズを構成する同心円状のプリズム部の回転中心となる回転軸の位置や、その各々のプリズム面の集合で形成されるオリジナル面の非球面係数によって、上記フレネルレンズシート160の屈折領域160D部分が構成される。
上記の過程を経て構成されたフレネルレンズシート160の模式断面図を、添付の図12に示す。この図12は、フレネルレンズシート160の断面であって、当該フレネルレンズシート160の法線と平行でかつ上記回転軸を含む面による断面を示している。
この図12において、Z=f(r)はフレネルレンズシート160の屈折領域160Dにおける屈折型フレネルレンズに付随する非球面形状のオリジナル面164を表す多項式であり、上記数5で表されるものである。ここで、rは上記数5のrに対応するもので、回転軸からの距離を表す。距離r1における屈折型フレネルレンズのプリズム面163のフレネル角θ1(フレネルレンズシート160の主平面とプリズム面のなす角度)は、距離r1におけるオリジナル面164の傾き(接線)とほぼ等しい。すなわち、数3で表されるオリジナル面の非球面式をZ=f(rn )、nを1以上の整数としたとき、屈折領域160Dの各位置のフレネル角θnは、数6で表される。
よって、θ1 =f(r1 )´、θ2 =f(r2 )´、θ3 =f(r3 )´…となる。このように、屈折領域160Dの各位置のフレネル角θn は、非球面式の各位置(各距離rn)における微分値にほぼ対応している。このようにして、フレネルレンズシート160における屈折領域160Dの各位置のフレネル角θnが設定される。
上述したように、投写装置10からフレネルレンズシート160の屈折領域160Dに入射された光線は、屈折型フレネルレンズの各プリズム面163によって屈折される。上述したように、屈折型フレネルレンズのオリジナル面164を、屈折領域160D各位置への入射光線の入射角に応じた非球面形状にすることにより、各プリズム面163によって屈折されたそれぞれの光線は、フレネルレンズシート160の法線とほぼ平行になる。ここでは、上記図12から明らかなように、フレネルレンズシート160の屈折領域160D上部に位置する(すなわち、画像表示用液晶パネルの縦方向上部で回転軸から遠い位置の)プリズム面163のフレネル角θは、フレネルレンズシート160の屈折領域160D下部に位置する(すなわち、画像表示用液晶パネルの縦方向下部で回転軸に近い位置の)プリズム面163のフレネル角θよりも大きくしている。これは、本実施の形態における斜め投写では、画像表示用液晶パネル下部よりも画像表示用液晶パネル上部の方が光線の入射角が大きいためである。
次に、全反射領域160Eにおける全反射型フレネルレンズ167について、上記図12を参照して説明する。この図12に示すように、全反射領域160Eの全反射型フレネルレンズは、屈折面1671と全反射面1672とを含んでなる。全反射領域160Eにある全反射型フレネルレンズ167に入射した光線L66は、その屈折面1671で屈折を受け、全反射面1672に向かう。そして、全反射面1672で全反射され、フレネルレンズシート160を出射して、画像表示用液晶パネル170に垂直に入射する。
入射光線を画像表示用液晶パネル170へ垂直に出射させるためには、全反射面1672と主平面とのなす角αを、投写装置10に近い全反射型フレネルレンズから遠い全反射型フレネルレンズに掛けて徐々に小さくなるように設定し、また、屈折面1671と主平面とのなす角βを、逆に、投写装置10に近い全反射型フレネルレンズから遠い全反射型フレネルレンズに掛けて徐々に大きく設定する。このようにして、全反射領域に入射した光線を画像表示用液晶パネル170へ垂直に出射させることができる。
以上述べたように上記フレネルレンズシート160を構成すれば、投写装置10から画像表示用液晶パネル170に向けて投写される光線を、画像表示用液晶パネル170への入射角が略0度となるように変換して出射させることが可能となる。従って、本実施の形態によるフレネルレンズシートを用いることにより、投写装置10からの光線が画像表示用液晶パネル170の法線に平行(つまり、画像表示用液晶パネル170に垂直)に入射することから、画像表示用液晶パネル170において、高コントラストの画像を表示することが可能となる。
なお、上記したフレネルレンズシート160では、シートの入射側に、屈折領域と全反射領域を設けることとしたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、本発明者らが既に出願した特開2005−91541号公報に記載されるように、シートの入射側では、入射角が所定値以上の周縁部に全反射領域を設け、シートの出射側では、入射角が所定値以下の中央部に屈折領域を設けるようにしてもよい。
ところで、上記の図1にその構造を示した液晶表示装置、特に、液晶パネル170をその背後から照明(バックライトを照射)する背面光投射装置(ユニット)100では、その光源110から照射される光量分布(光強度分布、照度分布ともいう)が一様化(均一化)されてないことから、当該画像表示用液晶パネル上の画像において明るさに不均一(所謂、ムラ)が生じる可能性がある。そこで、上記背面光投射装置(ユニット)100の変形例として、光源と液晶パネルとの間に、当該光源からの照明光の光量分布を一様化するための、所謂、インテグレータを挿入した実施の形態について、以下に説明する。
<背面光投射装置(ユニット)>
<変形例1>
添付の図13に示すように、この変形例になる背面光投射装置(ユニット)100では、光源110と、対をなしてマルチレンズ方式インテグレータ120として機能する第1のマルチレンズ素子121と第2のマルチレンズ素子122と、偏光変換素子130Aと、重畳レンズ141と、フィールドレンズ145と、液晶パネル150と、投写装置10と、フレネルレンズシート160とを含んで構成されている。なお、この図13では、背面光投射装置(ユニット)の構成要素をなす光方向変換部としてのフレネルレンズシート160(上記図2を参照)の図示が省略されている。
なお、図13において、光源110は、ランプ101と、リフレクタ102とからなる。このランプ101は、高圧水銀ランプの白色ランプである。また、リフレクタ102は、ランプ101を背後側から覆うように配置された、例えば、回転放物面形状の反射面を有するものであり、円形又は多角形の出射開口を有している。そして、このランプ101から射出された光は、回転放物面形状の反射面を有するリフレクタ102によって反射され、光軸115に略平行となり、光源110から略平行の光束が射出される。光源110から射出された光は、マルチレンズ方式のインテグレータに入射する。
上述したように、マルチレンズ方式インテグレータ120は、第1のマルチレンズ素子121と第2のマルチレンズ素子122とから構成されている。なお、第1のマルチレンズ121は、光軸115方向から見て液晶パネル150や画像表示用液晶パネル170とほぼ相似な矩形形状を有しており、複数のレンズセルがマトリックス状に配設されて形成されたものであり、光源から入射した光を複数のレンズセルで複数の光に分割し、もって、効率よく第2のマルチレンズ素子122と偏光変換素子130Aを通過するように導く。すなわち、第1のマルチレンズ素子121は、ランプ101と第2のマルチレンズ素子122の各レンズセルとが光学的に共役な関係になるように設計されている。
第2のマルチレンズ素子122も、第1のマルチレンズ素子121と同様に、光軸115方向から見て矩形形状であり、かつ、複数のレンズセルがマトリクス状に配設された構成を有しており、当該レンズ素子を構成するレンズセルは、それぞれ、対応する第1のマルチレンズ素子121のレンズセルの形状を、重畳レンズ141と共に液晶パネル150の上に投影(写像)する。そして、この過程で、偏光変換素子130Aの働きによって、で第2のマルチレンズ素子122からの光は所定の偏光方向に揃えられる。同時に、第1のマルチレンズ素子121の各レンズセルの投影像は、それぞれ、重畳レンズ141の働きにより重畳される。そして、当該投影像からの光は、フィールドレンズ145により光軸115にほぼ平行となるように屈曲された後、液晶パネル150上に入射する。即ち、当該投影像が液晶パネル150上に重ね合わせられる。その後、上記図3〜図5に詳細を示した、自由曲面ミラーの反射を利用して短距離傾斜投写光学系を介して、液晶表示装置の画像表示用液晶パネル170背面側の短距離から、斜めに拡大してバックライトとして投写される。
なお、第2のマルチレンズ素子122と、これに近接して配設される集光レンズ141とは、第1のマルチレンズ素子121の各レンズセルと液晶パネル150とが、光学的に物体と像の関係(即ち、共役な関係)になるように設計されているので、第1のマルチレンズ素子121で複数に分割された光束は、第2のマルチレンズ素子122と重畳レンズ141によって、液晶パネル150上に重畳して投影され、もって、液晶パネル150(更には、画像表示用液晶パネル170)上の光量分布が一様となる。
ここで、上述した偏光変換素子130Aの偏光変換作用について、添付の図14を用いて説明する。なお、この図14は、偏光変換素子を光軸を含み液晶パネルの長辺に沿って切断した断面構成図である。
即ち、図14に示すように、偏光変換素子130Aは、液晶パネル150の短辺に平行な方向に沿って伸びた平行四辺形柱である透光性部材31が、光軸115方向に対して直交する面に平行して、液晶パネル150の長辺に平行な方向に複数アレイ状に配列され、もって、アレイ状に配列され隣接する透光性部材31間の界面に交互に偏光ビームスプリッタ膜(以下、「PBS膜」と省略する)32と反射膜33が形成されている。また、偏光変換素子130Aの入射側の開口部35を通り、PBS膜32を透過した光が出射する出射面には、λ/2位相差板34が設けられている。また、偏光変換素子130Aは、光軸115と平行四辺形柱の透光性部材31の延伸方向とで形成される面(以下、この面を便宜上「光軸面」と称する)S115に対して対称に構成されている。
以上のように構成された偏光変換素子130Aに、第1のマルチレンズ素子121、第2のマルチレンズ素子122を通って開口部35に入射した光線37のうち、例えば、そのS偏光光は、PBS膜32で反射され、対向する反射ミラー33で反射されてS偏光光として出射する。また、P偏光の光は、PBS膜32を透過し、出射面のλ/2位相差板34によりS偏光の光に変換されて出射する。このような基本と成る偏光変換部30が複数集めて構成された偏光変換素子130Aは、入射した光の偏光方向を所定の偏光方向の光(ここでは、S偏光の光)に変換して(揃えて)出射する。なお、P偏光の光の揃える場合には、S偏光光の出射面に、更に、λ/2位相差板34を設けるようにすればよい。
以上述べたように、対をなす第1のマルチレンズ素子121と第2のマルチレンズ素子122とで構成されたマルチレンズ方式インテグレータ120を採用することによれば、より均一な光量分布の光で、液晶パネル150を照明することが可能となる。その後、上記図3〜図5に詳細を示した、自由曲面ミラーの反射を利用して短距離傾斜投写光学系を介して、液晶表示装置の画像表示用液晶パネル170背面側の短距離から、斜めに拡大して投写することにより、画像表示用液晶パネル170をより均一な光量分布のバックライトが得られることとなる。
<変形例2>
なお、上記の例では、照明光を一様化(均一化)するインテグレータとして、対をなす第1のマルチレンズ素子と第2のマルチレンズ素子とからなるマルチレンズ方式インテグレータ120を用いた例について説明したが、更に、これに代え、インテグレータの一種であるロッド型インテグレータを用いることも可能であり、その場合の背面光投射装置(ユニット)100について、以下に添付の図14を参照しながら説明する。
なお、このロッド型インテグレータとしては、ライトファネルやロッドレンズなどが挙げられるが、ここでは、その一例として、ライトファネルを用いたものについて述べる。また、ここでは、上述した光変調(光強度変調)用の液晶パネル150として、透過型に代え、反射型の液晶パネルを用いた例を示す。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、ライトファネルに代えてロッドレンズを用いてもよく、また、光学系の構成が変わるが、反射型液晶パネルに代えて微小ミラーや透過型の液晶パネルを用いてもよい。
添付の図15は、更に他の変形例として、ロッド型インテグレータを採用した背面光投射装置(ユニット)100の模式構成図である。この図15にも示すように、この背面光投射装置(ユニット)は、光源110Bと、インテグレータとして機能するライトファネル125と、偏光変換素子130Bと、集光レンズ142と、フィールドレンズ146と、偏光板151と、偏光ビームスプリッタプリズム(以下、「PBSプリズム」と省略する)152と、反射型液晶パネル150Bと、偏光板153と、投写装置10と、フレネルレンズシート160とを含んでなる。なお、この図15でも、やはり、光方向変換部としてのフレネルレンズシート160(図2を参照)の図示が省略されている。
まず、上記と同様に、光源110Bは、ランプ101と、リフレクタ103とからなる。ランプ101は、高圧水銀ランプの白色ランプである。リフレクタ103は、ランプ101を背後側から覆うように配置された、回転楕円面形状の反射面を有する。これにより、リフレクタ103の第1焦点に配置されたランプ101から射出された光は、回転楕円面形状の反射面を有するリフレクタ103によって反射され、リフレクタ103の第2焦点位置近傍に配置されているライトファネル125の入射面125aに集光して入射する。すなわち、リフレクタ103は、ランプ101から射出された光をライトファネル125の入射面125aに集光する集光部として機能する。勿論、上記の変形例と同様に、リフレクタ103として回転放物面形状の反射ミラーを用い、集光レンズでライトファネル125の入射面125aに集光するようにしてもよい。
一方、ライトファネル125は、万華鏡のように中空の光パイプ(所謂、ライトパイプ)で構成され、入射した光を、複数回、全反射を繰り返して入射光の光量分布を一様(均一)にする機能を有する。ここでは、光軸115に直交する断面の面積が出射側に次第に大きくなるライトパイプを用いているが、しかしながら、これに代えて、中身が詰まったロッドレンズを用いてもよい。
次に、ライトファネル125に入射した光線は、ライトファネルの側面で全反射を繰り返し、出射面125bでは様々な角度の光が重畳された状態となり、光量分布が一様となる。また、ライトファネル125の断面形状が出射側に向かって徐々に大きくなっており、出射面125bから出射する光線角度は光軸にほぼ平行となっている。このライトファネル125を出射した光は偏光変換素子130Bに入射する。
また、偏光変換素子130Bは、ライトファネル125の出射面125bに設けられたPBS膜41aを有するPBSプリズム41と、PBSプリズム41のPBS膜41aで反射されるS偏光光が向かう側に配置された全反射膜42aを有する全反射プリズム42と、そして、PBSプリズム41のPBS膜41aを透過するP偏光光が出射する出射面41bに設けられたλ/2位相差板43とを含んで構成されている。
上記の構成において、ライトファネル125から偏光変換素子130BのPBSプリズム41に入射した、光量分布が一様でかつ偏りのない光の内、S偏光の光(S偏光光)は、PBS膜41aで反射され、全反射プリズム42に入射し、全反射膜42aで反射されて、全反射プリズムの出射面42bから出射する。また、PBSプリズム41に入射したP偏光の光(P偏光光)はPBS膜41aを透過し、出射面41bから出射し、さらに、λ/2位相差板43でS偏光光に変換されて出射する。このようにして、偏光変換素子130Bに入射した偏りのない光は、偏光変換素子130Bによって、S偏光光に揃えられる。
なお、偏光変換素子130Bには、出射側に広がったライトファネル125でほぼ光軸115に平行とされた光線が入射するので、PBS膜41aで効率良く偏光分離することができる。また、出射面41bと出射面42bで構成される偏光変換素子130Bの出射面の形状は、反射型液晶パネル150Bとほぼ相似に形成されている。
また、集光レンズ142は、偏光変換素子130Bの出射面を、反射型液晶パネル150Bに写像するリレーレンズである。すなわち、偏光変換素子130Bから出射したS偏光光は、集光レンズ142で集光され、フィールドレンズ146で光軸116にほぼ平行とされ、偏光板151を通り、PBSプリズム152で反射されて反射型液晶パネル150Bに入射する。この反射型液晶パネル150Bで変調されて形成された調光像はP偏光光であることから、次に、PBSプリズム152を透過し、その際、偏光板153でコントラストが高められ、背面光投射装置(ユニット)100から画像表示用液晶パネル170に向けて拡大投写される。
<変形例3>
更に、以下には、上述した変形例を基に、更なるコストダウンを図ることが可能な直視型の液晶表示装置、特に、その液晶パネル170をその背後から照明(バックライトを照射)する背面光投射装置(ユニット)100の更なる変形例について、添付の図16を参照しながら説明する。
本変形例の画像表示装置は、上述した変形例2とは、ライトファネル125の入射面125a近傍に時分割色分離部としてカラーホイールを配置した点で異なる。カラーホイールを用いることによれば、単色表示(例えば、白黒表示)を行う画像表示用光変調部でカラー画像を時分割で表示(色順次表示)することができる。従って、画像表示用光変調部として液晶パネルを使用する場合、カラー表示を行う液晶パネルが備えるカラーフィルタを削除することが可能となる。また、カラー表示を行う場合、1画素は一組のカラー画素(R画素、G画素、B画素)で構成されるが、単色表示の場合、1画素で表示するので、全体の画素数が少ないパネルを用いることができ、もって、コストダウンを図ることができる。
まず、図16は、変形例3による画像表示装置の模式構成図である。この図15において、参照符号180はカラーホイールを、170Bは上記した単色表示を行う画像表示用液晶パネルを示している。
カラーホイール180は、例えば、R光(赤色光)を透過するR光フィルタ181と、G光(緑色光)を透過するG光フィルタ182と、B光(青色光)を透過するB光フィルタ183とが、周方向に所定の割合で形成された円盤により構成されており、その中心には、回転軸(図示せず)を有しており、図示しない駆動部により高速回転する。このように構成されたカラーホイール180は、光源110Bとライトファネル125との間で、ライトファネル125の入射面125aの近傍に配置されている。
かかる構成において、光源110Bから射出される略白色の集束光は、カラーホイール180により時分割でR光、G光、B光に色分離される。そして、カラーホイール180で色分離された色光は、次に、ライトファネル125に入射し、そこで光量分布が一様にされた後、偏光変換素子130Bにより、S偏光光に変更される。さらに、反射型液晶パネルにより調光され、当該調光像は、投写装置10により画像表示用液晶パネル170B上に拡大照射される。画像表示用液晶パネル170Bは、照射された調光像に光変調を行い、高コントラストな画像を形成する。このような過程により、画像表示用液晶パネル170Bには、時分割でR光の画像、G光の画像、B光の画像が形成され、視覚的にカラー画像として認識される。
即ち、上記の構成になるカラー直視型画像表示装置によれば、そのコストダウンを図ることが可能となる。なお、上記の例では、調光用の光変調部に、反射型液晶パネルを用いた構成について説明したが、これに代えて、微小ミラーを用いてもよい。この微小ミラーは、液晶パネルよりもコントラスト比が大きいので、より好適に用いることができる。
更に、以上の述べた各種の実施の形態では、画像表示用液晶パネル170Bの入射側と出射側に偏光板を備えるものとして説明した。しかしながら、特に、本発明が係わる直視型画像表示装置の場合、その画面サイズが大きい。そこで、調光用の光変調部として液晶パネル(例えば、図2の参照符号150を参照)を用いる場合、液晶パネルの光路上の前後に配置される偏光板、例えば、出射側偏光板を2枚として偏光度を高めることによれば、画像表示用液晶パネル170Bの入射側偏光板を削除することが可能となる。この場合、液晶パネルに付随する偏光板のサイズは、ほぼ液晶パネルと同等であり、出射側偏光板を2枚構成とすることによるコストアップよりも、画像表示用液晶パネル170Bの入射側偏光板を削除することによるコストダウンが大きく、結果的に、直視型画像表示装置のコストダウンを図ることが可能になる。また、調光用の光変調部として微小ミラーを用いる場合、当該微小ミラーは、液晶パネルに比較して、コントラスト比が十分に大きく取れることから、画像表示用液晶パネル170Bの入射側偏光板の削除を可能とする。
最後に、添付の図17〜図19は、上述した液晶表示装置、即ち、直視タイプの薄型映像表示装置を、各種の画像と共に、書き込んだ内容を読み取ってきれいに表示するプレゼンテーション装置である、所謂、電子黒板装置に適用した一例を示している。即ち、この電子黒板装置300は、大型の直視タイプの表示装置である液晶パネル170を、例えば、移動可能なキャスターの枠体202に取り付けたものである。なお、この電子黒板装置では、その表示画面201の表面側に利用者が立って説明や書き込みをする形態が多そのため、その表示装置である液晶パネル170の表面側には、更に、表示画面201上での書き込みを可能にすると共に、液晶パネル170を保護するための、透明なガラス板250が設けられている。また、この図中においても、大型の液晶パネル170の背面から斜め方向に背面光(バックライト)を投写するための背面光投射装置(ユニット)100が、キャスターの枠体202の下辺部に取り付けられている。
添付の図18は、上記図3と同様に、上記電子黒板装置における、特に、液晶表示装置の背面側の短距離から斜めに拡大して投写する短距離傾斜投写光学系を含めて模式的に示している。なお、上記図3に示した光学系との相違点としては、上述したように、液晶パネル170の表面側(図の左側)には、更に、当該パネルを覆うように、略同じサイズの(なお、本例では、僅かに大きくい)ガラス板250が設けられており、その周辺部には、表示画面201上での書き込みを検出するためのタッチ入力部を構成するタッチセンサ255が設けられている。この図18でも、平面反射ミラー5は鉛直方向に対して傾斜して設けられているが、図1に示すように垂直に設けてもよい。
加えて、添付の図19は、上記電子黒板装置の構成の一例を示すのブロック図である。図において、電子黒板装置300は、上記図2に示した液晶表示装置の短距離傾斜投写光学系を構成する背面光投射装置(ユニット)100と共に、以下の構成を備えている。即ち、画像を表示する液晶パネル170の前面に配置されたガラス板250上で、指先またはタッチペンでその表面(書き込み面)をタッチすることにより電気的に文字や図形等を入力して表示もしくは消去することが可能なタッチ入力部201(上記タッチセンサ255を含む)と、指先またはタッチペンでタッチされた表面上の座標位置の演算等を行うタッチ入力部用のコントローラ(例えば、マイクロコントローラ等により構成される)201と、当該コントローラ301から座標位置情報を入力し、入力した座標位置情報に基づいて、タッチ入力部201を介して入力された文字・図形等を液晶パネル170上に描画する処理等、更には、システム全体を制御する制御部(やはり、マイクロコントローラ等により構成される)303等を備えている。
また、電子黒板装置300には各種の周辺機器を接続することができる。例えば、原稿の画像を読み取るためのスキャナや、画像データを記録紙に出力するプリンタなどが、その制御部303に接続することが出来る。また、制御部303を介して電子黒板装置をネットワーク400に接続することもでき、もって、ネットワーク400上に接続された他のコンピュータで作成したデータを液晶パネル170上に表示し、電子黒板装置300で作成したデータを他のコンピュータに転送することも可能となる。
さらに、ここでは図示しないが、液晶パネル170には映像信号の入力端子やスピーカー設けられており、ビデオプレイヤーをはじめ、その他レーザディスクプレイヤー、DVDプレイヤー、ビデオカメラ等の各種情報機器やAV機器を接続し、その大画面モニタとしても利用することができる。なお、上記に代えて、タッチ入力部201としては、超音波表面弾性波方式のタッチ入力装置を用いることも可能であろう。
かかる電子黒板装置においても、上記の液晶表示装置と同様、背面光投射装置(ユニット)100やその駆動回路を含めた発熱源から液晶パネル170への熱伝達を抑制するこのことにより、当該液晶パネル170やその一部に取り付けた偏光板の発熱による劣化を防止することが可能となる。特に、上述したように、液晶パネル170では、その表面を覆うようにガラス板250が設けられていることから、その背面での発熱は筐体内に滞留しやすいが、しかしながら、上述の構成によれば、かかる場合においても、背面光投射装置(ユニット)100などからの発熱が、液晶パネル170やその表面を覆うようにガラス板250に伝達することを抑制することにより、電子黒板装置の利用者に対して違和感や不快感を与えることを解消することも可能となる。
なお、以上の説明では、画像表示用液晶パネル170をその背後からバックライトを拡大照射する背面光投射装置(ユニット)100は、当該液晶パネル170の下方に配置する例についてのみ説明したが、しかしながら、本発明は上記の実施の形態に限定されることなく、例えば、液晶パネル170の上方、又は、その左右側方に配置することによっても、上記と同様の効果を得ることが可能であることは当業者であれば明らかであろう。