JP2007219383A - 投影光学系および画像投影装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】投影光学系および画像投影装置において、いわゆるオフセット投影を行う場合に、簡素な構成によって収差を低減し、高画質の画像を投影することができるようにする。
【解決手段】被投影画像を画像表示領域3aに表示する反射型表示素子3と、スクリーン6から反射型表示素子3までの間の光路に沿って順次配置された第1光学系4A、第2光学系4Bとを有し、画像表示領域3aを第1光学系4Aの光軸4aに対して偏心した位置に拡大投影する投影光学系4であって、光軸4aを基準軸としたときに、画像表示領域3aが少なくとも平行偏心して配置されるとともに、第2光学系4Bが偏心して配置された構成とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、投影光学系および画像投影装置に関する。例えば、画像を光軸からずらした位置にオフセット投影する投影光学系および画像投影装置に関する。
従来、例えば、プロジェクタなど、表示素子に表示された画像をスクリーンに拡大投影する画像投影装置では、机上で使用する場合や天井に設置する場合など、装置設置位置から斜め上方または下方に位置し、例えば壁面などに沿う垂直面に配置されたスクリーンに画像を投影して使用されるものが多い。この場合、投影光学系の光軸をスクリーンに向かう斜め方向に設定するので、スクリーン面が光軸に対して斜交することになる。この場合、投影画像に歪みが生じ、画質が劣化してしまうという問題があった。
そのため、投影光学系の光軸を水平に近い配置として、投影光学系の有効画像領域の上側領域に画像がずらして投影する、いわゆるオフセット投影を行うようにしたものが知られている。
例えば、特許文献1には、従来技術として、表示素子であるDMD(Digital Micromirror Device)を、その表示領域の周縁部が投影光学系の光軸に略一致する位置まで平行偏心して配置し、投影光学系の投影領域の片側半分、例えば上半部に、ずらして投影する表示光学系(画像投影装置)が記載されている。
また、有効画像領域内で画像をずらして投影するものではないが、これに関連する技術として、投影光学系の光軸に対して偏心配置された表示素子が表示する画像を、良好に位置補正して、投影光学系の光軸と画像表示領域の中心とが一致するように投影する技術が知られている。
例えば、特許文献2には、反射型表示素子と投影光学系との間に大きく偏心した偏心光学素子を配置し、投影光学系の光軸に対して平行偏心および傾き偏心して配置された反射型表示素子の表示面の画像表示領域の中心が、投影光学系の光軸と一致するように投影する投影表示装置が記載されている。
特開平11−249069号公報(図9) 特開2000−39585号公報(図1、2、5、6、9、10)
しかしながら、上記のような従来の投影光学系および画像投影装置には以下のような問題があった。
特許文献1に記載の従来技術では、斜め上方に投影する場合でも、スクリーンと投影光学系の像面とを平行に設定することができるので、像面がスクリーンに対して回転することによる画像の歪みは生じないものの、有効画像領域の上半部など、一部分に表示素子の画像表示領域全体を投影しなければならない。すなわち、投影画角のうち、収差のよくない高画角部を含む狭い範囲の画角しか利用できないものである。そのため、例えば、投影光学系の有効領域をより拡大したり、光学素子の数を増したりして収差低減を図る必要があった。その結果、投影光学系が大型化し、複雑かつ高価なものになってしまうという問題がある。
一方、特許文献2に記載された技術を用いて、表示素子と投影光学系との間に偏心光学素子を配置して、偏心配置された表示素子の画像の投影領域を移動することも考えられるが、特許文献2に記載の技術は、画像投影領域の中心が投影光学系の光軸中心に一致するような位置に偏心光学素子を偏心配置することにより、良好な収差を達成するものである。したがって、表示素子を平行偏心して、オフセット投影を行う意味がなくなってしまう。すなわち、オフセット投影の投影光学系には適用できないという問題がある。
どうしてもこの技術を適用するとすれば、オフセット方向の表示領域の辺を2倍にして考え、収差が改善された全体領域の半分のみを用いる必要があり、その場合、同程度には収差が改善されないことは明らかである。
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、いわゆるオフセット投影を行う場合に、簡素な構成によって収差を低減し、高画質の画像を投影することができる投影光学系および画像投影装置を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するために、本発明の投影光学系は、被投影画像を画像表示領域に表示する表示素子と、投影面から前記表示素子までの間の光路に沿って順次配置された第1光学系と第2光学系とを有し、前記画像表示領域を前記第1の光学系の光軸に対して偏心した位置に拡大投影する投影光学系であって、前記第1光学系の光軸を基準軸としたときに、前記表示素子の画像表示領域が少なくとも平行偏心して配置されるとともに、前記第2光学系が偏心して配置された構成とする。
この発明によれば、表示素子側の第2光学系を、投影面側の第1光学系の光軸を基準軸として偏心して配置するので、基準軸に対して少なくとも平行偏心して配置された画像表示領域から偏心した状態で進む拡散光束の光線方向を、第2光学系の偏心量に応じて補正することができる。
すなわち、表示素子の画像表示領域を基準軸に対して平行偏心して配置して、いわゆるオフセット投影する場合には、光線が投影光学系の高像高部分を透過するので収差が大きくなる傾向があり、また、画像表示領域と基準軸とが一致していないため投影画像内では、非対称な収差が発生する。
一方、第2光学系を平行偏心すると、その平行偏心方向に歪曲収差で代表される軸シフト成分を有する収差が発生する。よって、画像表示領域の基準軸に対する平行偏心方向と同方向に第2光学系を平行偏心して歪曲収差等をキャンセルし、歪曲収差等の大きさと対称性とを改善することができる。また、第2光学系を基準軸および画像表示領域の平行偏心方向にそれぞれ直行する軸回りに傾き偏心すると、歪曲収差で代表される軸シフト成分を有する収差が発生するので、第2光学系を傾き偏心することによっても、歪曲収差等をキャンセルし、歪曲収差等の大きさと対称性とを改善することができる。
その結果、第1光学系の高像高部分に歪曲収差などの収差を残した状態であっても、画像が投影される範囲において容易に収差を補正することができる。
また、本発明の画像投影装置は、本発明の投影光学系を用いて、前記画像表示領域の画像を拡大投影する構成とする。
この発明によれば、本発明の投影光学系を用いるので、本発明の投影光学系と同様の作用効果を備える。
本発明の投影光学系および画像投影装置によれば、表示素子側に配置された第2光学系を偏心することで、画像表示領域をオフセット投影する部分の収差を低減することができるので、簡素な構成によって収差を低減し、高画質の画像を投影することができるという効果を奏する。
以下では、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。すべての図面において、実施形態が異なる場合であっても、同一または相当する部材には同一の符号を付し、共通する説明は省略する。
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る投影光学系および画像投影装置について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る画像投影装置の概略構成を示す模式的な正面図である。図2は、本発明の第1の実施形態に係る画像投影装置に用いる投影光学系の構成を示す光軸を含む断面の概略構成図である。
なお、各図とも模式図のため、寸法や形状は誇張して描かれている場合があり、必ずしも正確な位置関係を表すものではない(以下、同様)。
本実施形態のプロジェクタ1の概略構成は、図1に示すように、照明ユニット2、反射型表示素子3、および投影光学系4が筐体1a内に配置されたものである。また、特に図示しないが、装置を駆動する電源供給部と装置の制御を行う装置制御部とを備えており、いずれも照明ユニット2、反射型表示素子3に接続されている。
以下では、説明の簡単のため、プロジェクタ1の筐体1aを水平面に配置したとき、投影光5が、配置面の斜め上方に投影されて、配置面に対して垂直に設置されたスクリーン6(投影面)上に画像が投影される場合の例で説明するが、このような配置位置、投影方向に限定されるものではない。例えば、設置面が傾斜面であったり、投影方向が斜め下方であったりしてもよいことは言うまでもない。
照明ユニット2は、反射型表示素子3の画像表示領域に向けて照明光を照射する光源である。本実施形態では、フルカラー画像を表示するため、少なくとも光の三原色である赤(R)、緑(G)、青(B)と、白色光に対応する波長光を時分割して順次照射することができるものである。例えば、それぞれ独立駆動可能なR、G、Bの波長光源をそれぞれ備え、それらを同一光路上に合成するものを採用することができる。また、例えば、白色光源を備え、その光路上にR、G、Bの可動フィルタを設けたものなどでもよい。
照明ユニット2からの照明光は、反射型表示素子3による反射光が、投影光学系4に対して入射されれば、どのような角度で入射してもよいが、本実施形態では、投影面の下方側から斜め上方向に照射され、後述する第2光学系4Bを透過して、反射型表示素子3に入射するようになっている。ただし、装置レイアウトの都合により、適宜ミラーやプリズムを設けて、光路を折り畳んで配置してもよい。
反射型表示素子3は、照明ユニット2から照射タイミングに応じて照射される波長の照明光を、画像信号に応じて空間変調し、色分解された画像を、カバーガラス3c(図2参照)によって覆われた画像表示領域3aに表示するものである。
画像表示領域3aは、特に図示しないが、例えば、画像信号の画素単位に応じた多数の空間変調要素が表示平面上に格子状に配列されてなる。本実施形態では、例えば、長辺×短辺が、W×Hである矩形状に設けられている。中心法線3bは、画像表示領域3aの中心における表示平面の法線を示す。
反射型表示素子3の画像表示領域3aは、投影光学系4の像面上において、中心法線3bが、後述する第1光学系4Aの光軸4aに対して投影面の方向と逆側に距離aだけ平行偏心した位置に配置されている。
この偏心量aの、画像表示領域3aの短辺の半分に対する比を、軸オフセットΔhで表すことにする。すなわち、
Δh=a/(H/2) ・・・(1)
軸オフセットは、オフセット投影の条件に応じて適宜設定することができるが、本実施形態では、次式の範囲とする。
0<Δh≦2.0 ・・・(2)
また、好ましくは、次式の範囲とする。
1.0≦Δh≦1.5 ・・・(3)
反射型表示素子3としては、例えば、微小ミラーアレイであるデジタルマイクロミラーデバイス(DMD)や反射型液晶パネル(LCOS、Liquid Crystal On Silicon)などの素子を採用することができる。
投影光学系4は、反射型表示素子3の画像表示領域3aに表示された画像を拡大し、スクリーン6上に投影するための光学系であり、画像表示領域3aとスクリーン6とを互いに共役とするものである。
投影光学系4の構成は、反射型表示素子3とスクリーン6との間の光路上に、第2光学系4B、第1光学系4Aがこの順に配置されてなる。
第1光学系4Aは、画角θを有する拡大投影光学系である。本実施形態では、図2に示すように、投影面側から第1レンズ11、第2レンズ12、第3レンズ13、第4レンズ14、第5レンズ15、第6レンズ16、および第7レンズ17が、光軸4a上に配列されてなる。光軸4aは、プロジェクタ1の配置面と水平に設けられている。
これら各レンズは、拡大投影光学系としての性能を満足する適宜の形状、パワーに設定することができるが、例えば、一例として、以下のような形状を採用することができる。
第1レンズ11、第2レンズ12は、いずれも投影面側が凸面の凹メニスカスレンズである。
第3レンズ13は、両凸レンズである。
第4レンズ14は、投影面側から両凸レンズのレンズ14A、両凹レンズのレンズ14Bがこの順に配列して互いに貼り合わされた貼り合わせレンズからなる。
第5レンズ15は、両凹レンズである。
第6レンズ16は、表示面側が凸面の凸メニスカスレンズである。
第7レンズ17は、両凸レンズである。
そして、これらのパワーにより、投影面側から表示面に向けて、負、負、正、正、負、正、正のパワーを有する構成が実現されている。
第2光学系4Bは、第1光学系4Aと反射型表示素子3との間の光束の光路および集光状態を調整するための正のパワーを有する光学系であり、光軸4aに対して偏心して配置されている。本実施形態では反射型表示素子3の偏心方向と同方向に距離bだけ平行偏心して配置されている。符号4bは、第2光学系4Bの光軸を示す。
この平行偏心量bの大きさ、方向は、投影光学系4の構成などにより異なるため、光線追跡を行って、例えば、画像表示領域3aが拡大投影される投影位置での歪曲収差量や、対称性のバランスなどが許容範囲となるように適宜設定する。
一般に、平行偏心量bは、反射型表示素子3の平行偏心量aに比べて小さな値でも、十分な効果を得ることができ、そのため、第2光学系4Bを偏心させてもスクリーン6上の画像投影領域はあまり変化することがなく、オフセット投影の状態が維持される。
第2光学系4Bの構成は、本実施形態では、表示面側が略平面に近い両凸レンズである視野レンズ18のみからなる。
そして、視野レンズ18は、パワーを有しないカバーガラス3cを挟んで、画像表示領域3aと対向して配置されている。このため、パワーを有する光学素子としては、反射型表示素子3に最も近い位置に位置する。
また、本実施形態の第2光学系4Bは、照明ユニット2と反射型表示素子3との間の光路上にわたって設けられており、照明ユニット2からの照明光を画像表示領域3a上に集光する構成になっている。
次に、プロジェクタ1の動作について、投影光学系4の光学作用を中心に説明する。
所定のタイミングに応じて所定の波長光として照明ユニット2から出射される照明光は、図2に示すように、第2光学系4Bを透過して集光される。そして、カバーガラス3cを透過し、画像表示領域3aの中心法線3bに対して、斜め下方向から入射する。
画像表示領域3a上の各空間変調要素は、所定の波長、タイミングに応じた画像信号に応じて、例えば、照明光を投影光学系4に入射する方向に反射するオン状態と、照明光を投影光学系4に入射しない方向に導くオフ状態とに駆動される。
そのため、画像表示領域3a上には、オン状態の空間変調要素で反射された光により、画像が表示される。これら反射光は、カバーガラス3cを透過して、第2光学系4Bに入射し、第2光学系4Bの屈折作用を受けて、集光されつつ、第1光学系4A側に出射される。
このとき、視野レンズ18を光軸4aに対して距離bだけ平行偏心しているので、視野レンズ18が光軸4aと同軸の場合に比べて、光の屈折方向が偏心方向、偏向量に応じて変化する。したがって、視野レンズ18のパワー、焦点距離に応じて、第1光学系4Aへの入射位置、入射角が変更される。
このとき、視野レンズ18は、拡大投影を行う投影光学系4において、反射型表示素子3の反射光が最初に通過するパワーを有する光学素子であるため、相対的に光束径の小さな光として透過する。そのため、視野レンズ18の屈折作用は、球面収差などの結像性能よりも、歪曲収差や像面湾曲などの投影面における結像位置の幾何学的なずれ量に係る収差に影響するものとなっている。例えば、平行偏心は、主として歪曲収差に影響し、傾き偏心は、主として像面湾曲に影響する。
そして、平行偏心量bを適宜設定することにより、後段の光学素子に比べて小さな偏心量でも、歪曲収差を低減したり、対称性を改善したりすることができる。
このような偏心を行うことで、画像投影領域と異なる投影面に向かう光路での収差はかえって悪化することが考えられるが、オフセット投影では、そのような領域に画像を投影しないため何ら問題とならない。このように、本実施形態は、投影光学系4の全画角内の収差分布を変更して、画像投影領域部分の収差の向上を図るものである。
第2光学系4Bから出射された光は、第1光学系4Aに入射し、光路に沿って第7レンズ17、第6レンズ16、第5レンズ15、第4レンズ14、第3レンズ13、第2レンズ12、第1レンズ11を透過し、それぞれにより屈折作用を受けて、図1に示すように、投影光学系4の倍率に対応して、光軸4aに対して斜め上方に延びる投影中心軸5aを中心として、画角θの範囲を進み、スクリーン6上で結像される。
このようにして、画像表示領域3aに表示された画像が、スクリーン6上に拡大投影される。その際、スクリーン6上の投影位置は、投影光学系4の倍率と画像表示領域3aの中心法線3bの平行偏心量aにより略決まり、投影位置における歪曲収差が、第2光学系4Bの平行偏心量bにより改善される。その結果、プロジェクタ1によって高画質の画像をオフセット投影することができる。
次に、本実施形態の変形例について説明する。いずれも、上記と同様の構成を備え、光学素子の偏心を変えたものである。
第1変形例では、第2光学系4Bを平行偏心する代わりに、基準軸および反射型表示素子3の平行偏心方向にそれぞれ直交する軸回りの傾き偏心を加えるものである。この場合、回転方向により反射型表示素子3の平行偏心による歪曲収差を改善することが可能である。
第2変形例では、上記の第1の実施形態において、第2光学系4Bに加えて第1光学系4A内の光学素子の一部を平行偏心する。この場合、歪曲収差などに対して影響が異なる他の光学素子の平行偏心を組み合わせるので、きめ細かい収差補正を行うことができる。また、第1光学系4Aの光学素子の一部と第2光学系4Bとの間で、それぞれ最適な偏心量を与えることで、他の収差に対する影響を低減することができる。
なお、この場合、投影光学系4の基準軸となる第1光学系4Aの光軸4aとは、偏心した光学素子を除く第1光学系4Aの光軸を意味する。
第3変形例では、上記第1の実施形態、第1、第2変形例において、基準軸および反射型表示素子3の平行偏心方向にそれぞれ直交する軸回りの傾き偏心を加えるものである。
この場合、傾き偏心は上述のように、主として像面湾曲に影響するので、像面位置にずれによる画像ボケなどを改善し、高画質のオフセット投影を行うことが可能となる。
傾き偏心させることができるのは、反射型表示素子3、第2光学系4B、および第1光学系4Aの一部の光学素子である。
傾き偏心の方向、偏心量は、投影光学系4の構成に応じて、他の収差への影響を考慮して適宜設定することができる。例えば、平行偏心によって歪曲収差が改善されるものの、像面湾曲が悪化する場合があるが、この場合、像面湾曲の悪化をキャンセルする方向に傾き偏心を加えることで、歪曲収差と像面湾曲とのそれぞれが良好となるようにすることが可能となる。
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に係る投影光学系および画像投影装置について説明する。
図3は、本発明の第2の実施形態に係る画像投影装置の概略構成を示す模式的な正面図である。図4は、本発明の第2の実施形態に係る画像投影装置に用いる投影光学系の構成を示す光軸を含む断面の概略構成図である。
本実施形態のプロジェクタ10は、図3に示すように、上記第1の実施形態のプロジェクタ1において、反射型表示素子3に代えて、透過型表示素子7を備え、照明ユニット2の照射方向を透過型表示素子7の表示面裏面側に変えた点が異なる。以下、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
透過型表示素子7は、照明ユニット2によって、表示面裏面側から照射タイミングに応じて照射される波長の照明光を、画像信号に応じて空間変調し、色分解された画像を、画像表示領域7aに表示するものである。透過型表示素子7としては、例えば、液晶表示デバイス(LCD)などを採用することができる。
本実施形態では、説明の便宜上、透過型表示素子7を単板の構成としているが、照明光R、G、Bに応じた3板構成のLCDなどの透過型空間変調素子を設け、それぞれの透過型空間変調素子を透過した光を色合成する構成とするのが通常の形態である。その場合は、投影光学系4と透過型表示素子7との間に色合成光学要素を要するが、本説明では省略している。なお、このような構成では、色合成光学要素により、3つの透過型空間変調素子の表示面がそれぞれ光学的に等価な位置に配置された画像表示領域をなしている。
画像表示領域7aは、特に図示しないが、例えば、画像信号の画素単位に応じた多数の空間変調要素が表示平面上に格子状に配列されてなる。本実施形態では、例えば、長辺×短辺が、W×Hである矩形状に設けられている。中心法線7bは、画像表示領域7aの中心における表示平面の法線を示す。
透過型表示素子7の画像表示領域7aは、投影光学系4に対して、第1の実施形態の反射型表示素子3と同様の位置関係に配置されている。すなわち、投影光学系4の像面上において、中心法線7bが、第1光学系4Aの光軸4aに対して投影面の方向と逆側に距離aだけ平行偏心した位置に配置されている。
また、軸オフセットΔhも上記第1の実施形態と同様に定義される。
このように、本実施形態のプロジェクタ10は、表示素子として、反射型表示素子3に代えて透過型表示素子7を用いた例となっている。
そのため、照明光を透過型表示素子7の裏面側から照射できるので、照明ユニット2を投影光学系4に干渉しないように配置することが容易となり、装置レイアウトの自由度を向上することができる。
また、投影光学系としては、照明ユニット2からの照明光が第2光学系4Bを透過することなく、表示素子に導かれる点が異なるのみなので、表示素子からスクリーン6までの光路および光学作用に関する作用効果は第1の実施形態の場合と同様となる。
したがって、画像表示領域7aに表示された画像は、投影光学系4によって、スクリーン6上に拡大投影される。その際、スクリーン6上の投影位置は、画像表示領域7aの中心法線7bの平行偏心量aにより略決まり、投影位置における歪曲収差が、第2光学系4Bの平行偏心量bにより改善される。したがって、プロジェクタ10によって高画質の画像をオフセット投影することができる。
また、第1の実施形態の各変形例は、本実施形態に対しても同様に適用することができる。
なお、上記の第1の実施形態の説明では、照明ユニット2からの照明光を、第2光学系4Bに透過させて画像表示領域3aに導く構成の場合の例で説明したが、反射型表示素子3を用いる場合の構成はこれに限定されない。例えば、照明ユニット2内で、照明光の収束度合を適宜設定しておき、第2光学系4Bを透過させないで、画像表示領域3aを照明してもよい。
また、上記の説明では、第2光学系4Bが、単レンズで構成される場合の例で説明したが、第2光学系4Bはレンズ群から構成されていてもよい。
また、上記の説明では、表示素子が、1つの空間変調素子または複数の空間変調素子と色合成光学要素とからなり、これら空間変調素子の画像表示面が画像表示領域である場合の例で説明したが、表示素子の画像表示領域は、例えば空間変調素子の画像表示面の画像を他の表示面にリレーするなどして形成してもよい。
また、上記の説明では、画像投影装置として、装置の外部に設けられた投影面に画像を投影する、いわゆるフロントプロジェクション方式のプロジェクタの例で説明したが、装置の外周部に設けられた透過型スクリーンに装置内部側から画像を投影する、いわゆるリアプロジェクション方式のプロジェクタに用いてもよい。
また、上記の説明では、表示素子の軸オフセット方向を短辺方向として説明したが、軸オフセット方向は短辺方向に限定されない。例えば、長辺方向もしくは任意方向に軸オフセットしてオフセット投影を行う場合でも、その軸オフセット方向に応じて光学素子のオフセット方向を変えることで、同様の効果が得られる。
また、上記の説明では、表示素子、第2光学系、第1光学系の一部の光学素子の偏心は、一定であるとして説明したが、偏心可変機構を設けて、必要に応じて手動または自動で調整できるようにしてもよい。
また、上記の各実施形態、各変形例に記載された構成要素は、技術的に可能であれば、本発明の技術的思想の範囲内で適宜組み合わせて実施することができる。
ここで、上記各実施形態の用語と特許請求の範囲の用語との対応関係について名称が異なる場合について説明する。
プロジェクタ1、10は、それぞれ画像投影装置の一実施形態である。反射型表示素子3、透過型表示素子7は、それぞれ表示素子の一実施形態である。光軸4aは、基準軸に対応する。
次に、上記に説明した第1の実施形態およびその変形例の投影光学系の第1〜第4実施例、および従来技術に係る投影光学系の比較例について説明する。ただし、第2の実施形態においても、投影面と表示面との間の構成は同じなので、下記の各実施例は、第2の実施形態の実施例にもなっている。
図5は、本発明の第1の実施形態およびその変形例に係る投影光学系の各実施例の概略構成およびその光路を示す光軸を含む断面の概略光路図である。各実施例では、一部の光学素子が偏心されているが、それぞれの偏心量はわずかなので、各実施例とも共通の図面を用いて説明する。
以下では、光軸4aに直交する方向のうち、スクリーン6の平行偏心方向(図1、2、5の図示上方向)を正方向としてY軸を設定し、それに直交する方向、紙面手前方向を正方向としてX軸を設定する。すなわち、画像表示領域3aは、X軸方向に幅W、Y軸方向に幅Hの矩形状となっており、第1の実施形態の平行偏心bは、Y軸負方向への偏心となっている。
第1実施例は、第2光学系4BをY軸負方向に0.3mmだけ平行偏心した実施例である。本実施例は上記第1の実施形態の一例になっている。
第2実施例は、第1実施例において、さらに画像表示領域(像面)をカバーガラス3cとともに紙面時計回り方向に6分だけ傾き偏心した実施例である。本実施例は上記第1の実施形態の第3変形例の一例になっている。
第3実施例は、第2光学系4Bを紙面時計回り方向に1.5度(1度30分)だけ傾き偏心した実施例である。本実施例は上記第1の実施形態の第1変形例の一例になっている。
第4実施例は、第3実施例において、さらに第1光学系4Aの第1レンズ11を紙面時計回り方向に33分だけ傾き偏心した実施例である。本実施例は上記第1の実施形態の第3変形例の他の例になっている。
比較例は、従来例に対する収差低減の割合を算出するために計算したもので、第1実施例で、第2光学系4Bの平行偏心を0mm、すなわち、光軸4aに対して同軸に配置した例である。
いずれも、反射型表示素子3は、アスペクト比4:3の0.55インチDMDを用いるものとする。すなわち、画像表示領域3aの大きさは、W=11.2mm、H=8.4mmである。そして、軸オフセットΔhは、%表示として、Δh=130%としている。
これら実施例の焦点距離は、16.4mm、F値は、2.3である。
物体距離が無限遠のレンズデータを以下に示す。図5に表記されたr、d(iは整数)は、下記のr、dに対応する。長さの単位は、(mm)である。また屈折率については、d線(波長587.56nm)に対するものを表記している。
面番号 曲率半径 面間隔 偏心 屈折率 アッベ数
物体面 ∞ ∞
1 r1 = 44.054 d1 = 2.000 α1 n1 = 1.5163 ν1 = 64.1
2 r2 = 14.882 d2 = 5.168 α1
3 r3 = 58.054 d3 = 2.000 n2 = 1.5163 ν2 = 64.1
4 r4 = 20.547 d4 = 9.075
5 r5 = 226.227 d5 = 3.000 n3 = 1.8052 ν3 = 25.4
6 r6 = -31.665 d6 = 2.766
7 r7 = 16.829 d7 = 5.000 n4 = 1.8061 ν4 = 40.9
8 r8 = -13.402 d8 = 2.000 n5 = 1.6990 ν5 = 30.1
9 r9 = 25.399 d9 = 1.557
10 r10= -18.655 d10= 1.750 n6 = 1.8052 ν6 = 25.4
11 r11= 21.401 d11= 0.981
12 r12=-135.750 d12= 3.500 n7 = 1.6031 ν7 = 60.7
13 r13= -16.139 d13= 0.200
14 r14= 91.202 d14= 3.500 n8 = 1.6031 ν8 = 60.7
15 r15= -22.576 d15=15.000
16 r16= 25.848 d16= 6.500 y1 ,α2 n9 = 1.7200 ν9 = 50.2
17 r17=3092.900 d17= 2.500 y1 ,α2
18 r18= ∞ d18= 3.000 α3 n10= 1.4875 ν10= 70.4
19 r19= ∞ d19= 0.500 α3
像 面 ∞ α3
ここで、y1は平行偏心量を、α1 、α2、α3は傾き偏心量を表し、各実施例に応じて、下表の値をとる。それぞれの方向は上記説明のとおりである(図5矢印参照)。
(mm) α1(分) α2(度) α3(分)
第1実施例 0.3 0 0 0
第2実施例 0.3 0 0 6
第3実施例 0 0 1.5 0
第4実施例 0 33 1.5 0
比較例 0 0 0 0
次に、各実施例、比較例の歪曲収差と像面湾曲との計算結果について説明する。
これらの計算は、逆光線追跡を行い、画像表示領域3a上の値として求めた。
図6は、比較例の歪曲収差を示すベクトル図である。歪曲収差を表すベクトル図の横軸はX軸方向の像高、縦軸はY軸方向の像高を表し、それぞれの単位は(mm)である。また、歪曲収差の計算位置は矢印の始点の格子点に設定され、矢印の方向で歪曲収差の方向を表し、図中のスケールに対する矢線の長さで歪曲収差の大きさを表している(以下も同じ)。図7(a)、(b)は、それぞれ、第1、第2実施例の歪曲収差を示すベクトル図である。図8(a)、(b)は、それぞれ、第3、第4実施例の歪曲収差を示すベクトル図である。図9は、各実施例、比較例の像面湾曲の計算位置を示す模式図である。
各実施例について、歪曲収差の最大値Dmax(mm)と改善率(%)を次の表1に示す。
ここで、改善率は、比較例のDmaxから各実施例のDmaxを引いて比較例のDmaxで割った比率である。
Figure 2007219383
各実施例について、像面湾曲の計算結果を次の表2に示す。
Figure 2007219383
ここで、各像面湾曲量C++、C+−、C−+、C−−、C00は、画像表示領域3aの各頂点位置と中心位置とにおける値であり、図9に示すように、それぞれ、X軸正方向かつY軸正方向の頂点3d、X軸正方向かつY軸負方向の頂点3e、X軸負方向かつY軸正方向の頂点3f、X軸負方向かつY軸負方向の頂点3gと、中心法線3bとの交点の中心位置とに対応するものであり、単位は(mm)である。
また、(max−min)は、すなわち、画像表示領域3a内の像面湾曲の最大値と最小値との差を表す。
また、改善率は、像面湾曲の偏差(max−min)について、比較例のものから各実施例のものを引いて比較例のもので割った比率である。
比較例の歪曲収差は、図6に示すように、X像高の中心のY像高正方向側で歪曲収差が最も小さくなり、Y像高が負の側、X像高の絶対値が大きくなる側でそれぞれ大きくなるような分布を有する。このため、被投影画像の上下方向にわたって不均一な歪みが生じて画質が劣化しているものである。
比較例の像面湾曲は、表2に示すように、図9の頂点3e、3gで大きな値を有する。このため、その近傍でのピントが甘くなっている。
第1実施例では、歪曲収差が、図7(a)に示すように、画像表示領域3aの中心位置で最小となり、上下方向の収差発生量の対称性が良好となっている。また、表1に示すように、Dmaxも比較例に比べて13.7%改善されている。
したがって、本実施例では、歪曲収差の発生方向に第2光学系4Bを平行偏心することで、歪曲収差が格段に向上している。
一方、表2によれば、像面湾曲は全般的に比較例に比べて悪化している。
第2実施例では、歪曲収差が、図7(b)に示すように、略第1実施例と同様な傾向を有し、また、表1に示すように、Dmaxも比較例に比べて12.2%改善されている。
したがって、反射型表示素子3の傾き偏心を加えても第1実施例と略同等に、歪曲収差が格段に向上している。
一方、表2によれば、像面湾曲は、第1実施例よりも比較例に近い値をとり、像面湾曲の偏差は比較例に比べて3.0%改善されている。
このように、平行偏心と傾き偏心とを組み合わせることで、歪曲収差、像面湾曲とも改善されている。
第3の実施例では、歪曲収差が、図8(a)に示すように、略第1実施例と同様な傾向を有し、また、表1に示すように、Dmaxも比較例に比べて3.6%改善されている。このため、画像歪みの改善度合いはやや少ないものの、画像歪みの対称性が良好となるものである。
一方、表2によれば、像面湾曲は、比較例に比べて悪化する傾向にある。
第4の実施例では、歪曲収差が、表1に示すように、Dmaxは、比較例に比べて略同等(−0.7%)の結果であり、図8(b)に示すように、上下方向の対称性は、略第1実施例と同様に良好である。画像歪みの対称性が良好となるものである。
一方、表2によれば、像面湾曲は、第3実施例に比べて著しく改善され、比較例とも略同等(−0.6%)の結果である。
これらの結果より、第2光学系4Bは、平行偏心、傾き偏心のいずれでも歪曲収差を改善することができることが分かる。
また、反射型表示素子3、第1光学系4Aの一部の光学素子を傾き偏心を加えることにより、像面湾曲を改善することができることが分かる。
したがって、これらの平行偏心、傾き偏心を必要に応じて適宜組み合わせることにより、歪曲収差および像面湾曲を改善することができ、画質向上を図ることができる。
その際、偏心方向を逆転すれば、収差の変化方向も逆転するので、必要に応じて光学素子の偏心方向を変えることで、全体の収差をより最適化できるものである。
本発明の第1の実施形態に係る画像投影装置の概略構成を示す模式的な正面図である。 本発明の第1の実施形態に係る画像投影装置に用いる投影光学系の構成を示す光軸を含む断面の概略構成図である。 本発明の第2の実施形態に係る画像投影装置の概略構成を示す模式的な正面図である。 本発明の第2の実施形態に係る画像投影装置に用いる投影光学系の構成を示す光軸を含む断面の概略構成図である。 本発明の第1の実施形態およびその変形例に係る投影光学系の各実施例の概略構成およびその光路を示す光軸を含む断面の概略光路図である。 比較例の歪曲収差を示すベクトル図である。 第1、第2実施例の歪曲収差を示すベクトル図である。 第3、第4実施例の歪曲収差を示すベクトル図である。 各実施例、比較例の像面湾曲の計算位置を示す模式図である。
符号の説明
1、10 プロジェクタ(画像投影装置)
2 照明ユニット
3 反射型表示素子(表示素子)
3a、7a 画像表示領域
3b、7b 中心法線
4 投影光学系
4A 第1光学系
4B 第2光学系
4a 光軸(基準軸)
4b 光軸
5 投影光
6 スクリーン(投影面)
7 透過型表示素子(表示素子)
18 視野レンズ

Claims (5)

  1. 被投影画像を画像表示領域に表示する表示素子と、投影面から前記表示素子までの間の光路に沿って順次配置された第1光学系と第2光学系とを有し、前記画像表示領域を前記第1の光学系の光軸に対して偏心した位置に拡大投影する投影光学系であって、
    前記第1光学系の光軸を基準軸としたときに、
    前記表示素子の画像表示領域が少なくとも平行偏心して配置されるとともに、
    前記第2光学系が偏心して配置されたことを特徴とする投影光学系。
  2. 前記第2光学系が、パワーを有する光学素子としては、前記表示素子に最も近い位置に位置することを特徴とする請求項1に記載の投影光学系。
  3. 前記第1光学系が複数の光学素子からなり、
    該複数の光学素子のうち少なくとも1つの光学素子が、前記基準軸に対して偏心して配置されたことを特徴とする請求項1または2に記載の投影光学系。
  4. 前記表示素子の画像表示領域が、前記基準軸に対して傾き偏心して配置されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の投影光学系。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の投影光学系を用いて、前記画像表示領域の画像を拡大投影する画像投影装置。
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