以下、本発明の実施形態に係るSAW装置について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いられる図は模式的なものであり、図面上の寸法比率等は現実のものとは必ずしも一致していない。
(SAW装置等の構成)
図1は、本発明の実施形態に係るSAW装置1の外観斜視図である。また、図2は、SAW装置1の一部を破断して示す斜視図である。
なお、SAW装置1は、いずれの方向が上方又は下方とされてもよいものであるが、以下の実施形態では、便宜的に、直交座標系xyzを定義するとともに、z方向の正側(図1の紙面上方側)を上方として、カバー9等について上面、下面等の語を用いることがあるものとする。
SAW装置1は、いわゆるウェハレベルパッケージ(WLP)形のSAW装置により構成されている。SAW装置1は、素子基板3と、素子基板3の第1主面3a上に設けられた励振電極5(図2)と、第1主面3a上に設けられ、励振電極5と接続されたパッド7と、励振電極5を覆うとともにパッド7を露出させるカバー9(図1)と、素子基板3の第2主面3bに設けられた裏面部11とを有している。
SAW装置1は、複数のパッド7のいずれかを介して信号の入力がなされる。入力された信号は、励振電極5等によってフィルタリングされる。そして、SAW装置1は、フィルタリングした信号を複数のパッド7のいずれかを介して出力する。各部材の具体的構成は以下のとおりである。
素子基板3は、圧電基板により構成されている。具体的には、例えば、素子基板3は、タンタル酸リチウム単結晶,ニオブ酸リチウム単結晶等の圧電性を有する単結晶の基板により構成されている。素子基板3は、例えば、直方体状に形成されており、矩形状で互いに平行かつ平坦な第1主面3a及び第2主面3bを有している。素子基板3の大きさは適宜に設定されてよいが、例えば、厚さ(z方向)は0.2mm〜0.5mmであり、1辺の長さ(x方向又はy方向)は0.5mm〜2mmである。
励振電極5は、第1主面3a上に層状(平板状)に形成されている。励振電極5は、いわゆるIDT(Interdigital Transducer)であり、一対の櫛歯状電極13を有している。各櫛歯状電極13は、素子基板3における弾性表面波の伝搬方向(本実施形態ではx方向)に延びるバスバー13aと、バスバー13aから上記伝搬方向に直交する方向(本実施形態ではy方向)に伸びる複数の電極指13bとを有している。2つの櫛歯状電極13同士は、それぞれの電極指13bが互いに噛み合う(交差する)ように設けられている。
なお、図2は模式図であることから、数本の電極指13bを有する2対の櫛歯状電極13を示している。実際には、これよりも多数の電極指を有する複数対の櫛歯状電極13が設けられてよい。また、複数の励振電極5が直列接続や並列接続等の方式で接続されたラダー型SAWフィルタが構成されてもよいし、複数の励振電極5がx方向に配列された2重モードSAW共振器フィルタが構成されてもよい。
パッド7は、第1主面3a上に層状に形成されている。パッド7の平面形状は適宜に設定されてよいが、例えば、円形である。パッド7の数及び配置位置は、励振電極5によって構成されるフィルタの構成等に応じて適宜に設定される。本実施形態では、6つのパッド7が第1主面3aの外周に沿って配列されている場合を例示している。
第1主面3a上には、励振電極5及びパッド7の他に、励振電極5同士の接続、励振電極5とパッド7との接続若しくはパッド7同士の接続のための配線15(図2)が設けられている。配線15は、第1主面3a上に層状に形成されている。なお、配線15は、第1主面3a上に形成された部分だけでなく、当該部分に対して絶縁体を介在させた状態で立体交差する部分を有していてもよい。
励振電極5、パッド7及び配線15(の第1主面3a上に形成された部分)は、例えば、互いに同一の導電材料によって構成されている。導電材料は、例えばAl−Cu合金等のAl合金である。また、励振電極5、パッド7及び配線15は、例えば、互いに同一の厚さで形成されており、これらの厚さは、例えば、100〜300nmである。
なお、パッド7は、励振電極5と同一の材料及び厚さの層に加えて、バンプ(図3参照)との接続性を高める等の目的で接続強化層を有していてもよい。例えば、パッド7は、Al−Cu合金の層に重ねられたニッケルの層と、ニッケルの層に重ねられた金の層とを有していてもよい。
カバー9は、第1主面3a上に設けられ、第1主面3aの平面視において励振電極5を囲む枠部17(第1層、図1及び図2)と、枠部17に重ねられ、枠部17の開口を塞ぐ蓋部19(第2層、図1)とを有している。そして、第1主面3a(厳密には後述する保護層25)、枠部17及び蓋部19により囲まれた空間により、励振電極5の振動を容易化する振動空間21(図2)が形成されている。
枠部17は、概ね一定の厚さの層に振動空間21となる開口が1以上(本実施形態では2つ)形成されることにより構成されている。枠部17の厚さ(振動空間21の高さ)は、例えば、数μm〜30μmである。蓋部19は、概ね一定の厚さの層により構成されている。蓋部19の厚さは、例えば、数μm〜30μmである。
枠部17の内縁及び外縁の平面形状及び蓋部19の平面形状は適宜に設定されてよい。本実施形態では、振動空間21の4隅側に位置するパッド7を避けつつ振動空間21の面積を広く確保できるように、枠部17(の外縁)及び蓋部19は、概ね矩形において、パッド7の位置に切り欠きが形成された形状とされている。
蓋部19の外縁は、少なくとも一部(本実施形態では全体)において枠部17の外縁よりも内側に位置している。すなわち、蓋部19の平面形状は、枠部17の外縁の平面形状よりも小さく形成されている。従って、枠部17の上面は外周側が蓋部19から露出している。換言すれば、カバー9は、第1天面9a(図1)と、第1天面9aの外周に位置し、第1天面9aよりも第1主面3aからの高さが低い第2天面9b(図1)とを有している。なお、枠部17の外縁と蓋部19とは相似形とされ、第2天面9bは、一定の幅でカバー9の全周に亘って設けられていることが好ましい。
枠部17及び蓋部19は、同一の材料により形成されていてもよいし、互いに異なる材料により形成されていてもよい。本願では、説明の便宜上、断面図(図3等)においても枠部17と蓋部19との境界線を明示するが、現実の製品においては、枠部17と蓋部19とは、同一材料により一体的に形成されていてもよい。
カバー9(枠部17及び蓋部19)は、感光性の樹脂によって形成されている。感光性の樹脂は、例えば、アクリル基やメタクリル基などのラジカル重合により硬化する、ウレタンアクリレート系、ポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系の樹脂である。
裏面部11は、特に図示しないが、例えば、素子基板3の第2主面3bの概ね全面を覆う裏面電極と、裏面電極を覆う絶縁性の保護層とを有している。裏面電極により、温度変化等により素子基板3表面にチャージされた電荷が放電される。保護層により、素子基板3の損傷が抑制される。なお、以下では、裏面部11は、図示や説明が省略されることがある。
この他、図1及び図2では図示を省略しているが、素子基板3の第1主面3a上には、励振電極5等を覆う保護層25(図6(c)参照)が設けられている。保護層25は、励振電極5の酸化防止等に寄与するものである。保護層25は、例えば、酸化珪素(SiO2など)、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、窒化珪素、又は、シリコンによって形成されている。保護層25の厚さは、例えば、励振電極5の厚さの1/10程度(10〜30nm)、又は励振電極5よりも厚く、200nm〜700nmである。
図3は、SAW装置1が実装された電子部品51の一部を示す断面図であり、図1のIII−III線に対応している。
電子部品51は、実装基板53と、実装基板53の実装面53a上に設けられたパッド55と、パッド55上に配置されたバンプ57と、バンプ57を介して実装面53aに実装されたSAW装置1と、SAW装置1を封止する封止部59とを有している。
なお、電子部品51は、例えば、この他に、実装面53aに実装されて実装基板53を介してSAW装置1と接続され、封止部59によってSAW装置1とともに封止されたIC等を有し、モジュールを構成している。
実装基板53は、例えば、パッド55とともに、若しくはパッド55及びバンプ57とともに、プリント配線板により構成されている。プリント配線板は、リジッド基板であってもよいし、フレキシブル基板であってもよい。また、プリント配線板は、1層板であってもよいし、2層板であってもよいし、多層板であってもよい。また、プリント配線板の基材、絶縁材料、及び導電材料は適宜な材料から選択されてよい。
バンプ57は、加熱によって溶融してパッド7に接着される金属によって形成されている。バンプ57は、例えば、はんだにより構成されている。はんだは、Pb−Sn合金はんだ等の鉛を用いたはんだであってもよいし、Au−Sn合金はんだ、Au−Ge合金はんだ、Sn−Ag合金はんだ、Sn−Cu合金はんだ等の鉛フリーはんだであってもよい。なお、バンプ57は、導電性接着剤によって形成されていてもよい。
SAW装置1は、カバー9の天面側を実装面53aに対向させて配置される。そして、バンプ57がパッド7に接着されることにより、実装面53aに実装される。パッド55、バンプ57及びパッド7の合計の厚みは、カバー9の厚みよりも大きく、カバー9の天面(第1天面9a)と実装面53aとの間には隙間が形成されている。当該隙間の大きさは、例えば10〜20μmである。
封止部59は、例えば、エポキシ樹脂、硬化材及びフィラーを主成分としている。封止部59は、SAW装置1を裏面部11側及び側方から覆うとともに、SAW装置1と実装基板53との間に充填されている。
図4(a)は図3の領域IVaの拡大図である。
封止部59は、樹脂61と、樹脂61に混入されたフィラー63S、63M及び63L(以下、S、M及びLを省略することがある。)とを有している。
樹脂61は、例えば、エポキシ樹脂である。フィラー63は、樹脂61よりも熱膨張率が低い絶縁性粒子により構成されている。絶縁性粒子の材料としては、シリカ、アルミナ、フェノール、ポリエチレン、グラスファイバー、グラファイト等を挙げることができる。好適には、無機材料(例えばシリカ)が用いられる。フィラー63は、表面が曲面状であることが好ましく、より好ましくは、フィラー63は球状である。
フィラー63S、63M及び63Lは、互いの大きさのみが相違する。具体的には、フィラー63S、63M及び63Lの粒径をそれぞれDS、DM及びDLとすると、DS<DM<DLである。
フィラー63の粒径は、例えば、封止部59の研磨面若しくは破断面を電界放出型電子顕微鏡等を用いて撮像することにより、フィラー63を所定数(例えば数十)含む拡大断面画像を取得し、その画像においてフィラー63の最大径を測定することにより得られる。
なお、フィラー63S、63M及び63Lの大きさは、粒径に代えて、断面積若しくは体積によって比較されてもよい。
また、図4(a)では、フィラー63の粒径が、段階的(離散的)に変化している場合、換言すれば、粒径DS、DM及びDLそれぞれが、概ね一定となっている場合を例示しているが、フィラー63の粒径は連続的に変化していてもよい。
粒径DSは、第1天面9aと実装面53aとの距離をS1とすると、DS<S1であり、好ましくは距離S1の2/3未満であり、又は、好ましくは距離S1の半分未満である。例えば、距離S1が18μmであれば、粒径DSは、18μm未満であり、好ましくは12μm未満であり、又は、好ましくは9μm未満である。なお、粒径DSの下限値は、例えば、0.5μmである。
粒径DMは、第2天面9bと実装面53aとの距離をS2とすると、DM<S2である。また、粒径DMは、DS<DMの条件に矛盾を生じない範囲において、好ましくは距離S2の2/3未満であり、又は、好ましくは距離S2の半分未満である。例えば、距離S2が48μmであれば、粒径DSは、48μm未満であり、好ましくは32μm未満であり、又は、好ましくは24μm未満である。
また、粒径DMは、上記の上限に係る条件及びDS<DM<DLの条件に矛盾を生じない範囲において、距離S1の半分以上であり、好ましくは距離S1の2/3以上であり、又は、好ましくは距離S1以上である。例えば、距離S1が18μmであれば、粒径DMは9μm以上であり(粒径DSは9μm未満)、好ましくは12μm以上であり(粒径DSは12μm未満)、又は、好ましくは18μm以上である。
粒径DLは、例えば、素子基板3の第1主面3a(厳密には保護層25の表面)と実装面53aとの距離をS3とすると、DL<S3である。また、粒径DLは、DM<DLの条件に矛盾を生じない範囲において、好ましくは距離S3の2/3未満であり、又は、好ましくは距離S3の半分未満である。例えば、距離S3が78μmであれば、粒径DLは、78μm未満であり、好ましくは52μm未満であり、又は、好ましくは39μm未満(粒径DMは例えば24μm未満)である。
また、粒径DLは、上記の上限に係る条件及びDM<DLの条件に矛盾を生じない範囲において、距離S2の半分以上であり、好ましくは距離S2の2/3以上であり、又は、好ましくは距離S2以上である。例えば、距離S2が48μmであれば、粒径DLは24μm以上であり(粒径DMは24μm未満)、好ましくは32μm以上であり(粒径DMは32μm未満)、又は、好ましくは48μm以上である。
第1天面9aと実装基板53の実装面53aとの間の領域AR1(隙間の大きさが距離S1の領域)においては、フィラー63Sのみが分布している。第2天面9bと実装面53aとの間の領域AR2(隙間の大きさが距離S2の領域)においては、フィラー63S及び63Mが分布している。素子基板3の第1主面3aと実装面53aとの間の領域AR3(隙間の大きさが距離S3の領域)及び素子基板3の側方及び第2主面3b側の領域においては、フィラー63S、63M及び63Lが分布している。
また、領域AR1におけるフィラー63(63S)の含有率(体積率)、領域AR2におけるフィラー63(63S及び63M)の含有率、及び、領域AR3におけるフィラー63(63S、63M及び63L)の含有率をそれぞれ、P1、P2及びP3とすると、P1<P2<P3となっている。P1<P2<P3を満たすことを前提として、例えば、含有率P1は10〜50%、含有率P2は30〜70%、含有率P3は50〜90%である。
なお、フィラー63の含有率は、例えば、封止部59の研磨面若しくは破断面を電界放出型電子顕微鏡等を用いて撮像し、その断面画像からフィラー63の面積比率を測定し、その面積比率を複数断面に関して平均することによって得られる。
図4(b)は、図3の領域IVbの拡大図である。
封止部59は、カバー9の天面と実装基板53の実装面53aとの間において、閉気孔である気孔65A、65B(以下、A、Bを省略することがある。)を含む複数の気孔65が形成されている。
気孔65の内部には所定のガスが適宜な圧力で充填されている。ガスは、例えば、空気又は窒素である。気孔内の圧力は、大気圧よりも高くてもよいし、大気圧と同等でもよいし、大気圧よりも低くてもよい。
複数の気孔65は、種々の大きさ及び形状の気孔65を含んでいる。なお、大きさの変化は、段階的(離散的)であってもよいし、連続的であってもよい。本実施形態では、典型的な大きさ及び形状の気孔65A及び65Bを例示している。
気孔65Aは、第1天面9aから実装面53aに亘る大きさを有しており、実装面53aに沿う方向の径D1が、実装面53aに直交する方向の径(距離S1)よりも大きい扁平状に形成されている。換言すれば、気孔65Aは、第1天面9a側の内周面が第1天面9aに沿う平面状であり、実装面53a側の内周面が実装面53aに沿う平面状である。なお、気孔65Aは、第1天面9a又は実装面53aに接していてもよいし、気孔65Aと第1天面9a又は実装面53aとの間に樹脂61の薄膜が形成されていてもよい。径D1は、例えば、30〜60μmである。
複数の気孔65Aは、好ましくは、枠部17の開口中央側ほど分布数が少なくなっている。また、好ましくは、複数の気孔65Aには、第1主面3aの平面透視において、第1天面9aに沿う平面状の内周面の少なくとも一部が枠部17と重なる気孔65Aが含まれる。
一方、気孔65Bは、概ね球状に形成されており、その径は第1天面9aと実装面53aとの距離S1以下である。距離S1は、例えば、上述のように10〜20μmである。
複数の気孔65Bは、例えば、第1天面9aと実装面53aとの間に均等に分布し、又は、枠部17の開口中央側ほど分布数が多くなり、又は、枠部17の開口中央側ほど分布数が少なくなるが、その減少量が複数の気孔65Aに比較して少ない。
複数の気孔65の気孔率(体積率)は、例えば、カバー9の天面と実装面53aとの間の領域(AR1+AR2)において、0.1%以上10%以下である。また、複数の気孔65の気孔率は、枠部17の開口中央側よりも開口外側において大きくなっていることが好ましい。そのような気孔率の変化は、例えば、上述したように、体積の大きい気孔65Bが相対的に外側に分布し、体積の小さい気孔65Aが相対的に中央側に分布することにより実現されてもよいし、単純に開口外側において気孔65の分布数が多くなることにより実現されてもよい。なお、気孔率は、例えば、上述したフィラー63の体積率の測定と同様にして測定される。
(SAW装置等の製造方法)
図5(a)〜図6(c)は、SAW装置1及び電子部品51の製造方法を説明する断面図(図1のIII−III線に対応)である。製造工程は、図5(a)から図6(c)まで順に進んでいく。
SAW装置1の製造方法に対応する図5(a)〜図6(a)の工程は、いわゆるウエハプロセスにおいて実現される。すなわち、分割されることによって素子基板3となる母基板を対象に、薄膜形成やフォトリソグラフィー法などが行われ、その後、ダイシングされることにより、多数個分のSAW装置1が並行して形成される。ただし、図5(a)〜図6(a)では、1つのSAW装置1に対応する部分のみを図示する。また、導電層や絶縁層は、プロセスの進行に伴って形状が変化するが、変化の前後で共通の符号を用いることがあるものとする。
図5(a)に示すように、まず、素子基板3の第1主面3a上には、励振電極5、パッド7及び配線15(図5(a)では不図示)が形成される。具体的には、まず、スパッタリング法、蒸着法又はCVD(Chemical Vapor Deposition)法等の薄膜形成法により、第1主面3a上に金属層が形成される。次に、金属層に対して、縮小投影露光機(ステッパー)とRIE(Reactive Ion Etching)装置とを用いたフォトリソグラフィー法等によりパターニングが行われる。パターニングにより、励振電極5、配線15及びパッド7が形成される。
励振電極5等が形成されると、図5(b)に示すように、保護層25が形成される。具体的には、まず、適宜な薄膜形成法により保護層25となる薄膜が形成される。薄膜形成法は、例えば、スパッタリング法若しくはCVDである。次に、パッド7が露出するように、フォトリソグラフィー法等によって薄膜の一部が除去される。これにより、保護層25が形成される。
保護層25が形成されると、図5(c)に示すように、枠部17となる、感光性樹脂からなる薄膜が形成される。薄膜は、例えば、フィルムが貼り付けられることによって形成される。フィルムは、例えば、ベースフィルム31と、ベースフィルム31に重ねられ、枠部17となる樹脂層とを有しており、樹脂層を保護層25に密着させた後、矢印y1によって示すように、ベースフィルム31が剥がされる。なお、枠部17となる薄膜は、保護層25と同様の薄膜形成法によって形成されてもよい。
枠部17となる薄膜が形成されると、図5(d)に示すように、フォトリソグラフィー法等により、薄膜の一部が除去され、振動空間21を構成する開口、及び、パッド7を露出させる切り欠きが形成される。また、薄膜は、ダイシングライン上においても、一定の幅で除去される。このようにして枠部17が形成される。なお、枠部17となる薄膜がフィルムの貼り付けによって形成される場合において、ベースフィルム31を剥がす工程は、フォトリソグラフィーの後に行われてもよい。
枠部17が形成されると、図6(a)に示すように、蓋部19が形成される。蓋部19の形成方法は、概ね枠部17の形成方法と同様である。具体的には、まず、蓋部19となる、感光性樹脂からなる薄膜が形成される。薄膜は、例えば、枠部17と同様にフィルムの貼り付けによって形成される。薄膜は、フォトリソグラフィー法等により、外周部分が除去されてパターニングされる。
蓋部19が形成されると、図6(b)以降に示すように、SAW装置1は、ウェハから切り出され、実装基板53に実装される。図6(b)に示すように、SAW装置1の実装前において、実装基板53の実装面53aには、パッド55及びバンプ57が設けられている。バンプ57は、例えば、蒸着法、めっき法若しくは印刷法によって形成され、表面張力の影響等によって概ね球状若しくは半球状に形成されている。
そして、SAW装置1は、カバー9の天面(第1天面9a及び第2天面9b)を実装面53aに対向させて配置される。バンプ57は、パッド7に当接してSAW装置1を支持する。その後、SAW装置1及び実装基板53は、リフロー炉に通されることなどによって一時的に加熱され、バンプ57の溶融及び凝固によってバンプ57とパッド7とは固定される。
その後、図6(c)に示すように、SAW装置1は、封止部59となる材料(フィラー63を含む溶融状態の樹脂61)によって覆われる。封止部59となる材料は、例えば、ディスペンサによる滴下、トランスファーモールド若しくは印刷によってSAW装置1の周囲に供給される。SAW装置1の周囲に供給された封止部59は、付与された圧力によって、矢印y3によって示すように、SAW装置1と実装面53aとの間に流れ込む。そして、樹脂61が凝固すると、図3に示すように、電子部品51が製造される。
溶融状態の樹脂61がSAW装置1と実装面53aとの間に流れ込む過程において、フィラー63S、63M及び63Lも、領域AR3に流れ込んでいく。しかし、領域AR2には、フィラー63S及び63Mのみが流れ込み、さらに、領域AR1にはフィラー63Sのみが流れ込む。すなわち、樹脂61は、順に狭くなる領域AR3、AR2及びAR1に流れ込む際に、あたかも濾過されているかのような状態となり、図4(a)を参照して説明した、フィラー63S、63M及び63Lの分布が実現される。
なお、例えば、フィラー63Sのみが領域AR1に流れ込む絶対的な条件は、DS<S1<DM(<DS)であるが、実際には、概ね、距離S1の2/3未満若しくは半分未満の粒径のフィラー63のみが領域AR1に流れ込む。これは、隙間が狭くなることに伴う樹脂61の流体抵抗の増加が影響していると考えられる。
樹脂61が濾過されつつ領域AR3、AR2及びAR1に順に流れ込んでいくと、徐々にフィラー63の数が減じられ、且つ、減じられるフィラー63は体積が大きいものであるから、フィラー63の含有率P1、P2及びP3は、上述したように、P1<P2<P3となる。
封止部59となる材料の供給は、空気等のガスの雰囲気下に実装面53a及びSAW装置1が晒された状態で行われ、真空雰囲気下では行われない。例えば、ディスペンサによる滴下若しくは印刷は、大気下若しくはさほど減圧されていない減圧下で行われる。また、例えば、トランスファーモールドは金型のキャビティ内を真空引きせずに行われる。
従って、溶融状態の樹脂61は、領域AR1〜AR3に流れ込む際に周囲のガスを巻き込み、これにより気孔65が形成される。また、樹脂61は、SAW装置1の外周側から領域AR1〜AR3(SAW装置1と実装面53aとの隙間)に流れ込んでいくから、当該隙間のガスは周囲を樹脂61によって塞がれて行き場を失い、これにより気孔65が形成される。
気孔65の大きさ若しくは気孔率は、例えば、樹脂61の粘度、SAW装置1の周囲の雰囲気の圧力(真空度)、実装面53aの濡れ性等を調整することにより調整可能である。また、粘度の異なる樹脂61を順次供給したり、樹脂61の供給中において真空度を変化させたり、実装面53aの濡れ性を予め局所的に調整しておいたりすることにより、気孔65の大きさ若しくは気孔率を任意の位置において変化させることができる。
以上の実施形態では、電子部品51は、実装面53aを有する実装基板53と、実装面53aに実装されたSAW装置1と、樹脂61を含んで構成され、SAW装置1を覆うとともにSAW装置1と実装面53aとの間に充填された封止部59と、を有する。SAW装置1は、素子基板3と、素子基板3の第1主面3aに設けられた励振電極5と、励振電極5を覆うカバー9と、を有する。また、SAW装置1は、カバー9の天面(9a、9b)を実装面53aに対向させて実装面53aに実装されている。そして、封止部59には、カバー9と実装面53aとの間において、ガスが閉じ込められた複数の気孔65が分布している。
従って、気孔65がクッションとして機能して、実装基板53からカバー9に加えられる衝撃が緩和される。その結果、第1主面3aの変形が抑制され、ひいては、SAW装置1の信頼性が向上する。なお、一般には、封止樹脂の気孔は好ましくないものとされており、このように複数の気孔を分布させることはない。
また、本実施形態では、カバー9は、素子基板3の第1主面3aの平面視において励振電極5を囲む枠部17と、枠部17に重ねられ、枠部17の開口を塞ぐ蓋部19と、を有する。複数の気孔65は、枠部17の開口中央側よりも枠部17の開口外周側において気孔率が大きくなっている。
ここで、カバー9が枠部17を有する場合においては、実装基板53から封止部59を介してカバー9に加えられた衝撃は、枠部17を介して第1主面3aに伝達される。従って、枠部17の近傍若しくは枠部17と重なる領域において気孔65が形成されていることにより、効率的に衝撃を緩和することができる。
また、本実施形態では、封止部59は、樹脂61よりも熱膨張係数が低い絶縁性の複数のフィラー63を含む。
ここで、封止部59は、気孔65にガスが閉じ込められていることから、全体として熱膨張係数が高くなっている。従って、フィラー63によってカバー9の熱膨張率を下げることにより、封止部59と実装基板53との熱膨張差を緩和できる。また、製造工程に着目すると、樹脂61にフィラー63が混入されていると、ガスはフィラー63を避けて(迂回して)樹脂61内を移動しなければならないことから、ガスが逃げにくくなり、カバー9と実装面53aとの間に気孔65が形成されやすくなる。
また、本実施形態では、複数のフィラー63は、カバー9の天面と実装基板53の実装面53aとの間の少なくとも一部を含む第1領域(例えば領域AR1)と、その外周の第2領域(例えば領域AR2及びAR3)とに分布する第1の粒径の第1のフィラー(例えば63S)と、第1領域に分布せず、第2領域に分布する、第1の粒径よりも大きい第2の粒径の第2のフィラー(例えば63M及び63L)と、を含む。
ここで、粒径の大きいフィラー63ほどクラックの進展を抑制するピン止め効果を発揮する。従って、相対的に粒径が大きなフィラー63が第2領域に配置されることにより、第1領域の気孔65までクラックが進展することが抑制される。その結果、気孔65が開気孔となってクッション機能を失うこと等が抑制される。また、製造工程に着目すると、フィラー63の粒径が大きいほど、フィラー63を避けるガスの経路(迂回の経路)は長くなるから、ガスが逃げにくくなる。そのような粒径の大きなフィラー63が外周側に配置されることにより、カバー9と実装面53aとの間に気孔65が形成されやすくなる。
また、本実施形態では、複数のフィラー63の含有率は、カバー9の天面と実装基板53の実装面53aとの間の少なくとも一部を含む第1領域(例えば領域AR1)よりもその外周の第2領域(例えば領域AR2及びAR3)において高くなっている。
ここで、フィラー63の含有率が高いほど、フィラー63によるクラックの進展を抑制するピン止め効果が発揮される。従って、第2領域における含有率が高くされることにより、第1領域の気孔65までクラックが進展することが抑制される。その結果、気孔65が開気孔となってクッション機能を失うこと等が抑制される。また、製造工程に着目すると、フィラー63の含有率が高いほど、ガスが移動可能なフィラー63間の隙間が少なく且つ小さくなるから、ガスが逃げにくくなる。そのようなフィラー63の含有率が高い領域が外周側に配置されることにより、カバー9と実装面53aとの間に気孔65が形成されやすくなる。
また、本実施形態では、カバー9の天面は、実装基板53の実装面53aに対向する第1天面9aと、第1天面9aの外周側にて実装面53aに対して第1天面9aよりも離間して実装面53aに対向する第2天面9bと、を有する。上述した第1領域は、第1天面9aと実装面53aとの間の領域AR1であり、第2領域は、第2天面9bと実装面53aとの間の領域AR2である。
従って、カバー9と実装面53aとの距離(S1)が短く、実装面53aからカバー9へ衝撃が伝達されやすい領域AR1においては、気孔65による衝撃の緩和を優先させ、カバー9と実装面53aとの距離(S2)が長い領域AR2においては、フィラー63による熱膨張係数の低下を優先させることができる。また、製造工程に着目すると、樹脂61を濾過するような作用により、簡便に、領域AR2において、フィラー63の粒径を大きく若しくはフィラー63の含有率を高くすることができ、ひいては、簡便に領域AR1に気孔65を形成することができる。
また、本実施形態では、複数の気孔65は、カバー9の天面(第1天面9a)から実装基板53の実装面53aに亘る大きさの気孔65(気孔65A及び径が距離S1と同等の気孔65B)を含む。
換言すれば、複数の気孔65は、実装面53aに直交する径が最大径(概ね距離S1)となる気孔65を含んでいる。このような比較的大きな気孔65が形成されることにより、衝撃緩和の効果が十分に発揮される。なお、上述のように、一般には、気孔は好ましくないものとされており、このような大きな気孔が形成されることはない。
また、本実施形態では、上記のカバー9の天面から実装面53aに亘る大きさの気孔65Bは、カバー9の天面(第1天面9a)側の内周面が当該天面に沿う平面状であり、実装面53a側の内周面が実装面53aに沿う平面状である。
従って、カバー9の天面等の平面視における気孔65の面積拡大に伴って、衝撃緩和の効果増大が得られる。また、カバー9の天面及び実装面53aには、樹脂61に実質的に当接しておらず、応力が伝達されない領域が形成されることになるから、衝撃の伝達が著しく抑制される。
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
弾性波装置は、SAW装置に限定されない。例えば、弾性波装置は、圧電薄膜共振器であってもよいし、弾性境界波装置(ただし、広義のSAW装置に含まれる)であってもよい。なお、弾性境界波装置においては、励振電極上に空隙(振動空間)は不要である。換言すれば、カバーは、枠部と蓋部とを有する必要はなく、1層からのみ形成されてよい。また、弾性境界波装置において、保護層とカバーとは兼用されてよい。
また、弾性波装置において、保護層及び裏面部は必須の要件ではなく、省略されてもよい。逆に、弾性波装置は、枠部と蓋部との間に位置する導電層、カバーの天面に重ねられた金属性の補強層(ただし、カバーの一部と捉えられてもよい)など、適宜な層が追加されてもよい。また、素子基板上のパッドと実装基板上のパッドとをバンプにより接続するのではなく、素子基板上のパッド上にカバーを貫通する柱状の端子を設け、その柱状の端子と実装基板上のパッドとをバンプにより接続してもよい。
素子基板、枠部及び蓋部の外縁の相対関係は適宜に設定されてよい。例えば、素子基板の主面はカバーから露出していなくてもよいし、枠部は蓋部から露出していなくてもよい。
また、枠部の外縁の平面形状と蓋部の平面形状とは相似形とされなくてもよい。これら平面形状が相似形とされないカバーの例を図7(a)及び図7(b)に示す。
図7(a)のSAW装置101では、枠部117は、外縁が矩形に形成されるとともに、パッド7を露出させる開口117hが形成されている。なお、枠部117には、図2の枠部17と同様に、振動空間21を構成する開口(蓋部119によって塞がれて不図示)が形成されている。また、蓋部119の平面形状は、枠部117の外縁と同一の矩形において、開口117hを露出させる切り欠き119hが形成された形状とされている。そして、蓋部119の天面により第1天面109aが構成されるとともに、枠部117の天面のうち切り欠き119hから露出した部分により第2天面109bが構成されている。
図7(b)のSAW装置201では、枠部117は、図7(a)に示したものと同様とされている。蓋部219は、振動空間21(蓋部219によって塞がれて不図示)毎に、振動空間21と相似形に形成されて設けられている。そして、1つの枠部117と2つの蓋部219により、1つのカバー209が構成されている。なお、2つの蓋部219を一つの蓋部と捉えてもよいし、逆に、枠部117を適宜な仮想線により分割して捉え、カバーが振動空間21毎に設けられていると捉えてもよい。そして、蓋部219の天面により第1天面209aが構成されるとともに、枠部117の天面のうち蓋部219から露出した部分により第2天面209bが構成されている。
気孔率は、カバー外周側において高くなっていなくてもよい。例えば、気孔率は、カバーの天面に亘って均等であってもよい。なお、弾性境界波装置においては、カバーは枠部を有さず、素子基板の主面の略全面に支持されることから、気孔率がカバーの天面に亘って均等であることが好ましい。
フィラーの粒径が小さい及び/又はフィラーの含有率が低い第1領域、及び、その外周の第2領域は、カバーの第2天面と実装基板の実装面との間の領域(AR2)、及び、素子基板の主面と実装面との間の領域(AR3)であってもよいし、カバーの天面全体(第1天面及び第2天面を有していてもよいし、一平面のみで構成されていてもよい)と実装面との間の領域、及び、素子基板の主面と実装面との間の領域であってもよいし、弾性波装置のカバー側の面全体(カバーから主面が露出していてもよいし、露出していなくてもよい)と実装面との間の領域、及び、弾性波装置の外側の領域であってもよい。
実施形態では、フィラーの含有率が高い領域と、粒径が大きいフィラーが含まれている領域とが一致したが、これらは一致していなくてもよい。また、含有率が高い及び/又は粒径が大きい領域と、封止部が充填される隙間が大きい領域とは一致していなくてもよい。換言すれば、フィラーの含有率若しくは粒径の調整は、隙間の大きさの変化を利用してフィラーが含まれた樹脂を濾過することによるものに限定されない。例えば、フィラーの含有率が異なる樹脂若しくはフィラーの粒径が異なる樹脂を順次弾性波装置の周囲に供給することによって、適宜な位置において含有率若しくは粒径を変化させることができる。
弾性波装置の製造方法は、実施形態において例示したものに限定されない。例えば、振動空間が不要なカバーは、枠部と蓋部とを別個に形成する必要はなく、カバー全体が一回のフォトリソグラフィー等により一体的に形成されてよい。また、例えば、振動空間を要するカバーは、振動空間となる領域に犠牲層を形成して、その後、犠牲層上にカバーとなる樹脂層を形成し、樹脂層内から犠牲層を溶解、流出させることにより形成されてもよい。