以下、本発明の実施形態に係る電子部品について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いられる図は模式的なものであり、図面上の寸法比率等は現実のものとは必ずしも一致していない。
(第1の実施形態)
図1(a)は、本発明の第1の実施形態に係る電子部品1の外観を示す上面1a側から見た斜視図であり、図1(b)は、電子部品1の外観を示す下面1b側から見た斜視図である。
なお、電子部品1は、いずれの方向が上方若しくは下方とされてもよいものであるが、便宜的に、直交座標系xyzを定義するとともに、z方向の正側を上方として、上面若しくは下面の語を用いるものとする。
電子部品1は、例えば、概ね直方体状に形成されており、その下面1bには、複数の外部端子3が適宜な形状及び適宜な数で露出している。電子部品1の大きさは適宜な大きさとされてよいが、例えば、1辺の長さが1mm〜数mmである。
電子部品1は、不図示の実装基板に対して下面1bを対向させて配置され、実装基板に設けられたパッドと複数の外部端子3とが半田バンプ等を介して接合されることにより実装基板に実装される。そして、電子部品1は、例えば、複数の外部端子3のいずれかを介して信号が入力され、入力された信号に所定の処理を施して複数の外部端子3のいずれかから出力する。
なお、複数の外部端子3の数、位置及び役割は、電子部品1内部の構成等に応じて適宜に設定されてよい。本実施形態では、4つの外部端子3が下面1bの4隅に設けられている場合を例示している。
図2は、電子部品1の分解斜視図である。図3(a)は、図2のIIIa−IIIa線に対応する電子部品1の断面図である。図3(b)は、図3(a)の領域IIIbの拡大図である。なお、実際には、電子部品1は、一部の部材の破断無しには図2のように分解することはできない。
電子部品1は、図2に示すように、大きくは3つの部材を含んでいる。すなわち、電子部品1は、支持部材5と、当該支持部材5上に実装されたSAW素子7と、SAW素子7を封止する封止部9とを有している。
また、電子部品1は、図3(a)及び図3(b)に示すように、支持部材5とSAW素子7との間に、これらの電気的接続を行うための半田バンプ8と、製造工程において封止部9となる液状材料が支持部材5とSAW素子7との間に流れ込むことを抑制するための環状半田10とを有している。
支持部材5は、例えば、リジッド式のプリント配線板によって構成されており、絶縁基板11と、絶縁基板11の上面11aに形成された上面導電層13A(図3(a))と、絶縁基板11の内部に上面11aに平行に形成された内部導電層13B(図3(a))と、絶縁基板11の全部又は一部を上下方向に貫通するビア導体15(図3(a))と、絶縁基板11の下面11bに形成された既述の外部端子3とを有している。なお、支持部材5は、内部導電層13Bが設けられないものであってもよい。
絶縁基板11は、例えば、概ね薄型の直方体状に形成されている。また、絶縁基板11は、例えば、樹脂、セラミック及び/又はアモルファス状態の無機材料を含んで形成されている。絶縁基板11は、単一の材料からなるものであってもよいし、基材に樹脂を含浸させた基板のように複合材料からなるものであってもよい。
上面導電層13Aは、半田バンプ8が接合される基板パッド17(図3(a)、図3(b))と、環状半田10が接合される基板環状金属18(図3(a)、図3(b))とを含んでいる。ビア導体15及び内部導電層13Bは、基板パッド17と外部端子3とを接続する配線を含んでいる。なお、上面導電層13A、内部導電層13B及びビア導体15は、インダクタ、コンデンサ若しくは適宜な処理を実行する回路を含んでいてもよい。
SAW素子7は、圧電基板19と、圧電基板19の下面19aに設けられた素子導電層20とを有している。
圧電基板19は、例えば、概ね薄型の直方体状に形成されている。圧電基板19の平面視における大きさは、支持部材5の平面視における大きさよりも小さい。圧電基板19は、例えば、タンタル酸リチウム単結晶、ニオブ酸リチウム単結晶等の圧電性を有する単結晶の基板により構成されている。
素子導電層20は、SAWを励起するための励振電極21(図2)と、半田バンプ8が接合される素子パッド25と、環状半田10が接合される素子環状金属26とを有している。なお、SAW素子7は、この他、圧電基板19の上面19bを覆う電極及び/又は保護層等の適宜な部材を有していてよい。
励振電極21は、いわゆるIDT(InterDigital transducer)であり、図2に示すように、一対の櫛歯電極23を含んでいる。各櫛歯電極23は、バスバー23aと、バスバー23aから延びる複数の電極指23bとを有しており、一対の櫛歯電極23は、互いに噛み合うように(複数の電極指23bが互いに交差するように)配置されている。なお、図2等は模式図であることから、複数本の電極指23bを有する櫛歯電極23が1対のみ図示されているが、実際には、これよりも多くの電極指23bを有する複数対の櫛歯電極23が設けられていてよい。励振電極21は、例えば、SAWフィルタ、SAW共振器及び/又はデュプレクサを構成している。
一対の櫛歯電極23の一方に信号が入力されると、当該信号はSAWに変換されて下面19aを電極指23bに直交する方向(x方向)に伝搬し、再度信号に変換されて一対の櫛歯電極23の他方から出力される。その過程において、信号はフィルタリング等がなされる。
素子パッド25は、下面19aに形成された不図示の配線を介して励振電極21に接続されている。一対の櫛歯電極23の一方は、複数の素子パッド25のいずれかを介して信号が入力され、一対の櫛歯電極23の他方は、複数の素子パッド25のいずれかを介して信号を出力する。
半田バンプ8は、素子パッド25と基板パッド17との間に介在して、これらパッドを接合している。半田バンプ8は、図3(b)に示すように、基板パッド17との接合面よりも素子パッド25との接合面の方が狭くなっている。半田バンプ8を構成する半田は、Pb−Sn合金半田等の鉛を用いた半田であってもよいし、Au−Sn合金半田、Au−Ge合金半田、Sn−Ag合金半田、Sn−Cu合金半田等の鉛フリー半田であってもよい。
環状半田10は、基板環状金属18と素子環状金属26との間に介在して、これら環状金属を接合している。環状半田10を構成する半田は、半田バンプ8と同様に、鉛を用いた半田であってもよいし、鉛フリーの半田であってもよい。
なお、半田バンプ8を構成する半田と、環状半田10を構成する半田とは、互いに同一の組成であってもよいし、互いに異なる組成であってもよい。ただし、これらの半田は、互いに融点が同一若しくは近いことが好ましい。
支持部材5とSAW素子7との間に半田バンプ8及び環状半田10が介在していることにより、絶縁基板11の上面11aと、圧電基板19の下面19aとの間には間隙(対向空間S、図3(a)及び図3(b))が形成されている。これにより、下面19aにおけるSAWの伝搬が容易化されている。なお、半田バンプ8及び環状半田10の厚みは、例えば、30μm程度である。
図2に示すように、素子環状金属26は、複数の素子パッド25や励振電極21が配置される領域を囲む環状に形成されている。特に図示しないが、基板環状金属18も、素子環状金属26に対向する環状に形成されている。また、環状半田10は、素子環状金属26及び基板環状金属18の全周に亘って、これらの間に介在している。従って、絶縁基板11の上面11aと圧電基板19の下面19aとの間の対向空間Sは、環状半田10によって外周側が塞がれている。
素子環状金属26、基板環状金属18及び環状半田10は、例えば、圧電基板19の矩形の外周縁部に沿って概ね矩形状に形成され、各々において、その幅は、例えば、一定である。図3(b)に示すように、基板環状金属18の幅w1は、素子環状金属26の幅w2よりも大きい。例えば、幅w2が40μm〜100μmであるのに対して、幅w1は、幅w2よりも60μm〜100μm大きく設定されている。
なお、素子環状金属26、基板環状金属18及び環状半田10は、基準電位に接続されていてもよいし、電気的に浮遊状態とされていてもよい。
封止部9は、例えば、支持部材5上においてSAW素子7を覆うように設けられている。すなわち、封止部9は、SAW素子7の上面19b及び側面19c、並びに、支持部材5の上面11aのSAW素子7の外周部分に当接している。また、封止部9は、SAW素子7の下面19aと支持部材5の上面11aとの間に入り込み、素子環状金属26、基板環状金属18及び環状半田10の外周面に当接している。封止部9の各種部材への当接部分は、少なくとも一部、好ましくは、全部が接着されていることが好ましい。
封止部9の外形は、例えば、概ね直方体状になるように形成されている。その平面視における形状及び大きさは、例えば、支持部材5の平面形状と同様であり、封止部9の側面は支持部材5の側面と面一になっている。封止部9のSAW素子7上の厚みは、SAW素子7の保護の観点等の種々の観点から適宜な大きさとされてよい。
封止部9は、例えば、樹脂を含んで構成されている。当該樹脂は、好ましくは熱硬化性樹脂であり、熱硬化性樹脂は、例えば、エポキシ樹脂若しくはフェノール樹脂である。樹脂には、当該樹脂よりも熱膨張係数が低い材料により形成された絶縁性粒子からなるフィラーが混入されていてもよい。絶縁性粒子の材料は、例えば、シリカ、アルミナ、フェノール、ポリエチレン、グラスファイバー、グラファイトフィラーである。なお、封止部9は、樹脂以外の材料、例えば、アモルファス状態の無機材料によって構成されていてもよい。
対向空間Sは、封止部9によって密閉されている。対向空間S内は、真空となっていてもよいし、空気等の気体が封入されていてもよい。気体が封入されている場合、その圧力は、対向空間S内の温度が大気の温度と同等のときに、大気圧よりも高くてもよいし、同等でもよいし、大気圧よりも低くてもよい。
図4(a)〜図4(d)は、図3(b)の領域IVa〜領域IVdの拡大図である。
図4(c)及び図4(d)に示すように、支持部材5において、上面導電層13Aは、絶縁基板11上に第1金属層31を有している。第1金属層31は、例えば、Cuによって構成され、信号伝達等を担う。また、上面導電層13Aのうち、基板パッド17及び基板環状金属18は、第1金属層31上に、第2金属層33を有している。第2金属層33は、第1金属層31を構成する金属の半田への拡散抑制及び/又は第1金属層31と半田との接続強化等に寄与するものであり、例えば、Niにより構成されている。
図4(a)及び図4(b)に示すように、SAW素子7の素子導電層20も、上面導電層13Aと同様の構成となっている。すなわち、素子導電層20は、第1金属層31を有し、素子導電層20のうち、素子パッド25及び素子環状金属26は、第1金属層31上に、第2金属層33を有している。ただし、素子導電層20において、第1金属層31は、例えば、Al−Cu合金等の励振電極21の形成に適した金属により構成されている。素子導電層20の第2金属層33は、上面導電層13Aの第2金属層33と同様に、例えば、Niにより構成されている。
図4(a)〜図4(d)に示すように、半田バンプ8及び環状半田10には、第2金属層33を構成する金属が拡散されて、合金層35が形成されている。これにより、半田37と第2金属層33との接合が強化されている。合金層35は、例えば、Ni−Sn合金により構成されている。
素子導電層20において、第1金属層31の厚みは、例えば、110〜450nm、第2金属層33の厚みは、例えば、2μmである。上面導電層13Aにおいて、第1金属層31の厚みは、例えば、5〜15μm、第2金属層33の厚みは、例えば、2μmである。
半田バンプ8において、素子パッド25側の合金層35の厚みt1(図4(a))は、基板パッド17側の合金層35の厚みt3(図4(c))よりも厚くなっている(例えば2倍となっている。)。換言すれば、半田バンプ8において、素子パッド25からのNi拡散量は、基板パッド17からのNi拡散量よりも多い。厚みt1は、例えば、1000Åであり、厚みt3は、例えば、500Åである。
環状半田10において、基板環状金属18側の合金層35の厚みt4(図4(d))は、素子環状金属26側の合金層35の厚みt2(図4(b))よりも厚くなっている(例えば2倍となっている。)。換言すれば、環状半田10において、基板環状金属18からのNi拡散量は、素子環状金属26からのNi拡散量よりも多い。厚みt4は、例えば、1000Åであり、厚みt2は、例えば、500Åである。
なお、合金層35等の厚みは、例えば、半田バンプ8等の破断面の拡大画像を電子顕微鏡によって取得することによって計測可能である。合金層35は、半田37側において波打っていることから、例えば、その平均の厚さを用いて、合金層35の厚さを評価してよい。平均の厚さは、例えば、画像処理によって合金層35の面積を算出し、合金層35の幅によって除することによって得られる。
図5(a)〜図7(b)は、電子部品1の製造方法を説明する、図3(a)に対応する断面図である。
まず、図5(a)に示すように、SAW素子7が用意される。なお、図5(a)〜図5(c)に示すSAW素子7は、例えば、複数のSAW素子7を含む母基板が分割される前の状態である。
SAW素子7は、例えば、分割されることによって圧電基板19となる母基板を対象に素子導電層20が形成されることによって作製される。例えば、まず、スパッタリング法、蒸着法またはCVD(Chemical Vapor Deposition)等の薄膜形成法により、下面19a上に第1金属層31となる金属層を形成し、その金属層に対してフォトリソグラフィー法等によりパターニングを行って第1金属層31を形成する。次に、素子パッド25及び素子環状金属26が形成されるべき位置において、第1金属層31上にNi及びAuの電解若しくは無電解めっきを施す。Niのめっきによって第2金属層33が形成される。Auめっきは、半田の素子パッド25及び素子環状金属26に対する濡れ性を向上させるためのものである。なお、NiとAuとの間にPdが配置されてもよい。
SAW素子7が用意されると、図5(b)に示すように、半田ペーストの状態の半田バンプ8が素子パッド25上に形成される。半田ペーストは、公知のように、粉末半田と液状フラックスとが混練されて成り、適宜な粘度を有している。半田ペーストの塗布は、例えば、スクリーン印刷によって行われる。なお、半田ペーストの状態の半田バンプ8の高さは、例えば、スクリーン印刷版の版厚、メッシュの開口率、印圧、スキージの角度、スキージの形状等を調整することによって調整される。
次に、図5(c)に示すように、半田ペーストの状態の半田バンプ8を加熱して溶融し、その後、冷却(除熱)することによって、半田バンプ8を固化する。半田バンプ8の形状は、溶融状態のときの表面張力によって半球状となる。固化した半田バンプ8の高さh2は、例えば、半田ペーストの量(高さ)、素子パッド25の面積等を調整することによって調整される。
半田バンプ8が溶融しているとき、素子パッド25において、第2金属層33上に形成されていたAuの層は、Auが半田バンプ8に拡散することによって実質的に消失する。そして、第2金属層33を構成する金属(Ni)が半田バンプ8に拡散し、半田バンプ8の素子パッド25側の合金層35(図4(a))が形成される。ただし、図5(c)の工程の終了時点では、当該合金層35の厚みは、図4(a)に示した厚みt1よりも小さい。
なお、特に図示しないが、半田バンプ8が固化された後、SAW素子7は、フラックスを除去する洗浄等が行われる。
一方、図5(a)〜図5(c)の工程に並行して、図6(a)〜図6(c)の工程が行われる。
具体的には、まず、図6(a)に示すように、支持部材5が用意される。なお、図6(a)〜図6(c)に示す支持部材5は、例えば、複数の支持部材5を含む母基板が分割される前の状態である。
支持部材5は、例えば、一般的なプリント配線板と同様に作製される。例えば、第1金属層31となる導電ペーストが配置されたセラミックグリーンシートが焼成されたり、又は、絶縁基板11に対してアディティブ法若しくはサブトラクティブ法によって第1金属層31を形成したりすることにより、支持部材5は作製される。基板パッド17及び基板環状金属18が形成されるべき位置においては、第1金属層31上にNi及びAuの電解若しくは無電解めっきが施され、Niのめっきによって第2金属層33が形成される。Auめっきは、半田の基板パッド17及び基板環状金属18に対する濡れ性を向上させるためのものである。なお、NiとAuとの間にPdが配置されてもよい。
支持部材5が用意されると、図6(b)に示すように、半田ペーストの状態の環状半田10が基板環状金属18上に形成される。当該形成方法は、半田ペーストの状態の半田バンプ8の形成方法と同様でよい。
次に、図6(c)に示すように、半田ペーストの状態の環状半田10を加熱して溶融し、その後、冷却(除熱)することによって、環状半田10を固化する。環状半田10の形状は、溶融状態のときの表面張力によって断面半円形となる。固化した環状半田10の高さh1は、例えば、半田ペーストの量(高さ)、基板環状金属18の幅等を調整することによって調整される。
環状半田10が溶融しているとき、半田バンプ8が溶融したときと同様の現象が生じる。すなわち、基板環状金属18上において、第2金属層33上に形成されていたAuの層は実質的に消失し、第2金属層33を構成する金属(Ni)が環状半田10に拡散し、環状半田10の基板環状金属18側の合金層35(図4(d))が形成される。ただし、図6(c)の工程の終了時点では、当該合金層35の厚みは、図4(d)に示した厚みt4よりも小さい。
なお、特に図示しないが、環状半田10が固化された後、支持部材5は、フラックスを除去する洗浄等が行われる。
SAW素子7に半田バンプ8が形成され、支持部材5に環状半田10が形成されると、図7(a)に示すように、SAW素子7を支持部材5上に配置する。
なお、図7(a)〜図7(c)においては、例えば、SAW素子7は、複数のSAW素子7を含む母基板が分割されて個片化された状態であり、支持部材5は、複数の支持部材5を含む母基板が分割される前の状態である。
次に、図7(b)に示すように、SAW素子7及び支持部材5をリフロー炉等によって加熱することにより、半田バンプ8及び環状半田10を共に加熱して溶融し、その後、冷却(除熱)することにより再度固化する。これにより、SAW素子7に設けられていた半田バンプ8は、支持部材5の基板パッド17に接合され、支持部材5に設けられていた環状半田10は、SAW素子7の素子環状金属26に接合される。
図7(b)の工程において半田バンプ8が溶融しているとき、基板パッド17側においては、図5(c)の工程において半田バンプ8が溶融したときと同様の現象が生じる。すなわち、基板パッド17上において、第2金属層33上に形成されていたAuの層は実質的に消失し、第2金属層33を構成する金属(Ni)が半田バンプ8に拡散し、半田バンプ8の基板パッド17側の合金層35(図4(c))が形成される。この合金層35の厚みは、図4(c)に示した厚みt3である。
また、図7(b)の工程において半田バンプ8が溶融しているとき、図5(c)の工程によって既に半田バンプ8と接合されていた素子パッド25側においては、素子パッド25の第2金属層33を構成する金属(Ni)が更に半田バンプ8に拡散する。その結果、既に素子パッド25側に形成されていた合金層35(図4(a))の厚みは大きくなり、図4(a)に示した厚みt1となる。
このように、半田バンプ8は、基板パッド17側においては、合金層35が1回の加熱(図7(b))において形成され、素子パッド25側においては、合金層35が2回の加熱(図5(c)及び図7(b))において形成されることから、半田バンプ8において、素子パッド25側の合金層35の厚みt1は、基板パッド17側の合金層35の厚みt3よりも大きくなり、また、概ね2倍となる。
環状半田10においても、SAW素子7側と支持部材5側とを逆にして、半田バンプ8と同様の現象が生じる。すなわち、図7(b)の工程において環状半田10が溶融しているとき、新たに接合される素子環状金属26側においては、厚みt2の合金層35(図4(b))が形成され、既に接合されていた基板環状金属18側においては、合金層35(図4(d))の厚みが大きくなり、厚みt2の概ね2倍の厚みt4となる。
図7(a)に示されているように、例えば、半田バンプ8の高さh2は、環状半田10の高さh1よりも高く設定されている。従って、半田バンプ8の接合は、環状半田10に阻害されることが抑制され、確実になされる。換言すれば、半田バンプ8の接合が環状半田10の接合に優先される。これは、半田バンプ8の接合が不完全であると、信号の入出力が阻害されて電子部品1が不良品となる蓋然性が高い一方で、環状半田10の接合が不十分であっても、必ずしも電子部品1が不良品となるとは限らないことからである。
高さh2は、好ましくは、1.12×h1〜1.2×h1である。この範囲であることにより、半田バンプ8の接合を環状半田10の接合に優先させて確実に半田バンプ8を接合する効果を得つつ、環状半田10の接合不良も抑制することができる。
半田バンプ8及び環状半田10の接合によってSAW素子7が支持部材5に表面実装されると、図7(c)に示すように、封止部9となる液状の樹脂47が供給される。樹脂47の供給は、例えば、スクリーン印刷によって行われる。樹脂47の供給は、大気圧下で行われてもよいし、真空雰囲気下で行われてもよい。
液状の樹脂47が供給されると、環状半田10、基板環状金属18及び素子環状金属26は、樹脂47が対向空間Sへ流れ込むことを阻止する堰として機能する。なお、環状半田10と素子環状金属26との間等に若干の隙間があったとしても、樹脂47にある程度の粘度が付与されていれば、樹脂47は当該隙間から対向空間Sへ流れ込むことはなく、電子部品1は不良品とはならない。樹脂47の粘度は、例えば、樹脂47の組成、効果促進剤の含有量、硬化温度によって調整される。
その後、樹脂47は、加熱されて硬化する。そして、硬化した樹脂47及び複数の支持部材5からなる母基板はダイシングされ、個片化された電子部品1が作製される。
以上のとおり、本実施形態では、電子部品1の製造方法は、基板パッド17及び基板環状金属18を上面11aに有する支持部材5を準備する第1工程(図6(a))と、素子パッド25及び素子環状金属26を下面19aに有するSAW素子7を準備する第2工程(図5(a))と、第2工程の後、素子パッド25に半田ペーストの状態の半田バンプ8を形成する第3工程(図5(b))と、第1工程の後、基板環状金属18に半田ペーストの状態の環状半田10を形成する第4工程(図6(b))と、第3工程及び前記第4工程の後、半田バンプ8を基板パッド17に接続し、かつ、素子環状金属26を環状半田10に接続する第5工程(図7(b))と、第5工程の後、環状半田10の外周に封止部9を配置する第6工程(図7(c))と、を備える。
従って、半田バンプ8及び環状半田10のいずれも半田で形成して(融点が同じ若しくは近い材料により形成して)、共に(同時に)接合する(図7(b))簡便な製造方法を維持しつつ、半田バンプ8と環状半田10とを別個に形成して、両者の高さを別個に管理することができる。その結果、例えば、半田バンプ8の高さh2を環状半田10の高さh1に対して適切な差で大きくして、半田バンプ8の接合を確実に行うことができる。また、支持部材5及びSAW素子7の一方において、別々に半田バンプ8及び環状半田10を形成する場合に比較して、スクリーン版の形状を簡素化することができるなど、半田バンプ8及び環状半田10の形成が容易である。
電子部品1の製造方法は、更に、第3工程(図5(b))の後且つ第5工程(図7(b))の前に、半田ペーストの状態の半田バンプ8に対して加熱及び除熱を行い、半田バンプ8を固化する第7工程(図5(c))と、第4工程(図6(b))の後且つ第5工程(図7(b))の前に、半田ペーストの状態の環状半田10に対して加熱及び除熱を行い、環状半田10を固化する第8工程(図6(c))とを備えている。
従って、半田バンプ8及び環状半田10は、形が整えられるとともに高さが変動しない状態で、SAW素子7の支持部材5への実装まで待機することになる。その結果、実装時までの半田バンプ8及び環状半田10の高さ管理の精度が向上する。
また、環状半田10が予め形成される基板環状金属18の幅w1は、環状半田10が後に接合される素子環状金属26の幅w1よりも広い。従って、環状半田10を構成する半田の量を十分に確保して、液状の樹脂47が対向空間Sに浸入することを抑制しつつ、素子環状金属26側においては省スペース化を図ることができる。
また、本実施形態の電子部品1は、Niを含む基板パッド17及び基板環状金属18を上面11aに有する支持部材5と、Niを含む素子パッド25及び素子環状金属26を下面19aに有するSAW素子7と、基板パッド17と素子パッド25との間に介在してこれらを接続する半田バンプ8と、基板環状金属18と素子環状金属26との間に介在してこれらを接続する環状半田10と、環状半田10の外周を覆う封止部9と、を有する。半田バンプ8において、素子パッド25からのNi拡散量(図4(a)の厚みt1)は、基板パッド17からのNi拡散量(図4(c)の厚みt3)より多く、環状半田10において、基板環状金属18からのNi拡散量(図4(d)の厚みt4)は、素子環状金属26からのNi拡散量(図4(b)の厚みt2)より多い。
すなわち、上述した半田バンプ8及び環状半田10の高さの管理を好適に行うことができる製造方法によって、SAW素子7側の接合強度と支持部材5側の接合強度とのバランスを好適化した電子部品1が得られる。接合強度に係る効果は、具体的には、以下のとおりである。
SAW素子7を支持部材5に実装する工程(図7(b))では、半田バンプ8は潰れるので、図3(b)に示したように、半田バンプ8は、SAW素子7側が支持部材5側よりも細くなりやすい。従って、半田バンプ8において、SAW素子7側の素子パッド25からのNi拡散量を大きくし、半田バンプ8とSAW素子7との接合強度を大きくすることによって、断線を好適に抑制できる。
一方、電子部品1に曲げ応力が加えられるような場合においては、支持部材5の変形の抑制に優先して、SAW素子7の変形が抑制された方が電気特性の維持の観点から好ましい。そこで、環状半田10において、SAW素子7側の素子環状金属26からのNi拡散量を少なくし、環状半田10とSAW素子7との接合が、環状半田10と支持部材5との接合よりも先に解除されるようにすることによって、SAW素子7への応力の伝達が抑制され、ひいては、SAW素子7の変形が好適に抑制される。
なお、以上の第1の実施形態において、基板パッド17は第1パッドの一例であり、基板環状金属18は本発明の第1環状金属の一例であり、素子パッド25は本発明の第2パッドの一例であり、素子環状金属26は本発明の第2環状金属の一例であり、SAW素子7は本発明の電子素子の一例であり、封止部9(樹脂47)は本発明の封止材の一例である。
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係る電子部品の概略構成は、第1の実施形態の電子部品の概略構成と同様である。すなわち、第2の実施形態に係る電子部品は、図1、図2及び図3(a)に示した構成を有している。
図8は、第2の実施形態に係る電子部品の一部を示す、図3(b)に相当する断面図である。第2の実施形態においては、第1の実施形態とは逆に、素子環状金属26の幅w2が基板環状金属18の幅w1よりも広く設定されている。その他の構成については、図8は、図3(b)と同様である。
図9(a)及び図9(b)は、第2の実施形態の電子部品の製造方法を説明する断面図である。
第1の実施形態においては、半田バンプ8がSAW素子7に形成され(図5(c))、環状半田10が支持部材5に形成された(図6(c))のに対し、第2の実施形態においては、環状半田10がSAW素子7に形成され(図9(a))、半田バンプ8が支持部材5に形成される(図9(b))。その他の手順については、第2の実施形態に係る電子部品の製造方法は、第1の実施形態に係る電子部品の製造方法と同様である。
すなわち、第2の実施形態に係る電子部品の製造方法は、基板パッド17及び基板環状金属18を上面11aに有する支持部材5を準備する第1工程(図5(a))と、素子パッド25及び素子環状金属26を下面19aに有するSAW素子7を準備する第2工程(図6(a))と、第2工程の後、素子環状金属26に半田ペーストの状態の環状半田10を形成する第3工程(図示省略。図5(b)及び図6(b)並びに図9(a)参照)と、第1工程の後、基板パッド17に半田ペーストの状態の半田バンプ8を形成する第4工程(図示省略。図5(b)及び図6(b)並びに図9(b)参照)と、第3工程及び第4工程の後、素子パッド25を半田バンプ8に接続し、かつ、環状半田10を基板環状金属18に接続する第5工程(図7(b))と、第5工程の後、環状半田10の外周に封止部9を配置する第6工程(図7(c))と、を備える。
また、当該製造方法は、第3工程の後且つ第5工程の前に、半田ペーストの状態の環状半田10に対して加熱及び除熱を行い、環状半田10を固化する第7工程(図9(a))と、第4工程の後且つ第5工程の前に、半田ペーストの状態の半田バンプ8に対して加熱及び除熱を行い、半田バンプ8を固化する第8工程(図9(b))とを備えている。
第2の実施形態の製造方法においても、第1の実施形態の製造方法と同様の効果が奏される。すなわち、半田バンプ8と環状半田10とを別個に形成して、両者の高さを別個に管理することができる。
また、環状半田10が予め形成される素子環状金属26の幅w2が環状半田10が後に接合される基板環状金属18の幅w1よりも広いことによって、環状半田10を構成する半田の量を十分に確保して、液状の樹脂47が対向空間Sに浸入することを抑制しつつ、基板環状金属18側においては省スペース化を図ることができる。
なお、特に図示しないが、第2の実施形態においては、その製造方法から理解されるように、合金層35の厚みの大小関係は、第1の実施形態における合金層35の厚みの大小関係と逆になる。すなわち、半田バンプ8は、基板パッド17からのNi拡散量が素子パッド25からのNi拡散量よりも多く(例えば2倍)、環状半田10は、素子環状金属26からのNi拡散量が基板環状金属18からのNi拡散量よりも多い。
本発明は、以上の実施形態及び変形例に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
電子部品は、SAW装置に限定されない。換言すれば、電子素子は、SAW素子に限定されない。電子素子は、弾性波を利用しないものであってもよいし、圧電薄膜共振器等のSAW以外の弾性波を利用するものであってもよい。
支持部材は、電子素子と実装基板とを仲介するものに限定されない。例えば、支持部材は、携帯機器等の電子機器のマザーボード(メインボード、主基板)として機能するものであってもよい。また、支持部材は、複数の電子素子が実装されるものであってもよい。
電子素子において、対向空間内に位置する配線や機能体(励振電極)は、これらの酸化防止等に寄与する絶縁性の保護層に覆われていてもよい。なお、保護層は、例えば、酸化珪素(SiO2など)、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、窒化珪素、またはシリコンにより形成されている。電子素子は、一の面に並列配置された2以上の環状半田によって対向空間が2以上設けられるものであってもよい。
第1及び第2環状金属の幅は、互いに同一とされたり、実施形態とは逆の大小関係とされたりしてもよい。また、これらの環状金属には、図7(b)に示した接合工程において対向空間S内の気体を外部へ逃がすためのスリットが形成されていてもよい。ただし、この場合、封止材がスリットを介して対向空間内へ浸入しないように、封止材の粘度を適宜に調整する必要がある。
パッド及び環状金属を構成する金属層は、第1金属層及び第2金属層からなるものに限定されず、1層のみからなるものであってもよいし(例えばNi層のみ)、3層以上からなるものであってもよい。また、Niは必須ではない。
半田バンプ及び環状半田は、互いに同一の高さとされてもよいし、環状半田の高さが半田バンプの高さよりも高くされてもよい。また、半田バンプ及び環状半田は、半田ペーストの状態のまま(図5(c)及び図6(c)の工程を省略して)、電子素子を支持部材に実装するための接合(図7(b)参照)が行われてもよい。