JP5693014B2 - 油性インキ並びに筆記可能なマーキングペン - Google Patents

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本発明は、水で濡れた面に塗ることが可能な油性インキ並びに筆記可能なマーキングペンに関する。
水に濡れた面に筆記可能なマーキングペン用油性インキとしては、特許文献1及び特許文献2等が公知である。
しかしながら特許文献1のインキは着色剤として特定の染料を用いた油性サインペン用のインキであり、筆記線は日光に当たると数日で退色してしまう欠点があるため実用的ではなかった。
又、特許文献2のインキは着色剤として顔料を用いているため耐候・耐光性に優れ、且つ疎水性シリカを用いて水に濡れた面にも筆記可能としている。しかしながら、屋外で使用する条件、すなわち少し濡れた状態(夜露や霧雨で濡れた水深1mm以下の状態)だけではなく一般的な雨で濡れた状態(水深2〜15mm程度)でテストするとインクが滲み易く、一部が水面に浮き汚してしまう事、又すぐに掠れが発生する等の程度の欠点があった。
又、疎水性シリカ微粒子は金属粉を用いたメタリック色油性インキに配合した場合には、時間の経過とともに固化(ハードケーキ化)し易く、容易に再攪拌できなくなってしまう欠点がある。
特許第4141274号 特開2007−291304号公報
本発明は、水で濡れた面であっても周囲を汚すこと無く鮮明に繰り返し塗る事が可能な油性インキ及び筆記可能なマーキングペンを提供することを目的とする。
また、対象物にインキが強く密着し、且つ耐水性・耐候性・耐光性が良好な油性インキ及び水で濡れた面に筆記可能なマーキングペンを提供することを他の目的とする。
本発明に係る油性インキは、着色剤と;有機溶剤と;樹脂と;平均粒子径が1〜15μmの微細高分子粉とを含むことを特徴とする。
前記着色剤は、少なくとも有機顔料又は無機顔料を含む構成とすることができる。この場合の前記樹脂としては、ロジン誘導体又はアルキルフェノール樹脂を使用することが好ましい。
また、前記着色剤は、少なくともアルミニウム、銅又は銅合金を含む微細金属粉を含む構成とすることができる。この場合の前記樹脂としては、アルキルフェノール樹脂又は脂環族飽和炭化水素樹脂を使用することが好ましい。
好ましくは、前記有機溶剤は、炭素数6〜10の飽和炭化水素から構成する。
また、例えば、水配基を含有するカルボン酸エステル類からなる、分散剤を更に配合することが好ましい。
本発明においては、特定の樹脂、特定の有機溶剤及び特定の微細高分子粉を配合したことにより、従来の油性インキにはない特徴のある油性インキを得ることができた。即ち、水で濡れた面及び水没状態(水深2〜15mm)近い面であっても周囲を汚すことがなく鮮明に何度でも繰り返し塗ることあるいは筆記ができ、対象物にインキが強く密着し、しかも作業性が高く且つ耐水性・耐候性・耐光性が良好な油性インキを得ることができた。
また、本発明の油性インキを内蔵したマーキングペンは雨に濡れた面や水没状態に近い面にも周囲を汚すことがなく筆記可能なため効率よく筆記あるいはマーキング作業が行えるという従来にないマーキングペンを提供する事が可能になった。
図1は、本発明の実施例に係るマーキングペンの構造を示す断面図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
(着色剤)
本発明の油性インキでは、着色剤として、一般的に使用されている有機顔料、無機顔料及び金属粉を用いる。具体的にはアゾ系、シアニン系、フタロシアニン系、ジオキサン系、アンスラキノン系、キナクリドン系、インジゴ系などの有機顔料;カーボンブラック、酸化チタン、紅ガラ、パール顔料、ガラス粉などの無機顔料;アルミニウム、銅、銅合金からなる微細金属粉を単独又は2種以上混合して用いることができる。着色剤はインキ全量に対して0〜70重量%(0重量%のときはクリアーインキ)を使用する。マーキングペン用油性インキには平均粒径が10μm以下の着色剤を0〜40重量%使用することが好ましい。
(有機溶剤)
有機溶剤として、炭素数6〜10のノルマルパラフィン系炭化水素、イソパラフィン系炭化水素及びシクロパラフィン系炭化水素からなる飽和炭化水素を用いる。具体的には、n-ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−デカンなどのノルマルパラフィン系炭化水素;イソヘプタン、イソオクタン、イソノナン、イソデカン等のイソパラフィン系炭化水素;及びシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等のシクロパラフィン系炭化水素を単独あるいは2種類以上混合して用いることができる。特にシクロパラフィン系炭化水素は撥水効果が高いため主溶剤として用いることが好ましい。又、炭素数11〜12の飽和炭化水素も使用可能であるが、乾燥時間が遅くなる為20重量%以下で使用することが好ましい。有機溶剤はインキ全量に対して、10〜90重量を使用する。
(樹脂)
樹脂として、有機顔料又は無機顔料用にはロジン誘導体又はアルキルフェノール樹脂を、又、微細金属粉にはアルキルフェノール樹脂又は脂環族飽和炭化水素樹脂を用いる。ただしロジン誘導体は酸化が高い樹脂が多く、金属粉を変色させるためメタリック色インキには使用しない。
具体的には精製ロジン(加工ロジン)、ロジンエステル、アクリル酸変性ロジン等のロジン誘導体;ヘキシルフェノール樹脂、ヘプチルフェノール樹脂、オクチルフェノール樹脂、ノニルフェノール樹脂、デシルフェノール樹脂等のアルキルフェノール樹脂;水素添加炭化水素樹脂からなる脂環族飽和炭化水素樹脂を単独あるいは2種以上混合して用いることができる。特にアルキルフェノール樹脂は撥水効果が高い為併用する事が好ましい。樹脂は、インキ全量に対して5〜70重量%使用する。マーキングペン用油性インキには10〜40重量%使用することが好ましい。
(微細高分子粉)
微細高分子粉として、平均粒子径が1〜15μmであるアクリル樹脂粒子、フッ素樹脂粒子及びフッ素樹脂変性エチレン樹脂粒子を単独あるいは2種以上混合して用いることができる。微細高分子粉は疎水性シリカ微粒子と比較して撥水性が強く、且つ比重が軽い(少ない)ため着色剤を安定化する作用も高く、油性インキが固化(ハードケーキ化)することも少ない。さらに耐摩耗性の向上機能も併せ持つためスリキズ防止作用も有るのでより高機能な油性インキを作る事ができる。微細高分子粉はインキ全量に対して0.5〜15重量%使用する。マーキングペン用油性インキには平均粒径が1〜10μmの微細高分子粉を2〜8重量%使用するのが好ましい。
(分散剤)
分散剤は一般の油性インキに用いられている分散剤が使用できる。本発明の油性インキには着色剤として顔料を使用しているので、インクの安定化や色分かれを防止するため分散剤を用いるのが好ましい。分散剤は、インキ全量に対して0.2〜10重量%を使用する。
特に水酸基を含有するカルボン酸エステル類からなる分散剤は、他の分散剤と比べインクの安定化や色分かれ防止効果が高いだけではなく、水に対する撥水助剤としての効果も高い。微細高分子粉との相乗効果により水没状態に近い(水深2〜15mm程度)対象物にも水を切り裂く様にして塗りあるいは筆記できる。
又、一般の油性インキに用いられる安定剤、増粘剤などの添加剤を更に配合することができる。
金属粉を用いた油性インキに使用可能な樹脂として、他に脂肪族飽和炭化水素からなる石油樹脂がある。この樹脂は本発明の樹脂に比べ水に濡れた面での筆記製及び密着性が少し劣るが、全樹脂分の40重量%以下の範囲であれば配合可能である。
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明する。表1に実施例のインキ組成(配合表)及び表2に比較例のインキ組成(配合表)を示し、表3に試験結果を示す。なお表中の( )内は平均粒子径を示す。
使用した分散剤は次のとおりである。
(本発明の分散剤)
分散剤A・・・BYKChmie社製Disperbyk-108
(水酸基を含有するカルボン酸エステル)
(特許文献2の分散剤)
分散剤B・・・BYKChmie社製Disperbyk-111
分散剤C・・・日本ルーブリゾール社製SOLSPERSE300
分散剤D・・・日本ルーブリゾール社製SOLSPERSE11200
(実施例及び比較例のインキの調製)
インキは、表1及び表2に示す処方(重量比率)に従って、溶剤に樹脂を加え、ディスパーによって1〜2時間攪拌し完全に溶解してビヒクル(ワニス)とする。該ビヒクルに着色剤、微細高分子粉、必要に応じ分散剤を加え、ビーズミル又はディスパーにて2〜3時間充分に攪拌・分散し、各油性インキを得た。
表1の配合番号1〜8はマーキングペン用油性インキの配合例を、又配合番号9〜10は刷毛塗り用の油性インキの配合例を示す。表2の配合番号1〜5は疎水性シリカ微粒子入りの比較例を、又配合番号6〜10は微細高分子粉を溶剤に変更した比較例を示す。マーキングペン用の油性インキはペン体からの流出性、筆記性能及び攪拌球による再攪拌性等の面から8〜40mPa.Sの粘度範囲に調整することが好ましい。
Figure 0005693014
Figure 0005693014
Figure 0005693014
図1に、本発明に使用したマーキングペンの実施例(構造図)を示す。マーキングペンは、ホルダー部3に繊維束を樹脂加工したペン体2が軸方向に摺動可能に装着され、ペン体2の端部をウエタンスポンジ6が包み、後端は軸胴4前部に装着された弁座7、弁ケース8、弁芯9及び、バネ10から成る弁機構に接続されている。軸胴内には、インキ収容部12があり、前記軸胴内に収容されたインキ5は、収容部内に遊挿された攪拌球11が軸胴部の振盪により転動して攪拌可能になっている。前記ペン体2のポンピング(上下に移動する)操作により、弁機構を作動させてペン体からのインキ流出量をコントロールできる機構となっている。
市販の線幅3mmのペン体(ペン芯径5mm)付マーカーペン容器に実施例(1〜8)及び比較例(1〜10)の油性インキを収容しマーカーペンを組み立てた。このマーカーペンと市販の線幅2cmの刷毛を用いて、水濡れ板面に対する筆記性と固着性とを次の方法によって調べて評価を行った。
(試験方法)
1.筆記試験
40cm角の鉄板及びアクリル塗装鋼板を水槽に入れ、板面の水深が10mmになるまで注水する。次に3mm幅のペン体付きマーカーペン及び2cm幅の刷毛で、長さ30cmの直線を引く。インキの出が少なくなったらマーカーペンはポンピング操作により、又刷毛はインキを直接付けて補充し、さらに筆記線が掠れるまで筆記し、筆記距離及びインキの浮き具合を評価した。
2.密着性試験
(1)15cm角の鉄板及びアクリル塗装鋼板を同様に水深10mmとし3mm幅のペン体付きマーカーペン及び2cm幅の刷毛で長さ10cmの直線を3本筆記した後、各板面を水中から直ちに取り出し、その約1分後に板の表面を乾燥したタオルで軽く拭い筆記線の状態を評価した。
(2)15cm角の鉄板を水深10mmにして同様に筆記した後、水中から取り出し立てかけて1日乾燥させる・この鉄板を濃度3%の食塩水の入った水槽に3日間浸す。その後、各鉄板を取り出し、溶剤で油性インキを拭き取った後、筆記部分のサビの発生を観察した。
[評価基準]
1.筆記性
A:筆記距離
◎ 120cm以上筆記できた。
○ 30cm〜120cm筆記できた。
△ 10〜30cm筆記できた。
× 10cm以下しか筆記できなかった。
B:水中筆記時のインキの浮き具合。
◎ インキが水面上にほとんど浮かない。
○ インキが水面上に少し浮く。
△ インキが水面上に浮き、筆記線が歪む。
× インキが水面上にかなり浮き筆記線が不明瞭。
2.密着性
(1):剥離具合
○ 筆跡に殆ど変化がなかった。
△ 筆跡の一部が剥離した。
× 筆跡のかなりの部分が剥離した。
(2):サビの発生
○ 筆記部分が殆どサビていない。
△ サビが3ぶんの1以下であった。
× かなりの部分がサビていた。
― 筆記部分が確認できない。
本発明の油性インキでは水没状態(水深2〜15mm)に近い面でも全て筆記でき、油性インキの水面上への浮きも殆ど無かった。比較例では、水没状態に近い面ではペン体が目詰まりしすぐに筆記不能となり、且つ、油性インキがかなり水面に浮いてしまった。また、3%の食塩水中においても本発明のインキは密着性が良いため、サビの発生が殆ど無かった。
以上のとおり、特定の樹脂、特定の有機溶剤及び、特定の微細高分子粉を配合したことにより、従来の油性インキにはない特徴のある油性インキを得ることができた。即ち水で濡れた面及び水没状態(2〜15mm)に近い面であっても周囲を汚すことがなく、鮮明に何度でも繰り返し塗ることができ、対象物にインキが強く密着し、しかも作業性が高く且つ耐水性・耐候性・耐光性が良好な油性インキを得ることができた。
また、本発明の油性インキを内蔵したマーキングペンは雨に濡れた面や水没状態に近い面にも周囲を汚すことなく筆記可能なため、効率よく筆記あるいはマーキング作業が行えるという、従来にないマーキングペンを提供する事が可能になった。
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
1:キャップ
2:ペン体(ペン芯)
3:ペン体ホルダー
4:軸胴
5:油性インキ
6:ウレタンスポンジ
7:弁座
8:弁ケース
9:弁芯
10:バネ
11:攪拌球
12:インキ収容部

Claims (4)

  1. 着色剤と、炭素数6〜10の脂環族飽和炭化水素からなる有機溶剤と、アルキルフェノール樹脂又は脂環族飽和炭化水素樹脂とを含む油性インキにおいて、
    平均粒子径が1〜15μmの、フッ素樹脂を含む微細高分子粉を更に含み、水に濡れた面に塗ることが可能な油性インキ。
  2. 前記着色剤は、少なくとも有機顔料又は無機顔料を含むことを特徴とする請求項1に記載の油性インキ。
  3. 前記着色剤が、少なくともアルミニウム、銅又は銅合金を含む微細金属粉を含むことを特徴とする請求項1に記載の油性インキ。
  4. 請求項1乃至3の何れか1項に記載の油性インキを用いたマーキングペン。
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