ところで、送信信号として主線路を伝搬される電力と、副線路を通じて結合ポートに取り出される電力の比である結合度は、送信電力の高精度の制御(PAの正確なフィードバック制御)を実現する点でその周波数特性は平坦であることが望ましく、一般には主線路と副線路の長さを使用周波数帯のλ/4(四分の一波長)程度に設定すればその周波数帯において平坦な結合度を得ることが出来る。
しかしながら、携帯電話機等の移動体無線機器で主に用いられる準マイクロ波帯のλ/4は数cmにもなり、軽薄短小化が必要な携帯電話機等の移動体無線機器に使用するカプラにこの長さの結合線路を備えることはサイズの点から難しい。また、数cm以上の長い結合線路を使用すると挿入損失が大きくなり、電池寿命の短縮と言う移動体無線機器にとって好ましくない事態を生じる。このため、使用周波数帯のλ/4よりも短い結合線路のカプラが一般に使用されているが、このような結合線路の特性は周波数によって変動し、周波数が高くなるほど結合度が上昇してしまう傾向がある。
したがって従来、利用周波数帯が広範に及ぶ通信装置を構成する場合には、カプラを複数個備える必要があった。図10は複数の周波数帯を利用可能な携帯電話機の送受信部の一例を示すブロック図であるが、この図に示すように従来のマルチバンド方式の携帯電話機では、利用周波数帯に対応して設けられた送信回路301,401のそれぞれにカプラ311,411を備えている。なお、同図において、符号101はアンテナ、102はアンテナ101を通じて受信した電波を受信回路103,104へ振り分けるとともに、送信回路301,401から入力された送信信号をアンテナ101に送り出すスイッチをそれぞれ示す。スイッチ102は、例えばダイプレクサや高周波スイッチを組み合わせることにより構成される。
一方、このようなマルチバンド方式の通信装置においてカプラを共通化する(例えば1つにする)ことが出来れば、送信回路内の部品点数を減らし、装置の製造コストを低減することが可能となる。また、携帯通信装置のより一層の小型化を図ることも出来る。さらに、カプラの結合度を平坦化することは、送信電力のより正確な誤差の少ない検出を行う点で好ましい。
他方、前記特許文献1に記載された発明は、カプラの広帯域化を図るものではある。しかしながらこの発明では、副線路の両端にローパスフィルタとなるコンデンサ等の回路素子を付加するものであるから、カプラを構成する部品(素子)点数が増えるうえに、付加する複数の回路素子の設定や調整が煩雑で難しいと言う問題がある。また、結合ポートについてインピーダンスを50Ωとする要求がなされることがあるが、この特許文献1記載の発明のようにコンデンサを付加すると、結合ポートに関する当該要求を満たすことが難しくなる。
また、前記特許文献2に記載された発明は、広帯域と言っても精々2040〜2240MHz程度の帯域幅であり(同文献段落0034参照)、本発明が意図する700〜2700MHzに亘る帯域幅について適用することは出来ない。
さらに、無線通信装置においてアンテナとのマッチング(アンテナからの反射電力)を監視するために逆方向に伝搬する反射波をアイソレーションポートから取り出してモニタリングする場合があるが、このような反射波の検出を正確に行うには、主線路の入力ポートから出力ポートに向けた方向(以下この方向を「順方向」と言う)についてだけでなく、主線路の出力ポートから入力ポートに向けた方向(以下この方向を「逆方向」と言う)についてもカップリング特性(結合度の周波数特性)を平坦化することが望ましい。
なお、出願人は、広範な帯域幅に対応可能なカプラに関する提案(特願2012−083377)を先に行い、さらに検討を進める中で当該先の提案より一層良好な特性が得られるカプラを完成するに至り、本願と同日付で別に出願(特願2012−200640)を行っている。しかしながら、この別出願に係るカプラは、順方向については先の提案より良好な特性が得られるものの、逆方向については順方向と同レベルの特性を期待することは出来ない。
したがって、本発明の目的は、回路素子を付加することなく簡易な構造で広帯域に亘って良好な特性を有する小型低背なカプラを実現することにあるが、特に、順方向のみならず逆方向についても良好な特性を得ることが出来るカプラを実現することにある。
前記課題を解決し目的を達成するため、本発明に係るカプラ(方向性結合器)は、高周波信号を伝送可能な主線路と、前記主線路に前記高周波信号を入力する入力ポートと、前記主線路から前記高周波信号を出力する出力ポートと、前記主線路と電磁界結合して前記高周波信号の一部を取り出す副線路と、前記副線路の一方の端部に備えられた結合ポートと、前記副線路の他方の端部に備えられたアイソレーションポートとを備えた方向性結合器であり、前記主線路および前記副線路間で電磁界結合を行う線路部分を結合部、当該電磁界結合を行わない線路部分を非結合部とそれぞれ称した場合に、前記副線路が、電磁界結合が強い第一結合部と、前記第一結合部より電磁界結合が弱く且つ前記第一結合部より前記結合ポートに近い側に形成した第二結合部と、前記第一結合部より電磁界結合が弱く且つ前記第一結合部より前記アイソレーションポートに近い側に形成した第三結合部と、前記第一結合部と前記第二結合部との間に延在し且つ使用周波数帯に対応した波長λの四分の一以上の長さを有する非結合部である第一非結合部と、前記第一結合部と前記第三結合部との間に延在し且つ使用周波数帯に対応した波長λの四分の一以上の長さを有する非結合部である第二非結合部とを有する。
本発明では、カップリング曲線(結合度の周波数特性曲線)を平坦化して広範な周波数帯域に使用可能なカプラを実現するが、このために本発明のカプラでは、副線路が主線路との電磁界結合の強い第一結合部と、これより電磁界結合が弱い第二結合部と第三結合部とを備え、各結合部間、すなわち、第二結合部と第一結合部との間と、第一結合部と第三結合部との間に、使用周波数帯に対応した波長λの四分の一(λ/4)以上の線路長を有する非結合部(第一非結合部と第二非結合部)を形成する。
そして、後に図面を参照しながら説明するように、下記(1)〜(3)を行うことにより使用周波数帯域内における結合度の周波数変動を抑制し、広帯域に亘って結合度が平坦なカプラを実現する。
(1)結合の強い上記第一結合部の結合強度を調整することによって使用周波数帯の下端周波数において要求される結合度の下限値(例えば後の実施形態では700MHzにおける−27dB)を満たすようにカプラ全体の結合度を調整する。
(2)結合の弱い上記第二結合部と第三結合部の結合強度を調整することにより使用周波数帯域内においてカップリング曲線を平坦化する。
(3)上記第一非結合部と第二非結合部のそれぞれの長さを、使用周波数帯域内の所定周波数、すなわち、使用周波数帯の下端周波数より高く且つ使用周波数帯の上端周波数以下の周波数(当該周波数を「設定周波数」と言う)に対応した波長λの四分の一以上の長さを有するものとすることにより、使用周波数帯域内に共振による減衰極を形成する。
なお、上記結合部の結合強度を調整には、例えば、結合部の長さ、結合部の線幅、および結合部(主線路の結合部と副線路の結合部)の間隔(平面から見たときの両者間の距離あるいは基板の積層方向の距離)のうちの1つ又は2以上を変更することにより行えば良い。より具体的には、結合を強くするには、結合部の長さを長くすること、線幅を広くすること、および両線路の間隔を狭くすること、のいずれか1つ又は2以上を行えば良く、結合を弱くするには、逆に、結合部の長さを短くすること、線幅を細くすること、および両線路の間隔を広くすること、のいずれか1つ又は2以上を行えば良い。
このような本発明では、特に、カプラ全体として対称な構造、すなわち、結合ポート側とアイソレーションポート側とで結合部と非結合部を対称に備えている。つまり、結合ポート側から見た場合に、副線路が、結合の弱い第二結合部と、結合の強い第一結合部と、これらの間に延在するλ/4以上の線路長を有する非結合線路部(第一非結合部)とを備えており、また、アイソレーションポート側から見た場合にも結合ポート側と同様に、副線路が、結合の弱い第三結合部と、結合の強い第一結合部と、これらの間に延在するλ/4以上の線路長を有する非結合線路部(第二非結合部)とを備えている。このため、本発明によれば、順方向について結合度を平坦化することが出来るだけでなく、逆方向についての結合度(主線路の出力ポートから入力する電力と、アイソレーションポートP4から出力される電力との比)の周波数特性も順方向と同様に平坦化することが出来る。
したがって、前述したように例えば、無線通信装置においてアンテナとのマッチング(アンテナからの反射電力)を検出・測定するために逆方向に伝搬する反射波をアイソレーションポートP4から取り出してモニタリングするような場合に、出力ポートから入力する高周波電力についてもその一部をアイソレーションポートを通じて正確に取り出し、順方向と同様に誤差の少ない検出を行うことが出来る。
また、本発明の一態様では、絶縁層を介して積層した複数の導体層を有する積層基板に上記主線路、副線路、入力ポート、出力ポート、結合ポートおよびアイソレーションポートを配置し、本発明に係る各部構成を備える。
この場合、副線路が、各々当該副線路の一部であり且つ結合ポートからアイソレーションポートに向け順に続く第一副線路部と第二副線路部と第三副線路部とを含み、積層基板の第一導体層に、主線路、第一副線路部および第三副線路部を配置し、主線路の少なくとも一部と第一副線路部の少なくとも一部とを互いに近接して配置することにより前記第二結合部を形成するとともに、主線路の少なくとも一部と第三副線路部の少なくとも一部とを互いに近接して配置することにより前記第三結合部を形成し、第一副線路部の一端部を結合ポートに接続し、第一副線路部の他端部を第一層間接続導体に接続し、第三副線路部の一端部をアイソレーションポートに接続し、第三副線路部の他端部を第二層間接続導体に接続する。
また、第一導体層とは異なる積層基板内の導体層である第二導体層に、第二副線路部を配置し、第二副線路部の一端部と第一副線路部の他端部とを第一層間接続導体により接続するとともに、第二副線路部の他端部と第三副線路部の他端部とを第二層間接続導体により接続し、第二副線路部の中間部を主線路に近接して配置することにより前記第一結合部を形成し、当該第二副線路部の中間部と第二副線路部の一端部との間の線路部分である第一中間線路部により、または、第二結合部と第一副線路部の他端部との間の線路部分と当該第一中間線路部とにより、前記第一非結合部を形成し、第二副線路部の中間部と第二副線路部の他端部との間の線路部分である第二中間線路部により、または、第三結合部と第三副線路部の他端部との間の線路部分と当該第二中間線路部とにより、前記第二非結合部を形成する。
さらに上記一態様に係るカプラでは、第一中間線路部と第二中間線路部は、略同一の長さを有し、且つ、共に第一副線路部および第三副線路部より長く、平面から見たときに積層基板の左側半分の領域を第一領域、積層基板の右側半分の領域を第二領域としたときに、第一領域および第二領域のうちの一方の中心部に第一層間接続導体を配置し、この第一層間接続導体を中心として渦を巻くように第一中間線路部を形成するとともに、第一領域および第二領域のうちの他方の中心部に第二層間接続導体を配置し、この第二層間接続導体を中心として渦を巻くように第二中間線路部を形成しても良い。
線路長が長くなる第一中間線路部と第二中間線路部とを積層基板にスペース効率良く配置し、良好な特性とともに小型低背化なカプラを得るためである。
また上記一態様に係るカプラでは、第一非結合部および第二非結合部のいずれか一方または双方の線路幅を、第一結合部を形成する副線路の中間部の線路幅より狭くしても良い。
本発明において副線路は、結合部に比べて非結合部(第一中間線路部および第二中間線路部)が長くなるが、上記のように副線路について結合部は線路幅を広く、非結合部は線路幅を狭くすれば、主線路との十分な結合を確保しながら、長い副線路を小さな面積で収容することが出来るからである。
また上記一態様に係るカプラでは、積層基板内で第二導体層より上層に配置し且つ第一非結合部と第二非結合部とを覆うように形成したグランド電極(「上部グランド」と言う)を備えても良い。また、積層基板内で第二導体層より下層に配置し且つ第一非結合部と第二非結合部とを覆うように形成したグランド電極(「下部グランド」と言う)を備えても良い。
このように第一非結合部と第二非結合部とを覆うようにグランド電極を設ければ、当該カプラを実装したときに、他の実装部品等の影響を受け難くすることができ、所期の良好な特性を実装後にも得ることが出来る。
なお、これら上部グランド及び下部グランドは、結合部への影響を避けるため、共に、平面から見たときに主線路の結合部、第一副線路部の結合部および第二副線路部の結合部と重ならないように形成することが好ましい。また、第二導体層が積層基板内で第一導体層より下層に位置する場合には、上部グランドを第一導体層に配置することが、積層数を減らしカプラを低背化する点で好ましい。
本発明に係る無線通信装置は、2以上の周波数帯の送信信号を生成可能で、且つ、これらの送信信号を増幅する電力増幅器と当該電力増幅器の出力を制御する自動出力制御回路とを含む送信回路と、前記2以上の周波数帯の受信信号を処理可能な受信回路と、前記送信信号および受信信号の送受信を行うアンテナと、当該アンテナと前記送信回路および前記受信回路との間に接続され、前記アンテナを通じて受信された受信信号の前記受信回路への伝送および前記送信回路から出力された送信信号の前記アンテナへの伝送を行うスイッチと、前記電力増幅器から出力される送信信号のレベルを検出してその検出信号を前記自動出力制御回路に出力するカプラとを備え、前記カプラから入力された前記検出信号に基づいて前記電力増幅器の出力を制御する無線通信装置であり、前記カプラが、前記アンテナと前記スイッチと間に接続され、且つ、前記本発明に係るいずれかのカプラである。
従来のマルチバンド無線通信装置では、前に述べたように周波数帯ごとにカプラを備える必要があったが、本発明のカプラによれば、広い帯域で結合度を平坦化することが出来るから、上記のようにカプラを一つにする(複数の使用周波数帯に共通のものとする)ことができ、部品点数を減らして製造コストを低減することが出来るとともに、当該通信装置を小型化することが可能となる。
なお、本発明に言う上記無線通信装置は、典型的には、携帯電話機やスマートフォン、無線通信機能を備えたPDA(Personal Digital Assistants)やタブレット型コンピュータなどの携帯端末装置であるが、これらに限られるものではなく、無線LAN用の通信装置やブルートゥース(Bluetooth/登録商標)規格の通信装置などの無線通信が可能な各種の通信装置が含まれる。
本発明によれば、回路素子を付加することなく簡易な構造で広帯域に亘って平坦な結合度を有する小型低背なカプラを実現することができ、特に、順方向のみならず逆方向についても当該良好な特性を得ることが出来る。
本発明の他の目的、特徴および利点は、図面に基づいて述べる以下の本発明の実施の形態の説明により明らかにする。なお、以下の実施形態の説明では、本発明の前提となる先の提案に基づくカプラについてまず説明し、次に当該先の提案に係るカプラを用いて本発明の基礎となる技術事項について述べ、その後、本発明の実施形態について説明する。また、各図中、同一の符号は、同一又は相当部分を示す。
〔先の提案に係るカプラ〕
図1は、本出願人の先の提案(特願2012−083377)に基づいて構成したカプラ(以下単に「先のカプラ」と言うことがある)を示すものであるが、同図に示すようにこのカプラは、高周波電力を伝送する主線路12と、当該主線路12を伝送される高周波電力の一部を取り出す副線路13とを備え、これら主線路12と副線路13を近接して配置することにより両線路12,13を電磁界結合させたものである。主線路12は、一端に入力ポートP1を、他端に出力ポートP2をそれぞれ有し、副線路13は、一端に結合ポートP3を、他端にアイソレーションポートP4をそれぞれ有する。
副線路13は、異なる導体層に配置し且つビアホール(以下「ビア」と言う)V1で互いに電気的に接続した第一副線路部13aと第二副線路部13bとからなり、副線路13の一端部と他端部、即ち、第一副線路部13aの一端部と第二副線路部13bの一端部の2箇所に主線路12(主線路の結合部22)と電磁界結合を行う結合部23a,24aをそれぞれ形成する。また、副線路13の長さは、主線路12より長く、所定周波数(設定周波数)で共振が生じる長さを有するものとする。詳しくは次のとおりである。
当該カプラ11は、使用周波数帯を700MHz(下端周波数)〜2.7GHz(上端周波数)とし、この使用周波数帯の高域側(上端周波数より高い周波数領域)の近傍位置(本実施形態の場合3.2GHz付近)に共振点を発生させて使用周波数帯域内の結合を平坦化する。
図3は当該先のカプラの結合度の周波数特性を示すものであるが、この図に示すように、使用周波数帯700MHz〜2.7GHzの高域側の設定周波数3.2GHzに副線路13の共振による減衰極を生じさせるため、副線路13の長さを、当該設定周波数3.2GHzで共振が生じる長さ(例えば当該周波数3.2GHzに対応する波長をλとし、nを正の整数とすると、(λ/4)×nの長さ)を有するものとする。なお、主線路12は、副線路13の長さより短く、副線路13との電磁界結合を行うことが出来る(結合部22を形成できる)長さとすれば良い。
一方、このように従来の一般的なカプラと比べて長い副線路13を備えても、以下のように主線路12と副線路13のパターン形状および積層基板への配置を工夫することにより、カプラの大型化(平面形状の増大や積層数の増加)を招くことなく小型低背なカプラを実現することが出来る。
図2A〜図2Kは、当該先の提案に基づいて構成したカプラの基板各層を示すもので、当該カプラは、複数の導体層を備えた長方形の平面形状を有する積層基板の内部配線層(導体層)に前述した主線路、副線路、各ポートおよび各グランドを配置する。なお、これら図2A〜図2Kは当該基板の各層を上層(基板表面側)から下層(基板裏面側)に向け順に示している。またこれらの図のうち、図2A、図2C、図2E、図2G、図2I及び図2Kは、導体パターンを配置した導体層(第1層〜第6層)を示し、図2Bは第1層と第2層との間の絶縁層(「第1絶縁層」と称する)を示している。また同様に、図2Dは第2層と第3層との間の絶縁層(第2絶縁層)を、図2Fは第3層と第4層との間の絶縁層(第3絶縁層)を、図2Hは第4層と第5層との間の絶縁層(第4絶縁層)を、図2Jは第5層と第6層との間の絶縁層(第5絶縁層)をそれぞれ示すものである。なお、後述の実施形態(図7A〜図7G)についても同様である。
先のカプラでは、図2Eに示すように基板の第3層に、主線路12と入力ポートP1と出力ポートP2と中間グランドG1を備える。入力ポートP1は、平面から見たときに当該第3層の左上角部に、出力ポートP2は右上角部にそれぞれ配置する。主線路12は、基板の一側縁部に沿って(当該一側縁と平行に)入力ポートP1と出力ポートP2との間に直線状に延びる。
主線路12の中間部22は、副線路13と電磁界結合を行う結合部とする。具体的には、当該中間部22は、後に述べる第4層の第一副線路部13aの結合部23aならびに第2層の第二副線路部13bの結合部24aと平面から見たときに重なるように配置してあり、これにより主線路12と副線路13の両端部とを電磁界結合させる。
また、中間グランドG1は、後に述べる第一副線路部13aの非結合部23bと、第二副線路部13bの非結合部24bとの間に介在されるように、基板の四隅部および主線路を配置した基板一側縁部を除いて当該第3層の略全面に広がるように形成してある。
図2Gに示すように第4層には、結合ポートP3と第一副線路部13aを配置する。結合ポートP3は第4層の左下角部に配置し、この結合ポートP3を配置した基板の他側縁部から前記一側縁部へ第一副線路部13aを引き回し、基板一側縁部の中央部において当該第一副線路部13aが、前記第3層に配置した主線路12と平面から見たときに重なるように配置することにより結合部23aを形成する。
そして、第4層において上記結合部23aに続いて第一副線路部13aを基板中心部へ向け渦巻状に巻き回し、主線路12とは結合を行わない第一副線路部13aの非結合部23bを形成する。基板中心部には第3絶縁層および第2絶縁層を貫通して第2層まで延びるビアV1を設け、第4層においてこのビアV1に、前記第一副線路部13aの非結合部23bを接続する。
図2Cに示すように第2層には、アイソレーションポートP4と第二副線路部13bを配置する。アイソレーションポートP4は第2層の右下角部に配置し、このアイソレーションポートP4を配置した基板の他側縁部から前記基板の一側縁部へ第二副線路部13bを引き回し、基板一側縁部の中央部において当該第二副線路部13bが、前記第3層に配置した主線路12と平面から見たときに重なるように配置することにより結合部24aを形成する。
一方、当該第2層の中心部に配置した前記第4層から当該第2層まで延びるビアV1から、上記第二副線路部13bの結合部24aに向け、次第に外方へ広がるように第二副線路部13bを渦巻状に巻き回すことにより、主線路12とは結合を行わない第二副線路部13bの非結合部24bを形成する。この第二副線路部13bの非結合部24bは、基板の一側縁部で前記結合部24aに続くこととなる。
さらに、図2Aに示すように第1層には、当該導体層の略全面に広がるグランド電極(上部グランド)G2を、また、図2Iに示すように第5層には、当該導体層の略全面に広がるグランド電極(下部グランド)G3をそれぞれ設ける。これらのグランド電極G2,G3は、実装時に近接して配置される他の部品や部材の影響をカプラ1が受けることを防ぐものである。また、図2Kに示すように第6層には外部接続用の端子T1,T2,T3,T4,TGを備える。
〔本発明の基礎となる技術事項〕
上記先の提案に係るカプラによれば、前記図3に示すように、使用周波数帯域内(0.7GHz〜2.7GHz)における結合度の最小値は0.7GHzのときの−26.93dB、最大値は1.7GHzのときの−23.19dBで、結合度の変動幅Δは3.7dBとなり、従来から一般に求められてきた変動幅6dB以下を満たすことは可能である。しかしながら、更なる特性向上を目指した場合、例えば図3において符号S1で示すような変動幅3dB以下の要求を満たすことは出来ない。
そこで、本件発明者は更なる検討を重ねる中で、2つの結合部のうちの一方の結合強度を弱めることを試みた。具体的には、図4に示すように、第4層に配置した第一副線路部13aの結合部23aを基板中心部方向(図4の矢印A方向)へずらすことにより主線路との結合強度を弱めた。
図5A〜図5Cはそれぞれ、結合部23aを図4の符号23a−1で示す位置、符号23a−2で示す位置、および符号23a−3で示す位置にずらした場合の結合度を示すものである。これらの線図から分かるように、結合を弱めると減衰極が浅くなり、結合を弱める度合い(結合部をずらす量)を大きくすればするほど減衰極がより浅くなってカプラ全体の結合度が平坦になっていく。本発明では、副線路の共振による減衰極を使用周波数帯域内に形成することに加えて、このような結合度の調整によるカップリング曲線の平坦化を利用し、広帯域に亘って結合度が平坦なカプラを実現する。以下、図6〜図8を参照して本発明の実施形態について説明する。
〔実施形態〕
図6に示すように本発明の一実施形態に係るカプラ11は、前記先の提案に基づくカプラ1と同様に、一端に入力ポートP1を、他端に出力ポートP2をそれぞれ有して高周波電力を伝送する主線路12と、一端に結合ポートP3を、他端にアイソレーションポートP4をそれぞれ有して主線路12を伝送される高周波電力の一部を取り出す副線路13とを備え、これら主線路12と副線路13を近接して配置することにより両線路12,13を電磁界結合させたものであるが、副線路13が3箇所の結合部23a,24a,25aを有し、これら結合部23a,24a,25aの主線路12との結合強度を異ならせるとともに、結合部23a,24a,25aの各間にλ/4以上の長さを有する線路部分(第一非結合部26および第二非結合部27)を備えた。より具体的には、次のとおりである。
本実施形態では、副線路13は、当該副線路13の一端部(結合ポートP3側の端部)を構成する第一副線路部13aと、当該副線路13の他端部(アイソレーションポートP4側の端部)を構成する第三副線路部13cと、これら第一副線路部13aと第三副線路部13cとの間に延在する第二副線路部13bとからなり、第一副線路部13aと第二副線路部13bとを第一ビアV1により、第二副線路部13bと第三副線路部13cとを第二ビアV2でそれぞれ接続した。
また、副線路13は、主線路12と電磁界結合を行う3つ(3箇所)の結合部23a,24a,25aを上記第一副線路部13a、第二副線路部13bおよび第三副線路部13cにそれぞれ備えるが、第二副線路部13bに含まれる第一結合部24aは、副線路13(第二副線路部13b)の長さ方向の中央に位置し、主線路12とは異なる導体層に且つ平面から見たときに主線路12と重なるように配置することにより主線路12との強い結合を形成する。
一方、第一副線路部13aに含まれる第二結合部23aと、第三副線路部13cに含まれる第三結合部25aは、主線路12と同一の導体層において主線路12に近接して配置することにより形成した結合部で、前記第一結合部24aに比べて主線路12との結合が弱い。
また、副線路13の第二結合部23aと第一結合部24aとの間は、主線路12との結合を行わない非結合部(第一非結合部26)とし、設定周波数に対応する波長λの四分の一以上の長さを有する線路とすることにより、共振を生じさせ、使用周波数帯域内に共振点(減衰極)を形成する。上記設定周波数としては、使用周波数帯域(本実施形態の場合、700MHz〜2.7GHz)内で且つ上端周波数(本実施形態の場合、2.7GHz)に近い周波数とすれば良い。なお、この点については、本発明に係るカプラの設計方法として、後にさらに詳しく述べる。また、副線路13の第一結合部24aと第三結合部25aとの間も同様に、主線路12との結合を行わない非結合部(第二非結合部27)とし、上記設定周波数に対応する波長λの四分の一以上の長さを有する線路とする。
積層基板への配置構造は、次のとおりである。
図7Aに示すように本実施形態のカプラ11では、積層基板の第1層に主線路12、第一副線路部13a、第三副線路部13c、入力ポートP1、出力ポートP2、結合ポートP3、アイソレーションポートP4、および上部グランドG2を備える。
各ポートP1〜P4は基板の四隅に配置する。具体的には、入力ポートP1は基板の一側縁部の一端部(左上角部)に、出力ポートP2は基板の一側縁部の他端部(右上角部)にそれぞれ配置する。また、結合ポートP3は基板の他側縁部の一端部(左下角部)に、アイソレーションポートP4は基板の他側縁部の他端部(右下角部)にそれぞれ配置する。
主線路12は、上記入力ポートP1と出力ポートP2を配置した基板の一側縁部に沿って入力ポートP1と出力ポートP2との間に直線状に延びるように配置する。
一方、平面から見たときの当該基板の左半分の領域を第一領域、右半分の領域を第二領域としたときに、第一領域の中心部に第一ビアV1を、第二領域の中心部に第二ビアV2をそれぞれ配置する。これら第一ビアV1および第二ビアV2は、第一絶縁層(図7B)を貫通して後に述べる第2層まで延びている。
そして、基板他側縁部の一端部(左下角部)に配置した結合ポートP3から、基板の左端部、基板の一側縁部、基板の中心部を経て、前記第一ビアV1まで巻き回すように第一副線路部13aを引き回す。このとき、基板一側縁部において当該第一副線路部13aを主線路12と並行させる(平行に延在させる)ことにより、前記第二結合部23aを形成する。なお、これら互いに並行する第一副線路部13aと主線路12との間隔を調整することにより当該第二結合部23aの結合強度を調整することが可能である(次に述べる第三結合部25aについても同様)。
同様に、基板他側縁部の他端部(右下角部)に配置したアイソレーションポートP4から、基板の右端部、基板の一側縁部、基板の中心部を経て、前記第二ビアV2まで巻き回すように第三副線路部13cを引き回す。このとき、基板一側縁部において当該第三副線路部13cと主線路12とが近接して平行に延びるようにし、これにより当該第三副線路部13cに前記第三結合部25aを形成する。
なお、上記第二結合部23aと第一ビアV1との間の線路部分(「第一接続線路部」と言う)23bは、後に述べる第2層の第一渦巻状線路部24bとともに第一非結合部26を構成する。同様に、上記第三結合部25aと第二ビアV2との間の線路部分(「第二接続線路部」と言う)25bは、後に述べる第2層の第二渦巻状線路部24cとともに第二非結合部27を構成する。
さらに、前記上部グランドG2は、上記主線路12を配置した基板一側縁部や、各ポートP1〜P4を配置した基板角部、第一副線路部13aや第三副線路部13c、ビアV1,V2を配置した部分を除いて、第1層の略全面に広がるように形成する。この上部グランドG2は、平面から見たときに後に説明する第2層の第一渦巻状線路部24bおよび第二渦巻状線路部24cを覆うことにより、実装時に近接して配置される他の部品や部材の影響をカプラ11が受けることを防ぐ機能を果たす(後述の下部グランドG3についても同様)。
図7Cに示すように第2層には、第二副線路部13bを配置する。この第二副線路部13bは、第一副線路部13aが接続された前記第一ビアV1から、第三副線路部13cが接続された前記第二ビアV2まで、順に連続する、第一渦巻状線路部24bと、第一結合部24aと、第二渦巻状線路部24cとからなる。
第一結合部24aは、基板の一側縁部において当該基板の縁に沿って直線状に延びるように且つ第1層に配置した主線路12と平面から見たときに重なり合うように配置してある。したがって、第一結合部24aは、前記第1層の第二結合部23aおよび第三結合部25aに比べて主線路12との結合が強い。
なお、上記第一結合部24aは、先のカプラ1(図2C)と比べてもその長さが長く、主線路12の略全長と重なり合うから、先のカプラ1の結合部24a(図2C)より強い結合が得られる。したがって、本実施形態では、第二結合部23aと第三結合部25aについて主線路12との結合を弱めても、カプラ全体としては主線路12−副線路13間の十分な結合を確保することが可能である。
また、主線路12(結合部22)および副線路13の第一結合部24aは、いずれも副線路13の非結合部に比べて線路幅が広く、逆に、副線路13の非結合部は結合部22,24aと比べて線路幅が狭い。これは、結合部22,24aについては、短い線路長で効率良く結合を行う(強い結合を得る)一方で、線路長が長くなる非結合部(第一非結合部26および第二非結合部27)については、線路幅を狭くして小さな面積で長い線路を収容できるようにするためである。
一方、第一渦巻状線路部24bは、第一領域において、その中心部に備えた第一ビアV1を中心として基板一側縁部の上記第一結合部24aまで渦巻状に広がる形状を有し、一端が当該第一ビアV1に、他端が第一結合部24aの一端にそれぞれ接続されている。この第一渦巻状線路部24bは、前記第1層の第一接続線路部23bとともに第一非結合部26を構成する。同様に第二渦巻状線路部24cも、第二領域においてその中心部に備えた第二ビアV2を中心として基板一側縁部の上記第一結合部24aまで渦巻状に広がる形状を有し、一端が当該第二ビアV2に、他端が第一結合部24aの他端にそれぞれ接続されている。この第二渦巻状線路部24cは、前記第1層の第二接続線路部25bとともに第二非結合部27を構成する。
さらに、図7Eに示すように第3層には、当該導体層の略全面に広がるグランド電極(下部グランド)G3を備える。なお、この下部グランドG3は、主線路12−副線路13間の結合への悪影響を回避するため、平面から見たときに当該結合部(即ち主線路12の結合部22、副線路13の第一結合部24a、第二結合部23aおよび第三結合部25a)を配置した領域Bを避けながら、第一非結合部26を構成する第一渦巻状線路部24bおよび第二非結合部27を構成する第二渦巻状線路部24cを覆うように形成してある。
また、図7Gに示すように第4層には外部接続用の端子T1,T2,T3,T4,TGを備える。すなわち、前記第1層に備えた各ポートP1〜P4の配置位置に対応するように(これらのポートP1〜P4の各直下位置に)、外部接続端子T1〜T4を配置し、基板を垂直に貫通するビアVを介してこれら外部接続端子T1,T2,T3,T4と前記入力ポートP1,出力ポートP2,結合ポートP3およびアイソレーションポートP4とをそれぞれ接続する。
また、第4層の基板側縁部中央に備えた外部接続端子TGは、グランド電極(上部グランドG2,下部グランドG3)用の端子であり、当該グランド用端子TGと第3層の下部グランドG3とをビアVを介して接続する。また、上部グランドG2とグランド用端子TGとの接続は、第1絶縁層、第2層および第2絶縁層(図7B〜図7D)を垂直に貫通するように基板中心部に設けたビアVにより上部グランドG2と下部グランドG3とを接続することにより行う。
図8は、本実施形態のカプラの結合度の周波数特性を示す線図である。この図から分かるように本実施形態によれば、使用周波数帯域内(700MHz〜2.7GHz)における結合度の最小値は700MHzのときの−26.95dB、最大値は1.5GHzのときの−24.20dBで、結合度の変動幅Δは2.75dBとなり、変動幅3dB以下の要求を満たすことが可能となった。
図8を参照しながら、本発明に係るカプラの設計方法について説明する。なお、図8において、点X1〜X3はカップリング曲線上の点で、X1は使用周波数帯の下端周波数における結合度を、X2は使用周波数帯域内における結合度の極大値を、X3は使用周波数帯域内における結合度の極小値(共振による減衰極)をそれぞれ示しており、これら点に留意しながら要求仕様S1を満たすよう下記(1)〜(3)の操作を行えば良い。
(1)結合が強い第一結合部24aの結合強度を調整することによって使用周波数帯の下端周波数(実施形態では700MHz)における結合度の下限要求値(実施形態では−27dB)を満たすようにカプラ全体の結合度を調整し、点X1が当該下限要求値を下回らないようにする。
(2)結合の弱い第二結合部23aおよび第三結合部25aの結合強度を調整することにより使用周波数帯域(実施形態では700MHz〜2.7GHz)内におけるカップリング曲線の平坦化を図る。このとき、減衰極X3の深さ(結合度の値)が前記X1と略等しくなるように(実施形態では略−27dBとなるように)当該第二結合部23aおよび第三結合部25aの結合度の調整を行い、カップリング曲線を平坦化する。
なお、前記実施形態のカプラでは、順方向および逆方向双方について結合度を等しく平坦化するため、第二結合部23aの結合強度と第三結合部25aの結合強度を等しくしている。また、第二結合部23aおよび第三結合部25aの結合強度を下げると点X1も多少低下するが、カプラ全体としては結合が強い第一結合部24aの結合度が支配的となっているから、当該低下分は小さく、点X1の位置に対する影響は少ない(第一結合部24aによる点X1の調整時に多少の余裕を持たせるか、第一結合部24aを再度調整すれば良い)。
(3)第一非結合部26および第二非結合部27の長さを使用周波数帯域(700MHz〜2.7GHz)内の所定周波数(設定周波数)に対応した波長λの四分の一以上の長さを有するものとすることにより、使用周波数帯の下端周波数(700MHz)より高く且つ使用周波数帯の上端周波数(2.7GHz)以下の周波数位置に共振点(カップリング曲線における減衰極)X3を形成する。
なお、減衰極X3は、第一非結合部26および第二非結合部27の線路長を長くするほど低周波数側に移動するが、カプラを小型低背化する観点からは当該非結合部は短いほど好ましいから、前記実施形態では減衰極X3を上端周波数位置(2.7GHz)に形成した。また、前記実施形態のカプラでは、順方向および逆方向双方について結合度を等しく平坦化するため、第一非結合部26の長さと第二非結合部7の長さを等しくしている。
さらに、上記設定周波数は、使用周波数帯域内で上端周波数より低い周波数としても良いが、減衰極X3が低周波数側に寄り過ぎると、上端周波数における結合度が大きくなって当該上端周波数(2.7GHz)における結合度が上限要求値(−24dB)を超えてしまうから、当該上端周波数における結合度が上限要求値を超えない範囲で減衰極X3が使用周波数帯域内に形成されるように第一非結合部26および第二非結合部27の長さを調整することが好ましい。例えば、使用周波数帯の中心周波数(実施形態の場合1.7GHz)と上端周波数(2.7GHz)との間に、当該共振による減衰極X3が位置するように第一非結合部26および第二非結合部27の長さを調整すれば良い。
本実施形態の利点について述べれば次のとおりである。
先のカプラ1(図1〜図2K)では、カプラ本体部(主線路12および副線路13)を形成するために少なくとも3層の導体層(第2層〜第4層)が必要であったが、本実施形態のカプラ11によれば、2層の導体層(第1層〜第2層)で当該カプラ本体部を形成することが出来る。また、先のカプラ1では、好ましい態様として上下に配置した副線路同士(中間線路部23b,24b同士)の干渉を防ぐ中間グランドG1を備えたが、本実施形態では第一非結合部26および第二非結合部27についてそれらの殆どの部分を1つの導体層(第2層)に配置するから上記のような中間グランドG1は不要である。したがって、本実施形態では、基板の積層数が少なくて済み、先の提案に係る構造よりカプラを低背化することが出来る。
さらに、本実施形態のカプラ11は、入力ポートP1・結合ポートP3側から見たときと、出力ポートP2・アイソレーションポートP4側から見たときとで全く対称の構造(図6の中心線C参照)を有するから、逆方向の結合度も順方向と同様に平坦化することができ、例えば、逆方向に伝搬する(出力ポートP2から入力する)高周波電力についてもその一部をアイソレーションポートP4を通じて正確に取り出し、順方向と同様に誤差の少ない検出を行うことが可能である。
〔マルチバンド無線通信装置〕
上記実施形態によれば、結合度を広帯域に亘って平坦化することが出来るから、マルチバンド方式の無線通信装置におけるカプラの配設個数を減らすことが可能となる。
例えば、800MHz帯と2GHz帯の2つの通信周波数帯を利用可能なデュアルバンド方式の携帯電話機を構成することを考えた場合、従来であれば800MHz帯と2GHz帯とでは結合度が大きく変動してしまうため、各周波数帯(800MHz帯と2GHz帯)でそれぞれ結合度がほぼ等しくなるように調整した2つのカプラを各周波数帯の送信回路に各々設ける必要があったが(前記図10参照)、前記実施形態のカプラ11によれば両周波数帯(800MHz帯と2GHz帯)に亘って結合度を平坦にすることが出来るから、共通のカプラを1つ設ければ良く、部品点数を減らして送信回路を単純化することが出来る。
具体的には、図9に示すように前記実施形態のカプラによれば、アンテナ101とスイッチ102との間にカプラ11(又は21)を1つ設ければ良く、従来(図10)と比べて送信回路201を簡素化することが出来る。
なお、PA202は第一の通信周波数帯(この例では800MHz帯)の送信信号を増幅し、PA203は第二の通信周波数帯(この例では2GHz帯)の送信信号を増幅する。カプラ11(又は21)により得られたモニタ信号(送信信号のレベルに対応した信号)はAPC回路204に入力され、APC回路204が当該モニタ信号のレベル(即ち送信信号のレベル)に応じてPA202およびPA203の出力が一定になるようにPA202とPA203の利得を制御する。また、スイッチ102は、アンテナ101を通じて受信した電波を受信回路103,104へ振り分けるとともに、送信回路201から入力された送信信号をアンテナ101に送り出す機能を果たすもので、例えばダイプレクサや高周波スイッチを組み合わせることにより構成すれば良い。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内で種々の変更を行うことができることは当業者に明らかである。
例えば、本願明細書中において記載した周波数の数値は、一例を示すものであって、本発明ではこれら以外にも様々なものであって良い。また、使用周波数帯域内における減衰極の形成位置(設定周波数)についても、使用周波数帯の値(下端周波数の値や上端周波数の値)、帯域幅、要求される仕様等により上記以外の様々な値をとることがある。
また、積層基板の層番号(例えば「第1層」、「第1導体層」、「第2層」…)は、積層の順序(積層方向に関する相対的な位置関係)を表すものであって、必ずしも第1層が当該積層基板の最上層であることを意味するものではない(例えば第1層の上に更に絶縁層や導体層が積層されていても構わない)。さらに、基板各層の導体パターンの形状や大きさ、ポートP1〜P4や端子T1〜T4,TGの位置、ビアV,V1,V2による接続構造等も図示した以外にも特許請求の範囲内で様々な変更が可能である。
また前記実施形態では、第一結合部24aを平面から見たときに主線路12(結合部22)と丁度重なるように配置したが、平面から見たときに第一結合部24aと主線路12(結合部22)とがずれていても(幅方向の一部が重なるか、あるいは、平面から見たときに両結合部間に隙間があっても)両線路が結合される限り本発明の範囲内である。
さらに、実施形態において第二結合部23aと第三結合部25aは、同一導体層内で主線路12との結合を行ったが、第一結合部24aのように異なる導体層間で主線路12と結合を行うようにすることも可能である。この場合、例えば前記図4に基づいて説明したように平面から見たときに副線路13の当該結合部23a,25aを主線路12とずらして配置したり、あるいは当該結合部23a,25aの線路幅を狭くしたり、当該結合部23a,25aの線路長を短くするなどして結合強度を調整すれば良い。