JP5979402B2 - 方向性結合器および無線通信装置 - Google Patents

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Description

本発明は、方向性結合器および無線通信装置に係り、特に、広範な周波数帯域に使用可能な方向性結合器を実現する技術に関する。
伝送線路上を伝搬する電力の一部を取り出すことを可能とする方向性結合器(Directional Coupler/以下単に「カプラ」と称する)は、携帯電話機や無線LAN通信装置など各種の無線通信機器の送信回路を構成する上で不可欠な部品となっている。
例えば、カプラは送信信号のレベルが一定になるように制御する調整手段を構成するが、この調整手段は、利得を制御可能な電力増幅器(以下「PA」と言う)と、送信信号のレベルを検出するカプラと、自動出力制御回路(以下「APC回路」と言う)を備える。入力された送信信号は、PAによって増幅された後、カプラを通して出力される。カプラは、PAから出力された送信信号のレベルに対応したレベルのモニタ信号をAPC回路に出力する。APC回路は、モニタ信号のレベル(即ち送信信号のレベル)に応じてPAの出力が一定になるようにPAの利得を制御する。このようなPAのフィードバック制御により送信出力の安定化が図られる。
上記カプラは、電磁界結合するように互いに近接して配置した主線路と副線路を有し、送信信号を伝送する主線路は一端に入力ポートを、他端に出力ポートをそれぞれ備え、送信信号のレベルを検出する副線路は一端に結合ポートを、他端にアイソレーションポートをそれぞれ備えている。そして、主線路を伝送する送信信号の一部が副線路によって取り出され、結合ポートを通じモニタ信号としてAPC回路へ出力される。
一方、携帯電話機やスマートフォンに代表される携帯端末の通信周波数帯は国や地域ごとに異なるため、これらの周波数事情に柔軟に対応できるよう複数の周波数帯を利用可能な通信装置が近年提供されている。例えば、2つの周波数帯を利用可能なデュアルバンド方式や3つの周波数帯を利用可能なトリプルバンド方式、更には4つの周波数帯を利用可能なクアッドバンド方式等である。
具体的周波数帯としては、例えば、GSM(Global System for Mobile Communications/登録商標)800やDCS(Digital Communication System)、PCS(Personal Communication System)、LTE(Long Term Evolution)等の複数周波数帯に1つのコンポーネントで対応可能とするには、700〜2.7GHzに亘る広帯域で安定した特性が得られるカプラを実現する必要がある。
また、複数の通信チャネルに対応するためにカプラの広帯域化を図る技術を開示するものとして下記特許文献がある。
特開2007−194870号(特許第4599302号)公報
ところで、送信信号として主線路を伝搬される電力と、副線路を通じて結合ポートに取り出される電力の比である結合度は、送信電力の高精度の制御(PAの正確なフィードバック制御)を実現する点でその周波数特性は平坦であることが望ましく、一般には主線路と副線路の長さを使用周波数帯のλ/4(四分の一波長)程度に設定すればその周波数帯において平坦な結合度を得ることが出来る。
しかしながら、携帯電話機等の移動体無線機器で主に用いられる準マイクロ波帯のλ/4は数cmにもなり、軽薄短小化が必要な携帯電話機等の移動体無線機器に使用するカプラにこの長さの結合線路を備えることはサイズの点から難しい。また、数cm以上の長い結合線路を使用すると挿入損失が大きくなり、電池寿命の短縮と言う移動体無線機器にとって好ましくない事態を生じる。このため、使用周波数帯のλ/4よりも短い結合線路のカプラが一般に使用されているが、このような結合線路の特性は周波数によって変動し、周波数が高くなるほど結合度が上昇してしまう傾向がある。
したがって従来、前述のように利用周波数帯が広範に及ぶ通信装置を構成する場合には、カプラを複数個備える必要があった。図34は複数の周波数帯を利用可能な携帯電話機の送受信部の一例を示すブロック図であるが、この図に示すように従来のマルチバンド方式の携帯電話機では、利用周波数帯に対応して設けられた送信回路301,401のそれぞれにカプラ311,411を備えている。なお、同図において、符号101はアンテナ、102はアンテナ101を通じて受信した電波を受信回路103,104へ振り分けるとともに、送信回路301,401から入力された送信信号をアンテナ101に送り出すスイッチをそれぞれ示す。スイッチ102は、例えばダイプレクサや高周波スイッチを組み合わせることにより構成される。
一方、このようなマルチバンド方式の通信装置においてカプラを共通化する(例えば1つにする)ことが出来れば、送信回路内の部品点数を減らし、装置の製造コストを低減することが可能となる。また、携帯通信装置のより一層の小型化を図ることも出来る。さらに、カプラの結合度を平坦化することは、送信電力のより簡便かつ検出誤差の少ない制御を行う点で好ましい。
他方、前記特許文献記載の発明は、カプラの広帯域化を図るものではある。しかしながらこの発明では、副線路の両端にローパスフィルタとなるコンデンサ等の回路素子を付加するものであるから、カプラを構成する部品(素子)点数が増えるうえに、付加する複数の回路素子の設定や調整が煩雑で難しいと言う問題がある。
したがって、本発明の目的は、広帯域に亘って良好な特性を有する小型低背なカプラをより簡易な構造で実現することにある。
前記課題を解決し目的を達成するため、本発明に係るカプラ(方向性結合器)は、高周波信号を伝送可能な主線路と、前記主線路に前記高周波信号を入力する入力ポートと、前記主線路から前記高周波信号を出力する出力ポートと、前記主線路と電磁界結合して前記高周波信号の一部を取り出す副線路と、前記副線路の一方の端部に備えられた結合ポートと、前記副線路の他方の端部に備えられたアイソレーションポートとを、絶縁層を介して積層した複数の導体層を有する積層基板に備えたカプラであって、前記副線路は前記主線路より長く、前記積層基板の第一導体層に前記主線路を配置し、前記第一導体層より下層の第二導体層に前記副線路の一部である第一副線路部を配置し、この第一副線路部の一端部を前記結合ポートおよび前記アイソレーションポートのうちの一方に接続し、前記第一導体層より上層の第三導体層に前記副線路の他の一部である第二副線路部を配置し、この第二副線路部の一端部を前記結合ポートおよび前記アイソレーションポートのうちの他方に接続し、前記第一副線路部の他端部と前記第二副線路部の他端部とを層間接続導体(例えばビアホール)により電気的に接続し、主線路および副線路間で電磁界結合を行う線路部分を「結合部」、当該電磁界結合を行わない線路部分を「非結合部」とそれぞれ称した場合に、前記主線路の少なくとも一部と前記第一副線路部の一部とが互いに近接するように配置するとともに、前記主線路の少なくとも一部と前記第二副線路部の一部とが互いに近接するように配置することにより、前記主線路、前記第一副線路部の一端部および前記第二副線路部の一端部にそれぞれ結合部を形成し、前記第一副線路部の結合部と前記第二副線路部の結合部との間に延在する副線路の中間部を非結合部とした。
また、かかるカプラでは、上記結合部を形成するための好ましい態様として、主線路の少なくとも一部と、第一副線路部の一部と、第二副線路部の一部とが平面から見たときに重なるように配置し、これにより、主線路、第一副線路部の一端部および第二副線路部の一端部にそれぞれ上記結合部をする。
本発明のカプラでは、副線路を、主線路を中心として上下2つの導体層に分けて配置するとともに、副線路の両端部、すなわち、主線路より下層に配置した第一副線路部の一端部と、主線路より上層に配置した第二副線路部の一端部とで主線路を挟むように主線路と副線路とを電磁界結合させるから、小型低背であるにもかかわらず、主線路と副線路の十分な結合を確保し、且つ副線路の長さを長くとることができ、この副線路の長さを調整することによってカップリング曲線(結合度の周波数特性曲線)を平坦化して広範な周波数帯域に使用可能なカプラを実現することが出来る。
特に、本発明では好ましい態様として、使用周波数帯の下端周波数より高域側の設定周波数に対応した波長をλとし、nを正の整数とした場合に、副線路を略{(λ/4)×n}の長さを有するものとする。このような態様によれば、(1)使用周波数帯の上端周波数より高域側、または、(2)使用周波数帯の下端周波数より高く且つ使用周波数帯の上端周波数以下(即ち下端周波数を除く使用周波数帯域内)、の所定の周波数位置(設定周波数)に共振による減衰極を形成することで、結合度の周波数変動(周波数が高くなるにつれ上昇する傾向)を抑え、広帯域に亘って結合度が平坦な良好な特性を有するカプラを実現することが出来る。
また、上記本発明のカプラでは、第一副線路部の長さと、第二副線路部の長さとを略等しくすることが好ましい。副線路の線路長が長くなっても、副線路を半分ずつバランス良く2層に分けて配置することにより、効率良く積層基板内に当該副線路を配置し、良好な特性とともに小型低背化を実現するためである。
また、上記本発明のカプラでは、積層基板の積層方向について第一副線路部の非結合部と第二副線路部の非結合部との間に介在されるようにグランド電極(以下「中間グランド」と言う)を備えても良い。このような構造によれば、上下に配置した副線路部同士が干渉することを防ぐことが出来る。この中間グランドは、主線路と同じ導体層(第一導体層)に備えることが積層数を減らし、カプラを低背化する点で好ましい。
なお、結合部については、主線路が上記中間グランドと同様の機能を奏する。すなわち本発明では、第一副線路部の結合部と第二副線路部の結合部との間には主線路が介在されるから、当該主線路が副線路との結合を行うと同時に、上下の副線路部同士の干渉を遮断する役割をも果たすこととなる。
本発明ではさらに、第二副線路部の非結合部を覆うように第三導体層より上層にグランド電極(以下「上部グランド」と言う)を備えても良い。また同様に、第一副線路部の非結合部を覆うように第二導体層より下層にグランド電極(以下「下部グランド」と言う)を備えても良い。
このように主線路と副線路を配置したカプラ本体部(前記第一導体層から第三導体層)の上下面にグランド電極を設ければ、当該カプラを実装したときに、他の実装部品等の影響を受け難くすることができ、所期の良好な特性を実装後にも得ることが出来る。これら上部グランド及び下部グランドは、前記結合部への影響を避けるため、平面から見たときに前記主線路の結合部、第一副線路部の結合部および第二副線路部の結合部と重なることがないように配置することが好ましい。
また、当該上部グランドと下部グランドは、実装後の周囲の影響を排除する上記機能を有するだけでなく、結合度を調整する機能を果たすことも出来るものである。具体的には、本発明、特に前記副線路を(λ/4)×nの長さを有するものとした態様では、当該副線路が、副線路内に伝送される電力を電磁波として外部(周囲)へ放射するアンテナとしての機能をも果たしていると考えられる。一方、この副線路を覆うように配置した上部グランドと下部グランドは、副線路からの当該放射を抑制する働きをする。したがって、当該グランドと副線路との距離(積層方向についての上部グランドと第二副線路部との間隔、或いは下部グランドと第一副線路部との間隔)を調整すれば副線路から放射される電力量を変えることができ、結合度を調整することが出来る。例えば、後述の第3実施形態では上部グランドと第二副線路部との距離を第1実施形態より小さくすることにより副線路から外部へ放射される電力を抑制し、結合度の減衰量を調整した。
前記第一副線路部の非結合部および第二副線路部の非結合部は、典型的には、螺旋を描くように渦巻状にそれぞれ形成する。主線路より長い副線路を積層基板内にスペース効率良く配置するためである。
また上記本発明のカプラでは、主線路および副線路の好ましい配置形態として、平面から見たときに、主線路の結合部、第一副線路部の結合部および第二副線路部の結合部を積層基板の一側縁部に沿って配置するとともに、前記層間接続導体を積層基板の中心部に配置し、第一副線路部の非結合部を、積層基板の一側縁部から積層基板の中心部に向け螺旋を描くように渦巻状に形成し、第二副線路部の非結合部を、積層基板の中心部から積層基板の一側縁部に向って且つ第一副線路部の螺旋と同じ回転方向に螺旋を描くように渦巻状に形成する。
このような態様によれば、主副両線路を効率良く配置できることに加えて、上下層に重ねて配置する第一副線路部と第二副線路部をそれぞれ流れる信号の伝送方向が同一方向となるから、両副線路部同士が干渉し合って互いに伝送を妨げるような事態が生じることを防ぐことが出来る。
さらに、第一副線路部および第二副線路部について、これらの非結合部の線幅を結合部の線幅より小さくしても良い。本発明では、副線路は結合部に比べて非結合部が長くなるが、このように副線路について結合部は線路幅を太く、非結合部は細くすれば、主線路との十分な結合を確保しながら、長い副線路(非結合部)を小さな面積で収容することが出来る。
本発明に係る無線通信装置は、2以上の周波数帯の送信信号を生成可能で、且つ、これらの送信信号を増幅する電力増幅器と当該電力増幅器の出力を制御する自動出力制御回路とを含む送信回路と、前記2以上の周波数帯の受信信号を処理可能な受信回路と、前記送信信号および受信信号の送受信を行うアンテナと、当該アンテナと前記送信回路および前記受信回路との間に接続され、前記アンテナを通じて受信された受信信号の前記受信回路への伝送および前記送信回路から出力された送信信号の前記アンテナへの伝送を行うスイッチと、前記電力増幅器から出力される送信信号のレベルを検出してその検出信号を前記自動出力制御回路に出力するカプラとを備え、前記カプラから入力された前記検出信号に基づいて前記電力増幅器の出力を制御する無線通信装置であって、前記カプラとして前記本発明に係るいずれかのカプラを使用し、当該カプラを前記アンテナと前記スイッチとの間に接続したものである。
従来のマルチバンド無線通信装置では、前述のように周波数帯ごとにカプラを備える必要があったが、前記本発明のカプラによれば、広い帯域で結合度を平坦化することが出来るから、上記のようにカプラを一つにする(複数の使用周波数帯に共通のものとする)ことができ、部品点数を減らして製造コストを低減することが出来るとともに、当該通信装置を小型化することが出来る。
なお、本発明に言う上記無線通信装置は、典型的には、携帯電話機やスマートフォン、無線通信機能を備えたPDA(Personal Digital Assistants)やタブレット型コンピュータなどの携帯端末装置であるが、これらに限られるものではなく、無線LAN用の通信装置やブルートゥース(Bluetooth/登録商標)規格の通信装置などの無線通信が可能な各種の通信装置が含まれる。
本発明によれば、回路素子を付加することなく簡易な構造で広帯域に亘って良好な特性を有する小型低背なカプラを実現することが出来る。
本発明の他の目的、特徴および利点は、図面に基づいて述べる以下の本発明の実施の形態の説明により明らかにする。なお、各図中、同一の符号は、同一又は相当部分を示す。
図1は、本発明の第1実施形態に係るカプラを概念的に示す回路図である。 図2Aは、前記第1実施形態に係るカプラを構成する積層基板の第1層(導体層)を示す平面図である。 図2Bは、前記第1実施形態に係るカプラを構成する積層基板の第1絶縁層を示す平面図である。 図2Cは、前記第1実施形態に係るカプラを構成する積層基板の第2層(導体層)を示す平面図である。 図2Dは、前記第1実施形態に係るカプラを構成する積層基板の第2絶縁層を示す平面図である。 図2Eは、前記第1実施形態に係るカプラを構成する積層基板の第3層(導体層)を示す平面図である。 図2Fは、前記第1実施形態に係るカプラを構成する積層基板の第3絶縁層を示す平面図である。 図2Gは、前記第1実施形態に係るカプラを構成する積層基板の第4層(導体層)を示す平面図である。 図2Hは、前記第1実施形態に係るカプラを構成する積層基板の第4絶縁層を示す平面図である。 図2Iは、前記第1実施形態に係るカプラを構成する積層基板の第5層(導体層)を示す平面図である。 図2Jは、前記第1実施形態に係るカプラを構成する積層基板の第5絶縁層を示す平面図である。 図2Kは、前記第1実施形態に係るカプラを構成する積層基板の第6層(導体層)を示す平面図(基板裏面側を透視状態で示している)である。 図3は、前記第1実施形態に係るカプラの結合度の周波数特性を示す線図である。 図4は、前記第1実施形態に係るカプラのアイソレーションの周波数特性を示す線図である。 図5は、前記第1実施形態に係るカプラの方向性の周波数特性を示す線図である。 図6は、前記第1実施形態に係るカプラの挿入損失の周波数特性を示す線図である。 図7は、前記第1実施形態に係るカプラの入力ポートにおけるVSWR(Voltage Standing Wave Ratio/電圧定在波比)の周波数特性を示す線図である。 図8は、前記第1実施形態に係るカプラの副線路のVSWR(結合ポートから見たVSWRの周波数特性)を示す線図である。 図9Aは、本発明の第2の実施形態に係るカプラを構成する積層基板の第1層(導体層)を示す平面図である。 図9Bは、前記第2実施形態に係るカプラを構成する積層基板の第1絶縁層を示す平面図である。 図9Cは、前記第2実施形態に係るカプラを構成する積層基板の第2層(導体層)を示す平面図である。 図9Dは、前記第2実施形態に係るカプラを構成する積層基板の第2絶縁層を示す平面図である。 図9Eは、前記第2実施形態に係るカプラを構成する積層基板の第3層(導体層)を示す平面図である。 図9Fは、前記第2実施形態に係るカプラを構成する積層基板の第3絶縁層を示す平面図である。 図9Gは、前記第2実施形態に係るカプラを構成する積層基板の第4層(導体層)を示す平面図である。 図9Hは、前記第2実施形態に係るカプラを構成する積層基板の第4絶縁層を示す平面図である。 図9Iは、前記第2実施形態に係るカプラを構成する積層基板の第5層(導体層)を示す平面図(基板裏面側を透視状態で示している)である。 図10は、前記第2実施形態に係るカプラの結合度の周波数特性を示す線図である。 図11は、前記第2実施形態に係るカプラのアイソレーションの周波数特性を示す線図である。 図12は、前記第2実施形態に係るカプラの方向性の周波数特性を示す線図である。 図13は、前記第2実施形態に係るカプラの挿入損失の周波数特性を示す線図である。 図14は、前記第2実施形態に係るカプラの入力ポートにおけるVSWRの周波数特性を示す線図である。 図15は、前記第2実施形態に係るカプラの副線路のVSWR(結合ポートから見たVSWRの周波数特性)を示す線図である。 図16は、本発明の第3実施形態に係るカプラの結合度の周波数特性を示す線図である。 図17は、前記第3実施形態に係るカプラの挿入損失の周波数特性を示す線図である。 図18は、前記第3実施形態に係るカプラの入力ポートにおけるVSWRの周波数特性を示す線図である。 図19は、前記第3実施形態に係るカプラの副線路のVSWR(結合ポートから見たVSWRの周波数特性)を示す線図である。 図20Aは、前記第4実施形態に係るカプラを構成する積層基板の第1層(導体層)を示す平面図である。 図20Bは、前記第4実施形態に係るカプラを構成する積層基板の第1絶縁層を示す平面図である。 図20Cは、前記第4実施形態に係るカプラを構成する積層基板の第2層(導体層)を示す平面図である。 図20Dは、前記第4実施形態に係るカプラを構成する積層基板の第2絶縁層を示す平面図である。 図20Eは、前記第4実施形態に係るカプラを構成する積層基板の第3層(導体層)を示す平面図である。 図20Fは、前記第4実施形態に係るカプラを構成する積層基板の第3絶縁層を示す平面図である。 図20Gは、前記第4実施形態に係るカプラを構成する積層基板の第4層(導体層)を示す平面図である。 図20Hは、前記第4実施形態に係るカプラを構成する積層基板の第4絶縁層を示す平面図である。 図20Iは、前記第4実施形態に係るカプラを構成する積層基板の第5層(導体層)を示す平面図である。 図20Jは、前記第4実施形態に係るカプラを構成する積層基板の第5絶縁層を示す平面図である。 図20Kは、前記第4実施形態に係るカプラを構成する積層基板の第6層(導体層)を示す平面図(基板裏面側を透視状態で示している)である。 図21は、前記第4実施形態に係るカプラの結合度の周波数特性を示す線図である。 図22は、前記第4実施形態に係るカプラのアイソレーションの周波数特性を示す線図である。 図23は、前記第4実施形態に係るカプラの方向性の周波数特性を示す線図である。 図24は、前記第4実施形態に係るカプラの挿入損失の周波数特性を示す線図である。 図25は、前記第4実施形態に係るカプラの入力ポートにおけるVSWRの周波数特性を示す線図である。 図26は、前記第4実施形態に係るカプラの副線路のVSWR(結合ポートから見たVSWRの周波数特性)を示す線図である。 図27は、本発明に係るカプラを備えたマルチバンド方式の携帯電話機の構成例を示すブロック図である。 図28Aは、比較例に係るカプラを構成する積層基板の第1層(導体層)を示す平面図である。 図28Bは、前記比較例に係るカプラを構成する積層基板の第1絶縁層を示す平面図である。 図28Cは、前記比較例に係るカプラを構成する積層基板の第2層(導体層)を示す平面図である。 図28Dは、前記比較例に係るカプラを構成する積層基板の第2絶縁層を示す平面図である。 図28Eは、前記比較例に係るカプラを構成する積層基板の第3層(導体層)を示す平面図(基板裏面側を透視状態で示している)である。 図29は、前記比較例に係るカプラの結合度の周波数特性を示す線図である。 図30は、前記比較例に係るカプラのアイソレーションの周波数特性を示す線図である。 図31は、前記比較例に係るカプラの方向性の周波数特性を示す線図である。 図32は、前記比較例に係るカプラの挿入損失の周波数特性を示す線図である。 図33は、前記比較例に係るカプラの入力ポートにおけるVSWRの周波数特性を示す線図である。 図34は、従来のマルチバンド方式の携帯電話機の構成例を示すブロック図である。
〔第1実施形態〕
図1に示すように本発明の第1の実施形態に係るカプラ11は、高周波電力を伝送する主線路12と、当該主線路12を伝送される高周波電力の一部を取り出す副線路13とを備え、これら主線路12と副線路13を近接して配置することにより両線路12,13を電磁界結合させたものである。主線路12は、一端に入力ポートP1を、他端に出力ポートP2をそれぞれ有し、副線路13は、一端に結合ポートP3を、他端にアイソレーションポートP4をそれぞれ有する。
副線路13は、異なる導体層に配置し且つビアホール(以下「ビア」と言う)V1で互いに電気的に接続した第一副線路部13aと第二副線路部13bとからなり、副線路13の一端部と他端部、即ち、第一副線路部13aの一端部と第二副線路部13bの一端部の2箇所に主線路12(主線路の結合部22)と電磁界結合を行う結合部23a,24aをそれぞれ形成する。また、副線路13の長さは、主線路12より長く、所定周波数(設定周波数)で共振が生じる長さを有するものとする。詳しくは次のとおりである。
本実施形態のカプラ11は、使用周波数帯を700MHz(下端周波数)〜2.7GHz(上端周波数)とし、この使用周波数帯の高域側(上端周波数より高い周波数領域)の近傍位置(本実施形態の場合3.2GHz付近)に共振点を発生させて使用周波数帯域内の結合を平坦化する。
図3〜図8は本実施形態のカプラの周波数特性を示すものであり、図3は結合度を、図8は結合ポートP3側から見た副線路13のVSWR(電圧定在波比)をそれぞれ示すものである。これらの図に示すように、使用周波数帯700MHz〜2.7GHzの高域側の設定周波数3.2GHzに副線路13の共振による減衰極を生じさせるため、副線路13の長さを、当該設定周波数3.2GHzで共振が生じる長さ(例えば当該周波数3.2GHzに対応する波長をλとし、nを正の整数とすると、(λ/4)×nの長さ)を有するものとする。
なお、主線路12は、副線路13の長さより短く、副線路13との電磁界結合を行うことが出来る(結合部22を形成できる)長さとすれば良い。また、上記使用周波数帯は、一例を示すものであって、本発明ではこれら以外にも様々なものであって良く、上記共振点を形成する位置(設定周波数)も使用周波数帯の値(下端周波数の値や上端周波数の値)、使用周波数帯の帯域幅、要求される仕様等により上記以外の様々な値をとることがある。
一方、このように従来の一般的なカプラと比べて長い副線路13を備えても、本発明によれば以下のように主線路12と副線路13のパターン形状および積層基板への配置を工夫することにより、カプラの大型化(平面形状の増大や積層数の増加)を招くことなく小型低背なカプラを実現することが出来る。
図2A〜図2Kは、本実施形態に係るカプラを構成する積層基板の各層を示すものであり、本実施形態のカプラは、複数の導体層を備えた長方形の平面形状を有する積層基板(以下単に「基板」と言うことがある)の内部配線層(導体層)に前述した主線路、副線路、各ポートおよび各グランドを配置する。なお、これら図2A〜図2Kは当該基板の各層を上層(基板表面側)から下層(基板裏面側)に向け順に示している。またこれらの図のうち、図2A、図2C、図2E、図2G、図2I及び図2Kは、導体パターンを配置した導体層(第1層〜第6層)を示し、図2Bは第1層と第2層との間の絶縁層(「第1絶縁層」と称する)を示している。また同様に、図2Dは第2層と第3層との間の絶縁層(第2絶縁層)を、図2Fは第3層と第4層との間の絶縁層(第3絶縁層)を、図2Hは第4層と第5層との間の絶縁層(第4絶縁層)を、図2Jは第5層と第6層との間の絶縁層(第5絶縁層)をそれぞれ示すものである。なお、後述の実施形態(図9A〜図9I)及び比較例(図21A〜図21E)についても同様である。
本実施形態のカプラでは、図2Eに示すように基板の第3層に、主線路12と入力ポートP1と出力ポートP2と中間グランドG1を備える。入力ポートP1は、平面から見たときに当該第3層の左上角部に、出力ポートP2は右上角部にそれぞれ配置する。主線路12は、基板の一側縁部に沿って(当該一側縁と平行に)直線状に延びる中間部22と、当該中間部22の一端部と入力ポートP1との間に延びる入力ポートP1への接続端部と、当該中間部22の他端部と出力ポートP2との間に延びる出力ポートP2への接続端部とからなる。
主線路12の中間部22は、副線路13と電磁界結合を行う結合部とする。具体的には、当該中間部22は、後に述べる第4層の第一副線路部13aの結合ポートP3への接続端部23aならびに第2層の第二副線路部13bのアイソレーションポートへの接続端部24aと平面から見たときに重なるように配置してあり、これにより主線路12と副線路13の両端部とを電磁界結合させる。
また、これら入出力ポートP1,P2および主線路12により囲まれた第3層の中央部には、グランド電極(中間グランド)G1を配置する。この中間グランドG1は、後に述べる第一副線路部13aの非結合部23bと、第二副線路部13bの非結合部24bとの間に介在されるものである。
図2Gに示すように第4層には、結合ポートP3と第一副線路部13aを配置する。結合ポートP3は第4層の左下角部に配置し、この結合ポートP3を配置した基板の一端部から他端部へ向け基板の一側縁部に沿って(当該一側縁と平行に)直線状に第一副線路部13aを延ばし、当該直線状の線路部分(結合ポートP3への接続端部23a)を、前記第3層に配置した主線路12の中間部22と平面から見たときに重なるように配置することにより結合部23aとする。
そして、第4層において上記結合部23aに続いて第一副線路部13aを基板中心部へ向け渦巻状に巻き回すことにより、主線路12とは結合を行わない第一副線路部13aの非結合部23bを形成する。基板中心部には第3絶縁層および第2絶縁層を貫通して第2層に延びるビアV1を設け、このビアV1に、前記結合部23aとは反対側の第一副線路部13a(非結合部23b)の端部を接続する。なお、当該第一副線路部13aの非結合部23bは、結合部23aに比べ線幅を狭くしてある(次に述べる第二副線路部13bも同様)。より小さな面積で長い副線路13を収容することを可能とするためである。また同様のスペース効率の点から、第一副線路部13aと第二副線路部13bは略同一の長さとし、長い副線路13を2つの層(第4層と第2層)に均等に分けて配置している。
図2Cに示すように第2層には、アイソレーションポートP4と第二副線路部13bを配置する。アイソレーションポートP4は第2層の右下角部に配置し、前記第4層の第一副線路部13aとは逆に、アイソレーションポートP4を配置した基板の他端部から基板の一端部へ向け基板の一側縁部に沿って(当該一側縁と平行に)直線状に延びるように第二副線路部13bを形成し、当該直線状の線路部分(アイソレーションポートP4への接続端部24a)を、前記第3層に配置した主線路12の中間部22と平面から見たときに重なるように配置することにより結合部24aとする。
一方、当該第2層の中心部に配置した前記第4層から当該第2層まで延びるビアV1から、上記第二副線路部13bの結合部24aに向け、次第に外方へ広がるように第二副線路部13bを渦巻状に巻き回すことにより、主線路12とは結合を行わない第二副線路部13bの非結合部24bを形成する。この第二副線路部13bの非結合部24bは、基板の一側縁部で前記結合部24aに続くこととなる。
また、上記第二副線路部13bを巻き回す方向(第一副線路部13aと接続されるビアV1から結合部24aへ向かう回転方向)は、前記第一副線路部13aの回転方向(結合部23aから第二副線路部13bと接続されるビアV1に向かう回転方向)と同一の方向(この例の場合反時計回り)としてある。第一副線路部13aの非結合部23bと第二副線路部13bの非結合部24bは平面から見たときに略重なり合っているが、このように線路を巻き回す方向を揃えることにより、2層に分けて配置した副線路部13a,13b同士が干渉する(相互に信号伝送を阻害する)ことを防ぐことが出来る。また本実施形態では、このような副線路部13a,13b(非結合部23b,24b)同士の干渉を防ぐため更に、第一副線路部13aの非結合部23bと第二副線路部13bの非結合部24bとの間に介在されるように前記第3層に中間グランドG1を備えた。
さらに本実施形態のカプラでは、図2Aに示すように第1層に、当該導体層の略全面に広がるグランド電極(上部グランド)G2を設ける。この上部グランドG2は、実装時に近接して配置される他の部品や部材の影響を本実施形態のカプラ11が受けることを防ぐもので、平面から見たときに前記結合部22,23a,24a(図2Aにおいて符号Aで示す)を避けつつ副線路13の非結合部23b,24bを覆うように形成する。また同様に、図2Iに示すように第5層には、当該導体層の略全面に広がるグランド電極(下部グランド)G3を備える。この下部グランドG3も上部グランドG2同様、平面から見たときに前記結合部22,23a,24a(図2Iにおいて符号Aで示す)を避けつつ副線路13の非結合部23b,24bを覆うように形成してある。
また、図2Kに示すように第6層には外部接続用の端子T1,T2,T3,T4,TGを備える。すなわち、前記各ポートP1〜P4の配置位置に対応するように(これらP1〜P4の各直下位置に)、外部接続端子T1〜T4を配置し、基板を略垂直に貫通するビアVを介してこれら外部接続端子T1,T2,T3,T4と前記入力ポートP1,出力ポートP2,結合ポートP3,アイソレーションポートP4をそれぞれ接続する。
また、第6層の中央両側縁部に備えた外部接続端子TGは、グランド電極(上部グランドG2,中間グランドG1,下部グランドG3)用の端子であり、これらグランド用端子TGと第5層の下部グランドG3とをビアVを介して接続する。また、第3層の中間グランドG1は、第3絶縁層、第4層及び第4絶縁層(図2F〜図2H)を垂直に貫通するように基板中心部に設けたビアVにより第5層の下部グランドG3に接続し、この下部グランドG3を介して当該グランド端子TGに接続を行う。さらに、第1層の上部グランドG2は、第1絶縁層、第2層及び第2絶縁層(図2B〜図2D)を垂直に貫通するように基板中心部に設けたビアVにより第3層の中間グランドG1に接続することにより、中間グランドG1及び下部グランドG3を介してグランド端子TGに接続を行う。
〔比較例〕
図28A〜図28Eは本実施形態の比較として従来構造のカプラを示すものである。これらの図に示すようにこのカプラは、積層基板の第1層に主線路52を、第2層に副線路53をそれぞれ配置し、これら主線路52と副線路53の各中間部62,63を平面から見たときに重なるようにパターン形成することにより結合させたものである。
図29〜図33は当該比較例に係るカプラの周波数特性を示すものであるが、これらの図から明らかなように使用周波数帯700MHz〜2.7GHzにおける結合度の最小値は700MHzのときの25.79dBであり、最大値は2.7GHzのときの14.31dBであるから、結合度の変動幅Δは11.48dBとなり、一般的に必要とされる変動幅である6dB以下の規格を満たすことは全く出来ない。
これに対し前記実施形態のカプラによれば、図3〜図8に示すように、使用周波数帯域内(700MHz〜2.7GHz)における結合度の最小値は700MHzのときの25.55dB、最大値は1.8GHzのときの21.51dBで、結合度の変動幅Δは4.04dBとなり、一般的に必要とされる変動幅である6dB以下の規格を満たすことが出来る。尚これは、3.2GHz付近で副線路を共振させることにより減衰極を形成することで使用周波数帯(700MHz〜2.7GHz)における結合度の上昇が抑えられ、当該使用周波数帯において結合度が平坦化されたためである。
このように本実施形態のカプラによれば、副線路を共振が生じる長さを有するものとして使用周波数帯の高域側近傍位置に共振点(結合度の減衰極)を生じさせ、これにより使用周波数帯域内における結合度の変動を抑制して結合度を平坦化することが出来る。
また、上記結合度の要求仕様S1(図3)だけでなく、他の方向性(図5)、挿入損失(図6)及びVSWR(図7)に関する各要求仕様S2,S3,S4についてもこれらを十分に満たすことが出来る。
〔第2実施形態〕
図9A〜図9Iに示すように本発明の第2の実施形態に係るカプラは、前記第1実施形態のカプラと同様に副線路の両端部を主線路と結合させたものであるが、第1実施形態とは異なり、主線路12を直線状に短く形成したものである。
具体的には、第3層の左上角部に配置した入力ポートP1と、右上角部に配置した出力ポートP2とを一直線に結ぶように基板縁部に沿って主線路12を配置し、結合部22を形成した。なお、他の構造は前記第1実施形態と同様であるから相当部分に同一の符号を付して重複した説明を省略する。
図10〜図15は本実施形態に係るカプラの周波数特性を示すものであるが、これらの図から明らかなように本実施形態によっても、前記比較例に比べて良好な特性を得ることが出来る。また、前記第1実施形態と比べて主線路12が短い本実施形態によれば、挿入損失を低く抑えることが出来る。
〔第3実施形態〕
本発明の第3の実施形態に係るカプラは、図16に示すように副線路の共振点を使用周波数帯域内(下端周波数より大きく上端周波数以下の範囲内)に位置せしめたものである。具体的にはこのカプラは、使用周波数帯域が700MHz〜3.5GHzであり、2.9GHz付近に副線路の共振による減衰極を形成した。
また、主線路や副線路等の形状や配置は前記第1実施形態(図2A〜図2K)と同様であるが、第1絶縁層の厚さを薄くすることにより(第1実施形態では5μmであったものを2μmとした)、第1層のグランド電極(上部グランド)G2と第2層の第二副線路部13bとの間の距離を小さくした。このように上部グランドG2を副線路13(第二副線路部13b)に近づけることで、前述のようにアンテナとしても機能する副線路13からの放射が抑えられ、共振点の減衰量を小さくすることで使用周波数帯域内における結合度の変動幅を小さく(6dB以下に)抑えることが可能となる。なお、下部グランドG3を第一副線路部13aに近づけても(或いは上部グランドG2と下部グランドG3の双方を副線路13に近づけても)同様の結果を得ることが出来る。
また、図17〜図19はそれぞれ、本実施形態に係るカプラの挿入損失、入力ポートにおけるVSWR、及び、結合ポートから見た副線路のVSWRを示すものである。
このように本発明では、副線路13の共振による減衰極を使用周波数帯域内(下端周波数より大きく上端周波数以下の範囲内)に形成しても良い。
〔第4実施形態〕
図20A〜図20Kに示すように本発明の第4の実施形態に係るカプラは、前記第1実施形態のカプラと同様に副線路13の両端部23a,24aを主線路12と結合させたものであるが、第1実施形態とは異なり、主線路12の結合部22と副線路13の結合部23a,24aとが平面から見たときに重なっていない。
具体的には、第4層の副線路の結合部23a(図20G)は主線路の結合部22(図20E)の斜め下方に位置するとともに、第2層の副線路の結合部24a(図20G)は主線路の結合部22(図20E)の斜め上方に位置し、これにより、平面から見たときに主線路の結合部22と副線路の結合部23a,24aとが平面から見たときに重ならないが互いに近接した(平面から見たときに両結合部の縁同士が接している)位置に配置されている。
図21〜図26は本実施形態に係るカプラの周波数特性を示すものであるが、これらの図から明らかなように本実施形態によっても、前記比較例に比べて良好な特性を得ることが出来る。このように本発明では、前記第1実施形態のように主線路の結合部22と副線路の両端部23a,24aとを完全に重ね合わせるように配置しなくても、両線路12,13を近接させて配置することにより結合させ、良好な特性を得ることが可能である。
なお、上記第4実施形態では、両結合部(主線路の結合部22と副線路の結合部23a,24a)が平面から見たときに縁同士が接する位置関係としたが、例えば、両結合部が平面から見たときに前記第1実施形態のように完全には重ならないが幅方向の一部が重なるように配置することも可能であるし、結合が可能である限り平面から見たときに両結合部間に隙間があるような(上記第4実施形態より離れた)配置であっても良く、これらの構造も本発明の範囲内に含まれる。
上記各実施形態によれば、結合度を広帯域に亘って平坦化することが出来るから、マルチバンド方式の無線通信装置におけるカプラの配設個数を減らすことが可能となる。
例えば、800MHz帯と2GHz帯の2つの通信周波数帯を利用可能なデュアルバンド方式の携帯電話機を構成することを考えた場合、従来であれば800MHz帯と2GHz帯とでは結合度が大きく変動してしまうため、各周波数帯(800MHz帯と2GHz帯)でそれぞれ結合度がほぼ等しくなるように調整した2つのカプラを各周波数帯の送信回路に各々設ける必要があったが(前記図34参照)、本実施形態によれば両周波数帯(800MHz帯と2GHz帯)に亘って結合度を平坦にすることが出来るから、共通のカプラを1つ設ければ良く、部品点数を減らして送信回路を単純化することが出来る。
具体的には、図27に示すように本発明によれば、アンテナ101とスイッチ102との間にカプラ11を1つ設ければ良く、従来(図34)と比べて送信回路201を簡素化することが出来る。なお、PA202は両周波数帯に亘って使用可能なものを使用し、カプラ11により得られたモニタ信号(送信信号のレベルに対応した信号)をAPC回路203に入力し、APC回路203がモニタ信号のレベル(即ち送信信号のレベル)に応じてPA202の出力が一定になるようにPA202の利得を制御する。スイッチ102は、アンテナ101を通じて受信した電波を受信回路103,104へ振り分けるとともに、送信回路201から入力された送信信号をアンテナ101に送り出す機能を果たすもので、例えばダイプレクサや高周波スイッチを組み合わせることにより構成すれば良い。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内で種々の変更を行うことができることは当業者に明らかである。
11,311,411 カプラ
12,52 主線路
13,53 副線路
13a 第一副線路部
13b 第二副線路部
22,62 結合部(主線路の中間部)
23a 結合部(結合ポートへの接続端部)
23b 非結合部
24a 結合部(アイソレーションポートへの接続端部)
24b 非結合部
63 結合部(副線路の中間部)
101 アンテナ
102 スイッチ
103,104 受信回路
201,301,401 送信回路
202,302,402 PA(電力増幅器)
203,303,403 APC回路(自動出力制御回路)
G1 中間グランド
G2 上部グランド
G3 下部グランド
P1 入力ポート
P2 出力ポート
P3 結合ポート
P4 アイソレーションポート
S1,S2,S3,S4,S5 要求仕様
T1,T2,T3,T4,TG 外部接続用端子
V,V1 ビアホール

Claims (11)

  1. 高周波信号を伝送可能な主線路と、
    前記主線路に前記高周波信号を入力する入力ポートと、
    前記主線路から前記高周波信号を出力する出力ポートと、
    前記主線路と電磁界結合して前記高周波信号の一部を取り出す副線路と、
    前記副線路の一方の端部に備えられた結合ポートと、
    前記副線路の他方の端部に備えられたアイソレーションポートとを、
    絶縁層を介して積層した複数の導体層を有する積層基板に備えた方向性結合器であって、
    前記副線路は、前記主線路より長く、
    前記積層基板の第一導体層に、前記主線路を配置し、
    前記第一導体層より下層の第二導体層に、前記副線路の一部である第一副線路部を配置し、
    この第一副線路部の一端部を前記結合ポートおよび前記アイソレーションポートのうちの一方に接続し、
    前記第一導体層より上層の第三導体層に、前記副線路の他の一部である第二副線路部を配置し、
    この第二副線路部の一端部を前記結合ポートおよび前記アイソレーションポートのうちの他方に接続し、
    前記第一副線路部の他端部と前記第二副線路部の他端部とを層間接続導体により電気的に接続し、
    前記主線路および前記副線路間で電磁界結合を行う線路部分を結合部、当該電磁界結合を行わない線路部分を非結合部とそれぞれ称した場合に、
    前記主線路の少なくとも一部と前記第一副線路部の一部とが互いに近接するように配置するとともに、前記主線路の少なくとも一部と前記第二副線路部の一部とが互いに近接するように配置することにより、前記主線路、前記第一副線路部の一端部および前記第二副線路部の一端部にそれぞれ結合部を形成する一方、
    前記第一副線路部の結合部と前記第二副線路部の結合部との間に延在する副線路の中間部を、非結合部とし、
    前記第一副線路部および前記第二副線路部について、これらの非結合部の線幅を結合部の線幅より小さくした
    ことを特徴とする方向性結合器。
  2. 前記主線路の少なくとも一部と、前記第一副線路部の一部と、前記第二副線路部の一部とが平面から見たときに重なるように配置することにより、前記主線路、前記第一副線路部の一端部および前記第二副線路部の一端部にそれぞれ前記結合部を形成した
    請求項1に記載の方向性結合器。
  3. 前記第一副線路部の長さと、前記第二副線路部の長さとが略等しい
    請求項1または2に記載の方向性結合器。
  4. 前記積層基板の積層方向について前記第一副線路部の非結合部と前記第二副線路部の非結合部との間に介在されるように配置したグランド電極である中間グランドを備えた
    請求項1から3のいずれか一項に記載の方向性結合器。
  5. 前記第二副線路部の非結合部を覆うように前記第三導体層より上層に配置したグランド電極である上部グランドを備えた
    請求項1から4のいずれか一項に記載の方向性結合器。
  6. 前記上部グランドは、平面から見たときに前記主線路の結合部、第一副線路部の結合部および第二副線路部の結合部と重ならないように形成してある
    請求項5に記載の方向性結合器。
  7. 前記第一副線路部の非結合部を覆うように前記第二導体層より下層に配置したグランド電極である下部グランドを備えた
    請求項1から6のいずれか一項に記載の方向性結合器。
  8. 前記下部グランドは、平面から見たときに前記主線路の結合部、第一副線路部の結合部および第二副線路部の結合部と重ならないように形成してある
    請求項7に記載の方向性結合器。
  9. 前記第一副線路部の非結合部および前記第二副線路部の非結合部を、螺旋を描くように渦巻状にそれぞれ形成した
    請求項1から8のいずれか一項に記載の方向性結合器。
  10. 平面から見たときに、
    前記主線路の結合部、前記第一副線路部の結合部および前記第二副線路部の結合部を前記積層基板の一側縁部に沿って配置するとともに、
    前記層間接続導体を前記積層基板の中心部に配置し、
    前記第一副線路部の非結合部を、前記積層基板の一側縁部から前記積層基板の中心部に向け螺旋を描くように渦巻状に形成し、
    前記第二副線路部の非結合部を、前記積層基板の中心部から前記積層基板の一側縁部に向って且つ前記第一副線路部の螺旋と同一の回転方向に螺旋を描くように渦巻状に形成した
    請求項1から9のいずれか一項に記載の方向性結合器。
  11. 2以上の周波数帯の送信信号を生成可能で、且つ、これらの送信信号を増幅する電力増幅器と当該電力増幅器の出力を制御する自動出力制御回路とを含む送信回路と、
    前記2以上の周波数帯の受信信号を処理可能な受信回路と、
    前記送信信号および受信信号の送受信を行うアンテナと、
    当該アンテナと、前記送信回路および前記受信回路との間に接続され、前記アンテナを通じて受信された受信信号の前記受信回路への伝送および前記送信回路から出力された送信信号の前記アンテナへの伝送を行うスイッチと、
    前記電力増幅器から出力される送信信号のレベルを検出してその検出信号を前記自動出力制御回路に出力する方向性結合器と
    を備え、
    前記方向性結合器から入力された前記検出信号に基づいて前記電力増幅器の出力を制御する無線通信装置であって、
    前記方向性結合器は、前記アンテナと前記スイッチと間に接続され、且つ、前記請求項1から10のいずれか一項に記載の方向性結合器である
    ことを特徴とする無線通信装置。
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