JP5692162B2 - ガスセンサ素子、及び当該ガスセンサ素子を備えるガスセンサ - Google Patents

ガスセンサ素子、及び当該ガスセンサ素子を備えるガスセンサ Download PDF

Info

Publication number
JP5692162B2
JP5692162B2 JP2012112140A JP2012112140A JP5692162B2 JP 5692162 B2 JP5692162 B2 JP 5692162B2 JP 2012112140 A JP2012112140 A JP 2012112140A JP 2012112140 A JP2012112140 A JP 2012112140A JP 5692162 B2 JP5692162 B2 JP 5692162B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
gas sensor
gas
sensor element
catalyst
measured
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2012112140A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2013238504A (ja
Inventor
春樹 近藤
春樹 近藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toyota Motor Corp
Original Assignee
Toyota Motor Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toyota Motor Corp filed Critical Toyota Motor Corp
Priority to JP2012112140A priority Critical patent/JP5692162B2/ja
Publication of JP2013238504A publication Critical patent/JP2013238504A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5692162B2 publication Critical patent/JP5692162B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Measuring Oxygen Concentration In Cells (AREA)

Description

本発明は、ガスセンサ素子に関する。より詳しくは、本発明は、測定値ズレを抑制すると共に、優れた耐久性を備えるガスセンサ素子に関する。更に、本発明は、上記ガスセンサ素子を備えるガスセンサにも関する。
例えば、車両用エンジン等の内燃機関の燃焼制御においては、マフラーや触媒等に配設されたOセンサの電極間の抵抗値(又は電極間に発生する起電力)の変動に基づいて検出される酸素濃度の変動に基づいて空燃比が算出され、エンジンの制御装置に伝達され、例えば、エンジンの回転数に応じて、触媒による排ガス浄化等に適した空燃比となるように制御される。
一方、近年の地球環境保護意識の高まり等を受け、ガソリン直噴システム等による燃費向上、アルコール系燃料(アルコール混合ガソリンを含む)や天然ガス等のガソリン代替燃料の使用等が検討されるようになってきている。かかるガソリン直噴エンジンやガソリン代替燃料を使用するエンジン等においても、例えば、燃費の向上、排気ガスの浄化、エンジン出力の向上等、様々な目的を達成するためには空燃比の制御が重要である。従って、これらのエンジンにおいても、従前のエンジンと同様に、十分な検出精度を有するガスセンサを使用して、内燃機関の燃料制御を行うことが望まれる。
ところが、上記ガソリン直噴エンジンにおいては、燃料供給機構の違いにより、例えばエンジンの始動時等において未燃燃料が残りがちであり、またガソリン代替燃料を使用するエンジンにおいては、従来のガソリンエンジンと比較して、例えば、排気ガス中に含まれる未燃燃料における低分子量成分が多い傾向がある。その結果、低分子量成分に起因するガスセンサの測定値ズレが発生し、空燃比の制御を正しく行うことが困難となる場合がある。
上記問題は、ガスセンサの構造に起因して発生する。具体的には、ガスセンサは、被測定ガスの導入量を制限する機構(例えば、多孔質拡散抵抗層等)を備える。当該機構を排気ガスが通過する際、低分子量成分とその他の成分との間には、拡散速度の差が生ずる。当該拡散速度の差により、低分子量成分は、その他の成分よりも早く、ガスセンサの被測定ガス側電極に到達する。その結果、被測定ガス側電極の近傍においては、実際の排気ガスにおける低分子量成分の濃度よりも高い濃度にて低分子量成分が存在することとなり、ガスセンサの測定値ズレが生ずる。
そこで、従来技術に係るガスセンサにおいては、例えば、被測定ガスの導入経路となる多孔質拡散抵抗層の外側面に、触媒となる貴金属を担持した触媒担持トラップ層を設けて、被測定ガス中の低分子量成分(水素ガス)を酸化(燃焼)させることにより、低分子量成分が被測定ガス側電極に到達することを抑制し、ガスセンサの測定値ズレを防ぐことが行われている。しかしながら、このような従来技術に係るガスセンサ素子においては、高温雰囲気下において貴金属の粒子が凝集し、触媒能が低下してしまう虞がある。
そこで、当該技術分野においては、例えば、被測定ガスの導入経路となる多孔質拡散抵抗層の外側面に、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、及びロジウム(Rh)からなる貴金属を触媒として担持した触媒担持トラップ層において、パラジウム(Pd)の添加量を特定の範囲に規定することにより、ガスセンサの測定値ズレを防ぐと共に、触媒担持トラップ層における触媒能の耐久劣化を抑制することが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
しかしながら、上記のような構成においては、触媒担持トラップ層に担持された貴金属が高温時に蒸散してしまい、貴金属の量が減少して触媒性能の劣化が生ずるという問題が指摘されている。特に、触媒担持トラップ層は、担持トラップ層に貴金属を含んだ溶液を含浸させ、これを焼成して作製するが、この場合、貴金属の平均粒径が0.1μm程度と小さいため、高温時における貴金属の蒸散がより顕著となる。
そこで、当該技術分野においては、触媒担持トラップ層に担持される貴金属の粒径を大きくすることにより、耐久性の向上を図ることが提案されている(例えば、特許文献2を参照)。しかしながら、貴金属の粒径を大きくするだけでは、高温雰囲気下における貴金属の蒸散を十分に抑制することはできない。その結果、貴金属量の減少に伴う触媒性能の劣化を十分に抑制することはできない。また、かかる貴金属量の減少を見越して、初期の貴金属の担持量を予め増やしておき、触媒性能の維持を図るという方法も提案されているものの、かかる方法はガスセンサの製造コストの増大を招く虞が高い。
そこで、当該技術分野においては、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、及びロジウム(Rh)からなる貴金属を触媒として担持した触媒担持トラップ層において、貴金属合金粒子の平均粒径を特定の範囲に規定すると共に、貴金属触媒粉末における各元素の含有量のバラツキを小さく抑えることにより、耐熱性・耐久性に優れ、触媒性能を長期間にわたって十分に発揮することができるガスセンサを提供することが提案されている(例えば、特許文献3を参照)。
しかしながら、上記のような構成を有する触媒担持トラップ層においても、高温雰囲気下における貴金属の凝集や蒸散を十分に抑制することはできていない。即ち、当該技術分野においては、測定値ズレを抑制すると共に、優れた耐久性を備えるガスセンサに対する継続的な要求が存在する。
特開2007−199046号公報 特開2010−256111号公報 特開2011−123004号公報
前述のように、当該技術分野においては、測定値ズレを抑制すると共に、優れた耐久性を備えるガスセンサに対する継続的な要求が存在する。本発明は、かかる要求に応えるために為されたものである。即ち、本発明は、測定値ズレを抑制すると共に、優れた耐久性を備えるガスセンサ素子を提供することを1つの目的とする。
上記1つの目的は、
被測定ガス中に含まれる特定成分の濃度を検出する検出手段と、
前記被測定ガスが前記検出手段に到達する経路において前記検出手段の前記被測定ガス側を覆い、且つ前記被測定ガスを透過させる多孔質拡散抵抗層と、
前記被測定ガスが前記多孔質拡散抵抗層に到達する経路において前記多孔質拡散抵抗層の前記被測定ガス側を覆い、前記被測定ガスを透過させ、且つ前記特定成分よりも低い分子量を有する成分のうち少なくとも1つの成分である低分子量成分を酸化させる触媒を担持する触媒担持層と、
を備えるガスセンサ素子であって、
前記触媒の粒径分布が、
0.01μm以上且つ0.06μm未満の範囲に第1のピークを有し、
0.1μm以上且つ0.4μm未満の範囲に第2のピークを有する、
ガスセンサ素子によって達成される。
本発明によれば、測定値ズレを抑制すると共に、優れた耐久性を備えるガスセンサ素子を提供することができる。
本発明の1つの実施態様に係るガスセンサ素子における多孔質拡散抵抗層と触媒担持層との界面近傍の構造を説明する模式的な断面図である。 本発明の1つの実施態様に係るガスセンサ素子が備える触媒担持層に担持される触媒の粒子の粒径分布につき、他のガスセンサ素子が備える触媒担持層に担持される触媒の粒子と比較しながら説明する模式的なグラフである。 図2に示した種々の粒径分布を有する触媒の粒子を用いる各種実施態様に係るガスセンサ素子を備えるガスセンサの各々について、被測定ガス中に含まれる低分子量成分の有無による測定値の変化の大きさを高温耐久試験の前後で比較した結果を表すグラフである。
前述のように、本発明の1つの目的は、測定値ズレを抑制すると共に、優れた耐久性を備えるガスセンサ素子を提供することである。本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究の結果、被測定ガス中に含まれる低分子量成分を分解する触媒を担持する触媒担持層と多孔質拡散抵抗層とを備えるガスセンサ素子において、粒径分布が大小2つの特定の粒径範囲にそれぞれピークを有する触媒の粒子を用いることにより、測定値ズレを抑制すると共に、優れた耐久性を備えるガスセンサ素子を提供することができることを見出し、本発明を想到するに至ったものである。
即ち、本発明の第1の実施態様は、
被測定ガス中に含まれる特定成分の濃度を検出する検出手段と、
前記被測定ガスが前記検出手段に到達する経路において前記検出手段の前記被測定ガス側を覆い、且つ前記被測定ガスを透過させる多孔質拡散抵抗層と、
前記被測定ガスが前記多孔質拡散抵抗層に到達する経路において前記多孔質拡散抵抗層の前記被測定ガス側を覆い、前記被測定ガスを透過させ、且つ前記特定成分よりも低い分子量を有する成分のうち少なくとも1つの成分である低分子量成分を酸化させる触媒を担持する触媒担持層と、
を備えるガスセンサ素子であって、
前記触媒の粒径分布が、
0.01μm以上且つ0.06μm未満の範囲に第1のピークを有し、
0.1μm以上且つ0.4μm未満の範囲に第2のピークを有する、
ガスセンサ素子である。
上記のように、本実施態様に係るガスセンサ素子は、
被測定ガス中に含まれる特定成分の濃度を検出する検出手段と、
前記被測定ガスが前記検出手段に到達する経路において前記検出手段の前記被測定ガス側を覆い、且つ前記被測定ガスを透過させる多孔質拡散抵抗層と、
前記被測定ガスが前記多孔質拡散抵抗層に到達する経路において前記多孔質拡散抵抗層の前記被測定ガス側を覆い、前記被測定ガスを透過させ、且つ前記特定成分よりも低い分子量を有する成分のうち少なくとも1つの成分である低分子量成分を酸化させる触媒を担持する触媒担持層と、
を備える。
上記被測定ガスとしては、前述のように、例えば、車両用エンジン等の内燃機関から排出される排気ガス等を挙げることができる。また、前記被測定ガス中に含まれる特定成分としては、例えば、酸素等を挙げることができる。即ち、本実施態様に係るガスセンサ素子は、車両用エンジン等の内燃機関の燃焼制御において使用されるOセンサや空燃比(A/F)センサに含まれるガスセンサ素子として使用することができる。但し、これらはあくまでも例示であって、本実施態様に係るガスセンサ素子の用途がこれらに限定されるものと解釈されるべきではない。
また、被測定ガス中に含まれる特定成分の濃度を検出する検出手段は、特定の構成を有するものに限定されるものではない。即ち、当該検出手段は、被測定ガス中に含まれる特定成分の濃度を検出することが可能である限り、如何なる構成を有するものであってもよい。また、当該検出手段の具体的な構成は、検出対象となる特定成分や当該特定成分を含む被測定ガスの性状や当該検出手段を含むガスセンサ素子が使用される環境等に応じて、適宜設計することができる。
例えば、車両用エンジン等の内燃機関の燃焼制御において使用されるOセンサや空燃比(A/F)センサに含まれるガスセンサ素子として本実施態様に係るガスセンサ素子を使用する場合は、上記検出手段は、例えば、酸素イオン伝導性を有する固体電解質層と、前記固体電解質層の一方の主面及び他方の主面にそれぞれ配設された被測定ガス側電極及び基準ガス側電極と、を備えることができる。
次に、多孔質拡散抵抗層は、上述のように、前記被測定ガスが前記検出手段に到達する経路において前記検出手段の前記被測定ガス側を覆い、且つ前記被測定ガスを透過させるように構成される。換言すれば、被測定ガスは、多孔質拡散抵抗層を経由して、前記検出手段に到達し、その中に含まれる前記特定成分の濃度が検出される。かかる多孔質拡散抵抗層は、前記被測定ガスが前記検出手段に到達する経路において前記検出手段の前記被測定ガス側を覆い、且つ前記被測定ガスを透過させることが可能である限り、如何なる構成を有するものであってもよい。かかる多孔質拡散抵抗層は、例えば、ガス透過性のアルミナ多孔体等から構成することができる。
次に、触媒担持層は、上述のように、前記被測定ガスが前記多孔質拡散抵抗層に到達する経路において前記多孔質拡散抵抗層の前記被測定ガス側を覆い、前記被測定ガスを透過させ、且つ前記特定成分よりも低い分子量を有する成分のうち少なくとも1つの成分である低分子量成分を酸化させる触媒を担持するように構成される。換言すれば、被測定ガスは、触媒担持層を経由して、前記多孔質拡散抵抗層に到達する。
かかる触媒担持層は、前記被測定ガスが前記多孔質拡散抵抗層に到達する経路において前記多孔質拡散抵抗層の前記被測定ガス側を覆い、前記被測定ガスを透過させ、且つ前記特定成分よりも低い分子量を有する成分のうち少なくとも1つの成分である低分子量成分を酸化させる触媒を担持することが可能である限り、如何なる構成を有するものであってもよい。かかる触媒担持層は、例えば、ガス透過性のアルミナ多孔体等から構成することができる。
上記において、触媒担持層に担持される触媒は、特に限定されるものではなく、被測定ガスが触媒担持層を通過する際に、被測定ガスに含まれる前記特定成分よりも低い分子量を有する成分のうち少なくとも1つの成分である低分子量成分を酸化させることが可能である限り、如何なる構成を有するものであってもよい。尚、触媒担持層に担持される触媒の具体的な組成や形態等は、例えば、当該触媒によって酸化(燃焼)させようとする低分子量成分の種類や当該触媒担持層を含むガスセンサ素子が使用される環境等に応じて、適宜定めることができる。
上記のような構成により、本実施態様に係るガスセンサ素子においては、検出手段に到達する低分子量成分を低減することができる。その結果、多孔質拡散抵抗層を被測定ガスが通過する際に生ずる低分子量成分とその他の成分との間における拡散速度の差に起因して低分子量成分がその他の成分よりも早く検出手段に到達し、検出手段の近傍における低分子量成分の濃度が実際の被測定ガスにおける濃度よりも高くなり、ガスセンサの測定値ズレが生ずることを抑制することができる。
しかしながら、前述のように、上記と同様の構成を有する従来技術に係るガスセンサ素子においては、高温雰囲気下において触媒の粒子が凝集したり、蒸散したりして、触媒性能の劣化等の問題が生ずることが知られている。かかる問題は、高温雰囲気下において、触媒の粒子の凝集や蒸散が起こり、例えば、粒径が増大したり、再分散が起こったりして、触媒の比表面積が変化することにより発生するものと考えられる。
そこで、本発明者は、上記問題を解決すべく鋭意研究の結果、上述のように構成を有するガスセンサ素子において、被測定ガス中に含まれる低分子量成分を分解する触媒として、粒径分布が大小2つの特定の粒径範囲にそれぞれピークを有する触媒の粒子を用いることにより、高温雰囲気下における触媒性能の劣化等の問題を生ずること無く、被測定ガスに含まれる低分子量成分に起因する測定値ズレを抑制することができることを見出した。
具体的には、本実施態様に係るガスセンサ素子においては、上述のように、前記触媒の粒径分布が、0.01μm以上且つ0.06μm未満の範囲に第1のピークを有し、0.1μm以上且つ0.4μm未満の範囲に第2のピークを有する。これにより、本実施態様に係るガスセンサ素子においては、触媒担持層において被測定ガスに含まれる低分子量成分を酸化(燃焼)させることにより、多孔質拡散抵抗層を被測定ガスが通過する際に生ずる低分子量成分とその他の成分との間における拡散速度の差に起因する測定値ズレを抑制することができる。これに加えて、本実施態様に係るガスセンサ素子においては、高温雰囲気下においても、触媒の粒子の凝集や蒸散が起こり、触媒性能が低下することを抑制することもできる。即ち、本実施態様によれば、測定値ズレを抑制すると共に、優れた耐久性を備えるガスセンサ素子を提供することができる。
ところで、上述のように、本実施態様に係るガスセンサ素子においては、触媒の粒径分布が、0.01μm以上且つ0.06μm未満の範囲に第1のピークを有し、0.1μm以上且つ0.4μm未満の範囲に第2のピークを有することが望ましい。これは、高温雰囲気下において触媒の粒子の凝集や蒸散が起こる際に、第1のピークの近傍の粒径を有する触媒の粒子が凝集して第2のピークの近傍の粒径を有する触媒の粒子を形成する一方、第2のピークの近傍の粒径を有する触媒の粒子が蒸散・再分散して第1のピークの近傍の粒径を有する触媒の粒子を形成することにより、結果として、当該触媒の粒子の全体としての粒径分布の変化が抑えられることに起因するものと考えられる。
従って、上記粒径分布から逸脱する粒径分布を有する触媒の粒子を使用すると、たとえ触媒の組成が同一であっても、本実施態様に係るガスセンサ素子のような優れた耐久性を達成することは困難である。より好ましくは、前記触媒の粒子の粒径分布は、0.01μm以上且つ0.05μm未満の範囲に第1のピークを有し、0.2μm以上且つ0.3μm未満の範囲に第2のピークを有することが望ましい。
即ち、本発明の第2の実施態様は、
本発明の前記第1の実施態様に係るガスセンサ素子であって、
前記触媒の粒子の粒径分布が、
0.01μm以上且つ0.05μm未満の範囲に第1のピークを有し、
0.2μm以上且つ0.3μm未満の範囲に第2のピークを有する、
ガスセンサ素子である。
上記のように、本実施態様に係るガスセンサ素子においては、前記触媒の粒子の粒径分布が、0.01μm以上且つ0.05μm未満の範囲に第1のピークを有し、0.2μm以上且つ0.3μm未満の範囲に第2のピークを有する。これにより、本実施態様に係るガスセンサ素子においては、被測定ガスに含まれる低分子量成分とその他の成分との間での多孔質拡散抵抗層における拡散速度の差に起因する測定値ズレをより確実に抑制することができることに加えて、高温雰囲気下における触媒の粒子の凝集や蒸散に起因する触媒性能の低下をもより確実に抑制することができる。
ところで、上述の実施態様に係るガスセンサ素子においては、高温雰囲気下において触媒の粒子の凝集や蒸散が起こる際に、第1のピークの近傍の粒径を有する触媒の粒子が凝集して第2のピークの近傍の粒径を有する触媒の粒子を形成する一方、第2のピークの近傍の粒径を有する触媒の粒子が蒸散・再分散して第1のピークの近傍の粒径を有する触媒の粒子を形成することにより、当該触媒の粒子の全体としての粒径分布の変化が抑えられ、結果として、高温雰囲気下における触媒性能の低下が抑制されるものと考えられる。
従って、上記のように触媒の粒子の全体としての粒径分布が維持されるためには、高温雰囲気下において凝集して第2のピークの近傍の粒径を有する触媒の粒子を形成するのに消費される第1のピークの近傍の粒径を有する触媒の粒子の量が、高温雰囲気下において第2のピークの近傍の粒径を有する触媒の粒子が蒸散・再分散して生成される第1のピークの近傍の粒径を有する触媒の粒子の量と等しく、且つ、高温雰囲気下において第1のピークの近傍の粒径を有する触媒の粒子が凝集して生成される第2のピークの近傍の粒径を有する触媒の粒子の量が、高温雰囲気下において蒸散・再分散して第1のピークの近傍の粒径を有する触媒の粒子を形成するのに消費される第2のピークの近傍の粒径を有する触媒の粒子の量と等しいことが望ましい。
換言すれば、上記のように高温雰囲気下においても触媒の粒子の全体としての粒径分布が維持されるためには、高温雰囲気下において、第1のピーク及び第2のピークのぞれぞれに対応する触媒の粒子の蒸散・再分散と凝集とが釣り合い、触媒の粒子の粒径分布が平衡状態となることが望ましい。
そこで、本発明者は、上記要件を満足する触媒の粒子の粒径分布を特定すべく鋭意研究の結果、前記第2のピークに該当する粒径を有する触媒の粒子の数に対する前記第1のピークに該当する粒径を有する触媒の粒子の数の比率が特定の範囲内にある場合に、高温雰囲気下においても、触媒の粒子の全体としての粒径分布が維持されることを見出した。
即ち、本発明の第3の実施態様は、
本発明の前記第1又は前記第2の実施態様の何れか1つに係るガスセンサ素子であって、
前記第2のピークに該当する粒径を有する触媒の粒子の数に対する前記第1のピークに該当する粒径を有する触媒の粒子の数の比率が1以上且つ3未満である、
ガスセンサ素子である。
上記のように、本実施態様に係るガスセンサ素子においては、前記第2のピークに該当する粒径を有する触媒の粒子の数に対する前記第1のピークに該当する粒径を有する触媒の粒子の数の比率が1以上且つ3未満である。これにより、本実施態様に係るガスセンサ素子においては、高温雰囲気下においても触媒の粒子の全体としての粒径分布が維持されるので、結果として、高温雰囲気下における触媒性能の低下がより確実に抑制される。
逆に、前記第2のピークに該当する粒径を有する触媒の粒子の数に対する前記第1のピークに該当する粒径を有する触媒の粒子の数の比率が上記範囲から逸脱すると、たとえ第1のピーク及び第2のピークが前述の範囲内に入っていても、本実施態様に係るガスセンサ素子のような優れた耐久性を達成することは困難である。より好ましくは、前記第2のピークに該当する粒径を有する触媒の粒子の数に対する前記第1のピークに該当する粒径を有する触媒の粒子の数の比率が1.5以上且つ2.5未満であることが望ましい。
即ち、本発明の第4の実施態様は、
本発明の前記第3の実施態様に係るガスセンサ素子であって、
前記第2のピークに該当する粒径を有する触媒の粒子の数に対する前記第1のピークに該当する粒径を有する触媒の粒子の数の比率が1.5以上且つ2.5未満である、
ガスセンサ素子である。
上記のように、本実施態様に係るガスセンサ素子においては、前記第2のピークに該当する粒径を有する触媒の粒子の数に対する前記第1のピークに該当する粒径を有する触媒の粒子の数の比率が1.5以上且つ2.5未満である。これにより、本実施態様に係るガスセンサ素子においては、高温雰囲気下においても触媒の粒子の全体としての粒径分布が維持されるので、結果として、高温雰囲気下における触媒性能の低下がより一層確実に抑制される。
尚、被測定ガスにおける検出対象となる特定成分が酸素であり、低分子量成分が水素であり、更に触媒担持層に担持される触媒が白金(Pt)、パラジウム(Pd)、及びロジウム(Rh)を含んでなる場合、前記第2のピークに該当する粒径を有する触媒の粒子の数に対する前記第1のピークに該当する粒径を有する触媒の粒子の数の比率は凡そ2.0であることが望ましい。
ところで、前述のように、上述の実施態様を始めとする本発明の各種実施態様に係るガスセンサ素子は、車両用エンジン等の内燃機関の燃焼制御において使用されるOセンサや空燃比(A/F)センサに含まれるガスセンサ素子として使用することができる。この場合、被測定ガスは内燃機関の排気ガスであり、被測定ガスにおける濃度を検出しようとする特定成分は酸素である。
従って、本発明の第5の実施態様は、
本発明の前記第1乃至前記第4の実施態様に係るガスセンサ素子であって、
前記特定成分が酸素である、
ガスセンサ素子である。
また、前述のように、アルコール系燃料(アルコール混合ガソリンを含む)や天然ガス等のガソリン代替燃料を使用するエンジンにおいては、従来のガソリンエンジンと比較して、排気ガス中に含まれる未燃燃料における低分子量成分が多い傾向がある。かかる低分子量成分の代表的な例としては、水素を挙げることができる。従って、上述の実施態様を始めとする本発明の各種実施態様に係るガスセンサ素子としては、触媒担持層に担持される触媒が水素を酸化(燃焼)させることができるものが望ましい。
従って、本発明の第6の実施態様は、
本発明の前記第1乃至前記第5の実施態様の何れか1つに係るガスセンサ素子であって、
前記低分子量成分が水素である、
ガスセンサ素子である。
ところで、上述の実施態様を始めとする本発明の各種実施態様に係るガスセンサ素子が備える触媒担持層に担持される触媒は、被測定ガスが触媒担持層を通過する際に、被測定ガスに含まれる前記特定成分よりも低い分子量を有する成分のうち少なくとも1つの成分である低分子量成分を酸化させることが可能である限り、如何なる組成を有するものであってもよい。例えば、上述の実施態様を始めとする本発明の各種実施態様に係るガスセンサ素子が備える触媒担持層に担持される触媒は、1種以上の貴金属元素を含んでなるものであってもよい。具体的には、上記触媒は、例えば、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、及びロジウム(Rh)を含んでなるものであってもよい。
従って、本発明の第7の実施態様は、
本発明の前記第1乃至前記第6の実施態様の何れか1つに係るガスセンサ素子であって、
前記触媒が、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、及びロジウム(Rh)を含んでなる、
ガスセンサ素子である。
上記のように、本実施態様に係るガスセンサ素子においては、前記触媒が、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、及びロジウム(Rh)を含んでなる。これらの金属元素の組成比は、例えば、当該触媒によって酸化(燃焼)させようとする低分子量成分の種類や当該触媒担持層を含むガスセンサ素子が使用される環境等に応じて、適宜定めることができる。
ところで、前述のように、上述の実施態様を始めとする本発明の各種実施態様に係るガスセンサ素子において、被測定ガス中に含まれる特定成分の濃度を検出する検出手段は、特定の構成を有するものに限定されるものではない。即ち、当該検出手段は、被測定ガス中に含まれる特定成分の濃度を検出することが可能である限り、如何なる構成を有するものであってもよい。また、当該検出手段の具体的な構成は、検出対象となる特定成分や当該特定成分を含む被測定ガスの性状や当該検出手段を含むガスセンサ素子が使用される環境等に応じて、適宜設計することができる。
例えば、車両用エンジン等の内燃機関の燃焼制御において使用されるOセンサや空燃比(A/F)センサに含まれるガスセンサ素子として本実施態様に係るガスセンサ素子を使用する場合は、上記検出手段は、例えば、酸素イオン伝導性を有する固体電解質層と、前記固体電解質層の一方の主面及び他方の主面にそれぞれ配設された被測定ガス側電極及び基準ガス側電極と、を備えることができる。
従って、本発明の第8の実施態様は、
本発明の前記第1乃至前記第7の実施態様の何れか1つに係るガスセンサ素子であって、
前記検出手段が、
イオン伝導性を有する固体電解質層と、
前記固体電解質層の一方の主面及び他方の主面にそれぞれ配設された被測定ガス側電極及び基準ガス側電極と、
を備える、
ガスセンサ素子である。
上述のように、本実施態様に係るガスセンサ素子においては、前記検出手段が、イオン伝導性を有する固体電解質層と、前記固体電解質層の一方の主面及び他方の主面にそれぞれ配設された被測定ガス側電極及び基準ガス側電極と、を備える。即ち、本実施態様に係るガスセンサ素子においては、被測定ガス側電極及び基準ガス側電極のぞれぞれが接触するガス(それぞれ、被測定ガス及び基準ガス)における検出対象となる特定成分の濃度の違いに応じて被測定ガス側電極と基準ガス側電極との間に生ずる起電力に基づいて、被測定ガスに含まれる特定成分の濃度を検出することができる。
尚、上記固体電解質層の材料や構成は、当該技術分野において周知のものから適宜選択することができる。具体的には、上記固体電解質層は、例えば、ジルコニア等の材料によって形成することができる。また、上記被測定ガス側電極及び基準ガス側電極もまた、当該技術分野において周知のものから適宜選択することができる。具体的には、これらの電極は、例えば、白金(Pt)等の材料によって形成することができる。
上述のように、本実施態様に係るガスセンサ素子は、例えば、車両用エンジン等の内燃機関の燃焼制御において使用されるOセンサや空燃比(A/F)センサ等に含まれるガスセンサ素子として使用することができる。この場合、上記固体電解質は酸素イオン伝導性を有するものを使用する必要がある。このように、本実施態様に係るガスセンサ素子が備える検出手段を構成する固体電解質は、検出対象となる特定成分の種類に応じて、適宜選択することができる。
本実施態様に係るガスセンサ素子においては、上述のような構成により、多孔質拡散抵抗層を被測定ガスが通過する際に生ずる低分子量成分とその他の成分との間における拡散速度の差に起因する測定値ズレを抑制すると共に、高温雰囲気下における触媒の粒子の凝集や蒸散に起因する触媒性能の低下をも抑制することができる。即ち、本実施態様によれば、測定値ズレを抑制すると共に、優れた耐久性を備えるガスセンサ素子を提供することができる。
ところで、前述のように、本発明は、上述の実施態様を始めとする本発明の各種実施態様に係るガスセンサ素子を備えるガスセンサにも関する。
従って、本発明の第9の実施態様は、
被測定ガス中に含まれる特定成分の濃度を検出するガスセンサであって、
本発明の前記第1乃至前記第8の実施態様の何れか1つに係るガスセンサ素子を備える、
ガスセンサである。
上記のように、本実施態様に係るガスセンサは、被測定ガス中に含まれる特定成分の濃度を検出するガスセンサであって、本発明の前記第1乃至前記第8の実施態様の何れか1つに係るガスセンサ素子を備える。これにより、本実施態様に係るガスセンサにおいては、多孔質拡散抵抗層を被測定ガスが通過する際に生ずる低分子量成分とその他の成分との間における拡散速度の差に起因する測定値ズレを抑制すると共に、高温雰囲気下における触媒の粒子の凝集や蒸散に起因する触媒性能の低下をも抑制することができる。即ち、本実施態様によれば、測定値ズレを抑制すると共に、優れた耐久性を備えるガスセンサを提供することができる。
本発明の幾つかの実施態様に関して、添付図面等を参照しつつ以下に説明する。但し、以下に述べる説明はあくまでも例示を目的とするものであり、本発明の範囲が以下の説明に限定されるものと解釈されるべきではない。
1.本発明に係るガスセンサ素子の構成
ここでは、図1を参照しながら、本発明の1つの実施態様に係るガスセンサ素子の構成の概要について説明する。図1は、前述のように、本発明の1つの実施態様に係るガスセンサ素子における多孔質拡散抵抗層と触媒担持層との界面近傍の構造を説明する模式的な断面図である。尚、以下の説明においては、本実施例に係るガスセンサ素子は、例えば、車両用エンジン等の内燃機関の燃焼制御において使用されるOセンサや空燃比(A/F)センサ等に含まれるガスセンサ素子であるものとする。従って、本実施例においては、被測定ガスは内燃機関の排気ガスであり、検出対象となる特定成分は酸素であり、低分子量成分は水素であるものとする。
上述のように、本発明に係るガスセンサ素子は、被測定ガス中に含まれる特定成分の濃度を検出する検出手段と、前記被測定ガスが前記検出手段に到達する経路において前記検出手段の前記被測定ガス側を覆い、且つ前記被測定ガスを透過させる多孔質拡散抵抗層と、前記被測定ガスが前記多孔質拡散抵抗層に到達する経路において前記多孔質拡散抵抗層の前記被測定ガス側を覆い、前記被測定ガスを透過させ、且つ前記特定成分よりも低い分子量を有する成分のうち少なくとも1つの成分である低分子量成分を酸化させる触媒を担持する触媒担持層と、を備える
本発明の1つの実施態様としての本実施例に係るガスセンサ素子は、図1に示すように、酸素イオン伝導性を有する固体電解質層50と、固体電解質体50の一方の面と他方の面とにそれぞれ設けられた被測定ガス側電極40及び基準ガス側電極(図示せず)と、被測定ガス側電極40を覆うと共に被測定ガスを透過させる多孔質拡散抵抗層30と、多孔質拡散抵抗層30の外側面に形成され触媒を担持した触媒担持層10及びトラップ層20とを備える。
従って、本実施例に係るガスセンサ素子においては、固体電解質層50と、固体電解質体50の一方の面と他方の面とにそれぞれ設けられた被測定ガス側電極40及び基準ガス側電極(図示せず)とが、本発明に係るガスセンサ素子が備える検出手段に該当する検出手段を構成する。また、本実施例に係るガスセンサ素子においては、上記のように、触媒担持層10の外側にトラップ層20が配設されているが、トラップ層20は必須の構成要件ではなく、トラップ層20が配設されない構成もあり得る。
また、本実施例に係るガスセンサ素子においては、上述のように、触媒担持層10及びトラップ層20が多孔質拡散抵抗層30の外側面に形成されている。従って、本実施例に係るガスセンサ素子においては、図1に示すように、触媒担持層10によって覆われていない多孔質拡散抵抗層30の外側の面に、ガスを透過しない遮蔽層60が配設される。これにより、被測定ガス(本実施例においては排気ガス)が触媒担持層10を通過すること無く多孔質拡散抵抗層30に到達して、被測定ガスに含まれる低分子量成分(本実施例においては水素)が触媒担持層10に担持された触媒によって酸化(燃焼)されて低減されないまま検出手段に到達して、測定値ズレを生ずることが回避される。
尚、本実施例に係るガスセンサ素子においては、上述のように、触媒担持層10が多孔質拡散抵抗層30の外側面に形成されている。しかしながら、本発明に係るガスセンサ素子における触媒担持層の配置は本実施例における配置に限定されるものと解釈されるべきではない。即ち、本発明に係るガスセンサ素子が備える触媒担持層は、被測定ガスが多孔質拡散抵抗層に到達する経路において多孔質拡散抵抗層の被測定ガス側を覆い、且つ被測定ガスを透過させることが可能である限り、如何なる位置に配置されていてもよい。従って、本実施例に係るガスセンサ素子においては、触媒担持層10が多孔質拡散抵抗層30の外側面に形成されているため、上述のように遮蔽層60が配設されるが、触媒担持層10の配置によっては遮蔽層60が配設されない構成もあり得る。
また、本実施例に係るガスセンサ素子が備える触媒担持層10に担持された触媒は、白金(Pt)とロジウム(Rh)とパラジウム(Pd)とからなる。但し、前述のように、本発明に係るガスセンサ素子が備える触媒担持層に担持される触媒は、被測定ガスが触媒担持層を通過する際に、被測定ガスに含まれる前記特定成分よりも低い分子量を有する成分のうち少なくとも1つの成分である低分子量成分を酸化させることが可能である限り、如何なる構成を有するものであってもよい。また、触媒担持層に担持される触媒の具体的な組成や形態等は、例えば、当該触媒によって酸化(燃焼)させようとする低分子量成分の種類や当該触媒担持層を含むガスセンサ素子が使用される環境等に応じて、適宜定めることができる。
更に、本実施例に係るガスセンサ素子が備える固体電解質体50はジルコニアからなり、固体電解質体50の一方の表面に白金(Pt)からなる被測定ガス側電極40が配設されている。また、固体電解質体50の他方の表面(被測定ガス側電極40が配置された側とは反対側の表面)には、白金(Pt)からなる基準ガス側電極(図示せず)が配設されている。
そして、基準ガス側電極(図示せず)の固体電解質体50と接触している面とは反対側の面は、基準ガスとして大気が導入されるように構成された基準ガス室(図示せず)と接触している。かかる構成により、被測定ガス(本実施例においては排気ガス)が多孔質拡散抵抗層30を通過して被測定ガス側電極40と接触すると、被測定ガスに含まれる検出対象となる特定成分(本実施例においては酸素)の濃度と基準ガス室(図示せず)に導入された大気に含まれる特定成分(酸素)の濃度との差に応じた起電力が被測定ガス側電極40と基準ガス側電極との間に生ずる。本実施例に係るガスセンサ素子は、当該起電力に基づいて、被測定ガスに含まれる特定成分の濃度を検出することができる。
尚、被測定ガス(本実施例においては排気ガス)に含まれる低分子量成分(本実施例においては水素)が増大すると、従来技術に係るガスセンサ素子においては、前述のように、多孔質拡散抵抗層40を被測定ガスが通過する際に生ずる低分子量成分とその他の成分との間における拡散速度の差に起因して低分子量成分がその他の成分よりも早く検出手段(の被測定ガス側電極40)に到達し、検出手段(の被測定ガス側電極40)の近傍における低分子量成分の濃度が実際の被測定ガスにおける濃度よりも高くなり、被測定ガスに含まれる検出対象となる特定成分(本実施例においては酸素)の濃度が相対的に低くなるため、ガスセンサの測定値ズレが生ずる。
しかしながら、本実施態様に係るガスセンサ素子においては、図1に示す黒い矢印によって表されているように、被測定ガス(本実施例においては排気ガス)は、多孔質拡散抵抗層40に到達する前に、触媒担持層10を通過する。この際、被測定ガスに含まれる低分子量成分(本実施例においては水素)は、触媒担持層10に担持された触媒によって酸化(燃焼)されるので、、多孔質拡散抵抗層40に到達する時点における被測定ガスに含まれる低分子量成分の濃度が低減される。その結果、本実施態様に係るガスセンサ素子においては、上記のような測定値ズレが生ずることを抑制することができる。
加えて、本発明の1つの実施態様としての本実施態様に係るガスセンサ素子においては、触媒担持層10に担持された触媒の粒径分布が、0.01μm以上且つ0.06μm未満の範囲に第1のピークを有し、0.1μm以上且つ0.4μm未満の範囲に第2のピークを有する。その結果、ガスセンサ素子の作動時における高温雰囲気下での触媒の粒子の凝集や蒸散が起こる際に、第1のピークの近傍の粒径を有する触媒の粒子が凝集して第2のピークの近傍の粒径を有する触媒の粒子を形成する一方、第2のピークの近傍の粒径を有する触媒の粒子が蒸散・再分散して第1のピークの近傍の粒径を有する触媒の粒子を形成することにより、結果として、当該触媒の粒子の全体としての粒径分布の変化が抑えられる。
上記により、本実施態様に係るガスセンサ素子は、高温雰囲気下において長期間に亘って作動させても、触媒性能が確実に維持される。即ち、本実施態様に係るガスセンサ素子によれば、触媒担持層10に担持された触媒の粒径分布が上述のような要件を満足することにより、上述のような測定値ズレを抑制するのに十分な触媒性能を長期間に亘って十分に発揮することができる、耐熱性・耐久性に優れたガスセンサを提供することができる。
2.本発明に係るガスセンサ素子の高温耐久性
ここでは、図2及び3を参照しながら、本発明の1つの実施態様に係るガスセンサ素子の高温耐久性について説明する。尚、以下の説明においては、本実施例に係るガスセンサ素子は、例えば、車両用エンジン等の内燃機関の燃焼制御において使用されるOセンサや空燃比(A/F)センサ等に含まれるガスセンサ素子として構成されたものとする。従って、本実施例においては、被測定ガスは内燃機関の排気ガスであり、検出対象となる特定成分は酸素であり、低分子量成分は水素であるものとする。
(1)実施例及び比較例に係るガスセンサ素子の製造
先ず、本実施例に係るガスセンサ素子の高温耐久性を評価すべく、本発明の1つの実施態様に係るガスセンサ素子A、及び本発明に該当しない比較例に係るガスセンサ素子B乃至Dを製造した。尚、ガスセンサ素子の具体的な構成及び製造方法については当業者に周知であるので、ここでの説明は割愛する。また、何れのガスセンサ素子においても、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、及びロジウム(Rh)を含んでなる触媒を触媒担持層に担持させた。但し、図2に示すように、本発明の実施例に係るガスセンサ素子A及び比較例に係るガスセンサ素子B乃至Dのぞれぞれについて、異なる粒径分布を有する触媒を使用した。
図2は、前述のように、本発明の1つの実施態様に係るガスセンサ素子(A)が備える触媒担持層に担持される触媒の粒子の粒径分布につき、他のガスセンサ素子(B乃至D)が備える触媒担持層に担持される触媒の粒子と比較しながら説明する模式的なグラフである。尚、図2は、各種ガスセンサ素子が備える触媒担持層に担持される触媒の粒子の粒子径につき、0.0μm乃至0.5μmの範囲の粒子径において、0.01μm毎に粒子の存在量(粒子数)をカウントした結果である。図2のAに示すように、本実施例に係るガスセンサ素子Aが備える触媒担持層に担持される触媒の粒子の粒径分布は、本発明が規定する要件を満足している。即ち、ガスセンサ素子Aにおける触媒の粒子の粒径分布は、0.01μm以上且つ0.06μm未満の範囲に第1のピークを有し、0.1μm以上且つ0.4μm未満の範囲に第2のピークを有する。
一方、図2のB乃至Dに示すように、本発明に該当しない比較例に係るガスセンサ素子B乃至Dが備える触媒担持層に担持される触媒の粒子の粒径分布は、本発明が規定する要件を満足していない。具体的には、図2のBに示すように、1つの比較例に係るガスセンサ素子Bが備える触媒担持層に担持される触媒の粒子の粒径分布は、0.01μm以上且つ0.07μm未満の範囲に第1のピークを有するものの、0.1μm以上且つ0.4μm未満の範囲に第2のピークを有していない。一方、もう1つの比較例に係るガスセンサ素子Cが備える触媒担持層に担持される触媒の粒子の粒径分布は、図2のCに示すように、粒径が小さい方の第1のピークを有しておらず、粒径が大きい方の第2のピークのみを有している。加えて、更にもう1つの比較例に係るガスセンサ素子Dが備える触媒担持層に担持される触媒の粒子は、図2のDに示すように、0.2μm以上の範囲に亘るブロードな粒径分布を有している。
(2)実施例及び比較例に係るガスセンサ素子の高温耐久処理
上述のように製造した、本発明の1つの実施態様に係るガスセンサ素子A、及び本発明に該当しない比較例に係るガスセンサ素子B乃至Dを高温耐久処理に付した。具体的には、これらのガスセンサ素子A乃至Dを、900℃の温度において200時間に亘って大気中に設置した。
(3)実施例及び比較例に係るガスセンサ素子の高温耐久処理
上述のように製造した、本発明の1つの実施態様に係るガスセンサ素子A、及び本発明に該当しない比較例に係るガスセンサ素子B乃至Dを使用して空燃比(A/F)センサを製造し、空燃比(A/F)測定を行った。この際、被測定ガス(排気ガス)中に含まれる低分子量成分(水素)の濃度が0容量%である場合と0.5容量%である場合とにおける空燃比(A/F)の測定値の差(ΔA/F)を、「ストイキ精度」として求めた。また、当該ストイキ精度(ΔA/F)は、上述の高温耐久処理の前後のそれぞれにおいて測定した。これらの測定結果を図3のグラフに示す。
図3は、前述のように、図2に示した種々の粒径分布を有する触媒の粒子を用いる各種実施態様に係るガスセンサ素子を備えるガスセンサの各々について、被測定ガス中に含まれる低分子量成分の有無による測定値の変化の大きさを高温耐久試験の前後で比較した結果を表すグラフである。
先ず、図3(i)に示すように、本発明の1つの実施態様に係るガスセンサ素子A、及び本発明に該当しない比較例に係るガスセンサ素子B乃至Dの何れにおいても、測定ガス(排気ガス)中に含まれる低分子量成分(水素)の有無による空燃比(A/F)の測定値の差(ΔA/F)は十分に小さいことが確認された。これは、これらのガスセンサ素子A乃至Dの何れにおいても、触媒担持層に担持された触媒により、測定ガス中に含まれる低分子量成分が十分に低減されたことを示唆するものと考えられる。
しかしながら、図3(i)に示すように、上述の高温耐久処理の前後での空燃比(A/F)の測定値の差(ΔA/F)の変化の度合いは、個々のガスセンサ素子によって大きく異なることが確認された。そこで、本発明の1つの実施態様に係るガスセンサ素子A、及び本発明に該当しない比較例に係るガスセンサ素子B乃至Dのそれぞれにおける、上述の高温耐久処理の前後での空燃比(A/F)の測定値の差(ΔA/F)の変化の度合いを、図3(ii)のグラフに示した。
図3(ii)に示すグラフからも明らかであるように、本発明の1つの実施態様に係るガスセンサ素子Aにおいては、本発明に該当しない比較例に係るガスセンサ素子B乃至Dと比較して、上述の高温耐久処理の前後での空燃比(A/F)の測定値の差(ΔA/F)の変化が著しく小さいことが判る。即ち、本発明の1つの実施態様に係るガスセンサ素子Aは、本発明に該当しない比較例に係るガスセンサ素子B乃至Dとは異なり、高温雰囲気下に長期間に亘って付されても、上述のような測定値ズレを抑制するのに十分な触媒性能を十分に維持することができることが確認された。換言すれば、本発明の1つの実施態様に係るガスセンサ素子Aによれば、低分子量成分に起因する測定値ズレを十分に抑制することができ、且つ耐熱性・耐久性に優れたガスセンサを提供することができる。
以上のように、本発明によれば、測定値ズレを抑制すると共に、優れた耐久性を備えるガスセンサ素子を提供することができる。尚、本発明を説明することを目的として、特定の構成を有する幾つかの実施態様について説明してきたが、本発明の範囲は、これらの例示的な実施態様に限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書に記載された事項の範囲内で、適宜修正を加えることができることは言うまでも無い。
10…触媒担持層、20…トラップ層、30…多孔質拡散抵抗層、40…被測定ガス側電極、50…固体電解質層、及び60…遮蔽層。

Claims (9)

  1. 被測定ガス中に含まれる特定成分の濃度を検出する検出手段と、
    前記被測定ガスが前記検出手段に到達する経路において前記検出手段の前記被測定ガス側を覆い、且つ前記被測定ガスを透過させる多孔質拡散抵抗層と、
    前記被測定ガスが前記多孔質拡散抵抗層に到達する経路において前記多孔質拡散抵抗層の前記被測定ガス側を覆い、前記被測定ガスを透過させ、且つ前記特定成分よりも低い分子量を有する成分のうち少なくとも1つの成分である低分子量成分を酸化させる触媒を担持する触媒担持層と、
    を備えるガスセンサ素子であって、
    前記触媒の粒径分布が、
    0.01μm以上且つ0.06μm未満の範囲に第1のピークを有し、
    0.1μm以上且つ0.4μm未満の範囲に第2のピークを有する、
    ガスセンサ素子。
  2. 請求項1に記載のガスセンサ素子であって、
    前記触媒の粒子の粒径分布が、
    0.01μm以上且つ0.05μm未満の範囲に第1のピークを有し、
    0.2μm以上且つ0.3μm未満の範囲に第2のピークを有する、
    ガスセンサ素子。
  3. 請求項1又は2の何れか1項に記載のガスセンサ素子であって、
    前記第2のピークに該当する粒径を有する触媒の粒子の数に対する前記第1のピークに該当する粒径を有する触媒の粒子の数の比率が1以上且つ3未満である、
    ガスセンサ素子。
  4. 請求項3に記載のガスセンサ素子であって、
    前記第2のピークに該当する粒径を有する触媒の粒子の数に対する前記第1のピークに該当する粒径を有する触媒の粒子の数の比率が1.5以上且つ2.5未満である、
    ガスセンサ素子。
  5. 請求項1乃至4の何れか1項に記載のガスセンサ素子であって、
    前記特定成分が酸素である、
    ガスセンサ素子。
  6. 請求項1乃至5の何れか1項に記載のガスセンサ素子であって、
    前記低分子量成分が水素である、
    ガスセンサ素子。
  7. 請求項1乃至6の何れか1項に記載のガスセンサ素子であって、
    前記触媒が、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、及びロジウム(Rh)を含んでなる、
    ガスセンサ素子。
  8. 請求項1乃至7の何れか1項に記載のガスセンサ素子であって、
    前記検出手段が、
    イオン伝導性を有する固体電解質層と、
    前記固体電解質層の一方の主面及び他方の主面にそれぞれ配設された被測定ガス側電極及び基準ガス側電極と、
    を備える、
    ガスセンサ素子。
  9. 被測定ガス中に含まれる特定成分の濃度を検出するガスセンサであって、
    請求項1乃至8の何れか1項に記載のガスセンサ素子を備える、
    ガスセンサ。
JP2012112140A 2012-05-16 2012-05-16 ガスセンサ素子、及び当該ガスセンサ素子を備えるガスセンサ Active JP5692162B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012112140A JP5692162B2 (ja) 2012-05-16 2012-05-16 ガスセンサ素子、及び当該ガスセンサ素子を備えるガスセンサ

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012112140A JP5692162B2 (ja) 2012-05-16 2012-05-16 ガスセンサ素子、及び当該ガスセンサ素子を備えるガスセンサ

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2013238504A JP2013238504A (ja) 2013-11-28
JP5692162B2 true JP5692162B2 (ja) 2015-04-01

Family

ID=49763658

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012112140A Active JP5692162B2 (ja) 2012-05-16 2012-05-16 ガスセンサ素子、及び当該ガスセンサ素子を備えるガスセンサ

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5692162B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5938307B2 (ja) * 2012-09-10 2016-06-22 日本特殊陶業株式会社 ガスセンサ素子およびガスセンサ

Also Published As

Publication number Publication date
JP2013238504A (ja) 2013-11-28

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4800853B2 (ja) ガスセンサ素子
JP4923948B2 (ja) ガスセンサ素子
US10125657B2 (en) Method for diagnosing degradation of catalyst and catalyst degradation diagnosis system
JP6563840B2 (ja) 触媒劣化診断方法および触媒劣化診断システム
JP2016108982A (ja) 触媒劣化診断システムおよび触媒劣化診断方法
JP2011089796A (ja) ガスセンサ素子及びその製造方法、並びにガスセンサ
JPWO2008038773A1 (ja) ガスセンサ素子の処理方法
JP2010038600A (ja) ガスセンサ素子
JP4982552B2 (ja) 貴金属触媒粉末及びそれを用いたガスセンサ素子、ガスセンサ
Elumalai et al. Dependence of NO 2 sensitivity on thickness of oxide-sensing electrodes for mixed-potential-type sensor using stabilized zirconia
JP5692162B2 (ja) ガスセンサ素子、及び当該ガスセンサ素子を備えるガスセンサ
JP2015102384A (ja) 酸素センサ素子
JP2009243942A (ja) 炭化水素濃度測定用センサ素子、および炭化水素濃度測定方法
JP5278499B2 (ja) ガスセンサ素子及びそれを用いたガスセンサ
Miura et al. Solid-state electrochemical gas sensing
JP5105284B2 (ja) アンモニア濃度測定用センサ素子、アンモニア濃度測定装置、およびアンモニア濃度測定方法
US9207202B2 (en) Gas sensor element, gas sensor equipped with gas sensor element, and method of producing gas sensor element
JP2013068632A (ja) 炭化水素濃度測定用センサ素子、および炭化水素濃度測定方法
JP5028453B2 (ja) ガスセンサ及びガス検知方法
JP2013015398A (ja) 水素選択酸化触媒及びガスセンサ素子
JP2012241535A (ja) ガスセンサ素子における貴金属触媒の劣化の有無を判定する方法と装置
JP5124500B2 (ja) ガスセンサ用触媒粉末、その製造方法、それを用いたガスセンサ素子、及びそれを用いたガスセンサ
Suzuki et al. Development of high accuracy A/F sensor with catalyst layer
JP5724832B2 (ja) 酸素濃度センサ
JP2012127672A (ja) ガスセンサ素子とガスセンサ

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20140319

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20141125

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20150106

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20150119

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 5692162

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151