JP5689841B2 - 方向性結合型ミキサー回路 - Google Patents

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Description

本発明は、高周波電気信号を扱う回路技術、特に高周波信号とローカル信号から中間周波信号を得るミキサー回路に関するものである。
高周波ミキサー回路においては、ローカル信号が高周波信号の入出力ポートあるいは中間周波入出力ポートに漏れる現象をローカルリークと呼び、できるだけローカルリークを低減することが求められている。なぜならダウンミキサーにおいて高周波信号入力ポートへのローカルリークは、ダウンミキサーの先にあるアンテナ等からローカル信号が空間に放射されて妨害波となる可能性があるからである。同じくダウンミキサーにおいて中間周波出力ポートへのローカルリークは、後段の回路動作に悪影響を与える可能性がある。
アップミキサー、ダウンミキサー共に、ローカル周波数が高周波周波数より十分低い場合には、ハイパスフィルターを用いることで高周波信号入出力ポートへのローカルリークを抑制することが可能である。また、中間周波数がローカル周波数より十分低い場合には、ローパスフィルターあるいは中間周波数フィルターによって中間周波出力ポートへのローカルリークを抑制できる。
しかしながら、上記とは逆にローカル信号と高周波信号の周波数が近い場合には、ローカル信号と高周波信号を切り分ける良好な高周波フィルターの作成は困難になる。また、中間周波数がローカル信号の周波数に近い場合も、高性能な中間周波数フィルターが必要になるため、周波数の適用範囲が制限される問題があった。特に、高周波入力信号の周波数範囲が広い場合には、ローカル信号と高周波信号に同じ周波数が含まれる場合もあり、この場合フィルターによる切り分けは不可能である。
フィルターでローカルリークを低減できない場合には、ミキサー自体にローカルリークを防ぐ回路を実装する方法が取られる。ローカルリークを防ぐ回路としては、ギルバートセルミキサー回路がある。ギルバートセルミキサー回路は、互いに180°位相反転した2つのローカル信号を用いることで、ローカルリーク信号をあらかじめキャンセルする差動ミキサー回路である。ギルバートセルミキサー回路により20dB程度のローカルリーク抑制が可能である。ローカルリークの限界を決めるのはデバイス特性の個体差や180°分配回路の位相誤差である。ただし、ギルバートセルミキサー自体は集中定数設計であることが多いため、単位ミキサーで使用できる周波数は比較的低くなりやすい。
一方、ミキサーの動作周波数をより高周波化する回路構成として分布ミキサーが知られている。この回路では図7に示すように、複数の単位ミキサーに伝送線路を用いて高周波信号、ローカル信号などを供給している(非特許文献1参照)。図7において、100は単位ミキサー、101,102は伝送線路、103,104は終端抵抗である。そして、図7の回路では、それぞれの単位ミキサー100からの出力についても伝送線路101,102で合成して取り出す。単位ミキサー100の高周波、ローカル、中間周波の各ポートインピーダンスを分布定数的に伝送線路101,102の一部に取り込み、線路全体の特性インピーダンスを50Ωに調整することで、周波数に依存しない広帯域なインピーダンス整合が得られる。結果として単位ミキサーでは得られなかった広帯域性と高周波特性が得られる。
分布ミキサーにおけるローカルリーク抑制技術として、分布ミキサーを構成する単位ミキサーの特性を用いたものが一般的である。その一つとして、前述のギルバートセルミキサーを単位ミキサーに用いることによりローカルリークを抑制する技術がある(非特許文献2参照)。しかし、前述のようにギルバートセルは差動回路であるので、差動動作する2つのFETのデバイスパラメータの相対ばらつきの影響によりローカルリークの抑制には限界がある。さらに、差動回路は伝送線路レイアウトが原理的に非対称になるため、高周波動作時にローカルリークを抑制することは難しくなる。すなわち、伝送線路レイアウトが非対称であると、差動入力端子までの伝送線路長も非対称となるため、2つの差動FETに入力される差動信号の位相差が完全に180度ではなくなり、ローカルリーク抑制値が制限される。
また、高周波では伝送線路の伝搬損失も増大するため、伝送線路長の非対称性により差動配線における伝送損失値にアンバランスが生じ、FETのゲートに入力されるローカル信号の電圧の絶対値も一致しなくなり、これによってもローカルリーク抑制値の制限が生じる。さらに、単位ミキサーとしてギルバートセルミキサーなどの差動回路を用いる場合、伝送線路数が多くなるため、結果として回路レイアウトはきわめて複雑になり、また、各々の伝送線路間のアイソレーションを確保するために分布ミキサーの占有面積が大きくなってしまうという問題がある。上記の問題は、電圧制御素子であるFETを用いたギルバートセルミキサーにおける問題だが、バイポーラトランジスタ等の電流制御素子を用いた場合でも同様の議論が成立する。
伝送線路レイアウトの非対称性、複雑性を回避するためには、シングルエンドの単位ミキサーを使用する必要がある。シングルエンドのミキサーのうち、ローカルリーク抑圧特性を有するものとして、デュアルゲートFETあるいはカスコードFETを用いたミキサーが挙げられる。デュアルゲートFETは、第1のゲートG1と第2のゲートG2の2つのゲートを持ち、ゲートG1とG2間のアイソレーション特性を利用してローカルリークを抑制するものである。このデュアルゲートFETでは、第1のゲートG1にローカル信号を大信号で入力した状態で、第2のゲートG2に高周波信号を入力することで、FETはミキサーとして働き、ドレイン端子から両信号の差周波である中間周波信号を取り出すことができる。カスコードFETは、第1のゲートG1を持つFETと第2のゲートG2を持つFETをカスコード接続したもので、その動作はデュアルゲートFETと等価である。
デュアルゲートFETあるいはカスコードFETは、第1のゲートG1と第2のゲートG2との間に10dB程度のアイソレーションを有するため、高周波信号とローカル信号のアイソレーションをある程度確保することが可能となる。単位ミキサーにデュアルゲートFETやカスコードFETを用いた分布ミキサーとして、非特許文献3に示すものが知られている。しかしながら、これらのFETを分布ミキサーに適用した場合に得られるアイソレーションはFETの内部容量で決まり、それ以上の改良にはデバイス構造の変更が求められる。また、デュアルゲートトランジスタでは2つのFETの段間にミスマッチがあるため、高周波領域において良好な周波数変換効率を得るのが難しいという問題もある。
以上述べたように、ミキサーの動作周波数の高周波化、広帯域化を実現するための技術として、分布ミキサーがあり、様々な応用例が提案されてきた。しかし、いずれの分布ミキサーにおいても、ローカルリークの抑制に関しては、依然として個々の単位ミキサーのアイソレーション性能に依存している。換言すると、分布設計技術を積極的に活用したローカルリーク抑制法というものは存在していない。
James B. Beyer,S. N. Prasad,Robert C. Becker,James E. Nordman,Gert K. Hohenwarter,"MESFET Distributed Amplifier Design Guidelines",IEEE Trans. Microw. Theor. Tech.,Vol.MTT-32,No.3,March,1984 Chung-Ru Wu,Hsieh-Hung Hsieh,Liang-Hung Lu,"An Ultra-Wideband Distributed Active mixer MMIC in 0.18-μm CMOS Technology",IEEE Trans. Microw. Theor. Tech.,Vol.55,No.4,April 2007 I.Kallfass,T.Purtova,A.Brokmeier,W.Ludwig,H.Schumacher,"One Single Travelling - Wave MMIC for highly Linear Broadband Mixers and Variable Gain Amplifiers",Microwave Symposium Digest,2005,IEEE MTT-S International
従来の分布ミキサーにおいては、ローカルリークを抑制するために分布ミキサーを構成する単位ミキサーそのものにローカル信号をキャンセルする機能を付与する必要があった。ローカルリーク抑制効果を有する単位ミキサーを用いた場合、回路レイアウトが複雑になる、あるいは回路規模が大きくなるという問題点があった。また、分布ミキサー設計時に使用する単位ミキサーがローカルリーク抑制機能を有するものに制限されるため、回路全体の設計自由度が制限されていた。
本発明は、このような課題を解決するために考案されたものであり、単位ミキサーの品種にかかわらずローカルリークを抑制することができ、設計の自由度を拡張することができるミキサー回路を提供することを目的とする。
本発明の方向性結合型ミキサー回路は、ローカル信号を伝送する電気長nλ/4(nは正奇数、λはローカル信号の伝送線路内波長)の第1の伝送線路と、この第1の伝送線路と並走するように設けられ、高周波信号を伝送する電気長nλ/4の第2の伝送線路と、前記第1、第2の伝送線路間に配置され、前記第1の伝送線路上の信号と前記第2の伝送線路上の信号とを周波数合成する複数の単位ミキサーとを備え、前記第1、第2の伝送線路は、それぞれ、隣接する前記単位ミキサー間に挿入される個々の線路から構成され、前記第1の伝送線路を構成する前記個々の線路と前記第2の伝送線路を構成する前記個々の線路は、電気長が全て等しく、全体として電気長nλ/4の分布型ミキサーを構成することを特徴とするものである。
また、本発明の方向性結合型ミキサー回路において、前記単位ミキサーは、コールドFETによるミキサー回路であってもよい
また、本発明の方向性結合型ミキサー回路において、前記単位ミキサーは、ギルバートセルによるミキサー回路であってもよい
また、本発明の方向性結合型ミキサー回路において、前記第1の伝送線路と前記第2の伝送線路とは、平行に配置されてもよい
本発明によれば、分布ミキサーを設計する際に、単位ミキサーの品種にかかわらず、単位ミキサーの段数を適切に選ぶことで、単位ミキサーと伝送線路とから構成される疑似伝送線路にローカルリーク抑制機能を付与することができ、ローカルリークの抑制が可能となる。これにより、本発明では、従来の、分布差動ミキサーを用いるローカルリーク抑制手法の問題であった複雑な回路レイアウトを解消し、よりレイアウトの簡単なシングルエンドのミキサーを用いてもローカルリークの抑制が可能となった。また、本発明では、単位ミキサーにどのようなミキサーを選択しても、分布ミキサーの長さを最適化するだけでローカルリーク抑制が可能であるため、分布ミキサー設計の自由度を拡張することができる。
方向性結合器の構成を示す図である。 本発明の第1の実施の形態に係る方向性結合型ミキサー回路の構成を示す回路図である。 本発明の第1の実施の形態に係る方向性結合型ミキサー回路の等価回路図である。 本発明の第1の実施の形態に係る方向性結合型ミキサー回路の周波数特性を示す図である。 ローカル信号の周波数と伝送線路内波長λ/2との関係を示す図である。 本発明の第2の実施の形態に係る方向性結合型ミキサー回路の構成を示す回路図である。 従来の分布ミキサーの構成を示す回路図である。
[発明の原理]
伝送線路デバイスにおいて、端子間のアイソレーションを確保できる基本回路の一つとして、方向性結合器が挙げられる。方向性結合器とは、図1のように、2本の伝送線路200,201を、ある距離Gだけ離して平行に配置した構成を持つ回路を指す。図1における202,203,204,205はポートである。このように2本の伝送線路200,201を平行に配置にすると、伝送線路200と201の間に生じる等価的なキャパシタンス、インダクタンスを介して、伝送線路200,201を伝搬するモード間に電磁気学的な結合が生じ、伝搬モード間で電力が移りあう。電力が移りあう原理は容量結合によるものと誘導電流によるものがある。この特性を利用して、一方の伝送線路に入力した電力の一部を、他の伝送線路から取り出すことができる。
特によく用いられる方向性結合器として、1/4波長結合線路型が知られている。1/4波長結合線路型方向性結合器は、結合導波路部の長さLcを、伝搬する電磁波の伝送線路上波長の1/4とすることで、ポート202から入力した信号をポート203またはポート204に生じさせない(アイソレーションが取れる)ものを指す。一般には、結合導波路部の長さLcを1/4波長の奇数倍とすれば、アイソレーションを確保することができる。
上述の問題を解決するために、本発明では、分布ミキサーの疑似伝送線路に、方向性結合器のアイソレーション特性を持たせる。分布ミキサーを構成する疑似伝送線路は、等価的には伝送線路として扱える。そのため、疑似伝送線路により上記の方向性結合器を等価的に構成することが可能である。分布ミキサーを構成する疑似伝送線路から成る方向性結合器を、方向性結合型ミキサーと呼称することにする。方向性結合型ミキサーにおいて、高周波信号ポート(RFポート)または中間周波信号ポート(IFポート)をローカル信号ポートに対してアイソレーションポートに選ぶことにより、ローカルリークを抑制することが可能となる。すなわち、方向性結合型ミキサーでは、単位ミキサーのローカルリーク抑制性能にかかわらず、方向性結合器のアイソレーション特性により、ローカルリークを抑制することが可能となる。
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。本実施の形態では、単位ミキサーと伝送線路とから構成される疑似線路を用いてローカルリークを抑制する分布ミキサー回路構成を提案する。この構成により、ミキサーとしての設計最適化、すなわち変換効率の最大化と、方向性結合器としてのアイソレーション特性の最適化を同時に独立して行うことができる。
図2は本発明の第1の実施の形態に係る方向性結合型ミキサー回路の構成を示す回路図である。方向性結合型ミキサー回路は、第1の信号(例えばローカル信号)を伝送する長さnλ/4(nは正奇数、λはローカル信号の伝送線路内波長)の伝送線路1と、第2の信号(例えば高周波信号)を伝送する長さnλ/4の伝送線路2と、平行に配置された伝送線路1,2間に、これら伝送線路1,2の信号流れ方向に沿って等間隔で配置され、伝送線路1上の信号と伝送線路2上の信号とを周波数合成する2個以上の単位ミキサー3とを備えている。図2における4〜7はポートである。
本実施の形態のローカルリーク抑制原理は以下のとおりである。図1に示した方向性結合器において、伝送線路間のモード結合を生じさせる要因の一つは、伝送線路間に存在するキャパシタンスであった。図2の方向性結合型ミキサー回路で用いる2本の完全に独立した伝送線路1,2間に単位ミキサー3を等間隔に配置した構成においても、単位ミキサー3の持つ等価容量により伝送線路1,2間の結合が生じる。
すなわち、図2の回路構成では、分布ミキサーが構成されるとともに、伝送線路1,2を伝搬するモードの結合から、副次的に方向性結合器と類似した動作が含まれることが判る。伝送線路1,2の電気長さを、方向性結合器と同様に疑似結合導波路長Lcmと呼ぶことにする。Lcmを nλ/4(nは正奇数)に選ぶと、図1で説明したアイソレーション条件が満足される。つまり、ローカルポート(LOポート)に対してRFポートをアイソレーションポートに選ぶことが可能であり、その結果ローカルリークを抑えることができるのである。
本実施の形態において、分布ミキサーに適用した例を図3の回路図と図4のシミュレーション結果を用いてより具体的に説明する。図3は図2に示した方向性結合型ミキサー回路の等価回路図であり、単位ミキサー3を等価容量Ceqで代替した図である。ここでは、単位ミキサー3の等価容量をCeq=100fFで表す。ポート4をローカル信号が入力されるLOポートとし、ポート5を高周波信号が入力されるRFポートとし、ポート7を中間周波信号が出力されるIFポートとする。また、伝送線路1,2を構成する個々の線路(単位ミキサー間に挿入される線路)として、波長短縮率0.2、長さ50μm、特性インピーダンス60Ωのコプレーナ線路を仮定した。
単位ミキサー8段から構成される方向性結合型ミキサー回路におけるローカルリークS12,S13の周波数特性を図4に示す。S12,S13とも一定の周期で振動を繰り返す、典型的な方向性結合器の特性を示していることが分かる。図4において、S12のアイソレーションが得られる最も低い周波数は26GHz(線路上波長で2400μm)である。単位ミキサー3が8段の構成であるから、方向性結合型ミキサー回路の全長は400μmであり、26GHzに対応する線路上波長の1/6の長さとなっており、λ/4より若干短いことが分かる。アイソレーションが得られる伝送線路長がλ/4より短くなっている理由は、単位ミキサー3の等価容量Ceqによる波長短縮効果で、最適な線路長が短くなっているからである。つまり、疑似線路によって方向性結合器として働く方向性結合型ミキサー回路において、厳密には、アイソレーションが得られる伝送線路長はnλ/4(nは正奇数)ではないが、nλ/4の近くに必ずアイソレーションの最適値が存在する。
一方、分布ミキサーの疑似結合導波路長Lcmは、十分な乗算効果が得られる長さ以上であれば自由に選ぶことが可能である。したがって、高周波信号とローカル信号間のアイソレーションが得られる疑似結合導波路長Lcmと、分布ミキサーとして必要なミキサー段数、すなわちミキサー全長とは、必ず両者を同時に満たす条件が存在し、任意の周波数で設計解が得られることが分かる。
以上に述べたように、本実施の形態において、方向性を利用してローカルリークを抑制するためには、方向性結合型ミキサー回路の伝送線路1,2の全長をnλ/4(nは奇数)とすればよい。最適なアイソレーション特性を得るためには、正奇数であればnは自由に選んでよいが、現実に方向性結合型ミキサー回路を設計する場合には、ミキサーの全長を長くし過ぎるとデバイス占有面積が増加してしまうという問題が生じる。したがって、nを無限に大きくすることはできない。しかしながら、本実施の形態においては、nを十分に大きくすることなく、方向性結合型ミキサー回路を設計することができる。以下にその理由を述べる。
まず、分布ミキサーにおいて、ミキサーとして重要な周波数変換効率は、単位ミキサー3の段数(すなわちミキサー全長)に対して単調に増加する。しかし、単位ミキサー3の段数が大きくなってくると、周波数変換効率は飽和し始める。周波数変換効率が飽和する理由は、周波数変換にはローカル信号と高周波信号の電力が使用されているが、単位ミキサー3の段数が多いと前段の単位ミキサー3までにこれらの電力の大部分が周波数変換に使用されているため、後段の単位ミキサー3ほどごくわずかしか周波数変換に寄与しなくなるためである。
したがって、分布ミキサーとしては、周波数変換効率が飽和し始める、単位ミキサー3の段数のうち、できるだけ小さい段数を選択することで全長を短くすることができる。周波数変換効率が飽和し始めるミキサー全長を、Lsatと記述することにする。周波数変換効率とローカルリーク抑制の両方を確保する本実施の形態の方向性結合型ミキサー回路においては、単位ミキサー3の段数を決定する方法として、高周波信号とローカル信号間のアイソレーションが確保できる正奇数nのうち、nλ/4≧Lsatであって、且つできるだけミキサー全長がLsatに近いものを選べばよいことになる。このようにnを選択することで、方向性結合型ミキサー回路の全長を必要最小限に抑えることができる。このようなnを、ミキサー全長を著しく増加させることなく容易に選べることが、以下のように説明できる。
いま、方向性結合型ミキサー回路において、ミキサーの全長が、周波数変換効率が飽和し始める全長Lsatの場合に、十分なアイソレーション特性が得られず、nを増やして高周波信号とローカル信号間のアイソレーションを確保しようとする場合を考える。そのためには、nは奇数でなければならないから、ミキサー長を最大で2λ/4=λ/2だけ増やすことになる。したがって、もしもλ/2が大きい場合には、アイソレーション確保のために大きくミキサー全長を増やさねばならないことになる。
図5に、ローカル周波数fLOとλ/2との関係を示したグラフを示す。ここで、λは伝送線路内波長であるため、波長短縮を考慮する必要があるが、典型的な波長短縮率として、GaAsやInPなどの半絶縁性の化合物半導体を基板として用いた場合の0.3を仮定した。図5を見れば分かるように、ローカル周波数fLOが120GHzの場合にはλ/2は375μmとなっており、比較的小さい値である。
当然、周波数が低い領域では伝送線路内波長が長くなるため、例えばローカル周波数fLOが20GHzの場合にはλ/2=2250μmと長大になってしまうが、通常このような低周波数領域では、高周波動作用である分布ミキサーを用いる必要がないため、本実施の形態において考慮する必要はない。ミリ波帯においては、図5より、数百μmミキサー全長を延長するだけで、ローカルリークが抑制可能なミキサーを設計できることが分かる。したがって、本実施の形態は通常の分布ミキサーが用いられるミリ波帯においては十分に実用に供するものである。
以上から、本実施の形態の方向性結合型ミキサー回路に最適なnがミキサー全長を著しく増加させることなく得られることが説明された。本実施の形態は、ミリ波帯以上の周波数におけるMMIC(Monolithic Microwave Integrated Circuit)において特に有効である。とくに、200〜300GHzのサブテラヘルツ領域においては、λ/2は200μm程度となるため、ほとんどミキサー全長を増加させることなくアイソレーション確保ができる。なお、以上の議論は単位ミキサー長が十分短いと仮定した場合に成立するが、単位ミキサーを構成する要素としては、高々数個のトランジスタと伝送線路のみであるので、通常その全長は数十μmにとどまる。したがって、λ/2だけ分布ミキサーを増加させたい場合には、ミリ波帯においては数段単位ミキサーを追加すればよいことになる。
上記のように、方向性結合型ミキサー回路は、周波数が高いほどミキサー全長短縮に有利であり、特に現在活発に研究がおこなわれている120GHz以上の高周波においてその利用価値は高いものと考えられる。
以上のように本実施の形態を用いることで、分布ミキサーでありながら方向性結合器としての副次的な特性を強調することで、特定のポートに対して高いアイソレーションを得ることが可能となる。
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。前述の第1の実施の形態における単位ミキサー部分にコールドFETを配置することで、分布スイッチを構成することができる。コールドFETとは、FETのソース・ドレイン間に直流バイアスを加えずに使用するFETを指す。三極間領域でFETを使用することになるため、コールドFETは可変抵抗スイッチとして働く。
コールドFETによる分布スイッチを用いた分布ミキサーとしては、イメージリジェクションミキサー等が知られている(文献「Kohei Fujii and Henrik Morkner,“A 6-30GHz Image-rejection Distributed Resistive MMIC Mixer in a Low Cost Surface Mount Package”,Microwave Symposium Digest,2005 IEEE MTT-S International,12-17 June 2005」参照)。この文献においてもローカルリークに関しては、周波数特性が言及されているのみであるが、本発明の手法を適用することで、使用周波数帯において高周波信号とローカル信号間のアイソレーションが大きくなるようにミキサーの段数を決定することが可能となる。
図6は本発明の第2の実施の形態に係る方向性結合型ミキサー回路の構成を示す回路図であり、本発明を、コールドFETをもちいたハートレー型のイメージリジェクションミキサーに適用した場合の構成を示す図である。
本実施の形態の方向性結合型ミキサー回路は、第1の信号(例えばローカル信号)を伝送する長さnλ/4の伝送線路10と、第2の信号(例えば高周波信号)を伝送する長さnλ/4の伝送線路11a,11bと、伝送線路10,11a間に、これら伝送線路10,11aの信号流れ方向に沿って等間隔で配置され、伝送線路10上の信号と伝送線路11a上の信号とを周波数合成する2個以上の単位ミキサー12aと、伝送線路10,11b間に、これら伝送線路10,11bの信号流れ方向に沿って等間隔で配置され、伝送線路10上の信号と伝送線路11b上の信号とを周波数合成する2個以上の単位ミキサー12bと、入力高周波信号を分配する高周波信号用の90度ハイブリッド13と、90度の位相差を持つ二つの中間周波信号を合成する中間周波信号用の90度ハイブリッド14と、50Ωの終端抵抗15〜17とを備えている。図6における18〜20はポートである。ここでは、ポート18をローカル信号が入力されるLOポートとし、ポート19を高周波信号が入力されるRFポートとし、ポート20を中間周波信号が出力されるIFポートとする。
イメージを除去するためには、ローカル信号と高周波信号を同相でミキシングしたもの(Ich)と、ローカル信号に対して高周波信号を90度ずらしてミキシングしたもの(Qch)を用いればよいことが知られている(文献「束原恒夫著,“CMOS RF回路設計”,丸善株式会社,2009年」参照)。図6の例では、高周波信号を高周波信号用の90度ハイブリッド13でIchとQchに分け、IchとQchをそれぞれ伝送線路11a,11bに入力し、単位ミキサー13a,13bによってローカル信号と混合した後に、中間周波信号用の90度ハイブリッド14によってIchとQchの位相をそろえて一つの中間周波信号にまとめる構成をとっている。
90度ハイブリッドとは、入力信号を2ポートに電力等分配し、かつ2ポート間の位相差を90度にすることができる回路を指す。すなわち、図6において、高周波信号用の90度ハイブリッド13に入力された高周波信号の電力をPRFとすると、90度ハイブリッド13の出力信号電力は、(1/2)PRF∠0°と、(1/2)PRF∠90°と表せる。90度ハイブリッドは相反回路であるので、90度の位相差を持つ二つの高周波信号とローカル信号とが伝送線路10,11a,11bと単位ミキサー13a,13bとからなる分布ミキサー部で混合されて生成された90度の位相差を持つ二つの中間周波信号は、高周波信号の場合とは逆に、中間周波信号用の90度ハイブリッド14で一つの中間周波信号にまとめられ、出力される。
FETをオン/オフさせるために大電力のローカル信号をゲートに加えることが必要で、ローカルリークが問題になるが、この場合にも本実施の形態によりローカルリークを抑えることができる。つまり、コールドFETからなる単位ミキサー13a,13bの段数を適切に選ぶこと、具体的には分布ミキサー(イメージリジェクションミキサーから前後の90度ハイブリッドを除いた部分)の全長をnλ/4(nは奇数)とすることで、ローカルポートに対してRFポートまたはIFポートをアイソレーションポートとすることができ、ローカルリークを抑制することができる。なお、本実施の形態は、ハートレー型の分布型イメージリジェクションミキサーに本発明を適用したものであるが、分布設計を用いる場合において、いかなる構成のイメージリジェクションミキサーにも同様に本発明は適用できる。
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。前述の第1の実施の形態における単位ミキサー部分にギルバートセルミキサーを配置することで、ローカルリークを大きく抑制可能な分布ミキサーを設計することができる。
前述のように、ギルバートセルミキサーは、単体でローカルリーク抑制機能を有する。しかし、ギルバートセルミキサーを高周波化する際には、回路レイアウトの非対称性、差動動作トランジスタの特性バラつきの影響により、ローカルリークの抑制値は、ある値に制限されていた。
そこで、ギルバートセルミキサーを第1の実施の形態の単位ミキサー3として使用し、方向性結合型ミキサー回路の全長をnλ/4(nは正奇数)とすれば、ギルバートセルミキサー単体でのローカルリーク抑制効果と方向性結合型ミキサーのローカルリーク抑制効果とが相加されるので、非常に大きなローカルリーク抑制が期待できる。
なお、第1〜第3の実施の形態では、単位ミキサーの例として、コールドFETを用いた単位ミキサーや、ギルバートセルを用いた単位ミキサーを例に挙げて説明しているが、これに限るものではなく、他の単位ミキサーも適用可能である。
また、第1〜第3の実施の形態では、2本の伝送線路間に単位ミキサーを等間隔に配置しているが、単位ミキサーの間隔(単位ミキサー間に挿入される伝送線路の長さ)は、方向性結合型ミキサー回路全体の特性インピーダンスが例えば50Ωになり、方向性結合型ミキサー回路のカットオフ周波数が所望の値になるように設定すればよい。
本発明は、高周波ミキサー回路に適用することができる。
1,2,10,11a,11b…伝送線路、3,12a,12b…単位ミキサー、4〜7,18〜20…ポート、13,14…90度ハイブリッド、15〜17…終端抵抗。

Claims (4)

  1. ローカル信号を伝送する電気長nλ/4(nは正奇数、λはローカル信号の伝送線路内波長)の第1の伝送線路と、
    この第1の伝送線路と並走するように設けられ、高周波信号を伝送する電気長nλ/4の第2の伝送線路と、
    前記第1、第2の伝送線路間に配置され、前記第1の伝送線路上の信号と前記第2の伝送線路上の信号とを周波数合成する複数の単位ミキサーとを備え、
    前記第1、第2の伝送線路は、それぞれ、隣接する前記単位ミキサー間に挿入される個々の線路から構成され、
    前記第1の伝送線路を構成する前記個々の線路と前記第2の伝送線路を構成する前記個々の線路は、電気長が全て等しく、
    全体として電気長nλ/4の分布型ミキサーを構成することを特徴とする方向性結合型ミキサー回路。
  2. 請求項1記載の方向性結合型ミキサー回路において、
    前記単位ミキサーは、コールドFETによるミキサー回路であることを特徴とする方向性結合型ミキサー回路。
  3. 請求項1記載の方向性結合型ミキサー回路において、
    前記単位ミキサーは、ギルバートセルによるミキサー回路であることを特徴とする方向性結合型ミキサー回路。
  4. 請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方向性結合型ミキサー回路において、
    前記第1の伝送線路と前記第2の伝送線路とは、平行に配置されることを特徴とする方向性結合型ミキサー回路。
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