JP4173488B2 - フィルタ回路及び周波数逓倍器 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば、1GHz以上の高周波信号を処理するフィルタ回路及びこれを用いた周波数逓倍器に関する。
最近のワイヤレス通信装置に対する高周波化の要求に伴って、マイクロ波領域において周波数を逓倍する周波数逓倍器の開発が進められている。
図10に従来のシングルエンド型周波数逓倍器の構成例(非特許文献1参照)を示す。この周波数逓倍器は、入力端子200と出力端子201との間に、1つのトランジスタ31と、基本波信号を損失なくトランジスタ31に入力するための入力整合回路30と、トランジスタ31の出力信号を伝送する伝送線路32と、オープンスタブ34と、2倍波信号を損失なく出力する出力整合回路33とを備るように構成されている。
この構成では2倍波信号の1/2波長の長さのオープンスタブ34をトランジスタ31の出力側に接続していることが特徴である。このオープンスタブ34は基本波信号に対してショート、2倍波信号に対してオープンと見えるため、基本波信号は抑圧され、2倍波信号は出力される。
図11に従来のバランス型周波数逓倍器の構成例(非特許文献1参照)を示す。この周波数逓倍器は、入力端子200と出力端子201との間に、入力端子200から入力される入力信号を逆相で分配する逆相分配回路40と、入力整合回路41、42と、2つのトランジスタ43、44と、伝送線路45、46と、2つのトランジスタ43、44からの出力を1つに合成し、かつ整合をとる出力整合回路47とを備えるように構成されている。
この構成では入力端子200に入力された基本波信号は逆相分配回路40により逆相に分配され、入力整合回路41、42を介してそれぞれ2つのトランジスタ43、44に入力される。トランジスタ43、44からそれぞれ、出力される基本波出力信号は互いに逆相で、2倍波信号は同相となるため、2倍波信号は合成して出力され、基本波信号はキャンセルすることができる。
さらにこの構成では広帯域な逆相分配回路を用いることにより広帯域に渡って基本波信号を抑圧できる特徴がある。
相川正義、外4名共著,「モノリシックマイクロ波集積回路(MMIC)」、初版、社団法人 電子情報通信学会編、平成9年1月25日発行p.125〜127
しかしながら、図10に示す構成の従来の周波数逓倍器では2倍波信号の1/2波長のオープンスタブを用いているため、基本波信号を抑圧する帯域(概ね20dB以上の抑圧帯域)が狭いという問題があった。
また、図11に示す構成の従来の周波数逓倍器では基本波の抑圧特性が出力合成点での信号振幅、位相特性によって性能が決定し、それらは逆相分配回路のバランス特性及び、2つのトランジスタの均一性に大きく依存するため、製造誤差等により広帯域に渡って均一な振幅、位相特性を実現できないという問題があった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、広帯域動作を行うことができるフィルタ回路及びこれを用いた周波数逓倍器を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、入力端子より入力される基本波信号を抑圧し、2倍波信号を通過させ出力端子より出力するフィルタ回路であって、前記入力端子と出力端子との間に接続される任意の長さの1本の伝送線路と、前記伝送路の入力端子側の一端に接続される、2倍波信号の1/18波長以上で、かつ1/6波長以下の長さのショートスタブと、前記伝送線路の出力端子側の一端に接続される2倍波信号の1/2波長の長さのオープンスタブとを有することを特徴とする。
また、請求項2に記載の発明は、基本波から2倍波を生成する周波数逓倍器であって、入力される基本波から2倍波信号を発生するトランジスタと、入力端子から入力される基本波について入力端子と前記トランジスタとインピーダンス整合を行う基本波入力整合回路と、前記トランジスタから出力される信号のうち基本波を抑制し、2倍波のみを通過させるフィルタ回路と、前記フィルタ回路の出力端と出力端子とのインピーダンス整合を行う出力整合回路とを有し、前記フィルタ回路は、請求項1に記載のフィルタ回路であることを特徴とする。
また、請求項3に記載の発明は、前記フィルタ回路に整合回路機能を持たせたことを特徴とする。
以上説明したように、本発明に係るフィルタ回路によれば、基本波信号を広帯域にわたって抑制できる。
また、本発明の周波数逓倍器では上記フィルタ回路を用いているので、基本波信号を広帯域にわたって抑圧できるため、様々な周波数帯に対応可能となり、個々の周波数帯に対応した逓倍器の開発を行う必要が無く、無線装置RF部のコストの低減が図れる。
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。本発明の実施形態に係るフィルタ回路の構成を図1に示す。本発明の実施形態に係るフィルタ回路は、入力端子1より入力される基本波信号を抑圧し、2倍波信号を通過させ出力端子2より出力するフィルタ回路であり、入力端子1と出力端子2との間に接続される任意の長さL1の1本の伝送線路3と、伝送路3の入力端子1側の一端に接続される任意の長さL2のショートスタブ4と、伝送線路3の出力端子2側の一端に接続される2倍波信号の1/2波長の長さL3のオープンスタブとを有している。
周波数逓倍器に要求されるフィルタ回路は、基本波信号を抑圧し2倍波信号を通過させる特性であり、基本波周波数において、周波数逓倍器を構成する2倍波信号を発生するトランジスタから見たフィルタ回路の入力インピーダンスが0オームであることが必要である。
図2は図1に示す本発明の実施形態に係る30GHz 帯フィルタ回路の周波数に対する入力インピーダンスのシミュレーション値を示す特性図である。伝送線路3及びショートスタブ4の線路長L1、L2はそれぞれ2倍波信号の1/6波長、1/20波長である。図には従来の2倍波信号の1/2波長(λ/2)の長さのオープンスタブの結果も示している。基本波信号抑圧20dB以上を実現する入力インピーダンス0.1オーム以下の動作帯域は従来構成のオープンスタブを用いたフィルタ回路に対して本発明のフィルタ回路は3.9倍の広帯域化を実現している。
図3は図1に示す構成で、図2に示される動作条件のときのフィルタ回路の通過特性を示しており、2倍波信号は5dB以下の通過損失を実現している。従って、本発明の実施形態に係るフィルタ回路は従来構成と比較して大幅な広帯域化を実現することができる。
次に、本発明に係る周波数逓倍器の第1実施形態の構成を図4に示す。
本実施形態に係る周波数逓倍器は、基本波信号を入力する入力端子100と、2倍波信号を出力する出力端子101と、入力される基本波から2倍波信号を発生するトランジスタ11と、入力端子100から入力される基本波について入力端子100とトランジスタ11とインピーダンス整合を行う入力整合回路10と、トランジスタ11から出力される信号のうち基本波を抑制し、2倍波のみを通過させるフィルタ回路13と、トランジスタ11とフィルタ回路13を接続する伝送線路12と、フィルタ回路13の出力端と出力端子101とのインピーダンス整合を行う出力整合回路14とを有している。
フィルタ回路13は、伝送線路130と、ショートスタブ131と、オープンスタブ132からなり、図1に示したフィルタ回路と同一構成であり、伝送線路130は伝送線路3に、ショートスタブ131はショートスタブ4に、オープンスタブ132はオープンスタブ5にそれぞれ、相当する。
図4のように構成することにより、本実施形態に係る周波数逓倍器は、基本波信号を入力端子100より入力すると、基本波信号は入力整合回路10を介してトランジスタ11に入力され、トランジスタ11のゲートをピンチオフ付近にバイアスをかけることにより、トランジスタ11で2倍波信号が発生する。トランジスタ11で発生した2倍波信号と基本波信号はトランジスタ11のドレイン端子より出力され、フィルタ回路13において、基本波信号は抑圧され、2倍波信号のみが出力整合回路14を介して出力端子101より出力される。
図5はフィルタ回路13の伝送線路130及びショートスタブ131の長さを変えたときの基本波信号の抑圧帯域幅を示している。ここでは基本波信号を20dB以上抑圧できる周波数帯域を帯域幅としている。図中には1/2波長線路オープンスタブのみの場合の抑圧帯域幅(1.8GHz)を破線で示している。なお、フィルタ回路の基本波抑圧の中心周波数は30GHz である。図5が示すように、伝送線路130とショートスタブ131の線路長を任意に組み合わせることにより様々な抑圧帯域幅を設定することができる。
また、従来構成のオープンスタブのみの場合の2倍以上の抑圧帯域幅を実現するためにはショートスタブ131の長さを1/6波長@2f。(f。は基本波の周波数である。)以下とする必要がある。
図6はフィルタ回路13のショートスタブ131の長さを変えたときの2倍波信号出力の損失変化を示したものである。ショートスタブ131の長さを短くするに従って損失が増大しているのがわかる。実効上問題がない5dB以下の損失を実現するにはショートスタブ131の長さを1/18波長@2f。以上とする必要がある。
図5、図6から基本波信号の抑圧帯域幅を従来構成の2倍以上に拡大し、かつ2倍波信号出力を低損失に実現するにはショートスタブの長さを1/18波長@2f。以上、1/6波長@2f。以下とすべきである。
従って、本実施形態に係る周波数逓倍器は基本波信号を広帯域に渡って抑圧でき、2倍波信号を安定して出力することができる。
また、トランジスタは非線形性を有するいずれの半導体素子であってもよい。
次に、本発明に係る周波数逓倍器の第2実施形態の構成を図7に示す。同図において、本実施形態に係る周波数逓倍器は、基本波信号を入力する入力端子100と、2倍波信号を出力する出力端子101と、2倍波信号を発生するトランジスタ11と、入力端子100とトランジスタ11のインピーダンス整合を行う入力整合回路10と、出力整合機能を持ったフィルタ回路22と、トランジスタ11とフィルタ回路22を接続する伝送線路21より構成されている。フィルタ回路22は、伝送線路220と、ショートスタブ221と、オープンスタブ222とからなり、図1に示したフィルタ回路と同一構成であり、伝送線路220は伝送線伝送線路路3に、ショートスタブ221はショートスタブ4に、オープンスタブ222はオープンスタブ5にそれぞれ、相当する。
図7に示すように構成することにより、本実施形態の周波数逓倍器は、基本波信号を入力端子100より入力すると、基本波信号は入力整合回路10を介してトランジスタ11に入力され、トランジスタ11のゲートをピンチオフ付近にバイアスをかけることにより、トランジスタ11で2倍波信号が発生する。トランジスタ11で発生した2倍波信号と基本波信号はトランジスタ11のドレイン端子より出力され、フィルタ回路22において、基本波信号は抑圧され、2倍波信号のみが出力端子101より取出される。
図8はフィルタ回路22の伝送線路220、ショートスタブ221、オープンスタブ222それぞれの特性インピーダンスを10オームから100オームまで変化させたときのフィルタ回路22の出力インピーダンスをスミスチャート上に示したものである。特性インピーダンスを変えることによりフィルタ回路22そのものの出力インピーダンスを変えることができるので、出力端子101との整合を取るように任意の特性インピーダンスを選ぶことによりフィルタ回路22そのものに出力整合回路の機能を持たせることができる。なお、フィルタ回路22と伝送線路21とで、出力整合回路20を構成している。
図9はフィルタ回路22の伝送線路220、ショートスタブ221、オープンスタブ222それぞれの特性インピーダンスを変化させたときのフィルタ回路22の基本波信号抑圧帯域幅及び2倍波出力信号の損失を示している。同図から明らかなように、特性インピーダンスの変化により基本波信号抑圧帯域幅は大きく変化するが、2倍波出力信号損失5dB以下においては基本波抑圧帯域幅5GHz以上を実現できることが判る。
従って、本実施形態に係る周波数逓倍器は、第1実施形態に係る周波数逓倍器に比較して、出力整合回路を必要としないため、回路の小型化を実現できる。
また、トランジスタは非線形性を有するいずれの半導体素子であってもよい。
本発明の実施形態に係るフィルタ回路の構成を示す回路図。 図1に示したフィルタ回路における入力インピーダンスの周波数特性を示す特性図。 本発明に係る周波数逓倍器を構成するフィルタ回路の通過特性を示す特性図。 本発明に係る周波数逓倍器の第1実施形態の構成を示す回路図。 図4に示した周波数逓倍器を構成するフィルタ回路の伝送線路及びショートスタブの長さを変えたときの基本波信号の抑圧帯域幅を示す特性図。 図4に示した周波数逓倍器を構成するフィルタ回路のショートスタブの長さを変えたときの2倍波信号出力の損失変化を示す特性図。 本発明に係る周波数逓倍器の第2実施形態の構成を示す回路図。 図7におけるフィルタ回路を構成する伝送線路およびスタブの特性インピーダンスと出力インピーダンスとの関係を示す特性図。 図7におけるフィルタ回路を構成する伝送線路およびスタブの特性インピーダンスと基本波信号抑圧帯域幅の関係を示す特性図。 従来のシングルエンド型周波数逓倍器の構成を示す回路図。 従来のバランス型周波数逓倍器の構成を示す回路図。
符号の説明
1、100…入力端子、2、101…出力端子、3、12、21、130、220…伝送線路、4、131、221…ショートスタブ、5、132、222…オープンスタブ、10…入力整合回路、13、22…フィルタ回路、14…出力整合回路、

Claims (3)

  1. 入力端子より入力される基本波信号を抑圧し、2倍波信号を通過させ出力端子より出力するフィルタ回路であって、
    前記入力端子と出力端子との間に接続される任意の長さの1本の伝送線路と、
    前記伝送路の入力端子側の一端に接続される、2倍波信号の1/18波長以上で、かつ1/6波長以下の長さのショートスタブと、
    前記伝送線路の出力端子側の一端に接続される2倍波信号の1/2波長の長さのオープンスタブとを有することを特徴とするフィルタ回路。
  2. 基本波から2倍波を生成する周波数逓倍器であって、
    入力される基本波から2倍波信号を発生するトランジスタと、
    入力端子から入力される基本波について入力端子と前記トランジスタとインピーダンス整合を行う基本波入力整合回路と、
    前記トランジスタから出力される信号のうち基本波を抑制し、2倍波のみを通過させるフィルタ回路と、
    前記フィルタ回路の出力端と出力端子とのインピーダンス整合を行う出力整合回路とを有し、
    前記フィルタ回路は、請求項1に記載のフィルタ回路であることを特徴とする周波数逓倍器。
  3. 前記フィルタ回路に整合回路機能を持たせたことを特徴とする請求項2に記載の周波数逓倍器。
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