本発明の実施形態を図1から図5を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定される物ではない。
図1は無限移行する無端支持体を使用し、流延ダイスの上流側に減圧室を有する光学フィルムの製造工程の概略図である。図1(a)は無限移行する無端支持体して無端ベルト支持体を使用し、流延ダイスの上流側に減圧室を配設した光学フィルムの製造工程の概略図である。図1(b)は無限移行する無端支持体してドラム支持体を使用し、流延ダイスの上流側に減圧チャンバを配設した光学フィルムの製造工程の概略図である。
図1(a)に示される製造工程に付き説明する。
図中、1は溶液流延法による光学フィルムの製造工程を示す。製造工程1は、流延工程1aと、ドープ供給工程1bと、第1乾燥工程1cと、第2乾燥工程1dと、巻き取り工程1eとを有している。
流延工程1aは、無限移行(図中の矢印方向)する無端ベルト状支持体1a1と、ドープ供給工程1bから供給される樹脂を溶媒に溶解したドープ2を、無端ベルト状支持体1a1に流延するダイス1a2とを使用している。
ドープ供給工程1bは、ドープ供給タンク1b1と、ドープ2をダイス1a2に供給する供給管1b2とを使用している。
ドープは光学フィルム用の樹脂材料を良溶媒と、貧溶媒からなる混合溶媒を使用して作製されている。本発明では、使用する樹脂を単独で溶解するものを良溶媒、単独で膨潤するか又は溶解しないものを貧溶媒と言う。
ドープの樹脂の濃度は、濃度が高い方が無端ベルト状支持体1a1に流延した後の乾燥負荷が低減出来て好ましいが、樹脂の濃度が高過ぎると濾過時の負荷が増えて、濾過精度が悪くなる。これらを両立する濃度としては、10質量%から35質量%が好ましく、更に好ましくは、15質量%から25質量%である。
3は無端ベルト状支持体1a1の上にダイス1a2のドープ流出口1a25(図2参照)1bから流下したドープ膜2a1(図2参照)が無端ベルト状支持体1a1の上に着地し形成された流延膜2aが固化した状態のウェブを剥離する剥離点を示し、4は剥離されたウェブを示す。
ダイス1a2は無端ベルト状支持体1a1の搬送方向(図中の矢印方向)の上流側に、減圧手段1a3として減圧室1a31(図2参照)を使用している。
減圧室1a31(図2参照)のドープ膜2a1(図2参照)の幅手方向の圧力分布は、ドープ膜の振動、ドープ膜安定化のために流下させている溶媒の飛散、ドープ膜端部で発生する皮膜の抑制等を考慮し、減圧室の平均圧力に対して±0.2%から±5%であることが好ましい。尚、圧力分布は、以下に示す方法で求めた値を示す。減圧室上部に幅手に均等に5か所の測定口を設け山本電機製作所製マノスターゲージにより測定した。減圧室の平均圧力は、前記5点の平均値で測定した値を示す。
減圧室の圧力と大気圧との差は、ドープ膜の金属支持体への密着性、ドープ膜端部安定化の為に流下している溶媒の飛散抑制、ドープ膜端部の皮膜発生抑制等を考慮し、100Paから1500Paであるが好ましい。尚、減圧室の圧力は、圧力分布と同様山本電機製作所(株)製マノスターゲージで測定した値を示す。
無端ベルト状支持体1a1の上にドープ膜2a1を着地させる時の無端ベルト状支持体1a1の表面温度は、同伴エアー量低減、ドープ膜発泡抑制、介在溶剤の蒸発抑制を考慮し、−10℃から18℃であることが好ましい。
ダイス1a2の流出口1a25(図2参照)から無端金属支持体1a1の上にドープ膜を着地する迄に、ドープ膜の着地点付近に溶媒の蒸気を付与する溶媒付与手段(不図示)が減圧室1a31(図2参照)の内部、上流側及び下流側の少なくとも1箇所に設けられている。溶媒付与手段に関しては図3から図5で詳細に説明する。尚、本発明で溶媒の蒸気とは、気体及びミストの状態を含めて言う。
流延工程1aは、加熱装置(不図示)を有しており、無端ベルト状支持体1a1の上に形成された流延膜2aを無端ベルト状支持体1a1から剥離出来る状態に溶媒を除去するために配設されている。
加熱装置(不図示)に使用する加熱手段としては特に限定はなく、例えば、無端ベルト状支持体1a1の流延膜2aの接触面を赤外線ヒータで加熱する方法、無端ベルト状支持体1a1の裏面に温風を吹き付け裏面側から加熱する方法、流延膜2aの表面に温風を吹き付ける方法、無端ベルト状支持体1a1の裏面に温水や加熱オイルを接触し加熱する方法等が挙げられる。流延後、剥離までの時間は作製するセルロースエステルフィルムの膜厚、使用溶媒によって異なるが、ベルトからの剥離性、製膜効率、工程の長さ等を考慮し、0.5分から5分の範囲が好ましい。
使用する無端ベルト状支持体としては、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、ステンレススティールベルトが好ましく用いられる。流延する幅は1mから4mとすることが可能である。流延工程1aの無端ベルト状支持体1a1の表面温度は−50℃から溶媒が沸騰して発泡しない温度以下に設定することが好ましい。温度が高い方が流延膜の乾燥速度が速く出来るので好ましいが、あまり高過ぎると流延膜が発泡したり、平面性が劣化する場合がある。好ましい無端ベルト状支持体の温度としては0から100℃の範囲で適宜決定され、5℃から30℃が更に好ましい。
無端ベルト状支持体1a1の温度を制御する方法は特に制限されないが、温風又は冷風を吹きかける方法や、温水を無端ベルト状支持体1a1の裏側に接触させる方法がある。温水を用いる方が熱の伝達が効率的に行われるため、無端ベルト状支持体1a1の温度が一定になるまでの時間が短く好ましい。温風を用いる場合は溶媒の蒸発潜熱による流延膜の温度低下を考慮して、溶媒の沸点以上の温風を使用しつつ、発泡も防ぎながら目的の温度よりも高い温度の風を使う場合がある。特に、流延から剥離するまでの間で無端ベルト状支持体1a1の温度及び乾燥風の温度を変更し、効率的に乾燥を行うことが好ましい。
無端ベルト状支持体1a1は保持ロール1a11と保持ロール1a12とにより保持され、保持ロールの回転に伴い保持ロール1a11と保持ロール1a12の間を回転移動(図中の矢印方向)する様になっている。保持ロール1a11と保持ロール1a12との距離は0mより大きく、5m以下の範囲内、好ましくは1mから5m、より好ましくは2mから5mである。又、保持ロール1a11と保持ロール1a12の一方、若しくは両方に無端ベルト状支持体1a1に張力を付与する駆動装置(不図示)が設けられ、これによって無端ベルト状支持体1a1は張力が掛けられて張った状態で使用され様になっている。
無端ベルト状支持体1a1の移動速度は、生産性の向上、金属支持体から剥離可能な状態までの初期乾燥の時間確保、乾燥ムラによる光学ムラの抑制等を考慮し、50m/minから200m/minであることが好ましい。尚、移動速度は、金属支持体を駆動させるロールの回転速度で測定した値を示す。
3は無端ベルト状支持体1a1に流延され形成された流延膜2aから溶媒が剥離出来る状態まで除去され固化したウェブを剥離する剥離点を示す。剥離点におけるウェブの温度は−50℃から40℃とするのが好ましく、10℃から40℃がより好ましく、15℃から30℃とするのが最も好ましい。4は剥離されたウェブを示す。
剥離点におけるウェブの残留溶媒量は150%以下が膜強度の点で望ましく、更には120%以下がより好ましい。尚残留溶媒量は下記の式で表わされる。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
ここで、Mはフィルムの任意時点での質量、Nは質量Mのものを110℃で3時間乾燥させた時の質量である。
剥離点3において剥離されたウェブ4は、第1乾燥工程1cに搬送される。第1乾燥工程1cは、乾燥風取り入れ口1c1と排出口1c2とを有する乾燥箱1c3と、ウェブ4を搬送する上部の搬送ロール1c4と下部の搬送ロール1c5とを有している。上部の搬送ロール1c4と下部の搬送ロール1c5とは上下で一組で、複数組から構成されている。第1乾燥工程1cは予備乾燥として配設されている。
第1乾燥工程1cに配設される搬送ロールの数は、乾燥条件、方法、製造される光学フィルムの長さ等により異なり適宜設定している。上部の搬送ロール1c4と下部の搬送ロール1c5とは駆動源によって回転駆動されない自由回転ロールとなっている。又、乾燥工程から巻き取り工程までの間には、全て自由回転する搬送ロールが用いられるわけではなく、通常、1本から数本の搬送用駆動ロール(駆動源によって回転駆動するロール)の設置を必要とする。基本的に、搬送用駆動ロールは、その駆動で樹脂フィルムを搬送するのが目的であるので、ニップやサクション(エアの吸引)などにより、樹脂フィルムの搬送と、駆動ロールの回転とを同期させる機構が付いている。
第2乾燥工程1dは、乾燥風取り入れ口1d1と排出口1d2とを有する乾燥箱1d3と、ウェブ4を搬送する上部の搬送ロール1d4と下部搬送ロール1d5とを有している。上部の搬送ロール1d4と下部の搬送ロール1d5とは上下で一組で、複数組から構成されている。第2乾燥工程1dの構成は第1乾燥工程1cと同じとなっている。
第2乾燥工程1dは最終乾燥を行うため第1乾燥工程1cよりも長くなっており、第1乾燥工程1cと第2乾燥工程1dとで乾燥処理後のウェブ4の残留溶媒量を調整することが可能となっている。
尚、本図は第1乾燥工程1cと第2乾燥工程1dとを有する場合を示したが、乾燥工程を長くして1つにしてもよいし、第1乾燥工程1cと第2乾燥工程1dとの間に延伸工程を配設してもよいし、無端ベルト状支持体から剥離した後、延伸工程、乾燥工程を配設しても構わない。仕上げる光学フィルムの用途に合わせ適宜配設することが可能である。
第1乾燥工程1cと第2乾燥工程1dとでは乾燥手段として、加熱空気、赤外線等単独又は加熱空気と赤外線乾燥を併用しても構わない。簡便さの点で加熱空気で行うのが好ましい。本図は加熱空気を使用した場合を示している。乾燥温度は、乾燥工程に入る時のウェブの残留溶媒量により異なるが、乾燥時間、収縮ムラ、伸縮量の安定性等を考慮し、30℃から180℃の範囲で残留溶媒量により適宜選択して決めればよく、一定の温度で乾燥してもよいし、3から4段階の温度に分けて、数段階の温度に分けて乾燥しても構わない。
これら流延してから後乾燥までの各工程は、空気雰囲気下行ってもよいし、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。尚、乾燥雰囲気は、溶媒の爆発限界濃度を考慮して、実施することはもちろんのことである。
6は膜厚測定装置を示す。膜厚測定装置6は、流延工程1aと巻き取り工程1eまで間の少なくとも1箇所に配置する必要がある。例えば、流延工程1aと第1乾燥工程1cとの間、第1乾燥工程1cと第2乾燥工程1dとの間、第2乾燥工程1dと巻き取り工程1eとの間に配置することが可能である。勿論、第1乾燥工程1cと第2乾燥工程1dとの間、及び第2乾燥工程1dと巻き取り工程1eとの間の2箇所に配置することも可能である。本図は第2乾燥工程1dと巻き取り工程1eとの間の1箇所に配置された場合を示している。第2乾燥工程1dと巻き取り工程1eとの間に配置された場合はウェブの幅手方向の膜厚及び平均膜厚を測定することになる。流延工程1aと第1乾燥工程1cとの間に配置された場合は、無端ベルト状支持体1a1から剥離したウェブ4の幅手方向の膜厚及び平均膜厚を測定することになる。
巻き取り工程1eは、巻き取り装置(不図示)を使用し、ウェブ4を乾燥することで作製た光学フィルム5を必要量の長さに巻き芯に巻き取る。1e1は巻き芯に巻き取られたロール状の光学フィルムを示す。尚、巻き取る際の温度は、巻き取り後の収縮によるスリキズ、巻き緩み等を防止するために室温まで冷却することが好ましい。使用する巻き取り機は、一般的に使用されているものでよく、定テンション法、定トルク法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法などの巻き取り方法で巻き取ることが出来る。
巻き取り工程1eで巻き取られた光学フィルム5の厚さは、液晶表示装置用光学フィルムとしての透明性確保、偏光板加工時のハンドリング適性、材料コスト等を考慮し、20μmから100μmが好ましい。厚さは、セイコーイーエム(株)製 極高感度フィルム厚み測定器で測定した値を示す。
図1(b)に示される製造工程に付き説明する。
図中、1′は光学フィルムの溶液流延法の製工程を示す。製造工程1′は、流延工程1′aと、ドープ供給工程1′bと、第1乾燥工程1′cと、第2乾燥工程1′dと、巻き取り工程1′eとを有している。
流延工程1′aは、回転(図中の矢印方向)する無端ドラム状支持体1′a1と、ドープ供給工程1′bから供給される樹脂を溶媒に溶解したドープ2′を、無端ドラム状支持体1′a1に流延するダイス1′a2とを使用している。
ドープ供給工程1′bは、ドープ供給タンク1′b1と、ドープ2′をダイス1′a2に供給する供給管1′b2とを使用している。ドープ2′は図1(a)に示されるドープ2と同じである。
3′は無端ドラム状支持体1′a1の上にダイス1′a2から流下したドープ膜2a1(図2参照)が無端ドラム状支持体1′a1の上に着地し形成された流延膜2′aが固化した状態のウェブを剥離する剥離点を示し、4′は剥離されたウェブを示す。
ダイス1′a2は無端ドラム状支持体1′a1の回転方向(図中の矢印方向)の上流側に減圧手段1′a3として減圧室1′a31(図2参照)を使用している。
減圧室は減圧の変動を抑える為に、幅手に仕切り板を設けたり、中間プレートを全幅に設けるなどして減圧室を複数に分けても良い。
減圧室1′a31のドープ膜(不図示)の幅手方向の圧力分布、平均圧力、減圧室の圧力と大気圧との差は、図1(a)に示す減圧室1a31と同じである。
無端ドラム状支持体1′a1の上にドープ膜を着地させる時の無端ドラム状支持体1′a1の表面温度は、剥離時の自己支持性確保、短時間での乾燥、ドープ膜発泡抑制、介在溶剤の蒸発抑制等を考慮し、−10℃から18℃であることが好ましい。
尚、ダイス1′a2の流出口から無端ドラム状支持体1′a1の上にドープ膜を着地させる迄に、ドープ膜の着地点付近に溶媒の蒸気を付与する溶媒付与手段(不図示)が減圧室1′a3の内部、上流側及び下流側の少なくとも1箇所に設けられている。尚、溶媒付与手段は、図1(a)に示す溶媒付与手段と同じである。
流延工程1′aは、加熱装置(不図示)を使用しており、無端ドラム状支持体1′a1の上に形成された流延膜2′aを無端ドラム状支持体1′a1から剥離出来る状態に溶媒を除去するために配設されている。
加熱装置(不図示)は、乾燥箱(不図示)と、乾燥箱(不図示)に配設された乾燥風の供給装置(不図示)と、排気管(不図示)とを有している。供給装置(不図示)から供給される乾燥風の温度は、流延膜2′aの有する溶媒の沸点、溶媒の蒸気圧に基づく乾燥速度等を考慮し、−20℃から100℃であることが好ましい。
使用する無端ドラム状支持体1′a1としては、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、ステンレススティールドラム、表面ハードクロムメッキ処理ドラムが好ましく用いられる。流延する幅は1000mmから3000mmとすることが可能である。流延工程1′aの無端ドラム状支持体1′a1の表面温度は−50℃から溶媒が沸騰して発泡しない温度以下に設定することが好ましい。温度が高い方が流延膜の乾燥速度が速く出来るので好ましいが、あまり高過ぎると流延膜が発泡したり、平面性が劣化する場合がある。好ましい無端ドラム状支持体1′a1の温度としては−30℃から100℃の範囲で適宜決定され、−20℃から30℃が更に好ましい。
無端ドラム状支持体1′a1の温度を制御する方法は、図1(a)に示す無端ベルト状支持体と同じ方法で行うことが可能である。
無端ドラム状支持体1′a1は回転可能に軸支されており、回転速度(周速)は、生産性の向上、金属支持体から剥離可能な状態までの初期乾燥の時間確保、乾燥ムラによる光学ムラの抑制等を考慮し、50m/minから200m/minであることが好ましい。尚、回転速度(周速)は、ドラム回転数を計測し算出した値を示す。
3′は無端ドラム状支持体1′a1に流延され形成された流延膜2′aから溶媒が剥離出来る状態まで除去され固化したウェブを剥離する剥離点を示す。剥離点におけるウェブの温度は−50℃から40℃とするのが好ましく、−20℃から30℃がより好ましく、−10℃から30℃とするのが最も好ましい。4′は剥離されたウェブを示す。
剥離点におけるウェブの残留溶媒量は250%以下が膜強度の点で望ましく、更には150%以下がより好ましい。
剥離点3′において剥離されたウェブ4′は、第1乾燥工程1′cに搬送される。第1乾燥工程1′cは、乾燥風取り入れ口1′c1と排出口1′c2とを有する乾燥箱1c3と、ウェブ4′を搬送する上部の搬送ロール1′c4と下部の搬送ロール1′c5とを有している。尚、第1乾燥工程1′cの機能は図1(a)に示す第1乾燥工程1cと同じであるので詳細の説明は省略する。
第2乾燥工程1′dは、乾燥風取り入れ口1′d1と排出口1d2とを有する乾燥箱1′d3と、ウェブ4′を搬送する上部の搬送ロール1′d4と下部搬送ロール1′d5とを有している。尚、第2乾燥工程1′dの機能は図1(a)に示す第2乾燥工程1dと同じであるので詳細の説明は省略する。
尚、本図は第1乾燥工程1′cと第2乾燥工程1′dとを有する場合を示したが、乾燥工程を長くして1つにしてもよいし、第1乾燥工程1′cと第2乾燥工程1′dとの間に延伸工程を配設してもよいし、無端ドラム状支持体1′a1から剥離した後、延伸工程、乾燥工程を配設しても構わない。仕上げる光学フィルムの用途に合わせ適宜配設することが可能である。
第1乾燥工程1′cと第2乾燥工程1′dとでは乾燥手段及び方法は、図1(a)に示す第1乾燥工程1cと第2乾燥工程1dと同じである。
これら流延してから後乾燥までの各工程は、空気雰囲気下行ってもよいし、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。尚、乾燥雰囲気は、溶媒の爆発限界濃度を考慮して、実施することはもちろんのことである。
6′は膜厚測定装置を示す。膜厚測定装置6′の配置する場所、機能は図1(a)に示す膜厚測定装置6と同じである。
巻き取り工程1′eは、巻き取り装置(不図示)を使用し、ウェブ4′を乾燥することで作製た光学フィルム5′を必要量の長さに巻き芯に巻き取る。1′e1は巻き芯に巻き取られたロール状の光学フィルムを示す。尚、巻き取る際の温度は、巻き取り後の収縮によるスリキズ、巻き緩み等を防止するために室温まで冷却することが好ましい。使用する巻き取り機は、一般的に使用されているものでよく、定テンション法、定トルク法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法などの巻き取り方法で巻き取ることが出来る。
巻き取り工程1′eで巻き取られた光学フィルム5の厚さは、液晶表示装置用光学フィルムとしての透明性確保、偏光板加工時のハンドリング適性、材料コスト等を考慮し、20μmから100μmが好ましい。厚さは、セイコーイーエム(株)製 極高感度フィルム厚み測定器で測定した値を示す。
本発明は、本図に示す様な製造工程で溶液流延法により光学フィルムを製造する時、応力バラツキ、膜厚ムラ、リタデーションムラの発生がない光学フィルムの製造方法に関するものである。更に詳しくは流延工程で高速で無限移行する無端支持体上にダイスから流下したドープ膜を安定に無端支持体上に着地させることで応力バラツキ、膜厚ムラ、リタデーションムラの発生がない光学フィルムの製造方法及び製造装置に関するものである。
図2は図1(a)のXで示される部分拡大概略図である。図2(a)は図1(a)のAで示される部分拡大概略平面図である。図2(b)は図2(a)のP−P′に沿った拡大概略断面図である。
図中、1a2はダイスを示す。ダイス1a2は、ブロック1a21と、ブロック1a22とで構成されたポケット1a23と、スリット1a24とを有している。1a25は供給管1b2を介して供給されたドープ2が流出するスリット1a24の先端の開口部であるドープの流出口を示す。1a221はブロック1a22の先端部分のリップ面を示す。1a231はブロック1a21の先端部分のリップ面を示す。2a1はドープの流出口1a25から流出したドープ膜を示す。2a11はドープ膜2a1の減圧室1a31側の面を示す。
Kはドープ膜2a1が無端ベルト状支持体1a1の表面に着地した着地点を示す。尚、着地点Kは測定において確認した位置とする。ドープ膜2a1は無端ベルト状支持体1a1の表面に着地した時、無端ベルト状支持体1a1は移動(図中の矢印方向)しているため、移動方向に引っ張られることでドープの流出口1a25から着地点K迄の長さが長くなる。
1a31は減圧手段1a3の減圧室を示す。1a32は減圧ブロアー(不図示)に繋がっている吸引管を示す。吸引管1a32を介して減圧室1a31の内部を吸引することで減圧室1a31の内部は減圧となり、ドープ膜2a1に静圧を付与する様になる。1a33は減圧室1a31の上流側の内壁を示す。ドープ膜2a1に静圧を付与されることで減圧室側に引き戻されドープ流出口1a25から着地点K迄の長さが短くし、ドープ膜2a1を安定にする作用を有している。
減圧室1a31は、流出口1a25から無端金属支持体1a1の上にドープ膜を着地する迄に、少なくともドープ膜の着地点Kの付近に溶媒の蒸気を付与する溶媒付与手段を有している。溶媒付与手段に関しては図3から図5で説明する。
着地点Kの付近に付き説明する。ドープ膜2a1の着地点Kから流出口1a25方向の高さは、ドープの流出口1a25から鉛直方向の無端ベルト状支持体1a1の表面迄の距離をLとし、距離Lに対して無端ベルト状支持体1a1の表面から50%から70%のドープ膜2a1の位置Mが好ましい。又、ドープ膜2a1の面からは、減圧室1a31側のドープ膜2a1の面に平行な平行面(不図示)を想定し、平行面(不図示)と、ドープ膜2a1の面との0.1mmから20mmの距離が好ましい。
即ち、着地点Kの付近とは、距離Lに対して、無端ベルト状支持体1a1の表面から50%から70%のドープ膜2a1の位置と、ドープ膜2a1の面からドープ膜2a1の面に平行な平行面(不図示)を想定し、平行面(不図示)と、ドープ膜2a1の面との0.1mmから20mmの距離、及び着地点Kの付近の無端ベルト状支持体1a1の表面を言う。
溶媒付与手段により着地点Kの付近い付与される溶媒の蒸気量は溶媒のガス濃度として10000ppmから300000ppmが好ましい。
10000ppm未満の場合は、ドープ膜の表面及び無端ベルト状支持体の表面に付着する溶媒の液滴量の不足、バラツキの発生により、無端ベルト状支持体に着地したドープ膜が引っ張られる時にバラツキが発生し、形成された流延膜に応力バラツキが発生、膜厚のバラツキが発生し、最終的に応力バラツキ、膜厚ムラ、リタデーションムラがある光学フィルムが製造される危険がある。
300000ppmを超える場合は、無端ベルト状支持体と流延膜との間に溶媒層が形成され、ドープ中の不純物が溶媒層へ溶け出し、無端ベルト状支持体上に析出し新たな故障を引き起こす危険がある。
溶媒のガス濃度は、イノーバ社製マルチガス分析装置を使用して測定した値を示す。
測定する位置は、減圧室1a31側のドープ膜2a1の面に平行な平行面(不図示)を想定し、平行面(不図示)と、ドープ膜2a1の面との0.1mmから20mmの間隔の濃度を測定した値を示す。
溶媒のガス濃度のドープ膜2a1の幅手方向のバラツキ(%)は、ドープ膜2a1の無端ベルト支持体1a1への密着性バラツキによる幅手のリタデーションムラ等を考慮し、±5%から±20%であることが好ましい。ドープ膜の幅手方向のバラツキは、幅手方向を等間隔で5箇所測定し、この測定値の最高ガス濃度、最低ガス濃度、平均ガス濃度を使用し、以下に示す式から計算で求めた値を示す。
バラツキ(%)=((最高ガス濃度−最低ガス濃度)/平均ガス濃度))×100
供給する溶媒は、非相溶による表面欠陥、溶剤回収時のコンタミ等を考慮し、ドープに使用されている溶媒と同種の溶媒が好ましく、更にはドープに対して良溶媒であることが好ましい。又、混合しても単独であっても構わない。
尚、同種の溶媒とは、メチレンクロライド、アセトン、酢酸メチル、メタノール、エタノール、i−プロピルアルコール、n−ブタノール、シクロヘキサン、シクロヘキサノン溶媒を言う。
溶媒をミストの状態で供給する時、結露して飛散による故障抑制、蒸発による介在効果低下等を考慮し、ミストの粒径は10nmから10000nmが好ましい。
ミストの粒径は、日本カノマックス(株)製MODEL1000XPを使用して測定した平均粒径の値を示す。
尚、本図に示される溶媒濃度、供給方法は図1(b)に示される無端ドラム状支持体の場合も同じである。
図3は図1に示す製造工程の流延工程の減圧室の内部に溶媒付与手段を配設した状態を示す概略図である。図3(a)は図1に示す製造工程の流延工程の減圧室の内部に溶媒付与手段を配設した状態を示す概略平面図である。図3(b)は図3(a)のQ−Q′に沿った概略断面図である。
図中、7aは溶媒付与手段の噴霧機を示す。7a1は噴霧機7aに溶媒を供給する溶媒供給管7a1を示し、7a2はノズルを示す。7a3はノズル7a2の液滴状態の溶媒が噴出する先端の開口部を示す。噴霧機7aは、ドープ膜2a1の幅手方向にミスト状態の溶媒を供給するためドープ膜2a1の幅に合わせ配設されていることが好ましい。噴霧機7aはドープ膜2a1に対して噴霧角度を変えることが出来る様に減圧室1a31の内部に取り付けられている。噴霧角度を変えることで、流延ダイス1a2の流出口1a25から着地点K付近に溶媒の蒸気を付与することが可能となっている。
噴霧機7aとしては粒径が10nmから10000nmのミストが作ることが出来れば特に限定はなく、例えば、本多電子(株)製超音波霧化器 HM−303N等が挙げられる。その他の符号は、図2と同義である。
図4は図1に示す製造工程の流延工程の減圧室の外部に溶媒付与手段を配設した状態を示す概略図である。図4(a)は図1に示す製造工程の流延工程の減圧室の外部に溶媒付与手段を配設した状態を示す概略平面図である。図4(b)は図4(a)のR−R′に沿った概略断面図である。
図中、7bは溶媒付与手段の噴霧機を示す。7b1は噴霧機7bに溶媒を供給する溶媒供給管を示し、7b2はノズルを示す。7b3はノズル7a2の液滴状態の溶媒が噴出する先端の開口部を示す。噴霧機7bは、ドープ膜2a1の幅手方向にミスト状態の溶媒を供給するためドープ膜2a1の幅に合わせ配設されていることが好ましい。ノズル7b2はドープ膜2a1の幅に合わせ、且つドープ膜2a1に対して噴霧角度を変えることが出来る様に噴霧機7bに取り付けられている。噴霧角度を変えることで、流延ダイス1a2の流出口1a25から着地点K付近に溶媒の蒸気を付与することが可能となっている。その他の符号は、図2と同義である。
図5は図1に示す製造工程の流延工程の減圧室の両側に溶媒付与手段を配設した状態を示す概略図である。図5(a)は図1に示す製造工程の流延工程の減圧室の両側に溶媒付与手段を配設した状態を示す概略平面図である。図5(b)は図4(a)のR−R′に沿った概略断面図である。
図中、7cは減圧室1a31の片側に配設された溶媒付与手段の噴霧機を示す。7′cは減圧室1a31の他の片側に配設された溶媒付与手段の噴霧機を示す。7c1は噴霧機7cに溶媒を供給する溶媒供給管を示し、7c2はノズルを示す。7c3はノズル7c2のミスト状態の溶媒が噴出する先端の開口部を示す。7′c1は噴霧機7′cに溶媒を供給する溶媒供給管を示し、7′c2はノズルを示す。7′c3はノズル7′c2のミスト状態の溶媒が噴出する先端の開口部を示す。ノズル7c2及びノズル7′c2はドープ膜2a1の幅手方向にミスト状態の溶媒を供給するためドープ膜2a1の幅手方向に配設されており、各長さはドープ膜2a1の幅の半分であることが好ましい。ノズル7c2はドープ膜2a1に対して噴霧角度を変えることが出来る様に噴霧機7cに取り付けられている。及びノズル7′c2もドープ膜2a1に対して噴霧角度を変えることが出来る様に噴霧機7′cに取り付けられている。噴霧角度を変えることで、流延ダイス1a2の流出口1a25から着地点K付近に溶媒の蒸気を付与することが可能となっている。噴霧機7c及び噴霧機7′cは図3に示す噴霧機7aと同じ噴霧機の使用が可能である。その他の符号は、図2と同義である。
溶液流延法で光学フィルムを製造する時、流延ダイスの流出口から流出したドープ膜が無端金属支持体の表面に着地する迄に、ドープ膜の着地点付近に溶媒の蒸気を図1から図5に示す溶媒付与手段で付与することで次の効果が挙げられる。
1.高速移動する無端金属支持体上にドープ膜を着地する時、無端金属支持体へのドープ膜の密着性のバラツキがなくなり、形成される流延膜の応力バラツキがなくなり、リタデーションムラの発生がない光学フィルムの製造が可能となった。
2.高速移動する無端金属支持体上にドープ膜を着地する時、無端金属支持体へのドープ膜の密着性のバラツキがなくなり、膜厚の安定した光学フィルムの製造が可能となった。
3.溶液流延法による光学フィルムの生産効率の向上が可能となった。
4.ダイス端部で発生する皮膜を抑制することが可能となった。
次に、本発明の光学フィルムの製造方法に係わる材料に付き説明する。
(樹脂)
本発明の光学フィルムの製造方法に使用する樹脂は特に限定はなく、一般に溶液流延法で使用する樹脂の使用が可能である。光学フィルムを製造する樹脂材料としては、例えば偏光子との接着性がよいこと、光学的に透明であること等が好ましい要件として挙げられる。可視光の透過率60%以上であることを言い、好ましくは80%以上であり、特に好ましくは90%以上である。
上記の性質を有している光学フィルムを形成する樹脂であれば特に限定はなく、例えば、セルロースジアセテート樹脂、セルローストリアセテート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂等のセルロースエステル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンも含む)系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂等のポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、セロファン、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、シンジオタクティックポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトンイミド樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、ナイロン樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、アクリル樹脂等を挙げることが出来る。中でも、セルロースエステル系樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンを含む)系樹脂が好ましく、本発明においては、特にセルロースエステル系樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリカーボネート系樹脂が、製造上、コスト面、透明性、接着性等の観点から好ましく用いられる。
以下に、セルロースエステル系樹脂について説明する。セルロースエステル系樹脂としては、特に制限はないが、例えば、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートプロピオネートブチレートなどが好ましく用いられる。セルローストリアセテートの場合は、特に、重合度が250から400、結合酢酸量が54%から62.5%のセルローストリアセテートが好ましく、特には、結合酢酸量が58%から62.5%であることが、優れたベース強度が得られることから好ましい。更に好ましくは、総アシル基置換度が、2.85未満のセルローストリアセテートである。
セルローエステルは、綿花リンターから合成されたセルローエステルと木材パルプから合成されたセルロースエステルの何れかを単独で、或いは混合して用いることが出来る。
セルロースエステル系樹脂の具体的な製造方法については、例えば、特開平10−45804号公報に記載されている方法を参考にすることができる。
本発明に使用するセルロースエステル系樹脂の数平均分子量は、低すぎると強度が低くなり、高すぎると溶液の粘度が高くなりすぎる場合があるので、好ましくは7万から30万が好ましく、更には8万から20万の範囲が好ましい。
本発明に使用するセルロースエステル系樹脂においては、支持体からの剥離性が良い綿花リンターから合成されたセルロースエステル系樹脂を多く使用することが、生産性効率が高く好ましい。綿花リンターから合成されたセルロースエステル系樹脂の比率が60質量%以上で剥離性の効果が顕著になるため、60質量%以上が好ましく、より好ましくは85質量%以上、更に単独で使用することが最も好ましい。
本発明に使用するセルロースエステル系樹脂において、総アシル基置換度が2.85未満のセルロースエステル系樹脂が、寸法変化を低減できるため好ましく、更に総アシル基置換度が2.75未満のセルロースエステル系樹脂であることが好ましく、特に2.70未満のセルロースエステル系樹脂が好ましい。
本発明において、機械的強度や寸法安定性等の点から、本発明の光学フィルムの製造において、可塑剤を添加することが好ましく、その添加量は、用いる可塑剤の種類により一概にはいえないが、セルロースエステル系樹脂或いはセルロースをアセチル基および炭素原子数3〜4のアシル基でアシル化したセルロースエステル系樹脂に対し、3質量%から30質量%とすることが好ましく、10質量%から30質量%がより好ましく、15質量%から25質量%が特に好ましい。
(可塑剤)
本発明で用いることの出来る可塑剤として、特に限定はないが、例えば、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤などを好ましく用いることが出来る。
リン酸エステル系としては、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系としては、例えば、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ブチルベンジルフタレート等、トリメリット酸系可塑剤としては、例えば、トリブチルトリメリテート、トリフェニルトリメリテート、トリエチルトリメリテート等、ピロメリット酸エステル系可塑剤としては、例えば、テトラブチルピロメリテート、テトラフェニルピロメリテート、テトラエチルピロメリテート等、グリコール酸エステル系としては、例えば、トリアセチン、トリブチリン、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等、クエン酸エステル系可塑剤としては、例えば、トリエチルシトレート、トリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリ−n−(2−エチルヘキシル)シトレート等を好ましく用いることが出来る。
又、ポリエステル系可塑剤としては、例えば、脂肪族二塩基酸、脂環式二塩基酸、芳香族二塩基酸等の二塩基酸とグリコールの共重合ポリマー等を用いることが出来、脂肪族二塩基酸としては、特に限定されないが、例えば、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、テレフタル酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸などを用いることが出来る。
又、グリコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコールなどを用いることが出来る。これらの二塩基酸及びグリコールは、各々単独で用いても良いし、二種以上混合して用いても良い。ポリエステルの分子量は、重量平均分子量として500から2000の範囲にあることが、セルロース樹脂との相溶性の点から好ましい。
本発明のセルロースエステルフィルムには、液晶材料の保護などのために紫外線吸収剤を用いることが好ましく、紫外線吸収剤としては、液晶の劣化防止の点より、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、更に良好な液晶表示性の点より、波長400nm以上の可視光の吸収が可及的に少ないものが好ましく用いられる。
本発明では、膜厚が20μmから200μmのセルロースエステルフィルムにおいて、波長370nmでの透過率を10%以下にすることによって、偏光板の耐久性を劣化させることなく、好ましい偏光板を提供することができる。波長370nmの透過率は、5%以下であることがより好ましく、2%以下であることが特に好ましい。
(紫外線吸収剤)
本発明で用いることが出来る紫外線吸収剤は、分子内に芳香族環を2つ以上有する紫外線吸収剤が、特に好ましく用いられる。一般に用いられるものとしては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などがあげられるが、これらに限定されない。あるいは、特開平6−148430号、特開2000−273437に記載の高分子紫外線吸収剤も好ましく用いることができる。これらの紫外線吸収剤を単独で用いても良いし、異なる2種以上の混合で用いても良い。
本発明で好ましく用いられる紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やベンゾフェノン系紫外線吸収剤等であり、特に、不要な着色がより少ないベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤をセルロースエステルフィルムに添加する態様が好ましい。
紫外線吸収剤の添加方法は、例えば、アルコール、メチレンクロライド、ジオキソランなどの有機溶媒に紫外線吸収剤を溶解してからドープに添加するか、または、直接ドープ組成中に添加してもよい。また、有機溶剤に溶解しない紫外線吸収剤は、溶液中でデゾルバーやサンドミルを使用して固体分散した後、有機溶剤とセルロースエステルを含むドープに添加する。
本発明に好ましく用いられる紫外線吸収剤の使用量は、紫外線の吸収効果、透明性の観点から、セルロースエステル系樹脂に対し、0.1質量%から5質量%であることが好ましく、より好ましくは、0.5質量%から2.5質量%、更に好ましくは0.8質量%から2.0質量%である。
(マット剤)
本発明の光学フィルムの製造方法には、必要に応じ、マット剤として酸化珪素のような微粒子などを加えてもよい。又、酸化珪素で代表される微粒子は、有機物により表面処理されていることが、製造される光学フィルムのヘイズを低下出来る点で好ましい。表面処理に好ましい有機物としては、例えば、ハロシラン類、アルコキシシラン類、シラザン、シロキサンなどが挙げられる。微粒子の平均粒径は、大きいほうがマット効果は大きく、平均粒径が小さいほうは透明性に優れるため、好ましい微粒子の一次粒子の平均粒径は5nmから50nmで、より好ましくは7nmから14nmである。
酸化珪素の微粒子としては、例えば、アエロジル(株)製のAEROSIL 200、200V、300、R972、R972V、R974、R202、R812,OX50、TT600などが挙げられ、好ましくはAEROSIL 200、200V、R972、R972V、R974、R202、R812などである。
(ドープ液調製用溶剤)
本発明に使用するドープ液を調製するのに用いられる溶剤は、単独用いても2種以上併用でもよいが、セルロースエステル系樹脂の良溶剤と貧溶剤を混合して使用することが、生産効率の点で好ましく、更に、良溶剤が多い方がセルロースエステル系樹脂の溶解性の点で好ましい。良溶剤と貧溶剤の混合比率の好ましい範囲は、良溶剤が70質量%から98質量%であり、貧溶剤が30質量%から2質量%である。
良溶剤、貧溶剤とは、使用するセルロースエステル系樹脂を単独で溶解するものを良溶剤、単独で膨潤するかあるいは溶解しないものを貧溶剤としている。そのため、セルロースエステル系樹脂の平均酢化度によっては、良溶剤、貧溶剤の対象が変化し、例えば、アセトンを溶剤として用いるときには、セルロースエステル系樹脂の結合酢酸量55%では良溶剤になり、結合酢酸量60%では貧溶剤となる。
本発明に用いられる良溶剤としては、特に限定されないが、例えば、セルローストリアセテートの場合は、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物やジオキソラン類、また、セルロースアセテートプロピオネートの場合は、メチレンクロライド、アセトン、酢酸メチルなどが挙げられる。
又、本発明に用いられる貧溶剤としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、i−プロピルアルコール、n−ブタノール、シクロヘキサン、アセトン、シクロヘキサノン等が好ましく用いられる。
(ドープ)
ドープ液を調製する時のセルロースエステル系樹脂の溶解方法としては、一般的な方法を用いることができるが、加圧下で、溶剤の常圧での沸点以上でかつ溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱し、攪拌しながら溶解する方法が、ゲルやママコと呼ばれる塊状未溶解物の発生を防止することができるため、より好ましい。また、セルロースエステル系樹脂を貧溶剤と混合し、湿潤あるいは膨潤させた後、更に良溶剤と混合して溶解する方法も好ましく用いられる。
加圧容器の種類は、特に問うところではなく、所定の圧力に耐えることができ、加圧下で加熱、攪拌ができればよい。加圧容器には、そのほかに圧力計、温度計などの計器類を適宜配設する。加圧は、窒素ガスなどの不活性気体を圧入する方法や、加熱による溶剤の蒸気圧の上昇によって行ってもよい。加熱は外部から行うことが好ましく、例えば、ジャケットタイプのものは温度コントロールが容易で好ましい。
溶剤を添加しての加熱温度は、使用溶剤の常圧での沸点以上で、かつ該溶剤が沸騰しない範囲の温度がセルロースエステルの溶解性の観点から好ましいが、加熱温度が高すぎると必要とされる圧力が大きくなり生産性が悪くなる。好ましい加熱温度の範囲は45℃から120℃であり、60℃から110℃がより好ましく、70℃から105℃の範囲が更に好ましい。又、圧力は設定温度で、溶剤が沸騰しない様に調整される。
セルロースエステル系樹脂と溶剤の他に必要な可塑剤、紫外線吸収剤等の添加剤は、予め溶剤と混合し、溶解または分散してからセルロースエステル系樹脂溶解前の溶剤に投入しても、セルロースエステル系樹脂溶解後のドープへ投入しても良い。
溶解後は、冷却しながら容器から取り出すか、又は容器からポンプ等で抜き出して熱交換器などで冷却し、これを製膜に供するが、この時の冷却温度は常温まで冷却してもよいが、沸点より5℃から10℃低い温度まで冷却し、その温度のまま流延を行うほうが、ドープ粘度を低減できるためより好ましい。
本発明において、光学フィルム中に異物が少ない方が好ましい。特に、偏光クロスニコル状態で認識される異物が少ない方が好ましい。偏光クロスニコル状態で認識される異物とは、2枚の偏光板を直行(クロスニコル)状態にし、その間にセルロースエステルフィルムを置いて反対側から光源の光を当てて、観察される輝点をいう。この様な異物は、異物の箇所のみ反対側からの光源の光が漏れて輝点として観察されるので、容易にその大きさと個数を識別することが出来る。
異物の個数としては、面積250mm2当たり、偏光クロスニコル状態で認識される大きさが5μmから50μmの異物が200個以下、50μm以上の異物が実質0個であることが好ましい。更に好ましくは、5μmから50μmの異物が100個以下、より好ましくは50個以下である。
上記、異物の少ない光学フィルムを得るには、特に手段を選ばないが、例えば、セルロースエステル系樹脂を溶媒に溶解したドープ組成物を以下のような濾過材を用いて濾過することで達成出来る。
濾過材としては、不溶物などを除去するために絶対濾過精度が小さい方が好ましいが、絶対濾過精度が小さすぎると濾過材の目詰まりが発生し易いという問題点がある。このため、絶対濾過精度0.008mm以下の濾過材が好ましく、0.001mmから0.008mmの範囲の濾材がより好ましく、0.003mmから0.006mmの範囲の濾過材が更に好ましい。
濾過材の材質は、特に制限はなく、通常の濾過材を使用することができるが、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等のプラスチック製の濾過材やステンレス等の金属製の濾過材が繊維の脱落等がなく好ましい。
ドープ液の濾過は、通常の方法で行うことができるが、加圧下で、溶剤の常圧での沸点以上で、かつ溶剤が沸騰しない温度範囲で加熱しながら濾過する方法が、濾過材前後の差圧(以下、濾圧とすることがある)の上昇が小さく、好ましい。好ましい温度範囲は45℃から120℃であり、45℃から70℃がより好ましく、45℃から55℃の範囲であることが更に好ましい。
濾圧は、小さい方が好ましく、1.6×106Pa以下であることが好ましく、1.2×106Pa以下であることがより好ましく、1.0×106Pa以下であることが更に好ましい。濾過圧力は、濾過流量と濾過面積を適宜選択することで、コントロールすることが出来る。
本発明の光学フィルムの製造方法により製造した光学フィルムは、光学素子や表示装置の部材として用いることが出来るが、この部材とは液晶表示装置に使用される部材のことで、例えば、偏光板、偏光板用保護フィルム、位相差板、反射板、視野角拡大フィルム、光学補償フィルム、防眩フィルム、無反射フィルム、帯電防止フィルムなどが挙げられる。その中でも寸法安定性に対して厳しい要求のある偏光板、偏光板用保護フィルム、位相差板、視野角拡大フィルムへ適用することがより好ましい。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
(ドープの調製)
セルロースアセテートプロピオネート 100質量部
(アセチル基置換度+プロピオニル基置換度=2.45、
数平均分子量(Mn)=60000、重量平均分子量(Mw)=180000、Mw/Mn=3.00)
トリフェニルホスフェート 8質量部
エチルフタリルエチルグリコレート 2質量部
メチレンクロライド 360質量部
エタノール 60質量部
チヌビン109(チバ・ジャパン(株)製) 0.5質量部
チヌビン171(チバ・ジャパン(株)製) 0.5質量部
アエロジル972V(日本アエロジル株式会社製) 0.2質量部
上記のドープ組成1の材料を、密閉容器に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解し、濾過した。濾過は、フィルタープレスによる濾過の後、金属焼結フィルター(捕捉粒子径=10ミクロン)を通過させた。尚、二酸化珪素微粒子(アエロジルR972V)は、エタノールに分散した後添加した。
(光学フィルムの作製)
ダイスの無端ベルト状支持体の移動方向の上流側に減圧室を配設した図1に示す製造工程の流延工程で、準備したドープを流延し光学フィルムを作製する時、図2に示す様にダイスの流出口と無端ベルト状支持体の鉛直方向の表面までの距離を10mmとし、表1に示す様に付与する溶媒のガス濃度を変えて図3に示す方法で、ダイスの流出口から無端ベルト状支持体の上にドープ膜を着地させる迄に、ダイスの流出口と無端ベルト状支持体の鉛直方向の表面までの距離を10mmに対する割合55%、平行面とドープ膜面との間隙の距離20mmのドープ膜の着地点付近に液滴の大きさは3000nmのミスト状とした溶媒を付与し、無端ベルト状支持体の上にウエット膜厚300μmで流延した後、無端ベルト状支持体から剥離し、乾燥工程で乾燥し、巻き取り、長さ3000m、膜厚40μmの光学フィルムを製造し試料No.101から106とした。
溶媒のガス濃度は、減圧室側のドープ膜の面に平行な平行面(不図示)を想定し、平行面(不図示)と、ドープ膜2a1の面との20mmの間隔のガス濃度を測定した値を示す。
平行面とドープ膜面との間隙の距離は、キーエンス(株)製レーザー変位計で測定した値を示す。
尚、供給する溶媒をミスト状態としないで、ドープ膜の無端ベルト状支持体の着地点に幅方向に溶媒を厚さ10μmになる様に供給した他は全て同じ条件で、光学フィルムを製造し比較試料No、107とした。
乾燥後の膜厚は、セイコーイーエム(株)製 極高感度フィルム厚み測定器で測定した値を示す。
流延ダイスのドープ流出口から無端ベルト状支持体の鉛直方向の表面までの距離は、ダイス設置時にシックネスゲージで測定した値を使用した。
溶媒の濃度は、イノーバ社製マルチガス分析装置でドープ膜の幅手方向に300mm間隔で5箇所の溶媒のガス濃度を測定した値の平均値を使用した。
液滴の大きさは、日本カノマックス(株)製MODEL1000XPで測定した値を示す。
溶媒のガス濃度の変化は溶媒付与装置から供給する溶媒量を調整することで行った。
付与する溶媒はメチレンクロライドを使用した。
流延条件
無端ベルト状支持体
材質:ステンレススチール(SUS316)製
幅:1800mm
回転速度(移動速度):100m/min
流延幅:1600mm
表面温度:15℃
減圧室
減圧室の大きさ:幅1700mm×長さ200mm×高さ200mm
減圧室の平均圧力:−500Pa
減圧室の平均圧力は、山本電機製作所(株)製マノスターゲージで、減圧室内の幅手5箇所を測定した平均値とした。
評価
作製した各試料No.101から107に付き、膜厚変動、リタデーションムラ、点状故障を以下に示す方法で測定し、以下に示す評価ランクに従って評価した結果を表1に示す。
膜厚変動の測定方法
作製した試料の巻き初め、巻き終わりから0.2mを切り出し、TD(Transverse Direction)方向に1mm間隔で200箇所、MD(Machine Direction)方向に300mm間隔で5箇所を測定し、以下に示す式で計算により求めた。
膜厚変動=(最大膜厚−最小膜厚)/平均膜厚
リタデーションムラの測定方法
作製した試料をクロスニコル状態にした偏光板と偏光板との間に挟み、透過光下で光りが通る状態までクロスニコルをずらして透過光の濃淡を目視で観察した。
尚、偏光板は、以下のようにして作製した偏光板を使用した。
(偏光膜を作製)
上記実施例で作製したセルロースエステルフィルムを用いて液晶表示装置を作製するために、まず、偏光膜を作製した。すなわち、厚さ、120μmのポリビニルアルコールフィルムを、温度110℃、延伸倍率5倍で一軸延伸した。これをヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g、水100gからなる水溶液に60秒間浸漬し、ついでヨウ化カリウム6g、ホウ酸7.5g、水100gからなる68℃の水溶液に浸漬した。これを水洗、乾燥し偏光膜を得た。
(偏光板の作製)
ついで、下記の工程1から工程5に従って、上記の偏光膜に、コニカミノルタ製KC4UY 40μmのセルローストリアセテートフィルム(偏光板保護フィルム:T−1)と、各実施例で作製した膜厚40μmのセルロースアセテートプロピオネートフィルム(位相差フィルム:T−2)とを貼り合わせて偏光板を作製した。
工程1:60℃の2モル/Lの水酸化ナトリウム溶液に90秒間浸漬し、ついで水洗し乾燥して、偏光膜と貼合する側を鹸化した偏光板保護フィルムと、位相差フィルムを得た。
工程2:偏光膜を固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1秒から2秒浸漬した。
工程3:工程2で偏光膜に付着した過剰の接着剤を軽く拭き除き、この偏光膜の両側に、工程1で処理した偏光板保護フィルム及び位相差フィルムを積層して配置した。
工程4:工程3で積層した位相差フィルムと、偏光膜と、裏面側偏光板保護フィルムを、圧力20N/cm2から30N/cm2、搬送スピードは約2m/分で貼合した。
工程5:工程4で作製した偏光膜と位相差フィルム及び偏光板保護フィルムとを貼合わせた試料を、80℃の乾燥機中に5分間乾燥し、偏光板を作製した。
偏光板評価でムラが確認できないサンプルは、以下の様に作製したパネル評価で確認した。
VAモード型液晶表示装置であるSONY製40型ディスプレイKLV−40J3000の予め貼合されていた視認側の偏光板を剥がして、偏光板の吸収軸が一致する様に上記作製した偏光板を液晶セルのガラス面に貼合しVAモード型液晶表示装置を作製した。その際、位相差フィルムT−2が液晶セル側になる様に貼合した。
ムラの評価ランク
◎:パネルによる評価でもムラは認められない
○:透過光の濃淡が認められない
△:僅かながら透過光の濃淡が認められる
×:透過光の濃淡が認められる
点状故障の測定方法
幅手に複数のCCDカメラを配置した故障計により搬送中のフィルム表面を観察し500μm以上のスポット故障をカウントした。
原料の樹脂を溶媒に溶解したドープを無端ベルト状支持体の上に、上流側に溶媒付与手段を有する減圧室を有するダイスの流出口から流出したドープ膜を流延する溶液流延製造装置により薄膜の光学フィルムを製造するとき、ドープ膜の前記流出口から前記無端金属支持体の上に着地する迄に、少なくとも前記ドープ膜の着地点付近に溶媒の蒸気を付与し作成した試料No.101から106は膜厚変動、リタデーションムラ、点状故障の何れも優れた性能を示すことを確認した。
供給する溶媒をミストにしないで、直接にドープ膜の無端ベルト状支持体の着地で幅手方向に供給して製造した試料No.107は、膜厚変動、リタデーションムラの何れも劣ることを確認した。本発明の有効性を確認することが出来た。
実施例2
実施例1で製造した試料No.104を製造する時、溶媒のガス濃度の幅手方向のバラツキを表2に示す様に変えた他は全て試料No.104と同じ方法で光学フィルムを製造し試料No.201から205とした。
溶媒のガス濃度の幅手方向のバラツキは、溶媒付与装置のノズルの間隙を変えることで行った。又、溶媒のガス濃度の幅手方向のバラツキは、以下に示す方法で求めた値を示す。
幅手方向のバラツキ(%)=((最大ガス濃度−最小ガス濃度)/平均ガス濃度)×100
幅手方向のガス濃度は実施例1と同じ方法で測定した。平均ガス濃度は、ドープ膜の幅手方向に300mm間隔で5箇所を測定した値の平均値を使用した。
評価
作製した各試料No.201から205に付き、膜厚変動、リタデーションムラを実施例1と同じ方法で測定し、実施例1と同じ評価ランクに従って評価した結果を表2に示す。
ドープ膜の幅手方向の溶媒のガス濃度のバラツキが5%から20%の範囲であれば、膜厚変動、リタデーションムラの何れも優れた結果を示した。本発明の有効性が確認された。
実施例3
実施例1で製造した試料No.104を製造する時、供給するミスト状態で供給する溶媒のミストの粒径を表3に示す様に変えた他は全て試料No.104と同じ方法で光学フィルムを製造し試料No.301から305とした。
評価
作製した各試料No.301から305に付き、膜厚変動、リタデーションムラ、点状故障を実施例1と同じ方法で測定し、実施例1と同じ評価ランクに従って評価した結果を表3に示す。
供給するミストの粒径を10nmから10000nmの範囲であれば、膜厚変動、リタデーションムラ、点状故障の何れも優れた結果を示した。本発明の有効性が確認された。
実施例4
実施例1で製造した試料No.104を製造する時、無端ベルト状支持体の表面温度を表4に示す様に変えた他は全て試料No.104と同じ方法で光学フィルムを製造し試料No.401から407とした。
評価
作製した各試料No.401から407に付き、膜厚変動、リタデーションムラを実施例1と同じ方法で測定し、実施例1と同じ評価ランクに従って評価した結果を表4に示す。
ドープ膜が着地する時の無端ベルト状支持体の表面温度が−10℃から18℃の範囲であれば、膜厚変動、リタデーションムラの何れも優れた結果を示した。本発明の有効性が確認された。
実施例5
実施例1で製造した試料No.104を製造する時、付与する溶媒の種類を表5に示す様に変えた他は全て試料No.104と同じ方法で光学フィルムを製造し試料No.501、502とした。
評価
作製した各試料No.501、502に付き、膜厚変動、リタデーションムラを実施例1と同じ方法で測定し、実施例1と同じ評価ランクに従って評価した結果を表5に示す。
供給する溶媒をドープに使用されている溶媒と同種の溶媒であれば、膜厚変動、リタデーションムラの何れも優れた結果を示した。本発明の有効性が確認された。
実施例6
実施例1で製造した試料No.104を製造する時、図2に示される様に減圧室側のドープ膜面に平行な平行面を想定し、平行面と、ドープ膜面との距離、及び流延ダイスの流出口とドープ膜の無端ベルト状支持体の鉛直方向の表面までの距離に対して距離を表6に示す様に変え、各距離で溶媒のガス濃度が同じになる様にして流延ダイスの流出口から流出したドープ膜が無端金属支持体の表面に着地する迄に、ドープ膜の着地点付近にミスト状の溶媒を付与した他は全て試料No.104と同じ方法で光学フィルムを製造し試料No.601から613とした。
流延ダイスの流出口とドープ膜の無端ベルト状支持体の鉛直方向の表面までの距離Lを5mmとした。
平行面とドープ膜面との間隙の距離は、キーエンス(株)製レーザー変位計で測定した値を示す。
A*:ドープ膜の面からドープ膜2a1の面に平行な平行面(不図示)を想定し、平行面(不図示)と、ドープ膜2a1の面との距離、
B*:流延ダイスの流出口とドープ膜の無端ベルト状支持体の鉛直方向の表面までの距離5mmに対する割合(%)で、表面からの距離を示す。
評価
作製した各試料No.601から613に付き、膜厚変動、リタデーションムラ、点状故障を実施例1と同じ方法で測定し、実施例1と同じ評価ランクに従って評価した結果を表7に示す。
図2に示される様に減圧室側のドープ膜面に平行な平行面を想定し、平行面と、ドープ膜面との間隙の距離が0.1mmから20mm以下、及び流延ダイスの流出口とドープ膜の無端ベルト状支持体の鉛直方向の表面までの距離に対して50%から70の距離で流延ダイスの流出口から流出したドープ膜が無端金属支持体の表面に着地する迄に、ドープ膜の着地点付近に溶媒の蒸気を図1から図5に示す溶媒付与手段で溶媒の蒸気を付与すれば、膜厚変動、リタデーションムラ、点状故障の何れも優れた結果を示した。本発明の有効性が確認された。