JPH11170281A - 製膜方法および製膜装置 - Google Patents

製膜方法および製膜装置

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JPH11170281A
JPH11170281A JP36185097A JP36185097A JPH11170281A JP H11170281 A JPH11170281 A JP H11170281A JP 36185097 A JP36185097 A JP 36185097A JP 36185097 A JP36185097 A JP 36185097A JP H11170281 A JPH11170281 A JP H11170281A
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JP
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solvent
organic polymer
film
polymer solution
support
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Application number
JP36185097A
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English (en)
Inventor
Toshihiro Chikugi
稔博 筑木
Toshiya Yashiro
敏也 家城
Akimitsu Tsukuda
佃  明光
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Toray Industries Inc
Original Assignee
Toray Industries Inc
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 溶液製膜における製膜速度の高速化をはか
り、かつ表面特性や平面性に優れたフィルムあるいはシ
ート状成形体を得る製膜方法及び製膜装置を提供する。 【解決手段】 有機高分子体溶液を支持体上にキャスト
してフィルムあるいはシート状成形体を得る方法におい
て、該支持体とキャストされる有機高分子体溶液膜との
間に該有機高分子体に対して相溶性を有する溶媒を介在
させてキャストすることを特徴とする製膜方法、および
製膜装置。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、好ましくポリカー
ボネートや芳香族ポリアミド、芳香族ポリイミドなどの
溶液製膜に用いられる製膜方法および製膜装置の改良に
関する。
【0002】
【従来の技術】例えばTダイから押し出された溶融膜あ
るいは溶液膜を支持体に密着させる手段として、エアー
ナイフを用いる方法が、特開昭61−121923号公
報、特開昭59−68681号公報等で、また、静電場
を利用する方法が、特公昭50−8743号公報、特開
昭59−138416号公報等で知られている。また、
スリット状の吸引ノズルを溶融膜あるいは溶液膜と支持
体との間に配する方法が特開平2−52721号公報等
で知られている。
【0003】しかしながら、エアーナイフを用いる方法
は厚ものあるいは極めて粘度の高いものを製膜するのに
は適しているが、密着度合を上げるためには高い動圧が
必要で、このとき風圧の乱れにより製膜が安定しない。
かかる傾向は、低粘度である溶液膜ほどその影響を大き
く受ける。また、静電場を利用する方法は、溶液製膜に
おいては有機溶媒が用いられることが多いため、引火の
おそれがあることから好ましくなく、また、被キャスト
体が帯電性でなければ原理的に適用が困難である。ま
た、スリット状の吸引ノズルを用いる方法にしても、上
記エアーナイフ法と同様高い動圧あるいは静圧を得るた
めには大きな空気の流れを必要とし、吸引を強くすれば
する程圧力の変動の影響を受けて製膜が安定しない。
【0004】これらの手段における上記問題は、特に外
力の影響を受けやすい薄ものの製膜において顕著であ
り、高速化すると溶融膜あるいは溶液膜とキャスト支持
体との間に空気が噛み込み、製膜できなくなるという問
題を有していた。
【0005】一方、溶融膜の製膜方法として、ドラム上
に液膜を形成しキャストする方法が、特開昭64−53
820号公報、特開平1−320130号公報、特開平
2−219610号公報などで知られている。しかしな
がら、液膜は溶融したポリエステルやポリアミドに対し
て本来異物であって、また、高温の溶融膜が不均一に急
速に冷却されたり、液膜形成物質が気化したりしてフィ
ルムの表面に液膜に起因する変形や荒れが生じるため、
後述するような特に薄膜化が望まれており、かつ精密に
制御された表面を必要とする用途には適用できない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】エアナイフや吸引ノズ
ル、静電場などを利用する方法は、押し出された溶融あ
るいは溶液膜を支持体に密着せしめてキャストの安定化
を図るものであるが、安定化には限界があり、一方で更
に生産性の向上を目指してキャストを高速化するニーズ
がある。
【0007】また、一方で磁気テープのような記録メデ
ィアでは小型化が進み、記録時間の長時間化の要請によ
り薄膜化が要望されてきていると共に、電磁変換特性を
高めるため基材には高度に制御された表面特性あるいは
平面性が求められている。かかる用途には従来ポリエチ
レンテレフタレートが用いられてきたが、より高い剛性
を有する芳香族ポリアミドあるいは芳香族ポリイミドな
どの素材が検討されている。しかしながら、高い剛性を
有する芳香族ポリアミドや芳香族ポリイミドは溶液製膜
でしか得られず、上述した手段では薄膜でかつ高速度で
製膜することは困難であった。
【0008】また、光学部材用途でニーズが高いポリカ
ーボネートやポリメタクリル酸樹脂においても同様の問
題を抱えている。
【0009】本発明の課題は、かかる問題点を解決する
ために、有機高分子体溶液からのフィルムあるいはシー
ト状成形体の製造において、従来のキャスト安定化手段
では達し得なかったより高速な製膜が可能であり、ま
た、薄ものであっても安定した製膜が可能であって、か
つ、得られるフィルムあるいはシート状成形体の表面特
性や平面性も良好である製膜方法及び該フィルムあるい
はシート状成形体を製造する装置を提供することにあ
る。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、本発明の製膜方法は、有機高分子体溶液を支持体上
にキャストしてフィルムあるいはシート状成形体を得る
方法において、該支持体とキャストされる有機高分子体
溶液膜との間に該有機高分子体に対して相溶性を有する
溶媒を介在させてキャストすることを特徴とする方法か
らなる。
【0011】また、本発明に係る製膜装置は、有機高分
子体溶液を押し出す手段と、押し出された有機高分子体
溶液を支持する支持体と、該溶液中の溶媒を除去して成
形する手段とを具備したフィルムあるいはシート状成形
体を得る製膜装置において、押し出された有機高分子体
溶液と支持体間に該有機高分子体に対して相溶性を有す
る溶媒を介在せしめる手段を有することを特徴とするも
のからなる。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明に用いられる有機高分子体
としては、1種以上の適当な有機あるいは無機の溶媒に
溶解し、その溶液を製膜に供することができるものであ
れば特に制限はない。このような有機高分子体の例とし
ては、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリビニルア
ルコール系樹脂、ポリアクリロニトリル、芳香族ポリア
ミドなどのポリアミド樹脂、芳香族ポリイミド、ポリエ
ステルアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリル酸樹
脂、ポリメタクリル酸樹脂、ポリエステル樹脂、セルロ
ース系高分子、シリコーン樹脂、フッ素樹脂などが挙げ
られる。
【0013】本発明は実質的に溶液製膜しか取り得な
い、融点がおおよそ300℃以上または分解点が融点よ
りも低い有機高分子体において好ましく採用される。こ
こで言う分解点とは、空気流中の熱重量分析において5
%減量となる温度を言う。特に本発明の製膜方法は、薄
膜化が可能であり、また、表面特性などについても悪影
響を与えないため、かかる要求が強い樹脂の製膜に適
し、薄膜化にあたり適度な柔軟性があり、かつヤング率
などの機械特性が必要とされる芳香族ポリアミドあるい
は芳香族ポリイミドの製膜において特に好ましく採用さ
れる。
【0014】本発明で言う芳香族ポリアミドとは、次の
化1の一般式(I)及び/または化2の一般式(II)で
表される繰り返し単位を50モル%以上、好ましくは7
0モル%以上有するものから構成される。
【0015】
【化1】
【0016】
【化2】
【0017】ここで、Ar1 、Ar2 、Ar3 としては
それぞれ、例えば化3に示すようなものが挙げられる。
【0018】
【化3】
【0019】化3において、X、Yは、−O−,−CH
2 −,−CO−,−SO2 −,−S−,−C(CH3
2 −,−C(CF3 2 −等から選択することができる
が、これらに限定されるわけではない。
【0020】更にこれらの芳香環上の水素原子がハロゲ
ン基、ニトロ基、C1〜C3のアルキル基、C1〜C3
のアルコキシ基、トリアルキルシリル基、アリール基、
オキシアリール基、チオアリール基等の置換基で置換さ
れた芳香環が全体の30%以上、好ましくは50%以
上、更に好ましくは70%以上であると、耐湿性が向上
し、吸湿による寸法変化、剛性低下などの特性が改善さ
れるために好ましく、また、アミド基上の水素が他の置
換基で置換されていても構わない。
【0021】特性面からは上記の芳香環がパラ配向性を
もって結合されたものが、全芳香環の50%以上、好ま
しくは70%以上、更に好ましくは75%以上を占める
ことが好ましい。ここで言うパラ配向性とは主鎖を構成
するアミド結合に結合した芳香核上の二価の結合鎖が互
いに平行あるいは同軸である状態を言う。かかる芳香族
ポリアミドはフィルムあるいはシート状成形体としたと
きに薄膜化に好ましい強度、伸度、剛性、耐熱性等の機
能を具備する。このようなパラ配向性芳香核の例として
は次の化4に示すようなものがある。
【0022】
【化4】
【0023】かかる芳香族ポリアミドを得る方法には、
例えば低温溶液重合法、界面重合法、イソシアネートと
カルボン酸を反応させる方法、脱水触媒を用い直接縮重
合させる方法などがあるが、低温溶液重合法が高重合度
のポリマーが得やすいため適している。すなわち、酸ク
ロリドとジアミンから、N−メチルピロリドン(NM
P)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホ
ルムアミド(DMF)などの非プロトン性有機極性溶媒
中で重合する。ポリマー溶液は、単量体として酸クロリ
ドとジアミンを使用すると塩化水素が副生するが、これ
を中和する場合には水酸化カルシウム、炭酸カルシウ
ム、炭酸リチウムなどの無機の中和剤、またエチレンオ
キサイド、プロピレンオキサイド、アンモニア、トリエ
チルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミ
ンなどの有機の中和剤が使用される。
【0024】これらのポリマー溶液はそのまま製膜原液
として使用してもよく、あるいはポリマーを一度単離し
てから上記の有機溶媒や、硫酸等の無機溶剤に再溶解し
て製膜原液を調製してもよい。
【0025】また、ポリマーの固有粘度(ポリマー0.
5gを硫酸中で100mlの溶液として30℃で測定し
た値)は、0.5以上であることが好ましい。
【0026】ポリマー溶液には溶解助剤として無機塩、
例えば塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化リチウ
ム、硝酸リチウムなどを添加する場合もある。ポリマー
溶液中のポリマー濃度は2〜40重量%程度が好まし
い。
【0027】また、本発明で言う芳香族ポリイミドと
は、重合体の繰り返し単位の中に芳香環とイミド環を1
つ以上含むものであり、下記化5の一般式(III)お
よび/または化6の一般式(IV)で示される構造単位
で表される。
【0028】
【化5】
【0029】
【化6】
【0030】ここでAr4 、Ar6 は少なくとも1個の
芳香環を含み、イミド環を形成する2つのカルボニル基
は芳香環上の隣接する炭素原子に結合している。このA
4は、芳香族テトラカルボン酸あるいはこの無水物に
由来する。代表例としては次の化7に示すようなものが
挙げられる。
【0031】
【化7】
【0032】ここでZは、−O−,−CH2 −,−CO
−,−SO2 −,−S−,−C(CH3 2 −等から選
ばれるが、これに限定されるものではない。
【0033】また、Ar6 は無水カルボン酸あるいはこ
のハライドに由来する。Ar5 、Ar7 としては例えば
化8に示すようなものが挙げられる。
【0034】
【化8】
【0035】化8において、X’、Y’は、−O−,−
CH2 −,−CO−,−SO2 −,−S−,−C(CH
3 2 −等から選ばれるが、これらに限定されるもので
はない。更にこれらの芳香環上の水素原子の一部が、ハ
ロゲン基(特に塩素)、ニトロ基、C1 〜C3 のアルキ
ル基(特にメチル基)、C1 〜C3 のアルコキシ基など
の置換基で置換されているものも含み、また、重合体を
構成するアミド結合中の水素が他の置換基によって置換
されているものも含む。
【0036】かかる芳香族ポリイミドあるいはポリアミ
ド酸の溶液は次のようにして得られる。即ち、ポリアミ
ド酸はN−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセ
トアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DM
F)などの非プロトン性有機極性溶媒中で、テトラカル
ボン酸二水物と芳香族ジアミンを反応させて調製するこ
とができる。また芳香族ポリイミドは前記のポリアミド
酸を含有する溶液を加熱したり、ピリジンなどのイミド
化剤を添加してポリイミドの粉末を得、これを再度溶媒
に溶解して調製できる。製膜原液中のポリマー濃度は5
〜40重量%程度が好ましい。
【0037】次に有機高分子体溶液のもう一つの成分で
ある溶媒としては、上記の有機高分子体が溶解するもの
であれば特に制限はなく、また、混合溶媒であっても溶
解助剤などの無機塩が含有されていても構わないが、製
膜溶液として調製後に常温下に密閉しておいたとき、1
週間以上外観上の濁りなどの変化あるいは有機高分子体
の析出の見られないものが好ましい。
【0038】また、溶液とする手段には特に制限はな
く、公知の溶解手段の他、上述のように該溶媒中で重合
を実施して直接に有機高分子体溶液を得る方法も含まれ
る。
【0039】また、安定に溶液状態を維持できるのであ
れば該有機高分子体溶液には可溶性の有機物あるいは無
機塩が溶解されていてもよく、また、溶液溶媒には可溶
であるが有機高分子体は単独では溶解しない溶媒が少量
混合されていても構わない。また、必要であれば物性を
損なわない程度に滑剤、酸化防止剤その他の添加剤等が
ブレンドされていてもよく、また、有機あるいは無機の
粒子などの不溶性成分が分散されていてもよい。
【0040】次にこれら有機高分子体溶液はエンドレス
ベルトやドラムなどのキャスト支持体にキャストされ
る。フィルムあるいはシート状にキャストする手段につ
いては従来公知の手段を採用することができ、T−ダ
イ、L−ダイなどを用いる方法が実用的である。
【0041】本発明は有機高分子体溶液を支持体上にキ
ャストするにあたり、該支持体とキャストされる有機高
分子体溶液膜との間に該有機高分子体に対して相溶性を
有する溶媒(以下、「介在溶媒」と称することもあ
る。)を介在させることを特徴とする。
【0042】介在溶媒は該有機高分子体に対し相溶性を
有している。ここで言う相溶性は該有機高分子体に対し
て常温において1重量%以上、好ましくは10重量%以
上の溶液を形成しうる溶媒として定義される。
【0043】介在溶媒は、専ら有機高分子体を溶解させ
る目的に使用される該溶液に主に用いられた溶媒(この
溶媒を以下「溶液溶媒」と称することもある。)に対し
ても相溶性を有していることが好ましい。溶液溶媒は、
一種以上の混合溶媒であってもよく、その場合には各構
成成分は単独成分として有機高分子体に対し相溶性を有
している。ここで言う相溶性は該有機高分子体に対して
常温において1重量%以上、好ましくは10重量%以上
の溶液を形成しうる溶媒として定義される。介在溶媒
は、溶液溶媒に対し、10重量%混合しても完全に混じ
り合う、つまり、混合液としたとき液−液界面を形成し
ない状態で安定化する溶媒であることが好ましい。この
ような、介在溶媒としては、硫酸、メタンスルホン酸、
クロル硫酸、アンモニアなどの無機溶媒や濃厚な塩化カ
ルシウム、塩化リチウム、塩化ナトリウム、臭化カリウ
ムなどのアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属のハロ
ゲン化物塩や無機塩の水溶液、ジメチルホルムアミド、
ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ヘキサ
メチルホスホンアミドなどのアミド系溶媒やジメチルス
ルホキシドなどの非プロトン性極性溶剤、メチルアルコ
ール、エチルアルコール、プロピルアルコール、エチレ
ングリコール、グリセリン、モノメチルアミン、ジエチ
ルアミンなどのプロトン性極性溶媒、塩化メチレン、ク
ロロホルム、テトラクロロエチレン、1,1,1-トリクロロ
エタン、各種フロン系溶剤などの有機ハロゲン化物、ジ
エチルエーテル、テトラヒドロフラン、プロピレンオキ
シドなどのエーテル系溶剤、アセトン、メチルエチルケ
トン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤他ベ
ンゼン、トルエン、ヘキサンヘプタンなどの有機溶媒が
挙げられ、これらは混合溶媒であってもよく、また、こ
れら溶媒にアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属のハ
ロゲン化物塩やその他金属塩を溶解せしめたものが使用
されることがあってもよい。
【0044】また、キャストされた有機高分子体溶液は
溶媒の除去により成形体となるため、後処理等を考慮す
ると介在溶媒は溶液溶媒と実質的に同一種からなること
が好ましく、このとき、エントロピー変化を最小にでき
るので、混合時の発熱などで生じる変質や溶媒の蒸発な
どの不具合を解消できるという点でも好ましく採用され
る。
【0045】本発明はかかる介在溶媒を採用し、有機高
分子体溶液のキャスト時に支持体との間に介在させるこ
とに特徴がある。これにより従来の溶液製膜法では得ら
れなかったキャスト速度の高速化がはかられ、また、得
られたフィルムの品位、例えば表面特性や平面性が極め
て良好なものとなる。この本発明の優れた効果は、有機
高分子体との親和性が良好であるために有効かつ強力に
介在溶媒の膜が支持体とキャストされた有機高分子体溶
液膜との間に形成され、該介在溶媒の膜によって空気が
噛み込むのを防止し、キャスト速度の劇的な向上が図れ
たものと考えられる。また、介在溶媒は有機高分子体と
相溶性を有しているので、支持体界面でのポリマー析出
やゲル化が防止されると共に、介在溶媒はその後有機高
分子体溶液膜に吸収されるために最終製品の表面特性や
平面性なども良好になるものと考えられる。
【0046】次に、本発明に係る製膜装置の実施の形態
について、より詳しく説明するために図を用いて説明す
る。もちろんこれに本発明が制限されるものではない。
【0047】本発明の製膜装置は、有機高分子体溶液を
押し出す手段と、押し出された有機高分子体溶液を支持
する支持体と、該溶液中の溶媒を除去して成形する手段
とを具備したフィルムあるいはシート状成形体を得る製
膜装置において、押し出された有機高分子体溶液と支持
体間に該有機高分子体に対して相溶性を有する溶媒を介
在せしめる手段を有することを要旨とする。
【0048】すなわち、図1に示す製膜装置の例におい
ては、有機高分子体溶液を押し出す押し出し手段として
Tダイ1が、押し出された有機高分子体溶液を支持する
支持体として、Tダイ1に近接してキャストドラム7が
設けられている。そして、Tダイ1から押し出された有
機高分子体溶液膜5とキャストドラム7間に該有機高分
子体及び該有機高分子体溶液に主に用いられる溶媒に対
して相溶性を有する溶媒を介在せしめる手段、すなわち
溶媒付与装置Bが、Tダイ1の上流側に設けられてい
る。溶媒付与装置Bは、その位置調節が可能となるよう
に圧接機構3により可動化されている。
【0049】この例においては、更に有機高分子体溶液
膜5を支持体7に密着させる手段として密着装置Aを有
する。密着装置Aは、Tダイ1の下流側に設けられたエ
アナイフノズル6を有し、エアナイフノズル6には公知
の手段により空気が送り込まれている。吹き出し圧力は
圧力計2及びエアナイフノズル6のスリット幅等で制御
される。
【0050】溶媒付与装置Bは、図1に示すように、キ
ャスト支持体に接触して該支持体上に介在溶媒を付与せ
しめるものでも、図3、4に示すように非接触で付与せ
しめるものであってもよいが、該支持体との摩擦がな
く、キズをつける懸念が少ないことから、非接触で付与
せしめる方式を採用することが好ましい。
【0051】接触式溶媒付与装置は、図1に示すよう
に、例えば送液ポンプ9や、タンクに空気を送り込んで
介在溶媒を押し出す等の介在溶媒の供給手段と、該介在
溶媒を供給する介在溶媒供給管4と、該介在溶媒供給管
4を通じて供給された介在溶媒を保持し、支持体に介在
溶媒を付与する機能を有するスポンジや布、吸収材など
の材料からなるロール状、板状あるいは棒状の介在溶媒
塗布体8と、必要に応じ上記介在溶媒塗布体8をキャス
ト支持体に圧接する介在溶媒塗布体支持圧接機構3とか
ら構成される。
【0052】これを、図2を参照して更に詳しく説明す
る。ロール状の介在溶媒塗布体8中には介在溶媒供給管
4に連結して、介在溶媒を供給する介在溶媒放出管10
が貫通されている。介在溶媒放出管10の外周には多数
の細孔を有しており、介在溶媒塗布体8の介在溶液の保
持量が常に一定量となるように送液ポンプ9(図示せ
ず)側で調整されている。また、必要に応じ介在溶媒放
出管10等を支持する形でキャストドラム7への圧力を
一定に維持しながら圧接させる介在溶媒塗布体支持圧接
機構3が連結されている。
【0053】図3は、有機高分子溶液膜5を支持する支
持体としてキャストベルト12を、介在溶媒付与装置B
として非接触式介在溶媒付与装置を用いた例を示す。
【0054】すなわち、Tダイ1から押し出された有機
高分子体溶液5はキャストベルト駆動用ドラム7’にて
駆動されるキャストベルト12上に押し出される。非接
触式溶媒付与装置は、図3のBで示され、介在溶媒を直
接介在溶媒供給管4を通じて、噴霧ノズルや加熱装置、
振動膜などからなる気化器または霧化器13に供給し、
気化あるいは霧化を実施し、キャストベルト12上に介
在溶媒を塗布する。介在溶媒を気化せしめたときにはキ
ャストベルト12の温度を小さくして、該ベルト上に凝
結させることもできる。
【0055】全体的な付与量あるいは長手方向の付与量
の均一性の調整は、介在溶媒の供給手段、すなわち送液
ポンプ9(図示せず)側で調整され、また、幅方向の付
与量の調整は気化器あるいは霧化器13において幅方向
に対する配設間隔や各器毎の介在溶媒の背圧や供給量を
制御すること等で達成することができる。また、該非接
触式溶媒付与装置には、図中に示すように支持体に付着
しなかった過剰な気化あるいは霧化された介在溶媒が系
外に漏れ出ないように気化器あるいは霧化器13を覆う
ようにチャンバー14を設け、吸気ブロワなどの吸引手
段に接続された吸気管15を配設して排気する手段を設
けることができる。また、凝結あるいは付着した介在溶
媒がキャスト支持体上に滴下しないようチャンバー1
4、導入管4、吸気管15などを加熱したり、チャンバ
ー14の辺縁部などに樋などの回収機構を設けることが
できる。
【0056】また、この例においては、更に有機高分子
体溶液膜5をキャストベルト12に密着させる手段とし
て密着装置Aを有している。密着装置Aは、Tダイ1の
上流側に設けられた吸引ノズル11を有し、該吸引ノズ
ル6は吸引ブロワなど公知の手段により空気の吸引が行
われる。幅方向の分布含め、吸引圧力は圧力計2及び吸
引ノズル11の開口部の構成等で制御される。
【0057】図4は、有機高分子溶液膜5を支持する支
持体としてキャストドラム7を、介在溶媒付与装置Bと
して図3とは別の態様の非接触式介在溶媒付与装置を用
いた例を示している。
【0058】この例では、直接に気化あるいは霧化して
介在溶媒を付与するのではなく、別に設けられた気化室
あるいは霧化室18中に噴霧ノズルや加熱装置あるいは
振動膜などを利用した気化器あるいは霧化器13を設け
て該室内にて介在溶媒の気化あるいは霧化を行う。そし
て、必要に応じ送気管16から気化室あるいは霧化室内
に搬送気体を送り込み、導入管17からチャンバー14
内に設けられた放出器19に導入し、キャストドラム7
上へ導いて付着させている。
【0059】この例においても、気化した介在溶媒を用
いるときにはキャスト支持体温度を低くし、キャスト支
持体上で凝結させることを行ってもよい。また、支持体
に付着しなかった過剰な気化あるいは霧化された介在溶
媒が系外に漏れ出ないように放出器19を覆うようにチ
ャンバー14を設け、吸気ブロワなどの吸引手段に接続
された吸気管15を配設して排気する手段を設けること
ができる。また、凝結あるいは付着した介在溶媒がキャ
スト支持体上に滴下しないよう気化あるいは霧化室1
8、チャンバー14、導入管4、吸気管15などを加熱
したり、チャンバー14の辺縁部などに樋などの回収機
構を設けることができる。
【0060】また図5、6は本発明の別の態様を示して
いる。すなわち、図5、6に示す製膜装置は、有機高分
子体溶液を押し出す押し出し手段としてTダイ1が、押
し出された有機高分子体溶液を支持する支持体として、
Tダイ1に近接してキャストドラム7が設けられてい
る。そして、これらの例においては押し出された有機高
分子体薄膜側に介在溶媒膜が形成された後、キャストド
ラム7上に流延されるものである。
【0061】図5はTダイ1の断面を示しているが、該
Tダイ1にはTダイ1から押し出された有機高分子体溶
液膜5とキャストドラム7間に該有機高分子体及び該有
機高分子体溶液に主に用いられる溶媒に対して相溶性を
有する溶媒を介在せしめる手段として、Tダイ下部に介
在溶媒供給管4に接続した毛細管や多孔質体などを利用
した介在溶媒供給細管20が設けられており、有機高分
子体溶液膜5を押し出した直後に介在溶媒が該溶液に付
与される。介在溶媒の付与量は溶媒供給管4のもう一端
に接続された送液ポンプ9(図示せず)側で調整され、
また、幅方向の付与量の調整は介在溶媒供給細管20の
構成を適宜調整すること等で達成することができる。
【0062】図6もTダイ1の断面を示しているが、こ
の場合は有機高分子体及び該有機高分子体溶液に主に用
いられる溶媒に対して相溶性を有する溶媒を介在せしめ
る手段として、Tダイ1中に介在溶媒供給管4、介在溶
媒供給細管20’を導入し、介在溶媒を有機高分子体溶
液に積層してTダイから共に吐出を行う。介在溶媒の付
与量は溶媒供給管4のもう一端に接続された送液ポンプ
9(図示せず)側で調整され、また、幅方向の付与量の
調整はTダイ中における供給管の幅や構成を適宜調整す
ること等で達成することができる。
【0063】もちろん高分子溶液の密着性を上げるため
に図5や図6に示した系においても図1や図2で説明し
た密着装置を併用できる。
【0064】図1〜4に示したように、本発明において
は、高分子体溶液膜に力を及ぼして支持体に密着させる
手段を併用することは極めて好ましい。かかる手段とし
ては、前述した吸引ノズルやエアナイフ等のキャストさ
れた有機高分子体溶液膜に対して上流側にて空気を吸引
する手段や下流側にて空気等の作動流体を吹き当てる手
段、静電気力や磁力などの間接力を及ぼす手段などの公
知の手段が採用し得、好ましくは取り付け位置の微調整
機構を有している。もちろん前記溶媒付与装置とは任意
に組み合わせてよい。驚くべきことに本発明と組み合わ
せて用いることによって、これら手段における、従来安
定化に必要とされていた吹き出し圧力や吸引圧力などは
激減する。その結果、従来これらの安定化手法が達し得
なかった速度においても低負荷での運転が可能となり、
本発明ではこの作用と相まって更に一段と高速化が可能
になる。また、空気流れを利用した密着手段の場合、必
要圧力の低下で圧力変動も抑制され、薄ものの製膜にお
いても有利に作用する。もちろん、図5や図6で示した
態様は、キャスト支持体を予め加温する必要やその他の
処理を行うときなどに好ましく採用されることは言うま
でもない。
【0065】また、介在溶媒は、それが付与される有効
面における付与量のばらつきを30%以下、好ましくは
20%以下、更に好ましくは10%以下とすることが望
ましい。30%を越えると、特に溶媒の除去に加熱蒸発
を採用する製膜手段においては乾燥斑を発生して、得ら
れたフィルムあるいはシート状成形体の物性が不均一な
ものとなる懸念や平面性が悪化する懸念がある。ここで
言う有効面とは、実際にキャストされる面として定義さ
れ、付与量のばらつきは、長手方向あるいは幅方向に単
位面積当たりの付与量を10点測定し、その平均値に対
する最大の乖離割合として定義する。上記ばらつき以下
の均一な付与は、図1の介在溶媒塗布体支持圧接装置3
において幅方向に接圧を調整できる機構を用いたり、図
3の供給管やの気化器あるいは霧化器13や図4の放出
器19において適切に分配器を用いたり、供給孔や発生
器などの供給要素の配置を適正化したり、チャンバー1
4内に仕切り板を設けることなどで達成することができ
る。
【0066】また、T−ダイなどを用いて有機高分子体
をスリットから押し出す場合、押し出し口とキャスト支
持体間との距離は10mm以下、好ましくは5mm以
下、更に好ましくは3mm以下とすることが望ましい。
10mmを越えると、たとえ介在溶媒を用いたとしても
高速化のメリットは少なく、また、押し出された有機高
分子体溶液膜の着地線が振れやすく、厚み斑の原因とな
る恐れがある。また、ネックインの発生で両端の厚みが
増え、単位面積当たり溶媒除去量が大きくなって、支持
体からの剥離がうまくいかなかったり、得られたフィル
ムあるいはシート状成形体の物性が不均一なものとなっ
て好ましくない。
【0067】また、キャストにあたっては、有機高分子
体溶液を、常温における該溶液の粘度の60%以下、好
ましくは50%以下、更に好ましくは40%以下の粘度
となる温度に維持してキャストすると、更に高速度での
キャストが可能になるので好ましい。この理由は定かで
はないが、溶液膜の粘弾性が低下して、動いている支持
体からの影響が軽減し、あるいは有機高分子体溶液構成
要素の熱運動性が増加して介在溶媒との親和性が増すた
めに有利に作用するものと思われる。
【0068】本発明で得られるフィルムあるいはシート
状成形体の厚みに特に制限はないが、前述のように従来
の技術は特に薄ものの成形において技術的に制限が大き
かったので、本発明は、フィルムあるいはシート状成形
体の最終厚みとして、10μm以下、好ましくは7μm
以下、更に好ましくは5μm以下、特に好ましくは4μ
m以下のものを得るに当たって極めて好ましく採用され
る。
【0069】特に本発明は更に、フィルムあるいはシー
ト状成形体の表面特性や平面性にも優れるため、ますま
す高容量化が要求され、また表面特性や平面性の要求も
厳しい磁気記録媒体用ベース材や、小型軽量化の進むフ
レキシブルプリント基板やTABキャリアテープ、太陽
電池基板などの電気機器用絶縁性配線部材、コンデンサ
ーあるいは感熱記録用転写材のベース材などに好ましく
採用される。
【0070】特に本発明から得られるフィルムあるいは
シート状成形体は表面性に優れるので、光触針式3次元
表面粗さ計で測定されるカットオフ値0.08mmにお
ける測定面積0.002mm2 での3次元表面粗さSR
a1と測定面積1.0mm2での3次元表面粗さSRa
2が好ましくは下式のような関係を充たす。 0.8≦SRa2/SRa1≦4.5
【0071】SRa2/SRa1は好ましくは3.5以
下、更に好ましくは3.0以下である。SRa2/SR
a1が4.5を越えると基材表面には凹凸上のうねりが
著しく、製品としての使用に制限が多い。
【0072】また、SRa2/SRa1は好ましくは
0.9以上、更に好ましくは1.2以上である。SRa
2/SRa1が0.8未満であると加工上の問題を発生
する懸念があり、最終製品の摩擦耐久性に悪影響が出る
可能性がある。
【0073】更に本発明により得られるフィルムあるい
はシート状成形体は、20℃、相対湿度60%における
少なくとも一方向の引張りヤング率が、7.84GPa
であることが好ましい。より好ましくは8.82GPa
以上、更に好ましくは9.8GPa以上である。一般に
ヤング率は分子構造と製膜時の延伸性により支配され、
高い引張りヤング率を得るために前述のパラ配向性芳香
族ポリアミドが好ましく採用される。通常上限は35G
Pa程度であり、これ以上の値のフィルムはもろかった
りあるいは裂けやすいものとなって、工業的価値は低
い。上記のような高ヤング率のものは、使用あるいは加
工時のテンションに耐えることができるので特に薄膜の
成形体に有利である。
【0074】また、本発明はもちろん単層のフィルムあ
るいはシート状成形体の成形でも用いられるが、積層成
形体の成形にも好ましく用いられる。積層時の各層を構
成する成分は同じ種類であっても異なるものであっても
よい。また、各層を構成する少なくとも一層に本発明の
目的を損なわない粒子などの副資材を含有していてもよ
く、これら副資材の種類、含有量、粒径などは同じであ
っても異なるものであってもよい。
【0075】上記手段を経てキャストされた有機高分子
溶液体膜はいわゆる溶液製膜法によりフィルムあるいは
シート状成形体に加工される。溶液製膜法には乾湿式
法、乾式法、湿式法などがあり、いずれの方法で製膜さ
れても差し支えないが、ここでは乾湿式法を例にとって
説明する。
【0076】乾湿式法で製膜する場合は、例えば特開昭
54−105197号公報などに開示される従来公知の
方法を用いることができる。すなわち、キャスト支持体
上にキャストした有機高分子体溶液の薄膜層から溶媒を
蒸発させ該薄膜が自己保持性をもつまで乾燥する。乾燥
条件は室温〜220℃、60分以内の範囲であり、好ま
しくは室温〜200℃の範囲である。乾式工程を終えた
フィルムは支持体から剥離されて上記の湿式法と同様の
浴中で抽出媒によって脱塩、脱溶媒などが行なわれる湿
式工程に導入され、加えて延伸、乾燥、熱処理が行なわ
れる。
【0077】以上のように形成されるフィルムあるいは
シート状成形体は、その製膜工程中で、好ましくはテン
ター中にてクリップで把持しながら展長したりあるいは
ロールの周速差を利用するなど従来公知の方法で延伸が
行なわれるが、延伸倍率は面積倍率で0.8〜8.0
(面積倍率とは延伸後のフィルム面積を延伸前のフィル
ムの面積で除した値で定義する。1以下はリラックスを
意味する。)の範囲内にあることが好ましく、より好ま
しくは1.1〜5.0である。また、延伸あるいは熱処
理後のフィルムを徐冷することが有効であり、50℃/
秒以下の速度で冷却することが有効である。
【0078】なお、本発明で得られるフィルムあるいは
シート状成形体は、積層されていてもよいが、例えば2
層の場合には、有機高分子体溶液を二分し、各々に必要
な副資材を添加した後積層する。さらに3層以上の場合
も同様である。これら積層の方法としては、周知の方
法、たとえば、口金内での積層、複合管での積層や、一
旦1層を形成しておいてその上に他の層を形成する方法
などが採用できる。
【0079】
【実施例】以下、具体的に実施例に基づき本発明を説明
するが、本発明はかかる記載に限定されるものではな
い。なお、各実施例、比較例の評価に用いた測定方法は
以下のとおりである。
【0080】A.ヤング率、伸度 オリエンテック社製テンシロンを用い、試幅10mm、
試長50mm、引張速度300mm/分で実施した。な
お、測定に当たり試料は20℃、相対湿度60%雰囲気
下に24時間以上置き、また該条件において測定を行っ
た。
【0081】B.表面性 真空蒸着機にてフィルム表面をアルミ蒸着し、蒸着面を
微分干渉顕微鏡を用いて観察し、実用上の問題となる欠
点の有無を調べた。
【0082】C.厚み斑 電子線マイクロ厚み計を使用し、フィルムの長手方向に
連続的に10mの長さを測定し、その最大値と最小値の
差を平均厚みで除した値に100を乗じて求めた(単
位:%)。なお、厚み斑は10%未満を良好とし、5%
以下を優れているとした。
【0083】D.平面性評価指標 25℃、相対湿度60%の環境下で50cm×50cm
のフィルムを厚手のフェルト地あるいは不織布(本実施
例では東レ(株)製“エクセーヌ”を用いた。)を貼着
した平板上にフィルムをのせ、ブラシにて拡げていく。
15分間静置後、該エクセーヌ上に接触せずに膨らんで
いる部分をマーキングし、その面積を求める。そして、
該非接触部分の面積をフィルムの総面積で除した値に1
00を乗じて求め(単位:%)、10%未満を平面性良
好とし、5%以下を優れているとした。
【0084】平均一次粒径16nmのシリカ粒子をポリ
マーあたり0.3重量%分散したN−メチルピロリドン
(NMP)に、芳香族ジアミン成分として80モル%に
相当する2−クロルパラフェニレンジアミンと、20モ
ル%に相当する4,4’−ジアミノジフェニルエ−テル
とを溶解させ、これに100モル%に相当する2−クロ
ルテレフタル酸クロリドを添加し、2時間撹拌して重合
を完了した。次いで発生した塩化水素を水酸化リチウム
を用い4分の1ずつ添加して中和を行い、ポリマー濃度
10重量%の芳香族ポリアミド溶液を得た。なお、この
芳香族ポリアミド溶液の60℃における粘度を常温にお
ける粘度とで除した値は約0.37である。
【0085】実施例1 有機高分子体の押し出し手段としてギヤポンプにつなが
ったスリット長400mmでステンレスベルトから2m
m上方に配されたTダイ、キャスト支持体として鏡面状
に磨かれたステンレスベルトとベルト駆動のためのキャ
ストロールとからなる支持体、密着手段としてTダイ上
流側にスリットクリアランス1.5mmの吸引ノズルを
配し、ついで介在溶媒を付与する手段として吸引ノズル
上流側に介在溶媒の供給機構とキャストベルトへの押圧
機構を具備したスポンジ製ロールを配し、上記調製した
芳香族ポリアミド溶液を60℃に保たれたホッパーから
同温度に保持しつつギヤポンプ、2μmカットのフィル
ターを通じて、60℃に保温されたTダイから65℃の
ステンレスベルト上に流延した。このとき、スポンジロ
ールからキャストベルト上にNMPを4μm±0.3μ
m(本実施例に示す誤差範囲は先述の有効面における単
位面積あたりの付与量測定法に基づく。)となるよう付
与した。また、吸引ノズル内の圧力は−50mmAqで
あった。
【0086】最終フィルム厚みが一定となるよう吐出量
とキャストベルトの速度を調整しつつ徐々に速度を上げ
ていったところ、42m/分のキャスト速度でも有機高
分子体溶液膜と支持体間に空気を噛み込むこともなく、
キャストは極めて安定して実施することができた。
【0087】次にキャストベルトに保持したまま乾燥機
中で190℃の熱風で1.5分間加熱して溶媒を蒸発さ
せ、自己保持性を得たフィルムをベルトから連続的に剥
離した。次に加温した水槽内へフィルムを導入して残存
溶媒と中和で生じた無機塩の水抽出を行ない、テンター
で水分の乾燥と熱処理を行なって厚さ3.6μmの芳香
族ポリアミドフィルムを得た。水槽内ではロール周速度
を変えてフィルムを長手方向に1.25倍延伸し、テン
ター内では、温度280℃、時間1.5分間の条件でク
リップで把持しつつ乾燥と延伸を行ない、幅方向に1.
3倍延伸した。次いで、定長下に290℃、30秒間熱
処理を行なった後、20℃/秒の速度で徐冷した。
【0088】この基材フィルムのSRa2/SRa1は
1.45、ヤング率は長手方向、幅方向それぞれ13G
Pa、13GPa、伸度は42%であった。
【0089】また、表面性においては全く問題が無く、
厚み斑は4%、平面性評価指標は4%であり、実用上極
めて優れたものであった。
【0090】実施例2 吸引ノズル内圧力を0mmAqとした他は実施例1と同
様の方法でキャストベルト上にキャストを行った。最終
フィルム厚みが一定となるよう吐出量とキャストベルト
の速度を調整しつつ徐々に速度を上げていったところ、
27m/分のキャスト速度でも有機高分子体溶液膜と支
持体間に空気を噛み込むこともなくキャストは極めて安
定して実施することができた。
【0091】次に、実施例1と同様の条件となるよう条
件調整して厚さ3.6μmの芳香族ポリアミドフィルム
を得た。この基材フィルムのSRa2/SRa1は1.
4、ヤング率は長手方向、幅方向それぞれ13GPa、
13GPa、伸度は40%であった。
【0092】また、このフィルムの表面性においては全
く問題が無く、厚み斑は7%、平面性評価指標は6%で
あった。
【0093】実施例3 芳香族ポリアミド溶液ならびダイまでの該溶液の供給
系、キャストベルトの温度を常温とした以外は実施例1
と同様にキャストの検討を行ったところ、40m/分で
空気の噛み込みが認められた。また、実施例1同様に厚
み3.6μmのフィルムを得たが、機械特性、表面特
性、厚み斑、平面性共に実施例1のフィルムに比べ遜色
のないものであった。
【0094】実施例4 実施例1において介在溶媒の供給手段として、溶媒(N
MP)供給タンク、供給ポンプに連結したノズル式噴霧
器とブロワ及びフィルターを経た搬送用空気導入口と霧
化体の排出口を装備する霧化室を経て吸引ノズル上流側
に設けられたチャンバー内に接続された(凝結体のキャ
ストベルト上への落下防止のため辺縁部に樋の設けられ
た霧化体の排出口はキャストベルトから2mm上に設け
られている。)間接式供給手段を代わりに用いた他は実
施例1と同様にキャストを実施した。この時、キャスト
ベルト上へのNMPの付与量は4μm±0.1μmであ
った。
【0095】次いで最終フィルム厚みが一定となるよう
吐出量とキャストベルトの速度を調整しつつ徐々に速度
を上げていったところ、45m/分のキャスト速度でも
有機高分子体溶液膜と支持体間に空気を噛み込むことも
なくキャストは極めて安定して実施することができた。
【0096】以下実施例1と同様の条件となるよう条件
調整して厚さ3.6μmの芳香族ポリアミドフィルムを
得た。この基材フィルムのSRa2/SRa1は1.
2、ヤング率は長手方向、幅方向それぞれ13GPa、
13GPa、伸度は40%であった。また、このフィル
ムの表面性、厚み斑、平面性共に実施例1のフィルムに
比べ遜色のないものであった。
【0097】比較例1 介在溶媒の供給機構を撤去し、キャストベルト上への介
在溶媒の付与を行わなかった他は実施例1と全く同じ装
置系を用いた。最終フィルム厚みが一定となるよう吐出
量とキャストベルトの速度を調整しつつ徐々に速度を上
げていったところ、吸引ノズル内圧力が−50mmAq
のときにおいては、13m/分のベルト速度で空気の噛
み込みを生じ製膜できなくなった。次に吸引ノズル内の
圧力を高めながら最終フィルム厚みが一定となるよう吐
出量とキャストベルトの速度を調整して速度を上げてい
ったが、−120mmAqにおいても空気の噛み込みは
20m/分のベルト速度から生じ、これ以上吸引ノズル
内圧力を下げると吐出される有機高分子体溶液膜の振れ
が大きくなり、無視できない厚み斑の発生が認められる
ようになった。
【0098】上記の13m/分のベルト速度でキャスト
したものについて、以下実施例1と同様の条件となるよ
う条件調整して厚さ3.6μmの芳香族ポリアミドフィ
ルムを得た。この基材フィルムのSRa2/SRa1は
1.8、ヤング率は長手方向、幅方向それぞれ13GP
a、13GPa、伸度は41%であった。また、このフ
ィルムの表面性は実用上問題がないものの、厚み斑は1
3%、平面性評価指標は12%であり、実用上満足のゆ
くものではなかった。
【0099】比較例2 比較例1において、更に吸引ノズル内圧力を0にしてキ
ャストを実施したが、7m/分のベルト速度で空気の噛
み込みを生じた。
【0100】
【発明の効果】本発明によれば、上記の構成とすること
により、これまで困難であった溶液製膜における高速製
膜と言う課題において、特に薄膜であっても高速での製
膜が可能となり、また、特に本発明では更に、得られる
フィルムあるいはシート状成形体の表面特性や平面性に
も優れるものとできる。
【0101】このようにして得られたフィルムあるいは
シート状成形体は、光学部材、光記録媒体、磁気記録媒
体、電気機器用絶縁性配線部材、コンデンサー、被覆
材、製版材料などの印刷部材、写真フィルムなど各種用
途に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施態様に係る製膜装置の概略構成
図である。
【図2】図1の装置における接触式溶媒付与装置のキャ
スト支持体接触部分の拡大斜視図である。
【図3】本発明の別の実施態様に係る製膜装置の概略構
成図である。
【図4】本発明のさらに別の実施態様に係る製膜装置の
概略構成図である。
【図5】本発明のさらに別の実施態様に係る製膜装置の
Tダイ部分の断面図である。
【図6】本発明のさらに別の実施態様に係る製膜装置の
Tダイ部分の断面図である。
【符号の説明】
A:密着装置 B:溶媒付与装置 1:Tダイ 2:圧力計 3:介在溶媒塗布体支持圧接機構 4:介在溶媒供給管 5:有機高分子体溶液膜 6:エアナイフノズル 7:キャストドラム 7’:キャストベルト駆動用ドラム 8:介在溶媒塗布体 9:送液ポンプ 10:介在溶媒放出管 11:吸引ノズル 12:キャストベルト 13:気化器または霧化器 14:チャンバー 15:吸気管 16:送気管 17:導入管 18:気化室または霧化室 19:放出器 20,20' :介在溶媒供給細管

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 有機高分子体溶液を支持体上にキャスト
    してフィルムあるいはシート状成形体を得る方法におい
    て、該支持体とキャストされる有機高分子体溶液膜との
    間に該有機高分子体に対して相溶性を有する溶媒を介在
    させてキャストすることを特徴とする製膜方法。
  2. 【請求項2】 支持体とキャストされた有機高分子体溶
    液膜との間に介在させる溶媒が該有機高分子体溶液に主
    に用いられた溶媒と同一種であることを特徴とする、請
    求項1に記載の製膜方法。
  3. 【請求項3】 有機高分子体溶液を支持体に密着させる
    手段を用いてキャストすることを特徴とする、請求項1
    または2に記載の製膜方法。
  4. 【請求項4】 有機高分子体溶液を、常温における該溶
    液の粘度の60%以下となる温度に維持してキャストす
    ることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記
    載の製膜方法。
  5. 【請求項5】 介在させる溶媒の、有効面における付与
    量のばらつきを平均値の30%以下とすることを特徴と
    する、請求項1ないし4のいずれかに記載の製膜方法。
  6. 【請求項6】 有機高分子体溶液の押し出し口と支持体
    間距離を10mm以下とすることを特徴とする、請求項
    1ないし5のいずれかに記載の製膜方法。
  7. 【請求項7】 有機高分子体が芳香族ポリアミド及び/
    または芳香族ポリイミドであることを特徴とする、請求
    項1ないし6のいずれかに記載の製膜方法。
  8. 【請求項8】 フィルムあるいはシート状成形体の最終
    厚みが10μm以下となるように有機高分子体溶液をキ
    ャストすることを特徴とする、請求項1ないし7のいず
    れかに記載の製膜方法。
  9. 【請求項9】 有機高分子体溶液を押し出す手段と、押
    し出された有機高分子体溶液を支持する支持体と、該溶
    液中の溶媒を除去して成形する手段とを具備したフィル
    ムあるいはシート状成形体を得る製膜装置において、押
    し出された有機高分子体溶液と支持体間に該有機高分子
    体に対して相溶性を有する溶媒を介在せしめる手段を有
    することを特徴とする製膜装置。
  10. 【請求項10】 有機高分子体溶液と支持体間に溶媒を
    介在せしめる手段が、該支持体上に該溶媒を付与する手
    段であることを特徴とする、請求項9に記載の製膜装
    置。
  11. 【請求項11】 支持体上に溶媒を付与する手段が、間
    接的に溶媒を付与する手段であることを特徴とする、請
    求項10に記載の製膜装置。
  12. 【請求項12】 有機高分子体溶液と支持体間に溶媒を
    介在せしめる手段が、有機高分子体溶液の押し出し時あ
    るいはその直後に該有機高分子体溶液膜上に該溶媒を付
    与する手段であることを特徴とする、請求項9に記載の
    製膜装置。
  13. 【請求項13】 有機高分子体溶液を支持体に密着させ
    る手段を有することを特徴とする、請求項9ないし12
    のいずれかに記載の製膜装置。
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