以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下、XYZ座標系を用いて図中の方向を説明する。このXYZ座標系においては、水平面に平行な平面をXY平面とする。このXY平面に平行な一方向をX方向と表記し、X方向に直交する方向をY方向と表記する。また、XY平面に垂直な方向はZ方向と表記する。X方向、Y方向及びZ方向のそれぞれは、図中の矢印の方向が+方向であり、矢印の方向とは反対の方向が−方向であるものとして説明する。
図1は、製造システムSYSの一例を示す図である。図1に示す製造システムSYSは、多孔性樹脂膜FCを含む薄膜(膜)Fを製造するものである。製造システムSYSは、イミド系樹脂及び微粒子を含む材料液を帯状の基材Sに供給して材料層FAを形成する供給ユニット10と、この供給ユニット10で形成された材料層FAを乾燥させて乾燥膜FBを形成する乾燥ユニット20と、乾燥膜FBから微粒子を除去して多孔性樹脂膜FCを形成する除去ユニット30と、上記各ユニットを統括的に制御する制御装置(不図示)とを備えている。
製造システムSYSは、例えば同一階層上に構成されている。各ユニットは、例えばY方向に一列に配置されているが、これに限定するものではなく、複数列で配置されてもよい。なお、各ユニットが複数階層に亘って配置されてもよい。この場合、各階における各ユニットの配置等については適宜設定することができる。
製造システムSYSでは、帯状の基材Sが用いられる。製造システムSYSは、除去ユニット30の+Y側に、巻き取り部40を有する。巻き取り部40は、帯状の基材Sと多孔性樹脂膜FCとを含む薄膜Fをロール状に巻き取る。製造システムSYSでは、供給ユニット10から乾燥ユニット20及び除去ユニット30を経て巻取り部40に至る区間では、いわゆるロール・ツー・ロール方式による処理が行われる。したがって、この区間では、基材S、材料層FA、乾燥膜FB及び多孔性樹脂膜FCの各膜が一続きの状態で搬送される。
[基材]
ここで、各ユニットを説明する前に、基材Sについて説明する。基材Sは、シート状に形成され、少なくとも表裏にわたって複数の貫通穴を有している。基材Sの空孔率は、
上限値として95%が好ましく、90%がより好ましく、下限値として10%が好ましく、50%がより好ましく、60%が更に好ましい。基材Sの空孔率は、水銀圧入法により測定して得られる値である。
基材Sの細孔容積(mL/g)は、上限値として0.95が好ましく、0.9がより好ましく、下限値として0.1が好ましく、0.5がより好ましく、0.6が更に好ましい。 基材Sの細孔容積は、水銀圧入法により測定して得られる値である。
基材Sの厚さは、1〜50μmが好ましく、5〜40μmがより好ましく、10〜30μmが更に好ましい。
基材Sは、材料液の含浸性の点で親水性を有することが好ましいが、元の材質自体が親水性を有するものでなくても、親水処理を施すことにより好適に用いることができる。基材Sとしては、例えば、セルロース、セルロースエステル誘導体、セルロースエーテル誘導体、キサントゲン酸塩誘導体等のセルロース系樹脂のほか、繊維系材料からなる基体等が挙げられる。セルロース系樹脂の耐熱温度は、下限値として230℃が好ましく、250℃がより好ましく、260℃が更に好ましい。上限値は特にないが、例えば、320℃以下である。
繊維系材料からなる基体としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(PI)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリアクリロニトリル、ポリアミド等の樹脂を主成分とする不織布(繊維径は、例えば、約50nm〜約3000nmである。);ガラス繊維その他のシリカ繊維等が挙げられ、耐熱性の点で、PI、PPS等の不織布が好ましい。
[材料液]
また、各ユニットを説明する前に、多孔性樹脂膜FCの原料となる材料液について説明する。材料液は、所定の樹脂材料と、微粒子と、溶剤とを含む。所定の樹脂材料としては、例えばポリアミド酸、ポリイミド、ポリアミドイミド、又はポリアミドが挙げられる。溶剤としては、これらの樹脂材料を溶解可能な有機溶剤が用いられる。
この材料液は、例えば微粒子を予め分散した溶剤とポリアミド酸、ポリイミド、ポリアミドイミド又はポリアミドを任意の比率で混合することで調製される。また、微粒子を予め分散した溶剤中でポリアミド酸、ポリイミド、ポリアミドイミド又はポリアミドを重合して調製されてもよい。例えば、微粒子を予め分散した有機溶剤中でテトラカルボン酸二無水物及びジアミンを重合してポリアミド酸とするか、更にイミド化してポリイミドとすることで製造できる。
以下、各樹脂材料について具体的に説明する。
<ポリアミド酸>
本実施形態で用いるポリアミド酸は、任意のテトラカルボン酸二無水物とジアミンを重合して得られるものが、特に限定されることなく使用できる。テトラカルボン酸二無水物及びジアミンの使用量は特に限定されないが、テトラカルボン酸二無水物1モルに対して、ジアミンを0.50〜1.50モル用いるのが好ましく、0.60〜1.30モル用いるのがより好ましく、0.70〜1.20モル用いるのが特に好ましい。
テトラカルボン酸二無水物は、従来からポリアミド酸の合成原料として使用されているテトラカルボン酸二無水物から適宜選択することができる。テトラカルボン酸二無水物は、芳香族テトラカルボン酸二無水物であっても、脂肪族テトラカルボン酸二無水物であってもよいが、得られるポリイミド樹脂の耐熱性の点から、芳香族テトラカルボン酸二無水物を使用することが好ましい。テトラカルボン酸二無水物は、2種以上を組合せて用いてもよい。
芳香族テトラカルボン酸二無水物の好適な具体例としては、ピロメリット酸二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2,6,6−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−へキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4−(p−フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物、4,4−(m−フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、9,9−ビス無水フタル酸フルオレン、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、エチレンテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、シクロへキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロへキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらの中では、価格、入手容易性等から、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物及びピロメリット酸二無水物が好ましい。また、これらのテトラカルボン酸二無水物は単独あるいは二種以上混合して用いることもできる。
ジアミンは、従来からポリアミド酸の合成原料として使用されているジアミンから適宜選択することができる。ジアミンは、芳香族ジアミンであっても、脂肪族ジアミンであってもよいが、得られるポリイミド樹脂の耐熱性の点から、芳香族ジアミンが好ましい。これらのジアミンは、2種以上を組合せて用いてもよい。
芳香族ジアミンとしては、フェニル基が1個あるいは2〜10個程度が結合したジアミノ化合物を挙げることができる。具体的には、フェニレンジアミン及びその誘導体、ジアミノビフェニル化合物及びその誘導体、ジアミノジフェニル化合物及びその誘導体、ジアミノトリフェニル化合物及びその誘導体、ジアミノナフタレン及びその誘導体、アミノフェニルアミノインダン及びその誘導体、ジアミノテトラフェニル化合物及びその誘導体、ジアミノヘキサフェニル化合物及びその誘導体、カルド型フルオレンジアミン誘導体である。
フェニレンジアミンはm−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン等であり、フェニレンジアミン誘導体としては、メチル基、エチル基等のアルキル基が結合したジアミン、例えば、2,4−ジアミノトルエン、2,4−トリフェニレンジアミン等である。
ジアミノビフェニル化合物は、2つのアミノフェニル基がフェニル基同士で結合したものである。例えば、4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル等である。
ジアミノジフェニル化合物は、2つのアミノフェニル基が他の基を介してフェニル基同士で結合したものである。結合はエーテル結合、スルホニル結合、チオエーテル結合、アルキレン又はその誘導体基による結合、イミノ結合、アゾ結合、ホスフィンオキシド結合、アミド結合、ウレイレン結合等である。アルキレン結合は炭素数が1〜6程度のものであり、その誘導体基はアルキレン基の水素原子の1以上がハロゲン原子等で置換されたものである。
ジアミノジフェニル化合物の例としては、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルケトン、3,4’−ジアミノジフェニルケトン、2,2−ビス(p−アミノフェニル)プロパン、2,2’−ビス(p−アミノフェニル)へキサフルオロプロパン、4−メチル−2,4−ビス(p−アミノフェニル)−1−ペンテン、4−メチル−2,4−ビス(p−アミノフェニル)−2−ぺンテン、イミノジアニリン、4−メチル−2,4−ビス(p−アミノフェニル)ペンタン、ビス(p−アミノフェニル)ホスフィンオキシド、4,4’−ジアミノアゾベンゼン、4,4’−ジアミノジフェニル尿素、4,4’−ジアミノジフェニルアミド、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。
これらの中では、価格、入手容易性等から、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、及び4,4’−ジアミノジフェニルエーテルが好ましい。
ジアミノトリフェニル化合物は、2つのアミノフェニル基と1つのフェニレン基が何れも他の基を介して結合したものであり、他の基は、ジアミノジフェニル化合物と同様のものが選ばれる。ジアミノトリフェニル化合物の例としては、1,3−ビス(m−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(p−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(p−アミノフェノキシ)ベンゼン等を挙げることができる。
ジアミノナフタレンの例としては、1,5−ジアミノナフタレン及び2,6−ジアミノナフタレンを挙げることができる。
アミノフェニルアミノインダンの例としては、5又は6−アミノ−1−(p−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダンを挙げることができる。
ジアミノテトラフェニル化合物の例としては、4,4’−ビス(p−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2’−ビス[p−(p’−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’−ビス[p−(p’−アミノフェノキシ)ビフェニル]プロパン、2,2’−ビス[p−(m−アミノフェノキシ)フェニル]ベンゾフェノン等を挙げることができる。
カルド型フルオレンジアミン誘導体は、9,9−ビスアニリンフルオレン等が挙げられる。
脂肪族ジアミンは、例えば、炭素数が2〜15程度のものがよく、具体的には、ペンタメチレンジアミン、へキサメチレンジアミン、へプタメチレンジアミン等が挙げられる。
なお、これらのジアミンの水素原子がハロゲン原子、メチル基、メトキシ基、シアノ基、フェニル基等の群より選択される少なくとも1種の置換基により置換された化合物であってもよい。
本実施形態で用いられるポリアミド酸を製造する手段に特に制限はなく、例えば、有機溶剤中で酸、ジアミン成分を反応させる方法等の公知の手法を用いることができる。
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応は、通常、有機溶剤中で行われる。テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応に使用される有機溶剤は、テトラカルボン酸二無水物及びジアミンを溶解させることができ、テトラカルボン酸二無水物及びジアミンと反応しないものであれば特に限定されない。有機溶剤は単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応に用いる有機溶剤の例としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルカプロラクタム、N,N,N’,N’−テトラメチルウレア等の含窒素極性溶剤;β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン等のラクトン系極性溶剤;ジメチルスルホキシド;アセトニトリル;乳酸エチル、乳酸ブチル等の脂肪酸エステル類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチルセルソルブアセテート、エチルセルソルブアセテート等のエーテル類;クレゾール類等のフェノール系溶剤が挙げられる。これらの有機溶剤は単独あるいは2種以上を混合して用いることができる。有機溶剤の使用量に特に制限はないが、生成するポリアミド酸の含有量が5〜50質量%とするのが望ましい。
これらの有機溶剤の中では、生成するポリアミド酸の溶解性から、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルカプロラクタム、N,N,N’,N’−テトラメチルウレア等の含窒素極性溶剤が好ましい。
重合温度は一般的には−10〜120℃、好ましくは5〜30℃である。重合時間は使用する原料組成により異なるが、通常は3〜24Hr(時間)である。また、このような条件下で得られるポリアミド酸の有機溶剤溶液の固有粘度は、好ましくは1000〜10万cP(センチポアズ)、より一層好ましくは5000〜7万cPの範囲である。
<ポリイミド>
本実施形態に用いるポリイミドは、材料液に使用する有機溶剤に溶解可能な可溶性ポリイミドなら、その構造や分子量に限定されることなく、公知のものが使用できる。ポリイミドについて、側鎖にカルボキシ基等の縮合可能な官能基又は焼成時に架橋反応等を促進させる官能基を有していてもよい。
有機溶剤に可溶なポリイミドとするために、主鎖に柔軟な屈曲構造を導入するためのモノマーの使用、例えば、エチレジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン等の脂肪族ジアミン;2−メチルー1,4−フェニレンジアミン、o−トリジン、m−トリジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、4,4’−ジアミノベンズアニリド等の芳香族ジアミン;ポリオキシエチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシブチレンジアミン等のポリオキシアルキレンジアミン;ポリシロキサンジアミン;2,3,3’,4’−オキシジフタル酸無水物、3,4,3’,4’−オキシジフタル酸無水物、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエート−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物等の使用が有効である。また、有機溶剤への溶解性を向上する官能基を有するモノマーの使用、例えば、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、2−トリフルオロメチル−1,4−フェニレンジアミン等のフッ素化ジアミンを使用することも有効である。更に、上記ポリイミドの溶解性を向上するためのモノマーに加えて、溶解性を阻害しない範囲で、上記ポリアミド酸の欄に記したものと同じモノマーを併用することもできる。
本発明で用いられる、有機溶剤に溶解可能なポリイミドを製造する手段に特に制限はなく、例えば、ポリアミド酸を化学イミド化又は加熱イミド化させ、有機溶剤に溶解させる方法等の公知の手法を用いることができる。そのようなポリイミドとしては、脂肪族ポリイミド(全脂肪族ポリイミド)、芳香族ポリイミド等を挙げることができ、芳香族ポリイミドが好ましい。芳香族ポリイミドとしては、式(1)で示す繰り返し単位を有するポリアミド酸を熱又は化学的に閉環反応によって取得したもの、若しくは式(2)で示す繰り返し単位を有するポリイミドを溶媒に溶解したものでよい。式中Arはアリール基を示す。
<ポリアミドイミド>
本実施形態に用いるポリアミドイミドは、材料液に使用する有機溶剤に溶解可能な可溶性ポリアミドイミドなら、その構造や分子量に限定されることなく、公知のものが使用できる。ポリアミドイミドについて、側鎖にカルボキシ基等の縮合可能な官能基又は焼成時に架橋反応等を促進させる官能基を有していてもよい。
本実施形態で用いるポリアミドイミドは、任意の無水トリメリット酸とジイソシアネートとを反応させて得られるものや、任意の無水トリメリット酸の反応性誘導体とジアミンとの反応により得られる前駆体ポリマーをイミド化して得られるものを特に限定されることなく使用できる。
上記任意の無水トリメッと酸又はその反応性誘導体としては、例えば、無水トリメリット酸、無水トリメリット酸クロライド等の無水トリメリット酸ハロゲン化物、無水トリメリット酸エステル等が挙げられる。
ジイソシアネートとしては、例えば、メタフェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−オキシビス(フェニルイソシアネート)、4,4’−ジイソシアネートジフェニルメタン、ビス[4−(4−イソシアネートフェノキシ) フェニル] スルホン、2,2′−ビス[4−(4−イソシアネートフェノキシ)フェニル] プロパン等が挙げられる。
ジアミンとしては、前記ポリアミド酸の説明において例示したものと同様のものが挙げられる。
<ポリアミド>
ポリアミドとしては、ジカルボン酸とジアミンとから得られるポリアミドが好ましく、特に芳香族ポリアミドが好ましい。
ジカルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、メチルマレイン酸、ジメチルマレイン酸、フェニルマレイン酸、クロロマレイン酸、ジクロロマレイン酸、フルオロマレイン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、及びジフェン酸等が挙げられる。
ジアミンとしては、前記ポリアミド酸の説明において例示したものと同様のものが挙げられる。
<微粒子>
本発明における材料液は、更に、微粒子を含有する。
本発明で用いられる微粒子の材質は、後にポリイミド−微粒子複合膜から除去可能なものであれば、特に限定されることなく公知のものが採用可能である。本発明における材料液が溶剤を含有するものである場合、使用する溶剤に不溶であってよい。
微粒子の材質としては、特に限定されず、例えば、無機材料としては、シリカ(二酸化珪素)、酸化チタン、アルミナ(Al2O3)等の金属酸化物等が挙げられ、有機材料としては、高分子量オレフィン(ポリプロピレン,ポリエチレン等)、ポリスチレン、エポキシ樹脂、セルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリエステル、ポリエーテル等の有機高分子微粒子等が挙げられる。なかでも、シリカが好ましく、具体的には、コロイダルシリカ、特に、単分散球状シリカ粒子を選択することが、未焼成複合膜においてはじきを生じにくく、得られる多孔質膜において均一な孔を形成しやすい点で、好ましい。
また、本発明で用いられる微粒子は、真球率が高く、粒径分布指数の小さいものが好ましい。これらの条件を備えた微粒子は、材料液中での分散性に優れ、互いに凝集しない状態で使用することができる。
使用する微粒子の平均粒径は、例えば、100〜2000nmであることが好ましく、100〜1000nmがより好ましい。これらの条件を満たすことで、微粒子を取り除いて得られる多孔質膜の孔径を揃えることができるため、セパレータに印加される電界を均一化できる点で、好ましい。
微粒子は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。
本発明における材料液において、微粒子の含有量は、ポリイミド系樹脂と微粒子との合計に対して65体積%以上であることが好ましい。上記範囲内であると、得られる多孔質膜の空孔率が下がりにくく、また、得られる未焼成複合膜のベーク時の収縮率が高くなりにくい。
ポリイミド系樹脂と微粒子との合計に対する微粒子の含有量は、上限値としては、95体積%が好ましく、90体積%がより好ましく、下限値としては、65体積%が好ましく、70体積%がより好ましく、72体積%が更に好ましい。上記微粒子の含有量の上限が上記範囲内であると、微粒子同士が凝集しにくく、また、表面にひび割れ等が生じにくいため、安定して電気特性の良好な多孔質膜を形成することができる。
なお、本明細書及び本特許請求の範囲において、体積%及び体積比は、25℃における値である。また、上記ポリイミド系樹脂の量は、ポリイミド系樹脂の固形分の量である。
ポリイミド系樹脂と微粒子とを含有する未焼成複合膜をベークして樹脂−微粒子複合膜とした場合において、微粒子の材質が無機材料の場合は、ポリイミド系樹脂に対する微粒子の比率が2〜6(質量比)となるように、微粒子とポリイミド系樹脂とを混合することが好ましく、3〜5(質量比)とすることがより好ましい。微粒子の材質が有機材料の場合は、ポリイミド系に対する微粒子の比率が1〜3.5(質量比)となるように、微粒子とポリイミド系樹脂とを混合することが好ましく、1.2〜3(質量比)とすることがより好ましい。また、樹脂−微粒子複合膜とした際にポリイミド系樹脂に対する微粒子の体積比が1.5〜4.5となるように微粒子とポリイミド系樹脂とを混合することが好ましく、1.8〜3(体積比)とすることがより好ましい。樹脂−微粒子複合膜とした際にポリイミド系樹脂に対する微粒子の質量比又は体積比が上記下限値以上であれば、セパレータとして適切な密度の孔を得ることができ、上記上限値以下であれば、粘度の増加や膜中のひび割れ等の問題を生じることなく安定して成膜することができる。
また、本発明における材料液において、ポリイミド系樹脂の固形分と微粒子との合計の含有量は、後述の材料液中の固形分全体(後述の溶剤以外の各成分全体)に対し、例えば、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、実質的に99〜100質量%となるよう調整することが各種製造工程の安定性の点で更により好ましい。
<溶剤>
本発明における材料液は、更に、溶剤を含有するものであってもよい。溶剤としては、ポリイミド系樹脂を溶解することができ、微粒子を溶解しないものが好ましい。このような溶剤としては、特に限定されず、例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応に用いる溶剤として例示したもの等が挙げられる。
本発明における材料液における溶剤としては、ポリイミド系樹脂と別に配合するものであってもよいし、ポリイミド系樹脂として、市販されているワニスを用いる場合、該市販品のワニスに含有されている溶剤をそのまま用いるものであってもよいし、後者であって更にポリイミド系樹脂と別に配合する溶剤との合計であってもよい。
溶剤としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。
本発明における材料液において、溶剤の含有量は、上記材料液全体に対し、60質量%以上であること(即ち、上記材料液における固形分濃度が40質量%以下となる量であること)が含浸性の点で好ましい。上記溶剤の含有量は、上記材料液における固形分濃度の上限がより好ましくは35質量%、更により好ましくは30質量%となる量であり、下限がより好ましくは10質量%、更により好ましくは15質量%、特に好ましくは20質量%となる量である。溶剤の含有量(又は固形分濃度)が上記範囲内であると、含浸性が良く、また、得られる未焼成複合膜にはじきを生じにくい。
<分散剤>
本発明では、材料液中の微粒子を均一に分散することを目的に、微粒子とともに更に分散剤を添加してもよい。分散剤を添加することにより、ポリイミド系樹脂と微粒子とを一層均一に混合でき、更には、未焼成複合膜等における微粒子を均一に分布させることができる。その結果、最終的に得られる多孔質膜の表面に稠密な開口を設け、かつ、表裏面を効率よく連通させることが可能となり、多孔質膜の透気度を向上することができる。更に、分散剤を添加することにより、本発明における材料液の乾燥性が向上しやすくなる。
本発明に用いられる分散剤は、特に限定されることなく、公知のものを使用することができる。例えば、やし脂肪酸塩、ヒマシ硫酸化油塩、ラウリルサルフェート塩、ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテルサルフェート塩、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホサクシネート塩、イソプロピルホスフェート、ポリオキシエチレンアルキルエーテルホスフェート塩、ポリオキシエチレンアリルフェニルエーテルホスフェート塩等のアニオン界面活性剤;オレイルアミン酢酸塩、ラウリルピリジニウムクロライド、セチルピリジニウムクロライド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド等のカチオン界面活性剤;ヤシアルキルジメチルアミンオキサイド、脂肪酸アミドプロピルジメチルアミンオキサイド、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、アミドベタイン型活性剤、アラニン型活性剤、ラウリルイミノジプロピオン酸等の両性界面活性剤;ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ポリオキシエチレンオレイルアミン、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンポリスチリルフェニルエーテル等、ポリオキシアルキレン一級アルキルエーテル又はポリオキシアルキレン二級アルキルエーテルのノニオン界面活性剤、ポリオキシエチレンジラウレート、ポリオキシエチレンラウレート、ポリオキシエチレン化ヒマシ油、ポリオキシエチレン化硬化ヒマシ油、ソルビタンラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンラウリン酸エステル、脂肪酸ジエタノールアミド等のその他のポリオキアルキレン系のノニオン界面活性剤;オクチルステアレート、トリメチロールプロパントリデカノエート等の脂肪酸アルキルエステル;ポリオキシアルキレンブチルエーテル、ポリオキシアルキレンオレイルエーテル、トリメチロールプロパントリス(ポリオキシアルキレン)エーテル等のポリエーテルポリオールが挙げられるが、これらに限定されない。また、上記分散剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。
本発明における材料液において、分散剤の含有量は、例えば、成膜性の点で、上記微粒子に対し0.01〜5質量%であることが好ましく、0.05〜1質量%であることがより好ましく、0.1〜0.8質量%であることが更により好ましい。
<材料液の調製>
本発明における材料液の調製は、ポリイミド系樹脂を含み、微粒子を分散した溶液を製造することにより行うことができる。より具体的には、本発明における材料液の調製は、例えば、微粒子を予め分散した溶剤とポリイミド系樹脂とを任意の比率で混合するか、微粒子を予め分散した溶剤中でポリイミド系樹脂を重合して行われる。上記微粒子は、ワニスに使用する溶剤に不溶であり、成膜後選択的に除去可能なものなら、特に限定されることなく使用することができる。
本発明における材料液の25℃における粘度は、例えば、上限値としては3000mPa・sが好ましく、1500mPa・sがより好ましく、1000mPa・sが更に好ましく、下限値としては10mPa・sが好ましく、30mPa・sがより好ましく、50mPa・sが更に好ましい。粘度が低いほど多孔質基体の内部において、短時間でより広範囲に多孔質ポリイミド膜製造用ワニスが浸み込みやすい(含浸性)。なお、粘度は、E型粘度計により測定される。
[供給ユニット]
供給ユニット10は、基材搬送部11と、ノズル(供給部)12と、搬送ローラー13とを有している。
基材搬送部11は、基材Sがロール状に巻かれた基材送出ローラー11aと、基材Sを支持する支持ローラー11bとを有している。基材送出ローラー11aは、不図示の軸受に対して着脱可能に設けられる。基材送出ローラー11aは、X方向に平行な軸線の周りに回転可能となるように支持される。基材搬送部11は、基材送出ローラー11aを回転させる不図示の駆動機構を有している。駆動機構によって基材送出ローラー11aを図1の時計回りに回転させることにより、基材Sが+Y方向に送り出されるようになっている。支持ローラー11bは、ノズル12の−Z側に配置されている。支持ローラー11bは、基材Sを支持しつつ搬送する。
図2は、ノズル12の一例を示す側面図である。図1及び図2に示すように、ノズル12は、基材Sに材料液Q1を供給し、材料層FAを形成する。以下、ポリイミド、ポリアミドイミド、又はポリアミドが材料液Q1に含まれる場合を例に挙げて説明する。この場合、材料層FAに対して焼成を行わなくてもよい。ノズル12は、基材Sの搬送経路に沿って配置される。ノズル12は、材料液Q1を吐出する吐出口12pを有する。吐出口12pは、例えば長手方向が基材SのX方向の寸法とほぼ同一となるように形成される。
ノズル12は、吐出口12pが−Z方向を向くように傾いて配置される。したがって、吐出口12pは、基材Sのうち支持ローラー11bで支持された部分に向けられる。ノズル12は、この基材Sに対して、吐出口12pから水平方向に沿って材料液Q1を吐出する。ノズル12から吐出された材料液Q1は、基材Sに含浸された状態で材料層FAとなる。材料層FAは、例えば一部が基材Sの表面から露出した状態で形成される。この場合、露出する部分の層厚は、例えば、1〜2μmである。なお、材料層FAの全体が基材Sに含浸された状態であってもよい。
なお、ノズル12は、X方向、Y方向及びZ方向のうち少なくとも一方向に移動可能であってもよい。また、ノズル12は、材料液を吐出しないときには不図示の待機位置に配置され、材料液を吐出する際に待機位置から上記位置にそれぞれ移動するようにしてもよい。また、ノズル12の予備吐出動作を行う部分が設けられてもよい。
ノズル12は、それぞれ接続配管(不図示)などを介して、材料液供給源(不図示)に接続されている。ノズル12は、例えば内部に所定量の材料液を保持する保持部(不図示)が設けられる。この場合、ノズル12は、上記保持部に保持された材料液の温度を調整する温調部を有してもよい。
ノズル12から塗出される各材料液の塗出量や、材料層FAの層厚は、各ノズル、各接続配管(不図示)、若しくは材料液供給源(不図示)に接続されるポンプ(不図示)の圧力、搬送速度、各ノズル位置又は基材Sとノズルとの距離、各材料液の塗出後乾燥されるまでの拒理(時間)等により、調整可能である。
[乾燥ユニット]
乾燥ユニット20は、チャンバー21と、加熱部22と、搬送ローラー23とを有する。チャンバー21は、基材S及び加熱部22を収容する。チャンバー21は、基材S及び材料層FAを搬入する搬入口20aと、基材S及び乾燥膜FBを搬出する搬出口20bとを有している。
加熱部22は、基材S上に形成される材料層FAを加熱する。加熱部22としては、例えば赤外線ヒータなどが用いられる。加熱部22は、50℃〜100℃程度の温度で材料層FAを加熱する。この加熱により、材料層FAから溶剤が除去され、乾燥膜FBが形成される。搬送ローラー23は、乾燥膜FBが形成された基材Sを+Y方向に搬送する。なお、乾燥ユニット20は、供給ユニット10の内部に設けられてもよい。
[除去ユニット]
除去ユニット30は、チャンバー31と、エッチング部32と、洗浄部33と、乾燥部34と、搬送部35と、を有する。チャンバー31は、乾燥膜FBを搬入する搬入口30aと、多孔性樹脂膜FCを搬出する搬出口30bとを有している。チャンバー31は、エッチング部32、洗浄部33、乾燥部34及び搬送部35を収容する。
エッチング部32は、乾燥膜FBに対してエッチングを行い、乾燥膜FBに含まれる微粒子を除去して、多孔性樹脂膜FCを形成する。これにより、多孔性樹脂膜FCを含む薄膜Fが形成される。エッチング部32では、微粒子を溶解又は分解可能なエッチング液Q2に乾燥膜FBを浸すことで微粒子を除去する。エッチング部32には、このようなエッチング液Q2を貯留する貯留部32aと、エッチング部32内を案内する案内ローラー32bとを有している。
洗浄部33は、エッチング部32から搬送された薄膜Fを洗浄する。洗浄部33は、エッチング部32の+Y側に配置される。洗浄部33は、洗浄液を供給する供給部33aを有している。また、薄膜Fを洗浄した後の廃液を回収する回収部(不図示)や、薄膜Fの液切りを行う液切り部(不図示)などを有してもよい。
乾燥部34は、洗浄後の薄膜Fを乾燥する。乾燥部34は、洗浄部33の+Y側(多孔性樹脂膜FCの搬送方向の前方)に配置される。乾燥部34には、薄膜Fを加熱する不図示の加熱部等が設けられている。
搬送部35は、搬送ローラー35a〜35dを有している。搬送ローラー35a〜35dは、薄膜Fを+Y方向に搬送する。搬送ローラー35aは、エッチング部32の−Y側に配置される。搬送ローラー35bは、エッチング部32と洗浄部33との間に配置される。搬送ローラー35cは、洗浄部33と乾燥部34との間に配置される。搬送ローラー35dは、乾燥部34の+Y側に配置される。なお、搬送ローラー35a〜35dの少なくとも1つが設けられなくてもよい。
また、乾燥部34の+Y側には、加熱部36が配置されている。加熱部36は、乾燥部34から搬出された薄膜Fを加熱して乾燥する。加熱部36としては、例えば赤外線ヒータなどが用いられる。なお、加熱部36が除去ユニット30の外部に設けられた構成であってもよいし、加熱部36が省略された構成であってもよい。
なお、除去ユニット30では、微粒子をエッチングによって除去する場合に限定されるものではない。例えば、微粒子の材質として、ポリイミドよりも低温で分解する有機材料が用いられる場合、乾燥膜FBを加熱することによって微粒子を分解させることができる。このような有機材料としては、ポリイミドよりも低温で分解するものであれば、特に限定されることなく使用できる。例えば、線状ポリマーや公知の解重合性ポリマーからなる樹脂微粒子を挙げることができる。通常の線状ポリマーは、熱分解時にポリマーの分子鎖がランダムに切断され、解重合性ポリマーは、熱分解時にポリマーが単量体に分解するポリマーである。いずれも、低分子量体、あるいは、CO2まで分解することによって、乾燥膜FBから消失する。この場合の微粒子の分解温度は200〜320℃であることが好ましく、230〜260℃であることが更に好ましい。分解温度が200℃以上であれば、材料液に高沸点溶剤を使用した場合も成膜を行うことができ、乾燥ユニット20における焼成条件の選択の幅が広くなる。また、分解温度が320℃未満であれば、乾燥膜FBに熱的なダメージを与えることなく微粒子のみを消失させることができる。なお、ポリイミドのかわりにポリアミドイミド又はポリアミドを用いる場合、微粒子の分解温度は200℃以下とすることが好ましい。
[巻き取り部]
図3は、除去ユニット30の+Y側の構成を概略的に示す斜視図である。
図3に示すように、チャンバー31の+Y側の面には、薄膜Fを搬出する搬出口30bが設けられている。搬出口30bから搬出された薄膜Fは、巻き取り部40によって巻き取られる。
巻き取り部40は、軸受41に軸部材SFが装着された構成となっている。軸部材SFは、搬出口30bから搬出された薄膜Fを巻き取ってロール体RFを形成する。軸部材SFは、軸受41に対して着脱可能に設けられる。軸部材SFは、軸受41に装着される場合、X方向に平行な軸線の周りに回転可能となるように支持される。巻き取り部40は、軸受41に装着される軸部材SFを回転させる不図示の駆動機構を有している。駆動機構によって軸部材SFを回転させることにより、多孔性樹脂膜FCが巻き取られるようになっている。ロール体RFが形成された状態で軸部材SFを軸受41から取り外すことにより、ロール体RFを回収することが可能となる。
[製造方法]
次に、上記のように構成された製造システムSYSを用いて薄膜Fを製造する動作の一例を説明する。図4(a)〜(c)は、薄膜Fの製造過程の一例を示す図である。
まず、供給ユニット10において、材料層FAを形成する。供給ユニット10では、基材送出ローラー11aを回転させて基材Sを送り出す。送り出した基材Sは、例えば供給ユニット10の搬送ローラー13などを用いて+Y方向に移動させる。なお、基材Sの表面が材料液Q1に対して親液性を有するように予め処理を行ってもよい。
この状態で、ノズル12の吐出口12pから材料液Q1を吐出させる。材料液Q1は、吐出口12pから−Z方向に向けて吐出され、基材Sに到達した後、基材Sの内部に含浸される。これにより、図4(a)に示すように、基材Sに材料液Q1による材料層FAが形成される。
続いて、材料層FAを含む基材Sが+Y方向に移動し、乾燥ユニット20のチャンバー21内に搬入される。その後、チャンバー21内において材料層FAの乾燥を行う。チャンバー21では、加熱部22を用いて、例えば50℃〜100℃程度の温度で材料層FAを加熱する。この温度範囲であれば、基材Sに歪みや変形等が発生することなく、材料層FAを加熱できる。材料層FAを乾燥することにより、図4(b)に示すように、乾燥膜FBが形成される。
乾燥ユニット20において形成された乾燥膜FB及び基材Sは、乾燥ユニット20から搬出されると、巻き取られることなく、除去ユニット30に搬入される。なお、乾燥膜FB及び基材Sの先端部分を除去ユニット30に搬入する場合には、作業者が手作業で行ってもよいし、マニピュレータ等を用いて自動的に行ってもよい。
除去ユニット30に搬入された乾燥膜FB及び基材Sは、搬送ローラー35aの回転に従って+Y方向に搬送される。これにより、乾燥膜FB及び基材Sは、まずはエッチング部32において微粒子A2の除去が行われる。微粒子A2の材質として例えばシリカが用いられる場合、エッチング部32では、乾燥膜FB及び基材Sが案内ローラー32bにより案内され、低濃度のフッ化水素水等のエッチング液Q2に浸される。微粒子A2がエッチング液Q2に溶解して除去され、図4(c)に示すように、樹脂層A3の内部に多孔部A4が含まれた多孔性樹脂膜FCが形成される。これにより、多孔性樹脂膜FC及び基材Sを含む薄膜Fが形成される。この薄膜Fは、透気度、引張強度等の特性に優れたものなる。
その後、薄膜Fはエッチング部32から搬出され、搬送ローラー35b、35cを介して、それぞれ洗浄部33及び乾燥部34に順に搬入される。洗浄部33では、洗浄液によって薄膜Fが洗浄され、液切りが行われる。また、乾燥部34では、液切り後の薄膜Fが加熱され、洗浄液が除去される。薄膜Fは、乾燥部34から搬出された後、搬送ローラー35dを介して搬送され、加熱部36によって乾燥される。その後、薄膜Fは、除去ユニット30から搬出され、巻き取り部40の軸部材SFによって巻き取られる。
以上のように、本実施形態に係る製造システムSYSは、ポリアミド酸、ポリイミド、ポリアミドイミド又はポリアミドの樹脂材料A1及び微粒子A2を溶剤に含ませた材料液Q1を、少なくとも表裏にわたって複数の貫通穴を持つシート状の基材Sに供給する供給ユニット10と、基材Sに供給された材料液Q1(材料層FA)から溶剤を除去して乾燥膜FBを形成する乾燥ユニット20と、乾燥膜FBから微粒子A2を除去して、基材Sに多孔性樹脂膜FCを形成する除去ユニット30とを備えるため、材料層FAの形成、材料層FAの乾燥(乾燥膜FBの形成)、及び微粒子A2の除去(多孔性樹脂膜FCの形成)の3つの工程を一連の流れで行うことができる。これにより、多孔性樹脂膜FCの製造効率を向上させることができる。また、基材Sに形成された多孔性樹脂膜FC(又は、乾燥膜FB)を剥離する必要がないため、透気度、引張強度等の特性に優れた薄膜Fを容易に製造することができる。
[変形例]
上記実施形態では、供給ユニット10にノズル12が1つ設けられた構成を例に挙げて説明したが、これに限定するものではなく、複数のノズルが供給ユニット10に設けられてもよい。例えば、図5及び図6に示すように、基材Sの第1面Saに対向する第1ノズル12Aと、基材Sの第2面Sbに対向する第2ノズル12Bとが設けられた構成であってもよい。
例えば図5に示す供給ユニット10Aでは、第1ノズル12Aから基材Sの第1面Saに向けて材料液Q1が供給されると共に、第2ノズル12Bから基材Sの第2面Sbに向けて材料液Q1が供給される。これにより、材料液Q1が第1面Sa及び第2面Sbからそれぞれ基材Sの内部に含浸され、基材Sの両面(Sa、Sb)に材料層FA(F1、F2)が形成される。なお、このとき、第1ノズル12Aから吐出される材料液Q1と、第2ノズル12Bから吐出される材料液Q1との間で、例えば微粒子の体積比などが異なっていてもよい。
また、図5に示す構成では、基材Sの搬送方向が−Z方向となっており、第1ノズル12Aと第2ノズル12Bとが基材SをY方向に挟んで配置されている。この構成では、基材Sの搬送経路を短く設定することができる。また、材料液Q1の吐出位置の−Z側に乾燥ユニット20Aが配置されている。乾燥ユニット20Aにより、材料層FA(F1、F2)が乾燥し、乾燥膜FB(F3、F4)が形成される。このように、材料液Q1の供給後、短時間で乾燥膜FBを形成することができる。その後、乾燥膜FB及び基材Sは、搬送ローラーR1によって供給ユニット10Aの外部に搬送される。
また、例えば図6に示す供給ユニット10Bのように、第1ノズル12A及び第2ノズル12Bが基材Sの+Z側から材料液Q1を吐出する構成であってもよい。基材Sは、送り出された後に+Y方向に搬送され、折り返しローラーR2によって−Y方向に折り返され、その後折り返しローラーR2によって+Z方向に折り返されている。
第1ノズル12Aは、基材Sのうち折り返しローラーR2の上流側部分で第1面Saに対向して配置される。第1ノズル12Aから吐出された材料液Q1により、第1面Saに材料層FA(F1)が形成される。第2ノズル12Bは、基材Sのうち折り返しローラーR2の下流側部分で第2面Sbに対向して配置される。第2ノズル12Bから吐出された材料液Q1により、第2面Sbに材料層FA(F2)が形成される。
また、第1ノズル12Aと第2ノズル12Bとの間には、乾燥ユニット20Bが配置されている。乾燥ユニット20Bは、基材Sのうち折り返しローラーR2の上流側部分及び下流側部分を含むように配置される。このため、第1ノズル12Aによって形成された材料層F1は、折り返しローラーR2に到達する前に乾燥され、乾燥膜FB(F3)が形成される。また、第2ノズル12Bによって形成された材料層F2は、折り返しローラーR3に到達する前に乾燥され、乾燥膜FB(F4)が形成される。このように、材料層F1、F2は、短時間で乾燥され、乾燥膜F3、F4を形成することができる。
また、上記実施形態では、供給ユニット10においてノズル12によって材料層FAを形成する場合を例に挙げて説明したが、これに限定するものではない。例えば、図7に示す供給ユニット10Cのように、基材Sを材料液Q1に浸漬する浸漬部(供給部)14を有する構成であってもよい。この場合、浸漬部14は、例えば材料液Q1を収容可能な容器である。供給ユニット10Cには、案内ローラーR4が設けられる。基材Sは、案内ローラーR4によって浸漬部14の内部に案内される。したがって、浸漬部14は、基材Sの搬送経路に沿って配置される。浸漬部14の内部に案内された基材Sは、材料液Q1に浸漬される。そして、基材Sに材料液Q1が含浸される。これにより、基材Sの内部に材料層FAが形成される。そして、材料層FAが形成された基材Sは、+Z側に搬送され、乾燥ユニット20Cによって乾燥される。これにより、乾燥膜FBが形成される。乾燥膜FB及び基材Sは、搬出ローラーR5によって供給ユニット10Cの外部に搬出される。
また、上記実施形態の構成に加えて、図8に示す供給ユニット10Dのように、基材S上の材料液Q1を平坦化するスキージ15を有する構成であってもよい。スキージ15は、ノズル12に対して基材Sの搬送方向の下流側(例えば+Y側)に配置され、基材Sとの間に隙間を空けて配置される。スキージ15の下側(−Z側)端部15aは、XY平面に平行にかつ平坦に形成されている。この構成では、基材Sの搬送により、材料液Q1がスキージ15の先端と基材Sとの隙間の分だけ通過する。これにより、材料層FAを平坦に形成することができる。
また、上記実施形態では、供給ユニット10においてノズル12から基材Sに直接材料液Q1が供給される場合を例に挙げて説明したが、これに限定するものではない。例えば、図9(a)に示す供給ユニット10E及び図9(b)に示す供給ユニット10Fに示すように、搬送ベルト17を介して基材Sに材料液Q1を供給する構成であってもよい。
図9(a)では、基材送出ローラー11aから送り出された基材Sが搬送ベルト17上に載置されて搬送される構成となっている。搬送ベルト17は、例えば無端状に形成され、プーリ16a、16bによって回転するようになっている。搬送ベルト17の上面(+Z側の面)は、平坦に形成されている。
ノズル12は、搬送ベルト17の上面に対向配置され、この上面に材料液Q1を吐出する。搬送ベルト17の上面に配置された材料液Q1は、搬送ベルト17に沿って+Y方向に搬送される。基材Sが搬送ベルト17上に載置される際に、基材Sと搬送ベルト17とで材料液Q1を挟んだ状態となる。
図9(b)では、複数のノズル(12A、12B)が設けられる場合の一例を示している。図9(b)に示す供給ユニット10Fは、第1ノズル12Aが搬送ベルト17の上面に対向して配置されると共に、第2ノズル12Bが基材Sの上面に対向して配置される。この場合、第2ノズル12Bによって基材Sの上面に材料液Q1が供給されるため、基材Sの両面に材料層F1、F2が形成される。
図9(a)及び(b)に示す供給ユニット10E、10Fでは、搬送ベルト17上に配置された材料液Q1が基材Sの下面から内部に含浸されるため、平坦な材料層FAが形成されることになる。
また、上記実施形態に係る製造システムSYSでは、供給ユニット10から乾燥ユニット20及び除去ユニット30を経て巻取り部40に至る区間において、基材S、材料層FA、乾燥膜FB及び多孔性樹脂膜FCの各膜が一続きの状態で搬送される構成を例に挙げて説明したが、これに限定するものではない。例えば、図10に示す製造システムSYS2のように、基材Sの搬送経路において、巻取り部60及び送り出し部70が設けられた構成であってもよい。
巻き取り部60は、軸受61に軸部材SFが装着された構成となっている。軸部材SFは、乾燥ユニット20から搬出された基材S及び乾燥膜FBを巻き取ってロール体RBを形成する。軸部材SFは、軸受61に対して着脱可能に設けられる。軸部材SFは、軸受61に装着される場合、X方向に平行な軸線の周りに回転可能となるように支持される。巻き取り部60は、軸受61に装着される軸部材SFを回転させる不図示の駆動機構を有している。ロール体RBが形成された状態で軸部材SFを軸受61から取り外すことにより、ロール体RBを他のユニットに移動させることが可能となる。
なお、図10では、巻き取り部60が他のユニットから独立して配置されているが、これに限定するものではない。例えば、巻き取り部60は、乾燥ユニット20と一体で配置されていてもよい。
送り出し部70は、軸受71に軸部材SFが装着可能な構成となっている。軸部材SFは、巻き取り部60の軸受61に装着するものと共通で使用可能である。したがって、巻き取り部60から取り外した軸部材SFを送り出し部70の軸受71に装着可能である。これにより、巻き取り部60で形成されたロール体RBを送り出し部70に配置することが可能である。
軸部材SFは、軸受71に装着される場合、X方向に平行な軸線の周りに回転可能となるように支持される。送り出し部70は、軸受71に装着される軸部材SFを回転させる不図示の駆動機構を有している。駆動機構によって軸部材SFを図10の時計回りに回転させることにより、ロール体RBを構成する乾燥膜FB及び基材Sが除去ユニット30へ向けて送り出されるようになっている。
また、上記実施形態に係る製造システムSYSでは、ポリイミド、ポリアミドイミド、又はポリアミドが材料液Q1に含まれる場合であって、材料層FAに対して焼成を行わなくてもよい場合を例に挙げて説明したが、これに限定するものではない。例えば、図11に示す製造システムSYS3のように、乾燥ユニット20と除去ユニット30との間に焼成ユニット50が設けられてもよい。
焼成ユニット50は、チャンバー51と、加熱部52と、搬送ローラー53とを有する。チャンバー51は、基材S及び加熱部52を収容する。チャンバー51は、基材S及び乾燥膜FBを搬入する搬入口50aと、基材S及び焼成膜FDを搬出する搬出口50bとを有している。
加熱部52は、基材S上に形成される乾燥膜FBを加熱する。加熱部52としては、例えば赤外線ヒータなどが用いられる。加熱部52による加熱温度は、乾燥膜FBの搬送速度や乾燥膜FBの構成成分等に応じて適宜調整する。この加熱温度は、乾燥膜FB及び基材Sの構造により異なるが、120℃〜375℃程度であることが好ましく、更に好ましくは150℃〜350℃である。また、微粒子に有機材料が含まれる場合は、その熱分解温度よりも低い温度に設定する必要がある。なお、材料液がポリアミド酸を含む場合、この焼成においてはイミド化を完結させることが好ましいが、材料層FAがポリイミド、ポリアミドイミド又はポリアミドから構成され、乾燥ユニット20により材料層FAに対し高温処理を行う場合はこの限りでない。
また、焼成条件は、例えば、材料液がポリアミド酸及び/又はポリイミドを含む場合、室温から375℃までを3時間で昇温させた後、375℃で20分間保持させる方法や、室温から50℃刻みで段階的に375℃まで昇温(各ステップ20分保持)し、最終的に375℃で20分保持させる等の段階的な加熱を行ってもよい。
また、上記実施形態及び変形例では、巻き取り部40、60として、軸部材SFを軸受41、61に着脱させる構成を例に挙げて説明したが、これに限定するものではなく、例えば図12に示すような巻き取り装置90が用いられてもよい。以下、巻き取り部40に代えて巻き取り装置90が用いられる場合を例に挙げて説明する。
図12に示すように、巻き取り装置90は、フレーム91と、軸部材SFと、軸受92と、駆動部93と、中継ローラー94a〜94eと、ローラー支持部95とを有する。フレーム91は、軸部材SF、軸受92、駆動部93、中継ローラー94a〜94e、ローラー支持部95の各部を支持する。
軸部材SFは、軸受92に対して着脱可能に設けられている。軸部材SFは、軸受92に装着される場合、X方向に平行な軸線の周りに回転可能となるように軸受92に支持される。ロール体RF、RBが形成された状態で軸部材SFを軸受92から取り外すことにより、ロール体RF、RBを他のユニットに移動又は回収することができる。
中継ローラー94a〜94eは、基材Sのテンションを調整しつつ、基材Sを軸部材SFに送る。中継ローラー94a〜94eは、例えば円筒状に形成され、それぞれX方向に平行に配置されている。本実施形態では、基材Sは、中継ローラー94a、94b、94c、94d、94eの順に架け渡されるが、これに限定されるものではなく、一部の中継ローラーを用いなくてもよい。なお、中継ローラー94a〜94eのうち少なくとも1つは、ローラー支持部95によって移動可能であってもよい。例えば、ローラー支持部95が中継ローラー94bをZ方向又はY方向に移動可能であってもよい。また、ローラー支持部95によって、X軸に平行な軸線AXの周りに中継ローラー94bを回動させる構成であってもよい。この場合、中継ローラー94bが移動(回動)する量(距離)を軸受92の巻取り速度にフィードバックさせることにより、基材Sのテンションを一定に保つことが可能となる。また、中継ローラー94bの−Y側にあり、支点軸を介して配置される移動可能な重り(不図示)を移動させて中継ローラー94bへの負荷を変更する構成であってもよい。この場合、中継ローラー94bにかかる負荷を前記重りにより調整することで、基材Sのテンションを調整することが可能となる。
中継ローラー94a〜94eは、X方向に平行な配置に限られず、X方向に対して傾いて配置されてもよい。また、中継ローラーR21〜R25は、円筒形に限られず、テーパー型、ラジアル型、コンケイブ型等のクラウンが形成されたものが用いられてもよい。
なお、上記の巻き取り装置90は、基材Sを巻き取る場合とは反対の方向に軸部材SFを回転させることにより、基材Sを送り出すことができる。このため、例えば上記の送り出し部70に代えて巻き取り装置90を用いることも可能である。
[セパレータ]
次に、実施形態に係るセパレータ100を説明する。図13は、リチウムイオン電池200の一例を示す模式図であり、一部が切り開かれた状態を示している。図13に示すように、リチウムイオン電池200は、正極端子を兼ねた金属ケース201と、負極端子202とを有している。金属ケース201の内部には、正極201aと、負極202aと、セパレータ100とが設けられており、不図示の電解液に浸されている。セパレータ100は、正極201aと負極202aとの間に配置され、正極201aと負極202aとの間の電気的接触を防いでいる。正極201aとしては、リチウム遷移金属酸化物が用いられ、負極202aとしては、例えばリチウムやカーボン(グラファイト)等が用いられている。
上記実施形態に記載の多孔性樹脂膜FCは、このリチウムイオン電池200のセパレータ100として用いられる。この場合、例えば第1塗布膜F1が形成される面をリチウムイオン電池の負極202a側とすることにより、電池性能を向上することができる。なお、図13では、角型のリチウムイオン電池200のセパレータ100を例に挙げて説明しているが、これに限定するものではない。上記の多孔性樹脂膜FCは、円筒型やラミネート型等のいずれのタイプのリチウムイオン電池のセパレータであっても用いることができる。なお、リチウムイオン電池のセパレータの他、上記の多孔性樹脂膜FCは、燃料電池電解質膜、ガス又は液体の分離用膜、低誘電率材料として使用することが可能である。
以上、実施形態について説明したが、本発明は、上述した説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
例えば、上記実施形態及び変形例では、供給ユニット10、乾燥ユニット20、及び除去ユニット30が1台ずつ配置された構成を例に挙げて説明したが、これに限定するものではない。例えば、上記ユニットの少なくとも1つが複数台設けられてもよい。この場合、例えば単位時間あたりに処理可能な材料層FA、乾燥膜FB又は多孔性樹脂膜FCの分量(例、長さ、等)が少ないユニットを多く配置することにより、製造システムSYS全体の製造効率を高めることができる。
また、上記実施形態及び変形例では、いわゆるロール・ツー・ロール方式によって多孔性樹脂膜FCを形成する構成を例に挙げて説明したが、これに限定するものではない。例えば、除去ユニット30における処理が終了した後、多孔性樹脂膜FCが除去ユニット30から搬出された場合に、巻き取り部60で巻き取らせることなく所定の長さで切断し、切断したものを回収してもよい。
また、例えば、上記実施形態の構成に加えて、除去ユニット30で形成された多孔性樹脂膜FCに対して後処理を行う後処理ユニットが設けられてもよい。このような後処理ユニットとしては、例えば多孔性樹脂膜FCに対して除電処理を行う帯電防止ユニットが挙げられる。帯電防止ユニットとしては、例えばイオナイザーなどの除電装置が搭載される。
また、後処理ユニットとして、例えば多孔性樹脂膜FCの一部を除去するケミカルエッチングユニット(不図示)を用いることができる。ケミカルエッチングユニットは、例えば上記実施形態の除去ユニット30と同様の構成を有しており、処理液として、フッ酸溶液に代えてアルカリ溶液などが用いられる。処理液に多孔性樹脂膜FCを所定時間浸すことにより、多孔部A4の内部が除去される。この場合、多孔部A4のバリが取れると共に、連通性が確保されることになる。
また、このようなケミカルエッチングユニットによって多孔性樹脂膜FCの一部を除去する場合、ケミカルエッチング法に限定するものではない。例えば、ケミカルエッチング法と物理的除去方法とを組合せた方法により多孔性樹脂膜Fの一部を除去するようにしてもよい。物理的な方法としては、例えば、プラズマ(酸素、アルゴン等)、コロナ放電等によるドライエッチング、研磨剤(例えば、アルミナ(硬度9)等)を液体に分散し、これを芳香族ポリイミドフィルムの表面に30m/s〜100m/sの速度で照射することでポリイミドフィルム表面を処理する方法等が使用できる。これらの手法は、除去ユニット30において乾燥膜FBから微粒子を除去する前及び微粒子の除去後のいずれの場合にも適用可能である。また、微粒子を除去した後に行う場合にのみ適用可能な物理的方法として、対象表面を液体で濡らした台紙フィルム(例えばPETフィルム等のポリエステルフィルム)に圧着後、乾燥しないで又は乾燥した後、多孔性樹脂膜Fを台紙フィルムから引きはがす方法を採用することもできる。液体の表面張力あるいは静電付着力に起因して、多孔性樹脂膜Fの表面層のみが台紙フィルム上に残された状態で、多孔性樹脂膜Fが台紙フィルムから引きはがされる。