以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。図面においては、XYZ座標系を用いて図中の方向を説明する。このXYZ座標系において、水平面に平行な平面をXY平面とする。このXY平面に平行な一方向をX方向と表記し、X方向に直交する方向をY方向と表記する。また、XY平面に垂直な方向はZ方向と表記する。X方向、Y方向及びZ方向のそれぞれは、図中の矢印の指す方向が+方向であり、矢印の指す方向とは反対の方向が-方向であるとして説明する。
図1は、本実施形態に係るイミド系樹脂膜製造システム(以下、単に製造システムと称する)SYS1の一例を示す図である。図1に示す製造システムSYS1は、多孔性のイミド系樹脂膜F(多孔性樹脂膜)を製造する。製造システムSYS1は、所定の塗布液を塗布して未焼成膜FAを形成する塗布ユニット10と、未焼成膜FAを焼成して焼成膜FBを形成し、焼成膜FBを加熱することにより微粒子を除去して多孔性のイミド系樹脂膜Fを形成する加熱ユニット(加熱処理装置)20と、イミド系樹脂膜Fの一部を除去するケミカルエッチングユニット30と、上記各ユニットを統括的に制御する不図示の制御装置とを備えている。
製造システムSYS1は、例えば上下2階層に構成されており、塗布ユニット10が2階部分に配置され、加熱ユニット20及びケミカルエッチングユニット30が1階部分に配置される。同一階に配置される加熱ユニット20及びケミカルエッチングユニット30は、例えばY方向に並んで配置されるが、この構成に限定されず、例えば、X方向又はX方向とY方向との合成方向に並んで配置されてもよい。
なお、製造システムSYS1の階層構造や各階層におけるユニットの配置等については上記に限定されず、例えば塗布ユニット10及び加熱ユニット20が2階部分に配置され、ケミカルエッチングユニット30が1階部分に配置されてもよい。また、すべてのユニットが同一階層に配置されてもよい。この場合、各ユニットがY方向等に一列に配置されてもよいし、複数列で配置されてもよい。また、すべてのユニットが異なる階層に配置されてもよい。
製造システムSYS1では、未焼成膜FAが帯状に形成される。塗布ユニット10の+Y側(未焼成膜FAの搬送方向の前方)には、帯状の未焼成膜FAをロール状に巻き取る巻き取り部51が設けられる。加熱ユニット20の-Y側(未焼成膜FAの搬送方向の後方)には、ロール状の未焼成膜FAを加熱ユニット20へ向けて送り出す送り出し部52が設けられる。加熱ユニット20の+Y側(イミド系樹脂膜Fの搬送方向の後方)には、帯状のイミド系樹脂膜Fをロール状に巻き取る巻き取り部53が設けられる。ケミカルエッチングユニット30の-Y側(イミド系樹脂膜Fの搬送方向の後方)には、ロール状のイミド系樹脂膜Fをケミカルエッチングユニット30へ向けて送り出す送り出し部54が設けられる。ケミカルエッチングユニット30の+Y側(イミド系樹脂膜Fの搬送方向の前方)には、多孔性のイミド系樹脂膜Fをロール状に巻き取る巻き取り部55が設けられる。
このように、塗布ユニット10、加熱ユニット20及びケミカルエッチングユニット30では、いわゆるロール・ツー・ロール方式による処理が行われる。従って、各ユニット内では、未焼成膜FA、焼成膜FB及びイミド系樹脂膜Fの各膜がそれぞれ一続きの状態で搬送される。
[塗布液]
ここで、各ユニットを説明する前に、イミド系樹脂膜Fの原料となる塗布液について説明する。この塗布液は、塗布ユニット10において未焼成膜FAの生成に用いられる。塗布液は、所定の樹脂材料と、微粒子と、溶剤とを含む。所定の樹脂材料としては、例えばポリアミド酸、ポリイミド、ポリアミドイミド、又はポリアミドが挙げられる。溶剤としては、これらの樹脂材料を溶解可能な有機溶剤が用いられる。
本実施形態では、塗布液として、微粒子を含有する塗布液が用いられる。また、塗布液として、微粒子の含有率が異なる2種類の塗布液(第1塗布液及び第2塗布液)が用いられてもよい。例えば、第1塗布液は、第2塗布液よりも微粒子の含有率が高くなるように調製される。これにより、未焼成膜FA、焼成膜FB及びイミド系樹脂膜Fの強度及び柔軟性を担保することができる。また、微粒子の含有率の低い層を設けることで、イミド系樹脂膜Fの製造コストの低減を図ることができる。
例えば、第1塗布液には、樹脂材料と微粒子とが19:81~45:65の体積比となるように含有される。また、第2塗布液には、樹脂材料と微粒子とが20:80~50:50の体積比となるように含有される。ただし、第1塗布液の微粒子の含有率が、第2塗布液の微粒子の含有率よりも高くなるように体積比が設定される。なお、各樹脂材料の体積は、各樹脂材料の質量にその比重を乗じて求めた値が用いられる。
上記の場合において、第1塗布液の体積全体を100としたときに微粒子の体積が65以上であれば、粒子が均一に分散し、また、微粒子の体積が81以内であれば粒子同士が凝集することもなく分散する。このため、イミド系樹脂膜Fに孔を均一に形成することができる。また、微粒子の体積比率がこの範囲内であれば、未焼成膜FAを成膜する際の剥離性を確保することができる。
第2塗布液の体積全体を100としたときに微粒子の体積が50以上であれば、微粒子単体が均一に分散し、また、微粒子の体積80以内であれば微粒子同士が凝集することもなく、また、表面にひび割れ等が生じることもないため、安定して電気特性の良好な多孔性のイミド系樹脂膜Fを形成することができる。
上記2種類の塗布液は、例えば微粒子を予め分散した溶剤とポリアミド酸、ポリイミド、ポリアミドイミド又はポリアミドを任意の比率で混合することで調製される。また、微粒子を予め分散した溶剤中でポリアミド酸、ポリイミド、ポリアミドイミド又はポリアミドを重合して調製されてもよい。例えば、微粒子を予め分散した有機溶剤中でテトラカルボン酸二無水物及びジアミンを重合してポリアミド酸とするか、更にイミド化してポリイミドとすることで製造できる。
塗布液の粘度は、最終的に300~2000cPとすることが好ましく、400~1500cPの範囲がより好ましく、600~1200cPの範囲がさらに好ましい。塗布液の粘度がこの範囲内であれば、均一に成膜をすることが可能である。
上記塗布液には、微粒子とポリアミド酸又はポリイミドを乾燥して未焼成膜FAとした場合において、微粒子の材質が後述の無機材料の場合は微粒子/ポリイミドの比率が2~6(質量比)となるように微粒子とポリアミド酸又はポリイミドとを混合するとよい。3~5(質量比)とすることが、更に好ましい。微粒子の材質が後述の有機材料の場合は微粒子/ポリイミドの比率が1~3.5(質量比)となるように微粒子とポリアミド酸又はポリイミドとを混合するとよい。1.2~3(質量比)とすることが、更に好ましい。また、未焼成膜FAとした際に微粒子/ポリイミドの体積比率が1.5~4.5となるように微粒子とポリアミド酸又はポリイミドとを混合するとよい。1.8~3(体積比)とすることが更に好ましい。未焼成膜FAとした際に微粒子/ポリイミドの質量比又は体積比が下限値以上であれば、セパレータとして適切な密度の孔を得ることができ、上限値以下であれば、粘度の増加や膜中のひび割れ等の問題を生じることなく安定的に成膜することができる。ポリアミド酸又はポリイミドのかわりに樹脂材料がポリアミドイミド又はポリアミドとなる場合も、質量比は上記と同様である。
以下、各樹脂材料について具体的に説明する。
<ポリアミド酸>
本実施形態で用いるポリアミド酸は、任意のテトラカルボン酸二無水物とジアミンを重合して得られるものが、特に限定されることなく使用できる。テトラカルボン酸二無水物及びジアミンの使用量は特に限定されないが、テトラカルボン酸二無水物1モルに対して、ジアミンを0.50~1.50モル用いるのが好ましく、0.60~1.30モル用いるのがより好ましく、0.70~1.20モル用いるのが特に好ましい。
テトラカルボン酸二無水物は、従来からポリアミド酸の合成原料として使用されているテトラカルボン酸二無水物から適宜選択することができる。テトラカルボン酸二無水物は、芳香族テトラカルボン酸二無水物であっても、脂肪族テトラカルボン酸二無水物であってもよいが、得られるポリイミド樹脂の耐熱性の点から、芳香族テトラカルボン酸二無水物を使用することが好ましい。テトラカルボン酸二無水物は、2種以上を組合せて用いてもよい。
芳香族テトラカルボン酸二無水物の好適な具体例としては、ピロメリット酸二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2,6,6-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-へキサフルオロプロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4-(p-フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物、4,4-(m-フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8-フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、9,9-ビス無水フタル酸フルオレン、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、エチレンテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、シクロへキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロへキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらの中では、価格、入手容易性等から、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物及びピロメリット酸二無水物が好ましい。また、これらのテトラカルボン酸二無水物は単独あるいは二種以上混合して用いることもできる。
ジアミンは、従来からポリアミド酸の合成原料として使用されているジアミンから適宜選択することができる。ジアミンは、芳香族ジアミンであっても、脂肪族ジアミンであってもよいが、得られるポリイミド樹脂の耐熱性の点から、芳香族ジアミンが好ましい。これらのジアミンは、2種以上を組合せて用いてもよい。
芳香族ジアミンとしては、フェニル基が1個あるいは2~10個程度が結合したジアミノ化合物を挙げることができる。具体的には、フェニレンジアミン及びその誘導体、ジアミノビフェニル化合物及びその誘導体、ジアミノジフェニル化合物及びその誘導体、ジアミノトリフェニル化合物及びその誘導体、ジアミノナフタレン及びその誘導体、アミノフェニルアミノインダン及びその誘導体、ジアミノテトラフェニル化合物及びその誘導体、ジアミノヘキサフェニル化合物及びその誘導体、カルド型フルオレンジアミン誘導体である。
フェニレンジアミンはm-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン等であり、フェニレンジアミン誘導体としては、メチル基、エチル基等のアルキル基が結合したジアミン、例えば、2,4-ジアミノトルエン、2,4-トリフェニレンジアミン等である。
ジアミノビフェニル化合物は、2つのアミノフェニル基がフェニル基同士で結合したものである。例えば、4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル等である。
ジアミノジフェニル化合物は、2つのアミノフェニル基が他の基を介してフェニル基同士で結合したものである。結合はエーテル結合、スルホニル結合、チオエーテル結合、アルキレン又はその誘導体基による結合、イミノ結合、アゾ結合、ホスフィンオキシド結合、アミド結合、ウレイレン結合等である。アルキレン結合は炭素数が1~6程度のものであり、その誘導体基はアルキレン基の水素原子の1以上がハロゲン原子等で置換されたものである。
ジアミノジフェニル化合物の例としては、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルケトン、3,4’-ジアミノジフェニルケトン、2,2-ビス(p-アミノフェニル)プロパン、2,2’-ビス(p-アミノフェニル)へキサフルオロプロパン、4-メチル-2,4-ビス(p-アミノフェニル)-1-ペンテン、4-メチル-2,4-ビス(p-アミノフェニル)-2-ぺンテン、イミノジアニリン、4-メチル-2,4-ビス(p-アミノフェニル)ペンタン、ビス(p-アミノフェニル)ホスフィンオキシド、4,4’-ジアミノアゾベンゼン、4,4’-ジアミノジフェニル尿素、4,4’-ジアミノジフェニルアミド、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。
これらの中では、価格、入手容易性等から、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノトルエン、及び4,4’-ジアミノジフェニルエーテルが好ましい。
ジアミノトリフェニル化合物は、2つのアミノフェニル基と1つのフェニレン基が何れも他の基を介して結合したものであり、他の基は、ジアミノジフェニル化合物と同様のものが選ばれる。ジアミノトリフェニル化合物の例としては、1,3-ビス(m-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(p-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(p-アミノフェノキシ)ベンゼン等を挙げることができる。
ジアミノナフタレンの例としては、1,5-ジアミノナフタレン及び2,6-ジアミノナフタレンを挙げることができる。
アミノフェニルアミノインダンの例としては、5又は6-アミノ-1-(p-アミノフェニル)-1,3,3-トリメチルインダンを挙げることができる。
ジアミノテトラフェニル化合物の例としては、4,4’-ビス(p-アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2’-ビス[p-(p’-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’-ビス[p-(p’-アミノフェノキシ)ビフェニル]プロパン、2,2’-ビス[p-(m-アミノフェノキシ)フェニル]ベンゾフェノン等を挙げることができる。
カルド型フルオレンジアミン誘導体は、9,9-ビスアニリンフルオレン等が挙げられる。
脂肪族ジアミンは、例えば、炭素数が2~15程度のものがよく、具体的には、ペンタメチレンジアミン、へキサメチレンジアミン、へプタメチレンジアミン等が挙げられる。
なお、これらのジアミンの水素原子がハロゲン原子、メチル基、メトキシ基、シアノ基、フェニル基等の群より選択される少なくとも1種の置換基により置換された化合物であってもよい。
本実施形態で用いられるポリアミド酸を製造する手段に特に制限はなく、例えば、有機溶剤中で酸、ジアミン成分を反応させる方法等の公知の手法を用いることができる。
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応は、通常、有機溶剤中で行われる。テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応に使用される有機溶剤は、テトラカルボン酸二無水物及びジアミンを溶解させることができ、テトラカルボン酸二無水物及びジアミンと反応しないものであれば特に限定されない。有機溶剤は単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応に用いる有機溶剤の例としては、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N-メチルカプローラクタム、N,N,N’,N’-テトラメチルウレア等の含窒素極性溶剤;β-プロピオラクトン、γ-ブチローラクトン、γ-バレローラクトン、δ-バレローラクトン、γ-カプローラクトン、ε-カプローラクトン等のラクトン系極性溶剤;ジメチルスルホキシド;アセトニトリル;乳酸エチル、乳酸ブチル等の脂肪酸エステル類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチルセルソルブアセテート、エチルセルソルブアセテート等のエーテル類;クレゾール類等のフェノール系溶剤が挙げられる。これらの有機溶剤は単独あるいは2種以上を混合して用いることができる。有機溶剤の使用量に特に制限はないが、生成するポリアミド酸の含有量が5~50質量%とするのが望ましい。
これらの有機溶剤の中では、生成するポリアミド酸の溶解性から、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N-メチルカプローラクタム、N,N,N’,N’-テトラメチルウレア等の含窒素極性溶剤が好ましい。
重合温度は一般的には-10~120℃、好ましくは5~30℃である。重合時間は使用する原料組成により異なるが、通常は3~24Hr(時間)である。また、このような条件下で得られるポリアミド酸の有機溶剤溶液の固有粘度は、好ましくは1000~10万cP(センチポアズ)、より一層好ましくは5000~7万cPの範囲である。
<ポリイミド>
本実施形態に用いるポリイミドは、塗布液に使用する有機溶剤に溶解可能な可溶性ポリイミドなら、その構造や分子量に限定されることなく、公知のものが使用できる。ポリイミドについて、側鎖にカルボキシ基等の縮合可能な官能基又は焼成時に架橋反応等を促進させる官能基を有していてもよい。
有機溶剤に可溶なポリイミドとするために、主鎖に柔軟な屈曲構造を導入するためのモノマーの使用、例えば、エチレジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン等の脂肪族ジアミン;2-メチルー1,4-フェニレンジアミン、o-トリジン、m-トリジン、3,3’-ジメトキシベンジジン、4,4’-ジアミノベンズアニリド等の芳香族ジアミン;ポリオキシエチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシブチレンジアミン等のポリオキシアルキレンジアミン;ポリシロキサンジアミン;2,3,3’,4’-オキシジフタル酸無水物、3,4,3’,4’-オキシジフタル酸無水物、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエート-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物等の使用が有効である。また、有機溶剤への溶解性を向上する官能基を有するモノマーの使用、例えば、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、2-トリフルオロメチル-1,4-フェニレンジアミン等のフッ素化ジアミンを使用することも有効である。更に、上記ポリイミドの溶解性を向上するためのモノマーに加えて、溶解性を阻害しない範囲で、上記ポリアミド酸の欄に記したものと同じモノマーを併用することもできる。
本発明で用いられる、有機溶剤に溶解可能なポリイミドを製造する手段に特に制限はなく、例えば、ポリアミド酸を化学イミド化又は加熱イミド化させ、有機溶剤に溶解させる方法等の公知の手法を用いることができる。そのようなポリイミドとしては、脂肪族ポリイミド(全脂肪族ポリイミド)、芳香族ポリイミド等を挙げることができ、芳香族ポリイミドが好ましい。芳香族ポリイミドとしては、式(1)で示す繰り返し単位を有するポリアミド酸を熱又は化学的に閉環反応によって取得したもの、若しくは式(2)で示す繰り返し単位を有するポリイミドを溶媒に溶解したものでよい。式中Arはアリール基を示す。
<ポリアミドイミド>
本実施形態に用いるポリアミドイミドは、塗布液に使用する有機溶剤に溶解可能な可溶性ポリアミドイミドなら、その構造や分子量に限定されることなく、公知のものが使用できる。ポリアミドイミドについて、側鎖にカルボキシ基等の縮合可能な官能基又は焼成時に架橋反応等を促進させる官能基を有していてもよい。
本実施形態で用いるポリアミドイミドは、任意の無水トリメリット酸とジイソシアネートとを反応させて得られるものや、任意の無水トリメリット酸の反応性誘導体とジアミンとの反応により得られる前駆体ポリマーをイミド化して得られるものを特に限定されることなく使用できる。
上記任意の無水トリメット酸又はその反応性誘導体としては、例えば、無水トリメリット酸、無水トリメリット酸クローライド等の無水トリメリット酸ハロゲン化物、無水トリメリット酸エステル等が挙げられる。
ジイソシアネートとしては、例えば、メタフェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-オキシビス(フェニルイソシアネート)、4,4’-ジイソシアネートジフェニルメタン、ビス[4-(4-イソシアネートフェノキシ) フェニル] スルホン、2,2′-ビス[4-(4-イソシアネートフェノキシ)フェニル] プロパン等が挙げられる。
ジアミンとしては、前記ポリアミド酸の説明において例示したものと同様のものが挙げられる。
<ポリアミド>
ポリアミドとしては、ジカルボン酸とジアミンとから得られるポリアミドが好ましく、特に芳香族ポリアミドが好ましい。
ジカルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、メチルマレイン酸、ジメチルマレイン酸、フェニルマレイン酸、クロロマレイン酸、ジクロロマレイン酸、フルオロマレイン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、及びジフェン酸等が挙げられる。
ジアミンとしては、前記ポリアミド酸の説明において例示したものと同様のものが挙げられる。
<微粒子>
続いて、微粒子について説明する。微粒子は、例えば真球率が高く、粒径分布指数の小さいものが用いられる。このような微粒子は、液体中での分散性に優れ、互いに凝集しない状態となる。微粒子の粒径(平均直径)としては、例えば、100~2000nm程度に設定することができる。上記のような微粒子を用いることにより、後の工程で微粒子を除去することで得られる多孔性のイミド系樹脂膜Fの孔径を揃えることができる。このため、多孔性のイミド系樹脂膜Fによって形成されるセパレータに印加される電界を均一化できる。
なお、微粒子の材質としては、塗布液に含まれる溶剤に不溶であって、後の工程で多孔性のイミド系樹脂膜Fから除去可能な材質であれば、特に限定されることはなく公知のものを採用することができる。例えば、無機材料では、シリカ(二酸化珪素)、酸化チタン、アルミナ(Al2O3)等の金属酸化物が挙げられる。また、有機材料では、高分子量オレフィン(ポリプロピレン,ポリエチレン等)、ポリスチレン、エポキシ樹脂、セルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリエステル、ポリメチルメタクリレート、ポリエーテル等の有機高分子微粒子が挙げられる。また、微粒子の一例として、(単分散)球状シリカ粒子などのコロイダルシリカ、炭酸カルシウム等が挙げられる。この場合、多孔性のイミド系樹脂膜Fの孔径をより均一にすることができる。
また、塗布液を2種類用いる場合、第1塗布液に含まれる微粒子と第2塗布液に含まれる微粒子とは、真球率、粒径、材料等の諸元が同一であってもよいし、互いに異なってもよい。第1塗布液に含まれる微粒子は、第2塗布液に含まれる微粒子よりも粒径分布指数が小さいか同じであることが好ましい。あるいは、第1塗布液に含まれる微粒子は、第2塗布液に含まれる微粒子よりも真球率が小さいか同じであることが好ましい。また、第1塗布液に含まれる微粒子は、第2塗布液に含まれる微粒子よりも微粒子の粒径(平均直径)が小さいことが好ましく、特に、第1塗布液に含まれる微粒子が100~1000nm(より好ましくは100~600nm)であり、第2塗布液に含まれる微粒子が500~2000nm(より好ましくは700~2000nm)であることが好ましい。第1塗布膜に含まれる微粒子の粒径に第2塗布液に含まれる微粒子の粒径より小さいものを用いることで、多孔性のイミド系樹脂膜F表面の孔の開口割合を高く均一にすることができる。また、多孔性のイミド系樹脂膜F全体を第1塗布液に含まれる微粒子の粒径とした場合よりも膜の強度を高めることができる。
なお、上記塗布液は、所定の樹脂材料と、微粒子と、溶剤の他、必要に応じて、離型剤、分散剤、縮合剤、イミド化剤、界面活性剤等種々の添加剤を含んでいてもよい。
[塗布ユニット]
図2は、塗布ユニット10の一例を示す図である。図2に示すように、塗布ユニット10は、搬送部11と、第1ノズル12と、第2ノズル13と、乾燥部14と、剥離部15とを有する。搬送部11は、搬送基材(基材)Sと、基材送出ローラ11aと、支持ローラ11b~11dと、基材巻取ローラ11eと、搬出ローラ11fとを有する。図2では、2種類の塗布液を塗布する形態を示しており、第1塗布液を吐出する第1ノズル12と、第2塗布液を吐出する第2ノズル13と、を示しているが、この形態に限定されず、第1ノズル12及び第2ノズル13のいずれか一方を備える形態であってもよい。また、第1ノズル12及び第2ノズル13の双方から同一の塗布液を吐出する形態であってもよい。
搬送基材Sは、帯状に形成されている。搬送基材Sは、基材送出ローラ11aから送り出され、テンションを有するように支持ローラ11b~11dに架け渡されて、基材巻取ローラ11eによって巻き取られる。搬送基材Sの材質としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)などが挙げられるが、これに限定するものではなく、ステンレス鋼等の金属材料であってもよい。
各ローラ11a~11fは、例えば円筒状に形成され、それぞれX方向に平行に配置されている。なお、各ローラ11a~11fは、X方向に平行な配置に限られず、少なくとも1つがX方向に対して傾いて配置されてもよい。例えば、各ローラ11a~11fがZ方向に平行に配置され、Z方向の高さ位置が同一となるように配置されてもよい。この場合、搬送基材Sは、水平面(XY平面)に対して立った状態で水平面に沿って移動することになる。
基材送出ローラ11aは、搬送基材Sが巻かれた状態で配置される。支持ローラ11bは、基材送出ローラ11aの+Z側に配置されるとともに、基材送出ローラ11aよりも-Y側に配置される。また、支持ローラ11cは、支持ローラ11bの+Z側に配置されるとともに、支持ローラ11bよりも+Y側に配置される。この3つのローラ(基材送出ローラ11a、支持ローラ11b、11c)の配置により、搬送基材Sは支持ローラ11bの-Y側端部を含む面で支持される。
また、支持ローラ11dは、支持ローラ11cの+Y側に配置されるとともに、支持ローラ11cの-Z側に配置される。この場合、支持ローラ11b~11dの3つのローラの配置により、搬送基材Sは、支持ローラ11cの+Z側端部を含む面で支持される。
なお、支持ローラ11dが、支持ローラ11cの高さ位置(Z方向の位置)とほぼ等しい高さ位置に配置されてもよい。この場合、搬送基材Sは、支持ローラ11cから支持ローラ11dに向けてXY平面にほぼ平行な状態で+Y方向に送られる。
基材巻取ローラ11eは、支持ローラ11dの-Z側に配置される。支持ローラ11dから基材巻取ローラ11eに向けて、搬送基材Sは、-Z方向に送られる。搬出ローラ11fは、支持ローラ11dの+Y側かつ-Z側に配置される。搬出ローラ11fは、乾燥部14で形成される未焼成膜FAを+Y方向に送る。この未焼成膜FAは、搬出ローラ11fにより、塗布ユニット10の外部に搬出される。
なお、上記のローラ11a~11fは、円筒形に限られず、テーパー型、樽型、クラウン型が用いられてもよい。この場合、ローラ11a~11fのたわみ補正に有効であり、搬送基材S又は後述の未焼成膜FAがローラ11a~11fに均等に接触可能となる。また、ローラ11a~11fにラジアル型のクラウンが形成されてもよい。この場合、搬送基材S又は未焼成膜FAの蛇行防止に有効である。また、ローラ11a~11fにコンケイブ型のクラウン(X方向の中央部が凹形に湾曲した部分)が形成されてもよい。この場合、X方向に張力を付与しつつ搬送基材S又は未焼成膜FAを搬送することが可能となるため、シワの発生防止に有効となる。以下のローラについても、上記同様にテーパー型、ラジアル型、コンケイブ型等のクラウンを有する構成であってもよい。
第1ノズル12は、搬送基材Sに第1塗布液の塗布膜(以下、第1塗布膜F1とする)を形成する。第1ノズル12は、第1塗布液吐出する吐出口12aを有する。吐出口12aは、例えば長手方向が搬送基材SのX方向の寸法とほぼ同一となるように形成される。第1ノズル12は、吐出位置P1に配置される。吐出位置P1は、支持ローラ11bに対して-Y方向上の位置である。第1ノズル12は、吐出口12aが+Y方向を向くように傾いて配置される。従って、吐出口12aは、搬送基材Sのうち支持ローラ11bの-Y側端部で支持された部分に向けられる。第1ノズル12は、この搬送基材Sに対して、吐出口12aから水平方向に沿って第1塗布液を吐出する。
第2ノズル13は、搬送基材S上に第1塗布膜F1に重ねて第2塗布液の塗布膜(以下、第2塗布膜F2とする)を形成する。第2ノズル13は、第2塗布液を吐出する吐出口13aを有する。吐出口13aは、例えば長手方向が搬送基材SのX方向の寸法とほぼ同一となるように形成される。第2ノズル13は、吐出位置P2に配置される。吐出位置P2は、支持ローラ11cに対して+Z方向上の位置である。第2ノズル13は、吐出口13aが-Z方向を向くように配置される。従って、吐出口13aは、搬送基材Sのうち支持ローラ11cの+Z側端部で支持された部分に向けられる。第2ノズル13は、この搬送基材Sに対して、吐出口13aから重力方向に沿って第2塗布液を吐出する。
なお、第1ノズル12及び第2ノズル13は、X方向、Y方向及びZ方向のうち少なくとも一方向に移動可能であってもよい。また、第1ノズル12及び第2ノズル13は、X方向に平行な軸線の周りに回転可能に設けられてもよい。また、第1ノズル12及び第2ノズル13は、塗布液を吐出しないときには不図示の待機位置に配置され、塗布液を吐出する際に待機位置から上記の吐出位置P1、P2にそれぞれ移動するようにしてもよい。また、第1ノズル12及び第2ノズル13の予備吐出動作を行う部分が設けられてもよい。また、上記したように、第2ノズル13は、設けられなくてもよい。
第1ノズル12及び第2ノズル13は、それぞれ接続配管(不図示)などを介して、塗布液供給源(不図示)に接続されている。第1ノズル12及び第2ノズル13は、例えば内部に所定量の塗布液を保持する保持部(不図示)が設けられる。この場合、第1ノズル12及び第2ノズル13は、上記保持部に保持された液状体の温度を調整する温調部を有してもよい。
第1ノズル12又は第2ノズル13から吐出される各塗布液の吐出量や、第1塗布膜F1又は第2塗布膜F2の膜厚は、各ノズル、各接続配管(不図示)、若しくは塗布液供給源(不図示)に接続されるポンプ(不図示)の圧力、搬送速度、各ノズル位置又は搬送基材Sとノズルとの距離等により、調整可能である。
乾燥部14は、第2ノズル13の+Y側であって、支持ローラ11cと支持ローラ11dとの間に配置されている。乾燥部14は、搬送基材S上に塗布された2層の塗布膜(第1塗布膜F1及び第2塗布膜F2)を乾燥させ、未焼成膜FAを形成する。乾燥部14は、チャンバ14aと、加熱部14bとを有する。チャンバ14aは、搬送基材S及び加熱部14bを収容する。加熱部14bは、搬送基材S上に形成される第1塗布膜F1及び第2塗布膜F2を加熱する。加熱部14bとしては、例えば赤外線ヒータなどが用いられる。加熱部14bは、例えば、50℃~100℃程度の温度で塗布膜を加熱する。
剥離部15は、未焼成膜FAが搬送基材Sから剥離される部分である。本実施形態では、作業者の手作業によって未焼成膜FAの剥離が行われるが、この形態に限定されず、マニピュレータ等を用いて自動的に行ってもよい。搬送基材Sから剥離された未焼成膜FAは、搬出ローラ11fによって塗布ユニット10の外部に搬出され、巻き取り部51に送られる。また、未焼成膜FAが剥離された搬送基材Sは、基材巻取ローラ11eによって巻き取られる。
塗布ユニット10の+Y側には、未焼成膜FAを搬出する搬出口10bが設けられている。搬出口10bから搬出された未焼成膜FAは、巻き取り部51によって巻き取られる。巻き取り部51は、軸受51aに軸部材SFが装着された構成となっている。軸部材SFは、搬出口10bから搬出された未焼成膜FAを巻き取ってロール体Rを形成する。軸部材SFは、軸受51aに対して着脱可能に設けられる。軸部材SFは、軸受51aに装着される場合、X方向に平行な軸線の周りに回転可能となるように支持される。巻き取り部51は、軸受51aに装着される軸部材SFを回転させる不図示の駆動機構を有する。
なお、巻き取り部51では、未焼成膜FAのうち第1塗布膜F1側の面が外側に配置されるように未焼成膜FAを巻き取るようにする。例えば駆動機構によって軸部材SFを図1の反時計回りに回転させることにより、未焼成膜FAが巻き取られるようになっている。ロール体Rが形成された状態で軸部材SFを軸受51aから取り外すことにより、ロール体Rを他のユニットに移動させることが可能となる。
なお、本実施形態では、巻き取り部51が塗布ユニット10から独立して配置されているが、これに限定するものではない。例えば、巻き取り部51は、塗布ユニット10の内部に配置されていてもよい。この場合、塗布ユニット10に搬出口10bを配置せず、搬出ローラ11fから、(又は支持ローラ11dから)未焼成膜FAを巻き取ってロール体Rを形成してもよい。
[加熱ユニット]
加熱ユニット(加熱処理装置)20は、図1に示すように、塗布ユニット10の後段側(下流側)に配置される。本実施形態において、加熱ユニット20は、未焼成膜FA及び焼成膜FBに対する加熱処理を行うユニットである。加熱ユニット20は、未焼成膜FAを焼成し、微粒子を含んだ焼成膜FBを形成しつつ、焼成膜FBに含まれる微粒子を加熱して分解し、多孔性のイミド系樹脂膜Fを形成する。図3は、加熱ユニット20の一例を示す図である。図3に示すように、加熱ユニット20は、搬送部21と、加熱部22と、複数のローラ(棒状体)23とを有している。
搬送部21は、未焼成膜FA、焼成膜FB、及びイミド系樹脂膜Fを含む一連の膜を搬送方向に張力を与えつつ搬送する。本実施形態において、搬送部21は、送り出し部52及び巻き取り部53を有する。図4は、搬送部21の一例を示す図である。図4では、加熱部22の内部の構成を省略している。図4に示すように、送り出し部52は、軸受52aと、回転軸部材52bと、送りローラ52cとを有する。
送り出し部52は、軸受52aに回転軸部材52bが装着可能な構成となっている。回転軸部材52bは、巻き取り部51の軸受51aに装着する軸部材SFと共通の部材が使用可能である。従って、巻き取り部51から取り外した軸部材SFを送り出し部52の軸受52aに装着可能である。これにより、巻き取り部51で形成されたロール体Rを送り出し部52に配置することが可能である。回転軸部材52bは、X方向に平行な軸線の周りに回転可能となるように軸受52aに装着される。
送りローラ52cは、回転軸部材52bに対して搬送方向の下流側に配置される。送りローラ52cは、回転軸部材52bから送り出される未焼成膜FAに当接して加熱部22内に案内する。送りローラ52cは、不図示の軸受により回転可能に支持される。また、送りローラ52cには、ベルト52dが掛けられている。ベルト52dは、一方の端部が固定端であり、不図示の固定部に固定される。また、ベルト52dは、他方の端部に錘52eが取り付けられている。ベルト52dは、錘52eが取り付けられた端部が垂れ下がった状態で、送りローラ52cの摺動面52fに掛けられている。従って、送りローラ52cは、ベルト52dと摺動面52fとの摩擦により回転に負荷が掛けられた状態となっている。ベルト52d及び摺動面52fの摩擦係数や、錘52eの重量を調整することにより、送りローラ52cの回転の負荷を調整可能である。
巻き取り部53は、軸受53aに装着される駆動ローラ53bを回転させる不図示の駆動機構を有する。駆動ローラ53bは、加熱部22から搬出されるイミド系樹脂膜Fを巻き取る。駆動機構によって駆動ローラ53bを図1の時計回りに回転させることにより、未焼成膜FA、焼成膜FB、及びイミド系樹脂膜Fを含む一連の膜は、搬送方向D(+Y方向)に送られる。このとき、イミド系樹脂膜Fは、駆動ローラ53bにより巻き取られる一方、送りローラ52cでは回転に負荷が掛けられているため未焼成膜FAの送りにブレーキがかかった状態となっている。その結果、未焼成膜FA、焼成膜FB、及びイミド系樹脂膜Fを含む一連の膜は、駆動ローラ53bと送りローラ52cとの間において、搬送方向Dの張力が与えられた状態となっている。
なお、未焼成膜FA、焼成膜FB、及びイミド系樹脂膜Fを含む一連の膜に対して、搬送方向Dの張力を与える構成は、上記した構成に限定されず、膜に対して搬送方向Dの張力を付与可能な任意の機構を適用することができる。例えば、巻き取り部53の駆動ローラ53bによりイミド系樹脂膜Fを巻き取りつつ、送りローラ52cの回転にブレーキ(負荷)をかける構成、あるいは、駆動ローラ53bによるイミド系樹脂膜Fの巻き取り速度に対して、送りローラ52cによる未焼成膜FAの送り速度を遅くする構成により、搬送方向Dに送られる膜に対して張力を与えてもよい。
送りローラ52cの回転にブレーキをかける構成としては、例えば、送りローラ52cとともに回転する軸、又は未焼成膜FAが巻かれたロール体Rのコアを押さえることで、送りローラ52cの回転にブレーキをかけてもよいし、ロール体Rと一体で回転するブレード(ローター)が設けられて、このブレードをブレーキパッド等によりを挟むことで、送りローラ52cの回転にブレーキをかけてもよい。
また、駆動ローラ53bの巻き取り速度に対して送りローラ52cの送り出し速度を遅くする構成としては、例えば、送りローラ52c及び駆動ローラ53bのそれぞれを例えば電動モータ等の回転駆動源により駆動させ、制御部による制御により、又は作業者による設定等によりこれら2つの回転駆動源の回転速度(回転駆動力)を調整し、送りローラ52cの送り出し速度を駆動ローラ53bの巻き取り速度より遅くさせてもよい。2つの回転駆動源を用いる場合、送りローラ52c及び駆動ローラ53bの回転速度を調整することで、搬送方向Dに送られる膜に与える張力を任意に変更可能となる。また、送りローラ52c及び駆動ローラ53bの回転を制御する構成は、例えば、図2に示す塗布ユニット10において、基材送出ローラ11aから送り出した搬送基材Sに張力を与えつつ基材巻取ローラ11eで巻き取るといった構成と共通する。従って、加熱ユニット20における膜の搬送における構成と、塗布ユニット10における膜の搬送における構成とで多くの共通部品を用いることが可能となり、装置コストを低減できる。
加熱部22は、図3に示すように、チャンバ24と、ヒータ25と、ガス供給装置26と、ガス採取部27と、温度センサ28と、組ローラ29とを有する。チャンバ24は、未焼成膜FAが搬入される搬入側開口部24aと、イミド系樹脂膜Fが搬出される搬出側開口部24bとを有する。搬入側開口部24aは、未焼成膜FAをチャンバ24内に搬入可能な寸法に形成されている。搬出側開口部24bは、イミド系樹脂膜Fをチャンバ24から搬出可能な寸法に形成されている。チャンバ24は、搬入側開口部24aと搬出側開口部24bとが解放された状態となっている。この場合、ガス供給装置26からチャンバ24内に供給された所定ガスが、搬入側開口部24a及び搬出側開口部24bから排出されるガスの流れが形成され、このガスの流れによりチャンバ24内の清浄化を図ることができる。
ヒータ25は、チャンバ24内に配置される。ヒータ25は、搬送方向Dに沿って間隔を空けて複数配置される。ヒータ25としては、例えば、電熱ヒータ(シーズヒータ)が用いられるが、他の加熱方式(例えば、マイクロ波加熱方式)のヒータが適用されてもよい。複数のヒータ25は、搬送部21によって搬送される膜の搬送面TFの上方及び下方に配置される。上方側のヒータ25と下方側のヒータ25とは、搬送面TF(図5参照)からの上下方向の間隔が等しく又はほぼ等しくなるように配置される。なお、ヒータ25の数は任意に設定可能であり、さらに、複数のヒータ25が搬送方向Dに不等間隔で配置されてもよい。また、複数のヒータ25の一部は、搬送面TF(図5参照)に近づけて配置されてもよい。
ガス供給装置26は、チャンバ24内に所定ガスを供給することで、チャンバ24内を所定ガス雰囲気にする。ガス供給装置26は、ガス供給源26aと、供給管26bと、ポンプ26cとを有する。ガス供給源26aは、所定ガスとして、例えば、未焼成膜FA、焼成膜FB、又はイミド系樹脂膜Fに対して不活性な窒素ガス等を供給する。ガス供給源26aは、加熱ユニット20(製造システムSYS1)専用に設けられる形態でもよいし、工場の建屋等に備えているガス供給源を用いる形態であってもよい。供給管26bは、ガス供給源26aとチャンバ24内とを接続する。ポンプ26cは、所定ガスの供給量及び供給のタイミングを調整可能である。
ガス採取部27は、チャンバ24内の所定ガスを採取する。採取したガスは、例えば、チャンバ24内の雰囲気の状態を測定するためのサンプルとして用いることができる。例えば、不図示の制御装置により、ガス採取部27で採取したガスからチャンバ24内の雰囲気の状態を測定し、ポンプ26cを制御してチャンバ24内への所定ガスの供給量を調整してもよい。
温度センサ28は、チャンバ24内の温度を検出する。温度センサ28の検出結果は、不図示の制御装置に送信される。この制御装置は、温度センサ28の検出結果からヒータ25を制御し、チャンバ24内あるいは未焼成膜FA、焼成膜FB、又はイミド系樹脂膜Fに付与する熱量を調整する。例えば、制御装置は、複数のヒータ25を制御することにより、チャンバ24内を一定の温度に維持させることも可能であり、また、チャンバ24内における搬送方向Dの位置によって未焼成膜FA等に与える熱量を変更することも可能である。
組ローラ29は、チャンバ24内の搬入側開口部24aの近傍に配置される。組ローラ29は、未焼成膜FAを上面側及び下面側から挟む。組ローラ29は、チャンバ24内に搬入される未焼成膜FAに対して、上下方向に位置決めする。なお、組ローラ29を設けるか否かは任意であり、組ローラ29はなくてもよい。また、組ローラ29は、チャンバ24外の搬入側開口部24aの近傍(搬入側開口部24aに対して搬送方向Dの上流側)に配置されてもよい。
加熱部22は、第1加熱領域22a及び第2加熱領域22bを有する。未焼成膜FAは、第1加熱領域22a及び第2加熱領域22bを通過する間に焼成膜FBとなり、次いで多孔性のイミド系樹脂膜Fとなる。第1加熱領域22aは、加熱部22において未焼成膜FAの搬送方向Dの上流側(-Y側)に設けられる。第1加熱領域22aでは、未焼成膜FAを焼成して未焼成膜FAの一部又は全部を焼成膜FBとする。また、第1加熱領域22aでは、未焼成膜FAがポリイミド、ポリアミドイミド、及びポリアミドを除く材料を用いて形成される場合、加熱により未焼成膜FAをイミド化する。なお、第1加熱領域22aにおいて、加熱により微粒子の一部又は全部を分解して昇華させてもよい。第1加熱領域22aは、主として、焼成膜FBの生成又は未焼成膜FAのイミド化を目的とする。
第1加熱領域22aの搬送方向Dの長さは、焼成膜FBの生成又は未焼成膜FAのイミド化に必要な長さに設定され、第1加熱領域22aにおける加熱温度、及び搬送方向Dへの未焼成膜FAの搬送速度に応じて設定される。
第2加熱領域22bは、加熱部22において第1加熱領域22aの搬送方向の下流側(+Y側)に設けられる。第2加熱領域22bでは、加熱により焼成膜FBから微粒子を分解して昇華させる。微粒子の分解は、第1加熱領域22a及び第2加熱領域22bの双方において行われる。なお、第2加熱領域22bにおいて、焼成膜FBのうち未焼成部分の焼成又はイミド化を行ってもよい。第2加熱領域22bは、主として、加熱による微粒子の分解を目的とする。
第2加熱領域22bの搬送方向Dの長さは、微粒子の分解に必要な長さに設定され、第2加熱領域22bにおける加熱温度、及び搬送方向Dへの焼成膜FBの搬送速度に応じて設定される。
また、チャンバ24内がヒータ25により加熱されることにより、第1加熱領域22aと第2加熱領域22bとでほぼ同一の加熱温度に設定されるが、この構成に限定されない。例えば、ヒータ25による加熱温度が、第1加熱領域22aでは、焼成膜FBの生成又は未焼成膜FAのイミド化を図るための温度に設定され、第2加熱領域22bでは、微粒子の分解を図るための温度に設定されてもよい。第1加熱領域22aは、第2加熱領域22bより低い温度に設定されてもよい。また、第1加熱領域22aの搬送方向Dの長さは、第2加熱領域22bの搬送方向Dの長さより短いが、この構成に限定されず、第1加熱領域22aの搬送方向Dの長さが、第2加熱領域22bの搬送方向Dの長さより長くてもよいし、第1加熱領域22aと第2加熱領域22bとで搬送方向Dの長さが同一であってもよい。
熱により分解可能な微粒子を構成する有機材料としては、ポリイミドよりも低温で分解するものであれば、特に限定されることなく使用できる。例えば、線状ポリマーや公知の解重合性ポリマーからなる樹脂微粒子を挙げることができる。通常の線状ポリマーは、熱分解時にポリマーの分子鎖がランダムに切断され、解重合性ポリマーは、熱分解時にポリマーが単量体に分解するポリマーである。いずれも、低分子量体、あるいは、CO2まで分解することによって、焼成膜FBから消失する。この場合の微粒子の分解温度は200~420℃であることが好ましい。分解温度が200℃以上であれば、塗布液に高沸点溶剤を使用した場合も成膜を行うことができ、加熱ユニット20における焼成条件の選択の幅が広くなる。また、分解温度が420℃未満であれば、焼成膜FBに熱的なダメージを与えることなく微粒子のみを消失させることができる。なお、塗布液がポリアミド酸を含む場合、第1加熱領域22aにおいてイミド化させた後に、消失する微粒子(ポリアミド酸がイミド化する温度よりも高い分解点(分解温度)を有する微粒子)を用いることが好ましい。分解点が、ポリアミド酸がイミド化する温度よりも高く、かつ、ポリイミドよりも低温の分解点を有する微粒子を用いることで、多孔性のイミド系樹脂膜Fにおける孔の形状が球型になる点で好ましい。
複数のローラ23は、図3に示すように、第1押さえローラ23aと、第2押さえローラ23bとを含む。第1押さえローラ23aは、未焼成膜FA、焼成膜FB、又はイミド系樹脂膜Fの搬送面TF(図5参照)の下方において、未焼成膜FA等の下面に当接可能に配置される。第2押さえローラ23bは、未焼成膜FA、焼成膜FB、又はイミド系樹脂膜Fの搬送面TF(図5参照)の上方において、未焼成膜FA等の上面に当接可能である。
第1押さえローラ23aは、搬送方向Dに複数並んだ状態で配置される。複数の第1押さえローラ23aは、下側支持部材61に支持される。各第1押さえローラ23aは、X方向に平行な回転軸の軸周り方向に自由に回転可能に支持される。各第1押さえローラ23aは、下側支持部材61から上方に突出した状態で支持される。複数の第1押さえローラ23aは、垂直方向の高さ位置が互いに等しい状態で下側支持部材61に固定され、それぞれの上端が所定の水平面に揃った状態となっている。
第2押さえローラ23bは、搬送方向Dに複数並んだ状態で配置される。複数の第2押さえローラ23bは、上側支持部材62に支持される。各第2押さえローラ23bは、X方向に平行な回転軸の軸周り方向に自由に回転可能に支持される。各第2押さえローラ23bは、上側支持部材62から下方に突出した状態で支持される。複数の第2押さえローラ23bは、垂直方向の高さ位置が互いに等しい状態で上側支持部材62に固定され、それぞれの下端が所定の水平面に揃った状態となっている。
上側支持部材62は、チャンバ24の天井部分から吊り下げられた状態で配置される。上側支持部材62により、複数の第2押さえローラ23bは、垂直方向(Z方向)の位置が固定されている。上側支持部材62は、下側支持部材61の上方に配置される。第1押さえローラ23aと第2押さえローラ23bとは、搬送方向Dにずれて配置される。加熱部22には、このような下側支持部材61及び上側支持部材62の組が搬送方向Dに複数組並んで配置される。複数の下側支持部材61及び上側支持部材62のうちの一組は、第1加熱領域22aに配置される。また、残りの組は、第2加熱領域22bに配置される。
下側支持部材61は、昇降機構(ローラ移動装置)63に接続される。昇降機構63は、下側支持部材61を上下方向に昇降させる。昇降機構63は、下側支持部材61を昇降させることにより、複数の第1押さえローラ23aを一体で上下方向に昇降させることが可能である。昇降機構63は、下側支持部材61のそれぞれに個別に設けられる。従って、複数の下側支持部材61は、それぞれ独立して上下方向に移動可能となっている。
図5及び図6は、下側支持部材61及び上側支持部材62を-Y側から見た場合の一例を示す図である。図5及び図6に示すように、昇降機構63は、駆動源63aと、出力軸63bと、出力側ベベルギア63cと、伝達側ベベルギア63dと、ネジ軸63eと、ナット63fと、昇降部材63gと、案内軸63hとを有する。
駆動源63aは、例えば電動のモータ等が用いられる。出力軸63bは、X軸に平行に配置され、駆動源63aの出力によってX軸の軸周り方向に回転可能である。出力側ベベルギア63cは、出力軸63bと一体で回転する。伝達側ベベルギア63dは、出力側ベベルギア63cと噛み合っている。伝達側ベベルギア63dは、Z軸の軸周り方向に回転可能である。伝達側ベベルギア63dは、出力側ベベルギア63cの回転により回転する。ネジ軸63eは、伝達側ベベルギア63dと一体で回転する。ネジ軸63eは、Z軸と平行となるように配置され、Z軸まわりに回転する。ナット63fは、ネジ軸63eにネジ接合されている。ナット63fは、昇降部材63gにより回り止めが施されており、ネジ軸63eが回転することにより、ネジ軸63eに沿って上下方向に移動する。昇降部材63gは、下側支持部材61の下面側に固定され、ナット63fと一体で上下方向に移動する。案内軸63hは、上下方向に延びて昇降部材63gの一部を貫通して配置されており、昇降部材63gの上下方向への移動を案内する。
昇降機構63は、駆動源63aにより出力軸63bがX軸周り方向の一方に回転した場合、ネジ軸63eがZ軸周り方向の一方に回転し、ナット63f及び昇降部材63gが上下方向の一方(例えば上方)に移動する。また、昇降機構63は、駆動源63aにより出力軸63bがX軸周り方向の他方に回転した場合、ネジ軸63eがZ軸周り方向の他方に回転し、ナット63f及び昇降部材63gが上下方向の他方(例えば下方)に移動する。
図5及び図6に示すように、昇降機構63は、下側支持部材61を下降位置P11(図5等参照)と上昇位置P12(図6等参照)との間で昇降させる。下降位置P11では、図5に示すように、Y方向から見て第1押さえローラ23aと第2押さえローラ23bとが上下方向に離間した状態となる。上昇位置P12では、Y方向から見て第1押さえローラ23aの上端が第2押さえローラ23bの下端よりも上方に位置した状態となる。また、昇降機構63は、下降位置P11、上昇位置P12、又は下降位置P11と上昇位置P12との間の位置で下側支持部材61の位置を固定させることが可能である。その結果、複数の第1押さえローラ23aは、下降位置P11、上昇位置P12、又は下降位置P11と上昇位置P12との間の位置で固定される。
図7及び図8は、下側支持部材61及び上側支持部材62を+X側から見た場合の一例を示す図である。なお、図7は、下側支持部材61が下降位置P11に配置された状態を示す。また、図8は、下側支持部材61が上昇位置P12に配置された状態を示す。図7に示すように、下側支持部材61が下降位置P11に配置される場合、第1押さえローラ23aは、搬送部21による未焼成膜FA等の搬送面TFの下方に配置される。従って、第1押さえローラ23aは、搬送部21によって搬送される未焼成膜FA等から下方に離間した状態で配置される。また、第2押さえローラ23bは、搬送部21によって搬送される未焼成膜FA等から上方に離間した状態で配置される。
一方、図8に示すように、下側支持部材61が上昇位置P12に配置される場合、第1押さえローラ23aは、搬送面TFの上側に配置される。また、第1押さえローラ23aの上端が、第1押さえローラ23bの下端よりも上側に配置される。従って、図8に示すように、搬送部21によって搬送される未焼成膜FA等は、-X方向から見て、第1押さえローラ23aによって上側に押さえられ、第2押さえローラ23bによって下側に押さえられた状態で蛇行しながら搬送方向Dに搬送される。
その結果、未焼成膜FA等に対して第1押さえローラ23a及び第2押さえローラ23bから張力が付与される。未焼成膜FAは、この張力が付与された状態で加熱され、焼成膜FBとなる。さらに、この張力が付与された状態で微粒子が除去されて多孔性のイミド系樹脂膜Fとなる。このように、未焼成膜FA等を加熱するタイミングで第1押さえローラ23a及び第2押さえローラ23bにより張力が付与されるので、加熱後の焼成膜FB又はイミド系樹脂膜Fにシワあるいはヨレ、破損が生じるのを抑制することができる。
なお、昇降機構63は、上記した構成に限定されない。下側支持部材61を昇降可能な任意の構成を適用可能である。また、下側支持部材61(第1押さえローラ23a)を上側支持部材62(第2押さえローラ23b)に対して昇降させる構成に限定されない。例えば、上側支持部材62(第2押さえローラ23b)を下側支持部材61(第1押さえローラ23a)に対して昇降させる構成が適用されてもよいし、上側支持部材62(第2押さえローラ23b)及び下側支持部材61(第1押さえローラ23a)の双方を昇降させる構成が適用されてもよい。
図9は、加熱ユニットの他の例を示す図である。図9に示す加熱ユニット20Aでは、第1押さえローラ23a及び第2押さえローラ23bが第1加熱領域22aに設けられ、第2加熱領域22bには設けられない構成である。すなわち、第1押さえローラ23a及び第2押さえローラ23bは、加熱部22内において搬送方向Dの上流側に配置されている。なお、図9に示す加熱ユニット20Aにおいて、上記した実施形態と同様の構成については同一の符号を付して、その説明を省略又は簡略化する。
加熱ユニット20Aは、図9に示すように、第2加熱領域22bにおいて、焼成膜FB又はイミド系樹脂膜Fの下面側に、ローラ(棒状体)23として、搬送方向Dに間隔を空けて配置される複数の支持ローラ23cを有する。複数の支持ローラ23cは、X方向の軸周り方向に回転可能な状態でチャンバ24に支持される。支持ローラ23cは、焼成膜FB又はイミド系樹脂膜Fの下面側及び上面側の双方に配置されてもよい。この構成では、第1加熱領域22aにおいては、未焼成膜FAから焼成膜FBになる過程において、第1押さえローラ23a及び第2押さえローラ23bにより未焼成膜FA又は焼成膜FBに張力を付与している。第2加熱領域22bにおいては、複数の支持ローラ23cにより焼成膜FB又はイミド系樹脂膜Fの下面を支持しつつ、搬送部21により付与される張力を維持しながら焼成膜FB又はイミド系樹脂膜Fを搬送方向Dに搬送している。
第1押さえローラ23a及び第2押さえローラ23bは、第1加熱領域22aの全部において配置されてもよいし、第1加熱領域22aの一部に配置されてもよい。第1押さえローラ23a及び第2押さえローラ23bを第1加熱領域22aの一部に配置する場合、第1加熱領域22aのうち、チャンバ24の搬入側開口部24aの近傍に配置されてもよいし、第2加熱領域22bの近傍に配置されてもよい。また、第1押さえローラ23a及び第2押さえローラ23bが第1加熱領域22aに配置されることに限定されない。例えば、第1押さえローラ23a及び第2押さえローラ23bは、第1加熱領域22aには上記した支持ローラ23cが配置され、第2加熱領域22bの全部又は一部に第1押さえローラ23a及び第2押さえローラ23bが配置されてもよい。
[ケミカルエッチングユニット]
ケミカルエッチングユニット30は、図1に示すように、加熱ユニット20の+Y側(後段側、下流側)に配置される。図10は、ケミカルエッチングユニット30の一例を示す図である。図10に示すように、ケミカルエッチングユニット30は、ケミカルエッチング部31と、洗浄部32と、搬送部33とを有する。
ケミカルエッチング部31は、イミド系樹脂膜Fに対してケミカルエッチング液Q1を用いてケミカルエッチングを行い、イミド系樹脂膜Fの一部を溶解する。ケミカルエッチング部31は、貯留槽31aを有する。貯留槽31aには、ケミカルエッチング液Q1が貯留される。貯留槽31aは、ケミカルエッチング液Q1を排出する排出部31bを有する。排出部31bは、例えば所定の処理設備を介して下水に接続される。
洗浄部32は、ケミカルエッチング後のイミド系樹脂膜Fを洗浄する。洗浄部32は、ケミカルエッチング部31の+Y側(イミド系樹脂膜Fの搬送方向Dの前方、後段側、下流側)に配置される。洗浄部32は、洗浄液を供給する供給部32aと、イミド系樹脂膜Fを洗浄した後の廃液を回収する廃液回収槽32bとを有する。廃液回収槽32bは、排出部32cを有する。排出部32cは、例えば所定の処理設備を介して下水に接続される。
搬送部33は、送り出し部54から送り出されたイミド系樹脂膜Fを順次取り込み、ケミカルエッチング部31のケミカルエッチング液Q1に浸漬させる。送り出し部54に配置されるイミド系樹脂膜Fのロール体Rは、上記した加熱ユニット20から排出されて巻き取られたイミド系樹脂膜Fのロール体である。また、搬送部33は、ケミカルエッチング部31においてケミカルエッチング液Q1に浸漬させた後のイミド系樹脂膜Fを洗浄部32に搬送し、洗浄後のイミド系樹脂膜Fを搬出する。洗浄後のイミド系樹脂膜Fは、巻き取り部55により巻き取られてロール体Rとなる。
搬送部33は、搬入ローラ33aと、浸漬ローラ33b、33cと、中継ローラ33d、33eと、洗浄ローラ33f、33gと、搬出ローラ33hとを有する。搬入ローラ33aは、ケミカルエッチングユニット30に搬送されるイミド系樹脂膜Fを-Z側に折り曲げて浸漬ローラ33b側に案内する。浸漬ローラ33b、33cは、少なくとも一部がケミカルエッチング液Q1に浸漬された状態で配置される。浸漬ローラ33cは、搬入ローラ33aから-Z側に案内される多孔性のイミド系樹脂膜Fを-Z側の端部において支持して、+Y側に案内する。浸漬ローラ33cは、浸漬ローラ33bから案内される多孔性のイミド系樹脂膜Fを+Z側に折り曲げて中継ローラ33d側に案内する。イミド系樹脂膜Fは、浸漬ローラ33b、33cの-Z側端部によって案内されることで、ケミカルエッチング液Q1に浸漬された状態となる。
中継ローラ33d、33eは、ケミカルエッチング部31と洗浄部32との間でイミド系樹脂膜Fを搬送する。中継ローラ33dは、浸漬ローラ33cから+Z側に案内されるイミド系樹脂膜Fを+Y側に折り曲げて中継ローラ33e側に案内する。中継ローラ33eは、中継ローラ33dから+Y側に案内されるイミド系樹脂膜Fを-Z側に折り曲げて洗浄ローラ33f側に案内する。なお、ケミカルエッチング部31と洗浄部32とでは内部に含む液体が異なるので、中継ローラ33d、33eの少なくとも一方に代えて、あるいは中継ローラ33d、33eとは別に吸水ローラが設けられてもよい。吸水ローラは、イミド系樹脂膜Fに対して上面側及び下面側の少なくとも一方、好ましくは両方に配置されてもよい。
洗浄ローラ33f、33gは、廃液回収槽32bの内部に配置される。洗浄ローラ33fは、洗浄部32において、供給部32aから洗浄液の供給を受けるイミド系樹脂膜Fを支持して搬送する。洗浄ローラ33fは、中継ローラ33eから案内されるイミド系樹脂膜Fを-Z側の端部で支持し、+Y側に折り曲げて洗浄ローラ33g側に案内する。洗浄ローラ33gは、洗浄ローラ33fから案内されるイミド系樹脂膜Fを+Z側に折り曲げて搬出ローラ33h側に案内する。搬出ローラ33hは、洗浄ローラ33gから+Z側に案内されるイミド系樹脂膜Fを+Y方向に折り曲げてケミカルエッチングユニット30から搬出させる。搬出ローラ33hにより案内されるイミド系樹脂膜Fは、巻き取り部55により巻き取られてロール体Rとなる。
なお、上記した実施形態においては、加熱ユニット20の巻き取り部53によりイミド系樹脂膜Fを巻き取ったロール体Rを、ケミカルエッチングユニット30の送り出し部54に配置する構成を連に上げて説明しているが、この構成に限定されない。例えば、加熱ユニット20から排出されたイミド系樹脂膜Fを巻き取らずにケミカルエッチングユニット30に供給する構成であってもよい。
[製造方法]
次に、上記のように構成された製造システムSYS1を用いて多孔性のイミド系樹脂膜Fを製造する動作の一例を説明する。図11(a)~(d)、図12(e)、(f)、及び図13(g)は、製造システムSYS1におけるイミド系樹脂膜Fの製造過程の一例を示す図である。まず、塗布ユニット10により、未焼成膜FAを形成する。塗布ユニット10では、基材送出ローラ11aを回転させて搬送基材Sを送り出し、搬送基材Sを支持ローラ11b~11dに掛けた後、基材巻取ローラ11eで巻き取らせる。その後、基材送出ローラ11aから搬送基材Sを順次送り出すと共に、基材巻取ローラ11eで巻き取りを行う。
この状態で、第1ノズル12を吐出位置P1に配置させ、吐出口12aを+Y方向に向ける(図2参照)。これにより、搬送基材Sのうち支持ローラ11bによって支持される部分に吐出口12aが向けられる。その後、吐出口12aから第1塗布液を吐出させる。第1塗布液は、吐出口12aから+Y方向に向けて吐出され、搬送基材Sに到達した後、搬送基材Sの移動に伴って搬送基材S上に塗布される。これにより、図11(a)に示すように、搬送基材S上に第1塗布液による第1塗布膜F1が形成される。
また、第2ノズル13を用いる場合は、第2ノズル13を吐出位置P2に配置させ、吐出口13aを-Z方向に向ける。これにより、搬送基材Sのうち支持ローラ11cによって支持される部分に吐出口13aが向けられる。その後、吐出口13aから第2塗布液を吐出させる。第2塗布液は、吐出口13aから-Z方向に向けて吐出され、搬送基材Sに形成された第1塗布膜F1上に到達した後、搬送基材Sの移動に伴って第1塗布膜F1上に塗布される。これにより、図11(b)に示すように、第1塗布膜F1上に第2塗布液による第2塗布膜F2が形成される。なお、第1塗布膜F1及び第2塗布膜F2には、一例として、樹脂材料A1に微粒子A2が互いに異なる体積比で含まれる。例えば、微粒子の含有率は、第1塗布膜F1の方が第2塗布膜F2よりも大きく設定される。
なお、搬送基材Sのうち支持ローラ11b、11cによって支持される部分に吐出口12a、13aを向けた状態で第1塗布液及び第2塗布液が塗布されるため、第1塗布液及び第2塗布液が搬送基材Sに到達するときに搬送基材Sに作用する力が支持ローラ11b、11cによって受けられる。このため、搬送基材Sの撓みや振動等の発生が抑制され、搬送基材S上に均一な厚さで安定して第1塗布膜F1及び第2塗布膜F2が形成される。
続いて、搬送基材Sが移動し、第1塗布膜F1及び第2塗布膜F2の積層部分が乾燥部14のチャンバ14a内に搬入されると、乾燥部14において第1塗布膜F1及び第2塗布膜F2の乾燥が行われる。乾燥部14では、加熱部14bを用いて、例えば50℃~100℃程度の温度で第1塗布膜F1及び第2塗布膜F2を加熱する。この温度範囲であれば、搬送基材Sに歪みや変形等が発生することなく、第1塗布膜F1及び第2塗布膜F2を加熱できる。第1塗布膜F1及び第2塗布膜F2の積層体を乾燥することにより、図11(c)に示すように、未焼成膜FAが形成される。
続いて、搬送基材Sが移動し、未焼成膜FAの先端部分が支持ローラ11d(剥離部15)に到達した場合には、例えば作業者の手作業により、この先端部分を搬送基材Sから剥離する。本実施形態では、搬送基材Sの材料として例えばPETが用いられているため、第1塗布膜F1及び第2塗布膜F2を乾燥させて未焼成膜FAを形成した場合、搬送基材Sから剥がれやすくなるため、作業者は容易に剥離を行うことができる。
未焼成膜FAの先端部分を剥離した後、引き続き搬送基材Sが移動し、第1ノズル12によって第1塗布膜F1が形成される。また、引き続き第2ノズル13によって第2塗布膜F2が形成され、乾燥部14によって未焼成膜FAが形成される。これにより、未焼成膜FAが帯状に形成され、乾燥部14から+Y側に搬出される未焼成膜FAの長さが徐々に長くなる。作業者は、剥離部15において未焼成膜FAを剥離し続ける。そして、剥離された未焼成膜FAの先端が巻き取り部51の軸部材SFに到達する長さになった場合、作業者は手作業によって未焼成膜FAを搬出ローラ11fに掛けると共に、未焼成膜FAの先端部分を軸部材SFに取り付ける。その後、未焼成膜FAが順次形成され、剥離されていくのに応じて、巻き取り部51で軸部材SFを回転させる。これにより、剥離された未焼成膜FAが順次塗布ユニット10から搬出され、巻き取り部51の軸部材SFによって巻き取られてロール体Rが形成される。ロール体Rを構成する未焼成膜FAは、図11(d)に示すように、搬送基材Sから剥離された状態となり、表面及び裏面が共に露出する。
なお、未焼成膜FAの先端部分を剥離する作業、及び剥離した先端部分を軸部材SFに装着する作業等については、作業者が手作業で行う態様に限られず、例えば、ロボットアーム、マニピュレータ等を用いて自動で行ってもよい。また、未焼成膜FAの剥離性を高めるため、搬送基材Sの表面に離型層を形成しておいてもよい。
所定の長さの未焼成膜FAが軸部材SFに巻き取られた後、未焼成膜FAをカットすると共に、軸部材SFをロール体Rごと軸受51aから取り外す。そして、新たな軸部材SFを巻き取り部51の軸受51aに装着し、未焼成膜FAの切り取り端部をこの軸部材SFに取り付けて回転させ、未焼成膜FAを引き続き形成することにより、新たなロール体Rを作成可能である。
一方、例えば作業者は、軸受51aからロール体Rごと取り外した軸部材SFを加熱ユニット20の送り出し部52に搬送し、軸受52aに装着する。この軸部材SFの搬送動作及び装着動作は、マニピュレータや搬送装置等を用いて自動で行ってもよい。軸部材SFを軸受52aに装着した後、軸部材SF(回転軸部材52b)を回転させることでロール体Rから未焼成膜FAが順次引き出される。ロール体Rから引き出された未焼成膜FAは、送りローラ52cにより加熱ユニット20の加熱部22内に送られる。
加熱ユニット20では、搬送部21において送り出し部52の送りローラ52cに負荷をかけない状態とし、下側支持部材61を下降位置P11に配置させた状態とする。この状態で、未焼成膜FAの先端を搬送方向(+Y方向)に引き出し、第1押さえローラ23aと第2押さえローラ23bとの間を通過させる。そして、未焼成膜FAの先端をチャンバ24の搬出側開口部24bから搬出し、巻き取り部53の駆動ローラ53b(軸部材SF)に巻きつける。なお、未焼成膜FAの先端を駆動ローラ53bに巻き付ける場合には、作業者が手作業で行ってもよいし、マニピュレータ等を用いて自動で行ってもよい。
未焼成膜FAの先端を駆動ローラ53bに巻き付けた後、錘52eを先端に取り付けたベルト52dを摺動面52fに掛け回して送りローラ52cに負荷をかけ、この状態で駆動ローラ53bを回転させる。未焼成膜FAが送りローラ52cから摩擦力を受けることにより、駆動ローラ53bと送りローラ52cとの間に張力が与えられた状態で、未焼成膜FAが搬送方向に搬送される。また、未焼成膜FAを搬送した後、下側支持部材61を上昇位置P12に移動させる。これにより、第1押さえローラ23aが未焼成膜FAの下面を上側に押さえ、第2押さえローラ23bが未焼成膜FAの上面を下側に押さえた状態で未焼成膜FAが搬送される。
このように未焼成膜FAを搬送させた後、組ローラ29によって未焼成膜FAを挟んだ状態として、加熱部22において未焼成膜FAの加熱を行う。組ローラ29によって未焼成膜FAを挟むことにより、チャンバ24内において未焼成膜FAを安定して搬送させることができる。
加熱部22で加熱を行う場合、まず、第1加熱領域22aでは、未焼成膜FAの焼成を行う。焼成時の温度は、未焼成膜FAの構造により異なるが、120℃~450℃程度であることが好ましく、更に好ましくは220℃~440℃である。この好ましい焼成温度の範囲は、例えば、微粒子A2の分解点の下限より高い値である。なお、塗布液がポリアミド酸を含む場合、この焼成においてはイミド化を完結させることが好ましいが、未焼成膜FAがポリイミド、ポリアミドイミド又はポリアミドから構成され、加熱ユニット20により未焼成膜FAに対し高温処理を行う場合はこの限りでない。
また、焼成条件は、例えば、塗布液がポリアミド酸及び/又はポリイミドを含む場合、室温から50℃刻みで段階的に375℃まで昇温(各ステップ20分保持)し、最終的に375℃で20分保持させる等の段階的な加熱を行ってもよい。また、未焼成膜FAの端部をSUS製の型枠等に固定し変形を防ぐようにしてもよい。
このような焼成により、図12(e)に示すように、焼成膜FBが形成される。焼成膜FBでは、イミド化又は高温処理された樹脂層A3の内部に微粒子A2が含まれている。焼成膜FBの膜厚は、例えばマイクロメータ等で複数の箇所の厚さを測定し平均することで求めることができる。好ましい平均膜厚としては、セパレータ等に用いられる場合は、3μm~500μmであることが好ましく、5μm~100μmであることがより好ましく、10μm~30μmであることが更に好ましい。
次に、第2加熱領域22bでは、焼成膜FBを加熱することにより、焼成膜FBに含まれる微粒子A2を分解させる。焼成膜FBの加熱時の温度は、微粒子A2を熱分解させることができる温度に設定する必要がある。なお、第1加熱領域22aの加熱温度を、微粒子A2を熱分解可能な温度に設定することにより、第1加熱領域22aにおいて焼成膜FBの形成と微粒子A2の熱分解とを同時に行わせることができる。微粒子A2を熱分解させることにより、図12(f)に示すように、樹脂層A3の内部に上下面を貫通する複数の多孔部A4が含まれたイミド系樹脂膜Fが形成される。形成されたイミド系樹脂膜Fは、搬出側開口部24bからチャンバ24の外部に搬出され、巻き取り部53の駆動ローラ53bに巻き取られてロール体Rとなる。
所定の長さのイミド系樹脂膜Fが駆動ローラ53bに巻き取られた後、イミド系樹脂膜Fをカットすると共に、駆動ローラ53bをロール体Rごと軸受53aから取り外す。そして、新たな軸部材SFを駆動ローラ53bとして巻き取り部53の軸受53aに装着し、イミド系樹脂膜Fの切り取り端部をこの駆動ローラ53bに取り付けて回転させ、イミド系樹脂膜Fを引き続き形成することにより、新たなロール体Rを作成可能である。
また、例えば作業者は、軸受53aからロール体Rごと取り外した駆動ローラ53bを送り出し部54に搬送し、軸部材SFとしてケミカルエッチングユニット30の軸受54aに装着する。この軸部材SFの搬送動作及び装着動作は、マニピュレータや搬送装置等を用いて自動で行ってもよい。軸部材SFを軸受54aに装着した後、軸部材SFを回転させることでロール体Rからイミド系樹脂膜Fが順次引き出され、イミド系樹脂膜Fがケミカルエッチングユニット30内に搬入される。なお、イミド系樹脂膜Fの先端をケミカルエッチングユニット30に搬入する場合には、作業者が手作業で行ってもよいし、マニピュレータ等を用いて自動的に行ってもよい。
ケミカルエッチングユニット30に搬入されたイミド系樹脂膜Fは、搬入ローラ33aによって+Y方向に搬送され、浸漬ローラ33b、33cの-Z側端部に架け渡される。イミド系樹脂膜Fは、浸漬ローラ33bから浸漬ローラ33cに移動する間に、貯留槽31a内のケミカルエッチング液Q1に浸漬される。これにより、イミド系樹脂膜Fに対してケミカルエッチング処理が行われる。これにより、図13(g)に示すように、イミド系樹脂膜Fは、多孔部A4のバリが取れると共に、穴径が拡がって連通性が確保されることになる。
その後、イミド系樹脂膜Fは、中継ローラ33d、33eを経由して洗浄部32に搬送され、洗浄ローラ33f、33gの-Z側端部に架け渡される。イミド系樹脂膜Fは、洗浄ローラ33fから洗浄ローラ33gに移動する間に、供給部32aから供給される洗浄液により洗浄される。洗浄後のイミド系樹脂膜Fは、搬出ローラ33hにより+Y側に搬送され、巻き取り部55によって巻き取られてロール体Rとなる。
以上のように、本実施形態によれば、加熱ユニット20において、未焼成膜FA、焼成膜FB、及びイミド系樹脂膜Fを含む一連の膜に対して、複数のローラ23により支持しつつ、搬送方向Dに張力を付与しながら加熱するので、加熱後の焼成膜FB又はイミド系樹脂膜Fにシワあるいはヨレ、破損などが生じるのを抑制することができる。その結果、本実施形態の製造システムSYS1によれば、多孔性のイミド系樹脂膜Fを効率よく製造することができる。
[変形例]
上記した実施形態では、加熱ユニット20において、未焼成膜FAの焼成及び微粒子の熱分解を行う構成を例に挙げて説明したが、この形態に限定されない。例えば、加熱ユニット20では、未焼成膜FAの焼成を行う構成であってもよい。図14は、変形例に係る製造システムSYS2の一例を示す図である。図14に示すように、製造システムSYS2は、加熱ユニット20とケミカルエッチングユニット30との間に、除去ユニット40を備える。除去ユニット40は、エッチング液Q2により微粒子A2を溶解させることで除去する。この場合、加熱ユニット20は、加熱部22において第1加熱領域22aが設けられていればよく、第2加熱領域22bは設けられなくてもよい。
図15は、除去ユニット40の一例を示す図である。除去ユニット40は、チャンバ41と、エッチング部42と、洗浄部43と、液切部44と、搬送部45と、を有する。チャンバ41は、焼成膜FBを搬入する搬入口40aと、イミド系樹脂膜Fを搬出する搬出口40bとを有する。チャンバ41は、エッチング部42、洗浄部43、液切部44及び搬送部45を収容する。
エッチング部42は、焼成膜FBに対してエッチングを行い、焼成膜FBに含まれる微粒子A2を除去して、多孔性のイミド系樹脂膜Fを形成する。エッチング部42では、微粒子A2を溶解又は分解可能なエッチング液Q2に焼成膜FBを浸すことで微粒子を除去する。エッチング部42には、このようなエッチング液Q2を供給する供給部(不図示)や、エッチング液Q2を貯留可能な貯留部が設けられる。エッチング部42と洗浄部43とでは内部に含む液体が異なるので、エッチング部42から搬出される手前の位置に吸水ローラを設けてもよい。吸水ローラは、イミド系樹脂膜Fに対して上面側及び下面側の少なくとも一方、好ましくは両方に配置される。
洗浄部43は、エッチング後のイミド系樹脂膜Fを洗浄する。洗浄部43は、エッチング部42の+Y側(イミド系樹脂膜Fの搬送方向の前方、後段側、下流側)に配置される。洗浄部43は、洗浄液を供給する供給部(不図示)を有する。また、イミド系樹脂膜Fを洗浄した後の廃液を回収する回収部(不図示)などを有してもよい。
液切部44は、洗浄後のイミド系樹脂膜Fに付着した液体を除去する。液切部44では、イミド系樹脂膜Fの予備乾燥等を行ってもよい。液切部44は、洗浄部43の+Y側(イミド系樹脂膜Fの搬送方向の前方、後段側、下流側)に配置される。液切部44には、吸水ローラ等が設けられている。吸水ローラをイミド系樹脂膜Fに接触させることにより、イミド系樹脂膜Fを搬送しつつ、イミド系樹脂膜Fに付着している液体を吸収可能である。吸水ローラの搬送方向Dに対する配置は、液切部44から搬出される手前であれば特に制限されない。また吸水ローラは、イミド系樹脂膜Fに対して上面側及び下面側の少なくとも一方、好ましくは両方に配置される。
搬送部45は、エッチング部42、洗浄部43及び液切部44に亘って焼成膜FB及びイミド系樹脂膜Fを搬送する。なお、搬送部45は、エッチング部42、洗浄部43、液切部44ごとにイミド系樹脂膜Fを搬送する構成であってもよい。搬送部45は、チャンバ41内において、複数の搬送ローラ45aを有する。搬送ローラ45aは、焼成膜FB及び多孔性のイミド系樹脂膜Fを支持して回転可能である。また、搬送部45は、送り出し部56と、巻き取り部57とを有する。送り出し部56は、上記の加熱ユニット20の巻き取り部53から取り外したロール体Rを不図示の軸受けに装着可能な構成となっている。この構成により、加熱ユニット20の巻き取り部53で形成されたロール体Rを、除去ユニット40の送り出し部56に配置することが可能となる。送り出し部56に配置されたロール体Rは、X方向に平行な軸線の周りに回転可能である。
巻き取り部57は、不図示の軸受に軸部材が装着された構成となっている。巻き取り部57は、軸受に装着される軸部材を回転させる不図示の駆動機構を有する。この駆動機構により軸部材を回転させ、搬出口40bから搬出されたイミド系樹脂膜Fを巻き取ってロール体Rを形成する。巻き取り部57で形成されたロール体Rは取り外して保管場所等に搬送可能である。
製造システムSYS2のように、除去ユニット40を用いる場合であっても、加熱ユニット20において未焼成膜FA等にシワやヨレ、破損などが生じるのを抑制しているので、焼成膜FBからの微粒子の除去を除去ユニット40で効率よく行うことができる。
また、上記した実施形態及び変形例では、イミド系樹脂膜Fの一部を除去する方法として、ケミカルエッチング法を例に挙げて説明したが、この方法に限定されない。例えば、ケミカルエッチング法と物理的除去方法とを組合せた方法によりイミド系樹脂膜Fの一部を除去するようにしてもよい。物理的な方法としては、例えば、プラズマ(酸素、アルゴン等)、コロナ放電等によるドライエッチング、研磨剤(例えば、アルミナ(硬度9)等)を液体に分散し、これを芳香族ポリイミドフィルムの表面に30m/s~100m/sの速度で照射することでポリイミドフィルム表面を処理する方法等が使用できる。これらの手法は、焼成膜FBから微粒子A2を除去する前及び微粒子A2の除去後のいずれの場合にも適用可能である。また、微粒子A2を除去した後に行う場合にのみ適用可能な物理的方法として、対象表面を液体で濡らした台紙フィルム(例えばPETフィルム等のポリエステルフィルム)に圧着後、乾燥しないで又は乾燥した後、イミド系樹脂膜Fを台紙フィルムから引きはがす方法を採用することもできる。液体の表面張力あるいは静電付着力に起因して、イミド系樹脂膜Fの表面層のみが台紙フィルム上に残された状態で、イミド系樹脂膜Fが台紙フィルムから引きはがされる。
また、上記実施形態及び変形例では、塗布ユニット10、加熱ユニット20、ケミカルエッチングユニット30、及び除去ユニット40が1台ずつ配置された構成を例に挙げて説明したが、この構成に限定されない。例えば、上記ユニットの少なくとも1つが複数台設けられてもよい。この場合、例えば単位時間あたりに処理可能な未焼成膜FA、焼成膜FB又はイミド系樹脂膜Fの分量(例、長さ、等)が少ないユニットを複数配置することにより、製造システムSYS1、SYS2全体の製造効率を高めることができる。
また、上記した実施形態及び変形例では、塗布ユニット10、加熱ユニット20、ケミカルエッチングユニット30、及び除去ユニット40が、未焼成膜FA、焼成膜FB又は多孔性のイミド系樹脂膜Fの各膜をY方向に沿って搬送する場合を例に挙げて説明したが、これに限定するものではない。例えば、いずれかのユニットが膜をX方向、Y方向、Z方向又はこれらの合成方向に搬送してもよいし、1つのユニット内で搬送方向を適宜変更してもよい。
また、上記した実施形態及び変形例の構成に加えて、ケミカルエッチングユニット30で一部が除去されたイミド系樹脂膜Fに対して後処理を行う後処理ユニットが設けられてもよい。この後処理ユニットとしては、例えば、イミド系樹脂膜Fに対して除電処理を行う帯電防止ユニットなどが挙げられる。帯電防止ユニットには、例えばイオナイザーなどの除電装置が搭載される。
[セパレータ]
次に、実施形態に係るセパレータ100を説明する。図16は、リチウムイオン電池200の一例を示す模式図であり、一部が切り開かれた状態を示している。図16に示すように、リチウムイオン電池200は、正極端子を兼ねた金属ケース201と、負極端子202とを有する。金属ケース201の内部には、正極201aと、負極202aと、セパレータ100とが設けられており、不図示の電解液に浸されている。セパレータ100は、正極201aと負極202aとの間に配置され、正極201aと負極202aとの間の電気的接触を防いでいる。正極201aとしては、リチウム遷移金属酸化物が用いられ、負極202aとしては、例えばリチウムやカーボン(グラファイト)等が用いられている。
上記した実施形態に記載のイミド系樹脂膜Fは、このリチウムイオン電池200のセパレータ100として用いられる。この場合、例えば第1塗布膜F1が形成される面をリチウムイオン電池の負極202a側とすることにより、電池性能を向上することができる。なお、図16では、角型のリチウムイオン電池200のセパレータ100を例に挙げて説明しているが、この形態に限定されない。上記のイミド系樹脂膜Fは、円筒型やラミネート型等のいずれのタイプのリチウムイオン電池のセパレータであっても用いることができる。なお、リチウムイオン電池のセパレータの他、上記の多孔性のイミド系樹脂膜Fは、燃料電池電解質膜、ガス又は液体の分離用膜、低誘電率材料として使用することが可能である。