JP2019090843A - 光学フィルムの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】返材として再利用しやすく、延伸時のボーイング現象や位相差発現性に起因する位相差ムラが低減された、可溶性ポリイミドを主成分とする光学フィルムの製造方法を提供する。【解決手段】可溶性、透明ポリイミド樹脂を含有する光学フィルムの製造方法であって、ドープを支持体上に流延し、流延膜を形成する工程、流延膜を支持体から剥離する工程、及び剥離された該流延膜を延伸する工程を有し、延伸する工程における延伸温度が、ポリイミド樹脂のガラス転移温度をTg(℃)としたときに、(Tg−250℃)〜(Tg−100℃)の範囲内であり、延伸開始からから延伸終了までのフィルム温度の変化が70℃以内であり、かつ、延伸温度は、主溶剤の沸点Tbよりも50℃以上高い光学フィルムの製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、光学フィルムの製造方法に関し、より詳しくは、返材として再利用しやすく、延伸時のボーイング現象や位相差発現性に起因する位相差ムラが低減された、可溶性で透明なポリイミド樹脂を主成分とする光学フィルムの製造方法に関する。
ポリイミド樹脂は、その耐熱性の高さからIC基板など耐熱性が必要とされる様々な用途で用いられている。ポリイミド樹脂は一般的には着色しているものが多いが、無色透明のポリイミド樹脂とすることで、耐熱性及び透明性が求められる用途、例えばディスプレイ材料(絶縁性基板)への適用が期待できる。例えば、特許文献1ではポリイミド樹脂の透明性を高めてディスプレイの絶縁性基板として用いることが提案されている。
一方、ポリイミド樹脂は溶剤への溶解性が低いが、溶解性を高めることで生産性を向上させる取り組みも検討されている。例えば特許文献2では溶剤への溶解性を高めたポリイミド樹脂が提案されている。
光学フィルムの用途においては、ディスプレイの多用途化、例えばポータブル端末の発展に伴い耐熱性が必要とされる場合が多くなっている。例えば、タッチパネルに用いられる透明基板では、耐熱性と透明性に加え、光学フィルムとしての光学特性の均一性や物理特性の要求も高まっている。
ポリイミド樹脂フィルムの光学特性及び生産性を高める検討として、可溶性かつ透明のポリイミド樹脂を溶剤に溶解して光学フィルムを製造する方法も提案されている。例えば、特許文献3では、可溶性で透明なポリイミド樹脂を溶剤に溶解し、樹脂フィルム(TACフィルム)上に流延して、樹脂フィルムごと延伸することで、必要な光学特性を調整する方法が提案されている。
しかしながら、支持体とともに延伸する方法では延伸条件が支持体の延伸可能な条件に限定され、ポリイミド樹脂フィルム自体の光学特性や物理特性が限定されてしまい、所望される光学フィルムの製造が難しいという問題があった。
そこで本発明者らは、光学フィルムの製造に用いられ必要な光学特性を調整しやすい、溶液流延法により可溶性で透明なポリイミド樹脂を流延用支持体上に流延して流延膜を形成し、剥離して延伸することで、ポリイミド樹脂を含有する光学フィルム(ポリイミドフィルム)を製造する方法を検討した。
通常、光学フィルムを溶液流延製膜する場合、例えばセルロースエステルフィルムを延伸する場合には、樹脂のガラス転移温度(Tg)付近の温度で延伸が行われる。しかしながら、ポリイミドフィルムの延伸において、従来と同様にTg付近の延伸温度で延伸した場合に樹脂の秩序性が高まるためか、溶解性が低下し、延伸されたフィルムを再度溶解して溶液流延に供することが困難になる場合があることが判明した。フィルムの延伸工程においては、テンタークリップで把持された部分は光学フィルムとして利用できない為、巻取り前にスリッターで除去される。また、製造開始後製造条件が安定するまでの間に製造されたフィルムは、光学フィルムとして利用できない。このようなフィルム製造時に発生したフィルム片は、再度溶解して返材として使用することでコストを低減する必要があるが、そのような際に再溶解しにくいと生産コストの上昇を招き問題となる場合がある。
また、延伸する際に延伸温度が工程内で大きく変化すると、光軸が弓なり状になるボーイング現象が発生しやすく、面内での位相差ムラが大きくなって、ポリイミドフィルムをディスプレイ用途として使用した際に表示ムラとなることも見出された。
また、延伸温度が溶剤の沸点+50℃よりも低い温度である場合は、樹脂の面配向が進みやすいためか、位相差発現性が大きくなって前記表示ムラがさらに目立つという問題があった。
したがって、従来のセルロースエステルフィルム等を製造する際の公知の延伸条件の範囲では、これら問題の解決は困難であった。
特開2010−100674号公報 特開2000−53767号公報 特開2004−258544号公報
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、返材として再利用しやすく、延伸時のボーイング現象や位相差発現性に起因する位相差ムラが低減された、可溶性で透明なポリイミド樹脂を主成分とする光学フィルムの製造方法を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、可溶性で透明な特定のポリイミド樹脂を含有するドープを流延して流延膜を形成し、当該流延膜を特定の温度条件に制御した延伸工程によって延伸することによって、返材として再利用しやすく、延伸時のボーイング現象や位相差発現性に起因する位相差ムラが低減された、ポリイミド樹脂を主成分とする光学フィルムの製造方法が得られることを見出した。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.ポリイミド樹脂を含有し、全光線透過率が80%以上で、イエローインデックス値(YI値)が6.0以下である光学フィルムの製造方法であって、
25℃、100gのジクロロメタン又は1,3−ジオキソランに1g以上溶解するポリイミド樹脂を含有するドープを支持体上に流延し流延膜を形成する工程(流延工程)、
該流延膜を支持体から剥離する工程(剥離工程)、及び、
剥離された該流延膜を延伸する工程(延伸工程)を有し、
前記延伸工程における延伸温度が、前記ポリイミド樹脂のガラス転移温度をTg(℃)としたときに、(Tg−250℃)〜(Tg−100℃)の範囲内であり、
前記延伸工程における延伸開始から延伸終了までの延伸温度の変化が、70℃以内であり、かつ、
前記延伸温度が、主溶剤の沸点Tbよりも50℃以上高いことを特徴とする光学フィルムの製造方法。
2.前記延伸工程における残留溶剤量が、3〜100質量%の範囲内であることを特徴とする第1項に記載の光学フィルムの製造方法。
本発明の上記手段により、返材として再利用しやすく、延伸時のボーイング現象や位相差発現性に起因する位相差ムラが低減された、ポリイミド樹脂を主成分とする光学フィルムの製造方法を提供することができる。
本発明の効果の発現機構ないし作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
本発明の光学フィルムの製造方法の特徴は、可溶性で透明な特定のポリイミド樹脂を含有するドープを流延して流延膜を形成し、当該流延膜を特定の温度条件に制御した延伸工程によって延伸することで、上記課題を達成するものである。
本発明に係る可溶性で透明なポリイミド樹脂は、ガラス転移温度Tgが、250℃以上となる樹脂である。
セルロースエステルフィルムの場合は、セルロースエステルのTgが150℃程度であるため、(Tg−20℃)〜(Tg+60℃)程度の温度範囲で通常延伸するが、ポリイミド樹脂の場合はTgが高温であるため、Tg近辺の高温で延伸すると樹脂の秩序性が高まるためか、返材として使用する際に再溶解しがたくなる現象がみられた。したがって、Tgよりも低い温度で延伸することが望ましく、本願のように(Tg−250℃)〜(Tg−100℃)の範囲の温度で延伸することによって、樹脂が不揃いに配向することで、返材の溶解性が向上するものと推察される。
また、セルロースエステルフィルムの場合は、延伸工程内において延伸温度を適宜変化させることで延伸時の応力を分散化して、延伸ムラを回避する技術が採用されることが多いが、ポリイミド樹脂の場合は、延伸時に温度変化を大きくとると、樹脂の配向性に起因するものと考えられる、光軸が弓なり状になるボーイング現象が発生しやすく、面内での位相差ムラが大きくなる現象がみられた。したがって、延伸時の温度変化を小さくすることで、ボーイング現象を抑制することができるものと推察される。
さらに、セルロースエステルフィルムの場合は、延伸温度は樹脂を溶解する溶剤の沸点+50℃よりも低い温度で延伸することがあるが、本発明に係るポリイミド樹脂の場合は、溶剤の沸点+50℃よりも低い温度で延伸すると、残留溶剤による樹脂の配向性への影響と考えられる、位相差値が想定以上に大きくなる現象がみられた。したがって、本発明に係るポリイミド樹脂の場合は、溶剤の沸点+50℃よりも高い温度で延伸することが、所望の位相差値を得るのに制御しやすく、合わせて位相差ムラを低減できるものと推察される。
本発明の実施の形態に係るポリイミドフィルムの製造に用いる製造装置の概略の構成を示す断面図 上記製造装置が備える第1延伸装置の詳細な構成を示す断面図 上記第1延伸装置の他の構成を示す断面図 上記第1延伸装置の上流側及び下流側のローラーの配置例を模式的に示す断面図 上記第1延伸装置の上流側及び下流側のローラーの他の配置例を模式的に示す断面図 上記第1延伸装置の上流側のローラーの他の構成例を示す断面図
本発明の光学フィルムの製造方法は、ポリイミド樹脂を含有し、全光線透過率が80%以上で、イエローインデックス値(YI値)が6.0以下である光学フィルムの製造方法であって、25℃、100gのジクロロメタン又は1,3−ジオキソランに1g以上溶解するポリイミド樹脂を含有するドープを支持体上に流延し流延膜を形成する工程(流延工程)、該流延膜を支持体から剥離する工程(剥離工程)、及び、剥離された該流延膜を延伸する工程(延伸工程)を有し、前記延伸工程における延伸温度が、前記ポリイミド樹脂のガラス転移温度をTg(℃)としたときに、(Tg−250℃)〜(Tg−100℃)の範囲内であり、前記延伸工程における延伸開始から延伸終了までの延伸温度の変化が、70℃以内であり、かつ、前記延伸温度が、主溶剤の沸点Tbよりも50℃以上高いことを特徴とする。この特徴は、各請求項に係る発明に共通する又は対応する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、前記延伸工程における残留溶剤量が、3〜100質量%の範囲内であることが、光学特性の制御の観点から、好ましい。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
≪本発明の光学フィルムの製造方法の概要≫
本発明の光学フィルムの製造方法は、ポリイミド樹脂を含有し、全光線透過率が80%以上で、イエローインデックス値(YI値)が6.0以下である光学フィルムの製造方法であって、25℃、100gのジクロロメタン又は1,3−ジオキソランに1g以上溶解するポリイミド樹脂を含有するドープを支持体上に流延し流延膜を形成する工程(流延工程)、該流延膜を支持体から剥離する工程(剥離工程)、及び、剥離された該流延膜を延伸する工程(延伸工程)を有し、前記延伸工程における延伸温度が、前記ポリイミド樹脂のガラス転移温度をTg(℃)としたときに、(Tg−250℃)〜(Tg−100℃)の範囲内であり、前記延伸工程における延伸開始から延伸終了までの延伸温度の変化が、70℃以内であり、かつ、前記延伸温度が、主溶剤の沸点Tbよりも50℃以上高いことを特徴とする。
なお、ここでいうガラス転移温度Tgとは、市販の示差走査熱量測定器を用いて、昇温速度20℃/分で測定し、JIS K7121(1987)に従い求めた中間点ガラス転移温度(Tmg)である。具体的なポリイミド樹脂のガラス転移温度Tgの測定方法は、JIS K7121(1987)に従って、セイコーインスツル(株)製の示差走査熱量計DSC220を用いて測定することができる。
また、本発明の光学フィルムは、ポリイミド樹脂を主成分として含有する。「主成分」とは、光学フィルム中のポリイミドの総量が50質量%以上であることを表す。好ましくは80質量%以上であることをいう。なお、本願では、本発明の光学フィルムをポリイミドフィルムという場合がある。
〔1〕光学フィルムの製造方法及び製造装置
本発明の光学フィルムの製造方法は、前記可溶性で透明なポリイミド樹脂と溶剤とを含有するドープを調製する工程(ドープ調製工程)、前記ドープを支持体上に流延して流延膜を形成する工程(流延工程)、支持体上で流延膜から溶剤を蒸発させる工程(溶剤蒸発工程)、前記流延膜を支持体から剥離する工程(剥離工程)、剥離された流延膜を延伸する工程(延伸工程)、延伸後のフィルムを乾燥させる工程(乾燥工程)、得られたポリイミドフィルムを巻き取る工程(巻取り工程)、更に必要であればフィルムを加熱処理してイミド化させる工程(加熱工程)等を含むことが好ましい。
〔1.1〕光学フィルムの製造装置
本発明の光学フィルムの製造方法に用いられる装置は、前記可溶性で透明なポリイミド樹脂と溶剤とを含有するドープを調製するドープ調製部、前記ドープを支持体上に流延して流延膜を形成する流延部、支持体上で流延膜から溶剤を蒸発させる溶剤蒸発部、前記流延膜を支持体から剥離する剥離部、剥離された流延膜を延伸する延伸部、延伸後のフィルムを乾燥させる乾燥部、得られたポリイミドフィルムを巻き取る巻取部、更に必要であればフィルムを加熱処理してイミド化させる加熱部等を含むことが好ましい。
図1は、本実施形態の光学フィルムの製造に用いる製造装置1の概略の構成を示す断面図である。製造装置1は一例であり、これに限定されるものではなく、また、製造装置1に示す第1延伸部3と、第2延伸部4は兼ねてもよい。
製造装置1は、流延部2と、第1延伸部3と、第2延伸部4と、乾燥部5と、巻取部6とを備え、流延部2で形成された流延膜(ウェブ)22を搬送しつつ、第1延伸部3でMD(流延)方向又はTD(幅手)方向に延伸し、第2延伸部4で同じくMD方向又はTD方向に追加延伸し、乾燥部5で乾燥(熱処理)し、巻取部6で光学フィルムFとして巻き取るようになっている。上記の流延膜22とは、走行する支持体上に、樹脂及び溶剤を含有する樹脂溶液(ドープ)を流延し、乾燥して形成される膜をいう。なお、第1延伸部3と第2延伸部4との間に乾燥部を配置して、流延膜22を乾燥させるようにしてもよい。
(流延部)
流延部2は、支持体としての無端ベルト11と、ダイ12と、加熱部13と、剥離ローラー14とを備えている。
無端ベルト11は、表面が鏡面仕上げされた金属製のベルトである。このようなベルトとしては、例えば、表面が鏡面仕上げされたステンレス鋼や鋳物で表面がメッキ仕上げされた金属製の無端ベルトが用いられる。無端ベルト11は、駆動ローラー11aと従動ローラー11bとに巻き掛けられて、図中の矢印方向に走行可能とされている。無端ベルト11の幅は、製造しようとする光学フィルムの大きさに応じて異なるが、例えば1700〜2700mmの範囲が好ましい。そして、ドープ21を流延する幅は、無端ベルト11の幅のうち、例えば80〜99%の範囲が好ましい。なお、無端ベルト11に代えて、表面が鏡面仕上げされた金属製の円筒ドラム等を支持体として用いてもよい。
ダイ12は、ドープ21を無端ベルト11上に流延するものである。加熱部13は、無端ベルト11上に流延されたドープ21(流延膜22)を加熱して、ドープ21(流延膜22)に含まれる溶剤を低減するために設けられているが、その詳細については後述する。剥離ローラー14は、無端ベルト11上に形成された流延膜22を、無端ベルト11から剥離するために設けられている。
この流延部2では、走行する支持体としての無端ベルト11上に、樹脂及び溶剤を含有するドープ21を流延して流延膜22を形成する流延工程と、溶剤を含んだ状態で無端ベルト11から流延膜22を剥離する剥離工程とが行われる。
流延工程では、ダイ12から無端ベルト11上にドープ21が流延され、加熱部13によって乾燥される。これにより、ドープ21が無端ベルト11上で乾燥及びゲル化して流延膜22が形成される。
なお、無端ベルト11上での流延膜22の厚さは、巻取部6で巻き取られる光学フィルムの厚さが所定の厚さとなるように、種々の値に変更可能であり、ドープ21の流延量や無端ベルト11の走行速度等に応じて調整される。
剥離工程では、無端ベルト11上で形成された流延膜22が、剥離ローラー14によって無端ベルト11から剥離される。
無端ベルト11上にドープ21を流延してから、無端ベルト11から流延膜22を剥離するまでの時間は、製造された光学フィルムの厚さ、溶剤の種類等に応じて異なるが、無端ベルト11からの良好な剥離性を考慮して、例えば、0.5〜5分の範囲が好ましい。
また、無端ベルト11から流延膜22を剥離するときに流延膜22に作用する張力(剥離張力)、及び剥離後に流延膜22を搬送するときに流延膜22に作用する張力(搬送張力)に起因して、流延膜22はそのMD方向に延伸される。このことを考慮して、上記の剥離張力及び搬送張力は、例えば20〜400N/mの範囲が好ましい。
次に、上記の加熱部13について説明する。加熱部13は、流延膜22を加熱風で加熱して溶剤を除去するものであり、乾燥箱31と、乾燥箱31に配設された第1加熱風供給部32及び第2加熱風供給部33と、排気口34とを備えている。第1加熱風供給部32及び第2加熱風供給部33は、それぞれ、加熱風供給管32a・33aと、ヘッダー32b・33bとを備えており、無端ベルト11を、流延膜22の搬送方向と垂直な上下方向から挟み込むように配置されている。
第1加熱風供給部32側の無端ベルト11上の流延膜22の温度、及び第2加熱風供給部33側の無端ベルト11上の流延膜22の温度は、それぞれ、溶剤の蒸発に要する時間に基づいて決定される無端ベルト11の走行速度、ドープ21中に微粒子が添加される場合は微粒子の分散度合、生産性等を考慮して、例えば、−5〜70℃の範囲が好ましく、0〜60℃の範囲がより好ましい。
第1加熱風供給部32及び第2加熱風供給部33から供給される加熱風の風圧は、溶剤の蒸発の均一性、ドープ21中における微粒子の分散度合等を考慮して、例えば、50〜5000Paの範囲が好ましい。
第1加熱風供給部32及び第2加熱風供給部33は、一定温度の加熱風だけを供給してもよいし、無端ベルト11の走行方向に沿って複数の温度の加熱風を段階的に供給してもよい。
加熱部13は、上記のように流延膜22を加熱風で加熱するものに限定されず、例えば、流延膜22を赤外線ヒーターで加熱するもの、無端ベルト11の裏面に加熱風を吹き付けて流延膜22を裏面から加熱するもの等であってもよい。
(第1延伸部)
第1延伸部3は、無端ベルト11から剥離された流延膜22をMD方向又はTD方向に延伸する第1の延伸工程を行うものであり、例えば、流延膜22を加熱して、延伸温度条件を制御しながら、溶剤を除去しながらMD方向(MD延伸工程)に延伸する。ここでは、溶剤除去手段として加熱風(乾燥風)を使用しているが、特に限定はなく、この他に、例えば赤外線ヒーターなどの加熱手段を使用してもよい。
第1延伸部3における乾燥は、一定の温度で乾燥してもよいし、3〜4段階の温度に分けて、数段階の温度で乾燥してもよい。
第1延伸部3でのMD延伸を行う際の温度制御については、従来公知の方式、代表的には、ヒーター加熱方式やオーブン加熱方式を用いることができる。
ヒーター加熱方式は、延伸前の流延膜22を搬送する低速ローラー群と、延伸後の流延膜22を搬送する高速ローラー群との間に設置されたヒーターにより瞬時に延伸温度にまで昇温し、比較的短い延伸スパンで延伸する方式である。延伸に伴う幅収縮は、延伸スパンが短いほど小さく抑えられるため、低速ローラー群と高速ローラー群との間隔はできるだけ短いことが好ましい。低速ローラー群では、フィルムの粘着や擦り傷が発生しない範囲でなるべく延伸温度に近い温度まで予熱しておくことが好ましい。
オーブン加熱方式は、低速ローラー群と高速ローラー群との間にオーブンを設置し、このオーブンの中に予熱ゾーン、延伸ゾーン、冷却ゾーンを設けて、比較的長い延伸スパンで延伸する方式である。
ヒーター加熱方式は、幅収縮量を小さく抑えられ、広幅フィルムの製膜に有利であること、比較的省スペースで設置できることなどの利点がある。一方、オーブン加熱方式は、位相差の幅手均一性が高いこと、擦り傷や粘着故障が出にくいことなどの利点がある。上述の2種の加熱方式は、使用する材料や必要な物性などを考慮して適宜選択されればよいが、本実施形態では、流延膜22の表面欠陥を抑える観点から、オーブン加熱方式を採用することが好ましく、このとき、オーブン内は、フィルム(流延膜)通路の上下に配置されたノズルから吹き出された熱風の間をノズルに接触しないように、フィルムを浮かせながら非接触で搬送しつつ延伸するフローティングが好ましい。以下、オーブン加熱方式を採用した第1延伸部3の詳細について説明する。
図2は、第1延伸部3の詳細な構成を示す、搬送方向に沿った断面図である。第1延伸部3は、流延膜22の搬送方向上流側から順に、予熱ゾーンZ1と、延伸ゾーンZ2と、冷却ゾーンZ3とを有している。予熱ゾーンZ1では、流延膜22が延伸前に加熱される。延伸ゾーンZ2では、予熱ゾーンZ1から搬送される流延膜22が、図示しないローラーによりMD方向に延伸されてもよい。冷却ゾーンZ3では、延伸された流延膜22が冷却される。このようなゾーンで温度を変える場合は、予熱ゾーンZ1の温度は例えば200℃であり、延伸ゾーンZ2の温度は例えば180℃であり、冷却ゾーンZ3の温度は例えば130℃であることが一例としてあげられるが、これらの温度は、流延膜22の材料(製造する光学フィルムの材料)や延伸倍率等の延伸条件によって適宜設定されればよい。
予熱ゾーンZ1及び延伸ゾーンZ2には、加熱風を吹き出すノズル41が、流延膜22の搬送方向に向かって、上下に千鳥状に配置されており、上下のノズル41・41の間を流延膜22が搬送される。なお、図2では、便宜上、予熱ゾーンZ1におけるノズル41の図示を省略している。なお、図3に示すように、複数のノズル41は、上下方向に対向配置されていてもよい。
流延膜22の上方又は下方において、搬送方向のノズル41の配置ピッチpは、100〜1000mmであり、より好ましくは250〜500mmである。また、上下のノズル41・41の距離dは、−50〜50mmであり、より好ましくは10〜30mmである。なお、図3のようにノズル41・41が対向配置される場合、ノズル41・41の距離dは0mmよりも大きく設定される。また、ノズル41から加熱風を吹き出すときの吹出速度(風速)は、10〜40m/secであり、より好ましくは20〜30m/secである。
本実施形態では、延伸ゾーンZ2の搬送方向の長さをL(m)とし、幅手方向の長さをW(m)とすると、幅手方向に均一な品質を得る観点から、L/Wが1以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましい。なお、L/Wが3以上であると、延伸ゾーンZ2が搬送方向に長くなり、装置全体が搬送方向に大型化することが懸念されるが、延伸ゾーンZ2にて高風速(=高伝熱)で流延膜22を加熱することにより、予熱ゾーンZ1及び冷却ゾーンZ3を搬送方向に短くして、装置全体を搬送方向にコンパクトにすることができる。
なお、加熱風が高風速の場合、流延膜22の端部がバタツキ、ノズル41との接触で流延膜22の表面にキズが入ったり、破断に至る可能性がある。しかし、流延膜22の弾性に応じて、ノズル41の配置ピッチpや上下のノズル41・41間の距離dを上記範囲で調整することにより、流延膜22のバタツキを抑えて表面欠陥を抑えつつ、高風速を実現することができる。
また、本実施形態では、予熱ゾーンZ1と延伸ゾーンZ2との間にエアカーテンC1を生成し、延伸ゾーンZ2と冷却ゾーンZ3との間にエアカーテンC2を生成しながら、流延膜22を予熱ゾーンZ1、延伸ゾーンZ2、冷却ゾーンZ3の順に通過させている。ここで、エアカーテンC1・C2は、図示しないノズルからの空気の吹き出しによって生成される一種の壁であり、隣り合うゾーンの空気(加熱風)が混ざり合って温度が変化したり、流延膜22の搬送に伴う同伴風が下流側のゾーンに流れ込むのを防ぐ目的で生成されている。
第1延伸部3の隣り合うゾーンを、例えば隔壁で仕切る場合、隔壁の隙間(流延膜22が通過する隙間)によっては、流延膜22が搬送時にバタつくと、流延膜22が隔壁に接触して表面に傷が入ったり、損傷する場合がある。しかし、上記のようにエアカーテンC1・C2を生成することで、流延膜22のバタツキによる表面の損傷の心配がなくなる。
なお、隔壁において流延膜22が通過する隙間を大きく形成することで、流延膜22のバタツキによる表面の損傷を回避することも可能である。しかし、この場合は、流延膜22の搬送時に、隔壁の隙間を介して同伴風が下流側に流れ込みやすくなるため、上記のようにエアカーテンC1・C2を生成して流延膜22を搬送することが望ましい。
また、オーブン(第1延伸部3)の入口よりも上流側、及び出口よりも下流側には、サクションローラーやガイドローラーなど、フィルム(流延膜)を安定に搬送可能な抱き角で周面に巻き付けて保持、搬送するローラーが配置されている。以下、この点について説明する。
図4は、第1延伸部3の搬送方向上流側及び下流側のローラーの配置例を模式的に示す断面図である。第1延伸部3の搬送方向上流側には、少なくとも1本の張力規制ローラー51が設けられており、本実施形態では、3本の張力規制ローラー51が設けられている。これらの張力規制ローラー51は、上述の低速ローラー群に対応している。
張力規制ローラー51は、第1延伸部3による流延膜22のMD延伸によって、流延膜22の無端ベルト11との剥離部にかかる搬送方向の張力を規制(緩和)するために設けられている。このような張力規制ローラー51を設けることにより、MD延伸時に上記剥離部にかかる張力が緩和され、上記剥離部にて流延膜22が無理に搬送方向に引っ張られることがない。これにより、流延膜22の剥離位置の変動を抑えることができ、所定の残留溶剤量(後述する)で流延膜22を剥離して搬送することができる。
張力規制ローラー51における流延膜22の抱き角αは、180°以上に設定されることが望ましく、図4では、抱き角αはほぼ270°となっている。なお、抱き角αとは、張力規制ローラー51の周面に流延膜22が接している状態において、周面上での上流側接点と、ローラーの中心軸と、周面上での下流側接点とのなす角度を指す。図4では、張力規制ローラー51の上流側及び下流側にそれぞれ補助ローラー52・53を配置し、補助ローラー52と張力規制ローラー51との間、張力規制ローラー51と補助ローラー53との間を通って流延膜22が張力規制ローラー51の周面に巻き付くようにすることで、上記の抱き角(270°)を実現している。
このように、180°以上の抱き角αを確保することで、張力規制ローラー51の周面で流延膜22が確実に保持されるので、MD延伸時の張力を張力規制ローラー51で確実にカットして、流延膜22の剥離位置の変動を確実に抑えることができる。
張力規制ローラー51の本数が多いと、装置の大型化につながるため、張力規制ローラー51は1〜10本設けられることが好ましく、1〜3本設けられることがより好ましい。
一方、第1延伸部3の搬送方向下流側には、少なくとも1本の搬送ローラー54が設けられており、本実施形態では、3本の搬送ローラー54が設けられている。これらの搬送ローラー54は、上述の高速ローラー群に対応しており、第1延伸部3でのMD方向の延伸倍率に応じた速度で流延膜22を搬送する。例えば、MD方向の延伸倍率が2倍であれば、搬送ローラー54は、延伸前の2倍の速度で流延膜22を搬送することになる。
搬送ローラー54における流延膜22の抱き角αは、上流側の張力規制ローラー51と同様に、180°以上に設定されている。図4では、搬送ローラー54の上流側及び下流側にそれぞれ補助ローラー55・56を配置し、補助ローラー55と搬送ローラー54との間、搬送ローラー54と補助ローラー56との間を通って流延膜22が搬送ローラー54の周面に巻き付くようにすることで、抱き角αを270°にしている。このような180°以上の抱き角αにより、MD延伸後の流延膜22を搬送ローラー54の周面で確実に保持して搬送することができる。
搬送ローラー54の本数が多いと、装置の大型化につながるため、搬送ローラー54は1〜10本設けられることが好ましく、1〜3本設けられることがより好ましい。
図5は、第1延伸部3の搬送方向上流側及び下流側のローラーの他の配置例を模式的に示す断面図である。同図に示すように、張力規制ローラー51を上流側から下流側に向かって上下に交互に配置し、搬送ローラー54を上流側から下流側に向かって上下に交互に配置することで、張力規制ローラー51及び搬送ローラー54の抱き角αを180°に設定して流延膜22を搬送するようにしてもよい。この場合でも、上記と同様の効果を得ることができる。
また、図6は、第1延伸部3の搬送方向上流側のローラーの他の構成例を示す、幅手方向に沿った断面図である。同図に示すように、第1延伸部3の搬送方向上流側に、1本の張力規制ローラー51を配置するとともに、張力規制ローラー51との間で流延膜22の幅手方向の両端部をニップする補助ローラー57・57を配置してもよい。
このように、流延膜22の幅手方向の端部を、張力規制ローラー51と補助ローラー57とによってニップ(サイドニップ)することによっても、MD延伸時の流延膜22の搬送方向の張力を規制(緩和)することができるので、流延膜22の剥離位置の変動を抑えることができる。なお、流延膜22の端部は、通常、製品として使用されないため、ニップによって流延膜22の端部表面に傷等の欠陥が生じても差し支えない。
なお、図6で示したローラーの構成は、第1延伸部3の下流側のローラーにももちろん適用することができる。
第1の延伸工程にて、TD方向に延伸する場合は、特開昭62−46625号公報に示されているようなテンターを用いることが好ましく、使用するテンターは、特に限定はなく、汎用性や操作の容易さの観点から、例えば、クリップテンター、ピンテンター等が挙げられ、必要に応じて選択し使用することが可能である。中でも、クリップを用いるテンター方式が好ましく用いられる。
(第2延伸部)
図1で示した第2延伸部4は、第1延伸部3にて延伸された流延膜22を、必要に応じて、MD方向又はTD方向に追加延伸する第2の延伸工程を行うものである。例えば、第1延伸部3でMD方向に延伸し、第2延伸部4でTD方向に延伸することができる。したがって、延伸する方向によっては、第1延伸部3又は第2延伸部4は省略することができる。
本実施形態では、第2延伸部4は、流延膜22を加熱して溶剤を除去しながらTD方向に延伸する。溶剤除去手段としては、乾燥風を使用することができるが、特に限定はなく、この他に、例えば赤外線ヒーターなどの加熱手段を使用することもできる。
第2延伸部4における乾燥条件は、この第2延伸部4による延伸開始時の流延膜22の残留溶剤量に応じて好適温度が異なるが、乾燥時間、収縮ムラ、伸縮量の安定性等を考慮し、また、無理のない延伸を実現し、製造された光学フィルムのボイドのない良好な乾燥性や平面性や膜厚均一性の確保及び弾性率や光学特性の確保の観点から、一定の温度で乾燥してもよいし、3〜4段階の温度に分けて、数段階の温度に分けて乾燥してもよい。
いずれの場合も、延伸する際の温度条件は、本発明の特徴の範囲内で行うことが必要である。
(乾燥部)
乾燥部5は、例えば、第1の延伸工程でMD延伸され、第2の延伸工程でTD延伸された流延膜22の乾燥を行うものである。この乾燥部5は、乾燥風取入口5bと排出口5cとを有する乾燥箱5aと、流延膜22を搬送する上部の搬送ローラー5dと下部の搬送ローラー5eとを備えている。上部の搬送ローラー5dと下部の搬送ローラー5eとは、上下一組で、複数組から構成されている。
乾燥部5に配設される搬送ローラー5d・5eの数は、乾燥条件、乾燥方法、製造される光学フィルムの長さ等により異なり、適宜設定されればよい。上部の搬送ローラー5dと下部の搬送ローラー5eとは、駆動源によって回転駆動されない自由回転ローラーとなっている。また、乾燥部5から巻取部6までの間には、全て自由回転する搬送ローラーが用いられるわけではなく、通常、1本〜数本の搬送用駆動ローラー(駆動源によって回転駆動するローラー)の設置を必要とする。基本的に、搬送用駆動ローラーは、その駆動で流延膜22を搬送するのが目的であるので、ニップやサクション(エアーの吸引)等により、流延膜22の搬送と、駆動ローラーの回転とを同期させる機構が付いている。
乾燥部5では、加熱空気、赤外線等を単独で用いて乾燥してもよいし、加熱空気と赤外線とを併用して乾燥してもよい。簡便さの点から加熱空気を用いることが好ましい。なお、図1は加熱空気を使用した場合を示している。乾燥温度の好適な温度は、乾燥工程に入るときの流延膜22の残留溶剤量により異なるが、乾燥時間、収縮ムラ、伸縮量の安定性等を考慮し、例えば30〜180℃の範囲で残留溶剤量により適宜選択して決めればよい。また、一定の温度で乾燥してもよいし、3〜4段階の温度に分けて、数段階の温度に分けて乾燥してもよい。
乾燥部5での乾燥処理後の流延膜22の残留溶剤量は、この乾燥工程の負荷、保存時の寸法安定性や伸縮率等を考慮し、0.01〜0.5質量%の範囲が好ましい。なお、本実施形態では、流延部2で形成された流延膜22が乾燥部5で徐々に溶剤が除去され、全残留溶剤量が例えば2質量%以下となった流延膜22をフィルムという場合がある。
(巻取部)
巻取部6は、乾燥部5で、所定の残留溶剤量となった光学フィルムを必要量の長さに巻き芯にロール状に巻き取る。巻き取る際の温度は、巻き取り後の収縮による擦り傷、巻き緩み等を防止するために室温まで冷却することが好ましい。使用する巻取り機は、特に限定なく使用でき、一般的に使用されているものでよい。例えば、定テンション法、定トルク法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントローラー法等の巻き取り方法によって巻き取る、巻き取り機を使用することができる。
以上の乾燥部5及び巻取部6により、MD延伸又はTD延伸された流延膜22を乾燥させて光学フィルムFとして巻き取る。
〔1.2〕光学フィルムの製造方法
(ドープ調製工程)
本発明の光学フィルムの製造方法は、可溶性で透明なポリイミド樹脂と必要であれば添加剤を、溶剤に溶解してドープを調製し、当該ドープを用いて溶液流延製膜方法によって製膜する。
前記ドープには、返材の破砕品が混合されていることが生産コスト上好ましい。返材は光学フィルムに対し10〜70質量%の質量比率で含有されてもよい。10質量%以上であると生産コスト上有利であり、70質量%以下であれば返材に起因する故障(異物やギョロの発生)を小さくできる観点から好ましい。
返材とは、光学フィルムの乾燥中又は最終段階で、フィルムロール両端の切り落とし、作業開始直後とか条件調整中のロス、又は突発事故による製品とならなかったウェブ又はフィルムで発生したものをいう。
これらを混合物として再使用する際、まず、フィルムを0.5〜40mmの大きさ、好ましくは10〜30mmに、破砕機で破砕しチップとする。
この際、チップの除電により、チップの破砕機への張り付きや詰まり、チップ同士の凝集、壁面へのチップの貼り付きを防止することができる。
粉砕したチップをブロワーのような空気輸送手段で配管を移送して一旦貯蔵容器に蓄え、続いて決められた投入量を計量器で計量し、溶解タンクに投入する。
溶解タンクでは、新たなポリイミド樹脂及び溶剤とともに、加熱撹拌溶解してドープを調製する。溶解終了後、送液ポンプで送液し、濾過器で不純物を濾過し、静置貯蔵タンクに貯めて脱泡する。
本発明では、返材の破砕品をチップとして溶解タンクに投入する方法のほかに、破砕品を別に溶解して返材溶液として投入する方法もある。
溶剤は、沸点80℃以下の低沸点溶剤を主溶剤として用いることが、フィルムの製造プロセス温度(特に乾燥温度)を低減でき、熱収縮率を低減してフィルムの平面性を向上できるので好ましい。ここで「主溶剤として用いる」とは、混合溶剤であれば、溶剤全体量に対して55質量%以上を用いることをいい、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上用いることである。もちろん単独使用であれば100質量%となる。
低沸点溶剤は、ポリイミド樹脂、及びその他の添加剤を同時に溶解するものであれば良く、例えば、塩素系溶剤としては、ジクロロメタン、非塩素系溶剤としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール等を挙げることができる。
中でも沸点80℃以下の低沸点溶剤としては、上記溶剤の中で、ジクロロメタン(40℃)、酢酸エチル(77℃)、メチルエチルケトン(79℃)、テトラヒドロフラン(66℃)、アセトン(56.5℃)、及び1,3−ジオキソラン(75℃)の中から選択される少なくとも1種を主溶剤として含有することが好ましい(括弧内はそれぞれ沸点を表す。)。
また、混合溶剤の場合に含有される溶剤としては、本発明に係るポリイミド樹脂を溶解し得るものであれば、本発明の効果を阻害しない範囲で用いることができ、上記したもの以外の溶剤として、例えばN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルカプロラクタム、ヘキサメチルホスホルアミド、テトラメチレンスルホン、ジメチルスルホキシド、m−クレゾール、フェノール、p−クロルフェノール、2−クロル−4−ヒドロキシトルエン、ジグライム、トリグライム、テトラグライム、ジオキサン、γ−ブチロラクトン、シクロペンタノン、イプシロンカプロラクタム、クロロホルム等が使用可能であり、2種以上を併用してもよい。また、これらの溶剤と併せて、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等の貧溶剤を、本発明に係るポリイミド樹脂及び添加剤が析出しない程度に使用してもよい。
また、アルコール系溶剤を用いることもできる。当該アルコール系溶剤が、メタノール、エタノール及びブタノールから選択されることが、剥離性を改善し、高速度流延を可能にする観点から好ましい。中でもメタノール又はエタノールを用いることが好ましい。ドープ中のアルコールの比率が高くなると流延膜がゲル化し、金属支持体からの剥離が容易になる。
ポリイミド樹脂、その他の添加剤の溶解には、常圧で行う方法、主溶剤の沸点以下で行う方法、主溶剤の沸点以上で加圧して行う方法、特開平9−95544号公報、特開平9−95557号公報、又は特開平9−95538号公報に記載の冷却溶解法で行う方法、特開平11−21379号公報に記載の高圧で行う方法等、種々の溶解方法を用いることができる。
調製したドープは、送液ポンプ等により濾過器に導いて濾過する。例えば、ドープの主たる溶剤がジクロロメタンの場合、当該ジクロロメタンの1気圧における沸点+5℃以上の温度で当該ドープを濾過することにより、ドープ中のゲル状異物を取り除くことができる。好ましい温度範囲は45〜120℃であり、45〜70℃がより好ましく、45〜55℃の範囲内であることが更に好ましい。
また、ドープ調製に用いられる樹脂の原料としては、あらかじめポリイミド樹脂及びその他の化合物などをペレット化したものも、好ましく用いることができる。
(流延工程)
調製したドープを、送液ポンプ(例えば、加圧型定量ギヤポンプ)を通してダイスに送液し、無限に移送する無端の支持体、例えば、ステンレスベルト又は回転する金属ドラム等の流延用金属支持体上の流延位置に、ダイスからドープを流延する。
流延(キャスト)における金属支持体は、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、支持体としては、ステンレススティールベルト又は鋳物で表面をめっき仕上げしたドラム、又はステンレスベルト若しくはステンレス鋼ベルト等の金属支持体が好ましく用いられる。キャストの幅は1〜4mの範囲、好ましくは1.5〜3mの範囲、更に好ましくは2〜2.8mの範囲とすることができる。なお、支持体は、金属製でなくとも良く、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、ナイロン6フィルム、ナイロン6,6フィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレン等のベルト等を用いることができる。例えば、フレキシブル基板としてポリイミド樹脂を用いる場合、ポリイミド樹脂を流延した金属支持体ごとポリイミド樹脂を巻き取ってもよい。
金属支持体の走行速度は特に制限されないが、通常は5m/分以上であり、好ましくは10〜180m/分、特に好ましくは80〜150m/分の範囲内である。金属支持体の走行速度は、高速であるほど、同伴ガスが発生しやすくなり、外乱による膜厚ムラの発生が顕著になる。
金属支持体の走行速度は、金属支持体外表面の移動速度である。
金属支持体の表面温度は、温度が高い方が流延膜の乾燥速度を速くできるため好ましいが、余り高すぎると流延膜が発泡したり、平面性が劣化したりする場合があるため使用する溶剤の沸点に対して−50〜−10℃の温度の範囲内で行うことが好ましい。
ダイスは、幅方向に対する垂直断面において、吐出口に向かうに従い次第に細くなる形状を有している。ダイスは、具体的には、下部の走行方向で下流側と上流側とにテーパー面を有し、当該テーパー面の間に吐出口がスリット形状で形成されている。ダイスは金属からなるものが好ましく使用され、具体例として、ステンレス、チタン等が挙げられる。本発明において、厚さが異なるフィルムを製造するとき、スリット間隙の異なるダイスに変更する必要はない。
ダイの口金部分のスリット形状を調整でき、膜厚を均一にしやすい加圧ダイを用いることが好ましい。加圧ダイには、コートハンガーダイやTダイ等があり、いずれも好ましく用いられる。厚さが異なるフィルムを連続的に製造する場合であっても、ダイスの吐出量は略一定の値に維持されるので、加圧ダイを用いる場合、押し出し圧力、せん断速度等の条件もまた略一定の値に維持される。また、製膜速度を上げるために加圧ダイを金属支持体上に2基以上設け、ドープ量を分割して積層してもよい。
(溶剤蒸発工程)
溶剤蒸発工程は、金属支持体上で行われ、流延膜を金属支持体上で加熱し、溶剤を蒸発させる工程である。
溶剤を蒸発させるには、例えば、乾燥機により流延膜側及び金属支持体裏側から加熱風を吹き付ける方法、金属支持体の裏面から加熱液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法等を挙げることができる。それらを適宜選択して組み合わせる方法も好ましい。金属支持体の表面温度は全体が同じであってもよいし、位置によって異なっていてもよい。加熱風の温度は10〜220℃の範囲内が好ましい。
加熱風の温度(乾燥温度)は、200℃以下であることが好ましく、140℃以下であることがより好ましく、120℃以下であることがさらに好ましい。
溶剤蒸発工程においては、流延膜の剥離性及び剥離後の搬送性の観点から、残留溶剤量が10〜150質量%の範囲内になるまで、流延膜を乾燥することが好ましい。
本発明において、残留溶剤量は下記の式で表すことができる。
残留溶剤量(質量%)={(M−N)/N}×100
ここで、Mは流延膜(ウェブ)の所定の時点での質量、NはMのものを200℃で3時間乾燥させた時の質量である。特に、溶剤蒸発工程において達成された残留溶剤量を算出するときのMは剥離工程直前の流延膜の質量である。
(剥離工程)
金属支持体上で溶剤が蒸発した流延膜を、剥離位置で剥離する。
金属支持体と流延膜とを剥離する際の剥離張力は、通常、60〜400N/mの範囲内であるが、剥離の際に皺が入りやすい場合、190N/m以下の張力で剥離することが好ましい。
本発明においては、当該金属支持体上の剥離位置における温度を−50〜60℃の範囲内とするのが好ましく、10〜40℃の範囲内がより好ましく、15〜40℃の範囲内とするのが最も好ましい。
剥離されたフィルムは、延伸工程に直接送られてもよいし、所望の残留溶剤量を達成するように予備乾燥工程に送られた後に延伸工程に送られてもよい。本発明においては、延伸工程での残留溶剤量の調整及び安定搬送の観点から、剥離工程後、フィルムは、予備乾燥工程及び延伸工程に順次送られることが好ましい。
(予備乾燥工程)
予備乾燥工程(不図示)は、フィルムを加熱し、溶剤を更に蒸発させる乾燥工程である。予備乾燥工程は、第1乾燥工程のゾーンZ1であってもよい。乾燥手段は特に制限されず、例えば、熱風、赤外線、加熱ローラー、マイクロ波等を用いることができる。簡便さの観点からは、千鳥状に配置したローラーでフィルムを搬送しながら、熱風等で乾燥を行うことが好ましい。乾燥温度は、残留溶剤量及び搬送における伸縮率等を考慮して、30〜200℃の範囲が好ましい。
乾燥温度は、200℃以下であることが好ましく、140℃以下であることがより好ましく、120℃以下であることがさらに好ましい。
(延伸工程)
金属支持体から剥離されたフィルムを延伸することで、フィルムの膜厚や平坦性、配向性等を制御することができる。
本発明の特徴は、延伸工程における延伸温度が、前記ポリイミド樹脂のガラス転移温度をTg(℃)としたときに、(Tg−250℃)〜(Tg−100℃)の範囲内であり、前記延伸温度が、主溶剤の沸点Tbよりも50℃以上高い温度で行うことである。
ここで、「延伸温度」とは、延伸工程における雰囲気温度をいう。通常、流延膜は薄膜であることから、雰囲気温度と流延膜の温度はほぼ同一になる。測定は、延伸工程内の各ゾーンに設置された温度計によって行うことができる。
延伸温度は、(Tg−250℃)未満では、光学フィルムの延伸時の張力が大きくなり過ぎるため、延伸に対する位相差発現性が高くなり過ぎて、制御が難しくなったり、破断等の危険性が高まったりするため、好ましくない。
延伸温度は、(Tg−100℃)を超えると、位相差発現性が低下し所望の位相差を得ることが難しくなる。さらに、ポリイミド樹脂の場合はTgが高温であるため、Tg近辺の高温で延伸すると樹脂の秩序性が高まるためか、返材として使用する際に再溶解しがたくなる現象がみられ、好ましくない。
したがって、Tgよりも低い温度で延伸することが必要であり、本願のように(Tg−250℃)〜(Tg−100℃)の範囲の温度で延伸することによって、樹脂の不揃いな配向を促進することで、返材の溶解性が向上するという利点がある。
ここで前記「延伸温度」とは、延伸時の温度が一定の温度であればその温度、途中で延伸温度を変える場合は、延伸時の平均温度をいう。
また、前記延伸温度は、主溶剤の沸点Tbよりも50℃以上高い温度で行うことが特徴である。本発明に係るポリイミド樹脂の場合は、溶剤の沸点+50℃よりも低い温度で延伸すると、残留溶剤による樹脂の配向性への影響と考えられる、位相差値が想定以上に大きくなる現象がみられた。したがって、本発明に係るポリイミド樹脂の場合は、溶剤の沸点+50℃よりも高い温度で延伸することが、所望の位相差値を得るのに制御しやすく、合わせて位相差ムラを低減できる。好ましい温度は主溶剤の沸点Tbよりも、+80℃〜+200℃の範囲内である。
さらに、前記延伸工程における延伸開始から延伸終了までの延伸温度の変化が、70℃以内であることが特徴である。
上述したように、第1延伸部3(又は第2延伸部4)における乾燥は、一定の温度で乾燥してもよいし、3〜4段階の温度に分けて、数段階の温度に分けて乾燥してもよいが、ポリイミドフィルムの場合、延伸する際に延伸温度が工程内で大きく変化すると、光軸が弓なり状になるボーイング現象が発生しやすく、面内での位相差ムラが大きくなって、ポリイミドフィルムをディスプレイ用途として使用した際に表示ムラが出やすい。
したがって、ボーイング現象の発生を抑制するため、温度変化を行う場合は、温度の変化が70℃以内であることが必要であり、好ましくは50℃以内であり、さらに好ましくは30℃以内であり、特に好ましくは一定の温度下で延伸することである。
また、温度を変化する場合は、漸次温度上昇させたり、漸次温度低下させたり、温度を上昇させてから下降させたりするような温度履歴をとってもよく、温度変化の幅が70℃を超えなければよい。
第1延伸部3による延伸工程(第1の延伸工程)における延伸倍率は、延伸倍率の定義を、
延伸倍率(%)=(延伸後寸法−延伸前寸法)/延伸前寸法×100
とすると、MD方向の延伸倍率は、0(寸法保持)〜100%の範囲内であることが好ましく、0(寸法保持)〜30%の範囲内であることがより好ましい。
TD方向の延伸倍率は、0(幅保持)〜100%の範囲内であることが好ましく、5〜)〜50%の範囲内であることがより好ましい。
延伸操作は多段階に分割して実施してもよい。また、二軸延伸を行う場合には同時二軸延伸を行ってもよいし、段階的に実施してもよい。この場合、段階的とは、例えば、延伸方向の異なる延伸を順次行うことも可能であるし、同一方向の延伸を多段階に分割し、かつ異なる方向の延伸をそのいずれかの段階に加えることも可能である。
すなわち、例えば、次のような延伸ステップも可能である:
・MD方向に延伸→TD方向に延伸→MD方向に延伸→MD方向に延伸
・TD方向に延伸→TD方向に延伸→MD方向に延伸→MD方向に延伸
また、同時二軸延伸には、一方向に延伸し、もう一方を、張力を緩和して収縮する場合も含まれる。
延伸時の残留溶剤量は、3〜100質量%の範囲内に制御することが好ましい。ここで、「延伸時」とは、延伸開始時から延伸終了時までをいう。
当該残留溶剤量は、3質量%以上であれば、延伸による平面性向上の効果が得られ、100%以下であると、ボーイング現象を抑制し、面内での位相差ムラが小さくすることができる。当該残留溶剤量は、延伸開始時から延伸終了時までの溶剤残留量をいい、その履歴は問わない。例えば、延伸開始時が100質量%であり、延伸中に漸次減少していき、延伸終了時に3質量%であれば、本発明の範囲内と判断する。
幅手方向への延伸に際し、フィルム幅手方向に50〜1000%/minの範囲内の延伸速度で延伸することが、フィルムの平面性を向上する観点から、好ましい。
延伸速度は50%/min以上であれば、平面性が向上し、またフィルムを高速で処理することができるため、生産適性の観点で好ましく、1000%/min以内であれば、フィルムが破断することなく処理することができ、好ましい。
より好ましい延伸速度は、100〜500%/minの範囲内である。延伸速度は下記式によって定義される。
延伸速度(%/min)=[(d/d)−1]×100(%)/t
(上記式において、dは延伸後の樹脂フィルムの延伸方向の幅寸法であり、dは延伸前の樹脂フィルムの延伸方向の幅寸法であり、tは延伸に要する時間(min)である。)
延伸工程では、通常、延伸した後、保持・緩和が行われる。すなわち、本工程は、フィルムを延伸する延伸段階、フィルムを延伸状態で保持する保持段階及びフィルムを延伸した方向に緩和する緩和段階をこれらの順序で行うことが好ましい。保持段階では、延伸段階で達成された延伸倍率での延伸を、延伸段階における延伸温度で保持する。緩和段階では、延伸段階における延伸を保持段階で保持した後、延伸のための張力を解除することによって、延伸を緩和する。緩和段階は、延伸段階における延伸温度以下で行えばよい。
(乾燥工程)
次いで、延伸後のフィルムを加熱して乾燥させる。熱風等によりフィルムを加熱する場合、使用済みの熱風(溶剤を含んだエアーや濡れ込みエアー)を排気できるノズルを設置して、使用済み熱風の混入を防ぐ手段も好ましく用いられる。熱風温度は、40〜350℃の範囲がより好ましい。また、乾燥時間は5秒〜30分程度が好ましく、10秒〜15分がより好ましい。
また、加熱乾燥手段は熱風に制限されず、例えば、赤外線、加熱ローラー、マイクロ波等を用いることができる。簡便さの観点からは、千鳥状に配置したローラーでフィルムを搬送しながら、熱風等で乾燥を行うことが好ましい。乾燥温度は、40〜150℃の範囲であることが加熱収縮が大きくなりやすい観点から好ましい。さらに40〜120℃であることがより好ましい。
乾燥工程においては、残留溶剤量が0.5質量%以下になるまで、フィルムを乾燥することが好ましい。
(巻取り工程)
巻取り工程は、得られた光学フィルムを巻き取って室温まで冷却する工程である。巻取り機は、一般的に使用されているもので良く、例えば、定テンション法、定トルク法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等の巻取り方法で巻き取ることができる。
光学フィルムの厚さは特に制限されず、例えば、1〜200μm、特に1〜100μmの範囲内であることが好ましい。
巻取り工程においては、延伸搬送したときにテンタークリップ等で挟み込んだ光学フィルムの両端をスリット加工してもよい。スリットした光学フィルム端部は、1〜30mm幅の範囲内に細かく断裁された後、溶剤に溶解させて返材として再利用することが好ましい。
上述した溶剤蒸発工程から巻取り工程までの各工程は、空気雰囲気下で行ってもよいし、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。また、各工程、特に乾燥工程や延伸工程は、雰囲気における溶剤の爆発限界濃度を考慮して行う。
(加熱工程)
上記巻取り工程後に、ポリマー鎖分子内及びポリマー鎖分子間でのイミド化を進行させて機械的特性を向上させるべく、上記乾燥工程で乾燥したポリイミドフィルムを更に熱処理する加熱工程を行ってもよい。
なお、上記乾燥工程が、加熱工程を兼ねるものであってもよい。
加熱手段は、例えば、熱風、電気ヒーター、マイクロ波等の公知の手段を用いて行われる。電気ヒーターとしては、上記した赤外線ヒーターを用いることができる。
加熱工程において、ポリイミドフィルムを急激に加熱すると表面欠点が増加する等の不具合が生じるため、加熱方法は適宜選択することが好ましい。また、加熱工程は、低酸素雰囲気下で行うことが好ましい。
第二乾燥工程及び加熱工程における加熱温度は450℃を超えると、加熱に必要なエネルギーが非常に大きくなることから製造コストが高くなり、更に、環境負荷が増大するため、当該加熱温度は450℃以下にすることが好適である。
なお、巻取り工程後であって、加熱工程の前又は後に、光学フィルムの幅方向端部をスリットする工程や、光学フィルムが帯電していた場合にはこれを除電する工程等を更に行うものとしてもよい。
<光学フィルムの形状>
本発明の光学フィルムは、長尺であることが好ましく、具体的には、100〜10000m程度の範囲内の長さであることが好ましく、ロール状に巻き取られる。また、本発明の光学フィルムの幅は1m以上であることが好ましく、更に好ましくは1.4m以上であり、特に1.4〜4mであることが好ましい。
〔2〕ポリイミド樹脂
本発明に係るポリイミド樹脂は、25℃、100gのジクロロメタン又は1,3−ジオキソランに1g以上溶解するポリイミド樹脂である。また、当該ポリイミド樹脂を主成分として前記溶液流延製膜したフィルムが、後述する全光線透過率が80%以上で、イエローインデックス値(YI値)が6.0以下となるフィルムを形成するポリイミド樹脂である。
本発明に係るポリイミド樹脂は、イミド構造を有する樹脂であり、繰り返し単位にイミド結合を含む樹脂である。ポリイミド樹脂(以下、簡単にポリイミドともいう。)は、ジアミン又はその誘導体と酸無水物又はその誘導体とから形成されることが好ましい。
〔2.1〕式(1.1)で表される構造を有するポリイミド樹脂
(1)酸無水物の構造
本発明に用いることのできるポリイミドとしては、特に、下記式(1.1)で表される繰り返し単位を有するポリイミド(以下、ポリイミド(A)と称する。)が好ましい。
Figure 2019090843
式(1.1)中、Rは、芳香族炭化水素環若しくは芳香族複素環、又は、炭素数4〜39の4価の脂肪族炭化水素基若しくは脂環式炭化水素基を表す。Aは、炭素数2〜39の2価の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、又はこれらの組み合わせからなる基を表し、結合基として、−O−、−SO−、−CO−、−CH−、−C(CH−、−OSi(CH−、−CO−及び−S−からなる群から選ばれる少なくとも一つの基を含有していてもよい。
Rで表される芳香族炭化水素環としては、例えば、フルオレン環、ベンゼン環、ビフェニル環、ナフタレン環、アズレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、クリセン環、ナフタセン環、トリフェニレン環、o−テルフェニル環、m−テルフェニル環、p−テルフェニル環、アセナフテン環、コロネン環、フルオラントレン環、ナフタセン環、ペンタセン環、ペリレン環、ペンタフェン環、ピセン環、ピレン環、ピラントレン環、アンスラアントレン環等が挙げられる。
また同様に、Rで表される芳香族複素環としては、例えば、シロール環、フラン環、チオフェン環、オキサゾール環、ピロール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、インドール環、ベンズイミダゾール環、ベンズチアゾール環、ベンズオキサゾール環、キノキサリン環、キナゾリン環、フタラジン環、チエノチオフェン環、カルバゾール環、アザカルバゾール環(カルバゾール環を構成する炭素原子の任意の一つ以上が窒素原子で置き換わったものを表す)、ジベンゾシロール環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、ベンゾチオフェン環やジベンゾフラン環を構成する炭素原子の任意の一つ以上が窒素原子で置き換わった環、ベンゾジフラン環、ベンゾジチオフェン環、アクリジン環、ベンゾキノリン環、フェナジン環、フェナントリジン環、フェナントロリン環、サイクラジン環、キンドリン環、テペニジン環、キニンドリン環、トリフェノジチアジン環、トリフェノジオキサジン環、フェナントラジン環、アントラジン環、ペリミジン環、ナフトフラン環、ナフトチオフェン環、ナフトジフラン環、ナフトジチオフェン環、アントラフラン環、アントラジフラン環、アントラチオフェン環、アントラジチオフェン環、チアントレン環、フェノキサチイン環、ジベンゾカルバゾール環、インドロカルバゾール環、ジチエノベンゼン環等が挙げられる。
Rで表される炭素数4〜39の4価の脂肪族炭化水素基としては、例えば、ブタン−1,1,4,4−トリイル基、オクタン−1,1,8,8−トリイル基、デカン−1,1,10,10−トリイル基等の基が挙げられる。
また、Rで表される炭素数4〜39の4価の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロブタン−1,2,3,4−テトライル基、シクロペンタン−1,2,4,5−テトライル基、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトライル基、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトライル基、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトライル基、3,3′,4,4′−ジシクロヘキシルテトライル基、3,6−ジメチルシクロヘキサン−1,2,4,5−テトライル基、3,6−ジフェニルシクロヘキサン−1,2,4,5−テトライル基等の基が挙げられる。
Aで表される上記結合基を有する又は有さない炭素数2〜39の2価の脂肪族炭化水素基としては、例えば、下記構造式で表される基が挙げられる。
Figure 2019090843
上記構造式において、nは、繰り返し単位の数を表し、1〜5が好ましく、1〜3がより好ましい。また、Xは、炭素数1〜3のアルカンジイル基、つまり、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロパン−1,2−ジイル基であり、メチレン基が好ましい。
Aで表される上記結合基を有する又は有さない炭素数2〜39の2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、下記構造式で表される基が挙げられる。
Figure 2019090843
Aで表される上記結合基を有する又は有さない炭素数2〜39の2価の芳香族炭化水素基としては、例えば、下記構造式で表される基が挙げられる。
Figure 2019090843
Aで表される脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基の組み合わせからなる基としては、例えば、下記構造式で表される基が挙げられる。
Figure 2019090843
Aで表される基としては、結合基を有する炭素数2〜39の2価の芳香族炭化水素基、又は該芳香族炭化水素基と脂肪族炭化水素基の組み合わせであることが好ましく、特に、以下の構造式で表される基が好ましい。
Figure 2019090843
本発明に用いられる酸無水物はカルボン酸無水物であり、脂肪族若しくは脂環式テトラカルボン酸の誘導体であることが好ましく、例えば、脂肪族若しくは脂環式テトラカルボン酸エステル類、脂肪族若しくは脂環式テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。なお、脂肪族若しくは脂環式テトラカルボン酸又はその誘導体のうち、脂環式テトラカルボン酸二無水物が好ましい。
ここで、誘導体とは、脂肪族若しくは脂環式テトラカルボン酸に変化しうる化合物であり、例えば、脂肪族テトラカルボン酸二無水物の場合、当該無水物に代えて二つのカルボキシ基を有する化合物、これら二つのカルボキシ基の中の片方又は両方がエステル化されたエステル化物である化合物、又はこれら二つのカルボキシ基の中の片方又は両方がクロル化された酸クロライド等が好適に用いられる。
このようなアシル化合物を用いることにより、高い耐熱性と優れた光学特性とを有し、着色(黄変)の少ないポリイミドフィルムを得ることができる。
脂肪族テトラカルボン酸としては、例えば、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸等が挙げられる。脂環式テトラカルボン酸としては、例えば、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,4,5−シクロペンタンテトラカルボン酸、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸等が挙げられる。
脂肪族テトラカルボン酸エステル類としては、例えば、上記脂肪族テトラカルボン酸のモノアルキルエステル、ジアルキルエステル、トリアルキルエステル、テトラアルキルエステルが挙げられる。脂環式テトラカルボン酸エステル類としては、例えば、上記脂環式テトラカルボン酸のモノアルキルエステル、ジアルキルエステル、トリアルキルエステル、テトラアルキルエステルが挙げられる。なお、アルキル基部位は、炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜3のアルキル基であることがより好ましい。
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。脂環式テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。特に好ましくは、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物である。一般に、脂肪族ジアミンを構成成分とするポリイミドは、中間生成物であるポリアミド酸とジアミンが強固な塩を形成するため、高分子量化するためには塩の溶解性が比較的高い溶剤(例えばクレゾール、N,N−ジメチルアセトアミド、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン等)を用いることが好ましい。ところが、脂肪族ジアミンを構成成分とするポリイミドでも、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物を構成成分としている場合には、ポリアミド酸とジアミンの塩は比較的弱い結合で結ばれているので、高分子量化が容易で、フレキシブルなフィルムが得られやすい。
他にも、例えば、4,4′−ビフタル酸無水物、4,4′−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、2,3,3′,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4′−オキシジフタル酸無水物、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,3′,4,4′−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,4′−オキシジフタル酸無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物(ピグメントレッド224)1,2,3,4−テトラメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物トリシクロ[6.4.0.02,7]ドデカン−1,8:2,7−テトラカルボン酸二無水物等を用いることができる。
また、フルオレン骨格を有する酸無水物又はその誘導体を用いてもよい。ポリイミド特有の着色を改善する効果を有する。フルオレン骨格を有する酸無水物としては、例えば、9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン酸二無水物、9,9−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン酸二無水物、9,9−ビス〔4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)−3−フェニルフェニル〕フルオレン酸二無水物等を用いることができる。
芳香族、脂肪族若しくは脂環式テトラカルボン酸又はその誘導体は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、ポリイミドの溶剤可溶性、ポリイミドフィルムのフレキシビリティ、熱圧着性、透明性を損なわない範囲で、他のテトラカルボン酸又はその誘導体(特に二無水物)を併用してもよい。
かかる他のテトラカルボン酸又はその誘導体としては、例えば、ピロメリット酸、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3′,4′−ビフェニルテトラカルボン酸、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エーテル、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2′,3,3′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、4,4−(p−フェニレンジオキシ)ジフタル酸、4,4−(m−フェニレンジオキシ)ジフタル酸、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン等の芳香族系テトラカルボン酸及びこれらの誘導体(特に二無水物);エチレンテトラカルボン酸等の炭素数1〜3の脂肪族テトラカルボン酸及びこれらの誘導体(特に二無水物)等が挙げられる。
酸二無水物としては、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンジアンヒドリド又はビフェニルテトラカルボン酸二無水物であることが、透明性に優れる点、及び熱収縮による熱矯正をしやすい観点で好ましい。
前記式(1.1)で表される繰り返し単位は、全ての繰り返し単位に対して好ましくは10〜100モル%、より好ましくは50〜100モル%、更に好ましくは80〜100モル%、特に好ましくは90〜100モル%である。また、ポリイミド(A)1分子中の式(1.1)の繰り返し単位の個数は、10〜2000、好ましくは20〜200であり、この範囲において、更にガラス転移温度が230〜350℃であることが好ましく、250〜330℃であることがより好ましい。
(2)ジアミン又はその誘導体の構造
ジアミン又はその誘導体としては、例えば、芳香族ジアミン又はイソシアン酸エステル等が好ましく、芳香族ジアミンが好ましい。
本発明に用いられるジアミン又はその誘導体としては、芳香族ジアミン、脂肪族ジアミン又はこれらの混合物のいずれでも良く、芳香族ジアミンであることがポリイミドフィルムの白化を抑制できる観点から、好ましい。
なお、本発明において「芳香族ジアミン」とは、アミノ基が芳香族環に直接結合しているジアミンを表し、その構造の一部に脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、その他の置換基(例えば、ハロゲン原子、スルホニル基、カルボニル基、酸素原子等。)を含んでいてもよい。「脂肪族ジアミン」とは、アミノ基が脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基に直接結合しているジアミンを表し、その構造の一部に芳香族炭化水素基、その他の置換基(例えば、ハロゲン原子、スルホニル基、カルボニル基、酸素原子等。)を含んでいてもよい。
芳香族ジアミンの例としては、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、ベンジジン、o−トリジン、m−トリジン、ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、オクタフルオロベンジジン、3,3′−ジヒドロキシ−4,4′−ジアミノビフェニル、3,3′−ジメトキシ−4,4′−ジアミノビフェニル、3,3′−ジクロロ−4,4′−ジアミノビフェニル、3,3′−ジフルオロ−4,4′−ジアミノビフェニル、2,6−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,4′−ジアミノジフェニルエーテル、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、3,4′−ジアミノジフェニルスルホン、4,4′−ジアミノベンゾフェノン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(2−メチル−4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(2,6−ジメチル−4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−(2−メチル−4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−(2,6−ジメチル−4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4′−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4′−ビス(2−メチル−4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4′−ビス(2,6−ジメチル−4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4′−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4−(2−メチル−4−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4−(2,6−ジメチル−4−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)エーテル、ビス(4−(2−メチル−4−アミノフェノキシ)フェニル)エーテル、ビス(4−(2,6−ジメチル−4−アミノフェノキシ)フェニル)エーテル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(2−メチル−4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(2,6−ジメチル−4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(2−メチル−4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(2,6−ジメチル−4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(2−メチル−4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−エチル−4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(2,6−ジメチル−4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(2−メチル−4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(2,6−ジメチル−4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、α,α′−ビス(4−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、α,α′−ビス(2−メチル−4−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、α,α′−ビス(2,6−ジメチル−4−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、α,α′−ビス(3−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、α,α′−ビス(4−アミノフェニル)−1,3−ジイソプロピルベンゼン、α,α′−ビス(2−メチル−4−アミノフェニル)−1,3−ジイソプロピルベンゼン、α,α′−ビス(2,6−ジメチル−4−アミノフェニル)−1,3−ジイソプロピルベンゼン、α,α′−ビス(3−アミノフェニル)−1,3−ジイソプロピルベンゼン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(2−メチル−4−アミノフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(2,6−ジメチル−4−アミノフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(2−メチル−4−アミノフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(2,6−ジメチル−4−アミノフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)4−メチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)ノルボルナン、1,1−ビス(2−メチル−4−アミノフェニル)ノルボルナン、1,1−ビス(2,6−ジメチル−4−アミノフェニル)ノルボルナン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)アダマンタン、1,1−ビス(2−メチル−4−アミノフェニル)アダマンタン、1,1−ビス(2,6−ジメチル−4−アミノフェニル)アダマンタン、1,4−フェニレンジアミン、3,3′−ジアミノベンゾフェノン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、3−アミノベンジルアミン、2,2−ビス(3−アミノ−4−メチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、1,3−ビス[2−(4−アミノフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、ビス(2−アミノフェニル)スルフィド、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、4,4′−ジアミノ−3,3′−ジメチルジフェニルメタン、3,3′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−エチレンジアニリン、4,4′−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、4,4′−メチレンビス(2,6−ジエチルアニリン)、4,4′−メチレンビス(2−メチルシクロヘキシルアミン)等が挙げられる。
脂肪族ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ポリエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、ポリプロピレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、1,4−ビス(2−アミノ−イソプロピル)ベンゼン、1,3−ビス(2−アミノ−イソプロピル)ベンゼン、イソフォロンジアミン、ノルボルナンジアミン、シロキサンジアミン、4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,3′−ジエチル−4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,3′,5,5′−テトラメチル−4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタン、2,3−ビス(アミノメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,5−ビス(アミノメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6−ビス(アミノメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,2−ビス(4,4′−ジアミノシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4′−ジアミノメチルシクロヘキシル)プロパン等が挙げられる。
また、ポリイミド特有の着色を改善する目的でフルオレン骨格を有するジアミン又はその誘導体を用いてもよい。例えば、9,9−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)−3−フェニルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)−3−フェニルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(2−アミノフェノキシ)−3−フェニルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−3−メチルフェノキシ)−3−フェニルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−メチルフェノキシ)−3−フェニルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−3−エチルフェノキシ)−3−フェニルフェニル〕フルオレンなどを用いることができる。
また、下記式で表されるトリアジン母核を有するジアミン化合物を好ましく用いることができる。
Figure 2019090843
トリアジン母核を有する上記式のジアミン化合物において、Rは水素原子又は炭素数1〜12(好ましくは炭素数1〜10、さらに好ましくは炭素数1〜6)のアルキル基又はアリール基を表し、Rは炭素数1〜12(好ましくは炭素数1〜10、さらに好ましくは炭素数1〜6)のアルキル基又はアリール基を示し、RとRは異なっていてもよく、同じであってもよい。
とRの炭素数1〜12のアルキル基又はアリール基としては、具体的にはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、フェニル、ベンジル、ナフチル、メチルフェニル、ビフェニルなどが挙げられる。
トリアジンの二つのNH基に接続するアミノアニリノ基は、4−アミノアニリノ又は3−アミノアニリノであり、同じであっても異なっていてもよいが、4−アミノアニリノが好ましい。
トリアジン母核を有する上記式で表されるジアミン化合物としては、具体的には、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−アニリノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(3−アミノアニリノ)−6−アニリノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−ベンジルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(3−アミノアニリノ)−6−ベンジルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−ナフチルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−ビフェニルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−ジフェニルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(3−アミノアニリノ)−6−ジフェニルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−ジベンジルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−ジナフチルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−N−メチルアニリノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−N−メチルナフチルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−メチルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(3−アミノアニリノ)−6−メチルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−エチルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(3−アミノアニリノ)−6−エチルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−ジメチルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(3−アミノアニリノ)−6−ジメチルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−ジエチルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−ジブチルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−アミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(3−アミノアニリノ)−6−アミノ−1,3,5−トリアジンなどが挙げられる。
ジアミン誘導体であるイソシアン酸エステルとしては、例えば、上記芳香族又は脂肪族ジアミンとホスゲンを反応させて得られるジイソシアネートが挙げられる。
また、他のジアミン誘導体としては、ジアミノジシラン類も挙げられ、例えば上記芳香族又は脂肪族ジアミンとクロロトリメチルシランを反応させて得られるトリメチルシリル化した芳香族又は脂肪族ジアミンが挙げられる。
ジアミンとしては、2,2′−ビス(トリフルオロメチル)−4,4′−ジアミノビフェニルであることが、透明性に優れる点、及び熱収縮による熱矯正を行いやすい観点で好ましい。
以上のジアミン及びその誘導体は任意に混合して用いてもよいが、それらの中におけるジアミンの量が50〜100モル%となることが好ましく、80〜100モル%となることがより好ましい。
〔2.2〕ポリアミド酸の合成法及びイミド化
(1)ポリアミド酸の合成
ポリアミド酸は、適当な溶剤中で、前記テトラカルボン酸類の少なくとも1種類と、前記ジアミン類の少なくとも1種類を重合反応させることにより得られる。
また、ポリアミド酸エステルは、前記テトラカルボン酸二無水物を、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール等のアルコールを用いて開環することによりジエステル化し、得られたジエステルを適当な溶剤中で前記ジアミン化合物と反応させることにより得ることができる。更に、ポリアミド酸エステルは、上記のように得られたポリアミド酸のカルボン酸基を、上記のようなアルコールと反応させることによりエステル化することによっても得ることができる。
前記テトラカルボン酸二無水物と、前記ジアミン化合物との反応は、従来知られている条件で行うことができる。テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物の添加順序や添加方法には特に限定はない。例えば、溶剤にテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを順に投入し、適切な温度で撹拌することにより、ポリアミド酸を得ることができる。
ジアミン化合物の量は、テトラカルボン酸二無水物1モルに対して、通常0.8モル以上、好ましくは1モル以上である。一方、通常1.2モル以下、好ましくは1.1モル以下である。ジアミン化合物の量をこのような範囲とすることにより、得られるポリアミド酸の収率が向上し得る。
溶剤中のテトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物の濃度は、反応条件やポリアミド酸溶液の粘度に応じて適宜設定する。例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との合計の質量は、特段の制限はないが、全溶液量に対し、通常1質量%以上、好ましくは5質量%以上であり、一方、通常70質量%以下、好ましくは30質量%以下である。反応基質の量をこのような範囲とすることにより、低コストで収率良くポリアミド酸を得ることができる。
反応温度は、特段の制限はないが、通常0℃以上、好ましくは20℃以上であり、一方、通常100℃以下、好ましくは80℃以下である。反応時間は、特段の制限はないが、通常1時間以上、好ましくは2時間以上であり、一方、通常100時間以下、好ましくは24時間以下である。このような条件で反応を行うことにより、低コストで収率良くポリアミド酸を得ることができる。
この反応で用いられる重合溶剤としては、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン及びメシチレン等の炭化水素系溶剤;四塩化炭素、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン及びフルオロベンゼン等のハロゲン化炭化水素溶剤;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン及びメトキシベンゼン等のエーテル系溶剤;アセトン及びメチルエチルケトン等のケトン系溶剤;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド及びN−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶剤;ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン等の非プロトン系極性溶剤;ピリジン、ピコリン、ルチジン、キノリン及びイソキノリン等の複素環系溶剤;フェノール及びクレゾールのようなフェノール系溶剤、等が挙げられるが、特に限定されるものではない。重合溶剤としては、1種のみを用いることもできるし、2種類以上の溶剤を混合して用いることもできる。
ポリアミド酸の末端基は、重合反応時のテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物のいずれか一方を過剰に用いることによって、酸無水物基とアミノ基を任意に選ぶことができる。
末端基を酸無水物末端とした場合には、その後の処理を行わず酸無水物末端のままでも良く、加水分解させてジカルボン酸としてもよい。また、炭素数が4以下のアルコールを用いてエステルとしてもよい。更に、単官能のアミン化合物又はイソシアネート化合物を用いて末端を封止してもよい。ここで用いるアミン化合物又はイソシアネート化合物としては、単官能の第一級アミン化合物又はイソシアネート化合物であれば、特に制限はなく用いることができる。例えば、アニリン、メチルアニリン、ジメチルアニリン、トリメチルアニリン、エチルアニリン、ジエチルアニリン、トリエチルアニリン、アミノフェノール、メトキシアニリン、アミノ安息香酸、ビフェニルアミン、ナフチルアミン、シクロヘキシルアミン、フェニルイソシアナート、キシリレンイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、メチルフェニルイソシアネート、トリフルオロメチルフェニルイソシアネート等を挙げることができる。
また、末端基をアミン末端とした場合には、単官能の酸無水物によって、末端アミノ基を封止することで、アミノ基が末端に残ることを回避できる。ここで用いる酸無水物としては、加水分解した際にジカルボン酸又はトリカルボン酸となる単官能の酸無水物であれば、特に制限なく用いることができる。例えば、マレイン酸無水物、メチルマレイン酸無水物、ジメチルマレイン酸無水物、コハク酸無水物、ノルボルネンジカルボン酸無水物、4−(フェニルエチニル)フタル酸無水物、4−エチニルフタル酸無水物、フタル酸無水物、メチルフタル酸無水物、ジメチルフタル酸無水物、トリメリット酸無水物、ナフタレンジカルボン酸無水物、7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタ−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、4−オキサトリシクロ[5.2.2.02,6]ウンデカン−3,5−ジオン、オクタヒドロ−1,3−ジオキソイソベンゾフラン−5−カルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、ジメチルシクロヘキサンジカルボン酸無水物、1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物、メチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物等を挙げることができる。
(2)イミド化法
ここで、ポリイミドは、ポリアミド酸溶液を加熱してポリアミド酸をイミド化させる方法(熱イミド化法)、又は、ポリアミド酸溶液に閉環触媒(イミド化触媒)を添加してポリアミド酸をイミド化させる方法(化学イミド化法)により得ることができる。
また、ポリアミド酸溶液を加熱してポリアミド酸をイミド化させる方法(熱イミド化法)、又は、ポリアミド酸溶液に閉環触媒(イミド化触媒)を添加してポリアミド酸をイミド化させる方法(化学イミド化法)については、酸無水物とジアミンからポリアミド酸を重合する反応釜をそのまま継続して反応釜中でイミド化させてもよい。
反応釜中での熱イミド化法においては、上記重合溶剤中のポリアミド酸を、例えば80〜300℃の温度範囲で0.1〜200時間加熱処理してイミド化を進行させる。また、上記温度範囲を150〜200℃とすることが好ましく、150℃以上とすることにより、イミド化を確実に進行させて完了させることができ、一方、200℃以下とすることにより、溶剤や未反応原材料の酸化、溶剤の揮発による樹脂濃度の上昇を防止することができる。
更に、熱イミド化法においては、イミド化反応により生成する水を効率良く除去するために、上記重合溶剤に共沸溶剤を加えることができる。共沸溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ等の芳香族炭化水素や、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素等を用いることができる。共沸溶剤を使用する場合は、その添加量は、全有機溶剤量中の1〜30質量%程度、好ましくは5〜20質量%である。
一方、化学イミド化法においては、上記重合溶剤中のポリアミド酸に対し、公知の閉環触媒を添加してイミド化を進行させる。閉環触媒の具体例としては、トリメチルアミン、トリエチレンジアミン等の脂肪族第3級アミン及びイソキノリン、ピリジン、ピコリン等の複素環式第3級アミン等が挙げられるが、これ以外にも例えば、置換若しくは非置換の含窒素複素環化合物、含窒素複素環化合物のN−オキシド化合物、置換若しくは非置換のアミノ酸化合物、ヒドロキシ基を有する芳香族炭化水素化合物又は芳香族複素環状化合物が挙げられ、特に1,2−ジメチルイミダゾール、N−メチルイミダゾール、N−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、5−メチルベンズイミダゾール等の低級アルキルイミダゾール、N−ベンジル−2−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体、イソキノリン、3,5−ジメチルピリジン、3,4−ジメチルピリジン、2,5−ジメチルピリジン、2,4−ジメチルピリジン、4−n−プロピルピリジン等の置換ピリジン、p−トルエンスルホン酸等を好適に使用することができる。閉環触媒の添加量は、ポリアミド酸のアミド酸単位に対して0.01〜2倍当量、特に0.02〜1倍当量程度であることが好ましい。閉環触媒を使用することによって、得られるポリイミドの物性、特に伸びや破断抵抗が向上する場合がある。
また、上記熱イミド化法又は化学イミド化法においては、ポリアミド酸溶液中に脱水剤を添加しても良く、そのような脱水剤としては、例えば、無水酢酸等の脂肪族酸無水物、フタル酸無水物等の芳香族酸無水物等が挙げられ、これらを単独又は混合して使用することができる。また、脱水剤を用いると、低温で反応を進めることができ好ましい。なお、ポリアミド酸溶液に対し脱水剤を添加するのみでもポリアミド酸をイミド化させることが可能ではあるが、反応速度が遅いため、上記したように加熱又は閉環触媒の添加によりイミド化させることが好ましい。
このように反応釜中でイミド化させたポリイミド溶液は、ポリイミド溶液と比較して経時による加水分解による分子量低下が起き難いので有利である。
また、あらかじめイミド化反応が進んでいるため例えば、イミド化率100%のポリイミドの場合は、流延膜上でのイミド化が不要となり乾燥温度を下げることができる。
また、閉環したポリイミドを、貧溶剤などを用いて再沈殿、精製して固体にしてから溶剤に溶解し流延乾燥して製膜を行ってもよい。
この方法によれば、重合溶剤と流延する溶剤とを異なる種類とすることが可能となり、それぞれに最適な溶剤を選択することで、ポリイミドフィルムの性能をより引き出すことが可能になる。
例えば、ポリアミド酸を高分子量化させるためにジメチルアセドアミドを用いて重合、閉環し、メタノールを用いて固体化、乾燥したのちにジクロロメタンで添加剤を入れた溶液化してから流延、乾燥することで、高分子量化と低温乾燥が可能となる。
また、溶剤としてジクロロメタンを使う場合、他の溶剤と組み合わせて使用することができる。テトラヒドロフラン(THF)、1,3−ジオキソラン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、γブチロラクトン、エタノール、メタノール、ブタノール、イロプロパノールなど、適宜補助溶剤を使用することもできる。
(3)その他のポリイミド
上記したポリイミドの他に、リン、ケイ素、イオウなどの原子を含むポリイミドを用いることもできる。
例えば、リンを含むポリイミドとしては、特開2011−74209号公報の段落[0010]−[0021]及び特開2011−074177号公報の段落[0011]−[0025]にそれぞれ記載のポリイミドを用いることができる。
ケイ素を含むポリイミドとしては、特開2013−028796号公報の段落[0030]−[0045]に記載の、ポリイミド前駆体をイミド化して得られるポリイミドを用いることができる。
イオウを含むポリイミドとしては、特開2010−189322号公報の段落[0009]−[0025]、特開2008−274234号公報の段落[0012]−[0025]及び特開2008−274229号公報の段落[0012]−[0023]にそれぞれ記載の、ポリイミド前駆体をイミド化して得られるポリイミドを用いることができる。
その他にも、特開2009−256590号公報の段落[0008]−[0012]、特開2009−256589号公報の段落[0008]−[0012]に記載の脂環式ポリイミドなどを好ましく用いることができる。
〔2.3〕ポリアミドイミド
用いられるポリアミドイミドは、酸成分として、トリカルボン酸又はテトラカルボン酸、ジカルボン酸、アミン成分としてジアミンを構成単位として含むポリアミドイミドである。
用いられるポリアミドイミドは、酸成分として、
a)トリカルボン酸;ジフェニルエーテル−3,3′,4′−トリカルボン酸、ジフェニルスルホン−3,3′,4′−トリカルボン酸、ベンゾフェノン−3,3′,4′−トリカルボン酸、ナフタレン−1,2,4−トリカルボン酸、ブタン−1,2,4−トリカルボン酸などのトリカルボン酸等の一無水物、エステル化物などの単独、又は2種以上の混合物。
b)テトラカルボン酸;ジフェニルスルホン−3,3′,4,4′−テトラカルボン酸、ナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸、ナフタレン−1,2,4,5−テトラカルボン酸、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸一無水物、二無水物、エステル化物などの単独、又は2種以上の混合物。
c)ジカルボン酸;アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、シクロヘキサン−4,4′−ジカルボン酸のジカルボン酸、及びこれらの一無水物やエステル化物。
アミン成分としては、
d)アミン成分
3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノビフェニル、3,3′−ジエチル−4,4′−ジアミノビフェニル、2,2′−ジメチル−4,4′−ジアミノビフェニル、2,2′−ジエチル−4,4′−ジアミノビフェニル、3,3′−ジメトキシ−4,4′−ジアミノビフェニル、3,3′−ジエトキシ−4,4′−ジアミノビフェニル、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、3,4′−ジアミノジフェニルエーテル、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、3,3′−ジアミノジフェニルスルホン、3,4′−ジアミノビフェニル、3,3′−ジアミノビフェニル、3,3′−ジアミノベンズアニリド、4,4′−ジアミノベンズアニリド、4,4′−ジアミノベンゾフェノン、3,3′−ジアミノベンゾフェノン、3,4′−ジアミノベンゾフェノン、2,6−トリレンジアミン、2,4−トリレンジアミン、4,4′−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3′−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4′−ジアミノジフェニルプロパン、3,3′−ジアミノジフェニルプロパン、3,3′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、p−キシレンジアミン、m−キシレンジアミン、2,2′−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4′−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4′−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジアミン、シクロヘキサン−1,4−ジアミン、ジアミノシロキサン、又はこれらに対応するジイソシアネート単独、又は2種以上の混合物が挙げられる。
特に、酸成分として、無水トリメリット酸(TMA)、3,3,4′,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、及び3,3,4′,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、イソシアネート成分として1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、を含む原料で重合されたポリアミドイミド樹脂であることが好ましい。
ポリアミドイミドのイミド結合とアミド結合のモル比は、99/1〜60/40モル比が好ましく、より好ましくは99/1〜75/25であり、さらにより好ましくは90/10〜80/20である。イミド結合とアミド結合のモル比が、60/40以上では、耐熱性、耐湿信頼性、耐熱信頼性が向上する。また、99/1以下であると、弾性率が低くなり、耐折特性、屈曲特性が向上する傾向にある。
(1)式(2)で表される構造を必須成分とするポリアミドイミド
一つの好ましい実施態様は、式(2)で表される構造を必須成分とし、更に、式(3)、式(4)及び式(5)で表される群より選ばれる少なくとも1種の構造を、繰り返し単位として分子鎖中に含有するポリアミドイミド樹脂である。
Figure 2019090843
Figure 2019090843
(Xは、酸素原子、CO、SO、又は、結合を表す。nは0又は1を表す。)
Figure 2019090843
(Yは、酸素原子、CO、又はOOC−R−COOを表す。nは0又は1を、Rは二価の有機基を表す。)
Figure 2019090843
ここで、式(3)中、Xが、SO、又は、結合(ビフェニル結合)であること、又は、n=0であることが好ましい。更に好ましくは、Xが結合(ビフェニル結合)であること、又はn=0であることである。式(4)中、Yは、ベンゾフェノン型(CO)、又は、結合型(ビフェニル結合)が好ましい。
式(4)中、Yは、ベンゾフェノン型(CO)、又は、結合型(ビフェニル結合)が好ましい。
一つの好ましい実施態様は式(2)が無水トリメリット酸と1,5−ナフタレンジイソシアネートからの繰り返し単位、式(3)がテレフタル酸と1,5−ナフタレンジイソシアネートからの繰り返し単位、式(4)がビフェニルテトラカルボン酸二無水物、又は、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物と1,5−ナフタレンジイソシアネートからの繰り返し単位で、その含有比が式(2)/{式(3)+式(4)+式(5)}=1/99〜40/60モル比で、かつ、式(3)/式(4)=10/90〜90/10モル比が好ましい。
イミド化率は高いほど好ましく上限は100%である。上記ポリアミドイミド樹脂は、通常の方法で合成することができる。例えば、イソシアネート法、アミン法(酸クロリド法、低温溶液重合法、室温溶液重合法等)などであるが、本発明で用いるポリアミドイミド樹脂は有機溶剤に可溶なものが好ましく、前記のとおり、ピール強度(接着強度)の信頼性確保などの理由から、イソシアネート法による製造が好ましい。また、工業的にも、重合時の溶液がそのまま塗布できるため好ましい。
(2)式(6)又は式(7)で表される構造を有するポリアミドイミド
好ましいポリアミドイミド樹脂として、下記式(6)を構成単位として含む化合物を好ましく用いることができる。以下式(6)で表される構造を有する化合物について説明する。
Figure 2019090843
(式中、Rはアリール基、シクロアルカン基であり、窒素、酸素、硫黄、ハロゲンを含んでもよい。)
(ポリアミドイミド樹脂のジアミン成分)
また、ジアミン成分としては、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、3,4′−ジアミノジフェニルエーテル、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、3,3′−ジアミノジフェニルスルホン、3,4′−ジアミノビフェニル、3,3′−ジアミノビフェニル、3,3′−ジアミノベンズアニリド、4,4′−ジアミノベンズアニリド、4,4′−ジアミノベンゾフェノン、3,3′−ジアミノベンゾフェノン、3,4′−ジアミノベンゾフェノン、2,6−トリレンジアミン、2,4−トリレンジアミン、4,4′−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3′−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4′−ジアミノジフェニルプロパン、3,3′−ジアミノジフェニルプロパン、3,3′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、P−キシレンジアミン、m−キシレンジアミン、1,4−ナフタレンジアミン、1,5−ナフタレンジアミン、2,6−ナフタレンジアミン、2,7−ナフタレンジアミン、2,2′−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4′−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4′−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノビフェニル、4−メチル−1,3−フェニレンジアミン、3,3′−ジエチル−4,4′−ジアミノビフェニル、2,2′−ジメチル−4,4′−ジアミノビフェニル、2,2′−ジエチル−4,4′−ジアミノビフェニル、3,3′−ジメトキシ−4,4′−ジアミノビフェニル、3,3′−ジエトキシ−4,4′−ジアミノビフェニル、トランス−1,4−ジアミノシクロヘキサン、シス−1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン(トランス/シス混合物)、1,3−ジアミノシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジアミン(トランス体、シス体、トランス/シス混合物)、イソホロンジアミン、1,4−シクロヘキサンビス(メチルアミン)、2,5−ビス(アミノメチル)ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン、2,6−ビス(アミノメチル)ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン、3,8−ビス(アミノメチル)トリシクロ〔5.2.1.0〕デカン、1,3−ジアミノアダマンタン、4,4′−メチレンビス(2−メチルシクロヘキシルアミン)、4,4′−メチレンビス(2−エチルシクロヘキシルアミン)、4,4′−メチレンビス(2,6−ジメチルシクロヘキシルアミン)、4,4′−メチレンビス(2,6−ジエチルシクロヘキシルアミン)、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−プロパンジアミン、1,4−テトラメチレンジアミン、1,5−ペンタメチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,7−ヘプタメチレンジアミン、1,8−オクタメチレンジアミン、1,9−ノナメチレンジアミンなどの単独、若しくは、2種以上の混合物、又は、これらに対応するジイソシアネートなどの単独、若しくは、2種以上の混合物をジアミン成分として用いることができる。
好ましくは、3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノビフェニル、ジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジアミン(トランス体、シス体、トランス/シス混合物)、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、p−フェニレンジアミン、4−メチル−1,3−フェニレンジアミンなどの単独、若しくは、2種以上の混合物、又は、これらに対応するジイソシアネートなどの単独、若しくは、2種以上の混合物をジアミン成分として用いることができる。
より好ましくは、3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノビフェニル、ジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジアミン(トランス体、シス体、トランス/シス混合物)、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、4−メチル−1,3−フェニレンジアミンなどの単独、若しくは、2種以上の混合物、又は、これらに対応するジイソシアネートなどの単独、若しくは、2種以上の混合物をジアミン成分として用いることができる。
さらに好ましくは、3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノビフェニル、ジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジアミン(トランス体、シス体、トランス/シス混合物)、4−メチル−1,3−フェニレンジアミンなどの単独、若しくは、2種以上の混合物、又は、これらに対応するジイソシアネートなどの単独、若しくは、2種以上の混合物をジアミン成分として用いることができる。
(好ましい酸成分、ジアミン成分の組み合わせ)
上記酸成分、ジアミン成分の中でも、フィルム化するプロセスでの耐熱性、耐溶剤性、及び耐久性、並びに、製造されるポリアミドイミドフィルムの耐熱性、表面平滑性、及び透明性から、以下の成分が好ましく用いられる。
酸成分として、シクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸−1,2−無水物を用いることができる。シクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸−1,2−無水物を酸成分とするポリアミドイミド樹脂を用いることができる。
ジアミン成分として、3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノビフェニル及び4−メチル−1,3−フェニレンジアミンからなる群より選ばれた少なくとも1種又は2種の化合物、又は、3,3′−ジメチル−4,4′−ジイソシアネートビフェニル(o−トリジンジイソシアネート)、及び4−メチル−1,3−フェニレンジイソシアネート(トリレンジイソシアネート)からなる群より選ばれた少なくとも1種又は2種の化合物を用いることができる。
また、好ましいポリアミドイミド樹脂として、下記式(7)で表される構造を構成単位として含む化合物を用いることができる。
Figure 2019090843
(式中、R、Rはそれぞれ水素、炭素数1〜3のアルキル基又はアリール基を表し、窒素、酸素、硫黄、ハロゲンを含んでもよい。)
なお、全酸成分を100モル%とした場合、例示した酸成分は50モル%以上100%以下含まれるのがよく、より好ましくは70モル%以上100%以下含まれるのがよい。また、全ジアミン成分を100モル%とした場合、例示したジアミン成分は50モル%以上100%以下含まれるのがよく、より好ましくは70モル%以上100%以下含まれるのがよい。これらの範囲であれば、フィルム化するプロセスでの耐熱性、耐久性が良く、得られるポリアミドイミドフィルムの耐熱性、表面平滑性、及び透明性が特に良くなる。
用いられるポリアミドイミド樹脂の分子量は、N−メチル−2−ピロリドン中(ポリマー濃度0.5g/cm)、30℃での対数粘度にして0.3から2.5cm/gに相当する分子量を有するものが好ましく、より好ましくは0.5から2.0cm/gに相当する分子量を有するものである。対数粘度が0.3cm/g以上であればフィルム等の成型物にしたとき、機械的特性が十分となる。また、2.0cm/g以下であると溶液粘度が高くなり過ぎず、成形加工が容易となる。
〔2.4〕ポリエーテルイミド
用いられるポリエーテルイミドは、その構造単位に芳香核結合及びイミド結合を含む熱可塑性樹脂であり、特に制限されるものでなく、具体的には、下記式(8)又は下記式(9)で表される構造の繰り返し単位を有するポリエーテルイミドであることが好ましい。
Figure 2019090843
上記式(8)で表される構造の繰り返し単位を有するポリエーテルイミドは、ゼネラルエレクトリック社製の商品名「Ultem 1000」(ガラス転移温度:216℃)、「Ultem 1010」(ガラス転移温度:216℃)、上記式(9)で表される構造の繰り返し単位を有するポリエーテルイミドは、「Ultem CRS5001」(ガラス転移温度Tg226℃)、が挙げられ、そのほかの具体例として、三井化学株式会社製の商品名「オーラムPL500AM」(ガラス転移温度258℃)などが挙げられる。
当該ポリエーテルイミドの製造方法は特に限定されるものではないが、通常、上記式(8)で表される構造を有する非晶性ポリエーテルイミドは、4,4′−[イソプロピリデンビス(p−フェニレンオキシ)]ジフタル酸二無水物とm−フェニレンジアミンとの重縮合物として、また上記構造式(9)で表される構造を有するポリエーテルイミドは、4,4′−[イソプロピリデンビス(p−フェニレンオキシ)]ジフタル酸二無水物とp−フェニレンジアミンとの重縮合物として公知の方法によって合成される。
また、ポリエーテルイミドには、本発明の主旨を超えない範囲でアミド基、エステル基、スルホニル基など共重合可能なほかの単量体単位を含むものであってもよい。なお、ポリエーテルイミドは、1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
〔2.5〕ポリエステルイミド
イミド構造を有する透明耐熱性樹脂は、式(10)で表されるポリエステルイミド構造を構成単位中に含有することが好ましい。
Figure 2019090843
(式(10)中、Rは特定の構造を有する2価の基を表す。Rは2価の鎖式脂肪族基、2価の環式脂肪族基又は2価の芳香族基を表す。)
式(10)中、Rは、それぞれ、式(11)、式(12)又は式(13)で表される構造を有する2価の基を表す。
(式(11)で表される構造を有する2価の基)
Figure 2019090843
式(11)中、Rは、それぞれ2価の、鎖式脂肪族基、環式脂肪族基又は芳香族基を示し、複数個のRは、互いに同一であっても、異なっていてもよい。これらの鎖式脂肪族基、環式脂肪族基又は芳香族基を、単独、又は2種類以上を組み合わせて使用することもできる。
mは1以上の正の整数であり、2以上が好ましく、3以上がより好ましく、4以上がさらに好ましい。また、mの上限は特に限定されないが、好ましくは25以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは10以下である。25を超える場合では耐熱性が低下する傾向にある。
前記鎖式脂肪族基、環式脂肪族基又は芳香族基は、「2価のヒドロキシ基を有する鎖式脂肪族化合物」、「2価のヒドロキシ基を有する環式脂肪族化合物」又は「2価のヒドロキシ基を有する芳香族化合物」等のジオールから誘導される残基であることが望ましい。また、前記ジオールと炭酸エステル類やホスゲン等から重合され得る「ポリカーボネートジオール」から誘導される残基であってもよい。
「2価のヒドロキシ基を有する鎖式脂肪族化合物」としては、二つのヒドロキシ基を有する分岐状、又は直鎖状のジオールを用いることができる。例えば、アルキレンジオール、ポリオキシアルキレンジオール、ポリエステルジオール、ポリカプロラクトンジオール等が挙げられる。「2価のヒドロキシ基を有する鎖式脂肪族化合物」として使用できる二つのヒドロキシ基を有する分岐状又は直鎖状のジオールを以下に挙げる。
アルキレンジオールとして、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
ポリオキシアルキレンジオールとして、例えば、ジメチロールプロピオン酸(2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸)、ジメチロールブタン酸(2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸)、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、テトラメチレングリコールとネオペンチルグリコールとのランダム共重合体等が挙げられる。好ましくは、ポリオキシテトラメチレングリコールがよい。
ポリエステルジオールとしては、例えば、以下に例示される多価アルコールと多塩基酸とを反応させて得られる、ポリエステルジオール等が挙げられる。
ポリエステルジオールに用いる「多価アルコール成分」としては、任意の各種多価アルコールが使用可能である。例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、シクロヘキサンメタノール、ネオペンチルヒドロキシピパリン酸エステル、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物及びプロピレンオキサイド付加物、水添加ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物及びプロピレンオキサイド付加物、1,9−ノナンジオール、2−メチルオクタンジオール、1,10−ドデカンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、トリシクロデカンメタノール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオール等を使用できる。
ポリエステルジオールに用いる「多塩基酸成分」としては、任意の各種多塩基酸を使用することができる。例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、1,5−ナフタル酸、2,6−ナフタル酸、4,4′−ジフェニルジカルボン酸、2,2′−ジフェニルジカルボン酸、4,4′−ジフェニルエーテルジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸などの脂肪族や脂環族二塩基酸が使用できる。
ポリエステルジオールの市販品として、具体的には、ODX−688(DIC(株)製脂肪族ポリエステルジオール:アジピン酸/ネオペンチルグリコール/1,6−ヘキサンジオール、数平均分子量約2000)、Vylon(登録商標)220(東洋紡(株)製ポリエステルジオール、数平均分子量約2000)などを挙げることができる。
ポリカプロラクトンジオールとして、例えば、γ−ブチルラクトン、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン等のラクトン類を開環付加反応させて得られるポリカプロラクトンジオール等が挙げられる。
上述の「2価のヒドロキシ基を有する鎖式脂肪族化合物」を、単独、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
「2価のヒドロキシ基を有する環式脂肪族化合物」又は「2価のヒドロキシ基を有する芳香族化合物」としては、「芳香環やシクロヘキサン環に二つのヒドロキシ基を有する化合物」、「2個のフェノール若しくは脂環式アルコールが2価の官能基で結合された化合物」、「ビフェニル構造の両方の核にヒドロキシ基を一つずつ有する化合物」、「ナフタレン骨格に二つのヒドロキシ基を有する化合物」などが用いられる。
「芳香環やシクロヘキサン環に二つのヒドロキシ基を有する化合物」として、ヒドロキノン、2−メチルヒドロキノン、レゾルシノール、カテコール、2−フェニルヒドロキノン、シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンメタノール、1,4−ジヒドロキシシクロヘキサン、1,3−ジヒドロキシシクロヘキサン、1,2−ジヒドロキシシクロヘキサン、1,3−アダマンタンジオール、ジシクロペンタジエンの2水和物、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3,4−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸等のカルボキシ基含有ジオール等が使用できる。
「2個のフェノール」、又は、「脂環式アルコールが2価の官能基で結合された化合物」の例としては、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′−(9−フルオレニリデン)ジフェノール、4,4′−ジヒドロキシジシクロヘキシルエーテル、4,4′−ジヒドロキシジシクロヘキシルスルホン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF等が使用できる。
また、「ビフェニル構造の両方の核にヒドロキシ基を一つずつ有する化合物」の例として、4,4′−ビフェノール、3,4′−ビフェノール、2,2′−ビフェノール、3,3′,5,5′−テトラメチル−4,4′−ビフェノールなどが使用できる。
「ナフタレン骨格に二つのヒドロキシ基を有する化合物」の例としては2,6−ナフタレンジオール、1,4−ナフタレンジオール、1,5−ナフタレンジオール、1,8−ナフタレンジオール等が使用できる。
前記ジオールの数平均分子量は、100以上30000以下であることが好ましく、より好ましくは150以上20000以下であり、さらに好ましくは200以上10000以下である。数平均分子量が100未満では、低吸湿性、柔軟性が十分発揮できない。
また、30000より大きいと、「ジオール」の組成、構造、後に説明するジアミン成分(又はイソシアネート成分)の組成、構造によっては、相分離し、機械的特性、無色透明性を十分発揮できない場合がある。
ポリカーボネートジオールとしては、その骨格中上述した複数種のアルキレン基を有するポリカーボネートジオール(共重合ポリカーボネートジオール)であってもよい。例えば、2−メチル−1,8−オクタンジオールと1,9−ノナンジオールの組み合わせ、3−メチル−1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールの組み合わせ、1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールの組み合わせなどにより合成され得る共重合ポリカーボネートジオールなどを挙げることができる。好ましくは、2−メチル−1,8−オクタンジオールと1,9−ノナンジオールの組み合わせより合成され得る共重合ポリカーボネートジオールである。これらのポリカーボネートジオールを2種以上併用することもできる。
使用できるポリカーボネートジオールの市販品として(株)クラレ製クラレポリオールCシリーズ、旭化成ケミカルズ(株)デュラノールシリーズなどが挙げられる。例えば、クラレポリオールC−1015N、クラレポリオールC−1065N((株)クラレ製カーボネートジオール:2−メチル−1,8−オクタンジオール/1,9−ノナンジオール、数平均分子量約1000)、クラレポリオールC−2015N、クラレポリオールC2065N((株)クラレ製カーボネートジオール:2−メチル−1,8−オクタンジオール/1,9−ノナンジオール、数平均分子量約2000)、クラレポリオールC−1050、クラレポリオールC−1090((株)クラレ製カーボネートジオール:3−メチル−1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール、数平均分子量約1000)、クラレポリオールC−2050、クラレポリオールC−2090((株)クラレ製カーボネートジオール:3−メチル−1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール、数平均分子量約2000)、デュラノールT5650E(旭化成ケミカルズ(株)製ポリカーボネートジオール:1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール、数平均分子量約500)、デュラノールT5651(旭化成ケミカルズ(株)製ポリカーボネートジオール:1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール、数平均分子量約1000)、デュラノールT5652(旭化成ケミカルズ(株)製ポリカーボネートジオール:1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール、数平均分子量約2000)などを挙げることができる。好ましくは、クラレポリオールC−1015N等が挙げられる。
ポリカーボネートジオールの製造方法としては、原料ジオールと炭酸エステル類とのエステル交換、原料ジオールとホスゲンとの脱塩化水素反応を挙げることができる。原料である炭酸エステルとしては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどのジアルキルカーボネート;ジフェニルカーボネートなどのジアリールカーボネート;及びエチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのアルキレンカーボネートが挙げられる。
(式(12)で表される構造を有する2価の基)
式(12)で表される構造を有する2価の基について説明する。
Figure 2019090843
式(12)中、Rは、直結、アルキレン基(−C2n−)、パーフルオロアルキレン基(−C2n−)、エーテル結合(−O−)、エステル結合(−COO−)、カルボニル基(−CO−)、スルホニル基(−S(=O)−)、スルフィニル基(−SO−)、スルフェニル基(−S−)、カーボネート基(−OCOO−)、又はフルオレニリデン基を表す。nは1以上の正の整数である。nの上限は特に限定されないが、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、更に好ましくは3以下である。X〜Xは、それぞれが同じであっても、異なっていても良く、それぞれ水素、ハロゲン又はアルキル基を表す。
式(12)で表される構造を有する2価の基の具体例としては、特に限定されないが、ジフェニルエーテル骨格、ジフェニルスルホン骨格、9−フルオレニリデンジフェノール骨格、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物骨格又はビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物骨格、ビフェニル骨格、ナフタレン骨格等が挙げられる。
前記骨格は、式(12)の両方のベンゼン環に各1個のヒドロキシ基を有する化合物から誘導される残基であることが好ましい。式(12)で表される構造を有する2価の基の原料としては、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′−(9−フルオレニリデン)ジフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、4,4′−ビフェノール、3,4′−ビフェノール、2,2′−ビフェノール、3,3′,5,5′−テトラメチル−4,4′−ビフェノール、2,6−ナフタレンジオール、1,4−ナフタレンジオール、1,5−ナフタレンジオール又は1,8−ナフタレンジオール等が使用できる。
好ましくは、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′−(9−フルオレニリデン)ジフェノール又はビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物がよい。さらに好ましくは、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル又はビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物である。
これらの化合物を単独、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。これらの原料を用いることで、式(10)のR位に、前記ジフェニルエーテル骨格等を導入することができる。
(式(13)で表される構造を有する2価の基)
Figure 2019090843
式(13)中、Rは、直結、アルキレン基(−C2n−)、パーフルオロアルキレン基(−C2n−)、エーテル結合(−O−)、エステル結合(−COO−)、カルボニル基(−CO−)、スルホニル基(−S(=O)−)、スルフィニル基(−SO−)、スルフェニル基(−S−)、カーボネート基(−OCOO−)、又はフルオレニリデン基を表す。nは1以上の正の整数である。nの上限は特に限定されないが、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、更に好ましくは3以下である。X′〜X′は、それぞれが同じであっても、異なっていても良く、それぞれ水素、ハロゲン又はアルキル基を表す。
式(13)で表される構造を有する2価の基の具体例としては、特に限定されないが、ジシクロヘキシルエーテル骨格、ジシクロヘキシルスルホン骨格、水添ビスフェノールA骨格、水添ビスフェノールF骨格、水添ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物骨格又は水添ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物骨格等が挙げられる。
前記骨格は、式(13)の両方のシクロヘキサン環に各1個のヒドロキシ基を有する化合物から誘導される残基であることが好ましい。式(13)で表される構造を有する2価の基の原料としては、4,4′−ジヒドロキシジシクロヘキシルエーテル、4,4′−ジヒドロキシジシクロヘキシルスルホン、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、水添ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物又は水添ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等が使用できる。
好ましくは、4,4′−ジヒドロキシジシクロヘキシルエーテル又は4,4′−ジヒドロキシジシクロヘキシルスルホンがよい。
これらの化合物を単独、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。これらの原料を用いることで、式(10)のR位に、前記ジシクロヘキシルエーテル骨格等を導入することができる。
式(10)の構造は、一例を挙げるならば、シクロヘキサントリカルボン酸無水物のハロゲン化物とジオール類とを反応させエステル基含有テトラカルボン酸二無水物を得、次いで、そのエステル基含有テトラカルボン酸二無水物とジアミン又はジイソシアネート等とを縮合反応(ポリイミド化)させて得ることができる。
(式(14)で表される構造を有する2価の基)
ポリエステルイミド樹脂は、さらに、式(14)で表される構造を構成単位中に含有するのがよい。
Figure 2019090843
前記式(10)のR及び式(14)のR′について説明する。R及びR′はそれぞれ独立して、2価の鎖式脂肪族基、2価の環式脂肪族基又は2価の芳香族基であれば特に限定されない。これらの「2価の鎖式脂肪族基」、「2価の環式脂肪族基」、「2価の芳香族基」を、単独、又は2種類以上を組み合わせて使用することもできる。
好ましくは、Rは下記式(15)で表される構造を有する2価の基であり、R′は下記式(16)で表される構造を有する2価の基である。
(式(15)で表される構造を有する2価の基)
前記式(10)におけるRとしては、耐熱性、柔軟性、低吸湿性のバランス等から、式(15)で表される構造を有する2価の基であることが好ましい。
Figure 2019090843
式(15)中、Rは、直結、アルキレン基(−C2n−)、パーフルオロアルキレン基(−C2n−)、エーテル結合(−O−)、エステル結合(−COO−)、カルボニル基(−CO−)、スルホニル基(−S(=O)−)、スルフィニル基(−SO−)又はスルフェニル基(−S−)を表す。nは1以上10以下の正の整数であることが好ましく、より好ましくは1以上5以下、さらに好ましくは1以上3以下である。X〜X16は、同じであっても、異なっていても良く、それぞれ水素、ハロゲン又はアルキル基を表す。
(式(16)で表される構造を有する2価の基)
前記式(14)におけるR′としては、耐熱性、柔軟性、低吸湿性のバランス等から、式(16)で表される構造を有する2価の基であることが好ましい。
Figure 2019090843
式(16)中、R′は、直結、アルキレン基(−C2n−)、パーフルオロアルキレン基(−C2n−)、エーテル結合(−O−)、エステル結合(−COO−)、カルボニル基(−CO−)、スルホニル基(−S(=O)−)、スルフィニル基(−SO−)又はスルフェニル基(−S−)を表す。nは1以上10以下の正の整数であることが好ましく、より好ましくは1以上5以下、さらに好ましくは1以上3以下である。X′〜X16′は、同じであっても、異なっていても良く、それぞれ水素、ハロゲン又はアルキル基を表す。
前記式(10)及び前記式(14)において、「2価の鎖式脂肪族基」、「2価の環式脂肪族基」又は「2価の芳香族基」を式(10)のR位及び式(14)のR′位に導入するためには、それぞれ対応するジアミン成分又はジイソシアネート成分を用いることが好ましい。すなわち、「芳香族ジアミン又はそれに対応する芳香族ジイソシアネート」、「環式脂肪族ジアミン又はそれに対応する環式脂肪族ジイソシアネート」、「鎖式脂肪族ジアミン又はそれに対応する鎖式脂肪族ジイソシアネート」を適宜選択することによって、耐熱性、柔軟性、低吸湿性に優れたポリエステルイミド樹脂を得ることができる。
式(10)のR及び式(14)のR′のジアミン成分又はそれに対応するジイソシアネート成分は同一であっても異なっていてもよい。後述する好ましい製造方法に基づくならば、同一であるのが好ましい。
及びR′を基本骨格とするジアミン成分又はそれに対応するジイソシアネート成分について説明する。
「芳香族ジアミン又はそれに対応する芳香族ジイソシアネート」としては、具体的には、ジアミン化合物として例示すると、2,2′−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,5−ジアミノトルエン、2,4−ジアミノキシレン、2,4−ジアミノデュレン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−メチレンビス(2−メチルアニリン)、4,4′−メチレンビス(2−エチルアニリン)、4,4′−メチレンビス(2,6−ジメチルアニリン)、4,4′−メチレンビス(2,6−ジエチルアニリン)、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,3′−ジアミノジフェニルエーテル、2,4′−ジアミノジフェニルエーテル、4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、3,3′−ジアミノジフェニルスルホン、4,4′−ジアミノベンゾフェノン、3,3′−ジアミノベンゾフェノン、4,4′−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3′−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4′−ジアミノジフェニルプロパン、3,3′−ジアミノジフェニルプロパン、4,4′−ジアミノベンズアニリド、P−キシレンジアミン、m−キシレンジアミン、1,4−ナフタレンジアミン、1,5−ナフタレンジアミン、2,6−ナフタレンジアミン、2,7−ナフタレンジアミン、ベンジジン、3,3′−ジヒドロキシベンジジン、3,3′−ジメトキシベンジジン、3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノビフェニル、3,3′−ジエチル−4,4′−ジアミノビフェニル、2,2′−ジメチル−4,4′−ジアミノビフェニル、2,2′−ジエチル−4,4′−ジアミノビフェニル、3,3′−ジメトキシ−4,4′−ジアミノビフェニル、3,3′−ジエトキシ−4,4′−ジアミノビフェニル、o−トリジン、m−トリジン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4′−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ジアミノターフェニル等が挙げられる。また、これらは、2種類以上併用することもできる。
また、「環式脂肪族ジアミン又はそれに対応する環式脂肪族ジイソシアネート」としては、ジアミン化合物として例示すると、トランス−1,4−ジアミノシクロヘキサン、シス−1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン(トランス/シス混合物)、1,3−ジアミノシクロヘキサン、4,4′−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)(トランス体、シス体、トランス/シス混合物)、イソホロンジアミン、1,4−シクロヘキサンビス(メチルアミン)、2,5−ビス(アミノメチル)ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン、2,6−ビス(アミノメチル)ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン、3,8−ビス(アミノメチル)トリシクロ〔5.2.1.0〕デカン、1,3−ジアミノアダマンタン、4,4′−メチレンビス(2−メチルシクロヘキシルアミン)、4,4′−メチレンビス(2−エチルシクロヘキシルアミン)、4,4′−メチレンビス(2,6−ジメチルシクロヘキシルアミン)、4,4′−メチレンビス(2,6−ジエチルシクロヘキシルアミン)、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。また、これらは、2種類以上併用することもできる。
「鎖式脂肪族ジアミン又はそれに対応する鎖式脂肪族ジイソシアネート」としては、ジアミン化合物として例示すると、1,3−プロパンジアミン、1,4−テトラメチレンジアミン、1,5−ペンタメチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,7−ヘプタメチレンジアミン、1,8−オクタメチレンジアミン、1,9−ノナメチレンジアミン等が挙げられる。また、これらは、2種類以上併用することもできる。
耐熱性、柔軟性、低吸湿性のバランス等から、式(10)中のR及び式(14)中のR′のジアミン成分又はそれに対応するジイソシアネート成分として好ましい成分は、ジアミン化合物として例示すると、p−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、1,5−ナフタレンジアミン、o−トリジン、ジアミノターフェニル、4,4′−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、イソホロンジアミン等から誘導される残基である。より好ましくは、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、1,5−ナフタレンジアミン、o−トリジンであり、さらに好ましいのは、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、o−トリジンである。最も好ましくは4,4′−ジアミノジフェニルメタン、o−トリジンから誘導される残基である。
本発明に係るポリイミドには、フッ化ポリイミドを含有することが、ポリイミドフィルムの透明性に優れる点、及び熱収縮による熱矯正を行いやすい観点から好ましい。フッ素の含有率としては、フィルム中に1〜40質量%の範囲で含有されることが本発明の効果が大きくより好ましい。
〔2.6〕光学フィルムの物性
(全光線透過率)
本発明の光学フィルムは、透明のポリイミドフィルムであり、透明性の目安として、厚さ100μmのサンプルを作製した場合の全光線透過率が、80%以上であることをいう。全光線透過率は、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましい。全光線透過率は高いほど透明性が高くなるので好ましい。全光線透過率が80%以上という数値の記載は、その好ましい範囲を示したものである。
光学フィルムの全光線透過率は、23℃・55%RHの空調室で24時間調湿した光学フィルム試料1枚をJIS K 7375−2008に従って測定できる。測定は(株)日立ハイテクノロジーズの分光光度計U−3300を用いて可視光領域(400〜700nmの範囲)の透過率を測定することができる。
全光線透過率を80%以上とするには、上記ポリイミドの種類を選択することで調整できる。
(イエローインデックス値(YI値))
本発明に係る光学フィルムは、無色のポリイミドフィルムである。無色である目安としては、厚さ100μmのサンプルを作製した場合のイエローインデックス値(YI値)が、6.0以下である。より好ましくは0.3〜4.0の範囲内であり、特に好ましくは0.3〜2.0の範囲内である。イエローインデックス値(YI値)は小さいほど着色が少ないので好ましい。イエローインデックス値(YI値)が6.0以下という数値の記載は、その好ましい範囲を示したものである。
前記YI値の値は、上記ポリイミドの種類を選択することで調整することができる。
イエローインデックス値は、JIS K 7103に定められているフィルムのYI(イエローインデックス:黄色味の指数)に従って求めることができる。
イエローインデックス値の測定方法としては、フィルムのサンプルを作製し、(株)日立ハイテクノロジーズの分光光度計U−3300と附属の彩度計算プログラム等を用いて、JIS Z 8701に定められている光源色の三刺激値X、Y、Zを求め、下式の定義に従ってイエローインデックス値を求める。
イエローインデックス値(YI値)=100(1.28X−1.06Z)/Y
(溶解度)
本発明に係るポリイミド樹脂は、25℃、100gのジクロロメタン又は1,3−ジオキソランに1g以上溶解するポリイミド樹脂である。溶解度が1g以上であれば、溶液流延法により製造できやすくなる。溶解度は大きいほど溶液流延法による製造ができやすくなるので好ましい。溶解度が1g以上との数値の記載は、可溶性ポリイミド樹脂としての好ましい範囲の目安を示したものである。
本発明に係るポリイミドの溶解度は、前記本発明に用いられるポリイミド樹脂の種類を選択することにより調整することができる。
ポリイミド樹脂は可溶性にするためには、ポリイミドの分子骨格の平面性を高める方向に働くイミド基および芳香族炭化水素の構造の割合を低減させることが有効である。また、構造異性体、屈曲基の導入、芳香族基の代わりに脂肪族基や脂環式基の導入、フッ素原子やフルオレンなどの嵩高い骨格の導入することも有効である。
化合物例としては、脂環式、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、(ビシクロ[4.2.0]オクタン−3,4,7,8−テトラカルボン酸2無水物)ビシクロ[2.2.1]ヘプタンジメタンアミン、屈曲基を持つ構造としては、2,3′,3,4′−ビフェニルテトラカルボン酸ニ無水物、3,4′−オキシジフタル酸無水物、4,4′オキシジフタル酸無水物、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル)プロパン二無水物、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス(3−アミノフェニル)スルホン、3,3′−ジアミノベンゾフェノン、3,4′−ジアミノジフェニルエーテル、が挙げられる。
また、フッ素原子を含有する化合物としては、4,4′−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、2,2′−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、フルオレン基を含有する化合物としては、9,9−ビス(4−アミノ−3−フルオロフェニル)フルオレン、9,9−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)−フェニル]フルオレン無水物、9,9−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)−フェニル]フルオレン無水物、9,9−Bis(3,4−dicarboxyphenyl)fluorene Pilot fluorene Dianhydrideが挙げられる。
(ヘイズ値)
本発明では、熱処理後のロール体の光学フィルムについて、ヘイズ値が4%以下であることが、ポリイミドフィルムの透明性が高いという観点で好ましい。
ヘイズの測定は、JIS K 7136に準拠して、ヘイズメーターNDH−2000(日本電色工業株式会社製)にてヘイズ(全ヘイズ)を測定できる。23℃・55%RHの条件下で測定し、ヘイズメーターの光源は、5V・9Wのハロゲン球とし、受光部は、シリコンフォトセル(比視感度フィルター付き)とする。
〔3〕光学フィルムの添加剤
本発明の光学フィルムには、さらに以下の添加剤を添加することができる。
(無機微粒子)
本発明の光学フィルムには、無機微粒子が混合されることが好ましい。
無機微粒子の光学フィルム中への混合比率は0.01質量%以上で滑り性が改良される。したがって、長尺巻きの光学フィルムでの平面性の劣化が生じにくい。また2.0質量%以下とすることで、光学フィルムのヘイズ増加を防止する効果がある。
無機微粒子としては、下記の無機化合物の微粒子を用いることが好ましい。無機化合物の微粒子の例として、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウム等を挙げることができる。微粒子はケイ素を含むものが、濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化ケイ素が好ましい。
微粒子の一次粒子の平均粒径は、5〜400nmの範囲内が好ましく、さらに好ましいのは10〜300nmの範囲内である。これらは主に粒径0.05〜0.3μmの範囲内の二次凝集体として含有されていてもよく、平均粒径80〜400nmの範囲内の粒子であれば凝集せずに一次粒子として含まれていることも好ましい。
無機微粒子の一次粒子の平均粒径は小さいほうが、本発明の効果である面方向のヘイズ値のバラツキが少ない観点から好ましい。一次粒子の平均粒径は、30nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがより好ましい。
また、無機微粒子は表面修飾が行われ、表面がより疎水性であることが、フィルム中での分散度を向上することができ、ヘイズ値のバラツキが少ない観点から好ましい。
疎水的処理としては、炭素数5〜21のアルキル基を有するアルキルシラン、ジメチルシロキサン、ジメチルシロキサン環状体、メタクリロキシシラン、及びアミノシランから選択される少なくとも一種の化合物により表面修飾されていることが好ましい。
このような鎖の長い官能基又は環状官能基を有する化合物により表面修飾しているシリカ粒子を含有させることで、ポリイミド樹脂との絡み合いや相互作用が向上して二次凝集体を形成しやすくすることで、当該光学フィルム自体のマット効果を高めることができる。
光学フィルム中のこれらの微粒子の含有量は、0.01〜1質量%の範囲内であることがさらに好ましく、特に0.05〜0.5質量%の範囲内であることが好ましい。
共流延法による多層構成の光学フィルムの場合は、表面にこの添加量の微粒子を含有することが、好ましい。
二酸化ケイ素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル、株式会社製)の商品名で市販されており、使用することができる。
酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル株式会社製)の商品名で市販されており、使用することができる。
樹脂の微粒子の例として、シリコーン樹脂、フッ素樹脂及びアクリル樹脂を挙げることができる。シリコーン樹脂が好ましく、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)の商品名で市販されており、使用することができる。
これらの中でもアエロジル200V、アエロジルR972Vが、光学フィルムのヘイズを低く保ちながら、摩擦係数を下げる効果が大きいため特に好ましく用いられる。
(紫外線吸収剤)
本発明の光学フィルムは、紫外線吸収剤を含有することが耐光性を向上する観点から好ましい。紫外線吸収剤は400nm以下の紫外線を吸収することで、耐光性を向上させることを目的としており、特に波長370nmでの透過率が、0.1〜30%の範囲であることが好ましく、より好ましくは1〜20%の範囲、更に好ましくは2〜10%の範囲である。
本発明で好ましく用いられる紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤であり、特に好ましくはベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤及びベンゾフェノン系紫外線吸収剤である。
例えば、5−クロロ−2−(3,5−ジ−sec−ブチル−2−ヒドロキシルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、(2−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2,4−ベンジルオキシベンゾフェノン等があり、また、チヌビン109、チヌビン171、チヌビン234、チヌビン326、チヌビン327、チヌビン328、チヌビン928等のチヌビン類があり、これらはいずれもBASFジャパン(株)製の市販品であり好ましく使用できる。この中ではハロゲンフリーのものが好ましい。
このほか、1,3,5−トリアジン環を有する化合物等の円盤状化合物も紫外線吸収剤として好ましく用いられる。
本発明の光学フィルムは、紫外線吸収剤を2種以上含有することが好ましい。
また、紫外線吸収剤としては高分子紫外線吸収剤も好ましく用いることができ、特に特開平6−148430号記載のポリマータイプの紫外線吸収剤が好ましく用いられる。また、紫外線吸収剤は、ハロゲン基を有していないことが好ましい。
紫外線吸収剤の添加方法は、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコールやジクロロメタン、酢酸メチル、アセトン、1,3−ジオキソラン等の有機溶剤又はこれらの混合溶剤に紫外線吸収剤を溶解してからドープに添加するか、又は直接ドープ組成中に添加してもよい。
紫外線吸収剤の使用量は、紫外線吸収剤の種類、使用条件等により一様ではないが、光学フィルムの乾燥膜厚が15〜50μmの場合は、光学フィルムに対して0.5〜10質量%の範囲が好ましく、0.6〜4質量%の範囲が更に好ましい。
(酸化防止剤)
酸化防止剤は劣化防止剤ともいわれる。高湿高温の状態に電子デバイスなどが置かれた場合には、光学フィルムの劣化が起こる場合がある。
酸化防止剤は、例えば、光学フィルム中の残留するハロゲンやリン酸系可塑剤のリン酸等によりポリイミドフィルムが分解するのを遅らせたり、防いだりする役割を有するので、本発明の光学フィルム中に含有させることが好ましい。
このような酸化防止剤としては、特開2010−271619号公報の段落番号0108〜0119に記載の化合物を好ましく用いることができる。
これらの化合物の添加量は、光学フィルムに対して質量割合で1ppm〜1.0%の範囲が好ましく、10〜1000ppmの範囲が更に好ましい。
(位相差制御剤)
液晶表示装置等の画像表示装置の表示品質の向上のため、光学フィルム中に位相差制御剤を添加するか、配向膜を形成して液晶層を設け、偏光板保護フィルムと液晶層由来の位相差を複合化することにより、光学フィルムに光学補償能を付与することができる。
位相差制御剤としては、欧州特許911656A2号明細書に記載されているような、2以上の芳香族環を有する芳香族化合物、特開2006−2025号公報に記載の棒状化合物等が挙げられる。また、2種類以上の芳香族化合物を併用してもよい。この芳香族化合物の芳香族環には、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む芳香族性ヘテロ環であることが好ましい。芳香族性ヘテロ環は、一般に不飽和ヘテロ環である。なかでも、特開2006−2026号公報に記載の1,3,5−トリアジン環が好ましい。
これらの位相差制御剤の添加量は、光学フィルム系樹脂100質量%に対して、0.5〜20質量%の範囲内であることが好ましく、1〜10質量%の範囲内であることがより好ましい。
(剥離促進剤)
本発明の光学フィルムには、フィルム製造時の剥離性を改良するために剥離促進剤を添加してもよい。
光学フィルムの剥離抵抗を小さくする添加剤としては界面活性剤に効果の顕著なものが多く、好ましい剥離剤としてはリン酸エステル系の界面活性剤、カルボン酸又はカルボン酸塩系の界面活性剤、スルホン酸又はスルホン酸塩系の界面活性剤、硫酸エステル系の界面活性剤が効果的である。また上記界面活性剤の炭化水素鎖に結合している水素原子の一部をフッ素原子に置換したフッ素系界面活性剤も有効である。以下に剥離剤を例示する。
RZ−1 C17O−P(=O)−(OH)
RZ−2 C1225O−P(=O)−(OK)
RZ−3 C1225OCHCHO−P(=O)−(OK)
RZ−4 C1531(OCHCHO−P(=O)−(OK)
RZ−5 {C1225O(CHCHO)−P(=O)−OH
RZ−6 {C1835(OCHCHO}−P(=O)−ONH
RZ−7 (t−C−C−OCHCHO−P(=O)−(OK)
RZ−8 (iso−C19−C−O−(CHCHO)−P(=O)−(OK)(OH)
RZ−9 C1225SONa
RZ−10 C1225OSONa
RZ−11 C1733COOH
RZ−12 C1733COOH・N(CHCHOH)
RZ−13 iso−C17−C−O−(CHCHO)−(CHSONa
RZ−14 (iso−C19−C−O−(CHCHO)−(CHSONa
RZ−15 トリイソプロピルナフタレンスルフォン酸ナトリウム
RZ−16 トリ−t−ブチルナフタレンスルフォン酸ナトリウム
RZ−17 C1733CON(CH)CHCHSONa
RZ−18 C1225−CSO・NH
剥離促進剤の添加量はポリイミド樹脂に対して0.05〜5質量%が好ましく、0.1〜2質量%が更に好ましく、0.1〜0.5質量%が最も好ましい。
〔4〕光学フィルムの用途
本発明のポリイミド樹脂を含有する光学フィルムは、画像表示装置の透明フィルムとして使用できる。特にフレキシブル画像表示装置に好ましく適用できる。適用されるデバイスは、特に限定されないが、例えば、有機エレクトロルミネッセンス(EL)画像表示装置、液晶画像表示装置(LCD)、有機光電変換デバイス、タッチパネル、偏光板、位相差フィルム等を挙げることができる。本発明の効果がより効率的に得られるという観点から、有機エレクトロルミネッセンス(EL)画像表示装置、液晶画像表示装置(LCD)などのフレキシブルテレビ受像機、及びフレキシブルディスプレイ用前面部材に好ましく用いられる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。
以下の実施例に用いた化合物の構造を以下に列挙する。
Figure 2019090843
なお、上記の化合物の市販品の入手先は以下のとおりである。
酸無水物1:ダイキン工業社
酸無水物2:東京化成工業株式会社
ジアミン1:ダイキン工業社
(ポリイミド樹脂のガラス転移温度Tgの測定)
ポリイミド樹脂のガラス転移温度Tgは、昇温速度20℃/分で測定し、JIS K7121(1987)に従い求めた中間点ガラス転移温度(Tmg)であり、JIS K7121(1987)に従って、セイコーインスツル(株)製の示差走査熱量計DSC220を用いて測定した。
<ポリイミドフィルム101の作製>
(ポリイミド溶液Aの調製)
乾燥窒素ガス導入管、冷却器、トルエンを満たしたDean−Stark凝集器、撹拌機を備えた4口フラスコに、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物(酸無水物1)(ダイキン工業社製)25.59g(57.6mmol)をN,N−ジメチルアセトアミド(134g)に加え、窒素気流下、室温で撹拌した。
それに4,4′−ジアミノ−2,2′−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル(ジアミン1)(ダイキン工業社製)19.2g(60mmol)を加え、80℃で6時間加熱撹拌した。その後、外温を190℃まで加熱して、イミド化に伴って発生する水をトルエンとともに共沸留去した。6時間加熱、還流、撹拌を続けたところ、水の発生は認められなくなった。引き続きトルエンを留去しながら7時間加熱し、さらにトルエン留去後にメタノールを投入して再沈殿し、固形分を乾燥後に8質量%のジクロロメタン溶液にして、ポリイミド樹脂Aを含有するポリイミド溶液Aを調製した。ポリイミド樹脂Aの重量平均分子量は14万であった。
(ドープの調製)
下記組成の主ドープを調製した。まず、加圧溶解タンクにジクロロメタン(沸点40℃)を添加した。溶剤の入った加圧溶解タンクに、上記調製したポリイミド溶液Aを撹拌しながら投入した。これを加熱し、撹拌しながら、完全に溶解し、これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、主ドープを調製した。
(主ドープの組成)
ジクロロメタン 350質量部
ポリイミド溶液A 100質量部
マット剤(アエロジル R812、日本アエロジル(株)製) 0.5質量部
(流延工程)
次いで、無端ベルト流延装置を用い、ドープを温度30℃、1500mm幅でステンレスベルト支持体上に均一に流延した。ステンレスベルトの温度は30℃に制御した。
(剥離工程)
ステンレスベルト支持体上で、流延(キャスト)した流延膜(ウェブ)中の残留溶剤量が75%になるまで溶剤を蒸発させ、次いで剥離張力180N/mで、ステンレスベルト支持体上から剥離した。
(予備乾燥工程)
剥離した流延膜をローラー搬送しながら、テンターに入る直前において、残留溶剤量が15質量%になるように予備乾燥した。
(延伸工程)
予備乾燥した流延膜を、延伸開始時から延伸終了時までの温度を250℃に保ちながらクリップ式テンターを用いて幅方向に、1.50倍延伸した。延伸開始時の残留溶剤量は15質量%であった。
(乾燥工程)
延伸したフィルムを、多数のローラーで搬送しながら、搬送張力100N/m、乾燥時間15分間として、残留溶剤量が0.5質量%未満となるまで乾燥温度120℃で乾燥させ、乾燥膜厚60μm、幅1900mm、長さ5000mの長尺フィルム状のポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルムを巻き取って、ポリイミドフィルム101を得た。
<ポリイミドフィルム102〜109の作製>
ポリイミドフィルム101の作製において、延伸温度開始時及び延伸温度終了時の温度、延伸時残留溶剤量を表1に記載のように変化させた以外は同様にして、ポリイミドフィルム102〜109を作製した。
<ポリイミドフィルム110の作製>
ポリイミドフィルム101の作製において、ドープ調製に用いる溶剤をメチルイソブチルケトン(溶剤沸点116℃)に変更した以外は同様にして、ポリイミドフィルム110を作製した。
<ポリイミドフィルム111〜119の作製>
ポリイミドフィルム101の作製において、ポリイミド溶液Aの代わりに、下記ポリイミド溶液Bを用い、延伸温度開始時及び延伸温度終了時の温度、延伸時残留溶剤量を表1に記載のように変化させた以外は同様にして、ポリイミドフィルム111〜119を作製した。
(ポリイミド溶液Bの調製)
乾燥窒素ガス導入管、冷却器、トルエンを満たしたDean−Stark凝集器、撹拌機を備えた4口フラスコに、前記酸無水物2(東京化成工業株式会社製)12.9g(57.6mmol)をN,N−ジメチルアセトアミド(134g)に加え、窒素気流下、室温で撹拌した。
それに前記ジアミン1(ダイキン工業社製)19.2g(60mmol)を加え、80℃で6時間加熱撹拌した。その後、外温を190℃まで加熱して、イミド化に伴って発生する水をトルエンとともに共沸留去した。6時間加熱、還流、撹拌を続けたところ、水の発生は認められなくなった。引き続きトルエンを留去しながら7時間加熱し、さらにトルエン留去後にメタノールを投入して再沈殿し、固形分を乾燥後に8質量%のジクロロメタン溶液にして、ポリイミド樹脂Bを含有するポリイミド溶液Bを調製した。ポリイミド樹脂Bの重量平均分子量は13万であった。
<ポリイミドフィルム120〜137の作製>
ポリイミドフィルム101の作製において、溶剤をジクロロメタンの代わりに1,3−ジオキソランに変更し、ポリイミド溶液A及びポリイミド溶液Bを用い、延伸温度開始時及び延伸温度終了時の温度、延伸時残留溶剤量を表1及び表2に記載のように変化させた以外は同様にして、ポリイミドフィルム120〜137を作製した。
≪評価≫
ポリイミド樹脂及び作製したポリイミドフィルム101〜137を用いて下記評価を実施した。
〈1〉ポリイミド樹脂溶解性
上記作製したポリイミド樹脂A及びポリイミド樹脂Bを、25℃において100gのジクロロメタン又は1,3−ジオキソランに対する溶解性をみたところ、樹脂A及びBともに1g以上の溶解性を有していた。
〈2〉全光線透過率
上記作製したポリイミド樹脂A及びポリイミド樹脂Bを用いて、ジクロロメタンを溶剤として溶液流延法にて厚さ100μmのフィルムを試作し、全光線透過率を測定した。
23℃・55%RHの空調室で24時間調湿した試料1枚をJIS K 7375に従って、(株)日立ハイテクノロジーズの分光光度計U−3300を用いて可視光領域(400〜700nmの範囲)の透過率を測定し、10点測定の平均値を求めたところ、いずれの樹脂を用いたフィルムも全光線透過率は80%以上であった。
〈3〉イエローインデックス値(YI値)
上記作製したポリイミド樹脂A及びポリイミド樹脂Bを用いて、ジクロロメタンを溶剤として溶液流延法にて厚さ100μmのフィルムを試作し、イエローインデックス値(YI値)を測定した。
測定は、(株)日立ハイテクノロジーズの分光光度計U−3300と附属の彩度計算プログラム等を用いて測定し、10点測定の平均値を求めたところ、いずれの樹脂を用いたフィルムもイエローインデックス値(YI値)は6.0以下であった。
〈4〉溶解性(返材適性)
上記作製した各ポリイミドフィルムを、25℃においてジクロロメタン100g又は1,3−ジオキソランに対して溶解させ溶解できる上限を測定し、ポリイミドフィルムを返材に使用したときの溶解性の指標とした。以下の評価基準で評価し、○であれば返材適性があると判断した。
○:ジクロロメタン又はジオキソランへの溶解量が1g以上
×:ジクロロメタン又はジオキソランへの溶解量が1g未満
〈5〉位相差ムラ
各ポリイミドフィルムの面内位相差を幅手方向に10点測定し、その際の位相差値Roの標準偏差(σ)を求め、下記評価基準で評価し、○であれば位相差ムラが優れていると判断した。
○:Roの標準偏差(σ)が5nm未満
×:Roの標準偏差(σ)が5nm以上
なお、面内位相差値Roは、式(i)で定義される位相差値Roである。
式(i) Ro=(n−n)×d
(式中、nはフィルムの面内の遅相軸方向の屈折率、nはフィルムの面内の進相軸方向の屈折率(屈折率は23℃、55%RHの環境下、波長590nmで測定)、dはフィルムの厚さ(nm)を表す。)
面内方向の位相差値Roは自動複屈折率計アクソスキャン(AxoScan Mueller Matrix Polarimeter:アクソメトリックス社製)を用いて、23℃・55%RHの環境下、590nmの波長において、三次元屈折率測定を行い、得られた屈折率n、n、nから算出した。
位相差値Roの標準偏差(σ)は、測定値の平均値に対する分散σの平方根である。
平均値は、下記式により算出する(ここで、xiは、各測定値あり、nは測定点の数である)。
Figure 2019090843
分散σ2は下記式により計算する。
Figure 2019090843
ポリイミドフィルムの構成及び上記評価結果を表1及び表2に示した。
Figure 2019090843
Figure 2019090843
表1及び表2に示されるように、本発明のポリイミドフィルムは返材適性及び位相差ムラに優れていることがわかる。
11 無端ベルト(支持体)
21 ドープ
22 流延膜
51 張力規制ローラー
57 補助ローラー
C1 エアカーテン
C2 エアカーテン
Z1 予熱ゾーン
Z2 延伸ゾーン
Z3 冷却ゾーン

Claims (2)

  1. ポリイミド樹脂を含有し、全光線透過率が80%以上で、イエローインデックス値(YI値)が6.0以下である光学フィルムの製造方法であって、
    25℃、100gのジクロロメタン又は1,3−ジオキソランに1g以上溶解するポリイミド樹脂を含有するドープを支持体上に流延し流延膜を形成する工程(流延工程)、
    該流延膜を支持体から剥離する工程(剥離工程)、及び、
    剥離された該流延膜を延伸する工程(延伸工程)を有し、
    前記延伸工程における延伸温度が、前記ポリイミド樹脂のガラス転移温度をTg(℃)としたときに、(Tg−250℃)〜(Tg−100℃)の範囲内であり、
    前記延伸工程における延伸開始から延伸終了までの延伸温度の変化が、70℃以内であり、かつ、
    前記延伸温度が、主溶剤の沸点Tbよりも50℃以上高いことを特徴とする光学フィルムの製造方法。
  2. 前記延伸工程における残留溶剤量が、3〜100質量%の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルムの製造方法。
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