以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下、XYZ座標系を用いて図中の方向を説明する。このXYZ座標系においては、水平面に平行な平面をXY平面とする。このXY平面に平行な一方向をX方向と表記し、X方向に直交する方向をY方向と表記する。また、XY平面に垂直な方向はZ方向と表記する。X方向、Y方向及びZ方向のそれぞれは、図中の矢印の方向が+方向であり、矢印の方向とは反対の方向が−方向であるものとして説明する。
図1及び図2は、本実施形態に係る製造システムSYSの一例を示す図である。図1及び図2に示す製造システムSYSは、多孔性樹脂膜F(多孔性のイミド系樹脂膜)を製造するものである。製造システムSYSは、所定の塗布液を塗布して未焼成膜FAを形成する塗布ユニット10と、未焼成膜FAを焼成して焼成膜FBを形成する焼成ユニット20と、焼成膜FBから微粒子を除去して多孔性樹脂膜Fを形成する除去ユニット(エッチング装置)30と、上記各ユニットを統括的に制御する制御装置(不図示)とを備えている。
製造システムSYSは、例えば上下2階層に構成されており、塗布ユニット10が2階部分に配置され、焼成ユニット20及び除去ユニット30が1階部分に配置される。同一階に配置される焼成ユニット20及び除去ユニット30は、例えばY方向に並んで配置されるが、これに限定するものではなく、例えばX方向又はX方向とY方向との合成方向に並んで配置されてもよい。
なお、製造システムSYSの階層構造や各階における各ユニットの配置等については上記に限定するものではなく、例えば塗布ユニット10及び焼成ユニット20が2階部分に配置され、除去ユニット30が1階部分に配置されてもよい。また、すべてのユニットが同一階に配置されてもよい。この場合、各ユニットが一列に配置されてもよいし、複数列で配置されてもよい。また、すべてのユニットが異なる階層に配置されてもよい。
製造システムSYSでは、未焼成膜FAが帯状に形成される。塗布ユニット10の+Y側(未焼成膜FAの搬送方向の前方)には、帯状の未焼成膜FAをロール状に巻き取る巻き取り部50が設けられる。焼成ユニット20の−Y側(未焼成膜FAの搬送方向の後方)には、ロール状の未焼成膜FAを焼成ユニット20へ向けて送り出す送り出し部60が設けられる。除去ユニット30の+Y側(焼成膜FBの搬送方向の前方)には、多孔性樹脂膜Fをロール状に巻き取る巻き取り部80が設けられる。
このように、送り出し部60から焼成ユニット20及び除去ユニット30を経て巻き取り部80に至るまでの区間(1階部分)では、いわゆるロール・ツー・ロール方式による処理が行われる。したがって、この区間では、未焼成膜FA、焼成膜FB及び多孔性樹脂膜Fの各膜が一続きの状態で搬送される。
[塗布液]
ここで、各ユニットを説明する前に、多孔性樹脂膜Fの原料となる塗布液について説明する。塗布液は、所定の樹脂材料と、微粒子と、溶剤とを含む。所定の樹脂材料としては、例えばポリアミド酸、ポリイミド、ポリアミドイミド、又はポリアミドが挙げられる。溶剤としては、これらの樹脂材料を溶解可能な有機溶剤が用いられる。
本実施形態では、塗布液として、微粒子の含有率が異なる2種類の塗布液(第1塗布液及び第2塗布液)が用いられる。具体的には、第1塗布液は、第2塗布液よりも微粒子の含有率が高くなるように調製される。これにより、未焼成膜FA、焼成膜FB及び多孔性樹脂膜Fの強度及び柔軟性を担保することができる。また、微粒子の含有率の低い層を設けることで、多孔性樹脂膜Fの製造コストの低減を図ることができる。
例えば、第1塗布液には、樹脂材料と微粒子とが19:81〜45:65の体積比となるように含有される。また、第2塗布液には、樹脂材料と微粒子とが20:80〜50:50の体積比となるように含有される。ただし、第1塗布液の微粒子の含有率が、第2塗布液の微粒子の含有率よりも高くなるように体積比が設定される。なお、各樹脂材料の体積は、各樹脂材料の質量にその比重を乗じて求めた値が用いられる。
上記の場合において、第1塗布液の体積全体を100としたときに微粒子の体積が65以上であれば、粒子が均一に分散し、また、微粒子の体積が81以内であれば粒子同士が凝集することもなく分散する。このため、多孔性樹脂膜Fに孔を均一に形成することができる。また、微粒子の体積比率がこの範囲内であれば、未焼成膜FAを成膜する際の剥離性を確保することができる。
第2塗布液の体積全体を100としたときに微粒子の体積が50以上であれば、微粒子単体が均一に分散し、また、微粒子の体積80以内であれば微粒子同士が凝集することもなく、また、表面にひび割れ等が生じることもないため、安定して電気特性の良好な多孔性樹脂膜Fを形成することができる。
上記2種類の塗布液は、例えば微粒子を予め分散した溶剤とポリアミド酸、ポリイミド、ポリアミドイミド又はポリアミドを任意の比率で混合することで調製される。また、微粒子を予め分散した溶剤中でポリアミド酸、ポリイミド、ポリアミドイミド又はポリアミドを重合して調製されてもよい。例えば、微粒子を予め分散した有機溶剤中でテトラカルボン酸二無水物及びジアミンを重合してポリアミド酸とするか、更にイミド化してポリイミドとすることで製造できる。
塗布液の粘度は、最終的に300〜2500cPとすることが好ましく、400〜1500cPの範囲がより好ましく、600〜1200cPの範囲がさらに好ましい。塗布液の粘度がこの範囲内であれば、均一に成膜をすることが可能である。
上記塗布液には、微粒子とポリアミド酸又はポリイミドを乾燥して未焼成膜FAとした場合において、微粒子の材質が後述の無機材料の場合は微粒子/ポリイミドの比率が2〜6(質量比)となるように微粒子とポリアミド酸又はポリイミドとを混合するとよい。3〜5(質量比)とすることが、更に好ましい。微粒子の材質が後述の有機材料の場合は微粒子/ポリイミドの比率が1〜3.5(質量比)となるように微粒子とポリアミド酸又はポリイミドとを混合するとよい。1.2〜3(質量比)とすることが、更に好ましい。また、未焼成膜FAとした際に微粒子/ポリイミドの体積比率が1.5〜4.5となるように微粒子とポリアミド酸又はポリイミドとを混合するとよい。1.8〜3(体積比)とすることが更に好ましい。未焼成膜FAとした際に微粒子/ポリイミドの質量比又は体積比が下限値以上であれば、セパレータとして適切な密度の孔を得ることができ、上限値以下であれば、粘度の増加や膜中のひび割れ等の問題を生じることなく安定的に成膜することができる。ポリアミド酸又はポリイミドのかわりに樹脂材料がポリアミドイミド又はポリアミドとなる場合も、質量比は上記と同様である。
以下、各樹脂材料について具体的に説明する。
<ポリアミド酸>
本実施形態で用いるポリアミド酸は、任意のテトラカルボン酸二無水物とジアミンを重合して得られるものが、特に限定されることなく使用できる。テトラカルボン酸二無水物及びジアミンの使用量は特に限定されないが、テトラカルボン酸二無水物1モルに対して、ジアミンを0.50〜1.50モル用いるのが好ましく、0.60〜1.30モル用いるのがより好ましく、0.70〜1.20モル用いるのが特に好ましい。
テトラカルボン酸二無水物は、従来からポリアミド酸の合成原料として使用されているテトラカルボン酸二無水物から適宜選択することができる。テトラカルボン酸二無水物は、芳香族テトラカルボン酸二無水物であっても、脂肪族テトラカルボン酸二無水物であってもよいが、得られるポリイミド樹脂の耐熱性の点から、芳香族テトラカルボン酸二無水物を使用することが好ましい。テトラカルボン酸二無水物は、2種以上を組合せて用いてもよい。
芳香族テトラカルボン酸二無水物の好適な具体例としては、ピロメリット酸二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2,6,6−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−へキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4−(p−フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物、4,4−(m−フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、9,9−ビス無水フタル酸フルオレン、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、エチレンテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、シクロへキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロへキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらの中では、価格、入手容易性等から、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物及びピロメリット酸二無水物が好ましい。また、これらのテトラカルボン酸二無水物は単独あるいは二種以上混合して用いることもできる。
ジアミンは、従来からポリアミド酸の合成原料として使用されているジアミンから適宜選択することができる。ジアミンは、芳香族ジアミンであっても、脂肪族ジアミンであってもよいが、得られるポリイミド樹脂の耐熱性の点から、芳香族ジアミンが好ましい。これらのジアミンは、2種以上を組合せて用いてもよい。
芳香族ジアミンとしては、フェニル基が1個あるいは2〜10個程度が結合したジアミノ化合物を挙げることができる。具体的には、フェニレンジアミン及びその誘導体、ジアミノビフェニル化合物及びその誘導体、ジアミノジフェニル化合物及びその誘導体、ジアミノトリフェニル化合物及びその誘導体、ジアミノナフタレン及びその誘導体、アミノフェニルアミノインダン及びその誘導体、ジアミノテトラフェニル化合物及びその誘導体、ジアミノヘキサフェニル化合物及びその誘導体、カルド型フルオレンジアミン誘導体である。
フェニレンジアミンはm−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン等であり、フェニレンジアミン誘導体としては、メチル基、エチル基等のアルキル基が結合したジアミン、例えば、2,4−ジアミノトルエン、2,4−トリフェニレンジアミン等である。
ジアミノビフェニル化合物は、2つのアミノフェニル基がフェニル基同士で結合したものである。例えば、4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル等である。
ジアミノジフェニル化合物は、2つのアミノフェニル基が他の基を介してフェニル基同士で結合したものである。結合はエーテル結合、スルホニル結合、チオエーテル結合、アルキレン又はその誘導体基による結合、イミノ結合、アゾ結合、ホスフィンオキシド結合、アミド結合、ウレイレン結合等である。アルキレン結合は炭素数が1〜6程度のものであり、その誘導体基はアルキレン基の水素原子の1以上がハロゲン原子等で置換されたものである。
ジアミノジフェニル化合物の例としては、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルケトン、3,4’−ジアミノジフェニルケトン、2,2−ビス(p−アミノフェニル)プロパン、2,2’−ビス(p−アミノフェニル)へキサフルオロプロパン、4−メチル−2,4−ビス(p−アミノフェニル)−1−ペンテン、4−メチル−2,4−ビス(p−アミノフェニル)−2−ぺンテン、イミノジアニリン、4−メチル−2,4−ビス(p−アミノフェニル)ペンタン、ビス(p−アミノフェニル)ホスフィンオキシド、4,4’−ジアミノアゾベンゼン、4,4’−ジアミノジフェニル尿素、4,4’−ジアミノジフェニルアミド、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。
これらの中では、価格、入手容易性等から、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、及び4,4’−ジアミノジフェニルエーテルが好ましい。
ジアミノトリフェニル化合物は、2つのアミノフェニル基と1つのフェニレン基が何れも他の基を介して結合したものであり、他の基は、ジアミノジフェニル化合物と同様のものが選ばれる。ジアミノトリフェニル化合物の例としては、1,3−ビス(m−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(p−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(p−アミノフェノキシ)ベンゼン等を挙げることができる。
ジアミノナフタレンの例としては、1,5−ジアミノナフタレン及び2,6−ジアミノナフタレンを挙げることができる。
アミノフェニルアミノインダンの例としては、5又は6−アミノ−1−(p−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダンを挙げることができる。
ジアミノテトラフェニル化合物の例としては、4,4’−ビス(p−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2’−ビス[p−(p’−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’−ビス[p−(p’−アミノフェノキシ)ビフェニル]プロパン、2,2’−ビス[p−(m−アミノフェノキシ)フェニル]ベンゾフェノン等を挙げることができる。
カルド型フルオレンジアミン誘導体は、9,9−ビスアニリンフルオレン等が挙げられる。
脂肪族ジアミンは、例えば、炭素数が2〜15程度のものがよく、具体的には、ペンタメチレンジアミン、へキサメチレンジアミン、へプタメチレンジアミン等が挙げられる。
なお、これらのジアミンの水素原子がハロゲン原子、メチル基、メトキシ基、シアノ基、フェニル基等の群より選択される少なくとも1種の置換基により置換された化合物であってもよい。
本実施形態で用いられるポリアミド酸を製造する手段に特に制限はなく、例えば、有機溶剤中で酸、ジアミン成分を反応させる方法等の公知の手法を用いることができる。
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応は、通常、有機溶剤中で行われる。テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応に使用される有機溶剤は、テトラカルボン酸二無水物及びジアミンを溶解させることができ、テトラカルボン酸二無水物及びジアミンと反応しないものであれば特に限定されない。有機溶剤は単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応に用いる有機溶剤の例としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルカプローラクタム、N,N,N’,N’−テトラメチルウレア等の含窒素極性溶剤;β−プロピオラクトン、γ−ブチローラクトン、γ−バレローラクトン、δ−バレローラクトン、γ−カプローラクトン、ε−カプローラクトン等のラクトン系極性溶剤;ジメチルスルホキシド;アセトニトリル;乳酸エチル、乳酸ブチル等の脂肪酸エステル類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチルセルソルブアセテート、エチルセルソルブアセテート等のエーテル類;クレゾール類等のフェノール系溶剤が挙げられる。これらの有機溶剤は単独あるいは2種以上を混合して用いることができる。有機溶剤の使用量に特に制限はないが、生成するポリアミド酸の含有量が5〜50質量%とするのが望ましい。
これらの有機溶剤の中では、生成するポリアミド酸の溶解性から、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルカプローラクタム、N,N,N’,N’−テトラメチルウレア等の含窒素極性溶剤が好ましい。
重合温度は一般的には−10〜120℃、好ましくは5〜30℃である。重合時間は使用する原料組成により異なるが、通常は3〜24Hr(時間)である。また、このような条件下で得られるポリアミド酸の有機溶剤溶液の固有粘度は、好ましくは1000〜10万cP(センチポアズ)、より一層好ましくは5000〜7万cPの範囲である。
<ポリイミド>
本実施形態に用いるポリイミドは、塗布液に使用する有機溶剤に溶解可能な可溶性ポリイミドなら、その構造や分子量に限定されることなく、公知のものが使用できる。ポリイミドについて、側鎖にカルボキシ基等の縮合可能な官能基又は焼成時に架橋反応等を促進させる官能基を有していてもよい。
有機溶剤に可溶なポリイミドとするために、主鎖に柔軟な屈曲構造を導入するためのモノマーの使用、例えば、エチレジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン等の脂肪族ジアミン;2−メチルー1,4−フェニレンジアミン、o−トリジン、m−トリジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、4,4’−ジアミノベンズアニリド等の芳香族ジアミン;ポリオキシエチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシブチレンジアミン等のポリオキシアルキレンジアミン;ポリシロキサンジアミン;2,3,3’,4’−オキシジフタル酸無水物、3,4,3’,4’−オキシジフタル酸無水物、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエート−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物等の使用が有効である。また、有機溶剤への溶解性を向上する官能基を有するモノマーの使用、例えば、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、2−トリフルオロメチル−1,4−フェニレンジアミン等のフッ素化ジアミンを使用することも有効である。更に、上記ポリイミドの溶解性を向上するためのモノマーに加えて、溶解性を阻害しない範囲で、上記ポリアミド酸の欄に記したものと同じモノマーを併用することもできる。
本発明で用いられる、有機溶剤に溶解可能なポリイミドを製造する手段に特に制限はなく、例えば、ポリアミド酸を化学イミド化又は加熱イミド化させ、有機溶剤に溶解させる方法等の公知の手法を用いることができる。そのようなポリイミドとしては、脂肪族ポリイミド(全脂肪族ポリイミド)、芳香族ポリイミド等を挙げることができ、芳香族ポリイミドが好ましい。芳香族ポリイミドとしては、式(1)で示す繰り返し単位を有するポリアミド酸を熱又は化学的に閉環反応によって取得したもの、若しくは式(2)で示す繰り返し単位を有するポリイミドを溶媒に溶解したものでよい。式中Arはアリール基を示す。
<ポリアミドイミド>
本実施形態に用いるポリアミドイミドは、塗布液に使用する有機溶剤に溶解可能な可溶性ポリアミドイミドなら、その構造や分子量に限定されることなく、公知のものが使用できる。ポリアミドイミドについて、側鎖にカルボキシ基等の縮合可能な官能基又は焼成時に架橋反応等を促進させる官能基を有していてもよい。
本実施形態で用いるポリアミドイミドは、任意の無水トリメリット酸とジイソシアネートとを反応させて得られるものや、任意の無水トリメリット酸の反応性誘導体とジアミンとの反応により得られる前駆体ポリマーをイミド化して得られるものを特に限定されることなく使用できる。
上記任意の無水トリメッと酸又はその反応性誘導体としては、例えば、無水トリメリット酸、無水トリメリット酸クローライド等の無水トリメリット酸ハロゲン化物、無水トリメリット酸エステル等が挙げられる。
ジイソシアネートとしては、例えば、メタフェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−オキシビス(フェニルイソシアネート)、4,4’−ジイソシアネートジフェニルメタン、ビス[4−(4−イソシアネートフェノキシ) フェニル] スルホン、2,2′−ビス[4−(4−イソシアネートフェノキシ)フェニル] プロパン等が挙げられる。
ジアミンとしては、前記ポリアミド酸の説明において例示したものと同様のものが挙げられる。
<ポリアミド>
ポリアミドとしては、ジカルボン酸とジアミンとから得られるポリアミドが好ましく、特に芳香族ポリアミドが好ましい。
ジカルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、メチルマレイン酸、ジメチルマレイン酸、フェニルマレイン酸、クロロマレイン酸、ジクロロマレイン酸、フルオロマレイン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、及びジフェン酸等が挙げられる。
ジアミンとしては、前記ポリアミド酸の説明において例示したものと同様のものが挙げられる。
<微粒子>
続いて、微粒子について説明する。微粒子は、例えば真球率が高く、粒径分布指数の小さいものが用いられる。このような微粒子は、液体中での分散性に優れ、互いに凝集しない状態となる。微粒子の粒径(平均直径)としては、例えば、100〜2000nm程度に設定することができる。上記のような微粒子を用いることにより、後の工程で微粒子を除去することで得られる多孔性樹脂膜Fの孔径を揃えることができる。このため、多孔性樹脂膜Fによって形成されるセパレータに印加される電界を均一化できる。
なお、微粒子の材質としては、塗布液に含まれる溶剤に不溶であって、後の工程で多孔性樹脂膜Fから除去可能な材質であれば、特に限定されることはなく公知のものを採用することができる。例えば、無機材料では、シリカ(二酸化珪素)、酸化チタン、アルミナ(Al2O3)等の金属酸化物が挙げられる。また、有機材料では、高分子量オレフィン(ポリプロピレン,ポリエチレン等)、ポリスチレン、エポキシ樹脂、セルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリエステル、ポリメチルメタクリレート、ポリエーテル等の有機高分子微粒子が挙げられる。また、微粒子の一例として、(単分散)球状シリカ粒子などのコロイダルシリカ、炭酸カルシウム等が挙げられる。この場合、多孔性樹脂膜Fの孔径をより均一にすることができる。
また、第1塗布液に含まれる微粒子と第2塗布液に含まれる微粒子とは、真球率、粒径、材料等の諸元が同一であってもよいし、互いに異なってもよい。第1塗布液に含まれる微粒子は、第2塗布液に含まれる微粒子よりも粒径分布指数が小さいか同じであることが好ましい。あるいは、第1塗布液に含まれる微粒子は、第2塗布液に含まれる微粒子よりも真球率が小さいか同じであることが好ましい。また、第1塗布液に含まれる微粒子は、第2塗布液に含まれる微粒子よりも微粒子の粒径(平均直径)が小さいことが好ましく、特に、第1塗布液に含まれる微粒子が100〜1000nm(より好ましくは100〜600nm)であり、第2塗布液に含まれる微粒子が500〜2000nm(より好ましくは700〜2000nm)であることが好ましい。第1塗布膜に含まれる微粒子の粒径に第2塗布液に含まれる微粒子の粒径より小さいものを用いることで、多孔性樹脂膜F表面の孔の開口割合を高く均一にすることができる。また、多孔性樹脂膜F全体を第1塗布液に含まれる微粒子の粒径とした場合よりも膜の強度を高めることができる。
なお、上記塗布液は、所定の樹脂材料と、微粒子と、溶剤の他、必要に応じて、離型剤、分散剤、縮合剤、イミド化剤、界面活性剤等種々の添加剤を含んでいてもよい。
[塗布ユニット]
塗布ユニット10は、搬送部11と、第1ノズル12と、第2ノズル13と、乾燥部14と、剥離部15と、とを有する。
搬送部11は、搬送基材(基材)Sと、基材送出ローラ11aと、支持ローラ11b〜11dと、基材巻取ローラ11eと、搬出ローラ11fとを有する。
搬送基材Sは、帯状に形成されている。搬送基材Sは、基材送出ローラ11aから送り出され、テンションを有するように支持ローラ11b〜11dに架け渡されて、基材巻取ローラ11eによって巻き取られる。搬送基材Sの材質としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)などが挙げられるが、これに限定するものではなく、ステンレス鋼等の金属材料であってもよい。
各ローラ11a〜11fは、例えば円筒状に形成され、それぞれX方向に平行に配置されている。なお、各ローラ11a〜11fは、X方向に平行な配置に限られず、少なくとも1つがX方向に対して傾いて配置されてもよい。例えば、各ローラ11a〜11fがZ方向に平行に配置され、Z方向の高さ位置が同一となるように配置されてもよい。この場合、搬送基材Sは、水平面(XY平面)に対して立った状態で水平面に沿って移動することになる。
基材送出ローラ11aは、搬送基材Sが巻かれた状態で配置される。支持ローラ11bは、基材送出ローラ11aの+Z側に配置されると共に、基材送出ローラ11aよりも−Y側に配置される。また、支持ローラ11cは、支持ローラ11bの+Z側に配置されると共に、支持ローラ11bよりも+Y側に配置される。この3つのローラ(基材送出ローラ11a、支持ローラ11b、11c)の配置により、搬送基材Sは支持ローラ11bの−Y側端部を含む面で支持される。
また、支持ローラ11dは、支持ローラ11cの+Y側に配置されると共に、支持ローラ11cの−Z側に配置される。この場合、支持ローラ11b〜11dの3つのローラの配置により、搬送基材Sは、支持ローラ11cの+Z側端部を含む面で支持される。
なお、支持ローラ11dが、支持ローラ11cの高さ位置(Z方向の位置)とほぼ等しい高さ位置に配置されてもよい。この場合、搬送基材Sは、支持ローラ11cから支持ローラ11dに向けてXY平面にほぼ平行な状態で+Y方向に送られる。
基材巻取ローラ11eは、支持ローラ11dの−Z側に配置される。支持ローラ11dから基材巻取ローラ11eに向けて、搬送基材Sは、−Z方向に送られる。搬出ローラ11fは、支持ローラ11dの+Y側かつ−Z側に配置される。搬出ローラ11fは、乾燥部14で形成される未焼成膜FAを+Y方向に送る。この未焼成膜FAは、搬出ローラ11fにより、塗布ユニット10の外部に搬出される。
なお、上記のローラ11a〜11fは、円筒形に限られず、テーパー型のクラウンが形成されてもよい。この場合、ローラ11a〜11fのたわみ補正に有効であり、搬送基材S又は後述の未焼成膜FAがローラ11a〜11fに均等に接触可能となる。また、ローラ11a〜11fにラジアル型のクラウンが形成されてもよい。この場合、搬送基材S又は未焼成膜FAの蛇行防止に有効である。また、ローラ11a〜11fにコンケイブ型のクラウン(X方向の中央部が凹形に湾曲した部分)が形成されてもよい。この場合、X方向に張力を付与しつつ搬送基材S又は未焼成膜FAを搬送することが可能となるため、シワの発生防止に有効となる。以下のローラについても、上記同様にテーパー型、ラジアル型、コンケイブ型等のクラウンを有する構成であってもよい。
図3(a)は、第1ノズル12の一例を示す斜視図である。図2及び図3(a)に示すように、第1ノズル12は、搬送基材Sに第1塗布液EQ1の塗布膜(以下、第1塗布膜F1とする)を形成する。第1ノズル12は、第1塗布液EQ1を吐出する吐出口12aを有する。吐出口12aは、例えば長手方向が搬送基材SのX方向の寸法とほぼ同一となるように形成される。
第1ノズル12は、吐出位置P1に配置される。吐出位置P1は、支持ローラ11bに対して−Y方向上の位置である。第1ノズル12は、吐出口12aが+Y方向を向くように傾いて配置される。したがって、吐出口12aは、搬送基材Sのうち支持ローラ11bの−Y側端部で支持された部分に向けられる。第1ノズル12は、この搬送基材Sに対して、吐出口12aから水平方向に沿って第1塗布液EQ1を吐出する。
図3(b)は、第2ノズル13の一例を示す斜視図である。図2及び図3(b)に示すように、第2ノズル13は、搬送基材S上に第1塗布膜F1に重ねて第2塗布液EQ2の塗布膜(以下、第2塗布膜F2とする)を形成する。第2ノズル13は、第2塗布液EQ2を吐出する吐出口13aを有する。吐出口13aは、例えば長手方向が搬送基材SのX方向の寸法とほぼ同一となるように形成される。
第2ノズル13は、吐出位置P2に配置される。吐出位置P2は、支持ローラ11cに対して+Z方向上の位置である。第2ノズル13は、吐出口13aが−Z方向を向くように配置される。したがって、吐出口13aは、搬送基材Sのうち支持ローラ11cの+Z側端部で支持された部分に向けられる。第2ノズル13は、この搬送基材Sに対して、吐出口13aから重力方向に沿って第2塗布液EQ2を吐出する。
なお、第1ノズル12及び第2ノズル13は、X方向、Y方向及びZ方向のうち少なくとも一方向に移動可能であってもよい。また、第1ノズル12及び第2ノズル13は、X方向に平行な軸線の周りに回転可能に設けられてもよい。また、第1ノズル12及び第2ノズル13は、塗布液を吐出しないときには不図示の待機位置に配置され、塗布液を吐出する際に待機位置から上記の吐出位置P1、P2にそれぞれ移動するようにしてもよい。また、第1ノズル12及び第2ノズル13の予備吐出動作を行う部分が設けられてもよい。
第1ノズル12及び第2ノズル13は、それぞれ接続配管(不図示)などを介して、塗布液供給源(不図示)に接続されている。第1ノズル12及び第2ノズル13は、例えば内部に所定量の塗布液を保持する保持部(不図示)が設けられる。この場合、第1ノズル12及び第2ノズル13は、上記保持部に保持された液状体の温度を調整する温調部を有してもよい。
第1ノズル12又は第2ノズル13から塗出される各塗布液の塗出量や、第1塗布膜F1又は第2塗布膜F2の膜厚は、各ノズル、各接続配管(不図示)、若しくは塗布液供給源(不図示)に接続されるポンプ(不図示)の圧力、搬送速度、各ノズル位置又は搬送基材Sとノズルとの距離等により、調整可能である。第1塗布膜F1又は第2塗布膜F2の膜厚は、例えば、それぞれ、0.5μm〜500μmである。
本実施形態のように、2種類の塗布液(第1塗布液EQ1及び第2塗布液EQ2)を用いる場合は、第1塗布液EQ1による第1塗布膜F1の膜厚を、例えば、0.5μm〜10μmの範囲で調整し、第2塗布液EQ2による第2塗布膜F2の膜厚を、例えば、1μm〜50μmの範囲で調整することが好ましい。
なお、第1ノズル12及び第2ノズル13の間に、第1塗布膜F1を乾燥させるための乾燥部(不図示)を配置してもよい。この乾燥部は加熱乾燥部を備えていることが好ましい。加熱乾燥部としては、温風送風部や赤外線ヒータを用いることが好ましい。加熱温度は、例えば50℃〜150℃、好ましくは50℃〜100℃の範囲である。第1塗布膜F1を乾燥させた後に第2塗布膜F2を形成することで、例えば、第2塗布液に用いた微粒子が第1塗布膜F1の微粒子と、混在してしまうことを抑制することができる。
図2に示すように、乾燥部14は、第2ノズル13の+Y側であって、支持ローラ11cと支持ローラ11dとの間に配置されている。乾燥部14は、搬送基材S上に塗布された2層の塗布膜(第1塗布膜F1及び第2塗布膜F2)を乾燥させ、未焼成膜FAを形成する。
乾燥部14は、チャンバー14aと、加熱部14bとを有する。チャンバー14aは、搬送基材S及び加熱部14bを収容する。加熱部14bは、搬送基材S上に形成される第1塗布膜F1及び第2塗布膜F2を加熱する。加熱部14bとしては、例えば赤外線ヒータなどが用いられる。加熱部14bは、50℃〜100℃程度の温度で塗布膜を加熱する。
剥離部15は、未焼成膜FAが搬送基材Sから剥離される部分である。本実施形態では、作業者の手作業によって未焼成膜FAの剥離が行われるが、これに限定するものではなく、マニピュレータ等を用いて自動的に行ってもよい。搬送基材Sから剥離された未焼成膜FAは、搬出ローラ11fによって塗布ユニット10の外部に搬出され、巻き取り部50に送られる。また、未焼成膜FAが剥離された搬送基材Sは、基材巻取ローラ11eによって巻き取られる。
[巻き取り部(1)]
図4は、塗布ユニット10の+Y側の構成を概略的に示す斜視図である。
図4に示すように、塗布ユニット10の+Y側には、未焼成膜FAを搬出する搬出口10bが設けられている。搬出口10bから搬出された未焼成膜FAは、巻き取り部50によって巻き取られる。
巻き取り部50は、軸受51に軸部材SFが装着された構成となっている。軸部材SFは、搬出口10bから搬出された未焼成膜FAを巻き取ってロール体Rを形成する。軸部材SFは、軸受51に対して着脱可能に設けられる。軸部材SFは、軸受51に装着される場合、X方向に平行な軸線の周りに回転可能となるように支持される。巻き取り部50は、軸受51に装着される軸部材SFを回転させる不図示の駆動機構を有している。
なお、巻き取り部50では、未焼成膜FAのうち第1塗布膜F1側の面が外側に配置されるように未焼成膜FAを巻き取るようにする。例えば駆動機構によって軸部材SFを図2の反時計回りに回転させることにより、未焼成膜FAが巻き取られるようになっている。ロール体Rが形成された状態で軸部材SFを軸受51から取り外すことにより、ロール体Rを他のユニットに移動させることが可能となる。
なお、図2及び図4では、巻き取り部50が塗布ユニット10から独立して配置されているが、これに限定するものではない。例えば、巻き取り部50は、塗布ユニット10の内部に配置されていてもよい。この場合、塗布ユニット10に搬出口10bを配置せず、搬出ローラ11fから、(又は支持ローラ11dから)未焼成膜FAを巻き取ってロール体Rを形成してもよい。
[送り出し部]
図5は、焼成ユニット20の−Y側の構成を概略的に示す斜視図である。ただし、図5においては、後述の除去部26を省略して示している。
図5に示すように、焼成ユニット20の−Y側には、未焼成膜FAを搬入する搬入口20aが設けられている。送り出し部60は、搬入口20aに対して未焼成膜FAを送り出す。
送り出し部60は、軸受61に軸部材SFが装着可能な構成となっている。軸部材SFは、巻き取り部50の軸受51に装着するものと共通で使用可能である。したがって、巻き取り部50から取り外した軸部材SFを送り出し部60の軸受61に装着可能である。これにより、巻き取り部50で形成されたロール体Rを送り出し部60に配置することが可能である。なお、軸受61及び巻き取り部50の軸受51については、それぞれ床面からの高さが等しくなるように設定可能であるが、異なる高さ位置に設定されてもよい。
軸部材SFは、軸受61に装着される場合、X方向に平行な軸線の周りに回転可能となるように支持される。送り出し部60は、軸受61に装着される軸部材SFを回転させる不図示の駆動機構を有している。駆動機構によって軸部材SFを図2の時計回りに回転させることにより、ロール体Rを構成する未焼成膜FAが搬入口20aへ向けて送り出されるようになっている。なお、上記の巻き取り部50において、未焼成膜FAのうち第1塗布膜F1側の面が外側に配置されるように未焼成膜FAが巻き取られるため、ロール体Rから未焼成膜FAが引き出される場合には、第1塗布膜F1側が上方に配置されることになる。
[焼成ユニット]
図6は、焼成ユニット20の一例を示す図である。図6(a)はYZ平面に沿った断面構成を示す図であり、図6(b)はチャンバー21内を−Z方向に見たときの構成を示す図である。
図6に示すように、焼成ユニット20は、本実施形態において、未焼成膜FAに対する高温処理を行うユニットである。焼成ユニット20は、未焼成膜FAを焼成し、微粒子を含んだ焼成膜FBを形成する。焼成ユニット20は、チャンバー21と、加熱部(焼成部)22と、搬送部23と、ベルト冷却部(冷却部)24と、排気部25と、除去部26とを有する。
チャンバー21は、ベースフレームBF上に配置され、天井部21a及び底部21bを有する。チャンバー21には、未焼成膜FAを搬入する搬入口20aと、焼成膜FBを搬出する搬出口20bとが形成される。チャンバー21は、加熱部22、搬送部23及びベルト冷却部24を収容する。また、チャンバー21には、雰囲気調整部21cが設けられる。雰囲気調整部21cは、未焼成膜FAの周囲の雰囲気を調整する。雰囲気調整部21cは、例えばチャンバー21の内部に窒素ガス等の不活性ガスを供給可能であり、未焼成膜FAの周囲を不活性ガスの雰囲気に調整可能である。
加熱部22は、チャンバー21内に搬入された未焼成膜FAを加熱する。加熱部22は、Y方向に並んで配置される複数のヒータ22aを有する。複数のヒータ22aは、未焼成膜FAの+Z側に配置されている。したがって、加熱部22は、未焼成膜FAの表面(+Z側の面)側から未焼成膜FAを加熱する構成となっている。ヒータ22aとしては、例えば赤外線ヒータなどが用いられる。
加熱部22は、チャンバー21の内部の−Y側端部から+Y側端部に亘って配置されている。加熱部22は、Y方向のほぼ全体で未焼成膜FAを加熱することが可能となっている。加熱部22は、例えば未焼成膜FAを120℃〜450℃程度に加熱することが可能である。加熱部22による加熱温度は、未焼成膜FAの搬送速度や未焼成膜FAの構成成分等に応じて適宜調整する。また、加熱部22は、例えばヒータ22aごとに出力を調整することで、Y方向に温度勾配を形成することが可能となっている。
搬送部23は、搬送ベルト23aと、駆動ローラ23bと、従動ローラ23cと、テンションローラ23d、23eとを有している。搬送ベルト23aは、環状に形成されており、Y方向に沿って配置されている。搬送ベルト23aは、未焼成膜FAの焼成温度に耐久性を有する材料を用いて形成される。本実施形態では、一例としてPBO(ポリパラフェニレンベンズオキサゾール)繊維により形成された搬送ベルト23aが用いられる構成を例に挙げて説明するが、これに限定するものではなく、ステンレスやポリイミド(カプトン(登録商標))など他の材料によって搬送ベルト23aが形成されてもよい。
搬送ベルト23aは、テンションを有する状態で、XY平面にほぼ平行となるように、駆動ローラ23bと従動ローラ23cとの間に架け渡されている。この状態において、搬送ベルト23aの+Z側には、未焼成膜FAを載置する載置面23fが形成される。この載置面23fは、平坦に形成される。このため、未焼成膜FAの全体を均一に支持することが可能となっている。
搬送ベルト23aのうち搬出口20bから排出された部分は、駆動ローラ23bによって−Y方向に巻き返され、ベースフレームBF内部を通過する。なお、ベースフレームBFに搬送ベルト23aの載置面23fを洗浄する洗浄部(不図示)を配置した構成であってもよい。
駆動ローラ23bは、チャンバー21の内部の+Y側端部に配置される。駆動ローラ23bは、例えば円筒状に形成され、X方向に平行に配置されている。駆動ローラ23bには、例えばモータ等の回転駆動装置が設けられている。駆動ローラ23bは、この回転駆動装置により、X方向に平行な軸線の周りに回転可能に設けられている。駆動ローラ23bが回転することで、搬送ベルト23aが図2の時計回りに回転し、未焼成膜FAの搬送領域TRを含んで循環するように移動する。搬送ベルト23aの移動により、未焼成膜FA及び焼成膜FBは、搬送ベルト23aの載置面23fに載置された状態で+Y方向に搬送されるようになっている。
従動ローラ23cは、チャンバー21の内部の−Y側端部に配置される。従動ローラ23cは、例えば円筒状に形成され、X方向に平行に配置されている。従動ローラ23cは、駆動ローラ23bと同一の径に形成され、Z方向の位置(高さ位置)が駆動ローラ23bとほぼ等しくなるように配置されている。従動ローラ23cは、X方向に平行な軸線の周りに回転可能に設けられている。従動ローラ23cは、搬送ベルト23aの回転に追従して回転する。
テンションローラ23dは、従動ローラ23cの+Z側に配置されている。テンションローラ23dは、X方向に平行に配置されており、X軸周りに回転可能に設けられている。テンションローラ23dは、Z方向に昇降移動可能に設けられる。テンションローラ23dは、従動ローラ23cとの間で未焼成膜FAを挟むことが可能である。テンションローラ23dは、未焼成膜FAを挟んだ状態で回転可能である。
テンションローラ23eは、駆動ローラ23bの+Z側に配置されている。テンションローラ23eは、X方向に平行に配置されており、X軸周りに回転可能に設けられている。テンションローラ23eは、Z方向に昇降移動可能に設けられる。テンションローラ23eは、駆動ローラ23bとの間で焼成膜FBを挟むことが可能である。テンションローラ23eは、焼成膜FBを挟んだ状態で回転可能である。
テンションローラ23d、23eがそれぞれ従動ローラ23c及び駆動ローラ23bとの間で未焼成膜FA及び焼成膜FBをそれぞれ挟んだ状態とすることにより、一続きの未焼成膜FA及び焼成膜FBのうち挟まれた2か所の間の部分は、外部からのテンションがカットされることになる。これにより、未焼成膜FA及び焼成膜FBに対して過剰な負荷がかかることを防止できる。テンションローラ23d、23eは、チャンバー21内に配置される未焼成膜FA及び焼成膜FBにテンションがかからないように調整可能である。
ベルト冷却部24は、チャンバー21の底部21bに配置され、チャンバー21内を移動する搬送ベルト23aを冷却する。ベルト冷却部24は、矩形の箱状に形成され、搬送ベルト23aの移動方向(+Y方向)に複数並んで配置される。ベルト冷却部24は、貫通穴24aを有している。貫通穴24aは、ベルト冷却部24の内部をX方向に貫通するように形成される。貫通穴24aのうちX方向の一方の端部は、配管24bを介して排気部25に接続される。また、貫通穴24aのうちX方向の他方の端部は、外部に開放される。
本実施形態では、例えば図6(b)に示すように、貫通穴24aの+X側端部に配管24bが接続されたベルト冷却部24と、貫通穴24aの−X側端部に配管24bが接続されたベルト冷却部24とが、Y方向に交互に配置される。ただし、この配置に限定するものではなく、他の配置であってもよい。また、複数のベルト冷却部24が一体であってもよい。
排気部25は、ベルト冷却部24の貫通穴24aを吸引するとともに、吸引した気体を外部に排出する。排気部25は、第1排気部25a及び第2排気部25bを有している。一例として、第1排気部25aは、チャンバー21のY方向の中央から−Y側に配置されるベルト冷却部24の貫通穴24aに接続される。また、第2排気部25bは、チャンバー21のY方向の中央から+Y側に配置されるベルト冷却部24の貫通穴24aに接続される。第1排気部25a及び第2排気部25bの動作により、外部の気体が貫通穴24aをX方向に通り抜けるようになっている。
加熱部22の加熱が行われると、搬送ベルト23aの温度が上昇し、搬送ベルト23aを構成する材料の耐久温度を超えてしまう可能性がある。排気部25(第1排気部25a及び第2排気部25b)の動作により、外部の気体が貫通孔24aをX方向に通り抜けて排出され、これに伴ってベルト冷却部24の内部の熱が排出される。よって、搬送ベルト23aの温度が上昇した場合、その熱がベルト冷却部24を介して外部に排出されるため、搬送ベルト23aが冷却される。このように、ベルト冷却部24によって搬送ベルト23aを冷却することで、搬送ベルト23aの温度上昇を抑制している。
除去部26は、チャンバー21の−Y側に配置される。除去部26は、未焼成膜FAの焼成に先立って、未焼成膜FAから溶剤を除去する。除去部26は、容器26aと、除去液26bと、案内ローラ26c〜26fとを有している。容器26aは、上部(+Z側)が解放されている。除去液26bは、例えば水などが用いられ、容器26aに交換可能に貯留される。案内ローラ26c〜26fは、送り出し部60から送り出される未焼成膜FAが容器26aの除去液26b内を通過するように折り返して案内する。未焼成膜FAが除去液26bに浸されると、未焼成膜FAに含まれる溶剤の一部が除去液26bに溶け出し、除去液26bが未焼成膜FAに吸収される。これにより、未焼成膜FAの強度が向上するようになっている。
[除去ユニット(エッチング装置)]
除去ユニット30は、図2に示すように、チャンバー31と、浸漬部32と、洗浄部33と、液切部34と、搬送部35と、を有する。チャンバー31は、焼成膜FBを搬入する搬入口30aと、多孔性樹脂膜Fを搬出する搬出口30bとを有している。チャンバー31は、浸漬部32、洗浄部33、液切部34及び搬送部35を収容する。
浸漬部32は、焼成膜FBに対してエッチングを行い、焼成膜FBに含まれる微粒子を除去して、多孔性樹脂膜Fを形成する。浸漬部32では、微粒子を溶解又は分解可能なフッ酸溶液等のエッチング液Q1に焼成膜FBを浸すことで微粒子を除去する。浸漬部32には、このようなエッチング液Q1を焼成膜FBの+Y側から吐出して供給する供給部32aや、エッチング液Q1を焼成膜FBの−Y側から吐出して供給する供給部32bが設けられる。また、エッチング液Q1を貯留可能な貯留部(不図示)が設けられる。浸漬部32と洗浄部33とでは内部に含む液体が異なるので、浸漬部32から搬出される手前の位置に後述の給水ローラを設けてもよい。吸水ローラは、多孔性樹脂膜Fに対し+Z側及び−Z側の少なくとも一方、好ましくは両方に配置される。
洗浄部33は、エッチング後の多孔性樹脂膜Fを洗浄する。洗浄部33は、浸漬部32の+Y側(多孔性樹脂膜Fの搬送方向の前方)に配置される。洗浄部33は、洗浄液を供給する供給部(不図示)を有する。また、多孔性樹脂膜Fを洗浄した後の廃液を回収する回収部(不図示)などを有してもよい。
液切部34は、洗浄後の多孔性樹脂膜Fに付着した液体を除去する。予備乾燥等を行ってもよい。液切部34は、洗浄部33の+Y側(多孔性樹脂膜Fの搬送方向の前方)に配置される。液切部34には、吸水ローラ等が設けられている。吸水ローラを多孔性樹脂膜Fに接触させることにより、多孔性樹脂膜Fを搬送しつつ、多孔性樹脂膜Fに付着している液体を吸収可能である。吸水ローラの搬送方向に対する配置は液切部34から搬出される手前であれば特に制限されない。また吸水ローラは、多孔性樹脂膜Fに対し+Z側及び−Z側の少なくとも一方、好ましくは両方に配置される。
搬送部35は、浸漬部32、洗浄部33及び液切部34に亘って焼成膜FB及び多孔性樹脂膜Fを搬送する。搬送部35は、搬送ベルト35aと、駆動ローラ35bと、従動ローラ35cとを有する。なお、駆動ローラ35b及び従動ローラ35cの他に、浸漬部32、洗浄部33、液切部34の内部に、搬送ベルト35aを支持する支持ローラが配置されてもよい。
搬送ベルト35aは、焼成膜FB(又はエッチング後の多孔性樹脂膜F)を+Y方向に搬送する。搬送ベルト35aは、帯状に形成され、搬送方向に沿ったY方向に長手となるように配置される。搬送ベルト35aは、環状に形成されており、Y方向に沿って配置されている。搬送ベルト35aは、例えばアラミドなど、エッチング液Q1に耐久性を有する材料を用いて形成される。なお、搬送ベルト35aの表面がフッ素樹脂などによってコーティングされていてもよい。これにより、エッチング液に対する耐久性がより向上することになる。搬送ベルト35aは、例えば全面が網状に形成されており、エッチング液が搬送ベルト35aを通過可能となっている。搬送ベルト35aは、XY平面にほぼ平行となるように、テンションを有する状態で駆動ローラ35bと従動ローラ35cとの間に架け渡されている。多孔性樹脂膜Fは、搬送ベルト35aに載置されて搬送される。
駆動ローラ35bは、チャンバー31の内部の+Y側端部に配置される。駆動ローラ35bは、例えば円筒状に形成され、X方向に平行に配置されている。駆動ローラ35bには、例えば不図示の回転駆動機構が設けられている。この回転駆動機構により、駆動ローラ35bがX方向に平行な軸線の周りに回転可能となっている。
駆動ローラ35bが回転することで、搬送ベルト35aが図2の時計回りに回転し、焼成膜FBの搬送領域に対して循環して供給されるようになっている。また、この搬送ベルト35aが循環して供給されることにより、搬送ベルト35a上に載置された焼成膜FBが+Y方向に搬送されるようになっている。
従動ローラ35cは、チャンバー31の内部の−Y側端部に配置される。従動ローラ35d〜35fは、それぞれ従動ローラ35c及び駆動ローラ35bの−Z側に配置される。従動ローラ35c〜35fは、例えば円筒状に形成され、X方向に平行に配置されている。従動ローラ35cは、駆動ローラ35bと同一の径に形成され、Z方向の位置(高さ位置)が駆動ローラ35bとほぼ等しくなるように配置されている。従動ローラ35c〜35fは、X方向に平行な軸線の周りに回転可能に設けられている。従動ローラ35c〜35fは、搬送ベルト35aの回転に追従して回転する。
また、従動ローラ35d〜35fは、搬送ベルト35aのテンションを調整するものであり、例えば互いに同一の径に形成されている。従動ローラ35fは、不図示の駆動機構によって、Z方向に移動可能(昇降可能)に設けられている。従動ローラ35fが昇降することにより、搬送ベルト35aのテンションを調整可能となっている。
なお、除去ユニット30では、微粒子をエッチングによって除去する場合に限定されるものではない。例えば、微粒子の材質として、ポリイミドよりも低温で分解する有機材料が用いられる場合、焼成膜FBを加熱することによって微粒子を分解させることができる。このような有機材料としては、ポリイミドよりも低温で分解するものであれば、特に限定されることなく使用できる。例えば、線状ポリマーや公知の解重合性ポリマーからなる樹脂微粒子を挙げることができる。通常の線状ポリマーは、熱分解時にポリマーの分子鎖がランダムに切断され、解重合性ポリマーは、熱分解時にポリマーが単量体に分解するポリマーである。いずれも、低分子量体、あるいは、CO2まで分解することによって、焼成膜FBから消失する。この場合の微粒子の分解温度は200〜320℃であることが好ましく、230〜260℃であることが更に好ましい。分解温度が200℃以上であれば、塗布液に高沸点溶剤を使用した場合も成膜を行うことができ、焼成ユニット20における焼成条件の選択の幅が広くなる。また、分解温度が320℃未満であれば、焼成膜FBに熱的なダメージを与えることなく微粒子のみを消失させることができる。
[巻き取り部(2)]
図7は、除去ユニット30の+Y側の構成を概略的に示す斜視図である。
図7に示すように、除去ユニット30の+Y側には、多孔性樹脂膜Fを搬出する搬出口30bが設けられている。搬出口30bから搬出された多孔性樹脂膜Fは、巻き取り部80によって巻き取られる。
巻き取り部80は、軸受81に軸部材SFが装着された構成となっている。軸部材SFは、搬出口30bから搬出された多孔性樹脂膜Fを巻き取ってロール体RFを形成する。軸部材SFは、軸受81に対して着脱可能に設けられる。軸部材SFは、軸受81に装着される場合、X方向に平行な軸線の周りに回転可能となるように支持される。巻き取り部80は、軸受81に装着される軸部材SFを回転させる不図示の駆動機構を有する。駆動機構によって軸部材SFを回転させることにより、多孔性樹脂膜Fが巻き取られるようになっている。ロール体RFが形成された状態で軸部材SFを軸受81から取り外すことにより、ロール体RFを回収することが可能となる。
[製造方法]
次に、上記のように構成された製造システムSYSを用いて多孔性樹脂膜Fを製造する動作の一例を説明する。図8(a)〜(f)は、多孔性樹脂膜Fの製造過程の一例を示す図である。
まず、塗布ユニット10において、未焼成膜FAを形成する。塗布ユニット10では、基材送出ローラ11aを回転させて搬送基材Sを送り出し、搬送基材Sを支持ローラ11b〜11dに掛けた後、基材巻取ローラ11eで巻き取らせる。その後、基材送出ローラ11aから搬送基材Sを順次送り出すと共に、基材巻取ローラ11eで巻き取りを行う。
この状態で、第1ノズル12を吐出位置P1に配置させ、吐出口12aを+Y方向に向ける。これにより、搬送基材Sのうち支持ローラ11bによって支持される部分に吐出口12aが向けられる。その後、吐出口12aから第1塗布液EQ1を吐出させる。第1塗布液EQ1は、吐出口12aから+Y方向に向けて吐出され、搬送基材Sに到達した後、搬送基材Sの移動に伴って搬送基材S上に塗布される。これにより、図8(a)に示すように、搬送基材S上に第1塗布液EQ1による第1塗布膜F1が形成される。
続いて、第2ノズル12を吐出位置P2に配置させ、吐出口13aを−Z方向に向ける。これにより、搬送基材Sのうち支持ローラ11cによって支持される部分に吐出口13aが向けられる。その後、吐出口13aから第2塗布液EQ2を吐出させる。第2塗布液EQ2は、吐出口13aから−Z方向に向けて吐出され、搬送基材Sに形成された第1塗布膜F1上に到達した後、搬送基材Sの移動に伴って第1塗布膜F1上に塗布される。これにより、図8(b)に示すように、第1塗布膜F1上に第2塗布液による第2塗布膜F2が形成される。なお、第1塗布膜F1及び第2塗布膜F2には、樹脂材料A1に微粒子A2が互いに異なる体積比で含まれる。なお、微粒子の含有率は、第1塗布膜F1の方が第2塗布膜F2よりも大きく設定される。
なお、搬送基材Sのうち支持ローラ11b、11cによって支持される部分に吐出口12a、13aを向けた状態で第1塗布液EQ1及び第2塗布液EQ2が塗布されるため、第1塗布液EQ1及び第2塗布液EQ2が搬送基材Sに到達するときに搬送基材Sに作用する力が支持ローラ11b、11cによって受けられる。このため、搬送基材Sの撓みや振動等の発生が抑制され、搬送基材S上に均一な厚さで安定して第1塗布膜F1及び第2塗布膜F2が形成される。
続いて、搬送基材Sが移動し、第1塗布膜F1及び第2塗布膜F2の積層部分が乾燥部14のチャンバー14a内に搬入された場合、乾燥部14において第1塗布膜F1及び第2塗布膜F2の乾燥を行う。乾燥部14では、加熱部14bを用いて、例えば50℃〜100℃程度の温度で第1塗布膜F1及び第2塗布膜F2を加熱する。この温度範囲であれば、搬送基材Sに歪みや変形等が発生することなく、第1塗布膜F1及び第2塗布膜F2を加熱できる。第1塗布膜F1及び第2塗布膜F2の積層体を乾燥することにより、図8(c)に示すように、未焼成膜FAが形成される。なお、未焼成膜FAには、一部の溶剤が残存している。
なお、本明細書において、積層体とは前記第1塗布膜F1及び前記第2塗布膜F2からなる未焼成膜をいう。本発明に係る多孔性のイミド系樹脂膜を形成する際、第1の液体及び第2の液体において、ポリアミド酸、ポリイミド、ポリアミドイミド又はポリアミドのうち、それぞれ同種の樹脂を使用した場合、形成された前記第1塗布膜F1及び前記第2塗布膜F2からなる未焼成膜(または多孔性のイミド系樹脂膜)は、実質1層となるが、微粒子の含有率が異なる未焼成膜(または空孔率の異なる領域を有する多孔性のイミド系樹脂膜)が形成されるため、第1の液体及び第2の液体に同種の樹脂を使用した場合も含め、本明細書においては、積層体という。
続いて、搬送基材Sが移動し、未焼成膜FAの先端部分が支持ローラ11d(剥離部15)に到達した場合には、例えば作業者の手作業により、この先端部分を搬送基材Sから剥離する。本実施形態では、搬送基材Sの材料として例えばPETが用いられているため、第1塗布膜F1及び第2塗布膜F2を乾燥させて未焼成膜FAを形成した場合、搬送基材Sから剥がれやすくなるため、作業者は容易に剥離を行うことができる。
未焼成膜FAの先端部分を剥離した後、引き続き搬送基材Sが移動し、第1ノズル12によって第1塗布膜F1が形成される。また、引き続き第2ノズル13によって第2塗布膜F2が形成され、乾燥部14によって未焼成膜FAが形成される。これにより、未焼成膜FAが帯状に形成され、乾燥部14から+Y側に搬出される未焼成膜FAの長さが徐々に長くなる。作業者は、剥離部15において未焼成膜FAを剥離し続ける。そして、剥離された未焼成膜FAの先端が巻き取り部50の軸部材SFに到達する長さになった場合、作業者は手作業によって未焼成膜FAを搬出ローラ11fに掛けると共に、未焼成膜FAの先端部分を軸部材SFに取り付ける。その後、未焼成膜FAが順次形成され、剥離されていくのに応じて、巻き取り部50で軸部材SFを回転させる。これにより、剥離された未焼成膜FAが順次塗布ユニット10から搬出され、巻き取り部50の軸部材SFによって巻き取られてロール体Rが形成される。ロール体Rを構成する未焼成膜FAは、図8(d)に示すように、搬送基材Sから剥離された状態となり、表面及び裏面が共に露出する。
なお、未焼成膜FAの先端部分を剥離する作業、及び剥離した先端部分を軸部材SFに装着する作業等については、作業者が手作業で行う態様に限られず、例えばマニピュレータ等を用いて自動で行ってもよい。また、未焼成膜FAの剥離性を高めるため、搬送基材Sの表面に離型層を形成しておいてもよい。
所定の長さの未焼成膜FAが軸部材SFに巻き取られた後、未焼成膜FAをカットすると共に、軸部材SFをロール体Rごと軸受51から取り外す。そして、新たな軸部材SFを巻き取り部50の軸受51に装着し、未焼成膜FAの切り取り端部をこの軸部材SFに取り付けて回転させ、未焼成膜FAを引き続き形成することにより、新たなロール体Rを作成可能である。
一方、例えば作業者は、軸受51からロール体Rごと取り外した軸部材SFを送り出し部60に搬送し、軸受61に装着する。この軸部材SFの搬送動作及び装着動作は、マニピュレータや搬送装置等を用いて自動で行ってもよい。軸部材SFを軸受61に装着した後、軸部材SFを回転させることでロール体Rから未焼成膜FAが順次引き出され、未焼成膜FAが焼成ユニット20の除去部26に搬入される。
除去部26では、未焼成膜FAが案内ローラ26c〜26fによって搬送され、容器26a内の除去液26bに所定期間浸漬された後に取り出される。未焼成膜FAを除去液26bに浸漬させることにより、未焼成膜FAに残存する溶剤が除去液26bに溶け出すと共に、溶剤が含まれていた部分に除去液26bが吸収される。これにより、未焼成膜FAから溶剤が除去され、未焼成膜FAの強度が高められる。除去液26bから取り出された未焼成膜FAは、チャンバー21内に搬入される。なお、未焼成膜FAの先端を除去部26及びチャンバー21に搬入する場合には、それぞれ作業者が手作業で行ってもよいし、マニピュレータ等を用いて自動的に行ってもよい。また、除去液26bから取り出された未処理膜FAをチャンバー21に搬入する前に、ローラ等によって加圧してもよい。
チャンバー21内に搬入された未焼成膜FAは、搬送ベルト23a上に載置される。この状態で搬送ベルト23aが搬送領域TRを含んで循環するように移動することで、未焼成膜FAが搬送領域TRを+Y方向に搬送される。なお、テンションローラ23d、23eを用いてテンションの調整を行ってもよい。また、例えば雰囲気調整部21cによって未焼成膜FAの周囲の雰囲気を窒素ガス等の不活性ガスの雰囲気に調整する。この状態で、未焼成膜FAを搬送しながら、加熱部22を用いて未焼成膜FAの焼成を行う。この場合、未焼成膜FAは、加熱部22により、表面側(図6の+Z側)から加熱される。
焼成時の温度は、未焼成膜FAの構造により異なるが、120℃〜375℃程度であることが好ましく、更に好ましくは150℃〜350℃である。また、微粒子に有機材料が含まれる場合は、その熱分解温度よりも低い温度に設定する必要がある。なお、塗布液がポリアミド酸を含む場合、この焼成においてはイミド化を完結させることが好ましいが、未焼成膜FAがポリイミド、ポリアミドイミド又はポリアミドから構成され、焼成ユニット20により未焼成膜FAに対し高温処理を行う場合はこの限りでない。
また、焼成条件は、例えば、塗布液がポリアミド酸及び/又はポリイミドを含む場合、室温から375℃までを3時間で昇温させた後、375℃で20分間保持させる方法や、室温から50℃刻みで段階的に375℃まで昇温(各ステップ20分保持)し、最終的に375℃で20分保持させる等の段階的な加熱を行ってもよい。また、未焼成膜FAの端部をSUS製の型枠等に固定し変形を防ぐようにしてもよい。
このような焼成により、図8(e)に示すように、焼成膜FBが形成される。焼成膜FBでは、イミド化又は高温処理された樹脂層A3の内部に微粒子A2が含まれている。焼成膜FBの膜厚は、例えばマイクロメータ等で複数の箇所の厚さを測定し平均することで求めることができる。好ましい平均膜厚としては、セパレータ等に用いられる場合は、3μm〜500μmであることが好ましく、5μm〜100μmであることがより好ましく、10μm〜30μmであることが更に好ましい。
なお、焼成において、未焼成膜FAの組成が変化して一時的に脆くなる期間がある。本実施形態では、未焼成膜FAにテンションを加えて搬送するものではなく、搬送ベルト23a上に載置して搬送するものであるため、未焼成膜FAが脆くなる期間であっても、未焼成膜FAが破れたり切断されたりするのを防ぐことができる。
また、未焼成膜FAの焼成後に、搬送ベルト23aを冷却してもよい。この場合、排気部25(第1排気部25a及び第2排気部25b)によりベルト冷却部24の貫通穴24aが吸引される。これにより、外部の気体が貫通穴24a内をX方向に通り抜け、外部に排出される。これに伴い、ベルト冷却部24の熱が気体と共に外部に排出される。よって、搬送ベルト23aの熱がベルト冷却部24を介して外部に排出され、搬送ベルト23aが冷却される。
焼成ユニット20において形成された焼成膜FBは、焼成ユニット20から搬出されると、巻き取られることなく、除去ユニット30に搬入される。なお、焼成膜FBの先端部分を除去ユニット30に搬入する場合には、作業者が手作業で行ってもよいし、マニピュレータ等を用いて自動的に行ってもよい。
除去ユニット30に搬入された焼成膜FBは、搬送ベルト35a上に載置され、搬送ベルト35aの回転に従って+Y方向に搬送される。除去ユニット30では、焼成膜FBの搬送に伴い、まずは浸漬部32において微粒子A2の除去が行われる。微粒子A2の材質として例えばシリカが用いられる場合、浸漬部32では、低濃度のフッ化水素水等のエッチング液に焼成膜FBが浸される。これにより、微粒子A2がエッチング液に溶解して除去され、図8(f)に示すように、樹脂層A3の内部に多孔部A4が含まれた多孔性樹脂膜Fが形成される。
その後、搬送ベルト35aの回転に従って、多孔性樹脂膜Fが洗浄部33及び乾燥部34に順に搬入される。洗浄部33では、洗浄液によって多孔性樹脂膜Fが洗浄され、液切りが行われる。また、乾燥部34では、液切り後の多孔性樹脂膜Fが加熱され、洗浄液が除去される。そして、多孔性樹脂膜Fが除去ユニット30から搬出され、巻き取り部80の軸部材SFによって巻き取られる。
以上のように、本実施形態に係る焼成ユニット20は、所定の樹脂材料及び微粒子を含む液体から形成された未焼成膜FAを載置して移動可能な帯状の搬送ベルト23aと、搬送ベルト23aにより未焼成膜FAを搬送しながら焼成する加熱部22と、を備えるため、焼成において、未焼成膜FAの組成が変化して一時的に脆くなる期間であっても、未焼成膜FAが破れたり切断されたりするのを防ぐことができる。これにより、未焼成膜FAの破損を防ぐことができる。
また、本実施形態に係る製造システムSYSは、このような焼成ユニット20を含むため、未焼成膜FAの形成、未焼成膜FAの焼成(焼成膜FBの形成)、及び微粒子A2の除去(多孔性樹脂膜Fの形成)の3つの工程を一連の流れで行うことができ、未焼成膜FAの焼成においては高品質の焼成膜FBを形成することができる。これにより、高品質の多孔性樹脂膜Fを高効率で製造することができる。
[変形例]
図9は、変形例に係る焼成ユニットの例を示す図である。図9(a)及び(b)は、一例として焼成ユニット20Aの一部を示す図である。図9(c)及び(d)は、他の例として焼成ユニット20Bの一部を示す図である。
図9(a)及び(b)に示すように、焼成ユニット20Aが、押さえ部材28を有する構成であってもよい。押さえ部材28は、未焼成膜FAのうち移動方向(Y方向)に交差する方向(X方向)の両端辺を搬送ベルト23a側に押さえる。押さえ部材28は、例えばチャンバー21内のうち搬入口20aの近傍に配置される。図9(b)では、押さえ部材28が未焼成膜FAのX方向の両端辺に配置される例が示されているが、これに限定するものではなく、未焼成膜FAのX方向の一方の端辺のみを押さえる構成であってもよい。また、図9(a)及び(b)に示すように、押さえ部材28は、基部28a及びローラ28bを有し、ローラ28bによって未焼成膜FAを押さえる構成となっている。この構成において、未焼成膜FAは、X方向の両端辺が押さえ部材28によって搬送ベルト23a側に押さえられた状態で搬送される。これにより、未焼成膜FAのX方向の両端辺が湾曲するのを防ぐことができる。また、搬送ベルト23a及び未焼成膜FAの移動と共にローラ23bが回転するため、未焼成膜FAにテンションが掛かるのを抑制しつつ、未焼成膜FAの端辺を押さえることができる。
また、図9(c)及び(d)に示すように、焼成ユニット20Bが、押さえ部材29を有する構成であってもよい。押さえ部材29は、基部29a及び帯状部29bを有している。押さえ部材29は、基部29aがチャンバー21の外部に配置され、帯状部29bがチャンバー21の外部から搬入口20aを介してチャンバー21の内部に挿入された状態で設けられる。帯状部29bは、未焼成膜FAのうち移動方向(Y方向)に交差する方向(X方向)の両端辺を搬送ベルト23a側に押さえる。この構成において、未焼成膜FAは、X方向の両端辺が押さえ部材29によって搬送ベルト23a側に押さえられた状態で搬送される。この場合においても、未焼成膜FAのX方向の両端辺が湾曲するのを防ぐことができる。なお、図9(d)では、帯状部29bが未焼成膜FAのX方向の両端辺に配置される例が示されているが、これに限定するものではなく、未焼成膜FAのX方向の一方の端辺のみを押さえる構成であってもよい。
図10は、他の変形例に係る焼成ユニット20Cの例を示す図である。
図10に示すように、焼成ユニット20Cでは、チャンバー21の底部21bにベルト加熱部(搬送部材加熱部)22Cが設けられている。ベルト加熱部22Cは、搬送ベルト23gの裏面側(−Z側)に配置され、搬送ベルト23gを介して裏面側から未焼成膜FAを加熱する。ベルト加熱部22Cは、Y方向に並んで配置される複数のヒータを有する。このようなヒータとしては、上記実施形態と同様、例えば赤外線ヒータなどが用いられる。
この場合、搬送ベルト23gは、ステンレス等の金属材料によって形成される。ベルト加熱部22Cの動作により、搬送ベルト23gが加熱され、搬送ベルト23gによって未焼成膜FAが加熱されて焼成される。なお、図10では、天井部21a側に加熱部が設けられない構成が示されているが、これに限定するものではなく、天井部21a側に上記実施形態に記載の加熱部22等が設けられてもよい。なお、ステンレス等の金属材料によって形成された搬送ベルト23gについては、例えば図10に示すようにベルト冷却部を設けなくてもよいし、ベルト冷却部を設けて冷却を行ってもよい。
図11は、他の変形例に係る製造システムSYS2の一例を示す図である。
図11に示すように、製造システムSYS2では、除去ユニット30において、焼成膜FB及び多孔性樹脂膜Fを載置して搬送する搬送部35が設けられず、これらの膜をローラR1〜R7で直接搬送する構成となっている。また、浸漬部32では、例えばエッチング液Q1が容器32pに貯留された構成となっており、案内ローラ32qによって焼成膜FBがエッチング液Q1に浸漬されるようになっている。
製造システムSYS2では、焼成ユニット20において焼成を行う前に、除去部26において未焼成膜FAに含まれる溶剤が除去される。これにより、未焼成膜FAの強度が向上し、その後の焼成膜FB及び多孔性樹脂膜Fについても強度が向上する。そのため、搬送ベルト35a上に載置せずに直接ローラRで搬送した場合であっても、焼成膜FB及び多孔性樹脂膜Fが破損しにくくなる。よって、焼成膜FB及び多孔性樹脂膜Fを効率的に搬送することができる。
また、上記実施形態では、巻き取り部50、80として、軸部材SFを軸受51、81に着脱させる構成を例に挙げて説明したが、これに限定するものではなく、例えば図12に示すような巻き取り装置90が用いられてもよい。以下、巻き取り部50に代えて巻き取り装置90が用いられる場合を例に挙げて説明する。
図12に示すように、巻き取り装置90は、フレーム91と、軸部材SFと、軸受92と、駆動部93と、中継ローラ94a〜94eと、ローラ支持部95とを有する。フレーム91は、軸部材SF、軸受92、駆動部93、中継ローラ94a〜94e、ローラ支持部95の各部を支持する。
軸部材SFは、塗布ユニット10から搬出された未焼成膜FAを巻き取ってロール体Rを形成する。軸部材SFは、軸受92に対して着脱可能に設けられている。軸部材SFは、軸受92に装着される場合、X方向に平行な軸線の周りに回転可能となるように軸受92に支持される。ロール体Rが形成された状態で軸部材SFを軸受92から取り外すことにより、ロール体Rを他のユニットに移動又は回収することができる。
中継ローラ94a〜94eは、未焼成膜FAのテンションを調整しつつ、未焼成膜FAを軸部材SFに送る。中継ローラ94a〜94eは、例えば円筒状に形成され、それぞれX方向に平行に配置されている。本実施形態では、未焼成膜FAは、中継ローラ94a、94b、94c、94d、94eの順に架け渡されるが、これに限定されるものではなく、一部の中継ローラを用いなくてもよい。なお、中継ローラ94a〜94eのうち少なくとも1つは、ローラ支持部95によって移動可能であってもよい。例えば、ローラ支持部95が中継ローラ94bをZ方向又はY方向に移動可能であってもよい。また、ローラ支持部95によって、X軸に平行な軸線AXの周りに中継ローラ94bを回動させる構成であってもよい。この場合、中継ローラ94bが移動(回動)する量(距離)を軸受92の巻取り速度にフィードバックさせることにより、未焼成膜FAのテンションを一定に保つことが可能となる。また、中継ローラ94bの−Y側にあり、支点軸を介して配置される移動可能な重り(不図示)を移動させて中継ローラ94bへの負荷を変更する構成であってもよい。この場合、中継ローラ94bにかかる負荷を前記重りにより調整することで、未焼成膜FAのテンションを調整することが可能となる。
中継ローラ94a〜94eは、X方向に平行な配置に限られず、X方向に対して傾いて配置されてもよい。また、中継ローラR21〜R25は、円筒形に限られず、テーパー型、ラジアル型、コンケイブ型等のクラウンが形成されたものが用いられてもよい。
なお、上記の巻き取り装置90は、巻き取り部80に代えて用いてもよい。また、未焼成膜FA等の膜を巻き取る場合とは反対の方向に軸部材SFを回転させることにより、未焼成膜FA等の膜を送り出すことができる。このため、例えば上記の送り出し部60に代えて巻き取り装置90を用いることも可能である。
[セパレータ]
次に、実施形態に係るセパレータ100を説明する。図13は、リチウムイオン電池200の一例を示す模式図であり、一部が切り開かれた状態を示している。図13に示すように、リチウムイオン電池200は、正極端子を兼ねた金属ケース201と、負極端子202とを有する。金属ケース201の内部には、正極201aと、負極202aと、セパレータ100とが設けられており、不図示の電解液に浸されている。セパレータ100は、正極201aと負極202aとの間に配置され、正極201aと負極202aとの間の電気的接触を防いでいる。正極201aとしては、リチウム遷移金属酸化物が用いられ、負極202aとしては、例えばリチウムやカーボン(グラファイト)等が用いられている。
上記実施形態に記載の多孔性樹脂膜Fは、このリチウムイオン電池200のセパレータ100として用いられる。この場合、例えば第1塗布膜F1が形成される面をリチウムイオン電池の負極202a側とすることにより、電池性能を向上することができる。なお、図13では、角型のリチウムイオン電池200のセパレータ100を例に挙げて説明しているが、これに限定するものではない。上記の多孔性樹脂膜Fは、円筒型やラミネート型等のいずれのタイプのリチウムイオン電池のセパレータであっても用いることができる。なお、リチウムイオン電池のセパレータの他、上記の多孔性樹脂膜Fは、燃料電池電解質膜、ガス又は液体の分離用膜、低誘電率材料として使用することが可能である。
以上、実施形態について説明したが、本発明は、上述した説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
例えば、上記実施形態では、未焼成膜FAをチャンバー21内で焼成する前に、除去部26において除去液26bに所定時間浸漬させる構成を例に挙げて説明したが、これに限定するものではない。例えば、除去液26bに浸漬させる代わりに、所定時間放置させておいてもよい。この場合、未焼成膜FAから溶剤が除去されると共に、焼成時に未焼成膜FAのX方向の端辺が湾曲するのを防ぐことができる。
また、例えば、上記実施形態の構成に加えて、除去ユニット30で形成された多孔性樹脂膜Fに対して後処理を行う後処理ユニットが設けられてもよい。このような後処理ユニットとしては、例えば多孔性樹脂膜Fに対して除電処理を行う帯電防止ユニットが挙げられる。帯電防止ユニットとしては、例えばイオナイザーなどの除電装置が搭載される。
また、後処理ユニットとして、例えば多孔性樹脂膜Fの一部を除去するケミカルエッチングユニット(不図示)を用いることができる。ケミカルエッチングユニットは、例えば上記実施形態の除去ユニット30と同様の構成を有しており、処理液として、フッ酸溶液に代えてアルカリ溶液などが用いられる。処理液に多孔性樹脂膜Fを所定時間浸すことにより、多孔部A4の内部が除去される。この場合、多孔部A4のバリが取れると共に、連通性が確保されることになる。
また、このようなケミカルエッチングユニットによって多孔性樹脂膜Fの一部を除去する場合、ケミカルエッチング法に限定するものではない。例えば、ケミカルエッチング法と物理的除去方法とを組合せた方法により多孔性樹脂膜Fの一部を除去するようにしてもよい。物理的な方法としては、例えば、プラズマ(酸素、アルゴン等)、コロナ放電等によるドライエッチング、研磨剤(例えば、アルミナ(硬度9)等)を液体に分散し、これを芳香族ポリイミドフィルムの表面に30m/s〜100m/sの速度で照射することでポリイミドフィルム表面を処理する方法等が使用できる。これらの手法は、除去ユニット30において焼成膜FBから微粒子を除去する前及び微粒子の除去後のいずれの場合にも適用可能である。また、微粒子を除去した後に行う場合にのみ適用可能な物理的方法として、対象表面を液体で濡らした台紙フィルム(例えばPETフィルム等のポリエステルフィルム)に圧着後、乾燥しないで又は乾燥した後、多孔性樹脂膜Fを台紙フィルムから引きはがす方法を採用することもできる。液体の表面張力あるいは静電付着力に起因して、多孔性樹脂膜Fの表面層のみが台紙フィルム上に残された状態で、多孔性樹脂膜Fが台紙フィルムから引きはがされる。
例えば、上記実施形態及び変形例では、微粒子の含有率が異なる2種類の塗布液を用いて未焼成膜FAを形成する場合を例に挙げて説明したが、これに限定するものではなく、1種類の塗布液で未焼成膜を形成するものであってもよい。この場合、第1ノズル12及び第2ノズル13のうちいずれか一方が用いられなくてもよいし、一方のノズルを省略してもよい。一方のノズルを省略する場合は、第1ノズル12を省略し、第2ノズル13を使用することが好ましい。
また、上記実施形態及び変形例では、塗布ユニット10、焼成ユニット20、除去ユニット30が1台ずつ配置された構成を例に挙げて説明したが、これに限定するものではない。例えば、上記ユニットの少なくとも1つが複数台設けられてもよい。この場合、例えば単位時間あたりに処理可能な未焼成膜FA、焼成膜FB又は多孔性樹脂膜Fの分量(例、長さ、等)が少ないユニットを多く配置することにより、製造システムSYS全体の製造効率を高めることができる。
また、上記実施形態及び変形例では、塗布ユニット10、焼成ユニット20、及び除去ユニット30の各ユニットが、未焼成膜FA、焼成膜FB又は多孔性樹脂膜Fの各膜をY方向に沿って搬送する場合を例に挙げて説明したが、これに限定するものではない。例えば、いずれかのユニットが膜をX方向、Y方向、Z方向又はこれらの合成方向に搬送してもよいし、1つのユニット内で搬送方向を適宜変更してもよい。
また、上記実施形態及び変形例では、塗布ユニット10における塗布、焼成ユニット20における焼成、除去ユニット30における除去、の3つの工程を行う場合を例に挙げて説明したが、これに限定するものではない。例えば、塗布膜の材料としてポリイミド、ポリアミドイミド、又はポリアミドが用いられる場合、焼成を行わなくてもよい。このため、焼成を行わない場合、例えば焼成ユニット20と除去ユニット30との間に巻き取り装置及び送り出し装置等を設けることにより、塗布ユニット10で形成された未焼成膜FAを、焼成ユニット20を介することなく、除去ユニット30に搬入させることが可能となる。また、焼成を行わない場合、多孔性のイミド系樹脂膜を製造する製造システムは、ポリアミド酸、ポリイミド、ポリアミドイミド又はポリアミド及び微粒子を含む液体を基材に塗布して未焼成膜を形成する塗布ユニットと、前記塗布ユニット内又は前記塗布ユニット外で前記基材から剥離した前記未焼成膜から前記微粒子を除去する除去ユニットとを含む製造システムとすることができる。なお、焼成を行わない場合、微粒子を除去する除去ユニット30から多孔性樹脂膜Fを搬出させた後、前述のポストベーク処理工程を行ってもよい。また、ケミカルエッチングユニットを用いる場合には、ポストベーク処理工程前に、ケミカルエッチングユニットを介してもよい。この場合、ポストベーク処理工程は、例えばケミカルエッチングユニット内に加熱部を設け、この加熱部により行ってもよい。
また、上記実施形態及び変形例では、いわゆるロール・ツー・ロール方式によって多孔性樹脂膜Fを形成する構成を例に挙げて説明したが、これに限定するものではない。例えば、除去ユニット30(又はケミカルエッチングユニット)における処理が終了した後、多孔性樹脂膜Fが除去ユニット30(又はケミカルエッチングユニット)から搬出された場合に、巻き取り部80で巻き取らせることなく所定の長さで切断し、切断したものを回収してもよい。