JP4154665B2 - ポリアミドイミド系フイルムの製造方法 - Google Patents

ポリアミドイミド系フイルムの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリアミドイミド系フイルムの製造方法に関し、より詳しくは、フイルムの厚み精度、均質性および経済性に優れたポリアミドイミド系フイルムの製造方法を提供することに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、IT関連の急速な進展に伴い関連の電子機器や電池等の部材として使用される無孔あるいは開孔タイプのフイルムについても、機器や電池の高性能化や小型化要求により、耐熱性、耐薬品性、寸法安定性、厚み精度、均質性および価格等に対する市場要求が厳しくなってきている。
【0003】
ポリアミドイミド系樹脂は耐熱性、耐薬品性、耐放射線性とが優れており、前記した市場要求に答えるフイルムの原料として注目されている。該ポリアミドイミド系樹脂はその融点が極めて高く、また分解温度が融点と極めて近いことからいわゆる溶融製膜技術を用いることは困難である。従って、一般的には溶液製膜技術が用いられる。
【0004】
該ポリアミドイミド系樹脂を原料としたフイルムに関しては、無孔体のフイルムとしては特開平7−41559号公報、特開平10−226028号公報に、多孔質体のフイルムが特開平11−216344号公報に開示されている。しかし、該ポリアミドイミド系フイルムの製造方法に関しては、上記した特許文献においては、いずれの文献も実験室的方法しか開示されていない。
【0005】
本発明のポリアミドイミド系樹脂のような溶融法での製膜法の困難な樹脂を原料としたフイルムの製膜を工業的に実施する方法としては、樹脂を溶剤に溶解した溶液をダイスより薄膜として押し出し、エンドレスのベルト上に塗布し乾燥あるいは凝固させた後に剥離する方法が知られている。例えば、乾燥法については、特開2001−151902号公報、特開2002−283369号公報等に、凝固法については、特許第3183297号公報、特開2001−151910号公報等に、また乾燥と凝固を組み合わせた方法が特許第3196684号公報等において開示されている。さらに、上記したエンドレスのベルト上に塗布する方法の欠点である溶液の塗布、乾燥および凝固、剥離の繰り返しによる金属製のベルトの腐食や傷によるピンホール発生に起因したフイルム表面欠点を改善する方法として、樹脂溶液を二軸延伸ポリエステルフイルム上に塗布し、その後、乾燥工程を経てポリエステルフイルムより塗膜を剥離することにより耐熱樹脂よりなるフイルムを製造する製造方法が特開2000−233439号公報において開示されている。
【0006】
しかしながら、上記した製造方法はいずれもが、薄膜形成にダイスが使用されており、製膜に用いる樹脂溶液の溶液粘度が適正な範囲でないと適用できなく、かつ得られたフイルムの厚み精度にも限界があるという課題を有している。また、乾燥および凝固の工程において形成されたフィルムの片面側がベルトやポリエステルフイルムにより支持されているため、フィルムの支持面とその反対面では乾燥や凝固の挙動が異なり、得られるフイルムの表裏の特性や構造に差異が発生するという課題を有している。さらに、ダイスや押し出し機という高価な装置が必要であり、経済的に不利である。また、該押し出し機やダイスの使用は、製造するフイルムの銘柄変更の折に、該装置の樹脂溶液溶液の置換や洗浄に多量の溶液や溶剤が必要であり、やはり経済的に不利であると共に、多様な市場ニーズに答えるのに必要な銘柄切換えが不便であるという課題を有しており、これらの課題を解決した製造方法の開発が強く嘱望されていた。
【0007】
【特許文献1】
特開平7−41559号公報
【特許文献2】
特開平10−226028号公報
【特許文献3】
特開平11−216344号公報
【特許文献4】
特開2001−151902号公報
【特許文献5】
特開2002−283369号公報
【特許文献6】
特許第3183297号公報
【特許文献7】
特開2001−151910号公報
【特許文献8】
特許第3196684号公報
【特許文献9】
特開2000−233439号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、上記した課題を解決したフイルムの厚み精度および均質性に優れたポリアミドイミド系フイルムを経済的に得られる製造方法を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明のポリアミドイミド系フイルムの製造方法は、ポリアミドイミド系樹脂溶液を少なくとも2枚の支持体の間に挟みロールまたはスリットまたはプレスを介して薄膜化したポリアミドイミド系樹脂溶液の積層体を凝固浴に導き、凝固浴中で少なくとも片側の支持体を剥離し、薄膜化したポリアミドイミド系樹脂溶液を凝固させることを特徴としている。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられる上記したポリアミドイミド系樹脂の製造法は限定なく任意である。例えば、トリメリット酸クロリドとジアミンを用いる酸クロリド法やトリメリット酸無水物とジイソシアネートを用いるジイソシアネート法等の通常の方法が例示される。製造コストの点からジイソシアネート法が好ましい。
【0011】
本発明に用いられるポリアミドイミド系樹脂の合成に用いられる酸成分はトリメリット酸無水物(クロリド)が望ましいが、その一部を他の多塩基酸またはその無水物に置き換えることができる。例えば、ピロメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ビフェニルスルホンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルエーテルテトラカルボン酸、エチレングリコールビストリメリテート、プロピレングリコールビストリメリテート等のテトラカルボン酸及びこれらの無水物、シュウ酸、アジピン酸、マロン酸、セバチン酸、アゼライン酸、ドデカンジカルボン酸、ジカルボキシポリブタジエン、ジカルボキシポリ(アクリロニトリル−ブタジエン)、ジカルボキシポリ(スチレン−ブタジエン)等の脂肪族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジカルボン酸、ダイマー酸等の脂環族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸が挙げられる。
【0012】
末端にカルボキシル基、水酸基およびアミノ基の何れかを有するブタジエン系ゴム、ポリアルキレンエーテルおよびポリエステルのうち1種又は2種以上を共重合することが好ましい。ブタジエン系ゴム成分は、分子量が1000以上のジカルボキシポリブタジエン、ジカルボキシポリ(アクリロニトリル−ブタジエン)、ジカルボキシポリ(スチレン−ブタジエン)、ジアミノポリブタジエン、ジアミノポリ(アクリロニトリル−ブタジエン)、ジアミノポリ(スチレン−ブタジエン)を用いるのが好ましい。
【0013】
また、トリメリット酸化合物の一部をグリコールに置き換えるこでポリアルキレンエーテルやポリエステル共重合体を得ることができる。グリコールとしてはエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール等のアルキレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコールや上述のジカルボン酸の1種又は2種以上と上記グリコールの1種又は2種以上とから合成される、末端水酸基のポリエステル等が挙げられる。分子量が1000以上のポリエチレングリコール、または末端水酸基のポリエステルを共重合することが好ましい。それらの共重合量は全酸成分を100モル%としたときに2〜30モル%であることが好ましい。上記した共重合により多孔質シートの強靭性を上げることができる。
【0014】
ポリアミドイミド系樹脂の合成に用いられるジアミン(ジイソシアネート)成分としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン及びこれらのジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,3−シクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン等の脂環族ジアミン及びこれらのジイソシアネート、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、ベンジジン、o−トリジン、2,4−トリレンジアミン、2,6−トリレンジアミン、キシリレンジアミン等の芳香族ジアミン及びこれらのジイソシアネート等が挙げられ、これらの中では反応性、コスト、耐薬品性の点から4,4’−ジアミノジフェニルメタン、o−トリジンジアミン及びこれらのジイソシアネートが好ましい。o−トリジンジアミン及びこれらのジイソシアネートを共重合することがより好ましい。その共重合量は全アミン成分を100モル%としたときに、その両成分が30〜80モル%であることが好ましい。該共重合によりシートの強度を上げることができる。
【0015】
上記したポリアミドイミド系樹脂は、対数粘度が0.5dl/g以上であり、かつガラス転移温度が100℃以上であるものが、耐熱性や強度の点で好ましい。
【0016】
本発明において用いられるポリアミドイミド系樹脂を溶解させることのできる溶媒は、本機能を有したものであれば限定なく任意であるが、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、γ―ブチロラクトン等の極性溶剤が挙げられる。また、必要に応じてトリエチルアミン、ジエチレントリアミン等のアミン類、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム、ナトリウムメトキシド等のアルカリ金属塩等の助剤を用いることもできる。
【0017】
上記した溶媒に溶解した溶液は、ポリアミドイミ樹脂を前記した溶媒に溶解しても良いし、該ポリアミドイミド系樹脂を溶液法で重合した場合は、該重合で得られた溶液をそのまま用いても良い。該方法の場合、重合時あるいは重合終了後に孔径調整剤等の配合剤を添加することや樹脂濃度の調整等を実施することも何ら制限を受けない。
【0018】
本発明においては、請求項1に記載のごとく、まず上記ポリアミドイミド系樹脂の溶液を少なくとも二枚の支持体の間に挟み、ロールまたはスリットまたはプレスを介して薄膜化する。例えば、対向ロール、圧延装置あるいはプレス装置等を介して支持体/ポリアミドイミド系樹脂の溶液/支持体の構成からなるサンドイッチ状の積層体に形成し、ポリアミドイミド系樹脂の溶液を薄膜化する。次に得られたサンドイッチ状の積層体を凝固浴に導びき、凝固浴中では少なくとも片側の支持体を剥離してポリアミドイミド系樹脂の溶液を凝固液に晒し、薄膜化したポリアミドイミド系樹脂の溶液を凝固させる。
【0019】
本発明で少なくとも2枚の支持体の間に挟んだポリアミドイミド系樹脂の溶液を薄膜化するために用いるロールまたはスリットまたはプレスとしては、例えば対向ロール、圧延装置、プレス装置等が挙げられ、更にこれらをさまざまな組合わせで構成および配置したものが挙げられる。好ましい実施態様としては、2枚の支持体の間に挟んだポリアミドイミド系樹脂の溶液を、少なくとも一対の対向ロールに挟み、向かい合ったロールを反対方向に回転させ、支持体/ポリアミドイミド系樹脂の溶液/支持体の構成からなるサンドイッチ状の積層体を形成する方式が挙げられる。得られた支持体/ポリアミドイミド系樹脂の溶液/支持体の構成からなるサンドイッチ状の積層体は、ガイドロール等を経て凝固浴に導かれ、凝固浴中で支持体を剥離することにより、該ポリアミドイミド系樹脂の溶液は凝固される。
【0020】
上記支持体としてはポリエチレンテレフタレート(PETともいう)フィルムに代表されるポリエステル系フィルムやポリプロピレン(PPともいう)フィルムなどのポリオレフィン系フィルム等のプラスチックフィルムを用いることが出来る。さらに支持体として透湿性を有する多孔質フィルムや布帛、不織布をそのまま、あるいは上記プラスチックフィルム支持体と併用して支持体として使用してもよい。
【0021】
本発明においては、請求項2に記載のごとく、上記した方法において支持体が多孔質体であることが好ましい実施態様である。支持体として前記した多孔質体を用いることにより、フイルムの表裏の均一化を図ることができる。
【0022】
本発明においては、ポリアミドイミド系樹脂の溶液を凝固液と接触させることにより凝固する。該凝固液の組成は限定なく任意であるが、前記したポリアミドイミド系樹脂を溶解する溶媒と相溶し、かつポリアミドイミド系樹脂を溶解しない溶媒(非溶媒ともいう)、あるいは前記した溶媒と非溶媒との混合物が挙げられる。例えば、水またはメタノール、エタノール、プロパノール等の低級アルコール、および水とこれらの低級アルコールとの混合体、あるいはポリアクリロニトリル系重合体を溶解する溶媒を水で希釈し樹脂の溶解性を低下させた混合体が好ましい。
【0023】
本発明におけるポリアミドイミド系樹脂の溶液を凝固するための凝固浴は、上記した液体状の他に気体状の凝固浴でもかまわない。例えば、空気中、水蒸気中および制御された雰囲気下暴露により凝固させることができる。本方法における雰囲気の成分は限定無く任意であるが、水または水とメタノール、エタノール、プロパノール等の低級アルコールとの混合体あるいはさらに有機系の樹脂を溶解させる溶媒の混合体が好ましい。
【0024】
本発明においては、得られるポリアミドイミド系フイルムの形態は、無孔体であっても多孔質体であってもかまわない。これらの形態の制御は、ポリアミドイミド系樹脂溶液の樹脂組成、孔径調整剤、溶媒の種類、樹脂濃度、成形時の膜厚み、凝固液の種類および凝固条件等により行うことができる。該組成や条件の設定は任意であり、市場要求の特性の製品が得られる組成や条件を適宜設定することで対応するのが好ましい実施態様である。ポリアルキレングリコール等の凝固遅延剤等の配合剤を添加する等も何ら制限を受けない。
【0025】
本発明における乾燥工程とは、緊張下、定張下フィルムの収縮を制限して行うことが望ましい。自由収縮で乾燥させた場合には、部分収縮がおこるため厚み斑となったり、さらにはフィルムの平面性が損なわれる場合がある。収縮を制限しつつ乾燥するには、例えばテンター乾燥機や金属枠に挟んでの乾燥などを行うことができる。乾燥に懸かる他の条件は特に制限されるものではなく、空気、窒素などの加熱気体や常温気体を用いた乾燥方法や、ヒーターや赤外線ランプを用いた乾燥方法等が挙げられる。
【0026】
フィルム状に成形する工程、凝固工程、洗浄工程および乾燥工程等は連続的に行ってもよく、また、バッチ式で行ってもよい。さらに各工程の間に、その他の特別な工程を加えてもよい。
【0027】
本発明のポリアミドイミド系フイルムの厚みは、限定なく市場要求に従って任意に設定できるが、一般的には3〜200μmである。
【0028】
本発明のポリアミドイミド系フイルムは、該フイルム単独で用いても良いし、他の材質のフイルムやシートと複合して用いても良い。また、他の機能性のフイルムやシートと複合して使用することも何ら制限を受けない。
【0029】
本発明で用いられるポリアミドイミド系フィルムは、磁気記録層や金属蒸着層などとの接着力を上げるために、アンカー剤を塗布したり、ケミカルエッチング処理、コロナ処理、プラズマ処理などを行っても良い。
【0030】
本発明のフィルムには公知の添加剤、たとえば、紫外線吸収剤、熱安定剤、延伸助剤、滑剤などが添加されていてもよい。
【0031】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。実施例中で示される特性は、以下の方法で測定、評価したものである。
【0032】
(1)対数粘度
ポリアミドイミド系樹脂0.5gを100mlのN−メチル−2−ピロリドンに溶解した溶液を30℃に保ち、ウベローデ粘度管を用いて測定した。
【0033】
(2)ガラス転移温度
測定幅4mm、長さ15mmのポリアミドイミド系フィルムをレオロジー社製DVE−V4レオスペクトラーを用い、周波数110Hzの振動を与えて測定した動的粘弾性の損失弾性率の変曲点をガラス転移温度とした。
【0034】
(3)フイルム表面の細孔の観察
走査型電子顕微鏡(日立製作所社製S800)を用いて、倍率5,000倍で観察し、細孔の有無を評価した。
(4)フイルムの厚み精度(厚み変動率%)
厚み測定はマイクロメーター(ファインリューフ社製、ミリトロン1245D)を用いた。厚み斑は得られた20mm×100mmのフィルムの厚みを約10mm間隔で10点測定し、最大厚みと最小厚みの差を平均厚みで割って%で表示した。
(5)フィルム表裏の均質性
フィルムの表裏の面を目視で観察し、表面の光沢や粗さが表裏の面で明らかに違いがあるものは不良とし、表裏の面で明らかな違いがないものは良とした。
【0035】
(実施例1)
温度計、冷却管、窒素ガス導入管のついた4ツ口フラスコにトリメリット酸無水物(TMA)1モル、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)1モル、フッ化カリウム0.01モルを固形分濃度が20重量%となるようにN−メチル−2−ピロリドンと共に仕込み、120℃で1.5時間攪拌した後180℃に昇温して更に約3時間攪拌を行いポリアミドイミド系樹脂を合成した。得られたポリアミドイミド樹脂の対数粘度は0.86dl/g、ガラス転移温度は290℃であった。
【0036】
上記したポリアミドイミド系樹脂溶液を、公称目開き20μmフィルターを通してから、2本の対向ロールの間にある2枚のポリプロピレンからなる多孔質支持体の間に挟み、2本の対向ロールにおいて、向かい合ったロールを反対方向に回転させ、ドープを圧延しながらポリプロピレンからなる多孔質支持体ごと送り出し、凝固浴に導いた。凝固液は25℃の水/イソプロパノール(体積比:4/1)を用いた。このとき、対向ロール間のギャップを調整し、ポリマー溶液厚みが一定になるようにした。凝固浴中でポリプロピレンからなる多孔質支持体を剥離し、ポリアミドイミド樹脂薄膜を凝固液に接触させてさらに凝固させた。図1に、製造法の模式図を示した。その後、生成したフイルムを緊張下、130℃で乾燥し、厚み25μmのポリアミドイミド系フイルムを得た。得られたフイルムの評価結果を表1に示す。
【0037】
(比較例1)
実施例1において、ポリアミドイミド系樹脂溶液をダイスより、厚み100μmの二軸延伸ポリエステルフイルム上に押し出してポリアミドイミド系樹脂溶液の薄膜を形成し、次いで凝固液と接触させるように変更する以外は、実施例1と同様にして比較例1のポリアミドイミド系フイルムを得た。得られたフイルムの評価結果を表1に示す。
【0038】
(実施例2)
実施例1において、酸成分をTMA0.9モルとジカルボキシポリ(アクリロニトリル−ブタジエン)ゴム(宇部興産製ハイカーCTBN1300×13:分子量3500)を0.1モルとした以外は、実施例1と同様にして実施例2のポリアミドイミド系フイルムを得た。得られたフイルムの評価結果を表1に示す。なお、本実施例で得られたポリアミドイミド系樹脂の対数粘度は0.65dl/g、ガラス転移温度は203℃であった。得られたフイルムの評価結果を表1に示した。
【0039】
(実施例3)
実施例1と同じ装置を用い、TMA0.94モル、分子量2000のポリプロピレングリコール0.06モル、イソホロンジイソシアネート1.02モルを固形分濃度が50%となるようにγ−ブチロラクトンと共に仕込み200℃で3時間反応させた後、固形分濃度が20重量%となるようにN−メチル−2−ピロリドンで希釈してポリアミドイミド系樹脂溶液を合成した。得られたポリアミドイミド系樹脂の対数粘度は0.63dl/g、ガラス転移温度は198℃であった。上記方法で得られたポリアミドイミド系樹脂溶液を用いて、実施例1と同様にして実施例3のポリアミドイミド系フイルムを得た。得られたフイルムの評価結果を表1に示した。
【0040】
(実施例4)
実施例1と同じ装置を用い、TMA0.93モル、ポリカプロラクトン(ダイセル化学製プラクセル220:分子量2000)0.07モル、MDI1.02モル、フッ化カリウム0.02モルを固形分濃度が50%となるようにγ−ブチロラクトンと共に仕込み、200℃で約5時間反応させた後固形分濃度が20重量%となるようにN−メチル−2−ピロリドンで希釈しポリアミドイミド系樹脂溶液を得た。得られたポリアミドイミド系樹脂の対数粘度は0.71dl/g、ガラス転移温度は175℃であった。上記方法で得られたポリアミドイミド系樹脂溶液を用いて、実施例1と同様にして実施例4のポリアミドイミド系フイルムを得た。得られたフイルムの評価結果を表1に示した。
【0041】
(実施例5)
実施例1と同じ装置を用い、TMA0.5モル、ダイマー酸0.5モル、o−トリジンジイソシアネート0.5モル、MDI0.5モルを固形分濃度が30重量%となるようにN−メチル−2−ピロリドンと共に仕込み、120℃で1.5時間、180℃で3時間反応させた後、固形分濃度が20%となるようにN−メチル−2−ピロリドンで希釈しポリアミドイミド系樹脂溶液を得た。得られたポリアミドイミド樹脂の対数粘度は0.70dl/g、ガラス転移温度は153℃であった。上記方法で得られたポリアミドイミド系樹脂溶液を用いて、凝固液を水/イソプロパノール(2/1容量比)とする以外は、実施例1と同様にして実施例5のポリアミドイミド系フイルムを得た。得られたフイルムの評価結果を表1に示した。
【0042】
(実施例6)
実施例1の方法において、ポリアミドイミド系樹脂溶液を2枚の多孔質支持体の間に挟んだ複合積層体を凝固液に接触させる前に50℃、相対湿度90%の恒温、恒湿の雰囲気で予備凝固させてから凝固液に接触させるように変更する以外は、実施例1と同様にして実施例6ポリアミドイミド系フイルムを得た。得られたフイルムの評価結果を表1に示した。
【0043】
(実施例7)
実施例1において、ポリアミドイミド樹脂溶液の固形分濃度を28重量%とし、かつ支持体を2枚とも無孔のPETフィルムに変更する以外は、実施例1と同様にして実施例7のポリアミドイミド系フイルムを得た。得られたフイルムの評価結果を表1に示した。
【0044】
実施例1〜7で得られたポリアミドイミド系フイルムは、厚み精度、フイルム表裏の構造の均一性に優れたフイルムであり、実用性の高いものであった。また、その製造方法は、装置が簡便で経済性にも優れてたものである。一方、比較例1で得られたポリアミドイミド系フイルムは、厚み精度が劣り、かつフイルム表裏の表面構造の均一性に劣ったフイルムであり、実用性の低いものであった。また、実施例1とは異なり、ポリアミドイミド系樹脂溶液を押し出す、押出し機やダイスが必要であり装置の投資コストが高く経済的にも劣ったものであった。また、実施例1〜6のポリアミドイミド系フイルムは多孔質体であり、例えば、電池のセパレーター等の隔離膜や電池の電解質の保持膜等の含浸フイルムとして好適に使用できる。一方、実施例7のポリアミドイミド系フイルムは無孔体であり、例えば、磁気テープ用、フレキシブルプリント基板(FPC)用、電気絶縁材料用、スピーカー振動板用の基材フイルムとして好適に使用できる。
【0045】
【表1】
Figure 0004154665
【0046】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明のポリアミドイミド系フイルムの製造方法により、厚み精度が良く、かつ均質性のあるフイルムを経済的に提供することができる。また、得られたフイルムは耐熱性が高く、高品質で、かつ経済性に優れているので、各種用途において好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるポリアミドイミド系フイルムの製造方法の模式図
【符号の説明】
1:溶液供給配管
2:溶液
3:支持体1
4:支持体2
5:支持体1送り出しロール
6:支持体2送り出しロール
7:対向ロール
8:支持体/溶液/支持体複合積層体
9:ポリアミドイミド系湿潤フィルム
10:ポリアミドイミド系湿潤フィルム巻き上げロール
11:支持体2巻き上げロール
12:支持体1巻き上げロール
13:凝固浴

Claims (2)

  1. ポリアミドイミド系樹脂溶液を少なくとも2枚の支持体の間に挟みロールまたはスリットまたはプレスを介して薄膜化したポリアミドイミド系樹脂溶液の積層体を凝固浴に導き、凝固浴中で少なくとも片側の支持体を剥離し、薄膜化したポリアミドイミド系樹脂溶液を凝固させることを特徴とするポリアミドイミド系フイルムの製造方法。
  2. 2枚の支持体のうち少なくとも1枚の支持体が多孔質体であることを特徴とする請求項1に記載のポリアミドイミド系フイルムの製造方法。
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