JP5678520B2 - サーミスタ素子 - Google Patents

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Description

本発明は、サーミスタ素子に関し、さらに詳しくは、比較的に高い温度で使用しても信頼性の高いサーミスタ素子に関する。
自動車の排ガスなどの温度を測定するサーミスタ素子としては、従来、800℃までの温度を検出することができるものが主流であった。しかしながら、最近では、よりエンジンに近い側で排ガスなどの温度を測定したいという要求が高まり、850〜1100℃程度の高温を測定することができるサーミスタ素子の開発が望まれている。
たとえば、特許文献1にはサーミスタ用導電材料として用いられる導電性酸化物焼結体が開示されており、この文献の実施例には酸化イットリウム、炭酸ストロンチウム、酸化クロム、酸化マンガン、酸化アルミニウムを原料とした導電性酸化物焼結体が開示されている。しかしながら、この導電性酸化物焼結体を用いたサーミスタは、900℃超の高温条件で温度を検出するには信頼性が低いという課題を有する。
特開2003−183075号公報
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、比較的に高い温度で使用しても信頼性の高いサーミスタ素子を提供することである。
上記目的を達成するために、本発明に係るサーミスタ素子は、
サーミスタ層を挟むように二以上の内部電極層が内蔵されている素子本体と、
前記素子本体の外面に形成され、相互に向き合う前記内部電極層のそれぞれに接続される一対の端子電極と、
前記端子電極に接続されるリード端子と、
を有するサーミスタ素子であって、
前記サーミスタ層は、YCaCrAlM1の組成式で表わされる酸化物を有し、
前記組成式中のaおよびbの関係はa+b=1で表わされ、
前記組成式中のc、dおよびeの関係はc+d+e=1で表わされ、
前記組成式中のM1は、Co、Sn、Nd、Pr、GaおよびNiから選ばれる少なくとも1種であり、
前記組成式中のaが0.5≦a≦0.99であり、
前記組成式中のbが0.01≦b≦0.50であり、
前記組成式中のcが0.06≦c≦0.64であり、
前記組成式中のdが0.01≦d≦0.94であり、
前記組成式中のeが0.00≦e≦0.35であり、
前記サーミスタ層は実質的にSrおよびMnを含まないことを特徴とする。
前記サーミスタ素子は、好ましくは、前記内部電極層がPtを含む。
前記サーミスタ素子は、好ましくは、さらに、少なくとも前記リード端子が前記端子電極に接続する部分を被覆する絶縁層を有する。
本発明によれば、比較的に高い温度で使用しても信頼性の高いサーミスタ素子を提供することができる。具体的には高温条件で使用しても、使用前と使用後でサーミスタ素子の抵抗値の変動が少ないサーミスタ素子を提供することができる。
図1は本発明の一実施形態に係るサーミスタ素子の要部縦断面図である。 図2は図1に示すII−II線に沿うサーミスタ素子の横断面図である。
以下、本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。
図1、2に示すように、本発明の一実施形態に係るサーミスタ素子2は、素子本体4と、端子電極10と、一対のリード端子12と、絶縁層14とを有する。
各端子電極10は、素子本体4のZ軸方向の両端面の全面に形成してあるが、必ずしも全面に形成する必要はない。
一対のリード端子12の先端は各端子電極10と接合ペーストや溶接などにより接続してある。各リード端子12の後端は、図2に示すようにX軸方向に延びている。
また、前記リード端子12が前記端子電極10に接続する部分が少なくとも絶縁層14で被覆されている。
図2に示すように、素子本体4の内部には、サーミスタ層6を挟むように、内部電極層8が交互に積層してある。本実施形態では、内部電極層8の平面は、X軸およびZ軸を含む平面に平行な方向である。サーミスタ層6を挟む一方の内部電極層8は、一方の端子電極10に接続してあり、他方の内部電極層8は他方の端子電極10に接続してあり、積層方向(Y軸)に隣接する内部電極層8で挟まれるサーミスタ層6がセンサ部となる。
図2に示すように、サーミスタ層6を介して交互に積層される内部電極層8は、素子本体4におけるZ軸方向の両端面に形成してある一対の端子電極10にそれぞれ接続され、素子本体4における積層方向(Y軸)の両端部には、センサ部としては機能しないサーミスタ層6aが積層される。
本実施形態のサーミスタ層6(サーミスタ層6aも含む)の材質は、YCaCrAlM1の組成式で表わされる酸化物を含む材料で構成され、NTC特性を有する。
前記組成式中のaおよびbの関係はa+b=1で表わされる。
前記組成式中のc、dおよびeの関係はc+d+e=1で表わされる。
前記組成式中のM1は、Co、Sn、Nd、Pr、GaおよびNiから選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくはCoまたはSnである。
前記組成式中のaは0.5≦a≦0.99である。前記組成式中のaをこの範囲とすることで、比較的に高い温度で使用しても信頼性の高いサーミスタ素子が得られる。前記組成式中のaは好ましくは0.60≦a≦0.99、より好ましくは0.70≦a≦0.99である。
前記組成式中のbは0.01≦b≦0.50である。前記組成式中のbをこの範囲とすることで、比較的に高い温度で使用しても信頼性の高いサーミスタ素子が得られる。前記組成式中のbは好ましくは0.01≦b≦0.40、より好ましくは0.01≦b≦0.30である。
前記組成式中のcは0.06≦c≦0.64である。前記組成式中のcをこの範囲とすることで、比較的に高い温度で使用しても信頼性の高いサーミスタ素子が得られる。前記組成式中のcは好ましくは0.10≦c≦0.60、より好ましくは0.15≦c≦0.55である。
前記組成式中のdは0.01≦d≦0.94である。前記組成式中のdをこの範囲とすることで、比較的に高い温度で使用しても信頼性の高いサーミスタ素子が得られる。前記組成式中のdは好ましくは0.10≦d≦0.90、より好ましくは0.25≦d≦0.85である。
前記組成式中のeは0.00≦e≦0.35である。前記組成式中のeをこの範囲とすることで、比較的に高い温度で使用しても信頼性の高いサーミスタ素子が得られる。前記組成式中のeは、好ましくは0.00≦e≦0.30、より好ましくは0.00≦e≦0.20である。
本実施形態のサーミスタ層は実質的にSrおよびMnを含まない。本実施形態ではSrを含まないことによりサーミスタ層の結晶構造を単相にすることができ、これによりサーミスタ素子の信頼性が向上する。また、本実施形態ではMnを含まないことによりサーミスタ素子を高温で使用した場合の信頼性が向上する。
なお、本実施形態において、“実質的にSrおよびMnを含まない”とは、不純物レベルとは言えない量を超えるSrおよびMnを含まないことを意味し、不純物レベルの量であれば含有されていてもよい趣旨である。なお、Srの不純物レベルとは、前記サーミスタ層中の含有量が元素換算で0.01モル%以下である。また、Mnの不純物レベルとは、前記サーミスタ層中の含有量が元素換算で0.01モル%以下である。
また、本実施形態のサーミスタ素子はサーミスタ層を上記した組成式で表わされる酸化物で構成することにより、サーミスタ層に焼結助剤を含まなくても十分な焼結が可能である。しかも、サーミスタ層に焼結助剤を含まなくてもよいため、サーミスタ素子の信頼性を向上させることができる。なお、前記焼結助剤としては、たとえば、SiO、LiOおよびBなどが挙げられる。
サーミスタ層6の厚みは、特に制限されないが、本実施形態では、好ましくは10〜100μm程度である。また、外側に積層されるサーミスタ層6aの厚みは、特に限定されないが、好ましくは40〜600μmである。
内部電極層8を構成する導電材としては、たとえば、Ag、Pd、Au、Pt等の貴金属およびこれらの合金(Pt−Pd合金など)、あるいはCu、Ni等の卑金属およびこれらの合金があげられるが、本実施形態の内部電極層8は、Pt、Pt−Pd合金、Pt−Rh合金、Pt−Ir合金のいずれかで構成されることが好ましく、より好ましくはPtである。
内部電極層8の厚みは特に限定されないが、好ましくは0.5〜2.0μmである。
端子電極10の材質は特に限定されないが、内部電極層8を構成する導電材と同様の材料を用いることができる。
端子電極10は、たとえばペースト塗布および焼き付け処理で形成される。端子電極10の厚みは特に限定されないが、好ましくは2〜15μmである。
リード端子12の断面形状は特に限定されず、たとえば断面が円形でも矩形でもよい。なお、リード端子12が断面円形の線材で構成してある場合には、線材の外径は、好ましくは200〜500μmである。また、リード端子12が断面矩形の線材で構成されている場合には、線材の断面寸法は0.1〜0.4mm×0.2〜0.5mmが好ましい。リード端子12の材質は特に限定されないが、端子電極10と同様な材質を用いることができる。
図1および図2に示すように、リード端子12の先端が端子電極10に接続する部分を少なくとも覆うように、しかも素子本体4の全周を覆い、リード端子12の後端部を露出させるように、楕円体形状の絶縁層14が素子本体4の周囲を被覆してある。
絶縁層14は、Al、Mg、Siなどの酸化物で構成されていることが好ましく、1100℃程度の耐熱性を有することが好ましい。
次に、本実施形態に係るサーミスタ素子2の製造方法の一例を説明する。本実施形態に係るサーミスタ素子を製造する方法としては、特に制限されず、公知の方法を用いればよいが、以下の説明ではシート法を用いる場合を例示する。
まず、表面に内部電極層8を形成することとなる所定パターンの内部電極層ペースト膜が形成されたグリーンシートと、内部電極層8を持たないグリーンシートとを用意する。グリーンシートは、上述したサーミスタ層を構成する材料によって形成される。なお、この種の材料には、Si、K、Na、Niなどの不可避的不純物が0.1重量%程度以下含まれていてもよい。
そして、このような材料を用い、公知の技術によってグリーンシートを製造する。具体的には、たとえばサーミスタ層を構成する材料の原料(たとえば酸化イットリウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、酸化アルミニウムなど)を湿式混合等の手段によって均一に混合した後、乾燥させる。
次に、適切に選定された焼成条件で仮焼成(好ましくは1000〜1200℃)し、仮焼粉を湿式粉砕する。そして、粉砕された仮焼粉末にバインダや有機溶剤などを加えてスラリー化し、サーミスタ層ペーストを得る。次に、前記サーミスタ層ペーストをドクターブレード法またはスクリーン印刷法等の手段によってシート化し、その後に乾燥させてグリーンシートを得る。
内部電極層ペーストは、上述した各種金属を含む。この内部電極層ペーストを印刷法等の手段によって、グリーンシートの上に塗布することで、所定パターンの内部電極層ペースト膜が形成されたグリーンシートが得られる。
次に、これらのグリーンシートを重ね合わせ、圧力を加えて圧着し、乾燥工程等の必要な工程を経た後に切断し、グリーンチップを取り出す。切断は、ダイシングソー等を用いて行うことができる。
取り出されたグリーンチップを所定条件で焼成(好ましくは1400〜1600℃程度)し、焼成体である素子本体4を得る。次に、素子本体4に、焼成後に端子電極となる端子電極ペーストを、転写法などの手段によって形成する。端子電極ペーストとしては、たとえば、Pt、Pt/Pd、Pt/Rh、Pt/Ir等のPtを主成分とするペーストが挙げられる。その後、乾燥させて、適切に選定された焼付け条件、好ましくは1050〜1250℃で焼付けする。
次に端子電極10に対して、リード端子12の先端部を、接合電極ペーストや溶接等により接合する。溶接を用いる場合は、抵抗溶接やアーク溶接等で行う。接合電極ペーストを用いる場合は、材質としてPt、Pt/Pd、Pt/Rh、Pt/Ir等のPtを主成分とする接合電極ペーストを使用してリード端子12の先端部を端子電極10に接合する。その後、乾燥させて、適切に選定された焼付条件、好ましくは1050〜1250℃でリード端子12の先端部を端子電極10に対して焼付処理する。
次に、絶縁層14を形成する。まず、上述した絶縁層14を構成するセラミックの原料材料を用い公知の技術によって絶縁層ペーストを製造する。具体的には、出発原料としてAl、MgO、SiOなどを秤量配合し、ボールミルとZrビーズで所定時間湿式混合する。その後、適切に選定された焼成条件、好ましくは1050〜1250℃で仮焼成し、仮焼粉を湿式粉砕する。粉砕された仮焼粉末にバインダーや有機溶剤等を加えてペースト化する。
得られた絶縁層ペーストを、リード端子12の先端部が焼付された素子本体4の所定の場所に、塗布やディップ等によりコーティングする。その後、適切に選定された焼成条件、好ましくは1050〜1250℃で焼成することで、絶縁層14で素子本体4が被覆された目的のサーミスタ素子2が得られる。
本実施形態のサーミスタ素子はサーミスタ層を上記した組成式で表わされる酸化物で構成することにより、比較的に高い温度で使用しても信頼性の高いサーミスタ素子を提供することができる。具体的には、高温条件で使用しても使用前と使用後でサーミスタ素子の抵抗値の変動が少ないサーミスタ素子を提供することができる。
また、本実施形態ではSrを含まないことによりサーミスタ層の結晶構造をYCaCrAlM1の組成式で表わされる単相にすることができ、これによりサーミスタ素子の信頼性が向上する。さらに、本実施形態ではMnを含まないことによりサーミスタ素子を高温で使用した場合の信頼性が向上する。
本実施形態のサーミスタ層はCrを含むが、このCrは焼成時に、焼成後に素子本体4となるグリーンチップの表面から蒸発する。このため、素子本体4の表面にはCrの欠陥層ができ、YAl、YAl12 、CaCrO等の異相が形成される。しかし、本実施形態に係るサーミスタ素子はサーミスタ層6を挟むように内部電極層8が積層してあることから、センサ特性に影響するセンサ部が素子本体4の表面ではなく素子本体4の内部にある。このため、素子本体4の表面に異相が形成されても、素子本体4の内部に存在するセンサ部までは影響せず、センサ特性を良好に保つことができる。
さらに、本実施形態の組成式中のM1を構成する元素は焼結阻害効果があるため、素子本体の焼成温度を高くする必要がある。このため、焼成時にCrがより蒸発することとなり、素子本体の表面の異相がより多く形成されることとなる。しかし、上記したように本実施形態のサーミスタ素子は積層構造であるため、表面に現れる異相はセンサ部に影響しない。このように、本実施形態のサーミスタ素子は積層構造であるため、サーミスタ層にM1が含まれていても、センサ特性を良好に保つことができる。
また、上記のとおり、本実施形態の素子本体4は焼成時に焼成後に素子本体4となるグリーンチップの表面からCrが蒸発するため、素子本体の4の表面がポーラスとなる。このため、端子電極ペーストを素子本体4に塗布する際、または絶縁層ペーストを素子本体4に塗布する際に、端子電極ペーストや絶縁層ペーストが素子本体へ良好に密着する。その結果、素子本体と端子電極の密着性が向上するとともに、素子本体と絶縁層の密着性が向上し、サーミスタ素子の信頼性が向上する。
さらに、本実施形態のサーミスタ層を構成する材質とPtの線膨張率が比較的近い。このため、内部電極層にPtを含むことにより、サーミスタ層と内部電極層を同時焼成してもデラミネーションが生じにくい。
また、通常、サーミスタ素子を高温で使用すると、ヒートショックにより内部電極層とサーミスタ層との間、または端子電極とサーミスタ層との間でデラミネーションが起こる。しかし、上記のとおり本実施形態のサーミスタ層を構成する材質とPtの線膨張率は比較的近い。このため、内部電極層または端子電極にPtが含まれる場合、本実施形態のサーミスタ素子を高温で繰り返し使用しても、ヒートショックによる内部電極層とサーミスタ層との間、または端子電極とサーミスタ層との間でデラミネーションがおこりにくい。このように、本実施形態では、内部電極層または端子電極にPtを含むことにより、信頼性の高いサーミスタ素子を得ることができる。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
次に、本発明の実施の形態をより具体化した実施例を挙げ、本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
(試料1〜38、41〜44)
サーミスタ層用ペーストの調製
サーミスタ層を構成する材料の原料として、酸化イットリウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、酸化アルミニウム、酸化コバルト、酸化スズ、酸化ネオジウム、酸化プラセオジウム、酸化ガリウム、酸化ニッケル、酸化サマリウム、酸化マンガン、炭酸ストロンチウムを準備し、化学式YCaCrAlM1におけるa、b、c、dおよびeが表1に示す比率になるようにそれぞれ秤量した。これらの原料をボールミルで16時間、湿式粉砕し、乾燥して、乳鉢、乳棒を用いて粉体にした。そして、得られた粉体をアルミナこう鉢に入れ、800〜1200℃で2時間仮焼成した。
次に、得られた仮焼き済み粉体を、ボールミルにより微粉砕した後、脱水乾燥して、サーミスタ用組成物原料とした。
本実施例では、このサーミスタ用組成物原料を用いて、積層型サーミスタ(積層品)と単板型サーミスタ(単板品)それぞれのサーミスタ試料を作製した。以下では、まず、積層型サーミスタの作製について説明する。
積層型サーミスタ試料の作製
得られたサーミスタ用組成物原料100重量部と、ポリビニルブチラール樹脂10重量部と、可塑剤としてのジオクチルフタレート(DOP)5重量部と、溶媒としてのアルコール100重量部とをボールミルで混合してペースト化し、サーミスタ層ペーストを得た。
上記にて調製したサーミスタ層ペーストと、内部電極層ペーストと、を用い、以下のようにして、図1に示される積層型サーミスタ2を製造した。なお、本実施例においては内部電極層ペーストの導電材として、Ptを用いた。
まず、得られたサーミスタ層ペーストを用いて、ドクターブレード法にて、PETフィルム上に、グリーンシートを形成した。次いで、このグリーンシートの上に、内部電極層ペーストを用いて、スクリーン印刷により、内部電極パターン膜を印刷し、内部電極パターン膜が印刷されたグリーンシートを製造した。
次いで、上記のグリーンシートとは別に、サーミスタ層ペーストを用いて、ドクターブレード法にて、PETフィルム上に内部電極パターン膜の印刷されていないグリーンシートを製造した。
そして、上記にて製造した各グリーンシートを交互に積層し、得られた積層体を加熱・加圧することにより、グリーンチップを製造した。
次いで、得られたグリーンチップを所定のサイズに切断し、脱バインダ処理、焼成およびアニールを下記条件にて行って、素子本体を得た。
脱バインダ処理条件は、
昇温速度:30℃/時間、
保持温度:300〜400℃、
温度保持時間:8時間、
雰囲気:空気中とした。
焼成条件は、
昇温速度:200℃/時間、
保持温度:1400〜1600℃、
温度保持時間:2時間、
冷却速度:200℃/時間、
雰囲気:空気中とした。
アニール条件は、
昇温速度:200℃/時間、
保持温度:600〜800℃、
温度保持時間:2時間、
冷却速度:200℃/時間、
雰囲気:空気中とした。
次いで、得られた素子本体の端面をサンドブラストにて研磨した後、Ptを含む端子電極ペーストを塗布し、図1に示す積層型サーミスタ2の試料を得た。また、内部電極層に挟まれたサーミスタ層の数は3とした。
単板型サーミスタ試料の作製
得られたサーミスタ用組成物原料100重量部に対して、ポリビニルアルコール1.5重量部(固形分)を加え、乳鉢、乳棒で顆粒に造粒したのち、直径16mm、厚さ2.5mmの円板状に加圧成形して成形体を得た。
次に、この成形体を、大気中において600℃で2時間加熱して、脱バインダ処理した後、大気中において1400〜1600℃で2時間本焼成して焼結体を得た。
次に、得られた焼結体の両面に、Ptを含むペーストをスクリーン印刷し、1100℃で焼き付けて、電極を形成して、単板型サーミスタの試料を得た。
試料1〜38および41〜44の積層型サーミスタの試料と単板型サーミスタの試料のそれぞれについて、以下の手順で抵抗変化率の評価を行った。
抵抗変化率
大気雰囲気下1100℃において1000時間保持し、1000時間保持する前の大気雰囲気下1100℃での抵抗値(Rs,単位Ω)と、1000時間保持した後の抵抗値(Rf,単位:Ω)と、をそれぞれ測定し、下記式により抵抗変化率(ΔR,単位:%)を求めた。
ΔR=(|Rs−Rf|)/Rs×100
抵抗値の測定は直流4端子法を用いた。また、本実施例では、ΔRの値が5.0%以下である場合を良好とした。結果を表1に示す。
Figure 0005678520
試料1〜12より、Yの比率が0.450<a<0.995、好ましくは0.5≦a≦0.99、Caの比率が0.005<b<0.550、好ましくは0.01≦b≦0.50、Crの比率が0.05<c<0.650、好ましくは0.06≦c≦0.640、Alの比率が0.01≦d<0.950、好ましくは0.01≦d≦0.940、M1の比率が0.00≦e≦0.35である場合(試料2〜5、8〜11)には、Yの比率、Caの比率、Crの比率、Alの比率、またはM1の比率がこの範囲に含まれない場合(試料1、6、7、12)に比べ、積層品の抵抗変化率が良好となることが確認できた。
試料13〜38および41〜44より、M1をCo、Sn、Nd、Pr、Ga、Niとした場合であっても、Yの比率が0.450<a<0.995、好ましくは0.5≦a≦0.99、Caの比率が0.005<b<0.550、好ましくは0.01≦b≦0.50、Crの比率が0.05<c<0.650、好ましくは0.06≦c≦0.640、Alの比率が0.01≦d<0.950、好ましくは0.01≦d≦0.940、M1の比率が0.00≦e<0.400、好ましくは0.00≦e≦0.350であり、サーミスタ層にMnまたはSrが含まれない場合(試料13〜15、17〜19、21〜23、25〜27、29〜31、33〜35、41〜43)には、M1の比率がこの範囲に含まれない場合(試料16、20、24、28、32、36、44)、またはM1としてMnまたはSrが含まれる場合(試料37、38)に比べ、積層品の抵抗変化率が良好となることが確認できた。
試料37の積層品は、サーミスタ層にSrが含まれたことによりサーミスタ層の結晶構造がYCaCrAlM1の組成式で表わされる結晶構造の他に例えばYSrCrAlM1の組成式で表わされる結晶構造が形成されたと考えられる。そして、この結果、サーミスタ層のセンサ部が単相にならず、抵抗変化率が高くなったと考えられる。
試料38の積層品は、サーミスタ層にMnが含まれたことにより高温での抵抗変化率が高くなったと考えられる。
さらに、試料1〜38および41〜44より、単板品と積層品とでサーミスタ層に含まれるサーミスタ用組成物原料が同じ場合、積層品の方が単板品に比べ抵抗変化率が良好となることが確認できた。
本実施例の各試料はCrを含んでいるため、積層品のグリーンチップまたは単板品の成形体の表面から、Crが蒸発し、その結果、各試料の積層品の素子本体または単板品の焼結体の表面には、Crの欠陥層ができ、YAl、YAl12 、CaCrO等の異相が形成されたと考えられる。
しかし、積層品はサーミスタ層を挟みこむように内部電極層が積層してあることから、センサ特性に影響するセンサ部が素子本体の表面ではなく内部にある。このため、素子本体の表面に異相が形成されても、素子本体の内部に存在するセンサ部までは影響せず、抵抗変化率が良好となったと考えられる。
一方、単板品は、焼結体の表面に電極が形成されるため、センサ部は焼結体の表面にある。このため、焼結体の表面に形成された異相がセンサ特性に影響し、積層品に比べ単板品の抵抗変化率が高くなったと考えられる。
2… サーミスタ素子(積層型サーミスタ)
4… 素子本体
6,6a… サーミスタ層
8… 内部電極層
10… 端子電極
12… リード端子
14… 絶縁層
16… 金属ケース

Claims (2)

  1. サーミスタ層を挟むように二以上の内部電極層が内蔵されている素子本体と、
    前記素子本体の外面に形成され、相互に向き合う前記内部電極層のそれぞれに接続される一対の端子電極と、
    前記端子電極に接続されるリード端子と、
    を有する積層型サーミスタ素子であって、
    前記内部電極および前記端子電極がPtを含み、
    前記サーミスタ層は、Ya Cab Crc Ald M1e3 の組成式で表わされる酸化物を有し、
    前記組成式中のaおよびbの関係はa+b=1で表わされ、
    前記組成式中のc、dおよびeの関係はc+d+e=1で表わされ、
    前記組成式中のM1は、Co、Sn、Nd、Pr、GaおよびNiから選ばれる少なくとも1種であり、
    前記組成式中のaが0.5≦a≦0.99であり、
    前記組成式中のbが0.01≦b≦0.50であり、
    前記組成式中のcが0.06≦c≦0.64であり、
    前記組成式中のdが0.01≦d≦0.94であり、
    前記組成式中のeが0.00≦e≦0.35であり、
    前記サーミスタ層は実質的にSrおよびMnを含まず、
    前記素子本体の表面にY Al 、Y Al 12 、CaCrO のいずれか1種以上を含む異相が形成されていることを特徴とする積層型サーミスタ素子。
  2. さらに、少なくとも前記リード端子が前記端子電極に接続する部分を被覆する絶縁層を有する請求項1に記載の積層型サーミスタ素子。
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