JP5678443B2 - 全熱交換用原紙およびそれを用いた全熱交換素子 - Google Patents

全熱交換用原紙およびそれを用いた全熱交換素子 Download PDF

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Description

本発明は、主として空調分野に利用される全熱交換換気設備に関する。
室内外の空気の顕熱(熱)と潜熱(湿度)を交換しながら換気をする全熱交換換気設備は、省エネルギーの担い手として、オフィスビルはじめ工場に至る各種建築に普及している。最近では、改正省エネ法(エネルギー使用の合理化に関する法律)をはじめとする各種省エネルギー促進施策の高まりを受け、これまでの普及の中心であった大型建築物(床面積2000m以上)だけでなく、新たに中小ビル・店舗向け普及が加速すると期待され、全熱交換器のコンパクト化要求が高まっている。また、多様な中小ビル・店舗の使用環境で、長期にわたり性能を維持することも、重要な要求項目である。
上記のような、全熱交換器のコンパクト化を実現するには、心臓部となる全熱交換素子および、それを構成する原紙の高性能化が必須である。
全熱交換用原紙の性能は、伝熱性と透湿性に加え、二酸化炭素を多く含む汚れた空気(排気)と新鮮な外気(給気)が、全熱交換器内部で混合しないための、気体遮断性で評価される。
これまでの全熱交換用原紙は、これら伝熱性、透湿性、気体遮断性をバランスさせるために、高度に叩解したセルロースパルプで緻密な薄紙を形成し、さらに吸湿材を塗工することで、高い透湿性と熱交換性を保持したまま気体遮蔽性を高めてきた。(特許文献1,2)
しかし、このようなセルロースに吸湿材を塗工した薄紙は、高湿条件下では原紙の湿潤強度が低下し、素子のコルゲート構造が崩れやすく寸法安定性に劣る、という問題もあった。したがって、従来のセルロース主体の全熱交換用原紙は、多様な使用環境で、長期にわたり性能を維持することは困難であった。また、高度に叩解したセルロースパルプは、抄紙時のろ水性が悪く、必ずしも生産性に優れているとはいえなかった。
なお、ナノファイバーやその利用については多数の開示があるが(例えば、特許文献3など)、全熱交換用原紙に用いたものはない。
WO2002/099193号公報 特許第3969064公報 特開2005−299069号公報
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成され
たものであり、伝熱性と透湿性と気体遮蔽性に優れ、様々な使用環境で長期にわたり使用可能な全熱交換用原紙および全熱交換素子を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明は、次のいずれかの手段を採用するものである。
(1)セルロースパルプと繊維径が500nm以下の熱可塑性高分子のナノファイバーとを含むことを特徴とする全熱交換用原紙。
(2)前記セルロースパルプが、JIS P8121(1995)で規定されるカナダ標準ろ水度試験で150mlを超えるものであることを特徴とする前記(1)記載の全熱交換用原紙。
(3)前記熱可塑性高分子の主成分がナイロンであることを特徴とする前記(1)または(2)記載の全熱交換用原紙。
(4)さらに吸湿材を含むことを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の全熱交換用原紙。
(5)熱可塑性高分子のナノファイバーを分散させる工程、前記工程とは別にセルロースパルプを分散させる工程、前記工程で分散されたナノファイバーと前記工程で分散されたセルロースパルプを混合し、抄紙する工程で得られたものである請求項1〜4いずれかに記載の全熱交換用原紙。
(6)熱可塑性高分子のナノファイバーを分散させる工程、前記工程とは別にセルロースパルプを分散させる工程、前記工程で分散されたナノファイバーと前記工程で分散されたセルロースパルプを混合し、抄紙する工程を有することを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の全熱交換用原紙の製造方法。
(7)前記(1)〜()のいずれかに記載の全熱交換用原紙を用いたことを特徴とする全熱交換用素子。
本発明によれば、伝熱性と透湿性と気体遮蔽性に優れ、様々な使用環境で長期にわたり使用可能な全熱交換用原紙および全熱交換素子を提供することができる。
本発明において「ナノファイバー」とはナノメートル(nm)レベルの繊維径、いわゆるナノ径を有する繊維を意味し、具体的には繊維径が1nm以上、1000nm未満の繊維をいう。なお、繊維断面が円形でない異形断面の場合は同面積の円形に換算したときの繊維径に基づくものとした。
本発明の全熱交換用原紙はセルロースパルプと熱可塑性高分子のナノファイバーとを含むことが必要である。水蒸気分圧の異なる空間が、材料で仕切られているとき、水蒸気は、材料中を通り、水蒸気分圧の高いほうから低いほうへ移行していく。その際、材料内部の微細空隙において、凝集と蒸散を繰り返すとされる。そのような凝集と蒸散は毛細管現象が大きく寄与する。本発明の全熱交換用原紙は、図1に示すようにセルロースパルプが重なりあうことにより生じるわずかな空間にナノファイバーが入り込んだ構成になっており、このような構成にすることで毛細管現象を促進することができる。走査型電子顕微鏡で断面を観察した場合、パルプの一部がフィブリル化しただけであれば隙間の空間に存在する繊維の形態ははっきりしない不定形であるが、本発明において入り込んだナノファイバーはそれとははっきりと区別でき、特徴的な構成を有していることが確認できる。また、ナノファイバーはナノ径を有する微細な繊維であるため、セルロースパルプの緻密性及び気体遮蔽性を阻害することもない。さらに、熱可塑性高分子材料であるので、セルロースのように、湿潤時、強度が大きく低下することがない。そのため、本発明の全熱交換用原紙は長期にわたり、全熱交換素子の安定した寸法安定性を保つことができる。
本発明に用いるナノファイバーの繊維径は毛細管現象促進の観点から、500nm以下とすることが望ましく、生産性とのバランスから1nm以上とすることが望ましい。より好ましくは、100〜300nmの範囲である。
また、本発明に用いるセルロースパルプとしては、特に規定するものではないが、木材等の植物から得られるNパルプ(針葉樹パルプ)やLパルプ(広葉樹パルプ)等を適宜組み合わせることができる。また、セルロースパルプは叩解によりフィブリル化させる必要があるが、その指標としてはJIS P8121(1995)で規定されるカナダ標準ろ水度試験で150mlを超えるものであることが望ましい。150mlを超えることで、ろ水性を向上させ、抄紙時の生産性を高めることができる。さらに500mlを超えるとセルロースパルプ間の空隙が大きくなり気体遮蔽性が損なわれるため、ろ水度としては150〜500mlの範囲がより好ましい。
ナノファイバーは熱可塑性高分子からなるものであるが、熱可塑性高分子としては主成分がポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン等が挙げられる。ポリエステルとしてはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリ乳酸(PLA)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などの他、液晶ポリエステル等も挙げられる。また、ポリアミドとしてはナイロン6(N6)、ナイロン66(N66)、ナイロン11(N11)、ナイロン12(N12)などが挙げられる。ポリオレフィンとしては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)などが挙げられる。これらの高分子の中でも吸水しやすく、セルロースとの親和性の観点からナイロンであることが好ましく、ナイロン6が特に好ましい。また、ナイロン以外の成分を共重合または混合していてもかまわない。
なお、ナノファイバーは例えば、特開2005−299069号公報(段落[0045]〜[0057]、段落[0114]〜[0117]など)に記載された方法等により製造することができる。
本発明の全熱交換用原紙は、ナノファイバーが1〜70重量%の範囲で含まれていることが好ましい。1重量%以上とすることで、毛細管現象を促進することできる。一方で70重量%を超えると超極細繊維であるナノファイバーによりろ水性が低くなり、生産性が低下する。より好ましい範囲としては、5〜50重量%である。
本発明の全熱交換用原紙は必ずしも吸湿材を必要としないが、塩化リチウム、塩化カルシウム等のアルカリ金属塩を含んでよく、湿度移行がさらに促進される。
吸湿材の含有量としては、原紙重量に対し1〜30重量%の範囲が好ましい。吸湿材を多量に含有することで湿度移行は促進されるが、高湿条件下での原紙の強度が低下することから30重量%以下とすることが好ましい。さらに吸湿材は、コーティング等の塗工やディッピングなどの浸漬による加工で原紙に付与することができる。また、その際には、バインダーを併用してもよい。さらには抗菌剤、制菌剤、難燃剤等の機能剤を同時に付与することかできる。
本発明の全熱交換用原紙の透湿度としては、1500〜4000g/m/24hrの範囲であることが好ましい。1500g/m/24hr以上であると全熱交換素子として用いたときに湿度の交換性能が高く、優れた全熱交換性能を発現することができる。一方で4000g/m/24hrを越えると空気中の湿度を吸湿して、原紙の膨潤や収縮により、製造時の取扱いや製品使用時の寸法安定性に劣るといった問題が懸念される。より好ましい範囲としては、1800〜3000g/m/24hrである。
原紙の透湿度をコントロールする方法としては、原紙の厚みを薄くすることによって透湿抵抗を低減する方法や原紙内部にナノファイバーを分散させながら介在させることによって、毛細管現象の促進させる方法や透湿剤の塗布などがあるが、適宜それらを選択、組合せることが好ましい。
本発明の全熱交換用原紙の透気度としては、500秒/100ml以上が好ましい。500秒/100ml以上とすることで、換気における給気と排気の全熱交換器内部で混合が抑制することができる。より好ましくは、5000秒/100ml以上であり、さらに好ましくは8000秒/100ml以上である。
原紙の透気度は、その密度に大きく依存するため、密度を0.5〜1.5g/cmの範囲にすることが好ましい。0.5g/cm以上とすることで、原紙内部の空隙を小さく抑えることができ、透気度の向上すなわち、高い空気遮蔽性を得ることができる。一方で1.5g/cmを越えると原紙内部の微細な空隙までもなくなり、ナノファイバーの毛細管現象による透湿性能を得ることができなくなる。
原紙の密度をコントロールする手法としては、特に規定するものではないが、回転する一対のロール、または複数本のロールの間で押圧させるカレンダー装置やプレス装置により圧密化されることが好ましい。圧密化を行うことにより、原紙の紙厚を薄くすることができ、熱交換を行う際の熱伝達や湿度透過の抵抗が小さくなり、より熱交換しやすくなるといった効果がある。
本発明の全熱交換用原紙は、空気透過度が0.01〜0.1cm/Pa/m/分の範囲であることが好ましい。0.1cm/Pa/m/分を越えると空気の透過量が大きくなり、実使用時には、屋内臭気や二酸化炭素などが給気に混じるなどの問題が発生する懸念がある。また、0.01cm/Pa/m/分未満であると実質的には無孔シートであり、透湿抵抗が高くなり湿度の交換性能が低下する。
空気透過度は、構成繊維のろ水度を下げることによって、小さく抑えることができるが、上述のようにろ水性が劣ることによって抄紙時の生産性が著しく低下する懸念がある。また、原紙の密度を上げる方法や樹脂の塗布やフィルム等との積層によっても同じく、空気透過度を小さく抑えることができるので、適宜それらを選択、組合わせることによって空気透過度をコントロールすることが好ましい。
本発明の全熱交換用原紙の寸法安定性としては、夏季の雨天時などの高湿度状態においても寸法安定性が優れることが好ましい。熱交換用原紙が収縮や膨張によって、寸法変化を起こすと全熱交換素子として形態を維持することが困難となり、使用時の圧力損失の増大を招き、換気量が充分に確保できないなどの問題が発生する。
本発明の全熱交換用原紙の製造方法としては、ナノファイバーとパルプ等の他の構成繊維を分けて、分散させることが好ましい。ナノファイバーのアスペクト比が大きく、繊維同士が絡みやすいため、分散剤や浸透剤などを用いて、ビーターやリファイナー等の叩解機で分散することが好ましく、抄紙工程の直前で各構成繊維を混ぜ合わせ、抄紙することが好ましい。また、抄紙機としては、丸網抄紙機、短網抄紙機、長網抄紙機やそれらの組み合わせた抄紙機などを用いることができるが、ナノファイバーを抄紙の内部に均一に分散配置させるためには、サクション等による脱水機能を有する抄紙機がナノファイバーを抄紙内部で部分的に偏ることを抑制できるので好ましい。
本発明の全熱交換用原紙は、全熱交換素子として好適に使用することができる。
本発明の熱交換素子は、本発明の熱交換用原紙とコルゲート加工した坪量20〜200g/mのセルロースや合成繊維を主成分とする抄紙を接着剤等で貼り合わせ、片面コルゲートを得る。さらに、片面コルゲートの段目方向が一段づつ交差するように積層し、全熱交換素子を作製する。
コルゲート加工は、中芯を形成する互いに噛み合って回転する一対の歯車状のコルゲーターとライナをコルゲートされた中芯に押し付けるプレスロールからなる装置により行われる。中芯とライナの接着には、中芯の段加工された頂点部にのみ接着剤を塗布し、ライナを押圧し接着することもできるし、中芯、ライナの少なくともいずれかに接着成分を含有させ、中芯とライナを加熱しながら押圧することで接着させることもできる。
[測定方法]
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。本発明における各特性の定義および測定法は以下の通りである。
(1)透気度
JIS P8117(1998)の方法により、空気100mlが通過する時間を測定し、ガーレー透気抵抗度を透気度とし、気体遮蔽性の指標とした。
(2)透湿度
JIS Z0208(1976)の方法により、温度20℃、湿度65%の条件において、24時間に材料を通過する水蒸気の質量(g)をその材料1mあたりに換算した値を透湿度とした。
(3)寸法安定性
JIS Z0208(1976)で規定される透湿カップに材料を平滑になるように装着し、温度40℃、相対湿度80%RHの条件下に放置し、1時間後、材料表面に生じたたわみを観察し、次のように分類した。
○・・・たわみ・うねりがほとんどない。
×・・・たわみ・うねりがあり表面がうねっている。
(4)空気透過度
PMI社製パームポロメーターを用い、透過ガスとしてドライ空気を用いガス透過性能試験を行い、測定圧力1atm(101.3kPa)のときの試験体の下流側で発生する流量を測定した。
(5)全熱交換効率
JIS B8628(2003)に規定される方法により、給気と排気との間の全熱交換効率を測定した。夏季の冷房時条件(夏季条件)として、一次気流(給気)が乾球温度35℃、湿球温度29℃で風量300m/hrとし、二次気流(排気)が乾球温度27℃、湿球温度20℃で風量300m/hrとした。また、冬季の暖房時条件(冬季条件)として、一次気流(給気)が乾球温度5℃、湿球温度2℃で風量300m/hrとし、二次気流(排気)が乾球温度20℃、湿球温度14℃で風量300m/hrとした。
(6)ナノファイバーの数平均繊維径
数平均繊維径は以下のようにして求める。すなわち、走査型電子顕微鏡で撮影したナノファイバーの集合体の写真を画像処理ソフト(WINROOF)を用いて5mm角のサンプル内で無作為抽出した30本の単繊維直径をnm単位で小数の1桁目まで測定して少数の1桁目を四捨五入する。サンプリングは合計10回行って各30本の単繊維直径のデータを取り、合計300本の単繊維直径のデータを積算後、全数で除して単純平均値を求めたものを数平均繊維径とした。
[実施例1]
(ナノファイバーの作製)
(ポリマーアロイチップ)
融点220℃のナイロン6、40質量%と、融点170℃のポリL乳酸(光学純度99.5%以上)、60質量%を、2軸型の押出混練機を用いて220℃で溶融混練してポリマーアロイチップを得た。
(ポリマーアロイ繊維のトウ)
上記ポリマーアロイチップを、1軸型の押出機を備えたステープル用の溶融紡糸装置に投入し、235℃で溶融し、スピンブロックに導いた。そして、ポリマーアロイ溶融体を限界濾過径15μmの金属不織布に濾過させ、紡糸温度235℃で、孔径0.3mmの吐出孔を有し口金面温度215℃とした口金から吐出させた。
吐出された線状の溶融ポリマーを冷却風で冷却固化し、油剤を付与し、紡糸速度1350m/分で引き取った。
得られた未延伸糸を合糸した後、延伸温度90℃、延伸倍率3.04倍、熱セット温度130℃で延伸熱処理し、単繊維繊度3.0dtex、総繊度50万dtexのポリマーアロイ繊維のトウを得た。得られたポリマーアロイ繊維は、強度3.4cN/dtex、伸度45%であった。
(脱海・切断・叩解)
上記ポリマーアロイ繊維のトウを、95℃に保った5%水酸化ナトリウム水溶液に1時間浸漬し、ポリマーアロイ繊維中のポリL乳酸成分を加水分解除去(脱海)した。次いで酢酸で中和し、水洗、乾燥し、ナノファイバーの繊維束を得、この繊維束を1mm長にカットした。このカット繊維を、水10Lあたり30gの濃度で、熊谷理機工業(株)製、試験用ナイヤガラビーターに仕込み、5分間予備叩解し、水を切って回収した。次いでこの回収物を自動式PFIミル(熊谷理機工業(株)製)に仕込み、回転数1500rpmクリアランス0.2mmの条件で6分間叩解した。そして、水を含んで粘土状となった回収物を80℃の熱風乾燥機内で24時間乾燥させ、ナノファイバーを得た。
得られたナノファイバーの繊維直径は110〜180nmで、その数平均繊維径は150nmであった。
(セルロース繊維の作製)
広葉樹パルプを、水10Lあたり30gの濃度で、熊谷理機工業(株)製、試験用ナイヤガラビーターに仕込み、10分間叩解し、JIS P8121(1995)に規定されるカナダ標準濾水度が300mlのセルロース繊維を得た。
(原紙の作製)
上記で得られた数平均繊維径150nmのナイロン6ナノファイバー30重量%と、セルロース繊維70重量%を、水中で攪拌し抄紙して、厚み39μm、坪量30g/mのナノファイバー混抄紙からなる全熱交換用原紙を得た。
この原紙の透気度、透湿度を表1に示す。
また、この原紙は、高温・高湿度下における形状保持性にも優れていた。表1に結果を示す。なお、この原紙を走査型電子顕微鏡で観察したところ、パルプ同士の隙間にナノファイバーが入り込んでおり、そのナノファイバーはフィブリル化したパルプとははっきりと区別されることが確認できた。
(全熱交換素子の作製)
上記ナノファイバー混抄紙からなる原紙をライナ、上記セルロース繊維を用い、別途作製した坪量100g/mのセルロースクラフト紙を中芯として、コルゲート加工を行い、段高さ2mm、段ピッチ5mmの片面コルゲートを得た。
上記片面コルゲートを、段目方向が一段ずつ交差するように積層し、縦240mm、横240mm、高さ450mmの全熱交換素子を作製した。
このナノファイバーを用いた全熱交換素子の全熱交換効率は、表1に示すとおり71%(冬季条件)と非常に優れていた。
[実施例2]
(原紙の作製)
実施例1の原紙を用い、吸湿材として塩化リチウムを繊維重量に対し、5重量%を塗布し、乾燥させ、その後、一対の金属ロールを有するカレンダー装置を用い、120℃で圧密化を行い、厚み29μmの原紙を得た。得られた原紙の性能を表1に示す。
その他は実施例1と同様にして全熱交換用原紙と全熱交換素子を得た。
[実施例3、5]
(原紙の作製)
実施例1のナノファイバー15重量%と、セルロース繊維85重量%を、水中で攪拌し抄紙して、厚み45μm、坪量35g/mの実施例3のナノファイバー混抄紙からなる全熱交換用原紙を得た。
また、ナノファイバー50重量%と、セルロース繊維50重量%を、水中で攪拌し抄紙して、厚み40μm、坪量33g/mの実施例5のナノファイバー混抄紙からなる全熱交換用原紙を得た。
これらの原紙の性能を表1に示す。これらの原紙は、高温・高湿度下における形状保持性にも優れており、走査型電子顕微鏡で観察したところ、実施例1と同様にパルプ同士の隙間にナノファイバーが入り込んでおり、そのナノファイバーはフィブリル化したパルプとははっきりと区別されることが確認できた。
その他は実施例1と同様にして全熱交換用原紙と全熱交換素子を得た。
[実施例4、6]
(原紙の作製)
実施例3、5の原紙を用い、一対の金属ロールを有するカレンダー装置を用い、120℃で圧密化を行い、それぞれ厚み33μm、40μmの実施例4、6の原紙を得た。得られた原紙の性能を表1に示す。
その他は実施例1と同様にして全熱交換用原紙と全熱交換素子を得た。
[実施例7]
(ナノファイバーの作製)
(ポリマーアロイチップ)
溶融粘度120Pa・s(262℃、121.6sec−1)、融点225℃のPBTと2エチルヘキシルアクリレートを22%共重合したポリスチレン(co−PS)、PBTの含有率を20重量%とし、2軸型の押出混練機を用いて240℃としてポリマーアロイチップを得た。
(ポリマーアロイ繊維のトウ)
これを溶融温度260℃、紡糸温度260℃(口金面温度245℃)、紡糸速度1200m/分で実施例1と同様に溶融紡糸を行った。得られた未延伸糸を延伸温度100℃、延伸倍率を2.49倍とし、熱セット温度115℃として実施例1と同様に延伸熱処理した。得られたポリマーアロイ繊維は、強度1.4cN/dtex、伸度33%であった。
(脱海・切断・叩解)
このポリマーアロイ繊維をトリクレンに浸漬することにより、海成分であるco−PSの99%以上を溶出した後に乾燥し、ギロチンカッターで1mm長にカットして、PBTナノファイバー集合体短繊維を得た。このカット繊維を、水10Lあたり30gの濃度で、熊谷理機工業(株)製、試験用ナイヤガラビーターに仕込み、5分間予備叩解し、水を切って回収した。次いでこの回収物を自動式PFIミル(熊谷理機工業(株)製)に仕込み、回転数1500rpmクリアランス0.2mmの条件で6分間叩解した。そして、水を含んで粘土状となった回収物を80℃の熱風乾燥機内で24時間乾燥させ、ナノファイバーを得た。
得られたナノファイバーの繊維直径は70〜150nmで、その数平均繊維径は100nmであった。
(原紙の作製)
上記で得られた数平均繊維径は100nmのPBTナノファイバー30重量%と、実施例1と同様にして得られたセルロース繊維70重量%を、水中で攪拌し抄紙して、厚み35μm、坪量34g/mのナノファイバー混抄紙からなる全熱交換用原紙を得た。
この原紙は、走査型電子顕微鏡で観察したところ、パルプ同士の隙間にナノファイバーが入り込んでおり、そのナノファイバーはフィブリル化したパルプとははっきりと区別されることが確認できた。この原紙の特性を表1に示す。
さらに、この全熱交換用原紙を用い、実施例1と同様にして全熱交換素子を作製した。その性能を表1に示す。
[比較例1]
(原紙の作製)
実施例1のセルロース繊維100重量%を、水中で攪拌し抄紙して、厚み41μm、坪量30g/mのセルロース紙からなる全熱交換用原紙を得た。
この原紙の透気度、透湿度を表1に示す。
上記原紙は、高温・高湿度下における形状保持性において、たわみが生じた。表2に結果を示す。
(全熱交換素子の作製)
セルロース紙からなる原紙をライナ、実施例1と同様に別途作成した坪量100g/mのセルロースクラフト紙を中芯として、コルゲート加工とその積層を行い、縦240mm、横240mm、高さ450mmの全熱交換素子を作製した。
ナノファイバーを含まない上記素子の全熱交換効率は、表2に示すとおり夏季:51%、冬季:65%と低く、実施例1に比べ劣っていた。
[比較例2]
(原紙の作製)
比較例1の原紙を用い、一対の金属ロールを有するカレンダー装置を用い、120℃で圧密化を行い、厚み35μmの原紙を得た。得られた原紙の性能を表1に示す。
その他は実施例1と同様にして全熱交換用原紙と全熱交換素子を得た。
[比較例3]
繊維径5μm、繊維長1mmのナイロン6カットファイバー30重量%と、実施例1と同様にセルロース繊維70重量%を、水中で攪拌し抄紙して、厚み44μm、坪量30g/mのナイロン混抄紙からなる全熱交換用原紙を得た。
この原紙の透気度は30秒/100mlと空気が抜けやすく、繊維径がミクロン(μm)レベルのナイロンでは、原紙の緻密性を阻害してしまい、全熱交換器に求められる高い透気度が得られないことがわかった。全熱交換用原紙としては不適と判断し、透湿性、寸法安定性及び全熱交換効率は測定しなかった。
表1及び2に示すとおり、本発明である実施例は、比較例1および3に対し、透気度が高い、つまり気体遮蔽性が優れている上、寸法安定性、透湿性ともに優れている。結果として、全熱交換効率も高くなっており、伝熱性と透湿性と気体遮蔽性に優れ、様々な使用環境で長期にわたり使用可能である。また、圧密化により透気度を向上した比較例2においては、本発明の実施例と比較して、透湿度が低くなっており、原紙内部の空隙が閉塞され、透湿抵抗が高く、全熱交換効率が低いものとなっている。
実施例1の全熱交換用原紙の断面の一例を示す走査型電子顕微鏡写真である。 寸法安定性評価における温度40℃、相対湿度80%RHの条件下で1時間放置後の実施例1および比較例1の結果の一例を示す写真である。実施例1の結果状態は、全熱交換用原紙にほとんどうねりがなく、平滑な状態を維持しているが、比較例1の結果状態では、全熱交換用原紙にうねりが発生し、寸法が変化していることがわかる。
1:セルロースパルプ
2:ナノファイバー
3:寸法安定評価後の実施例1の全熱交換用原紙
4:寸法安定評価後の比較例1の全熱交換用原紙
5:透湿カップ
本発明により、伝熱性と透湿性と気体遮蔽性に優れ、様々な使用環境で長期にわたり使用可能な全熱交換用原紙および全熱交換素子を提供することができる。

Claims (9)

  1. セルロースパルプと繊維径が500nm以下の熱可塑性高分子のナノファイバーとを含むことを特徴とする全熱交換用原紙。
  2. 前記セルロースパルプがJIS P8121(1995)で規定されるカナダ標準ろ水度試験で150mlを超えるろ水度を示すものであることを特徴とする請求項1記載の全熱交換用原紙。
  3. 前記熱可塑性高分子の主成分がナイロンであることを特徴とする請求項1または2記載の全熱交換用原紙。
  4. さらに吸湿材を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の全熱交換用原紙。
  5. 熱可塑性高分子のナノファイバーを分散させる工程、前記工程とは別にセルロースパルプを分散させる工程、前記工程で分散されたナノファイバーと前記工程で分散されたセルロースパルプを混合し、抄紙する工程で得られたものである請求項1〜4いずれかに記載の全熱交換用原紙。
  6. 透湿度が1500〜4000g/m/24hrである請求項1〜5いずれかに記載の全熱交換用原紙。
  7. 透気度が500秒/100ml以上である請求項1〜6いずれかに記載の全熱交換用原紙。
  8. 熱可塑性高分子のナノファイバーを分散させる工程、前記工程とは別にセルロースパルプを分散させる工程、前記工程で分散されたナノファイバーと前記工程で分散されたセルロースパルプを混合し、抄紙する工程を有することを特徴とする請求項1〜7いずれかに記載の全熱交換用原紙の製造方法。
  9. 請求項1〜7のいずれかに記載の全熱交換用原紙を用いたことを特徴とする全熱交換用素子。
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