本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。以下の説明で用いる前後、左右、上下は乗員シートに座った乗員を基準に定める。
本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1に示されるように、自動二輪車10は、メインフレーム11の前部に設けたヘッドパイプ12にフロントフォーク13を転舵自在に取付け、このフロントフォーク13の上端にステアリングハンドル14を取付け、フロントフォーク13の下端に前輪15を回転自在に取付け、メインフレーム11に単気筒エンジン16を懸架し、このエンジン16をヘッドパイプ12から下方へ延ばしたダウンチューブ17で囲い、このダウンチューブ17の後端をメインフレーム11の後端から下方へ延ばしたピボットプレート41の下端に連結し、このピボットプレート41にピボット軸18でスイングアーム19を上下揺動自在に取付け、このスイングアーム19の後端に後輪21を回転自在に取付け、この後輪21に付属したスプロケット22にエンジン16の動力を伝えるチェーン23を巻掛け、メインフレーム11の前部に燃料タンク24を取付け、メインフレーム11の中間部上側からシートレール25を延ばし、ピボットプレート41の後部75とシートレール25をリヤパイプ26で接続し、シートレール25に後輪21の上方に配置されるようにシート27を載せてなる。
車体フレーム20は、ヘッドパイプ12と、メインフレーム11と、ピボットプレート41と、スイングアーム19と、シートレール25と、ダウンチューブ17と、からなる。
加えて、ヘッドパイプ12の前方をフロントゼッケンプレート28で覆い、メインフレーム11の前部側方をシュラウド31で覆い、メインフレーム11の中間部側方をシュラウド31から後方へ延ばした前側サイドカバー32で覆い、シートレール25及びエアクリーナ33を後側サイドカバー34で覆い、エンジン16の排気口に接続されエアクリーナ33の下方に配置する排気装置40A(詳細後述)をリヤゼッケンプレート51で覆っている。
さらに、後側サイドカバー34の後部下縁52とリヤゼッケンプレート51の後部上縁53との間に、シートレール25の延び方向に沿ったV字状の排熱口部54が設けられている。この排熱口部54から排気装置40Aの排熱を排出できる。なお、実施例では、後側サイドカバー34とリヤゼッケンプレート51を別々のカバーとしたが、後側サイドカバー34とリヤゼッケンプレート51を一体型カバーとしてもよい。この一体型カバーを適用した場合、上記排熱口部54に代えて、一体型カバーにシートレール25の延び方向に沿ったV字状の排熱用切込みを設けてもよい。また、一体型カバーにシートレール25の延び方向に沿った三角形状の排熱用開口を設けてもよい。次に排気装置40Aの配置を図2で説明する。
図2に示されるように、排気管80は、エンジン16のシリンダヘッド39前部に備える排気口55から前方へ延び、湾曲して車体右側方にて後方へ延び、さらにピボットプレート41内側を通って後方へ延びて排気装置40Aに接続されている。この排気装置40Aは、シートレール25及びリヤパイプ26に取付けた支持具56にボルト57で取付けられている。
緩衝器58は、上端がメインフレーム11に取付けられ、下端がピボットプレート41とスイングアーム19を繋いでいるリンク機構42に取付けられていることで、スイングアーム19のスイング動作を制御する。なお、点P1はスイングアーム19の揺動中心点である。
加えて、シートレール25とリヤパイプ26で囲まれた空間74内に、エアクリーナ33が配置され、このエアクリーナ33は、エレメント59がクリーナケース61に収納されてなる。エアクリーナ33の前端は、吸気側ダクト62を介してエンジン16の吸気口に接続され、クリーナケース61の後端は、支持具56に取付けられている。さらに、クリーナケース61に、上下方向に延ばされ泥よけに用いるマッドガード63(詳細後述)が取付けられている。次に排気装置40Aの構成を図3で説明する。
図3に示されるように、排気装置40Aは、排気管80と、この排気管80の後部81に設けた分岐部82(詳細後述)に接続されている第1枝管(後述)及び第2枝管100(詳細後述)と、第1枝管に接続され排気ガスを通すためにパンチング加工を施している第1インナーパイプ(後述)と、第2枝管100に接続され排気ガスを通すためにパンチング加工を施している第2インナーパイプ120(詳細後述)と、排気管80に取付けられている消音器50A(詳細後述)とからなる。
消音器50Aは、分岐部82よりも前側の前側管部84、分岐部82、第1枝管、第2枝管100、第1インナーパイプ、第2インナーパイプ120を覆っている外筒130と、この外筒130内に充填される吸音材(後述)とで構成される。
外筒130は、前側管部84から第1枝管及び第2枝管100を覆う第1外筒133と、この第1外筒133の右端部に着脱自在に設けられ第1インナーパイプを覆う第2右外筒(後述)と、第1外筒133の左端部134に着脱自在に設けられ第2インナーパイプ120を覆う第2左外筒135(詳細後述)とで形成される。加えて、第1外筒133は、下側に配置される下半体131と、この下半体131に取付けられる上半体132とからなる。
第1外筒133は、側面視で扁平形状に形成され、第1外筒133の上面部86及び下面部87は、後上がりに形成される。第1外筒133を扁平状で且つ後上がりに形成すると、第1外筒133の車体前後方向長さを短縮できるため、第1外筒133を更に車両前側に配置させることができる。したがって、排気装置40Aを自動二輪車(図1、符号10)に小型に配置できる。
第1枝管及び第2枝管100は、側面視でS字状に湾曲した後、後斜め上方に延ばされる。第1枝管及び第2枝管100をS字状に湾曲させ、後斜め上方に延ばすと、枝管100の車体前後方向長さが短縮されるので、第1外筒133の車体前後方向長さも短縮できる。第1外筒133の長さが更に短縮されると、第1外筒133を更々に車両前側に配置させることが可能となり、排気装置40Aを自動二輪車に更に小型に配置できる。次に枝管とインナーパイプと外筒の構成を図4で詳細に説明する。
図4に示されるように、排気管後部81の分岐部82は、車体幅方向に沿った左右に分岐し、分岐部82の右側に、車体右側方に延びる第1枝管90が接続され、分岐部82の左側に、緩衝器58と後輪21との間を通って車体左側方に延びる第2枝管100が接続されている。
加えて、分岐部82、第2枝管100、第2インナーパイプ120は、排気管80と一体であるため、第2枝管100の車両中心線156付近は、後輪21の前方にて車体右側方から左側方へ横断する排気管80の横断部70となる。
外筒130は、前側管部84から、分岐部82、第1枝管90及び第1インナーパイプ110、第2枝管100及び第2インナーパイプ120までを、平面視でU字形状に一体で覆うように形成されている。
また、外筒130は、前側管部84及び分岐部82及び第1枝管90及び第2枝管100を覆う第1外筒133と、この第1外筒133の右後端部136に着脱自在に設けられ第1インナーパイプ110を覆う第2右外筒137と、第1外筒133の左後端部134に着脱自在に設けられ第2インナーパイプ120を覆う第2左外筒135とで形成される。第1外筒133に対する第2右外筒137及び第2左外筒135の取付けは、筒同士の組付けであるため、外筒130の組付けが容易となる。
加えて、第2右外筒137は、第1外筒133の右後端部136にボルト138で取付けられ第1インナーパイプ110の前部を覆う右筒部139と、この右筒部139に取付けられ第1インナーパイプ110の後部を覆う右後カバー141とからなる。さらに、第2左外筒135は、第1外筒133の左後端部134にボルト142で取付けられ第2インナーパイプ120の前部を覆う左筒部143と、この左筒部143に取付けられ第2インナーパイプ120の後部を覆う左後カバー144とからなる。
第1外筒133の車幅方向中央に、外筒内に吸音材を充填するときに用いるメンテナンスリッド145(詳細後述)が取付けられている。
排気管80に前取付部材146が設けられ、右筒部139に右後取付部材147が設けられ、左筒部143に左後取付部材148が設けられている。前取付部材146は、ピボットプレート(図10、符号43)に設けた前支持具149に連結されている。右後取付部材147は、右側のシートレール(図10、符号214)及びリヤパイプ(図10、符号229)に設けた右後支持具152に連結されている。左後取付部材148は、左側のシートレール(図2、符号25)及びリヤパイプ(図2、符号26)に設けた左後支持具56に連結されている。つまり、排気管及びインナーパイプ及び外筒は、車体側に3点で支持されている。なお、線156は車体幅方向の車両中心線である。次に排気管とインナーパイプと外筒の組立手順を図5で説明する。
図5に示されるように、分岐部82の右後端157に、第1枝管90の前端158が差込まれ、分岐部82と第1枝管90が溶接で接続される。この第1枝管90の後端159に、第1インナーパイプ110の前端161が差込まれ、この第1インナーパイプ110に、ドーナツ状の第1セパレータ162(詳細後述)が溶接で取付けられる。なお、第1枝管90は、直線部163と湾曲部164を有する。
一方、分岐部82の左後端165に、第2枝管100の直線部166の前端167が嵌められ、分岐部82と直線部166が溶接で接続される。この直線部166の後端168に、第2枝管100の湾曲部169の前端171が嵌められ、直線部166と湾曲部169が溶接で接続される。なお、直線部166と湾曲部169は、実施例では分割構造としたが、一体構造にしてもよい。
湾曲部169の後端172に、第2インナーパイプ120の前端173が差込まれ、この第2インナーパイプ120に、ドーナツ状の第2セパレータ174(詳細後述)が溶接で取付けられる。分岐部82からインナーパイプ110、120まで接続された組立体と、下半体131と、上半体(図3、符号132)と、第1吸音材174とが組立てられる。また、分岐部82の前端175と、下半体131及び上半体が溶接で一体化される。
第1外筒133の右後端部136に、第2右外筒137の右筒部139が嵌められ、第1セパレータ162と右後端部136と右筒部139がボルト138で接続される。右筒部139の内部に、第2右吸音材176が充填される。右筒部139に右後カバー141が差込まれ、右筒部139と右後カバー141が溶接で接続される。結果、第1インナーパイプ110の後端が嵌っている右後カバー141の後端穴部が第1排気口177となる。
一方、第1外筒133の左後端部134に、第2左外筒135の左筒部143が嵌められ、第2セパレータ174と左後端部134と左筒部143がボルト142で接続される。左筒部143の内部に、第2左吸音材178が充填される。左筒部143に左後カバー144が差込まれ、左筒部143と左後カバー144が溶接で接続される。結果、第2インナーパイプ120の後端が嵌っている左後カバー144の後端穴部が第2排気口179となる。これで排気管とインナーパイプと外筒の組立が完了する。なお、実施例では、セパレータ162と後端部136と筒部139をボルト138で接続し、セパレータ174と後端部134と筒部143をボルト142で接続したが、ボルトの代わりにリベットを用いてセパレータと後端部と筒部を固定してもよい。
右後カバー141の後端部に、第1インナーパイプ110の後端に差込むために前方に突出し第1インナーパイプ110の後端を支持する右パイプ支持部181が設けられている。同様に、左後カバー144の後端部に、第2インナーパイプ120の後端に差込むために前方に突出し第2インナーパイプ120の後端を支持する左パイプ支持部182が設けられている。右パイプ支持部181は第1インナーパイプ110の後端を支持し、左パイプ支持部182は第2インナーパイプ120の後端を支持するため、両支持部181、182は枝管90、100やインナーパイプ110、120の振動を防止する。
第2枝管100及び第2インナーパイプ120は、第1枝管90及び第1インナーパイプ110よりも大径に形成される。第2枝管100の外径をd1、第2インナーパイプ120の入口の外径をd2、第1枝管90の外径をd3、第1インナーパイプ110の入口の外径をd4とすると、d1>d3であり、d2>d4である。
さらに、第2枝管100は、緩衝器(図4、符号58)と後輪(図4、符号21)との間を通って、第1枝管90が配置される側と反対側の車体左側方に延ばされるので、第2枝管100の長さは第1枝管90よりも長くなる。流路長の長い第2枝管100及び第2インナーパイプ120を大径にすることにより、第2枝管100及び第2インナーパイプ120を流れる排気ガスの流量を増加させ、排気ガスが左の枝管100及びインナーパイプ120と、右の枝管90及びインナーパイプ110とにバランスよく流れるようにした。
第1枝管90及び第1インナーパイプ110は、第1排気口177に向かうにつれ径が小さくなり、第2枝管100及び第2インナーパイプ120は、第2排気口179に向かうにつれ径が小さくなる。排気口177に向かうにつれ、徐々に通気抵抗を上げることで、排気圧を吸音材174、176側に拡散させるようにし、且つ排気の抜けを確保できる。同様に、排気口179に向かうにつれ、徐々に通気抵抗を上げることで、排気圧を吸音材174、178側に拡散させるようにし、且つ排気の抜けを確保できる。吸音材174、176、178に排気の音響エネルギーを吸収させることができるので、消音効果が向上する。次にパンチング部の配置を図6で説明する。
図6に示されるように、第1枝管90の直線部163に、排気ガスが通る前側右パンチング部183(詳細後述)を付設し、第1枝管90の湾曲部164に、前側右パンチング部183を付設しないようにした。また、第2枝管100の直線部166に、前側左パンチング部184(詳細後述)を付設し、第2枝管100の湾曲部169に、前側左パンチング部184を付設しないようにした。
湾曲部164、169内では、排気ガスが通るとき遠心力等により排気流れに偏りが生じる。このような偏りが生じる部分に、前側パンチング部を配置しないようにしたため、吸音材(図5、符号174)に均一的に音圧を拡散できる。
加えて、第1インナーパイプ110の前部186に、排気ガスが通る後側右パンチング部185(詳細後述)が設けられ、第2インナーパイプ120の前部188に、後側左パンチング部187(詳細後述)が設けられている。
さらに、枝管90、100及びインナーパイプ110、120の各々に、パンチング部が設けられている。このパンチング部から排気ガスが吸音材に流れることで、排気の音響エネルギーが吸収される。次にパンチング部の穴径を図7で説明する。
図7において、(a)は前側右パンチング部183の穴189の配置を示し、(b)は後側右パンチング部185の穴191の配置を示す。(a)にて円形状の穴189の径をd5とし、(b)にて円形状の穴191の径をd6とし、前側右パンチング部183の穴径d5は、後側右パンチング部185の穴径d6より小さくなるようにした。
排気ガスが前側右パンチング部183を通ると、排気の音響エネルギーが吸収されるため、消音効果が発揮される。加えて、前側右パンチング部183の穴径d5を後側右パンチング部185の穴径d6より小径とすることで、枝管(図6、符号90)内の通気抵抗が低くなるようにした。つまり、前側では消音効果をもたせつつも、通気抵抗が低くなるようにした。
なお、前側右パンチング部183及び後側右パンチング部185の穴形状は、実施例では、円形としたが、楕円形であってもよい。また、前側左パンチング部(図6、符号184)の穴径は前側右パンチング部183の穴径と同様であり、後側左パンチング部(図6、符号187)の穴径は後側右パンチング部185の穴径と同様である。次に第1外筒(図5、符号133)の左後端部(図5、符号134)に設けられているセパレータの構造を図8で説明する。
図8に示されるように、第2セパレータ174は、上側に第2インナーパイプ120を約180°の範囲で取り囲むように設けられ排気ガスが通る円弧状の上側開口192と、下側に第2インナーパイプ120を約180°の範囲で取り囲むように設けられ排気ガスが通る円弧状の下側開口193とを有する。
なお、実施例ではセパレータの構造を代表して第2セパレータ174で説明したが、第1セパレータ(図5、符号162)の構造は第2セパレータ174と同様であるため説明を省略する。次に第1外筒(図4、符号133)に設けられているメンテナンスリッド(図4、符号145)の構造を図9で説明する。
図9に示されるように、第1外筒133の上半体132に、第2枝管(図5、符号100)の直線部166に配置された前側左パンチング部184を覆うメンテナンスリッド145が設けられている。
第2枝管は、緩衝器(図4、符号58)と後輪(図4、符号21)との間を通る管であるため、第2枝管の直線部166は、第1外筒133の車幅方向中央付近に配置される。すなわち、メンテナンスリッド145は、第1外筒133の中央付近に設けられるので、第1外筒133内に吸音材174を容易に充填できる。
加えて、メンテナンスリッド145は、上半体132の上部に設けたメンテナンス開口194を塞ぐために、上半体132にリベット195、196で取付けられている。リベット195、196にブラインドリベットが好適である。また、メンテナンスリッド145に、前上方に突出するように形成され剛性を向上させるビード部197が設けられている。
上半体132の上部に、メンテナンスリッド145を支持するリッド支持部198が設けられ、このリッド支持部198の周囲に、メンテナンスリッド145の外縁が係合する上端曲がり部199が設けられている。メンテナンスリッド145の外縁が上端曲がり部199に係合することで、メンテナンスリッド145の組付けが簡単になる。なお、メンテナンスリッド145の取付部品は、リベット195、196に代えてボルトを使用してもよい。ボルトを使用すれば、メンテナンス時の作業時間の短縮が期待できる。
第1外筒133は、下半体131と上半体132を溶接で一体化してなる。下半体131の上部両端に、下側接続部201、202が設けられている。一方、上半体132の下部両端に、下端曲がり部203、204を介して上側接続部205、206が設けられている。下側接続部201、202の各々の上端を、下端曲がり部203、204に当てることで、下半体131と上半体132の位置合わせが簡単に実施できる。
以上に述べた排気装置40Aの作用を次に述べる。
図5において、排気ガスは、矢印(1)のように分岐部82から第1枝管90へ流入し、次に矢印(2)のように前側右パンチング部183の穴189を通って第1吸音材174に流入する。排気の音響エネルギーが先ず第1吸音材174で吸収される。
第1吸音材174を通った排気ガスは、矢印(3)のように第1セパレータ162の開口207を通って第2右吸音材176に流入する。排気の音響エネルギーが第2右吸音材176で更に吸収されるため、排気音が低減される。第2右吸音材176を通った排気ガスは、矢印(4)のように後側右パンチング部185の穴191を通って第1インナーパイプ110に流入し、矢印(5)のように第1排気口177から排気される。
一方、分岐部82から矢印(6)のように、排気ガスが第2枝管100の直線部166に流入すると、排気ガスは、矢印(7)のように前側左パンチング部184の穴208を通って第1吸音材174に流入する。排気の音響エネルギーが先ず第1吸音材174で吸収される。
第1吸音材174を通った排気ガスは、矢印(8)のように第2セパレータ174の開口193を通って第2左吸音材178に流入する。排気の音響エネルギーが第2左吸音材178で更に吸収されるため、排気音が低減される。第2左吸音材178を通った排気ガスは、矢印(9)のように後側左パンチング部187の穴209を通って第2インナーパイプ120に流入し、矢印(10)のように第2排気口179から排気される。
排気装置40Aでは、排気管後部81をも消音器構造にした。消音器50Aの外殻に相当する外筒130の前端85は、デッドスペースを生かして2本の枝管90、100が分岐する分岐部82よりも車両(図1、符号10)前方に配置されるので、消音器50Aの容量を増加させつつ、排気装置40Aがより車両前側に配置された形態となる。結果、外観が良好で、且つマスの集中が図り易い自動二輪車(図1、符号10)の排気装置40Aが提供される。
ところで、自動二輪車では、車体に多数の構成部品が取付けられているため、これらの部品同士の間に狭い空間が生じやすい。この空間を排気装置40Aの配置部位として利用すれば、排気装置40Aを自動二輪車に小型に配置させることができる。その例を次に説明する。
図10に示されるように、消音器50Aの第1外筒133は、メインフレーム11の支持具225とスイングアーム19とを繋いでいる緩衝器58の後方と、右後支持具152に取付けるエアクリーナ33の下方と、スイングアーム19の上方とで形成する空間212に配置されている。
この空間212は自動二輪車(図1、符号10)に備わる空き部位であり、この空き部位に第1外筒133を配置することで、消音器50Aを自動二輪車に小型に配置することができる。
加えて、排気管(図4、符号80)の横断部70に、第2枝管(図6、符号100)の直線部166の外径d1より太い外径の第1外筒133が配置されている。第1外筒133の外径は、第1外筒133が略楕円状に形成されているため、長軸72方向の長さとなる長径daと、短軸73方向の長さとなる長径dbとで表される。
消音器50Aの第1外筒133が排気管の横断部70に沿って、スイングアーム19とシート(図2、符号27)の間に配置されると、消音器50Aを容量を確保しながらもより前方に配置させることができるため、消音器50Aの車体後方への突出を抑えられる。つまり、自動二輪車(図1、符号10)は消音器50Aをより小型に備えることができる。また、消音器50Aの車体後方への突出が抑えられると、車両後部の外観性が向上する。したがって、消音器50Aをより小型に備えることができ、且つ車両後部の外観性が向上する自動二輪車を提供できる。なお、消音器50Aは、実施例では略楕円状に形成したが、円状に形成してもよい。
さらに、クリーナケース61の底面から高さh1だけ下方に離れた部位に、断熱材も兼ねる遮熱板213が配置されているので、クリーナケース61の底面と遮熱板213との間に隙間h1を有する断熱層219を確保でき、断熱効果が期待できる。次に遮熱板213の車体幅方向の配置を図11で説明する。
図11において、左右一対のリヤパイプ26、229は、左右のピボットプレート(図2、符号41、43)の後部(図2、符号75、78)と左右のシートレール25、214を接続する部材である。このような左側リヤパイプ26と右側リヤパイプ229の間を渡し、且つエアクリーナ33と消音器50Aの間を通すように、消音器50Aからエアクリーナ33へ向かう熱を遮る遮熱板213が設けられる。遮熱板213はU字状の部材である。
エアクリーナ33と消音器50Aの間に、リヤパイプ26、229間に渡した遮熱板213が設けられるため、消音器50Aの熱は、遮熱板213からリヤパイプ26、229へ伝わる。消音器50Aの熱がエアクリーナ33に伝わりにくくなるので、エアクリーナ33自体の温度上昇を防止できる。
加えて、車体左側部が左後側サイドカバー34で覆われ、このサイドカバー34の後下方で且つ消音器50A左側方にて左側リヤゼッケンプレート51が配置され、サイドカバー34とリヤゼッケンプレート51の間に、左側リヤパイプ26に沿うように車体前後方向に延びる左側空隙部44が形成されている。また、車体右側部が右後側サイドカバー216で覆われ、このサイドカバー216の後下方で且つ消音器50A右側方にて右側リヤゼッケンプレート218が配置され、サイドカバー216とリヤゼッケンプレート218の間に、右側リヤパイプ229に沿うように車体前後方向に延びる右側空隙部45が形成されている。
サイドカバー34とリヤゼッケンプレート51の間に左側空隙部44を形成し、サイドカバー216とリヤゼッケンプレート218の間に右側空隙部45を形成すると、車体外方から空隙部44、45を通して車体内方へ走行風が導入しやすくなり、エアクリーナ33に空気を安定的に供給できる。
さらに、左後側サイドカバー34の下縁部に、車体内方へ延ばされ左側空隙部44を形成する部材となる左側リブ215が設けられ、このリブ215は、リヤパイプ26とサイドカバー34の下縁部の間を塞ぐように形成され、リブ215の一部を切欠いて左側切欠き部46を設けることにより、リブ215とリヤパイプ26の間に左リブ側空隙47が形成されている。また、右後側サイドカバー216の下縁部に、車体内方へ延ばされ右側空隙部45を形成する部材となる右側リブ217が設けられ、このリブ217は、リヤパイプ229とサイドカバー216の下縁部の間を塞ぐように形成され、リブ217の一部を切欠いて右側切欠き部48を設けることにより、リブ217とリヤパイプ229の間に右リブ側空隙49が形成されている。
左側リブ215とリヤパイプ26の間に、空隙部44に加えてリブ側空隙47を設けると、空隙部44及びリブ側空隙47を通じて車体内方へ一層走行風を導入でき、エアクリーナ33へ空気を更に安定的に供給できる。同様に、右側リブ217とリヤパイプ229の間に、空隙部45に加えてリブ側空隙49を設けると、空隙部45及びリブ側空隙49を通じて車体内方へ一層走行風を導入でき、エアクリーナ33へ空気を更に安定的に供給できる。なお、実施例では、2ヶ所の切欠き部46、48を設けたが、車体前後方向に沿って切欠き部を2ヶ所以上設けてもよい。
増加させてもよい。
そして、左側リヤゼッケンプレート51の左側上縁部88は、左側空隙部44を形成する部位であると共に、左後側サイドカバー34の下縁部に備えるリブ215よりも車体内方へ入り込みつつリヤパイプ26に近接している。また、右側リヤゼッケンプレート218の右側上縁部89は、右側空隙部45を形成する部位であると共に、右後側サイドカバー216の下縁部に備えるリブ217よりも車体内方へ入り込みつつリヤパイプ229に近接している。
リヤゼッケンプレート51の上縁部88をリヤパイプ26に近接させ、リヤゼッケンプレート218の上縁部89をリヤパイプ229に近接させると、消音器50Aの排熱が車体内方に導入した走行風に接触することがなくなり、エアクリーナ33に供給される空気の温度上昇を防止できる。加えて、消音器50Aの排熱は、左側リヤゼッケンプレート51の左開口223から導入した走行風で車両後方へ飛ばし、右側リヤゼッケンプレート218の右開口224から導入した走行風で車両後方へ飛ばすことができる。
加えて、エアクリーナ33の下方に、消音器50Aの後方を覆うようにマッドガード63が配置され、このマッドガード63は、クリーナケース61の後端部に取付けられている。さらに、マッドガード63の上部左端に、後面視で遮熱板213を覆う左耳部221が設けられ、マッドガード63の上部右端に、後面視で遮熱板213を覆う右耳部222が設けられている。これらの耳部221、222で、遮熱板213に泥がかかることを防ぐことができるため、遮熱板213の遮熱性能を維持できる。
これまでに説明した排気装置40Aでは、消音器50Aの第1外筒(図3、符号133)を水平分割構造とした。第1外筒の構造が一つに限定されると、製作時の状況によっては、第1外筒の製作費が高くなることがある。このような観点から、第1外筒の構造は、製作時の状況に応じて多種類から適当な構造を選定できる方が好ましい。第1外筒の構造を水平分割とは別にした排気装置の例を次に説明する。
図12において、図3と共通の構造は符号を流用して詳細な説明を省略する。主たる変更点は、第1外筒を、車体幅方向に着脱可能であるいんろう型にしたことである。
排気装置40Bでは、消音器50Bは、第1外筒260(詳細後述)と、第2右外筒(後述)と、第2左外筒280(詳細後述)と、第1外筒260内に充填される第1吸音材(後述)と、第2右外筒内に充填される第2右吸音材(後述)と、第2左外筒280内に充填される第2左吸音材(後述)とからなる。
第1外筒260は、車体幅方向に着脱可能であるいんろう型部材で、分岐部240と第1枝管(後述)と第2枝管250(詳細後述)を覆っている。第2右外筒は、第1枝管に接続している第1インナーパイプ(後述)を覆い、第2左外筒280は、第2枝管250に接続している第2インナーパイプ120を覆っている。次に枝管とインナーパイプと第1外筒と第2外筒の構成を図13で詳細に説明する。
図13において、図4と共通の構造は符号を流用して詳細な説明を省略する。
第1外筒260は、車体幅方向に沿った左右に分岐している分岐部240と、この分岐部240の右端部に接続されている第1枝管90と、分岐部240の左端部に接続されている第2枝管250とを覆っている。また、第1外筒260は、車体幅方向右側に位置する右半体261と、この右半体261が嵌められ車体幅方向左側に位置する左半体262とからなる。
第1枝管90に接続している第1インナーパイプ110は、第2右外筒270で覆われ、前述したように第2インナーパイプ120は第2左外筒280で覆われている。
第2右外筒270は、第1枝管90の後端部に取付けられ第1インナーパイプ110の前端部を覆う右前カバー271と、右筒部139と、右後カバー141とからなる。
第2左外筒280は、第2枝管250の後端部に取付けられ第2インナーパイプ120の前端部を覆う左前カバー281と、左筒部143と、左後カバー144とからなる。次に排気管とインナーパイプと第1外筒と第2外筒の組立構造を図14で説明する。
図14において、図5と共通の構造は符号を流用して詳細な説明を省略する。
右半体261の前端穴263から分岐部240の湾曲部材264が差込まれ、この湾曲部材264の右接続穴265に短管266が溶接で接続される。右半体261の後端穴267から第1枝管90が挿入され、この第1枝管90の前端158が短管266の右後端穴268に差込まれる。右半体261内に第1吸音材174が充填される。
一方、左半体262の右端から第2枝管250が挿入され、この第2枝管250の後端が左半体262の後端穴269に挿入される。左半体262内に第1吸音材174が充填される。なお、第2枝管250は、前側左パンチング部184を有する直線部272と、パンチング部を有しない湾曲部273とが一体化された部材である。
左半体262の右端穴274に、右半体261の左端275が差込まれ、第2枝管250の前端276に、分岐部240の左後端277が差込まれる。右半体261と左半体262がリベット278で結合される。
第1枝管90の後端279に第1インナーパイプ110の前端穴が嵌められ、第1インナーパイプ110の前端に右前カバー271の前端穴が嵌められる。第1インナーパイプ110の前端282と右前カバー271の前端283が溶接で接続される。右前カバー271に右筒部139が嵌められ、右前カバー271と右筒部139がボルト138で接続される。右前カバー271及び右筒部139に第2右吸音材176が充填される。右筒部139に右後カバー141が差込まれ、右筒部139と右後カバー141が溶接で接続される。
一方、第2枝管250の後端284に第2インナーパイプ120の前端穴が嵌められ、第2インナーパイプ120の前端に左前カバー281の前端穴が嵌められる。第2インナーパイプ120の前端285と左前カバー281の前端286が溶接で接続される。左前カバー281に左筒部143が嵌められ、左前カバー281と左筒部143がボルト142で接続される。左前カバー281及び左筒部143に第2左吸音材178が充填される。左筒部143に左後カバー144が差込まれ、左筒部143と左後カバー144が溶接で接続される。
以上に述べた排気装置40Bの作用を次に述べる。
図14において、排気ガスは、矢印(11)のように第1枝管90へ流入し、次に矢印(12)のように前側右パンチング部183の穴189を通って第1吸音材174に流入する。排気の音響エネルギーが先ず第1吸音材174で吸収される。
次に排気ガスは、矢印(13)のように穴189を通って第1枝管90へ流入し、さらに排気ガスは、矢印(14)のように後側右パンチング部185の穴191を通って第2右吸音材176に流入する。排気の音響エネルギーが第2右吸音材176で更に吸収されるため、排気音が低減される。次に排気ガスは、矢印(15)のように穴191を通って第1インナーパイプ110に流入し、矢印(16)のように第1排気口177から排気される。
一方、分岐部240から矢印(17)のように、排気ガスが第2枝管250に流入すると、排気ガスは、矢印(18)のように前側左パンチング部184の穴208を通って第1吸音材174に流入する。排気の音響エネルギーが先ず第1吸音材174で吸収される。
次に排気ガスは、矢印(19)のように穴208を通って第2枝管250へ流入し、さらに排気ガスは、矢印(20)のように後側左パンチング部187の穴209を通って第2左吸音材178に流入する。排気の音響エネルギーが第2左吸音材178で更に吸収されるため、排気音が低減される。次に排気ガスは、矢印(21)のように穴209を通って第2インナーパイプ120に流入し、矢印(22)のように第2排気口179から排気される。
尚、排気装置40A(図4参照)、40B(図13参照)は、実施例では自動二輪車に適用したが、バギー等の三輪車にも適用可能であり、一般の車両に適用することは差し支えない。
加えて、排気管後部81(図4及び図13参照)は、実施例では緩衝器58(図4参照)の右側方に配置したが、緩衝器の左側方に配置してもよい。
さらに、第1枝管90(図4及び図13参照)は、実施例では車体右側方に向けて延ばしたが、排気管後部81(図4及び図13参照)を緩衝器58(図4参照)の左側方に配置することで車体左側方に向けて延ばしてもよい。つまり、第1インナーパイプ110(図4及び図13参照)を車体左側方に配置してもよい。
そして、第2枝管100(図4参照)、250(図13参照)は、実施例では車体左側方に向けて延ばしたが、排気管後部81(図4及び図13参照)を緩衝器58(図4参照)の左側方に配置することで、緩衝器と後輪21(図4及び図13参照)の間を通して車体右側方に向けて延ばしてもよい。つまり、第2インナーパイプ120(図4及び図13参照)を車体右側方に配置してもよい。