以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。各機能要素について形態別に区別する際には、A,B,C,…等のように大文字のアルファベットの参照子を付して記載し、特に区別しないで説明する際にはこの参照子を割愛して記載する。図面においても同様である。
説明は以下の順序で行なう。
1.全体概要
2.通信処理系統:第1例
3.通信処理系統:第2例
4.ヒンジ構造体:基本構成
5.送受信アンテナ:直線偏波用、円偏波用、円環パッチアンテナ
6.偏波変換部
7.モード変換部
8.具体的な適用例
実施例1:両端に直線偏波プローブ、導波管内に偏波変換部を配し円偏波伝送
実施例2:片端に直線偏波プローブ、導波管内に偏波変換部を配し円偏波伝送
実施例3:導波管内でモード変換
実施例4:両端に円環パッチアンテナ
実施例5:両端に直線偏波プローブ、導波管内を直線偏波伝送
実施例6:直交する2つの偏波を使用して多重伝送
実施例7:周波数分割多重により多重伝送
実施例8:導波管長が伸縮可能
実施例9:信号の無線伝送+電力の無線伝送
実施例10:信号の無線伝送+電力はスリップリング機構で伝送
実施例11:電子機器への適用事例
<全体概要>
[信号伝送装置、信号伝送方法]
本発明の第1の態様〜第3の態様と対応する本実施形態の構成においては、伝送対象信号を電波として送信する送信部と、送信部から送信された電波を受信し対応する電気信号を出力する受信部とを信号伝送装置やヒンジ構造体や電子機器に備える。
電子機器における第1の筐体には例えば、送信側の信号処理部を収容し、電子機器における第2の筐体には例えば、受信側の信号処理部を収容する。中心軸の周りに第1の筐体と第2の筐体とを回転可能に連結する連結部を設ける。連結部は、第1の筐体と第2の筐体とを通常の使用時に着脱不可能な構成でもよいし、第1の筐体と第2の筐体とを着脱可能な構成で、使用時に第1の筐体と第2の筐体とを装着する構成でもよい。
そして、ヒンジ構造体の連結部に送信部と受信部との間で無線伝送が可能な無線信号伝送路を形成する。つまり、電子機器における第1の筐体(例えば、送信側の信号処理部を収容)と第2の筐体(例えば、受信側の信号処理部を収容)とを中心軸の周りに回転可能に連結するヒンジ構造体を利用して、そのヒンジ構造体に設けられる連結部において、送受信間で電波の周波数帯で無線伝送を行なう。好ましくは、ヒンジ構造体の第1の筐体と第2の筐体との連結部に設けられた空洞を利用して無線信号伝送路を形成し、送受信間で電波の周波数帯で無線伝送を行なう。信号伝送に電波を使用すれば、電気配線や光を使用する場合の問題は起きない。
電波の周波数帯(換言すると搬送周波数)としては、好ましくは、ミリ波帯(波長が1〜10ミリメートル)を主に使用するとよい。又、ミリ波帯に限らず、より波長の短い例えばサブミリ波帯(波長が0.1〜1ミリメートル)やより波長の長いセンチ波帯(波長が1〜10cm)等、ミリ波帯近傍を使用する場合にも適用可能である。例えば、周波数分割多重方式を採用する場合に、使用する搬送周波数の数が多くなりミリ波帯だけでは要求される通信帯域を確保できないときには、サブミリ波帯〜ミリ波帯、ミリ波帯〜センチ波帯、あるいはサブミリ波帯〜ミリ波帯〜センチ波帯を使用する。信号伝送装置のサイズを小さくする点では、センチ波帯よりも、ミリ波帯やサブミリ波帯を使用するのが好適である。
信号伝送にミリ波帯あるいはその近傍を使用すれば、他の電気配線に対して妨害を与えずに済み、電気配線(例えばフレキシブルプリント配線)を信号伝送に使ったときのようなEMC対策の必要性が低くなる。ミリ波帯あるいはその近傍を使用すれば、電気配線(例えばフレキシブルプリント配線)を使ったときよりもデータレートを大きくとれるので、高精細化やフレームレートの高速化による画像信号の高速化等、高速・高データレートの伝送にも簡単に対応できる。
好ましくは、ヒンジ構造体の第1の筐体と第2の筐体との連結部に形成された空洞に、送信部と受信部とを繋ぐ導波路部を設け、無線信号伝送路を、導波路部内に形成するとよい。導波路部を空洞に設けるに当たっては、連結部の中心軸と同軸芯で直線状に導波路部を設けもよいし、導波路が屈曲部を有するとともに、屈曲部に、送受信間で電波の経路を変更する反射部を備えるようにしてもよい。
導波路部を空洞に設けるに当たっては、導波路部をなす導波管を配置するとよい。無線信号伝送路は導波管内に形成される。連結部に形成される空洞そのものを無線信号伝送路として利用する場合よりも、電波の不規則な反射を防止できる。この場合において、連結部の中心軸と同軸芯で直線状に導波管を設ける場合には、連結部の中心軸と同軸芯の第1の導波管と、連結部の中心軸を中心に第1の導波管に対して相対的に回転可能な第2の導波管とを有するものとするよい。この場合、無線信号伝送路は、第1の導波管内と第2の導波管内とに形成される。
導波路部をなす導波管を空洞に設けるに当たっては、導波管内に誘電体素材を詰め込むとより好ましい。この場合、多重反射を抑制できるし、管径を小型化できる。
導波路部をなす導波管を空洞に設けるに当たって、導波管内に誘電体素材を詰め込む場合には、好ましくは、誘電体素材の外周を覆うように金属素材の薄膜を被覆する表面処理(いわゆる金属メッキ)を施すとよい。この場合、導波管を軽量化できる。
導波路部をなす導波管を空洞に設けるに当たっては、導波管の送信部側の端部には無線信号を無線信号伝送路に送信する伝送路結合部を設け、導波管の受信部側の端部には無線信号伝送路から無線信号を受信する伝送路結合部を設ける。そして、導波管の送信部側の端部の無線信号伝送路とは反対側と導波管の受信部側の端部の無線信号伝送路とは反対側の少なくとも一方には(より好ましくは両端部には)、無線信号を伝送路結合部側へ反射させる終端部材を設けるとよい。この場合、終端部材により反射波も利用できる構造とすることで、感度アップを図ることができる。
導波路部をなす導波管を空洞に設けるに当たっては、導波管の送信部側の端部には無線信号を無線信号伝送路に送信する伝送路結合部を設け、導波管の受信部側の端部には無線信号伝送路から無線信号を受信する伝送路結合部を設ける。そして、導波管の送信部側の端部の無線信号伝送路とは反対側と導波管の受信部側の端部の無線信号伝送路とは反対側の少なくとも一方は(より好ましくは両端部は)開放端とし、開放端の近傍には伝送路結合部や導波管から放射される無線信号を吸収する吸収部材を設てもよい。この場合、漏れ電波を吸収部材に吸収させることで、不要反射を防止できる。
尚、導波管の端部の一方に終端部材を設け、他方は開放端とし、その開放端の近傍に吸収部材を設てもよい。つまり、導波管の送信部側の端部には無線信号を無線信号伝送路に送信する伝送路結合部を設け、導波管の受信部側の端部には無線信号伝送路から無線信号を受信する伝送路結合部を設ける。そして、導波管の送信部側の端部の無線信号伝送路とは反対側と導波管の受信部側の端部の無線信号伝送路とは反対側の一方には無線信号を伝送路結合部側へ反射させる終端部材を設け、導波管の送信部側の端部の無線信号伝送路とは反対側と導波管の受信部側の端部の無線信号伝送路とは反対側の他方を開放端とし、その開放端の近傍には伝送路結合部や導波管から放射される無線信号を吸収する吸収部材を設けるとよい。
ヒンジ構造体における連結部の回転角が小さいとき(90度未満のとき)には、導波路内を直線偏波で伝送してもよい。即ち、ヒンジ構造体は、第1の筐体と第2の筐体とを開閉中心軸の周りに90度未満の範囲で開閉可能である場合、無線信号伝送路の送信部側の端部には、無線信号を直線偏波で無線信号伝送路に送信する直線偏波プローブを具備した送信側の伝送路結合部を設け、無線信号伝送路の受信部側の端部には無線信号伝送路からの直線偏波の無線信号を受信する直線偏波プローブを具備した受信側の伝送路結合部を設ける。そして、無線信号伝送路内を、直線偏波で無線伝送する。
ヒンジ構造体における連結部の回転角に左右されない(回転角の制限がない)構成とする場合には、導波路内(つまり無線信号伝送路内)を円偏波で伝送するとよい。
無線信号伝送路内を、円偏波で無線伝送する構成とするに当たっては、基本的には次の3つの態様を採り得る。説明の理解の容易化のために、「送信側の信号処理部及び送信部」と「受信部及び受信側の信号処理部」の一方が固定部に搭載され、「送信側の信号処理部及び送信部」と「受信部及び受信側の信号処理部」の他方が可動部に搭載され、固定部に対して可動部が開閉回転軸を中心に相対的に回転可能に構成されている場合で説明する。又、送信部と受信部とを纏めて通信部と記す。
1)固定部と可動部の両通信部の伝送路結合部に円偏波用のアンテナ(円偏波プローブ)を使用する。この場合は、無線信号伝送路については特段の対処は不要である。例えば、固定部から可動部への伝送の場合、固定部側の通信部の円偏波プローブから円偏波で無線信号伝送路に送信される。可動部側の通信部の円偏波プローブは、可動部が90度以上に亘って回転する場合であっても、無線信号伝送路を伝搬してきた円偏波を何ら問題なく受信できる。可動部から固定部への逆方向の伝送の場合についても同様に考えればよい。
2)固定部と可動部の何れか一方の通信部の伝送路結合部に直線偏波用のアンテナ(直線偏波プローブ)を使用するとともに、固定部と可動部の他方の通信部の伝送路結合部に円偏波用のアンテナ(円偏波プローブ)を使用する。この場合は、無線信号伝送路については、導波管構造とし、円偏波と直線偏波を変換する偏波変換部を設ける。例えば、固定部側の通信部に直線偏波プローブが設けられ、可動部側の通信部に円偏波プローブが設けられている場合で説明する。固定部から可動部への伝送の場合、固定部側の通信部の直線偏波プローブから直線偏波で無線信号伝送路に送信される。その直線偏波は無線信号伝送路(導波管)に設けられている偏波変換部によって円偏波に変換される。この変換された円偏波が、無線信号伝送路を伝搬して、可動部側の通信部の円偏波プローブに到達する。したがって、可動部が90度以上に亘って回転する場合であっても、無線信号伝送路を伝搬してきた円偏波を何ら問題なく受信できる。可動部から固定部への伝送の場合、可動部側の通信部の円偏波プローブから円偏波で無線信号伝送路に送信される。その円偏波は無線信号伝送路(導波管)に設けられている偏波変換部によって直線偏波に変換される。この変換された直線偏波が、無線信号伝送路を伝搬して、固定部側の通信部の直線偏波プローブに到達する。したがって、可動部が90度以上に亘って回転する場合であっても、無線信号伝送路を伝搬してきた円偏波が偏波変換部により何ら問題なく直線偏波に変換され、固定部側では直線偏波を何ら問題なく受信できる。固定部側の通信部に円偏波プローブが設けられ、可動部側の通信部に直線偏波プローブが設けられている場合についても同様に考えればよい。
3)固定部と可動部の両通信部の伝送路結合部に直線偏波用のアンテナ(直線偏波プローブ)を使用する。この場合は、無線信号伝送路については、導波管構造とし、円偏波と直線偏波を変換する偏波変換部を偶数段設ける。つまり、直線偏波を円偏波に変換する第1の偏波変換部と第1の偏波変換部で変換された円偏波を直線偏波に変換(戻す)する第2の偏波変換部を設ける。この関係があればよいので、第1の偏波変換部と第2の偏波変換部の対が複数組あってもよい。固定部から可動部への伝送の場合、固定部側の通信部の直線偏波プローブから直線偏波で無線信号伝送路に送信される。その直線偏波は無線信号伝送路(導波管)に設けられている第1の偏波変換部によって円偏波に変換される。この変換された円偏波がさらに無線信号伝送路(導波管)に設けられている第2の偏波変換部によって直線偏波に変換される(戻される)。この第2の偏波変換部によって変換された直線偏波が、無線信号伝送路を伝搬して、可動部側の通信部の直線偏波プローブに到達する。従って、可動部が90度以上に亘って回転する場合であっても、一方の通信部から無線信号伝送路を伝搬してきた直線偏波が第1の偏波変換部により何ら問題なく円偏波に変換され、さらに、第2の偏波変換部により何ら問題なく直線偏波に変換され、他方の通信部の直線偏波プローブで直線偏波を何ら問題なく受信できる。
無線信号伝送路内は、TM01モードで無線伝送してもよい。この場合、TM01モードで無線信号伝送路に電波を入射するアンテナ(プローブ)を無線信号伝送路の送信部側の端部の伝送路結合部に設け、又、無線信号伝送路を伝搬したTM01モードの電波を受信するプローブを受信部側の端部の伝送路結合部に設けてもよい。あるいは、無線信号伝送路の送信部側の端部には、無線信号をTM01モード以外(例えばTE11モード)で無線信号伝送路に送信する送信側の伝送路結合部を設け、無線信号伝送路の受信部側の端部には、無線信号伝送路からのTM01モード以外(例えばTE11モード)の無線信号とTM01モードの無線信号とを受信する受信側の伝送路結合部を設け、無線信号伝送路にはTM01モードを発生させるモード変換部を設けてもよい。TE11モードは偏波が存在するため、直線偏波では、ヒンジを回転させ、送受のアンテナが直交すると受信できなくなるが、TM01モードには偏波が存在しないためヒンジを回転させても受信できる。
無線信号伝送路内は、直交する2つの偏波で無線伝送することにより、信号の多重通信を行なってもよい。信号の多重通信としては、2つの信号を同一方向に伝送する態様と、双方向通信を行なう態様とがある。この場合、伝送路結合部に円偏波プローブを使用するか、伝送路結合部に直偏波プローブを使用しつつ無線信号伝送路に偏波変換部を使用するかに拘わらず、送受信間では、第1の伝送対象の信号を右旋円偏波の無線信号にして無線信号伝送路(特に第1の導波管と第2の導波管との間)を介して伝送するとともに、第2の伝送対象の信号を左旋円偏波の無線信号にして無線信号伝送路(特に第1の導波管と第2の導波管との間)を介して伝送する。
時分割多重又は周波数分割多重により信号の多重通信を行なってもよい。信号の多重通信としては、複数の信号を同一方向に伝送する態様と、双方向通信を行なう態様とがある。例えば、時分割多重で送受信を切り替えることで半二重の双方向通信を行なう。この場合、送信側と受信側のそれぞれの信号処理部は、送受信タイミングを時分割で切り替える切替部を有し、1系統の無線信号伝送路を使用して半二重による双方向の伝送を行なう。周波数分割多重で同時送受信を行なう全二重の双方向通信を行なってもよい。この場合、送信側と受信側は、送信の無線信号の周波数と受信の無線信号の周波数を異ならせ、1系統の無線信号伝送路を使用して全二重による双方向の伝送を行なう。時分割多重で複数系統の信号を切り替えて信号伝送を行なってもよい。この場合、送信側には複数の伝送対象の信号を時分割処理により1系統に纏めて伝送を行なうための多重化処理部を設け、受信側には無線信号伝送路を介して受け取った1系統の無線信号を各系統に分ける単一化処理部を設ける。周波数分割多重で複数系統の信号を同時伝送してもよい。この場合、送信側には複数の伝送対象の信号に関して無線信号の周波数をそれぞれ異ならせて1系統の無線信号伝送路で伝送を行なうための多重化処理部を設け、受信側の信号処理部には無線信号伝送路を介して受け取った1系統の無線信号を各系統に分ける単一化処理部を設ける。
好ましくは、送信部あるいは受信部と対応する信号処理部は同一基板に配置され対応する筐体内に配置されているとよい。即ち、送信側の信号処理部と送信部が第1の基板に配置されて第1の筐体内に設けられており、受信側の信号処理部と受信部が第2の基板に配置されて第2の筐体内に設けられているとよい。
好ましくは、送信部と受信部との間の無線信号伝送路の伝送特性が既知であるものとする。そして、送信部の前段の送信側の信号処理部及び受信部の後段の受信側の信号処理部の少なくとも一方について、予め定められた信号処理用の設定値を信号処理部に入力する設定値処理部を備えるとよい。例えば、1つの筐体内の送信部と受信部の配置位置が変化しない場合(機器内通信の場合)や、送信部(及び送信側の信号処理部)と受信部(及び受信側の信号処理部)のそれぞれが各別の筐体内に配置される場合でも使用状態のときの送信部と受信部の配置位置が予め定められた状態となる場合(比較的近距離の機器間の無線伝送の場合)のように、送受信間の伝送条件が実質的に変化しない(つまり固定である)環境下においては、送受信間の伝送特性を予め知ることができる。
送受信間の伝送条件が実質的に変化しない(つまり固定である)環境下においては、信号処理部の動作を規定する設定値を固定値として扱っても、つまり、パラメータ設定を固定にしても、信号処理部を不都合なく動作させることができる。信号処理用の設定値を予め定められた値(つまり固定値)にすることでパラメータ設定を動的に変化させずに済むので、パラメータ演算回路を削減できるし、消費電力を削減することもできる。機器内や比較的近距離の機器間の無線伝送においては通信環境が固定されるため、通信環境に依存する各種回路パラメータを予め決定することができるし、伝送条件が固定である環境下においては、信号処理部の動作を規定する設定値を固定値として扱っても、つまり、パラメータ設定を固定にしても、信号処理部を不都合なく動作させることができる。例えば、工場出荷時に最適なパラメータを求めておき、パラメータを装置内部に保持しておくことで、パラメータ演算回路の削減や消費電力の削減を行なうことができる。信号処理のパラメータ設定としては種々のものがある。例えば、信号増幅回路(振幅調整部)のゲイン設定(信号振幅設定)や位相調整量の設定や周波数特性の設定等もある。ゲイン設定は、送信電力設定や復調機能部に入力される受信レベル設定や自動利得制御(AGC:Automatic Gain Control)等に利用されるし、位相調整量の設定は、搬送信号やクロックを別送する系で送信信号の遅延量に合わせて位相を調整する場合に利用されるし、周波数特性の設定は、送信側で予め低域周波数成分や高域周波数成分の振幅を強調する場合に利用される。
本発明の第2の態様に係るヒンジ構造体と対応する本実施形態の構成においては、電源供給もヒンジ構造体の連結部に、第1の筐体と第2の筐体との間で電力を無線又はスリップリング機構で伝送する電力伝送部を設けるとよい。無線で電力伝送を行なう場合には、電磁コイルを用いない方式(電波受信型)と、電磁コイルを用いる方式(電磁誘導型及び共鳴型)の内の電磁コイルを用いる方式を採用すると好ましい。
尚、第1の筐体と第2の筐体とを無線信号(電波)の伝達が可能な誘電体素材で構成すれば、第1の筐体と第2の筐体とを、無線信号伝送路として利用して、送受信間で電波の周波数帯で無線伝送を行なうこともできる。この場合、第1の筐体と第2の筐体の全体を無線信号(電波)の伝達に好適な誘電体素材で構成することは必須ではなく、送受信間を結ぶ経路の部分のみ無線信号(電波)の伝達に好適な誘電体素材で構成してもよい。つまり、筐体を構成する通常の誘電体素材中の送受信間を結ぶ経路の部分のみに、無線信号(電波)の伝達に好適な誘電体素材を埋め込んでもよい。
[電子機器]
本発明の第2の態様に係る電子機器と対応する本実施形態の構成においては、いわゆる機器内の信号伝送を行なう第1例の電子機器としてもよいし、いわゆる機器間の信号伝送を行なう第2例の電子機器としてもよい。例えば、第1例の電子機器は、いわゆる機器内の信号伝送に関するものであり、伝送対象信号を無線信号として送信する第1の通信部(送信部と送信側の信号処理部を備える)と、第1の通信部(の送信部)から送信された無線信号を受信する第2の通信部(受信部と受信側の信号処理部を備える)、及び、送信部と受信部との間で無線伝送を可能にする無線信号伝送路が1つの筐体内における予め定められた箇所に配置された構成とする。
第2例の電子機器は、いわゆる機器間の信号伝送に関するものであり、伝送対象信号を無線信号として送信する第1の通信部(送信部と送信側の信号処理部を備える)が1つの筐体内における予め定められた送信箇所に配置されている第1の電子機器と、第1の通信部(の送信部)から送信された無線信号を受信する第2の通信部(受信部と受信側の信号処理部を備える)が1つの筐体内における予め定められた受信箇所に配置されている第2の電子機器とを備えて、1つの電子機器の全体が構成されている。そして、第1の電子機器と第2の電子機器が定められた位置に配置されたとき、第1の通信部(の送信部)と第2の通信部(の受信部)との間に無線伝送を可能にする無線信号伝送路が形成されるようになっている。
つまり、本発明の第2の態様に係る電子機器と対応する本実施形態の構成においては、各部がひとつの筐体内に収容された状態の装置構成で1つの電子機器とすることもできるし、複数の装置(電子機器)の組合せで1つの電子機器の全体が構成されることもある。本実施形態の信号伝送装置は、第1の筐体と第2の筐体との接続部分にヒンジ構造を利用した連結部をなすヒンジ構造体に利用される。又、ヒンジ構造体は、例えば、携帯電話機、ノートパソコン(ノート型パーソナルコンピュータ)、ビデオムービー、電子ブック、電子辞書、電子手帳、携帯型のゲーム機器等のように、折畳み自在に連結部を介して連結して構成されるような折畳み型の電子機器に適用することができる。
以下で説明する本実施形態の信号伝送装置では、ミリ波帯(波長が1〜10ミリメートル)の搬送周波数を主に使用するものとして説明するが、ミリ波帯に限らず、サブミリ波帯やセンチ波帯等、ミリ波帯近傍の搬送周波数を使用する場合にも適用可能である。
通信装置を構成する場合、送信側(つまり第1の通信部)単独の場合と、受信側(つまり第1の通信部)単独の場合と、送信側と受信側の双方を有する場合とがある。送信側と受信側は無線信号伝送路(例えばミリ波信号伝送路)を介して結合されミリ波帯で信号伝送を行なうように構成される。伝送対象の信号を広帯域伝送に適したミリ波帯域に周波数変換して伝送する。但し、如何なる場合でも、第1の通信部と受信部の組(対)で、信号伝送装置を構成する。周波数分割多重によるマルチチャネル伝送を行なう場合には、第1の通信部と受信部の組(対)を複数設ける。
そして、比較的近距離に配置された第1の通信部と受信部の間では、伝送対象の信号をミリ波信号に変換してから、このミリ波信号をミリ波信号伝送路を介して伝送する。本実施形態の「無線伝送」とは、伝送対象の信号を一般的な電気配線(単純なワイヤー配線)ではなく無線(電波:この例ではミリ波)で伝送することを意味する。
「比較的近距離」とは、放送や一般的な無線通信で使用される野外(屋外)での通信装置間の距離に比べて距離が短いことを意味し、伝送範囲が閉じられた空間として実質的に特定できる程度のものであればよい。「閉じられた空間」とは、その空間内部から外部への電波の漏れが少なく、逆に、外部から空間内部への電波の到来(侵入)が少ない状態の空間を意味し、典型的にはその空間全体が電波に対して遮蔽効果を持つ筐体(ケース)で囲まれた状態である。例えば、1つの電子機器の筐体内での基板間通信や同一基板上でのチップ間通信や、一方の電子機器に他方の電子機器が装着された状態のように複数の電子機器が一体となった状態での機器間の通信が該当する。「一体」は、装着によって両電子機器の連結部分にヒンジ構造体が構成されるように完全に接触した状態である。
以下では、1つの電子機器の筐体内での信号伝送を機器内信号伝送或いは筐体内信号伝送と称し、複数の電子機器が装着されて一体となった状態での信号伝送を機器間信号伝送と称する。機器内信号伝送の場合は、送信側の通信装置(通信部:送信部)と受信側の通信装置(通信部:受信部)が同一筐体内に収容され、通信部(送信部と受信部)間に無線信号伝送路が形成された信号伝送装置が電子機器そのものとなり得る。一方、機器間信号伝送の場合、送信側の通信装置(通信部:送信部)と受信側の通信装置(通信部:受信部)がそれぞれ異なる電子機器の筐体内に収容され、両電子機器が定められた位置に配置され一体となったときに両電子機器内の通信部(送信部と受信部)間に無線信号伝送路が形成されて信号伝送装置が構築される。
無線信号伝送路を挟んで設けられる各通信装置においては、送信系統と受信系統が対となって組み合わされて配置される。各通信装置に送信系統と受信系統を併存させることで双方向通信ができる。各通信装置に送信系統と受信系統を併存させる場合、一方の通信装置と他方の通信装置との間の信号伝送は片方向(一方向)のものでもよいし双方向のものでもよい。例えば、第1の通信装置が送信側となり第2の通信装置が受信側となる場合には、第1の通信装置に送信機能をなす第1の通信部が配置され第2の通信装置に受信機能をなす受信部が配置される。第2の通信装置が送信側となり第1の通信装置が受信側となる場合には、第2の通信装置に送信機能をなす第1の通信部が配置され第1の通信装置に受信機能をなす受信部が配置される。
第1の通信部は、例えば、伝送対象の信号を信号処理してミリ波帯の電気信号を生成する送信側の信号生成部(伝送対象の電気信号をミリ波帯の電気信号に変換する信号変換部)と、ミリ波帯の無線信号を伝送する無線信号伝送路(例えばミリ波信号伝送路)に送信側の信号生成部で生成されたミリ波帯の電気信号を結合させる送信側の信号結合部を送信部に備えるものとする。好ましくは、送信側の信号生成部は、伝送対象の信号を生成する機能部と一体であるのがよい。
例えば、送信側の信号生成部は変調回路を有し、変調回路が伝送対象の信号(ベースバンド信号)を変調する。送信側の信号生成部は変調回路によって変調された後の信号を周波数変換してミリ波帯の電気信号を生成する。原理的には、伝送対象の信号をダイレクトにミリ波帯の電気信号に変換してもよい。送信側の信号結合部は、送信側の信号生成部によって生成されたミリ波帯の電気信号を無線信号(電磁波、電波)に変換して無線信号伝送路としてのミリ波信号伝送路に供給する。
第2の通信部は例えば、無線信号伝送路としてのミリ波信号伝送路を介して伝送されてきたミリ波帯の無線信号を受信し電気信号に変換する受信側の信号結合部を受信部に備えるとともに、受信側の信号結合部により受信され電気信号に変換されたミリ波帯の電気信号(入力信号)を信号処理して通常の電気信号(伝送対象の信号、ベースバンド信号)を生成(復元、再生)する受信側の信号生成部(ミリ波の信号を伝送対象の電気信号に変換する信号変換部)を備えるものとする。好ましくは、受信側の信号生成部は、伝送対象の信号を受け取る機能部と一体であるのがよい。例えば、受信側の信号生成部は復調回路を有し、ミリ波帯の電気信号を周波数変換して出力信号を生成し、その後、復調回路が出力信号を復調することで伝送対象の信号を生成する。原理的には、ミリ波帯の電気信号からダイレクトに伝送対象の信号に変換してもよい。
つまり、信号インタフェースをとるに当たり、伝送対象の信号に関して、無線信号により接点レスやケーブルレスで伝送する(電気配線での伝送でない)。好ましくは、少なくとも信号伝送(特に高速伝送や大容量伝送が要求される映像信号や高速のクロック信号等)に関しては、ミリ波帯等の無線信号により伝送する。要するに、従前は電気配線によって行なわれていた信号伝送を本実施例では無線信号(電波)により行なう。ミリ波帯等の無線信号で信号伝送を行なうことで、ギガビット毎秒〔Gbps〕オーダーの高レートの信号伝送を実現することができるし、無線信号の及ぶ範囲を容易に制限でき、この性質に起因する効果も得られる。
ここで、各信号結合部は、第1の通信部と受信部が無線信号伝送路(例えばミリ波信号伝送路)を介して無線信号(ここではミリ波帯の無線信号)が伝送可能となるようにするものであればよい。例えばアンテナ構造(アンテナ結合部)を備えるものとしてもよいし、アンテナ構造を具備せずに結合をとるものでもよい。「ミリ波の信号を伝送するミリ波信号伝送路」等の無線信号伝送路は、空気(いわゆる自由空間)であってもよいが、好ましくは、無線信号(電磁波、電波)を伝送路中に閉じ込めつつ無線信号を伝送させる構造(無線信号閉込め構造、例えばミリ波閉込め構造)を持つものがよい。無線信号閉込め構造を積極的に利用することで、例えば電気配線のように無線信号伝送路の引回しを任意に確定することができる。このような無線信号閉込め構造のものとしては、例えば、典型的にはいわゆる導波管が該当するが、これに限らない。例えば、無線信号を伝送可能な誘電体素材で構成されたもの(誘電体伝送路や無線信号誘電体内伝送路と称する)や、伝送路を構成し、且つ、無線信号の外部放射を抑える遮蔽材が伝送路を囲むように設けられその遮蔽材の内部が中空の中空導波路がよい。誘電体素材や遮蔽材に柔軟性を持たせることで、ヒンジ構造体の空洞内において自由に無線信号伝送路の引回しが可能となる。空気(いわゆる自由空間)の場合、各信号結合部はアンテナ構造をとることになり、そのアンテナ構造によって近距離の空間中を信号伝送することになる。一方、誘電体素材で構成されたものとする場合は、アンテナ構造をとることもできるが、そのことは必須でない。
[電気配線による信号伝送と無線伝送との対比]
電気配線を介して信号伝送を行なう信号伝送では、次のような問題がある。
i)伝送データの大容量・高速化が求められるが、電気配線の伝送速度・伝送容量には限界がある。
ii)伝送データの高速化の問題に対応するため、配線数を増やして、信号の並列化により一信号線当たりの伝送速度を落とす手法がある。しかしながら、この手法では、入出力端子の増大に繋がってしまう。その結果、プリント基板やケーブル配線の複雑化、コネクタ部や電気的インタフェースの物理サイズの増大等が求められ、それらの形状が複雑化し、これらの信頼性が低下し、コストが増大する等の問題が起こる。
iii)映画映像やコンピュータ画像等の情報量の膨大化に伴い、ベースバンド信号の帯域が広くなるに従って、EMC(電磁環境適合性)の問題がより顕在化してくる。例えば、電気配線を用いた場合は、配線がアンテナとなって、アンテナの同調周波数に対応した信号が干渉される。又、配線のインピーダンスの不整合等による反射や共振によるものも不要輻射の原因となる。このような問題を対策するために、電子機器の構成が複雑化する。
iv)EMCの他に、反射があると受信側でシンボル間での干渉による伝送エラーや妨害の飛び込みによる伝送エラーも問題となってくる。
これに対して、電気配線ではなく無線(例えばミリ波帯を使用)で信号伝送を行なう場合、配線形状やコネクタの位置を気にする必要がないため、レイアウトに対する制限があまり発生しない。ミリ波による信号伝送に置き換えた信号については配線や端子を割愛できるので、EMCの問題から解消される。一般に、通信装置内部で他にミリ波帯の周波数を使用している機能部は存在しないため、EMCの対策が容易に実現できる。送信側の通信装置と受信側の通信装置を近接した状態での無線伝送となり、固定位置間や既知の位置関係の信号伝送であるため、次のような利点が得られる。
1)送信側と受信側の間の伝搬チャネル(導波構造)を適正に設計することが容易である。
2)送信側と受信側を封止する伝送路結合部の誘電体構造と伝搬チャネル(ミリ波信号伝送路の導波構造)を併せて設計することで、自由空間伝送より、信頼性の高い良好な伝送が可能になる。
3)無線伝送を管理するコントローラの制御も一般の無線通信のように動的にアダプティブに頻繁に行なう必要はないため、制御によるオーバーヘッドを一般の無線通信に比べて小さくすることができる。その結果、制御回路や演算回路等で使用する設定値 (いわゆるパラメータ)を定数(いわゆる固定値)にすることができ、小型、低消費電力、高速化が可能になる。例えば、製造時や設計時に無線伝送特性を校正し、個体のばらつき等を把握すれば、そのデータを参照できるので、信号処理部の動作を規定する設定値は、プリセットや静的な制御にできる。その設定値は信号処理部の動作を概ね適正に規定するから、簡易な構成かつ低消費電力でありながら、高品位の通信が可能になる。
又、波長の短いミリ波帯での無線通信にすることで、次のような利点が得られる。
a)ミリ波通信は通信帯域を広く取れるため、データレートを大きくとることが簡単にできる。
b)伝送に使う周波数が他のベースバンド信号処理の周波数から離すことができ、ミリ波とベースバンド信号の周波数の干渉が起こり難い。
c)ミリ波帯は波長が短いため、波長に応じてきまるアンテナや導波構造を小さくできる。加えて、距離減衰が大きく回折も少ないため電磁シールドが行ない易い。
d)通常の野外での無線通信では、搬送波の安定度については、干渉等を防ぐため、厳しい規制がある。そのような安定度の高い搬送波を実現するためには、高い安定度の外部周波数基準部品と逓倍回路やPLL(位相同期ループ回路)等が用いられ、回路規模が大きくなる。しかしながら、ミリ波は(特に固定位置間や既知の位置関係の信号伝送との併用時は)、容易に遮蔽でき、外部に漏れないようにできる。安定度を緩めた搬送波で伝送された信号を受信側で小さい回路で復調するのには、注入同期方式を採用するのが好適である。
例えば、比較的近距離(例えば10数センチ以内)に配置されている電子機器間や電子機器内での高速信号伝送を実現する手法として、例えばLVDS(Low Voltage Differential Signaling)が知られている。しかしながら、最近のさらなる伝送データの大容量高速化に伴い、消費電力の増加、反射等による信号歪みの影響の増加、不要輻射の増加(いわゆるEMIの問題)、等が問題となる。例えば、映像信号(撮像信号を含む)やコンピュータ画像等の信号を機器内や機器間で高速(リアルタイム)に伝送する場合にLVDSでは限界に達してきている。
データの高速伝送に対応するため、配線数を増やして、信号の並列化により一信号線当たりの伝送速度を落としてもよい。しかしながら、この対処では、入出力端子の増大に繋がってしまう。その結果、プリント基板やケーブル配線の複雑化や半導体チップサイズの拡大等が求められる。又、高速・大容量のデータを配線で引き回すことでいわゆる電磁界障害が問題となる。
LVDSや配線数を増やす手法における問題は何れも、電気配線により信号を伝送することに起因している。そこで、電気配線により信号を伝送することに起因する問題を解決する手法として、電気配線を無線化して伝送する手法(特に電波で信号伝送を行なう手法)を採ってもよい。電気配線を無線化して伝送する手法としては例えば、筐体内の信号伝送を無線で行なうとともに、UWB(Ultra Wide Band )通信方式を適用してもよいし(第1の手法と記す)、波長の短い(1〜10ミリメートル)ミリ波帯の搬送周波数を使用してもよい(第2の手法と記す)。しかしながら、第1の手法のUWB通信方式では、搬送周波数が低く、例えば映像信号を伝送するような高速通信に向かないし、アンテナが大きくなる等、サイズ上の問題がある。さらに、伝送に使う周波数が他のベースバンド信号処理の周波数に近いため、無線信号とベースバンド信号との間で干渉が起こり易いという問題点もある。又、搬送周波数が低い場合は、機器内の駆動系ノイズの影響を受け易く、その対処が必要になる。これに対して、第2の手法のように、より波長の短いミリ波帯の搬送周波数を使用すると、アンテナサイズや干渉の問題を解決し得る。
ここでは、ミリ波帯で無線通信を行なう場合で説明したが、その適用範囲はミリ波帯で通信を行なうものに限定されない。ミリ波帯を下回る周波数帯(センチ波帯)や、逆にミリ波帯を超える周波数帯(サブミリ波帯)での通信を適用してもよい。ただし、筐体内信号伝送や機器間信号伝送においては、過度に波長が長くも短くもないミリ波帯を主に使用するのが効果的である。
以下、本実施例の信号伝送装置やヒンジ構造体や電子機器について具体的に説明する。最も好適な例として、多くの機能部が半導体集積回路(チップ、例えばCMOSのIC)に形成されている例で説明するが、このことは必須でない。
<通信処理系統:第1例>
図1は、第1例の信号伝送装置を説明する図であり、特に、第1例の信号伝送装置の信号インタフェースを機能構成面から示している。
[機能構成]
図1に示すように、第1例の信号伝送装置1Aは、第1の無線機器の一例である第1通信装置100Aと第2の無線機器の一例である第2通信装置200Aが無線信号伝送路9を介して結合されミリ波帯を主とする無線信号を利用して信号伝送を行なうように構成されている。図では、第1通信装置100A側に送信系統を設け、第2通信装置200Aに受信系統を設けた場合で示している。
第1通信装置100Aにはミリ波帯送信に対応した半導体チップ103が設けられ、第2通信装置200Aにはミリ波帯受信に対応した半導体チップ203が設けられている。本実施形態では、ミリ波帯での伝送対象となる信号を、高速性や大容量性が求められる信号のみとし、その他の低速・小容量で十分なものや電源等直流と見なせる信号に関してはミリ波信号への変換対象としない。これらミリ波信号への変換対象としない信号(電源を含む)については、フレキシブルプリント基板(FPC)やケーブル等の電気配線を使用する、或いはスリップリング等の機構的な接続を使用する等、従前と同様の手法で基板間の信号の接続をとる。ミリ波に変換する前の元の伝送対象の電気信号を纏めてベースバンド信号と称する。高速性や大容量性が求められる信号の他に、その他の低速・小容量で十分なものをミリ波で伝送してもよい。
[第1通信装置]
第1通信装置100Aは、基板102上に、ミリ波帯送信に対応した半導体チップ103と伝送路結合部108が搭載されている。半導体チップ103は、LSI機能部104と信号生成部107(ミリ波信号生成部)を一体化したLSI(Large Scale Integrated Circuit)である。
半導体チップ103は伝送路結合部108と接続される。伝送路結合部108は、電気信号を無線信号に変換して無線信号伝送路9に送信する送信部の一例であり、例えば、アンテナ結合部やアンテナ端子やマイクロストリップ線路やアンテナ等を具備するアンテナ構造が適用される。伝送路結合部108と無線信号伝送路9との結合箇所が送信箇所である。
LSI機能部104は、第1通信装置100Aの主要なアプリケーション制御を司るもので、例えば、相手方に送信したい各種の信号を処理する回路が含まれる。
信号生成部107(電気信号変換部)は、LSI機能部104からの信号をミリ波信号に変換し、無線信号伝送路9を介した信号送信制御を行なうための送信側信号生成部110を有する。送信側信号生成部110と伝送路結合部108で送信系統(送信部:送信側の通信部)が構成される。
送信側信号生成部110は、入力信号を信号処理してミリ波の信号を生成するために、多重化処理部113、パラレルシリアル変換部114、変調部115、周波数変換部116、増幅部117を有する。増幅部117は、入力信号の大きさを調整して出力する振幅調整部の一例である。変調部115と周波数変換部116は纏めていわゆるダイレクトコンバーション方式のものにしてもよい。
多重化処理部113は、LSI機能部104からの信号の内で、ミリ波帯での通信の対象となる信号が複数種(N1とする)ある場合に、時分割多重、周波数分割多重、符号分割多重等の多重化処理を行なうことで、複数種の信号を1系統の信号に纏める。例えば、高速性や大容量性が求められる複数種の信号をミリ波での伝送の対象として、1系統の信号に纏める。
パラレルシリアル変換部114は、パラレルの信号をシリアルのデータ信号に変換して変調部115に供給する。変調部115は、伝送対象信号を変調して周波数変換部116に供給する。パラレルシリアル変換部114は、本実施例を適用しない場合に、パラレル伝送用の複数の信号を使用するパラレルインタフェース仕様の場合に備えられ、シリアルインタフェース仕様の場合は不要である。
変調部115としては、基本的には、振幅・周波数・位相の少なくとも1つを伝送対象信号で変調するものであればよく、これらの任意の組合せの方式も採用し得る。例えば、アナログ変調方式であれば、例えば、振幅変調(AM:Amplitude Modulation)とベクトル変調がある。ベクトル変調として、周波数変調(FM:Frequency Modulation)と位相変調(PM:Phase Modulation)がある。デジタル変調方式であれば、例えば、振幅遷移変調(ASK:Amplitude shift keying)、周波数遷移変調(FSK:Frequency Shift Keying)、位相遷移変調(PSK:Phase Shift Keying)、振幅と位相を変調する振幅位相変調(APSK:Amplitude Phase Shift Keying)がある。振幅位相変調としては直交振幅変調(QAM:Quadrature Amplitude Modulation)が代表的である。
周波数変換部116は、変調部115によって変調された後の伝送対象信号を周波数変換してミリ波の電気信号を生成して増幅部117に供給する。ミリ波の電気信号とは、概ね30〜300ギガヘルツ〔GHz〕の範囲のある周波数の電気信号をいう。「概ね」と称したのはミリ波通信による効果が得られる程度の周波数であればよく、下限は30ギガヘルツに限定されず、上限は300ギガヘルツに限定されないことに基づく。
周波数変換部116としては様々な回路構成を採り得るが、例えば、周波数混合回路(ミキサー回路)と局部発振回路とを備えた構成を採用すればよい。局部発振回路は、変調に用いる搬送波(キャリア信号、基準搬送波)を生成する。周波数混合回路は、パラレルシリアル変換部114からの信号で局部発振回路が発生するミリ波帯の搬送波と乗算(変調)してミリ波帯の伝送信号を生成して増幅部117に供給する。
増幅部117は、周波数変換後のミリ波の電気信号を増幅して伝送路結合部108に供給する。増幅部117には図示しないアンテナ端子を介して双方向の伝送路結合部108に接続される。
伝送路結合部108は、送信側信号生成部110によって生成されたミリ波の信号を無線信号伝送路9に送信する。伝送路結合部108は、アンテナ結合部で構成される。アンテナ結合部は伝送路結合部108(信号結合部)の一例やその一部を構成する。アンテナ結合部とは、狭義的には半導体チップ内の電子回路と、チップ内又はチップ外に配置されるアンテナを結合する部分をいい、広義的には、半導体チップと無線信号伝送路9を信号結合する部分をいう。例えば、アンテナ結合部は、少なくともアンテナ構造を備える。アンテナ構造は、無線信号伝送路9との結合部における構造をいい、ミリ波帯の電気信号を電磁波(電波)に変換して無線信号伝送路9に結合させるものであればよく、アンテナそのもののみを意味するものではない。
無線信号伝送路9は、自由空間伝送路として、例えば筐体内の空間を伝搬する構成にしてもよい。又、好ましくは、導波管、伝送線路、誘電体線路、誘電体内等の導波構造で構成し、ミリ波帯域の電磁波を伝送路に閉じ込める構成にして、効率よく伝送させる特性を有するものとするのが望ましい。例えば、一定範囲の比誘電率と一定範囲の誘電正接を持つ誘電体素材を含んで構成された誘電体伝送路9Aにするとよい。例えば、筐体内の全体に誘電体素材を充填することで、伝送路結合部108と伝送路結合部208の間には、自由空間伝送路ではなく誘電体伝送路9Aが配される。又、伝送路結合部108のアンテナと伝送路結合部208のアンテナの間を誘電体素材で構成されたある線径を持つ線状部材である誘電体線路で接続することで誘電体伝送路9Aを構成してもよい。ミリ波信号を伝送路に閉じ込める構成の無線信号伝送路9としては、誘電体伝送路9Aの他に、伝送路の周囲が遮蔽材で囲まれその内部が中空の中空導波路としてもよい。
[第2通信装置]
第2通信装置200Aは、基板202上に、ミリ波帯受信に対応した半導体チップ203と伝送路結合部208が搭載されている。半導体チップ203は、LSI機能部204と信号生成部207(ミリ波信号生成部)を一体化したLSIである。図示しないが、第1通信装置100Aと同様に、LSI機能部204と信号生成部207を一体化しない構成にしてもよい。
半導体チップ203は伝送路結合部108と同様の伝送路結合部208と接続される。伝送路結合部208は、無線信号伝送路9を介して伝送された無線信号を電気信号に変換する受信部の一例であり、伝送路結合部108と同様のものが採用され、無線信号伝送路9からミリ波帯の無線信号を受信し電気信号に変換して受信側信号生成部220に出力する。伝送路結合部208と無線信号伝送路9との結合箇所が受信箇所である。
信号生成部207(電気信号変換部)は、無線信号伝送路9を介した信号受信制御を行なうための受信側信号生成部220を有する。受信側信号生成部220と伝送路結合部208で受信系統(受信部:受信側の通信部)が構成される。
受信側信号生成部220は、伝送路結合部208によって受信したミリ波の電気信号を信号処理して出力信号を生成するために、増幅部224、周波数変換部225、復調部226、シリアルパラレル変換部227、単一化処理部228を有する。増幅部224は、入力信号の大きさを調整して出力する振幅調整部の一例である。周波数変換部225と復調部226は纏めていわゆるダイレクトコンバーション方式のものにしてもよい。
伝送路結合部208には受信側信号生成部220が接続される。受信側の増幅部224は、伝送路結合部208に接続され、アンテナによって受信された後のミリ波の電気信号を増幅して周波数変換部225に供給する。周波数変換部225は、増幅後のミリ波の電気信号を周波数変換して周波数変換後の信号を復調部226に供給する。復調部226は、周波数変換後の信号を復調してベースバンドの信号を取得しシリアルパラレル変換部227に供給する。
シリアルパラレル変換部227は、シリアルの受信データをパラレルの出力データに変換して単一化処理部228に供給する。シリアルパラレル変換部227は、パラレルシリアル変換部114と同様に、本実施例を適用しない場合に、パラレル伝送用の複数の信号を使用するパラレルインタフェース仕様の場合に備えられる。第1通信装置100Aと第2通信装置200Aの間の元々の信号伝送がシリアル形式の場合は、パラレルシリアル変換部114とシリアルパラレル変換部227を設けなくてもよい。
第1通信装置100Aと第2通信装置200Aの間の元々の信号伝送がパラレル形式の場合には、入力信号をパラレルシリアル変換して半導体チップ203側へ伝送し、又半導体チップ203側からの受信信号をシリアルパラレル変換することにより、ミリ波変換対象の信号数が削減される。
単一化処理部228は、多重化処理部113と対応するもので、1系統に纏められている信号を複数種の信号_@(@は1〜N)に分離する。例えば、1系統の信号に纏められている複数本のデータ信号を各別に分離してLSI機能部204に供給する。LSI機能部204は、第2通信装置200Aの主要なアプリケーション制御を司るもので、例えば、相手方から受信した種々の信号を処理する回路が含まれる。
後述するヒンジ構造体1001を電子機器内に組み込まずにヒンジ構造体1001を具備したモジュールとして流通させる場合には、例えば図中において、第1通信装置100Aについては、LSI機能部104と信号生成部107の間に接続IF部109(IF:インタフェース)を設けて、その部分で基板102を2つに分け(図中の破線を参照)、LSI機能部104側の基板と信号生成部107、伝送路結合部108側の基板を接続IF部209で接続すればよい。可動部1004側についても、LSI機能部204を信号生成部207、伝送路結合部208側と分離してもよい。すなわち、第2通信装置200については、LSI機能部204と信号生成部207の間に接続IF部209を設けて、その部分で基板202を2つに分け(図中の破線を参照)、LSI機能部204側の基板と信号生成部207、伝送路結合部208側の基板を接続IF部209で接続するようにすればよい。接続IF部109や接続IF部209としては、例えばワイヤーハーネスを使用する。
図示しないが、本実施例の第1通信装置100Aや第2通信装置200Aには、予め定められた信号処理用の設定値を、第1通信装置100Aや第2通信装置200Aを構成する各機能部(特に信号処理部として機能するもの)に入力する設定値処理部を設けてもよい。設定値処理部の構成としては、例えば、設定値決定部と、設定値記憶部と、動作制御部とを具備したものとする。設定値決定部は、半導体チップ103や半導体チップ203の各機能部の動作(換言すると第1通信装置100Aや第2通信装置200Aの全体動作)を指定するための設定値(変数、パラメータ)を決定する。設定値を決定する処理は、例えば、工場での製品出荷時に行なう。設定値記憶部は、設定値決定部により決定された設定値を記憶する。動作制御部は、設定値記憶部から読み出した設定値に基づいて半導体チップ103の各機能部(この例では、変調部115、周波数変換部116、増幅部117等)や半導体チップ203の各機能部(この例では、増幅部224、周波数変換部225、復調部226等)を動作させる。
設定値処理部は、半導体チップ103が搭載されている基板102上や半導体チップ203が搭載されている基板202上に備えてもよいし、基板102や基板202とは別の基板に搭載されていてもよい。又、設定値処理部は、半導体チップ103や半導体チップ203の外部に備えてもよいが、半導体チップ103や半導体チップ203に内蔵してもよく、この場合は、設定値処理部は制御対象となる各機能部(半導体チップ103では変調部115、周波数変換部116、増幅部117、半導体チップ203では増幅部224、周波数変換部225、復調部226)が搭載されている基板102や基板202と同一の基板に搭載されることになる。
[双方向通信への対応]
信号生成部107と伝送路結合部108や信号生成部207と伝送路結合部208はデータの双方向性を持つ構成にすることで、双方向通信にも対応できる。例えば、信号生成部107や信号生成部207には、それぞれ受信側の信号生成部、送信側の信号生成部を設ける。伝送路結合部108や伝送路結合部208は、送信側と受信側に各別に設けてもよいが、送受信に兼用されるものとすることもできる。
ここで示す「双方向通信」は、ミリ波の伝送チャネルである無線信号伝送路9が1系統(一芯)の一芯双方向伝送となる。この実現には、時分割多重(TDD:Time Division Duplex)を適用する半二重方式、周波数分割多重(FDD:Frequency Division Duplex)等の何れをも採用し得る。
[接続と動作]
入力信号を周波数変換して信号伝送するという手法は、放送や無線通信で一般的に用いられている。これらの用途では、どこまで通信できるか(熱雑音に対してのS/Nの問題)、反射やマルチパスにどう対応するか、妨害や他チャンネルとの干渉をどう抑えるか等の問題に対応できるような比較的複雑な送信器や受信器等が用いられている。
これに対して、本実施形態で使用する信号生成部107と信号生成部207は、放送や無線通信で一般的に用いられる複雑な送信器や受信器等の使用周波数に比べて、より高い周波数帯のミリ波帯を主に使用するので、波長λが短いため、周波数の再利用がし易く、近傍に配置された多くのデバイス間での通信をするのに適したものが使用される。
本実施形態では、従来の電気配線を利用した信号インタフェースとは異なり、前述のようにミリ波帯で信号伝送を行なうことで高速性と大容量に柔軟に対応できるようにしている。例えば、高速性や大容量性が求められる信号のみをミリ波帯での通信の対象としており、装置構成によっては、第1通信装置100Aと第2通信装置200Aは、低速・小容量の信号用や電源供給用に、従前の電気配線によるインタフェース(端子・コネクタによる接続)を一部に備えることになる。
信号生成部107は、予め定められた信号処理を行なう信号処理部の一例であり、この例では、LSI機能部104から入力された入力信号を信号処理してミリ波の信号を生成する。信号生成部107は、例えば、マイクロストリップライン、ストリップライン、コプレーナライン、スロットライン等の伝送線路で伝送路結合部108に接続され、生成されたミリ波の信号が伝送路結合部108を介して無線信号伝送路9に電磁波(電波、無線信号)となって供給される。
伝送路結合部108は、アンテナ構造を有し、伝送されたミリ波の電気信号を電磁波に変換し、電磁波を送出する機能を有する。伝送路結合部108は無線信号伝送路9と結合されており、無線信号伝送路9の一方の端部に伝送路結合部108で変換された電磁波が供給される。無線信号伝送路9の他端には第2通信装置200A側の伝送路結合部208が結合されている。無線信号伝送路9を第1通信装置100A側の伝送路結合部108と第2通信装置200A側の伝送路結合部208の間に設けることにより、無線信号伝送路9にはミリ波帯を主とする電磁波が伝搬する。
無線信号伝送路9には第2通信装置200A側の伝送路結合部208が結合されている。伝送路結合部208は、無線信号伝送路9の他端に伝送された電磁波を受信し、ミリ波の信号に変換して信号生成部207(ベースバンド信号生成部)に供給する。信号生成部207は、予め定められた信号処理を行なう信号処理部の一例であり、この例では、変換されたミリ波の信号を信号処理して出力信号(ベースバンド信号)を生成しLSI機能部204へ供給する。
ここまでは第1通信装置100Aから第2通信装置200Aへの信号伝送の場合で説明したが、第1通信装置100Aと第2通信装置200Aをともに双方向通信へ対応した構成にすることで、第2通信装置200AのLSI機能部204からの信号を第1通信装置100Aへ伝送する場合も同様に考えればよく双方向にミリ波の信号を伝送できる。
<通信処理系統:第2例>
図2は、第2例の信号伝送装置を説明する図であり、特に、第2例の信号伝送装置の信号インタフェースを機能構成面から示している。
第2例の信号伝送装置1Bでは、第1例の信号伝送装置1A(接続IF部109や接続IF部209は割愛して示す)をベースに、パワー伝送を要する電源に関しても無線で伝送する。つまり、第2通信装置200B側で使用する電力を無線により第1通信装置100Bから供給する構成を追加している。
第1通信装置100Bは、第2通信装置200Bにて使用される電力を無線で供給する送電端末の一例である電力供給部174を備える。電力供給部174の構成については後述する。第2通信装置200Bは、第1通信装置100B側から無線で伝送されてきた電力を受け取る受電端末の一例である電力受取部278(電力受電装置)を備える。送電側の電力供給部174と受電側の電力受取部278とを纏めて電力回路と称し、電力供給部174と電力受取部278とにより第1通信装置100と第2通信装置200との間で電力を無線で伝送する電力伝送部(換言すると非接触電力伝送装置)が構成される。電力受取部278の構成については後述するが、何れの方式でも、電力受取部278は、第2通信装置200B側で使用する電源電圧を生成し、それを半導体チップ203等に供給する。機能構成的には、電力も無線で伝送する点が第1例と異なるだけであるので、その他の点については説明を割愛する。
電力給電装置(電力供給装置、送電端末)から電力受電装置(受電端末)に対して非接触で電力を伝送する方法が種々提案されている。非接触で電力を伝送する方法は、「非接触給電」、「ワイヤレス給電」、「ワイヤレス電力伝送」等と称される。非接触電力伝送の原理は、電磁エネルギを利用するものであり、放射型(電波受信型、電波収穫型)と非放射型に大別される。放射型は、さらにマイクロ波型とレーザ型に区別され、非放射型はさらに電磁誘導型と共鳴型(電磁共鳴型とも称する)に区別される。各方式の何れかを用いれば、電気配線や端子を介したインタフェースが完全に不要となり、ケーブルレスの装置構成にできる。電源を含む全ての信号を、第1通信装置100Bから第2通信装置200Bへ無線で伝送できる。
電波受信型は、電波のエネルギを利用するもので、電波を受信することで得られる交流波形を、整流回路により直流電圧に変換するものである。周波数帯によらず(例えばミリ波でもよい)電力を伝送できる利点がある。図示を割愛するが、電力を無線で供給する電力供給部(送信側)には、ある周波数帯の電波を送信する送信回路を設ける。電力供給部より無線で電力を受け取る電力受取部(受信側)には、受信した電波を整流する整流回路を設ける。送信電力にもよるが、受信電圧は小さく、整流回路に使用する整流ダイオードとしては順方向電圧ができるだけ小さなもの(例えばショットキーダイオード)を使用するのが好ましい。整流回路の前段に共振回路を構成して、電圧を大きくしてから整流するようにしてもよい。一般的な野外での使用における電波受信型においては送信電力の多くが電波として拡散するため電力伝送効率が低くなるが、伝送範囲を制限できる構成(例えば閉込め構造のミリ波信号伝送路)と組み合わせることで、その問題を解消できると考えられる。
電磁誘導型は、コイルの電磁結合と誘導起電力を利用する。図示を割愛するが、電力を無線で供給する電力供給部(送電側、1次側)には、1次コイルを設け、この1次コイルを比較的高い周波数で駆動する。電力供給部より無線で電力を受け取る電力受取部(受電側、2次側)には、1次コイルと対向する位置に2次コイルを設けるとともに、整流ダイオード、共振及び平滑用のコンデンサ等を設ける。例えば、整流ダイオードと平滑用のコンデンサで整流回路を構成する。1次コイルを高周波数で駆動すると、1次コイルと電磁結合された2次コイルに誘導起電力が発生する。この誘導起電力に基づき、整流回路により直流電圧を作り出す。この際、共振効果を利用して受電効率を高めるようにする。電磁誘導型を採用する場合には、電力供給部と電力受取部の間を近接させ、その間(具体的には1次コイルと2次コイルの間)には他の部材(特に金属)が入り込まないようにするとともに、コイルに対して電磁遮蔽を採る。前者は、金属が加熱されるのを防止するためであり(電磁誘導加熱の原理による)、後者は他の電子回路への電磁障害対策のためである。電磁誘導型は、伝送可能な電力が大きいが、前述のように送受間を近接(例えば1cm以下)させる必要がある。
共鳴型は、電力を供給する電力供給装置に備えられた共振器(共鳴素子)と、電力供給装置から供給される電力を受ける電力受電装置に備えられた共振器(共鳴素子)との間の電場又は磁場の共鳴(共振)による結合によって電力を伝送する方式である。つまり、共鳴型は、2つの振動子(振り子、音叉)が共振する現象と同じ原理を応用するもので、電磁波でなく電場又は磁場の一方での近接場における共鳴現象を利用する。固有振動数が同じ2つの振動子の一方(電力供給部に相当)を振動させた場合に、他方(電力受取部に相当)の振動子に小さな振動が伝達されるだけで、共鳴現象により大きく揺れ始める現象を利用する。電場の共鳴を利用する方式を以下では電界共鳴型と記述し、磁場の共鳴を利用する方式を以下では磁界共鳴型と記述する。尚、今日では、効率や伝送距離、位置ずれや角度ずれ等の側面で有利な電場又は磁場の共鳴を利用した「共鳴型」が着目されており、その中でも特に、生物体によるエネルギ吸収の影響の少ない(誘電体の損失の少ない)磁場の共鳴を利用する磁界共鳴型や磁気共鳴型と称される方式が注目されている。
図示を割愛するが、電場での共鳴現象を利用する方式の場合は、電力を無線で供給する電力供給部(送電側)と、電力供給部より無線で電力を受け取る電力受取部(受電側)の双方には、誘電体を配置し、両者間で電場の共鳴現象が発生するようにする。アンテナには、誘電率が数10〜100超で(一般的なものより非常に高い)、誘電損失ができるだけ小さい誘電体を使用することと、特定の振動モードをアンテナに励起させることが肝要となる。例えば円板のアンテナを使用する場合、円板の周りの振動モードがm=2または3のとき結合が最も強い。
本実施形態では、電力伝送を無線で実現する手法としては、例えば、電波受信型、電磁誘導型、共鳴型等の何れをも採用できるが、図2は、磁場による共鳴型を採用した構成で示している。基本的には、電磁誘導型、電波受信型、共鳴型の何れも採用し得るのであるが、第2例の信号伝送装置1では、各方式の特徴を考慮して、図示のように、磁場の共鳴現象を利用する共鳴型を採用している。例えば、電磁誘導型の電力供給効率は、1次コイルの中心軸と2次コイルの中心軸が一致している場合が最大であり、軸ズレがあると効率が低下する。換言すると、1次コイルと2コイルの位置合わせ精度が電力伝送効率に大きく影響を与える。電子機器の種類にもよるが、送電側と受電側の相対位置が変動し得る形態の場合には、電磁誘導型の採用は難点がある。電波受信型や電場による共鳴型ではEMI(干渉)を考慮する必要がある。その点、磁場による共鳴型では、これらの問題から解放される。
図2に示すように、磁場での共鳴現象を利用する方式の場合は、電力を無線で供給する電力供給部174(送電側)と、電力供給部174より無線で電力を受け取る電力受取部278(受電側)の双方に、LC共振器を配置し、両者間で磁場の共鳴現象が発生するようにする。例えば、ループ型のアンテナの一部をコンデンサの形状にし、ループ白身のインダクタンスと合わせてLC共振器にする。Q値(共鳴の強さ)を大きくすることができ、電力が共鳴用アンテナ以外に吸収される割合が小さい。そのため、磁場を利用する方式である点で電磁誘導型と似通ってはいるが、電力供給部174と電力受取部278の間を電磁誘導型よりも離した状態で数kWの伝送も可能である点で全く異なる方式である。
<ヒンジ構造体:基本構成>
図3〜図4は、本実施形態の信号伝送装置1が適用されるヒンジ構造体の基本を説明する図である。ここで、図3は、本実施形態のヒンジ構造体1001(つまり信号伝送装置1の構造)の基本を説明する図である。図4は、本実施形態のヒンジ構造体1001の構成要素の組合せを説明する図である。
[概観]
図3(A)及び図3(B)に示すように、本実施形態の信号伝送装置1が適用されるヒンジ構造体1001は、固定部1002と、回転部として機能する可動部1004と、両者の間に介在し電波が伝播する伝送路(導波路)を構成する筒状の導波管1012(第1空洞部の一例)及び導波管1014(第2空洞部の一例)を備えている。導波管1012及び導波管1014は1つの導波管として一体化し導波路部として使用される。図示した例では、固定部1002側の導波管1012の方が可動部1004側の導波管1014よりも管長が長く設定されている。
固定部1002と可動部1004は、固定部1002に対して可動部1004が相対的に回転可能な構造のものであればよく、固定部1002が絶対的に位置固定のものであることを意味せず、固定部1002も回転し、その回転する固定部1002に対してさらに可動部1004が回転する構造のものでもよい。双方の通信部の全体が相対的に回転可能な構成である必要はなく、要は、双方の通信部の送受信用の伝送路結合部近傍で相対的に回転可能になっていればよい。回転する部分と非回転部分との接続をどう取るかについては様々な手法が知られており、それら様々な手法が本実施形態に適用可能である。後述の各例でも同様である。
「回転」は、全周(360度以上)に亘っての回転や無限回転(旋回)を禁じるものではないが、それらであることは必須としない。もちろん、全周(360度以上)に亘っての回転や無限回転を禁じるものではないが、ヒンジ構造体1001はヒンジ機構により2つの筐体を折り畳む機能を持つものであり、通常は、「回転」は360度未満になる。ヒンジ構造体1001は折畳み式の電子機器(例えば、携帯電話機、ノート型のパソコン、携帯型のゲーム機器、デジタルムービー等)において、連結機構を介して回動自在に2つの筐体を連結するために使用される。本実施形態では、この連結機構に空洞を設け、空洞を利用して電波(無線)で、一方の筐体から他方の筐体へと無線(電波)で信号伝送を行なう。
可動部1004に、可動部1004の回転を駆動する回転駆動部1060を接続可能に構成することで、人手に依らずに自動回転可能に構成することもできる。この場合のヒンジ構造体1001は、回転駆動部1060が接続可能なようになっていればよく、回転駆動部1060を含んで流通される場合もあるし、回転駆動部1060を含まずに流通される場合もある。
導波管1012及び導波管1014は固定部1002に固定されている。導波管1012及び導波管1014の断面形状は円(真円)であることが最適であるが、これには限定されず、円形に近ければよく、楕円や多角形(例えば8角形や12角形等の角の数が比較的多いもの)でも許容される。但し、角の数が少ない場合(例えば3角形や4角形)は円形とは大きく異なるので好ましくはない。
例えば、導波管1012及び導波管1014を円形導波管とする場合、基本モード(TE11モード)の遮断周波数Fc=c×1.814/(2×π×a)[Hz]で与えられる。ここで、「c」は光速であり2.99792458×10^8[m/s]、「a」は導波管の半径[m]である。例えば、a=1.75ミリメートルのとき、Fc=49.458ギガヘルツ以上で使用可能となる。
固定部1002は、電子機器の一方の筐体に取り付け(固定)される。可動部1004は、回転軸を中心に回動する部材であり、導波管1012及び導波管1014内に設けられた図示しない結合軸により固定部1002に対してヒンジ構造をなすように回転自在に結合されている。好ましくは、導波管1012及び導波管1014の中心は、可動部1004の回転軸の中心と一致させる。因みに、図示した構成例では、導波管1014、基板1202(基板102あるいは基板202と対応)、マイクロストリップ線路1024、終端部材1090が可動部1004を構成する部材で、これらと図示しない一方の通信部を含む全体が、他方の通信部が搭載された固定部1002に対して相対的に回転するようになっている。
固定部1002には回路部品を搭載する基板1102(基板102や基板202と対応)が設けられており、基板1102には伝送対象信号を無線(例えばセンチ波帯、ミリ波帯、サブミリ波帯)で他方に伝送するための送信部や受信部を備えた通信部(無線通信部:第1通信装置100や第2通信装置200と対応)が搭載される。同様に、可動部1004には回路部品を搭載する基板1202が設けられており、基板1202には伝送対象信号を無線(例えばマイクロ波帯、ミリ波帯)で他方に伝送するための送信部や受信部を備えた通信部(無線通信部:第1通信装置100や第2通信装置200と対応)が搭載される。好ましくは、伝送周波数帯(搬送波の周波数帯)としてはミリ波帯を使用する。通信部としては前述の第1通信装置100や第2通信装置200が使用されるが、固定部1002と可動部1004のそれぞれに両方を備えることで双方向通信可能な構成になる。
基板1102には、図示を割愛した送信部や受信部と電気的に接続された線路の一例であるマイクロストリップ線路1022を含む伝送路結合部1108が設けられる。同様に、基板1202には、図示を割愛した送信部や受信部と電気的に接続された線路の一例であるマイクロストリップ線路1024を含む伝送路結合部1208が設けられる。伝送路結合部1108や伝送路結合部1208は、伝送路結合部108や伝送路結合部208に対応する。例えば、導波管1012及び導波管1014側の先端には導波管1012及び導波管1014に電磁波を供給する又は受け取る伝送路結合部1108や伝送路結合部1208が設けられる。
[導波管端部の処理]
固定部1002と可動部1004は、導波管1012の導波管1014とは反対側の端部や導波管1014の導波管1012とは反対側の端部は、終端部材1090(ショートブロック、反射板)で終端してもよい。導波管1012と導波管1014とで構成される導波管の全体の片端もしくは両端において、反射成分により電波が強め合う位置に反射板の一例である終端部材1090を配置することで、進行波と反射波が強めあう効果により伝送効率を上げることができる。即ち、終端部材1090を用いた場合は、それによる反射波も送受信に利用でき感度が向上する。但し、導波管1012及び導波管1014内の多重反射により不要な定在波が管内に発生することが問題となり得る。
導波管1012の導波管1014と反対側の端部は、開放のままでもよいし、開放としつつ近傍に伝送路結合部1108や導波管1012から放射される無線信号を吸収する吸収部材(電波吸収体1092)を配置してもよい。同様に、導波管1014の導波管1012と反対側の端部は、開放のままでもよいし、開放としつつ近傍に伝送路結合部1208や導波管1014から放射される無線信号を吸収する吸収部材(電波吸収体1092)を配置するようにしてもよい。導波管1012と導波管1014とで構成される導波管の全体の片端もしくは両端に電波吸収体1092を配置することで多重反射レベルや後進波レベルを下げることができる。即ち、開放端に電波吸収体1092を用いた場合は、反射波を送受信に利用することはできないが、端部から漏れる電波を吸収することができるので、外部への漏れを防ぐことができるし、導波管1012及び導波管1014内の多重反射レベルを下げることができるし、後進波を消去する(レベルを下げる)ことができる。
[導波管周縁の処理]
導波管1012及び導波管1014は誘電体素材を詰める場合であっても、好ましくはその周縁部材を金属材料にすることが望ましい。要するに、電磁波の信号を伝送する信号伝送路は、空気(いわゆる自由空間)であってもよいが、好ましくは、電磁波を伝送路中に閉じ込めつつ電磁波を伝送させる構造を持つものがよい。誘電体素材を詰め込んで誘電体挿入の導波管1012及び導波管1014を作る場合は、金属素材の筒状部材内に誘電体を詰め込むことも考えられるし、誘電体素材の外周を覆うように金属素材の薄膜を被覆する表面処理(金属メッキと称する)を施してもよい。誘電体素材の外周に金属メッキを施す構造では、小型化に加えて、金属材の筐体内に誘電体を詰め込む場合よりも軽量化ができる。つまり、誘電体円柱の外周に金属メッキを施すことにより、誘電体挿入円形導波管が作れ、これにより、小型化に加えて、軽量化ができる。一方、金属材の筒状部材内を誘電体素材で詰める構造では、金属メッキの場合よりも機械的強度を増すことができる。
[導波管内部の処理]
導波管1012及び導波管1014内は無線信号伝送路として機能する。導波管1012及び導波管1014内は、中空(つまり内部に空気が存在する)でもよい。つまり、導波管1012及び導波管1014は、無線信号伝送路(例えばミリ波信号伝送路)を構成し、且つ、無線信号(電波)の外部放射を抑える遮蔽材(例えば金属材料)が伝送路を囲むように設けられ、遮蔽材の内部の伝送路が中空の中空導波路にしてもよい。
但し、導波管1012及び導波管1014内は、好ましくは誘電体素材を詰めるのが望ましい。誘電体素材を詰めることで、導波管の断面サイズ(管径)を小さくすることができるし、導波管内の多重反射を抑制することができる。例えば、導波管1012及び導波管1014が円形導波管であるとした場合、詰め込む誘電体の比誘電率をεとすると、その導波管径は中空の場合に対して約1/√ε倍に小型化できる。又、送(受)信ポートの不整合による反射成分が導波管内で多重反射して、送(受)信ポートに悪影響を与えることがある。ここで、導波管内が空気の場合、通過損失が殆どないので、多重反射しても電力レベルが減衰せず悪影響が大きい。これに対して、損失のある(空気よりも損失の大きい)誘電体を詰め込むと、反射波の電力レベルが減衰していくので悪影響が抑えられる。
導波管1012及び導波管1014の端部に終端部材1090を設ける場合や開放端とし電波吸収体1092を配置しない場合に、反射波の問題を防止するには、図10(B)に点線で示すように、導波管1012内や導波管1014内に、無線信号の反射成分を吸収する吸収部材としての機能も持つ方向性結合部材1094(いわゆるアイソレータ、特にこの例では導波管タイプのもの)を配置してもよい。方向性結合部材1094は、導波管内を伝搬する電磁波のうち、進行波成分を通過させ反射波成分を吸収するので、反射の影響を減らすことができる。例えば、電波吸収体としてフェライトを利用したアイソレータを使用すれば、フェライトに特定の(ここでは吸収させたい方向の磁界)が印加されることで電波吸収作用が働く。これにより、送信側ではアンテナの負荷変動を回避できるし、受信側ではアンテナを介して進入する不要電波が受信回路に進入することによる弊害を防止できる。アイソレータとしては、例えば、分布定数型アイソレータと、より小型化が可能な集中定数型アイソレータとがあるが、この例では、分布定数型アイソレータともいえる導波管タイプのアイソレータを使用している。
分布定数型アイソレータは、必要とするフェライトの大きさが周波数に反比例するが、ミリ波帯或いはその近傍の周波数帯で無線伝送することで、直径1cm以下のフェライトを使用でき素子(方向性結合部材1094)の小型化が可能である。小型ではあるが構成が複雑な集中定数型アイソレータを採用せずに、構成が簡易な導波管タイプの方向性結合部材1094を本実施形態のヒンジ構造体1001に適用できる。
[アンテナ構造]
伝送路結合部1108及び伝送路結合部1208はアンテナ構造を備える。アンテナ構造は、導波管1012及び導波管1014内に構成される信号伝送路との結合部における構造をいい、ミリ波帯等の電気信号を電磁波に変換して無線信号伝送路に結合させるものであればよく、アンテナそのもののみを意味するものではない。例えば、アンテナ構造には、アンテナ端子、マイクロストリップ線路、アンテナを含み構成される。伝送路結合部1108及び伝送路結合部1208の詳細については後述する。
ここで、本実施形態の信号伝送装置1は、導波管1012及び導波管1014内では、好ましくは円偏波を使用して無線伝送を行なうとよい。送信側と受信側の各アンテナ(プローブ)が直線偏波で送信或いは受信するものであるとき、ヒンジ構造の回転角が小さいときには(例えば90度以内、好ましくは45度以内)、直線偏波のまま導波管内を伝送させても不都合なく受信できるが、回転角が大きくなり90度を超えるようになると、直線偏波が回転することになるので、そのような直線偏波を直線偏波用のプローブで不都合なく受信するということはできない。直線偏波を使用する場合、送信側と受信側の各直線偏波の合致する位置を中心とした狭い範囲でしか送受信ができるに過ぎないと言ってよい。
固定部1002に対して可動部1004を360度近くにまで回転させる場合でも、円偏波を使用して無線伝送を行なうと不都合なく送受信できる。即ち、導波管1012及び導波管1014内で円偏波を使用すれば、回転側で導波管を中心軸に対して360度まで回転しても通信が可能となる。加えて、ミリ波帯の無線信号を使用することで構造を小型化できる利点もある。
導波管1012及び導波管1014内に円偏波を使用するには、伝送路結合部1108及び伝送路結合部1208に円偏波プローブを使用する手法と、伝送路結合部1108及び伝送路結合部1208に直線偏波プローブを使用しつつ導波管1012及び導波管1014内に直線偏波と円偏波の変換を行なう機能部(偏波変換部・円偏波発生器)を設ける手法を採り得、それらの組合せも考えられる。
例えば、伝送路結合部1108及び伝送路結合部1208は、双方ともが電磁波を直線偏波で導波管1012及び導波管1014に供給又は受け取る場合と、双方ともが電磁波を円偏波で導波管1012及び導波管1014に供給又は受け取る場合と、一方は直線偏波で他方は円偏波で導波管1012及び導波管1014に供給又は受け取る場合の3つの態様を採り得る。
直線偏波とする場合には伝送路結合部1108及び伝送路結合部1208には直線偏波発生器(直線偏波プローブ1070:図3(C))を直線偏波アンテナとして使用し、円偏波とする場合には伝送路結合部1108及び伝送路結合部1208には円偏波発生器(円偏波プローブ1080:図3(D))を円偏波アンテナとして使用する。又、直線偏波で導波管1012内や導波管1014内に入射させつつ導波管1012と導波管1014との間を円偏波で伝達させる場合には、直線偏波と円偏波の変換を行なう偏波変換部1030(偏波変換装置:いわゆるポラライザ:Polarizers)を導波管1012及び導波管1014に設ける。
図3(A)では、偏波変換部1030として後述の第1例の偏波変換部1030Aを導波管1012側に使用する場合で示している。図示しないが、導波管1012及び導波管1014の分割位置を変更して導波管1014側に偏波変換部1030を配置する、両導波管1012及び導波管1014に偏波変換部1030を設ける等、偏波変換部1030の配置に関しては様々な変形が可能である。
又、直線偏波で導波管1012内や導波管1014内にTEモードで入射させつつ導波管1012と導波管1014との間をTMモードで伝達させるには、TMモードに変換するモード変換部1040(図示せず、詳細は後述する)を導波管1012内及び導波管1014内に設ける。モード変換を行なう場合、所望のモード(例えばTM01モード)だけでなく不要なモード成分(例えばTM21モード)も発生し得るので、その場合は、その不要なモード成分を抑制する部材も併せて使用するとよい。
又、導波管1012と導波管1014との間をTMモードで伝達させる他の方法としては、伝送路結合部1108や伝送路結合部1208として、導波管1012内や導波管1014内にTMモードそのもので入射させるアンテナ(例えば円環パッチアンテナ、詳細は後述する)を使用してもよい。例えば、TE11モードは偏波が存在するため、直線偏波では、ヒンジを回転させ、送受のアンテナが直交すると受信できなくなるが、TM01モードには偏波が存在しないためヒンジを回転させても受信できる。
[組合せ例]
図4は、以上の各要素の組合せを纏めて表にしたもので、これより、本実施形態の信号伝送装置1として適用し得る組合せが理解される。図中の「ショートorオープン」の項において、「ショート」は終端部材1090を用いる場合であり、「オープン」は端部を開放とする場合である。前述のように「オープン」時には電波吸収体1092を端部の近傍に配置するのが望ましい。「ショート(オープン)」はショート又はオープンの場合を意味し、「オープン(ショート)」はオープン又はショートを意味し、一方がショートのときは他方はオープンで、一方がオープンのときは他方はショートで組み合わされる。
図中の「プローブ」の項において、「円」は円偏波プローブ1080を用いる場合であり、「直線」は直線偏波プローブ1070を用いる場合である。「直線(円)」は直線偏波プローブ1070又は円偏波プローブ1080を用いる場合を意味し、「円(直線)」は円偏波プローブ1080又は直線偏波プローブ1070を用いる場合を意味し、一方が直線偏波プローブ1070を用いるときは他方は円偏波プローブ1080を用い、一方が円偏波プローブ1080を用いるときは他方は直線偏波プローブ1070を用いて組み合わされる。
「評価」の項では、「A」〜「E」の順で相対的なランク付けをしており、「A」が最適な組合せで、B→C→D→Eとなるほどに好ましくない問題点が顕在化する。例えば、導波管1012と導波管1014との間の無線伝送を円偏波で行なう構成例では、固定部1002に対して可動部1004が回転する回転角には制限がなく、大きい場合(90度以上の場合)でも無線信号を何ら問題なく送受信できる。
送受の双方に円偏波プローブ1080を使用し、かつ双方の端部に終端部材1090を配置する構成例1は、第1の通信部と、回転軸を中心に第1の通信部に対して相対的に回転可能な第2の通信部との間の無線伝送を円偏波で行なうことで、第1の通信部に対して第2の通信部が相対的に回転(エンドレス回転を含む)する構造をとる場合であっても、一方の通信部から発せられた無線信号を他方の通信部で何ら問題なく受信できる。導波管1012及び導波管1014には偏波変換部1030が不要であり構造がシンプルであるので、最も好ましい態様と考えられ「A」にしている。この場合、終端部材1090で反射した電磁波の逃げ道が無いが、円偏波で伝搬することから、導波管1012や導波管1014内で多重反射があっても不要な定在波が現われる可能性が低い。但し、双方に使用される円偏波プローブ1080は直線偏波プローブ1070に比べると、プローブ設計が困難という難点はある。
一方が直線偏波プローブ1070を使用し、他方が円偏波プローブ1080を使用し、双方の端部に終端部材1090を配置する構成例4は、導波管1012及び導波管1014の何れか一方には偏波変換部1030が必要で、構成例1よりも構造が複雑になるので「B」にしている。この場合、円偏波の軸比が低下しても他方は直線偏波であるから構成例1に比べて軸比特性で有利であるし、片方は円偏波プローブ1080よりもプローブ設計が容易な直線偏波プローブ1070を使用できる利点もある。又、終端部材1090で反射した電磁波の逃げ道が無いが、偏波変換部1030を介在することから、導波管1012及び導波管1014内で多重反射があっても不要な定在波が現われる可能性が低い。
双方ともが「直線」で導波管1012及び導波管1014内に偏波変換部1030がない構成例10〜12は、ヒンジ構造の回転角が大きい場合(例えば90度以上)には適さない組合せであるので「E」にしている。固定部1002側から可動部1004側に対して直線偏波の状態のままで電磁波が入射するか、可動部1004側から直線偏波で電磁波が出射され固定部1002側に入射する場合となり、円偏波を使用しないと、ヒンジ構造の回転角が90度以上に亘る場合には送受信が不可能という状況に陥るからである。
双方ともが「直線」で導波管1012内には偏波変換部1030があるが導波管1014内には偏波変換部1030がなく、双方の端部に終端部材1090を設ける構成例7は、好ましい組合せと言えないので「E」にしている。終端部材1090で反射した電磁波の逃げ道が無く、導波管1012及び導波管1014内の多重反射による不要な定在波が顕著に現われ得るからである。
双方ともが「直線」であるが、両導波管1012及び導波管1014内に偏波変換部1030がある構成例13〜構成例15の内で、双方の端部に終端部材1090を配置する構成例13は、構成例4と同様に、構成例1よりも構造が複雑になるので「B」にしている。この場合、円偏波の軸比が低下しても他方は直線偏波であるから構成例1に比べて軸比特性で有利であるが、導波管の全長が長くなる不利益がある。その一方で、双方ともに、円偏波プローブ1080よりもプローブ設計が容易な直線偏波プローブ1070を使用できる利点がある。又、終端部材1090で反射した電磁波の逃げ道が無いが、偏波変換部1030を介在することから、導波管1012内や導波管1014内で多重反射があっても不要な定在波が現われる可能性が低い。何れか一方又は双方の端部を開放端とする場合は、双方の端部に終端部材1090を配置する構成例13よりも劣り、構成例2や構成例3と比べると導波管の全長が長くなる不利益があるので「D」としている。
<送受信アンテナ>
図5及び図6は本実施形態のヒンジ構造体1001に使用される送受信アンテナを説明する図である。ここで、図5(A)は直線偏波プローブ1070の構成例を示し、図5(B)は円偏波プローブ1080の構成例を示す。図6は、円環パッチアンテナの一構成例を説明する模式図である。
[直線偏波用]
直線偏波プローブ1070は、図5(A)に示すように、筒状(好ましくは円筒状)の導波管1012及び導波管1014の基端側部分に、導波管1012及び導波管1014に対して垂直に差し込まれた直線状の棒状部材1072を送受信アンテナとして備えたものである。その構造から明らかなように、後述の円偏波プローブ1080に比べると、極めてシンプルなものである。ここでは図示しないが、後述の円偏波プローブ1080のように、導波管1012及び導波管1014の端部は、終端部材1090を設ける、開放端にする、又は開放端にしつつ近傍に電波吸収体1092を配置する。
導波管1012及び導波管1014に対して直線状の棒状部材1072を垂直に差し込まれた状態とするに当たっては、例えば、誘電体素材(絶縁材料)で形成された平板状の基板1102及び基板1202の一主面部上に、いわゆるエッチング等の手段により、銅やその他の導体よる棒状部材1072をなす箔膜状の導体パターンを直線状に被着成膜することで形成される。つまり、直線偏波プローブ1070は、導体パターンで形成された棒状部材1072が基板1102及び基板1202の一平面上に形成されているため、薄型化が可能であり構成が簡素化されている。
このような構造の直線偏波プローブ1070(直線偏波発生器)は、直線偏波送信アンテナとして使用することができる。即ち、授受端1076より直線偏波状態の発信信号が供給されることにより、棒状部材1072を介して、基板1102及び基板1202の主面部に垂直な方向に、つまり導波管1012及び導波管1014の前端側方向に直線偏波を放射する。又、直線偏波プローブ1070は直線偏波受信アンテナとしても使用することができる。即ち、直線偏波プローブ1070を直線偏波受信アンテナとして使用する場合は、直線偏波プローブ1070は、導波管1012及び導波管1014の前端側より基板1102及び基板1202の主面に対し垂直方向に入射する直線偏波を棒状部材1072により受信し、授受端1076より直線偏波状態の受信信号として出力する。
[円偏波用]
円偏波プローブ1080は、図5(B)に示すように、筒状(好ましくは円筒状)の導波管1012及び導波管1014の基端側部分に、導波管1012及び導波管1014に対して垂直に差し込まれた複数の直線部材の組合せでなるクランク状部材1082を送受信アンテナとして備えたものである。例えば、クランク状部材1082は第1〜第6の直線部材1082_1〜1082_6の組合せで構成されるものとする。このような構造の円偏波プローブ1080は、例えば、特開平05−283902号公報に開示されている。
導波管1012及び導波管1014に対してクランク状部材1082を垂直に差し込まれた状態とするに当たっては、例えば、誘電体素材(絶縁材料)で形成された平板状の基板1102及び基板1202の一主面部上にクランク状部材1082をなすクランク状の導体パターンを形成することで実現することにする。
クランク状をなす各直線部材1082_1〜1082_6(の導体パターン)の寸法は、波長λに応じて、次のように設定する。先ず、第1直線部材1082_1は、基端側が波長λの電磁信号の授受端1086(受信端又は送信端)となされた長さが略3/8λのものとする。授受端は、基板1102及び基板1202上に形成されるマイクロストリップ線路1022及びマイクロストリップ線路1024に延設されて接続される。
第2直線部材1082_2は、第1直線部材1082_1の先端部より第1直線部材1082_1に連続され第1直線部材1082_1に対して垂直な一側方向に延在され長さが略1/8λのものとする。第3直線部材1082_3は、第2直線部材1082_2の先端部より第2直線部材1082_2に連続され第1直線部材1082_1に平行に第1直線部材1082_1の先端側方向に延在され長さが略1/4λのものとする。第4直線部材1082_4は、第3直線部材1082_3の先端部より第3直線部材1082_3に連続され第3直線部材1082_3に対して垂直な他側方向に延在され長さが略1/4λのものとする。第5直線部材1082_5は、第4直線部材1082_4の先端部より第4直線部材1082_4に連続され第1直線部材1082_1に平行に第1直線部材1082_1の先端側方向に延在され長さが略1/4λのものとする。第6直線部材1082_6は、第5直線部材1082_5の先端部より第5直線部材1082_5に連続され第5直線部材1082_5に対して垂直な一側方向に延在され長さが略1/8λのものとする。
クランク状部材1082は、第4直線部材1082_4を中心として、第2直線部材1082_2と第6直線部材1082_6が、又、第3直線部材1082_3と第5直線部材1082_5が、それぞれ互いに回転対称な位置及び形状を有して形成されている。
このように、円偏波プローブ1080は、基板1102及び基板1202上に、いわゆるエッチング等の手段で、第1〜第6直線部材1082_1〜1082_6を順次連設して略クランク形状をなすように、銅やその他の導体よる箔膜状の導体パターンにより被着成膜することで形成される。
クランク状部材1082をなす導体パターン(第1〜第6直線部材1082_1〜1082_6)の幅は、信号の伝送ロスを勘案して、波長λに応じて予め決められた幅に設定される。又、この例においては、一側方向を基板1102及び基板1202に向かって右側方向とし、他側方向を基板1102及び基板1202に向かって左側方向としている。
このような構造のクランク状部材1082を具備する円偏波プローブ1080は、導波管1012及び導波管1014内に配設されて使用される。即ち、基板1102及び基板1202は、導体パターンが形成された部分を基板1102及び基板1202内に位置させて配設される。基板1102及び基板1202は、前端側が開放され後端側が閉塞された筒状(好ましくは円筒状)の導波管1012及び導波管1014内にクランク状部材1082をなす導体パターン(第1〜第6直線部材1082_1〜1082_6)を位置させた状態で、主面部を導波管1012及び導波管1014の軸心に垂直として、この導波管1012及び導波管1014内に配設される。基板1102及び基板1202は、一部を導波管1012及び導波管1014の外方側に導出される。基板1102及び基板1202の導波管1012及び導波管1014の外方側に導出された部分には、マイクロストリップ線路1022及びマイクロストリップ線路1024が形成されている。導波管1012及び導波管1014の図5(B−1)中に矢指Dで示す内径は、少なくとも、クランク状部材1082(導体パターン:第1〜第6直線部材1082_1〜1082_6)を第4直線部材1082_4を中心として覆い得る程度の径とされる。
基板1102及び基板1202は、第1〜第6直線部材1082_1〜1082_6が被着形成された一主面部を、導波管1012及び導波管1014の前端側に向けている。基板1102及び基板1202を挟んだ導波管1012及び導波管1014の後端側には例えば終端部材1090が配置される。基板1102及び基板1202は、図5(B−2)中の矢指Hで示す導波管1012及び導波管1014の後端部までの距離が1/4λ程度となる位置に支持される。つまり、終端部材1090の奥行き長が略1/4λに設定される。もちろん、図5(B−3)に示すように、導波管1012及び導波管1014の後端部側を開放端としてもよいし、図5(B−4)に示すように、開放端としつつ電波吸収体1092を開放端近傍に配置してもよい。
このような構造の円偏波プローブ1080(円偏波発生器)は、円偏波送信アンテナとして使用することができる。即ち、授受端1086より直線偏波状態の発信信号が供給されることにより、クランク状部材1082を介して、基板1102及び基板1202の主面部に垂直な方向に、つまり導波管1012及び導波管1014の前端側方向に円偏波を放射する。又、円偏波プローブ1080は円偏波受信アンテナとしても使用することができる。即ち、円偏波プローブ1080を円偏波受信アンテナとして使用する場合には、円偏波プローブ1080は、導波管1012及び導波管1014の前端側より基板1102及び基板1202の主面に対し垂直方向に入射する円偏波をクランク状部材1082により受信し、授受端1086より直線偏波状態の受信信号として出力する。
因みに、円偏波は、進行方向をZ軸としたときのX軸方向の電界の振幅とY軸方向の電界の振幅とが互いに1/4λ(90°)の位相ずれを生じているものである。円偏波には、X軸方向の電界の振幅のY軸方向の電界の振幅に対する位相が進んでいるか遅れているかによって右旋偏波と左旋偏波とがあるが、図5(B−1)に示した円偏波プローブ1080_1では、クランク状部材1082は、右旋偏波を送受信するための特性を有している。図5(B−5)に示す円偏波プローブ1080_2のように、クランク状部材1082を、図5(B−1)の円偏波プローブ1080_1に対する鏡像となる形状にすると、クランク状部材1082は、左旋偏波を送受信するための特性を有する。即ち、左旋偏波を送受信するためには、一側方向を基板1102及び基板1202に向かって左側方向となし、他側方向を基板1102及び基板1202に向かって右側方向となして形成するとよい。
よって、このような構造の円偏波プローブ1080は、右旋偏波と左旋偏波の何れについても、第1直線部材1082_1の基端側である授受端1086より波長λの電磁信号が供給されると、クランク状部材1082(第1〜第6直線部材1082_1〜1082_6)は、基板1102及び基板1202に対する垂直方向に円偏波を放射する。又、円偏波プローブ1080は、基板1102及び基板1202に対する垂直方向より円偏波が入射されると、クランク状部材1082(第1〜第6直線部材1082_1〜1082_6)がこの円偏波を受信し、授受端1086より直線偏波状態の受信信号が出力される。円偏波プローブ1080は、導体パターンで形成されたクランク状部材1082(第1〜第6直線部材1082_1〜1082_6)は、互いに一平面上に形成されているため、薄型化が可能であり構成が簡素化されている。特性図については図示を割愛するが、円偏波プローブ1080は、良好な受信特性、即ち、低伝送ロス、良好な軸比(交差偏波識別度)特性を有している。基板1102及び基板1202上に配設された各導体パターンが円偏波を良好な受信特性にて受信することで、授受端1086を介して受信信号を後段の回路に送ることができる。
因みに、右旋偏波と左旋偏波は、送信側と受信側で対にして使用する。つまり、送信側に右旋偏波を送信する円偏波プローブ1080_1を使用する場合は、受信側に右旋偏波を受信する円偏波プローブ1080_1を使用し、送信側に左旋偏波を送信する円偏波プローブ1080_2を使用する場合は、受信側に左旋偏波を受信する円偏波プローブ1080_2を使用する。
右旋円偏波及び左旋円偏波の直交する2つの偏波(直交偏波とも称する)を用いて、周波数分割多重やその他の多重手法を適用せずに、同一方向の2系統の通信や双方向の通信を行なうことができる。即ち、一方(例えば固定部1002)に右旋偏波を送信する円偏波プローブ1080_1及び左旋偏波を送信する円偏波プローブ1080_2を設け、他方(例えば可動部1004)に右旋偏波を送信する円偏波プローブ1080_1及び左旋偏波を送信する円偏波プローブ1080_2を設けることで、直交偏波(右旋円偏波、左旋円偏波)を利用する構成にしてもよい。この場合、右旋偏波を送信(又は受信)するとともに左旋偏波を送信(又は受信)する2偏波共用が可能となる。直交偏波(右旋円偏波、左旋円偏波)を利用することで、周波数分割多重やその他の多重手法を適用しなくても同じ搬送周波数を使用しながら2倍の情報を伝送することができる。
[円環パッチアンテナ]
円環パッチアンテナは、図6に模式的に示すように、円環状をなしたパッチ導体(円環型放射導体1087)を有するアンテナであり、特に、TM01モード円環パッチアンテナ1086は、パッチに垂直においたダイポールあるいはモノポールに似た指向性を持つ。円環型放射導体1087は、円環型放射導体1087から同軸によりTM01モードで給電される。
尚、図6は、TM01モード円環パッチアンテナ1086を模式的に示したものであり、その詳細は、例えば、下記の参考文献を参照するとよい。
参考文献1:後藤尚久、“アンテナ工学入門講座”、電波新聞社、第4章パッチアンテナ、4.10TM01モード円環パッチアンテナ、P228-231、図4−37
<偏波変換部>
図7〜図8は、本実施形態のヒンジ構造体1001に使用される偏波変換部1030を説明する図である。
図7に示す第1例の偏波変換部1030Aは、導波管1012及び導波管1014に構成された単一溝形円形導波管の一例である円偏波発生器であり、例えば、下記の参考文献に記載のものを利用することができる。
参考文献2:Naofumi Yoneda、et.al,“Mono-Grooved Circular Waveguide Polarizers”,2002 IEEE MTT-S Digest,WE2C−4,pp821〜824
第1例の偏波変換部1030Aは、筒状(好ましくは円筒状)の導波管1012及び導波管1014の外側面に直方体状の側溝1032(Coupling Groove )が設けられることで構成される。以下では、側溝1032の中心(図7(B)中の破線)を通る平面に対して、45度傾いた直線偏波をなす円形導波管の基本モード(TE11モード)の電波が、導波管1012及び導波管1014の入力端から入力される場合について説明する。
側溝1032の影響により、入射電波には、側溝1032の中心(破線)を通る平面に対して水平な偏波成分と垂直な偏波成分との間で位相差が生じる。このとき、導波管1012及び導波管1014の断面寸法(例えば円形導波管の場合は径φ)に対して側溝1032の寸法(幅W、深さD、長さL)が参考文献2に記載のように適切に設計されていれば、導波管1012及び導波管1014の入力端とは反対側の出力端から出力される基本モードの電波は、ある一定の(所望の)周波数帯において円偏波となる。このことは、側溝1032の中心(破線)を通る平面に対して、水平な偏波を有する基本モードが通過した場合でも、垂直な偏波を有する基本モードが通過した場合でも、反射が殆どなく、且つ、互いの通過位相の相対差が「略90度」となっていることを意味する。
図8(A)及び図8(B)に示す第2例の偏波変換部1030Bは、筒状(好ましくは円筒状)の導波管1012及び導波管1014内の内側面に階段状で板状の金属突起物1034(金属片)が設けられることで構成される。金属突起物1034は、導波管1012及び導波管1014の内径の半分未満の幅を有する平板であって、導波管1012及び導波管1014の長手方向の断面形状が階段状を呈し、その長手方向を導波管1012及び導波管1014の軸方向とし、導波管1012及び導波管1014の内壁に配設されている。
金属突起物1034は、図8(A)に示すように導波管1012及び導波管1014の片側に1個配置してもよいし、図8(B)に示すように導波管1012及び導波管1014の対角に2個配置してもよい。
第2例の偏波変換部1030Bを適用する場合、導波管1012及び導波管1014の基端側部分に、導波管1012及び導波管1014に対して垂直に差し込まれた直線状の棒状部材1072を具備する直線偏波プローブ1070が組み合わされて使用される。第2例の偏波変換部1030Bと直線偏波プローブ1070の組合せで円偏波送受信アンテナとして機能する。
例えば、第2例の偏波変換部1030Bと直線偏波プローブ1070の組合せで構成された円偏波送受信アンテナに対しては、導波管1012及び導波管1014の開放された先端側より、図8(A−1)及び図8(B−1)中に矢指Aで示すように円偏波が入射される。円偏波の内の金属突起物1034の主面に垂直な方向の電界振幅成分は、金属突起物1034に影響されずに導波管1012及び導波管1014内を通過して棒状部材1072に達する。一方、円偏波の内の金属突起物1034の主面に沿う方向の電界振幅成分は、金属突起物1034を通過することにより進行速度が遅くなって棒状部材1072に達する。円偏波の内の金属突起物1034を通過した電界振幅成分は棒状部材1072に達したとき1/4λに相当する遅延を生じているようにする。
こうすることで、円偏波は金属突起物1034の主面に垂直な方向の電界振幅成分と金属突起物1034の主面に沿う方向の電界振幅成分とが、互いに同時に棒状部材1072に達し、棒状部材1072を介して受信信号として出力される。又、第2例の偏波変換部1030Bと直線偏波プローブ1070の組合せで構成された円偏波送受信アンテナは、棒状部材1072より電波を発信すると、金属突起物1034の作用により、導波管1012及び導波管1014の先端側に円偏波を発信する円偏波発生器として使用できる。
ここで、金属突起物1034と棒状部材1072の配置関係は次のようにする。電波方向は、紙面裏から表方向の場合で説明する。先ず、図8(A−3)及び図8(B−3)に示すように、直線偏波プローブ1070の棒状部材1072に対して、導波管1012及び導波管1014の中心軸(水平方向をX−X’軸,垂直方向をY−Y’軸とする)を中心に、時計回りに45度、135度、225度、315度シフトした位置をそれぞれ1、2、3、4とする。
そして、金属突起物1034を、「1及び3、1のみ、3のみ」の何れかで配置する(配置態様Aと記す)。これらの位置は直線偏波プローブ1070(棒状部材1072)に対して同じ偏波を送受信する関係にある。又は、金属突起物1034を、「2及び4、2のみ、4のみ」の何れかで配置する(配置態様Bと記す)。これらの位置は直線偏波プローブ1070(棒状部材1072)に対して同じ偏波を送受信する関係にある。
配置態様Aと配置態様Bは直交偏波関係にあり、直線偏波プローブ1070(棒状部材1072)を配置する位置との関係で、右旋偏波の送受信とされたり、左旋偏波の送受信とされたりする。例えば、金属突起物1034が「1及び3、1のみ、3のみ」の何れかで配置されているときに、直線偏波プローブ1070(棒状部材1072)がX−X’軸上にあるときは右旋偏波、Y−Y’軸上にあるときは左旋偏波となる。即ち、図8(A−3a)及び図8(B−3a)に示すように、棒状部材1072をX−X’軸上(X,X’の何れ側でもよい)に配置すると右旋偏波を送信(又は受信)することができる。図8(A−3b)及び図8(B−3b)に示すように、棒状部材1072をY−Y’軸上(Y,Y’の何れ側でもよい)に配置すると左旋偏波を送信(又は受信)することができる。
因みに、右旋偏波と左旋偏波は、送信側と受信側で対にして使用する。つまり、一方(例えば固定部1002)に図8(A−3a)や図8(B−3a)の形態を使用する場合は他方(例えば可動部1004)には右旋偏波を受信(送信)する円偏波プローブ1080_1を使用し、一方(例えば固定部1002)に図8(A−3b)や図8(B−3b)の形態を使用する場合は、他方(例えば可動部1004)には左旋偏波を受信(送信)する円偏波プローブ1080_2を使用する。
図8(A−3c)及び図8(B−3c)に示すように、棒状部材1072_1や棒状部材1072_2を、一方(棒状部材1072_1)はX−X’軸上(X,X’の何れ側でもよい)に配置し、他方(棒状部材1072_2)はY−Y’軸上(Y,Y’の何れ側でもよい)に配置すると、棒状部材1072_1で右旋偏波を送信(又は受信)し棒状部材1072_2で左旋偏波を送信(又は受信)する2偏波共用が可能となる。直交偏波(右旋円偏波、左旋円偏波)を利用することで、周波数分割多重やその他の多重手法を適用しなくても同じ搬送周波数を使用しながら2倍の情報を伝送することができる。
図8(C)に示す第3例の偏波変換部1030Cは、筒状(好ましくは円筒状)の導波管1012及び導波管1014内の内側面に楔状で板状の誘導体板1036が設けられることで構成される。誘導体板1036は、導波管1012及び導波管1014の内径に等しい幅を有する平板であって、長手方向を導波管1012及び導波管1014の軸方向とし、導波管1012及び導波管1014の軸上に配設されている。
第3例の偏波変換部1030Cを適用する場合、導波管1012及び導波管1014の基端側部分に、導波管1012及び導波管1014に対して垂直に差し込まれた直線状の棒状部材1072を具備する直線偏波プローブ1070が組み合わされて使用される。第3例の偏波変換部1030Cと直線偏波プローブ1070の組合せで円偏波送受信アンテナとして機能するようになる。
例えば、第3例の偏波変換部1030Cと直線偏波プローブ1070の組合せで構成された円偏波送受信アンテナに対しては、導波管1012及び導波管1014の開放された先端側より、図8(C−1)中に矢印Bで示すように円偏波が入射される。円偏波の内の誘導体板1036の主面に垂直な方向の電界振幅成分は、誘導体板1036に影響されずに導波管1012及び導波管1014内を通過して棒状部材1072に達する。一方、円偏波の内の誘導体板1036の主面に沿う方向の電界振幅成分は、誘導体板1036内を通過することにより、進行速度が遅くなって棒状部材1072に達する。円偏波の内の誘導体板1036内を通過した電界振幅成分は、棒状部材1072に達したとき、1/4λに相当する遅延を生じているようにする。
こうすることで、円偏波は、誘導体板1036の主面に垂直な方向の電界振幅成分と、誘導体板1036の主面に沿う方向の電界振幅成分とが、互いに同時に棒状部材1072に達し、棒状部材1072を介して受信信号として出力される。第3例の偏波変換部1030Cと直線偏波プローブ1070の組合せで構成された円偏波送受信アンテナは、棒状部材1072より電波を発信すると、誘導体板1036の作用により導波管1012及び導波管1014の先端側に円偏波を発信する円偏波発生器として使用することができる。
誘導体板1036と棒状部材1072の配置関係は次のようにする。電波方向は、紙面裏から表方向の場合で説明する。先ず、図8(C−3)に示すように、直線偏波プローブ1070の棒状部材1072に対して、導波管1012及び導波管1014の中心軸(水平方向をX−X’軸,垂直方向をY−Y’軸とする)を中心に、時計回りに45度、135度、225度、315度シフトした位置をそれぞれ1、2、3、4とする。
誘導体板1036を、「1及び3の方向」(配置態様Aと記す)と「2及び4の方向」(配置態様Bと記す)の何れかに配置する。配置態様Aと配置態様Bは直交偏波関係にあり、直線偏波プローブ1070(棒状部材1072)を配置する位置との関係で、右旋偏波の送受信とされたり、左旋偏波の送受信とされたりする。例えば、誘導体板1036が「1及び3、1のみ、3のみ」の何れかで配置されているときに、直線偏波プローブ1070(棒状部材1072)がX−X’軸上にあるときは右旋偏波、Y−Y’軸上にあるときは左旋偏波となる。即ち、図8(C−3a)に示すように、棒状部材1072をX−X’軸上(X,X’の何れ側でもよい)に配置すると右旋偏波を送信(又は受信)することができる。図8(C−3b)に示すように、棒状部材1072をY−Y’軸上(Y,Y’の何れ側でもよい)に配置すると左旋偏波を送信(又は受信)することができる。
因みに、右旋偏波と左旋偏波は、送信側と受信側で対にして使用する。つまり、一方(例えば固定部1002)に図8(C−3a)の形態を使用する場合は他方(例えば可動部1004)には右旋偏波を受信(送信)する円偏波プローブ1080_1を使用し、一方(例えば固定部1002)に図8(C−3b)の形態を使用する場合は、他方(例えば可動部1004)には左旋偏波を受信(送信)する円偏波プローブ1080_2を使用する。
図8(C−3c)に示すように、棒状部材1072_1及び棒状部材1072_2を、一方(棒状部材1072_1)はX−X’軸上(X,X’の何れ側でもよい)に配置し、他方(棒状部材1072_2)はY−Y’軸上(Y,Y’の何れ側でもよい)に配置すると、棒状部材1072_1で右旋偏波を送信(又は受信)し棒状部材1072_2で左旋偏波を送信(又は受信)する2偏波共用が可能となる。直交偏波(右旋円偏波、左旋円偏波)を利用することで2倍の情報を伝送することができる。
<モード変換部>
図9は、本実施形態のヒンジ構造体1001に使用されるモード変換部1040を説明する図である。ここで、図9(A)はモード変換部1040の全体概要を示す図であり、図9(B)はモード変換部1040の動作を説明する図である。
図9(A)及び図9(B)に示すように、モード変換部1040は、円形導波管(導波管1012、導波管1014、以下同様)内に、TM01発生用突起物1042とTE21消去用突起物1044とを備える。TE21消去用突起物1044は、1つに限らず複数配置してもよい。直線偏波プローブ1070で円形導波管内にTE11モードの電波を入力する。導波管を伝播する電波の電界面は、断面と平行方向であり、TM01発生用突起物1042及びTE21消去用突起物1044は、それぞれ電界面と平行方向に円形導波管の中心に向かって突き出している。
円形導波管の内部に電界面と平行に突起物がある場合には、図9(B)に示すように、高次モードが発生する。TM01発生用突起物1042は、例えばねじ等その挿入量が調整できるもので構成されている。TM01発生用突起物1042の挿入量はアンテナ出力を観察しながら調整することにより、TM01モードを発生する量に調整される。TM01発生用突起物1042を設置した円形導波管の直径として低い周波数帯で高次モードTM01を減衰させない大きさを選択することにより、低い周波数帯で高次モードTM01が放射される。
TM01発生用突起物1042は、TE11モードの電波を受けると、TM01モードの電波を発生させるとともに、不要な高次モードであるTE21モードを発生させる。1又は複数のTE21消去用突起物1044により、この高い周波数帯でのTE21モードを消去する。TM01発生用突起物1042とTE21消去用突起物1044との間の間隔は、λgをTE21モードの管内波長として、λg/2に設定される。TE21消去用突起物1044を複数設ける場合は、隣接する2つのTE21消去用突起物1044の間隔もλg/2に設定される。TM01発生用突起物1042は、双方向性(つまり、TM01−TM01変換機能)を持っており、TM01モードの電波を受けると、TE11モードの電波を発生させる。よって、送信側よりTE11モードの電波を送信側の導波管に入射しTM01モードの電波に変換したものを、受信側の導波管内でTM01発生用突起物1042を通すことにより、TE11モードの電波に変換することができる。
TE21消去用突起物1044は、TM01発生用突起物1042と同様に、ねじ等のその挿入量が調整できるもので構成される。TM01発生用突起物1042と、TE21消去用突起物1044とは、電界面と平行に、一列に並ぶように配置される。或いは、一列に並ぶ位置から、オフセットさせてもよい。TM01発生用突起物1042とTE21消去用突起物1044との間の間隔及び隣接するTE21消去用突起物1044の間隔を保った状態で、TM01発生用突起物1042及びTE21消去用突起物1044の位置や挿入量を調整することにより、導波管開口部において、基本モード(TE11モード)に対するTM01モードの振幅比や位相差を適切な値とすることができる。
円形導波管の直径は、低い周波数帯にてTM01モードが伝搬する径とする。TM01モードより高次のモードにTE21モードがあるが、TE21モードを、1以上のTE21消去用突起物1044で消去しTE11モードとTM01モードとを放射する。TE21消去用突起物1044で、高い周波数帯で発生するTE21モードを消去することで、2周波数帯への適用を可能とする。導波管内にTM01モード以外で電波を入射させる場合でも、このようなモード変換を行なうことで、ヒンジを回転させても受信できる。
<具体的な適用例>
以下、信号伝送装置1が適用されるヒンジ構造体1001の具体的な適用例を示す。
図10は、実施例1のヒンジ構造体1001Aを説明する図である。ここで、図10(A)は、ヒンジ構造体1001Aの全体概要を示す。図10(B)は、ヒンジ構造体1001Aで使用される伝送路結合部1108及び伝送路結合部1208用のアンテナ構造を示す図である。図10(C)は、伝送路結合部1108及び伝送路結合部1208用のアンテナ構造に着目した斜視図である。
実施例1のヒンジ構造体1001Aは、図4に示した組合せ態様の構成例13〜構成例15の何れかを適用するものであり、伝送路結合部1108と伝送路結合部1208の双方に直線偏波プローブ1070を使用し、且つ、導波管1012と導波管1014の双方には偏波変換部1030を適用する。固定部1002側の導波管1012と可動部1004側の導波管1014は、管長が概ね同じに設定されている。導波管1014、基板1202、マイクロストリップ線路1024が可動部1004を構成する部材で、これらと図示しない一方の通信部を含む全体が、他方の通信部が搭載された固定部1002に対して相対的に回転するようになっている。図は、構成例14の場合を示しており、導波管1012の導波管1014とは反対側と導波管1014の導波管1012とは反対側の各端部を開放端としている。
ここで、ヒンジ構造体1001Aは、偏波変換部1030としては、導波管1012と導波管1014のそれぞれについて偏波変換部1030を適用している。図10(A)に透視図を示すように、各偏波変換部1030としては、導波管1012と導波管1014それぞれに対して、金属突起物1034を利用した第2例の偏波変換部1030Bを各別に使用している。前述のように、導波管1012と導波管1014のそれぞれには偏波変換部1030(ここでは偏波変換部1030B)を使用するので、後述の実施例5のヒンジ構造体1001Eよりも構造が複雑になるし、偏波変換部1030を導波管1012と導波管1014のそれぞれに(つまり2つ)使用するので、後述の実施例2のヒンジ構造体1001Bよりも構造が複雑になる。その一方で、固定部1002と可動部1004の双方には構造が簡易な直線偏波プローブ1070を使用できる利点がある。
このように、実施例1のヒンジ構造体1001Aは、直線偏波プローブ1070と偏波変換部1030(この例では偏波変換部1030B)をセットして、上下2セット設置した構造であり、偏波変換部1030を具備した導波管1012及び導波管1014を用いて信号伝送を行なう。このような実施例1のヒンジ構造体1001Aにおける信号の流れ(送信アンテナ→筒状部→筒状部→受信アンテナ)の過程の偏波の状態は、直線偏波→円偏波に変換→直線偏波に変換→直線偏波となる。つまり、固定部1002の導波管1012と可動部1004の導波管1014の何れか一方に直線偏波で入力し、偏波変換部1030(偏波変換構造)により円偏波に変換し、さらに固定部1002の導波管1012と可動部1004の導波管1014の他方の偏波変換部1030(偏波変換構造)によって直線偏波に変換し、導波管プローブにカップリングする。要するに、偏波変換部1030(偏波変換構造)を持った2つの導波管1012及び導波管1014を用いて、偏波の変換を行ないつつ無線信号の伝送を行なう。この場合の信号の流れを図10(C)に基づいて具体的に説明する。
先ず、固定部1002を送信側とし、可動部1004を受信側とする場合で説明する。この場合、送信側である固定部1002のマイクロストリップ線路1022から出力された信号は、直線偏波プローブ1070_1(棒状部材1072)を介して直線偏波にて導波管1012内に伝送される。導波管1012内の直線偏波のミリ波帯(例えば60ギガヘルツ帯)の電波は、偏波変換部1030B_1(金属突起物1034)により円偏波に変換され導波管1014側へ伝送される。導波管1014側に配された偏波変換部1030B_2(金属突起物1034)は、導波管1012側に配された偏波変換部1030B_1(金属突起物1034)により円偏波に変換されたミリ波帯(60ギガヘルツ帯)の電波を直線偏波に変換して(戻して)可動部1004側へ伝送する。受信側である可動部1004の伝送路結合部1208の直線偏波プローブ1070_2(棒状部材1072)は、直線偏波に変換されたミリ波帯(60ギガヘルツ帯)の電波を受信して、受信側のマイクロストリップ線路1024を介して図示を割愛した高周波回路に受け渡すことができる。
次に、可動部1004を送信側とし、固定部1002を受信側とする場合で説明する。この場合、送信側である可動部1004のマイクロストリップ線路1024から出力された信号は、直線偏波プローブ1070_2(棒状部材1072)を介して直線偏波にて導波管1014内に伝送される。導波管1014内の直線偏波のミリ波帯(60ギガヘルツ帯)の電波は、偏波変換部1030B_2(金属突起物1034)により円偏波に変換され導波管1012側へ伝送される。導波管1012側に配された偏波変換部1030B_1(金属突起物1034)は、導波管1014側に配された偏波変換部1030B_2(金属突起物1034)により円偏波に変換されたミリ波帯(60ギガヘルツ帯)の電波を直線偏波に変換して(戻して)固定部1002側へ伝送する。受信側である固定部1002の伝送路結合部1108の直線偏波プローブ1070_1(棒状部材1072)は、直線偏波に変換されたミリ波帯(60ギガヘルツ帯)の電波を受信して、受信側のマイクロストリップ線路1022を介して図示を割愛した高周波回路に受け渡すことができる。
[第1の変形例]
図11は、実施例1のヒンジ構造体1001Aに対する第1の変形例を説明する図である。実施例1の第1の変形例のヒンジ構造体1001AAは、実施例1のヒンジ構造体1001Aをベースに、導波管の端部に吸収体を配置することで、多重反射レベルを下げ、又、後進波を消去する(レベルを下げる)ように変形している点に特徴がある。
図は、導波管1012と導波管1014で構成された導波管全体の両端部を開放端としつつ、その開放端の近傍に無線信号を吸収する吸収部材の一例である電波吸収体1092を配置した例で示しているが、このことは必須でない。導波管1012の導波管1014とは反対側の端部と、導波管1014の導波管1012とは反対側の端部のそれぞれを開放端としつつ、その開放端の少なくとも一方の近傍に電波吸収体1092を配置すればよい。このように、導波管1012と導波管1014とで構成される導波管の全体の片端もしくは両端に電波吸収体1092を配置することで、反射成分を電波吸収体1092に吸収させることができる。反射成分が吸収されることで、多重反射レベルや後進波レベルを下げることができ、その結果、送信側はアンテナの負荷変動を回避でき、増幅部117(いわゆるパワーアンプ)の電力効率の低下を防止し、消費電流を減少させ、機器の使用時間の低下を抑える効果を享受できる。又、受信側は、アンテナを介して進入する不要電波が受信回路に進入し、相互変調歪みや素子破壊を起こす問題等を防止できる。
因みに、電波吸収体1092は電波を吸収することで発熱するので、電波吸収体1092の温度上昇を抑えることが必要となり得る。よって、電波吸収体1092からの発熱を放熱する構造を設けるとよい。放熱構造としては、例えば、放熱用のブラケットを設けて、その上に電波吸収体1092を配置してもよいし、導波管1012や導波管1014の周縁の金属素材を放熱に利用してもよい。その際には、電波吸収体1092の内部で起こる熱(内部発熱)を、放熱用のブラケットや、導波管1012或いは導波管1014の金属素材に効率良く伝達する構造とするとよい。
[第2の変形例]
図12は、実施例1のヒンジ構造体1001Aに対する第2の変形例を説明する図である。第2の変形例のヒンジ構造体1001ABは、実施例1のヒンジ構造体1001Aをベースに、端部での反射成分により電波が強め合う位置に反射板の一例である終端部材1090を配置することで、進行波と反射波が強めあう効果により伝送効率を上げるように変形している点に特徴がある。
図は、導波管1012と導波管1014で構成された導波管全体の両端部において、直線偏波プローブ1070から放射される電波を効率良く進行方向に伝送させるために、高さHが約λ/4(λ:波長)となる終端部材1090を配置した例で示しているが、このことは必須でない。導波管1012の導波管1014とは反対側の端部と、導波管1014の導波管1012とは反対側の端部の少なくとも一方に終端部材1090を配置すればよい。このように、導波管1012と導波管1014とで構成される導波管の全体の片端もしくは両端に終端部材1090を配置することで、進行波と反射波が強めあう効果により伝送効率を上げることができ、反射波も送受信に利用でき感度が向上する。
図示しないが、第1の変形例と第2の変形例を組み合わせてもよい。即ち、導波管1012の導波管1014とは反対側の端部と導波管1014の導波管1012とは反対側の端部の何れか一方を開放端とし、その開放端の近傍に電波吸収体1092を配置するとともに、導波管1012の導波管1014とは反対側の端部と導波管1014の導波管1012とは反対側の端部の他方に電波吸収体1092を配置する。電波吸収体1092を配置したことによる多重反射レベルや後進波レベルを下げる効果を享受できるし、終端部材1090を配置したことによる伝送効率や感度の向上の効果も享受できる。
[第3の変形例]
図13は、実施例1のヒンジ構造体1001Aに対する第3の変形例を説明する図である。第3の変形例のヒンジ構造体1001ACは、実施例1のヒンジ構造体1001Aをベースに、導波管内を伝搬する電磁波のうちの進行波成分を通過させ反射波成分を吸収する導波管タイプの方向性結合部材1094を導波管内に配置することで、反射の影響を減らすように変形している点に特徴がある。方向性結合部材1094の電波吸収材であるフェライトにある条件で磁界を印加すると、電磁波が特定の方向にしか進まなくなる。電磁波を送信したい方向にのみ進むようにし、逆方向の電磁波を遮断することによって、ヒンジの継ぎ目やアンテナ、導波管の端からの反射波と進行波との干渉を抑制することができる。
図示した例では、固定部1002側から可動部1004側へ信号伝送を行なうものとする。方向性結合部材1094は、導波管1012及び導波管1014内を固定部1002側から可動部1004側へ伝送される電磁波(進行波)は通過するが、可動部1004側から固定部1002側へ伝送される反射成分を吸収するようにしている。反射成分が吸収されることで、多重反射レベルや後進波レベルを下げることができ、その結果、送信側はアンテナの負荷変動を回避でき、増幅部117(いわゆるパワーアンプ)の電力効率の低下を防止し、消費電流を減少させ、機器の使用時間の低下を抑える効果を享受できる。又、受信側は、アンテナを介して進入する不要電波が受信回路に進入し、相互変調歪みや素子破壊を起こす問題等を防止できる。
因みに、方向性結合部材1094は、電波吸収体1092と同様に、電波を吸収することで発熱するので、方向性結合部材1094(の電波吸収材であるフェライト)の温度上昇を抑えることが必要となり得る。よって、方向性結合部材1094からの発熱を放熱する構造を設けるとよい。放熱構造としては、例えば、放熱用のブラケットを設けて、そのブラケットで方向性結合部材1094を支持してもよいし、導波管1012や導波管1014の周縁の金属素材を放熱に利用してもよい。その際には、方向性結合部材1094の電波吸収材であるフェライト内部で起こる熱(内部発熱)を、放熱用のブラケットや、導波管1012或いは導波管1014の金属素材に効率良く伝達する構造とするとよい。
図14は、実施例2のヒンジ構造体1001Bを説明する図である。ここで、図14(A)は、ヒンジ構造体1001Bの全体概要を示す。図14(B)及び図14(C)は、ヒンジ構造体1001Bで使用される伝送路結合部1108及び伝送路結合部1208用のアンテナ構造を示す図である。
実施例2のヒンジ構造体1001Bは、図4に示した組合せ態様の構成例4〜構成例6の何れか適用するものであり、一方が直線偏波プローブ1070を使用し、他方が円偏波プローブ1080を使用し、さらに、導波管1012と導波管1014のうちの直線偏波プローブ1070を使用する側には偏波変換部1030を適用する。導波管1012と導波管1014のうち、偏波変換部1030が適用される側の方が、偏波変換部1030が適用されない側の方よりも管長が長く設定される。導波管1014、基板1202、マイクロストリップ線路1024、可動部1004を構成する部材で、これらと図示しない一方の通信部を含む全体が、他方の通信部が搭載された固定部1002に対して相対的に回転するようになっている。
図14(A)に示す例では、図14(B)に示す第1例のように、固定部1002側の導波管1012内に偏波変換部1030を配置し伝送路結合部1108に直線偏波プローブ1070を使用するが、可動部1004側の導波管1014内には偏波変換部1030を配置せずに伝送路結合部1208に円偏波プローブ1080を使用する形態で示している。
図14(C)に示す第2例のように、可動部1004側の導波管1014内に偏波変換部1030を配置し伝送路結合部1208に直線偏波プローブ1070を使用するが、固定部1002側の導波管1012内には偏波変換部1030を配置せずに伝送路結合部1108に円偏波プローブ1080を使用する形態としてもよい。
何れの場合も、図示しないが、導波管1012の導波管1014とは反対側と導波管1014の導波管1012とは反対側の少なくとも一方には、必要に応じて終端部材1090や電波吸収体1092の何れか一方を配置してもよい。
尚、偏波変換部1030を配置する側の導波管(図14(A)では導波管1012)の方が偏波変換部1030を配置しない側の導波管(図14(A)では導波管1014)よりも管長が長く設定される。
このように、実施例2のヒンジ構造体1001Bは、図14(A)に示すように、偏波変換部1030としては、導波管1012と導波管1014の一方のみに(図の例では導波管1012側に)、単一溝形円形導波管の一例である第1例の偏波変換部1030Aを1つ使用している。前述のように、導波管1012と導波管1014の一方に偏波変換部1030(ここでは偏波変換部1030A)を使用するので、後述の実施例5 のヒンジ構造体1001Eよりも構造が複雑になる。その一方で、片方(図14(B)の第1例では固定部1002側、図14(C)の第2例では可動部1004側)には構造が簡易な直線偏波プローブ1070を使用できる利点がある。
このように、実施例2のヒンジ構造体1001Bは、直線偏波プローブ1070と偏波変換部1030(この例では偏波変換部1030A)を導波管1012と導波管1014の何れか一方にセットし、円偏波プローブ1080を導波管1012と導波管1014の何れか他方にセットした構造である。このような実施例2のヒンジ構造体1001Bにおける「送信アンテナ→筒状部→筒状部→受信アンテナ」方向の信号の流れにおける偏波の状態は、直線偏波→円偏波に変換→円偏波→円偏波となる、つまり、偏波変換部1030(偏波変換構造)を持つ側の円形導波管に直線偏波で入力し、偏波変換構造により円偏波に変換し、偏波変換部1030(偏波変換構造)を持たない円形導波管では円偏波のまま導波管プローブにカップリングする。或いは、円偏波→円偏波→直線偏波に変換→直線偏波となる、つまり、偏波変換部1030(偏波変換構造)を持たない側の円形導波管に円偏波で入力し円偏波のまま偏波変換部1030(偏波変換構造)を持つ他方の円形導波管へ伝送し、偏波変換部1030(偏波変換構造)を持つ円形導波管では偏波変換構造により直線偏波に変換し、変換した直線偏波を導波管プローブにカップリングする。要するに、偏波変換部1030(偏波変換構造)を持った導波管1012と導波管1014の何れか一方と、偏波変換部1030(偏波変換構造)を持たない導波管1012と導波管1014の何れか他方とを用いて、偏波の変換を行ないつつ無線信号の伝送を行なう。この場合の信号の流れを具体的に説明する。
先ず、固定部1002側に直線偏波プローブ1070が使用され、可動部1004側に円偏波プローブ1080が使用される図14(B)に示す第1例の場合について説明する。固定部1002を送信側とし可動部1004を受信側とする場合、送信側である固定部1002のマイクロストリップ線路1022から出力された信号は、直線偏波プローブ1070を介して直線偏波にて導波管1012内に伝送される。導波管1012内の直線偏波のミリ波帯(60ギガヘルツ帯)の電波は、偏波変換部1030Aにより円偏波に変換され可動部1004側の導波管1014へ伝送される。受信側である可動部1004の伝送路結合部1208として使用される円偏波プローブ1080は、円偏波に変換されたミリ波帯(60ギガヘルツ帯)の電波をクランク状部材1082で受信して、授受端1086より直線偏波状態の受信信号をマイクロストリップ線路1024に送る。これにより、図示を割愛した高周波回路に受信信号を受け渡すことができる。
可動部1004を送信側とし固定部1002を受信側とする場合、送信側である可動部1004のマイクロストリップ線路1024から出力された信号は、円偏波プローブ1080を介して円偏波にて導波管1014内に伝送される。導波管1014内の円偏波のミリ波帯(60ギガヘルツ帯)の電波は固定部1002側の導波管1014に送られ、偏波変換部1030Aにより直線偏波に変換され固定部1002側の伝送路結合部1108へ伝送される。受信側である固定部1002の伝送路結合部1108として使用される直線偏波プローブ1070は、直線偏波に変換されたミリ波帯(60ギガヘルツ帯)の電波を受信して、マイクロストリップ線路1022を介して図示を割愛した高周波回路に受け渡すことができる。
次に、可動部1004側に直線偏波プローブ1070が使用され、固定部1002側に円偏波プローブ1080が使用される図14(C)に示す第2例の場合について説明する。可動部1004を送信側とし固定部1002を受信側とする場合、送信側である可動部1004のマイクロストリップ線路1024から出力された信号は、直線偏波プローブ1070を介して直線偏波にて導波管1014内に伝送される。導波管1014内の直線偏波のミリ波帯(60ギガヘルツ帯)の電波は、偏波変換部1030Aにより円偏波に変換され固定部1002側の導波管1012へ伝送される。受信側である固定部1002の伝送路結合部1108として使用される円偏波プローブ1080は、クランク状部材1082で円偏波に変換されたミリ波帯(60ギガヘルツ帯)の電波を受信して、授受端1086より直線偏波状態の受信信号をマイクロストリップ線路1022に送る。これにより、図示を割愛した高周波回路に受信信号を受け渡すことができる。
固定部1002を送信側とし可動部1004を受信側とする場合、送信側である固定部1002のマイクロストリップ線路1022から出力された信号は、円偏波プローブ1080を介して円偏波にて導波管1012と内に伝送される。導波管1012内の円偏波のミリ波帯(60ギガヘルツ帯)の電波は可動部1004側の導波管1014に伝送され、ここで偏波変換部1030Aにより直線偏波に変換され可動部1004側の伝送路結合部1208へ伝送される。受信側である可動部1004の伝送路結合部1208として使用される直線偏波プローブ1070は、直線偏波に変換されたミリ波帯(60ギガヘルツ帯)の電波を受信して、マイクロストリップ線路1024を介して図示を割愛した高周波回路に受け渡すことができる。
図15は、実施例3のヒンジ構造体1001Cを説明する図である。実施例3のヒンジ構造体1001Cは、モード変換部1040を利用して導波管内でTM01モードに変換して無線伝送を行なう形態である。
送信側の伝送路結合部(伝送路結合部1108と伝送路結合部1208の一方)には、導波管(伝送路結合部1108のときは導波管1012、伝送路結合部1208のときは導波管1014)にTE11モードの電波を入力するTE11モードプローブ1176を使用する。TE11モードプローブ1176で導波管1012(或いは導波管1014)にTE11モードの電波を入力すると、TM01発生用突起物1042によりTM01モードとTE21モードが発生するが、TE21消去用突起物1044によりTE21モードが消去され、TM01モードとTE11モードが伝搬される。受信側の伝送路結合部(伝送路結合部1108と伝送路結合部1208の他方)には、導波管1012及び導波管1014内の無線信号伝送路からのTE11モードの無線信号とTM01モードの無線信号を受信する導波管プローブ1078を配置する。
図は、固定部1002側から可動部1004側へ無線伝送を行なう場合を示しており、送信側の伝送路結合部1108に配されたTE11モードプローブ1176で導波管1012にTE11モードの電波を入力すると、TM01発生用突起物1042によりTM01モードとTE21モードが発生され、TE21消去用突起物1044でTE21モードが消去され、TM01モードとTE11モードを伝送路結合部1208側へ伝搬し、導波管プローブ1078で受信される。
実施例3のヒンジ構造体1001Cによれば、伝送路結合部1108や伝送路結合部1208としてTM01モードのアンテナ(導波管プローブ)を使用しなくても、導波管1012と導波管1014との間をTM01モードで無線伝送することができる。そして、TM01モードには偏波が存在しないためヒンジを回転させても受信できる。
図16は、実施例4のヒンジ構造体1001Dを説明する図である。実施例4のヒンジ構造体1001Dは、導波管プローブとしてTM01モード円環パッチアンテナ1086を使用し、導波管内に直接にTM01モードで電波を入射する点に特徴がある。
前述のように、TM01モードには偏波が存在しないためヒンジを回転させても受信できる。ここで、実施例4のヒンジ構造体1001Dのように、導波管内に直接にTM01モードで電波を入射しTM01モードの電波を受信する構成とすることで、モード変換部1040を使用しなくても、導波管内をTM01モードで伝送させることで、ヒンジを回転させても受信できる。
図17は、実施例5のヒンジ構造体1001Eを説明する図である。ここで、図17(A)は、ヒンジ構造体1001Eの全体概要を示す。図17(B)は、ヒンジ構造体1001Eで使用される伝送路結合部1108及び伝送路結合部1208用のアンテナ構造を示す図である。
実施例5のヒンジ構造体1001Eは、図4に示した組合せ態様の構成例1〜構成例3の何れかを適用するものであり、伝送路結合部1108と伝送路結合部1208の双方に円偏波プローブ1080を使用する。導波管1014、基板1202、マイクロストリップ線路1024、終端部材1090が可動部1004を構成する部材で、これらと図示しない一方の通信部を含む全体が、他方の通信部が搭載された固定部1002に対して相対的に回転するようになっている。
図示しないが、導波管1012の導波管1014とは反対側と導波管1014の導波管1012とは反対側の少なくとも一方には、必要に応じて終端部材1090や電波吸収体1092の何れか一方を配置してもよい。例えば、円偏波プローブ1080から放射される電波を効率良く進行方向に伝送させるために、導波管1012と導波管1014の固定部1002側と可動部1004側の端部に、高さHが約λ/4(λ:波長)となる終端部材1090を設置する。
ヒンジ構造体1001Eは、固定部1002の伝送路結合部1108と可動部1004の伝送路結合部1208に円偏波プローブ1080を使用し、導波管1012と導波管1014には偏波変換部1030を適用しない。導波管1012と導波管1014には偏波変換部1030が不要であり構造がシンプルである。
このように、実施例5のヒンジ構造体1001Eは、偏波プローブ1080を使用する導波管を上下2セット設置した構造であり、偏波変換部1030を具備しない導波管1012及び導波管1014を用いて信号伝送を行なう。このような実施例5のヒンジ構造体1001Eにおける信号の流れ(送信アンテナ→筒状部→筒状部→受信アンテナ)の過程の偏波の状態は、円偏波→円偏波のまま伝送→円偏波のまま伝送→円偏波となる。つまり、固定部1002の導波管1012と可動部1004の導波管1014の何れか一方に円偏波で入力し、円偏波のまま導波管1012及び導波管1014を伝達し、固定部1002の導波管1012と可動部1004の導波管1014の何れか他方の導波管プローブにカップリングする。要するに、偏波変換部1030(偏波変換構造)を持たない2つの導波管1012及び導波管1014を用いて円偏波のみで無線信号の伝送を行なう。
この場合の信号の流れを具体的に説明する。送信側のマイクロストリップ線路1022(或いはマイクロストリップ線路1024)から出力された信号は、円偏波プローブ1080を介して円偏波に変換され、導波管1012と導波管1014内に伝送される。受信側の円偏波プローブ1080は、クランク状部材1082で円偏波信号を受信して、授受端1086より直線偏波状態の受信信号を受信側のマイクロストリップ線路1024(或いはマイクロストリップ線路1022)に送る。これにより、図示を割愛した高周波回路に受信信号を受け渡すことができる。
図18は、実施例6のヒンジ構造体1001Fを説明する図であり、ヒンジ構造体1001Eの全体概要を示す。実施例6のヒンジ構造体1001Fは、直交偏波(右旋円偏波、左旋円偏波)を利用することで、時分割多重や周波数分割多重やその他の多重手法を適用せずに、同じ搬送周波数を使用しながら、同一方向の2系統の通信や双方向の通信等、2倍の情報を伝送する点に特徴がある。
図は、図8(A−3c)に示した直線偏波プローブ1070と偏波変換部1030Bを利用する形態を採用して、直線偏波プローブ1070_1を右旋円偏波用として使用し、直線偏波プローブ1070_2を左旋円偏波用として使用して、双方向の通信を行なう例で示している。
例えば、固定部1002側から可動部1004側への信号伝送では、図示しない信号処理回路からマイクロストリップ線路1022_1を介して伝送されたミリ波帯の電気信号は伝送路結合部1108_1に使用される直線偏波プローブ1070_1で無線信号に変換されて導波管1012に供給され、偏波変換部1030B_1(金属突起物1034)で円偏波に変換され導波管1014に供給される。そして、導波管1014の偏波変換部1030B_2(金属突起物1034)で直線偏波に戻され、伝送路結合部1208_1に使用される直線偏波プローブ1070_1で受信され電気信号に戻されてマイクロストリップ線路1024_1を介して図示しない信号処理回路に供給される。
可動部1004側から固定部1002側への信号伝送では、図示しない信号処理回路からマイクロストリップ線路1024_2を介して伝送されたミリ波帯の電気信号は伝送路結合部1108_2に使用される直線偏波プローブ1070_2で無線信号に変換されて導波管1014に供給され、偏波変換部1030B_2(金属突起物1034)で円偏波に変換され導波管1012に供給される。そして、導波管1012の偏波変換部1030_1(金属突起物1034)で直線偏波に戻され、伝送路結合部1108_2に使用される直線偏波プローブ1070_2で受信され電気信号に戻されてマイクロストリップ線路1022_2を介して図示しない信号処理回路に供給される。
図示した例は一例であり、これに限らず、直交偏波(右旋円偏波、左旋円偏波)を生成できる他のプローブ(アンテナ)の形態も採用できる。例えば、図8(B−3c)に示した直線偏波プローブ1070と偏波変換部1030Bとを組み合わせる形態や、図5(B−1)に示した右旋偏波用の円偏波プローブ1080_1と図5(B−5)に示した左旋偏波用の円偏波プローブ1080_2を組み合わせる形態も採用できる。
図19は、実施例7のヒンジ構造体1001Gを説明する図である。ここで、図19(A)は、実施例7の第1例のヒンジ構造体1001GAの全体概要を示す。図19(B)は、実施例7の第2例のヒンジ構造体1001GBの機能ブロック図である。
実施例7のヒンジ構造体1001Gは、時分割多重や周波数分割多重を利用することで、直交偏波(右旋円偏波、左旋円偏波)を適用せずに、同一方向の2系統の通信や双方向の通信等、2倍の情報を伝送する点に特徴がある。
[第1例]
例えば、図19(A)に示す第1例のヒンジ構造体1001GAは、固定部1002と可動部1004のそれぞれに送信部と受信部を配置し、送信部と受信部の組で各別の搬送周波数を用いて、全二重の双方向通信を行なう構成である。図は、固定部1002と可動部1004のそれぞれに1つずつの送信部と受信部を配置する場合で示している。送信部と受信部は例えば注入同期方式を適用する。
例えば、固定部1002には第1通信装置100(送信側信号生成部110と受信側信号生成部120)を配置し、可動部1004には第2通信装置200(送信側信号生成部210と受信側信号生成部220)を配置する。マイクロストリップ線路1022と送信側信号生成部110及び受信側信号生成部120との間にはアンテナ切替部の一例であるサーキュレータを利用した方向性結合部1109を配置し、マイクロストリップ線路1024と送信側信号生成部210及び受信側信号生成部220との間にもアンテナ切替部の一例であるサーキュレータを利用した方向性結合部1209を配置する。
全二重の双方向伝送を可能とするべく、信号伝送する送信部と受信部の組ごとに別の周波数を基準搬送信号として割り当てる。例えば、送信側信号生成部110と受信側信号生成部220の組では第1の搬送周波数f1を使用し、送信側信号生成部210と受信側信号生成部120の組では第2の搬送周波数f2(≠f1)を使用する。伝送路結合部108及び伝送路結合部208のアンテナとしては、例えば直線偏波プローブ1070を使用する。直線偏波プローブ1070に代えて円偏波プローブ1080を使用してもよい。
固定部1002側から可動部1004側への信号伝送では、固定部1002側の送信側信号生成部110で生成された搬送周波数f1のミリ波信号は方向性結合部1109を介して伝送路結合部1108に使用される直線偏波プローブ1070に伝達され、直線偏波で導波管1012及び導波管1014内を無線伝送される。受信側である可動部1004側では、伝送路結合部1208に使用される直線偏波プローブ1070により直線偏波のミリ波信号が受信され、方向性結合部1209を介して受信側信号生成部220に供給される。受信側信号生成部220は送信側信号生成部110が変調に使用した搬送周波数f1に注入同期した再生搬送信号を生成し受信したミリ波信号を復調する。
逆に、可動部1004側から固定部1002側への信号伝送では、可動部1004側の送信側信号生成部210で生成された搬送周波数f2のミリ波信号は方向性結合部1209を介して伝送路結合部1208に使用される直線偏波プローブ1070に伝達され、直線偏波で導波管1014及び導波管1012内を無線伝送される。受信側である固定部1002側では、伝送路結合部1108に使用される直線偏波プローブ1070により直線偏波のミリ波信号が受信され、方向性結合部1109を介して受信側信号生成部120に供給される。受信側信号生成部120は送信側信号生成部210が変調に使用した搬送周波数f2に注入同期した再生搬送信号を生成し受信したミリ波信号を復調する。
このように、実施例7の第1例では、2つの搬送周波数f1及び搬送周波数f2を用いた周波数分割多重の適用において、互いに逆方向にそれぞれ異なる信号を伝送する全2重の双方向通信を干渉問題を起すことなく実現できる。
[第2例]
図19(B)に示す第2例のヒンジ構造体1001GBは、固定部1002と可動部1004の何れか一方を送信側とし他方を受信側とし、同一方向に伝送する場合に、送信側にはN組(Nは2以上の正の整数)の送信部を配置し、受信側にもN組の受信部を配置し、送信部と受信部の組で各別の搬送周波数を用いる構成である。図は、固定部1002を送信側とし可動部1004を受信側とし、N=2とする場合で示している。送信部と受信部はそれぞれ注入同期方式を適用する。
例えば、固定部1002には第1通信装置100(第1の送信側信号生成部110_1及び第2の送信側信号生成部110_2)を配置し、可動部1004には第2通信装置200(第1の受信側信号生成部220_1及び第2の受信側信号生成部220_2)を配置する。第1の送信側信号生成部110_1と第1の受信側信号生成部220_1の組では第1の搬送周波数f1を使用し、第2の送信側信号生成部110_2と第2の受信側信号生成部220_2の組では第2の搬送周波数f2(≠f1)を使用する。伝送路結合部108及び伝送路結合部208のアンテナとしては、例えば円偏波プローブ1080を使用する。円偏波プローブ1080に代えて直線偏波プローブ1070を使用してもよい。
第1の送信側信号生成部110_1で生成された搬送周波数f1のミリ波信号及び第2の送信側信号生成部110_2で生成された搬送周波数f2のミリ波信号は多重化処理部113の一例である結合器で1系統に纏められ、伝送路結合部108の円偏波プローブ1080を介して円偏波にて導波管1012及び導波管1014内に伝送される。受信側の円偏波プローブ1080は、円偏波のミリ波信号を受信し単一化処理部228の一例である分配器で2系統に分離し、第1の受信側信号生成部220_1と第2の受信側信号生成部220_2とに供給する。第1の受信側信号生成部220_1は第1の送信側信号生成部110_1が変調に使用した搬送周波数f1に注入同期した再生搬送信号を生成し受信したミリ波信号を復調し、第2の受信側信号生成部220_2は第2の送信側信号生成部110_2が変調に使用した搬送周波数f2に注入同期した再生搬送信号を生成し受信したミリ波信号を復調する。
このように、実施例7の第2例では、2つの搬送周波数f1及び搬送周波数f2を用いて、同一方向にそれぞれ異なる信号を伝送する周波数分割多重伝送を干渉問題を起すことなく実現できる。
図20は、実施例8のヒンジ構造体1001Hを説明する図である。ここで、図20(A)は、ヒンジ構造体1001Hの全体概要を示す。図20(B)は、ヒンジ構造体1001Hの全体概要を示す側断面図である。
実施例8のヒンジ構造体1001Hは、ヒンジを、導波管の長手方向に長さを変えられる構造、つまり伸縮可能なヒンジ構造とする点に特徴がある。図示した例は、固定部1002側の導波管1012の方が可動部1004の導波管1014よりも管の断面サイズが大きく、導波管1012の内径と導波管1014の外径がほぼ等しく、導波管1014の外壁が、導波管1012の内壁に沿ってスライド(挿脱)可能になっている。
好ましくは、図20(B)に示すように、導波管1014先端の導波管1012との接続部1015を、導波管1012側に掛けてテーパー状にするとよい。こうすることで、導波管1014内を伝搬してきた電波を導波管1012内にスムーズに伝搬できるし、導波管1012内を伝搬してきた電波を導波管1014内にスムーズに伝搬できる。
図21は、実施例9のヒンジ構造体1001Iを説明する図であり、ヒンジ構造体1001Iの全体概要を示す。
実施例9のヒンジ構造体1001Iは、第2例の信号伝送装置1Bを実施例1〜実施例8の何れかのヒンジ構造体1001に適用する態様、つまり、伝送対象の信号だけでなく、電力も無線により相手側に供給する構成とする点に特徴がある。電力を無線で伝送するには、先に説明したように、電波受信型、電磁誘導型、共鳴型等の何れをも採用できるが、図は、実施例1のヒンジ構造体1001Aをベースにして、電力伝送用コイルを使用する電磁誘導型や共鳴型を適用する場合で示している。
例えば、固定部1002側の電力伝送用コイル1912は基板1910にパターン形成され(図は便宜的に1ターンコイルで示している)、引出しパターン1914を介して図示しない電力回路(送電側の場合は電力供給部、受電側の場合は電力受取部)と接続される。可動部1004側の電力伝送用コイル1922は基板1920にパターン形成され(図は便宜的に1ターンコイルで示している)、引出しパターン1924を介して図示しない電力回路(送電側の場合は電力供給部、受電側の場合は電力受取部)と接続される。
実施例9のヒンジ構造体1001Iのように、伝送対象信号を無線で伝送するだけでなく、非接触で電力を伝送する方法も採用することで、電気配線や端子を介したインタフェースが完全に不要となり、ケーブルレスの装置構成にできる。電源を含む全ての信号を、固定部1002側から可動部1004側へ(或いは逆に固定部1002側から可動部1004側へ)無線で伝送できる。
図22は、実施例10のヒンジ構造体1001Jを説明する図であり、ヒンジ構造体1001Jの全体概要を示す側断面図である。
実施例10のヒンジ構造体1001Jは、第1例の信号伝送装置1Aを実施例1〜実施例8の何れかのヒンジ構造体1001に適用する場合、つまり電源は無線伝送しない構成とする場合の電源供給の具体的手法の一例を示すものである。ヒンジ構造において、無線(電波)によらずに伝送対象信号や電源(電力)を相手方の筐体へ伝送するには、フレキシブルプリント基板(FPC)やケーブル等の電気配線を使用することが先ず考えられるが、この場合、電気配線の切断や引回しが問題となる。例えば、伝送対象信号をヒンジ構造の空洞を利用した導波管内で無線伝送する際に、ヒンジ構造の導波管内に電気配線が配設されていると、電気配線の不意の移動により電波の伝送経路が簡単に遮られ通信が妨害される難点がある。又、電波の伝送経路としての空間(導波管)の寸法に余裕を持たせる必要がありヒンジ構造(の筐体)の小型化の妨げにもなる。
この対策として、実施例10では、電気配線ではなく、固定導体(固定ブラシまたは固定電極)と回転導体(回転ブラシまたは回転電極)で構成されたスリップリング機構を利用した機構的な接続を採用する。図示のように、固定部1002側は、導波管1012が固定側ベース3202に取り付けられている。可動部1004側は、導波管1014に回転側ベース3302が取り付けられており、導波管1014と回転側ベース3302とが一体となって、ヒンジ機構の回転軸を中心にして回転可能になっている。
スリップリング機構3000は、固定導体と回転導体を有し、両者の接触により電波での伝送を行なわない信号や電源の電気的な接続が可能になっている。一例として、固定側ベース3202には、導波管1012の外周を取り巻くように円筒部3204が設けられており、円筒部3204の内周部の一部に固定ブラシ3206が取り付けられている。固定ブラシ3206は図示しない配線パターンを介して引出し線3208と接続される。回転側ベース3302には、導波管1014及び導波管1012の外周を取り巻くように円筒部3304が設けられており、円筒部3304の内周部における固定ブラシ3206と対応する部分に回転電極3306が固定ブラシ3206と接触するように取り付けられている。回転電極3306は図示しない配線パターンを介して引出し線3308と接続される。回転電極3306は、回転側ベース3302の外周縁に沿って円周状に導電部材が設けられて構成される。図は、固定ブラシ3206と回転電極3306の対が3組設けられている例で示しているが、その数は任意である。
このような実施例10のヒンジ構造体1001Jにおいては、固定部1002から可動部1004(或いは逆に可動部1004から固定部1002)への電力供給はスリップリング機構3000を介して供給する。固定部1002で取得される映像信号や可動部1004側の各部を制御するまたは可動部1004側で取得される各種の制御情報のような容量の大きいデータは、ミリ波帯或いはその近傍の周波数帯の電波で導波管1012及び導波管1014を介して伝送する。ヒンジ構造の回転角が大きい場合(例えば90度を超える場合)、導波管1012内及び導波管1014内の無線電送は、好ましくは円偏波で伝送する。これによって、固定部1002に対して可動部1004の回転角を大きくする場合でも、高解像度、高画質の画像信号や制御情報を、何らの問題もなく伝送できる。固定部1002と可動部1004との間で高速無線データ伝送を実現できるし、電気配線による通信妨害の影響を受ける虞れはない。因みに、固定ブラシ3206と回転電極3306の対の一部を、伝送対象信号(例えば低速・小容量で十分なもの)の有線伝送に利用してもよい。
前述した信号伝送装置1やヒンジ構造体1001は、信号伝送装置1を備えたヒンジ構造体1001(モジュールの形態:回転駆動部1060を含んでいてもよい)として流通され得るし、さらに、このようなヒンジ構造体1001を具備する電子機器に実装された商品形態でも流通され得る。例えば、携帯電話機、ノートパソコン、ビデオカメラ(ビデオムービー)、電子ブック、電子辞書、電子手帳、携帯型のゲーム機器等のように、第1の筐体(例えば本体側の筐体)と第2の筐体(例えばディスプレイや操作パネル等の筐体)との接続部分に、ヒンジ構造を利用した連結部として利用される。以下に、そのようなヒンジ構造体1001が適用される電子機器の製品例の幾つかについて説明する。
[電子機器:第1例]
図23は、ヒンジ構造体1001が適用される電子機器の第1の製品例を説明する図である。ここで、図23(A)は、第1例の電子機器の全体概要を示す図である。図23(B)は、第1例の電子機器の連結部を示す要部断面図である。図23(C)は、図23(B)のヒンジ構造体1001の概略図である。
第1の製品例は、本実施形態のヒンジ構造体1001を携帯電話機へ適用したものである。尚、図23(B)は、特許第4079126号公報の図2をベースにして、同様の構成材については参照符号を900番台で示し10番台と1番台は同一の参照符号を使用している。以下、主要な部分について説明する。図23(A)に示すように、電子機器の一例である携帯電話機900Aは、操作部911を有する操作部筐体910を第1の筐体として備えるとともに、表示部931を有する表示部筐体930を第2の筐体として備える。図23(B)に示すように、操作部筐体910は、平板形状をしており、内部にプリント配線基板913やその他の装置が収納されている。同様に、表示部筐体930は、平板形状をしており、内部にプリント配線基板933やその他の装置が収納されている。
操作部筐体910と表示部筐体930との間に、ヒンジ構造体1001が構成され、操作部筐体910と表示部筐体930とが折り畳んで重ね合わせられるように接続されている。携帯電話900Aの操作部筐体910と表示部筐体930とをヒンジ構造体1001により折畳み自在に連結する。ヒンジ構造体1001は、2つの導波管1012と導波管1014とを折畳み回転軸と同軸芯に並べた構造を持ち、導波管1012の端部にアンテナ構造を持つ伝送路結合部1108を配し導波管1014の端部にアンテナ構造を持つ伝送路結合部1208を配することで信号伝送装置1を構成する。操作部筐体910と表示部筐体930との連結部分に導波管構造の無線信号伝送路を形成し、送受信間で電波の周波数帯で無線伝送を行なう。
具体的には、表示部筐体930(表示部側軸受932)側の連結部分に設けられた空洞部992から操作部側筒状部920側の連結部分に設けられた空洞部994に亘って、導波管1012と導波管1014とが1つの導波管として一体化し導波路部として使用されるヒンジ構造体1001が空洞内(空洞部992及び空洞部994)に配置されている。詳細には、図23(C)に示すように、表示部筐体930側の連結部分に設けられた空洞部992から内筒部941に掛けて、ヒンジ構造体1001の導波管1012が設けられる。そして、操作部側筒状部920側の連結部分に設けられた空洞部994ヒンジ構造体1001の導波管1014が、その円周断面が導波管1012の円周断面が対向するように設けられる。導波管1012の導波管1014とは反対側の端部は固定部材を介して表示部筐体930に固定される。導波管1014の導波管1012とは反対側の端部は操作部側筒状部920に固定部材を介して固定される。固定部材は、導波管1012や導波管1014を各筐体に固定する際の長さ調整の機能を持つ。ヒンジ構造体1001の実施例1〜実施例10で説明したように、導波管1012と導波管1014の各端部には必要に応じて終端部材1090や電波吸収体1092が設けられる。
導波管1012側の基板1102は通信チップ8001を搭載した基板8101に接続され、更に基板8101は、操作部911(LSI機能部104と対応する)側のプリント配線基板913とワイヤーハーネス996を介して接続される。好ましくは、伝送路結合部1108が配される基板1102に通信チップ8001を設けて、第1の信号処理部(通信チップ8001)と送信部(伝送路結合部1108)を第1の基板(基板1102)に配置して第1の筐体(操作部筐体910)内に設けるとよい。導波管1014側の基板1202は通信チップ8002を搭載した基板8102に接続され、更に基板8102は、表示部931(LSI機能部204と対応する)側のプリント配線基板933とワイヤーハーネス998を介して接続される。好ましくは、伝送路結合部1208が配される基板1202に通信チップ8002を設けて、第2の信号処理部(通信チップ8002)と受信部(伝送路結合部1208)を第2の基板(基板1202)に配置して第2の筐体(表示部筐体930)内に設けるとよい。つまり、操作部側とディスプレイ部側の双方は、一体の基板上に伝送路結合部(アンテナ等)と通信チップを載せるとよい。ヒンジ構造体1001は、通信チップ8001が前述の半導体チップ103と半導体チップ203の何れか一方を備えるとともに通信チップ8002が半導体チップ103と半導体チップ203の他方を備えることで、片方向通信可能な構成になる。ヒンジ構造体1001は、通信チップ8001と通信チップ8002の双方が半導体チップ103と半導体チップ203の両方を備えることで双方向通信可能な構成になる。
尚、この例では、ヒンジ構造体1001の空洞部に配する2つの導波管は、開閉中心軸と同一軸芯であるが、ヒンジ構造体1001Aの構成は複数の筐体を開閉中心軸を中心にして折畳み可能なものであればよく、このようなものに限定されない。例えば、第1の筐体と第2の筐体がボールジョイント等を利用した連結部で連結されることにより、折畳み動作ととともに捻り動作も可能となるように構成されたものにも適用することができる。この場合、連結部は、開閉中心軸の周りに折畳み自在とし、且つ、開閉中心軸に垂直な垂直回転中心軸の周りに回転自在とする2軸ヒンジ機構とする。そして、2つの筐体が相対的に変位した場合でも、両筐体間で電波による無線通信が可能となるように、第1の筐体と第2の筐体とに伝送路結合部(詳しくは例えばアンテナ機構)を各々設けるとともに、開閉中心軸及び垂直回転中心軸上にL字状をなすように導波管を設けて電波の伝送路としの無線信号伝送路9を設け、且つ、2つの中心軸の交点に反射板を設けるとよい。
[電子機器:第1例に対する第1変形例]
図24は、ヒンジ構造体1001が適用される電子機器の第1の製品例に対する第1変形例を説明する図である。第1の製品例に対する第1変形例は、ヒンジ構造体1001の空洞そのものを無線信号伝送路として利用する形態である。第1の筐体の内部に設けられた第1のプリント配線基板に第1の通信部(送信側の信号処理部と送信部)を配置し、第2の筐体の内部に設けられた第2のプリント配線基板に第2の通信部(受信部と受信側の信号処理部)を配置し、送信部と受信部とは第1筒状部の開口部及び第2筒状部の開口部との組付け部分(ヒンジ構造体1001の連結部の空洞部分)で、電波により伝送対象信号を伝達しあう。
例えば、操作部筐体910側のプリント配線基板913に通信チップ8001と伝送路結合部1108を設け、表示部筐体930側のプリント配線基板933に通信チップ8002と伝送路結合部1208を設ける。プリント配線基板913はヒンジ構造体1001の連結部の空洞部992まで配置する。プリント配線基板933はヒンジ構造体1001の連結部の空洞部994まで配置する。伝送路結合部1108及び伝送路結合部1208のアンテナ構造としては、伝送路結合部1108から伝送路結合部1208への指向性(逆に伝送路結合部1208から伝送路結合部1108への指向性)を持つものであればよく、例えばロッドアンテナを使用する。プリント配線基板913及びプリント配線基板933に、伝送路結合部1108と伝送路結合部1208とを、送信端と受信端とが対向するように配置する。これにより、ヒンジ構造体1001の空洞部分(空洞部992及び空洞部994)そのものを無線信号伝送路として利用して表示部筐体930と操作部筐体910との間で情報を送受信することができる。
[電子機器:第1例に対する第2変形例]
図25は、ヒンジ構造体1001が適用される電子機器の第1の製品例に対する第2変形例を説明する図である。第1の製品例に対する第2変形例は、無線信号伝送路として、無線信号(電磁波、電波)を伝送路中に閉じ込めつつ無線信号を伝送させる構造(無線信号閉込め構造、例えばミリ波閉込め構造)を持つ誘電体伝送路9Aを使用し、誘電体素材や遮蔽材に柔軟性を持たせ、ヒンジ構造体1001の空洞に誘電体伝送路9Aを引き回す態様である。柔軟性のある無線信号閉込め構造を無線信号伝送路9として積極的に利用することで、例えば電気配線のように無線信号伝送路9としての誘電体伝送路9Aの引回しを任意に確定することができる。
例えば、操作部筐体910側のプリント配線基板913に通信チップ8001と伝送路結合部1108を設け、表示部筐体930側のプリント配線基板933に通信チップ8002と伝送路結合部1208を設ける。第1変形例とは異なり、プリント配線基板913はヒンジ構造体1001の連結部の空洞部992まで配置する必要はないし、プリント配線基板933はヒンジ構造体1001の連結部の空洞部994まで配置する必要はない。通信チップ8001及び伝送路結合部1108はプリント配線基板913上の任意の位置に任意の向きで配置してよいし、通信チップ8002及び伝送路結合部1208はプリント配線基板933上の任意の位置に任意の向きで配置してよい。誘電体伝送路9Aとしては、たとえば、アンテナ間を例えばシリコーン樹脂系のような柔らかい(柔軟性を持つ)誘電体素材で接続する。伝送路結合部1108及び伝送路結合部1208のアンテナ構造としては誘電体伝送路9Aに電波を入射できる、あるいは誘電体伝送路9Aからの電波を受信できるようなものであればよい。これにより、ヒンジ構造体1001の空洞部分(空洞部992及び空洞部994)に、無線信号伝送路としての誘電体伝送路9Aを引き回して表示部筐体930と操作部筐体910との間で情報を送受信することができる。
[電子機器:第1例に対する第3変形例]
図26は、ヒンジ構造体1001が適用される電子機器の第1の製品例に対する第3変形例を説明する図である。第1の製品例に対する第3変形例は、操作部筐体910と表示部筐体930とを電波の伝達が可能な誘電体素材で構成することで、筐体そのものを無線信号伝送路9として利用する形態である。操作部筐体910と表示部筐体930とを電波の伝達が可能な誘電体素材で構成すれば、操作部筐体910及び表示部筐体930を無線信号伝送路9として利用して、送受信間で電波の周波数帯で無線伝送を行なうこともできる。この場合、操作部筐体910と表示部筐体930の全体を電波の伝達に好適な誘電体素材で構成することは必須ではなく、送受信間を結ぶ経路の部分のみ電波の伝達に好適な誘電体素材で構成してもよい。つまり、筐体を構成する通常の誘電体素材中の送受信間を結ぶ経路の部分(無線信号伝送路をなす部分)のみに、電波の伝達に好適な誘電体素材を埋め込んで誘電体伝送路としてもよい。例えば、図23に示す第1例をベースに、開口部922を誘電体素材922aで埋め込み、開口部942を誘電体素材942aで埋め込む。操作部筐体910と表示部筐体930とが折り畳んで重ね合わせられる過程では、誘電体素材922aと誘電体素材942aとは常に対向した状態が維持される。
操作部筐体910側のプリント配線基板913に通信チップ8001と伝送路結合部1108を設け、表示部筐体930側のプリント配線基板933に通信チップ8002と伝送路結合部1208を設ける。プリント配線基板913はヒンジ構造体1001の連結部の空洞部992の誘電体素材922aの部分まで配置する。プリント配線基板933はヒンジ構造体1001の連結部の空洞部994の誘電体素材942aの部分まで配置する。プリント配線基板913及びプリント配線基板933に、伝送路結合部1108と伝送路結合部1208とを、送信端と受信端とが誘電体素材922aと誘電体素材942aを挟んで対向するように配置する。伝送路結合部1108及び伝送路結合部1208のアンテナ構造としては、伝送路結合部1108から伝送路結合部1208への指向性(逆に伝送路結合部1208から伝送路結合部1108への指向性)を持つものであればよく、例えばロッドアンテナを使用する。これにより、操作部筐体910の一部をなす誘電体素材922aと表示部筐体930の一部をなす誘電体素材942aそのものを無線信号伝送路9としての誘電体伝送路9Aとして利用して表示部筐体930と操作部筐体910との間で情報を送受信することができる。送受信間に操作部筐体910及び表示部筐体930を挟むが、その素材が誘電体素材であるので電波(この例ではミリ波帯)での無線伝送に大きな影響を与えることはない。ヒンジ構造体1001の連結部を利用して電波により筐体間の信号伝送を行なう点においては連結部の空洞に導波管を設けて無線通信を行なう構成と共通するが、導波管が不要であるから、極めて単純な構成で、ヒンジ構造体における信号インタフェースを構築できる。
[電子機器:第2例]
図27は、ヒンジ構造体1001が適用される電子機器の第2の製品例を説明する図である。第2の製品例は、本実施形態のヒンジ構造体1001を表示装置が搭載されるノートパソコンへ適用したものである。図27に示すように、電子機器の一例であるノート型パーソナルコンピュータ900Bは、文字や図形等を入力するとき操作されるキーボード9922が本体部である操作部筐体9921(第1の筐体)に設けられ、画像を表示する表示部9926が第2の筐体である表示部筐体9925に設けられている。操作部筐体9921と表示部筐体9925とは、本実施形態のヒンジ構造体1001が適用された連結部9927(左右2箇所にある)により連結されることで、折畳み自在に連結して構成される。
[電子機器:第3例]
図28は、ヒンジ構造体1001が適用される電子機器の第3の製品例を説明する図である。第3の製品例は、本実施形態のヒンジ構造体1001をビデオカメラへ適用したものである。図28に示すように、電子機器の一例であるビデオカメラ900Cは、本体側筐体9931、前方を向いた側面に被写体撮影用のレンズ9932、撮影時のスタート/ストップスイッチ9933、表示部筐体9935に設けられた表示部9936等を含む。本体側筐体9931と表示部筐体9935とは、本実施形態のヒンジ構造体1001が適用されるとともにボールジョイント等を利用した連結部9937により連結されることで、折畳み動作とともに捻り動作も可能となるように構成されている。
[電子機器:第4例]
図29は、ヒンジ構造体1001が適用される電子機器の第4の製品例を説明する図である。第4の製品例は、本実施形態のヒンジ構造体1001を携帯型のゲーム機器へ適用したものである。図29に示すように、電子機器の一例である携帯型のゲーム機器900Dは、カーソルを移動するとき操作される各種の操作ボタンを有する操作部9942及び画像を表示する第1表示部9943が本体側筐体9941(第1の筐体)に設けられ、画像を表示する第2表示部9946が第2の筐体である表示部筐体9945に設けられている。本体側筐体9941と表示部筐体9945とは、本実施形態のヒンジ構造体1001が適用された連結部9947(左右2箇所にある)により連結されることで、折畳み自在に連結して構成される。
[電子機器:第5例]
図30は、ヒンジ構造体1001が適用される電子機器の第5の製品例を説明する図である。第5の製品例は、本実施形態のヒンジ構造体1001を電子手帳へ適用したものである。図30に示すように、電子機器の一例である電子手帳900Eは、文字や図形等を入力するとき操作されるキーボード9952が本体部である操作部筐体9951(第1の筐体)に設けられ、画像を表示する表示部9956が第2の筐体である表示部筐体9955に設けられている。操作部筐体9951と表示部筐体9955とは、本実施形態のヒンジ構造体1001が適用された連結部9957(左右2箇所にある)により連結されることで、折畳み自在に連結して構成される。
[その他の電子機器]
本実施形態のヒンジ構造体1001は、携帯電話機900A、ノート型パーソナルコンピュータ900B、ビデオカメラ900C、ゲーム機器900Dのみならず、PDA(Personal Digital Assistant)等のような他の種類の携帯端末装置であっても、同様の技術的思想に基づいて、適用することができる。
以上、本発明について実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は前記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で前記実施形態に多様な変更又は改良を加えることができ、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
又、前記の実施形態は、クレーム(請求項)に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組合せの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。前述した実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜の組合せにより種々の発明を抽出できる。実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、効果が得られる限りにおいて、この幾つかの構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。