以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。各機能要素について形態別に区別する際には、A,B,C,…等のように大文字のアルファベットの参照子を付して記載し、特に区別しないで説明する際にはこの参照子を割愛して記載する。図面においても同様である。
説明は以下の順序で行なう。
1.全体概要
2.伝送処理系統:基本
3.具体的な適用例
基本構成1:1対1の非接触電力伝送及び1対1の信号伝送
基本構成2:1対1の非接触電力伝送及び1対1の信号伝送の具体例
実施例1 :1対多の非接触電力伝送及び1対多の信号伝送
実施例2 :1対多の非接触電力伝送及び多対多の信号伝送
実施例3 :1対多の非接触電力伝送及び1対多の信号伝送の具体例
実施例4 :他の電子機器への適用事例
4.比較例との対比
5.位相不確定性とその対策手法
<全体概要>
本実施形態の伝送装置では、一方の負荷装置(例えば通信装置)と他方の負荷装置(例えば通信装置)とがそれぞれ信号処理を行なう装置をベースに、パワー伝送を要する電源を無線により伝送する、つまり、他方(相手方)の負荷装置で使用する電力を無線により一方の負荷装置を備える側から供給する構成を追加している点に特徴がある。一方の負荷装置は、他方の負荷装置にて使用される電力を無線により供給する送電端末の一例である電力供給部を備えるし、他方の負荷装置は、一方の負荷装置側から無線により伝送されてきた電力を受け取る受電端末の一例である電力受取部(電力受電装置)を備える。送電側の電力供給部や受電側の電力受取部を纏めて電力回路と称し、これらにより非接触電力伝送装置が構成される。先ず、基本的な事項について以下に説明する。
[伝送装置、伝送方法:非接触電力伝送+信号(データ)伝送]
本発明の第1の態様及び第5の態様と対応する本実施形態の第1の構成においては、伝送装置は、電力伝送信号を無線により供給する電力供給装置、電力供給装置から供給された電力伝送信号を受け取る電力受取装置、及び、伝送対象の信号(データ)を電波により伝送する送信装置(送信側の通信装置)や受信装置(受信側の通信装置)(両者を纏めて単に通信装置とも称する)を伝送装置に設ける。電力供給装置は電力伝送信号を発する送電素子及び送電素子を駆動する給電電源部を具備する。電力受取装置は電力伝送信号を受け取る受電素子及び受電素子が受電した電力伝送信号に基づいて電力を生成する受電電源部を具備する。そして、電力を非接触で伝送する系統と信号伝送を非接触で行なう系統のそれぞれを複数設ける。
第1の構成においては、信号伝送装置は、高速性や大容量性が求められる信号のみを伝送対象信号とし、その他の低速・小容量で十分なものや電源等直流と見なせる信号に関しては電波への変換対象としない態様としてもよいし、更には、その他の低速・小容量で十分なものも電波による伝送対象信号に含めてもよい。因みに、電源については電力供給装置と電力受取装置とにより無線で伝送される。無線での伝送の対象としない信号については、例えばフレキシブルプリント基板(FPC)やケーブル等の電気配線を使用する、或いはスリップリング等の機構的な接続を使用する等、従前と同様の手法で接続する。電波に変換する前の元の伝送対象の電気信号を纏めてベースバンド信号と称する。高速性や大容量性が求められる信号の他に、その他の低速・小容量で十分なものを電波で伝送してもよく、この場合、電源(電力)も含む全ての信号を無線により伝送できる。
因みに、第1の構成においては、伝送対象の信号を無線により伝送する際には、電波に限らず光を使用してもよい。更には、電力伝送と信号伝送とをそれぞれ異なる信号で行なえばよく、その限りにおいて電力伝送信号の周波数と信号伝送用の搬送信号の周波数とを異ならせてもよいし同じにしてもよい。但し、電力伝送信号によるノイズ等の影響を防止する観点では、好ましくは、電力伝送信号の周波数と信号伝送用の搬送信号の周波数とを異ならせる。電力伝送信号の周波数が情報の無線通信に使用する周波数帯域と重なっていなければよく、その限りにおいて種々の周波数を使用してよい。又、適用できる変調方式には制限があるが、電力伝送効率の低下が許容される場合には、信号伝送と電力伝送の各搬送波を共通にしてもよい(この場合、電力伝送信号の周波数と信号伝送用の搬送信号の周波数とは同じになる)。
第1の構成においては、信号伝送を無線で行なえばよく、その限りにおいて、電波や光等、電気配線によらない方法を採ればよい。但し、好ましくは、電波を使用した方がよい。信号伝送を、電気配線や光によらずに電波を利用すれば、無線通信技術を適用でき、電気配線を使用する場合の難点を解消できるし、光を利用する場合よりも簡単かつ安価な構成で信号インタフェースを構築できる。サイズ・コストの面で、光を利用する場合よりも有利である。
第1の構成においては、電力供給装置、電力受取装置、一方の通信装置、他方の通信装置のそれぞれが何れの箇所に配置されるかは基本的には問題とならず、同一の基板や同一のユニットに配置されていてもよい。但し、電気配線を使用しない非接触の伝送という点においては、電力供給装置と、送信側の通信装置及び受信側の通信装置の何れか一方とが給電側のユニットに配置されており、電力受取装置と、送信側の通信装置及び受信側の通信装置の他方とが受電側のユニットに配置されている形態が好適である。つまり、ユニット間の伝送に本発明を適用することが好ましい。
ここで、「ユニット」とは、モジュールとも称されるもので、電力や信号を電気配線ではなく非接触で伝送しようとする際の一方の装置と他方の装置の双方が「ユニット」に該当する。前記の関係にある限り、何れのものも「ユニット」に含まれる。例えば、半導体モジュールや電子機器内に搭載される回路基板を最小単位とするのが典型的であるが、これには限定されない。例えば、車両における車体(ボディ)とステアリングをそれぞれユニットとして扱う、車両におけるインストルメントパネルとメータをそれぞれユニットとして扱う等、電力や信号を電気配線ではなく非接触で伝送する際の一方の装置と他方の装置との関係である限り何れのものも「ユニット」に該当する。つまり、給電(送電)側と受電側との関係として捉えられるもの全てが「ユニット」に該当する。
第1の構成においては、好ましくは、電力伝送信号から受電側の通信装置用の基準信号を生成するとよい。即ち、電力受取装置が生成した電力の供給を受けて動作する一方の通信装置が信号伝送用に使用する搬送信号の基準となる基準信号を、電力受取装置が受電した電力伝送信号に基づいて生成する基準信号生成部をそれぞれの系統について備え、電力供給装置と他方の通信装置とは同一の基準信号に基づいてそれぞれが担当する処理を行なうとよい。こうすることで、何れの系統においても、給電側の通信装置における変調処理(或いは復調処理)と給電側の通信装置における復調処理(或いは変調処理)とを同期して行なうことができ、復調処理に同期検波方式を用いる場合に好適な態様となる。この場合、好ましくは、受信側の通信装置は、基準信号生成部で生成された基準信号に基づいて同期検波方式で復調処理を行なうための搬送信号を生成するタイミング信号生成部を有するとよい。
第1の構成においては、送信側の通信装置と受信側の通信装置との組を複数有する構成にするが、この場合、送信側の1つの通信装置或いは受信側の1つの通信装置が複数の信号伝送系統に兼用される第1の形態を採ることができる。第1の形態を採れば、送信側と受信側のうち、兼用される側の構成が簡易になる。又、送信側の通信装置と受信側の通信装置とで構成される信号伝送系統を各別に複数有する構成とし、周波数分割多重により信号伝送を行なう第2の形態を採ることもできる。第2の形態を採れば、各信号伝送系統では他の系統から混信を受けずに同時通信を行なうことができる。
第1の構成においては、信号伝送装置は、ミリ波帯(波長が1〜10ミリメートル)の搬送周波数を主に使用するのが好適である。但し、ミリ波帯に限らず、より波長の短い例えばサブミリ波帯(波長が0.1〜1ミリメートル)やより波長の長いセンチ波帯(波長が1〜10センチメートル)等、ミリ波帯近傍の搬送周波数を使用する場合にも適用可能である。例えば、サブミリ波帯〜ミリ波帯、ミリ波帯〜センチ波帯、あるいはサブミリ波帯〜ミリ波帯〜センチ波帯を使用してよい。
[伝送装置、伝送方法:非接触電力伝送+基準信号伝送]
本発明の第2の態様及び第6の態様と対応する本実施形態の第2の構成においては、伝送装置は、電力の供給を受けて予め定められた信号処理を行なう第1の負荷装置と、第1の負荷装置における信号処理の基準となる基準信号に基づいて電力伝送信号を生成して無線により供給する電力供給装置と、電力供給装置から供給された電力伝送信号を受け取る電力受取装置と、電力受取装置から電力の供給を受けて予め定められた信号処理を行なう第2の負荷装置と、電力受取装置が受電した電力伝送信号に基づいて第2の負荷装置における信号処理の基準となる基準信号を生成する基準信号生成部とを複数組備える。電力供給装置は電力伝送信号を発する送電素子及び送電素子を駆動する給電電源部を具備する。電力受取装置は電力伝送信号を受け取る受電素子及び受電素子が受電した電力伝送信号に基づいて電力を生成する受電電源部を具備する。そして複数組(複数系統)のそれぞれにおいて、第1の負荷装置における信号処理の基準となる基準信号に基づいて生成した電力伝送信号を無線により伝送して受電側の負荷装置に電力を供給するとともに、受電した電力伝送信号に基づいて受電側の負荷装置における予め定められた信号処理の基準となる基準信号を生成する。
因みに、第2の構成においては、給電側の第1の負荷装置が一方(給電側)の通信装置となり、受電側の第2の負荷装置が他方(受電側)の負荷装置となる形態をとり、給電側の通信装置と受電側の通信装置との間で伝送対象の信号を無線により伝送してもよい。この場合にも、伝送対象の信号を無線により伝送する際には、電波に限らず光を使用してもよい。更には、電力伝送と信号伝送とをそれぞれ異なる信号で行なえばよく、その限りにおいて電力伝送信号の周波数と信号伝送用の搬送信号の周波数とを異ならせてもよいし同じにしてもよい。但し、電力伝送信号によるノイズ等の影響を防止する観点では、好ましくは、電力伝送信号の周波数と信号伝送用の搬送信号の周波数とを異ならせる。電力伝送信号の周波数が情報の無線通信に使用する周波数帯域と重なっていなければよく、その限りにおいて種々の周波数を使用してよい。又、電力伝送効率の低下が許容される場合には、信号伝送と電力伝送の各搬送波を共通にしてもよい(この場合、電力伝送信号の周波数と信号伝送用の搬送信号の周波数とは同じになる)。
第2の構成においては、電力供給装置、電力受取装置、第1の負荷装置、第2の負荷装置のそれぞれが何れの箇所に配置されるかは基本的には問題とならず、同一の基板や同一のユニットに配置されていてもよい。但し、電気配線を使用しない非接触の伝送という点においては、電力供給装置と第1の負荷装置とが給電側のユニットに配置されており、電力受取装置と第2の負荷装置とが受電側のユニットに配置されている形態が好適である。
第2の構成においては、好ましくは、電力伝送信号から受電側の第2の負荷装置用の基準信号を生成するとよい。即ち、電力供給装置と第1の負荷装置の双方は同一の基準信号に基づいてそれぞれが担当する処理を行ない、第2の負荷装置は、基準信号生成部が生成した基準信号に基づいて、第1の負荷装置における信号処理と同期して予め定められた信号処理を行なうとよい。こうすることで、給電側の第1の負荷装置における信号処理と、給電側の第2の負荷装置における信号処理とを同期して行なうことができる。
第1の構成及び第2の構成の何れにおいても、基準信号生成部を備える場合には、好ましくは、電力供給装置が発生する電力伝送信号の位相と電力受取装置が受け取る電力伝送信号の位相とが一致しないことに伴う影響を抑制する位相処理部を備えるとよい。
第1の構成及び第2の構成の何れにおいても、一の電力供給装置から発せられた電力伝送信号を共通に使用して電力を生成する電力受取装置を複数備える構成を採ることができる。つまり、1つの送電素子に対して複数の受電素子が配置される構成を採ることができる。
第1の構成及び第2の構成の何れにおいても、複数の電力供給装置を備えた給電側のユニットを1つ備え、複数の電力供給装置の何れか1つと対応する1つの電力受取装置を備えた受電側のユニットを複数の電力供給装置のそれぞれについて備える構成を採ることができる。つまり、給電側と受電側の対が複数存在するが、給電側を1ユニットとする形態である。この場合、好ましくは、受電側の受電素子と給電側の送電素子とが平面視したときに重なるように配置し、各系統を異なる周波数で駆動するのが好ましい。具体的には、複数の電力供給装置のそれぞれは電力伝送信号を発する送電素子及び送電素子を駆動する給電電源部を具備し、複数の電力受取装置のそれぞれは電力伝送信号を受け取る受電素子及び受電素子が受電した電力伝送信号に基づいて電力を生成する受電電源部を具備し、複数の送電素子のそれぞれが同軸芯となるように平面状に配置されており、複数の送電素子と複数の受電素子の対応するもの同士が同一軸で重なって配置されている構成にする。そして、複数の給電電源部のそれぞれが対応する送電素子をそれぞれ異なる周波数で駆動するとよい。
第1の構成及び第2の構成の何れにおいても、電力供給装置を備えた給電側のユニットを複数備え、複数の電力供給装置の何れか1つと対応する1つの電力受取装置を備えた受電側のユニットを複数の電力供給装置のそれぞれについて備える構成を採ることができる。この場合、受電素子と送電素子とが平面視したときに並列となるように配置してもよく、この場合は、各系統を同じ周波数で駆動してもよい。具体的には、電力受取装置を具備する受電側のユニットを複数有し、電力供給装置を具備する給電側のユニットを、複数の受電側のユニットのそれぞれと対応するように複数備える。複数の電力供給装置のそれぞれは電力伝送信号を発する送電素子及び送電素子を駆動する給電電源部を具備し、複数の電力受取装置のそれぞれは電力伝送信号を受け取る受電素子及び受電素子が受電した電力伝送信号に基づいて電力を生成する受電電源部を具備する。更に、複数の給電側のユニットは、複数の送電素子のそれぞれを平面視したときに異なる位置に配置されるように設け、複数の受電側のユニットは、複数の送電素子と複数の受電素子の対応するもの同士が同一軸で重なって配置されるように設ける。そして、複数の給電電源部のそれぞれは、対応する送電素子をそれぞれ異なる周波数又は同一の周波数で駆動する。
第1の構成及び第2の構成の何れにおいても、電力供給装置と電力受取装置の組を複数備えるが、複数の電力供給装置(詳しくは給電電源部)のそれぞれは、対応する送電素子の駆動のオン・オフを各別に制御するとよい。これにより、送電素子の駆動のオン・オフの各別の制御に連動して、複数の電力受取装置のそれぞれから給電を受ける受電側の通信装置や負荷装置のそれぞれのオン・オフを各別に制御することができる。
[非接触電力伝送装置]
電力供給装置(電力給電装置や送電端末とも称される)から電力受取装置(電力受電装置や受電端末とも称される)に対して無線(非接触)で電力を伝送する方法が種々提案されている。非接触で電力を伝送する方法は、「非接触給電」、「ワイヤレス給電」、「ワイヤレス電力伝送」等と称される。非接触電力伝送の原理は、電磁エネルギを利用するものであり、放射型(電波受信型、電波収穫型)と非放射型に大別される。放射型は、さらにマイクロ波型とレーザ型に区別され、非放射型はさらに電磁誘導型と共鳴型(電磁共鳴型とも称する)に区別される。他の分類方法として電磁コイルを用いるか否かで区別する方法があり、この場合、電波受信型は電磁コイルを用いない方式に該当し、電磁誘導型及び共鳴型は電磁コイルを用いる方式に該当する。これらの方法を用いれば、電気配線や端子を介したインタフェースが完全に不要となり、ケーブルレスの装置構成にできる。電源を含む全ての信号を、無線により伝送できる。
何れの方式も、電力供給部が送電側(1次側とも称される)に設けられ、電力受取部が受電側(2次側とも称される)に設けられ、送電素子と受電素子の間で電磁気の結合により電力を無線により伝送する。電力供給部は、送電素子及び送電素子を駆動する送電素子駆動回路としての給電電源部を具備する。電力受取部は、受電素子及び受電素子で受電した電力を後段回路で使用するのに都合のよい形態(直流・交流の相違や電圧等)に整形する整流回路等の受電電源部を具備する。
例えば、電波受信型は、電波のエネルギを利用するもので、電波を受信することで得られる交流波形を、整流回路により直流電圧に変換する。周波数帯によらず(例えばミリ波でもよい)電力を伝送できる利点がある。図示を割愛するが、電力を無線により供給する電力供給部には、ある周波数帯の電波を送電素子(例えばアンテナ)から送信する送信回路を設ける。電力供給部より無線により電力を受け取る電力受取部には、受電素子(例えばアンテナ)で受信した電波を整流する整流回路を設ける。送信電力にもよるが、受信電圧は小さく、整流回路に使用する整流ダイオードとしては順方向電圧ができるだけ小さなもの(例えばショットキーダイオード)を使用するのが好ましい。整流回路の前段に共振回路を構成して、電圧を大きくしてから整流してもよい。一般的な野外での使用における電波受信型においては送信電力の多くが電波として拡散するため電力伝送効率が低くなるが、伝送範囲を制限できる構成(例えば閉込め構造のミリ波信号伝送路)と組み合わせることで、その問題を解消できる。
電磁誘導型は、コイルの電磁結合と誘導起電力を利用する。図示を割愛するが、送電側には、送電素子として1次コイルを設け、電力を無線により供給する電力供給部は、1次コイルを比較的高い周波数で駆動する。受電側には、1次コイルと対向する位置に受電素子として2次コイルを設けるとともに、電力供給部から無線により電力を受け取る電力受取部には、整流ダイオード、共振、及び平滑用のコンデンサ等を設ける。例えば、整流ダイオードと平滑用のコンデンサで整流回路を構成する。1次コイルを高周波数で駆動すると、1次コイルと電磁結合された2次コイルに誘導起電力が発生する。この誘導起電力に基づき、整流回路により直流電圧を作り出す。この際、共振現象を利用して受電効率を高めることもある。電磁誘導型を採用する場合には、電力供給部と電力受取部の間を近接させ、その間(具体的には1次コイルと2次コイルの間)には他の部材(特に金属)が入り込まないようにするとともに、コイルに対して電磁遮蔽を採る。前者は、金属が加熱されるのを防止するためであり(電磁誘導加熱の原理による)、後者は他の電子回路への電磁障害対策のためである。電磁誘導型は。伝送可能な電力が大きいが、前述のように送受間を近接(例えば1センチメートル以下)させる必要がある。
共鳴型は、送電側と受電側の2つの共振器(共鳴素子)の間の共鳴現象を利用するもので、電力を供給する電力供給装置に備えられた送電素子としての送電用共振器(送電共鳴素子)と、電力供給装置から供給される電力を受ける電力受電装置に備えられた受電素子としての受電用共振器(受電用共鳴素子)との間の電場又は磁場の共鳴(共振)による結合によって電力を伝送する方式である。つまり、共鳴型は、2つの振動子(振り子、音叉)が共振する現象と同じ原理を応用するもので、電磁波でなく電場又は磁場の一方での近接場における共鳴現象を利用する。固有振動数が同じ2つの振動子の一方(電力供給部に相当)を振動させた場合に、他方(電力受取部に相当)の振動子に小さな振動が伝達されるだけで、共鳴現象により大きく揺れ始める現象を利用するのである。
電場の共鳴を利用する方式を以下では電界共鳴型と記述し、磁場の共鳴を利用する方式を以下では磁界共鳴型と記述する。尚、今日では、効率や伝送距離、位置ずれや角度ずれ等の側面で有利な電場又は磁場の共鳴を利用した「共鳴型」が着目されており、その中でも特に、生物体によるエネルギ吸収の影響の少ない(誘電体の損失の少ない)磁場の共鳴を利用する磁界共鳴型や磁気共鳴型と称される方式が注目されている。
電場での共鳴現象を利用する方式の場合は、電力を無線により供給する電力供給部(送電側)と、電力供給部より無線により電力を受け取る電力受取部(受電側)の双方には、誘電体を配置し、両者間で電場の共鳴現象が発生するようにする。アンテナには、誘電率が数10〜100超で(一般的なものより非常に高い)、誘電損失ができるだけ小さい誘電体を使用することと、特定の振動モードをアンテナに励起させることが肝要となる。例えば、円板のアンテナを使用する場合、円板の周りの振動モードがm=2又は3のとき結合が最も強い。
電場の共鳴型は、磁場よりも送電距離が短く、発熱が少ないが、障害物があると電磁波による損失が大きくなる。磁場の共鳴型は、人間等の誘電体の静電容量の影響を受けず、電磁波による損失が少なく、電場よりも送電距離が長い。電場の共鳴型の場合は、ミリ波帯よりも低周波を使用する場合は回路基板側で使用している信号との干渉(EMI)の影響が大きい点を考慮する必要があるし、又、ミリ波帯を使用する場合は信号に関してのミリ波信号伝送との間での干渉を考慮する必要がある。磁場の共鳴型の場合は、基本的に電磁波でのエネルギ流出は少ないし、波長もミリ波帯と異なるようにできるので、回路基板側やミリ波信号伝送との間での干渉問題から解放される。
磁場での共鳴現象を利用する方式の場合は、電力を無線により供給する電力供給部(送電側)と、電力供給部より無線により電力を受け取る電力受取部(受電側)の双方には、LC共振器を配置し、両者間で磁場の共鳴現象が発生するようにする。例えば、ループ型のアンテナの一部をコンデンサの形状にし、ループ白身のインダクタンスと合わせてLC共振器にする。Q値(共鳴の強さ)を大きくすることができ、電力が共鳴用アンテナ以外に吸収される割合が小さい。そのため、磁場を利用する方式である点で電磁誘導型と似通ってはいるが、電力供給部と電力受取部の間を電磁誘導型よりも離した状態で数kWの伝送も可能である点で全く異なる方式である。
共鳴型の場合は、電場、磁場の何れの共鳴現象を利用するかに拘らず、電磁場の波長λとアンテナとなる部品の寸法(電場では誘電体の円板の半径、磁場ではループの半径)、送電可能な最大距離(アンテナ間距離D)がおおよそ比例する。換言すると、振動させる周波数と同じ周波数の電磁波の波長λ、アンテナ間距離D、アンテナ半径rの比をほぼ一定に保つことが肝要となる。又、近接場での共鳴現象であるため、波長λはアンテナ間距離Dよりも十分に大きくし、アンテナ半径rはアンテナ間距離Dより小さ過ぎないようにすることが肝要となる。
本実施形態では、電力伝送を無線により実現する手法としては、電波受信型、電磁誘導型、共鳴型等の何れをも採用できるが、電磁コイルを用いる方式を採用すると好ましく、特に、共振現象又は共鳴現象を利用して電力を非接触により伝送するとよく、更には、共鳴型を採用するのが最も効果的である。例えば、電磁誘導型の電力供給効率は、1次コイルの中心軸と2次コイルの中心軸が一致している場合が最大であり、軸ズレがあると効率が低下する。換言すると、1次コイルと2コイルの位置合わせ精度が電力伝送効率に大きく影響を与える。電子機器の種類にもよるが、送電側と受電側の相対位置が変動し得る形態の場合には、電磁誘導型の採用は難点がある。電波受信型や電場による共鳴型ではEMI(干渉)を考慮する必要がある。その点、磁場による共鳴型では、これらの問題から解放される。
[電子機器]
本発明の第3の態様や本発明の第4の態様と対応する本実施形態の電子機器においては、各部がひとつの筐体内に収容された状態の装置構成で1つの電子機器が構成されることもあるし、複数の装置(電子機器)の組合せで1つの電子機器の全体が構成されることもある。本実施形態の伝送装置は、例えば、デジタル記録再生装置、地上波テレビ受像装置、携帯電話装置、ゲーム装置、コンピュータ等の電子機器において使用される。
通信装置を構成する場合、送信側単独の場合と、受信側単独の場合と、送信側と受信側の双方を有する場合とがある。送信側と受信側の各通信装置は無線信号伝送路(例えばミリ波信号伝送路)を介して結合されミリ波帯で信号伝送を行なうように構成される。伝送対象の信号を広帯域伝送に適したミリ波帯域に周波数変換して伝送する。ただし、如何なる場合でも、送信装置と受信装置の組(対)で、信号伝送装置を構成する。
そして、比較的近距離に配置された通信装置間では、伝送対象の信号をミリ波信号に変換してから、このミリ波信号をミリ波信号伝送路を介して伝送する。本実施形態の「無線伝送」とは、伝送対象の信号を一般的な電気配線(単純なワイヤー配線)ではなく無線(好ましくは電波:この例ではミリ波)で伝送することを意味する。
「比較的近距離」とは、放送や一般的な無線通信で使用される野外(屋外)での通信装置間の距離に比べて距離が短いことを意味し、伝送範囲が閉じられた空間として実質的に特定できる程度のものであればよい。「閉じられた空間」とは、その空間内部から外部への電波の漏れが少なく、逆に、外部から空間内部への電波の到来(侵入)が少ない状態の空間を意味し、典型的にはその空間全体が電波に対して遮蔽効果を持つ筐体(ケース)で囲まれた状態である。例えば、1つの電子機器の筐体内での基板間通信や同一基板上でのチップ間通信や、一方の電子機器に他方の電子機器が装着された状態のように複数の電子機器が一体となった状態での機器間の通信が該当する。「一体」は、装着によって両電子機器が完全に接触した状態が典型例であるが、両電子機器間の伝送範囲が閉じられた空間として実質的に特定できる程度のものであればよい。例えば数センチ以内あるいは10数センチ以内等、比較的近距離で、両電子機器が多少離れた状態で定められた位置に配置されていて「実質的に」一体と見なせる場合も含む。要するに、両電子機器で構成される電波が伝搬し得る空間内部から外部への電波の漏れが少なく、逆に、外部からその空間内部への電波の到来(侵入)が少ない状態であればよい。
以下では、1つの電子機器の筐体内での信号伝送を筐体内信号伝送と称し、複数の電子機器が一体(以下、「実質的に一体」も含む)となった状態での信号伝送を機器間信号伝送と称する。筐体内信号伝送の場合は、送信側の通信装置(通信部:送信部)と受信側の通信装置(通信部:受信部)が同一筐体内に収容され、通信部(送信部と受信部)間に無線信号伝送路が形成された信号伝送装置が電子機器そのものとなり得る。一方、機器間信号伝送の場合、送信側の通信装置(通信部:送信部)と受信側の通信装置(通信部:受信部)がそれぞれ異なる電子機器の筐体内に収容され、両電子機器が定められた位置に配置され一体となったときに両電子機器内の通信部(送信部と受信部)間に無線信号伝送路が形成されて信号伝送装置が構築される。
無線信号伝送路を挟んで設けられる各通信装置においては、送信系統と受信系統が対となって組み合わされて配置される。各通信装置に送信系統と受信系統を併存させることで双方向通信ができる。各通信装置に送信系統と受信系統を併存させる場合、一方の通信装置と他方の通信装置との間の信号伝送は片方向(一方向)のものでもよいし双方向のものでもよい。例えば、第1の通信装置が送信側となり第2の通信装置が受信側となる場合には、第1の通信装置に送信機能をなす第1の通信部が配置され第2の通信装置に受信機能をなす第2の通信部が配置される。第2の通信装置が送信側となり第1の通信装置が受信側となる場合には、第2の通信装置に送信機能をなす第1の通信部が配置され第1の通信装置に受信機能をなす第2の通信部が配置される。
送信機能をなす第1の通信部は、例えば、伝送対象の信号を信号処理してミリ波帯の電気信号を生成する送信側の信号生成部(伝送対象の電気信号をミリ波帯の電気信号に変換する信号変換部)と、ミリ波帯の無線信号を伝送するミリ波信号伝送路に送信側の信号生成部で生成されたミリ波帯の電気信号を結合させる送信側の伝送路結合部を送信部に備えるものとする。好ましくは、送信側の信号生成部は、伝送対象の信号を生成する機能部と一体であるのがよい。
伝送路結合部としては、例えば、アンテナ結合部やアンテナ端子やマイクロストリップ線路やアンテナ等を具備するアンテナ構造が適用される。伝送路結合部と無線信号伝送路との結合箇所が送信箇所や受信箇所である。例えば、アンテナ結合部は伝送路結合部やその一部を構成する。アンテナ結合部とは、狭義的には例えば半導体チップ内の電子回路と、チップ内又はチップ外に配置されるアンテナを結合する部分をいい、広義的には、半導体チップと無線信号伝送路を信号結合する部分をいう。例えば、アンテナ結合部は、少なくともアンテナ構造を備える。アンテナ構造は、無線信号伝送路との結合部における構造をいい、例えばミリ波帯の電気信号を電磁波(電波)に変換して無線信号伝送路に結合させるものであればよく、アンテナそのもののみを意味するものではない。
無線信号伝送路は、自由空間伝送路として、例えば筐体内の空間を伝搬する構成にしてもよい。又、好ましくは、導波管、伝送線路、誘電体線路、誘電体内等の導波構造で構成し、ミリ波帯域の電磁波を伝送路に閉じ込める構成にして、効率よく伝送させる特性を有するものとするのが望ましい。例えば、一定範囲の比誘電率と一定範囲の誘電正接を持つ誘電体素材を含んで構成された誘電体伝送路にするとよい。例えば、筐体内の全体に誘電体素材を充填することで、送信側の伝送路結合部と受信側の伝送路結合部の間には、自由空間伝送路ではなく誘電体伝送路が配される。又、送信側の伝送路結合部のアンテナと受信側の伝送路結合部のアンテナの間を誘電体素材で構成されたある線径を持つ線状部材である誘電体線路で接続することで誘電体伝送路を構成してもよい。電波(例えばミリ波信号)を伝送路に閉じ込める構成の無線信号伝送路としては、誘電体伝送路の他に、伝送路の周囲が遮蔽材で囲まれその内部が中空の中空導波路としてもよい。
例えば、送信側の信号生成部は変調回路を有し、変調回路が伝送対象の信号(ベースバンド信号)を変調する。送信側の信号生成部は変調回路によって変調された後の信号を周波数変換してミリ波帯の電気信号を生成する。原理的には、伝送対象の信号をダイレクトにミリ波帯の電気信号に変換してもよい。送信側の伝送路結合部は、送信側の信号生成部によって生成されたミリ波帯の電気信号を無線信号(電磁波、電波)に変換して無線信号伝送路としてのミリ波信号伝送路に供給する。
変調処理は、基本的には、振幅・周波数・位相の少なくとも1つを伝送対象信号で変調するものであればよく、これらの任意の組合せの方式も採用し得る。例えば、アナログ変調方式であれば、例えば、振幅変調(AM:Amplitude Modulation)とベクトル変調がある。ベクトル変調として、周波数変調(FM:Frequency Modulation)と位相変調(PM:Phase Modulation)がある。デジタル変調方式であれば、例えば、振幅遷移変調(ASK:Amplitude shift keying)、周波数遷移変調(FSK:Frequency Shift Keying)、位相遷移変調(PSK:Phase Shift Keying)、振幅と位相を変調する振幅位相変調(APSK:Amplitude Phase Shift Keying)がある。振幅位相変調としては直交振幅変調(QAM:Quadrature Amplitude Modulation)が代表的である。
受信機能をなす第2の通信部は例えば、無線信号伝送路としてのミリ波信号伝送路を介して伝送されてきたミリ波帯の無線信号を受信し電気信号に変換する受信側の伝送路結合部を受信部に備えるとともに、受信側の伝送路結合部により受信され電気信号に変換されたミリ波帯の電気信号(入力信号)を信号処理して通常の電気信号(伝送対象の信号、ベースバンド信号)を生成(復元、再生)する受信側の信号生成部(ミリ波の信号を伝送対象の電気信号に変換する信号変換部)を備えるものとする。好ましくは、受信側の信号生成部は、伝送対象の信号を受け取る機能部と一体であるのがよい。例えば、受信側の信号生成部は復調回路を有し、ミリ波帯の電気信号を周波数変換して出力信号を生成し、その後、復調回路が出力信号を復調することで伝送対象の信号を生成する。原理的には、ミリ波帯の電気信号からダイレクトに伝送対象の信号に変換してもよい。
以上のように、本実施形態では、信号インタフェースをとるに当たり、伝送対象の信号に関して、無線信号により接点レスやケーブルレスで伝送する(電気配線での伝送でない)。好ましくは、少なくとも信号伝送(特に高速伝送や大容量伝送が要求される映像信号や高速のクロック信号等)に関しては、ミリ波帯等の無線信号(好ましくは光ではなく電波)により伝送する。要するに、従前は電気配線によって行なわれていた信号伝送を本実施例では無線信号(電波)により行なう。ミリ波帯等の無線信号で信号伝送を行なうことで、ギガビット毎秒〔Gbps〕オーダーの高速信号伝送を実現することができるし、無線信号の及ぶ範囲を容易に制限でき、この性質に起因する効果も得られる。
ここで、各伝送路結合部は、第1の通信部と第2の通信部が無線信号伝送路(例えばミリ波信号伝送路)を介して無線信号(ここではミリ波帯の無線信号)が伝送可能となるようにするものであればよい。例えばアンテナ構造(アンテナ結合部)を備えるものとしてもよいし、アンテナ構造を具備せずに結合をとるものでもよい。「ミリ波の信号を伝送するミリ波信号伝送路」等の無線信号伝送路は、空気(いわゆる自由空間)であってもよいが、好ましくは、無線信号(電磁波、電波)を伝送路中に閉じ込めつつ無線信号を伝送させる構造(無線信号閉込め構造、例えばミリ波閉込め構造)を持つものがよい。無線信号閉込め構造を積極的に利用することで、例えば電気配線のように無線信号伝送路の引回しを任意に確定することができる。このような無線信号閉込め構造のものとしては、例えば、典型的にはいわゆる導波管が該当するが、これに限らない。例えば、無線信号を伝送可能な誘電体素材で構成されたもの(誘電体伝送路や無線信号誘電体内伝送路と称する)や、伝送路を構成し、かつ、無線信号の外部放射を抑える遮蔽材が伝送路を囲むように設けられその遮蔽材の内部が中空の中空導波路がよい。誘電体素材や遮蔽材に柔軟性を持たせることで無線信号伝送路の引回しが可能となる。空気(いわゆる自由空間)の場合、各伝送路結合部はアンテナ構造をとることになり、そのアンテナ構造によって近距離の空間中を信号伝送することになる。一方、誘電体素材で構成されたものとする場合は、アンテナ構造をとることもできるが、そのことは必須でない。
無線による信号伝送においては、時分割多重又は周波数分割多重により信号の多重通信を行なってもよい。信号の多重通信としては、複数の信号を同一方向に伝送する態様と、双方向通信を行なう態様とがある。例えば、時分割多重で送受信を切り替えることで半二重の双方向通信を行なう。この場合、送信側と受信側のそれぞれの信号処理部は、送受信タイミングを時分割で切り替える切替部を有し、1系統の無線信号伝送路を使用して半二重による双方向の伝送を行なう。周波数分割多重で同時送受信を行なう全二重の双方向通信を行なってもよい。この場合、送信側と受信側は、送信の無線信号の周波数と受信の無線信号の周波数を異ならせ、1系統の無線信号伝送路を使用して全二重による双方向の伝送を行なう。時分割多重で複数系統の信号を切り替えて信号伝送を行なってもよい。この場合、送信側には複数の伝送対象の信号を時分割処理により1系統に纏めて伝送を行なうための多重化処理部を設け、受信側には無線信号伝送路を介して受け取った1系統の無線信号を各系統に分ける単一化処理部を設ける。周波数分割多重で複数系統の信号を同時伝送してもよい。この場合、送信側には複数の伝送対象の信号に関して無線信号の周波数をそれぞれ異ならせて1系統の無線信号伝送路で伝送を行なうための多重化処理部を設け、受信側の信号処理部には無線信号伝送路を介して受け取った1系統の無線信号を各系統に分ける単一化処理部を設ける。好ましくは、送信部あるいは受信部と対応する信号処理部は同一基板に配置され対応する筐体内に配置されているとよい。
好ましくは、送信部と受信部との間の無線信号伝送路の伝送特性が既知であるものとする。そして、送信部の前段の送信側の信号処理部及び受信部の後段の受信側の信号処理部の少なくとも一方について、予め定められた信号処理用の設定値を信号処理部に入力する設定値処理部を備えるとよい。例えば、1つの筐体内の送信部と受信部の配置位置が変化しない場合(機器内通信の場合)や、送信部(及び送信側の信号処理部)と受信部(及び受信側の信号処理部)のそれぞれが各別の筐体内に配置される場合でも使用状態のときの送信部と受信部の配置位置が予め定められた状態となる場合(比較的近距離の機器間の無線伝送の場合)のように、送受信間の伝送条件が実質的に変化しない(つまり固定である)環境下においては、送受信間の伝送特性を予め知ることができる。
送受信間の伝送条件が実質的に変化しない(つまり固定である)環境下においては、信号処理部の動作を規定する設定値を固定値として扱っても、つまり、パラメータ設定を固定にしても、信号処理部を不都合なく動作させることができる。信号処理用の設定値を予め定められた値(つまり固定値)にすることでパラメータ設定を動的に変化させずに済むので、パラメータ演算回路を削減できるし、消費電力を削減することもできる。機器内や比較的近距離の機器間の無線伝送においては通信環境が固定されるため、通信環境に依存する各種回路パラメータを予め決定することができるし、伝送条件が固定である環境下においては、信号処理部の動作を規定する設定値を固定値として扱っても、つまり、パラメータ設定を固定にしても、信号処理部を不都合なく動作させることができる。例えば、工場出荷時に最適なパラメータを求めておき、パラメータを装置内部に保持しておくことで、パラメータ演算回路の削減や消費電力の削減を行なうことができる。信号処理のパラメータ設定としては種々のものがある。例えば、信号増幅回路(振幅調整部)のゲイン設定(信号振幅設定)や位相調整量の設定や周波数特性の設定等もある。ゲイン設定は、送信電力設定や復調機能部に入力される受信レベル設定や自動利得制御(AGC:Automatic Gain Control)等に利用されるし、位相調整量の設定は、搬送信号やクロックを別送する系で送信信号の遅延量に合わせて位相を調整する場合に利用されるし、周波数特性の設定は、送信側で予め低域周波数成分や高域周波数成分の振幅を強調する場合に利用される。
[電気配線による信号伝送と無線伝送との対比]
電気配線を介して信号伝送を行なう信号伝送では、次のような問題がある。
i)伝送データの大容量・高速化が求められるが、電気配線の伝送速度・伝送容量には限界がある。
ii)伝送データの高速化の問題に対応するため、配線数を増やして、信号の並列化により一信号線当たりの伝送速度を落とす手法がある。しかしながら、この手法では、入出力端子の増大に繋がってしまう。その結果、プリント基板やケーブル配線の複雑化、コネクタ部や電気的インタフェースの物理サイズの増大等が求められ、それらの形状が複雑化し、これらの信頼性が低下し、コストが増大する等の問題が起こる。
iii)映画映像やコンピュータ画像等の情報量の膨大化に伴い、ベースバンド信号の帯域が広くなるに従って、EMC(電磁環境適合性)の問題がより顕在化してくる。例えば、電気配線を用いた場合は、配線がアンテナとなって、アンテナの同調周波数に対応した信号が干渉される。又、配線のインピーダンスの不整合等による反射や共振によるものも不要輻射の原因となる。このような問題を対策するために、電子機器の構成が複雑化する。
iv)EMCの他に、反射があると受信側でシンボル間での干渉による伝送エラーや妨害の飛び込みによる伝送エラーも問題となってくる。
これに対して、電気配線ではなく無線(例えばミリ波帯を使用)で信号伝送を行なう場合、配線形状やコネクタの位置を気にする必要がないため、レイアウトに対する制限があまり発生しない。ミリ波による信号伝送に置き換えた信号については配線や端子を割愛できるので、EMCの問題から解消される。一般に、通信装置内部で他にミリ波帯の周波数を使用している機能部は存在しないため、EMCの対策が容易に実現できる。送信側の通信装置と受信側の通信装置を近接した状態での無線伝送となり、固定位置間や既知の位置関係の信号伝送であるため、次のような利点が得られる。
1)送信側と受信側の間の伝搬チャネル(導波構造)を適正に設計することが容易である。
2)送信側と受信側を封止する伝送路結合部の誘電体構造と伝搬チャネル(ミリ波信号伝送路の導波構造)を併せて設計することで、自由空間伝送より、信頼性の高い良好な伝送が可能になる。
3)無線伝送を管理するコントローラの制御も一般の無線通信のように動的にアダプティブに頻繁に行なう必要はないため、制御によるオーバーヘッドを一般の無線通信に比べて小さくすることができる。その結果、制御回路や演算回路等で使用する設定値 (いわゆるパラメータ)を定数(いわゆる固定値)にすることができ、小型、低消費電力、高速化が可能になる。例えば、製造時や設計時に無線伝送特性を校正し、個体のばらつき等を把握すれば、そのデータを参照できるので、信号処理部の動作を規定する設定値は、プリセットや静的な制御にできる。その設定値は信号処理部の動作を概ね適正に規定するから、簡易な構成かつ低消費電力でありながら、高品位の通信が可能になる。
又、波長の短いミリ波帯での無線通信にすることで、次のような利点が得られる。
a)ミリ波通信は通信帯域を広く取れるため、データレートを大きくとることが簡単にできる。
b)伝送に使う周波数が他のベースバンド信号処理の周波数から離すことができ、ミリ波とベースバンド信号の周波数の干渉が起こり難い。
c)ミリ波帯は波長が短いため、波長に応じてきまるアンテナや導波構造を小さくできる。加えて、距離減衰が大きく回折も少ないため電磁シールドが行ない易い。
d)通常の野外での無線通信では、搬送波の安定度については、干渉等を防ぐため、厳しい規制がある。そのような安定度の高い搬送波を実現するためには、高い安定度の外部周波数基準部品と逓倍回路やPLL(位相同期ループ回路)等が用いられ、回路規模が大きくなる。しかしながら、ミリ波は(特に固定位置間や既知の位置関係の信号伝送との併用時は)、容易に遮蔽でき、外部に漏れないようにできる。安定度を緩めた搬送波で伝送された信号を受信側で小さい回路で復調するのには、注入同期方式を採用するのが好適である。
例えば、比較的近距離(例えば10数センチ以内)に配置されている電子機器間や電子機器内での高速信号伝送を実現する手法として、例えばLVDS(Low Voltage Differential Signaling)が知られている。しかしながら、最近のさらなる伝送データの大容量高速化に伴い、消費電力の増加、反射等による信号歪みの影響の増加、不要輻射の増加(いわゆるEMIの問題)、等が問題となる。例えば、映像信号(撮像信号を含む)やコンピュータ画像等の信号を機器内や機器間で高速(リアルタイム)に伝送する場合にLVDSでは限界に達してきている。
データの高速伝送に対応するため、配線数を増やして、信号の並列化により一信号線当たりの伝送速度を落としてもよい。しかしながら、この対処では、入出力端子の増大に繋がってしまう。その結果、プリント基板やケーブル配線の複雑化や半導体チップサイズの拡大等が求められる。また、高速・大容量のデータを配線で引き回すことでいわゆる電磁界障害が問題となる。
LVDSや配線数を増やす手法における問題は何れも、電気配線により信号を伝送することに起因している。そこで、電気配線により信号を伝送することに起因する問題を解決する手法として、電気配線を無線化して伝送する手法(特に電波で信号伝送を行なう手法)を採ってもよい。電気配線を無線化して伝送する手法としては例えば、筐体内の信号伝送を無線で行なうとともに、UWB(Ultra Wide Band )通信方式を適用してもよいし(第1の手法と記す)、波長の短い(1〜10ミリメートル)ミリ波帯の搬送周波数を使用してもよい(第2の手法と記す)。しかしながら、第1の手法のUWB通信方式では、搬送周波数が低く、例えば映像信号を伝送するような高速通信に向かないし、アンテナが大きくなる等、サイズ上の問題がある。さらに、伝送に使う周波数が他のベースバンド信号処理の周波数に近いため、無線信号とベースバンド信号との間で干渉が起こり易いという問題点もある。また、搬送周波数が低い場合は、機器内の駆動系ノイズの影響を受け易く、その対処が必要になる。これに対して、第2の手法のように、より波長の短いミリ波帯の搬送周波数を使用すると、アンテナサイズや干渉の問題を解決し得る。
ここでは、ミリ波帯で無線通信を行なう場合で説明したが、その適用範囲はミリ波帯で通信を行なうものに限定されない。ミリ波帯を下回る周波数帯(センチ波帯)や、逆にミリ波帯を超える周波数帯(サブミリ波帯)での通信を適用しても同様のことがいえる。但し、筐体内信号伝送や機器間信号伝送においては、過度に波長が長くも短くもないミリ波帯を主に使用するのが効果的である。
以下、本実施例の伝送装置や電子機器について具体的に説明する。尚、最も好適な例として、多くの機能部が半導体集積回路(チップ、例えばCMOSのIC)に形成されている例で説明するが、このことは必須でない。
<具体的な適用例>
以下、具体的な適用例を示す。送信側の通信装置と受信側の通信装置とで、伝送装置が構成される。尚、以下において、装置を構成する各部がひとつの筐体内に収容された状態の構成で伝送装置や電子機器とすることもできる。伝送装置や電子機器は、単体の場合もあれば、複数の伝送装置や複数の電子機器の組合せで伝送装置や電子機器の全体が構成される場合もある。尚、最初に非接触電力伝送の系統が1つで、且つ、伝送対象信号を伝送する通信系統も1つである基本構成について説明し、その後に、非接触電力伝送の系統が複数で、且つ、伝送対象信号を伝送する通信系統も複数である実施例について説明する。
[基本構成1]
図1〜図2は、基本構成1を説明する図である。ここで、図1は、基本構成1の電子機器及び伝送装置の回路ブロック図であり、図2は、基本構成1の電子機器及び伝送装置の動作を説明する図である。
基本構成1は、最も基本的な構成であり、データ(特に高速データ)を無線により伝送する通信装置と、電力を無線により伝送する電力供給部或いは電力受取部(纏めて非接触電力伝送デバイスとも称する)を同一ユニットに実装した形態である。基本構成1では、1つのユニットに、1つの受電側に対応する1つの電力供給装置を配置することで、1対1の非接触電力伝送装置を構成する。ここでの「1対1」は、給電側のユニット(詳しくはその回路基板)が1つであり、受電側のユニット(詳しくはその回路基板)も1つであることを意味する。この際には、給電側のユニットに通信装置を1つ配置するとともに受電側のユニットにも通信装置を1つ配置することで、1対1の信号伝送装置を構成する。つまりここでの「1対1」は、給電側のユニット(詳しくはその回路基板)に1つの通信装置が存在し、受電側のユニット(詳しくはその回路基板)にも1つの通信装置が存在することを意味する。
特に、基本構成1は、非接触電力伝送デバイスを含む2つのユニットのうち、一方へ電力(典型的には直流電力)を有線で給電して通信装置を駆動するが、他方は非接触電力伝送にて電力を伝送して通信装置を駆動する。例えば、ユニットの他方は、一方のユニットから非接触電力伝送により給電される交流電力を整流して直流電力にして、この直流電力を送信側の通信装置や受信側の通信装置(纏めてデータ送受信デバイスとも称する)の駆動に使用する。以下、具体的に説明する。
基本構成1の電子機器400Aは、第1ユニット410と第2ユニット420とを備える。第1ユニット410は、電力受取装置412と、基準信号生成部416と、第1通信装置418と、アンテナ458とを有する。電力受取装置412は、受電素子413と受電電源部414とを有する。受電素子413は、一方の端子が基準電位点に接続され(例えば接地される)、他方の端子が受電電源部414と基準信号生成部416に接続される。第1通信装置418としては、送信側とする場合は送信機能をなす通信部の構成を採用し、受信側とする場合は受信機能をなす通信部の構成を採用し、双方向通信に対応する場合は送信機能をなす通信部と受信機能をなす通信部の双方の構成を備えたものにする。基準信号生成部416は、受電素子413で受電した電力伝送信号Powerに基づいて、第1通信装置418が同期検波方式による復調処理で使用する搬送信号の元となる基準信号CK_1を生成する。受信側の復調処理が同期検波方式を採用しないときには、第1ユニット410は基準信号生成部416を備えていなくてもよい。
第2ユニット420は、電力供給装置422と第2通信装置428とアンテナ478とを有する。電力供給装置422は、送電素子423と給電電源部424とを有する。送電素子423は、一方の端子が基準電位点に接続され(例えば接地される)、他方の端子が給電電源部424に接続される。第2通信装置428としては、送信側とする場合は送信機能をなす通信部の構成を採用し、受信側とする場合は受信機能をなす通信部の構成を採用し、双方向通信に対応する場合は送信機能をなす通信部と受信機能をなす通信部の双方の構成を備えたものにする。
電力供給装置422と電力受取装置412とで非接触電力伝送装置402が構成され、基準信号生成部416と第1通信装置418と第2通信装置428とで信号伝送装置408が構成される。そして、非接触電力伝送装置402と信号伝送装置408とで伝送装置1が構成され、この伝送装置1が電子機器400Aに搭載される。
第2ユニット420(の給電電源部424及び第2通信装置428)には、直流電圧DC_0を供給する直流電源404が接続されているが、第1ユニット410には、直流電圧を供給する直流電源は接続されておらず(図中の×印を参照)、電力受取装置412の受電電源部414で生成した直流電圧DCを第1通信装置418が使用する構成になっている。尚、直流電源404は第2ユニット420に搭載してもよい。
給電電源部424による送電素子423の駆動を停止すれば電力伝送信号Powerの受電素子413への伝送が停止し、第1通信装置418への直流電圧DCの供給も停止する。よって、非接触電力伝送や第1通信装置418の動作のオン・オフは、給電電源部424による送電素子423の駆動のオン・オフで実現できる。
電力供給装置422の給電電源部424は、第2通信装置428が使用する基準信号CK_2(周波数fo)を生成する水晶発振回路等で構成されたクロック生成回路425を有し、この基準信号CK_2に基づいて送電素子423を駆動する。因みに、電力伝送信号Powerの周波数foは受電素子413と送電素子423の共振周波数に合わせる。電力供給装置422を具備する給電側の第2ユニット420において、電力供給装置422と第2通信装置428の双方は同一の基準信号CK_2に基づいてそれぞれが担当する処理を行なう。単一キャリア(周波数fo)の電力伝送信号Powerが送電素子423から受電素子413に伝送されるし(図2(A)を参照)、第2通信装置428は基準信号CK_2に同期して周波数fdの搬送信号にて通信処理を行なう。
図2(A)に示すように、非接触電力伝送用の電力伝送信号Powerの周波数と、データの無線通信に使用する搬送信号の周波数(搬送周波数)とは、好ましくは異なるものとする。つまり、非接触電力伝送と無線データ通信は別々の周波数を使用する。図2(A)では、非接触電力伝送用の交流電力(電力伝送信号Power:単一キャリアである)の周波数をfoとし、無線データ通信用の搬送周波数をfd、その帯域幅をWbとしている。
非接触電力伝送と無線データ通信を別々の周波数で行なうことで、非接触電力伝送に最適な周波数を設定するとともに、無線データ通信に最適な周波数を設定することができる。換言すると、非接触電力伝送と無線データ通信を同一の周波数で行なうことの問題点を解決できる。例えば、非接触電力伝送と無線データ通信を同一の周波数で行なう場合、電力伝送効率を高めるには狭帯域になるが、このことは高レートの通信は困難で、伝送信号が低レートのものでなければならないことを意味する。逆に、高レートのために信号帯域(つまり帯域幅Wb)を広帯域にすると、非接触電力伝送の送受間の結合が非効率になり、電力伝送効率を犠牲にすることになる。このような問題点が、非接触電力伝送と無線データ通信を異なる周波数で行なうことで改善される。非接触電力伝送は周波数foの単一キャリアの電力伝送信号Powerで行ない、データ送受信は、高レートのために広帯域幅を確保するべく、周波数foとは異なり、より高い周波数fdとすることができる。電力伝送の点においては、単一キャリアとすることでQが高い状態のまま非接触電力伝送装を行なうことができる、つまり、データ伝送用のような広帯域が必要ではないので非接触電力伝送の高効率化に着目して最適な周波数foを設定することができる。又、データ通信と別の周波数foを非接触電力伝送に用いることで、データ伝送への非接触電力伝送に起因するノイズ等の干渉が少ない(低ノイズ化)という利点もある。
基準信号生成部416としては、比較回路、比較回路と分周回路の併用、更にはPLL(Phase Locked Loop:位相同期ループ)回路やDLL(Delay Locked Loop:遅延同期ループ)回路との併用等、種々の構成を採用できる。例えば、基準信号生成部416は、比較回路を有し、図2(B)に示すように、受電素子413が受電した交流信号を所定の閾値レベル(例えば交流中心:ACゼロレベル)と比較することで基準信号CK_1を生成する。この場合、図2(A)に示すように、非接触電力伝送用の電力伝送信号Powerの周波数foが、そのまま第2通信装置428用の基準信号CK_1の周波数となる。実質的に、電力伝送用の電力伝送信号Power(周波数fo)そのものを基準信号CK_1(周波数fo)として利用することになり、クロック回路を電力を供給する電力供給装置422側だけが持てばよいので、回路の簡素化が可能であるし、基準信号CK_1の周波数は、電力伝送用の周波数foの再利用であるため、周波数利用度の点で有利である。又、データの送信側と受信側とは、同期がとれた状態の基準信号を使用することができ、受信側が同期検波を行なう際に利点が得られる(詳細は後述する)。
尚、比較回路の出力信号をM/N(M,Nは整数でM<N)に分周する分周回路(デバイダ)を基準信号生成部416に設け、分周回路の出力信号を基準信号CK_1として使用すれば、基準信号CK_1の周波数は電力伝送信号Powerの周波数foのM/N倍となる。又、PLL回路と分周回路との併用によりデータ伝送用の搬送周波数fdを電力伝送信号Powerの周波数foのN/M倍にすることもできる。
[基本構成2]
図3〜図4は、基本構成2を説明する図である。ここで、図3は、基本構成2の電子機器及び伝送装置の回路ブロック図であり、図4は、基本構成2の電子機器及び伝送装置を構成するユニットの配置態様の模式図である。
基本構成1の図1と基本構成2の図3との対比から理解できるように、基本構成2の電子機器400Bの基本的な構成は、基本構成1の電子機器400Aと同様である。換言すると、基本構成1をより具体的にしたものが基本構成2といえる。信号伝送装置408としては、第1通信装置418が送信側となり、第2通信装置428が受信側となる例で示している。
第1通信装置418は、ベースバンド信号増幅部434と、変調機能部440と、送信増幅部450と、伝送路結合部を構成するアンテナ458と、タイミング信号生成部460とを有する。受電電源部414と基準信号生成部416と第1通信装置418とが、送信側の半導体集積回路(通信チップ)である送信チップTXとして構成されている。受電素子413と送信チップTXとアンテナ458とが、第1ユニット410用の回路基板(或いはインターポーザ)に搭載される(図4を参照)。
無線伝送の対象となる差動の広帯域信号(DATAin:例えば12ビットの画像信号)がベースバンド信号増幅部434を介して変調機能部440に供給される。差動信号であることを明示するべく、図では、信号線に“+”と“−”の記号を付して示す。
変調機能部440としては、変調方式に応じて様々な回路構成を採り得るが例えば、振幅や位相を変調する方式であれば、周波数混合部442(Mix:ミキサー回路)と送信側局部発振部444を備えた構成を採用すればよい。図はASK変調方式を採用する場合で示す。送信側局部発振部444は、電圧制御発振回路(VCO:Voltage Controlled Oscillator )と電流制御発振回路(CCO;Current Controlled Oscillator )の何れを採用してもよい。以下では、特段の断りのない限り、電圧制御発振回路を採用するものとして説明する。
送信側局部発振部444は、VCO構成であるのかCCO構成であるのかを問わず、差動信号を変調することを考慮して、例えば、発振器構成要素としては、2つのトランジスタ(例えば電界効果トランジスタ)を使用した差動回路で構成すればよい。図示しないが例えば、一方のトランジスタの制御入力端(ゲート)を非反転入力(Vin+)とし、その主電極端(ドレイン又はソース)の一方を抵抗素子を介して電源に接続し、その主電極端の一方を反転出力(Vout− )とする。又、他方のトランジスタの制御入力端(ゲート)を反転入力(Vin−)とし、その主電極端(ドレイン又はソース)の一方を抵抗素子を介して電源に接続し、その主電極端の一方を非反転出力(Vout+ )とする。又、各トランジスタの主電極端の他方を共通接続して、電流値可変型の電流源を介して基準電位(例えば接地電位)に接続する。電流値可変型の電流源により差動回路のバイアス電流を制御することで、発振周波数が制御される。送信側局部発振部444から発せられる変調用の搬送信号が差動信号であることを明示するべく、図では、送信側局部発振部444から周波数混合部442への信号線に“+”と“−”の記号を付して示す。
タイミング信号生成部460は、変調機能部440やベースバンド信号増幅部434の前段回路等で使用するタイミング信号を生成する。タイミング信号生成部460は、各種のタイミング信号を生成できるものであればよく、種々の回路構成を採り得るが、例えば、PLLやDLL等で構成するのが好適である。以下ではPLLで構成する場合で説明する。
タイミング信号生成部460は、第1通信装置418の送信側局部発振部444を発振回路として利用するように構成されており、分周部462(DIV)と、位相周波数比較部464(PFD)と、ループフィルタ部468(LPF)とを備え、基準信号生成部416が基準信号発生部として利用されるようになっている。図中に破線で示すように、必要に応じて(回路構成次第で)、位相周波数比較部464とループフィルタ部468との間にチャージポンプ部466を設けてもよい。以下では、チャージポンプ部466も備えられている場合で説明する。
分周部462は、必要に応じて(電力伝送信号Powerとデータ伝送用の搬送周波数とを異ならせるための逓倍機能を要する場合に)備えればよく、送信側局部発振部444の出力端子から出力された出力発振信号Vout の発振周波数(=搬送周波数fd)を1/α(M=1、N=α)に分周して分周発振信号Vdev を取得し位相周波数比較部464に供給する。αは、PLL逓倍数(分周比とも称する)であって、1以上の正の整数で、かつ、PLL出力クロックである出力発振信号Vout (変調用の搬送信号)の周波数を変更できるように可変にするのがよい。タイミング信号生成部460をPLL構成とするので、逓倍機能は簡易な構成の分周部462を備えることで実現でき、回路規模がより小さくて済む利点がある。
位相周波数比較部464は、基準信号生成部416から供給される基準信号CK_1と送信側局部発振部444からの出力発振信号Vout を分周部462で分周した分周発振信号Vdev の位相および周波数を比較し、比較結果である位相差および周波数差を示す誤差信号をパルス幅変調されたUP/DOWN信号として出力する。
チャージポンプ部466は、位相周波数比較部464から出力されたUP/DOWN信号に応じた駆動電流(チャージポンプ電流Icpと称する)を入出力する。チャージポンプ部466は、例えば、位相周波数比較部464から出力されたチャージポンプ電流Icpを入出力するチャージポンプと、チャージポンプにバイアス電流Icpbiasを供給する電流値可変型の電流源とを備えて構成される。
ループフィルタ部468は、チャージポンプ部466を介して位相周波数比較部464から出力された比較信号を平滑化する平滑化部の一例である。ループフィルタ部468は例えば、ローパスフィルタであって、チャージポンプ部466により生成されたチャージポンプ電流Icpを積分し、送信側局部発振部444の発振周波数を制御するためのループフィルタ出力電流Ilpを生成する。ループフィルタ出力電流Ilpは、送信側局部発振部444の発振制御信号として使用される。
ループフィルタ部468は、図示しないが具体的には、ループフィルタ容量Cpのコンデンサ(容量素子)を有するものとする。なお、コンデンサだけでなくループフィルタ抵抗Rpの抵抗素子を直列に接続することで、ループの安定性を高めるようにしてもよい。1つのチャージポンプを備える構成を採る場合、通常は、この抵抗素子を備えた構成を採用する。
ループフィルタ部468では、チャージポンプから出力されたチャージポンプ電流Icpに基づいてループフィルタの一方の端子(つまり電圧電流変換部の入力)に電圧信号(チャージポンプ電圧Vcpと称する)が生成される。コンデンサへの充放電動作となるので、ループフィルタ部468は、位相周波数比較部464からの比較結果信号の所定のカットオフ周波数(ロールオフ周波数やポールともいう)以上の周波数成分を減衰させて、送信側局部発振部444に供給される発振制御電圧を平滑化するように、少なくとも1つのカットオフ周波数を呈する低域通過フィルタとして機能する。
変調機能部440の送信側局部発振部444から出力された搬送周波数fdの変調用の搬送信号は分周部462にて1/αに分周され、位相周波数比較部464に供給される。タイミング信号生成部460は、周波数がfd/αの動作クロックが基準信号生成部416からの基準信号CK_1と周波数位相同期するように、位相周波数比較部464、チャージポンプ部466、ループフィルタ部468とともにPLL回路を構成している。
給電電源部424は、第2通信装置428が使用する基準信号CK_2(周波数fo)を生成する水晶発振回路(XTAL)で構成されたクロック生成回路425と、基準信号CK_2に基づいて送電素子423を駆動する駆動回路426とを有する。送電素子423は、一方の端子が基準電位点に接続され(例えば接地される)、他方の端子が駆動回路426に接続される。
第2通信装置428は、復調機能部470と、伝送路結合部を構成するアンテナ478と、受信増幅部482と、ベースバンド信号増幅部484と、タイミング信号生成部490とを有する。受信増幅部482としては可変ゲイン型のローノイズアンプ(LNA)を使用するとよい。給電電源部424の駆動回路426と第2通信装置428とが、受信側の半導体集積回路(通信チップ)である受信チップRXとして構成されている。送電素子423と受信チップRXとアンテナ478とが、第2ユニット420用の回路基板(或いはインターポーザ)に搭載される(図4を参照)。
第1通信装置418のアンテナ458から送信されたデータ伝送用の例えばミリ波帯の無線信号がアンテナ478で受信され復調機能部470に供給される。復調機能部470は、送信側の変調方式に応じた範囲で様々な回路構成を採用し得るが、ここでは、変調機能部440の前記の説明と対応するように、振幅や位相が変調されている方式の場合で説明する。
復調機能部470は、2入力型の周波数混合部472(ミキサー回路)を備え、受信したミリ波信号(の包絡線)振幅の二乗に比例した検波出力を得る自乗検波回路、自乗特性を有しない単純な包絡線検波回路、或いは、同期検波方式により信号復調を行なう。好ましくは、基準信号CK_1との同期を考慮した同期検波方式を採用するとよい。図は、基準信号CK_1との同期を考慮した同期検波方式を採用する場合で示している。同期検波方式と採る場合、復調機能部470は受信側局部発振部474を備え、復調用の搬送波を受信側局部発振部474で生成し、その搬送波を利用して復調を行なう。受信側局部発振部474は、送信側局部発振部444と同様に、電圧制御発振回路(VCO)と電流制御発振回路(CCO)の何れを採用してもよい。以下では、特段の断りのない限り、電圧制御発振回路を採用するものとして説明する。受信側局部発振部474から発せられる復調用の搬送信号が差動信号であることを明示するべく、図では、受信側局部発振部474から周波数混合部472への信号線に“+”と“−”の記号を付して示す。
同期検波を使用した通信では、送信側の搬送信号と受信側の搬送信号は、周波数同期および位相同期がとれていることが必要である。このためにタイミング信号生成部490が備えられている。タイミング信号生成部490は、復調機能部470やベースバンド信号増幅部484の後段回路等で使用するタイミング信号を生成する。タイミング信号生成部490は、タイミング信号生成部460と同様に、各種のタイミング信号を生成できるものであればよく、種々の回路構成を採り得るが、例えば、PLLやDLL等で構成するのが好適である。以下ではPLLで構成する場合で説明する。
タイミング信号生成部490は、第2通信装置428の受信側局部発振部474を発振回路として利用するように構成されており、分周部492(DIV)と、位相周波数比較部494(PFD)と、ループフィルタ部498(LPF)とを備え、給電電源部424のクロック生成回路425が基準信号発生部として利用されるようになっている。図中に破線で示すように、必要に応じて(回路構成次第で)、位相周波数比較部494とループフィルタ部498との間にチャージポンプ部496を設けてもよい。タイミング信号生成部460との関係では、分周部492は分周部462、位相周波数比較部494は位相周波数比較部464、チャージポンプ部496はチャージポンプ部466、ループフィルタ部498はループフィルタ部468にそれぞれ対応する。
タイミング信号生成部490の構成及び動作は基本的にはタイミング信号生成部460と同様である。例えば、位相周波数比較部494は、クロック生成回路425から供給される基準信号CK_2と受信側局部発振部474からの出力発振信号Vout(復調用の搬送信号)を分周部492で分周した分周発振信号の位相および周波数を比較する。その比較結果を示す信号がチャージポンプ部496及びループフィルタ部498を介することで、受信側局部発振部474への制御信号が生成される。このとき、復調機能部470の受信側局部発振部474から出力された搬送周波数fdの復調用の搬送信号は分周部492にて1/αに分周され、位相周波数比較部494に供給される。タイミング信号生成部490は、周波数がfd/αの動作クロックがクロック生成回路425からの基準信号CK_2と周波数位相同期するように、位相周波数比較部494、チャージポンプ部496、ループフィルタ部498とともにPLL回路を構成している。
アンテナ478で受信された受信信号は可変ゲイン型でかつローノイズ型の受信増幅部482(LNA)に入力され振幅調整が行なわれた後に復調機能部470に供給される。振幅調整された受信信号は周波数混合部472に入力され、同期検波により周波数混合部472にて乗算信号が生成され、図示しないフィルタ処理部の低域通過フィルタで高域成分が除去されることで送信側から送られてきた入力信号の波形(ベースバンド信号、DATAout)が生成され、ベースバンド信号増幅部484を介して出力される。このとき、復調された差動の広帯域信号(DATAout:例えば12ビットの画像信号)がベースバンド信号増幅部484を介して後段回路に供給される。差動信号であることを明示するべく、図では、信号線に“+”と“−”の記号を付して示す。
第2ユニット420の給電電源部424の駆動回路426及び第2通信装置428の各部(図では受信増幅部482、ベースバンド信号増幅部484、周波数混合部472、受信側局部発振部474、分周部492、位相周波数比較部494、チャージポンプ部496)には、直流電圧DC_0を供給する直流電源404が接続されている。これに対して、第1ユニット410には、直流電圧DC_0を供給する直流電源は接続されておらず、電力受取装置412の受電電源部414で生成した直流電圧DCを基準信号生成部416及び第1通信装置418の各部(図ではベースバンド信号増幅部434、送信増幅部450、周波数混合部442、送信側局部発振部444、分周部462、位相周波数比較部464、チャージポンプ部466)が使用する構成になっている。
図4に示すように、受電素子413及び送電素子423のそれぞれは、回路基板411や回路基板421上の周縁近傍に導体パターンを螺旋状に巻回してコイル状に形成して導体パターンコイルとし、両導体パターンコイルが対向するようにしている。非接触電力伝送装置402を電磁誘導型で構成する場合、受電素子413と送電素子423との両導体パターンコイルでトランス(導体パターントランスと称する)が構成されるようにする。非接触電力伝送装置402を磁界共鳴型で構成する場合、受電素子413は受電素子に対応し、送電素子423は送電素子に対応し、受電素子413(受電素子)と送電素子423(送電素子)との両導体パターンコイルがヘリカルアンテナ或いはスパイラル共振器等として機能する。受電素子413(受電素子)と送電素子423(送電素子)は何れも、導体パターンコイルによるインダクタンス成分Lと容量成分Cが存在し、公知の関係式(1/√L・C)に基づく自己共振周波数(ωo ,fo=ωo /2π)が特定される。
第2ユニット420は、回路基板421上の送電素子423(導体パターンコイル)の内周にクロック生成回路425と受信チップRXとアンテナ478が配置されている。第1ユニット410は、回路基板411上の受電素子413(導体パターンコイル)の内周に送信チップTXとアンテナ458が配置されている。第2ユニット420の受信チップRXには直流電圧DC_0を供給する直流電源404が接続されているが、第1ユニット410の送信チップTXには直流電圧を供給する直流電源は接続されておらず、導体パターンコイルによる非接触電力伝送により、送電素子423からの電力伝送信号Powerを受電素子413で受け取ることで直流電圧DCを生成して送信チップTXが使用する。又、オンボードアンテナ(アンテナ458及びアンテナ478)間でミリ波帯での高速データ送受信を行なう際に、非接触電力伝送の電力伝送信号Powerに基づいて送信チップTX用の基準信号CK_1を生成することで、実質的に電力伝送信号Powerそのものを送信チップTX用の基準信号として利用する。これにより、受電側(この例では送信側)の第1ユニット410には直流電源を用意することなく、更には、基準信号を生成するための水晶発振器等を実装しなくてもよく、第1ユニット410は、基準信号を生成するための回路として、簡単・低コストの回路(例えば比較回路)を使用できる。
因みに、アンテナ458とアンテナ478との間や、送電素子423と受電素子413との間には回路基板411を挟むが、それは誘電体素材であるので、非接触電力伝送やミリ波帯での無線伝送に与える影響は少ない。
図3に示した構成要素以外には周波数同期をとるための特段の仕組みが不要であり、同期検波による通信を行なうことができ、回路構成の簡略化が可能となる。送信側と受信側とに各別の水晶発振器を使用する必要がないため様々な利点が得られる。各箇所に基準信号(この例では基準信号CK_1と基準信号CK_2)を供給するとともに、各基準信号に基づいて変調処理や復調処理を行なうことで、干渉・ノイズ・信号歪み・不要輻射・使える周波数などの問題を解決できる。例えば、信号伝送装置408として周波数分割多重を適用する場合でも、基準信号CK_1に基づいて周波数の異なる複数の送信用の搬送信号を生成するとともに、基準信号CK_1と同じ周波数の基準信号CK_2に基づいて周波数の異なる複数の受信用の搬送信号を生成することができ、各搬送信号の同期をとることが容易であり、その結果、干渉の影響を受けることなくそれぞれの信号伝送が実現される。例えば、搬送周波数fd2の送信信号を受信して同期検波しているときに、搬送周波数fd2とは周波数の異なる搬送周波数fd1の送信信号も到来し受信しても、搬送周波数fd1の成分の干渉の影響を受けることはない。
図5〜図6は、実施例1を説明する図である。ここで、図5は、実施例1の電子機器及び伝送装置の回路ブロック図であり、図6は、実施例1の電子機器及び伝送装置の動作を説明する図である。図5は、基本構成1に対する変形例で示しているが、基本構成1をより具体的にした基本構成2に対しても同様の変形が可能である。
実施例1は、非接触電力伝送の系統を複数にする点に特徴がある。更に好ましくは、複数の非接触電力伝送の受電側の各系統には、電力受取装置412で受電した電力に基づいて動作する通信装置を設けることでデータ送受信系統を複数用意する。非接触電力伝送の系統を複数用意するとともに、データ送受信系統を複数用意する点では後述の実施例2と同じであるが、データ伝送では、周波数分割多重を適用しない点で実施例2と相違する。
更に好ましくは、基本構成1では、1つのユニットに、複数の受電側のそれぞれに対応する複数の電力供給装置422(送電素子423と給電電源部424)を配置することで、1対多の非接触電力伝送装置を構成する。ここでの「1対多」は、給電側のユニットが1つであり、受電側のユニットが複数であることを意味する。この際には、給電側のユニットに通信装置を1つ配置することで、1対多の信号伝送装置を構成する。ここでの「1対多」は、給電側のユニット(詳しくはその回路基板)に1つの通信装置が存在し、受電側の複数のユニット(詳しくはその回路基板)のそれぞれに通信装置が存在することを意味する。
非接触電力伝送の各系統は、系統別に電源供給をオン・オフ(つまり電力伝送先を選択)することで、結果的に、データ送受信デバイスの選択性を持たせることができる。受電素子と送電素子との配置態様によっては、各系統が干渉しないように、好ましくは、それぞれの電力伝送信号Powerの周波数を異なるものとする。以下、基本構成1や基本構成2との相違点を中心に具体的に説明する。尚、基本構成1及び基本構成2と同一或いは同等の機能部には同一の参照符号を付して示す。
実施例1の電子機器400Cは、2つの第1ユニット410_1及び第1ユニット410_2と第2ユニット420とを備える。第2ユニット420には、直流電圧DC_0を供給する直流電源404が搭載されているが、第1ユニット410_1及び第1ユニット410_2には直流電圧を供給する直流電源は接続されておらず、第2ユニット420から非接触電力伝送により電力供給を行なう。具体的には、第2ユニット420は、送電素子423_1及び給電電源部424_1を具備する第1ユニット410_1用の電力供給装置422_1と、送電素子423_2及び給電電源部424_2を具備する第1ユニット410_2用の電力供給装置422_2と、第2通信装置428とを有する。第2通信装置428には、給電電源部424_1のクロック生成回路425_1から基準信号CK_21が供給されるとともに、給電電源部424_2のクロック生成回路425_2から基準信号CK_22が供給される。
直流電源404は、第2通信装置428と、電力供給装置422_1の給電電源部424_1及び電力供給装置422_2の給電電源部424_2とに接続されている。第2通信装置428と第1通信装置418_1とで第1の送受信対が構成され、第2通信装置428と第1通信装置418_2とで第2の送受信対が構成される。送受信対を複数有するが、送信側あるいは受信側が複数の送受信対に兼用される構成である。
送電素子423_1から伝送された周波数fo_1の電力伝送信号Power_1を受電素子413_1で受け取ることで直流電圧DC_1を生成して第1通信装置418_1が使用する。アンテナ458_1とアンテナ478との間でミリ波帯での高速データ送受信を行なう際に、非接触電力伝送の電力伝送信号Power_1に基づいて第1通信装置418_1用の基準信号CK_11を生成することで、実質的に電力伝送信号Power_1そのものを第1通信装置418_1用の基準信号として利用する。第1通信装置418_1は、基準信号生成部416_1で生成された基準信号CK_11に基づいて周波数fd_1(≠fo_1)の搬送信号を生成する。
送電素子423_2から伝送された周波数fo_2(≠fo_1)の電力伝送信号Power_2を受電素子413_2で受け取ることで直流電圧DC_2を生成して第1通信装置418_2が使用する。直流電圧DC_1、直流電圧DC_2のそれぞれの値は同一であることは必須でなく異なっていてもよい。アンテナ458_2とアンテナ478との間でミリ波帯での高速データ送受信を行なう際に、非接触電力伝送の電力伝送信号Power_2に基づいて第1通信装置418_2用の基準信号CK_12を生成することで、実質的に電力伝送信号Power_2そのものを第1通信装置418_2用の基準信号として利用する。第1通信装置418_2は、基準信号生成部416_2で生成された基準信号CK_12に基づいて周波数fd_2(≠fo_2)の搬送信号を生成する。一例として、図6(A)に示すようにfo_1<fo_2<fd_1=fd_2としてもよいし、図6(B)に示すようにfo_1<fo_2<fd_1=fd_2としてもよい。実施例1では、図6(B)に示す場合、搬送周波数fd_1を中心とする帯域幅Wb_1と搬送周波数fd_2を中心とする帯域幅Wb_2とが重なってもよい。
以上により、第1ユニット410_1及第1ユニット410_2には直流電源を用意することなく、更には、基準信号を生成するための水晶発振器等を実装しなくてもよい。実施例1でも、基本構成1及び基本構成2と同様に、非接触電力伝送と無線データ通信を別々の周波数で行なうことで、非接触電力伝送に最適な周波数を設定するとともに、無線データ通信に最適な周波数を設定することができる。各データ送受信デバイスを非接触とすることができるし、複数種の電源電圧及び複数種のクロック信号を非接触で伝送することができ、多種電力伝送及び多種クロック伝送が可能となる。
又、実施例1に特有の利点として、複数の非接触電力伝送系統での電力伝送を各別にオン・オフすることで、つまり、各系統の非接触電力伝送デバイスを選択可能とすることで、データ送受信デバイスの選択性を持たせることができる。即ち、電力伝送信号Power_1の伝送と電力伝送信号Power_2の伝送とを各別にオン・オフすることで、第1通信装置418_1と第1通信装置418_2の何れか一方のみを動作させる或いは第1通信装置418_1と第1通信装置418_2の双方を動作させる等、第1通信装置418_1と第1通信装置418_2の動作を各別に制御できる。複数の非接触電力伝送系統を各別にオン・オフするには、各給電電源部424による対応する送電素子423の駆動のオン・オフを各別に制御することで実現できる。
例えば、第2通信装置428が送信側となり、第1通信装置418_1及び第1通信装置418_2が受信側となる場合は次の通りである。周波数fd_1=周波数fd_2とすることで、第1通信装置418_1と第1通信装置418_2の双方を動作させると同報通信を行なうことができる。周波数fd_1=周波数fd_2の場合、第1通信装置418_1と第1通信装置418_2の片方のみを動作させることで、第1通信装置418_1及び第1通信装置418_2の片方と第2通信装置428との間でのみデータ伝送を行なうことができる。周波数fd_1≠周波数fd_2の場合、第1通信装置418_1と第1通信装置418_2の片方のみを動作させ、第2通信装置428が周波数fd_1と周波数fd_2のうちの動作させる方を選択して使用することで、第1通信装置418_1及び第1通信装置418_2の片方と第2通信装置428との間でのみデータ伝送を行なうことができる。
第2通信装置428が受信側となり、第1通信装置418_1及び第1通信装置418_2が送信側となる場合は次の通りである。周波数fd_1≠周波数fd_2とし第2通信装置428が周波数fd_1と周波数fd_2の何れか一方を選択して使用すると、第1通信装置418_1と第1通信装置418_2の双方を同時に動作させても、第1通信装置418_1及び第1通信装置418_2の片方と第2通信装置428との間でのみデータ伝送を行なうことができる。周波数fd_1=周波数fd_2とし、第1通信装置418_1と第1通信装置418_2の双方を同時に動作させると、第2通信装置428は第1通信装置418_1からの電波と第1通信装置418_2から電波とを分別できず混信が起きるので、時分割多重を適用する。
図示しないが、第1ユニット410と第2ユニット420の少なくとも一方には更に、予め定められた信号処理用の設定値を信号処理部(この例では、電力受取装置412、第1通信装置418、電力供給装置422、第2通信装置428)に入力する設定値処理部を備えるとよい。信号処理部は、設定値に基づいて、予め定められた信号処理を行なう。設定値処理部は、予め定められた信号処理用の設定値を信号処理部に入力する。信号処理のパラメータ設定としては、例えば、増幅回路(例えば図3に示した送信増幅部450や受信増幅部482等)のゲイン設定等がある。例えば、送信出力レベルが大きいときには消費電力が大きいが、過大でもなく過小でもない丁度よい受信レベルとなるように、送信出力レベルを下げることで低消費電力化が実現できる。又、送信増幅部450の出力レベル(換言すると、復調機能部470への入力レベル)が適正な値になるようにすることで、アンテナ478での受信レベルに関わらず、復調機能部470にて適正な復調処理ができる。
伝送特性に対応した設定値や機器内や機器間の信号伝送には限るものではなく、例えば、回路素子のバラツキ補正のためのパラメータ設定も含むが、好ましくは、設定値処理部は、送信部と受信部との間の伝送特性に対応して予め定められた信号処理用の設定値を信号処理部に入力するのがよい。送受信間の伝送条件が実質的に変化しない(つまり固定である)環境下においては、信号処理部の動作を規定する設定値を固定値として扱っても、つまり、パラメータ設定を固定にしても、信号処理部を不都合なく動作させることができる。信号処理用の設定値を予め定められた値(つまり固定値)にすることでパラメータ設定を動的に変化させずに済むので、パラメータ演算回路を削減できるし、消費電力を削減することもできる。機器内や比較的近距離の機器間の無線伝送においては通信環境が固定されるため、通信環境に依存する各種回路パラメータを予め決定することができるし、伝送条件が固定である環境下においては、信号処理部の動作を規定する設定値を固定値として扱っても、つまり、パラメータ設定を固定にしても、信号処理部を不都合なく動作させることができる。例えば、工場出荷時に最適なパラメータを求めておき、そのパラメータを装置内部に保持しておくことで、パラメータ演算回路の削減や消費電力の削減を行なうことができる。
各種回路パラメータを予め決定する際には、機器内で自動的に生成する第1の手法と、無線伝送装置(あるいは電子機器)の外部で生成したものを利用する第2の手法の何れをも採り得る。第1の手法をとる際には、設定値処理部は、設定値を決定する設定値決定部と、設定値決定部が決定した設定値を記憶する記憶部と、記憶部から読み出した設定値に基づいて信号処理部を動作させる動作制御部とを有するものとするのがよい。第2の手法をとる際には、設定値処理部は、設定値を外部から受け付ける設定値受付部と、設定値受付部が受け付けた設定値を記憶する記憶部と、記憶部から読み出した設定値に基づいて信号処理部を動作させる動作制御部とを有するものとするのがよい。
[基本構成1及び基本構成2の変形例]
基本構成1及び基本構成2では、非接触電力伝送の系統を1つにするに当たり、1つ(つまり単数)の第1ユニット410を設けるとともに1つ(つまり単数)の第2ユニット420を設ける例で示したが、これには限らない。例えば、電力供給装置422が配置されるユニットが1つで、電力供給装置422と同じ周波数を使用する電力受取装置412が配置されるユニットの数が複数でもよい。つまり、同じ周波数を使用する電力受取装置412と電力供給装置422の組が1つ存在すればよく、1つの電力供給装置422に対して複数の電力受取装置412が存在してもよい。複数の電力受取装置412のそれぞれに対して各別に送電素子423を設けなくても済むので構成が簡易になる。例えば、図示しないが、基本構成2において、第1ユニット410の数を複数にして、図4に示した第2ユニット420の更に上層(或いは図の第1ユニット410と第2ユニット420との間に)別の第1ユニット410を配置してもよい。或いは、1つの回路基板の表裏のそれぞれに電力受取装置412を配置してもよい。給電側のユニット(この例では第2ユニット420)の電力供給装置422からの電力伝送信号Powerを受電側の複数の電力受取装置412にて同時に受信して各電力受取装置412に対応する第1通信装置418で使用する直流電圧DCを各別に生成する。但し、実施例1等とは異なり、受電側の各電力受取装置412は1つの電力供給装置422が使用する周波数に対応して動作するので、データ送受信デバイスの選択性を持つことはできない(後述の実施例3の周波数fo_2の系統を参照)。
図7は、実施例2を説明する図である。ここで、図7は、実施例2の電子機器及び伝送装置の回路ブロック図である。
実施例2は、非接触電力伝送の系統を複数にするとともに、データ送受信系統を複数用意し、データ伝送では周波数分割多重を適用する点に特徴がある。実施例1と同様に、複数の受電側に電力伝送信号を伝送する給電側に、1つのユニットに複数の受電側のそれぞれに対応する複数の電力供給装置422(送電素子423と給電電源部424)を配置することで、1対多の非接触電力伝送装置を構成する。周波数分割多重を適用し易くするべく、複数の受電側に電力伝送信号を伝送する給電側に、複数の受電側のそれぞれに対応した通信装置のそれぞれに対応して通信装置を複数設けることで、多対多の信号伝送装置を構成する。ここでの「多対多」は、給電側のユニットに複数の通信装置が存在し、この複数の通信装置と対になるように、受電側の複数のユニットのそれぞれに通信装置が存在することを意味する。以下、実施例1との相違点を中心に具体的に説明する。尚、実施例1と同一或いは同等の機能部には同一の参照符号を付して示す。
実施例2の電子機器400Dは、2つの第1ユニット410_1及び第1ユニット410_2と第2ユニット420とを備える点で実施例1と同様であるが、第2ユニット420に2つの第2通信装置428_1と第2通信装置428_2を備える点が実施例1と異なる。第2通信装置428_1には、給電電源部424_1のクロック生成回路425_1から基準信号CK_21が供給されるし、第2通信装置428_2には、給電電源部424_2のクロック生成回路425_2から基準信号CK_22が供給される。第2通信装置428_1と第1通信装置418_1とで第1の送受信対が構成され、第2通信装置428_2と第1通信装置418_2とで第2の送受信対が構成され、送信側の通信装置と受信側の通信装置とで構成される信号伝送系統(送受信対)を各別に有する構成になる。
直流電源404は、第2通信装置428_1及び第2通信装置428_2と、電力供給装置422_1の給電電源部424_1及び電力供給装置422_2の給電電源部424_2とに接続されている。図示しないが、データ送受信系統を複数用意するに当たり、2つの第1ユニット410_1及び第1ユニット410_2の何れか一方に第1通信装置418_1を配置し他方に第2通信装置428_2を配置し、これ対応するように、1つの第2ユニット420に第1通信装置418_1と対になる第2通信装置428_1を配置するとともに第2通信装置428_2と対になる第1通信装置418_2を配置してもよい。
第1通信装置418_1が基準信号生成部416_1で生成された基準信号CK_11に基づいて生成する搬送信号の周波数fd_1(≠fo_1)と第1通信装置418_2が基準信号生成部416_2で生成された基準信号CK_12に基づいて生成する搬送信号の周波数fd_2(≠fo_2)とは、fo_1<fo_2<fd_1<fd_2(図6(B)参照)とする。実施例2では、周波数分割多重時に混信を防止するべく、搬送周波数fd_1を中心とする帯域幅Wb_1と搬送周波数fd_2を中心とする帯域幅Wb_2とが重ならないようにする。第1通信装置418_1に対応する第2通信装置428_1は周波数fd_1の搬送信号を使用し、第1通信装置418_2に対応する第2通信装置428_2は周波数fd_2の搬送信号を使用する。
実施例2では、基本的には実施例1における“fo_1<fo_2<fd_1<fd_2”とする場合の動作が可能である。又、実施例2に特有の利点として、周波数分割多重の適用により、第1通信装置418_1と第1通信装置418_2の双方を同時に動作させ、且つ、第2通信装置428_1と第2通信装置428_2の双方を同時に動作させる場合でも、周波数fd_1の電波と周波数fd_2の電波とを分別できる。よって、周波数fd_1の搬送信号を使用した第1通信装置418_1と第2通信装置428_1との間のデータ伝送と、周波数fd_2の搬送信号を使用した第1通信装置418_2と第2通信装置428_2との間のデータ伝送とは混信の問題が起きない。
[実施例1及び実施例2の変形例]
実施例1及び実施例2では、非接触電力伝送の系統を複数にするに当たり、複数(何れも2つで例示)の第1ユニット410を設けるとともに1つ(つまり単数)の第2ユニット420を設ける例で示したが、これには限定されない。各ユニットの数は単数・複数の何れでもよく、同じ周波数を使用する電力受取装置412と電力供給装置422の組が少なくとも複数存在すればよい。基本構成1及び基本構成2の変形例で説明したことから理解できるように、電力受取装置412と電力供給装置422の各組は、電力受取装置412と電力供給装置422が1対である必要はなく、1つの電力供給装置422に対して複数の電力受取装置412が存在してもよい。電力受取装置412と電力供給装置422の組が複数存在するということは、少なくとも電力供給装置422が複数存在することが必要であり、それらが異なる周波数を使用して電力伝送を行なえばよい。各電力供給装置422に対して、受電側の電力受取装置412が1つ存在するのか複数存在するのかは問わない。
図8〜図9は、実施例3を説明する図である。ここで、図8は、実施例3の電子機器及び伝送装置の全体概要の模式図である。図9は、実施例3の電子機器及び伝送装置を構成するユニットの配置態様の模式図である。
実施例3は、実施例1をより具体的にした態様である。図示しないが、実施例2をベースにして実施例3を適用することもできる。図8に示すように、実施例3の電子機器400Eは、複数のLSI(Large Scale Integration)チップを1つのパッケージ内に封止したSiP(System in Package)として構成されている。一例として、電子機器400Eは、インターポーザ基板409の上層に、CPU(Central Processing Unit)及び通信チップRF_0が搭載された1つの第2ユニット420が配置され、第2ユニット420の上層にDRAM(Dynamic Random Access Memory)等の他のLSIチップ及び通信チップRFが搭載された複数(図は3つ)の第1ユニット410が配置されている。複数の第1ユニット410のうち、最も第2ユニット420に近い側の第1の第1ユニット410_1には第1記憶部DRAM_1と通信チップRF_1が搭載されている。第1ユニット410_1の上層の第2の第1ユニット410_2には第2記憶部DRAM_2と通信チップRF_2が搭載されている。第1ユニット410_2の上層の第3の第1ユニット410_3にはロジック回路(Logic)と通信チップRF_3が搭載されている。
通信チップRF_0は、受信側となる場合には基本構成2の受信チップRXと同様の回路が設けられ、送信側となる場合には駆動回路426が設けられるともに基本構成2の送信チップTX(受電電源部414及び基準信号生成部416は除く)と同様の回路が設けられる。通信チップRF_0は、双方向通信に対応する場合には受信側となる場合の構成と送信側となる場合の構成の双方(重複する駆動回路426は1つでよい)が設けられる。通信チップRF_1、通信チップRF_2、及び通信チップRF_3のそれぞれは、送信側となる場合には基本構成2の送信チップTXと同様の回路が設けられ、受信側となる場合には受電電源部414及び基準信号生成部416が設けられるともに基本構成2の受信チップRX(給電電源部424は除く)と同様の回路が設けられる。通信チップRF_1、通信チップRF_2、及び通信チップRF_3のそれぞれには、双方向通信に対応する場合には受信側となる場合の構成と送信側となる場合の構成の双方(重複する受電電源部414及び基準信号生成部416はそれぞれ1つでよい)が設けられる。
第2ユニット420には、図示しない電力供給装置422_1(図5参照)と接続された送電素子423_1(図5参照)と、図示しない電力供給装置422_2(図5参照)と接続された送電素子423_2(図5参照)とが設けられている。第1ユニット410_1には図示しない電力受取装置412_21と接続された受電素子413_21が設けられ、第1ユニット410_2には図示しない電力受取装置412_11と接続された受電素子413_11が設けられ、第1ユニット410_3には図示しない電力受取装置412_22と接続された受電素子413_22が設けられている。図5との関係では、電力受取装置412_11及び受電素子413_11は、周波数fo_1を使用する電力受取装置412_1及び受電素子413_1にそれぞれ対応し、電力受取装置412_21及び受電素子413_21並びに電力受取装置412_22及び及び受電素子413_22は、周波数fo_2を使用する電力受取装置412_2及び受電素子413_2にそれぞれ対応する。
信号伝送という点においては、高速性や大容量性が求められる信号の他に、その他の低速・小容量で十分なものもミリ波で伝送する。これにより、電源(電力)を含めて、全ての信号を無線により伝送できる。更に、ミリ波帯でのデータ送受信を行なう際に、好ましくは、実施例1や実施例2と同様に、非接触電力伝送の電力伝送信号Powerに基づいて受電側の通信チップRF用の基準信号CKを生成することで、実質的に電力伝送信号Powerそのものを通信チップRF用の基準信号として利用する。例えば、第1ユニット410_1の通信チップRF_1は受電素子413_21が受け取る電力伝送信号Power_2を利用して基準信号CK_12を生成し、第1ユニット410_2の通信チップRF_2は受電素子413_11が受け取る電力伝送信号Power_1を利用して基準信号CK_11を生成し、第1ユニット410_3の通信チップRF_3は受電素子413_22が受け取る電力伝送信号Power_2を利用して基準信号CK_12を生成する。
図9に示すように、基本構成2と同様に、受電素子413及び送電素子423のそれぞれは、回路基板411や回路基板421上の周縁近傍に導体パターンを螺旋状に巻回してコイル状に形成して導体パターンコイルとし、両導体パターンコイルが対向するようにしている。基本構成2の図3と実施例3の図9との対比から理解できるように、実施例3の電子機器400Eは、給電側のユニット(この例では第2ユニット420)の数が1つである点で同じであるが、その第2ユニット420には、それぞれが異なる周波数(fo_1とfo_2)を使用する複数の電力供給装置422(図示せず)のそれぞれに接続される送電素子423_1及び送電素子423_2を同軸芯で平面状に有する点が異なる。図示した例では、周波数fo_1を使用する側の送電素子423_1が回路基板421上の最も周縁近傍に導体パターンを螺旋状に巻回してコイル状に形成してある。そして、その内周に、周波数fo_2を使用する側の送電素子423_2が送電素子423_1と同軸芯となるように導体パターンを螺旋状に巻回してコイル状に形成してある。第2ユニット420は、回路基板421上の送電素子423_2(導体パターンコイル)の内周に通信チップRFとアンテナ478が配置されている。図示しないが、第2ユニット420にはクロック生成回路425も設ける。
各LSIチップが別プロセスで作成されたものであっても、電力伝送用の受電素子413と送電素子423の共振周波数が同じであれば電力伝送は可能であるし、受電素子413と送電素子423の共振周波数が異なる場合には電力伝送効率が低下し実質的には電力伝送は行なわれない。電力伝送信号Powerの周波数は対応する受電素子413と送電素子423の共振周波数に合わせる。非接触電力伝送の方式として共振現象を併用する電磁誘導型や共鳴型の場合に好適である。
例えば、図9から理解されるように、受電側の複数の第1ユニット410の図示しない電力受取装置412(受電素子413と図示しない受電電源部414)のそれぞれに対応するように、複数の図示しない電力供給装置422(送電素子423と図示しない給電電源部424)を1つの第2ユニット420(の回路基板421)に配置することで、1対多の非接触電力伝送装置が構成されている。
受電素子413と送電素子423との配置態様は、複数の送電素子423のそれぞれが平面視したときに同一軸芯に配置されている。複数の送電素子423と複数の受電素子413の対応するもの同士が同一軸で重なって配置されているが、更に送電素子423_1から見た場合も送電素子423_2から見た場合も、送電素子423に対して複数の受電素子413がほぼ同一軸で重なって配置された状態である。この場合、各系統の電力伝送信号Powerとして同じ周波数を使用すると、対応するもの(本来の給電対象のもの)に対してのみそれぞれ区別して供給するということが困難になる。そこで、この例では、送電素子423_1の系統は周波数fo_1を使用し、送電素子423_2の系統は周波数fo_2を使用する。因みに、周波数fo_2の電力伝送信号Power_2を使用する送電素子423_2の系統は、受電側に複数の受電素子413(受電素子413_21と受電素子413_22)がほぼ同一軸で重なって配置されているので、その複数の受電素子413についてはどちらも電力伝送信号Power_2を同じように受け取る。非接触電力伝送に使用する周波数を使い分けるという点においては、非接触電力伝送の方式としては、電波受信型よりも電磁誘導型や共鳴型を採用した方がよく、電磁誘導型の場合に共振現象を併用する方がよい。
実施例3の電子機器400Eは、各電力供給装置422に対応する電力供給装置422(図示せず)を具備する第1ユニット410が複数設けられている点も異なる。図6に示した例では、周波数fo_1を使用する電力供給装置422_1に対応して、第1ユニット410_2には送電素子423_1と対向するように受電素子413_11が配置されるようにしている。更には、周波数fo_2を使用する電力供給装置422_2に対応して、第1ユニット410_1には送電素子423_2と対向するように受電素子413_21が配置され、又、第1ユニット410_3には送電素子423_2と対向するように受電素子413_22が配置されるようにしている
第1ユニット410_1は回路基板411_1上の受電素子413_21の内周に通信チップRF_1とアンテナ458_1が配置され、第1ユニット410_2は回路基板411_2上の受電素子413_11の内周に通信チップRF_2とアンテナ458_2が配置され、第1ユニット410_3は回路基板411_3上の受電素子413_22の内周に通信チップRF_3とアンテナ458_3が配置されている。
第2ユニット420の通信チップRF_0には直流電圧DC_0を供給する直流電源404が接続されているが、第1ユニット410_1の通信チップRF_1、第1ユニット410_2の通信チップRF_2、及び第1ユニット410_3の通信チップRF_3の何れにも、直流電圧DC_0を供給する直流電源は接続されておらず、導体パターンコイルによる非接触電力伝送により、送電素子423からの電力伝送信号Powerを受電素子413で受け取ることで直流電圧DCを生成して通信チップRFが使用する。例えば、送電素子423_1からの周波数fo_1の電力伝送信号Power_1に関しては、第1ユニット410_2の受電素子413_11が受け取ることで直流電圧DC_11を生成して通信チップRF_2が使用する。又、送電素子423_2からの周波数fo_2の電力伝送信号Power_2に関しては、第1ユニット410_1の受電素子413_21が受け取ることで直流電圧DC_21を生成して通信チップRF_1が使用するし、第1ユニット410_3の受電素子413_22が受け取ることで直流電圧DC_22を生成して通信チップRF_3が使用する。直流電圧DC_11、直流電圧DC_21、直流電圧DC_22のそれぞれの値は同一であることは必須でなく異なっていてもよい。
オンボードアンテナ(アンテナ458及びアンテナ478)間でミリ波帯での高速データ送受信を行なう際に、実施例1や実施例2と同様に、非接触電力伝送の電力伝送信号Powerに基づいて受電側の通信チップRF用の基準信号CK_11或いは基準信号CK_12を生成することで、実質的に電力伝送信号Powerそのものを受電側の通信チップRF用の基準信号として利用する。これにより、受電側の各第1ユニット410には直流電源を用意することなく、更には、基準信号を生成するための水晶発振器等を実装しなくてもよく、受電側の第1ユニット410は、基準信号を生成するための回路として、簡単・低コストの回路(例えば比較回路)を使用できる。
因みに、アンテナ478と各アンテナ458との間や送電素子423と各受電素子413との間には回路基板411を挟むが、それは誘電体素材であるので、非接触電力伝送やミリ波帯での無線伝送に与える影響は少ない。
SiP構成において非接触電力伝送によりLSIチップを搭載した複数のユニット間の電源供給を行なう際に、送電素子423と受電素子413とがほぼ同一軸で重なって配置された状態になったとしても、系統別に異なる周波数を使用して非接触電力伝送を行なうことで、系統別に電源供給をオン・オフ(つまり電力伝送先を選択)できる。因みに、実施例3では、電子機器400EとしてSiP構成を採用する場合で示しているが、ベース基板とインターポーザー基板との関係や、その他複数の回路基板をほぼ同一軸で重なって配置する場合にも、同様の考え方を適用できる。周波数fo_1の電力伝送信号Power_1の伝送と周波数fo_2の電力伝送信号Power_2の伝送とを個別にオン・オフすることで、通信チップRF_0と通信チップRF_2との送受信対間での通信と、通信チップRF_0と通信チップRF_1及び通信チップRF_3との送受信対間の通信との、何れか一方のみを動作させる或いはその双方を動作させる等、電力伝送の系統のオン・オフと対応して、信号伝送における送受信対の動作を各別に制御できる。
[実施例3の変形例]
図示しないが、複数の送電素子のそれぞれが平面視したときに異なる位置に配置されていてもよく、例えば、複数の受電側のユニットの受電素子413のそれぞれと対応する複数の送電素子423のそれぞれが異なる軸芯となるように平面状に配置してもよい。実質的には、基本構成1或いは基本構成2の構成を横方向に並べた状態となり、1つの給電側のユニットに対して受電側の全てのユニットを重ねて配置することができないときに採用するとよい。例えば、送電素子423_1に対して受電素子413_21及び受電素子413_22がほぼ同一軸で重なって配置された状態とならないように送電素子423_2、受電素子413_21、及び受電素子413_22が送電素子423_1に対して平面的にずれた位置に配置し、又、送電素子423_2に対して受電素子413_11がほぼ同一軸で重なって配置された状態とならないように、送電素子423_1及び受電素子413_11が送電素子423_2に対して平面的にずれた位置に配置する。この場合には、送電素子423_1の系統と送電素子423_2の系統は異なる周波数で駆動してもよいし同じ周波数で駆動してもよい。更にこの場合、給電側のユニットを複数に分けてもよい。
実施例4は、前述の各実施例の無線信号伝送と非接触電力伝送を併用する構成を実施例3とは異なる電子機器へ適用する事例である。以下に3つの代表的な事例を示す。
[第1例]
図10は、実施例4の電子機器の第1例を説明する図である。第1例は、1つの電子機器の筐体内で無線により信号伝送を行なう場合での適用例である。電子機器としては固体撮像装置を搭載した撮像装置への適用例で示す。この種の撮像装置は、例えばデジタルカメラやビデオカメラ(カムコーダ)或いはコンピュータ機器のカメラ(Webカメラ)等として市場に流通される。
撮像装置500の筐体590内には、撮像基板502と第1基板602_1(メイン基板)と第2基板602_2(サブ基板)とがこの順に配置されている。撮像基板502には固体撮像装置505が搭載される。例えば、固体撮像装置505はCCD(Charge Coupled Device)で、その駆動部(水平ドライバや垂直ドライバ)も含めて撮像基板502に搭載する場合や、CMOS(Complementary Metal-oxide Semiconductor)センサの場合が該当する。撮像基板502に半導体チップ203を搭載し、第1基板602_1に半導体チップ103_1を搭載し、第2基板602_2に半導体チップ103_2を搭載する。
非接触電力伝送に対応するべく、半導体チップ103_1には2つの給電電源部424を組み込み、半導体チップ103_2と半導体チップ203にはそれぞれ受電電源部414及び基準信号生成部416を組み込む。そして、半導体チップ103_1を搭載した第1基板602_1に送電素子423_1及び送電素子423_2を配置し、半導体チップ203を搭載した撮像基板502に受電素子413_1を配置し、半導体チップ103_2を搭載した第2基板602_2に受電素子413_2を配置する。送電素子423_1、送電素子423_2、受電素子413_1、受電素子413_2としては例えば、撮像基板502、第1基板602_1、及び第2基板602_2上の周縁近傍に、送電素子423_1と受電素子413_1が対向し、送電素子423_2と受電素子413_2が対向するように、導体パターンを螺旋状に巻回してコイル状に形成して導体パターンコイルとする。
撮像基板502には固体撮像装置505の他に撮像駆動部等周辺回路(図示せず)がが搭載され、第1基板602_1には画像処理エンジン605が搭載され、第2基板602_2には操作部や各種のセンサ等とそれらを制御する制御処理部606が搭載される。半導体チップ203と半導体チップ103_1と半導体チップ103_2とのそれぞれには、送信チップTXや受信チップRXと同等の機能を組み込む。送信チップと受信チップの両機能を組み込むことで双方向通信にも対処できる。
固体撮像装置505や撮像駆動部は、送信側の通信装置の前段に備えられるLSI機能部のアプリケーション機能部に該当する。例えばLSI機能部には送信側の信号生成部が接続され、さらに伝送路結合部を介してアンテナと接続される。信号生成部や伝送路結合部は固体撮像装置505とは別の半導体チップ203に収容してあり撮像基板502に搭載される。
画像処理エンジン605は受信側の通信装置の後段に備えられるLSI機能部のアプリケーション機能部に該当する。例えば固体撮像装置505で得られた撮像信号を処理する画像処理部が画像処理エンジン605に収容され、LSI機能部には受信側の信号生成部が接続され、さらに伝送路結合部を介してアンテナ136_1と接続される。信号生成部や伝送路結合部は画像処理エンジン605とは別の半導体チップ103_1に収容してあり第1基板602_1に搭載される。操作部や各種のセンサ等は送信側の通信装置の前段或いは受信側の通信装置の後段に備えられるLSI機能部のアプリケーション機能部に該当する。例えば、操作部や各種のセンサ等を制御する制御処理部606がLSI機能部に収容され、そのLSI機能部には送信側或いは受信側の信号生成部が接続され、さらに伝送路結合部を介してアンテナ136_2と接続される。信号生成部や伝送路結合部は制御処理部606を収容したLSI機能部とは別の半導体チップ103_2に収容してあり第2基板602_2に搭載される。アンテナ136_1、アンテナ136_2、及びアンテナ236としては例えばパッチアンテナを使用する。
送信側の信号生成部は例えば、多重化処理部、パラレルシリアル変換部、変調部、周波数変換部、増幅部等を具備し、受信側の信号生成部は例えば、増幅部、周波数変換部、復調部、シリアルパラレル変換部、単一化処理部等を具備する。これらの点は、後述する他の適用事例でも同様である。
アンテナ136_1とアンテナ236との間で無線通信が行なわれることで、固体撮像装置505で取得される画像信号は、アンテナ間の無線信号伝送路9を介して第1基板602_1へと伝送される。双方向通信に対応するように構成してもよく、この場合例えば、固体撮像装置505を制御するための基準信号や各種の制御信号は、アンテナ間の無線信号伝送路9を介して撮像基板502へと伝送される。アンテナ136_1とアンテナ136_2との間でも無線通信が行なわれることで、操作情報や各種のセンサで取得された情報が第1基板602_1へと伝送される。
図10(A)及び図10(B)の何れも、4系統の無線信号伝送路9が設けられている。図10(A)では4系統の全てを自由空間伝送路9Bとしているが、図10(B)では撮像基板502と第1基板602_1との間の2系統を中空導波路9Lに変更している。中空導波路9Lとしては、周囲が遮蔽材で囲まれ内部が中空の構造であればよい。例えば、周囲が遮蔽材の一例である導電体MZで囲まれ内部が中空の構造にする。例えば、第1基板602_1上にアンテナ136を取り囲む形で導電体MZの囲いが取り付けられている。アンテナ136と対向する位置に撮像基板502側のアンテナ236の移動中心が配置されるようにする。導電体MZの内部が中空であるので誘電体素材を使用する必要がなく低コストで簡易に無線信号伝送路9を構成できる。
各系統の基本的な動作は1系統の動作と同様であるが、系統間の距離(チャネル間距離:この例では2つの送信側のアンテナ間距離に対応)が短いほど、それぞれの無線信号伝送路9が近接することになり、図10(A)の場合や図10(B)の第1基板602_1と第2基板602_2との間の各系統で同じ搬送周波数を使用して同時通信を行なうと、受信部側での干渉や混信が問題になる虞れがある。送信側のアンテナ(空中線)の配置、送信側のアンテナの電磁波出力の強度、受信側のアンテナの配置等の調整が困難で、チャネル間距離が短く、電磁波伝送路の干渉や混信を避けることが困難な場合、図10(B)に示すように、2つの無線信号伝送路9の間に、電磁波の遮蔽物(導電体MZ:金属など)を設置するとよい。或いは、2つ無線信号伝送路9で使用する周波数帯を異なるものとする周波数分割多重分離方式を採用してもよい。
例えば、デジタルスチルカメラやカムコーダ用のカメラなどの固体撮像装置を有する信号処理装置においては、固体撮像装置からの撮像データは高速で伝送される。高速伝送には電気信号を用い、多くがフレキシブル配線板、プリント配線板、ケーブルなどを用い信号処理器に伝送されているが、電気信号で信号伝送を行うことに伴う前述したような問題点を有している。これに対して、実施例4(第1例)では、伝送対象信号を無線信号にして伝送するので、電気配線で信号伝送を行なう部分が介在しない。固体撮像装置から出力される信号は大容量高速化されているが、電気配線による伝送は、その設計の困難さに加え、伝送路の分岐・分配が必要になる場合は回路(集積回路など)を用いて実現するため、設計時間の増加、コストの増大を招く。これに対して、実施例4(第1例)では、ミリ波による電磁波伝送路を用いて無線信号で信号伝送を行なうので、前述の問題から解放される。
撮像基板502と第2基板602_2とには直流電源を配置せず、第1基板602_1から撮像基板502と第2基板602_2とに非接触電力伝送を適用して電力供給を行なう。このとき、好ましくは、非接触電力伝送は単一キャリアのみとし、データ伝送は非接触電力伝送用の単一キャリアの周波数とは異なる周波数帯で行なうことで、非接触電力伝送の効率を低下させずに広帯域幅を確保するとともに、データ伝送への非接触電力伝送に起因するノイズ等の干渉を防止する。第1基板602_1と撮像基板502との間の非接触電力伝送の周波数と第1基板602_1と第2基板602_2との間の非接触電力伝送の周波数とは同じであってもよいし異なっていてもよい。周波数が異なる場合には、独立してオン・オフ制御することができる。更には、受電側である撮像基板502と第2基板602_2とは、電力伝送信号そのものを基準信号として利用することで、基本構成1〜実施例3と同様の効果が得られるようにするとよい。
アンテナ136_2とアンテナ236との間の通信では、第1基板602_1を挟むが、それは誘電体素材であるので、ミリ波帯での無線伝送に与える影響は少ない。
[第2例]
図11は、実施例4の電子機器の第2例を説明する図である。第2例は、複数の電子機器が一体となった状態での電子機器間で無線により信号伝送を行なう場合での適用例である。特に、一方の電子機器が他方の電子機器に装着されたときの両電子機器間の信号伝送への適用である。
例えば、中央演算処理装置(CPU)や不揮発性の記憶装置(例えばフラッシュメモリ)等が内蔵されたいわゆるICカードやメモリカードを代表例とするカード型の情報処理装置を本体側の電子機器に装着可能(着脱自在)にしたものがある。一方(第1)の電子機器の一例であるカード型の情報処理装置を以下では「カード型装置」とも称する。本体側となる他方(第2)の電子機器を以下では単に電子機器とも称する。
メモリカード201Bの構造例(平面透視及び断面透視)が図11(A)に示されている。電子機器101Bの構造例(平面透視及び断面透視)が図11(B)に示されている。電子機器101Bのスロット構造4(特に開口部192)にメモリカード201Bが挿入されたときの構造例(断面透視)が図11(C)に示されている。電子機器101Bとメモリカード201Bとで電子機器の全体が構成される。
スロット構造4は、電子機器101Bの筺体190にメモリカード201B(その筐体290)を開口部192から挿抜して固定可能な構成となっている。スロット構造4のメモリカード201Bの端子との接触位置には受け側のコネクタ180が設けられる。無線伝送に置き換えた信号についてはコネクタ端子(コネクタピン)が不要である。
図11(A)に示すようにメモリカード201Bの筐体290に円筒状の凹形状構成298(窪み)を設け、図11(B)に示すように電子機器101Bの筺体190に円筒状の凸形状構成198(出っ張り)を設けている。メモリカード201Bは、2つの基板202_1及び基板202_2を有し、基板202_1の一方の面に半導体チップ203_1を有するとともに半導体チップ203_1と接続されるアンテナ236_1が形成されており、基板202_2の一方の面に半導体チップ203_2を有するとともに半導体チップ203_2と接続されるアンテナ236_2が形成されている。筐体290は、各アンテナ236と対応する位置に、凹形状構成298が形成され、凹形状構成298の部分が無線信号伝送可能な誘電体素材を含む誘電体樹脂で構成される。
各基板202の一辺には、筐体290の決められた箇所で電子機器101Bと接続するための接続端子280が決められた位置に設けられている。メモリカード201Bは、低速・小容量の信号用に、従前の端子構造を一部に備える。非接触伝送に置換した電力供給用及びミリ波での信号伝送の対象となり得るものは、図中に破線で示すように、端子を取り外している。
図11(B)に示すように、電子機器101Bは、基板102の開口部192側の面に半導体チップ103を有し、基板102の一方の面にアンテナ136が形成されている。筺体190は、スロット構造4として、メモリカード201Bが挿抜される開口部192が形成されている。筺体190には、メモリカード201Bが開口部192に挿入されたときに、凹形状構成298の位置に対応する部分に、ミリ波閉じ込め構造(導波路構造)を持つ凸形状構成198が形成され誘電体伝送路9Aとなるように構成されている。
図11(C)に示すように、スロット構造4の筺体190は開口部192からのメモリカード201Bの挿入に対し、凸形状構成198(誘電体伝送路9A)と凹形状構成298が凹凸状に接触するようなメカ構造を有する。凹凸構造が嵌合するときに、アンテナ136と複数(図は2つ)のアンテナ236が対向するとともに、その間に無線信号伝送路9として誘電体伝送路9Aが配置される。メモリカード201Bは、誘電体伝送路9Aとアンテナ236の間に筐体290を挟むが、凹形状構成298の部分の素材が誘電体素材であるのでミリ波帯での無線伝送に大きな影響を与えるものではない。
非接触電力伝送に対応するべく、半導体チップ103には2つの給電電源部424を組み込み、半導体チップ203_1と半導体チップ203_2のそれぞれには受電電源部414及び基準信号生成部416を組み込む。半導体チップ103を搭載した基板102に導体パターンコイルの送電素子423_1及び送電素子423_2を配置し、半導体チップ203_1を搭載した基板202_1に導体パターンコイルの受電素子413_1を配置し、半導体チップ203_2を搭載した基板202_2に導体パターンコイルの受電素子413_2を配置する。
基板202_1及び基板202_2には直流電源を配置せず、基板102から基板202_1及び基板202_2に非接触電力伝送を適用して電力供給を行なう。このとき、好ましくは、非接触電力伝送は単一キャリアのみとし、データ伝送は非接触電力伝送用の単一キャリアの周波数とは異なる周波数帯で行なうことで広帯域幅を確保するとともに、データ伝送への非接触電力伝送に起因するノイズ等の干渉を防止する。送電素子423_1と受電素子413_1との間の非接触電力伝送の周波数と送電素子423_2と受電素子413_2との間の非接触電力伝送の周波数とは同じであってもよいし異なっていてもよい。周波数が異なる場合には、独立してオン・オフ制御することができる。更には、受電側である各基板202は、電力伝送信号そのものを基準信号として利用することで、基本構成1〜実施例3と同様の効果が得られるようにするとよい。
アンテナ136と各アンテナ236との間や各受電素子413と各送電素子423の間には、筐体290や基板202_1や基板202_2を挟むが、それらは誘電体素材であるので、非接触電力伝送やミリ波帯での無線伝送に与える影響は少ない。
[第3例]
図12は、実施例4の電子機器の第3例を説明する図である。第1の電子機器の一例として携帯型の画像再生装置201Kを備えるとともに、画像再生装置201Kが搭載される第2(本体側)の電子機器の一例として画像取得装置101Kを備えている。画像取得装置101Kと画像再生装置201Kとで電子機器の全体が構成される。画像取得装置101Kには、画像再生装置201Kが搭載される載置台5Kが筐体190の一部に設けられている。なお、載置台5Kに代えて、第2例のようにスロット構造4にしてもよい。一方の電子機器が他方の電子機器に装着されたときの両電子機器間において、無線により信号伝送を行なうという点では第2例と同じである。以下では、第2例との相違点に着目して説明する。
画像取得装置101Kは概ね直方体(箱形)の形状をなしており、もはやカード型とは言えない。画像取得装置101Kとしては、例えば動画データを取得するものであればよく、例えばデジタル記録再生装置や地上波テレビ受像機が該当する。画像再生装置201Kには、アプリケーション機能部として、画像取得装置101K側から伝送されてくる動画データを記憶する記憶装置や、記憶装置から動画データを読み出して表示部(例えば液晶表示装置や有機EL表示装置)にて動画を再生する機能部が設けられる。構造的には、メモリカード201Bを画像再生装置201Kに置き換え、電子機器101Bを画像取得装置101Kに置き換えたと考えればよい。
載置台5Kの下部の筺体190内には、例えば第2例(図11)と同様に、半導体チップ103が収容されており、ある位置にはアンテナ136が設けられている。アンテナ136と対向する筺体190の部分には、無線信号伝送路9として誘電体素材により誘電体伝送路9Aが構成されるようにしてある。載置台5Kに搭載される画像再生装置201Kの筺体290内には、2つの基板202_1及び基板202_2を有し、例えば第2例(図11)と同様に、基板202_1の一方の面に半導体チップ203_1を有するとともに半導体チップ203_1と接続されるアンテナ236_1が形成されており、基板202_2の一方の面に半導体チップ203_2を有するとともに半導体チップ203_2と接続されるアンテナ236_2が形成されている。アンテナ236_1及びアンテナ236_2と対向する筺体290の部分は、誘電体素材により無線信号伝送路9(誘電体伝送路9A)が構成されるようにしてある。これらの点は前述の第2例と同様である。
非接触電力伝送に対応するための構成も前述の第2例と同様であり、半導体チップ103には2つの給電電源部424を組み込み、半導体チップ203_1と半導体チップ203_2のそれぞれには受電電源部414及び基準信号生成部416を組み込む。半導体チップ103を搭載した基板102に導体パターンコイルの送電素子423_1及び送電素子423_2を配置し、半導体チップ203_1を搭載した基板202_1に導体パターンコイルの受電素子413_1を配置し、半導体チップ203_2を搭載した基板202_2に導体パターンコイルの受電素子413_2を配置する。
第3例は、嵌合構造という考え方ではなく壁面突当て方式を採り、載置台5Kの角101aに画像取得装置101Kが突き当てられるように置かれたときにアンテナ136とアンテナ236が対向するようにしているので、位置ズレによる影響を確実に排除できる。このような構成により、載置台5Kに対する画像再生装置201Kの搭載(装着)時に、画像再生装置201Kの無線信号伝送に対する位置合せ行なうことが可能となる。アンテナ136と各アンテナ236との間や各受電素子413と各送電素子423の間には、筐体190及び筐体290や基板202_1を挟むが、それらは誘電体素材であるので、非接触電力伝送やミリ波帯での無線伝送に与える影響は少ない。
<比較例との対比>
図13は、本発明と比較例との対比を説明する図である。特開2002−26778号公報に記載の非接触電力伝送と信号伝送は、電力を非接触で伝送するための電力伝送信号を信号伝送の搬送信号に使用する手法を採っており、電力伝送効率とデータレートや伝送帯域幅との間にはトレードオフの関係がある。例えば、複数のスイッチSW1〜スイッチSW3に対して電流量を切り替えて一次トランス10から二次トランス20に交流電力を給電し、平滑回路21で平滑して直流電力と信号を得る。適用例として、自動車のインパネ(1次)とメーター(2次)が想定されている。この方式は、常に搬送波は流れている状態であり、二次側は常に電源オン状態である。そこへ、スイッチSW1〜スイッチSW3による振幅変調を行ない、二次側の各ブロックへ信号を送信する。そのため、図13(A)に示すように、非接触電力伝送用の電力伝送信号と信号伝送用の搬送信号とは同一の周波数でよいが、例えば共振周波数foのみの結合の場合は帯域が幅が狭くなり、各チャネル(スイッチ)の伝送信号が低レートでなければ正常な信号伝送を行なえない。帯域を持たせるためには結合度が下がるので、高レートで信号伝送を行なうために信号帯域を拡げると、トランスの結合が非効率になり非接触電力伝送の効率が低下する難点がある。
これに対して、本発明では、好ましくは、非接触電力伝送用の周波数とは異なる周波数帯でデータ伝送を行なうことで、非接触電力伝送の効率を低下させずに広帯域幅を確保することができる。
特開2004−80844号公報に記載の非接触電力伝送と信号伝送は、適用例として、自動車のエアバッグ装置が想定されている。給電回路は、直流電源と直列に接続されたスイッチング素子(FET111及びFET112)と、スイッチング素子と出力トランスの1次巻線の間に直列に接続された共振コンデンサと、スイッチング素子を所定のオン・オフ周波数でスイッチング制御する制御手段とを含む共振型スイッチング電源である。一次側(自動車のボディ側)の駆動回路115よりパルス信号をFET111及びFET112へ入力する。オン・オフ周波数は、エアバッグインフレータの作動時に、共振コンデンサと出力トランスの1次巻線で決定される共振周波数fo_1と一致し、エアバッグインフレータの不作動時には共振周波数fo_1に一致しない周波数fo_2となるように設定する。FET111とFET112とには、デューティー比が違う信号を入力してオン・オフさせることでトランス103へパルスを給電し、二次側(ステアリング側)の受電回路で整流して通信制御回路107へ供給する。衝突センサが作動した場合にチャージポンプが作動し、コンデンサ113とトランス103が共振するので、結果的に二次側へ通常動作以上の電力が伝わり、高負荷であるエアバッグインフレータが動作する。この方式は、エアバッグが不動作で通信制御回路107のみが動作している通常動作時は電力伝送効率を犠牲していることになる。又、自動車のボディ側からステアリング側に電力を伝送する非接触電力伝送の系統とは別に、自動車のボディ側とステアリング側との間で非接触電力伝送用の電力伝送信号の周波数fo_1及び周波数fo_2とは異なる周波数fdの搬送信号を使用して信号伝送(例えばエアバッグ信号の伝送)を行なう系統が設けられている。しかしながら、エアバッグセンサ部からのエアバッグ信号をエアバッグインフレータへ伝送する通信装置は光通信回路を介するので、光通信を適用するのに特有の問題として多種の部品にて回路を構成する必要がある。
これに対して、本発明では、好ましくは、ユニット間の信号伝送を、電気配線や光によらずに、電波(特にミリ波帯或いはその近傍の周波数帯の搬送信号を使用する)で実現する。電波を利用するので無線通信技術を適用でき、電気配線を使用する場合の難点を解消できるし、又、光を利用する場合よりも簡単かつ安価な構成で、ユニット間における信号インタフェースを構築できる。サイズ・コストの面で、光を利用する場合よりも有利である。
又、特開2004−80844号公報と特開2004−80844号公報の何れも、1対1の非接触電力伝送と1対1のデータ伝送を開示しているに過ぎず、1対多の非接触電力伝送及び1対多のデータ伝送や、1対多の非接触電力伝送及び多対多のデータ伝送は開示されていない。これに対して、本発明の実施例1〜実施例4では、電力を非接触で伝送する系統と信号伝送を非接触で行なう系統のそれぞれを複数設けており、1対多の非接触電力伝送及び1対多のデータ伝送や、1対多の非接触電力伝送及び多対多のデータ伝送を実現できる。又、電力を非接触で伝送する系統を複数設けるとともに、それぞれの系統について、非接触電力伝送により受電した電力伝送信号に基づいて受電側の信号処理の基準となる基準信号を生成すれば、各系統について、簡易な構成で基準信号を一方から他方に非接触で伝送することができる。
以上、本発明について実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は前記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で前記実施形態に多様な変更又は改良を加えることができ、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
又、前記の実施形態は、クレーム(請求項)に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組合せの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。前述した実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜の組合せにより種々の発明を抽出できる。実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、効果が得られる限りにおいて、この幾つかの構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
例えば、前記実施形態では、特に好ましい態様として、信号伝送及び電力伝送の無線化を機器内或いは機器間に適用することについて説明したが、その適用範囲は、原理的には、1つの電気機器内の1つの基板上においても適用できるし、比較的離れた複数の電気機器間においても適用できる。但し、1つの基板上において、信号伝送及び電力伝送を無線化するニーズはさほど多くはないと考えられる。又、信号伝送をミリ波帯或いはその近傍の周波数帯で行ないつつ、電力伝送を無線化(非接触化)するという点においては、電気機器内の複数の基板間等、機器内或いは機器間(接触状態を含む比較的近距離の複数の電気機器間)に適用することが最適である。
前記実施形態では、非接触電力伝送により電力を伝送するとともに、伝送対象信号を無線(特にミリ波帯やその近傍の周波数帯を使用)により伝送する通信装置を負荷装置として備える電子機器について説明したが、給電側及び受電側の両ユニットの何れも、電力の供給を受ける負荷装置は通信装置に限定されない。即ち、給電側及び受電側の両ユニットの何れの負荷装置も、電力の供給を受けて行なう信号処理は通信処理に限定されない。この場合にも、基準信号生成部416は、受電素子413で受電した電力伝送信号に基づいて、その負荷装置の信号処理の基準となる基準信号を生成するとよい。給電側の負荷装置は、クロック生成回路425で生成された基準信号を使用して予め定められた信号処理を行なうことができる。受電側の負荷装置は、電力の供給を受けて予め定められた信号処理を行なうことができるし、電力伝送信号に基づいて基準信号生成部416で生成された基準信号を使用して、給電側の負荷装置と同期してその信号処理を行なうことができる。
<位相不確定性とその対策手法>
図14は、位相不確定性とその対策手法を説明する図である。前述の実施形態の説明では、受電側では、非接触電力伝送の電力伝送信号に基づいて通信装置が使用する基準信号を生成する。このため、受電側の通信装置に供給する基準信号の周波数が同じ(周波数同期がとれている)でかつ位相がロックしていても(位相同期がとれていても)、受電側の各通信装置に供給される基準信号の位相が同一にならないという現象(位相不確定性と称する)が生じ得る。非接触電力伝送の方式によっては、給電側の送電素子423の電力伝送信号の位相と、受電側の受電素子413に励起される電力伝送信号の位相とが一致しないことがあるためであり、電力伝送信号の送電側と受電側の位相差次第では正常な復調処理ができなくなる。
基準信号生成部416で生成された基準信号を使用する機能部(本例では通信装置)が、周波数同期と位相同期がとれていればよいシステムでは位相不確定性があっても問題がない。一方、受信側の復調機能部470が同期検波を利用して復調を行なう場合には、位相不確定性が問題となり得る。例えば、変調方式がASKやBPSKなどのように1軸変調方式の場合、送信側と受信側のそれぞれで使用する搬送信号の位相が一致していることが必要であるから、受信側で使用する搬送信号の位相の不確定性が、復調機能部470にて同期検波により復調処理を行なうときに影響を与え得る。変調方式がQPSKやQAMなどのように2軸変調方式の場合は、送信側と受信側のI軸・Q軸のそれぞれで使用する搬送信号の位相が一致していることが必要であるから受信側で使用する搬送信号の位相の不確定性が問題となり得る。
位相不確定性の影響を解消するには、給電側の送電素子423の電力伝送信号の位相と、受電側の受電素子413に励起される電力伝送信号の位相とが一致しないことに伴う影響を抑制する位相処理部(位相不確定性対策機能部)を設けるとよい。位相処理部としては例えば、電力伝送信号に基づいて基準信号生成部416が生成した基準信号の位相を適正な位相にする位相補正部を設け、その位相補正部の出力信号を受電側の通信装置に供給するとよい。或いは、電力伝送信号に基づいて基準信号生成部416が生成した基準信号を受電側の通信装置に供給するとともに、復調出力を監視して出力信号のレベルが適正となるようにする位相補正部を設けてもよい。以下、説明する。
[位相不確定性に対する対策回路]
位相処理部の一例である位相補正部の構成としては、復調出力(例えば復調機能部470の後段に設けられるフィルタ処理部)の後段にレベル検出部を設け、レベル検出部で検出された復調出力レベルに基づいて受信側局部発振部474(詳しくは、それを制御するタイミング信号生成部460)を制御して、その出力信号(周波数混合部472への搬送信号)の位相を変化させる第1の方法がある。第1の方法は、復調搬送信号の位相そのものを直接に制御する方式である。QPSK方式のようにI軸とQ軸を使う2軸変調方式の場合は、各軸の成分について第1の手法を適用すればよい。
ASK方式やBPSK方式のように1軸変調方式であっても復調機能部470を直交検波方式にしその後段に位相回転部とレベル検出部を設け、直交検波出力(I信号、Q信号)を使って位相回転部で出力信号の位相を回転させるとともに、位相回転部の出力レベルに基づいて位相回転部を制御して回転量を変化させる第2の方法もある。ASK方式やBPSK方式のように1軸変調方式の場合は、I軸成分についてのみレベル検出と位相回転を適用すればよい。QPSK方式のような2軸変調方式の場合は、I信号とQ信号のレベルを変えて合成することで位相補正を行なう。第2の方法はデジタル処理にすることが容易であり、I信号とQ信号をAD変換後にデジタル回路で位相補正をかけてもよい。
第1の方法の方が回路構成が簡易であるが、第1の方法は高周波回路で位相を切り替えるので補正制御が難易であるのに対して、第2の方法はベースバンド回路で位相を切り替えるので補正制御は簡易である。以下では、QPSK方式の場合において、第2の方法を採用する場合で、具体的に説明する。
図14には、位相不確定性の対策として設けられる位相補正部8700を説明する図が示されている。前述の実施形態との相違は、ASK方式(1軸変調方式)に代えてQPSK方式(2軸変調方式)を採用している点にある。受信チップRXの復調機能部470は、直交検波回路を構成するように、I軸成分を復調する周波数混合部472_I、Q軸成分を復調する周波数混合部472_Q、受信側局部発振部474から出力された発振信号の位相を90度(π/2)シフトする移相器476を有する。周波数混合部472_Iには受信側局部発振部474から出力された発振信号が搬送信号LoI_RXとして供給される。周波数混合部472_Qには受信側局部発振部474から出力された発振信号が移相器476でπ/2シフトされた後に搬送信号LoQ_RXとして供給される。
受信チップRXは、直交検波回路で構成された復調機能部470の後段に、フィルタ処理部8410と位相補正部8700をこの順に備えている。フィルタ処理部8410は、周波数混合部472_Iの後段にはI軸成分用のフィルタ処理部8410_Iが設けられ、周波数混合部472_Qの後段にはQ軸成分用のフィルタ処理部8410_Qが設けられている。位相補正部8700は、位相回転部8702と、位相回転部8702の出力信号の振幅レベルを検出するレベル検出部8704を有している。レベル検出部8704は、直交検波のフィルタ処理部8410_Iの出力(信号I)とフィルタ処理部8410_Qの出力(信号Q)を使って位相回転処理を行なう。位相回転部8702は詳細には、I軸成分の信号Iに対するゲイン調整を行なう第1ゲイン調整部8722と、Q軸成分の信号Qに対するゲイン調整を行なう第2ゲイン調整部8724と、ゲイン調整部8722及びゲイン調整部8724の各出力信号を合成する信号合成部8732を有する。信号合成部8732の出力信号I’がI軸成分の最終的な復調信号となる。ゲイン調整によってI軸成分に対して位相回転量αが調整される。通常は、第1ゲイン調整部8722のゲインを一定(ゲイン=1)にして、第2ゲイン調整部8724側のゲイン調整(ゲイン=k1)のみで位相回転量αを調整すればよい。例えば、図中に示すように、信号合成部8732は、第1ゲイン調整部8722から出力された信号Iと第2ゲイン調整部8724から出力された信号「k1・Q」を加算して出力信号I’とする。
位相回転部8702は、Q軸成分の信号Qに対するゲイン調整を行なう第3ゲイン調整部8726と、I軸成分の信号Iに対するゲイン調整を行なう第4ゲイン調整部8728と、ゲイン調整部8726の出力信号及びゲイン調整部8728の各出力信号を合成する信号合成部8736を有する。信号合成部8736の出力信号Q’がQ軸成分の最終的な復調信号となる。ゲイン調整によってQ軸成分に対して位相回転量βが調整される。通常は、第3ゲイン調整部8726のゲインを一定(ゲイン=1)にして第4ゲイン調整部8728側のゲイン調整(ゲイン=k2:位相を考慮して−k2)のみで位相回転量βを調整すればよい。例えば、図中に示すように、信号合成部8736は、第3ゲイン調整部8726から出力された信号Qから第4ゲイン調整部8728から出力された信号「−k2・I」を減算して出力信号Q’とする。
レベル検出部8704への入力は、I軸成分用の信号合成部8732の出力信号I’のみとする第1構成例、Q軸成分用の信号合成部8736の出力信号Q’のみとする第2構成例、I軸成分用の信号合成部8732の出力信号I’とQ軸成分用の信号合成部8736の出力信号Q’の双方とする第3構成例の何れでもよい。信号Iと信号Qの両方を使う場合は、片方だけの場合よりも回路規模が大きくなるが、調整精度がよくなる。
図は両方を使用する第3構成例で示しており、レベル検出部8704は、信号合成部8732の出力信号I’のレベルを検出する第1レベル検出部8742と、信号合成部8736の出力信号Q’のレベルを検出する第2レベル検出部8744と、第1レベル検出部8742と第2レベル検出部8744の各出力信号を合成して回転制御信号ROT を生成する信号合成部8746を有する。信号合成部8746は、第1レベル検出部8742から出力されたレベル信号DET_Iから第2レベル検出部8744から出力されたレベル信号DET_Qを減算して回転制御信号ROT とする。
何れの場合も、調整のために既知パターンを送信した方がよい。既知パターンは、例えば、片方のみの場合(第1構成例や第2構成例)は対応する成分だけの信号にし、両方の場合(第3構成例)は、何れか一方の成分だけの信号(I成分だけの信号またはQ成分だけの信号)にするのがよい。
例えば、レベル検出部8704が信号Iと信号Qの両方を使うようにした図示する構成の場合、位相補正のゲイン調整時には、BPSKの信号を復調機能部470に入力し、直交検波の出力(信号Iと信号Q)を使って位相回転部8702で出力信号の位相を回転させ、その出力(I’成分とQ’成分)をレベル検出部8704で検出する。レベル検出部8704は、検出した振幅レベルに基づいて位相回転部8702を制御して回転量を変化させる。例えば、I’成分とQ’成分のレベル差が最小になるように位相回転部8702の第2ゲイン調整部8724と第4ゲイン調整部8728のゲインを調整する。
図示しないが、受信側局部発振部474を制御して、その出力である再生搬送信号Lo_RX(周波数混合部472への搬送信号)の位相を変化させる第1の方法を採る場合のレベル検出部8704の制御手法は以下のようにするとよい。先ず、レベル検出部8704への入力は、I軸成分用のフィルタ処理部8410_Iの出力信号Iのみとする第1構成例、Q軸成分用のフィルタ処理部8410_Qの出力信号Qのみとする第2構成例、I軸成分用のフィルタ処理部8410_Iの出力信号IとQ軸成分用のフィルタ処理部8410_Qの出力信号Qの双方とする第3構成例の何れでもよい。信号Iと信号Qの両方を使う場合は、片方だけの場合よりも回路規模が大きくなるが、調整精度がよくなる。
ここで、片方のみの第1構成例と第2構成例の場合、位相補正部8700は、調整のために既知パターンを送信した方について、レベル検出部8704で検出された振幅レベルが最大になるように受信側局部発振部474を制御するタイミング信号生成部460を制御する。
両方の第3構成例の場合、位相補正部8700は、既知パターンとして送信した一方の成分(例えばI成分)についてのレベル検出部8704で検出された振幅レベルができるだけ大きくなり、既知パターンとして送信していない他方の成分(例えばQ成分)についてのレベル検出部8704で検出された振幅レベルができるだけ小さくなるようにしつつ、両者のバランスをとるようにするのがよい。或いは、既知パターンとして送信した一方の成分(例えばI成分)にのみ着目して、レベル検出部8704で検出された振幅レベルが最大となるように調整してもよいし、既知パターンとして送信していない他方の成分(例えばQ成分)にのみ着目して、レベル検出部8704で検出された振幅レベルが最小となるように調整してもよい。
尚、送電素子423の電力伝送信号の位相と受電素子413に励起される電力伝送信号の位相とが一致しないことに伴う影響の問題は、通信処理を行なう場合に限ったことではない。給電側のユニットに備えられる負荷装置と受電側のユニットに備えられる負荷装置とが同期した処理を行なう場合にも同様に起こることであり、信号処理の内容に応じて、その影響を抑制する位相処理部を備えることが好ましい。