以下、図面を参照して、本明細書で開示する技術の実施形態について詳細に説明する。各機能要素について形態別に区別する際にはアルファベット或いは“_n”(nは数字)或いはこれらの組合せの参照子を付して記載し、特に区別しないで説明する際にはこの参照子を割愛して記載する。図面においても同様である。
説明は以下の順序で行なう。
1.全体概要
2.実施例1:機器内の信号伝送(高周波信号導波路が1枚)
3.実施例2:機器内の信号伝送(高周波信号導波路が2枚)
4.実施例3:機器内の信号伝送(高周波信号導波路が2枚+連結)
5.実施例4:機器間(スロット構造)
6.実施例5:機器間(スロット構造&可撓性の高周波信号導波路)
7.実施例6:機器間(クレードル)
8.適用例
<全体概要>
[電子機器、モジュール]
先ず、基本的な事項について以下に説明する。本明細書で開示する電子機器及びモジュールにおいては、例えば、誘電体或いは磁性体で構成された高周波信号導波路を筺体内に配置しておき、通信機能を有するモジュールを高周波信号導波路に実装することで、高周波信号導波路を伝わる高周波信号の通信を確立する。こうすることで、高速のデータ伝送を、マルチパス、伝送劣化、不要輻射等を少なくして機器内通信或いは機器間通信を実現する。通信機能を有するモジュールを高周波信号導波路に追加実装することで、機能拡張等の構成変更に伴う設計変更、基板面積の増大、コストアップ等の負担なく行なうことができる。つまり、ミリ波等の電磁波を低損失で伝送できる高周波信号導波路を機器内に配置しておき、必要に応じて通信機能を持つモジュールを置くことで、高周波信号導波路内を通してミリ波等の電磁波を伝えることにより、既設のモジュールと追加されたモジュールとの間でのデータ転送を実現する。機能追加等の構成変更によるメインボード等の設計変更を行なうことなく、モジュールを追加できる。
電気配線の接続に対して、高周波信号導波路とカップラ(高周波信号の伝達機能を持つ伝達構造体)の配置は、電気配線のコネクタのようにピン配置や接触位置を特定するのもではなく、相当程度(数ミリメートル〜数センチメートル)の誤差を許容できる。無線接続に対して、電磁波の損失を低くできるので、送信器の電力を低くでき、受信側の構成を簡略化できるし、機器外からの電波の干渉や、逆に、機器外への放射を抑圧することもできる。
例えば、本開示の第1の態様に係る電子機器と対応する本実施形態の電子機器においては、高周波信号を伝送する高周波信号導波路を備える。高周波信号導波路には、通信装置が追加可能な追加部を設けておく。本実施形態の電子機器の高周波信号導波路に高周波信号を結合可能な本実施形態のモジュールは、通信装置と、通信装置から発せられた高周波信号を電子機器の高周波信号導波路に結合させる伝達構造体、とを備える。通信装置から発せられた高周波信号は、高周波信号導波路を介在して伝送するので、通信装置から発せられた高周波信号が機器内の部材で反射することはない。高周波信号の伝達機能を持つ伝達構造体を高周波信号導波路に対向して配置することで機能追加等の構成変更に容易に対応できる。
本実施形態のモジュールにおいては、好ましくは、高周波信号を伝送する高周波信号導波路を備えているとよい。通信装置は、高周波信号を高周波信号導波路に結合可能に配置する。この場合、通信装置から発せられた高周波信号は高周波信号導波路を介して伝達構造体に伝送される。或いは、通信装置及び伝達構造体を半導体チップに内蔵してもよい。更には、このような通信装置及び伝達構造体を内蔵した半導体チップを高周波信号導波路に実装してもよい。
例えば、高周波信号導波路には、通信機能を有する第1のモジュールを結合させておく。この状態で、更に、追加部に通信機能を有する第2のモジュールを例えば構成変更用のモジュールとして追加して高周波信号導波路に結合させる。これにより、高周波信号導波路を介して、第1のモジュールと第2のモジュールとの間でデータ伝送が可能になる。例えば、高周波信号導波路には、追加部として、通信機能を有するモジュールと電磁結合可能な領域を設けておく。当該領域に第2のモジュールが追加(構成変更用)のモジュールとして配置されたときに、当該追加のモジュールと、通信機能を有する既設のモジュール(第1のモジュール)との間で、データ伝送を行なうことが可能である。例えば、筺体中に、高周波信号導波路を配置しておき、ミリ波伝送機能を有する第1のモジュールと第2のモジュールを高周波信号導波路と接するように実装することで、高周波信号導波路を伝わるミリ波通信が確立され、高速のデータ伝送をマルチパスや伝送劣化、不要輻射を少なく行なうことができる。例えば、筺体中に、通信機能を有する第1のモジュールを高周波信号導波路に接するように配置しておき、追加機能としてミリ波伝送機能を有する第2のモジュールを必要なときに高周波信号導波路と接するように実装することで、高周波信号導波路を伝わるミリ波通信を確立する。これにより、機能拡張用に伴う設計変更、基板面積の増大、コストアップなどの負担なく行なうことができる。
本実施形態の電子機器においては、複数の高周波信号導波路を備えるとよい。複数の高周波信号導波路の少なくとも一方には、通信機能を有する第1のモジュールを結合させておく。機能追加等の構成変更時には、更に、複数の高周波信号導波路のうちの第1のモジュールが結合されている方の追加部に、通信機能を有する第2のモジュールを構成変更用のモジュールとして追加し、高周波信号導波路に結合させる。こうすることで、高周波信号導波路を介して、第1のモジュール(実装済みのモジュール)と第1のモジュール(構成変更用のモジュール)との間で、他方の高周波信号導波路とは独立して、データ伝送が可能になる。
或いは、本実施形態の電子機器においては、複数の高周波信号導波路と、複数の高周波信号導波路を連結する連結高周波信号導波路とを備えるとよい。複数の高周波信号導波路のそれぞれには、通信機能を有する第1のモジュールを結合させておく。機能追加等の構成変更時には、更に、複数の高周波信号導波路の少なくとも一方の追加部に、通信機能を有する第2のモジュールを例えば構成変更用のモジュールとして追加し、高周波信号導波路に結合させる。こうすることで、高周波信号導波路及び連結高周波信号導波路を介して、複数の高周波信号導波路のそれぞれに結合されている各第1のモジュール(実装済みの各モジュール)と追加された第2のモジュール(構成変更用のモジュール)との間でデータ伝送が可能になる。
尚、好ましくは、連結高周波信号導波路は、複数の高周波信号導波路に対して着脱可能であるとよい。連結高周波信号導波路を複数の高周波信号導波路から取り外すと、高周波信号導波路を介して、第1のモジュール(実装済みのモジュール)と第2のモジュール(構成変更用のモジュール)との間で、他方の高周波信号導波路とは独立して、データ伝送が可能になる。
本実施形態の電子機器においては、高周波信号導波路は、筐体に沿って配置されているとよい。例えば、スロット構造を持つ本体側の電子機器のスロット構造に挿入すると、本体側の電子機器との間でデータ伝送が可能になる。或いは又、高周波信号導波路が配置されている信号伝送装置(例えばクレードル装置)に搭載すると、信号伝送装置の高周波信号導波路を介してデータ伝送が可能になる。
例えば、本体側の電子機器には、他の電子機器を挿入可能なスロット構造を追加部の一例として設ける。高周波信号導波路は、スロット構造の壁面に平行に配置しておく。他の電子機器がスロット構造に挿入されることにより、高周波信号導波路を介して、他の電子機器との間でデータ伝送が可能になる。高周波信号導波路が筐体から露出している場合には、高周波信号導波路同士を接触させることもできる。
或いは、信号伝送装置(例えばクレードル装置)を成す電子機器においては、高周波信号導波路を、通信機能を持つ他の電子機器から発せられる高周波信号と結合可能に(例えば載置面に沿って)設ける。他の電子機器が高周波信号導波路に近接して配置されると、他の電子機器は高周波信号導波路を介してデータ伝送が可能になる。他の電子機器は、載置面に近接して配置されてもよいし載置面に搭載されてもよいし、高周波信号導波路が筐体から露出している場合には、高周波信号導波路同士を接触させることもできる。
例えば、複数の他の電子機器が信号伝送装置の高周波信号導波路に近接して配置されると、複数の他の電子機器間でデータ伝送が可能になる。例えば、高周波信号導波路とその上に第1のモジュールを配置した第1の電子機器と、高周波信号導波路とその上に第2のモジュールを配置した第2の電子機器を、高周波信号導波路を表面に配置したクレードル装置上に配置することで、第1のモジュールと第2のモジュールの間で通信を確立させることができる。異なる電子機器間で、データ伝送を行なうことで、一方の電子機器を他方の電子機器の外部機器として扱うことができ、その外部機器を他方の電子機器の機能拡張用として使用することができる。
或いは、信号伝送装置(例えばクレードル装置)を成す電子機器においては、高周波信号導波路には、通信機能を有する第1のモジュールを結合させておく。他の電子機器が信号伝送装置の高周波信号導波路に近接して配置されると、第1のモジュール(実装済みのモジュール)と他の電子機器との間でデータ伝送が可能になる。信号伝送装置(例えばクレードル装置)を電子機器の外部機器として扱うことができ、信号伝送装置を電子機器の機能拡張用として使用することができる。逆に、信号伝送装置(例えばクレードル装置)の高周波信号導波路に近接して配置される電子機器を信号伝送装置の外部機器として扱うことができ、その電子機器を信号伝送装置の機能拡張用として使用することができる。或いは、高周波信号導波路と高周波信号を結合させる通信回路を設ける。通信回路は、高周波信号導波路の端面において電磁結合をとる高周波結合器を具備する。通信回路は外部機器と接続可能にする。電子機器が高周波信号導波路に近接して配置されると、通信回路を介して電子機器と外部機器との間でデータ伝送が可能になる。
本実施形態の電子機器においては、高周波信号導波路の少なくとも一部が筐体から露出しているとよい。例えば、スロット構造を持つ本体側の電子機器のスロット構造に挿入すると、本体側の電子機器の高周波信号導波路と接触することで、データ伝送が可能になる。或いは又、信号伝送装置(例えばクレードル装置)を成す電子機器においては、高周波信号導波路の少なくとも一部を露出させる。又、信号伝送装置(例えばクレードル装置)の高周波信号導波路に結合される他の電子機器も、高周波信号を伝送する高周波信号導波路を筐体から露出させる。他の電子機器を信号伝送装置(例えばクレードル装置)の高周波信号導波路に近接させるとき、双方の高周波信号導波路が接触することで、データ伝送が可能になる。
本実施形態の電子機器においては、他の電子機器を挿入可能なスロット構造を追加部の一例として備えるに当たり、高周波信号導波路は、その端部が可撓性を有するとともに、スロット構造内部に突出させておく。例えば、高周波信号導波路には、可撓性の素材で構成された接触用の高周波信号導波路が取り付けるとよく、接触用の高周波信号導波路の先端側は、スロット構造に突き出しておく。他の電子機器がスロット構造に挿入され、高周波信号導波路の端部と接触することにより、他の電子機器との間でデータ伝送が可能になる。好適には、スロット構造に挿入される電子機器は、高周波信号導波路の少なくとも一部が筐体から露出しているとよい。スロット構造を持つ本体側の電子機器のスロット構造に挿入すると、本体側の電子機器の高周波信号導波路と高周波信号導波路の端部とが接触することで、データ伝送が可能になる。高周波信号導波路の端部を可撓性の素材で構成することで、スロット構造に挿入される電子機器(換言すると追加モジュール)の形状や高周波信号の伝達構造の位置を特定することなく柔軟な機能追加が可能となる。
電子機器は、スロット構造を備えるタイプであるのか、クレードル装置のタイプであるのかを問わず、高周波信号導波路を筐体から露出させないときには、他方の高周波信号導波路と非接触で結合するので、接触させる場合よりも送信電力を大きくするとよい。高周波信号導波路はそれと結合する他方の高周波信号導波路との距離が大きく導波路同士が直接結合しない場合でも、高周波信号の伝達機能を持つ伝達構造体として、アンテナ構造を採用すれば、長距離の通信も可能である。高周波信号導波路を筐体から露出させるときには、高周波信号導波路は縦波の電磁波で結合させるとよい。
本実施形態の電子機器においては、好ましくは、高周波信号導波路に結合されたモジュールに基づいて構成情報を変更し、変更後の構成情報にしたがってデータ伝送を制御する制御部を備えるとよい。或いは、高周波信号導波路に結合されたモジュールに基づいて構成情報を変更し、変更後の構成情報にしたがってデータ伝送を制御する機器外に配置された制御部と接続可能にしてもよい。
制御部は、例えば、新たなモジュールが高周波信号導波路に結合される前後の構成情報を管理し、変更後の構成情報にしたがってデータ伝送を制御する。例えば、あるモジュールが高周波信号導波路に近接配置される前は既設のモジュール同士でデータ伝送を行なうことで第1の機能が実現されると云う旨の構成情報を持っている。この状態において、新たなモジュールが高周波信号導波路に結合されると、その新たなモジュールとの間でもデータ伝送を行なうことが可能になり、このデータ伝送を利用することで新たな機能が実現可能であると云う旨の構成情報に変更する。そして、変更後の構成情報にしたがってデータ伝送を制御することで、新たに結合されたモジュールを利用して新たな機能を実現することができる。これによって、高周波信号導波路に近接して配置されるモジュールに基づき、全体の機能を変更可能である。
制御部は、高周波信号導波路の何れの位置に配置されているかを検知するとよい。或いは、制御部は、高周波信号導波路に配置されたものが、通信装置を有するモジュールであるのか否かを検知するとよい。例えば、高周波信号導波路に結合する他方の高周波信号導波路が近接して配置されたときに、それを認識する。好ましくは、その置かれた位置や何が置かれたかも認識する。好適には、異物が置かれたか否かも認識するとよい。或いは又、通常は省電力モードにしておき、通信処理が必要になったときに(つまり、高周波信号導波路に結合する他方の高周波信号導波路が近接して配置されたときに)、省電力モードから復帰させるとよい。
尚、高周波信号導波路は、線状(1次元状)であってもよいし、全体として2次元状であってもよい。2次元状とする場合、高周波信号導波路は、一枚の平板で構成されているもの、導波路が櫛形状に配置されているもの、導波路が格子状に配置されているもの、導波路が螺旋状に配置されているもの等、全体として2次元状である限り、それを成す伝送路の形態は何れであってもよい。或いは又、高周波信号導波路は、全体として3次元状であってもよい。3次元状とする場合、複数の2次元状の高周波信号導波路を並設させて、高周波信号導波路を立体的に配置してもよい。櫛形状や螺旋状に配置すると、一枚の平板で構成する場合と比べると、導波路の幅も調整できるので、カップリングが良い、またはロスが少ない構造を作れる。格子状に配置すると、複数のパスができるため、違うパスを通った信号と干渉し、悪影響を与える可能性があるが、遅延波との時間差からどの位置にものが置かれたか認識することができる。螺旋状に配置すると、櫛形や格子状と比べると、直角に曲がる部分がないため、ロスが少ないし、伝送路が1本であるのでマルチパスの影響が小さい。
或いは又、高周波信号導波路は、1次元状、2次元状、3次元状の何れにおいても、当該高周波信号導波路を構成する部材とは異なる部材に埋設されていてもよい。或いは、高周波信号導波路が配設されている層の上層及び下層の少なくとも一方に、当該高周波信号導波路を構成する部材とは異なる部材で構成された層が積層されていてもよい。高周波信号導波路は、金属材で固定されていてもよい。
高周波信号導波路を構成する部材は、誘電体或いは磁性体の何れでもよいし、可撓性のものでもよい。誘電体の方が、簡易なプラスチックを使用できる利点がある。
好適には、電波受信型、電磁誘導型、或いは、共鳴型によるワイヤレス給電をモジュールに行なうとよい。この際には、周波数帯にもよるが、そのため電力伝送信号を高周波信号導波路を介して伝送してもよい。
[信号伝送装置、信号伝送方法]
データ伝送を行なうための通信装置に関しては以下のようにする。本実施形態においては、伝送対象信号を電波の周波数帯の高周波信号にして送信する送信装置と、送信装置から送信された伝送対象信号の高周波信号を受信する受信装置とを備える。周波数分割多重や時間分割多重を適用してもよい。送信装置と受信装置との間では、高周波信号導波路を介して高周波信号を伝送する。詳しくは、送信装置と受信装置とが予め定められた位置に配置されたとき、送信装置と受信装置との間に、高周波信号を結合する高周波信号導波路が配置されるようにする。こうすることで、送信装置と受信装置との間では、伝送対象信号を高周波信号に変換してから、高周波信号を高周波信号導波路を介して伝送することができる。伝送対象信号を高周波信号として送信する送信装置(送信側の通信装置)と、送信装置から送信された高周波信号を受信して伝送対象信号を再生する受信装置(受信側の通信装置)とで伝送対象信号用の信号伝送装置が構成される。
送信装置や受信装置は電子機器に設けられる。各電子機器に送信装置と受信装置の双方を設ければ双方向通信に対応できる。電子機器同士を予め定められた位置で装着して、両者間で信号伝送を行なうこともできる。
信号伝送装置は、各種の伝送対象信号の内、高速性や大容量性が求められる信号のみを電波の周波数帯の高周波信号への変換対象とし、その他の低速・小容量で十分なものや電源等直流と見なせる信号に関しては変換対象としない態様としてもよいし、更にはその他の低速・小容量で十分なものも電波の周波数帯の高周波信号への変換対象に含めてもよい。電源についても電力供給装置と電力受取装置とにより高周波信号導波路を介して伝送するとよりよい。即ち、高速性や大容量性が求められる信号の他に、その他の低速・小容量で十分なものも高周波信号に変換して伝送してもよく、ワイヤレス給電を適用して電源(電力)も含む全ての信号を高周波信号導波路を介して伝送すれば更によい。電波の周波数帯の高周波信号での伝送の対象としない信号については、従前のように電気配線で行なう。電波の周波数帯の高周波信号に変換する前の元の伝送対象の電気信号を纏めてベースバンド信号と称する。
因みに、ワイヤレス給電を行なう場合には、電力伝送と信号伝送とをそれぞれ異なる信号で行なえばよく、その限りにおいて電力伝送信号の周波数と信号伝送用の搬送信号の周波数とを異ならせてもよいし同じにしてもよい。但し、電力伝送信号によるノイズ等の影響を防止する観点では、好ましくは、電力伝送信号の周波数と信号伝送用の搬送信号の周波数とを異ならせる。電力伝送信号の周波数が情報の無線通信に使用する周波数帯域と重なっていなければよく、その限りにおいて種々の周波数を使用してよい。又、適用できる変調方式には制限があるが、電力伝送効率の低下が許容される場合には、信号伝送と電力伝送の各搬送波を共通にしてもよい(この場合、電力伝送信号の周波数と信号伝送用の搬送信号の周波数とは同じになる)。
信号伝送に電波の周波数帯の高周波信号を使用すれば、電気配線や光を使用する場合の問題は起きない。即ち、信号伝送を、電気配線や光によらずに電波の周波数帯の高周波信号を利用すれば、無線通信技術を適用でき、電気配線を使用する場合の難点を解消できるし、光を利用する場合よりも簡単かつ安価な構成で信号インタフェースを構築できる。サイズ・コストの面で、光を利用する場合よりも有利である。好ましくは、本実施形態においては、信号伝送は、ミリ波帯(波長が1〜10ミリメートル)の搬送周波数を主に使用するのが好適である。但し、ミリ波帯に限らず、より波長の短い例えばサブミリ波帯(波長が0.1〜1ミリメートル)やより波長の長いセンチ波帯(波長が1〜10センチメートル)等、ミリ波帯近傍の搬送周波数を使用する場合にも適用可能である。例えば、サブミリ波帯〜ミリ波帯、ミリ波帯〜センチ波帯、或いはサブミリ波帯〜ミリ波帯〜センチ波帯を使用してよい。信号伝送にミリ波帯或いはその近傍を使用すれば、他の電気配線に対して妨害を与えずに済み、電気配線(例えばフレキシブルプリント配線)を信号伝送に使ったときのようなEMC対策の必要性が低くなる。ミリ波帯或いはその近傍を使用すれば、電気配線(例えばフレキシブルプリント配線)を使ったときよりもデータレートを大きくとれるので、高精細化やフレームレートの高速化による画像信号の高速化等、高速・高データレートの伝送にも簡単に対応できる。
[全体構成]
図1は、本実施形態の信号伝送装置が搭載されている実施例1の電子機器の全体構成の概要を示す図である。
実施例1は、1つ又は複数の信号処理モジュール(信号処理回路やその半導体集積回路等でもよい)が電子機器300A(電子機器300A_1或いは電子機器300A_2)内に存在する場合において、機能変更を行なう場合に、他の信号処理モジュール(構成変更信号処理モジュールと称する)を追加する形態である。特に、後述の他の実施例との相違点として、信号処理モジュール間での高周波信号の伝送を中継(結合)する機能を持つ高周波信号導波路308(高周波信号伝送路)に対して各信号処理モジュールが電磁結合される形態である。「電磁結合」とは、「電磁気的に接続(結合)」することであって、接続された各高周波信号導波路内を高周波信号が伝送可能に接続することを意味する。因みに、高周波信号導波路308Aは、図1(A)に示すように、直線状や平面状の高周波信号導波路308A_1であることに限定されず、図1(B)に示すように、折れ曲がっている高周波信号導波路308A_2でもよい。例えば、高周波信号導波路308A_2は、可撓性のある(フレキシブルな)素材で構成すればよい。
電子機器300Aは、機器全体の動作を制御する中央制御部302と高周波信号導波路308Aを備える。高周波信号導波路308Aは、電子機器300Aの筐体の壁面に沿って(ほぼ平行に)配置されている。ここで、電子機器300Aは、高周波信号導波路308A上に1つ或いは複数の信号処理モジュールが実装済みである。好適には、信号処理モジュールが高周波信号導波路308と接するように実装しておく。この実装済みの信号処理モジュールを既設信号処理モジュール304と称する。中央制御部302の機能を既設信号処理モジュール304が担当してもよい。この際には、何れか1つの既設信号処理モジュール304に限らず複数の既設信号処理モジュール304で分担してもよい。既設信号処理モジュール304は、高周波信号導波路308の何れの面に配置されていてもよい。各既設信号処理モジュール304は、それ自身で予め定められた信号処理を行なうし、複数の既設信号処理モジュール304が実装されているときには、既設信号処理モジュール304間でデータを交換しながら信号処理を行なうこともある。
中央制御部302は、高周波信号導波路308に結合される信号処理モジュールに基づいて構成情報を変更し、変更後の構成情報にしたがってデータ伝送を制御する。例えば、信機能を有する信号処理モジュールの組合せ構成が変更されたことを認識すると、変更後のモジュールの組合せ構成に適合した信号処理モジュール間或いはCPU(中央制御部302でもよい)等との間でデータ伝送が行なわれるように制御する。その制御用やモジュール認識用等の信号は、通常の電気配線(プリントパターンやワイヤーハーネス等)を利用すればよい。例えば、中央制御部302は、高周波信号導波路308に構成変更信号処理モジュール306が搭載されていることを検知する配置検知部と、配置検知部により構成変更信号処理モジュール306が載置されたことが検知された場合に、既設信号処理モジュール304や構成変更信号処理モジュール306を制御し、構成変更に応じて信号処理モジュール間の通信を制御する通信制御部とを有する。配置検知部は、高周波信号導波路308に信号処理モジュール306が搭載されたか否かの検知機能だけでなく、その置かれた位置や何が置かれたかも認識する認識機能も備えるとよい。「何が配置されたか」の認識機能等に関しては、後述の中央制御部402と同様の手法を採ればよい。
既設信号処理モジュール304間で信号処理を行なう際には、高速性や大容量性が求められるデータに関してはミリ波帯或いはその前後の周波数帯(例えばサブミリ波帯やセンチ波帯)(以下代表的にミリ波帯で記載する)の高周波信号に変換して、高周波信号導波路308を介して通信処理を行なう。それ以外のデータ(電源も含む)に関しては通常の電気配線(パターン配線を含む)で伝送すればよい。既設信号処理モジュール304間で高周波信号導波路308を介してミリ波帯で通信処理を行なうべく、既設信号処理モジュール304には、ミリ波伝送機能を実現する通信装置が設けられており(後で図2にて説明する)、通信装置が有する高周波信号の結合構造と高周波信号導波路308Aとが電磁的に結合可能に配置される。例えば、各既設信号処理モジュール304を高周波信号導波路308Aと接するように実装することで、高周波信号導波路308Aを伝わるミリ波通信を確立する。尚、周波数の異なる複数の搬送周波数(キャリア周波数)を用いたいわゆる周波数分割多重を用いることで、1つの周波信号伝送路308で複数系統の通信が可能である。
ここで、高周波信号導波路308Aには、機能変更を行なう場合に、ミリ波帯での通信処理が可能な構成変更信号処理モジュール306(換言すると通信装置)を実装可能な領域(つまり追加モジュールと電磁的に結合可能な領域領域:以下では追加モジュール実装領域と称する)が設けられている。図示した例では、追加モジュール実装領域309は、既設信号処理モジュール304が実装されている領域よりも外周側に追加モジュール実装領域309が用意されている。構成変更信号処理モジュール306を後から追加する場合は、高周波信号導波路308上に予め設置された既設信号処理モジュール304がある状態より、構成変更信号処理モジュール306を追加モジュール実装領域309に設置することで、高周波信号導波路308Aを介しての高速・大容量のミリ波通信を確立する。これにより、ミリ波を用いた高速なデータ伝送を低損失で行なえる。
電子機器300Aの筺体中に、高周波信号導波路308を配置しておき、ミリ波伝送機能を有する既設信号処理モジュール304と構成変更信号処理モジュール306を高周波信号導波路308と対向するように(好ましくは接するように:詳しくは高周波信号を電磁的に結合可能なように)実装する。こうすることで、既設信号処理モジュール304と構成変更信号処理モジュール306との間で高周波信号導波路308を伝わるミリ波通信が確立され、高速のデータ伝送を、マルチパスや伝送劣化或いは不要輻射を少なく行なうことができる。最初からミリ波通信用の複数の信号処理モジュールを設置しておかなくても、ミリ波伝送機能を有する既設信号処理モジュール304を、高周波信号を電磁的に結合可能なように高周波信号導波路308上に配置しておき、機能変更等の構成変更が必要になったときに、高周波信号を電磁的に結合可能なように高周波信号導波路308上の追加モジュール実装領域309に構成変更信号処理モジュール306を配置することで、高周波信号導波路308を伝わるミリ波通信を確立することができる。因みに、図中の破線が構成変更時の高周波信号の伝送系統を示す(後述する他の実施例でも同様である)。このため、機能拡張等の構成変更に伴う設計変更、基板面積の増大、コストアップ等の負担を伴わずに、機器内通信を簡易に実現することができる。
[通信処理系統]
図2は、実施例1の電子機器300Aに搭載されている実施例1の信号伝送装置1Aの信号インタフェースを機能構成面から説明する図である。換言すると、電子機器300Aにおける通信処理に着目した機能ブロック図である。
信号伝送装置1Aは、第1の無線機器の一例である第1通信装置100と第2の無線機器の一例である第2通信装置200がミリ波信号伝送路9(高周波信号導波路308の一例)を介して結合されミリ波帯で信号伝送を行なうように構成されている。第1通信装置100にはミリ波帯での送受信に対応した半導体チップ103が設けられ、第2通信装置200にはミリ波帯での送受信に対応した半導体チップ203が設けられている。
第1通信装置100は、既設信号処理モジュール304に設けられる通信装置と対応し、図示した例では複数個が設けられており、第2通信装置200が設置されていない状態において、第1通信装置100間でミリ波帯で高速・大容量のデータ伝送が可能になっている。第2通信装置200は構成変更信号処理モジュール306に設けられる通信装置と対応し、ミリ波信号伝送路9上に設置されたとき、高周波信号(ミリ波帯の電気信号)を電磁的に結合可能であり、既設信号処理モジュール304との間でミリ波帯で高速・大容量のデータ伝送が可能になっている。
本実施例では、ミリ波帯での通信の対象となる信号を、高速性や大容量性が求められる信号のみとし、その他の低速・小容量で十分なものや電源等直流と見なせる信号に関してはミリ波信号への変換対象としない。これらミリ波信号への変換対象としない信号(電源を含む)については、従前と同様の手法で信号の接続をとる。ミリ波に変換する前の元の伝送対象の電気信号を纏めてベースバンド信号と称する。後述する各信号生成部はミリ波信号生成部或いは電気信号変換部の一例である。
第1通信装置100は、基板102上に、ミリ波帯での送受信に対応した半導体チップ103と伝送路結合部108が搭載されている。半導体チップ103は、前段信号処理部の一例であるLSI機能部104と送信処理用の信号生成部107_1及び受信処理用の信号生成部207_1を一体化したLSI(Large Scale Integrated Circuit)である。図示しないが、LSI機能部104、信号生成部107_1、信号生成部207_1はそれぞれ各別の構成でもよいし、何れか2つが一体化された構成にしてもよい。
半導体チップ103は伝送路結合部108と接続される。因みに、後述するが、半導体チップ103内に伝送路結合部108を内蔵した構成にすることもできる。伝送路結合部108とミリ波信号伝送路9とが結合する箇所(つまり無線信号を送信する部分)が送信箇所或いは受信箇所であり、典型的にはアンテナがこれらに該当する。
LSI機能部104は、第1通信装置100の主要なアプリケーション制御を司るもので、例えば、相手方に送信したい各種の信号を処理する回路や、相手方(第2通信装置200)から受信した種々の信号を処理する回路が含まれる。
第2通信装置200は、基板202上に、ミリ波帯での送受信に対応した半導体チップ203と伝送路結合部208が搭載されている。半導体チップ203は伝送路結合部208と接続される。因みに、後述するが、半導体チップ203内に伝送路結合部208を内蔵した構成にすることもできる。伝送路結合部208は、伝送路結合部108と同様のものが採用される。半導体チップ203は、後段信号処理部の一例であるLSI機能部204と受信処理用の信号生成部207_2及び送信処理用の信号生成部107_2を一体化したLSIである。図示しないが、LSI機能部204、信号生成部107_2、信号生成部207_2はそれぞれ各別の構成でもよいし、何れか2つが一体化された構成にしてもよい。
伝送路結合部108び伝送路結合部208は、高周波信号(ミリ波帯の電気信号)をミリ波信号伝送路9に電磁的に結合させるもので例えば、アンテナ結合部やアンテナ端子やアンテナ等を具備するアンテナ構造が適用される。或いは、マイクロストリップライン、ストリップライン、コプレーナライン、スロットライン等の伝送線路そのものでもよい。
信号生成部107_1は、LSI機能部104からの信号をミリ波信号に変換し、ミリ波信号伝送路9を介した信号送信制御を行なうための送信側信号生成部110を有する。信号生成部207_1は、ミリ波信号伝送路9を介した信号受信制御を行なうための受信側信号生成部220を有する。信号生成部207_2は、LSI機能部204からの信号をミリ波信号に変換し、ミリ波信号伝送路9を介した信号送信制御を行なうための送信側信号生成部110を有する。信号生成部207_2は、ミリ波信号伝送路9を介した信号受信制御を行なうための受信側信号生成部220を有する。送信側信号生成部110と伝送路結合部108で送信系統(送信部:送信側の通信部)が構成される。受信側信号生成部220と伝送路結合部208で受信系統(受信部:受信側の通信部)が構成される。
送信側信号生成部110は、入力信号を信号処理してミリ波の信号を生成するために、多重化処理部113、パラレルシリアル変換部114、変調部115、周波数変換部116、増幅部117を有する。増幅部117は、入力信号の大きさを調整して出力する振幅調整部の一例である。なお、変調部115と周波数変換部116は纏めていわゆるダイレクトコンバーション方式のものにしてもよい。
多重化処理部113は、LSI機能部104からの信号の内で、ミリ波帯での通信の対象となる信号が複数種(N1とする)ある場合に、時分割多重、周波数分割多重、符号分割多重等の多重化処理を行なうことで、複数種の信号を1系統の信号に纏める。例えば、高速性や大容量性が求められる複数種の信号をミリ波での伝送の対象として、1系統の信号に纏める。
パラレルシリアル変換部114は、パラレルの信号をシリアルのデータ信号に変換して変調部115に供給する。変調部115は、伝送対象信号を変調して周波数変換部116に供給する。パラレルシリアル変換部114は、本実施例を適用しない場合に、パラレル伝送用の複数の信号を使用するパラレルインタフェース仕様の場合に備えられ、シリアルインタフェース仕様の場合は不要である。
変調部115としては、基本的には、振幅・周波数・位相の少なくとも1つを伝送対象信号で変調するものであればよく、これらの任意の組合せの方式も採用し得る。例えば、アナログ変調方式であれば、例えば、振幅変調(AM:Amplitude Modulation)とベクトル変調がある。ベクトル変調として、周波数変調(FM:Frequency Modulation)と位相変調(PM:Phase Modulation)がある。デジタル変調方式であれば、例えば、振幅遷移変調(ASK:Amplitude shift keying)、周波数遷移変調(FSK:Frequency Shift Keying)、位相遷移変調(PSK:Phase Shift Keying)、振幅と位相を変調する振幅位相変調(APSK:Amplitude Phase Shift Keying)がある。振幅位相変調としては直交振幅変調(QAM:Quadrature Amplitude Modulation)が代表的である。本実施例では、特に、受信側で同期検波方式を採用し得る方式を採る。
周波数変換部116は、変調部115によって変調された後の伝送対象信号を周波数変換してミリ波の電気信号(高周波信号)を生成して増幅部117に供給する。ミリ波の電気信号とは、概ね30ギガヘルツ〜300ギガヘルツの範囲のある周波数の電気信号をいう。「概ね」と称したのはミリ波通信による効果が得られる程度の周波数であればよく、下限は30ギガヘルツに限定されず、上限は300ギガヘルツに限定されないことに基づく。
周波数変換部116としては様々な回路構成を採り得るが、例えば、周波数混合回路(ミキサー回路)と局部発振回路とを備えた構成を採用すればよい。局部発振回路は、変調に用いる搬送波(キャリア信号、基準搬送波)を生成する。周波数混合回路は、パラレルシリアル変換部114からの信号で局部発振回路が発生するミリ波帯の搬送波と乗算(変調)してミリ波帯の伝送信号を生成して増幅部117に供給する。
増幅部117は、周波数変換後のミリ波の電気信号を増幅して伝送路結合部108に供給する。増幅部117には図示しないアンテナ端子を介して双方向の伝送路結合部108に接続される。伝送路結合部108は、送信側信号生成部110によって生成されたミリ波の高周波信号をミリ波信号伝送路9に送信する。伝送路結合部108は、例えばアンテナ結合部で構成される。アンテナ結合部は伝送路結合部108(信号結合部)の一例やその一部を構成する。アンテナ結合部とは、狭義的には半導体チップ内の電子回路と、チップ内又はチップ外に配置されるアンテナを結合する部分をいい、広義的には、半導体チップとミリ波信号伝送路9を信号結合する部分をいう。例えば、アンテナ結合部は、少なくともアンテナ構造を備える。アンテナ構造は、ミリ波信号伝送路9との電磁的な(電磁界による)結合部における構造をいい、ミリ波帯の電気信号をミリ波信号伝送路9に結合させるものであればよく、アンテナそのもののみを意味するものではない。
受信側信号生成部220は、伝送路結合部208によって受信したミリ波の電気信号を信号処理して出力信号を生成するために、増幅部224、周波数変換部225、復調部226、シリアルパラレル変換部227、単一化処理部228を有する。増幅部224は、入力信号の大きさを調整して出力する振幅調整部の一例である。周波数変換部225と復調部226は纏めていわゆるダイレクトコンバーション方式のものにしてもよい。又、注入同期(インジェクションロック)方式を適用して復調搬送信号を生成してもよい。 伝送路結合部208には受信側信号生成部220が接続される。受信側の増幅部224は、伝送路結合部208に接続され、アンテナによって受信された後のミリ波の電気信号を増幅して周波数変換部225に供給する。周波数変換部225は、増幅後のミリ波の電気信号を周波数変換して周波数変換後の信号を復調部226に供給する。復調部226は、周波数変換後の信号を復調してベースバンドの信号を取得しシリアルパラレル変換部227に供給する。
シリアルパラレル変換部227は、シリアルの受信データをパラレルの出力データに変換して単一化処理部228に供給する。シリアルパラレル変換部227は、パラレルシリアル変換部114と同様に、本実施例を適用しない場合に、パラレル伝送用の複数の信号を使用するパラレルインタフェース仕様の場合に備えられる。第1通信装置100と第2通信装置200の間の元々の信号伝送がシリアル形式の場合は、パラレルシリアル変換部114とシリアルパラレル変換部227を設けなくてもよい。
第1通信装置100と第2通信装置200の間の元々の信号伝送がパラレル形式の場合には、入力信号をパラレルシリアル変換して半導体チップ203側へ伝送し、又半導体チップ203側からの受信信号をシリアルパラレル変換することにより、ミリ波変換対象の信号数が削減される。
単一化処理部228は、多重化処理部113と対応するもので、1系統に纏められている信号を複数種の信号_n(nは1〜N)に分離する。例えば、1系統の信号に纏められている複数本のデータ信号を各別に分離してLSI機能部204に供給する。
LSI機能部204は、第2通信装置200の主要なアプリケーション制御を司るもので、例えば、相手方から受信した種々の信号を処理する回路が含まれる。
[片方向通信への対応]
図2に示した例は、双方向通信に対応した構成であるが、信号生成部107_1と信号生成部207_1の対、或いは、信号生成部107_2と信号生成部207_2の対の何れかのみを備える構成にすれば、片方向通信に対応した構成になる。
因みに、図2に示した構成の「双方向通信」は、ミリ波の伝送チャネルであるミリ波信号伝送路9が1系統(一芯)の一芯双方向伝送となる。この実現には、時分割多重(TDD:Time Division Duplex)を適用する半二重方式と、周波数分割多重(FDD:Frequency Division Duplex)等が適用される。
[ミリ波信号伝送路]
ミリ波の伝搬路であるミリ波信号伝送路9は、自由空間伝送路として、例えば筐体内の空間を伝搬する構成にしてもよいが、本実施形態では、好ましくは、導波管、伝送線路、誘電体線路、誘電体内等の導波構造で構成し、ミリ波帯域の電磁波を伝送路に閉じ込める構成にして、効率よく伝送させる特性を有する高周波信号導波路308とする。例えば、一定範囲の比誘電率と一定範囲の誘電正接を持つ誘電体素材(誘電体で成る部材)を含んで構成された誘電体伝送路9Aにするとよい。伝送路結合部108のアンテナと伝送路結合部208のアンテナの間を誘電体素材で構成されたある線径を持つ線状部材である誘電体線路或いはある厚みをもつ平板状部材である誘電体平板路で接続することで誘電体伝送路9Aを構成する。例えば、回路基板そのものでもよいし、基板上に配設されていてもよいし、基板に埋め込まれていてもよい。プラスチックを誘電体素材として使用することもでき、誘電体伝送路9Aを安価に構成できる。誘電体平板路は、1枚の誘電体板で作られたもの、伝送路(導波路:以下同様)を櫛形に配置したもの(例えば1枚の誘電体板に切込みを入れる)、伝送路を格子状に配置したもの(例えば1枚の誘電体板に複数の開口を設ける)、1本の伝送路を螺旋状に配置したもの等、種々の形態を採用できる。又、伝送路は誘電率の異なる他の誘電体の中に埋設してもよいし、或いは、誘電率の異なる他の誘電体上に設置してもよい。意図しない移動が起こらないように、接着材、金属、その他の固定材で筐体等に伝送路を固定するとよい。尚、誘電体素材に代えて磁性体素材を使用することもできる。
既設信号処理モジュール304が設置される領域や構成変更信号処理モジュール306が設置される追加モジュール実装領域309を除く誘電体伝送路9Aの周囲(上面、下面、側面:送信箇所や受信箇所と対応する部分は除く)は、好ましくは、外部からの不要な電磁波の影響を受けないように、或いは、内部からミリ波が漏れ出さないように、遮蔽材(好ましくは金属メッキを含む金属部材を使用する)で囲むとよい。金属部材を遮蔽材として使用すると、反射材としても機能するので、反射成分を利用することで、それによる反射波も送受信に利用でき感度が向上する。但し、ミリ波信号伝送路9内の多重反射により不要な定在波がミリ波信号伝送路9内に発生することが問題となり得る。これを避けるには、既設信号処理モジュール304や構成変更信号処理モジュール306が設置される領域を除く誘電体伝送路9Aの周囲(上面、下面、側面)は、開放としたままとしてもよいし、ミリ波を吸収する吸収部材(電波吸収体)を配置してもよい。電波吸収体を用いた場合は、反射波を送受信に利用することはできないが、端部から漏れる電波を吸収することができるので、外部への漏れを防ぐことができるし、ミリ波信号伝送路9内の多重反射レベルを下げることができる。
[接続と動作]
入力信号を周波数変換して信号伝送するという手法は、放送や無線通信で一般的に用いられている。これらの用途では、どこまで通信できるか(熱雑音に対してのS/Nの問題)、反射やマルチパスにどう対応するか、妨害や他チャンネルとの干渉をどう抑えるか等の問題に対応できるような比較的複雑な送信器や受信器等が用いられている。
これに対して、本実施例で使用する信号生成部107と信号生成部207は、放送や無線通信で一般的に用いられる複雑な送信器や受信器等の使用周波数に比べて、より高い周波数帯のミリ波帯で使用され、波長λが短いため、周波数の再利用がし易く、近傍に配置された多くのデバイス間での通信をするのに適したものが使用される。
本実施例では、従来の電気配線を利用した信号インタフェースとは異なり、前述のようにミリ波帯で信号伝送を行なうことで高速性と大容量に柔軟に対応できるようにしている。例えば、高速性や大容量性が求められる信号のみをミリ波帯での通信の対象としており、装置構成によっては、第1通信装置100と第2通信装置200は、低速・小容量の信号用や電源供給用に、従前の電気配線によるインタフェース(端子・コネクタによる接続)を一部に備えることになる。
信号生成部107は、設定値(パラメータ)に基づいて予め定められた信号処理を行なう信号処理部の一例であり、この例では、LSI機能部104から入力された入力信号を信号処理してミリ波の信号を生成する。信号生成部107及び信号生成部207は、例えば、マイクロストリップライン、ストリップライン、コプレーナライン、スロットライン等の伝送線路で伝送路結合部108に接続され、生成されたミリ波の信号が伝送路結合部108を介してミリ波信号伝送路9に供給される。
伝送路結合部108は、例えばアンテナ構造を有し、伝送されたミリ波の信号を電磁波に変換し、電磁波を送出する機能を有する。伝送路結合部108はミリ波信号伝送路9と電磁的に結合され、ミリ波信号伝送路9の一方の端部に伝送路結合部108で変換された電磁波が供給される。ミリ波信号伝送路9の他端には第2通信装置200側の伝送路結合部208が結合されている。ミリ波信号伝送路9を第1通信装置100側の伝送路結合部108と第2通信装置200側の伝送路結合部208の間に設けることにより、ミリ波信号伝送路9にはミリ波帯の電磁波が伝搬する。伝送路結合部208は、ミリ波信号伝送路9の他端に伝送された電磁波を受信し、ミリ波の信号に変換して信号生成部207(ベースバンド信号生成部)に供給する。信号生成部207は、設定値(パラメータ)に基づいて予め定められた信号処理を行なう信号処理部の一例であり、この例では、変換されたミリ波の信号を信号処理して出力信号(ベースバンド信号)を生成しLSI機能部204へ供給する。ここまでは第1通信装置100から第2通信装置200への信号伝送の場合で説明したが、第2通信装置200のLSI機能部204からの信号を第1通信装置100へ伝送する場合も同様に考えればよく双方向にミリ波の信号を伝送できる。
[信号処理モジュール]
図3は、通信機能を有する既設信号処理モジュール304及び構成変更信号処理モジュール306(以下、纏めて信号処理モジュール320とも記す)の構成例を説明する図である。尚、図示しないが、必要に応じて、電波の周波数帯の高周波信号での伝送の対象としない信号用(電源用も含む)として、従前のようにコネクタ(電気配線)で電気的な接続をとる。
図3(A)に示す第1例の信号処理モジュール320Aは、当該信号処理モジュール320Aとしての主要機能を有する半導体チップ323(半導体チップ103や半導体チップ203と対応する)が高周波信号導波路332上に配置されている。高周波信号導波路332の半導体チップ323とは反対側の面上において、半導体チップ323の近傍に高周波信号(例えばミリ波)の伝達(カップリング)機能を持つ高周波信号結合構造体342(伝送路結合部108や伝送路結合部208と対応)が設けられている。信号処理モジュール320Aは、好ましくは全体が樹脂等でモールドされるがこのことは必須でない。因みに、モールドする場合でも、好ましくは、半導体チップ323と反対側(図中に破線で示す高周波信号導波路308への設置面側)は、電子機器300の高周波信号導波路308上に配置し易いように、平坦であることが好ましい。更に好ましくは、高周波信号結合構造体342が高周波信号導波路308と接触するように、高周波信号結合構造体342の部分を露出させるとよい。
高周波信号結合構造体342は、電子機器300の高周波信号導波路308と高周波信号を電磁的に結合可能なものであればよく、例えば、誘電体素材そのものの他に、マイクロストリップライン、ストリップライン、コプレーナライン、スロットライン等の伝送線路そのものが採用されるがこれには限定されない。
因みに、誘電体素材そのもののを高周波信号結合構造体342として使用する場合には、高周波信号導波路332と同じ材質のものが好適であり、異なる材質の場合には誘電率が同じ材質のものが好適である。更には、誘電体素材そのもののを高周波信号結合構造体342として使用する場合には、高周波信号導波路308も、高周波信号導波路332及び高周波信号結合構造体342と同じ材質のものが好適であり、異なる場合には誘電率が同じ材質のものが好適である。何れも、誘電体素材の材質、幅、厚さ等の諸元は使用する周波数に応じて決める。
このような構造の信号処理モジュール320Aを、高周波信号結合構造体342の下部に高周波信号導波路308が対向して配置されるように設置すれば、半導体チップ323からの高周波信号を高周波信号導波路332及び高周波信号結合構造体342を経由して高周波信号導波路308に伝えることができる。高周波信号結合構造体342として、マイクロストリップライン等の高周波伝送線路やパッチアンテナ等のアンテナ構造を採用せずに誘電体素材そのもののを使用する場合、高周波信号導波路308、高周波信号導波路332、及び、高周波信号結合構造体342の全てを誘電体素材で連結させることができる。いわゆるプラスティック同士を接触させて高周波信号の伝送路を構成すると云う極めて簡易な構成で、ミリ波通信を確立することができる。
図3(B)に示す第2例の信号処理モジュール320Bは、当該信号処理モジュール320Bとしての主要機能を有する半導体チップ323が高周波信号導波路334上に配置されている。高周波信号導波路334内の半導体チップ323の近傍には、高周波信号(例えばミリ波帯の電気信号)の伝達(カップリング)機能を持つ高周波信号結合構造体344(伝送路結合部108や伝送路結合部208と対応)が構成されている。高周波信号結合構造体344は、電子機器300の高周波信号導波路308と高周波信号を電磁的に結合可能なものであればよく、例えば、アンテナ構造が採用される。アンテナ構造としては、パッチアンテナ、逆F型アンテナ、八木アンテナ、プローブアンテナ(ダイポール等)、ループアンテナ、小型アパーチャ結合素子(スロットアンテナ等)等を備えたものが採用されるが、その中でも好適には、実質的に平面アンテナとみなせるものを備えたものを採用するとよい。
信号処理モジュール320Bは、好ましくは全体が樹脂等でモールドされるがこのことは必須でない。因みに、モールドする場合でも、好ましくは、半導体チップ323と反対側(高周波信号導波路308への設置面側)は、電子機器300の高周波信号導波路308上に配置し易いように、平坦であることが好ましく、更に好ましくは、高周波信号結合構造体344の部分を露出させるとよい。このような構造の信号処理モジュール320Bを、高周波信号結合構造体344の下部に高周波信号導波路308が対向して配置されるように設置すれば、半導体チップ323からの高周波信号を高周波信号導波路334及び高周波信号結合構造体344を経由して高周波信号導波路308に伝えることができる。
図3(C)に示す第3例の信号処理モジュール320Cは、当該信号処理モジュール320Cとしての主要機能を有する半導体チップ324(半導体チップ103や半導体チップ203と対応する)内に、アンテナ構造等の高周波信号(例えばミリ波帯の電気信号)の伝達(カップリング)機能を持つ高周波信号結合構造体346(伝送路結合部108や伝送路結合部208と対応)が構成されている。実質的に、半導体チップ324そのもので信号処理モジュール320Cが構成されている。高周波信号結合構造体346のアンテナ構造としては、好適にはパッチアンテナや逆F型アンテナ等の実質的に平面アンテナとみなせるものが備えられるが、これに限らず、八木アンテナ、プローブアンテナ(ダイポール等)、ループアンテナ、小型アパーチャ結合素子(スロットアンテナ等)等を備えたものでもよい。
半導体チップ324は、好ましくは全体が樹脂等でモールドされるがこのことは必須でない。因みに、モールドする場合でも、好ましくは、高周波信号導波路308への設置面側は、電子機器300の高周波信号導波路308上に配置し易いように、平坦であることが好ましく、更に好ましくは、高周波信号結合構造体346の部分を露出させるとよい。このような構造の信号処理モジュール320Cを、高周波信号結合構造体346の下部に高周波信号導波路308が対向して配置されるように設置すれば、半導体チップ324からの高周波信号を高周波信号結合構造体346を経由して高周波信号導波路308に伝えることができる。
図3(D)に示す第4例の信号処理モジュール320Dは、図3(C)に示した第3例の信号処理モジュール320C(実質的には半導体チップ324)を、高周波信号導波路334上に配置されている。信号処理モジュール320Dは、好ましくは全体が樹脂等でモールドされるがこのことは必須でない。因みに、モールドする場合でも、好ましくは、高周波信号結合構造体334の部分を露出させるとよい。このような構造の信号処理モジュール320Dを、高周波信号結合構造体334の下部に高周波信号導波路308が対向して配置されるように設置すれば、半導体チップ324からの高周波信号を高周波信号導波路334を経由して高周波信号導波路308に伝えることができる。
[高周波信号結合構造体の指向性]
図3(A)に示す第1例〜図3(D)に示す第4例の何れにおいても、高周波信号結合構造体の指向性は、水平方向(高周波信号導波路308の長手方向或いは平面方向)と、垂直方向(高周波信号導波路308の厚み方向)の何れであってもよい。例えば、ダイポールアンテナや八木アンテナを板状の高周波信号導波路332上に配置する。当該アンテナの指向性は高周波信号導波路332の平面方向に向いており、放射された高周波信号は水平方向に高周波信号導波路308と結合して高周波信号導波路308内を伝わる。高周波信号導波路308内を水平方向に伝わる高周波信号の電力は、進行方向に対して強く、進行方向から離れるに従い弱くなる。更に高周波伝送パスから距離が離れるほど損失(例えば誘電体損)による高周波信号の減衰が大きくなる。従って、高周波信号導波路308が1枚の誘電体平板である場合に多数の信号処理モジュール320を配置しても、指向性と減衰を利用して高周波伝送パスを分離でき、希望の信号処理モジュール320に向けて高周波信号を伝送できる。垂直方向の指向性と比べると、高周波信号導波路308との電磁結合度が劣るが、高周波信号導波路308内を水平方向に高周波信号を伝送させる効率は優る。
一方、信号処理モジュール320と高周波信号導波路308との間の高周波信号の電磁気的な結合をとる点では垂直方向の指向性を持つアンテナを使用して縦波で結合させるのが好適とも云える。縦波の電磁波で結合し、接触したときのみに結合させることもできる。例えば、パッチアンテナやスロットアンテナを、板状の高周波信号導波路332上に配置する。パッチアンテナ等の指向性は高周波信号導波路308の垂直方向に向いており、放射された高周波信号は垂直方向(厚み方向)に高周波信号導波路308と結合し、向きを水平方向に変えて高周波信号導波路308内を伝わる。水平方向の指向性と比べると、高周波信号導波路308との電磁結合度が優るが、高周波信号導波路308内を水平方向に高周波信号を伝送させる効率は劣る。
[比較例]
図4は、比較例の信号伝送装置の信号インタフェースを機能構成面から説明する図である。図4(A)には、その全体概要が示されている。比較例の信号伝送装置1Zは、第1装置100Zと第2装置200Zが電気的インタフェース9Zを介して結合され信号伝送を行なうように構成されている。第1装置100Zには電気配線を介して信号伝送可能な半導体チップ103Zが設けられ、第2装置200Zにも電気配線を介して信号伝送可能な半導体チップ203Zが設けられている。第1実施形態のミリ波信号伝送路9を電気的インタフェース9Zに置き換えた構成である。電気配線を介して信号伝送を行なうため、第1装置100Zには信号生成部107および伝送路結合部108に代えて電気信号変換部107Zが設けられ、第2装置200Zには信号生成部207および伝送路結合部208に代えて電気信号変換部207Zが設けられている。第1装置100Zにおいて、電気信号変換部107Zは、LSI機能部104に対し、電気的インタフェース9Zを介した電気信号伝送制御を行なう。一方、第2装置200Zにおいて、電気信号変換部207Zは、電気的インタフェース9Zを介してアクセスされ、LSI機能部104側から送信されたデータを得る。
例えば、デジタルカメラ等の固体撮像装置を使用する電子機器においては、固体撮像装置は光学レンズ近傍に配置され、固体撮像装置からの電気信号の画像処理、圧縮処理、画像保存等の各種の信号処理は固体撮像装置の外部の信号処理回路にて処理されることが多い。固体撮像装置と信号処理回路の間では、例えば、多画素化、高フレームレート化に対応するため電気信号の高速転送技術が必要となっている。この対処のするためにLVDSが多く用いられている。LVDS信号を精度よく伝送するためには整合の取れたインピーダンス終端が必要であるが、消費電力の増加も無視できない状況になってきているし、同期が必要な複数のLVDS信号を伝送するためには配線遅延が十分少なくなるように互いの配線長を等しく保つ必要がある。電気信号をより高速転送するために、LVDS信号線数を増やす等の対応を採ることもあるが、この場合、プリント配線板の設計の困難さは増し、プリント配線板やケーブル配線の複雑化と、固体撮像装置と信号処理回路との間を接続する配線のための端子数の増加を招き、小型化、低コスト化の課題となる。さらに、信号線数の増加は次のような新たな問題を生む。線数が増えることによって、ケーブルやコネクタのコストの増大を招く。
特開2003−110919号公報には、固体撮像装置を移動することによる手振れ補正の機構が提案されているが、電気信号を伝達するためのケーブルをたわませるためのアクチュエータの負荷が問題となる。これに対して、特開2006−352418号公報では、無線伝送を用いることでアクチュエータの負荷を軽減している。多眼視画像(特開平09−27969号公報を参照)や3次元動画データの生成には、複数の固体撮像装置からの信号とその処理が必要となるが、この場合、機器内の高速伝送技術を用いた伝送路の数は、更に多くなる。
又、テレビやレコーダ等の映像情報機器(AV機器)の伝送レートは大きくなり、データ転送等の機能が必要なときは、予め必要な配線、コネクタ、機能ICのマウント等が必要であり、設計完了後に追加機能が発生したときは、メインボードの設計変更を伴い、商品化時期の遅れや、コストアップをもたらす。例えば、メインボード上に機能拡張用に配線、コネクタ、データ転送及び制御用IC等を予め用意しておき、機能拡張が必要な場合はマウントやコネクタ配線を行なうと、基板面積の増大やコストアップ要因となる。
又、パーソナルコンピュータではユーザが商品購入後に必要な機能を有するUSBモジュールやPCIMCAカード等を用いることで機能拡張を行なうことができており、このようなことを映像情報機器にも導入したいというニーズがある。因みに、パーソナルコンピュータの分野における標準のUSBやPCカードを用いた機能拡張では、基板面積の増大やコストアップ要因となる他、商品のサイズや取出し場所等の制約から設置できない場合がある。又、数ギガビット毎秒〔Gbps〕の高速データ伝送に用いるにはデータ圧縮やレート変換機能ICが別途必要となる難点もある。
特開2003−179821号公報では、2つの信号処理手段の間を無線通信によりデータ伝送することで、内部配線の変更や信号ケーブルでの接続を必要とすることなく、装置の機能変更やモジュール追加を簡単に行なえるようにすることが提案されている。しかしながら、この方法では、無線信号が機器内の部材や筐体で反射し、データ伝送に不都合が生じる。例えば、機器の内部には、マルチパスを発生させ、無線信号信号を減衰させる材質のモジュール、基板、コネクタ、放熱版等が複雑に配置されており、無線通信の品質を著しく劣化させる。このため、必要な通信を確立するのに、送信器の電力を増大させ、受信側の構成を複雑にして、無線機能の消費電力の増大、サイズ増大、コスト増大を招いてしまうし、機器外からの電波の干渉を受け、逆に、機器外への放射が発生して他の機器への干渉を招く懸念もある。
これに対して、実施例1によれば、比較例の電気信号変換部107Z及び電気信号変換部207Zを、信号生成部107及び信号生成部207と伝送路結合部108及び伝送路結合部208に置き換えることで、電気配線ではなく高周波信号(例えばミリ波帯)で信号伝送を行なう。信号の伝送路が、配線から電磁波伝送路に置き換わる。電気配線による信号伝送で用いられていたコネクタやケーブルが不用になり、コストダウンの効果を生むし、コネクタやケーブルに関わる信頼性を考慮する必要がなくなり、伝送路の信頼性を向上する効果を生む。コネクタやケーブルを使用する場合は、その嵌合のための空間や組立時間が必要になるが、高周波信号伝送を利用することで、組立のための空間が不用になり機器を小型化できるし、組立時間を削減できるので生産時間を削減することもできる。
特に、実施例1では、ミリ波等の電磁波を低損失で伝送できる高周波信号導波路を電子機器内に設けておき、構成変更が必要なときに高周波信号導波路上に伝送路結合部(カプラ)を有する信号処理モジュールを置くことで、高周波信号導波路内を通してミリ波等の電磁波を伝えことで、データ転送を行なう。機能追加等の構成変更時に、メインボード等の設計変更を行なうことなく、信号処理モジュールを追加できる。
電気配線の接続と比べた場合、高周波信号導波路と伝送路結合部(いわゆるカプラー)の配置は電気配線のコネクタのようにピン配置や接触位置を特定するのもではなく、数ミリメートル〜数センチメートルの誤差を許容できるので、製造効率が向上する。高周波信号導波路に伝送路結合部により高周波信号を電磁結合させることで、野外での無線通信をはじめとする一般的な無線接続と比べた場合、電磁波の損失を低くできるので、送信器の電力を低くでき、受信側の構成を簡略化できるので、通信機能の消費電力を低くできるし、通信機能のサイズを小さくできるし、通信機能のコストを低くできる。野外での無線通信をはじめとする一般的な無線接続と比べた場合、機器外からの電波の干渉、逆に、機器外への放射を抑圧することができるので、干渉対策に要するコストやサイズを縮小できる。
図5〜図6は、本実施形態の信号伝送装置が搭載されている実施例2の電子機器を説明する図である。ここで、図5は、実施例2の電子機器300Bの全体構成の概要を示す図である。図6は、実施例2の電子機器300Bに搭載されている実施例2の信号伝送装置1Bの信号インタフェースを機能構成面から説明する図である。換言すると、電子機器300Bにおける通信処理に着目した機能ブロック図である。
実施例2の電子機器300Bは、機器全体の動作を制御する中央制御部302と高周波信号導波路308Bを備える。ここで、電子機器300Bは、高周波信号導波路308が複数設けられている点が実施例1と相違する。図では高周波信号導波路308B_1及び高周波信号導波路308B_2の2つの高周波信号導波路308を備えているが、その数は2つに限定されない。その他は実施例1と同様である。因みに、図では、高周波信号導波路308B_1及び高周波信号導波路308B_2は、直線状や平面状であるが、これには限定されず、実施例1の図1(B)に示したように、折れ曲がっていてもよい。
電子機器300Bは、高周波信号導波路308B_1上及び高周波信号導波路308B_2上のそれぞれに、1つ或いは複数の既設信号処理モジュール304が実装済みである。例えば、図示した例では、既設信号処理モジュール304B_1に、既設信号処理モジュール304_11及び既設信号処理モジュール304_12が実装されており、既設信号処理モジュール304B_2に、既設信号処理モジュール304_21及び既設信号処理モジュール304_22が実装されている。そして、既設信号処理モジュール304B_1及び既設信号処理モジュール304B_2のそれぞれには、機能変更を行なう場合に、ミリ波帯での通信処理が可能な構成変更信号処理モジュール306を実装可能な追加モジュール実装領域309が設けられている。構成変更信号処理モジュール306を後から追加する場合は、既設信号処理モジュール304B_1或いは既設信号処理モジュール304B_2上に予め設置された既設信号処理モジュール304がある状態より、構成変更信号処理モジュール306を追加モジュール実装領域309に設置することで、高周波信号導波路308B_1或いは高周波信号導波路308B_2を介しての高速・大容量のミリ波通信を確立する。これにより、ミリ波を用いた高速なデータ伝送を低損失で行なえる。特に、実施例2によれば、高周波信号導波路308を複数本用意することで、それぞれで同じ搬送周波数を用いた場合でも、複数組の独立した通信を行なうことができる。
図7〜図8は、本実施形態の信号伝送装置が搭載されている実施例3の電子機器を説明する図である。ここで、図7は、実施例3の電子機器300Cの全体構成の概要を示す図である。図8は、実施例3の電子機器300Cに搭載されている実施例3の信号伝送装置1Cの信号インタフェースを機能構成面から説明する図である。換言すると、電子機器300Cにおける通信処理に着目した機能ブロック図である。
実施例3の電子機器300Cは、高周波信号導波路308が複数設けられている実施例2の電子機器300Bをベースに、複数の高周波信号導波路308を電磁気的に接続(結合)する連結用の高周波信号導波路(連結高周波信号導波路358と記す)を着脱可能である点に特徴がある。既設信号処理モジュール304C_1に、既設信号処理モジュール304_11及び既設信号処理モジュール304_12が実装されており、既設信号処理モジュール304C_2に、既設信号処理モジュール304_21及び既設信号処理モジュール304_22が実装されている。因みに、図では、高周波信号導波路308C_1及び高周波信号導波路308C_2は、直線状や平面状であるが、これには限定されず、実施例1の図1(B)に示したように、折れ曲がっていてもよい。
構成変更信号処理モジュール306を後から追加する場合は、先ず実施例2と同様に、既設信号処理モジュール304C_1或いは既設信号処理モジュール304C_2上に予め設置された既設信号処理モジュール304がある状態より、構成変更信号処理モジュール306を追加モジュール実装領域309に設置する。更に、実施例3では、既設信号処理モジュール304C_1と既設信号処理モジュール304C_2の端部に連結高周波信号導波路358を接触させて配置する。必要の無いときは、連結高周波信号導波路358を取り外しておくこともできる。例えば、図7(A)に示す第1例の電子機器300C_1では、2つの高周波信号導波路308C_1及び高周波信号導波路308C_2が概ね同じサイズであり、筐体内でほぼ対向する位置に設けられているが、それぞれの端部(図中の右端側)に連結高周波信号導波路358を接触させて、ほぼ垂直に配置している。図7(B)に示す第2例の電子機器300C_2では、2つの高周波信号導波路308C_1及び高周波信号導波路308C_2のサイズが異なっており、連結高周波信号導波路358を斜めに配置させることで、2つの高周波信号導波路308C_1及び高周波信号導波路308C_2と連結高周波信号導波路358を接触させることで、高周波信号の電磁結合をとる。因みに、高周波信号導波路308C_1及び高周波信号導波路308C_2と連結高周波信号導波路358との接触部分は、電磁結合に悪影響を与えないように、遮蔽部材、反射部材、及び、吸収部材を設けない。
こうすることで、高周波信号(例えばミリ波帯の電気信号)は、連結高周波信号導波路358を介して、既設信号処理モジュール304C_1と既設信号処理モジュール304C_2の間にも伝送される。このような実施例3の電子機器300Cでは、構成変更時に、高周波信号導波路308C_1、連結高周波信号導波路358、及び、高周波信号導波路308C_2を介しての高速・大容量のミリ波通信を確立することができる。連結高周波信号導波路358を取り外すことで、実施例2の形態に変更することもできる。
図9は、本実施形態の信号伝送装置が搭載される実施例4の電子機器を説明する図である。実施例4は、追加モジュールを挿入するスロット構造を備えた筺体にて、追加モジュールに設けられたスロットルの挿入される部位に高周波信号導波路を配置しておく点に特徴がある。例えば、図9(A)に示す第1例の電子機器300D_1は、図1(A)に示した第1例の電子機器300A_1に対する変形例であり、図中の左側にスロット構造360D_1が設けられている。筐体内には、既設信号処理モジュール304(図は2つの例)が設置された高周波信号導波路308D_1が設けられているが、スロット構造360D_1の凹部の1つの壁面362に沿って高周波信号導波路308D_1が平行に延在している。高周波信号導波路308D_1のスロット構造360D_1の1つの壁面362_1と対向する部分をスロット結合部366D_1と称する。
構成変更ユニット370D_1は、高周波信号導波路308が筐体に沿って配置されており、その高周波信号導波路308上に構成変更信号処理モジュール306が搭載されている。機能変更を行なう場合には、ミリ波帯での通信処理が可能な構成変更信号処理モジュール306(信号処理モジュール320)が収容された構成変更ユニット370D_1をスロット構造360D_1に装着する。この際には、信号処理モジュール320の高周波信号結合構造体が高周波信号導波路308D_1のスロット結合部366D_1と対向するように(詳しくは高周波信号を電磁的に結合可能なように)装着する。図は、第1例の信号処理モジュール320Aを構成変更信号処理モジュール306として用いた例で示しているが、これに限らず、第2例の信号処理モジュール320Bや第3例の信号処理モジュール320Cや第4例の信号処理モジュール320Dでもよい。既設信号処理モジュール304と信号処理モジュール320Aとの間で高周波信号導波路308D_1を伝わるミリ波通信が確立され、高速のデータ伝送を、マルチパスや伝送劣化或いは不要輻射を少なく行なうことができる。
図9(B)に示す第2例の電子機器300D_2は、図1(B)に示した第2例の電子機器300A_2に対する変形例であり、図中の左側にスロット構造360D_2が設けられている。筐体内には、既設信号処理モジュール304(図は4つの例)が設置された高周波信号導波路308D_2が設けられているが、スロット構造360D_2の凹部の3つの壁面362_1、壁面362_2、壁面362_3に沿って高周波信号導波路308D_2が平行に延在している。高周波信号導波路308D_2のスロット構造360D_2の3つの壁面362_1、壁面362_2、壁面362_3と対向する部分をスロット結合部366D_2と称する。
構成変更ユニット370D_2は、高周波信号導波路333が筐体に沿って配置されており、その高周波信号導波路333上に半導体チップ323や高周波信号結合構造体342が搭載されている。機能変更を行なう場合には、第1例と同様に、構成変更ユニット370D_2をスロット構造360D_2に装着する。図示する構成変更ユニット370D_2は、構成変更信号処理モジュールとして第1例の信号処理モジュール320Aを変形したものが使用されている。具体的には、構成変更ユニット370D_2は、U字状の高周波信号導波路333を備え、高周波信号導波路333上に半導体チップ323(図は2つの例)が設置され、高周波信号導波路333の半導体チップ323とは反対側の3つの側面にアンテナ構造等のミリ波の伝達(カップリング)機能を持つ高周波信号結合構造体342_1、高周波信号結合構造体342_2、高周波信号結合構造体342_3が配置されている。尚、構成変更ユニット370D_2は、第1例の信号処理モジュール320Aを変形したものに限らず、第2例の信号処理モジュール320Bや第3例の信号処理モジュール320Cや第4例の信号処理モジュール320Dを変形したものでもよい。構成変更ユニット370D_2をスロット構造360D_2に装着する際には、高周波信号結合構造体342_1、高周波信号結合構造体342_2、高周波信号結合構造体342_3が高周波信号導波路308D_2のスロット結合部366D_2の3つの面の対応するものとそれぞれ対向するように(詳しくは高周波信号を電磁的に結合可能なように)装着される。こうすることで、既設信号処理モジュール304と構成変更ユニット370D_2との間で高周波信号導波路308D_2を伝わるミリ波通信が確立され、高速のデータ伝送を、マルチパスや伝送劣化或いは不要輻射を少なく行なうことができる。第1例と比べた場合、高周波信号導波路308D_2との電磁気的な結合箇所が複数になるので、電磁結合をより確実にとることができる。
図10は、本実施形態の信号伝送装置が搭載される実施例5の電子機器を説明する図である。実施例5は、実施例4と同様に、追加モジュールを挿入するスロット構造(スロットル)を備えた筺体にて、スロットルの挿入される部位に高周波信号導波路を配置しておく点に特徴がある。ここで、実施例5は、可撓性のある(フレキシブルな)高周波信号導波路を利用して、追加モジュールの高周波信号結合構造体との間での電磁気的な結合をとる点が実施例4との相違点である。
図10(A)に示す第1例の電子機器300E_1は、図9(A)に示した実施例4の第1例の電子機器300D_1に対する変形例であり、図中の左側にスロット構造360E_1が設けられている。筐体内には、既設信号処理モジュール304(図は2つの例)が設置された高周波信号導波路308E_1が設けられているが、スロット構造360E_1の凹部の1つの壁面362_1に沿って高周波信号導波路308E_1が延在している。高周波信号導波路308E_1のスロット構造360E_1の1つの壁面362_1と対向する部分をスロット結合部366E_1と称する。
機能変更を行なう場合には、実施例4の第1例と同様に、ミリ波帯での通信処理が可能な構成変更信号処理モジュール306(信号処理モジュール320)が収容された構成変更ユニット370E_1をスロット構造360E_1に装着する。ここで、実施例4の第1例の電子機器300D_1との相違点は、スロット結合部366E_1に、更に、可撓性のある(フレキシブルな)高周波信号導波路368が取り付けられていることにある。高周波信号導波路368は、接触用の高周波信号導波路の一例であり、スロット構造360E_1の凹部に突き出るようにスロット結合部366E_1の先端近傍に取り付けられている。高周波信号導波路368は、直線状(或いは平板状)ではなく、構成変更ユニット370E_1側に突き出るように曲部を持っている。
図示する構成変更ユニット370_3は、構成変更信号処理モジュール306として第1例の信号処理モジュール320Aを変形した信号処理モジュールが使用されている。具体的には、構成変更ユニット370E_1は、直線状或いは平面状の高周波信号導波路332を備え、高周波信号導波路332上に半導体チップ323(図は1つの例)が設置され、高周波信号導波路332の半導体チップ323と同じ面に、アンテナ構造等のミリ波の伝達(カップリング)機能を持つ高周波信号結合構造体342_4が配置されている。尚、構成変更ユニット370E_1は、第1例の信号処理モジュール320Aを変形したものに限らず、第2例の信号処理モジュール320Bや第3例の信号処理モジュール320Cを変形したものでもよい。
このような構成の電子機器300E_1においては、機能変更を行なう場合に、構成変更ユニット370E_1をスロット構造360E_1に挿入していくと、高周波信号結合構造体342_4が可撓性の高周波信号導波路368に接触する。こうすることで、既設信号処理モジュール304と構成変更ユニット370E_1との間で高周波信号導波路308E_1を伝わるミリ波通信が確立され、高速のデータ伝送を、マルチパスや伝送劣化或いは不要輻射を少なく行なうことができる。実施例4の第1例と比べた場合、高周波信号導波路368を可撓性にすることで、追加モジュール(構成変更ユニット370E_1)の形状、ミリ波の伝達機能の位置を特定することなく、高速・大容量のミリ波通信が可能となり、より柔軟な機能追加が可能となる。
図10(B)に示す第3例の電子機器300E_2は、図9(B)に示した実施例4の第2例の電子機器300D_2に対する変形例であり、スロット構造360E_2の3つの壁面362_1、壁面362_2、壁面362_3のそれぞれについて、可撓性のある(フレキシブルな)高周波信号導波路368が、スロット構造360E_2の凹部に突き出るようにスロット結合部366E_2に取り付けられている。高周波信号導波路368_1、高周波信号導波路368_2、及び、高周波信号導波路368_3はそれぞれ、直線状(或いは平板状)ではなく、構成変更ユニット370E_2側に突き出るように曲部を持っている。
このような構成の電子機器300E_2においては、機能変更を行なう場合に、構成変更ユニット370E_2(構成変更ユニット370D_2と同様)をスロット構造360E_2に挿入していく。そうすると、高周波信号結合構造体342_1が可撓性の高周波信号導波路368_1に接触し、高周波信号結合構造体342_2が可撓性の高周波信号導波路368_2に接触し、高周波信号結合構造体342_3が可撓性の高周波信号導波路368_3に接触する。こうすることで、既設信号処理モジュール304と構成変更ユニット370E_2との間で高周波信号導波路308E_2を伝わるミリ波通信が確立され、高速のデータ伝送を、マルチパスや伝送劣化或いは不要輻射を少なく行なうことができる。第1例と比べた場合、高周波信号導波路308E_2との電磁気的な結合箇所が複数になるので、電磁結合をより確実にとることができる。
実施例5においては、第1例及び第2例の何れにおいても、追加モジュールを挿入するスロットルを備えた筺体にて、高周波信号導波路308を筺体内に配置しておき、スロットルの挿入される部位には、可撓性の高周波信号導波路368を設置する。アンテナ構造等のミリ波の伝達(カップリング)機能を持つ追加機能モジュールをスロットより挿入することで、追加モジュールの形状、ミリ波の伝達機能の位置を特定することなく柔軟な機能追加が可能となる。
図11は、本実施形態の信号伝送装置が搭載される実施例6の電子機器を説明する図である。実施例6は、いわゆるクレードル装置を第1の電子機器として使用し、クレードル装置(筐体内部或いは筐体の壁面)に高周波信号導波路を設置しておき、携帯電話、PHS、携帯型の画像再生装置等の第2の電子機器(以下、携帯型電子機器とも称する)をクレードル装置に搭載したときに、携帯型電子機器と高周波信号導波路とを電磁結合させる点に特徴がある。高周波信号導波路とその上に配置され信号処理モジュールを備えた携帯型電子機器を、高周波信号導波路を備えたクレードル装置上に配置することで、携帯型電子機器の信号処理モジュール間で高周波信号(例えばミリ波帯の電気信号)での通信を確立させる。異なる筺体間で、データを伝送することで、一方の携帯型電子機器の機能拡張として他方の携帯型電子機器を使用することができる。以下、具体的に説明する。
クレードル装置400(第1の電子機器)と携帯型電子機器420(第2の電子機器、モバイル機器)とで、電子機器の全体が構成される。クレードル装置400は、信号処理モジュール間での高周波信号の伝送を中継(結合)する高周波結合器としての高周波信号導波路408を備える。クレードル装置400は、筐体407の上面側に、他の電子機器が載置される載置面407aを備えており、高周波信号導波路408はその載置面407aと平行に配置されている。
必須ではないが、高周波信号導波路408上に、通信機能を持つ1つ或いは複数の信号処理モジュール424(図は信号処理モジュール424_01の1つ)を設けてもよい。信号処理モジュール424は、第1例の信号処理モジュール320A、第2例の信号処理モジュール320B、第3例の信号処理モジュール320C、第4例の信号処理モジュール320D、の何れでもよい。
必須ではないが、好適には、高周波信号導波路408上に、或いは、筐体407内のその他の箇所に、中央制御部402を配置する。中央制御部402を設けない場合には、携帯型電子機器420の何れかにその機能を持たせる。図示しないが、クレードル装置400をサーバ装置に接続する場合、サーバ装置に中央制御部402の機能を担当させてもよい。
中央制御部402は、高周波信号導波路408に近接して配置される携帯型電子機器420に基づいて構成情報を変更し、変更後の構成情報にしたがってデータ伝送を制御する。例えば、通信機能を有する携帯型電子機器420の組合せ構成が変更されたことを認識すると、変更後の携帯型電子機器420の組合せ構成に適合した電子機器間或いはクレードル装置400内の信号処理モジュールやCPU(中央制御部402でもよい)等との間でデータ伝送が行なわれるように制御する。その制御用やモジュール認識用の信号は、通常の電気配線(プリントパターンやワイヤーハーネス等)を利用すればよい。例えば、中央制御部402は、クレードル装置400の載置面に携帯型電子機器420が近接して配置(載置面への載置も含む:以下単に「配置」と記す)されたことを検知する配置検知部と、配置検知部によりクレードル装置400の載置面に複数の携帯型電子機器420が配置されたことが検知された場合に、各携帯型電子機器420を制御し、携帯型電子機器420間の通信を制御する通信制御部とを有する。配置検知部は、携帯型電子機器420がクレードル装置400に配置されたか否かの検知機能だけでなく、その配置された位置や何が配置されたか(携帯型電子機器420かそれ以外か)も認識する認識機能も備えるとよい。「何が配置されたか」の認識機能としては、携帯型電子機器420を識別することに限らず、異物を識別する機能(換言すると携帯型電子機器420であるのか否かを検知する機能)も備えるとよい。通信制御部は、配置検知部の検知結果(認識結果も含む)に基づき、通常は省電力モードにしておき、通信処理が必要になったときに省電力モードから復帰するようにしてもよい。
「何が配置されたか」等の認識機能を実現するには、クレードル装置400側のモジュールから送信された信号の反射波や、配置された機器からの信号を利用するとよい。例えば、クレードル装置400の載置面に何かが配置されるとクレードル装置400側の信号処理モジュール424_01から送信された信号の反射波が変化し、何かが配置されたことを認識できる。更に、配置されたものが通信機能を持つ信号処理モジュール424を具備した携帯型電子機器420である場合、その信号処理モジュール424_10等を識別するための信号をクレードル装置400側に送信する。この信号に基づき中央制御部402(配置検知部)は、「何が配置されたか」を認識できる。配置されたもの(機器)から何も反応が無い(信号が来ない)場合は、異物と判断すればよい。
高周波信号導波路408は、誘電体素材で構成されたものが好適であり、1枚の誘電体板で作られたもの、1枚の誘電体板に切込みを入れてを櫛形状にしたもの、1枚の誘電体板に複数の開口を設けて伝送路を格子状に配置したもの、伝送路を螺旋状に配置したもの等、実質的に平板状と見なせる限りにおいて、種々の形態を採用できる。尚、高周波信号導波路408は、平板状であることは必須ではなく、誘電体伝送路を3次元的に配置した形態であってもよい。
携帯型電子機器420は、信号処理モジュール間での高周波信号の伝送を中継(結合)する高周波結合器としての直線状或いは平面状の高周波信号導波路428を備え、高周波信号導波路428上に1つ或いは複数の信号処理モジュール424が実装されている。信号処理モジュール424は、第1例の信号処理モジュール320A〜第4例の信号処理モジュール320Dの何れでもよい。好適には、信号処理モジュール424が高周波信号導波路428と接するように実装しておく。信号処理モジュール424は、それ自身で予め定められた信号処理を行なうし、複数の信号処理モジュール424が実装されているときには、信号処理モジュール424間でデータを交換しながら信号処理を行なうこともある。
携帯型電子機器420をクレードル装置400の載置面に近接して配置する(例えば搭載する)ことで、携帯型電子機器420は高周波信号導波路408を介してデータ伝送が可能になる。中央制御部402は、携帯型電子機器420が近接配置される前後の構成情報を管理し、変更後の構成情報にしたがってデータ伝送を制御する。例えば、ある携帯型電子機器420が近接配置される前はクレードル装置400内のモジュール同士でデータ伝送を行なうことで第1の機能が実現されると云う旨の構成情報を持っている。この状態において、ある携帯型電子機器420がクレードル装置400の高周波信号導波路428に近接配置されると、その携帯型電子機器420との間でもデータ伝送を行なうことが可能になり、このデータ伝送を利用することで新たな機能が実現可能であると云う旨の構成情報に変更する。そして、変更後の構成情報にしたがってデータ伝送を制御することで、近接配置された携帯型電子機器420を利用して新たな機能を実現する。例えば、高周波信号導波路408上に設けられた信号処理モジュール424_01と携帯型電子機器420との間でデータ伝送が可能になる。又、異なる携帯型電子機器420の筐体427内の信号処理モジュール424間で、高速・大容量のミリ波通信が確立される。クレードル装置400に置いた携帯型電子機器420同士(例えば携帯電話とデジタルカメラ)での通信が可能である。一方の携帯型電子機器420にとっては、他方の携帯型電子機器420を外部機器として扱うことができ、自身の信号処理モジュール424の機能拡張として携帯型電子機器420の信号処理モジュール424を使用することができる。高周波信号導波路408内に高周波信号(電磁波)を閉じ込めることができるので、空間を高周波信号導波路に使用する場合に比べて情報の秘匿が可能となる。例えば、携帯型電子機器420_n0の信号処理モジュール424_n0と携帯型電子機器420_n1の信号処理モジュール424_n1及び信号処理モジュール424_n2の何れか一方との間で、ミリ波帯でデータを伝送することができる(nは1,2,3の何れか)。周波数分割多重(FDM)や時間分割多重(TDM)を適用すれば、高周波信号導波路408は、複数の携帯型電子機器420(つまり高周波信号導波路428)と同時に結合することができるので、携帯型電子機器420_n0の信号処理モジュール424_n0と携帯型電子機器420_n1の信号処理モジュール424_n1及び信号処理モジュール424_n2との間で、ミリ波帯でデータを伝送することができる(nは1,2,3の何れか)。
図示しないが、クレードル装置400の高周波信号導波路408上に信号処理モジュールを設ける、或いは、クレードル装置400をサーバ装置に接続する等すれば、クレードル装置400に携帯型電子機器420を置くだけでミリ波帯での高速・大容量の通信が可能であり、機器内の機能拡張用の外部機器或いはサーバ装置の外部機器として携帯型電子機器420を使用することもできる。携帯型電子機器420内のデバイス(信号処理モジュール424)の通信規格を統一することによって、クレードル装置400に置いたデジタルカメラ等の携帯型電子機器420によりサーバ制御やデータ管理等も可能になる。好適には、中央制御部402を設けると、携帯型電子機器420がクレードル装置400に置かれた場合に、その携帯型電子機器420を認識し、どの位置に置かれたかも認識する、高周波送受信機能を備えた携帯型電子機器420とそれ以外(異物も含む)を区別する、通常は省電力モードにしておき高周波送受信機能を備えた携帯型電子機器420が設置されたときに省電力モードから復帰する等の機能を実現することもできる。
クレードル装置400に携帯型電子機器420を搭載することで、高周波信号導波路を伝わるミリ波通信が確立され、高速のデータ伝送を、マルチパスや伝送劣化或いは不要輻射を少なく行なうことができる。機能変更等の構成変更が必要になったときに、高周波信号をカップリング(電磁結合)可能なように高周波信号導波路408上に携帯型電子機器420を配置することで、高周波信号導波路408を伝わるミリ波通信を確立することができる。因みに、図中の破線が構成変更時の高周波信号の伝送系統を示す(後述する他の実施例でも同様である)。このため、機能拡張等の構成変更に伴う設計変更、基板面積の増大、コストアップ等の負担を伴わずに、高速伝送を行なう機器間通信を簡易に実現することができる。例えば、高周波信号導波路として安価なプラスチックを使用することもできる。カップリングが良く、ロスが小さいため消費電力が小さいし、高周波伝送路内に高周波信号(電波)が閉じ込められるため、マルチパスの影響が小さいし、又、EMCの問題も小さい。電磁的な接続(結合)が簡単であり、又、広い範囲で結合が可能であり、複数の電子機器を1つのクレードル装置に搭載しても不都合無く通信を行なうことができる。
信号処理モジュール424は、図3に示した第1例〜第3例の信号処理モジュール320の何れを採用してもよいが、高周波信号導波路408と高周波信号導波路428との間の電磁気的な結合状態を勘案して好適なものを採用するのがよい。例えば、図11(A)に示す第1例では、クレードル装置400_10は、筐体407内に高周波信号導波路408が収容されており、携帯型電子機器420_10及び携帯型電子機器420_11は、筐体427内に高周波信号導波路428が収容されているので、高周波信号導波路408と高周波信号導波路428との間に、筐体407及び筐体427並びに空間が挟まれる。高周波信号は、高周波信号導波路408と高周波信号導波路428の他に、筐体407及び筐体427並びに空間を介して電磁結合されるので、信号処理モジュール424の高周波信号結合構造体は、アンテナ構造を備えたものなど、それに応じた構造のものにする。携帯型電子機器420_10及び携帯型電子機器420_11の何れもが、高周波信号導波路428(高周波結合器)は、クレードル装置400の高周波信号導波路408(高周波結合器)と非接触で電磁気的な結合をとるしかない。高周波信号導波路428と高周波信号導波路308との距離が大きく、伝送路(高周波結合器)同士が直接接触しない場合でも、高周波信号結合構造体としてアンテナ構造等を使用することによって、高周波信号導波路428と高周波信号導波路308とが非接触(長距離)の場合でも通信が可能である。
図11(B)に示す第2例では、クレードル装置400_20は、筐体407の載置面側において高周波信号導波路408が露出しており、携帯型電子機器420_20及び携帯型電子機器420_21は、筐体427のクレードル装置400側において高周波信号導波路428が露出しているので、高周波信号導波路408と高周波信号導波路428とが直接に接触可能である。高周波信号は、高周波信号導波路408と高周波信号導波路428とが直接に接触して伝送されるので、信号処理モジュール424の高周波信号結合構造体は誘電体素材そのもののを採用することも可能である。
図11(C)に示す第3例は、第1例と第2例の中間的な態様であり、クレードル装置400_30は、高周波信号導波路408が筐体407から露出しているのに対して、携帯型電子機器420_30及び携帯型電子機器420_31は、筐体427内に高周波信号導波路428が収容されている。図示しないが、クレードル装置400_30は筐体407内に高周波信号導波路402が収容され、携帯型電子機器420_30及び携帯型電子機器420_31は、高周波信号導波路408が筐体407から露出している状態としてもよい。何れの場合も、携帯型電子機器420は、高周波信号導波路408と高周波信号導波路428との間に、筐体407或いは筐体427並びに空間が挟まれる。よって、高周波信号は、高周波信号導波路408と高周波信号導波路428の他に、筐体407或いは筐体427並びに空間を介して電磁結合されるので、信号処理モジュール424の高周波信号結合構造体は、アンテナ構造を備えたものなど、それに応じた構造のものにする。
尚、筐体407(第1の筐体)と筐体427(第2の筐体)との間で電力を無線で伝送する電力伝送部を設け、データ伝送だけでなく、電力伝送も行なうようにしてもよい。無線で電力伝送を行なう場合には、電磁コイルを用いない方式(電波受信型)と電磁コイルを用いる方式(電磁誘導型及び共鳴型)の何れを採用してもよいが、電磁コイルを用いる方式を採用すると好ましい。例えば、電波受信型では、受信した高周波信号を整流して電力を取り出すことにより、クレードル装置400上の任意の場所に置かれた携帯型電子機器420に非接触で電力を伝送することができる。或いは、電磁コイルを用いる方式では、図示しないが、筐体407内に電力伝送用のコイルも入れて、データと電力の両方を送受信を行なう。
[実施例6の変形例]
図12〜図13は、実施例6の変形例を説明する図である。前述の実施例5では、クレードル装置400及び携帯型電子機器420の双方について、高周波信号導波路が配置されている場合で説明したが、このことは必須でない。基本的には、何れか一方のみが高周波信号導波路が配置されていればよい。
例えば、図12(A)に示す第1変形例及び図12(B)に示す第2変形例は、クレードル装置400側のみに高周波信号導波路408が配置されている。尚、第1変形例のクレードル装置400_40は、筐体407内に高周波信号導波路408が収容されており、第2変形例のクレードル装置400_50は、筐体407の載置面側において高周波信号導波路408が露出している。携帯型電子機器420は、回路基板429を備え、回路基板429のクレードル装置400側の面上に1つ或いは複数の送受信機能を持つ信号処理モジュール424が実装されている。信号処理モジュール424は、それ自身で予め定められた信号処理を行なうし、複数の信号処理モジュール424が実装されているときには、電気配線(回路パターンを含む)を介して信号処理モジュール424間でデータを交換しながら信号処理を行なうこともある。第1変形例及び第2変形例においても、携帯型電子機器420をクレードル装置400の載置面に配置することで、異なる携帯型電子機器420の筐体427内の信号処理モジュール424間で、高速・大容量のミリ波通信が確立される。
尚、信号処理モジュール424の高周波信号結合構造体としては、高周波信号導波路408との間の高周波信号の電磁気的な結合をとる点では垂直方向の指向性を持つアンテナを使用して縦波で結合させるのが好適である。縦波の電磁波で結合し、接触したときのみに結合させることもできる。例えば、パッチアンテナやスロットアンテナを、その放射面がクレードル装置400側に向くように設ける。パッチアンテナの場合、半導体チップの封止樹脂の表面に、メッキする、導体板を張り付けてエッチングする、金属パターンが形成されたシールを貼る等して、予め決められた形状で導体(金属)のパターンを形成すればよい。スロットアンテナの場合、スロット結合を利用するなど導波構造にする、つまり、小型アパーチャ結合素子の適用によるアンテナ構造を導波路の結合部位として機能させる。
因みに、図12(C)に示す第3変形例のように、携帯型電子機器420側に高周波信号導波路を配置し、クレードル装置400_60側には、回路基板409上に多数の通信装置405を配置しておき、携帯型電子機器420_60或いは携帯型電子機器420_61が載置されたときに、携帯型電子機器420側の高周波信号導波路428と通信装置405との間で電磁気的な結合をとることが考えられる。しかしながら、この場合には、通信装置405のコストが嵩む、実際に通信を行なう通信装置405を何れにするかの制御が必要になる等の難点があるので、得策ではない。
前述の実施例5及びその第1変形例〜第3変形例では、クレードル装置400及び/又は携帯型電子機器420について、直線状或いは平板状の高周波信号導波路が配置されている場合で説明したが、このことは必須でない。例えば、図13に示す第4変形例のように、フレキシブルプリント基板等のような柔軟性のある誘電体素材を用いることで、2次元通信機能を持たせた高周波信号導波路408を具備した柔軟性のあるシート状のクレードル装置400_70にすることができる。図13(A)は、クレードル装置400_70(高周波信号導波路408)が撓んでいるときの状態を示し、図13(B)は、クレードル装置400_70(高周波信号導波路408)を延ばしたときの状態を示す。
第4変形例のクレードル装置400_70は、可撓性のある誘電体素材で構成されたベース材403中に埋め込まれているとともに、載置面側が可撓性のある誘電体素材で構成された封止材404で覆われている。ベース材403は多層構造でもよい。封止材404の一部には多数の開口404aが設けられており、開口404aの部分にも高周波信号導波路408を成す誘電体素材が埋め込まれいて、開口404aを介して高周波信号導波路408が露出している。高周波信号導波路408の誘電体素材を、ベース材403及び封止材404を構成する誘電体素材よりも大きな誘電率を持つものにすることで、高周波信号導波路408内に高周波信号を閉じ込めて伝送することができる。又、高周波信号導波路408上の任意の場所(好適には開口403aの部分)に、高周波結合器を備えた通信装置(換言すると携帯型電子機器420)を置くことで、高周波信号導波路408を介して効率良く、外部の機器に影響を与えず、秘匿性の高い通信を簡便に行なうことができる。
<適用例>
図14〜図16は、本開示で提案する技術(前記実施形態で提案した技術)が適用される他の電子機器の一例を説明する図である。前記実施形態で提案した信号伝送装置或いは電子機器の技術は、ゲーム機、電子ブック、電子辞書、携帯電話機、デジタルカメラ等の各種の電子機器において、高周波信号を伝送する際に適用することができる。以下、前記実施形態で説明した信号伝送装置或いは電子機器が適用される各種の装置・機器の具体的な事例について説明する。
[適用例1:携帯電話]
例えば、信号処理モジュールを設置するスロットルを筺体に多数用意しておいて、ある機能をもった信号処理モジュールを差し込むだけで、機能を増やすことができる。これにより信号処理モジュールの交換が簡単にでき、機能の拡張や修理が簡単に行なえる。
例えば、図14は、電子機器が携帯電話機730の場合を示す図である。携帯電話機730は、折り畳み式であり、上側筐体731と下側筐体741とが、連結部730a(この例ではヒンジ部)により折り畳可能に結合されている。上側筐体731には、高周波信号導波路732が配置されている。高周波信号導波路732の一方の面上には、液晶表示装置或いは有機EL表示装置等を利用した表示モジュール733とスピーカ734とが搭載されている。高周波信号導波路732の他方の面上には、カメラモジュール735と、各種の半導体集積回路736(例えばベースバンドIC736_1、メモリ736_2、CPU736_3)が搭載されている。下側筐体741には、高周波信号導波路742が配置されている。高周波信号導波路732と高周波信号導波路742とは、連結部730aで折り畳可能に電磁結合(例えば接触して回転可能に)されている。高周波信号導波路742の一方の面上には、入力キー743とマイク744とが搭載されている。高周波信号導波路742の他方の面上には、バッテリ745と無線回路746とが搭載されている。
半導体集積回路736を高周波信号導波路732に配置する箇所は、上側筐体731に対してスロットル構成になっている。半導体集積回路736には、高周波送受信機機能を設ける。例えば、CPU736_3に高周波送受信機機能を設ける。前記実施形態の説明から理解されるように、高周波送受信機を内蔵したCPU736_3を高周波信号導波路732上に置くことで、高周波信号の結合が可能になる。CPU736_3を取り外して別のCPU736_4をスロットルを介して差し込むことで、簡単に交換が可能であり、機能の拡張や修理が簡単に行なえる。
[適用例2:スロットル構造]
例えば、高周波送受信機機能を持つ信号処理モジュールを具備した第1の電子機器を装着可能なスロット構造を、本体側となる第2の電子機器の筺体に用意しておけば、ある機能をもった第1の電子機器をスロット構造に差し込むことで、本体側との間でデータを交換できるし、第1の電子機器を第2の電子機器の外部機器として扱うことで、第2の電子機器の機能を変更することもできる。スロット構造としては、実施例4と実施例5の何れを採用してもよい。以下では、実施例5を採用する場合で説明する。
例えば、図15は、第1の電子機器が、画像保存用のメモリを着脱可能なデジタルカメラ750の場合を示す図である。図15(A)に示すように、デジタルカメラ750は、レンズ752、シャッターボタン754、その他を含んでいる。図15(A)及び図15(C)に示すように、デジタルカメラ750には、高周波信号導波路758が配置され、高周波信号導波路758上には、高周波送受信機能を持つ1つ或いは複数の図示しない信号処理モジュールが搭載されている。デジタルカメラ750の筐体757の壁面の一部には、高周波信号導波路758の一部が露出した部分(スロット756と称する)が1箇所或いは複数箇所設けられている(図は、上面に4箇所、側面に4箇所)。
図15(B)及び図15(C)に示すように、本体側の電子機器760には、スロット構造762が設けられており、又、高周波信号導波路768が筐体内に配置されている。高周波信号導波路768上には、高周波送受信機能を持つ1つ或いは複数の図示しない信号処理モジュールが搭載されている。高周波信号導波路768には可撓性のある(フレキシブルな)高周波信号導波路769が、その先端側がスロット構造762の凹部側に突き出るように取り付けられている。
図15(C)に示すように、構成変更ユニットとしてのデジタルカメラ750をスロット構造762に挿入していくと、高周波信号導波路769が曲がり、デジタルカメラ750の上面側に配置されたスロット756において露出した高周波信号導波路758に接触する。こうすることで、デジタルカメラ750の信号処理モジュールと本体側の電子機器760の信号処理モジュールとの間で高周波信号導波路を伝わる高周波信号の通信が確立される。
デジタルカメラ750の筐体757の一壁面に、スロット756を複数箇所設ければ、電磁気的な結合箇所が複数になるので、電磁結合をより確実にとることができる。又、デジタルカメラ750の筐体757の複数の壁面にそれぞれ、スロット756を1箇所或いは複数箇所設ければ、本体側の電子機器760との組合せの自由度が増す。例えば、図15(D)に示すように、高周波信号導波路769の取り付けられている位置が、図15(B)及び図15(C)に示したものと異なっていてよい。構成変更ユニットとしてのデジタルカメラ750をスロット構造762に挿入していくと、高周波信号導波路769が曲がり、デジタルカメラ750の側面側に配置されたスロット756において露出した高周波信号導波路758に接触する。
[適用例3:クレードル]
実施例6を適用することで、クレードル装置上に配置された電子機器との間で高周波信号の通信を確立することができる。例えば、図16は、第1の電子機器がクレードル装置770であり、携帯電話、PHS、デジタルカメラ等の可搬型の電子機器780がクレードル装置770の載置面に搭載可能である。載置面は、好適には、機能変更のための近接配置の箇所を示す追加部が明確に認識できるようにするとよい。例えば載置面側に凹部を設け、その底面(筐体内で)に沿って高周波信号導波路778を設けるとよい。或いは、載置面側を平坦としたままで、機能変更のための近接配置の箇所を示す表示(マーク)を付してもよい。
図16(A)に示す第1例では、クレードル装置770Aは、信号処理モジュール間での高周波信号の伝送を中継(結合)する高周波結合器としての高周波信号導波路778の伝送路が櫛形に配置されている。高周波信号導波路778の誘電体素材を、空気よりも大きな誘電率を持つものにすることで、高周波信号導波路778内に高周波信号を閉じ込めて伝送することができる。高周波信号導波路778の誘電体素材の材質、幅、厚さは使用する周波数に応じて決める。後述の第3例のような板状或いは帯状の伝送路と比べると、伝送路の幅も調整できるので、カップリングが良い又はロスが少ない構造を作れる利点がある。高周波信号導波路778は筐体777内に完全に収容されている。クレードル装置770Aは、載置面に電子機器780が載置されたことを検知して、各電子機器780を制御し、電子機器780間の通信を制御する中央制御部を備えていない。
高周波信号導波路778の載置面側を除く各面には、好ましくは、外部からの不要な電磁波の影響を受けないように、或いは、内部から高周波信号が漏れ出さないように、遮蔽材(好ましくは金属メッキを含む金属部材を使用する)で囲むとよい。金属部材を遮蔽材として使用すると、反射材としても機能するので、反射成分を利用することで、それによる反射波も送受信に利用でき感度が向上する。但し、高周波信号導波路778内の多重反射により不要な定在波が高周波信号導波路778内に発生することが問題となり得る。これを避けるには、高周波信号導波路778の周囲(上面、下面、側面)は、開放としたままとしてもよいし、高周波信号を吸収する吸収部材(電波吸収体)を配置してもよい。電波吸収体を用いた場合は、反射波を送受信に利用することはできないが、端面から漏れる電波を吸収することができるので、外部への漏れを防ぐことができるし、高周波信号導波路778内の多重反射レベルを下げることができる。これらの点は、後述の第2例や第3例でも同様である。
一方の電子機器780_1はデジタルカメラであり、デジタルカメラには図示しないが高周波信号導波路が配置され、高周波信号導波路上には高周波送受信機能を持つ1つ或いは複数の信号処理モジュール784が搭載されている。他方の電子機器780_2は携帯電話であり図示しないが、高周波信号導波路が配置され、高周波信号導波路上には高周波送受信機能を持つ1つ或いは複数の信号処理モジュール並びに無線回路(何れも図示しない)が搭載されている。
一方の電子機器780_1(デジタルカメラ)と他方の電子機器780_2(携帯電話)とをクレードル装置770Aに載置し、電子機器780_1と電子機器780_2の何れか一方を操作して、デジタルカメラの内部の画像データをクレードル装置770Aを経由して、携帯電話に転送する。こうすることで、デジタルカメラで取得した画像データを、携帯電話電話を経由し(換言すると、通信回線或いはWLAN等を通して)、画像データを送信する機能を実現できる。
図16(B)に示す第2例では、概ね図16(A)に示した第1例と同様であるが、高周波信号導波路778の櫛形に配置された伝送路の表面が筐体777から露出している。櫛形に配置された伝送路の隙間は、クレードル装置770Bの筐体777を構成する誘電体素材で充填されている。つまり、高周波信号導波路778は誘電率の異なる他の誘電体素材の中に埋め込まれている。高周波信号導波路778の誘電体素材を、筐体777を構成する誘電体素材よりも大きな誘電率を持つものにすることで、高周波信号導波路778内に高周波信号を閉じ込めて伝送することができる。櫛歯の位置に基づくパス差に起因する時間差に基づいて、どの櫛歯の位置に電子機器780(或いは異物)が置かれたかを認識することもできる。
尚、第1例及び第2例の何れにおいても、電子機器780側の高周波信号結合構造体の通信可能エリアは、隣接する櫛歯に跨がらないようにするのが好ましい。通信可能エリアが隣接する櫛歯に跨がってしまうと、櫛歯の隙間分のパス差を持った複数のパスができるため、違うパスを通った信号と干渉し、マルチパス現象による悪影響を受ける可能性があるからである。これらの点は、通信可能エリアが隣接する伝送路に跨がってしまう虞のある場合に共通する事項であり、例えば、伝送路が格子状や螺旋状等の場合でも同様である。
例えば、通信可能幅をDT、櫛歯の幅をW、隣接する櫛歯同士の隙間をwとしたとき、「DT<W+w」としておけば、確実に、通信可能幅DTが隣接する櫛歯に跨がらないようにすることができる。「DT≧W+w」となる場合には、載置時にほぼ確実に発生する相対移動を利用して、電子機器780がクレードル装置770に載置されるときの受信信号レベルに基づき、好適なレベルにあるときに、データ伝送を行なうことで対処できる。或いは、受信信号が好適なレベルになるように、電子機器780の載置位置を微調整するように、音声やLED表示等を利用して操作者に促してもよい。これらの機能は、例えば電子機器780の少なくとも一方に設けられた中央制御部が担当すればよい。勿論、クレードル装置770に中央制御部を設ける場合には、その中央制御部が担当すればよい。
図16(C)に示す第3例では、高周波信号導波路778が1枚の誘電体板で作られており、板状或いは帯状の伝送路が構成される。高周波信号導波路778の誘電体素材を、空気よりも大きな誘電率を持つものにすることで、高周波信号導波路778内に高周波信号を閉じ込めて伝送することができる。高周波信号導波路778の材質や厚さは使用する周波数に応じて決める。図示しないが、高周波信号導波路778は、図16(A)に示した第1例のように伝送路が櫛形に配置されたものとしてもよいし、図16(B)に示した第2例のように誘電率の異なる他の誘電体素材の中に埋め込まれていてもよい。高周波信号導波路778は筐体777内に完全に収容されている。高周波信号導波路778は、上面及び下面を除く側面の一部に、データの送受信を行なう通信装置790が取り付けられており、通信装置790は更に接続配線798を介して図示しないサーバ装置と接続される。通信装置790は、1箇所に限らず複数箇所に配置してもよい。又、複数箇所の通信装置790を利用してMIMO(Multi-Input Multi-Output)を適用してもよい。載置面に電子機器780が載置されたことを検知して、各電子機器780を制御し、電子機器780間の通信を制御する中央制御部を、クレードル装置770Cではなくサーバ装置に設ける。接続配線798の接続仕様は、高速データ転送に対応した規格のものであればよく、例えばUSBやIEEE1394等を採用できる。
通信装置790は、送信回路部と受信回路部とを具備した送受信回路部792と、共振部794と、送受信用電極796とを有する。送受信用電極796は、高周波信号導波路778の端面に取り付けられる。共振部794と送受信用電極796とで、高周波信号導波路778の端面において高周波信号を結合させる高周波結合器が構成される。因みに、図は高周波信号導波路778のコーナー部分に取り付けられているが、これには限定されない。但し、送受信用電極796から放射される表面波の入射角(或いは送受信用電極796に入射する表面波の入射角)を大きくし、透過波として外部に放射される割合を少なくするため、高周波信号導波路778の端面を送受信用電極796の正面に、電極面に対してほぼ垂直になるように配置することが望ましい。
送受信回路部792の送信回路部は、サーバ装置側の上位アプリケーションから送信要求が生じると、送信データに基づいて高周波送信信号を生成する。送信回路部から出力された高周波送信信号は、共振部794で共振し、送受信用電極796から正面方向に表面波として放射され高周波信号導波路778内を伝搬する。電子機器780から出力された高周波送信信号も、表面波として高周波信号導波路778内を伝搬する。送受信回路部782の受信回路部は、送受信用電極786で受信した高周波信号を復調及び復号処理して、再現したデータをサーバ装置側の上位アプリケーションへ渡す。高周波信号導波路778内では、表面波が、外部との境界面に到達する度に反射を繰り返しながら、ロスなく伝搬する。したがって、高周波信号導波路778の介在により、ミリ波等の高周波信が効率的に伝搬する。
以上、本明細書で開示する技術について実施形態を用いて説明したが、請求項の記載内容の技術的範囲は前記実施形態に記載の範囲には限定されない。本明細書で開示する技術の要旨を逸脱しない範囲で前記実施形態に多様な変更または改良を加えることができ、そのような変更または改良を加えた形態も本明細書で開示する技術の技術的範囲に含まれる。前記の実施形態は、請求項に係る技術を限定するものではなく、実施形態の中で説明されている特徴の組合せの全てが、本明細書で開示する技術が対象とする課題の解決手段に必須であるとは限らない。前述した実施形態には種々の段階の技術が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜の組合せにより種々の技術を抽出できる。実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、本明細書で開示する技術が対象とする課題と対応した効果が得られる限りにおいて、この幾つかの構成要件が削除された構成も、本明細書で開示する技術として抽出され得る。