以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。各機能要素について実施形態別に区別する際には、A,B,C,…などのように大文字の英語の参照子を付して記載し、特に区別しないで説明する際にはこの参照子を割愛して記載する。図面においても同様である。
なお、説明は以下の順序で行なう。
1.構造:基本構成
2.送受信アンテナ(直線偏波プローブ、円偏波プローブ)
3.偏波変換部(溝形円形導波管の円偏波発生器、金属突起物、誘電体)
4.構造:第1実施形態(円偏波プローブ+円偏波プローブ)
5.構造:第2実施形態(直線偏波プローブ+円偏波プローブ)
6.構造:第3実施形態(直線偏波プローブ+直線偏波プローブ)
7.通信処理系統:基本
8.通信処理系統:変調および復調(基本構成、注入同期方式)
9.通信処理系統:第1適用例
10.通信処理系統:第2適用例
11.回転構造体が適用される電子機器(監視カメラ、3次元画像再生装置)
<構造:基本構成>
図1〜図1Aは、本実施形態の電子機器の回転構造体に適用される無線通信部1000(無線通信装置)の基本を説明する図である。ここで、図1は、本実施形態の無線通信部1000の基本を示す概観図である。図1Aは、本実施形態の無線通信部1000の構成要素の組合せを説明する図である。
[概観]
図1(1),(2)に示すように、本実施形態の無線通信部1000が適用される回転構造体1001は、支持部として機能する固定部1002と、回転部として機能する可動部1004と、両者の間に介在し電波が伝播する伝送路(導波路)を構成する筒状の導波管1012,1014を備えている。図示した例では、固定部1002側の導波管1012の方が可動部1004側の導波管1014よりも管長が長く設定されている。
なお、固定部1002と可動部1004は、固定部1002に対して可動部1004が相対的に回転可能な構造のものであればよく、固定部1002が絶対的に位置固定のものであることを意味せず、固定部1002も回転し、その回転する固定部1002に対してさらに可動部1004が回転する構造のものでもよい。なお、双方の通信部の全体が相対的に回転可能な構成である必要はなく、要は、双方の通信部の送受信用の伝送路結合部近傍で相対的に回転可能になっていればよい。回転する部分と非回転部分との接続をどう取るかについては様々な手法が知られており、それら様々な仕組みが本実施形態に適用可能である。後述の各例でも同様である。
導波管1012,1014は連結され1つの導波管として一体化して使用される。可動部1004には、可動部1004の回転を駆動する回転駆動部1060が接続可能に構成されている。回転構造体1001は、回転駆動部1060が接続可能なようになっていればよく、回転駆動部1060を含んで流通される場合もあるし、回転駆動部1060を含まずに流通される場合もある。
導波管1012,1014は固定部1002に固定されている。導波管1012,1014の断面形状は円(真円)であることが最適であるが、これには限定されず、円形に近ければよく、楕円や多角形(たとえば8角形や12角形などの角の数が比較的多いもの)でも許容される。ただし、角の数が少ない場合(たとえば3角形や4角形)は円形とは大きく異なるので好ましくはない。
導波管1012,1014内は無線信号伝送路として機能する。導波管1012,1014内は、中空(つまり内部に空気が存在する)でもよい。つまり、導波管1012,1014は、無線信号伝送路(たとえばミリ波信号伝送路)を構成し、かつ、無線信号(電波)の外部放射を抑える遮蔽材(たとえば金属材料)が伝送路を囲むように設けられ、遮蔽材の内部の伝送路が中空の中空導波路にしてもよい。
ただし、導波管1012,1014内は、好ましくは誘電体素材を詰めるのが望ましい。誘電体素材を詰めることで、導波管内の多重反射を抑制することができるし、導波管の断面サイズ(管径)を小さくすることもできる。たとえば、導波管1012,1014が円形導波管であるとした場合、詰め込む誘電体の比誘電率をεとすると、その導波管径は中空の場合に対して約1/√ε倍に小型化できる。また、送(受)信ポートの不整合による反射成分が導波管内で多重反射して、送(受)信ポートに悪影響を与えることがある。ここで、導波管内が空気の場合、通過損失が殆どないので、多重反射しても電力レベルが減衰せず悪影響が大きい。これに対して、損失のある誘電体を詰め込むと、反射波の電力レベルが減衰していくので悪影響が抑えられる。
導波管1012,1014は誘電体素材を詰める場合であっても、好ましくはその周縁部材を金属材料にすることが望ましい。要するに、電磁波の信号を伝送する信号伝送路は、空気(いわゆる自由空間)であってもよいが、好ましくは、電磁波を伝送路中に閉じ込めつつ電磁波を伝送させる構造を持つものがよい。なお、誘電体素材を詰め込んで誘電体挿入の導波管1012,1014を作る場合は、金属素材の筒状部材内に誘電体を詰め込むことも考えられるし、誘電体素材の外周を覆うように金属素材の薄膜を被覆する表面処理(金属メッキと称する)を施すことも考えられる。誘電体素材の外周に金属メッキを施す構造では、小型化に加えて、金属材の筐体内に誘電体を詰め込む場合よりも軽量化ができる。一方、金属材の筒状部材内を誘電体素材で詰める構造では、金属メッキの場合よりも強度を増すことができる。
固定部1002は、たとえば台や壁や天井などに取り付け(固定)される。可動部1004は、回転軸を中心に回動する部材であり、導波管1012,1014内に設けられた図示しない結合軸により固定部1002に対して回転自在に結合されている。たとえば、図示しないが、筐体にはベアリングを介して結合軸と結合し、回転駆動部1060による駆動の元でエンドレス旋回(無限軌道旋回)が可能な構成にする。好ましくは、導波管1012,1014の中心は、可動部1004の回転軸の中心と一致させる。因みに、図示した構成例では、導波管1014、基板1202、マイクロストリップ線路1024、終端部材1090が可動部1004を構成する部材で、これらと図示しない一方の通信部を含む全体が、他方の通信部が搭載された固定部1002に対して相対的に回転するようになっている。
固定部1002と可動部1004には回路部品を搭載する基板1102,1202が設けられており、基板1102,1202には伝送対象信号を無線(たとえばマイクロ波帯、ミリ波帯)で他方に伝送するための送信部や受信部を備えた通信装置(通信部・無線通信部)が搭載される。通信装置の回路構成については後述する。
基板1102,1202には、図示を割愛した送信部や受信部と電気的に接続された線路の一例であるマイクロストリップ線路1022,1024を含む伝送路結合部1108,1208が設けられる。たとえば、導波管1012,1014側の先端には導波管1012,1014に電磁波を供給するまたは受け取る伝送路結合部1108,1208が設けられる。
固定部1002と可動部1004は、導波管1012,1014の端部を終端部材1090(ショートブロック)で終端してもよい。終端部材1090を用いた場合は、それによる反射波も送受信に利用でき感度が向上するようになる。ただし、導波管1012,1014内の多重反射により不要な定在波が管内に発生することが問題となり得る。
また、導波管1012,1014の端部は、開放としたままとしてもよいし、開放としつつ近傍に伝送路結合部1108,1208や導波管1012,1014から放射される無線信号を吸収する吸収部材(電波吸収体1092)を配置するようにしてもよい。開放端に電波吸収体1092を用いた場合は、反射波を送受信に利用することはできないが、端部から漏れる電波を吸収することができるので、外部への漏れを防ぐことができるし、導波管1012,1014内の多重反射レベルを下げることができる。
伝送路結合部1108,1208にはアンテナ構造を備える。アンテナ構造は、導波管1012,1014内に構成される信号伝送路との結合部における構造をいい、マイクロ波帯やミリ波帯の電気信号を信号伝送路に結合させるものであればよく、アンテナそのもののみを意味するものではない。たとえば、アンテナ構造には、アンテナ端子、マイクロストリップ線路、アンテナを含み構成される。伝送路結合部1108,1208の詳細については後述する。
ここで、本実施形態の無線通信部1000は、導波管1012,1014内に円偏波を使用して無線伝送を行なう点に特徴がある。好ましくは、伝送周波数帯(搬送波の周波数帯)としてはミリ波帯を使用する。
たとえば、導波管1012,1014を円形導波管とする場合、基本モード(TE11モード)の遮断周波数Fc=c*1.814/(2*π*a)[Hz]で与えられる。ここで、「c」は光速であり2.99792458*10^8[m/s]、「a」は導波管の半径[m]である。たとえば、a=1.75mmのとき、Fc=49.458[GHz]以上で使用可能となる。
これによって、固定部1002に対して可動部1004をエンドレス回転が可能になる。すなわち、導波管1012,1014内で円偏波を使用しているので、回転側で導波管を中心軸に対してエンドレス回転しても通信が可能となる。加えて、ミリ波帯を使用することで構造を小型化できる利点もある。
導波管1012,1014内に円偏波を使用するには、伝送路結合部1108,1208に円偏波プローブを使用する手法と、伝送路結合部1108,1208に直線偏波プローブを使用しつつ導波管1012,1014内に直線偏波と円偏波の変換を行なう機能部(偏波変換部・円偏波発生器)を設ける手法を採り得、それらの組合せも考えられる。
たとえば、伝送路結合部1108,1208は、双方ともが電磁波を直線偏波で導波管1012,1014に供給または受け取る場合と、双方ともが電磁波を円偏波で導波管1012,1014に供給または受け取る場合と、一方は直線偏波で他方は円偏波で導波管1012,1014に供給または受け取る場合の3つの態様を採り得る。
直線偏波とする場合には伝送路結合部1108,1208には直線偏波発生器(直線偏波プローブ1070:図16(3))を直線偏波アンテナとして使用し、円偏波とする場合には伝送路結合部1108,1208には円偏波発生器(円偏波プローブ1080:図16(4))を円偏波アンテナとして使用する。また、直線偏波を適用する場合には、直線偏波と円偏波の変換を行なう偏波変換部1030(偏波変換装置:いわゆるポラライザ:Polarizers)を導波管1012,1014に設ける。図1(1)では、偏波変換部1030として後述の第1例の偏波変換部1030Aを導波管1012側に使用する場合で示している。図示しないが、導波管1012,1014の分割位置を変更して導波管1014側に偏波変換部1030を配置する、両導波管1012,1014に偏波変換部1030を設けるなど、偏波変換部1030の配置に関しては様々な変形が可能である。
[組合せ例]
図1Aは、以上の各要素の組合せを纏めて表にしたもので、これより、本実施形態の無線通信部1000として適用し得る組合せと適用し得ない組合せが理解される。図中の「端部」の項において、「ショート」は終端部材1090を用いる場合であり、「オープン」は端部を開放とする場合である。なお、前述のように「オープン」時には電波吸収体1092を端部の近傍に配置するのが望ましい。「ショート(オープン)」はショートまたはオープンの場合を意味し、「オープン(ショート)」はオープンまたはショートを意味し、一方がショートのときは他方はオープンで、一方がオープンのときは他方はショートで組み合わされる。
図中の「プローブ」の項において、「円」は円偏波プローブ1080を用いる場合であり、「直線」は直線偏波プローブ1070を用いる場合である。「直線(円)」は直線偏波プローブ1070または円偏波プローブ1080を用いる場合を意味し、「円(直線)」は円偏波プローブ1080または直線偏波プローブ1070を用いる場合を意味し、一方が直線偏波プローブ1070を用いるときは他方は円偏波プローブ1080を用い、一方が円偏波プローブ1080を用いるときは他方は直線偏波プローブ1070を用いて組み合わされる。
また、「評価」の項では、「A」〜「E」の順でランク付けをしており、「A」が最適な組合せで、B→C→D→Eとなるほどに好ましくない問題点が顕在化する。
たとえば、双方に円偏波プローブ1080を使用し、かつ双方の端部に終端部材1090を配置する構成例1は、導波管1012,1014には偏波変換部1030が不要であり構造がシンプルであるので、最も好ましい態様と考えられ「A」にしている。この場合、終端部材1090で反射した電磁波の逃げ道が無いが、円偏波で伝搬することから、導波管1012,1014内で多重反射があっても不要な定在波が現われる可能性が低い。ただし、双方に使用される円偏波プローブ1080は直線偏波プローブ1070に比べると、プローブ設計が困難という難点はある。
一方が直線偏波プローブ1070を使用し、他方が円偏波プローブ1080を使用し、双方の端部に終端部材1090を配置する構成例4は、導波管1012,1014の何れか一方には偏波変換部1030が必要で、構成例1よりも構造が複雑になるので「B」にしている。この場合、円偏波の軸比が低下しても他方は直線偏波であるから構成例1に比べて軸比特性で有利であるし、片方は円偏波プローブ1080よりもプローブ設計が容易な直線偏波プローブ1070を使用できる利点もある。また、終端部材1090で反射した電磁波の逃げ道が無いが、偏波変換部1030を介在することから、導波管1012,1014内で多重反射があっても不要な定在波が現われる可能性が低い。
双方ともが「直線」で導波管1012,1014内に偏波変換部1030がない構成例10〜12は、本実施形態の無線通信部1000としては適さない組合せであるので「E」にしている。固定部1002側から可動部1004側に対して直線偏波の状態のままで電磁波が入射するか、可動部1004側から直線偏波で電磁波が出射され固定部1002側に入射する場合となり、円偏波を使用しないとエンドレス回転は不可能という状況に陥るからである。
また、双方ともが「直線」で導波管1012内には偏波変換部1030があるが導波管1014内には偏波変換部1030がなく、双方の端部に終端部材1090を設ける構成例7は、好ましい組合せと言えないので「E」にしている。終端部材1090で反射した電磁波の逃げ道が無く、導波管1012,1014内の多重反射による不要な定在波が顕著に現われ得るからである。
これに対して、双方ともが「直線」であるが、両導波管1012,1014内に偏波変換部1030がある構成例13〜15の内で、双方の端部に終端部材1090を配置する構成例13は、構成例4と同様に、構成例1よりも構造が複雑になるので「B」にしている。この場合、円偏波の軸比が低下しても他方は直線偏波であるから構成例1に比べて軸比特性で有利であるが、導波管の全長が長くなる不利益がある。その一方で、双方ともに、円偏波プローブ1080よりもプローブ設計が容易な直線偏波プローブ1070を使用できる利点がある。また、終端部材1090で反射した電磁波の逃げ道が無いが、偏波変換部1030を介在することから、導波管1012,1014内で多重反射があっても不要な定在波が現われる可能性が低い。なお、何れか一方または双方の端部を開放端とする場合は、双方の端部に終端部材1090を配置する構成例13よりも劣り、構成例2,3と比べると導波管の全長が長くなる不利益があるので「D」としている。
<送受信アンテナ>
図2は本実施形態の無線通信部1000に使用される送受信アンテナを説明する図である。ここで、図2(1)は直線偏波プローブ1070の構成例を示し、図2(2)は円偏波プローブ1080の構成例を示す。
直線偏波プローブ1070は、筒状(好ましくは円筒状)の導波管1012,1014の基端側部分に、導波管1012,1014に対して垂直に差し込まれた直線状の棒状部材1072を送受信アンテナとして備えたものである。その構造から明らかなように、後述の円偏波プローブ1080に比べると、極めてシンプルなものである。ここでは図示しないが、後述の円偏波プローブ1080のように、導波管1012,1014の端部は、終端部材1090を設ける、開放端にする、または開放端にしつつ近傍に電波吸収体1092を配置する。
導波管1012,1014に対して直線状の棒状部材1072を垂直に差し込まれた状態とするに当たっては、たとえば、誘電体素材(絶縁材料)で形成された平板状の基板1102,1202の一主面部上に、いわゆるエッチングなどの手段により、銅やその他の導体よる棒状部材1072をなす箔膜状の導体パターンを直線状に被着成膜することで形成される。つまり、直線偏波プローブ1070は、導体パターンで形成された棒状部材1072が基板1102,1202の一平面上に形成されているため、薄型化が可能であり構成が簡素化されている。
このような構造の直線偏波プローブ1070(直線偏波発生器)は、直線偏波送信アンテナとして使用することができる。すなわち、授受端1076より直線偏波状態の発信信号が供給されることにより、棒状部材1072を介して、基板1102,1202の主面部に垂直な方向に、つまり導波管1012,1014の前端側方向に直線偏波を放射する。また、直線偏波プローブ1070は直線偏波受信アンテナとしても使用することができる。すなわち、直線偏波プローブ1070を直線偏波受信アンテナとして使用する場合は、直線偏波プローブ1070は、導波管1012,1014の前端側より基板1102,1202の主面に対し垂直方向に入射する直線偏波を棒状部材1072により受信し、授受端1076より直線偏波状態の受信信号として出力する。
一方、円偏波プローブ1080は、筒状(好ましくは円筒状)の導波管1012,1014の基端側部分に、導波管1012,1014に対して垂直に差し込まれた複数の直線部材の組合せでなるクランク状部材1082を送受信アンテナとして備えたものである。たとえば、クランク状部材1082は第1〜第6の直線部材1082_1〜1082_6の組合せで構成されるものとする。このような構造の円偏波プローブ1080は、たとえば、特開平05−283902号公報に開示されている。
導波管1012,1014に対してクランク状部材1082を垂直に差し込まれた状態とするに当たっては、たとえば、誘電体素材(絶縁材料)で形成された平板状の基板1102,1202の一主面部上にクランク状部材1082をなすクランク状の導体パターンを形成することで実現することにする。
クランク状をなす各直線部材1082_1〜1082_6(の導体パターン)の寸法は、波長λに応じて、次のように設定する。先ず、第1直線部材1082_1は、基端側が波長λの電磁信号の授受端1086(受信端または送信端)となされた長さが略3/8λのものとする。授受端は、基板1102,1202上に形成されるマイクロストリップ線路1022,1024に延設されて接続される。
第2直線部材1082_2は、第1直線部材1082_1の先端部より第1直線部材1082_1に連続され第1直線部材1082_1に対して垂直な一側方向に延在され長さが略1/8λのものとする。第3直線部材1082_3は、第2直線部材1082_2の先端部より第2直線部材1082_2に連続され第1直線部材1082_1に平行に第1直線部材1082_1の先端側方向に延在され長さが略1/4λのものとする。第4直線部材1082_4は、第3直線部材1082_3の先端部より第3直線部材1082_3に連続され第3直線部材1082_3に対して垂直な他側方向に延在され長さが略1/4λのものとする。第5直線部材1082_5は、第4直線部材1082_4の先端部より第4直線部材1082_4に連続され第1直線部材1082_1に平行に第1直線部材1082_1の先端側方向に延在され長さが略1/4λのものとする。第6直線部材1082_6は、第5直線部材1082_5の先端部より第5直線部材1082_5に連続され第5直線部材1082_5に対して垂直な一側方向に延在され長さが略1/8λのものとする。
すなわちクランク状部材1082は、第4直線部材1082_4を中心として、第2直線部材1082_2と第6直線部材1082_6が、また、第3直線部材1082_3と第5直線部材1082_5が、それぞれ互いに回転対称な位置および形状を有して形成されている。
このように、円偏波プローブ1080は、基板1102,1202上に、いわゆるエッチングなどの手段で、第1〜第6直線部材1082_1〜1082_6を順次連設して略クランク形状をなすように、銅やその他の導体よる箔膜状の導体パターンにより被着成膜することで形成される。
クランク状部材1082をなす導体パターン(第1〜第6直線部材1082_1〜1082_6)の幅は、信号の伝送ロスを勘案して、波長λに応じて予め決められた幅に設定される。また、この例においては、一側方向を基板1102,1202に向かって右側方向とし、他側方向を基板1102,1202に向かって左側方向としている。
このような構造のクランク状部材1082を具備する円偏波プローブ1080は、導波管1012,1014内に配設されて使用される。すなわち、基板1102,1202は、導体パターンが形成された部分を基板1102,1202内に位置させて配設される。基板1102,1202は、前端側が開放され後端側が閉塞された筒状(好ましくは円筒状)の導波管1012,1014内にクランク状部材1082をなす導体パターン(第1〜第6直線部材1082_1〜1082_6)を位置させた状態で、主面部を導波管1012,1014の軸心に垂直として、この導波管1012,1014内に配設される。基板1102,1202は、一部を導波管1012,1014の外方側に導出される。基板1102,1202の導波管1012,1014の外方側に導出された部分には、マイクロストリップ線路1022,1024が形成されている。導波管1012,1014の図2(2−1)中に矢指Dで示す内径は、少なくとも、クランク状部材1082(導体パターン:第1〜第6直線部材1082_1〜1082_6)を第4直線部材1082_4を中心として覆い得る程度の径とされる。
基板1102,1202は、第1〜第6直線部材1082_1〜1082_6が被着形成された一主面部を、導波管1012,1014の前端側に向けている。基板1102,1202を挟んだ導波管1012,1014の後端側にはたとえば終端部材1090が配置される。基板1102,1202は、図2(2−2)中の矢指Hで示す導波管1012,1014の後端部までの距離が1/4λ程度となる位置に支持される。つまり、終端部材1090の奥行き長が略1/4λに設定される。もちろん、図2(2−3)に示すように、導波管1012,1014の後端部側を開放端としてもよいし、図2(2−4)に示すように、開放端としつつ電波吸収体1092を開放端近傍に配置してもよい。
このような構造の円偏波プローブ1080(円偏波発生器)は、円偏波送信アンテナとして使用することができる。すなわち、授受端1086より直線偏波状態の発信信号が供給されることにより、クランク状部材1082を介して、基板1102,1202の主面部に垂直な方向に、つまり導波管1012,1014の前端側方向に円偏波を放射する。また、円偏波プローブ1080は円偏波受信アンテナとしても使用することができる。すなわち、円偏波プローブ1080を円偏波受信アンテナとして使用する場合には、円偏波プローブ1080は、導波管1012,1014の前端側より基板1102,1202の主面に対し垂直方向に入射する円偏波をクランク状部材1082により受信し、授受端1086より直線偏波状態の受信信号として出力する。
因みに、円偏波は、進行方向をZ軸としたときのX軸方向の電界の振幅とY軸方向の電界の振幅とが互いに1/4λ(90°)の位相ずれを生じているものである。円偏波には、X軸方向の電界の振幅のY軸方向の電界の振幅に対する位相が進んでいるか遅れているかによって右旋偏波と左旋偏波とがあるが、図2(2−1)に示した円偏波プローブ1080_1では、クランク状部材1082は、右旋偏波を送受信するための特性を有している。図2(2−5)に示す円偏波プローブ1080_2のように、クランク状部材1082を、図2(2−1)の円偏波プローブ1080_1に対する鏡像となる形状にすると、クランク状部材1082は、左旋偏波を送受信するための特性を有する。すなわち、左旋偏波を送受信するためには、一側方向を基板1102,1202に向かって左側方向となし、他側方向を基板1102,1202に向かって右側方向となして形成するとよい。
よって、このような構造の円偏波プローブ1080は、右旋偏波と左旋偏波の何れについても、第1直線部材1082_1の基端側である授受端1086より波長λの電磁信号が供給されると、クランク状部材1082(第1〜第6直線部材1082_1)は、基板1102,1202に対する垂直方向に円偏波を放射する。また、円偏波プローブ1080は、基板1102,1202に対する垂直方向より円偏波が入射されると、クランク状部材1082(第1〜第6直線部材1082_1)がこの円偏波を受信し、授受端1086より直線偏波状態の受信信号が出力される。円偏波プローブ1080は、導体パターンで形成されたクランク状部材1082(第1〜第6直線部材1082_1)は、互いに一平面上に形成されているため、薄型化が可能であり構成が簡素化されている。特性図については図示を割愛するが、円偏波プローブ1080は、良好な受信特性、すなわち、低伝送ロス、良好な軸比(交差偏波識別度)特性を有している。基板1102,1202上に配設された各導体パターンが円偏波を良好な受信特性にて受信することで、授受端1086を介して受信信号を後段の回路に送ることができる。
因みに、右旋偏波と左旋偏波は、送信側と受信側で対にして使用する。つまり、送信側に右旋偏波を送信する円偏波プローブ1080_1を使用する場合は、受信側に右旋偏波を受信する円偏波プローブ1080_1を使用し、送信側に左旋偏波を送信する円偏波プローブ1080_2を使用する場合は、受信側に左旋偏波を受信する円偏波プローブ1080_2を使用する。
また、一方(たとえば固定部1002)に右旋偏波を送信する円偏波プローブ1080_1および左旋偏波を送信する円偏波プローブ1080_2を設け、他方(たとえば可動部1004)に右旋偏波を送信する円偏波プローブ1080_1および左旋偏波を送信する円偏波プローブ1080_2を設けることも考えられる。この場合、右旋偏波を送信(または受信)するとともに左旋偏波を送信(または受信)する2偏波共用が可能となる。直交偏波(右旋円偏波、左旋円偏波)を利用することで、周波数分割多重やその他の多重手法を適用しなくても同じ搬送周波数を使用しながら2倍の情報を伝送することができる。
<偏波変換部>
図3〜図3Aは、本実施形態の無線通信部1000に使用される偏波変換部1030を説明する図である。
図3に示す第1例の偏波変換部1030Aは、導波管1012,1014に構成された単一溝形円形導波管の一例である円偏波発生器であり、たとえば、参考文献1に記載の仕組みを利用したものである。
参考文献1:Naofumi Yoneda、et.al,“Mono-Grooved Circular Waveguide Polarizers”,2002 IEEE MTT-S Digest,WE2C−4,pp821〜824
第1例の偏波変換部1030Aは、筒状(好ましくは円筒状)の導波管1012,1014の外側面に直方体状の側溝1032(Coupling Groove )が設けられることで構成される。以下では、側溝1032の中心(図3中の破線)を通る平面に対して、45度傾いた直線偏波をなす円形導波管の基本モード(TE11モード)の電波が、導波管1012,1014の入力端から入力される場合について説明する。
側溝1032の影響により、入射電波には、側溝1032の中心(破線)を通る平面に対して水平な偏波成分と垂直な偏波成分との間で位相差が生じる。このとき、導波管1012,1014の断面寸法(たとえば円形導波管の場合は径φ)に対して側溝1032の寸法(幅W、深さD、長さL)が参考文献1に記載のように適切に設計されていれば、導波管1012,1014の入力端とは反対側の出力端から出力される基本モードの電波は、ある一定の(所望の)周波数帯において円偏波となる。このことは、側溝1032の中心(破線)を通る平面に対して、水平な偏波を有する基本モードが通過した場合でも、垂直な偏波を有する基本モードが通過した場合でも、反射が殆どなく、かつ、互いの通過位相の相対差が「略90度」となっていることを意味する。
図3A(1)および図3A(2)に示す第2例の偏波変換部1030Bは、筒状(好ましくは円筒状)の導波管1012,1014内の内側面に階段状で板状の金属突起物1034(金属片)が設けられることで構成される。金属突起物1034は、導波管1012,1014の内径の半分未満の幅を有する平板であって、導波管1012,1014の長手方向の断面形状が階段状を呈し、その長手方向を導波管1012,1014の軸方向とし、導波管1012,1014の内壁に配設されている。
金属突起物1034は、図3A(1)に示すように導波管1012,1014の片側に1個配置してもよいし、図3A(2)に示すように導波管1012,1014の対角に2個配置してもよい。
第2例の偏波変換部1030Bを適用する場合、導波管1012,1014の基端側部分に、導波管1012,1014に対して垂直に差し込まれた直線状の棒状部材1072を具備する直線偏波プローブ1070が組み合わされて使用される。第2例の偏波変換部1030Bと直線偏波プローブ1070の組合せで円偏波送受信アンテナとして機能するようになる。
たとえば、第2例の偏波変換部1030Bと直線偏波プローブ1070の組合せで構成された円偏波送受信アンテナに対しては、導波管1012,1014の開放された先端側より、図3A(1−1)および図3A(2−1)中に矢指Aで示すように円偏波が入射される。円偏波の内の金属突起物1034の主面に垂直な方向の電界振幅成分は、金属突起物1034に影響されずに導波管1012,1014内を通過して棒状部材1072に達する。一方、円偏波の内の金属突起物1034の主面に沿う方向の電界振幅成分は、金属突起物1034を通過することにより進行速度が遅くなって棒状部材1072に達する。円偏波の内の金属突起物1034を通過した電界振幅成分は棒状部材1072に達したとき1/4λに相当する遅延を生じているようにする。
こうすることで、円偏波は金属突起物1034の主面に垂直な方向の電界振幅成分と金属突起物1034の主面に沿う方向の電界振幅成分とが、互いに同時に棒状部材1072に達し、棒状部材1072を介して受信信号として出力される。また、第2例の偏波変換部1030Bと直線偏波プローブ1070の組合せで構成された円偏波送受信アンテナは、棒状部材1072より電波を発信すると、金属突起物1034の作用により、導波管1012,1014の先端側に円偏波を発信する円偏波発生器として使用できる。
ここで、金属突起物1034と棒状部材1072の配置関係は次のようにする。なお、電波方向は、紙面裏から表方向の場合で説明する。先ず、図3A(1−3)および図3A(2−3)に示すように、直線偏波プローブ1070の棒状部材1072に対して、導波管1012,1014の中心軸(水平方向をX−X’軸,垂直方向をY−Y’軸とする)を中心に、時計回りに45度、135度、225度、315度シフトした位置をそれぞれ1,2,3,4とする。
そして、金属突起物1034を、「1および3、1のみ、3のみ」の何れかで配置する(配置態様Aと記す)。これらの位置は直線偏波プローブ1070(棒状部材1072)に対して同じ偏波を送受信する関係にある。または、金属突起物1034を、「2および4、2のみ、4のみ」の何れかで配置する(配置態様Bと記す)。これらの位置は直線偏波プローブ1070(棒状部材1072)に対して同じ偏波を送受信する関係にある。
配置態様Aと配置態様Bは直交偏波関係にあり、直線偏波プローブ1070(棒状部材1072)を配置する位置との関係で、右旋偏波の送受信とされたり、左旋偏波の送受信とされたりする。たとえば、金属突起物1034が「1および3、1のみ、3のみ」の何れかで配置されているときに、直線偏波プローブ1070(棒状部材1072)がX−X’軸上にあるときは右旋偏波、Y−Y’軸上にあるときは左旋偏波となる。すなわち、図3A(1−3a)および図3A(2−3a)に示すように、棒状部材1072をX−X’軸上(X,X’の何れ側でもよい)に配置すると右旋偏波を送信(または受信)することができる。図3A(1−3b)および図3A(2−3b)に示すように、棒状部材1072をY−Y’軸上(Y,Y’の何れ側でもよい)に配置すると左旋偏波を送信(または受信)することができる。
因みに、右旋偏波と左旋偏波は、送信側と受信側で対にして使用する。つまり、一方(たとえば固定部1002)に図3A(1−3a)や図3A(2−3a)の形態を使用する場合は他方(たとえば固定部1002)には右旋偏波を受信(送信)する円偏波プローブ1080_1を使用し、一方(たとえば固定部1002)に図3A(1−3b)や図3A(2−3b)の形態を使用する場合は、他方(たとえば固定部1002)には左旋偏波を受信(送信)する円偏波プローブ1080_2を使用する。
また、図3A(1−3c)および図3A(2−3c)に示すように、棒状部材1072_1,1072_2を、一方(棒状部材1072_1)はX−X’軸上(X,X’の何れ側でもよい)に配置し、他方(棒状部材1072_2)はY−Y’軸上(Y,Y’の何れ側でもよい)に配置すると、棒状部材1072_1で右旋偏波を送信(または受信)し棒状部材1072_2で左旋偏波を送信(または受信)する2偏波共用が可能となる。直交偏波(右旋円偏波、左旋円偏波)を利用することで、周波数分割多重やその他の多重手法を適用しなくても同じ搬送周波数を使用しながら2倍の情報を伝送することができる。
図3A(3)に示す第3例の偏波変換部1030Cは、筒状(好ましくは円筒状)の導波管1012,1014内の内側面に楔状で板状の誘導体板1036が設けられることで構成される。誘導体板1036は、導波管1012,1014の内径に等しい幅を有する平板であって、長手方向を導波管1012,1014の軸方向とし、導波管1012,1014の軸上に配設されている。
第3例の偏波変換部1030Cを適用する場合、導波管1012,1014の基端側部分に、導波管1012,1014に対して垂直に差し込まれた直線状の棒状部材1072を具備する直線偏波プローブ1070が組み合わされて使用される。第3例の偏波変換部1030Cと直線偏波プローブ1070の組合せで円偏波送受信アンテナとして機能するようになる。
たとえば、第3例の偏波変換部1030Cと直線偏波プローブ1070の組合せで構成された円偏波送受信アンテナに対しては、導波管1012,1014の開放された先端側より、図3A(3−1)中に矢印Bで示すように円偏波が入射される。円偏波の内の誘導体板1036の主面に垂直な方向の電界振幅成分は、誘導体板1036に影響されずに導波管1012,1014内を通過して棒状部材1072に達する。一方、円偏波の内の誘導体板1036の主面に沿う方向の電界振幅成分は、誘導体板1036内を通過することにより、進行速度が遅くなって棒状部材1072に達する。円偏波の内の誘導体板1036内を通過した電界振幅成分は、棒状部材1072に達したとき、1/4λに相当する遅延を生じているようにする。
こうすることで、円偏波は、誘導体板1036の主面に垂直な方向の電界振幅成分と、誘導体板1036の主面に沿う方向の電界振幅成分とが、互いに同時に棒状部材1072に達し、棒状部材1072を介して受信信号として出力される。また、第3例の偏波変換部1030Cと直線偏波プローブ1070の組合せで構成された円偏波送受信アンテナは、棒状部材1072より電波を発信すると、誘導体板1036の作用により、導波管1012,1014の先端側に円偏波を発信する円偏波発生器として使用することができる。
ここで、誘導体板1036と棒状部材1072の配置関係は次のようにする。なお、電波方向は、紙面裏から表方向の場合で説明する。先ず、図3A(3−3)に示すように、直線偏波プローブ1070の棒状部材1072に対して、導波管1012,1014の中心軸(水平方向をX−X’軸,垂直方向をY−Y’軸とする)を中心に、時計回りに45度、135度、225度、315度シフトした位置をそれぞれ1,2,3,4とする。
そして、誘導体板1036を、「1および3の方向」(配置態様Aと記す)と「2および4の方向」(配置態様Bと記す)の何れかに配置する。配置態様Aと配置態様Bは直交偏波関係にあり、直線偏波プローブ1070(棒状部材1072)を配置する位置との関係で、右旋偏波の送受信とされたり、左旋偏波の送受信とされたりする。たとえば、誘導体板1036が「1および3、1のみ、3のみ」の何れかで配置されているときに、直線偏波プローブ1070(棒状部材1072)がX−X’軸上にあるときは右旋偏波、Y−Y’軸上にあるときは左旋偏波となる。すなわち、図3A(3−3a)に示すように、棒状部材1072をX−X’軸上(X,X’の何れ側でもよい)に配置すると右旋偏波を送信(または受信)することができる。図3A(3−3b)に示すように、棒状部材1072をY−Y’軸上(Y,Y’の何れ側でもよい)に配置すると左旋偏波を送信(または受信)することができる。
因みに、右旋偏波と左旋偏波は、送信側と受信側で対にして使用する。つまり、一方(たとえば固定部1002)に図3A(3−3a)の形態を使用する場合は他方(たとえば固定部1002)には右旋偏波を受信(送信)する円偏波プローブ1080_1を使用し、一方(たとえば固定部1002)に図3A(3−3b)の形態を使用する場合は、他方(たとえば固定部1002)には左旋偏波を受信(送信)する円偏波プローブ1080_2を使用する。
また、図3A(3−3c)に示すように、棒状部材1072_1,1072_2を、一方(棒状部材1072_1)はX−X’軸上(X,X’の何れ側でもよい)に配置し、他方(棒状部材1072_2)はY−Y’軸上(Y,Y’の何れ側でもよい)に配置すると、棒状部材1072_1で右旋偏波を送信(または受信)し棒状部材1072_2で左旋偏波を送信(または受信)する2偏波共用が可能となる。直交偏波(右旋円偏波、左旋円偏波)を利用することで2倍の情報を伝送することができる。
<構造:第1実施形態>
図4は、第1実施形態の無線通信部1000Aや回転構造体1001Aを説明する図である。第1実施形態の無線通信部1000A(回転構造体1001A)は、図1Aに示した組合せ態様の構成例1を適用したものである。
固定部1002側の導波管1012の方が可動部1004側の導波管1014よりも管長が長く設定されている。導波管1014、基板1202、マイクロストリップ線路1024、終端部材1090が可動部1004を構成する部材で、これらと図示しない一方の通信部を含む全体が、他方の通信部が搭載された固定部1002に対して相対的に回転するようになっている。
先ず、無線通信部1000A(回転構造体1001A)は、固定部1002と可動部1004の双方の伝送路結合部1108,1208には円偏波プローブ1080を使用し、導波管1012,1014には偏波変換部1030を適用しない。導波管1012,1014には偏波変換部1030が不要であり構造がシンプルである。円偏波プローブ1080から放射される電波を効率良く進行方向に伝送させるために、導波管1012,1014の固定部1002側と可動部1004側の端部に、高さHが約λ/4(λ:波長)となる終端部材1090を設置している。
たとえば、ミリ波帯の一例である60GHz帯で実施する場合、導波管1012,1014を円形導波管とする場合、その半径aはたとえば1.75mmにする。a=1.75mmのとき基本モード(TE11モード)のFc=49.458[GHz]であり、60GHz帯での使用が可能である。
送信側のマイクロストリップ線路1022,1024から出力された信号は、円偏波プローブ1080を介して円偏波に変換され、導波管1012,1014内に伝送される。受信側の円偏波プローブ1080は、クランク状部材1082で円偏波信号を受信して、授受端1086より直線偏波状態の受信信号を受信側のマイクロストリップ線路1022,1024に送る。これにより、図示を割愛した高周波回路に受信信号を受け渡すことができる。
<構造:第2実施形態>
図4Aは、第2実施形態の無線通信部1000Bや回転構造体1001Bを説明する図である。第2実施形態の無線通信部1000B(回転構造体1001B)は、図1Aに示した組合せ態様の構成例4を適用したもので、一方が直線偏波プローブ1070を使用し、他方が円偏波プローブ1080を使用し、かつ双方の端部に終端部材1090を配置し、さらに、導波管1012,1014には偏波変換部1030を適用する。
図4A(2)に示す第1例では、無線通信部1000B(回転構造体1001B)は、固定部1002側の伝送路結合部1108に直線偏波プローブ1070を使用し、可動部1004側の伝送路結合部1208に円偏波プローブ1080を使用している。図4A(3)に示す第2例では、無線通信部1000B(回転構造体1001B)は、可動部1004側の伝送路結合部1208に直線偏波プローブ1070を使用し、固定部1002側の伝送路結合部1108に円偏波プローブ1080を使用している。
固定部1002側の導波管1012の方が可動部1004側の導波管1014よりも管長が長く設定されている。導波管1014、基板1202、マイクロストリップ線路1024、終端部材1090が可動部1004を構成する部材で、これらと図示しない一方の通信部を含む全体が、他方の通信部が搭載された固定部1002に対して相対的に回転するようになっている。
また、図4A(1)に示すように、無線通信部1000B(回転構造体1001B)は、偏波変換部1030としては、導波管1012,1014の一方のみに(図の例では導波管1012側に)、単一溝形円形導波管の一例である第1例の偏波変換部1030Aを1つ使用している。前述のように、導波管1012,1014の一方に偏波変換部1030(ここでは偏波変換部1030A)を使用するので、第1実施形態の無線通信部1000A(回転構造体1001A)よりも構造が複雑になる。その一方で、片方(第1例では固定部1002、第2例では可動部1004)には構造が簡易な直線偏波プローブ1070を使用できる利点がある。
第1実施形態の無線通信部1000Aと同様に、直線偏波プローブ1070や円偏波プローブ1080から放射される電波を効率良く進行方向に伝送させるために、導波管1012,1014の固定部1002側と可動部1004側の端部に、高さHが約λ/4(λ:波長)となる終端部材1090を設置している。
ここでもたとえば、ミリ波帯の一例である60GHz帯で実施する場合、導波管1012,1014を円形導波管とする場合、その半径aはたとえば1.75mmにする。a=1.75mmのときFc=49.458[GHz]であり、60GHz帯での使用が可能である。
先ず、固定部1002側に直線偏波プローブ1070が使用され、可動部1004側に円偏波プローブ1080が使用される図1A(2)に示す第1例の場合について説明する。固定部1002を送信側とし可動部1004を受信側とする場合、送信側である固定部1002のマイクロストリップ線路1022から出力された信号は、直線偏波プローブ1070を介して直線偏波にて導波管1012,1014内に伝送される。導波管1012,1014内の直線偏波のミリ波帯(60GHz帯)の電波は、偏波変換部1030Aにより円偏波に変換され可動部1004側へ伝送される。受信側である可動部1004の円偏波プローブ1080は、円偏波に変換されたミリ波帯(60GHz帯)の電波をクランク状部材1082で受信して、授受端1086より直線偏波状態の受信信号をマイクロストリップ線路1024に送る。これにより、図示を割愛した高周波回路に受信信号を受け渡すことができる。
可動部1004を送信側とし固定部1002を受信側とする場合、送信側である可動部1004のマイクロストリップ線路1024から出力された信号は、円偏波プローブ1080を介して円偏波にて導波管1012,1014内に伝送される。導波管1012,1014内の円偏波のミリ波帯(60GHz帯)の電波は、偏波変換部1030Aにより直線偏波に変換され固定部1002側へ伝送される。受信側である固定部1002の直線偏波プローブ1070は、直線偏波に変換されたミリ波帯(60GHz帯)の電波を受信して、マイクロストリップ線路1022を介して図示を割愛した高周波回路に受け渡すことができる。
次に、可動部1004側に直線偏波プローブ1070が使用され、固定部1002側に円偏波プローブ1080が使用される図1A(3)に示す第2例の場合について説明する。可動部1004を送信側とし固定部1002を受信側とする場合、送信側である可動部1004のマイクロストリップ線路1024から出力された信号は、直線偏波プローブ1070を介して直線偏波にて導波管1012,1014内に伝送される。導波管1012,1014内の直線偏波のミリ波帯(60GHz帯)の電波は、偏波変換部1030Aにより円偏波に変換され固定部1002側へ伝送される。受信側である固定部1002の円偏波プローブ1080は、クランク状部材1082で円偏波に変換されたミリ波帯(60GHz帯)の電波を受信して、授受端1086より直線偏波状態の受信信号をマイクロストリップ線路1022に送る。これにより、図示を割愛した高周波回路に受信信号を受け渡すことができる。
固定部1002を送信側とし可動部1004を受信側とする場合、送信側である固定部1002のマイクロストリップ線路1022から出力された信号は、円偏波プローブ1080を介して円偏波にて導波管1012,1014内に伝送される。導波管1012,1014内の円偏波のミリ波帯(60GHz帯)の電波は、偏波変換部1030Aにより直線偏波に変換され可動部1004側へ伝送される。受信側である可動部1004の直線偏波プローブ1070は、直線偏波に変換されたミリ波帯(60GHz帯)の電波を受信して、マイクロストリップ線路1024を介して図示を割愛した高周波回路に受け渡すことができる。
<構造:第3実施形態>
図4Bは、第3実施形態の無線通信部1000Cや回転構造体1001Cを説明する図である。第3実施形態の無線通信部1000C(回転構造体1001C)は、図1Aに示した組合せ態様の構成例13〜15を適用するもので、双方に直線偏波プローブ1070を使用し、かつ、導波管1012,1014の双方には偏波変換部1030を適用する。
固定部1002側の導波管1012と可動部1004側の導波管1014は、管長が概ね同じに設定されている。導波管1014、基板1202、マイクロストリップ線路1024、終端部材1090が可動部1004を構成する部材で、これらと図示しない一方の通信部を含む全体が、他方の通信部が搭載された固定部1002に対して相対的に回転するようになっている。
図は、構成例13の場合を示しており、直線偏波プローブ1070から放射される電波を効率良く進行方向に伝送させるために、導波管1012,1014の固定部1002側と可動部1004側の端部に、高さHが約λ/4(λ:波長)となる終端部材1090を設置している。
ここで、無線通信部1000C(回転構造体1001C)は、偏波変換部1030としては、導波管1012,1014のそれぞれについて偏波変換部1030を適用する点が第2実施形態と異なる。図4B(2)に透視図を示すように、各偏波変換部1030としては、導波管1012,1014それぞれに対して、金属突起物1034を利用した第2例の偏波変換部1030Bを各別に使用している。前述のように、導波管1012,1014のそれぞれには偏波変換部1030(ここでは偏波変換部1030B)を使用するので、第1実施形態の無線通信部1000Aよりも構造が複雑になるし、偏波変換部1030を導波管1012,1014のそれぞれに(つまり2つ)使用するので、第2実施形態の無線通信部1000B(回転構造体1001B)よりも構造が複雑になる。その一方で、固定部1002と可動部1004の双方には構造が簡易な直線偏波プローブ1070を使用できる利点がある。
このように、第3実施形態の無線通信部1000C(回転構造体1001C)は、直線偏波プローブ1070と偏波変換部1030(この例では偏波変換部1030B)をセットして、上下2セット設置した構造である。
たとえば、ミリ波帯の一例である60GHz帯で実施する場合、導波管1012,1014を円形導波管とする場合、その半径aはたとえば1.75mmにする。a=1.75mmのとき基本モード(TE11モード)のFc=49.458[GHz]であり、60GHz帯での使用が可能である。
先ず、固定部1002を送信側とし、可動部1004を受信側とする場合で説明する。この場合、送信側である固定部1002のマイクロストリップ線路1022から出力された信号は、直線偏波プローブ1070_1を介して直線偏波にて導波管1012内に伝送される。導波管1012内の直線偏波のミリ波帯(60GHz帯)の電波は、偏波変換部1030B_1により円偏波に変換され導波管1014側へ伝送される。導波管1014側に配された偏波変換部1030B_2は、導波管1012側に配された偏波変換部1030B_1により円偏波に変換されたミリ波帯(60GHz帯)の電波を直線偏波に変換して(戻して)可動部1004側へ伝送する。受信側である可動部1004の伝送路結合部1208の直線偏波プローブ1070_2は、直線偏波に変換されたミリ波帯(60GHz帯)の電波を受信して、受信側のマイクロストリップ線路1024を介して図示を割愛した高周波回路に受け渡すことができる。
次に、可動部1004を送信側とし、固定部1002を受信側とする場合で説明する。この場合、送信側である可動部1004のマイクロストリップ線路1024から出力された信号は、直線偏波プローブ1070_2を介して直線偏波にて導波管1014内に伝送される。導波管1014内の直線偏波のミリ波帯(60GHz帯)の電波は、偏波変換部1030B_2により円偏波に変換され導波管1012側へ伝送される。導波管1012側に配された偏波変換部1030B_1は、導波管1014側に配された偏波変換部1030B_2により円偏波に変換されたミリ波帯(60GHz帯)の電波を直線偏波に変換して(戻して)固定部1002側へ伝送する。受信側である固定部1002の伝送路結合部1108の直線偏波プローブ1070_1は、直線偏波に変換されたミリ波帯(60GHz帯)の電波を受信して、受信側のマイクロストリップ線路1022を介して図示を割愛した高周波回路に受け渡すことができる。
<通信処理系統:基本>
図5〜図5Aは、前述の第1〜第3実施形態の無線通信部1000を適用した回転構造体1001に対する適用例の無線伝送システム1を説明する図である。ここで、図5は、無線伝送システム1(つまり無線通信部1000)の信号インタフェースを機能構成面から説明する図である。図5Aは、無線伝送システム1における信号の多重化を説明する図である。なお、搬送周波数としてはミリ波帯を使用する場合で説明する。
[機能構成]
図5に示すように、無線伝送システム1は、第1の無線機器の一例である第1通信装置100と第2の無線機器の一例である第2通信装置200がミリ波信号伝送路9を介して結合されミリ波帯で信号伝送を行なうように構成されている。ミリ波信号伝送路9は、無線信号伝送路の一例である。伝送対象の信号を広帯域伝送に適したミリ波帯域に周波数変換して伝送するようにする。
前述の回転構造体1001に対する第1〜第3実施形態の無線通信部1000との関係では、たとえば、第1通信装置100が固定部1002に配置され、第2通信装置200が可動部1004に配置されるものと考えればよい。もちろん、その逆でもよい。また、ミリ波信号伝送路9は、導波管1012,1014内に構成されるものと考えればよい。
第1の通信部(第1のミリ波伝送装置)と第2の通信部(第2のミリ波伝送装置)で、無線伝送装置(システム)を構成する。そして、比較的近距離に配置された第1の通信部と第2の通信部の間では、伝送対象の信号をミリ波信号に変換してから、このミリ波信号をミリ波信号伝送路を介して伝送するようにする。本実施形態の「無線伝送」とは、伝送対象の信号を電気配線ではなくミリ波で伝送することを意味する。
「比較的近距離」とは、放送や一般的な無線通信で使用される通信装置間の距離に比べて距離が短いことを意味し、伝送範囲が閉じられた空間として実質的に特定できる程度のものであればよい。たとえば、電子機器の筐体内での基板間通信や同一基板上でのチップ間通信や、一方の電子機器に他方の電子機器が装着された状態のように複数の電子機器が一体となった状態での機器間の通信が該当する。
ミリ波信号伝送路を挟んで設けられる各通信装置においては、送信部と受信部が対となって組み合わされて配置される。一方の通信装置と他方の通信装置との間の信号伝送は片方向(一方向)のものでもよいし双方向のものでもよい。たとえば、第1の通信部が送信側となり第2の通信部が受信側となる場合には、第1の通信部に送信部が配置され第2の通信部に受信部が配置される。第2の通信部が送信側となり第1の通信部が受信側となる場合には、第2の通信部に送信部が配置され第1の通信部に受信部が配置される。
送信部は、たとえば、伝送対象の信号を信号処理してミリ波の信号を生成する送信側の信号生成部(伝送対象の電気信号をミリ波の信号に変換する信号変換部)と、ミリ波の信号を伝送する伝送路(ミリ波信号伝送路)に送信側の信号生成部で生成されたミリ波の信号を結合させる送信側の信号結合部を備えるものとする。好ましくは、送信側の信号生成部は、伝送対象の信号を生成する機能部と一体であるのがよい。
たとえば、送信側の信号生成部は変調回路を有し、変調回路が伝送対象の信号を変調する。送信側の信号生成部は変調回路によって変調された後の信号を周波数変換してミリ波の信号を生成する。原理的には、伝送対象の信号をダイレクトにミリ波の信号に変換することも考えられる。送信側の信号結合部は、送信側の信号生成部によって生成されたミリ波の信号をミリ波信号伝送路に供給する。
一方、受信部は、たとえば、ミリ波信号伝送路を介して伝送されてきたミリ波の信号を受信する受信側の信号結合部と、受信側の信号結合部により受信されたミリ波の信号(入力信号)を信号処理して通常の電気信号(伝送対象の信号)を生成する受信側の信号生成部(ミリ波の信号を伝送対象の電気信号に変換する信号変換部)を備えるものとする。好ましくは、受信側の信号生成部は、伝送対象の信号を受け取る機能部と一体であるのがよい。たとえば、受信側の信号生成部は復調回路を有し、ミリ波の信号を周波数変換して出力信号を生成し、その後、復調回路が出力信号を復調することで伝送対象の信号を生成する。原理的には、ミリ波の信号からダイレクトに伝送対象の信号に変換することも考えられる。
つまり、信号インタフェースをとるに当たり、伝送対象の信号に関して、ミリ波信号により接点レスやケーブルレスで伝送する(電気配線での伝送でない)ようにする。好ましくは、少なくとも信号伝送(特に高速伝送が要求される撮像信号や高速のマスタークロック信号)に関しては、ミリ波信号により伝送するようにする。要するに、従前は電気配線によって行なわれていた信号伝送を本実施形態ではミリ波信号により行なうものである。ミリ波帯で信号伝送を行なうことで、Gbpsオーダーの高速信号伝送を実現することができるようになるし、ミリ波信号の及ぶ範囲を容易に制限でき、この性質に起因する効果も得られる。
ここで、各信号結合部は、第1の通信部と第2の通信部がミリ波信号伝送路を介してミリ波の信号が伝送可能となるようにするものであればよい。たとえばアンテナ構造(アンテナ結合部)を備えるものとしてもよいし、アンテナ構造を具備せずに結合をとるものであってもよい。
「ミリ波の信号を伝送するミリ波信号伝送路」は、空気(いわゆる自由空間)であってもよいが、好ましくは、ミリ波信号を伝送路中に閉じ込めつつミリ波信号を伝送させる構造を持つものがよい。その性質を積極的に利用することで、たとえば電気配線のようにミリ波信号伝送路の引回しを任意に確定することができる。
このような構造のものとしては、たとえば、ミリ波信号伝送可能な誘電体素材で構成されたもの(誘電体伝送路やミリ波誘電体内伝送路と称する)や、伝送路を構成し、かつ、ミリ波信号の外部放射を抑える遮蔽材が伝送路を囲むように設けられその遮蔽材の内部が中空の中空導波路がよい。誘電体素材や遮蔽材に柔軟性を持たせることでミリ波信号伝送路の引回しが可能となる。
因みに、空気(いわゆる自由空間)の場合、各信号結合部はアンテナ構造をとることになり、そのアンテナ構造によって近距離の空間中を信号伝送することになる。一方、誘電体素材で構成されたものとする場合は、アンテナ構造をとることもできるが、そのことは必須でない。
以下、本実施形態の無線伝送システム1(無線通信部1000)の仕組みについて具体的に説明する。
第1通信装置100にはミリ波帯通信可能な半導体チップ103が設けられ、第2通信装置200にもミリ波帯通信可能な半導体チップ203が設けられている。
本実施形態では、ミリ波帯での通信の対象となる信号を、高速性や大容量性が求められる信号のみとし、その他の低速・小容量で十分なものや電源など直流と見なせる信号に関してはミリ波信号への変換対象としない。これらミリ波信号への変換対象としない信号(電源を含む)については、従前と同様の仕組みで基板間の信号の接続をとるようにする。エンドレス回転する回転構造体1001への適用を考えた場合は、固定導体と回転導体(または回転ブラシ)で構成されたスリップリング機構を利用するのが好ましい。なお、ミリ波に変換する前の元の伝送対象の電気信号を纏めてベースバンド信号と称する。
[第1通信装置]
第1通信装置100は、基板102(前述の基板1102と対応する)上に、ミリ波帯通信可能な半導体チップ103と伝送路結合部108(前述の伝送路結合部1108と対応する)が搭載されている。半導体チップ103は、LSI機能部104と信号生成部107(ミリ波信号生成部)を一体化したシステムLSI(Large Scale Integrated Circuit)である。図示しないが、LSI機能部104と信号生成部107を一体化しない構成にしてもよい。別体にした場合には、その間の信号伝送に関しては、電気配線により信号を伝送することに起因する問題が懸念されるので、一体的に作り込んだ方が好ましい。
信号生成部107と伝送路結合部108はデータの双方向性を持つ構成にする。このため、信号生成部107には送信側の信号生成部と受信側の信号生成部を設ける。伝送路結合部108は、送信側と受信側に各別に設けてもよいが、ここでは送受信に兼用されるものとする。
なお、ここで示す「双方向通信」は、ミリ波の伝送チャネルであるミリ波信号伝送路9が1系統(一芯)の一芯双方向伝送となる。この実現には、時分割多重(TDD:Time Division Duplex)を適用する半二重方式と、周波数分割多重(FDD:Frequency Division Duplex :図5A)などが適用される。
時分割多重の場合、送信と受信の分離を時分割で行なうので、第1通信装置100から第2通信装置200への信号伝送と第2通信装置200から第1通信装置100への信号伝送を同時に行なう「双方向通信の同時性(一芯同時双方向伝送)」は実現されず、一芯同時双方向伝送は、周波数分割多重で実現される。しかし、周波数分割多重は、図5A(1)に示すように、送信と受信に異なった周波数を用いるので、ミリ波信号伝送路9の伝送帯域幅を広くする必要がある。
半導体チップ103を直接に基板102上に搭載するのではなく、インターポーザ基板上に半導体チップ103を搭載し、半導体チップ103を樹脂(たとえばエポキシ樹脂など)でモールドした半導体パッケージを基板102上に搭載するようにしてもよい。すなわち、インターポーザ基板はチップ実装用の基板をなし、インターポーザ基板上に半導体チップ103が設けられる。インターポーザ基板には、一定範囲(2〜10程度)の比誘電率を有したたとえば熱強化樹脂と銅箔を組み合わせたシート部材を使用すればよい。
半導体チップ103は伝送路結合部108と接続される。伝送路結合部108は、たとえば、アンテナ結合部やアンテナ端子やマイクロストリップ線路やアンテナなどを具備するアンテナ構造が適用される。なお、アンテナをチップに直接に形成する技術を適用することで、伝送路結合部108も半導体チップ103に組み込むようにすることもできる。
LSI機能部104は、第1通信装置100の主要なアプリケーション制御を司るもので、たとえば、相手方に送信したい各種の信号を処理する回路や相手方から受信した種々の信号を処理する回路が含まれる。
信号生成部107(電気信号変換部)は、LSI機能部104からの信号をミリ波信号に変換し、ミリ波信号伝送路9を介した信号伝送制御を行なう。
具体的には、信号生成部107は、送信側信号生成部110および受信側信号生成部120を有する。送信側信号生成部110と伝送路結合部108で送信部が構成され、受信側信号生成部120と伝送路結合部108で受信部が構成される。
送信側信号生成部110は、入力信号を信号処理してミリ波の信号を生成するために、多重化処理部113、パラレルシリアル変換部114、変調部115、周波数変換部116、増幅部117を有する。なお、変調部115と周波数変換部116は纏めていわゆるダイレクトコンバーション方式のものにしてもよい。
受信側信号生成部120は、伝送路結合部108によって受信したミリ波の電気信号を信号処理して出力信号を生成するために、増幅部124、周波数変換部125、復調部126、シリアルパラレル変換部127、単一化処理部128を有する。周波数変換部125と復調部126は纏めていわゆるダイレクトコンバーション方式のものにしてもよい。
パラレルシリアル変換部114とシリアルパラレル変換部127は、本実施形態を適用しない場合に、パラレル伝送用の複数の信号を使用するパラレルインタフェース仕様のものである場合に備えられ、シリアルインタフェース仕様のものである場合は不要である。
多重化処理部113は、LSI機能部104からの信号の内で、ミリ波帯での通信の対象となる信号が複数種(Nとする)ある場合に、時分割多重、周波数分割多重、符号分割多重などの多重化処理を行なうことで、複数種の信号を1系統の信号に纏める。場合、高速性や大容量性が求められる複数種の信号をミリ波での伝送の対象として、1系統の信号に纏める。
時分割多重や符号分割多重の場合には、多重化処理部113はパラレルシリアル変換部114の前段に設けられ、1系統の信号に纏めてパラレルシリアル変換部114に供給すればよい。時分割多重の場合、複数種の信号_@(@は1〜N)について時間を細かく区切ってパラレルシリアル変換部114に供給する切替スイッチを設ければよい。
一方、周波数分割多重の場合には、各別の搬送周波数で変調してそれぞれ異なる周波数帯域F_@の範囲の周波数に変換してミリ波の信号を生成し、それら各別の搬送周波数を用いたミリ波信号を同一方向または逆方向に伝送する必要がある。このため、たとえば、図5A(2)に示すように同一方向に伝送する場合は、パラレルシリアル変換部114、変調部115、周波数変換部116、増幅部117を複数種の信号_@の別に設け、各増幅部117の後段に多重化処理部113として加算処理部を設けるとよい。そして、周波数多重処理後の周波数帯域F_1+…+F_Nのミリ波の電気信号を伝送路結合部108に供給するようにすればよい。加算処理部としては、図5A(2)に示すように各別の搬送周波数を用いたミリ波信号を同一方向に伝送する場合はいわゆる結合器を使用すればよい。
図5A(2)から分かるように、複数系統の信号を周波数分割多重で1系統に纏める周波数分割多重では伝送帯域幅を広くする必要がある。図5A(3)に示すように、複数系統の信号を周波数分割多重で1系統に纏めることと、送信と受信に異なった周波数を用いる全2重方式と併用する場合は伝送帯域幅を一層広くする必要がある。
パラレルシリアル変換部114は、パラレルの信号をシリアルのデータ信号に変換して変調部115に供給する。変調部115は、伝送対象信号を変調して周波数変換部116に供給する。変調部115としては、振幅・周波数・位相の少なくとも1つを伝送対象信号で変調するものであればよく、これらの任意の組合せの方式も採用し得る。たとえば、アナログ変調方式であれば、たとえば、振幅変調(AM:Amplitude Modulation )とベクトル変調がある。ベクトル変調として、周波数変調(FM:Frequency Modulation)と位相変調(PM:Phase Modulation)がある。デジタル変調方式であれば、たとえば、振幅遷移変調(ASK:Amplitude shift keying)、周波数遷移変調(FSK:Frequency Shift Keying)、位相遷移変調(PSK:Phase Shift Keying)、振幅と位相を変調する振幅位相変調(APSK:Amplitude Phase Shift Keying)がある。振幅位相変調としては直交振幅変調(QAM:Quadrature Amplitude Modulation )が代表的である。
周波数変換部116は、変調部115によって変調された後の伝送対象信号を周波数変換してミリ波の電気信号を生成して増幅部117に供給する。ミリ波の電気信号とは、概ね30GHz〜300GHzの範囲のある周波数の電気信号をいう。「概ね」と称したのはミリ波通信による効果が得られる程度の周波数であればよく、下限は30GHzに限定されず、上限は300GHzに限定されないことに基づく。
周波数変換部116としては様々な回路構成を採り得るが、たとえば、周波数混合回路(ミキサー回路)と局部発振器とを備えた構成を採用すればよい。局部発振器は、変調に用いる搬送波(キャリア信号、基準搬送波)を生成する。周波数混合回路は、パラレルシリアル変換部114からの信号で局部発振器が発生するミリ波帯の搬送波と乗算(変調)してミリ波帯の変調信号を生成して増幅部117に供給する。
送信側の増幅部117には、前述の第1〜第3実施形態の無線通信部1000(回転構造体1001)が接続される。増幅部117は、周波数変換後のミリ波の電気信号を増幅して伝送路結合部108に供給する。増幅部117には図示しないアンテナ端子を介して双方向の伝送路結合部108に接続される。
伝送路結合部108は、送信側信号生成部110によって生成されたミリ波の信号をミリ波信号伝送路9に送信するとともに、ミリ波信号伝送路9からミリ波の信号を受信して受信側信号生成部120に出力する。
伝送路結合部108は、アンテナ結合部で構成される。アンテナ結合部は伝送路結合部108(信号結合部)の一例またはその一部を構成する。アンテナ結合部とは、狭義的には半導体チップ内の電子回路と、チップ内またはチップ外に配置されるアンテナを結合する部分をいい、広義的には、半導体チップとミリ波信号伝送路9を信号結合する部分をいう。たとえば、アンテナ結合部は、少なくともアンテナ構造を備える。また、時分割多重で送受信を行なう場合には、伝送路結合部108にアンテナ切替部(アンテナ共用器)を設ける。
アンテナ構造は、ミリ波信号伝送路9との結合部における構造をいい、ミリ波帯の電気信号をミリ波信号伝送路9に結合させるものであればよく、アンテナそのもののみを意味するものではない。たとえば、アンテナ構造には、アンテナ端子、マイクロストリップ線路、アンテナを含み構成される。アンテナ切替部を同一のチップ内に形成する場合は、アンテナ切替部を除いたアンテナ端子とマイクロストリップ線路が伝送路結合部108を構成するようになる。
送信側のアンテナはミリ波の信号に基づく電磁波をミリ波信号伝送路9に輻射する。また、受信側のアンテナはミリ波の信号に基づく電磁波をミリ波信号伝送路9から受信する。マイクロストリップ線路は、アンテナ端子とアンテナとの間を接続し、送信側のミリ波の信号をアンテナ端子からアンテナへ伝送し、また、受信側のミリ波の信号をアンテナからアンテナ端子へ伝送する。因みに、前述の第1〜第3実施形態の無線通信部1000を適用するに当たっては、アンテナとしては、直線偏波プローブ1070や円偏波プローブ1080が使用される。
アンテナ切替部はアンテナを送受信で共用する場合に用いられる。たとえば、ミリ波の信号を相手方である第2通信装置200側に送信するときは、アンテナ切替部がアンテナを送信側信号生成部110に接続する。また、相手方である第2通信装置200側からのミリ波の信号を受信するときは、アンテナ切替部がアンテナを受信側信号生成部120に接続する。アンテナ切替部は半導体チップ103と別にして基板102上に設けているが、これに限られることはなく、半導体チップ103内に設けてもよい。送信用と受信用のアンテナを別々に設ける場合はアンテナ切替部を省略できる。
ミリ波の伝搬路であるミリ波信号伝送路9は、自由空間伝送路でもよいが、好ましくは、導波管、伝送線路、誘電体線路、誘電体内などの導波構造で構成し、ミリ波帯域の電磁波を効率よく伝送させる特性を有するものとする。たとえば、一定範囲の比誘電率と一定範囲の誘電正接を持つ誘電体素材を含んで構成された誘電体伝送路9Aにするとよい。
「一定範囲」は、誘電体素材の比誘電率や誘電正接が、本実施形態の効果を得られる程度の範囲であればよく、その限りにおいて予め決められた値のものとすればよい。つまり、誘電体素材は、本実施形態の効果が得られる程度の特性を持つミリ波を伝送可能なものであればよい。誘電体素材そのものだけで決められず伝送路長やミリ波の周波数とも関係するので必ずしも明確に定められるものではないが、一例としては、次のようにする。
誘電体伝送路9A内にミリ波の信号を高速に伝送させるためには、誘電体素材の比誘電率は2〜10(好ましくは3〜6)程度とし、その誘電正接は0.00001〜0.01(好ましくは0.00001〜0.001)程度とすることが望ましい。このような条件を満たす誘電体素材としては、たとえば、アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系、エポキシ樹脂系、シリコーン系、ポリイミド系、シアノアクリレート樹脂系からなるものが使用できる。誘電体素材の比誘電率とその誘電正接のこのような範囲は、特段の断りのない限り、本実施形態で同様である。なお、ミリ波信号を伝送路に閉じ込める構成のミリ波信号伝送路9としては、誘電体伝送路9Aの他に、伝送路の周囲が遮蔽材で囲まれその内部が中空の中空導波路としてもよい。
伝送路結合部108には受信側信号生成部120が接続される。受信側信号生成部120は、伝送路結合部108によって受信したミリ波の電気信号を信号処理して出力信号を生成するために、増幅部124、周波数変換部125、復調部126、シリアルパラレル変換部127、単一化処理部128を有する。なお、周波数変換部125と復調部126は纏めていわゆるダイレクトコンバーション方式のものにしてもよい。
受信側の増幅部124には、前述の第1〜第3実施形態の無線通信部1000(回転構造体1001)が接続される。本構成では、半導体集積回路の一例である半導体チップ203に増幅部124も含まれる。増幅部124は、伝送路結合部108に接続され、アンテナによって受信された後のミリ波の電気信号を増幅して周波数変換部125に供給する。周波数変換部125は、増幅後のミリ波の電気信号を周波数変換して周波数変換後の信号を復調部126に供給する。復調部126は、周波数変換後の信号を復調してベースバンドの信号を取得しシリアルパラレル変換部127に供給する。
シリアルパラレル変換部127は、シリアルの受信データをパラレルの出力データに変換して単一化処理部128に供給する。
単一化処理部128は、多重化処理部113と対応するもので、1系統に纏められている信号を複数種の信号_@(@は1〜N)に分離する。たとえば、1系統の信号に纏められている複数本のデータ信号を各別に分離してLSI機能部1104に供給する。
なお、周波数分割多重により1系統に纏められている場合には、周波数多重処理後の周波数帯域F_1+…+F_Nのミリ波の電気信号を受信してそれらを各別に分離して同一方向に伝送し周波数帯域F_@別に処理する必要がある。このため、図5A(2)に示すように、増幅部224、周波数変換部225、復調部226、シリアルパラレル変換部227を複数種の信号_bの別に設け、各増幅部224の前段に単一化処理部128として周波数分離部を設けるとよい。そして、分離後の各周波数帯域F_bのミリ波の電気信号を対応する周波数帯域F_bの系統に供給するようにすればよい。周波数分離部としては、図5A(2)に示すように各別の搬送周波数のミリ波信号が多重化されたものを各別に分離する場合はいわゆる分配器を使用すればよい。
なお、図5A(2)で示した周波数分割多重方式の使用形態は、送信部と受信部の組を複数用いて、かつ、それぞれの組で各別の搬送周波数を用いて同一方向に伝送する方式であるが、周波数分割多重方式の使用形態はこれに限らない。たとえば、図5において、第1通信装置100の送信側信号生成部110と第2通信装置200の受信側信号生成部220の組で第1の搬送周波数を使用し、第1通信装置100の受信側信号生成部120と第2通信装置200の送信側信号生成部210の組で第2の搬送周波数を使用し、それぞれの組が互いに逆方向に信号伝送を同時に行なう全二重の双方向通信にすることもできる。この場合、図5における伝送路結合部108,208のアンテナ切替部としては、双方への同時の信号伝送が可能ないわゆるサーキュレータを使用すればよい。
また、送信部と受信部の組をさらに多く用いて、各組ではそれぞれ異なる搬送周波数を用いて、同一方向と逆方向を組み合せる態様にしてもよい。この場合、図5A(2)において、伝送路結合部108,208にはサーキュレータを使用しつつ、多重化処理部113,213と単一化処理部128,228を使用する構成にすればよい。
このように半導体チップ103を構成すると、入力信号をパラレルシリアル変換して半導体チップ203側へ伝送し、また半導体チップ203側からの受信信号をシリアルパラレル変換することにより、ミリ波変換対象の信号数が削減される。
第1通信装置100と第2通信装置200の間の元々の信号伝送がシリアル形式の場合には、パラレルシリアル変換部114およびシリアルパラレル変換部127を設けなくてもよい。
[第2通信装置]
第2通信装置200は、概ね第1通信装置100と同様の機能構成を備える。各機能部には200番台の参照子を付し、第1通信装置100と同様・類似の機能部には第1通信装置100と同一の10番台および1番台の参照子を付す。送信側信号生成部210と伝送路結合部208で送信部が構成され、受信側信号生成部220と伝送路結合部208で受信部が構成される。
LSI機能部204は、第2通信装置200の主要なアプリケーション制御を司るもので、たとえば、相手方に送信したい各種の信号を処理する回路や相手方から受信した種々の信号を処理する回路が含まれる。
なお、回転構造体1001を電子機器内に組み込まずに無線通信部1000を具備したモジュールとして流通させる場合には、たとえば、図5Aにおいて、固定部1002側に配される第1通信装置100については、LSI機能部104と信号生成部107の間に接続コネクタ109を設けて、その部分で基板102を2つに分け(図中の点線を参照)、LSI機能部104側の基板と信号生成部107、伝送路結合部108側の基板を接続コネクタ109で接続するようにすればよい。
また、可動部1004側についても、LSI機能部204を信号生成部207、伝送路結合部208側と分離することが考えられる。すなわち、図5Aにおいて、可動部1004側に配される第2通信装置200については、LSI機能部204と信号生成部207の間に接続コネクタ209を設けて、その部分で基板202を2つに分け(図中の点線を参照)、LSI機能部204側の基板と信号生成部207、伝送路結合部208側の基板を接続コネクタ209で接続するようにすればよい。
[接続と動作]
入力信号を周波数変換して信号伝送するという手法は、放送や無線通信で一般的に用いられている。これらの用途では、α)どこまで通信できるか(熱雑音に対してのS/Nの問題)、β)反射やマルチパスにどう対応するか、γ)妨害や他チャンネルとの干渉をどう抑えるかなどの問題に対応できるような比較的複雑な送信器や受信器などが用いられている。これに対して、本実施形態で使用する信号生成部107,1207は、放送や無線通信で一般的に用いられる複雑な送信器や受信器などの使用周波数に比べて、より高い周波数帯のミリ波帯で使用され、波長λが短いため、周波数の再利用がし易く、近傍で多くのデバイス間での通信をするのに適したものが使用される。
本実施形態では、従来の電気配線を利用した信号インタフェースとは異なり、前述のようにミリ波帯で信号伝送を行なうことで高速性と大容量に柔軟に対応できるようにしている。たとえば、高速性や大容量性が求められる信号のみをミリ波帯での通信の対象としており、通信装置100,200は、低速・小容量の信号用や電源供給用に、従前の電気配線によるインタフェース(端子・コネクタによる接続)を一部に備えることになる。
信号生成部107は、LSI機能部104から入力された入力信号を信号処理してミリ波の信号を生成する。信号生成部107には、たとえば、マイクロストリップライン、ストリップライン、コプレーナライン、スロットラインなどの伝送線路で伝送路結合部108に接続され、生成されたミリ波の信号が伝送路結合部108を介してミリ波信号伝送路9に供給される。
伝送路結合部108は、アンテナ構造を有し、伝送されたミリ波の信号を電磁波に変換し、電磁波を送出する機能を有する。伝送路結合部108はミリ波信号伝送路9と結合されており、ミリ波信号伝送路9の一方の端部に伝送路結合部108で変換された電磁波が供給される。ミリ波信号伝送路9の他端には第2通信装置200側の伝送路結合部208が結合されている。ミリ波信号伝送路9を第1通信装置100側の伝送路結合部108と第2通信装置200側の伝送路結合部208の間に設けることにより、ミリ波信号伝送路9にはミリ波帯の電磁波が伝搬するようになる。
ミリ波信号伝送路9には第2通信装置200側の伝送路結合部208が結合されている。伝送路結合部208は、ミリ波信号伝送路9の他端に伝送された電磁波を受信し、ミリ波の信号に変換して信号生成部207(ベースバンド信号生成部)に供給する。信号生成部207は、変換されたミリ波の信号を信号処理して出力信号(ベースバンド信号)を生成しLSI機能部204へ供給する。
ここでは第1通信装置100から第2通信装置200への信号伝送の場合で説明したが、第2通信装置200のLSI機能部204からの信号を第1通信装置100へ伝送する場合も同様に考えればよく双方向にミリ波の信号を伝送できる。
ここで、電気配線を介して信号伝送を行なう信号伝送システムでは、次のような問題がある。
i)伝送データの大容量・高速化が求められるが、電気配線の伝送速度・伝送容量には限界がある。
ii)伝送データの高速化の問題に対応するため、配線数を増やして、信号の並列化により一信号線当たりの伝送速度を落とすことが考えられる。しかしながら、この対処では、入出力端子の増大に繋がってしまう。その結果、プリント基板やケーブル配線の複雑化、コネクタ部や電気的インタフェースの物理サイズの増大などが求められ、それらの形状が複雑化し、これらの信頼性が低下し、コストが増大するなどの問題が起こる。
iii)映画映像やコンピュータ画像等の情報量の膨大化に伴い、ベースバンド信号の帯域が広くなるに従って、EMC(電磁環境適合性)の問題がより顕在化してくる。たとえば、電気配線を用いた場合は、配線がアンテナとなって、アンテナの同調周波数に対応した信号が干渉される。また、配線のインピーダンスの不整合などによる反射や共振によるものも不要輻射の原因となる。共振や反射があると、それは放射を伴い易く、EMI(電磁誘導障害)の問題も深刻となる。このような問題を対策するために、電子機器の構成が複雑化する。
iv)EMCやEMIの他に、反射があると受信側でシンボル間での干渉による伝送エラーや妨害の飛び込みによる伝送エラーも問題となってくる。
これに対して、本実施形態の無線伝送システム1は、電気配線ではなくミリ波で信号伝送を行なうようにしている。LSI機能部104からLSI機能部204に対する信号は、ミリ波信号に変換され、ミリ波信号は伝送路結合部108,208間をミリ波信号伝送路9を介して伝送する。
無線伝送のため、配線形状やコネクタの位置を気にする必要がないため、レイアウトに対する制限があまり発生しない。ミリ波による信号伝送に置き換えた信号については配線や端子を割愛できるので、EMCやEMIの問題から解消される。一般に、通信装置100,200内部で他にミリ波帯の周波数を使用している機能部は存在しないため、EMCやEMIの対策が容易に実現できる。
第1通信装置100と第2通信装置200を近接した状態での無線伝送であり、固定位置間や既知の位置関係の信号伝送であるため、次のような利点が得られる。
1)送信側と受信側の間の伝搬チャネル(導波構造)を適正に設計することが容易である。
2)送信側と受信側を封止する伝送路結合部の誘電体構造と伝搬チャネル(ミリ波信号伝送路9の導波構造)を併せて設計することで、自由空間伝送より、信頼性の高い良好な伝送が可能になる。
3)無線伝送を管理するコントローラ(本例ではLSI機能部104)の制御も一般の無線通信のように動的にアダプティブに頻繁に行なう必要はないため、制御によるオーバーヘッドを一般の無線通信に比べて小さくすることができる。その結果、小型、低消費電力、高速化が可能になる。
4)製造時や設計時に無線伝送環境を校正し、個体のばらつきなどを把握すれば、そのデータを参照して伝送することでより高品位の通信が可能になる。
5)反射が存在していても、固定の反射であるので、小さい等化器で容易にその影響を受信側で除去できる。等化器の設定も、プリセットや静的な制御で可能であり、実現が容易である。
また、ミリ波通信であることで、次のような利点が得られる。
a)ミリ波通信は通信帯域を広く取れるため、データレートを大きくとることが簡単にできる。
b)伝送に使う周波数が他のベースバンド信号処理の周波数から離すことができ、ミリ波とベースバンド信号の周波数の干渉が起こり難い。
c)ミリ波帯は波長が短いため、波長に応じてきまるアンテナや導波構造を小さくできる。加えて、距離減衰が大きく回折も少ないため電磁シールドが行ない易い。
d)通常の野外での無線通信では、搬送波の安定度については、干渉などを防ぐため、厳しい規制がある。そのような安定度の高い搬送波を実現するためには、高い安定度の外部周波数基準部品と逓倍回路やPLL(位相同期ループ回路)などが用いられ、回路規模が大きくなる。しかしながら、ミリ波では(特に固定位置間や既知の位置関係の信号伝送との併用時は)、ミリ波は容易に遮蔽でき、外部に漏れないようにでき、安定度の低い搬送波を伝送に使用することができ、回路規模の増大を抑えることができる。安定度を緩めた搬送波で伝送された信号を受信側で小さい回路で復調するのには、注入同期方式を採用するのが好適である。
なお、本実施形態では、第1〜第3実施形態の無線通信部1000を回転構造体1001に対して適用する無線伝送システムの一例として、ミリ波帯で通信を行なうシステムを例示したが、その適用範囲はミリ波帯で通信を行なうものに限定されない。ミリ波帯を下回る周波数帯や、逆にミリ波帯を超える周波数帯での通信を回転構造体1001に対して適用してもよい。たとえばマイクロ波帯を適用してもよい。
<通信処理系統:変調および復調>
図6は、送信側に設けられる変調機能部8300(変調部115,215と周波数変換部116,216)と受信側に設けられる復調機能部8400(周波数変換部125,225,と復調部126,226)の基本構成例を説明する図である。
[変調機能部:基本構成]
図6(1)には、送信側に設けられる変調機能部8300の基本構成例が示されている。伝送対象の信号(たとえば12ビットの画像信号)はパラレルシリアル変換部8114により、高速なシリアル・データ系列に変換され変調機能部8300に供給される。
変調機能部8300としては、変調方式に応じて様々な回路構成を採り得るが、たとえば、振幅や位相を変調する方式であれば、周波数混合回路8302(ミキサー回路)と送信側局部発振器8304を備えた構成を採用すればよい。
送信側局部発振器8304は、変調に用いる搬送波(キャリア信号、基準搬送信号)を生成する。周波数混合回路8302は、パラレルシリアル変換部8114(パラレルシリアル変換部114と対応)からの信号で送信側局部発振器8304が発生するミリ波帯の搬送波と乗算(変調)してミリ波帯の変調信号を生成して増幅部8117(増幅部117と対応)に供給する。変調信号は増幅部8117で増幅されアンテナ8136(前例の直線偏波プローブ1070や円偏波プローブ1080)から放射される。
[復調機能部:基本構成1]
図6(2)には、受信側に設けられる復調機能部8400の第1例の基本構成が示されている。復調機能部8400は、送信側の変調方式に応じた範囲で様々な回路構成を採用し得るが、ここでは、変調機能部8300の前記の説明と対応するように、振幅や位相が変調されている方式の場合で説明する。
第1例の復調機能部8400_1では、2入力型の周波数混合回路8402(ミキサー回路)を備え、受信したミリ波信号(の包絡線)振幅の二乗に比例した検波出力を得る自乗検波回路を用いる。図示した例では、周波数混合回路8402の後段にフィルタ処理部8410とクロック再生回路8420(CDR:クロック・データ・リカバリ /Clock Data Recovery)とシリアルパラレル変換部8127(シリアルパラレル変換部127と対応)が設けられている。フィルタ処理部8410には、たとえば低域通過フィルタ(LPF)が設けられる。
アンテナ8236(前例の直線偏波プローブ1070や円偏波プローブ1080)で受信されたミリ波受信信号は可変ゲイン型の増幅部8224(増幅部224と対応)に入力され振幅調整が行なわれた後に復調機能部8400_1に供給される。振幅調整された受信信号は周波数混合回路8402の2つの入力端子に同時に入力され自乗信号が生成され、フィルタ処理部8410に供給される。周波数混合回路8402で生成された自乗信号は、フィルタ処理部8410の低域通過フィルタで高域成分が除去されることで送信側から送られてきた入力信号の波形(ベースバンド信号)が生成され、クロック再生回路8420に供給される。
クロック再生回路8420は、このベースバンド信号を元にサンプリング・クロックを再生し、再生したサンプリング・クロックでベースバンド信号をサンプリングすることで受信データ系列を生成する。生成された受信データ系列はシリアルパラレル変換部8227に供給され、パラレル信号(たとえば12ビットの画像信号)が再生される。クロック再生の方式としては様々な方式があるがたとえばシンボル同期方式を採用する。
[復調機能部:基本構成2]
図6(3)には、受信側に設けられる復調機能部8400の第2例の基本構成が示されている。第2例は、注入同期方式を採用する点に特徴がある。
周波数分割多重方式により多チャンネル化を実現する場合、第1例の自乗検波回路を用いる方式では、次のような難点がある。先ず、第1例の自乗検波回路を使用して多チャンネル化では、受信側の周波数選択のためのバンドパスフィルタを自乗検波回路の前段に配置する必要があるが、急峻なバンドパスフィルタを小型に実現するのは容易ではない。また、第1例の自乗検波回路は、感度的に不利である。
また、発振回路については、次のような難点がある。たとえば、野外通信における多チャンネル化では、搬送波の周波数変動成分の影響を受けるため、送信側の搬送波の安定度についても要求仕様が厳しい。ミリ波でデータを伝送するに当たり、送信側と受信側に、屋外の無線通信で用いられているような通常の手法を用いようとすると、搬送波に安定度が要求され、周波数安定度数がppm(parts per million )オーダー程度の安定度の高いミリ波の発振器が必要となる。安定度の高いミリ波の発振器をシリコン集積回路(CMOS:Complementary Metal-oxide Semiconductor )上に実現しようとした場合、通常のCMOSで使われるシリコン基板は絶縁性が低いため、容易にQの高いタンク回路が形成できず、実現が容易でない。たとえば、CMOSチップ上のインダクタンスを形成した場合、そのQは30〜40程度になってしまう。
したがって、通常、無線通信で要求されるような安定度の高い発振器を実現するには、発振回路が構成されているCMOS外部に水晶振動子などで高いQのタンク回路を設けて低い周波数で発振させ、その発振出力を逓倍してミリ波帯域へ上げるという手法を採らざるを得ない。しかし、LVDS(Low Voltage Differential Signaling)などの配線による信号伝送をミリ波による信号伝送に置き換える機能を実現するのに、このような外部タンクを全てのチップに設けることは好ましくない。
OOK(On-Off-Keying )のような変調方式を用いれば、受信側では包絡線検波をすればよいので、発振器が不要になりタンク回路の数を減らすことはできるが、信号の伝送距離が長くなると信号歪みが影響してくるので不利である。筐体内で複数の独立な通信を自由に実現するための、多チャネル化や全二重双方向化が困難、変調信号を直交化してデータ伝送レートを上げることが難しい、などの問題もある。
また、搬送波の周波数変動を許容することを考えた場合、実態としては、変調方式は周波数変動の影響を無視できるような振幅を変調する方式(たとえばOOKなどのASK)に限られ、位相や周波数を変調する方式の採用が困難となる。
このような問題に対する対処として、第2例の復調機能部8400_2は、注入同期(インジェクションロック)方式を採用する。注入同期方式にする場合には、好ましくは、変調対象信号に対してDC(直流)を含む低域成分を抑圧(カット)をしてから変調することで、搬送周波数近傍に変調信号成分が存在しないようにし、受信側での注入同期がし易くなるようにしておくのが望ましい。たとえば、アナログ変調方式では変調対象信号に対してハイパスフィルタ処理(またはバンドパスフィルタ処理)をしておくのがよく、デジタル変調方式では8−9変換符号や8−10変換符号などのDCフリー符号化を行なうとよい。
また、送信側からミリ波帯に変調された信号と合わせて、変調に使用した搬送信号と対応する受信側での注入同期の基準として使用される基準搬送信号も送出するのが望ましい。周波数混合回路8302でミリ波帯に変調された変調信号のみを送出することも考えられるが、受信側で注入同期がとれるか否かは、DCフリー処理を行なっているか否かや注入レベルや変調方式やデータレートや搬送周波数なども関係し、適用範囲に制限がある。たとえば、参考文献2には、PSK方式で変調された変調信号そのものを注入同期に使用する例が開示されている。
参考文献2:Tarar, M.A.; Zhizhang Chen、“A Direct Down-Conversion Receiver for Coherent Extraction of Digital Baseband Signals Using the Injection Locked Oscillators”、Radio and Wireless Symposium, 2008 IEEE、Volume , Issue , 22-24 Jan. 2008 、pp57〜60
基準搬送信号は、典型的には変調に使用した搬送信号そのものであるが、これに限定されず、たとえば変調に使用した搬送信号と同期した別周波数の信号(たとえば高調波信号)でもよい。変調方式や変調回路によっては、変調回路の出力そのものに搬送信号が含まれる場合(たとえば標準的な振幅変調やASKなど)と、搬送波を抑圧する場合(搬送波抑圧方式の振幅変調やASKやPSKなど)がある。変調回路の出力そのものに搬送信号が含まれる場合には、基準搬送信号をさらに受信側に送る必要はないが、変調回路の出力そのものには搬送信号を含まない方式の場合には、「基準搬送信号も送る」という操作を行なうのが望ましい。
受信器側では、受信側局部発振器8404を設け、送られてきた基準搬送信号成分を受信側局部発振器8404に注入同期させ、この出力信号(発振出力信号)を用いて送られてきたミリ波変調信号を周波数混合回路8402で復調し、伝送対象信号を復元する。たとえば、受信信号は受信側局部発振器8404に入力され基準搬送信号との同期が行なわれる。基準搬送信号と受信信号は周波数混合回路8402に入力され乗算信号が生成される。この乗算信号はフィルタ処理部8410で高域成分の除去が行なわれることで送信側から送られてきた入力信号の波形(ベースバンド信号)が得られる。以下、第1例と同様である。
このように注入同期を利用することにより、受信側の受信側局部発振器8404はQの低いものでもよく、また、送信側の基準搬送信号の安定度についても要求仕様を緩めることができるため、より高い搬送周波数でも、簡潔に受信機能を実現し得るようになる。受信側局部発振器8404により送信側の基準搬送波に同期した信号を再生して周波数混合回路8402に供給し同期検波を行なうので、図示のように、周波数混合回路8402の前段にバンドパスフィルタ(周波数選択フィルタ)を設けなくてもよくなる。
また、受信器側では、CMOS構成の半導体チップの外部にタンク回路を用いることなく、半導体チップ上にタンク回路を設けて受信側局部発振器8404を構成することができる。送信側から送られてきた基準搬送信号成分を受信側局部発振器8404に供給して注入同期させて得られる出力信号を用いて、送られてきたミリ波変調信号を復調し、送信された入力信号を復元することができる。
以下、第1通信装置100側から第2通信装置200側へミリ波信号を伝送する場合において、注入同期方式を採用する場合の送信側(送信側信号生成部110)と受信側(受信側信号生成部220)の詳細について説明する。
[注入同期方式:送信側の構成例]
図7は、注入同期方式を適用する送信器側(送信側信号生成部110)の構成例を説明する図である。以下では、デジタル変調方式を適用する場合で説明する。なお、変調機能部8300には、第1例では参照子“_1”を付し、第2例では参照子“_2”を付し、両者を区別せずに説明するときには参照子を省略する。
送信側信号生成部110は、図示しないパラレルシリアル変換部8114と変調機能部8300の間に、エンコード部8322、マルチプレクサ部8324、波形整形部8326を備える。これらの機能部を備えることは必須ではなく、それらの機能を必要とする場合に設ければよい。
送信側信号生成部110は、各機能部を制御するコントローラ部8340を備える。コントローラ部8340を備えることは必須ではないが、最近の様々なシステムではこの機能はしばしばCMOSチップ上や基板上に存在する。コントローラ部8340は、エンコードやマルチプレクスの設定、波形整形の設定、変調モードの設定、発振周波数の設定、基準搬送信号の位相や振幅の設定、増幅部8117の利得および周波数特性の設定、アンテナの特性の設定、などの機能を持つ。各設定情報は対応する機能部へ供給される。
エンコード部8322は、コントローラ部8340からのエンコード(Encode)パターンの設定情報に基づいて、図示しないパラレルシリアル変換部8114によりシリアル化されたデータに対してエラー訂正などのコーディング処理を行なう。このとき、エンコード部8322は、8−9変換符号や8−10変換符号などのDCフリー符号化を適用して、搬送周波数近傍に変調信号成分が存在しないようにし、受信側での注入同期がし易くなるようにしておく。
マルチプレクサ部8324は、データをパケット化する。受信器側の注入同期検出部が既知パターンの相関で注入同期の検出を行なう構成の場合は、マルチプレクサ部8324は、コントローラ部8340からの同期検出用パケットの設定情報に基づいて、既知の信号波形や既知のデータパターン(たとえば擬似ランダム信号:PN信号)を定期的に挿入しておく。
波形整形部8326は、コントローラ部8340からの波形整形の設定情報に基づいて、周波数特性補正、プリエンファシス、帯域制限などの波形整形処理を行なう。
変調機能部8300は、周波数混合回路8302(変調回路)と送信側局部発振器8304(送信側発振器)の他に、位相振幅調整回路8306と信号合成回路8308を備える。図7(1)に示す第1例では、送信側局部発振器8304は、CMOSチップ上のタンク回路を用いてCMOSチップ上で、変調に用いる基準搬送信号を生成する。
なお、図7(2)に示す第2例は、第1通信装置100に、基準として使えるクロック信号が存在する場合の構成例であり、変調機能部8300_2は、送信側局部発振器8304の前段に逓倍回路8303を備えている。逓倍回路8303は、図示しないクロック信号生成部から供給される「基準として使えるクロック信号」を逓倍し、その逓倍信号を送信側局部発振器8304に供給する。第2例の送信側局部発振器8304は、同期発振回路であり、逓倍信号に同期して、変調に用いる基準搬送信号を生成する。
周波数混合回路8302は、送信側局部発振器8304で生成された基準搬送信号を、波形整形部8326からの処理済入力信号で変調して増幅部8117に供給する。位相振幅調整回路8306は、コントローラ部8340からの位相・振幅の設定情報に基づいて、送信される基準搬送信号の位相と振幅を設定する。
信号合成回路8308は、アンテナ8136,8236がそれぞれ1つの場合に、ミリ波帯に変調された変調信号と合わせて基準搬送信号を受信側に送るために設けられている。周波数混合回路8302で生成された変調信号と送信側局部発振器8304で生成された基準搬送信号を各別のアンテナで伝送する構成にする場合には信号合成回路8308は不要である。
信号合成回路8308は、ミリ波帯に変調された信号と合わせて基準搬送信号も受信側に送出する場合に、周波数混合回路8302によりミリ波帯に変調された変調信号と位相振幅調整回路8306からの基準搬送信号を合成処理してから増幅部8117に渡す。周波数混合回路8302によりミリ波帯に変調された変調信号のみを受信側に送出する場合には、信号合成回路8308は、合成処理を行なわずに、周波数混合回路8302によりミリ波帯に変調された変調信号のみを増幅部8117に渡す。増幅部8117は、信号合成回路8308から受け取ったミリ波信号に対して、必要に応じて送信出力の振幅や周波数特性を調整してアンテナ8136(前例の直線偏波プローブ1070や円偏波プローブ1080)に供給する。アンテナ8136は、ミリ波信号(変調信号や基準搬送信号)を導波管1012,1014を介して受信側に伝送する。
前述の説明から理解されるように、ミリ波帯に変調された信号と合わせて基準搬送信号も受信側に送出する場合に、信号合成回路8308を機能させるか否かは変調方式や周波数混合回路8302の回路構成にも関係する。変調方式や周波数混合回路8302の回路構成によっては信号合成回路8308を機能させなくてもミリ波帯に変調された信号と合わせて基準搬送信号も受信側に送出することは可能である。
振幅変調やASKにおいて周波数混合回路8302を積極的に搬送波抑圧方式の変調回路にして、その出力と合わせて送信側局部発振器8304で生成された基準搬送信号も送るようにしてもよい。この場合、変調に使用した搬送信号の高調波を基準搬送信号に使用することができるし、変調信号と基準搬送信号の振幅を各別に調整できる。すなわち、増幅部8117では変調信号の振幅に着目した利得調整を行ない、このときに同時に基準搬送信号の振幅も調整されるが、注入同期との関係で好ましい振幅となるように位相振幅調整回路8306で基準搬送信号の振幅のみを調整するようにすることができる。
[注入同期方式:受信側の構成例]
図8は、注入同期方式を適用する受信器側(受信側信号生成部220)の構成例を説明する図である。
受信側信号生成部220は、各機能部を制御するコントローラ部8440を備える。コントローラ部8440を備えることは必須ではないが、コントローラ部8340と同様に、最近の様々なシステムではこの機能はしばしばCMOSチップ上や基板上に存在する。コントローラ部8440は、増幅部8224の利得および周波数特性の設定、受信した基準搬送信号の位相や振幅の設定、発振周波数の設定、変調モードの設定、フィルタおよび等化の設定、コーディングおよびマルチプレクスの設定などの機能を持つ。各設定情報は対応する機能部へ供給される。
復調機能部8400は、周波数混合回路8402(復調回路)と受信側局部発振器8404(受信側発振器)の他に位相振幅調整回路8406と直流成分抑制回路8407と注入同期検出回路8408を備える。
なお、受信側局部発振器8404への注入信号側に(たとえば位相振幅調整回路8406の前段に)基準搬送信号成分のみを抽出する回路(バンドパスフィルタ回路など)を配置することも考えられる。こうすることで、受信したミリ波信号から変調信号成分と基準搬送信号成分が分離され、基準搬送信号成分のみが受信側局部発振器8404に供給されるようになり注入同期がとり易くなる。
位相振幅調整回路8406は、コントローラ部8440からの位相・振幅の設定情報に基づいて、受信した基準搬送信号の位相と振幅を設定する。図では、受信側局部発振器8404への注入信号入力端側に位相振幅調整回路8406を配置する構成で示しているが、受信側局部発振器8404と周波数混合回路8402の信号系路上に位相振幅調整回路8406を配置する構成にしてもよいし、その両者を併用する構成にしてもよい。
直流成分抑制回路8407は、周波数混合回路8402の出力に含まれる不要な直流成分(直流オフセット成分)を抑制する。たとえば、変調信号と合わせて基準搬送信号も送信側から受信側に伝送する場合、変調信号と基準搬送信号の位相関係によっては、直流オフセット成分が大きく発生する場合がある。その直流オフセット成分を除去するのに直流成分抑制回路8407が機能する。
注入同期検出回路8408は、周波数混合回路8402で取得されたベースバンド信号に基づき注入同期の状態を判定し、その判定結果をコントローラ部8440に通知する。図では、直流成分抑制回路8407の出力信号を検知する構成で示しているが、直流成分抑制回路8407の入力側を検知する構成にしてもよい。
「注入同期の状態」とは、受信側局部発振器8404から出力される再生された基準搬送信号(再生基準搬送信号と称する)が送信側の基準搬送信号(送信基準搬送信号と称する)に同期したか否かである。送信基準搬送信号と再生基準搬送信号が同期したことを「注入同期がとれた」とも称する。
注入同期がとれるように、受信側信号生成部120は、送信側局部発振器8304の自走発振周波数、受信側局部発振器8404への受信信号の注入振幅や注入位相の少なくとも1つを制御する。何れを制御するかは、受信側局部発振器8404の回路構成に依存し、必ずしもその全ての要素を制御しなければならないというものではない。
たとえば、コントローラ部8440は、注入同期がとれるように、注入同期検出回路8408の検出結果と連動して、受信側局部発振器8404の自走発振周波数を制御し、位相振幅調整回路8406を介して受信側局部発振器8404への受信信号の注入振幅と注入位相を制御する。
たとえば、先ず、送信側からミリ波信号伝送路9(導波管1012,1014)を介して送られたミリ波信号(変調信号や基準搬送信号)はアンテナ8236を経て増幅部8224で増幅される。増幅されたミリ波信号の一部は、位相振幅調整回路8406で振幅と位相が調整された後に受信側局部発振器8404に注入される。周波数混合回路8402では、増幅部8224からのミリ波信号を受信側局部発振器8404からの出力信号(再生基準搬送信号)でベースバンド信号へ周波数変換する。変換されたベースバンド信号の一部は注入同期検出回路8408に入力され、受信側局部発振器8404が送信側の基準搬送信号に同期したか否かを判断するための情報が注入同期検出回路8408により取得されコントローラ部8440に通知される。
入力信号のシンボル時間(T)は、たとえば変調方式がOOKを適用するASK(BPSKでも同様)の場合は1/(2Δfomax)より余裕をもって短くなけれればならない。ここでΔfomaxは受信側局部発振器8404の最大引込み周波数範囲幅である。もし、シンボル時間(T)より長い場合、受信側局部発振器8404は、増幅モードとして動作し、復調に必要な基準搬送信号成分を充分に出力できなくなる。このように短いシンボル時間のほうがよいということは、高速なデータ転送を目指している本実施形態の用途においては都合がよい。
引込み周波数範囲は、受信側局部発振器8404への注入電圧をVi、自走発振電圧をVo、自走発振周波数fo、タンク回路のQ値から、式(A)のように表わすことができる。したがって、入力電圧Viを制御することにより Δfomaxは制御できる。
Δfomax=fo/(2*Q)* Vi/Vo)*1/sqrt(1−(Vi/Vo)^2)…(A)
コントローラ部8440は、注入同期検出回路8408からの「注入同期の状態」の情報に基づいて、同期したかどうかの判定を、次の2つの手法の何れか、またはそれらの併用で行なう。
1)受信側では復元された波形と既知の信号波形や既知のデータパターンとの相関をとり、強い相関が得られたとき同期したと判断する。
2)受信側で復調したベースバンド信号の直流成分を監視(モニタ)し、直流成分が安定したとき、同期したと判断する。
前記の1)や2)の仕組みについては様々な手法が考えられるが、ここではその詳細については説明を割愛する。
コントローラ部8440は、同期がとれていないと判断した場合は、予め決められた手順に従い、送信側で変調に使用した搬送周波数信号と受信側局部発振器8404から出力される発振出力信号の同期がとれるように、受信側局部発振器8404への発振周波数の設定情報や位相振幅調整回路8406への振幅および位相の設定情報を変更する。この後、コントローラ部8440は、再度、注入同期状態を判定するという手順を良好な同期がとれるまで繰り返す。この方式は、ミリ波信号(特に基準搬送信号成分)をある程度の強度で伝送しておかないと受信側で注入同期がとれないという事態に陥るので、消費電力や干渉耐性の面で難点があるが、受信側だけで対処することができる利点がある。
また、受信側だけでの対応に限らず、送信側に制御情報を送って、送信側の送信側局部発振器8304の発振周波数(つまり基準搬送信号の周波数)やミリ波の送信振幅(特に基準搬送信号の送信振幅)や基準搬送信号の位相を調整するようにしてもよい。受信側から送信側への制御情報の伝送はミリ波で行なうことは必須ではなく、有線・無線を問わず任意の方式でよい。送信側を制御する方式では、受信側から送信側への制御情報の伝送が必要になるものの、受信側で注入同期がとれる最低限の電力でミリ波を伝送でき消費電力を低減できる、干渉耐性が向上するなどの利点がある。
受信側局部発振器8404の注入同期が正しく行なわれ周波数混合回路8402で周波数変換されたベースバンド信号はフィルタ処理部8410へ供給される。フィルタ処理部8410には、低域通過フィルタ8412の他に等化器8414が設けられている。等化器8414は、たとえば符号間干渉を低減させるため、受信した信号の高周波帯域に、低下した分の利得を加えるイコライザ(つまり波形等化)フィルタを有する。
ベースバンド信号は低域通過フィルタ8412で高域成分が除去され、等化器8414により高域成分が補正される。
クロック再生回路8420は、シンボル同期回路8422、デコード部8424、デマルチプレクサ部8426を有する。デコード部8424はエンコード部8322に対応するものであり、デマルチプレクサ部8426はマルチプレクサ部8324に対応するものであり、それぞれ送信側とは逆の処理を行なう。クロック再生回路8420は、シンボル同期回路8422でシンボル同期した後、コントローラ部8440からのコーディング(Coding)パターンの設定情報およびマルチプレクスの設定に基づいて、元の入力信号を復元する。
CMOSは微細化が今後さらに進み、その動作周波数はさらに上昇する。より高帯域で小型の伝送システムを実現するには、高い搬送周波を使うことが望まれる。本例の注入同期方式は、発振周波数安定度についての要求仕様を緩めることができるため、より高い搬送周波数を容易に用いることができる。注入同期される側の受信側局部発振器8404は式(A)より明らかなように、送信側の変動に追従できるような低いQであることが必要である。これはCMOS上で受信側局部発振器8404を形成する場合に都合がよい。
<通信処理系統:第1適用例>
図9は、本実施形態の無線伝送システム1の第1適用例を説明する図である。固定部1002と可動部1004の何れか一方を送信側とし他方を受信側とし、同一方向に伝送する場合に、送信側にはN組(Nは2以上の正の整数)の送信部を配置し、受信側にもN組の受信部を配置し、送信部と受信部の組で各別の搬送周波数を用いる構成である。
図は、固定部1002を送信側とし可動部1004を受信側とし、N=2とする場合で示している。送信部と受信部はそれぞれ前述の注入同期方式を適用するものとする。
たとえば、固定部1002には第1通信装置100(第1および第2の送信側信号生成部110_1,110_2)を配置し、可動部1004には第2通信装置200(第1および第2の受信側信号生成部220_1,220_2)を配置する。第1の送信側信号生成部110_1と第1の受信側信号生成部220_1の組では第1の搬送周波数f1を使用し、第2の送信側信号生成部110_2と第2の受信側信号生成部220_2の組では第2の搬送周波数f2(≠f1)を使用するものとする。伝送路結合部108,208のアンテナとしては、たとえば円偏波プローブ1080を使用するものとする。
各送信側信号生成部110_1,110_2で生成された搬送周波数f1,f2のミリ波信号は多重化処理部113の一例である結合器で1系統に纏められ、伝送路結合部108の円偏波プローブ1080を介して円偏波にて導波管1012,1014内に伝送される。受信側の円偏波プローブ1080は、導波管1012,1014内の円偏波のミリ波信号を受信し単一化処理部228の一例である分配器で2系統に分離し、各受信側信号生成部220_1,220_2に供給する。受信側信号生成部220_1は送信側信号生成部110_1が変調に使用した搬送周波数f1に注入同期した再生搬送信号を生成し受信したミリ波信号を復調し、受信側信号生成部220_2は送信側信号生成部110_2が変調に使用した搬送周波数f2に注入同期した再生搬送信号を生成し受信したミリ波信号を復調する。
第1適用例では、このような仕組みにより、2組の搬送周波数f1,f2を用いて、同一方向にそれぞれ異なる信号を伝送する周波数分割多重伝送を干渉問題を起すことなく実現できる。
<通信処理系統:第2適用例>
図9Aは、本実施形態の無線伝送システム1の第2適用例を説明する図である。固定部1002と可動部1004のそれぞれに送信部と受信部を配置し、送信部と受信部の組で各別の搬送周波数を用いて、全二重の双方向通信を行なう構成である。
図は、固定部1002と可動部1004のそれぞれに1つずつの送信部と受信部を配置する場合で示している。送信部と受信部はそれぞれ前述の注入同期方式を適用するものとする。
たとえば、固定部1002には第1通信装置100(送信側信号生成部110と受信側信号生成部120)を配置し、可動部1004には第2通信装置200(送信側信号生成部210と受信側信号生成部220)を配置する。そして、全二重の双方向伝送を可能とするべく、信号伝送する送信部と受信部の組ごとに別の周波数を基準搬送信号として割り当てる。たとえば、送信側信号生成部110と受信側信号生成部220の組では第1の搬送周波数f1を使用し、送信側信号生成部210と受信側信号生成部120の組では第2の搬送周波数f2(≠f1)を使用するものとする。伝送路結合部108,208のアンテナとしては、たとえば円偏波プローブ1080を使用するものとする。
固定部1002側の送信側信号生成部110で生成された搬送周波数f1のミリ波信号は伝送路結合部108のアンテナ切替部の一例であるサーキュレータを介して円偏波プローブ1080_1に伝達され、円偏波にて導波管1012,1014内に伝送される。受信側である可動部1004側の円偏波プローブ1080_2は、導波管1012,1014内の円偏波のミリ波信号を受信し伝送路結合部208のアンテナ切替部の一例であるサーキュレータを介して受信側信号生成部220に供給する。受信側信号生成部220は送信側信号生成部110が変調に使用した搬送周波数f1に注入同期した再生搬送信号を生成し受信したミリ波信号を復調する。
逆に、可動部1004側の送信側信号生成部210で生成された搬送周波数f2のミリ波信号は伝送路結合部208のアンテナ切替部の一例であるサーキュレータを介して円偏波プローブ1080_2に伝達され、円偏波にて導波管1012,1014内に伝送される。受信側である固定部1002側の円偏波プローブ1080_1は、導波管1012,1014内の円偏波のミリ波信号を受信し伝送路結合部108のアンテナ切替部の一例であるサーキュレータを介して受信側信号生成部120に供給する。受信側信号生成部120は送信側信号生成部210が変調に使用した搬送周波数f2に注入同期した再生搬送信号を生成し受信したミリ波信号を復調する。
第2適用例では、このような仕組みにより、2組の搬送周波数f1,f2を用いた周波数分割多重の適用において、互いに逆方向にそれぞれ異なる信号を伝送する全2重の双方向通信を干渉問題を起すことなく実現できる。
<回転構造体が適用される電子機器>
前述した回転構造体1001に適用される無線通信部1000は、無線通信部1000を備えた回転構造体1001(モジュールの形態:回転駆動部1060を含んでいてもよい)として流通され得るし、さらに、回転構造体1001を具備する電子機器に実装された商品形態でも流通され得る。以下に、そのような電子機器の製品例の幾つかについて説明する。
[第1の製品例]
図10は、回転構造体1001が適用される電子機器の第1の製品例を説明する図である。第1の製品例は監視カメラへの適用例である。図10(1)に示すように、監視カメラ2000は、固定部2002(固定部1002と対応)と可動部2004(可動部1004と対応)を具備した回転構造体1001のものである。固定部2002は、たとえば、天井2003(または壁)などに固定される。可動部2004は、筐体2008の一部に設けられた開口部分に撮像モジュール2050が設けられている。
図10(2)に示すように、可動部2004は、透明または半透明のガラスや樹脂などで構成されたドーム形状の保護カバー2009で覆われて使用される。保護カバー2009は、固定部2002に固定されている。可動部2004の筐体2008は、固定部2002と結合軸2010で回転自在に結合されている。具体的には、筐体2008は、ベアリング2012を介して結合軸2010と結合し、回転駆動部2060(回転駆動部1060と対応)によりエンドレス旋回(無限軌道旋回)が可能に構成されている。
監視カメラ2000は、たとえば、不特定多数の人が出入りする、公共の建物や場所、病院、銀行、スーパなどの店舗、ダム、基地、飛行場などの立入り禁止区域などへの侵入者や侵入物体を監視する目的で設けられ、たとえば、遠隔監視システムに導入される。
監視カメラ2000は、広範囲な監視範囲を設定する目的のために、その視野範囲を広範囲に変化させるために、可動部2004を利用して、撮像モジュール2050を、パン方向(水平方向)、チルト方向(仰角方向)に駆動される。特に、本構成では、パン方向には、無限軌道旋回(エンドレス回転)を取り入れることで、広範囲な監視範囲をカバーするように構成されている。
撮像モジュール2050は、撮像レンズ部2052と、CCDやCMOSなどを撮像デバイスとして使用した撮像部2054を有する。撮像レンズ部2110には、好ましくはズーム機構が設けられる。
固定部2002の筐体2006内には、無線通信部2100、信号処理部2110、電源部2120が設けられている。図5との関係では、無線通信部2100は、信号生成部107および伝送路結合部108に対応し、信号処理部2110はLSI機能部104に対応する。信号処理部2110は、制御信号入出力端子2152や映像信号入出力端子2154と接続され、電源部2120は電源入力端子2156と接続されている。
制御信号入出力端子2152に供給される制御信号としては、次のようなものがある。たとえば、入力制御信号としては、撮像モジュール2050の光学系のズーム調節、パン方向やチルト方向の調整などを行なうためのものが含まれる。また、出力制御信号としては、それぞれの入力制御信号で制御された結果の情報、たとえば、光学系のズーム倍率値、パン・チルトの設定角度などの情報が含まれる。
可動部2004の筐体2008内には、通信部2200、信号処理部2210、駆動制御部2220、遮蔽筒2230、スリップリング機構2240が設けられている。図5との関係では、通信部2200は、信号生成部207および伝送路結合部208に対応し、信号処理部2210や駆動制御部2220はLSI機能部204に対応する。
無線通信部2100と無線通信部2200の間には、無線通信部1000の導波管1012,1014と対応する導波管2300が設けられている。導波管2300は円形の導波管であり、固定部2002に固定されており、その内部を電波が伝播する。スリップリング機構2240は、固定導体2242と回転導体2244(回転ブラシ)を有し、両者の接触により電波での伝送を行なわない信号や電源の電気的な接続が可能になっている。
駆動制御部2220は、撮像モジュール2050を駆動・制御する。また、駆動制御部2220は、撮像モジュール2050のパン方向やチルト方向の制御を行なう。
信号処理部2210は、撮像モジュール2050で撮像された映像信号を適宜処理し無線通信部2200に伝送する。無線通信部2200は、信号処理部2210からの映像信号をマイクロ波帯やミリ波帯の搬送周波数の変調信号に変換して導波管2300に供給する。遮蔽筒2230は、電波の漏洩を防止するためのものである。
このような構成の監視カメラ2000においては、固定部2002から可動部2004への電力供給はスリップリング機構2240を介して供給する。一方、撮像モジュール2050で取得される映像信号や可動部2004側の各部を制御するまたは可動部2004側で取得される各種の制御情報のような容量の大きいデータは、マイクロ波帯やミリ波帯の無線で導波管2300を介して伝送するようにする。導波管2300内の無線電送は、無線通信部1000について説明したように円偏波で伝送するようにする。これによって、固定部2002に対して可動部2004をエンドレス旋回(無限軌道旋回)しても、高解像度、高画質の画像信号や制御情報を、何らの問題もなく伝送できる。固定部2002と360度エンドレス回転する可動部2004との間で、高速無線データ伝送を実現できる。
たとえば、固定部2002では、電源部2120から無線通信部2100や信号処理部2110に電源が供給される。また、その電源部2120から、可動部2004のスリップリング機構2240の固定導体2242と回転導体2244を介して、回転駆動部2060、撮像モジュール2050、無線通信部2200、信号処理部2210、駆動制御部2220に電源が供給される。
撮像モジュール2050で撮像された映像信号は、信号処理部2210で撮像信号処理がなされ無線通信部2200に供給される。無線通信部2200は、映像信号を搬送波周波数信号で変調し、その変調信号を導波管2300を介して固定部2002側の無線通信部2100に伝送する。無線通信部2100は、受信した変調信号をベースバンド信号に変換し、信号処理部2110に供給する。信号処理部2110は、映像信号処理を行なった後、映像信号入出力端子2154から後段の伝送路に信号を送出し、または図示しない表示装置(モニタ)に監視映像を表示する。
また、制御信号入出力端子2152に、たとえば監視センタからの制御信号が入力されると、信号処理部2110で適宜処理されてから信号処理部2110に供給される。無線通信部2100は、制御信号に対応する制御情報を搬送波周波数信号で変調し、その変調信号を導波管2300を介して可動部2004側の通信部2200に伝送する。無線通信部2200は、受信した変調信号をベースバンド信号に変換し、信号処理部2210に供給する。信号処理部2210は、制御信号を分離し、撮像モジュール2050(撮像レンズ部2052や撮像部2054)を制御する。制御信号の一部は駆動制御部2220に供給され、駆動制御部2220は、撮像モジュール2050のパン方向やチルト方向の制御を行なう。さらに、制御信号の一部は回転駆動部2060にも供給され、回転駆動部2060は、可動部2004の全体のパン方向の制御を行なう。
[第2の製品例]
図10Aは、回転構造体1001が適用される電子機器の第2の製品例を説明する図である。第2の製品例は3次元画像再生装置への適用例である。図10Aに示すように、3次元画像再生装置3000は、固定部3002(固定部1002と対応)と可動部3004(可動部1004と対応)を具備した回転構造体1001のものである。固定部3002は、たとえば、図示しない台に載置・固定される。可動部3004は、筐体3008が回転可能に形成され回転スクリーンとして機能するようになっており、エンドレス回転することで、仮想空間にカラーの立体像(3次元像)が表示されるようにされている。特別なメガネを架けることなく、通常の2眼視(裸眼)により立体像を観察できるようになっている。ここでは、立体像を表示するための具体的な仕組みについては説明を割愛する。
3次元画像再生装置3000においては、固定部3002に対して可動部3004をエンドレス旋回(無限軌道旋回)しても、立体像再生用の画像信号や制御情報を、何らの問題もなく伝送できる。固定部3002と360度エンドレス回転する可動部3004との間で高速無線データ伝送を実現できる。
なお、ここでは、回転構造体1001が適用される電子機器の製品例として監視カメラ2000と3次元画像再生装置3000を例示したが、回転構造体1001が適用される電子機器はこれらに限定されない。どのようなものであっても、本実施形態の無線通信部1000の仕組みを採ることで、固定部と360度エンドレス回転する可動部との間で高速無線データ伝送を実現できる。