以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
〔第1の実施形態;音響調整装置〕
図1は、本発明の第1の実施形態の音響調整装置を用いた音響装置の構成の一例を示すブロック図である。
この音響装置は、フィルタ装置である音響調整装置1と、音響調整装置1に接続されたD/A(デジタル/アナログ)変換器2と、音響調整装置1の後段にD/A変換器2を介して接続された音響出力装置とが備えられている。
音響出力装置には、D/A変換器2に接続された増幅器3と、増幅器3に接続されたスピーカ4とが備えられている。
音響調整装置1には、FIR(有限インパルス応答)フィルタ11と、フィルタ係数設定手段として機能する演算制御部12と、変更特性指定手段として機能する操作入力部13とが備えられている。この音響調整装置1のFIRフィルタ11が、音響装置の外部入力端子INとD/A変換器2とを接続する信号線の途中に挿入されている。
FIRフィルタ11では、デジタル信号処理が行われ、例えばマイクロホンから出力されるアナログ音声信号がA/D変換されたデジタル音声信号、あるいはCDプレーヤ等の記録媒体再生装置から出力されるデジタル音声信号が、音響装置の外部入力端子INを介して入力される。FIRフィルタ11にて所定の処理(フィルタリング)が施された信号は、D/A変換器2に入力されてアナログ信号に変換され、さらに増幅器3によって電力増幅されてスピーカ4へ出力され、スピーカ4から拡声音(音響信号)として出力される。
図2は、FIRフィルタ11の構成の一例を示す回路図である。
このFIRフィルタ11には、n個の縦続接続された遅延回路21と、(n+1)個の乗算器22と、加算器23とを備えている。各遅延回路21では、それぞれの入力信号をサンプリング周期だけ遅延させて出力し、各乗算器22では、それぞれに対応して設定されるフィルタ係数hk(k=0〜n)を入力信号に乗算して出力し、各乗算器22の出力が加算器23で加算されて出力される。このようなFIRフィルタ11では、フィルタ係数hkを設定することによって振幅周波数特性(以下、「振幅特性」という)と位相周波数特性(以下、「位相特性」という)とが定まる。
ここで、位相特性とは、周波数を横軸に位相を縦軸に記して表される特性のことを言う。また、振幅特性とは、周波数を横軸に振幅(例えば、ゲイン)を縦軸に記して表される特性のことを言う。
演算制御部12は、例えばマイクロコンピュータによって構成され、操作入力部13の操作に応じたフィルタ係数hkを導き出してFIRフィルタ11に設定する。各フィルタ係数hkは各乗算器22の利得として設定される。後述の第1〜第3構成例の場合には、演算制御部12は、操作入力部13の操作によって指定された振幅特性及び位相特性に応じたフィルタ係数hkを算出し、FIRフィルタ11に設定する。この場合、その周波数特性(振幅特性及び位相特性)の情報を逆高速フーリエ変換(逆FFT)等を行うことによってフィルタ係数hkを求めることができる。
操作入力部13では、操作者によって、例えばFIRフィルタ11に設定される振幅特性及び位相特性を指定するための操作が行われる。操作入力部13は、後述の第1〜第3構成例の場合には、例えば、液晶ディスプレイとペンタブレットとを統合した液晶ペンタブレット等を用いて構成される。この場合、振幅特性と位相特性を入力するための表示画面が表示され、ポインティングデバイスとしてスタイラスペンを用いる。
以下、各構成例について述べるが、各構成例では、操作入力部13及び演算制御部12の構成が異なり、他の構成については同じである。
(第1構成例)
図3は、第1構成例の操作入力部13の表示画面を示す図である。
この図3に示された表示画面31の場合、その画面の左側下部領域が振幅特性を指定するための振幅特性指定領域であり、左側上部領域が指定される振幅特性を振幅特性曲線34で表示する振幅特性表示領域である。また、画面の右側下部領域が位相特性を指定するための位相特性指定領域であり、右側上部領域が指定される位相特性を位相特性曲線35で表示する位相特性表示領域である。
振幅特性指定領域には、例えば可聴周波数(20Hz〜20kHz)の範囲内で予め設定された複数の周波数の各々におけるゲイン(利得)を設定するためのゲイン調整用操作子32が表示されている。同様に、位相特性指定領域には、上記の可聴周波数の範囲内で予め設定された複数の周波数の各々における位相を設定するための位相調整用操作子33が表示されている。例えば、上記の予め設定された複数の周波数が10個とした場合には、図中、左から右へ並んだゲイン調整用操作子32及び位相調整用操作子33のそれぞれは、左から順に、例えば、31Hz、62Hz、125Hz、250Hz、500Hz、1kHz、2kHz、4kHz、8kHz、16kHzの周波数のものに対応する。また、これらの周波数の数値については、表示画面31に表示されるが、図3ではその図示を省略している。
操作者はスタイラスペンを用いて、所望の振幅特性となるように各ゲイン調整用操作子32の位置を上下に移動(ドラッグ)させて各周波数におけるゲインを設定する。同様に、所望の位相特性となるように各位相調整用操作子33の位置を上下に移動させて各周波数における位相を設定する。そして、各ゲイン調整用操作子32の位置に対応する振幅特性曲線34が表示され、各位相調整用操作子33の位置に対応する位相特性曲線35が表示される。なお、各ゲイン調整用操作子32,各位相調整用操作子33は、一度も設定が行われていない初期状態としては、例えば、各周波数におけるゲインあるいは位相が0に設定された状態として表示される。
以上に述べた図3に示す表示画面31が表示される操作入力部13では、例えば表示画面31上の「確定」ボタン(図示せず)をスタイラスペンで触れることにより、各ゲイン調整用操作子32の位置を示す表示情報と、各位相調整用操作子33の位置を示す表示情報とを演算制御部12へ出力する。これにより、FIRフィルタ11に設定しようとする振幅特性と位相特性とが操作入力部13によって指定される。演算制御部12では、各ゲイン調整用操作子32の表示情報を振幅特性情報に変換するとともに各位相調整用操作子33の表示情報を位相特性情報に変換した後、それらの振幅特性情報と位相特性情報とに基づき、逆FFT等の演算を行うことによりフィルタ係数hkを求め、それをFIRフィルタ11に設定する。なお、各ゲイン調整用操作子32の表示情報は、広い間隔の周波数(前述のように例えば31Hz、62Hz、・・・・、8kHz、16kHz)についての情報であるため、演算制御部12では、これらの周波数のすき間の周波数に関する振幅情報(ゲイン)を補間して振幅特性情報を求める。同様に、各位相調整用操作子33の表示情報も、広い間隔の周波数(前述のように例えば31Hz、62Hz、・・・・、8kHz、16kHz)についての情報であるため、演算制御部12では、これらの周波数のすき間の周波数に関する位相情報を補間して位相特性情報を求める。
なお、一旦ゲインあるいは位相の設定を行い、次に設定を変更するとき、その変更前には、各ゲイン調整用操作子32,各位相調整用操作子33はその直前に設定されたときの状態である変更前の状態が表示される。その状態から各操作子32,33を上下に移動させて設定を変更する。このとき、各操作子32,33の位置に対応して表示される振幅特性曲線34及び位相特性曲線35の他、変更前の振幅特性曲線34a及び位相特性曲線35aを表示しておくようにしてもよい。これにより、変更前の振幅特性及び位相特性と新たに設定しようとする振幅特性及び位相特性との比較が容易になる。
なお、各ゲイン調整用操作子32,各位相調整用操作子33は、上記のように画面上に表示されるものではなく、操作者が実際に手で操作するハードウェアで構成されるようにしてもよい。
なお、振幅特性情報とは、例えば振幅特性曲線34のグラフで示されるような振幅特性を表す数値列のデータであり、位相特性情報とは、例えば位相特性曲線35のグラフで示されるような位相特性を表す数値列のデータである。
(第2、第3構成例)
図4は、第2構成例の操作入力部13の表示画面を示す図である。
この図4に示された表示画面41の場合、その上半分の上部領域が振幅特性を指定するための領域(振幅特性表示領域)であり、下半分の下部領域が位相特性を指定するための領域(位相特性表示領域)である。
上部の振幅特性表示領域には、例えば可聴周波数の範囲内において設定される振幅特性を示すためのライン(振幅特性線)42が表示される。このライン42は、初期状態として、例えば、可聴周波数の全範囲においてゲインが0に設定された状態である。あるいは、これ以外の状態に設定されてあってもよい。操作者はスタイラスペンを用いて、ライン42の任意の箇所をドラッグすることにより所望の振幅特性を示すライン42を形成する。
下部の位相特性表示領域には、例えば可聴周波数の範囲内において設定される位相特性を示すためのライン(位相特性線)43が表示される。このライン43は、初期状態として、例えば、可聴周波数の全範囲において位相が0に設定された状態である。あるいは、これ以外の状態に設定されてあってもよい。操作者はスタイラスペンを用いて、ライン43の任意の箇所をドラッグすることにより所望の位相特性を示すライン43を形成する。
なお、上記の第2構成例の操作入力部13では、任意のライン42,43を変形させて所望の特性を示すライン42,43を形成するようにしたが、例えば、初期状態の表示画面41を、図4においてライン42,43以外のものが表示され、ライン42,43のみが表示されていない画面とし、操作者はスタイラスペンを用いて所望の特性を示すライン42,43を描画するようにしてもよい(これを、第3構成例の操作入力部13とする)。
以上に述べた図4に示す表示画面41が表示される第2及び第3構成例の操作入力部13では、例えば表示画面41上の「確定」ボタン(図示せず)をスタイラスペンで触れることにより、ライン42の表示情報と、ライン43の表示情報とを演算制御部12へ出力する。これにより、FIRフィルタ11に設定しようとする振幅特性と位相特性とが操作入力部13によって指定される。演算制御部12では、ライン42の表示情報を振幅特性情報に変換するとともにライン43の表示情報を位相特性情報に変換した後、それらの振幅特性情報と位相特性情報とに基づき、逆FFT等の演算を行うことによりフィルタ係数hkを求め、それをFIRフィルタ11に設定する。
上記の図3、図4に示すような表示画面を表示するように構成された第1、第2及び第3構成例の操作入力部13を用いた場合には、操作者は、表示画面上で所望するFIRフィルタ11の振幅特性と位相特性とを容易に指定することが可能になる。
(第4構成例)
次に、第4構成例について説明する。この第4構成例では、演算制御部12には、例えば演算制御部12を構成するマイクロコンピュータの内部メモリからなる記憶部を有しており、ここにFIRフィルタ11に関する複数の振幅特性情報と複数の位相特性情報とを予め格納(記憶)しておく。そして、操作入力部13を操作することによって、記憶部に格納されたものの中から所望の振幅特性情報及び位相特性情報を選択するように構成されている。この第4構成例の場合の操作入力部13には、例えば、複数の振幅特性のそれぞれに対応する振幅特性指定ボタン及び複数の位相特性のそれぞれに対応する位相特性指定ボタンが設けられている。これらの指定ボタンは、押しボタン式等の実際に人間の手で選択操作するものであってもよいし、タッチパネルに表示され、指やスタイラスペンで触れることにより選択されるものであってもよく、いずれの場合も振幅特性及び位相特性を指定するための操作が容易である。操作入力部13では、選択された振幅特性指定ボタンに対応する振幅特性の選択信号と、選択された位相特性指定ボタンに対応する位相特性の選択信号とを演算制御部12へ出力する。演算制御部12では、それぞれの選択信号に対応する振幅特性情報と位相特性情報とを記憶部から読み出し、それらの振幅特性情報と位相特性情報とに基づき、逆FFT等の演算を行うことによりフィルタ係数hkを求め、それをFIRフィルタ11に設定する。
また、上記の第4構成例において、演算制御部12内の記憶部の記憶している情報の書き換えができるように操作入力部13を構成しておいてもよい。例えば、演算制御部12の記憶部には、増幅器3やスピーカ4により構成される音響出力装置に応じたFIRフィルタ11の振幅特性情報と位相特性情報とが記憶されている場合に、音響出力装置を他の音響出力装置に変更した場合に、前記他の音響出力装置に応じたFIRフィルタ11の位相特性情報及び振幅特性情報に書き換えるようにすればよい。この場合、操作入力部13に、フラッシュメモリ、CD等の記録媒体の情報を読み取る読取り手段を設けておき、記録媒体から読み取った新しい振幅特性情報と位相特性情報を記憶部に格納(記憶)するように構成すればよい。記録媒体は、音響調整装置あるいは音響装置の製造会社等から配布されたものであってもよいし、ユーザがパソコン(パーソナルコンピュータ)を操作して音響調整装置あるいは音響装置の製造会社等のホストコンピュータから、新しい振幅特性情報と位相特性情報のファイルをダウンロードして記録媒体に記録したものであってもよい。
(第5構成例)
次に、第5構成例について説明する。この第5構成例では、操作入力部13には、例えば、FIRフィルタ11の初期状態(例えばゲインが0)あるいは直前に設定された振幅特性から、予め設定された複数の周波数の各々におけるゲインを増加するための振幅増加周波数指定ボタン及びゲインを減少するための振幅減少周波数指定ボタンが各周波数に対応して設けられているとともに、FIRフィルタ11の初期状態(例えば位相が0)あるいは直前に設定された位相特性から、予め設定された複数の周波数の各々における位相を進めるための位相進相周波数指定ボタン及び位相を遅らせるための位相遅相周波数指定ボタンが各周波数に対応して設けられている。上記の予め設定された複数の周波数が10個とした場合には、振幅増加周波数指定ボタン、振幅減少周波数指定ボタン、位相進相周波数指定ボタン及び位相遅相周波数指定ボタンがそれぞれ10個ずつ設けられ、それぞれの指定ボタンは、例えば、31Hz、62Hz、125Hz、250Hz、500Hz、1kHz、2kHz、4kHz、8kHz、16kHzの周波数のものに対応する。これらの指定ボタンは、押しボタン式等の実際に人間の手で選択操作するものであってもよいし、タッチパネルに表示され、指やスタイラスペンで触れることにより選択されるものであってもよい。
この場合、操作入力部13では、ある振幅増加周波数指定ボタンがn回選択操作されると、選択された振幅増加周波数指定ボタンに対応する選択信号を演算制御部12へn回出力し、ある振幅減少周波数指定ボタンがn回選択操作されると、選択された振幅減少周波数指定ボタンに対応する選択信号を演算制御部12へn回出力する。また、ある位相進相周波数指定ボタンがn回選択操作されると、選択された位相進相周波数指定ボタンに対応する選択信号を演算制御部12へn回出力し、ある位相遅相周波数指定ボタンがn回選択操作されると、選択された位相遅相周波数指定ボタンに対応する選択信号を演算制御部12へn回出力する。
演算制御部12では、直前に設定されているFIRフィルタ11の振幅特性に対して、選択信号がn回出力された振幅増加周波数指定ボタンに対応する周波数のゲインを所定値×nの分増加させるとともに、選択信号がn回出力された振幅減少周波数指定ボタンに対応する周波数のゲインを所定値×nの分減少させることにより変更後の振幅特性を定める情報を求め、その情報に基づいて振幅特性情報を求める。上記所定値は、予め定められた値である。各振幅増加周波数指定ボタン及び振幅減少周波数指定ボタンの選択信号によって得られる変更後の振幅特性を定める情報は、広い間隔の周波数(前述のように例えば31Hz、62Hz、・・・・、8kHz、16kHz)についての情報であるため、演算制御部12では、これらの周波数のすき間の周波数に関する振幅情報(ゲイン)を補間して振幅特性情報を求める。
また、演算制御部12では、直前に設定されているFIRフィルタ11の位相特性に対して、選択信号がn回出力された位相進相周波数指定ボタンに対応する周波数の位相を所定角度×nの分進めるとともに、選択信号がn回出力された位相遅相周波数指定ボタンに対応する周波数の位相を所定角度×nの分遅らせることにより変更後の位相特性を定める情報を求め、その情報に基づいて位相特性情報を求める。上記所定角度は、予め定められた値である。各位相進相周波数指定ボタン及び位相遅相周波数指定ボタンの選択信号によって得られる変更後の位相特性を定める情報は、広い間隔の周波数(前述のように例えば31Hz、62Hz、・・・・、8kHz、16kHz)についての情報であるため、演算制御部12では、これらの周波数のすき間の周波数に関する位相情報を補間して位相特性情報を求める。
さらに、演算制御部12では、上記のようにして求めた振幅特性情報と位相特性情報とに基づき、逆FFT等の演算を行うことによりフィルタ係数hkを求め、それをFIRフィルタ11に設定する。
この第5構成例の操作入力部13を用いた場合、振幅を変更したい周波数に対応する振幅増加周波数指定ボタン及び振幅減少周波数指定ボタンを押す等の簡単な操作によってFIRフィルタ11の振幅特性を変更することができる。また、位相を変更したい周波数に対応する位相進相周波数指定ボタン及び位相遅相周波数指定ボタンを押す等の簡単な操作によってFIRフィルタ11の位相特性を変更することができる。
(第6構成例)
図5は、第6構成例の操作入力部13の表示画面を示す図である。
ここでは、操作入力部13は、例えば、表示画面101を有する液晶ディスプレイと、キーボード及びマウス等を用いて構成される。
この図5に示された表示画面101の場合、その画面の左側領域に振幅特性曲線102等を表示する振幅特性表示領域が配置され、画面の右側領域に位相特性曲線103等を表示する位相特性表示領域が配置されている。
振幅特性表示領域の下方には、設定ポイント番号(No.)、中心周波数(f)、周波数帯域幅(Q)、中心周波数におけるゲイン(G)を指定するためのそれぞれの操作ボタン104a、104b、105a、105b、106a、106b、107a、107bと、指定された値が表示されるボックス104、105、106、107とが表示されている。同様に、位相特性表示領域の下方には、設定ポイント番号(No.)、中心周波数(f)、周波数帯域幅(Q)、中心周波数における角度(D)を指定するためのそれぞれの操作ボタン108a、108b、109a、109b、110a、110b、111a、111bと、指定された値が表示されるボックス108、109、110、111とが表示されている。
操作者は、所望の振幅特性となるように、各設定ポイント番号(例えば、1、2、3、・・・)ごとに、中心周波数、周波数帯域幅、中心周波数におけるゲインを設定する。操作者は、例えばマウスを用いて、増加ボタン104a及び減少ボタン104bをクリックすることで、ボックス104に表示される設定ポイント番号を増加及び減少させることができる。また、増加ボタン105a及び減少ボタン105bをクリックすることで、ボックス105に表示される中心周波数を増加及び減少させることができる。また、増加ボタン106a及び減少ボタン106bをクリックすることで、ボックス106に表示される周波数帯域幅を増加及び減少させることができる。また、増加ボタン107a及び減少ボタン107bをクリックすることで、ボックス107に表示されるゲインを増加及び減少させることができる。
操作入力部13では、以上の操作により設定される各設定ポイント番号ごとの、中心周波数、周波数帯域幅及びゲインからなる各振幅設定情報を、演算制御部12へ出力する。演算制御部12では、各振幅設定情報に基づいて振幅特性情報を求める。この振幅特性情報に基づいて振幅特性曲線102を表示するための表示情報を作成し、操作入力部13の表示画面101に振幅特性曲線102を表示させる。
また操作者は、所望の位相特性となるように、各設定ポイント番号(例えば、1、2、3、・・・)ごとに、中心周波数、周波数帯域幅、中心周波数における角度を設定する。操作者は、例えばマウスを用いて、増加ボタン108a及び減少ボタン108bをクリックすることで、ボックス108に表示される設定ポイント番号を増加及び減少させることができる。また、増加ボタン109a及び減少ボタン109bをクリックすることで、ボックス109に表示される中心周波数を増加及び減少させることができる。また、増加ボタン110a及び減少ボタン110bをクリックすることで、ボックス110に表示される周波数帯域幅を増加及び減少させることができる。また、増加ボタン111a及び減少ボタン111bをクリックすることで、ボックス111に表示される角度を増加及び減少させることができる。
操作入力部13では、以上の操作により設定される各設定ポイント番号ごとの、中心周波数、周波数帯域幅及び角度からなる各位相設定情報を、演算制御部12へ出力する。演算制御部12では、各位相設定情報に基づいて位相特性情報を求める。この位相特性情報に基づいて位相特性曲線103を表示するための表示情報を作成し、操作入力部13の表示画面101に位相特性曲線103を表示させる。
さらに、演算制御部12では、求めた振幅特性情報と位相特性情報とに基づき、逆FFT等の演算を行うことによりフィルタ係数hkを求め、それをFIRフィルタ11に設定する。
また、設定を変更するための操作中に、その変更前の振幅特性曲線102a及び位相特性曲線103aを表示しておくようにしてもよい。これにより、変更前の振幅特性及び位相特性と新たに設定しようとする振幅特性及び位相特性との比較が容易になる。
また、設定を変更するための操作中に、表示画面101の振幅特性表示領域に目標とする振幅特性曲線を表示し、位相特性表示領域に目標とする位相特性曲線を表示しておくようにしてもよい。これにより、目標とする振幅特性曲線及び目標とする位相特性曲線と重なるように振幅特性曲線及び位相特性曲線を作成することで、これらの作成が容易になる。
なお、振幅特性を設定するための操作ボタン(104a、104b)、(105a、105b)、(106a、106b)、(107a、107b)及び、位相特性を設定するための操作ボタン(108a、108b)、(109a、109b)、(110a、110b)、(111a、111b)に代えて、例えば図3の操作子32、33で示されるようなスライドバー等を用いてもよい。さらに、これらの操作ボタンやスライドバー等の操作子は、上記のように画面上に表示されるものではなく、操作者が実際に手で操作する、ハードウェアで構成されるようにしてもよい。
(第7構成例)
図6は、第7構成例の操作入力部13の表示画面を示す図である。
この図6に示された表示画面131の場合、その上部領域が指定する振幅特性を示す振幅特性曲線を作成するための振幅特性描画領域であり、下部領域が指定する位相特性を示す位相特性曲線を作成するための位相特性描画領域である。
操作入力部13は、例えば、表示画面131を有する液晶ディスプレイと、キーボード及びマウス等を用いて構成される。
操作入力部13によって操作開始の指令を与えると、表示画面131の振幅特性描画領域において、周波数軸上の所定の周波数の位置に、予め定めた形状及び大きさの山形の振幅特性曲線141が表示されるとともに、位相特性描画領域においても同様に、予め定めた形状及び大きさの山形の位相特性曲線151が表示される。
振幅特性曲線141は、2つの操作子142、143を有している。操作子142は振幅特性曲線141の中央のピーク位置に設けられており、操作子143は振幅特性曲線141の中途の位置に設けられている。操作子142は、マウスによってカーソルを操作子142に合わせて画面の上下方向及び左右方向に移動(ドラッグ)させることができる。また、操作子143は、マウスによってカーソルを操作子143に合わせて画面の左右方向に移動(ドラッグ)させることができる。
操作子142を上下方向に移動させることで振幅特性曲線141のピークのゲインを調整することができる。例えば、振幅特性曲線141の操作子142を上方向にドラッグすると、例えば振幅特性曲線141aで示すように相似形の状態に拡大し、マウスの釦を離すと、即ちドロップすると、その位置で拡大を停止させる。また、操作子142を下方にドラッグすると、図示していないが、振幅特性曲線141を相似形の状態で縮小する。
また、操作子142を左右方向に移動させることで振幅特性曲線141のピークのゲインとなる周波数(中心周波数)を変更することができる。例えば拡大された振幅特性曲線141aの操作子142を右方向にドラッグすると、例えば振幅特性曲線141bで示すように振幅特性曲線141aが水平方向に移動し、ドロップした点で移動が停止する。
操作子143を左右方向に移動させることで振幅特性曲線141の周波数帯域幅を変更することができる。例えば最大ゲイン及びその周波数が移動された振幅特性曲線141bの操作子143を右方向に向かって水平にドラッグすると、振幅特性曲線141cとして示すように、振幅特性曲線の傾きが緩やかになる。即ち、周波数帯域幅が大きくなる。また、操作子143を左方向にドラッグすると、振幅特性曲線141の傾きは急峻となる。即ち、周波数帯域幅が小さくなる。このような傾きの変更は、ドロップするまで継続する。
以上のような操作によって振幅特性曲線を作成することにより、1つの設定ポイントにおける、中心周波数、周波数帯域幅及びゲインからなる振幅設定情報が決められる。また、以上のような操作を例えば複数回繰り返すことにより、例えば可聴周波数範囲における振幅特性曲線を作成(描画)し、それに対応する複数の設定ポイントの各々における、中心周波数、周波数帯域幅及び中心周波数におけるゲインからなる振幅設定情報が決められる。
また、位相特性曲線151も、2つの操作子152、153を有している。操作子152は、位相特性曲線151の中央のピーク位置に設けられており、操作子153は位相特性曲線151の中途の位置に設けられている。操作子152は、マウスによってカーソルを操作子152に合わせて画面の上下方向及び左右方向に移動(ドラッグ)させることができる。また、操作子153は、マウスによってカーソルを操作子153に合わせて画面の左右方向に移動(ドラッグ)させることができる。
操作子152を上下方向に移動させることで位相特性曲線151のピークの角度(位相)を調整することができる。例えば、位相特性曲線151の操作子152を上方向にドラッグすると、例えば位相特性曲線151aで示すように相似形の状態に拡大し、ドロップすると、その位置で拡大を停止させる。また、操作子152を下方にドラッグすると、図示していないが、位相特性曲線151を相似形の状態で縮小する。
また、操作子152を左右方向に移動させることで位相特性曲線151のピークの角度となる周波数(中心周波数)を変更することができる。例えば拡大された位相特性曲線151aの操作子152を右方向にドラッグすると、例えば位相特性曲線151bで示すように位相特性曲線151aが水平方向に移動し、ドロップした点で移動が停止する。
操作子153を左右方向に移動させることで位相特性曲線151の周波数帯域幅を変更することができる。例えば最大角度及びその周波数が移動された位相特性曲線151bの操作子153を右方向に向かって水平にドラッグすると、位相特性曲線151cとして示すように、位相特性曲線の傾きが緩やかになる。即ち、周波数帯域幅が大きくなる。また、操作子153を左方向にドラッグすると、位相特性曲線151の傾きは急峻となる。即ち、周波数帯域幅が小さくなる。このような傾きの変更は、ドロップするまで継続する。
以上のような操作によって位相特性曲線を作成することにより、1つの設定ポイントにおける、中心周波数、周波数帯域幅及びゲインからなる位相設定情報が決められる。また、以上のような操作を例えば複数回繰り返すことにより、例えば可聴周波数範囲における位相特性曲線を作成(描画)し、それに対応する複数の設定ポイントの各々における、中心周波数、周波数帯域幅及び中心周波数における角度からなる位相設定情報が決められる。
操作入力部13では、以上の操作により設定された各設定ポイントにおける振幅設定情報及び各設定ポイントにおける位相設定情報を、演算制御部12へ出力する。演算制御部12では、各振幅設定情報に基づいて振幅特性情報を求めるとともに各位相設定情報に基づいて位相特性情報を求め、求めた振幅特性情報と位相特性情報とに基づき、逆FFT等の演算を行うことによりフィルタ係数hkを求め、それをFIRフィルタ11に設定する。
また、設定を変更するための操作中に、表示画面131の振幅特性描画領域に変更前の振幅特性曲線を表示し、位相特性描画領域に変更前の位相特性曲線を表示しておくようにしてもよい。これにより、変更前の振幅特性及び位相特性と新たに設定しようとする振幅特性及び位相特性との比較が容易になる。
また、設定を変更するための操作中に、表示画面131の振幅特性描画領域に目標とする振幅特性曲線を表示し、位相特性描画領域に目標とする位相特性曲線を表示しておくようにしてもよい。これにより、目標とする振幅特性曲線及び目標とする位相特性曲線と重なるように振幅特性曲線及び位相特性曲線を作成することで、これらの作成が容易になる。この場合、目標とする振幅特性曲線及び目標とする位相特性曲線を表示するための情報は、例えば、演算制御部12の記憶部に格納されている。
(第8構成例)
図7は、第8構成例の操作入力部13の表示画面を示す図である。
ここでは、操作入力部13は、例えば、表示画面161を有する液晶ディスプレイと、キーボード及びマウス等を用いて構成される。
この図7に示された表示画面161の場合、それぞれ表形式の振幅特性設定ファイル及び位相特性設定ファイルが表示される。これら両方のファイルの設定ポイント番号(No.)は、1、2、3、・・・の順に予め表示されるようになっている。
操作者は、例えばキーボード等を操作して、振幅特性設定ファイルの中心周波数(f)、周波数帯域幅(Q)、中心周波数におけるゲイン(G)の欄に所望の値を入力する。同様に、位相特性設定ファイルの中心周波数(f)、周波数帯域幅(Q)、中心周波数における角度(D)の欄に所望の値を入力する。
操作入力部13では、振幅特性設定ファイルに入力された各設定ポイント番号ごとの、中心周波数、周波数帯域幅及びゲインからなる各振幅設定情報と、位相特性設定ファイルに入力された各設定ポイント番号ごとの、中心周波数、周波数帯域幅及び角度からなる各位相設定情報とを、演算制御部12へ出力する。演算制御部12では、各振幅設定情報に基づいて振幅特性情報を求めるとともに、各位相設定情報に基づいて位相特性情報を求める。さらに、演算制御部12では、求めた振幅特性情報と位相特性情報とに基づき、逆FFT等の演算を行うことによりフィルタ係数hkを求め、それをFIRフィルタ11に設定する。
なお、この第8構成例では、操作入力部13にて、振幅特性設定ファイル及び位相特性設定ファイルを作成するようにしたが、音響調整装置以外のパソコン等を用いて振幅特性設定ファイル及び位相特性設定ファイルを作成し、音響調整装置にアップロードするようにすれば、音響調整装置の操作入力部13に表示画面161を表示するためのディスプレイ等を備える必要がなく、音響調整装置を簡単な構成とし、小型化できる。
また、音響調整装置以外のパソコンや設定用機器において、前述の図5や図6のような表示画面を表示できる構成とし、第6、第7構成例と同様にして設定される振幅設定情報及び位相設定情報をファイル化して振幅特性設定ファイル及び位相特性設定ファイルを作成し、それらを音響調整装置にアップロードするようにしてもよい。
また、演算制御部12の記憶部に、複数の振幅特性に対応する複数の振幅特性設定ファイルの情報(複数の振幅特性特定情報)と、複数の位相特性に対応する複数の位相特性設定ファイルの情報(複数の位相特性特定情報)とを予め格納しておき、先述の第4構成例のように、操作入力部13を、記憶部に格納されたものの中から所望の振幅特性特定情報及び位相特性特定情報を選択するように構成してもよい。この場合、演算制御部12では、操作入力部13の操作に応じて振幅特性特定情報と位相特性特定情報とを記憶部から読み出し、読み出した振幅特性特定情報(1または複数の振幅設定情報からなる情報)に基づいて振幅特性情報を求めるとともに、位相特性特定情報(1または複数の位相設定情報からなる情報)に基づいて位相特性情報を求め、さらに、振幅特性情報と位相特性情報とに基づいてフィルタ係数hkを求め、それをFIRフィルタ11に設定する。
以上、第1〜第8構成例のいずれの場合でも、設定する周波数範囲において、例えば位相特性を平坦にするためのボタン、メニュー等を設けておいてもよい。これにより平坦な位相特性(例えば設定する全周波数範囲において角度が0)の設定が容易になる。同様に、設定する周波数範囲において、例えば振幅特性を平坦にするためのボタン、メニュー等を設けておいてもよい。これにより平坦な振幅特性(設定する周波数範囲において振幅が一定)の設定が容易になる。
本実施形態では、フィルタ係数の設定により振幅特性と位相特性とをそれぞれ個別的に設定することができるFIRフィルタ11を用い、そのFIRフィルタ11の振幅特性と位相特性とを個別的に設定することにより聴取者の好みや種々の用途等に応じてスピーカ4から出力される音質の調整を容易に行うことができる。特に、ある周波数の位相を遅らせる、あるいは進めることにより、スピーカ4から出力される音質の調整を行うことが可能になる。
上記のように本実施形態では、音響調整にFIRフィルタ11を用いている。つまりデジタル信号処理の技術を用いている。
そして、上記のような操作入力部13を用いてFIRフィルタ11の位相特性を設定することができるようにしているので、これまでの音響調整方法では実現することのできなかったような種々の音響調整が可能となる。上記のようにFIRフィルタ11を用いているため、任意の位相特性を設定することができる。つまり、各周波数毎に任意の位相特性を持たせることができる。しかも、任意の周波数範囲においてのみ、位相特性を調整するということも可能である。例えば、100Hzから200Hzまでの周波数範囲においてのみ、入力された音声信号に対して位相の変化を施し、他の周波数範囲においては位相を変化させないようにすることもできる。
また、上記のような操作入力部13を用いてFIRフィルタ11の位相特性と振幅特性とを設定することができるようにしているので、位相特性と振幅特性の設定を、それぞれ独立して行うことができる。つまり、FIRフィルタ11に既に設定されている振幅特性を変更させることなく、位相特性のみを既に設定されている特性(位相特性)から別の特性(位相特性)に変更させることもできる。
また、これとは反対に、FIRフィルタ11に既に設定されている位相特性を変更させることなく、振幅特性のみを既に設定されている特性(振幅特性)から別の特性(振幅特性)に変更させることもできる。
さらに、FIRフィルタ11に既に設定されている位相特性と振幅特性の両方を、別の特性に変更させることもできる。
また、FIRフィルタ11に対して、周波数によらず一定のゲインを与えるような振幅特性を設定しておき、音声信号の位相特性のみに変化を与えるように、FIRフィルタ11の位相特性を設定することもできるし、FIRフィルタ11に設定する位相特性を種々に変更して行くこともできる。
特に、振幅を変化させずに位相を進めることにより、位相を進めた帯域の音がより強調された聞こえ方になり、かつ騒々しく聞こえなくなるなど従来では実現できなかった調整ができるようになる。さらに、振幅特性の変更と組み合わせて位相特性を変更できるため、それぞれに効果的な設定が可能となり、より複雑で自由な音響調整が可能となる。
また、ある所望の位相特性を、入力される音声信号に施したいような場合は、次のようにすればよい。つまり、増幅器3やスピーカ4により構成される音響出力装置と、FIRフィルタ11との総合の位相特性が、前記所望の位相特性と同一となるように、FIRフィルタ11の位相特性を設定すればよいのである。より具体的に説明すると、増幅器3やスピーカ4で構成される音響出力装置の位相特性と、前記所望の位相特性との差分を、FIRフィルタ11の位相特性として設定すればよいのである。入力される音声信号に対して、振幅特性には変化を与えず、位相特性にのみ変化を与えるようにしてもよい。また、位相特性を所望のものにすると同時に、入力される音声信号に対して所望の振幅特性を同時に施したいなら、増幅器3やスピーカ4で構成される音響出力装置の振幅特性と、前記所望の振幅特性との差分を、FIRフィルタ11の振幅特性として設定すればよい。
例えば、先述の第1構成例〜第3構成例及び第6〜第8構成例では、操作入力部13によってFIRフィルタ11の位相特性及び振幅特性を指定するようにしたが、増幅器3やスピーカ4により構成される音響出力装置とFIRフィルタ11との総合の位相特性及び振幅特性を指定するように構成してもよい。この場合、演算制御部12の記憶部に、音響出力装置の位相特性情報と振幅特性情報とを格納しておく。そして、演算制御部12において、操作入力部13によって指定された位相特性を表す情報と音響出力装置の位相特性情報との差分を求め、それをFIRフィルタ11の位相特性情報とし、表示画面上で指定された振幅特性を表す情報と音響出力装置の振幅特性情報との差分を求め、それをFIRフィルタ11の振幅特性情報とする。さらに、演算制御部12では、上記のようにして求めたFIRフィルタ11の振幅特性情報と位相特性情報とに基づき、逆FFT等の演算を行うことによりフィルタ係数hkを求め、それをFIRフィルタ11に設定する。
この場合、演算制御部12の記憶部に記憶されている音響出力装置の位相特性情報と振幅特性情報とは、増幅器3及びスピーカ4により構成される音響出力装置の特性を、公知の測定手段で測定することによって得た情報である。演算制御部12では、記憶部に記憶している情報の書き換えが可能であり、音響出力装置を他の音響出力装置に変更した場合に、前記他の音響出力装置の位相特性情報及び振幅特性情報を記憶部に記憶して用いればよい。この場合、例えば、操作入力部13に、フラッシュメモリ、CD等の記録媒体の情報を読み取る読取り手段を設けておき、記録媒体から読み取った他の音響出力装置の振幅特性情報と位相特性情報を記憶部に格納(記憶)するように構成すればよい。記録媒体は、音響調整装置あるいは音響装置の製造会社等から配布されたものであってもよいし、ユーザがパソコン(パーソナルコンピュータ)を操作して音響調整装置あるいは音響装置の製造会社等のホストコンピュータから、新しい振幅特性情報と位相特性情報のファイルをダウンロードして記録媒体に記録したものであってもよい。
また、先述の第4構成例では、操作入力部13の複数の位相特性指定ボタン及び複数の振幅特性指定ボタンをFIRフィルタ11の位相特性及び振幅特性を指定(選択)するために用いるように構成したが、音響出力装置とFIRフィルタ11との総合の位相特性及び振幅特性を指定(選択)するために用いるように構成してもよい。この場合、演算制御部12の記憶部に、複数の位相特性指定ボタン及び複数の振幅特性指定ボタンによって指定される音響出力装置とFIRフィルタ11との総合の位相特性情報及び振幅特性情報と、音響出力装置の位相特性情報及び振幅特性情報とを格納しておく。そして、演算制御部12において、位相特性指定ボタンによって指定された位相特性情報と音響出力装置の位相特性情報との差分を求め、それをFIRフィルタ11の位相特性情報とし、振幅特性指定ボタンによって指定された振幅特性情報と音響出力装置の振幅特性情報との差分を求め、それをFIRフィルタ11の振幅特性情報とする。さらに、演算制御部12では、上記のようにして求めたFIRフィルタ11の振幅特性情報と位相特性情報とに基づき、逆FFT等の演算を行うことによりフィルタ係数hkを求め、それをFIRフィルタ11に設定する。
この場合、演算制御部12の記憶部に記憶されている音響出力装置の位相特性情報と振幅特性情報とは、増幅器3及びスピーカ4により構成される音響出力装置の特性を、公知の測定手段で測定することによって得た情報である。演算制御部12では、記憶部に記憶している情報の書き換えが可能であり、音響出力装置を他の音響出力装置に変更した場合に、前記他の音響出力装置の位相特性情報及び振幅特性情報を記憶部に記憶して用いればよい。また、位相特性指定ボタン及び振幅特性指定ボタンによって指定される音響出力装置とFIRフィルタ11との総合の位相特性及び振幅特性の情報も書き換えることができる。このように記憶部の情報を書き換えるための構成は、前述の場合と同様、操作入力部13に、フラッシュメモリ、CD等の記録媒体の情報を読み取る読取り手段を設けておき、記録媒体から読み取った新しい情報を記憶部に格納(記憶)するように構成すればよい。
ここで、演算制御部12の記憶部に格納される、音響出力装置とFIRフィルタ11との総合の位相特性及び振幅特性の情報は、音響装置が用いられる各種の用途等に応じた位相特性や振幅特性の情報である。このような情報は、例えば、音響装置を用いて演説を行う場合、すなわち、入力端子INにマイクロホンからの音声信号がA/D変換されて入力されるように構成され、そのマイクロホンを用いて演説する場合に、演説者の話声を明瞭に聴取者に聞かせるのに適した位相特性情報や振幅特性情報がある。また、音響装置を用いて非常用の放送を行う場合、すなわち、入力端子INにCDプレーヤ等の記録媒体再生装置から出力されるデジタル音声信号が入力されるように構成され、非常用のアナウンスが放送される場合に、聴取者がその非常用のアナウンスの内容を聞き取りやすい等、それに適した位相特性情報や振幅特性情報がある。また、音響装置を用いて音楽(BGM)を流す場合、すなわち、入力端子INにCDプレーヤ等の記録媒体再生装置から出力されるデジタル音声信号が入力されるように構成され、楽曲等が放送される場合に、その放送が耳障りにならない等、それに適した位相特性情報や振幅特性情報などがある。
また、このような演算制御部12の記憶部に格納される情報は、「スピーチ用の情報」、「音楽(ポップス)用の情報」、「音楽(ロック)用の情報」といった音源別に分類された情報として記憶されて選択されるようにしてあってもよいし、「店舗のBGM用の情報」、「音楽鑑賞用の情報」及び「街頭演説用の情報」といった用途別に分類された情報として記憶されて選択されるようにしてあってもよいし、「はっきり」、「柔らかに」といったイメージ別に分類された情報として記憶されて選択されるようにしてあってもよい。
また、スピーカ4以外の他の特定のスピーカの位相特性を、音響調整装置1を用いて模擬することもできる。そのためには、スピーカ4と音響調整装置1との総合の位相特性が、前記他の特定のスピーカの位相特性と同一となるように、音響調整装置1の位相特性を設定すればよい。
つまり、他の特定のスピーカの位相特性と、既設のスピーカ4の位相特性とがわかっていれば、それらのスピーカの位相特性の差分をFIRフィルタ11の位相特性として設定することにより、既設のスピーカ4にて他の特定のスピーカの位相特性を模倣することができる。ここで、振幅特性については必ずしも、他の特定のスピーカの振幅特性と既設のスピーカ4の振幅特性との差分がFIRフィルタ11の振幅特性と等しくなるように設定しなくても、他の特定のスピーカの位相特性と既設のスピーカ4の位相特性との差分がFIRフィルタ11の位相特性と等しくなるように設定することにより、既設のスピーカ4にて他の特定のスピーカをある程度模倣することができる。
なお、他の特定のスピーカの振幅特性と、既設のスピーカ4の振幅特性とがわかっている場合に、それらのスピーカの振幅特性の差分をFIRフィルタ11の振幅特性として設定して、既設のスピーカ4にて他の特定のスピーカの位相特性のみならず、振幅特性も併せて模倣するようにしてもよい。
演算制御部12は、前述のように記憶部を有しており、ここにスピーカの周波数特性情報等を格納することができるようになっている。
演算制御部12の記憶部には、スピーカ4の位相特性情報と振幅特性情報とが格納されている。この位相特性情報と振幅特性情報とは、スピーカ4の特性を、公知の測定手段で測定することによって得た情報である。
また、スピーカ4ではない、他の特定のスピーカの位相特性情報と振幅特性情報も、演算制御部12の記憶部に格納されている。この位相特性情報と振幅特性情報も、該他の特定のスピーカの特性を、公知の測定手段で測定することによって得た情報である。
このように演算制御部12は、FIRフィルタ11とスピーカ4とによって、他の特定のスピーカの位相特性や振幅特性を模擬するのに必要な情報を、全て有している。そして、これらの情報から、演算制御部12が、FIRフィルタ11に設定すべき位相特性情報や振幅特性情報を算出し、さらにフィルタ係数を算出し、FIRフィルタ11に設定することによって、既設のスピーカ4にて他の特定のスピーカを模倣することができる。この場合、他の特定のスピーカの位相特性や振幅特性を模擬するのに必要な情報を、演算制御部12の記憶部に予め格納しておくことにより、操作入力部13を用いることなく、すなわち、操作入力部13が無い構成であっても、既設のスピーカ4にて他の特定のスピーカを模倣することが可能である。また、演算制御部12の記憶部に、上記のFIRフィルタ11に設定すべき位相特性情報や振幅特性情報に基づいて算出できるフィルタ係数を予め記憶しておけば、演算制御部12ではそのフィルタ係数をFIRフィルタ11に設定するだけで、既設のスピーカ4にて他の特定のスピーカを模倣することができる。
以上に述べたように、演算制御部12の記憶部には、スピーカの特性の情報や、音響装置の各種の用途に応じた所望の特性(位相特性や振幅特性)の情報を格納することができる。例えば、音響装置を用いて演説を行う場合は、演説者の音声が聴取者に明瞭に聞こえることが重要である。話声を明瞭に聴取者に聞かせるのに適した位相特性情報や振幅特性情報を演算制御部12の記憶部に格納しておけば、音響装置の用途(演目)に応じた位相特性や振幅特性をFIRフィルタ11に設定することができる。演算制御部12の記憶部に、例えば、話声を明瞭に聞かせるのに適した位相特性情報や振幅特性情報と、増幅器3やスピーカ4により構成される音響出力装置の位相特性情報や振幅特性情報とを予め格納しておけば、話声を明瞭に聞かせるのに適した位相特性や振幅特性が、FIRフィルタ11と音響出力装置との総合された位相特性や振幅特性によって実現されるように、演算制御部12が、FIRフィルタ11に設定すべき位相特性情報や振幅特性情報を算出し、さらにフィルタ係数を算出し、FIRフィルタ11に設定することによって、話声を明瞭に聞かせるのに適した位相特性や振幅特性を実現することができる。この場合、話声を明瞭に聞かせるのに適した位相特性や振幅特性を実現するのに必要な情報を、演算制御部12の記憶部に予め格納しておくことにより、操作入力部13を用いることなく、すなわち、操作入力部13が無い構成であっても、話声を明瞭に聞かせるのに適した位相特性や振幅特性を実現することが可能である。また、演算制御部12の記憶部に、上記のFIRフィルタ11に設定すべき位相特性情報や振幅特性情報に基づいて算出できるフィルタ係数を予め記憶しておけば、演算制御部12ではそのフィルタ係数をFIRフィルタ11に設定するだけで、話声を明瞭に聞かせるのに適した位相特性や振幅特性を実現することができる。同様に、音響装置を用いて非常用の放送を行う場合や、音響装置を用いて音楽(BGM)を流す場合なども、それぞれの場合に適した位相特性情報や振幅特性情報を演算制御部12の記憶部に格納しておけば、音響装置の用途に応じた位相特性や振幅特性をFIRフィルタ11に設定することができる。
なお、上記の実施形態において、音響調整装置1にD/A変換器2を含めてもよい。また、入力端子INにアナログ音声信号が入力される場合には、入力端子INとFIRフィルタ11との間にA/D(アナログ/デジタル)変換器を挿入すればよいが、このA/D変換器を音響調整装置1に含めてもよい。
また、音響調整装置1において、FIRフィルタ11に入出力される音声信号の振幅特性を変化させずに、位相特性のみを調整するように構成してもよい。この場合、操作入力部13において、FIRフィルタ11の振幅特性を調整するための構成は不要である。
〔第2の実施形態;音響装置〕
図8は、本発明の第2の実施形態の音響装置の構成を示すブロック図である。なお、図8に2点鎖線で示された筐体6及び外部出力端子OUTは、後述の第3の実施形態に関するものであり、第2の実施形態では存在しないものである。
この音響装置は、所謂、アンプ内蔵スピーカであるスピーカ装置に音響調整装置1を内蔵したものであり、筐体5内に、フィルタ装置である音響調整装置1と、音響調整装置1に接続されたD/A(デジタル/アナログ)変換器2と、音響調整装置1の後段にD/A変換器2を介して接続された音響出力装置とが備えられている。
音響出力装置には、D/A変換器2に接続された増幅器3と、増幅器3に接続されたスピーカ4とが備えられている。
音響調整装置1には、FIR(有限インパルス応答)フィルタ11と、フィルタ係数設定手段として機能する演算制御部12と、変更特性指定手段等として機能する操作入力部13とが備えられている。この音響調整装置1のFIRフィルタ11が、音響装置の外部入力端子INとD/A変換器2とを接続する信号線の途中に挿入されている。なお、操作入力部13は、図8では筐体5の内側に示されているが、その一部あるいは全部が筐体5の外部に露出して操作者が操作を行えるようになっている。
FIRフィルタ11では、デジタル信号処理が行われ、例えばマイクロホンから出力されるアナログ音声信号がA/D変換されたデジタル音声信号、あるいはCDプレーヤ等の記録媒体再生装置から出力されるデジタル音声信号が、音響装置の外部入力端子INを介して入力される。FIRフィルタ11にて所定の処理(フィルタリング)が施された信号は、D/A変換器2に入力されてアナログ信号に変換され、さらに増幅器3によって電力増幅されてスピーカ4へ出力され、スピーカ4から拡声音(音響信号)として出力される。
上記音響調整装置1は、第1の実施形態の音響調整装置と同様の構成である。したがって、本実施形態の音響装置では、第1の実施形態と同様の効果が得られ、フィルタ係数の設定により振幅特性と位相特性とをそれぞれ個別的に設定することができるFIRフィルタ11を用い、そのFIRフィルタ11の振幅特性と位相特性とを個別的に設定することにより、聴取者の好みや種々の用途等に応じてスピーカ4から出力される音質の調整を容易に行うことができる。特に、ある周波数の位相を遅らせる、あるいは進めることにより、スピーカ4から出力される音質の調整を行うことが可能になる。
以上に述べた第2の実施形態では、アンプ内蔵スピーカに音響調整装置1を内蔵した構成について説明したが、これ以外でも以下の第3〜第6の実施形態に述べるように、種々の音響装置に第1の実施形態の音響調整装置1を内蔵することができる。
〔第3の実施形態;音響装置〕
第3の実施形態の音響装置は、所謂、アンプに音響調整装置1を内蔵した構成である。この構成は、図8において、筐体5を無くし、2点鎖線で示された筐体6及び外部出力端子OUTを設けた構成である。
この音響装置は、筐体6内に、フィルタ装置である音響調整装置1と、D/A変換器2と、増幅器3とを備えている。そして、この場合、音響装置の後段に、音響出力装置としてスピーカ4が接続されている。すなわち、増幅器3から出力される音声信号は外部出力端子OUTを介してスピーカ4へ入力される。各々の構成要素については、第2の実施形態で述べた通りであり、詳しい説明を省略する。
〔第4の実施形態;音響装置〕
図9は、本発明の第4の実施形態の音響装置の構成を示すブロック図である。
この音響装置は、拡声器に音響調整装置1を内蔵したものであり、筐体7内に、マイクロホン51と、A/D変換器52と、フィルタ装置である音響調整装置1と、D/A変換器2と、増幅器3とを備えている。マイクロホン51では、外部から入力される音響信号を音声信号に変換して出力し、この出力された音声信号は、A/D変換器52においてデジタル信号に変換されて音響調整装置1へ入力される。音響調整装置1、D/A変換器2、増幅器3及びスピーカ4は図8と同様の機能を有するものであり、詳しい説明を省略する。
〔第5の実施形態;音響装置〕
図10は、本発明の第5の実施形態の音響装置の構成を示すブロック図である。
この音響装置は、ワイヤレスチューナに音響調整装置1を内蔵したものであり、筐体8内に、受信回路61と、復調回路62と、フィルタ装置である音響調整装置1と、D/A変換器2とを備えている。そして、図10の場合には、音響装置の後段に、音響出力装置として増幅器3及びスピーカ4が接続され、この音響装置の出力音声信号は外部出力端子63から増幅器3へ入力される。受信回路61では、例えばワイヤレスマイクロホンからの電波をアンテナ(図示せず)を介して受信し、電気信号に変換して出力する。この電気信号は復調回路62にて音声信号に復調されて音響調整装置1へ入力される。音響調整装置1、D/A変換器2、増幅器3及びスピーカ4は図8と同様の機能を有するものであり、詳しい説明を省略する。
〔第6の実施形態;音響装置〕
図11は、本発明の第6の実施形態の音響装置の構成を示すブロック図である。
この音響装置は、オーディオミキサに音響調整装置1を内蔵したものであり、筐体9内に、合成回路71と、フィルタ装置である音響調整装置1と、D/A変換器2とを備えている。そして、図11の場合には、音響装置の後段に、音響出力装置として増幅器3及びスピーカ4が接続され、この音響装置の出力音声信号は外部出力端子73から増幅器3へ入力される。複数の外部入力端子72には、それぞれ外部機器が接続され、音声信号が入力される。例えば、マイクロホンからの音声信号、CDプレーヤ等の記録媒体再生装置からの音声信号などが、外部入力端子72へ入力される。合成回路71では、これらの外部入力端子72から入力された信号を合成(加算)して、音響調整装置1へ出力する。音響調整装置1、D/A変換器2、増幅器3及びスピーカ4は図8と同様の機能を有するものであり、詳しい説明を省略する。
なお、図11では、合成回路71の後段に音響調整装置1を設けているが、後段には設けずに、合成回路71の前段、すなわち各々の外部入力端子72と合成回路71とのそれぞれの間に設けた構成とすることも可能である。
以上に述べた、第2〜第6の実施形態においても、音響調整装置1の構成として、第1の実施形態で述べた種々の構成を用いることができ、第1の実施形態で述べた効果を得ることができる。なお、位相特性及び振幅特性の指定方法、操作方法及び表示方法等については、第1の実施形態で説明した方法により実現することができる。
さらに、表示部および操作入力部は、第2〜第6の各実施形態における音響装置に設けても良いし、外部装置(例えばパーソナルコンピュータや設定用の装置)により構成しても良い。外部装置により構成した場合は、音響装置に表示部や操作入力部を設けなくて良いため安価かつコンパクトな構成が可能になるという利点がある。また、遠隔操作により設定を可能とすることができ、建物へ音響装置が設置された後などにも容易に設定を変更することができるという効果が生じる。
〔第7の実施形態;音声編集プログラム〕
図12(a)は、本発明の第7の実施形態の音声編集プログラムを実行する音声編集装置の構成を示すブロック図であり、図12(b)は、音声編集装置で作成された音声ファイルを再生出力する音響装置の一例を示す図である。
この音声編集装置は、編集処理部10と、操作入力部13と、データ読出し部(データ抽出手段)14と、データ書込み部(ファイル作成手段)17とを備えたコンピュータで構成されている。編集処理部10には、CPU、ROM及びRAM等が内蔵されており、例えばROMに音声編集プログラムが記憶されており、CPUがその音声編集プログラムを実行することにより、FIRフィルタ(フィルタ手段)11及び演算制御部12等として機能する。また、第1のメモリ15及び第2のメモリ16は、それぞれ例えばRAM内の所定の記憶領域によって構成される。図12(a)では、編集処理部10の内部構成は機能的な構成を示している。演算制御部12は、操作入力部13の操作に基づいてFIRフィルタ11にそのフィルタ係数を設定及び変更するフィルタ特性変更手段として機能する他、音声編集装置全体の動作を制御する。なお、音声編集プログラムは、1つのCPUにより処理されるものであってもよいし、複数のCPUによって分散処理されるものであってもよい。
データ読出し部14は、第1のファイル形式の音声ファイル(第1の音声ファイル)が記録されたフラッシュメモリ等の記録媒体から音声波形データを抽出して読み出すための読出し装置によって構成され、このデータ読出し部14によって読み出された音声波形データは、第1のメモリ15に記憶される。
FIRフィルタ11では、第1のメモリ15に記憶されている音声波形データを順次入力して、フィルタ処理を施して第2のメモリ16へ出力する。第2のメモリには、フィルタ処理が施された音声波形データが順次入力されて記憶される。
データ書込み部17は、第2のメモリ16に記憶されている音声波形データを順次読み出し、その音声波形データにヘッダ情報を付加した第2のファイル形式の音声ファイル(第2の音声ファイル)としてフラッシュメモリ等の記録媒体へ書き込む書込み装置である。
音声ファイルは、周知のように、ファイル形式等に応じたヘッダ情報と音声波形データとで構成されている。例えば、上記の第1のファイル形式がWAVE形式であり、第2のファイル形式もWAVE形式である。また、第2のファイル形式をMP3形式としてもよい。また、第1のファイル形式がMP3形式の場合、すなわち、データ読出し部14で読み出されるデータがMP3形式で記録されている場合には、データ読出し部14では、PCM(Pulse Code Modulation)のデータに展開した後、音声波形データを抽出して第1のメモリ15に記憶させるようにすればよい。
フィルタ長がN+1であるN次のFIRフィルタ11では、その出力ynを、フィルタ係数hkと、入力xn−kとを用いて、周知の数1の演算を行って算出する。
このようなFIRフィルタ11では、フィルタ係数h
kを設定することによって振幅周波数特性(振幅特性)と位相周波数特性(位相特性)とが設定される。
演算制御部12は、操作入力部13の操作に応じたフィルタ係数hkを導き出してFIRフィルタ11に設定する。後述の第1〜第3構成例の場合には、演算制御部12は、操作入力部13の操作によって指定された振幅特性及び位相特性に応じたフィルタ係数hkを算出し、FIRフィルタ11に設定する。この場合、その周波数特性(振幅特性及び位相特性)の情報を逆高速フーリエ変換(逆FFT)等を行うことによってフィルタ係数hkを求めることができる。
操作入力部13では、操作者によって、例えばFIRフィルタ11に設定される振幅特性及び位相特性を指定するための操作が行われる。操作入力部13は、後述の第1〜第3構成例の場合には、例えば、液晶ディスプレイとペンタブレットとを統合した液晶ペンタブレット等を用いて構成される。この場合、振幅特性と位相特性を入力するための表示画面が表示され、ポインティングデバイスとしてスタイラスペンを用いる。
図13は、編集処理部10のCPUが音声編集プログラムを実行することによって実現される音声編集装置の動作を示すフローチャートである。
まず、ステップS1では、操作入力部13の操作により指定されたFIRフィルタ11の振幅特性及び位相特性を設定する。
次に、ステップS2では、データ読出し部14が第1の音声ファイルが格納されているフラッシュメモリ等の既存の記録媒体からその音声波形データを順次抽出して第1のメモリ15へ出力する。第1のメモリ15ではデータ読出し部14から出力される音声波形データを記憶する。
次に、ステップS3では、第1のメモリ15に記憶している音声波形データを順次、FIRフィルタ11へ入力させ、FIRフィルタ11にてフィルタ処理が施された音声波形データを第2のメモリ16に順次記憶させる。
次に、ステップS4では、データ書込み部17が第2のメモリ16から音声波形データを順次読みだし、ヘッダ情報を付加した第2の音声ファイルを作成し、記録媒体に書き込む。
この記録媒体に記録されている第2の音声ファイルは、例えば、図12(b)に示される音響装置によって再生出力することができる。
この音響装置は、第2の音声ファイルを再生する記録媒体再生装置18と、この記録媒体再生装置18の後段に接続された音響出力装置とが備えられている。音響出力装置には、記録媒体再生装置18に接続された増幅器3と、増幅器3に接続されたスピーカ4とが備えられている。記録媒体再生装置18で再生された第2の音声ファイルの音声信号(この場合はアナログ音声信号)は、増幅器3によって電力増幅されてスピーカ4へ出力され、スピーカ4から拡声音(音響信号)として出力される。記録媒体再生装置18は、例えばデジタルオーディオプレーヤや、パソコン(パーソナルコンピュータ)にインストールされている音楽再生用のアプリケーションソフトウェアによって実現されるものである。
以下、各構成例について述べるが、各構成例では、操作入力部13及び演算制御部12の構成及び機能が異なり、他の部分については同じである。
なお、本実施形態において、フィルタ係数の設定・変更は、フィルタリング処理を実現するための演算に用いるフィルタ係数としての数値を設定・変更することである。また、音声編集プログラムは、前述の編集処理部10の動作のみならず、操作入力部13の動作をも実現するためのプログラムとして構成される。
(第1構成例)
本実施形態における第1構成例の操作入力部13及びそれに対応する演算制御部12の機能は、第1の実施形態における第1構成例と同様であり、詳しい説明は省略する。
すなわち、本実施形態における第1構成例の場合の操作入力部13も、図3に示す表示画面31を有し、操作者は、表示画面上で所望するFIRフィルタ11の振幅特性と位相特性とを容易に指定することが可能になる。
(第2、第3構成例)
本実施形態における第2、第3構成例の操作入力部13及びそれに対応する演算制御部12の機能は、第1の実施形態における第2、第3構成例と同様であり、詳しい説明は省略する。
すなわち、本実施形態における第2、第3構成例の場合の操作入力部13も、図4に示す表示画面41を有し、操作者は、表示画面上で所望するFIRフィルタ11の振幅特性と位相特性とを容易に指定することが可能になる。
(第4構成例)
次に、第4構成例について説明する。この第4構成例では、演算制御部12には、例えばRAMの所定の領域によって構成される記憶部を有しており、ここにFIRフィルタ11に関する複数の振幅特性情報と複数の位相特性情報とを予め格納(記憶)しておく。そして、操作入力部13を操作することによって、記憶部に格納されたものの中から所望の振幅特性情報及び位相特性情報を選択するように構成されている。この第4構成例の場合の操作入力部13には、例えば、複数の振幅特性のそれぞれに対応する振幅特性指定ボタン及び複数の位相特性のそれぞれに対応する位相特性指定ボタンが設けられている。これらの指定ボタンは、押しボタン式等の実際に人間の手で選択操作するものであってもよいし、タッチパネルに表示され、指やスタイラスペンで触れることにより選択されるものであってもよく、いずれの場合も振幅特性及び位相特性を指定するための操作が容易である。操作入力部13では、選択された振幅特性指定ボタンに対応する振幅特性の選択信号と、選択された位相特性指定ボタンに対応する位相特性の選択信号とを演算制御部12へ出力する。演算制御部12では、それぞれの選択信号に対応する振幅特性情報と位相特性情報とを記憶部から読み出し、それらの振幅特性情報と位相特性情報とに基づき、逆FFT等の演算を行うことによりフィルタ係数hkを求め、それをFIRフィルタ11に設定する。
また、上記の第4構成例において、演算制御部12内の記憶部の記憶している情報の書き換えができるように操作入力部13を構成しておいてもよい。例えば、演算制御部12の記憶部には、増幅器3やスピーカ4により構成される音響出力装置に応じたFIRフィルタ11の振幅特性情報と位相特性情報とが記憶されている場合に、音響出力装置を他の音響出力装置に変更した場合に、前記他の音響出力装置に応じたFIRフィルタ11の位相特性情報及び振幅特性情報に書き換えるようにすればよい。この場合、操作入力部13に、フラッシュメモリ、CD等の記録媒体の情報を読み取る読取り手段を設けておき、記録媒体から読み取った新しい振幅特性情報と位相特性情報を記憶部に格納(記憶)するように構成すればよい。記録媒体は、音声編集装置あるいは音響装置の製造会社等から配布されたものであってもよいし、ユーザがパソコン(パーソナルコンピュータ)を操作して音声編集装置あるいは音響装置の製造会社等のホストコンピュータから、新しい振幅特性情報と位相特性情報のファイルをダウンロードして記録媒体に記録したものであってもよい。なお、音声編集装置が上記のパソコンで構成される場合には、前述のダウンロードしたファイルはパソコン内の記憶部に格納しておけばよい。
(第5構成例)
次に、第5構成例について説明する。この第5構成例では、操作入力部13には、例えば、FIRフィルタ11の初期状態(例えばゲインが0)あるいは直前に設定された振幅特性から、予め設定された複数の周波数の各々におけるゲインを増加するための振幅増加周波数指定ボタン及びゲインを減少するための振幅減少周波数指定ボタンが各周波数に対応して設けられているとともに、FIRフィルタ11の初期状態(例えば位相が0)あるいは直前に設定された位相特性から、予め設定された複数の周波数の各々における位相を進めるための位相進相周波数指定ボタン及び位相を遅らせるための位相遅相周波数指定ボタンが各周波数に対応して設けられている。この操作入力部13及びそれに対応する演算制御部12の機能は、第1の実施形態における第5構成例と同様であり、詳しい説明は省略する。
この第5構成例の操作入力部13を用いた場合、振幅を変更したい周波数に対応する振幅増加周波数指定ボタン及び振幅減少周波数指定ボタンを押す等の簡単な操作によってFIRフィルタ11の振幅特性を変更することができる。また、位相を変更したい周波数に対応する位相進相周波数指定ボタン及び位相遅相周波数指定ボタンを押す等の簡単な操作によってFIRフィルタ11の位相特性を変更することができる。
(第6〜第8構成例)
本実施形態における第6〜第8構成例の操作入力部13及びそれに対応する演算制御部12の機能は、第1の実施形態における第6〜第8構成例と同様であり、詳しい説明は省略する。
本実施形態では、フィルタ係数の設定により振幅特性と位相特性とをそれぞれ個別的に設定することができるFIRフィルタ11を用い、そのFIRフィルタ11の振幅特性と位相特性とを個別的に設定することにより、聴取者の好みや種々の用途等に応じてスピーカ4から出力されるときの音質の調整が行われた音声ファイルを作成することが可能になる。特に、ある周波数の位相を遅らせる、あるいは進めることにより、スピーカ4から出力されるときの音質の調整が行われた音声ファイルを作成することが可能になる。
上記のように本実施形態では、音声データの編集処理にFIRフィルタ11を用いている。つまりデジタル信号処理の技術を用いている。
そして、上記のような操作入力部13を用いてFIRフィルタ11の位相特性を設定することができるようにしているので、これまでの音響調整方法では実現することのできなかったような種々の音質の調整が行われた音声ファイルを作成することが可能になる。上記のようにFIRフィルタ11を用いているため、任意の位相特性を設定することができる。つまり、各周波数毎に任意の位相特性を持たせることができる。しかも、任意の周波数範囲においてのみ、位相特性を調整するということも可能である。例えば、100Hzから200Hzまでの周波数範囲においてのみ、音声信号に対して位相の変化を施し、他の周波数範囲においては位相を変化させないようにすることもできる。
また、上記のような操作入力部13を用いてFIRフィルタ11の位相特性と振幅特性とを設定することができるようにしているので、位相特性と振幅特性の設定を、それぞれ独立して行うことができる。つまり、FIRフィルタ11に既に設定されている振幅特性を変更させることなく、位相特性のみを既に設定されている特性(位相特性)から別の特性(位相特性)に変更させることもできる。
また、これとは反対に、FIRフィルタ11に既に設定されている位相特性を変更させることなく、振幅特性のみを既に設定されている特性(振幅特性)から別の特性(振幅特性)に変更させることもできる。
さらに、FIRフィルタ11に既に設定されている位相特性と振幅特性の両方を、別の特性に変更させることもできる。
また、FIRフィルタ11に対して、周波数によらず一定のゲインを与えるような振幅特性を設定しておき、音声信号の位相特性のみに変化を与えるように、FIRフィルタ11の位相特性を設定することもできる。
特に、振幅を変化させずに位相を進めることにより、位相を進めた帯域の音がより強調された聞こえ方になり、かつ騒々しく聞こえなくなるなど従来では実現できなかった調整ができるようになる。さらに、振幅特性の変更と組み合わせて位相特性を変更できるため、それぞれに効果的な設定が可能となり、より複雑で自由な音質の調整が行われた音声ファイルを作成することが可能になる。
また、ある所望の位相特性を、音声信号に施したいような場合は、次のようにすればよい。つまり、例えば増幅器3やスピーカ4により構成される音響出力装置と、FIRフィルタ11との総合の位相特性が、前記所望の位相特性と同一となるように、FIRフィルタ11の位相特性を設定すればよいのである。より具体的に説明すると、増幅器3やスピーカ4で構成される音響出力装置の位相特性と、前記所望の位相特性との差分を、FIRフィルタ11の位相特性として設定すればよいのである。また、音声信号に対して、振幅特性には変化を与えず、位相特性にのみ変化を与えるようにしてもよい。また、位相特性を所望のものにすると同時に、音声信号に対して所望の振幅特性を施したい場合には、増幅器3やスピーカ4で構成される音響出力装置の振幅特性と、前記所望の振幅特性との差分を、FIRフィルタ11の振幅特性として設定すればよい。
例えば、先述の第1構成例〜第3構成例では、操作入力部13の表示画面上で、FIRフィルタ11の位相特性及び振幅特性を指定するようにしたが、表示画面上で、例えば増幅器3やスピーカ4により構成される音響出力装置とFIRフィルタ11との総合の位相特性及び振幅特性を指定するように構成してもよい。この場合、演算制御部12の記憶部に、音響出力装置の位相特性情報と振幅特性情報とを格納しておく。そして、演算制御部12において、表示画面上で指定された位相特性を表す情報と音響出力装置の位相特性情報との差分を求め、それをFIRフィルタ11の位相特性情報とし、表示画面上で指定された振幅特性を表す情報と音響出力装置の振幅特性情報との差分を求め、それをFIRフィルタ11の振幅特性情報とする。さらに、演算制御部12では、上記のようにして求めたFIRフィルタ11の振幅特性情報と位相特性情報とに基づき、逆FFT等の演算を行うことによりフィルタ係数hkを求め、それをFIRフィルタ11に設定する。
この場合、演算制御部12の記憶部に記憶されている音響出力装置の位相特性情報と振幅特性情報とは、増幅器3及びスピーカ4により構成される音響出力装置の特性を、公知の測定手段で測定することによって得た情報である。演算制御部12では、記憶部に記憶している情報の書き換えが可能であり、音響出力装置を他の音響出力装置に変更した場合に、前記他の音響出力装置の位相特性情報及び振幅特性情報を記憶部に記憶して用いればよい。この場合、例えば、操作入力部13に、フラッシュメモリ、CD等の記録媒体の情報を読み取る読取り手段を設けておき、記録媒体から読み取った他の音響出力装置の振幅特性情報と位相特性情報を記憶部に格納(記憶)するように構成すればよい。記録媒体は、音声編集装置あるいは音響装置の製造会社等から配布されたものであってもよいし、ユーザがパソコン(パーソナルコンピュータ)を操作して音声編集装置あるいは音響装置の製造会社等のホストコンピュータから、新しい振幅特性情報と位相特性情報のファイルをダウンロードして記録媒体に記録したものであってもよい。なお、音声編集装置が上記のパソコンで構成される場合には、前述のダウンロードしたファイルはパソコン内の記憶部に格納しておけばよい。
また、先述の第4構成例では、操作入力部13の複数の位相特性指定ボタン及び複数の振幅特性指定ボタンをFIRフィルタ11の位相特性及び振幅特性を指定するために用いるように構成したが、音響出力装置とFIRフィルタ11との総合の位相特性及び振幅特性を指定するために用いるように構成してもよい。この場合、演算制御部12の記憶部に、複数の位相特性指定ボタン及び複数の振幅特性指定ボタンによって指定される音響出力装置とFIRフィルタ11との総合の位相特性情報及び振幅特性情報と、音響出力装置の位相特性情報及び振幅特性情報とを格納しておく。そして、演算制御部12において、位相特性指定ボタンによって指定された位相特性情報と音響出力装置の位相特性情報との差分を求め、それをFIRフィルタ11の位相特性情報とし、振幅特性指定ボタンによって指定された振幅特性情報と音響出力装置の振幅特性情報との差分を求め、それをFIRフィルタ11の振幅特性情報とする。さらに、演算制御部12では、上記のようにして求めたFIRフィルタ11の振幅特性情報と位相特性情報とに基づき、逆FFT等の演算を行うことによりフィルタ係数hkを求め、それをFIRフィルタ11に設定する。
この場合、演算制御部12の記憶部に記憶されている音響出力装置の位相特性情報と振幅特性情報とは、増幅器3及びスピーカ4により構成される音響出力装置の特性を、公知の測定手段で測定することによって得た情報である。演算制御部12では、記憶部に記憶している情報の書き換えが可能であり、音響出力装置を他の音響出力装置に変更した場合に、前記他の音響出力装置の位相特性情報及び振幅特性情報を記憶部に記憶して用いればよい。また、位相特性指定ボタン及び振幅特性指定ボタンによって指定される音響出力装置とFIRフィルタ11との総合の位相特性及び振幅特性の情報も書き換えることができる。このように記憶部の情報を書き換えるための構成は、前述の場合と同様、例えば操作入力部13に、フラッシュメモリ、CD等の記録媒体の情報を読み取る読取り手段を設けておき、記録媒体から読み取った新しい情報を記憶部に格納(記憶)するように構成すればよい。
ここで、演算制御部12の記憶部に格納される、音響出力装置とFIRフィルタ11との総合の位相特性及び振幅特性の情報は、音響装置が用いられる各種の用途に応じた位相特性や振幅特性の情報である。このような情報としては、例えば、音響装置を用いて非常用のアナウンスの放送を行う場合、すなわち、非常用のアナウンスが録音されているフラッシュメモリ等の記録媒体を記録媒体再生装置にて再生して非常用のアナウンスが放送される場合に、聴取者がその非常用のアナウンスの内容を聞き取りやすい等、それに適した位相特性情報や振幅特性情報がある。また、音響装置を用いて音楽(BGM)を流す場合、すなわち、楽曲等が録音されているフラッシュメモリ等の記録媒体を記録媒体再生装置にて再生して楽曲等が放送される場合に、その放送が耳障りにならない等、それに適した位相特性情報や振幅特性情報などがある。
また、スピーカ4以外の他の特定のスピーカの位相特性を、音声編集装置で作成された音声ファイルとスピーカ4とを用いて模擬することもできる。そのためには、スピーカ4と音声編集装置との総合の位相特性が、前記他の特定のスピーカの位相特性と同一となるように、音声編集装置の位相特性を設定すればよい。
つまり、他の特定のスピーカの位相特性と、既設のスピーカ4の位相特性とがわかっていれば、それらのスピーカの位相特性の差分をFIRフィルタ11の位相特性として設定することにより、既設のスピーカ4にて他の特定のスピーカの位相特性を模倣することができる。ここで、振幅特性については必ずしも、他の特定のスピーカの振幅特性と既設のスピーカ4の振幅特性との差分がFIRフィルタ11の振幅特性と等しくなるように設定しなくても、他の特定のスピーカの位相特性と既設のスピーカ4の位相特性との差分がFIRフィルタ11の位相特性と等しくなるように設定することにより、既設のスピーカ4にて他の特定のスピーカをある程度模倣することができる。
なお、他の特定のスピーカの振幅特性と、既設のスピーカ4の振幅特性とがわかっている場合に、それらのスピーカの振幅特性の差分をFIRフィルタ11の振幅特性として設定して、既設のスピーカ4にて他の特定のスピーカの位相特性のみならず、振幅特性も併せて模倣するようにしてもよい。
演算制御部12は、前述のように記憶部を有しており、ここにスピーカの周波数特性情報等を格納することができるようになっている。
演算制御部12の記憶部には、スピーカ4の位相特性情報と振幅特性情報とが格納されている。この位相特性情報と振幅特性情報とは、スピーカ4の特性を、公知の測定手段で測定することによって得た情報である。
また、スピーカ4ではない、他の特定のスピーカの位相特性情報と振幅特性情報も、演算制御部12の記憶部に格納されている。この位相特性情報と振幅特性情報も、該他の特定のスピーカの特性を、公知の測定手段で測定することによって得た情報である。
このように演算制御部12は、作成される音声ファイルとスピーカ4とによって、他の特定のスピーカの位相特性や振幅特性を模擬するのに必要な情報を、全て有している。そして、これらの情報から、演算制御部12が、FIRフィルタ11に設定すべき位相特性情報や振幅特性情報を算出し、さらにフィルタ係数を算出し、FIRフィルタ11に設定することによって、作成された音声ファイルを用いて既設のスピーカ4にて他の特定のスピーカを模倣することができる。この場合、他の特定のスピーカの位相特性や振幅特性を模擬するのに必要な情報を、演算制御部12の記憶部に予め格納しておくことにより、操作入力部13を用いることなく、すなわち、操作入力部13によって所望する振幅特性及び位相特性の指定を行わなくても、作成された音声ファイルを用いて既設のスピーカ4にて他の特定のスピーカを模倣することが可能である。また、演算制御部12の記憶部に、上記のFIRフィルタ11に設定すべき位相特性情報や振幅特性情報に基づいて算出できるフィルタ係数を予め記憶しておけば、演算制御部12ではそのフィルタ係数をFIRフィルタ11に設定するだけで、作成された音声ファイルを用いて既設のスピーカ4にて他の特定のスピーカを模倣することができる。
以上に述べたように、演算制御部12の記憶部には、スピーカの特性の情報や、音響装置の各種の用途に応じた所望の特性(位相特性や振幅特性)の情報を格納することができる。音響装置の用途(演目)に応じた位相特性情報や振幅特性情報を演算制御部12の記憶部に格納しておけば、音響装置の用途(演目)に応じた位相特性や振幅特性をFIRフィルタ11に設定することができる。例えば、演算制御部12の記憶部に、非常用のアナウンスの放送を行うのに適した位相特性情報や振幅特性情報と、増幅器3やスピーカ4により構成される音響出力装置の位相特性情報や振幅特性情報とを予め格納しておけば、非常用のアナウンスの放送を行うのに適した位相特性や振幅特性が、FIRフィルタ11と音響出力装置との総合された位相特性や振幅特性によって実現されるように、演算制御部12が、FIRフィルタ11に設定すべき位相特性情報や振幅特性情報を算出し、さらにフィルタ係数を算出し、FIRフィルタ11に設定することによって、非常用のアナウンスの放送を行うのに適した位相特性や振幅特性を実現することができる。この場合、話声を明瞭に聞かせるのに適した位相特性や振幅特性を実現するのに必要な情報を、演算制御部12の記憶部に予め格納しておくことにより、操作入力部13を用いることなく、すなわち、操作入力部13によって所望する振幅特性及び位相特性の指定を行わなくても、非常用のアナウンスの放送を行うのに適した位相特性や振幅特性を実現することが可能である。また、演算制御部12の記憶部に、上記のFIRフィルタ11に設定すべき位相特性情報や振幅特性情報に基づいて算出できるフィルタ係数を予め記憶しておけば、演算制御部12ではそのフィルタ係数をFIRフィルタ11に設定するだけで、非常用のアナウンスの放送を行うのに適した位相特性や振幅特性を実現することができる。同様に、音響装置を用いて音楽(BGM)を流す場合なども、その場合に適した位相特性情報や振幅特性情報を演算制御部12の記憶部に格納しておけば、音響装置の用途に応じた位相特性や振幅特性をFIRフィルタ11に設定することができる。
また、音声編集装置において、FIRフィルタ11に入出力される音声信号の振幅特性を変化させずに、位相特性のみを調整するように構成してもよい。この場合、操作入力部13において、FIRフィルタ11の振幅特性を調整するための構成は不要である。
なお、本実施形態において、位相特性及び振幅特性の指定方法、操作方法及び表示方法等については、第1の実施形態で説明した方法により実現することができる。
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。