JP5660235B2 - 表面微細凹凸体および表面微細凹凸体の製造方法 - Google Patents

表面微細凹凸体および表面微細凹凸体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、光拡散体および光拡散体形成用原版として好適に使用される表面微細凹凸体と、その製造方法に関する。
微細な波状の凹凸からなる凹凸パターンが表面に形成されたシート状の表面微細凹凸体は、その光学的特性から、光拡散性シート等の光拡散体として使用されることが知られている。
光拡散性シートの製造方法として、例えば特許文献1には、加熱収縮性フィルムからなる樹脂製の基材上に樹脂製の硬質層を設けた積層シートを加熱し、加熱収縮性フィルムを収縮させることにより、硬質層を折り畳むように変形させて凹凸状にして、硬質層の表面に凹凸パターンを形成する方法が開示されている。また、特許文献1には、加熱収縮性フィルムを収縮させた後、延伸を行うことにより、配向のばらつきが小さな凹凸パターンを形成できることが記載されている。このようなシートを光拡散性シートとすると、主拡散方向の拡散角度が大きく(例えば25〜30°程度。)、主拡散方向に対して直交する方向の拡散角度は小さい(例えば3°程度。)という優れた異方性を示す。
特開2011−213051号公報
しかしながら最近では、主拡散方向に広い拡散角度(少なくとも18°。)を維持したまま、主拡散方向に対して直交する方向にもある程度の拡散角度(少なくとも4°。)を有する光拡散性シートも求められるようになっている。例えば、ゆるやかな曲面状に形成された自動車のフロントガラスに走行速度などの情報を表示させるヘッドアップディスプレイシステムにおいては、画像情報を拡散させながらフロントガラスに鮮明に表示させるために、主拡散方向に対して直交する方向にもある程度の拡散角度を有する光拡散性シートが求められる。このような光拡散性シートは、例えば、加熱収縮性フィルムとして二軸方向に熱収縮する二軸方向熱収縮フィルムを用い、二軸方向に収縮させることでも製造できると考えられる。ところが、該方法は、製造条件の制御が難しく、一定の性能を有する光拡散性シートが安定には得られにくい。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、光拡散体として用いた場合に、主拡散方向に広い拡散角度(少なくとも18°。)を維持したまま、主拡散方向に対して直交する方向にもある程度の拡散角度(少なくとも4°。)を有し、製造も容易な表面微細凹凸体とその製造方法を提供する。
本発明は以下の構成を有する。
[1]表面の少なくとも一部に微細凹凸が形成された表面微細凹凸体であって、前記微細凹凸は、互いに非平行に蛇行し、不規則に形成された複数の凸条部と、該複数の凸条部間の凹条部とからなり、最頻ピッチが3〜20μmである波状の凹凸パターンと、前記波状の凹凸パターン上に形成され、下記の見かけの最頻径が1〜10μmである多数の凹部または凸部と、を有することを特徴とする表面微細凹凸体。
(見かけの最頻径)
前記微細凹凸が形成された表面の光学顕微鏡写真からフーリエ変換画像を得て、該フーリエ変換画像から前記多数の凹部または凸部についての直交する2方向の径の頻度分布を得て、該頻度分布に基づいて得られた前記多数の凹部または凸部についての最頻径の平均値。
[2]前記凸条部の平均高さが4〜7μmである、[1]に記載の表面微細凹凸体。
[3]前記微細凹凸における前記凹部または前記凸部の占有面積割合が、30〜70%である、[1]または[2]に記載の表面微細凹凸体。
[4]光拡散体である、[1]〜[3]のいずれかに記載の表面微細凹凸体。
[5]前記微細凹凸を転写して光拡散体を製造するための光拡散体形成用原版である、[1]〜[3]のいずれかに記載の表面微細凹凸体。
[6]樹脂からなる基材フィルムの片面に、マトリクス樹脂中に多数の粒子が分散してなり、厚みが0.05μmを超え5.0μm以下である硬質層を設けて積層シートを形成する積層工程と、前記積層シートの少なくとも前記硬質層を折り畳むように変形させる変形工程とを有し、
前記マトリクス樹脂は、前記基材フィルムを構成する前記樹脂よりもガラス転移温度が10℃以上高く、
前記粒子は、前記基材フィルムを構成する前記樹脂のガラス転移温度より10℃高い温度未満では、熱により粒子形状が変化しない材料からなり、
前記粒子の粒径は、前記硬質層の厚みよりも大きい、表面微細凹凸体の製造方法。
[7]前記基材フィルムは、一軸方向加熱収縮性フィルムであり、前記変形工程は、前記積層シートを加熱して前記一軸方向加熱収縮性フィルムを収縮させる工程である、[6]の表面微細凹凸体の製造方法。
[8][6]または[7]に記載の製造方法で製造された表面微細凹凸体を光拡散体形成用原版として用い、該表面微細凹凸体の前記微細凹凸を転写する転写工程を有する、光拡散体の製造方法。
本発明によれば、光拡散体として用いた場合に、主拡散方向に広い拡散角度(少なくとも18°。)を維持したまま、主拡散方向に対して直交する方向にもある程度の拡散角度(少なくとも4°)を有し、製造も容易な表面微細凹凸体とその製造方法を提供できる。
(a)実施例1の光拡散性シートの微細凹凸を観察した光学顕微鏡写真、(b)実施例1の光拡散性シートの微細凹凸を観察したレーザ顕微鏡写真である。 図1(a)の光学顕微鏡写真中のI−I’線に沿って切断した部分を模式的に示す拡大縦断面図である。 図1の光拡散性シートの光学顕微鏡写真からグレースケール画像を得て、該画像をフーリエ変換したフーリエ変換画像である。 図3のフーリエ変換画像を模式的に示す模式図である。 図3の中心からA1の中で最大頻度となる点を通るように線L1−1を引き、線L1−1の頻度分布をプロットしたグラフである。 図3の中心からL1−1と直交する方向に線L1−2を引き、線L1−2の頻度分布をプロットしたグラフである。 図1の光拡散性シートの微細凹凸形成面を原子間力顕微鏡により観察し、その観察結果から得た、光拡散性シートの要部の縦断面図である。 凸部の平均高さを求める方法の説明図である。 凸部の平均高さを求める方法の説明図である。 (a)従来の異方性が高い光拡散性シートを用いた場合の出射光の投影像の形状を示すイメージ図、(b)本発明による光拡散性シートを用いた場合の出射光の投影像の形状を示すイメージ図である。 図1の光拡散性シートを製造するための原版(表面微細凹凸体)の縦断面図である。 図11の原版(表面微細凹凸体)の製造方法を説明する断面図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
<表面微細凹凸体>
図1(a)は、本発明の表面微細凹凸体の一実施形態例(後述の実施例1)である光拡散性シート(光拡散体)の片面の光学顕微鏡写真(平面視;縦0.4mm×横0.5mmの視野部分を示す。)であり、図1(b)は、実施例1の光拡散性シートの微細凹凸をレーザ顕微鏡(キーエンス社製「VK−8510」)で観察したレーザ顕微鏡写真である。図1(b)中の線αは、該光拡散性シートを線βに沿って図中横方向に切断した切断面における高さプロファイルを示している。なお、図1(a)と(b)とでは、倍率が異なる。
図2は、図1(a)の光学顕微鏡写真中のI−I’線(後述する凸条部と凹条部とが繰り返される方向に沿う線。)に沿って切断した部分を模式的に示す拡大縦断面図である。なお、図2は、光拡散性シートの縦断面形状の理解しやすさの観点から、単純化して示している。
この例の光拡散性シート10は、図2に示すように、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなる透明な基材11と、該基材11の一方の面上に設けられた電離放射線硬化性樹脂の硬化物からなる透明な表面層12との2層構造であり、表面層12の露出している側の面に、波状の凹凸パターン13と、該凹凸パターン13上に形成された多数の凸部14とから構成された微細凹凸が形成されている。凸部14は、この例では、概略半球状に形成されている。また、この例では、基材11の露出している面(表面層12が設けられた方とは反対側の面。)は、平滑面となっている。
微細凹凸における波状の凹凸パターン13は、図1中では縦方向に延び、図2中では紙面に対して垂直な方向に延びる複数の筋状の凸条部13aと、該複数の凸条部13a間の凹条部13bとが、一方向(図1および2中横方向)に交互に繰り返されたものである。
各凸条部13aの縦断面形状は、図2に示すように、それぞれが基端側から先端側に向かって細くなる先細り形状である。
複数の凸条部13aは、図1に示すとおり、それぞれが蛇行しており、かつ、互いに非平行であり、不規則に形成されている。すなわち、各凸条部13aにおいて、稜線が蛇行し、各凹条部13bにおいて、谷線が蛇行している。また、隣接する凸条部13aの稜線の間隔が一定しておらず、隣接する凹条部13bの谷線の間隔が一定していない。
また、各凸条部13aにおいて稜線の高さが一定しておらず、各凹条部13bにおいて谷線の高さが一定していない。そのため、図2に示すように、各凸条部13aの縦断面形状は、それぞれ異なっており一律ではなく、不規則である。
微細凹凸は、このような波状の凹凸パターン13と、ランダムに分布した多数の凸部14とで、構成されている。
基材11としては、機械的強度、寸法安定性に優れたPETの他、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンアクリレート、ポリスチレンなどの樹脂およびガラスなど、透明性を有する材料を使用できる。基材11の厚みは、例えば30〜500μmである。
表面層12としては、電離放射線硬化性樹脂の硬化物の他、熱硬化性樹脂の硬化物、熱可塑性樹脂等が挙げられる。電離放射線硬化性樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂が挙げられる。表面層12の厚みは、波状の凹凸パターン13を形成するのに充分な厚みであればよく、最も厚い部分の厚みとして、10〜25μm程度であることが好ましい。
また、この例では、光拡散性シート10の微細凹凸は、波状の凹凸パターン13と、多数の凸部14とから構成されているが、本発明の表面微細凹凸体の微細凹凸は、波状の凹凸パターンと、多数の凹部とから構成されていてもよい。
なお、光拡散性シート10において、波状の凹凸パターン13の繰り返し方向(図1中横方向)をY方向、該Y方向と直交する方向(図1中縦方向)をX方向という場合がある。
図示例の光拡散性シート10は、光拡散性を発揮する観点から、波状の凹凸パターン13の最頻ピッチが3〜20μmとされている。波状の凹凸パターン13の最頻ピッチは、好ましくは7〜15μm、より好ましくは11〜13μmである。ピッチとは、隣合う凸条部の頂部間の距離である。
最頻ピッチが上記範囲内であると、該光拡散性シート10に対して、微細凹凸が形成された面(以下、微細凹凸形成面という場合がある。)または該面と反対側の平滑面側から光を入射させた場合、入射面とは反対面からの出射光は、Y方向(主拡散方向)に良好に拡散し、Y方向に充分な拡散角度(例えば18°以上、好ましくは23°以上、より好ましくは25°以上。1/10拡散角度は、(拡散角度×1.4+25°)以下、好ましくは(拡散角度×1.4+22°)以下、より好ましくは(拡散角度×1.4+20°)以下。)を示す。Y方向の拡散角度の上限値は、特に制限はないが、例えば30°である。
そして、図示例の光拡散性シート10の微細凹凸は、上述のように主拡散方向への拡散を主に担う波状の凹凸パターン13に加えて、ランダムに形成された多数の凸部14を有している。そのため、波状の凹凸パターン13の異方性が凸部14により適度に弱められる。その結果、該光拡散性シート10に対して、いずれか一方の面から光を入射させた場合、反対面からの出射光は、X方向(主拡散方向に直交する方向)にも拡散し、Y方向よりも小さい、ある程度の拡散角度(例えば4°以上、好ましくは8°以上、より好ましくは10°以上。1/10拡散角度は、(拡散角度×1.6+25°)以下、好ましくは(拡散角度×1.6+20°)以下、より好ましくは(拡散角度×1.6+18°)以下。)を示す。X方向の拡散角度の上限値は、特に制限はないが、例えば20°である。
凸部14の見かけの最頻径は、1〜10μmが好ましく、より好ましくは3〜6μm、さらに好ましくは4〜5μmである。凸部14の見かけの最頻径が上記範囲内であると、波状の凹凸パターン13の異方性を適度に弱めることができ、Y方向およびX方向の両方の拡散角度を上記範囲に制御しやすく、たとえば、Y方向は好ましくは25〜30°、X方向は好ましくは10〜15°に制御しやすい。また、Y方向およびX方向の両方の1/10拡散角度を上記範囲に制御しやすく、たとえば、Y方向は好ましくは(拡散角度×1.4+20°)以下、X方向は好ましくは(拡散角度×1.6+18°)以下に制御しやすい。
本明細書における拡散角度(一般に、「FWHM」と呼称される場合がある。)および1/10拡散角度は、以下の方法により測定できる。
まず、光拡散性シート10に対していずれか一方の面、すなわち微細凹凸形成面または反対側の平滑面側から光を照射、入射させる。その際に、入射面とは反対面側から垂直に出光する出射光(出光角度=0°)の照度を基準値とし、Y方向に沿う出光角度−90°〜+90°の範囲内の出射光の照度を、上記基準値に対する相対値として、1°おきに測定する。そして、各Y方向の出光角度に対する照度の値をプロットして照度曲線を得る。
該照度曲線における半値幅(全半値幅)を主拡散方向(Y方向)の拡散角度とする。また、1/10値幅(全1/10値幅)を主拡散方向(Y方向)の1/10拡散角度とする。
同様に、X方向に沿う出光角度−90°〜+90°の範囲内の出射光の照度を上記基準値に対する相対値として、1°おきに測定する。そして、各X方向の出光角度に対する照度の値をプロットして照度曲線を得る。該照度曲線における半値幅(全半値幅)を主拡散方向に直交する方向(X方向)の拡散角度とする。また、1/10値幅(全1/10値幅)を主拡散方向に直交する方向(X方向)の1/10拡散角度とする。
本明細書において、波状の凹凸パターン13の最頻ピッチ、凸部14の見かけの最頻径は、以下のように測定、定義される。
まず、図1(a)のような光学顕微鏡写真を得る。その際の観察視野は、縦0.4〜1.6mm、横0.5〜2mmとする。この画像がjpeg等の圧縮画像である場合は、これをグレースケールのTif画像に変換する。そして、フーリエ変換を行い、図3のようなフーリエ変換画像を得る。
また、図3のフーリエ変換画像の模式図を図4として示す。
ここで、図3において符号A1およびA2の白色部は、その形状に方向性があることから、波状の凹凸パターンのピッチの情報を含む。白色の輝度は頻度を示す(ただし中心点は除く)。一方、図3の白色円環Bは、その形状に方向性がないことから、多数の凸部の径の情報を含む。
そこで、図3の中心からA1の中で最大頻度となる点を通るように線L1−1を引き、線L1−1の頻度分布をプロットすると、図5のグラフが得られる。
また、図3の中心からL1−1と直交する方向に線L1−2を引き、線L1−2の頻度分布をプロットすると、図6のグラフが得られる。
図5において、頻度が高い1/Xが、光拡散性シート10における、波状の凹凸パターンの最頻ピッチとなる。
また、図5および図6において、頻度が高い1/X、1/Yが、光拡散性シート10における、多数の凸部のそれぞれL1−1方向、L1−2方向の最頻径となる。すなわち、1/Xは波状の凹凸パターンの最頻ピッチ、(1/X +1/Y )/2は多数の凸部の見かけの最頻径である。
なお、図3のフーリエ変換画像において、中心からの方位は、図1(a)に存在する周期構造(凹凸パターン13)の方向を意味し、中心からの距離は、図1(a)に存在する周期構造の周期の逆数を意味する。この例では、図1(a)に示すように、波状の凹凸パターン13が図中横方向に繰り返されているため、フーリエ変換画像において中心からの図中横方向に延びる線L1−1において、最頻ピッチの逆数に相当する部分の輝度(頻度)が高くなっている。
また、図4中、Xは、線L1−1(図4では図示略。)の円環を通る部分において、頻度が最大となる位置であり、また、図4中、Yは、線L1−2(図4では図示略。)の円環を通る部分において、頻度が最大となる位置である。
図示例のような光学顕微鏡写真を少なくとも5枚撮影し、それぞれの写真について上記のように求めた最頻ピッチの平均値を波状の凹凸パターン13の「最頻ピッチ」と定義する。また、それぞれの写真について上記のように求めた見かけの最頻径の平均値を凸部14の「見かけの最頻径」と定義する。なお、表面微細凹凸体の微細凹凸は、凸部の代わりに、凹部を有していてもよく、凹部の「見かけの最頻径」も凸部の「見かけの最頻径」と同じ方法で求められる。
波状の凹凸パターン13を構成する凸条部13aの平均高さは、4〜7μmが好ましく、より好ましくは5〜6μmである。凸条部13aの平均高さが上記範囲であると、光拡散性が充分に得られる。
本明細書において、波状の凹凸パターン13の凸条部13aの平均高さは、以下のように測定、定義される。
まず、光拡散性シート10の微細凹凸形成面を原子間力顕微鏡により観察し、その観察結果から、Y方向に沿って波状の凹凸パターン13を切断した面について、図7のような縦断面図を得る。そして、凸部14が存在していない部分の凸条部13aの断面図から、該凸条部13の高さHを求める。具体的には、凸条部13aの高さHは、該凸条部13aの頂部Tと該凸条部13aの一方側に位置する凹条部13bの底部B1との垂直距離をH1とし、該凸条部13aの頂部Tと該凸条部13aの他方側に位置する凹条部13bの底部B2との垂直距離をH2とした場合に、H=(H1+H2)/2で求められる。
このような計測を凸部14が存在していない凸条部13aの50箇所に対して行い、50のデータの平均値を「凸条部の平均高さ」と定義する。
一方、凸部14の平均高さは、0.5〜3μmが好ましく、より好ましくは1〜2μm、さらに好ましくは1.1〜1.5μmである。凸部14の平均高さが上記範囲であると、波状の凹凸パターン13の異方性を適度に弱めることができ、Y方向およびX方向の両方の拡散角度を上記範囲に制御しやすい。
本明細書において、凸部14の平均高さは、以下のように測定、定義される。
まず、上述のようにして図7の断面図を得る。そして、図8に示すように、波状の凹凸パターン13に由来する形状と、凸部14に由来する形状とに波形分離する。なお、波形分離は、波状の凹凸パターン13に由来する形状をサインカーブとして行う。ついで、図8の断面図から、波状の凹凸パターン13に由来する形状を差し引き、図9に示すように、凸部14に由来する形状のみの断面図を得る。そして、図9の断面図において、凸部14の高さH’を、H’=(H1’+H2’)/2として求める。H1’は、図9の断面図において、凸部14の頂部T’と該凸部14の一方側のベースラインLαとの垂直距離であり、H2’は、凸部14の頂部T’と該凸部14の他方側のベースラインLβとの垂直距離である。
このような計測を50個の凸部14に対して行い、50のデータの平均値を「凸部の平均高さ」と定義する。
光拡散性シート10の微細凹凸における凸部14の占有面積割合は、30〜70%が好ましく、より好ましくは40〜60%、さらに好ましくは45〜55%である。凸部14の占有面積割合が上記範囲であると、波状の凹凸パターン13の異方性を適度に弱めることができ、Y方向およびX方向の両方の拡散角度を上記範囲に制御しやすい。
本明細書において、光拡散性シート10における凸部14の占有面積割合γ(%)は、以下のように測定、定義される。
まず、図1(a)のような光学顕微鏡写真を得て、視野全体の面積S2(例えば縦0.4〜1.6mm、横0.5〜2mm)中に認められる凸部14の個数nを数え、視野全体において、n個の凸部14によって占有されている面積S1=nrπを求める。占有面積割合γ(%)は以下の式により求められる。
γ(%)=S1×100/S2(ただし、式中のrは、凸部の見かけの最頻径の1/2(すなわち半径)である。)
このように図示例の光拡散性シート10は、その片面に、Y方向への拡散を主に担う特定の波状の凹凸パターン13と、該波状の凹凸パターン13上に形成され、該波状の凹凸パターン13の異方性を適度に弱め、X方向の拡散を増加させる多数の凸部14とからなる微細凹凸を有している。そのため、いずれか一方の面から光拡散性シート10に光を入射させた場合、Y方向には例えば18°以上、好ましくは23°以上、より好ましくは25°以上の充分な拡散角度が得られる。また、(拡散角度×1.4+25°)以下、好ましくは(拡散角度×1.4+22°)以下、より好ましくは(拡散角度×1.4+20°)以下の充分な1/10拡散角度が得られる。一方、X方向にも例えば4°以上、好ましくは8°以上、より好ましくは10°以上の拡散角度が得られる。また、(拡散角度×1.6+25°)以下、好ましくは(拡散角度×1.6+20°)以下、より好ましくは(拡散角度×1.6+18°)以下の充分な1/10拡散角度が得られる。従来の異方性が高い光拡散性シートを用いると、出射光はY方向には拡散するがX方向にはほとんど拡散せず、そのため出射光の投影像は、図10(a)に示すように、扁平率の大きな楕円状であった。これに対して、図示例の光拡散性シート10を用いると、出射光はX方向にも拡散するため、出射光の投影像は、図10(b)に示すように、扁平率の小さな楕円状となる。
また、図示例の光拡散性シート10の波状の凹凸パターン13を構成している凸条部13aは、互いに非平行で、かつ、それぞれが蛇行していて、規則性がない。そのため、凹凸パターン13の異方性が適度に弱められていて、凸部14が形成されていることによる効果とあいまって、X方向の拡散角度を増加させる効果がより顕著に発現するものと考えられる。
X方向の拡散角度を増加させる方法としては、光拡散剤を添加する方法も考えられる。
しかしながら、光拡散剤の添加は、光拡散性シートの光透過率を下げる傾向にある。これに対して、本発明のように微細凹凸を特定に制御することでX方向の拡散角度を増加させる方法では、光拡散剤を添加する必要がなく、また、添加する場合でも、その添加量を少量とできる。そのため、光透過率を高く維持できる。
このような図示例の光拡散性シート10は、例えば、ゆるやかな曲面状に形成された自動車のフロントガラスに現在の速度情報やカーナビ情報などを鮮明に表示させるヘッドアップディスプレイ(HUD)システムなどにおいて、拡散部材として好適に使用される。
また、該光拡散性シート10は、プロジェクター用の拡散部材;テレビ、モニター、ノート型パーソナルコンピュータ、タブレット型パーソナルコンピュータ、スマートフォン、携帯電話等のバックライト用の拡散部材;等としても好適に使用される。
また、該光拡散性シート10は、コピー機等に使用される、LED光源を線状に配列したスキャナ光源において、導光部材の出射面を構成する拡散部材等としても好適に使用される。
<表面微細凹凸体の製造方法>
図示例の光拡散性シート10は、微細凹凸を表面に有する光拡散性シート形成用原版(光拡散体形成用原版)を型として用い、該光拡散性シート形成用原版(以下、「原版」ともいう。)の微細凹凸を転写する転写工程を有する方法により製造できる。
図示例の光拡散性シート10は、原版の微細凹凸を転写して1次転写品を得て、ついで、該1次転写品の微細凹凸をさらに転写して得た2次転写品である。1次転写品の有する微細凹凸は、原版の微細凹凸の反転パターンであるが、2次転写品の微細凹凸は、原版の微細凹凸と同じパターンである。よって、この例では原版として、図示例の光拡散性シート10と同じ微細凹凸を有する表面微細凹凸体を製造し、これを転写の型として2次転写を行い、図示例の光拡散性シート10を製造している。
また、n次転写品において、nが偶数である場合には、該転写品の有する微細凹凸は原版の微細凹凸と同じパターンであるが、nが奇数である場合には、該転写品の有する微細凹凸は原版の微細凹凸の反転パターンとなる。そして、nが奇数であるn次転写品であって、かつ、転写に用いた原版の微細凹凸が凸部を有するものである場合、そのn次転写品(nが奇数。)の微細凹凸は、凸部が反転した凹部を有するものとなる。すでに述べたとおり、本発明の表面微細凹凸体の具備する微細凹凸は、凸部の代わりに凹部を有する形態であってもよい。よって、本発明の表面微細凹凸体には、上述の原版と、原版のn次転写品(nが偶数。)だけでなく、原版のn次転写品(nが奇数。)も含まれる。
以下、2次転写品である図示例の光拡散性シート10の製造方法について説明する。
[原版]
図示例の光拡散性シート10を製造するにあたっては、まず、図11に示す表面微細凹凸体20を製造し、これを原版として用いる。該原版は、樹脂からなる基材21と、該基材21の片面全体に設けられた硬質層22とを有し、硬質層22の露出した側の表面が、図示例の光拡散性シート10と同様の微細凹凸に形成されたものである。
硬質層22は、この例では、マトリクス樹脂22aと該マトリクス樹脂22a中に分散した粒子22bとからなり、折り畳まれたように変形しているとともに、硬質層22の厚みt(粒子が存在しない部分の厚み)は粒子の粒径dよりも小さく設定されている。そのため、該硬質層22は、折り畳まれたように変形したことにより形成された波状の凹凸パターン13’(凸条部13a’および凹条部13b’)と、硬質層22に分散した各粒子22bが硬質層22の表面側に突出することにより形成された凸部14’とからなる微細凹凸を有する。基材21における硬質層22との接触面は、折り畳まれたように変形した硬質層22の形状に追従した凹凸状となっている。
なお、硬質層22の厚みtとは、表面微細凹凸体20をその面方向に対して垂直に切った断面(縦断面)の顕微鏡写真から、硬質層22のうち粒子22bの存在しない部分を10カ所以上無作為に抽出して各部分の厚さを法線方向に測定した際の、得られた各数値の平均値である。
また、粒子22bの粒径dとは、均一に単分散している粒子について、レーザー回折・散乱式粒度分布分析装置で測定したモード径(最頻径)である。
このような図11の表面微細凹凸体20は、詳しくは後述するように、樹脂からなる基材フィルムの片面に、マトリクス樹脂中に粒子が分散した硬質層を設けて積層シートを形成する積層工程と、積層シートの少なくとも硬質層を折り畳むように変形させる変形工程とを有する方法により製造できる。この方法によれば、それぞれが蛇行し、互いに非平行で、不規則な凸条部13a’を形成できる。また、各凸条部13a’の縦断面は、基端側から先端側に向かって先細り形状になる。
図11の表面微細凹凸体20においては、基材21を構成する樹脂のガラス転移温度Tg1よりも、マトリクス樹脂22aのガラス転移温度Tg2が、10℃以上高いことが必要である。また、粒子22bは、基材21を構成する樹脂のガラス転移温度より10℃高い温度未満では、熱により粒子形状が変化しない材料からなることが必要である。
すなわち、基材21を構成する樹脂と、マトリクス樹脂22aとにおいては、これらのガラス転移温度の差(Tg2−Tg1)が10℃以上となるように選択されることが必要であり、該差は20℃以上が好ましく、30℃以上がより好ましい。(Tg2−Tg1)が10℃以上であると、Tg2とTg1の間の温度で、容易に、後述の変形工程において加熱収縮などの加工が行える。また、Tg2とTg1の間の温度を加工温度とすると、基材のヤング率がマトリクス樹脂22aのヤング率より高くなる条件で加工でき、その結果、後述の変形工程において、硬質層22に波状の凹凸パターン13’を容易に形成できる。加工温度とは、変形工程で少なくとも硬質層22を折り畳むように変形させる際の温度(例えば熱収縮時の加熱温度。)のことである。
また、Tg2が400℃を超えるような樹脂を使用する必要性は経済面から乏しく、Tg1が−150℃より低い樹脂は存在しないことから、(Tg2−Tg1)は550℃以下であることが好ましく、200℃以下であることがより好ましい。なお、後述の変形工程の加工温度における基材21とマトリクス樹脂22aとのヤング率の差は、波状の凹凸パターン13’を容易に形成できることから、0.01〜300GPaであることが好ましく、0.1〜10GPaであることがより好ましい。
ヤング率は、JIS K 7113−1995に準拠して測定した値である。
Tg1は−150〜300℃であることが好ましく、−120〜200℃であることがより好ましい。Tg1が−150℃より低い樹脂は存在せず、Tg1が300℃以下であれば、上述の加工温度まで、容易に昇温、加熱できる。
上述の加工温度における、基材21を構成する樹脂のヤング率は0.01〜100MPaであることが好ましく、0.1〜10MPaであることがより好ましい。基材21を構成する樹脂のヤング率が0.01MPa以上であれば、基材として使用可能な硬さであり、100MPa以下であれば、硬質層22が変形する際に同時に追従して変形することが可能な軟らかさである。
粒子22bを構成する材料には、基材21を構成する樹脂のガラス転移温度より10℃高い温度未満では、熱により粒子形状が変化しない材料の1種以上を用いることができる。
例えば、粒子22bを構成する材料が、ガラス転移温度を有する樹脂およびガラス転移温度を有する無機材料からなる群から選ばれる1種以上である場合、そのガラス転移温度Tg3が、マトリクス樹脂のガラス転移温度Tg2と同様の条件を満たすこと、すなわち、(Tg3−Tg1)が10℃以上となるように選択されることが必要であり、(Tg3−Tg1)が20℃以上がより好ましく、30℃以上が更に好ましい。(Tg3−Tg1)が10℃以上であると、上述の加工温度において、粒子22bが変形した溶融したりせず、確実に凸部14’を形成する。
粒子22bを構成する材料が、ガラス転移温度を有さない材料、例えば内部架橋型樹脂などである場合には、そのビカット軟化温度(JIS K7206に規定)が、上述の条件を満たすこと、すなわち、基材21を構成する樹脂のガラス転移温度より10℃以上高いことが好ましく、20℃以上高いことが好ましく、30℃以上高いことがより好ましい。
なお、本明細書において、ガラス転移温度Tg3についての好ましい温度範囲などの記載は、粒子22bがガラス転移温度を有さず、ビカット軟化温度を有する材料からなる場合、そのビカット軟化温度にも該当するものとする。
さらに、粒子22bを構成する材料としては、ガラス転移温度、ビカット軟化温度が測定できないものであっても、基材21を構成する樹脂のガラス転移温度Tg1より10℃高い温度未満において、熱により粒子形状が変化しない材料であれば、本発明において使用可能である。
Tg2およびTg3は、40〜400℃であることが好ましく、80〜250℃であることがより好ましい。Tg2およびTg3が40℃以上であれば、上述の加工温度を室温またはそれ以上にすることができて有用であり、Tg2が400℃を超えるようなマトリクス樹脂22aやTg3が400℃を超えるような粒子22bを使用することは、経済性の面から必要性に乏しい。
上述の加工温度におけるマトリクス樹脂22aのヤング率は0.01〜300GPaであることが好ましく、0.1〜10GPaであることがより好ましい。マトリクス樹脂22aのヤング率が0.01GPa以上であれば、基材21を構成する樹脂の加工温度におけるヤング率より充分な硬さが得られ、波状の凹凸パターン13’が形成された後、該凹凸パターン13’を維持するのに充分な硬さである。ヤング率が300GPaを超えるような樹脂をマトリクス樹脂22aとして使用することは、経済性の面から必要性に乏しい。
基材21を構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、スチレン−ブタジエンブロック共重合体等のポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリジメチルシロキサン等のシリコーン樹脂、フッ素樹脂、ABS樹脂、ポリアミド、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリシクロオレフィンなどの樹脂が挙げられる。
マトリクス樹脂22aとしては、そのガラス転移温度Tg2が上述の条件を満たすように、基材21の種類等に応じて選択され、例えば、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、アクリル樹脂、スチレン−アクリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、フッ素樹脂などを使用することができる。
これらの中でも透明性の点では、アクリル樹脂が好ましい。
マトリクス樹脂22aは単独で使用してもよいが、波状の凹凸パターンの最頻ピッチ、平均高さおよび配向度を調整するなどの目的に応じて適宜併用してもよい。例えば、同種ではあるがガラス転移温度の異なる樹脂を併用したり、異なる種類の樹脂を併用したりできる。
粒子22bを構成する樹脂としては、そのガラス転移温度Tg3(またはビカット軟化点。)が上述の条件を満たすように、基材21の種類等に応じて選択され、例えば、アクリル系熱可塑性樹脂粒子、ポリスチレン系熱可塑性樹脂粒子、アクリル系架橋型樹脂粒子、ポリスチレン系架橋型樹脂粒子などが挙げられる。また、無機材料としては、ガラスビーズなどが挙げられる。
基材21の厚みは30〜500μmであることが好ましい。基材の厚みが30μm以上であれば、製造された原版が破れにくくなり、500μm以下であれば、原版を容易に薄型化できる。なお、基材21の厚みとは、図11の表面微細凹凸体(原版)20をシート面に対して垂直に切った断面(縦断面)の顕微鏡写真から、10カ所以上無作為に抽出して基材21の厚さを測定した際の、得られた各数値の平均値である。
また、基材21を支持するために、厚さ5〜500μmの樹脂製の支持体を別途設けてもよい。
硬質層22の厚みtは、0.05μmを超え5μm以下であることが好ましく、0.1〜2μmであることがより好ましい。硬質層22の厚みtが0.05μmを超え5μm以下であれば、光拡散体として好適な波状の凹凸パターン13’を形成できる。また、基材21と硬質層22との間には、密着性の向上やより微細な構造を形成することを目的として、プライマー層を形成してもよい。
粒子22bの粒径dは、硬質層22の厚みtより大きいことが必要であり、硬質層22の厚みtに応じて設定される。また、図11の表面微細凹凸体20を原版として用いて製造された図示例の光拡散性シート10の凸部14の見かけの最頻径が、上述の好適な範囲となるように、適宜設定される。好ましい粒径dは、例えば、5〜10μmで、より好ましくは5〜8μmである。
なお、図11の表面微細凹凸体20は、原版ではなく光拡散体として使用することもできる。その場合には、該表面微細凹凸体20が光拡散体としての機能を充分に奏するように、基材21、マトリクス樹脂22a、粒子22bに用いる材料に透明材料を用いる。
[原版の製造方法]
図11の表面微細凹凸体20は、図12のような積層シート30、すなわち、樹脂からなる基材フィルム31の片面(平坦な面)に、マトリクス樹脂中に多数の粒子22bが分散してなり、厚みが0.05μmを超え5.0μm以下である硬質層32を設けた積層シート30を形成する積層工程と、積層シート30の少なくとも硬質層32を折り畳むように変形させる変形工程とを有する方法により製造できる。ここで基材フィルム31は、図11の表面微細凹凸体20の基材21に相当する。また、ここで平坦とは、JIS B0601に記載の中心線平均粗さ0.1μm以下の面である。
(積層工程)
積層工程では、まず、マトリクス樹脂22aと粒子22bと溶媒とを含む塗工液(分散液または溶液)を調製し、該塗工液を基材フィルム31の片面にスピンコーターやバーコーター等により塗工して乾燥させ、図12のように、厚みt’が0.05μmを超え、5.0μm以下である硬質層32を形成する。この時点での硬質層32は、折り畳むように変形していない。
硬質層32は、このように塗工液を基材フィルム31に直接塗工して設ける代わりに、あらかじめ作製した硬質層(マトリクス樹脂中に粒子が分散してなるフィルム)を基材フィルムに積層する方法で設けてもよい。
基材フィルム31は、樹脂からなる一軸方向加熱収縮性フィルムであることが好ましい。該一軸方向加熱収縮性フィルムを用いると、次の変形工程において積層シート30を加熱することにより、容易に、硬質層32を折り畳むように変形し、波状の凹凸パターン13’を形成できる。また、この方法によれば、それぞれが蛇行し、互いに非平行となる不規則な凸条部13a’を形成できる。
一軸方向加熱収縮性フィルムを構成する樹脂としては、基材21を構成する樹脂としてすでに例示したとおりである。具体的には、ポリエチレンテレフタレート系シュリンクフィルム、ポリスチレン系シュリンクフィルム、ポリオレフィン系シュリンクフィルム、ポリ塩化ビニル系シュリンクフィルムなどのシュリンクフィルムが好ましく使用できる。
これらのシュリンクフィルムの中でも、一軸方向において、50〜70%収縮するものが好ましい。50〜70%収縮するシュリンクフィルムを用いれば、変形率を50%以上にでき、その結果、好適な最頻ピッチ、凸条部13a’の高さの波状の凹凸パターン13’を形成できる。
ここで、変形率とは、(変形前の長さ−変形後の長さ)×100/(変形前の長さ)(%)のことである。あるいは、(変形した長さ)×100/(変形前の長さ)(%)のことである。
また、このように基材フィルム31として一軸方向加熱収縮性フィルムを用い、次の変形工程でこれを熱収縮させる場合には、より容易に凹凸パターン13’を形成できることから、マトリクス樹脂22aのヤング率を0.01〜300GPaにすることが好ましく、0.1〜10GPaにすることがより好ましい。
塗工液に用いるマトリクス樹脂22aおよび粒子22bを構成する樹脂としては、それぞれすでに例示したものを使用できるが、マトリクス樹脂22aのガラス転移温度Tg2と、粒子22bのガラス転移温度Tg3とが、基材フィルム31のガラス転移温度Tg1よりも10℃以上高くなるように各材質を選択し、組み合わせることが重要である。このようにそれぞれの材質を選択したうえで、厚みt’が0.05μmを超え5.0μm以下である硬質層32を一軸方向加熱収縮性フィルム(基材フィルム31)の片面に設けた積層シート30を用いると、次の変形工程を経ることにより、最頻ピッチが3〜20μmであり、凸条部13a’の平均高さが4〜7μmである波状の凹凸パターン13’が形成されやすい。
塗工液に用いる溶媒としては、マトリクス樹脂22aの種類にもよるが、マトリクス樹脂22aが例えばアクリル系樹脂の場合、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトンなどのうちの1種以上を使用できる。
塗工液中のマトリクス樹脂22aの濃度は、正味量(固形分量)として、5〜10質量%であることが塗工性の点で好ましい。また、粒子22bの量は、マトリクス樹脂22aの正味量100質量部に対して、10〜50質量部であることが好ましく、20〜30質量部であることがより好ましい。このような範囲であると、形成される微細凹凸における凸部14a’または凹部の占有面積割合を上述の好適な範囲内に制御することができる。
ここで正味量(固形分量)とは、塗工液の質量(100質量%)に対して、該塗工液中の溶媒が揮発した後に残る固形分の質量の比率のことをいう。
なお、積層工程で形成される硬質層32の厚みt’は、0.05μmを超え5.0μm以下の範囲内であれば、連続的に変化していても構わない。その場合、変形工程により形成される凹凸パターンのピッチおよび深さが連続的に変化するようになる。硬質層32の厚みt’は、次の変形工程を経てもほとんど変化せす、t’=tと考えることができる。
(変形工程)
上述のようにして得られた積層シート30を加熱して、積層シート30の基材フィルム31を熱収縮させることにより、図11の表面微細凹凸体20が得られる。なお、変形工程としては、例えば、特許第4683011号公報等に開示の公知の方法を採用できる。
加熱方法としては、熱風、蒸気、熱水または遠赤外線中に通す方法等が挙げられ、中でも、均一に収縮させることができることから、熱風または遠赤外線に通す方法が好ましい。
基材フィルム31を熱収縮させる際の加熱温度(加工温度)は、Tg2とTg1の間の温度とすることが好ましく、具体的には、使用する基材フィルム31の種類および目的とする凹凸パターン13’のピッチ、凸条部13a’の高さ等に応じて適宜選択することが好ましい。
この製造方法では、硬質層22の厚さが薄いほど、また、硬質層22のヤング率が低いほど、凹凸パターン13’の最頻ピッチが小さくなり、また、基材フィルム31の変形率が高いほど、凸条部13a’の高さが大きくなる。したがって、凹凸パターン13’の最頻ピッチおよび凸条部13a’の高さを所望の値にするためには、前記条件を適宜選択する必要がある。
なお、図11のような構成の表面微細凹凸体20は、下記(1)〜(4)の方法で製造することもできる。
(1)平坦な基材フィルムの片面の全部に、未変形の硬質層を設けて積層シートを形成し、積層シート全体を表面に沿った一方向に圧縮する方法。
基材フィルムのガラス転移温度が室温未満の場合、積層シートの圧縮は室温で行い、基材フィルムのガラス転移温度が室温以上の場合、積層シートの圧縮は、基材のガラス転移温度以上、硬質層のガラス転移温度未満で行う。
(2)平坦な基材フィルムの片面の全部に、未変形の硬質層を設けて積層シートを形成し、積層シートを一方向に延伸し、延伸方向に対する直交方向を収縮させて、硬質層を表面に沿った一方向に圧縮する方法。
基材フィルムのガラス転移温度が室温未満の場合、積層シートの延伸は室温で行い、基材フィルムのガラス転移温度が室温以上の場合、積層シートの延伸は、基材フィルムのガラス転移温度以上、硬質層のガラス転移温度未満で行う。
(3)未硬化の電離放射線硬化性樹脂により形成された平坦な基材フィルムに、未変形の硬質層を積層して積層シートを形成し、電離放射線を照射して基材フィルムを硬化させることにより収縮させて、基材フィルムに積層された硬質層を表面に沿った少なくとも一方向に圧縮する方法。
(4)溶媒を膨潤させて膨張させた平坦な基材フィルムに、未変形の硬質層を積層して積層シートを形成し、基材フィルム中の溶媒を乾燥し、除去することにより収縮させて、基材フィルムに積層された硬質層を表面に沿った少なくとも一方向に圧縮する方法。
(1)の方法において、積層シートを形成する方法としては、例えば、平坦な基材フィルムの片面に、粒子を含む樹脂の溶液または分散液をスピンコーターやバーコーター等により塗工し、溶媒を乾燥させる方法、平坦な基材フィルムの片面に、あらかじめ作製した硬質層を積層する方法などが挙げられる。積層シート全体を表面に沿った一方向に圧縮する方法としては、例えば、積層シートの一端部とその反対側の端部とを、万力等により挟んで圧縮する方法などが挙げられる。
(2)の方法において、積層シートを一方向に延伸する方法としては、例えば、積層シートの一端部とその反対側の端部とを、引っ張って延伸する方法などが挙げられる。
(3)の方法において、電離放射線硬化性樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂などが挙げられる。
(4)の方法において、溶媒は基材フィルムを構成する樹脂の種類に応じて適宜選択される。溶媒の乾燥温度は溶媒の種類に応じて適宜選択される。
(2)〜(4)の方法における硬質層においても、(1)の方法で用いるものと同様の成分を用いることができ、同様の厚さとすることができる。また、積層シートの形成方法は、(1)の方法と同様に、基材フィルムの片面に塗工液を塗工し、溶媒を乾燥させる方法、基材フィルムの片面に、あらかじめ作製した硬質層を積層する方法を適用できる。
[原版を用いた転写による表面微細凹凸体の製法]
図11の表面微細凹凸体20を原版として用いて、図示例の光拡散性シート10を製造する場合には、該表面微細凹凸体(原版)20の微細凹凸を他の材料に転写する転写工程を行う。この例では、該表面微細凹凸体(原版)20の硬質層22の表面に形成された微細凹凸を他の材料に転写し、原版の微細凹凸の反転パターンを表面に有する1次転写品を得て、次いで、該1次転写品の反転パターンを他の材料に転写し、2次転写品である図示例の光拡散性シート10を得る。転写工程としては、例えば、特許第4683011号公報等に開示の公知の方法を採用できる。
具体的には、原版である図11の表面微細凹凸体20の微細凹凸に対して、離型剤を含む未硬化の電離放射線硬化性樹脂を例えば3〜30μmの厚さに収まるように、Tダイコーター、ロールコーター、バーコーターなどのコーターで塗布し、電離放射線を照射して硬化させた後、原版を剥離して、1次転写品を得る。1次転写品は、原版の微細凹凸の反転パターンを有する。一方、PETからなる透明な基材11を用意し、その片面に、未硬化の電離放射線硬化性樹脂を微細凹凸を充分に覆う厚さで塗布する。そして、塗布された未硬化の電離放射線硬化性樹脂の層に対して、先に得られた1次転写品の反転パターンを有する面を押し当て、電離放射線を照射して硬化させた後、1次転写品を剥離する。電離放射線の照射は、1次転写品側、透明なPET基材側のうち、電離放射線透過性を有するいずれか一方側から行えばよい。これにより、PETからなる透明な基材11と、その片面上に形成された電離放射線硬化性樹脂硬化物の表面層12とからなり、表面層12の表面に微細凹凸が形成された図1および図2の光拡散性シート(2次転写品)10が得られる。
電離放射線硬化性樹脂としては、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂などが挙げられる。照射する電離放射線の種類は、樹脂の種類に応じて適宜選択する。電離放射線としては、一般には紫外線および電子線を意味することが多いが、本明細書においては、可視光線、X線、イオン線等も含む。
未硬化の電離放射線硬化性樹脂としては、エポキシアクリレート、エポキシ化油アクリレート、ウレタンアクリレート、不飽和ポリエステル、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ビニル/アクリレート、ポリエン/アクリレート、シリコンアクリレート、ポリブタジエン、ポリスチリルメチルメタクリレート等のプレポリマー、脂肪族アクリレート、脂環式アクリレート、芳香族アクリレート、水酸基含有アクリレート、アリル基含有アクリレート、グリシジル基含有アクリレート、カルボキシ基含有アクリレート、ハロゲン含有アクリレート等のモノマーの中から選ばれる1種類以上の成分を含有するものが挙げられる。未硬化の電離放射線硬化性樹脂は溶媒等で希釈することが好ましい。未硬化の電離放射線硬化性樹脂には、フッ素樹脂、シリコーン樹脂等を添加してもよい。また、未硬化の電離放射線硬化性樹脂が紫外線硬化性である場合には、未硬化の電離放射線硬化性樹脂にアセトフェノン類、ベンゾフェノン類等の光重合開始剤を添加することが好ましい。
また、電離放射線硬化性樹脂の代わりに、例えば、未硬化のメラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂や、アクリル樹脂、ポリオレフィン、ポリエステル等の熱可塑性樹脂を用いて転写を行ってもよく、微細凹凸が転写できる限り、その具体的方法、転写する材料に制限はない。
熱硬化性樹脂を用いる場合には、例えば液状の未硬化の熱硬化性樹脂を微細凹凸に塗布し、加熱により硬化させる方法が挙げられ、熱可塑性樹脂を用いる場合には、熱可塑性樹脂のシートを用い、微細凹凸に押し当てながら加熱して軟化させた後、冷却する方法が挙げられる。
また、上述のように、2次転写品を製造する場合には、例えば特許第4683011号公報などに記載されている、めっきロールを用いる方法も挙げられる。具体的には、まず、原版として長尺なシート状物を製造し、該原版を丸めて円筒の内側に貼り付け、該円筒の内側にロールを挿入した状態でめっきを行い、円筒からロールを取り出してめっきロール(1次転写品)を得る。ついで、該めっきロールの微細凹凸を転写することにより、光拡散性シート(2次転写品)を得る。
原版としては、枚葉タイプのものもウェブタイプのものも用いることができる。ウェブタイプの原版を用いると、ウェブタイプの1次転写品および2次転写品を得ることができる。枚葉タイプにおいては、該枚葉タイプの原版を平板状の型として使用するスタンプ法、枚葉タイプの原版をロールに巻きつけて円筒状の型として使用するロールインプリント法等を適用できる。また、射出成形機の型の内側に枚葉タイプの原版を配置させてもよい。ただし、これら枚葉タイプの原版を用いる方法において、図示例のような光拡性散シートを大量生産するためには、転写を多数回繰り返す必要がある。転写性(離型性)が低い場合には、転写すべき微細凹凸に目詰まりが生じ、微細凹凸の転写が不完全になる場合がある。これに対して、原版をウェブタイプとすると、大面積で連続的に微細凹凸を転写でき、転写を多数繰り返さなくても、必要な量の光拡散性シートを短時間に製造できる。
[原版の製造方法および原版を用いた転写による表面微細凹凸体の製法の変形例]
上述の[原版の製造方法]の積層工程においては、マトリクス樹脂22aと粒子22bと溶媒とを含む塗工液を用いた。しかしながら、粒子を含まず、マトリクス樹脂と溶媒とを含む塗工液を用いて硬質層を形成し、変形工程により波状の凹凸パターンとし、その後に、該凹凸パターン上に、多数の凹部または凸部を形成してもよい。硬質層の形成方法は、粒子を用いない以外は、上述の方法と同様に行える。変形工程も、上述の方法と同様に行える。ついで行われる、形成された凹凸パターン上に、多数の凹部または凸部を形成する方法としては、後述の(5)〜(8)の方法が挙げられる。
(5)回転式精密切削加工機により切削加工する方法。
(6)凹部または凸部と同様な大きさ、径を有する突起物を前記波状の凹凸パターン上に押し付けて凹みを形成する方法。
(7)樹脂又は無機物の溶融物を微粒子化したものを前記波状の凹凸パターン上に付着させた後、冷却固化して前記樹脂又は無機物によって形成された凸部を形成する方法。
(8)樹脂又は無機物を分散媒に分散した液を前記波状の凹凸パターン上に付着させた後、分散媒を蒸発させて前記樹脂又は無機物によって形成された凸部を形成する方法。
なお、上記(7)又は(8)の方法においてインクジェット印刷方式を応用することにより、高精度で波状の凹凸パターン上に多数の凹部または凸部を形成することができる。
また、粒子を含まず、マトリクス樹脂と溶媒とを含む塗工液を用いて硬質層を形成し、変形工程により波状の凹凸パターンとしたもの(多数の凹部または凸部は未だ形成されていないもの)を原版として転写品を得て、該転写品に対して、上記(5)〜(8)の方法により、凹凸パターン上に多数の凹部または凸部を形成してもよい。そして、これを原版として転写することにより、表面微細凹凸体を製造することもできる。
<その他の形態について>
以上の説明においては、積層工程と変形工程により製造された表面微細凹凸体を原版とし、該表面微細凹凸体の微細凹凸を転写した1次転写品を得て、ついで、該1次転写品の微細凹凸(原版の反転パターン)を転写した2次転写品を光拡散性シート10とした。
しかしながら、本発明は、以上の形態に限定されない。
すなわち、上述の積層工程と変形工程により製造された図11のような表面微細凹凸体20そのものを光拡散性シートとして使用することもできる。また、積層工程と変形工程により製造された表面微細凹凸体20を原版として得られた1次転写品や、n次転写品(nは3以上の整数。)を光拡散性シートとして使用することもでき、転写品であれば、2次転写品に限定されない。
また、原版を用いて、曲面を有する成形体の該曲面に、微細凹凸を転写してもよい。
また、積層工程と変形工程により製造された表面微細凹凸体やそのn次転写品を原版として用いて、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の透明な熱可塑性樹脂を射出成形し、微細凹凸が表面の少なくとも一部に形成された射出成形品を製造してもよい。
なお、先に具体的に示した積層工程と変形工程により製造された表面微細凹凸体20を原版として得られたn次転写品において、nが奇数の場合には、微細凹凸として、特定の波状の凹凸パターン上に、凸部ではなく、凹部が形成されている。これは、nが奇数であるn次転写品においては、粒子に基づいて形成される凸部の反転パターン、すなわち、凹部が形成されるためである。このように微細凹凸として、特定の波状の凹凸パターンとともに凹部を有する表面微細凹凸体であっても、波状の凹凸パターンによる異方性が凹部により弱められているため、Y方向に充分な拡散角度を有し、かつ、X方向にもある程度の拡散角度を示す。よって、nが奇数であるn次転写品であっても、nが偶数であるn次転写品と同等の光拡散性を示す。
また、硬質層の形成に用いる粒子としては、樹脂粒子、無機粒子が使用でき、変形工程や、微細凹凸を転写する工程において、溶融したり変形したりしない限り、どのような材料からなるものであってもよい。ただし、上述のとおり、図11のように粒子そのものを備えた表面微細凹凸体20を光拡散性シートとして使用する場合には、粒子として、透明粒子、好適にはアクリル系架橋型樹脂粒子、ガラスビーズ、ポリスチレン系架橋型樹脂粒子などを用いる必要がある。
また、以上の例では、表面微細凹凸体、光拡散性シートとして、シート状物を例示したが、シート状物に限定されず、立体成形体であってもよい。
また、微細凹凸は、表面微細凹凸体の表面の少なくとも一部であれば、目的に応じて、いかなる部分に形成されていてもよい。例えば、表面微細凹凸体がシート状物である場合、一方の面のみに形成されていても、両面に形成されていても、各面において一部のみに形成されていてもよいし、シート状物の周面(端面)の少なくとも一部に形成されていてもよい。さらに、表面微細凹凸体が立体成形体である場合にも、全表面の全面に形成されていても、一部のみに形成されていてもよい。なお、表面微細凹凸体が立体成形体である場合、該立体成形体は、光拡散性シートについて例示した用途と同様の用途に使用できる。すなわち、HUDシステム用の拡散部材;プロジェクター用の拡散部材;テレビ、モニター、ノート型パーソナルコンピュータ、タブレット型パーソナルコンピュータ、スマートフォン、携帯電話等のバックライト用の拡散部材;コピー機等に使用される、LED光源を線状に配列したスキャナ光源において、導光部材の少なくとも出射面を構成する拡散部材;等として好適に使用できる。
以下、本発明について、実施例を例示して具体的に説明する。
[実施例1]
下記塗工液(1)をポリエチレンテレフタレート一軸方向加熱収縮性フィルム(東洋紡株式会社製「SC807」、厚さ:30μm、ガラス転移温度Tg1=80℃)の片面に、塗工乾燥後の硬質層の厚みt’が2μmになるようにバーコーター(メイヤーバー♯14)により塗工し、積層シートを得た。
(塗工液(1))
アクリル樹脂A(ガラス転移温度Tg2=128℃)と、粒径dが5μmであるアクリル系架橋型樹脂粒子(積水化成品工業株式会社製「SSX105」、ビカット軟化温度200℃以上)とを、固形分質量比70:30で混合し、トルエンに加え、固形分濃度7.7質量%の塗工液(1)を得た。
なお、上記アクリル樹脂Aは固形分濃度20質量%であるが、本例での質量比および濃度は、正味量(固形分量)で計算した値である。以下の例についても、正味量で計算している。
次いで、該積層シートを熱風式オーブンを用いて150℃で1分間加熱することにより、ポリエチレンテレフタレート一軸方向加熱収縮性フィルムを一軸方向において、加熱前の長さの49%に熱収縮させ(変形率として51%)、硬質層を折り畳むように変形させた。これにより、波状の凹凸パターンと、その上に形成された多数の凸部とを有する微細凹凸が硬質層の表面に形成された表面微細凹凸シート(原版)を得た。また、形成された凸条部は、それぞれが蛇行して、互いに非平行で、不規則に形成されていた。
得られた表面微細凹凸シート(原版)の微細凹凸形成面に、離型剤を含む未硬化の紫外線硬化性樹脂A(綜研化学社製)を厚さ20μmとなるように塗布し、紫外線を照射して硬化させ、硬化後、剥離して、表面微細凹凸シートの微細凹凸の反転パターンを有する1次転写品を得た。
ついで、透明PET基材(東洋紡株式会社製「A4300」、厚さ:188μm)の片面に未硬化の紫外線硬化性樹脂B(ソニーケミカル社製)を厚さ20μmとなるように塗布し、塗布された紫外線硬化性樹脂Bに対して、1次転写品の上記反転パターンを有する面を押し当て、紫外線を照射して硬化させ、硬化後、1次転写品を剥離して、透明PET基材上に、紫外線硬化性樹脂の硬化物からなる表面層が形成され、該表面層の表面に、上記の表面微細凹凸シート(原版)と同じ微細凹凸が形成された光拡散性シート(2次転写品)を得た。
[実施例2]
実施例1において塗工液(1)に変えて、下記塗工液(2)を用いた以外は実施例1と同様にして、光拡散性シートを得た。
(塗工液(2))
アクリル樹脂A(ガラス転移温度Tg2=128℃)と、粒径dが5μmであるアクリル系架橋型樹脂粒子(積水化成品工業株式会社製「SSX105」)とを、固形分質量比80:20で混合し、トルエンに加え、固形分濃度7.7質量%の塗工液(2)を得た。
[実施例3]
実施例1において塗工液(1)に変えて、下記塗工液(3)を用いた以外は実施例1と同様にして、光拡散性シートを得た。
(塗工液(3))
アクリル樹脂A(ガラス転移温度Tg2=128℃)と、アクリル樹脂B(ガラス転移温度Tg2=132℃)と、粒径dが5μmであるアクリル系架橋型樹脂粒子(積水化成品工業株式会社製「SSX105」)とを、固形分質量比35:35:30で混合し、トルエンに加え、固形分濃度7.7質量%の塗工液(3)を得た。
[比較例1]
実施例1において塗工液(1)に変えて、下記塗工液(4)を用いた以外は実施例1と同様にして、光拡散性シートを得た。
(塗工液(4))
アクリル樹脂A(ガラス転移温度Tg2=128℃)をトルエンに加え、固形分濃度7.7質量%の塗工液(4)を得た。
[実施例4]
実施例1において塗工液(1)に変えて、下記塗工液(5)を用いた以外は実施例1と同様にして、光拡散性シートを得た。
(塗工液(5))
アクリル樹脂A(ガラス転移温度Tg2=128℃)と、粒径dが10μmであるアクリル系架橋型樹脂粒子(積水化成品工業株式会社製「SSX110」、ビカット軟化温度点200℃以上)とを、固形分質量比70:30で混合し、トルエンに加え、固形分濃度7.7質量%の塗工液(5)を得た。
[実施例5]
実施例1において塗工液(1)に変えて、下記塗工液(6)を用いた以外は実施例1と同様にして、光拡散性シートを得た。
(塗工液(6))
アクリル樹脂A(ガラス転移温度Tg2=128℃)と、粒径dが5μmであるアクリル系架橋型樹脂粒子(積水化成品工業株式会社製「SSX105」)とを、固形分質量比50:50で混合し、トルエンに加え、固形分濃度7.7質量%の塗工液(6)を得た。
[実施例6]
実施例1において、塗工乾燥後の硬質層の厚みt’が3μmになるようにバーコーター(メイヤーバー♯20)により塗工し、ポリエチレンテレフタレート一軸方向加熱収縮性フィルムを一軸方向において、加熱前の長さの60%に熱収縮させ(変形率として40%)た以外は実施例1と同様にして、光拡散性シートを得た。
[実施例7]
実施例1と同様の方法で得られた表面微細凹凸シート(原版)の表面に、ニッケル電気鋳造法にて、ニッケルを500μmの厚さになるように堆積させた。ついで、堆積させたニッケルを表面微細凹凸シート(原版)から剥離し、表面に表面微細凹凸シートの微細凹凸が転写されたニッケル2次原版を得た。該ニッケル2次原版を射出成形機の金型に組込み、アクリル樹脂の射出成形を行うことで、表面に微細凹凸が転写された射出成形品を得た。得られた射出成形品は、300mm×10mm×2mmの直方体であり、一対の2mm×300mmの面のうちの一面に微細凹凸が転写され、他面が平滑面とされたものである。
(評価)
(1)上記の各例で得られた光拡散性シートおよび射出成形品の微細凹凸について、波状の凹凸パターンの最頻ピッチ、波状の凹凸パターンの凸条部の平均高さ、凸部の見かけの最頻径および平均高さ、微細凹凸における凸部の占有面積割合を上述した方法にて求めた。結果を表1に示す。
(2)GENESIA GonioFar Field Profiler(ジェネシア社製)を用いて、上記の各例で得られた光拡散性シートおよび射出成形品に平滑面側から光を入射させ、Y方向の拡散角度および1/10拡散角度ならびにX方向の拡散角度および1/10拡散角度を測定した。結果を表1に示す。
(3)上記の各例で得られた光拡散性シートおよび射出成形品に、その平滑面側から赤色レーザーポインタの光を入射させ、反対面側から拡散光を出射させた。光拡散性シートおよび射出成形品の上述の反対面側に、光拡散性シートおよび射出成形品と平行に白い紙を配置した。白い紙に映し出された赤色レーザーポインタの拡散光の形(投影像)を4段階で目視評価した。結果を表1に示す。
(4)上記の各例で得られた光拡散性シートおよび射出成形品に、その平滑面側からLED光源(照射角10°)の光を入射させ、反対面(微細凹凸形成面)側から透過光を出射させた。光拡散性シートおよび射出成形品の上述の反対面側の法線方向1m離れた位置に輝度計SR−3(トプコン社製)を配置し、輝度を測定した。結果を表1に示す。なお、表1の輝度は、実施例1の光拡散性シートを上述の方法で測定した場合の輝度を100とした時の相対輝度である。
(5)上記の各例で得られた光拡散性シートおよび射出成形品の微細凹凸形成面側から、光を入射させて、JIS K 7105「プラスチックの光学的特性試験方法」に準拠し、全光線透過率(%)を測定した。結果を表1に示す。
なお、実施例7で製造した射出成形品は直方体であるため、微細凹凸が形成された面と平滑面とが平行であった。しかしながら、微細凹凸が形成された面と平滑面とが平行でない射出成形品を製造した場合には、該射出成形品を適宜カットすることにより、微細凹凸が形成された面と平行な平滑面を切り出したものをサンプルとし、該サンプルを上記(2)〜(5)の測定に供することが好ましい。
表1の結果から、互いに非平行に蛇行した不規則な複数の凸条部と、該複数の凸条部間の凹条部とからなり、最頻ピッチが3〜20μmである波状の凹凸パターンと、見かけの最頻径が1〜10μmである多数の凸部とからなる微細凹凸が形成された各実施例の光拡散性シートおよび射出成形品によれば、Y方向の拡散角度が充分に大きく、かつ、X方向の拡散角度が4°以上であった。また、実施例1〜5および実施例7の光拡散性シートおよび射出成形品によれば、X、Y方向の拡散角度が適度に大きく、また、Y方向およびX方向の1/10拡散角度がそれぞれ(拡散角度×1.4+25°)以下、(拡散角度×1.6+25°)以下であり、相対輝度が充分に大きかった。そのため、これらは、例えば、自動車のフロントガラスに走行速度などの情報を鮮明に拡散させる必要のある、ヘッドアップディスプレイシステムなどにおいて、好適に使用できることが理解できた。なかでも実施例1〜3の光拡散性シートおよび実施例7の射出成形品は、Y方向の拡散角度を非常に高く維持したまま、X方向の拡散角度も大きく、また、相対輝度とのバランスもよく、非常に高い性能を有していた。
一方、比較例の光拡散性シートによれば、Y方向の拡散角度は充分に大きいが、X方向の拡散角度が非常に小さく、異方性が高すぎ、上述のヘッドアップディスプレイシステムなどにおいての使用には不適であることが理解できた。
また、各実施例の光拡散性シートは、充分な光透過性を有していた。
また、実施例7の射出成形品は、コピー機等に使用される、LED光源を線状に配列したスキャナ光源の導光部材などにおいて好適に使用できることが理解できた。
10:光拡散性シート、13:波状の凹凸パターン、13a:凸条部、13b:凹条部、14:凸部、20:表面微細凹凸体(原版)、21:基材、22:硬質層、22a:マトリクス樹脂、22b:粒子、31:基材フィルム、32:硬質層(未変形)

Claims (8)

  1. 表面の少なくとも一部に微細凹凸が形成された表面微細凹凸体であって、
    前記微細凹凸は、
    互いに非平行に蛇行し、不規則に形成された複数の凸条部と、該複数の凸条部間の凹条部とからなり、最頻ピッチが3〜20μmである波状の凹凸パターンと、
    前記波状の凹凸パターン上に形成され、下記の見かけの最頻径が1〜10μmである多数の凹部または凸部と、を有することを特徴とする表面微細凹凸体。
    (見かけの最頻径)
    前記微細凹凸が形成された表面の光学顕微鏡写真からフーリエ変換画像を得て、該フーリエ変換画像から前記多数の凹部または凸部についての直交する2方向の径の頻度分布を得て、該頻度分布に基づいて得られた前記多数の凹部または凸部についての最頻径の平均値。
  2. 前記凸条部の平均高さが4〜7μmである、請求項1に記載の表面微細凹凸体。
  3. 前記微細凹凸における前記凹部または前記凸部の占有面積割合が、30〜70%である、請求項1または2に記載の表面微細凹凸体。
  4. 光拡散体である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の表面微細凹凸体。
  5. 前記微細凹凸を転写して光拡散体を製造するための光拡散体形成用原版である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の表面微細凹凸体。
  6. 樹脂からなる基材フィルムの片面に、マトリクス樹脂中に多数の粒子が分散してなり、厚みが0.05μmを超え5.0μm以下である硬質層を設けて積層シートを形成する積層工程と、前記積層シートの少なくとも前記硬質層を折り畳むように変形させる変形工程とを有し、
    前記マトリクス樹脂は、前記基材フィルムを構成する前記樹脂よりもガラス転移温度が10℃以上高く、
    前記粒子は、前記基材フィルムを構成する前記樹脂のガラス転移温度より10℃高い温度未満では、熱により粒子形状が変化しない材料からなり、
    前記粒子の粒径は、前記硬質層の厚みよりも大きい、表面微細凹凸体の製造方法。
  7. 前記基材フィルムは、一軸方向加熱収縮性フィルムであり、
    前記変形工程は、前記積層シートを加熱して前記一軸方向加熱収縮性フィルムを収縮させる工程である、請求項6の表面微細凹凸体の製造方法。
  8. 請求項6または7に記載の製造方法で製造された表面微細凹凸体を光拡散体形成用原版として用い、該表面微細凹凸体の前記微細凹凸を転写する転写工程を有する、光拡散体の製造方法。
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