JP2015052808A - 表面微細凹凸体および表面微細凹凸体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】表面の少なくとも一部に微細凹凸が形成された光拡散性シート10などの表面微細凹凸体であって、微細凹凸は、互いに非平行に蛇行し、不規則に形成された複数の凸条部13aと、該複数の凸条部間の凹条部13bとからなり、最頻ピッチが3〜20μmである波状の凹凸パターン13と、波状の凹凸パターン13上に形成され、見かけの最頻径が1〜10μmである多数の凹部または凸部14と、を有する、表面微細凹凸体。
【選択図】図2
Description
光拡散性シートの製造方法として、例えば特許文献1には、加熱収縮性フィルムからなる樹脂製の基材上に樹脂製の硬質層を設けた積層シートを加熱し、加熱収縮性フィルムを収縮させることにより、硬質層を折り畳むように変形させて凹凸状にして、硬質層の表面に凹凸パターンを形成する方法が開示されている。また、特許文献1には、加熱収縮性フィルムを収縮させた後、延伸を行うことにより、配向のばらつきが小さな凹凸パターンを形成できることが記載されている。このようなシートを光拡散性シートとすると、主拡散方向の拡散角度が大きく(例えば25〜30°程度。)、主拡散方向に対して直交する方向の拡散角度は小さい(例えば3°程度。)という優れた異方性を示す。
[1]表面の少なくとも一部に微細凹凸が形成された表面微細凹凸体であって、
前記微細凹凸は、
互いに非平行に蛇行し、不規則に形成された複数の凸条部と、該複数の凸条部間の凹条部とからなり、最頻ピッチが3〜20μmである波状の凹凸パターンと、
前記波状の凹凸パターン上に形成され、下記の見かけの最頻径が1〜10μmである多数の凹部または凸部と、を有することを特徴とする表面微細凹凸体。
(見かけの最頻径)
前記微細凹凸が形成された表面の光学顕微鏡写真からフーリエ変換画像を得て、該フーリエ変換画像から前記多数の凹部または凸部についての直交する2方向の径の頻度分布を得て、該頻度分布に基づいて得られた前記多数の凹部または凸部についての最頻径の平均値。
[2]前記凸条部の平均高さが4〜7μmである、[1]に記載の表面微細凹凸体。
[3]前記微細凹凸における前記凹部または前記凸部の占有面積割合が、30〜70%である、[1]または[2]に記載の表面微細凹凸体。
[4]光拡散体である、[1]〜[3]のいずれかに記載の表面微細凹凸体。
[5]前記微細凹凸を転写して光拡散体を製造するための光拡散体形成用原版である、[1]〜[3]のいずれかに記載の表面微細凹凸体。
[6]樹脂からなる基材フィルムの片面に、マトリクス樹脂中に多数の粒子が分散してなり、厚みが0.05μmを超え5.0μm以下である硬質層を設けて積層シートを形成する積層工程と、前記積層シートの少なくとも前記硬質層を折り畳むように変形させる変形工程とを有し、
前記マトリクス樹脂は、前記基材フィルムを構成する前記樹脂よりもガラス転移温度が10℃以上高く、
前記粒子は、前記基材フィルムを構成する前記樹脂のガラス転移温度より10℃高い温度未満では、熱により粒子形状が変化しない材料からなり、
前記粒子の粒径は、前記硬質層の厚みよりも大きい、表面微細凹凸体の製造方法。
[7]前記基材フィルムは、一軸方向加熱収縮性フィルムであり、前記変形工程は、前記積層シートを加熱して前記一軸方向加熱収縮性フィルムを収縮させる工程である、[6]の表面微細凹凸体の製造方法。
[8][6]または[7]に記載の製造方法で製造された表面微細凹凸体を光拡散体形成用原版として用い、該表面微細凹凸体の前記微細凹凸を転写する転写工程を有する、光拡散体の製造方法。
<表面微細凹凸体>
図1(a)は、本発明の表面微細凹凸体の一実施形態例(後述の実施例1)である光拡散性シート(光拡散体)の片面の光学顕微鏡写真(平面視;縦0.4mm×横0.5mmの視野部分を示す。)であり、図1(b)は、実施例1の光拡散性シートの微細凹凸をレーザ顕微鏡(キーエンス社製「VK−8510」)で観察したレーザ顕微鏡写真である。
図1(b)中の線αは、該光拡散性シートを線βに沿って図中横方向に切断した切断面における高さプロファイルを示している。なお、図1(a)と(b)とでは、倍率が異なる。
図2は、図1(a)の光学顕微鏡写真中のI−I’線(後述する凸条部と凹条部とが繰り返される方向に沿う線。)に沿って切断した部分を模式的に示す拡大縦断面図である。
なお、図2は、光拡散性シートの縦断面形状の理解しやすさの観点から、単純化して示している。
各凸条部13aの縦断面形状は、図2に示すように、それぞれが基端側から先端側に向かって細くなる先細り形状である。
複数の凸条部13aは、図1に示すとおり、それぞれが蛇行しており、かつ、互いに非平行であり、不規則に形成されている。すなわち、各凸条部13aにおいて、稜線が蛇行し、各凹条部13bにおいて、谷線が蛇行している。また、隣接する凸条部13aの稜線の間隔が一定しておらず、隣接する凹条部13bの谷線の間隔が一定していない。
また、各凸条部13aにおいて稜線の高さが一定しておらず、各凹条部13bにおいて谷線の高さが一定していない。そのため、図2に示すように、各凸条部13aの縦断面形状は、それぞれ異なっており一律ではなく、不規則である。
微細凹凸は、このような波状の凹凸パターン13と、ランダムに分布した多数の凸部14とで、構成されている。
表面層12としては、電離放射線硬化性樹脂の硬化物の他、熱硬化性樹脂の硬化物、熱可塑性樹脂等が挙げられる。電離放射線硬化性樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂が挙げられる。表面層12の厚みは、波状の凹凸パターン13を形成するのに充分な厚みであればよく、最も厚い部分の厚みとして、10〜25μm程度であることが好ましい。
最頻ピッチが上記範囲内であると、該光拡散性シート10に対して、微細凹凸が形成された面(以下、微細凹凸形成面という場合がある。)または該面と反対側の平滑面側から光を入射させた場合、入射面とは反対面からの出射光は、Y方向(主拡散方向)に良好に拡散し、Y方向に充分な拡散角度(例えば18°以上、好ましくは23°以上、より好ましくは25°以上。1/10拡散角度は、(拡散角度×1.4+25°)以下、好ましくは(拡散角度×1.4+22°)以下、より好ましくは(拡散角度×1.4+20°)以下。)を示す。Y方向の拡散角度の上限値は、特に制限はないが、例えば30°である。
)を示す。X方向の拡散角度の上限値は、特に制限はないが、例えば20°である。
まず、光拡散性シート10に対していずれか一方の面、すなわち微細凹凸形成面または反対側の平滑面側から光を照射、入射させる。その際に、入射面とは反対面側から垂直に出光する出射光(出光角度=0°)の照度を基準値とし、Y方向に沿う出光角度−90°〜+90°の範囲内の出射光の照度を、上記基準値に対する相対値として、1°おきに測定する。そして、各Y方向の出光角度に対する照度の値をプロットして照度曲線を得る。
該照度曲線における半値幅(全半値幅)を主拡散方向(Y方向)の拡散角度とする。また、1/10値幅(全1/10値幅)を主拡散方向(Y方向)の1/10拡散角度とする。
同様に、X方向に沿う出光角度−90°〜+90°の範囲内の出射光の照度を上記基準値に対する相対値として、1°おきに測定する。そして、各X方向の出光角度に対する照度の値をプロットして照度曲線を得る。該照度曲線における半値幅(全半値幅)を主拡散方向に直交する方向(X方向)の拡散角度とする。また、1/10値幅(全1/10値幅)を主拡散方向に直交する方向(X方向)の1/10拡散角度とする。
まず、図1(a)のような光学顕微鏡写真を得る。その際の観察視野は、縦0.4〜1.6mm、横0.5〜2mmとする。この画像がjpeg等の圧縮画像である場合は、これをグレースケールのTif画像に変換する。そして、フーリエ変換を行い、図3のようなフーリエ変換画像を得る。
また、図3のフーリエ変換画像の模式図を図4として示す。
ここで、図3において符号A1およびA2の白色部は、その形状に方向性があることから、波状の凹凸パターンのピッチの情報を含む。白色の輝度は頻度を示す(ただし中心点は除く)。一方、図3の白色円環Bは、その形状に方向性がないことから、多数の凸部の径の情報を含む。
そこで、図3の中心からA1の中で最大頻度となる点を通るように線L1−1を引き、線L1−1の頻度分布をプロットすると、図5のグラフが得られる。
また、図3の中心からL1−1と直交する方向に線L1−2を引き、線L1−2の頻度分布をプロットすると、図6のグラフが得られる。
図5において、頻度が高い1/XAが、光拡散性シート10における、波状の凹凸パターンの最頻ピッチとなる。
また、図5および図6において、頻度が高い1/XB、1/YBが、光拡散性シート10における、多数の凸部のそれぞれL1−1方向、L1−2方向の最頻径となる。すなわち、1/XAは波状の凹凸パターンの最頻ピッチ、(1/XB+1/YB)/2は多数の凸部の見かけの最頻径である。
なお、図3のフーリエ変換画像において、中心からの方位は、図1(a)に存在する周期構造(凹凸パターン13)の方向を意味し、中心からの距離は、図1(a)に存在する周期構造の周期の逆数を意味する。この例では、図1(a)に示すように、波状の凹凸パターン13が図中横方向に繰り返されているため、フーリエ変換画像において中心からの図中横方向に延びる線L1−1において、最頻ピッチの逆数に相当する部分の輝度(頻度)が高くなっている。
また、図4中、XBは、線L1−1(図4では図示略。)の円環を通る部分において、頻度が最大となる位置であり、また、図4中、YBは、線L1−2(図4では図示略。)の円環を通る部分において、頻度が最大となる位置である。
まず、光拡散性シート10の微細凹凸形成面を原子間力顕微鏡により観察し、その観察結果から、Y方向に沿って波状の凹凸パターン13を切断した面について、図7のような縦断面図を得る。そして、凸部14が存在していない部分の凸条部13aの断面図から、該凸条部13の高さHを求める。具体的には、凸条部13aの高さHは、該凸条部13aの頂部Tと該凸条部13aの一方側に位置する凹条部13bの底部B1との垂直距離をH1とし、該凸条部13aの頂部Tと該凸条部13aの他方側に位置する凹条部13bの底部B2との垂直距離をH2とした場合に、H=(H1+H2)/2で求められる。
このような計測を凸部14が存在していない凸条部13aの50箇所に対して行い、50のデータの平均値を「凸条部の平均高さ」と定義する。
まず、上述のようにして図7の断面図を得る。そして、図8に示すように、波状の凹凸パターン13に由来する形状と、凸部14に由来する形状とに波形分離する。なお、波形分離は、波状の凹凸パターン13に由来する形状をサインカーブとして行う。ついで、図8の断面図から、波状の凹凸パターン13に由来する形状を差し引き、図9に示すように、凸部14に由来する形状のみの断面図を得る。そして、図9の断面図において、凸部14の高さH’を、H’=(H1’+H2’)/2として求める。H1’は、図9の断面図において、凸部14の頂部T’と該凸部14の一方側のベースラインLαとの垂直距離であり、H2’は、凸部14の頂部T’と該凸部14の他方側のベースラインLβとの垂直距離である。
このような計測を50個の凸部14に対して行い、50のデータの平均値を「凸部の平均高さ」と定義する。
まず、図1(a)のような光学顕微鏡写真を得て、視野全体の面積S2(例えば縦0.4〜1.6mm、横0.5〜2mm)中に認められる凸部14の個数nを数え、視野全体において、n個の凸部14によって占有されている面積S1=nr2πを求める。占有面積割合γ(%)は以下の式により求められる。
X方向の拡散角度を増加させる方法としては、光拡散剤を添加する方法も考えられる。
しかしながら、光拡散剤の添加は、光拡散性シートの光透過率を下げる傾向にある。これに対して、本発明のように微細凹凸を特定に制御することでX方向の拡散角度を増加させる方法では、光拡散剤を添加する必要がなく、また、添加する場合でも、その添加量を少量とできる。そのため、光透過率を高く維持できる。
また、該光拡散性シート10は、プロジェクター用の拡散部材;テレビ、モニター、ノート型パーソナルコンピュータ、タブレット型パーソナルコンピュータ、スマートフォン、携帯電話等のバックライト用の拡散部材;等としても好適に使用される。
また、該光拡散性シート10は、コピー機等に使用される、LED光源を線状に配列したスキャナ光源において、導光部材の出射面を構成する拡散部材等としても好適に使用される。
図示例の光拡散性シート10は、微細凹凸を表面に有する光拡散性シート形成用原版(光拡散体形成用原版)を型として用い、該光拡散性シート形成用原版(以下、「原版」ともいう。)の微細凹凸を転写する転写工程を有する方法により製造できる。
以下、2次転写品である図示例の光拡散性シート10の製造方法について説明する。
図示例の光拡散性シート10を製造するにあたっては、まず、図11に示す表面微細凹凸体20を製造し、これを原版として用いる。該原版は、樹脂からなる基材21と、該基材21の片面全体に設けられた硬質層22とを有し、硬質層22の露出した側の表面が、図示例の光拡散性シート10と同様の微細凹凸に形成されたものである。
ヤング率は、JIS K 7113−1995に準拠して測定した値である。
例えば、粒子22bを構成する材料が、ガラス転移温度を有する樹脂およびガラス転移温度を有する無機材料からなる群から選ばれる1種以上である場合、そのガラス転移温度Tg3が、マトリクス樹脂のガラス転移温度Tg2と同様の条件を満たすこと、すなわち、(Tg3−Tg1)が10℃以上となるように選択されることが必要であり、(Tg3−Tg1)が20℃以上がより好ましく、30℃以上が更に好ましい。(Tg3−Tg1)が10℃以上であると、上述の加工温度において、粒子22bが変形した溶融したりせず、確実に凸部14’を形成する。
粒子22bを構成する材料が、ガラス転移温度を有さない材料、例えば内部架橋型樹脂などである場合には、そのビカット軟化温度(JIS K7206に規定)が、上述の条件を満たすこと、すなわち、基材21を構成する樹脂のガラス転移温度より10℃以上高いことが好ましく、20℃以上高いことが好ましく、30℃以上高いことがより好ましい。
なお、本明細書において、ガラス転移温度Tg3についての好ましい温度範囲などの記載は、粒子22bがガラス転移温度を有さず、ビカット軟化温度を有する材料からなる場合、そのビカット軟化温度にも該当するものとする。
さらに、粒子22bを構成する材料としては、ガラス転移温度、ビカット軟化温度が測定できないものであっても、基材21を構成する樹脂のガラス転移温度Tg1より10℃高い温度未満において、熱により粒子形状が変化しない材料であれば、本発明において使用可能である。
これらの中でも透明性の点では、アクリル樹脂が好ましい。
マトリクス樹脂22aは単独で使用してもよいが、波状の凹凸パターンの最頻ピッチ、平均高さおよび配向度を調整するなどの目的に応じて適宜併用してもよい。例えば、同種ではあるがガラス転移温度の異なる樹脂を併用したり、異なる種類の樹脂を併用したりできる。
また、基材21を支持するために、厚さ5〜500μmの樹脂製の支持体を別途設けてもよい。
図11の表面微細凹凸体20は、図12のような積層シート30、すなわち、樹脂からなる基材フィルム31の片面(平坦な面)に、マトリクス樹脂中に多数の粒子22bが分散してなり、厚みが0.05μmを超え5.0μm以下である硬質層32を設けた積層シート30を形成する積層工程と、積層シート30の少なくとも硬質層32を折り畳むように変形させる変形工程とを有する方法により製造できる。ここで基材フィルム31は、図11の表面微細凹凸体20の基材21に相当する。また、ここで平坦とは、JIS B0601に記載の中心線平均粗さ0.1μm以下の面である。
積層工程では、まず、マトリクス樹脂22aと粒子22bと溶媒とを含む塗工液(分散液または溶液)を調製し、該塗工液を基材フィルム31の片面にスピンコーターやバーコーター等により塗工して乾燥させ、図12のように、厚みt’が0.05μmを超え、5.0μm以下である硬質層32を形成する。この時点での硬質層32は、折り畳むように変形していない。
硬質層32は、このように塗工液を基材フィルム31に直接塗工して設ける代わりに、あらかじめ作製した硬質層(マトリクス樹脂中に粒子が分散してなるフィルム)を基材フィルムに積層する方法で設けてもよい。
これらのシュリンクフィルムの中でも、一軸方向において、50〜70%収縮するものが好ましい。50〜70%収縮するシュリンクフィルムを用いれば、変形率を50%以上にでき、その結果、好適な最頻ピッチ、凸条部13a’の高さの波状の凹凸パターン13’を形成できる。
ここで、変形率とは、(変形前の長さ−変形後の長さ)×100/(変形前の長さ)(%)のことである。あるいは、(変形した長さ)×100/(変形前の長さ)(%)のことである。
ここで正味量(固形分量)とは、塗工液の質量(100質量%)に対して、該塗工液中の溶媒が揮発した後に残る固形分の質量の比率のことをいう。
上述のようにして得られた積層シート30を加熱して、積層シート30の基材フィルム31を熱収縮させることにより、図11の表面微細凹凸体20が得られる。なお、変形工程としては、例えば、特許第4683011号公報等に開示の公知の方法を採用できる。
加熱方法としては、熱風、蒸気、熱水または遠赤外線中に通す方法等が挙げられ、中でも、均一に収縮させることができることから、熱風または遠赤外線に通す方法が好ましい。
基材フィルム31を熱収縮させる際の加熱温度(加工温度)は、Tg2とTg1の間の温度とすることが好ましく、具体的には、使用する基材フィルム31の種類および目的とする凹凸パターン13’のピッチ、凸条部13a’の高さ等に応じて適宜選択することが好ましい。
(1)平坦な基材フィルムの片面の全部に、未変形の硬質層を設けて積層シートを形成し、積層シート全体を表面に沿った一方向に圧縮する方法。
基材フィルムのガラス転移温度が室温未満の場合、積層シートの圧縮は室温で行い、基材フィルムのガラス転移温度が室温以上の場合、積層シートの圧縮は、基材のガラス転移温度以上、硬質層のガラス転移温度未満で行う。
(2)平坦な基材フィルムの片面の全部に、未変形の硬質層を設けて積層シートを形成し、積層シートを一方向に延伸し、延伸方向に対する直交方向を収縮させて、硬質層を表面に沿った一方向に圧縮する方法。
基材フィルムのガラス転移温度が室温未満の場合、積層シートの延伸は室温で行い、基材フィルムのガラス転移温度が室温以上の場合、積層シートの延伸は、基材フィルムのガラス転移温度以上、硬質層のガラス転移温度未満で行う。
(3)未硬化の電離放射線硬化性樹脂により形成された平坦な基材フィルムに、未変形の硬質層を積層して積層シートを形成し、電離放射線を照射して基材フィルムを硬化させることにより収縮させて、基材フィルムに積層された硬質層を表面に沿った少なくとも一方向に圧縮する方法。
(4)溶媒を膨潤させて膨張させた平坦な基材フィルムに、未変形の硬質層を積層して積層シートを形成し、基材フィルム中の溶媒を乾燥し、除去することにより収縮させて、基材フィルムに積層された硬質層を表面に沿った少なくとも一方向に圧縮する方法。
(3)の方法において、電離放射線硬化性樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂などが挙げられる。
(4)の方法において、溶媒は基材フィルムを構成する樹脂の種類に応じて適宜選択される。溶媒の乾燥温度は溶媒の種類に応じて適宜選択される。
図11の表面微細凹凸体20を原版として用いて、図示例の光拡散性シート10を製造する場合には、該表面微細凹凸体(原版)20の微細凹凸を他の材料に転写する転写工程を行う。この例では、該表面微細凹凸体(原版)20の硬質層22の表面に形成された微細凹凸を他の材料に転写し、原版の微細凹凸の反転パターンを表面に有する1次転写品を得て、次いで、該1次転写品の反転パターンを他の材料に転写し、2次転写品である図示例の光拡散性シート10を得る。転写工程としては、例えば、特許第4683011号公報等に開示の公知の方法を採用できる。
熱硬化性樹脂を用いる場合には、例えば液状の未硬化の熱硬化性樹脂を微細凹凸に塗布し、加熱により硬化させる方法が挙げられ、熱可塑性樹脂を用いる場合には、熱可塑性樹脂のシートを用い、微細凹凸に押し当てながら加熱して軟化させた後、冷却する方法が挙げられる。
上述の[原版の製造方法]の積層工程においては、マトリクス樹脂22aと粒子22bと溶媒とを含む塗工液を用いた。しかしながら、粒子を含まず、マトリクス樹脂と溶媒とを含む塗工液を用いて硬質層を形成し、変形工程により波状の凹凸パターンとし、その後に、該凹凸パターン上に、多数の凹部または凸部を形成してもよい。硬質層の形成方法は、粒子を用いない以外は、上述の方法と同様に行える。変形工程も、上述の方法と同様に行える。ついで行われる、形成された凹凸パターン上に、多数の凹部または凸部を形成する方法としては、後述の(5)〜(8)の方法が挙げられる。
(5)回転式精密切削加工機により切削加工する方法。
(6)凹部または凸部と同様な大きさ、径を有する突起物を前記波状の凹凸パターン上に押し付けて凹みを形成する方法。
(7)樹脂又は無機物の溶融物を微粒子化したものを前記波状の凹凸パターン上に付着させた後、冷却固化して前記樹脂又は無機物によって形成された凸部を形成する方法。
(8)樹脂又は無機物を分散媒に分散した液を前記波状の凹凸パターン上に付着させた後、分散媒を蒸発させて前記樹脂又は無機物によって形成された凸部を形成する方法。
なお、上記(7)又は(8)の方法においてインクジェット印刷方式を応用することにより、高精度で波状の凹凸パターン上に多数の凹部または凸部を形成することができる。
また、粒子を含まず、マトリクス樹脂と溶媒とを含む塗工液を用いて硬質層を形成し、変形工程により波状の凹凸パターンとしたもの(多数の凹部または凸部は未だ形成されていないもの)を原版として転写品を得て、該転写品に対して、上記(5)〜(8)の方法により、凹凸パターン上に多数の凹部または凸部を形成してもよい。そして、これを原版として転写することにより、表面微細凹凸体を製造することもできる。
以上の説明においては、積層工程と変形工程により製造された表面微細凹凸体を原版とし、該表面微細凹凸体の微細凹凸を転写した1次転写品を得て、ついで、該1次転写品の微細凹凸(原版の反転パターン)を転写した2次転写品を光拡散性シート10とした。
しかしながら、本発明は、以上の形態に限定されない。
すなわち、上述の積層工程と変形工程により製造された図11のような表面微細凹凸体20そのものを光拡散性シートとして使用することもできる。また、積層工程と変形工程により製造された表面微細凹凸体20を原版として得られた1次転写品や、n次転写品(nは3以上の整数。)を光拡散性シートとして使用することもでき、転写品であれば、2次転写品に限定されない。
また、原版を用いて、曲面を有する成形体の該曲面に、微細凹凸を転写してもよい。
また、積層工程と変形工程により製造された表面微細凹凸体やそのn次転写品を原版として用いて、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の透明な熱可塑性樹脂を射出成形し、微細凹凸が表面の少なくとも一部に形成された射出成形品を製造してもよい。
また、微細凹凸は、表面微細凹凸体の表面の少なくとも一部であれば、目的に応じて、いかなる部分に形成されていてもよい。例えば、表面微細凹凸体がシート状物である場合、一方の面のみに形成されていても、両面に形成されていても、各面において一部のみに形成されていてもよいし、シート状物の周面(端面)の少なくとも一部に形成されていてもよい。さらに、表面微細凹凸体が立体成形体である場合にも、全表面の全面に形成されていても、一部のみに形成されていてもよい。なお、表面微細凹凸体が立体成形体である場合、該立体成形体は、光拡散性シートについて例示した用途と同様の用途に使用できる。すなわち、HUDシステム用の拡散部材;プロジェクター用の拡散部材;テレビ、モニター、ノート型パーソナルコンピュータ、タブレット型パーソナルコンピュータ、スマートフォン、携帯電話等のバックライト用の拡散部材;コピー機等に使用される、LED光源を線状に配列したスキャナ光源において、導光部材の少なくとも出射面を構成する拡散部材;等として好適に使用できる。
[実施例1]
下記塗工液(1)をポリエチレンテレフタレート一軸方向加熱収縮性フィルム(東洋紡株式会社製「SC807」、厚さ:30μm、ガラス転移温度Tg1=80℃)の片面に、塗工乾燥後の硬質層の厚みt’が2μmになるようにバーコーター(メイヤーバー♯14)により塗工し、積層シートを得た。
(塗工液(1))
アクリル樹脂A(ガラス転移温度Tg2=128℃)と、粒径dが5μmであるアクリル系架橋型樹脂粒子(積水化成品工業株式会社製「SSX105」、ビカット軟化温度200℃以上)とを、固形分質量比70:30で混合し、トルエンに加え、固形分濃度7.7質量%の塗工液(1)を得た。
なお、上記アクリル樹脂Aは固形分濃度20質量%であるが、本例での質量比および濃度は、正味量(固形分量)で計算した値である。以下の例についても、正味量で計算している。
得られた表面微細凹凸シート(原版)の微細凹凸形成面に、離型剤を含む未硬化の紫外線硬化性樹脂A(綜研化学社製)を厚さ20μmとなるように塗布し、紫外線を照射して硬化させ、硬化後、剥離して、表面微細凹凸シートの微細凹凸の反転パターンを有する1次転写品を得た。
ついで、透明PET基材(東洋紡株式会社製「A4300」、厚さ:188μm)の片面に未硬化の紫外線硬化性樹脂B(ソニーケミカル社製)を厚さ20μmとなるように塗布し、塗布された紫外線硬化性樹脂Bに対して、1次転写品の上記反転パターンを有する面を押し当て、紫外線を照射して硬化させ、硬化後、1次転写品を剥離して、透明PET基材上に、紫外線硬化性樹脂の硬化物からなる表面層が形成され、該表面層の表面に、上記の表面微細凹凸シート(原版)と同じ微細凹凸が形成された光拡散性シート(2次転写品)を得た。
実施例1において塗工液(1)に変えて、下記塗工液(2)を用いた以外は実施例1と同様にして、光拡散性シートを得た。
(塗工液(2))
アクリル樹脂A(ガラス転移温度Tg2=128℃)と、粒径dが5μmであるアクリル系架橋型樹脂粒子(積水化成品工業株式会社製「SSX105」)とを、固形分質量比80:20で混合し、トルエンに加え、固形分濃度7.7質量%の塗工液(2)を得た。
実施例1において塗工液(1)に変えて、下記塗工液(3)を用いた以外は実施例1と同様にして、光拡散性シートを得た。
(塗工液(3))
アクリル樹脂A(ガラス転移温度Tg2=128℃)と、アクリル樹脂B(ガラス転移温度Tg2=132℃)と、粒径dが5μmであるアクリル系架橋型樹脂粒子(積水化成品工業株式会社製「SSX105」)とを、固形分質量比35:35:30で混合し、トルエンに加え、固形分濃度7.7質量%の塗工液(3)を得た。
実施例1において塗工液(1)に変えて、下記塗工液(4)を用いた以外は実施例1と同様にして、光拡散性シートを得た。
(塗工液(4))
アクリル樹脂A(ガラス転移温度Tg2=128℃)をトルエンに加え、固形分濃度7.7質量%の塗工液(4)を得た。
実施例1において塗工液(1)に変えて、下記塗工液(5)を用いた以外は実施例1と同様にして、光拡散性シートを得た。
(塗工液(5))
アクリル樹脂A(ガラス転移温度Tg2=128℃)と、粒径dが10μmであるアクリル系架橋型樹脂粒子(積水化成品工業株式会社製「SSX110」、ビカット軟化温度点200℃以上)とを、固形分質量比70:30で混合し、トルエンに加え、固形分濃度7.7質量%の塗工液(5)を得た。
実施例1において塗工液(1)に変えて、下記塗工液(6)を用いた以外は実施例1と同様にして、光拡散性シートを得た。
(塗工液(6))
アクリル樹脂A(ガラス転移温度Tg2=128℃)と、粒径dが5μmであるアクリル系架橋型樹脂粒子(積水化成品工業株式会社製「SSX105」)とを、固形分質量比50:50で混合し、トルエンに加え、固形分濃度7.7質量%の塗工液(6)を得た。
実施例1において、塗工乾燥後の硬質層の厚みt’が3μmになるようにバーコーター(メイヤーバー♯20)により塗工し、ポリエチレンテレフタレート一軸方向加熱収縮性フィルムを一軸方向において、加熱前の長さの60%に熱収縮させ(変形率として40%)た以外は実施例1と同様にして、光拡散性シートを得た。
実施例1と同様の方法で得られた表面微細凹凸シート(原版)の表面に、ニッケル電気鋳造法にて、ニッケルを500μmの厚さになるように堆積させた。ついで、堆積させたニッケルを表面微細凹凸シート(原版)から剥離し、表面に表面微細凹凸シートの微細凹凸が転写されたニッケル2次原版を得た。該ニッケル2次原版を射出成形機の金型に組込み、アクリル樹脂の射出成形を行うことで、表面に微細凹凸が転写された射出成形品を得た。得られた射出成形品は、300mm×10mm×2mmの直方体であり、一対の2mm×300mmの面のうちの一面に微細凹凸が転写され、他面が平滑面とされたものである。
(1)上記の各例で得られた光拡散性シートおよび射出成形品の微細凹凸について、波状の凹凸パターンの最頻ピッチ、波状の凹凸パターンの凸条部の平均高さ、凸部の見かけの最頻径および平均高さ、微細凹凸における凸部の占有面積割合を上述した方法にて求めた。結果を表1に示す。
(2)GENESIA GonioFar Field Profiler(ジェネシア社製)を用いて、上記の各例で得られた光拡散性シートおよび射出成形品に平滑面側から光を入射させ、Y方向の拡散角度および1/10拡散角度ならびにX方向の拡散角度および1/10拡散角度を測定した。結果を表1に示す。
(3)上記の各例で得られた光拡散性シートおよび射出成形品に、その平滑面側から赤色レーザーポインタの光を入射させ、反対面側から拡散光を出射させた。光拡散性シートおよび射出成形品の上述の反対面側に、光拡散性シートおよび射出成形品と平行に白い紙を配置した。白い紙に映し出された赤色レーザーポインタの拡散光の形(投影像)を4段階で目視評価した。結果を表1に示す。
(4)上記の各例で得られた光拡散性シートおよび射出成形品に、その平滑面側からLED光源(照射角10°)の光を入射させ、反対面(微細凹凸形成面)側から透過光を出射させた。光拡散性シートおよび射出成形品の上述の反対面側の法線方向1m離れた位置に輝度計SR−3(トプコン社製)を配置し、輝度を測定した。結果を表1に示す。なお、表1の輝度は、実施例1の光拡散性シートを上述の方法で測定した場合の輝度を100とした時の相対輝度である。
(5)上記の各例で得られた光拡散性シートおよび射出成形品の微細凹凸形成面側から、光を入射させて、JIS K 7105「プラスチックの光学的特性試験方法」に準拠し、全光線透過率(%)を測定した。結果を表1に示す。
なお、実施例7で製造した射出成形品は直方体であるため、微細凹凸が形成された面と平滑面とが平行であった。しかしながら、微細凹凸が形成された面と平滑面とが平行でない射出成形品を製造した場合には、該射出成形品を適宜カットすることにより、微細凹凸が形成された面と平行な平滑面を切り出したものをサンプルとし、該サンプルを上記(2)〜(5)の測定に供することが好ましい。
一方、比較例の光拡散性シートによれば、Y方向の拡散角度は充分に大きいが、X方向の拡散角度が非常に小さく、異方性が高すぎ、上述のヘッドアップディスプレイシステムなどにおいての使用には不適であることが理解できた。
また、各実施例の光拡散性シートは、充分な光透過性を有していた。
また、実施例7の射出成形品は、コピー機等に使用される、LED光源を線状に配列したスキャナ光源の導光部材などにおいて好適に使用できることが理解できた。
Claims (8)
- 表面の少なくとも一部に微細凹凸が形成された表面微細凹凸体であって、
前記微細凹凸は、
互いに非平行に蛇行し、不規則に形成された複数の凸条部と、該複数の凸条部間の凹条部とからなり、最頻ピッチが3〜20μmである波状の凹凸パターンと、
前記波状の凹凸パターン上に形成され、下記の見かけの最頻径が1〜10μmである多数の凹部または凸部と、を有することを特徴とする表面微細凹凸体。
(見かけの最頻径)
前記微細凹凸が形成された表面の光学顕微鏡写真からフーリエ変換画像を得て、該フーリエ変換画像から前記多数の凹部または凸部についての直交する2方向の径の頻度分布を得て、該頻度分布に基づいて得られた前記多数の凹部または凸部についての最頻径の平均値。 - 前記凸条部の平均高さが4〜7μmである、請求項1に記載の表面微細凹凸体。
- 前記微細凹凸における前記凹部または前記凸部の占有面積割合が、30〜70%である、請求項1または2に記載の表面微細凹凸体。
- 光拡散体である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の表面微細凹凸体。
- 前記微細凹凸を転写して光拡散体を製造するための光拡散体形成用原版である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の表面微細凹凸体。
- 樹脂からなる基材フィルムの片面に、マトリクス樹脂中に多数の粒子が分散してなり、厚みが0.05μmを超え5.0μm以下である硬質層を設けて積層シートを形成する積層工程と、前記積層シートの少なくとも前記硬質層を折り畳むように変形させる変形工程とを有し、
前記マトリクス樹脂は、前記基材フィルムを構成する前記樹脂よりもガラス転移温度が10℃以上高く、
前記粒子は、前記基材フィルムを構成する前記樹脂のガラス転移温度より10℃高い温度未満では、熱により粒子形状が変化しない材料からなり、
前記粒子の粒径は、前記硬質層の厚みよりも大きい、表面微細凹凸体の製造方法。 - 前記基材フィルムは、一軸方向加熱収縮性フィルムであり、
前記変形工程は、前記積層シートを加熱して前記一軸方向加熱収縮性フィルムを収縮させる工程である、請求項6の表面微細凹凸体の製造方法。 - 請求項6または7に記載の製造方法で製造された表面微細凹凸体を光拡散体形成用原版として用い、該表面微細凹凸体の前記微細凹凸を転写する転写工程を有する、光拡散体の製造方法。
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