JP5658608B2 - ポリシランの精製方法 - Google Patents

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本発明は、ポリシランに予め含有されている金属成分を除去する方法、およびこの除去方法により金属成分を除去して得られたポリシランに関する。
ポリシランは、セラミックス前駆体、光電子材料(例えば、フォトレジスト、有機感光体などの光電子写真材料、光導波路などの光伝送材料、光メモリなどの光記録材料・エレクトロルミネッセンス素子用材料など)などとして注目されている。
ポリシランの代表的な合成方法として、金属ナトリウムなどのアルカリ金属を用いてトルエン溶媒中のジアルキルジハロシランあるいはジハロテトラアルキルジシランを100℃以上の温度で強力に撹拌し、還元的にカップリングさせる方法[J.Am.Chem.Soc.,103(1981)7352(非特許文献1)、通称「Kipping法」]が知られている。しかし、この方法は、空気中で発火するアルカリ金属を加熱し、強力に攪拌・分散させる必要があるため、工業的規模での生産での安全性が懸念され、また、分子量分布が多峰性となり品質的にも十分でない。
これらの問題を解決する方法として、例えば、WO98/29476号公報(特許文献1)及び特開2003−277507号公報(特許文献2)には、マグネシウム成分を用いてハロシラン類を重合してポリシランを得る方法が開示されている。これらの文献に記載の方法は、マグネシウム成分単独、又はマグネシウム成分及び金属ハロゲン化物を触媒として用いることによって重合を行う方法であり、(1)汎用の化学合成装置を用いて安定で安価な原料を用いて合成でき、安全性、コスト面で優位性がある、(2)光電子材料用途として不適当な不純物(ナトリウムや有機溶媒に対する不溶物など)が混入しない、(3)分子量のばらつきが少なく、有機溶媒に対する溶解性や透明性の高いポリシランが得られる、(4)高収率であるなどの優れた特徴を有する。
しかし、上記2つの方法、さらには、従来開発されてきた他のいずれのポリシランの製造方法においても、通常、金属もしくは金属塩を必ず用いるため、ポリシラン中に金属成分が残留し、光電子材料用途として適さない場合がある。
なお、トリハロシラン化合物やテトラハロシラン化合物を原料として用いた末端構造が多いポリシランは、機構の詳細は不明であるが、特に、金属成分を構造中に取り込みやすい傾向を示すようである。
WO98/29476号公報(特許請求の範囲) 特開2003−277507号公報(特許請求の範囲)
J.Am.Chem.Soc.,103(1981)7352
従って、本発明の目的は、ポリシランに予め含まれる金属成分を効率よく除去できる精製方法、およびこの方法により得られたポリシランを提供することにある。
本発明の他の目的は、慣用の方法では、亜鉛などの金属成分の除去が困難なポリシランであっても、簡便にかつ効率よく金属成分を除去できる精製方法、およびこの方法により得られたポリシランを提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、ポリシランに含まれる金属成分の含有量を著しく低減できるポリシランの精製方法を提供することにある。
本発明の別の目的は、金属成分の含有量が著しく低減された高純度のポリシランを提供することにある。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、(1)金属や金属化合物を触媒として用いて得られるポリシランには、洗浄などを行っても、金属成分がポリシランに対して何らかの親和性を有しているためか、多量の金属成分が残留していること、(2)このような金属成分(A)を含むポリシランと、前記金属成分に対して特定の指標において異なる金属成分(B)とを接触させることにより、金属成分(A)のポリシランに対する親和性が低下し、前記金属成分(A)を構成する金属と金属成分(B)を構成する金属とが置換されるためか、金属成分(A)が容易に除去されること、(3)さらに接触させた金属成分(B)(又はその構成金属)はポリシランに対する親和性が比較的低いためか、溶出などによりポリシランから容易に除去でき、金属成分の含有量が著しく小さい高純度のポリシランが得られることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の方法は、金属成分(1)を含むポリシランの精製方法であって、前記ポリシランと、前記金属成分(1)を構成する金属(a)よりも、イオン化傾向において小さい金属(b)で構成されている金属成分(2)とを接触させて、ポリシランに含まれる金属成分(1)を除去する。前記精製方法(又は除去方法)において、ポリシラン(金属成分(1)を含むポリシラン)は、金属(a)の重量換算で、全体に対して500ppm以上の金属成分(1)を含んでいてもよい。
金属触媒を用いて合成されたポリシランは、前記金属触媒に対応する金属成分(1)を含有している場合が多い。また、前記ポリシランは、直鎖状構造などに比べて、分岐状構造を有しているほど、金属成分(1)を取り込みやすいようである。本発明では、このようなポリシランであっても、効率よく金属成分(1)を除去できる。例えば、前記除去方法において、前記ポリシランは、マグネシウム金属成分及び金属ハロゲン化物の存在下、トリハロシラン類及びテトラハロシラン類から選択された少なくとも1種を重合した分岐状構造を有するポリシランであってもよい。
前記除去方法において、金属(a)と金属(b)との組み合わせは、金属(a)が鉄及び/又は亜鉛であってもよい。代表的には、金属(a)が亜鉛であり、金属成分(2)が、鉄、コバルト、ニッケルおよび銅から選択された少なくとも1種の金属(b)で構成されている水溶性の金属化合物(例えば、金属ハロゲン化物、金属と無機酸との塩など)であってもよい。
前記精製方法(除去方法)は、通常、金属成分(1)を含むポリシランと金属成分(2)とを溶媒の存在下で接触させることにより行うことができる。例えば、前記除去方法は、金属成分(1)を含むポリシランと、このポリシランを溶解可能な溶媒(a)と、金属成分(2)と、この金属成分(2)を溶解可能であり、前記ポリシランを溶解せず、かつ溶媒(a)との組み合わせにおいて層分離(又は相分離)可能な溶媒(b)とを混合する混合工程、およびこの混合工程を経て得られた混合系からポリシランを含む液層(又は液相)を分離する工程を含んでいてもよい。この除去方法は、ポリシランを含む液層(分離工程を経て分離された液層)を、さらに、ポリシランを溶解せず、かつ溶媒(a)との組み合わせにおいて層分離可能な溶媒で洗浄する工程を含んでいてもよい。
代表的な精製方法では、金属成分(1)を含むポリシランが少なくとも疎水性有機溶媒で構成された溶媒に溶解した溶液と、金属成分(2)が溶解した水溶液とを混合する工程と、この混合工程を経て得られた混合系からポリシランを含む液層(有機層)を分離する工程と、さらに前記ポリシランを含む液層を水で洗浄する工程とを含んでいてもよい。
本発明の方法では、金属成分(1)の割合を著しく高いレベルで低減でき、例えば、金属成分(1)の割合が、金属(a)の重量換算で、全体に対して50ppm以下程度のポリシランを得ることができる。また、本発明の方法では、金属成分(1)のみならず、接触に使用する金属成分(2)のポリシランに対する残留も高いレベルで抑制でき、例えば、金属成分(1)および金属成分(2)の割合(金属成分(1)および金属成分(2)の総量の割合)が、金属(a)および金属(b)の重量換算で、全体に対して100ppm以下程度のポリシランを得ることもできる。
本発明には、前記精製方法により得られたポリシラン(前記精製方法により金属成分が除去されたポリシラン)も含まれ、このようなポリシランにおいて、金属成分の(1)および金属成分(2)の割合は、金属(a)および金属(b)の重量換算で、全体に対して100ppm以下であってもよい。
本発明では、金属成分を含むポリシランと、前記金属成分とは特定の指標において異なる金属成分とを接触させることにより、ポリシランに予め含まれる金属成分を効率よく除去できる。また、本発明の方法によれば、慣用の方法(例えば、溶媒による洗浄など)では、亜鉛などの金属成分の除去が困難なポリシランであっても、簡便にかつ効率よく金属成分を除去できる。さらに、本発明では、除去に使用される金属成分(又は金属成分を構成する金属)はポリシランに対する親和性が低いためか簡便に除去できるため、ポリシランに含まれる金属成分の含有量を著しく低減できる。このような方法で得られるポリシランは、金属成分の含有量が著しく低減された高純度のポリシランである。そのため、このような高純度のポリシランは、金属成分の低減が要求される用途、例えば、光電子材料用途などとして好適に利用できる。また、金属成分の含有量が著しく高いレベルで低減されているため、長期に亘って、ポリシランの変質を抑制できる。
本発明の精製方法(又は除去方法)では、金属成分(1)を含むポリシラン(以下、単に金属含有ポリシランということがある)と、金属成分(1)を構成する金属(a)に対して、特定の指標において前記金属(a)とは異なる金属(b)で構成されている金属成分(2)とを接触させることによりポリシランに含まれる金属成分(1)を除去する。
[金属成分(1)を含むポリシラン]
(ポリシラン)
金属成分(1)を含むポリシランにおいて、ポリシランとしては、Si−Si結合を有する直鎖状、環状、分岐状、又は網目状の化合物であれば特に限定されないが、通常、前記ポリシランは、下記式(1)〜(3)で表された構造単位のうち少なくとも1つの構造単位を有するポリシランで構成されている場合が多い。
Figure 0005658608
(式中、R〜Rは、同一又は相異なって、水素原子、有機基又はシリル基を示し、r、s及びtはそれぞれ0以上の整数を示し、r、s及びtの合計は2以上の整数である。)
前記式(1)及び(2)において、R〜Rで表される有機基としては、炭化水素基(アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、アラルキル基)など、これらの炭化水素基に対応するエーテル基(アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基など)、ヒドロキシル基、置換されていてもよいアミノ基[例えば、アミノ基(−NH)、置換アミノ基(前記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アシル基などで置換されたN−モノ又はN,N−ジ置換アミノ基など)など]などが挙げられる。なお、これらの置換基は、さらに1又は複数の他の置換基[例えば、アルキル基(例えば、C1−10アルキル基、好ましくはC1−6アルキル基、さらに好ましくはC1−4アルキル基)などの炭化水素基、アルコキシ基(例えば、C1−10アルコキシ基、好ましくはC1−6アルコキシ基、さらに好ましくはC1−4アルコキシ基)などの上記例示の置換基、アシル基(例えば、アセチル基などのC1−10アルキル−カルボニル基、好ましくはC1−6アルキル−カルボニル基、さらに好ましくはC1−4アルキル−カルボニル基など)など]で置換されていてもよい。
前記式(1)及び(2)のR〜Rにおいて、アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシルなどのC1−14アルキル基(好ましくはC1−10アルキル基、さらに好ましくはC1−6アルキル基)が挙げられる。
アルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、t−ブトキシ、ペンチルオキシなどのC1−14アルコキシ基(好ましくはC1−10アルコキシ基、さらに好ましくはC1−6アルコキシ基)が挙げられる。
アルケニル基としては、ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニルなどのC2−14アルケニル基(好ましくはC2−10アルケニル基、さらに好ましくはC2−6アルケニル基)が挙げられる。
シクロアルキル基としては、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシルなどのC5−14シクロアルキル基(好ましくはC5−10シクロアルキル基、さらに好ましくはC5−8シクロアルキル基)などが挙げられる。シクロアルキルオキシ基としては、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシなどのC5−14シクロアルキルオキシ基(好ましくはC5−10シクロアルキルオキシ基、さらに好ましくはC5−8シクロアルキルオキシ基)などが挙げられる。シクロアルケニル基としては、シクロペンテニル、シクロヘキセニルなどのC5−14シクロアルケニル基(好ましくはC5−10シクロアルケニル基、さらに好ましくはC5−8シクロアルケニル基)などが挙げられる。
アリール基としては、フェニル、メチルフェニル(トリル)、ジメチルフェニル(キシリル)、ナフチルなどのC6−20アリール基(好ましくはC6−15アリール基、さらに好ましくはC6−12アリール基)などが挙げられる。アリールオキシ基としては、フェノキシ、ナフチルオキシなどのC6−20アリールオキシ基(好ましくはC6−15アリールオキシ基、さらに好ましくはC6−12アリールオキシ基)などが挙げられる。アラルキル基としては、ベンジル、フェネチル、フェニルプロピルなどのC6−20アリール−C1−4アルキル基(好ましくはC6−10アリール−C1−2アルキル基)などが挙げられる。アラルキルオキシ基としては、ベンジルオキシ、フェネチルオキシ、フェニルプロピルオキシなどのC6−20アリール−C1−4アルキルオキシ基(好ましくはC6−10アリール−C1−2アルキルオキシ基)などが挙げられる。
シリル基としては、シリル基、ジシラニル基、トリシラニル基などのSi1−10シラニル基(好ましくはSi1−6シラニル基)などが挙げられる。
通常、基R〜Rは、炭化水素基(置換基を有していてもよい炭化水素基)又は炭化水素基に対応するエーテル基(置換基を有していてもよい炭化水素基が結合又は置換したエーテル基)であってもよい。好ましい基Rには、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基などの炭化水素基が含まれ、特にアルキル基(例えば、メチル基などのC1−4アルキル基など)又はアリール基(例えば、フェニル基などのC6−10アリール基)が好ましい。なお、置換基R〜Rは、r、s、又はtによって同一又は異なっていてもよい。
ポリシランが非環状構造(直鎖状、分岐鎖状、網目状)の場合、末端基(末端置換基)は、通常、水素原子、ヒドロキシル基、ハロゲン原子(塩素原子など)、アルキル基、アルコキシ基、シリル基などであってもよい。
具体的なポリシランとしては、例えば、前記式(1)で表される構造単位を有する直鎖状又は環状ポリシラン、前記式(2)又は(3)で表される構造単位を有する分岐状ポリシラン(又は網目状ポリシラン)、前記式(1)〜(3)で表される構造単位を組み合わせて有する分岐状ポリシランなどが挙げられる。また、ポリシランがコポリマーである場合、ブロックコポリマー、ランダムコポリマーのいずれであってもよい。さらに、前記ポリシランは、前記式(1)〜(3)で表される構造単位のそれぞれを単独で又は2種以上組み合わせて有するポリシランであってもよい。
なお、前記式(2)で表される構造単位および前記式(3)で表される構造単位から選択された少なくとも1つの分岐状構造単位を有する分岐状ポリシランは、前記式(1)で表される構造単位を有する直鎖状又は環状ポリシランなどに比べて、溶媒溶解性に優れるなどの特性を有しており、幅広い用途に適用するのに好適なポリシランであるものの、分岐状構造を有しているためか、金属成分を取り込みやすく、金属成分を除去することが困難である。本発明では、このような分岐状構造を有するポリシランであっても、効率よく含有する金属成分を除去できる。
分岐状ポリシランにおいて、前記分岐状構造単位の割合は、ポリシランを構成するケイ素原子換算(モル換算)で、例えば、ポリシラン全体の1モル%以上(例えば、3〜100モル%)、好ましくは5モル%以上(例えば、10〜95モル%程度)、さらに好ましくは15モル%以上(例えば、20〜90モル%程度)であってもよい。
代表的なポリシランとしては、例えば、ポリジアルキルシラン[例えば、ポリジメチルシラン、ポリメチルプロピルシラン、ポリメチルブチルシラン、ポリメチルペンチルシラン、ポリジブチルシラン、ポリジヘキシルシラン、ジメチルシラン−メチルへキシルシラン共重合体などのポリジC1−6アルキルシラン、好ましくはポリジC1−4アルキルシラン]、ポリアルキルアリールシラン[例えば、ポリメチルフェニルシラン、メチルフェニルシラン−フェニルヘキシルシラン共重合体などのポリC1−6アルキルC6−15アリールシラン、好ましくはポリC1−4アルキルC6−10アリールシラン]、ポリジアリールシラン(例えば、ポリジフェニルシランなどのポリジC6−15アリールシラン、好ましくはポリジC6−10アリールシラン)、ジアルキルシラン−アルキルアリールシラン共重合体(例えば、ジメチルシラン−メチルフェニルシラン共重合体、ジメチルシラン−フェニルヘキシルシラン共重合体、ジメチルシラン−メチルナフチルシラン共重合体などのジC1−6アルキルシラン−C1−6アルキルC6−15アリールシラン共重合体、好ましくはジC1−6アルキルシラン−C1−4アルキルC6−10アリールシラン共重合体)などの前記式(1)で表される構造単位を有するポリシラン;ポリアリールシラン[例えば、ポリフェニルシラン(ポリフェニルシリン)などのポリC6−15アリールシラン、好ましくはポリC6−10アリールシラン]などの前記式(2)で表される構造単位又は前記式(3)で表される構造単位を有する分岐状ポリシラン;ジアルキルシラン−アリールシラン共重合体(例えば、ジメチルシラン−フェニルシラン共重合体などのジC1−6アルキルシラン−C6−15アリールシラン共重合体、好ましくはジC1−6アルキルシラン−C6−10アリールシラン共重合体)、アルキルアリールシラン−アリールシラン共重合体(例えば、メチルフェニルシラン−フェニルシラン共重合体などのC1−6アルキルC6−15アリールシラン−C6−15アリールシラン共重合体、好ましくはC1−6アルキルC6−15アリールシラン−C6−10アリールシラン共重合体)などの前記式(1)で表される構造単位と前記式(2)で表される構造単位又は前記式(3)で表される構造単位を有する分岐状ポリシランなどが挙げられる。このようなポリシランの詳細は、例えば、R.D.Miller、J.Michl;Chemical Review、第89巻、1359頁(1989)、N.Matsumoto;Japanese Journal of Physics、第37巻、5425頁(1998)などに例示されている。また、ポリシランは、ポリシラン原料(ハロシラン類など)とビニル化合物とのコポリマーであってもよい。このような共重合体の詳細は、例えば、特開2002−128897号公報に開示されている。
これらのポリシランは単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
ポリシランの数平均重合度(例えば、構造単位(1)〜(3)におけるr、sおよびtの合計)は、2以上であればよく、例えば、5〜400、好ましくは10〜350、さらに好ましくは20〜300程度であってもよい。
ポリシランの分子量は、重量平均分子量で200〜100000、好ましくは300〜50000、さらに好ましくは400〜30000程度であってもよい。なお、ポリシランが環状である場合、環状ポリシランの環の員数は、通常、4〜12程度であってもよく、好ましくは4〜10、さらに好ましくは5〜10(特に5〜8)程度であってもよい。
ポリシランは、市販品を用いてもよく、種々の公知の方法を用いて調製してもよい。ポリシランの代表的な合成方法としては、金属ナトリウムなどのアルカリ金属を用いてトルエン溶媒中のジアルキルジハロシランあるいはジハロテトラアルキルジシランを100℃以上の温度で強力に撹拌し、還元的にカップリングさせる方法[J.Am.Chem.Soc.,103(1981)7352]が知られている。しかし、この方法は、空気中で発火するアルカリ金属を加熱し、強力に攪拌・分散させる必要があるため、工業的規模での生産における安全性が懸念され、また、得られるポリシランの分子量分布が多峰性となり品質的にも十分でない場合が多い。
ポリシランの製造方法として、他にも(a)ビフェニルなどでマスクしたジシレンをアニオン重合させる方法(特開平1−23063号公報)、(b)環状シラン類を開環重合させる方法(特開平5−170913号公報)、(c)ヒドロシラン類を遷移金属錯体触媒により脱水素縮重合させる方法(特公平7−17753号公報)、(d)ジハロシラン類を室温以下の温度で電極還元してポリシランを製造する方法(特開平7−309953号公報)、(e)マグネシウムを還元剤としてハロシラン類を脱ハロゲン縮重合させる方法(いわゆる「マグネシウム還元法」、例えば、WO98/29476号公報、特開2003−277507号公報、特開2005−36139号公報に記載の方法など)が挙げられる。
特に、マグネシウム還元法では、(1)汎用の化学合成装置により安定で安価な原料を用いて合成でき、安全性、コスト面で優位性がある、(2)ナトリウムや有機溶媒への不溶物等、光・電子材料などの用途として不適当な不純物が混入しない、(3)分子量のばらつきが少なく、有機溶媒に対する溶解性や透明性の高いポリシランが得られる、(4)ポリシランが高収率で得られるなどの優れた特徴を有する。
そのため、ポリシランは、マグネシウム還元法により得られるポリシランを好適に使用してもよい。このようなマグネシウム還元法では、少なくともマグネシウム金属成分の存在下で、ハロシラン類を重合させることによりポリシランを合成できる。特に、マグネシウム還元法では、より効率よく高性能のポリシランを得るため、触媒として、マグネシウム金属成分と他の金属成分[例えば、リチウム化合物、金属ハロゲン化物(リチウム化合物(リチウムハロゲン化物、ハロゲン化リチウム)ではない金属ハロゲン化物)]とを併用する場合が多い。
そして、このような種々の方法で得られるポリシラン(特にマグネシウム還元法により得られるポリシラン)は、種々の金属成分を触媒として使用しており、このような触媒がポリシランに金属成分を含有させる要因となることが多い。
以下に、マグネシウム還元法について詳述する。
マグネシウム還元法では、少なくともマグネシウム金属成分の存在下、ハロシラン類(ハロシラン化合物)を反応させることによりポリシランを得る。
ハロシラン類としては、ジハロシラン類、トリハロシラン類、テトラハロシラン類などが挙げられる。ポリシランが前記式(1)〜(3)で表される構造単位のうち少なくとも1つの構造単位を有するポリシランである場合には、これらのジ乃至テトラハロシラン類は、それぞれ、下記式で表されるハロシランのうち少なくとも1つのハロシラン(ジ乃至テトラハロシラン類)で構成してもよい。
Figure 0005658608
(式中、X〜Xはハロゲン原子、R〜R、r、s及びtは前記と同じ。)
上記式(1A)〜(3A)において、X〜Xで表されるハロゲン原子は、前記と同様であり、塩素原子および臭素原子(特に塩素原子)が好ましく、同一又は異なるハロゲン原子であってもよい。また、上記式(1A)〜(3A)において、r、s及びtは、それぞれ、前記と同様に1以上であればよく、単量体(r=s=t=1)であってもよく、多量体(r、sおよびtが2以上)であってもよい。例えば、式(1A)で表されるジハロシランにおいて、rは、1〜1000、好ましくは1〜500、さらに好ましくは1〜100(例えば、1〜10)程度であってもよい。rが大きい多量体を用いると、ブロックコポリマーを得やすく、単量体又はrが小さい多量体を用いるとランダムコポリマーを得やすい。コポリマーの製造効率の点からは、単量体又はrが小さい多量体(例えば、rが1〜2程度のハロシラン)を好適に用いてもよい。なお、トリハロシラン類およびテトラハロシラン類は、通常、単量体(s=t=1)で使用する場合が多い。
代表的なハロシランとしては、例えば、ジハロシラン類[例えば、ジアルキルジハロシラン(例えば、ジメチルジクロロシランなどのジC1−4アルキルジハロシラン及びその多量体)、アルキル−アリールジハロシラン(例えば、メチルフェニルジクロロシランなどのC1−4アルキル−C6−10アリールジハロシラン及びその多量体)、アルキル−シクロアルキルジハロシラン(例えば、メチルシクロヘキシルジクロロシランなどのC1−4アルキル−C5−10シクロアルキルジハロシラン及びその多量体)、ジアリールジハロシラン(例えば、ジフェニルジハロシラン、ジトリルジハロシラン、ジキシリルジハロシラン、フェニルトリルジハロシラン、ジメトキシフェニルジハロシランなどのジC6−10アリールジハロシラン及びその多量体など)などの式(1A)で表されるジハロシラン類など]、トリハロシラン類[例えば、アルキルトリハロシラン(例えば、メチルトリクロロシランなどのC1−4アルキルトリハロシラン)、シクロアルキルトリハロシラン(例えば、シクロヘキシルトリクロロシランなどのC5−10シクロアルキルトリハロシラン及びその多量体)、アリールトリハロシラン(例えば、フェニルトリクロロシランなどのC6−10アリールトリハロシラン及びその多量体)などの式(2A)で表されるトリハロシラン類]、テトラハロシラン類(例えば、テトラクロロシランなどのテトラハロシランなどの式(3A)で表されるテトラハロシラン類)などが例示できる。これらのハロシランは、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
なお、前記分岐状ポリシランは、トリハロシラン類(又は前記式(2A)で表されるトリハロシラン類)及びテトラハロシラン類(又は前記式(3A)で表されるテトラハロシラン類)から選択された少なくとも1種で構成されたハロシラン類を重合させることにより得られる。
また、前記ハロシラン類は、ポリシランの末端を封鎖するため、必要に応じて、さらにモノハロシラン類[例えば、トリアルキルハロシラン(例えば、トリメチルクロロシランなどのトリC1−4アルキルハロシラン)、トリアリールハロシラン(例えば、トリフェニルクロロシランなどのトリC6−10アリールハロシラン)など]で構成してもよい。
なお、ハロシラン類は、できるだけ高純度であるのが好ましい。例えば、液体のハロシラン類については、水素化カルシウムなどの乾燥剤を用いて乾燥し、蒸留して使用するのが好ましく、固体のハロシラン類については、再結晶法などにより、精製して使用するのが好ましい。
なお、ハロシラン類の反応は、通常、反応に不活性な溶媒の存在下で行われる。溶媒としては、非プロトン性溶媒(不活性溶媒)が広く使用でき、例えば、エーテル類(1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランなどの環状C4−6エーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテルなどの鎖状C4−6エーテル)、カーボネート類(エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなど)、ニトリル類(アセトニトリル、ベンゾニトリルなど)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)、ハロゲン含有化合物(塩化メチレン、クロロホルム、ブロモホルム、クロロベンゼン、ブロモベンゼンなどのハロゲン化炭化水素など)、芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレンなど)、脂肪族炭化水素類(ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、シクロオクタンなどの鎖状又は環状炭化水素類)などが挙げられ、これらの溶媒は混合溶媒として使用してもよい。溶媒としては、極性溶媒単独(テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタンなど)、2種以上の極性溶媒の混合物、極性溶媒と非極性溶媒との混合物などが好ましい。極性溶媒と非極性溶媒との混合物を使用する場合、両者の割合は、前者/後者(重量比)=1/0.01〜1/20程度である。
溶媒(反応液)中のハロシラン類の濃度は、通常、20モル/L以下(例えば、0.05〜20モル/L)、好ましくは10モル/L以下(例えば、0.2〜10モル/L)、特に5モル/L以下(例えば、0.3〜5モル/L)程度である。
(マグネシウム金属成分)
前記ハロシラン類(前記式(1)で表される構造単位に対応するジハロシランを少なくとも含むハロシラン類)の反応は、マグネシウム金属成分の存在下で好適に行うことができ、マグネシウム金属成分を作用させることにより、ポリシランを効率よく生成できる。
マグネシウム金属成分は、少なくともマグネシウムが含まれていればよく、マグネシウム金属単体又はマグネシウム系合金、あるいは前記マグネシウム金属又は合金を含む混合物などであってもよい。マグネシウム合金の種類は特に制限されず、慣用のマグネシウム合金、例えば、アルミニウム、亜鉛、希土類元素(スカンジウム、イットリウムなど)などの成分を含むマグネシウム合金が例示できる。これらのマグネシウム金属成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
マグネシウム金属成分の形状は、ハロシラン化合物の反応を損なわない限り特に限定されないが、粉粒状(粉体、粒状体など)、リボン状体、切削片状体、塊状体、棒状体、板状体(平板状など)などが例示され、特に表面積の大きい形状(粉体、粒状体、リボン状体、切削片状体など)であるのが好ましい。マグネシウム金属成分が粉粒状の場合、平均粒径は、1〜10000μm、好ましくは10〜5000μm、さらに好ましくは20〜1000μm程度である。
なお、マグネシウム金属成分の保存状況などによっては、金属表面に被膜(酸化被膜など)が形成されることがある。この被膜は反応に悪影響を及ぼすことがあるので、必要に応じて、切削や溶出(塩酸洗浄などの酸洗)などの適当な方法によって除去してもよい。
マグネシウム金属成分の使用量は、通常、ハロシラン類のハロゲン原子に対して、マグネシウム換算で、1〜20当量であり、好ましくは1.1〜14当量、さらに好ましくは1.2〜10当量(例えば、1.2〜5当量)程度である。また、マグネシウム金属成分の使用量は、通常、ハロシラン化合物に対してモル数でマグネシウムとして1〜20倍であり、好ましくは1.1〜14倍であり、より好ましくは1.2〜10倍(例えば、1.2〜5倍)程度である。
マグネシウム金属成分は、前記ハロシラン類を還元して、ポリシランを形成させるとともに、マグネシウム自身は酸化されてハロゲン化物を形成する。
反応は、少なくとも前記マグネシウム金属成分の存在下で行えばよいが、ハロシランの重合を促進するため、リチウム化合物及び金属ハロゲン化物から選択された少なくとも一種(促進剤又は触媒)の共存下、特に、マグネシウム金属成分及び金属ハロゲン化物の存存下で行うのが有利である。そして、これらの触媒成分としてのマグネシウム金属成分、リチウム化合物および金属ハロゲン化物は、重合して得られたポリシランに取り込まれる。
(リチウム化合物)
リチウム化合物としては、ハロゲン化リチウム(塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウムなど)、無機酸塩(硝酸リチウム、炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、塩酸リチウム、硫酸リチウム、過塩素酸リチウム、リン酸リチウムなど)などが使用できる。これらのリチウム化合物は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。好ましいリチウム化合物は、ハロゲン化リチウム(特に塩化リチウム)である。
溶媒(反応液)中のリチウム化合物の濃度は、通常、0.05〜5モル/L、好ましくは0.1〜4モル/L、特に0.15〜3モル/L程度である。
リチウム化合物の割合は、ハロシラン類の総量100重量部に対して、0.1〜200重量部、好ましくは1〜150重量部、さらに好ましくは5〜100重量部(例えば、5〜75重量部)程度であり、通常、10〜80重量部程度である。
(金属ハロゲン化物)
金属ハロゲン化物(リチウムハロゲン化物を除く金属ハロゲン化物)としては、多価金属ハロゲン化物、例えば、遷移金属(例えば、サマリウムなどの周期表3A族元素、チタンなどの周期表4A族元素、バナジウムなどの周期表5A族元素、鉄、ニッケル、コバルト、パラジウムなどの周期表8族元素、銅などの周期表1B族元素、亜鉛などの周期表2B族元素など)、周期表3B族金属(アルミニウムなど)、周期表4B族金属(スズなど)などの金属のハロゲン化物(塩化物、臭化物又はヨウ化物など)が挙げられる。金属ハロゲン化物を構成する前記金属の価数は、特に制限されないが、好ましくは2〜4価、特に2又は3価である。これらの金属ハロゲン化物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
金属ハロゲン化物としては、鉄、アルミニウム、亜鉛、銅、スズ、ニッケル、コバルト、バナジウム、チタン、パラジウム、サマリウムなどから選択された少なくとも一種の金属の塩化物又は臭化物が好ましい。
このような金属ハロゲン化物としては、例えば、塩化物(FeCl、FeClなどの塩化鉄;AlCl、ZnCl、SnCl、CoCl、VCl、TiCl、PdCl、SmClなど)、臭化物(FeBr、FeBrなどの臭化鉄など)、ヨウ化物(SmIなど)などが例示できる。これらの金属ハロゲン化物のうち、塩化物(例えば、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)などの塩化鉄、塩化亜鉛など)及び臭化物が好ましい。通常、塩化鉄及び/又は塩化亜鉛、特に塩化亜鉛などが使用される。
なお、このような金属ハロゲン化物は、触媒活性を向上できるものの、ポリシラン中に残留しやすい。
溶媒中の金属ハロゲン化物の濃度は、通常、0.001〜6モル/L程度であり、好ましくは0.005〜4モル/L程度であり、より好ましくは0.01〜3モル/L程度である。
金属ハロゲン化物の割合は、前記ハロシラン類の総量100重量部に対して、0.1〜50重量部、好ましくは1〜30重量部、さらに好ましくは2〜20重量部程度であってもよい。
(金属成分(1))
金属成分(1)を含むポリシランにおいて、金属成分(1)は、金属(a)で構成されていればよい。金属(a)としては、特に限定されず、種々の金属原子(又は金属イオン)、例えば、アルカリ又はアルカリ土類金属(例えば、ナトリウム、マグネシウムなど)、遷移金属(例えば、サマリウムなどの周期表第3A族元素、チタンなどの周期表第4A族元素、バナジウムなどの周期表第5A族元素、鉄、ニッケル、コバルト、パラジウムなどの周期表第8族元素、銅などの周期表第1B族元素、など)、周期表第2B族元素(例えば、亜鉛など)、周期表第3B族金属(例えば、アルミニウムなど)、周期表第4B族金属(例えば、スズなど)などが挙げられる。金属(a)は、単独の金属であってもよく、異種の金属で構成されていてもよい。
これらの金属(a)のうち、特に、周期表第8属元素(特に鉄)、周期表第2B族元素(亜鉛など)などの金属は、ハロシラン類の重合触媒を構成する金属などとして有効である一方で、ポリシランに取り込まれやすく、慣用の精製方法(例えば、有機溶媒、水などによる洗浄など)のみならず、酸、アルカリ、イオン交換体(陽イオン交換樹脂など)などによる洗浄によっても、ポリシランから除去することは困難である。本発明の方法では、このような極めて除去が困難な金属(特に、亜鉛)であっても、高いレベルでポリシランから除去可能である。
金属成分(1)の含有形態は、特に限定されず、例えば、ポリシランのポリマー構造に金属化合物などの形態で取り込まれていてもよく、ポリシランの構成原子(例えば、ケイ素原子など)に対する配位などによりポリシランに結合していてもよい。
なお、金属成分(1)は、いかなる経緯でポリシランに含有されていてもよいが、通常、ポリシランを合成する過程においてポリシランに取り込まれるようである。このような金属成分(1)としては、例えば、(i)金属触媒(例えば、前記マグネシウム成分および金属ハロゲン化物)の存在下で、ポリシラン類の原料(例えば、ハロシラン類)を重合させることによりポリシランに取り込まれる金属触媒由来の金属成分、(ii)ポリシラン類(ハロシラン類など)の原料に含まれる金属成分などが挙げられる。通常、ポリシランに含まれる金属成分(1)の大部分が、金属触媒由来の金属成分である場合が多い。
金属含有ポリシランにおいて、金属成分(1)の割合は、金属(a)の重量換算で、全体に対して、200ppm以上の範囲から選択でき、例えば、500ppm以上(例えば、500〜100000ppm程度)、好ましくは1000ppm以上(例えば、2000〜80000ppm程度)、さらに好ましくは3000ppm以上(例えば、4000〜50000ppm程度)、特に5000ppm以上(例えば、7000〜40000ppm程度)、通常8000ppm以上(例えば、10000〜30000ppm程度)であってもよい。本発明では、このような多量の金属成分(1)を予め含むポリシランであっても、効率よく除去可能である。
なお、金属(a)(又は金属成分(1))がポリシランに取り込まれる理由は定かではないが、金属(a)がポリシランに対して何らかの親和性を有しているものと思われる。しかも、ポリシランの合成において用いられる触媒としての金属成分(特に、鉄成分、亜鉛成分など)は、重合に関与するためか、ポリシランに対する親和性(又は残留性)が高く、ポリシランに一旦取り込まれて残留すると、洗浄(溶媒による洗浄、酸、アルカリによる洗浄)などの方法では、わずかに除去することができても、高いレベルで除去するのが困難である。
そこで、本発明では、金属含有ポリシランと、特定の指標において金属(a)とは異なる金属(b)で構成されている金属成分(2)とを接触させることにより、前記金属含有ポリシランから効率よく金属成分(1)を除去する。
[金属成分(1)の除去方法]
金属成分(2)は、金属(a)とは後述する特定の指標において異なる金属(b)で構成されていればよい。金属(b)としては、金属(a)(金属(a)が複数の金属である場合には全ての金属)とは異なる種々の金属原子(又は金属イオン)、例えば、遷移金属(例えば、スカンジウムなどの周期表第3A族元素、チタン、ジルコニウム、ハフニウムなどの周期表第4A族元素、バナジウム、ニオブなどの周期表第5A族元素、モリブデン、タングステンなどの周期表第6A族元素、マンガンなどの周期表第7A族元素、鉄、ニッケル、コバルト、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金などの周期表第8族元素、銅、銀、金などの周期表第1B族元素など)、周期表第2B族元素(例えば、亜鉛、カドミウム、水銀など)、周期表第3B族元素(例えば、アルミニウム、ガリウム、インジウムなど)、周期表第4B族元素(例えば、ゲルマニウム、スズ、鉛など)、周期表第5B族元素(例えば、アンチモン、ビスマスなど)などが挙げられる。金属(b)は、金属(a)と異なる限り、単独の金属であってもよく、異種の金属で構成されていてもよい。
金属成分(2)を構成する金属(b)は、前記金属(a)よりも、イオン化傾向において小さい金属であればよい。このような条件を充足する金属成分(2)を使用することにより、金属成分(1)を高レベルで除去できる理由は定かではないが、ポリシランに何らかの形態で取り込まれた金属(a)(又は金属成分(1))が、上記条件を充足する金属(b)(又は金属成分(2))との接触により、ポリシランに対する親和性が低下し、ポリシランから除去されるようである。そして、金属成分(1)の除去に使用する金属成分(2)(又は金属(b))は、金属(a)(又は金属成分(1))よりもポリシランに対する親和性が低いためか、溶出などにより簡便にかつ効率よくポリシランから除去できる。
(イオン化傾向が小さい金属)
前記イオン化傾向が小さい金属(b)において、「イオン化傾向」とは、「金属が液体と接触して陽イオンになろうとする傾向」を意味し、「定量的には、その液体中における金属(M)/金属陽イオン(MZ+)系の標準電極電位E(MZ+/M)の大きさでその序列が決まる」(「化学辞典 第1版、東京化学同人(株)、1994年10月1日発行」より抜粋)。
すなわち、金属(b)のイオン化傾向が金属(a)のイオン化傾向よりも小さい(又は低い)ことは、定量的には金属(b)の標準電極電位(通常、水溶液中での標準電極電位)が金属(a)の標準電極電位よりも大きいことを意味し、代表的な金属(金属元素、金属原子)のイオン化傾向を下記に示す(不等号においてより大きいほどイオン化傾向が大きい(高い))。
Li>K>Ca>Na>Mg>Ti>Al>Mn>Zn>Cr>Ga>Fe(II)>Cd>In>Ta(I)>Co>Ni>Sn>Pb>Fe(III)>Cu(II)>Cu(I)>Hg>Ag>Pd>Pt>Au。
このような指標によれば、容易に前記ポリシランと接触させて金属成分(1)を除去するための金属成分(2)を選択でき、例えば、金属(a)が亜鉛(Zn)である場合、イオン化傾向の観点から、Cr、Ga、Fe(Fe(II)、Fe(III))、Cd、Co、Ni、Sn、Pb、Cu(Cu(II)、Cu(I))、Ag、Pd、Pt、Auなどの金属(又は金属イオン)で構成されている金属成分を金属成分(2)として使用できる。
なお、金属成分(2)は、金属(b)で構成されていればよく、例えば、金属単体、金属イオン、金属化合物(前記金属成分(1)の項で例示の金属化合物、例えば、金属ハロゲン化物など)などのいずれであってもよい。なお、後述するように、前記ポリシランと金属成分(2)とを効率よく接触させるためには、金属成分(2)は、溶媒に可能な金属成分、例えば、金属化合物(例えば、金属ハロゲン化物、金属硫酸塩などの金属と無機酸との塩など)であるのが好ましい。
特に、前記ポリシランが通常有機溶媒(特に疎水性有機溶媒)に可溶であり、金属成分(1)及び接触後の金属成分(2)を除去しやすくするため、前記金属成分(2)は、水溶性の金属化合物(水溶性金属化合物、例えば、金属ハロゲン化物、金属硫酸塩などの金属と無機酸との塩など)であるのが好ましい。特に、銅化合物は、前記ポリシランとの接触後において、除去しやすく、好適に用いることができる。
(接触方法)
前記ポリシランと金属成分(2)とを接触させる方法は、特に制限されないが、通常、前記ポリシランと金属成分(2)とを溶媒の存在下で(又は溶媒を介して、又は溶媒系で)接触させる場合が多い。溶媒としては、ポリシラン及び金属成分(2)を分散可能な溶媒であってもよいが、通常、少なくともいずれか一方の成分を溶解可能な溶媒、例えば、(i)ポリシラン及び金属成分(2)を溶解可能な溶媒、(ii)ポリシランを溶解可能な溶媒、(iii)ポリシランを溶解可能な溶媒(a)(又はポリシランに対する良溶媒(a))と、ポリシランを溶解しない溶媒(又はポリシランに対する貧溶媒、ポリシランに対して難溶性の溶媒)であって、金属成分(2)を溶解可能な溶媒(b)(又は金属成分(2)に対する良溶媒)との混合溶媒などが挙げられる。
好ましい溶媒には、金属成分(2)を接触させるとともに最終的にポリシランから除去するという観点から、上記溶媒(iii)が挙げられる。特に、溶媒(b)は、溶媒(a)との組み合わせにおいて、層分離可能な溶媒(又は非混和性の溶媒)であってもよい。このような混合溶媒を用いると、前記ポリシランに金属成分(2)を接触させて効率よく金属成分(1)を除去できるとともに、ポリシランを溶解しない層(例えば、水層)に金属成分(金属成分(1)及び金属成分(2))を移行させやすくなり、ポリシランと金属成分とを分離しやすい。
溶媒(a)としては、ポリシランを溶解可能な溶媒(又はポリシランに対して易溶性の溶媒)であればよく、幅広い非プロトン性溶媒、例えば、エーテル類(例えば、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテルなどの環状又は鎖状エーテル(例えば、C4−6エーテル)など)、カーボネート類(プロピレンカーボネートなど)、ニトリル類(例えば、アセトニトリル、ベンゾニトリルなど)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)、ハロゲン含有溶媒(例えば、塩化メチレン、クロロホルム、ブロモホルム、クロロベンゼン、ブロモベンゼンなどのハロゲン化炭化水素など)、芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレンなど)、脂肪族炭化水素類(例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、シクロオクタンなど鎖状又は環状脂肪族炭化水素類)などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
これらの溶媒の中でも、芳香族炭化水素類(例えば、トルエン、キシレンなど)、ハロゲン含有溶媒(例えば、クロロホルムなど)などの疎水性溶媒は、ポリシランを溶解しやすく、しかも、溶媒(b)としての水に対して混和しにくく、分液しやすいため、好適に用いることができる。特に、ポリシランと相互作用を起こさないという観点から、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類が好ましい。そのため、前記溶媒(a)は、溶媒(b)が水である場合、少なくとも疎水性溶媒で構成してもよく、疎水性溶媒単独(例えば、前記芳香族炭化水素類などの1種又は2種以上の疎水性溶媒)、疎水性溶媒と親水性溶媒(例えば、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフランなどの環状エーテル類、アセトンなどのケトン類など)との混合溶媒などであってもよい。疎水性溶媒と親水性溶媒との混合溶媒を使用する場合、両者の割合は、例えば、前者/後者(重量比)=1/0.01〜1/20、好ましくは1/0.1〜1/10、さらに好ましくは1/0.3〜1/5(例えば、1/0.5〜1/3)程度であってもよい。
ポリシランと溶媒(a)との割合は、例えば、前者/後者(重量比)=1/99〜50/50、好ましくは5/95〜40/60、さらに好ましくは10/90〜30/70程度であってもよい。溶媒(a)中のポリシランの濃度が低すぎると、金属成分(1)の分離効率や釜効率が悪くなる虞がある。また、後に、溶媒を留去する場合には、多大な時間とエネルギーを要する場合がある。逆に、ポリシランの濃度が高すぎると、分液効率が悪くなる虞があり、例えば、中間層が形成されると、ポリシランの回収効率も小さくなる場合がある。
また、金属成分(2)を溶解可能な溶媒(b)としては、金属成分(2)の種類に応じて適宜選択でき、例えば、水、前記例示の溶媒と同様の溶媒[例えば、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルカノール類など)、エーテル類(例えば、ジエチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフランなどの鎖状又は環状エーテル類)、ハロゲン系溶媒(例えば、塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素類など)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトンなど)、炭化水素類(例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなどの脂肪族又は脂環族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類など)など]などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。なお、溶媒(b)は、酸性溶媒、アルカリ性溶媒などであってもよい。
好ましい溶媒(b)には、水、低級アルコール類(例えば、メタノール、エタノールなど)などの親水性溶媒が挙げられ、特に水が好ましい。このような親水性溶媒(特に水)は、ポリシランを溶解しない(又はポリシランに対して難溶性である)場合が多いため、ポリシランから分離しやすく、特に、少なくとも疎水性有機溶媒(例えば、前記芳香族炭化水素など)で構成された溶媒(a)との組み合わせにおいて、ポリシランと金属成分(金属成分(1)及び(2))とを分離しやすいため好適に使用できる。
金属成分(2)と溶媒(b)との割合は、例えば、前者/後者(重量比)=1/99〜50/50、好ましくは3/97〜30/70、さらに好ましくは5/95〜20/80程度であってもよい。なお、金属成分(2)の割合が低すぎると、金属成分(1)の除去が十分に行えない虞がある。また、金属成分(2)の割合が高すぎるとポリシランの種類によっては変質につながる虞があり、また、製造設備中に残留もしくはポリシランの溶液中に混入する量が多くなる虞がある。
前記溶媒(iii)を用いる接触方法では、ポリシラン(金属成分(1)を含むポリシラン)、溶媒(a)、金属成分(2)、および溶媒(b)を接触できればよく、例えば、本発明の除去方法は、前記ポリシランと、溶媒(a)と、金属成分(2)と、溶媒(b)(特に、溶媒(a)との組み合わせにおいて溶解しない溶媒(b))とを混合する工程(混合工程)を含んでいてもよい。
混合方法は、特に限定されず、各成分を一度に又は適当な順序で混合してもよい。特に、ポリシランを溶解した液層の分離効率の観点から、前記ポリシランが溶媒(a)に溶解した溶液(A)(例えば、前記ポリシランが少なくとも疎水性有機溶媒で構成された溶媒に溶解した溶液)と、金属成分(2)が溶媒(b)に溶解した溶液(B)(例えば、水溶液)とを混合してもよい。
接触(又は混合)において、金属成分(2)の割合(又はポリシランに接触させる金属成分(2)の総量)は、ポリシランに含まれる金属成分(1)の含有割合にもよるが、ポリシラン(金属成分(1)を含むポリシラン)100重量部に対して、例えば、1〜300重量部、好ましくは5〜200重量部、さらに好ましくは10〜100重量部、特に20〜80重量部程度であってもよい。
また、前記溶液(A)と、前記溶液(B)との割合は、前者/後者(重量比)=1/100〜1/0.1、好ましくは1/5〜1/0.2、さらに好ましくは1/3〜1/0.3程度であってもよい。
ポリシランと金属成分(2)との接触(又は混合)は、有機合成などにおいて慣用の混合方法と同様に行うことができ、慣用の混合機や分散機を用いて行ってもよく、攪拌下で行ってもよい。ポリシランと金属成分(2)との接触時間(混合時間)は、長い方が好ましいが、製造効率の面から、5〜180分、好ましくは10〜120分程度であってもよい。
接触後(又は混合工程後)において、前記混合工程を経て得られた混合系(混合物)からのポリシラン(又はポリシランを含む溶液)の分離は、用いた溶媒の種類などに応じて、慣用の方法、例えば、抽出、分液、濾過などを用いて行うことができる。例えば、前記溶媒(a)と溶媒(b)が互いに層分離可能な溶媒である場合、前記混合系から、前記ポリシラン(金属成分(1)が除去されたポリシラン)を含む液層を、慣用の分液操作などを利用して分離する工程(分離工程)を経て、ポリシラン(又はポリシランを含む液層)を分離してもよい。
なお、ポリシランと金属成分(2)との接触(及びポリシランの分離)は、一回の接触操作であっても、効率よく高いレベルでポリシランから金属成分(1)を除去できるが、要求される金属濃度に応じて、繰り返し行ってもよい。
混合系から分離されたポリシラン(又はポリシランを含む溶液)は、ポリシラン中の金属成分(1)が除去されているため、用途に応じてそのまま固体又は溶液状で使用することもでき、より一層金属成分の含有量を低減するため、さらに洗浄してもよい。すなわち、金属成分(2)と接触後において混合系から分離されたポリシラン(又はポリシランを含む溶液)には、除去された金属成分(1)や金属成分(2)などが依然として残留している場合がある。そのため、前記除去方法は、前記混合工程と、分離工程とを経て得られたポリシラン(又はポリシランを含む液層)を、さらにポリシランを溶解しない溶媒(又はポリシランに対する貧溶媒又は非溶媒、ポリシランに対して難溶性の溶媒)で洗浄する工程(洗浄工程)を含んでいてもよい。
洗浄工程において使用する溶媒(洗浄溶媒)としては、ポリシランを溶解しない溶媒であればよいが、分離の観点からは、通常、ポリシランを溶解せず、かつ溶媒(a)との組み合わせにおいて層分離可能な溶媒であってもよい。また、洗浄溶媒は、金属成分を除去するという観点から、金属成分(2)(及び金属成分(1))を溶解可能な溶媒(例えば、水などの前記例示の溶媒(b))が好ましい。特に、洗浄溶媒は、ポリシランから金属成分を除去するという観点から、金属成分を極力含まない溶媒であるのが好ましい。例えば、洗浄溶媒として水を用いる場合、水の導電率は、25℃において、例えば、10μS/cm以下[例えば、25℃における純水の電解伝導率(μS/cm)〜9μS/cm程度]、好ましくは8μS/cm以下[例えば、25℃における純水の電解伝導率(μS/cm)〜7.5μS/cm程度]、さらに好ましくは7μS/cm以下[例えば、25℃における純水の電解伝導率(μS/cm)〜6.5μS/cm程度]であってもよい。このような低導電率の水としては、純水、イオン交換水などが挙げられる。
洗浄工程において、洗浄は、ポリシラン(又はポリシランを含む溶媒層)と洗浄溶媒とを混合し、分液操作などを利用して、洗浄溶媒を除去することにより行うことができる。なお、洗浄工程は、一回であってもよく、複数回(例えば、2〜10回、好ましくは2〜5回程度)行ってもよい。
また、洗浄工程において使用する洗浄溶媒の割合(洗浄一回あたりの洗浄溶媒の使用量)は、ポリシラン(液層に含まれるポリシラン)100重量部に対して、例えば、30〜1000重量部、好ましくは50〜800重量部、さらに好ましくは100〜500重量部程度であってもよい。
なお、洗浄工程後のポリシランを含む溶液は、用途によっては溶液のまま使用してもよく、通常、蒸留(減圧蒸留など)などにより溶媒を除去(又は留去)して使用してもよい。いずれの場合であっても、前記溶液は、脱水剤(又は乾燥剤、例えば、硫酸マグネシウムなど)を用いて脱水してもよい。なお、脱水剤は、濾過などにより除去できる。
本発明の方法により得られたポリシランでは、金属成分(1)の含有量が極めて高いレベルで低減されており、例えば、金属成分(1)の割合は、金属(a)の重量換算で、全体に対して100ppm以下(例えば、0〜80ppm程度)、好ましくは70ppm以下(例えば、0.5〜50ppm程度)、さらに好ましくは40ppm以下(例えば、1〜35ppm程度)、特に20ppm以下(例えば、1.5〜10ppm程度)であってもよい。
また、本発明の方法により得られたポリシランでは、洗浄工程などを経ることにより金属成分(2)を含む残留金属成分の含有量も低減でき、例えば、金属成分(1)および金属成分(2)の割合が、金属(a)および金属(b)の重量換算で、全体に対して150ppm以下(例えば、0〜120ppm程度)、好ましくは100ppm以下(例えば、1〜90ppm程度)、さらに好ましくは80ppm以下(例えば、1.5〜75ppm程度)、特に30ppm以下(例えば、2〜20ppm程度)であってもよい。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
なお、実施例において金属成分の含有量は、ICP及びWDX蛍光X線分析により測定した。
(実施例1)
三方コックを装着した内容積1000mlの丸型フラスコに、粒状(粒径20〜1000μm)のマグネシウム25.0g、無水塩化亜鉛(ZnCl)16.2gを仕込み、50℃で1mmHg(=133kPa)に加熱減圧して、反応混合物を乾燥した後、乾燥アルゴンガスを反応器内に導入し、予めナトリウム−ベンゾフェノンケチルで乾燥したテトラヒドロフラン500mlを加え、室温で約30分間撹拌した。この反応混合物に、予め蒸留により精製したフェニルトリクロロシラン105.8g(0.50mol)を加え、20℃で約18時間撹拌した。反応終了後、トルエン300mlを加えた後、減圧濾過により反応によって生成した塩化マグネシウム、余剰のマグネシウムを除去した。ろ液を純水200mlで10回洗浄し、トルエン層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、トルエン、テトラヒドロフランを留去することにより、亜鉛を約15000ppm以上含有したポリフェニルシリン50gを得た。
得られたポリフェニルシリンをトルエン150gとテトラヒドロフラン150gとの混合溶液に溶解し、さらに塩化銅(II)(CuCl)を10重量%の割合で含む塩化銅水溶液200gを混合して60分間攪拌したのち、ポリフェニルシリンを含む有機層と塩化銅を含む水層とを分離した。そして、ポリフェニルシリンを含む有機層を、純水200mlで3回洗浄した後、溶媒成分を留去し、亜鉛を2.0ppmおよび銅を4.0ppm含むポリフェニルシリン48gを得た。
(実施例2)
実施例1で得られたポリフェニルシリンを、実施例1において、塩化銅(II)(CuCl)を10重量%の割合で含む塩化銅水溶液200gに代えて、塩化鉄(III)(FeCl)を10重量%の割合で含む塩化鉄水溶液200gを混合する以外は実施例1と同様にして攪拌、洗浄および留去を行い、亜鉛を30ppmおよび鉄を40ppm含むポリフェニルシリン49gを得た。
(実施例3)
実施例1で得られたポリフェニルシリンを、実施例1において、塩化銅(II)(CuCl)を10重量%の割合で含む塩化銅水溶液200gに代えて、硫酸銅(II)(CuSO)を15重量%の割合で含む硫酸銅水溶液200gを混合する以外は実施例1と同様にして攪拌、洗浄および留去を行い、亜鉛を15ppmおよび銅を3.0ppm含むポリフェニルシリン49gを得た。
(比較例1)
実施例1で得られたポリフェニルシリンを、実施例1において、塩化銅(II)(CuCl)を10重量%の割合で含む塩化銅水溶液200gに代えて、純水200gを混合する以外は実施例1と同様にして攪拌、洗浄および留去を行い、亜鉛を約15000ppm含むポリフェニルシリン49gを得た。
(比較例2)
実施例1で得られたポリフェニルシリンを、実施例1において、塩化銅(II)(CuCl)を10重量%の割合で含む塩化銅水溶液200gに代えて、塩化水素(HCl)を10重量%の割合で含む塩酸200gを混合する以外は実施例1と同様にして攪拌、洗浄および留去を行い、亜鉛を約12000ppm含むポリフェニルシリン49gを得た。
(比較例3)
実施例1で得られたポリフェニルシリンを、実施例1において、塩化銅(II)(CuCl)を10重量%の割合で含む塩化銅水溶液200gに代えて、水酸化ナトリウム(NaOH)を10重量%の割合で含む水酸化ナトリウム水溶液200gを混合する以外は実施例1と同様にして攪拌、洗浄および留去を行い、亜鉛を約8000ppm含むポリフェニルシリン45gを得た。
(比較例4)
実施例1で得られたポリフェニルシリンをトルエン150gとテトラヒドロフラン150gとの混合溶液に溶解し、純水200mlで10回洗浄した後、溶媒(水)を留去し、亜鉛を約13000ppm含むポリフェニルシリン45gを得た。
(比較例5)
実施例1で得られたポリフェニルシリンをトルエン150gとテトラヒドロフラン150gとの混合溶液に溶解し、さらに活性炭(日本エンバイロケミカルズ(株)製、商品名「しらさぎ」)を混合して60分攪拌した。攪拌後の混合液を濾過することにより、ポリフェニルシリンを含む有機層と活性炭とを分離した。そして、得られたポリフェニルシリンを含む有機層を、純水200mlで3回洗浄した後、溶媒成分を留去し、亜鉛を約14000ppm含むポリフェニルシリン49.5gを得た。
結果をまとめて表1に示す。
Figure 0005658608
実施例、比較例および表1から明らかなように、ポリシラン中に含まれる亜鉛は、比較例の洗浄ではほとんど除去できないが、イオン化傾向の低い金属(鉄又は銅)で1回洗浄することにより、きわめて効率よく除去することができた。また、実施例では、洗浄に用いた金属がポリシラン中にほとんど残留することなく、金属成分の含有量が著しく少ない高純度のポリシランが得られた。
本発明の方法では、ポリシラン中に予め含まれる金属成分を効率よく除去できる。また、金属成分の除去に使用される金属成分はポリシランに対する親和性が比較的小さいためか、洗浄などにより簡便に除去できるため、金属成分の含有量が著しく低減された高純度のポリシランを得ることができる。そのため、本発明の方法により得られるポリシランは、慣用のポリシランの用途、例えば、セラミックス前駆体、光電子材料(例えば、フォトレジスト、有機感光体などの光電子写真材料、光導波路などの光伝送材料、光メモリなどの光記録材料、エレクトロルミネッセンス素子用材料など)、光学用部材(例えば、光学フィルタ、ミラー、レンズ、遮光膜、回折素子、偏光ビームスプリッタ、マイクロレンズなど)、樹脂添加剤(難燃剤など)などの用途に利用できる。特に、高レベルで金属成分が除去された高純度のポリシランは、含まれる金属成分が特性に影響を与える用途、例えば、光電子材料用途などにおいて極めて有用である。

Claims (7)

  1. 金属成分(1)を含むポリシランと、金属成分(1)を構成する金属(a)よりも、イオン化傾向において小さい金属(b)で構成されている水溶性の金属成分(2)とを接触させて、ポリシランに含まれる金属成分(1)を除去して精製する方法により得られたポリシランであって、
    金属成分(1)を含むポリシランが、マグネシウム金属成分と亜鉛ハロゲン化物との存在下、ハロシラン類を反応させることにより得られ、下記式(1)〜(3)で表された構造単位のうち少なくとも1つの構造単位を有し、下記式(2)で表される構造単位および下記式(3)で表される構造単位から選択された少なくとも1つの分岐状構造単位をケイ素原子換算(モル換算)で15モル%以上有する重量平均分子量200〜100000の分岐状ポリシランであり、
    Figure 0005658608
    (式中、R〜Rは、同一又は相異なって、水素原子、炭化水素基又はシリル基を示し、r、s及びtはそれぞれ0以上の整数を示し、r、s及びtの合計は2以上の整数である。)
    金属(a)が亜鉛であり、金属(b)が、鉄、コバルト、ニッケルおよび銅から選択された少なくとも1種であり、かつ
    金属成分(1)の割合が、金属(a)の重量換算で、全体に対して100ppm以下であるポリシラン。
  2. 金属成分(1)を含むポリシランが、金属(a)の重量換算で、全体に対して70ppm以の金属成分(1)を含む請求項1記載のポリシラン。
  3. 属成分(2)が、鉄および銅から選択された少なくとも1種の金属(b)で構成されている水溶性の金属化合物である請求項1記載のポリシラン。
  4. 金属成分(1)の割合が、金属(a)の重量換算で、全体に対して50ppm以下である請求項1記載のポリシラン。
  5. 金属成分(1)および金属成分(2)の割合が、金属(a)および金属(b)の重量換算で、全体に対して100ppm以下である請求項1記載のポリシラン。
  6. 金属成分(1)を含むポリシランが、前記式(2)において、Rがアルキル基又はアリール基である構造単位を有する請求項1記載のポリシラン。
  7. 金属成分(1)を含むポリシランが、前記式(2)において、Rがフェニル基である構造単位を有する請求項1記載のポリシラン。
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