<ポリシランの製造方法>
本実施形態に係るポリシランの製造方法は、ハロシラン化合物を、上記式(S1)で表されるシクロアルキルアセテートを含む溶媒中で、金属マグネシウム成分を作用させて反応させる工程を含む。
本実施形態に係るポリシランの製造方法によれば、式(S1)で表されるシクロアルキルアセテートを含む溶媒で反応させることにより、分子量分散度(Mw/Mn)の小さいポリシラン、例えば4以下、好ましくは1〜3のポリシランを得ることができる。なお、質量平均分子量(Mw)は、1000〜100000、好ましくは5000〜80000、さらに好ましくは6000〜60000程度で調整することができる。本明細書において、質量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)のスチレン換算による測定値である。
さらに、反応性向上などの点では、本実施形態に係るポリシランの製造方法は、前記金属マグネシウム成分とともに、下記(I)又は(II)の存在下で反応させることが好ましい。また、下記(II)の存在下で反応させる場合には、さらにアルカリ金属化合物を存在させてもよい。
(I)アルカリ金属化合物と、アルカリ金属以外の金属のハロゲン化物である金属ハロゲン化物
又は
(II)下記一般式(A1)で表される有機金属錯体
MrLr/s ・・・(A1)
(上記一般式(A1)中、Mrは、r価の金属カチオンを表し、Lはs価の有機配位子を表し、r及びsは各々独立に1以上の整数を表す。)
以下、本実施形態に係るポリシランの製造で用いられるハロシラン化合物、溶媒、金属マグネシウム成分、(I)アルカリ金属化合物とアルカリ金属以外の金属のハロゲン化物である金属ハロゲン化物、及び、(II)一般式(A1)で表される有機金属錯体についてそれぞれ詳細に説明する。本明細書において、アルカリ金属以外の金属のハロゲン化物である金属ハロゲン化物を、以下、単に「金属ハロゲン化物」と略称することがある。
[ハロシラン化合物]
上記ハロシラン化合物としては下記式(1)で表される化合物であることが好ましい。
XnSiR4−n (1)
(式中、nは2〜4の整数であり、n個のXは、各々独立に、ハロゲン原子であり、(4−n)個のRは、各々独立に、水素原子、有機基又はシリル基である。)
Xで表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子が挙げられ、塩素原子又は臭素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
Rで表される有機基としては、アルキル基[メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル及びt−ブチル基などの炭素原子数1〜12のアルキル基(好ましくは炭素原子数1〜10のアルキル基、より好ましくは1〜6のアルキル基、特に炭素数1〜4のアルキル基など)]、シクロアルキル基(シクロヘキシル基などの炭素原子数5〜8のシクロアルキル基、特に炭素原子数5〜6のシクロアルキル基)、アルケニル基[エテニル基、プロペニル基、ブテニル基などの炭素原子数2〜12のアルケニル基(好ましくは炭素原子数2〜10のアルケニル基、特に炭素数2〜8のアルケニル基など)]、シクロアルケニル基[1−シクロペンテニル基、1−シクロヘキセニル基などの炭素原子数5〜12のシクロアルケニル基(好ましくは炭素原子数5〜10のシクロアルケニル基、特に炭素数5〜8のシクロアルケニル基など)]、アリール基(フェニル、ナフチル基などの炭素原子数6〜12のアリール基、)、アラルキル基[ベンジル、フェネチル基などのC6−10アリール−C1−6アルキル基(C6−10アリール−C1−4アルキル基など)]、アルコキシ基[メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ及びt−ブトキシ基などの炭素原子数1〜12のアルコキシ基(好ましくは炭素原子数1〜6のアルコキシ基、特に炭素原子数1〜4のアルコキシ基)など]、アミノ基、N−置換アミノ基(上記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アシル基などで置換されたN−モノ又はジ置換アミノ基など)などが挙げられる。上記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を構成するアリール基などは、1又は複数の置換基を有していてもよい。このような置換基としては、上記例示のアルキル基(特に炭素原子数1〜6のアルキル基など)、上記例示のアルコキシ基などが挙げられる。このような置換基を有する有機基としては、例えば、トリル、キシレニル、エチルフェニル、メチルナフチル基などのC1−6アルキル−C6−10アリール基(好ましくはモノ乃至トリC1−4アルキル−C6−10アリール基、特にモノ又はジC1−4アルキルフェニル基など);メトキシフェニル、エトキシフェニル、メトキシナフチル基などのC1−10アルコキシC6−10アリール基(好ましくはC1−6アルコキシC6−10アリール基、特にC1−4アルコキシフェニル基など)などが挙げられる。
シリル基は、上記アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アリール基、アラルキル基及びアルコキシ基などで置換された置換シリル基であってもよい。
nが2の場合(ジハロシラン化合物)において、Rで示される有機基の組み合わせ(n=2)は、アルキル基―アルキル基、アリール基−アリール基、アルキル基―アリール基との組み合わせが好ましく、メチル基−フェニル基、メチル基−メチル基、フェニル基−フェニル基の組み合わせがより好ましい。
ハロシラン化合物は、できるだけ高純度であることが好ましい。例えば、液体のハロシラン化合物については、水素化カルシウムなどの乾燥剤を用いて乾燥し、蒸留して使用することが好ましく、固体のハロシラン化合物については、再結晶法などにより、精製して使用することが好ましい。
このようなハロシラン化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
[アルカリ金属化合物]
本発明で使用するアルカリ金属化合物としては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどを含む化合物(ハロゲン化物、無機酸塩など)などが使用できるが、リチウム化合物が好ましい。
このようなリチウム化合物としては、ハロゲン化リチウム(塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウムなど)、無機酸塩(硝酸リチウム、炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、硫酸リチウム、過塩素酸リチウム、リン酸リチウムなど)などが使用できる。これらのリチウム化合物は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。好ましいリチウム化合物は、ハロゲン化リチウム(特に塩化リチウム)である。
[金属ハロゲン化物]
金属ハロゲン化物は、アルカリ金属以外の金属のハロゲン化物である。このような金属ハロゲン化物は、具体的には多価金属ハロゲン化物であり、例えば、遷移金属(例えば、サマリウムなどの周期表3A族元素、チタンなどの周期表4A族元素、バナジウムなどの周期表5A族元素、鉄、コバルト、パラジウムなどの周期表8族元素、亜鉛などの周期表2B族元素など)、周期表3B族金属(アルミニウムなど)、周期表4B族金属(スズなど)などの金属の塩化物、臭化物又はヨウ化物などが挙げられる。金属ハロゲン化物を構成する上記金属の価数は、特に制限されないが、好ましくは2〜4価、特に2又は3価である。これらの金属ハロゲン化物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
このような金属ハロゲン化物としては、例えば、塩化物(FeCl2、FeCl3などの塩化鉄;AlCl3、ZnCl2、SnCl2、CoCl2、VCl2、TiCl4、PdCl2、SmCl2、CuCl2など)、臭化物(FeBr2、FeBr3などの臭化鉄など)、ヨウ化物(SmI2など)などが例示できる。これらの金属ハロゲン化物のうち、塩化鉄(FeCl2、FeCl3)、塩化亜鉛(ZnCl2)及び塩化銅(CuCl2)が特に好ましい。
[金属マグネシウム成分]
金属マグネシウム成分は、少なくともマグネシウムが含まれていればよく、マグネシウム金属単体又はマグネシウム系合金、あるいは上記マグネシウム金属又は合金を含む混合物などであってもよい。マグネシウム合金の種類は特に制限されず、慣用のマグネシウム合金、例えば、アルミニウム、亜鉛、希土類元素(スカンジウム、イットリウムなど)などの成分を含むマグネシウム合金が例示できる。これらの金属マグネシウム成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
金属マグネシウム成分の形状は、ハロシラン化合物の重合反応の反応性を損なわない限り特に限定されないが、粉粒状(粉体、粒状体など)、リボン状体、切削片状体、塊状体、棒状体、平板などが例示され、特に表面積の大きい形状(粉体、粒状体、リボン状体、切削片状体など)であることが好ましい。金属マグネシウム成分が粉粒状の場合、平均粒径は、1〜10000μm、好ましくは10〜5000μm、さらに好ましくは20〜1000μm程度である。
なお、金属マグネシウム成分の保存状況などによっては、金属表面に被膜(酸化被膜など)が形成されることがある。この被膜は反応に悪影響を及ぼすことがあるので、必要に応じて、切削などによって除去してもよい。
[有機金属錯体]
(II)における下記一般式(A1)で表される有機金属錯体について、以下説明する。
MrLr/s ・・・(A1)
(上記一般式(A1)中、Mrは、r価の金属カチオンを表し、Lはs価の有機配位子を表し、r及びsは各々独立に1以上の整数を表す。)
r価の金属カチオンMrを構成する金属原子としては、鉄、銀、アルミニウム、ビスマス、セリウム、コバルト、銅、ジスプロシウム、エルビウム、ユーロピウム、ガリウム、ガドリニウム、ハフニウム、ホルミウム、インジウム、イリジウム、ランタン、ルテチウム、マンガン、モリブデン、ネオジム、ニッケル、オスミウム、パラジウム、プロメチウム、プラセオジム、白金、レニウム、ロジウム、ルテニウム、サマリウム、スカンジウム、スズ、テルビウム、チタン、ツリウム、バナジウム、クロム、タンタル、イッテルビウム、金、水銀タングステン、イットリウム、亜鉛及びジルコニウムよりなる群から選択される金属が挙げられる。
rとしては、1〜4の整数であることが好ましく、1〜3の整数であることがより好ましく、2又は3であることがさらに好ましい。
sとしては、1〜4の整数であることが好ましく、1〜3の整数であることがより好ましく、1又は2であることがさらに好ましい。
s価の有機配位子Lとしては、β-ジケトナト配位子、オレフィン、共役ケトン、ニトリル、アミン、カルボキシラト配位子、一酸化炭素、ホスフィン、ホスフィナイト、ホスホナイト、ホスファイトなどの有機配位子が挙げられる。s価の有機配位子Lはキレート配位子であってもよい。
上記有機金属錯体としては、下記一般式(A2)で表される有機金属錯体であることが好ましい。
(上記一般式(A2)中、Mは、鉄、銀、アルミニウム、ビスマス、セリウム、コバルト、銅、ジスプロシウム、エルビウム、ユーロピウム、ガリウム、ガドリニウム、ハフニウム、ホルミウム、インジウム、イリジウム、ランタン、ルテチウム、マンガン、モリブデン、ネオジム、ニッケル、オスミウム、パラジウム、プロメチウム、プラセオジム、白金、レニウム、ロジウム、ルテニウム、サマリウム、スカンジウム、スズ、テルビウム、チタン、ツリウム、バナジウム、クロム、タンタル、イッテルビウム、金、水銀タングステン、イットリウム、亜鉛及びジルコニウムよりなる群から選択される金属を表し、R
z1は、各々独立して、飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基又はアリールオキシアルキル基を表し、R
z2は、水素原子、飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基又はアラ上記ルキル基を表わす。rは1以上の整数を表す。)
Rz1及びRz2で表わされる飽和炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イコシル基、ドコシル基、2−ドデシルヘキサデシル基、トリアコンチル基、ドトリアコンチル基、テトラコンチル基などの炭素数1〜40の直鎖状又は分岐状アルキル基、さらに、これらがハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨード原子)、アルコキシ基(下記に記載するものなど)、シリル基(下記に記載するものなど)などの置換基の1種又は2種以上で置換されたアルキル基、例えばクロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル基、トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル基、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル基、3−(ヘプタフルオロイソプロポキシ)プロピル基、トリメチルシリルメチル基など;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ビシクロヘプチル基、シクロオクチル基、アダマンチル基などの炭素数3〜18の単環又は2環以上の多環の環状飽和炭化水素基、さらにこれら環状飽和炭化水素基がアルキル基(上記したものなど)、アリール基(上記したものなど)などの置換基の1種又は2種以上で置換されたもの、例えば、4−t−ブチルシクロヘキシル基、4−フェニルシクロへキシル基など;又は上記環状飽和炭化水素基を有するアルキル基(上記したものなど)、例えばシクロヘキシルメチル基、アダマンチルエチル基などが挙げられる。
Rz1及びRz2で表わされる不飽和炭化水素基としては、ビニル基、エチニル基、アリル基、1−プロペニル基、プロパルギル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、デカニル基、ドデカニル基、オクタデカニル基などの炭素数2〜18の直鎖状又は分岐状アルケニル基、アルキニル基、さらに、これらの不飽和炭化水素基が、ハロゲン原子(上記したものなど)、アルコキシ基(下記に記載するものなど)、シリル基(下記に記載するものなど)、アリール基(下記に記載するものなど)の置換基の1種又は2種以上で置換されたもの、例えば、2−トリフルオロメチルエテニル基、2−トリフルオロメチルエチニル基、3−メトキシ−1−プロペニル基、3−メトキシ−1−プロピニル基、2−トリメチルシリルエテニル基、2−トリメチルシリルエチニル基、2−フェニルエテニル基、2−フェニルエチニル基など;シクロプロペニル基、シクロヘキセニル基、シクロオクテニル基などの炭素数3〜18の環状不飽和炭化水素基;上記環状不飽和炭化水素基を有するアルキル基(上記したものなど)、例えばシクロヘキセニルエチル基などが挙げられる。
Rz1及びRz2で表わされる芳香族炭化水素基としては、フェニル基、及び、トリル基、ブチルフェニル基、ブトキシフェニル基などのアルキル基、アルコキシ基、アミノ基などの1種又は2種以上で置換された置換フェニル基などが挙げられる。
Rz1及びRz2で表わされるアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、メチルフェネチル基、ブチルフェネチル基、フェニルプロピル基、メトキシフェニルプロピル基などが挙げられ、ヘテロアラルキル基としては、ピリジルメチル基、ピリジルエチル基などが挙げられる。
Rz1で表わされるアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基などの炭素数1〜18のアルコキシ基が挙げられ、アリールオキシ基としては、フェノキシ基、及びトリルオキシ基、ブチルフェノキシ基などアルキル基などの置換基で置換された置換フェノキシ基などが挙げられる。
Rz1で表わされるアラルキルオキシ基としては、ベンジロキシ基、フェネチロキシ基などが挙げられ、アリールオキシアルキル基としては、フェノキシプロピル基、フェノキシブチル基などが挙げられる。
Rz1として好ましいものは、炭素数が1〜30の飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基などであり、さらに好ましいものは、炭素数が1〜15のアルキル基、フェニル基などであり、特に好ましいものは、メチル基である。
Rz2として好ましいものは、水素原子、炭素数が1〜18の飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基などであり、さらに好ましいものは、水素原子、炭素数が1〜10のアルキル基、フェニル基、フェニルエチル基などであり、特に好ましいものは、水素原子である。
rの好ましい例としては上述の通りである。
金属錯体としては、上記の金属MとRz1及びRz2の組み合わせにより種々の金属錯体が挙げられる。具体例を例示すると、アセチルアセトナト銀(I)、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム(III)、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)アルミニウム(III)、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)ビスマス(III)、トリス(アセチルアセトナト)セリウム(III)、ビス(アセチルアセトナト)コバルト(II)、トリス(アセチルアセトナト)コバルト(III)、トリス(1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナト)コバルト(III)、トリス(3−メチル−2,4−ペンタンジオナト)コバルト(III)、トリス(3−フェニル−2,4−ペンタンジオナト)コバルト(III)、トリス(3−(1−フェニルエチル)−2,4−ペンタンジオナト)コバルト(III)、ビス(ベンゾイルアセトン)コバルト(II)ビス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)コバルト(II)、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)コバルト(III)、ビス(アセチルアセトナト)銅(II)、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタジオナト)銅(II)、トリス(2,2,4,6,6−ペンタメチル−3,5−ヘプタンジオナト)コバルト(III)、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−(1−フェニルエチル)−3,5−ヘプタンジオナト)コバルト(III)、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−フェニル−3,5−ヘプタンジオナト)コバルト(III)、ビス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)銅(II)、ビス(トリフルオロアセチルアセトナト)銅(II)、トリス(アセチルアセトナト)ジスプロシウム(III)、トリス(アセチルアセトナト)エルビウム(III)、トリス(2,2,6,6,−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)エルビウム(III)、トリス(アセチルアセトナト)ユーロピウム(III)、ビス(アセチルアセトナト)鉄(II)、トリス(アセチルアセトナト)鉄(III)、トリス(1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナト)鉄(III)、トリス(3−メチル−2,4−ペンタンジオナト)鉄(III)、トリス(3−フェニル−2,4−ペンタンジオナト)鉄(III)、トリス(3−(1−フェニルエチル)−2,4−ペンタンジオナト)鉄(III)、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)鉄(III)、トリス(2,2,4,6,6−ペンタメチル−3,5−ヘプタンジオナト)鉄(III)、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−(1−フェニルエチル)−3,5−ヘプタンジオナト)鉄(III)、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−フェニル−3,5−ヘプタンジオナト)鉄(III)、テトラキス(アセチルアセトナト)ハフニウム(IV)、トリス(アセチルアセトナト)ガリウム(III)、トリス(アセチルアセトナト)ガドリニウム(III)、トリス(アセチルアセトナト)ホルミウム(III)、トリス(アセチルアセトナト)インジウム(III)、トリス(アセチルアセトナト)イリジウム(III)、トリス(アセチルアセトナト)ランタン(III)、トリス(アセチルアセトナト)ルテチウム(III)、ビス(アセチルアセトナト)マンガン(II)、トリス(アセチルアセトナト)マンガン(III)、ビス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)マンガン(II)、ビス(アセチルアセトナト)ジオキソモリブデン(IV)、トリス(アセチルアセトナト)ネオジム(III)、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタジオナト)ネオジム(III)、ビス(アセチルアセトナト)ニッケル(II)、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタジオナト)ニッケル(II)、ビス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)ニッケル(II)、ビス(1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナト)ニッケル(II)、ビス(3−メチル−2,4−ペンタンジオナト)ニッケル(II)、ビス(3−フェニル−2,4−ペンタンジオナト)ニッケル(II)、ビス(3−(1−フェニルエチル)−2,4−ペンタンジオナト)ニッケル(II)、ビス(2,2,4,6,6−ペンタメチル−3,5−ヘプタンジオナト)ニッケル(II)、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−(1−フェニルエチル)−3,5−ヘプタンジオナト)ニッケル(II)、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−フェニル−3,5−ヘプタンジオナト)ニッケル(II)、ビス(アセチルアセトナト)パラジウム(II)、ビス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)パラジウム(II)、ビス(1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナト)パラジウム(II)、ビス(3−メチル−2,4−ペンタンジオナト)パラジウム(II)、ビス(3−フェニル−2,4−ペンタンジオナト)パラジウム(II)、ビス(3−(1−フェニルエチル)−2,4−ペンタンジオナト)パラジウム(II)、ビス(2,2,4,6,6−ペンタメチル−3,5−ヘプタンジオナト)パラジウム(II)、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−(1−フェニルエチル)−3,5−ヘプタンジオナト)パラジウム(II)、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−フェニル−3,5−ヘプタンジオナト)パラジウム(II)、トリス(アセチルアセトナト)プロメチウム(III)、トリス(アセチルアセトナト)プラセオジム(III)、トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)プラセオジム(III)、ビス(アセチルアセトナト)白金(II)、トリス(アセチルアセトナト)ロジウム(III)、トリス(アセチルアセトナト)ルテニウム(III)、トリス(アセチルアセトナト)スカンジウム(III)、トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)スカンジウム(III)、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタジオナト)スカンジウム(III)、トリス(アセチルアセトナト)サマリウム(III)、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)サマリウム(III)、ビス(アセチルアセトナト)スズ(II)、トリス(アセチルアセトナト)テルビウム(III)、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)テルビウム(III)、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)ツリウム(III)、トリス(アセチルアセトナト)バナジウム(III)、トリス(アセチルアセトナト)イットリウム(III)、トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)イットリウム(III)、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)イットリウム(III)、ビス(アセチルアセトナト)亜鉛(II)、ビス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)亜鉛(II)、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)亜鉛(II)、テトラキス(アセチルアセトナト)ジルコニウム(IV)、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)ジルコニウム(IV)、テトラキス(トリフルオロアセチルアセトナト)ジルコニウム(IV)などが挙げられる。
これら有機金属錯体は、単独又は2種以上を組み合わせて使用できる。有機金属錯体として、予め合成した金属錯体を使用してもよく、系中で製造したものを使用してもよい。
上記有機金属錯体の使用量は、ハロシラン化合物に対して、0.001〜10モル倍の範囲が好ましく、より好ましくは0.001〜1モル倍の範囲、特に好ましくは0.001〜0.1モル倍の範囲である。
[溶媒]
反応に用いる溶媒としては、下記式(S1)で表されるシクロアルキルアセテートを含む溶媒を使用する。シクロアルキルアセテートは、前記ハロシラン化合物(特にアリール基含有ハロシラン化合物などの疎水性化合物)に対し、良好な溶解性を示すため、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタンなどの従来用いられていた溶媒に比べ、分子量分散度の小さいポリシランを重合するのに適しており、また、ハロシラン化合物の重合活性をより高めることができると考えられる。
(式(S1)中、R
s1は、炭素原子数1〜3のアルキル基であり、pは1〜6の整数であり、qは0〜(p+1)の整数である。)
式(S1)で表されるシクロアルキルアセテートの具体例としては、シクロプロピルアセテート、シクロブチルアセテート、シクロペンチルアセテート、シクロヘキシルアセテート、シクロヘプチルアセテート、及びシクロオクチルアセテートが挙げられる。
これらの中では、入手が容易であり、ハロシラン化合物の重合活性を向上しやすいことから、シクロオクチルアセテートが好ましい。
反応に用いる溶媒は、式(S1)で表されるシクロアルキルアセテートを2種以上組み合わせて含んでいてもよい。
反応に用いる溶媒中の式(S1)で表されるシクロアルキルアセテートの含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。反応に用いる溶媒中の式(S1)で表されるシクロアルキルアセテートの含有量は、典型的には、例えば、30質量%以上であり、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上が特に好ましく、100質量%であってもよい。
反応に用いる溶媒が式(S1)で表されるシクロアルキルアセテート以外の溶媒を含む場合、式(S1)で表されるシクロアルキルアセテート以外の溶媒の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。
他に使用できる溶媒としては、非プロトン性溶媒であることが好ましく、例えば、エーテル類(1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテルなどの環状又は鎖状の炭素原子数4〜6のエーテル)、カーボネート類(プロピレンカーボネートなど)、ニトリル類(アセトニトリル、ベンゾニトリルなど)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)、ハロゲン含有化合物(塩化メチレン、クロロホルム、ブロモホルム、クロロベンゼン、ブロモベンゼンなどのハロゲン化炭化水素など)、芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレンなど)、脂肪族炭化水素類(ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、シクロオクタンなど鎖状又は環状炭化水素類)などが挙げられる。
また、溶媒中に水分が多く含まれていると、ハロシラン化合物とこの水分とが反応して、得られるポリシラン主鎖中にシロキサン結合(Si−O結合)が導入され、ポリシランの品質が低下する。特に分子量分散度の低いポリシランを得るためには、溶媒中の水分量が少ない方が好ましい。そのため、使用する溶媒は、可能な限り乾燥した状態であることが望ましく、特に、乾燥剤により乾燥し、さらに蒸留して反応に使用することが好ましい。
例えば、溶媒中の水分量は1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましく、0.3質量%以下であることがさらに好ましく、0.3質量%未満であることが特に好ましい。なお、溶媒中の水分量はカールフィッシャー測定法により、測定することができる。
得られるポリシランの水分は、溶媒に由来する場合が多い。このため、得られるポリシランの水分量が上記の量となるように、溶媒が脱水されているのが好ましい。
ところで、本発明に係るポリシランの製造方法で用いる金属マグネシウム成分は前述の通りであるが、反応性向上などの点で、本発明に係る活性金属マグネシウム成分(固体成分)を用いてもよい。
<活性金属マグネシウム成分の製造方法>
以下、本実施形態に係る活性金属マグネシウム成分の製造方法について説明する。
本実施形態に係る活性金属マグネシウム成分の製造方法は、ハロシラン化合物を、非プロトン性溶媒中で、金属マグネシウム成分とともに、(I)アルカリ金属化合物と、アルカリ金属以外の金属のハロゲン化物である金属ハロゲン化物を作用させるA工程と、A工程により得られる反応混合物から液体成分を除去するB工程とを含むものである。
上記A工程で用いられるプロトン性溶媒は、上記式(S1)で表されるシクロアルキルアセテートを含む溶媒に限定されず、例えば、上述した「溶媒」で他に使用できる溶媒として例示した溶媒を用いることができる。上述した本実施形態に係るポリシランの製造方法で、活性機能の高い金属マグネシウムとなる活性金属マグネシウム成分を得る点からは、上記式(S1)で表されるシクロアルキルアセテートを用いることが好ましい。
特に、ポリシランの製造方法において、金属マグネシウム成分とともに(I)の化合物を用いる場合、金属マグネシウム成分は、上述したA工程及びB工程で得られた活性金属マグネシウム成分(固体成分)であることが好ましい。この場合のポリシランの製造方法は、少なくとも上述した固体成分の存在下、ハロシラン化合物を、アルカリ金属化合物と、アルカリ金属以外の金属のハロゲン化物である金属ハロゲン化物との共存下、上記式(S1)で表されるシクロアルキルアセテートを含む溶媒中で反応させ、ポリシランを製造する方法である。上記固体成分は、アルカリ金属化合物及び金属ハロゲン化物の存在下、ハロシラン化合物及び金属マグネシウムを、上記溶媒中(又は、上記式(S1)で表されるシクロアルキルアセテートを含む溶媒以外の、他の非プロトン性溶媒中であってもよい)で処理することにより得られる活性金属マグネシウムである。すなわち、金属マグネシウム成分として活性金属マグネシウム成分を用いる場合の本発明に係るポリシランの製造方法は、固体成分(活性金属マグネシウム)を生成させる第1工程(固体成分の製造工程)と、得られた固体成分を用いてポリシランを生成させる第2の工程(固体成分を用いたポリシランの製造工程)とを含む。
以下、第1の工程と第2の工程とについて説明する。
[第1の工程]
第1の工程では、ハロシラン化合物を、上記式(S1)で表されるシクロアルキルアセテートを含む溶媒中で、金属マグネシウム成分とともに、(I)アルカリ金属化合物と、アルカリ金属以外の金属のハロゲン化物である金属ハロゲン化物を作用させて反応させることにより、固体成分を生成させる。
第1の工程(A工程)で得られる反応混合物中に含まれる固体成分は、金属マグネシウムが高度に活性化した活性金属マグネシウムであると考えられる。後述する第2の工程において、この活性金属マグネシウムである固体成分は、ルイス酸触媒の役割を果たすアルカリ金属化合物を活性化させ、ハロシラン化合物の重合活性を向上させると推測される。よって、第1の工程は、ポリシランと活性金属マグネシウムとを得るための活性化処理と言える。特に溶媒として、第1の工程においても、上記式(S1)でシクロアルキルアセテートを含むことにより、他の非プロトン性溶媒のみからなる溶媒の場合よりも活性機能の高い活性金属マグネシウムを得ることができる。
第1の工程(A工程)では、少なくともアルカリ金属化合物、金属ハロゲン化物及びハロシラン化合物を、金属マグネシウム成分に接触できればよく、浸漬、撹拌処理(好ましくは撹拌処理)などにより行うことができる。ハロシラン化合物として、ジ乃至テトラハロシラン化合物を用いる場合にはポリシランが生成する。
アルカリ金属化合物の割合は、金属マグネシウム成分100質量部に対して、1〜100質量部、好ましくは5〜50質量部、さらに好ましくは10〜40質量部程度である。
金属ハロゲン化物の割合は、金属マグネシウム成分100質量部に対して、1〜100質量部、好ましくは5〜50質量部、さらに好ましくは10〜30質量部程度である。
ハロシラン化合物に対する金属マグネシウム成分の割合は、ハロシラン化合物中のハロゲン原子に対して、マグネシウムとして0.5倍モル以上(例えば、0.5〜10モル程度)あればよいが、好ましくは1.5倍モル以上(例えば、1.5〜10モル程度)、さらに好ましくは2.5倍モル以上(例えば、2.5〜10モル程度)である。ハロシラン化合物としてジハロシランのみを使用する場合には、反応性を高めるため、ハロゲン原子に対して、少なくとも1.5倍モル以上用いることが好ましい。
溶媒の割合は、アルカリ金属化合物、金属ハロゲン化物及びハロシラン化合物を均一化して、金属マグネシウム成分に作用可能な量であれば特に制限されず、金属マグネシウム成分100質量部に対して、例えば、1〜10000質量部、好ましくは10〜5000質量部、さらに好ましくは100〜4000質量部程度である。
第1の工程(A工程)での反応溶液の活性化処理温度は、例えば、−20℃から使用する成分(溶媒など)の沸点までの温度範囲、例えば、0〜100℃、好ましくは10〜70℃、さらに好ましくは20〜50℃程度である。活性化処理は、減圧下又は加圧下で行ってもよいが、通常、常圧で行う。
反応溶液(溶媒)中のハロシラン化合物の濃度は、通常、0.05〜20mol/l、好ましくは0.2〜15mol/l、特に0.3〜13mol/l程度である。上記濃度の範囲内であると、アルカリ金属化合物及び金属ハロゲン化物の溶解が十分に行われ、処理(反応)を効率よく行うことができる。
また、反応溶液(溶媒)中のアルカリ金属化合物の濃度は、通常、0.05〜5mol/l、好ましくは0.1〜4mol/l、特に0.15〜3.0mol/l程度である。上記濃度の範囲内であると、反応溶液の極性が過度に上がることを抑えて反応を進行することができ、固体成分(活性金属マグネシウム)の活性やポリシランの分子量分散度が大きくなることを抑制することができる。アルカリ金属化合物の割合は、ハロシラン化合物100質量部に対して、0.1〜30質量部、好ましくは1〜20質量部、さらに好ましくは5〜20質量部程度である。
反応溶液(溶媒)中の金属ハロゲン化物の濃度は、通常、0.01〜6mol/l、好ましくは0.02〜4mol/l、特に0.03〜3mol/l程度である。上記濃度の範囲内であると、反応に効率よく関与させ、反応を十分に進行することができる。金属ハロゲン化物の割合は、上記ハロシラン化合物100質量部に対して、0.1〜30質量部、好ましくは1〜20質量部、さらに好ましくは3〜20質量部程度である。
使用する反応器(反応容器)は、密閉できる限り、形状及び構造についての制限は特にない。また、反応容器内は、乾燥雰囲気であればよいが、乾燥した不活性ガス(例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス)雰囲気、特に、脱酸素し、乾燥した不活性ガス雰囲気が好ましい。
第1の工程(A工程)の活性化反応は、例えば、密閉可能な反応容器に、ハロシラン化合物、アルカリ金属化合物、金属ハロゲン化物及び金属マグネシウム成分を必要により溶媒とともに収容し、好ましくは機械的又は磁気的に撹拌することにより行うことができる。各成分の添加順序は特に制限されない。
活性化反応は、原料の種類及び濃度、並びに反応温度などによっても異なるが、通常、撹拌開始から1〜7時間程度経過した後開始される。反応が開始すると、発熱を伴いながら反応溶液が黒色に変化する。発熱終了後、さらに2〜24時間程度撹拌することにより、分散度の低いポリシランとともに、活性金属マグネシウムからなる固体成分を得ることができる。
このようにして得られた固体成分(活性金属マグネシウム)を用いて後続の第2の工程を行うと、原料のハロシラン化合物の種類に関わらず、ハロシラン化合物を投入するとほぼ同時に反応が開始し、金属マグネシウムを用いた場合に比べて反応の誘導期間を大幅に短縮でき、それに伴って、反応時間を大幅に短縮できるため、生産性を向上できる。
第1の工程で得られる反応混合物において、使用した金属マグネシウムの一部は、ハロシラン化合物と反応してハロゲン化マグネシウムになり、反応溶液中に存在する。また、金属マグネシウム以外の原料成分やポリシランは、反応溶液(液体成分)中に存在する。一方、活性金属マグネシウムは、反応系に固体状で残存している。従って、例えば、(1)第1の工程の反応混合物から固体成分(活性金属マグネシウム)を分離し、必要により精製して第2の工程に供してもよく、(2)反応混合物から分離することなくそのまま第2の工程に用いてもよい。また、(3)反応混合物からデカンテーションや濾過などにより液体成分を除去し(B工程)、残る固体成分をそのまま第2の工程に用いてもよい。反応器の容積に対して少量の固体成分を第1の工程で生成させる場合、分離することなくそのまま利用してもよい。
[第2の工程]
第2の工程では、第1の工程で得られた固体成分(活性金属マグネシウム)を用いればよく、該固体成分が残存する反応系に、ハロシラン化合物、アルカリ金属化合物、金属ハロゲン化物及び上記式(S1)で表されるシクロアルキルアセテートを含有する溶媒を添加して反応させ、ポリシランを生成させる。第2の工程の反応条件は、第1の工程と同様の反応条件であってもよい。また、第2の工程は繰り返し行ってもよい。
第2の工程を複数回行う場合、例えば、n回目(nは1以上の整数)の第2の工程に続いて(n+1)回目の第2の工程を行う場合も上記第1の工程から第2の工程への移行と同様に行うことができる。第2の工程を複数回行う場合には、上記(1)〜(3)の方法を組合せて用いてもよい。
なお、固体成分(活性金属マグネシウム)を反応器外に取出す場合には、失活を防いで、空気中の水分と可能な限り接触しないようにするため、窒素置換した容器に収容することが望ましい。
第2の工程では、種々の形態(又は態様)の上記第1の工程で得られた固体成分(活性金属マグネシウム)の存在下、ポリシランの製造に使用する原料(ハロシラン化合物、アルカリ金属化合物、金属ハロゲン化物及び溶媒)を添加して反応させ、ポリシランを生成することができる。第2の工程では、例えば、少なくとも固体成分(活性金属マグネシウム)を含む密閉可能な反応容器に上記原料を収容し、好ましくは機械的又は磁気的に撹拌することにより反応させることができる。原料の各成分の添加順序は特に制限されない。
この工程では、原料投入直後から発熱を伴って、反応が開始し、発熱終了後30分〜12時間程度撹拌を行うことにより分散度の低いポリシランを得ることができる。
第1の工程(活性化反応)と第2の工程(ポリシランの製造)とは、同じ条件で行うことができる。すなわち、第2の工程と同様又は準じた条件で金属マグネシウムを活性化してもよい。例えば、第1の工程で得られた反応混合物から液体成分を除去し、固体成分(活性金属マグネシウム)が残存する反応系に、ハロシラン化合物、アルカリ金属化合物、金属ハロゲン化物及び溶媒を添加して反応させてもよい。
第1の工程と第2の工程とは、容積(反応スケール)が同じであってもよく、異なっていてもよい。第1の工程を予め少量で行ってもよい。例えば、反応器の容積に対して少量(反応器の容積の1/100〜1/3、好ましくは1/10〜1/4程度)の固体成分(活性金属マグネシウム)を予め生成させ、生成した固体成分(上記活性金属マグネシウム)を含む反応系に、ハロシラン化合物、アルカリ金属化合物、金属ハロゲン化物及び溶媒を添加して反応させてもよい。
実施形態に係るポリシランの製造方法においては、固体成分(活性金属マグネシウム)を用いることにより、反応開始までの誘導時間、及び反応時間を大幅に短縮できるため、予め少量の固体成分(活性金属マグネシウム)を生成させる方法を用いると、第2の工程で多量の原料を添加しても、効率よくポリシランを製造できる。
第2の工程では、消費された金属マグネシウム成分を補うため、金属マグネシウムを補給してもよい。また、固体成分(活性金属マグネシウム)と金属マグネシウムとの混合物を第2の工程に用いてもよい。特に第1の工程で反応混合物中の液体成分を除去しつつ、第2の工程で金属マグネシウムを添加又は補給すると、各反応成分が必要以上に希釈されることなく、反応を効率よく進行させることができ、各成分を新たに添加することにより、反応容器の洗浄を行うことなく、第2の工程を複数回繰り返し行うことができる。
このような第2の工程において、高効率でポリシランを生成できるため、金属マグネシウムの使用量を大幅に低減できる。第2の工程における固体成分(活性金属マグネシウム)の割合は、ハロシラン化合物のハロゲン原子1モルに対して、マグネシウムとして0.5〜1モル、好ましくは0.6〜0.8モル程度である。
このように第2の工程において、固体成分(活性金属マグネシウム)の使用量を低減できるので、第1及び第2の工程を通しての金属マグネシウム成分の使用量をも低減できる。第1及び第2の工程を通しての金属マグネシウム成分の使用量は、全工程で使用するハロシラン化合物の総量1モルに対して、マグネシウムとして1〜4モル、好ましくは1〜3モル、特に1〜2モル程度にまで低減可能である。また、上記使用量は、ハロシラン化合物のハロゲン原子1モルに対して、マグネシウム換算で、0.5〜2モル、好ましくは0.5〜1.5モル、さらに好ましくは0.5〜1モル程度である。
本実施形態に係るポリシランの製造方法においては、第1の工程で得られる固体成分(活性金属マグネシウム)を第2の工程で利用して反応を行うので、金属マグネシウムの使用量を全体として大幅に低減でき、経済性に優れるとともに、廃棄物量も低減できる。また、汎用の反応器中で、簡便かつ安全にポリシランを製造でき、ポリシランの品質(分子量分散度など)を安定に制御できる。特に溶媒として上記式(S1)で表されるシクロアルキルアセテートを用いているので、ハロシラン化合物の重合活性を向上させ、分子量分布の小さいポリシランを得ることができる。
第2の工程において、反応溶液(溶媒)中のハロシラン化合物の濃度は、通常、0.05〜20mol/l、好ましくは0.2〜15mol/l、特に0.3〜13mol/l程度である。上記濃度の範囲内であると、反応に使用するアルカリ金属化合物及び金属ハロゲン化物の溶解が十分に行われ、処理(反応)を効率よく行うことができる。
溶媒(反応溶液)中のアルカリ金属化合物の濃度は、通常、0.05〜5mol/l、好ましくは0.1〜4mol/l、特に0.15〜3.0mol/l程度である。上記濃度の範囲内であると、反応溶液の極性が過度に上がることを抑えて反応を進行することができ、固体成分(活性金属マグネシウム)の活性やポリシランの分子量分散度が大きくなることを抑制することができる。アルカリ金属化合物の割合は、ハロシラン化合物100質量部に対して、0.1〜30質量部、好ましくは1〜20質量部、さらに好ましくは5〜20質量部程度である。
溶媒(反応溶液)中の金属ハロゲン化物の濃度は、通常、0.01〜6mol/l、好ましくは0.02〜4mol/l、特に0.03〜3mol/l程度である。上記濃度の範囲内であると、反応に効率よく関与させ、反応を十分に進行することができる。金属ハロゲン化物の割合は、上記ハロシラン化合物100質量部に対して、0.1〜30質量部、好ましくは1〜20質量部、さらに好ましくは3〜20質量部程度である。
使用する反応器(反応容器)は、密閉できる限り、形状及び構造についての制限は特にない。また、反応容器内は、乾燥雰囲気であればよいが、乾燥した不活性ガス(例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス)雰囲気、特に、脱酸素し、乾燥した不活性ガス雰囲気が好ましい。
第2の工程において、ハロシラン化合物の重合反応(ポリシランの生成反応)は、通常、−20℃から使用する溶媒の沸点までの温度範囲、好ましくは0〜70℃、さらに好ましくは10〜50℃程度の温度で行う。また、反応は、減圧又は加圧下で行ってもよいが、通常、常圧で行う。
<ポリシラン>
第1の工程・第2の工程など、本発明に係る製造方法で得られるポリシランは、例えば、
Si原子数3〜40のポリシラン化合物が挙げられ、Si原子数5〜30のポリシラン化合物であることが好ましい。
上記ポリシラン化合物は、下記一般式(T−1)及び(T−2)で表されるポリシラン化合物よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
(R
t10R
t11R
t12Si)
t1(R
t13R
t14Si)
t2(R
t15Si)
t3(Si)
t4 (T−1)
(上記一般式中、R
t10、R
t11、R
t12、R
t13、R
t14及びR
t15は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基又は有機基である。t1、t2、t3及びt4は、それぞれ独立に、モル分率であり、t1+t2+t3+t4=1、0≦t1≦1、0≦t2≦1、0≦t3≦1及び0≦t4≦1である。)
(上記一般式(T−2)中、R
t16及びR
t17は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基又は有機基を表す。Uは3〜20の整数を表す。)
R
t10〜R
t17で表される有機基としては、Rで表される有機基として前述した具体例及び好ましい例と同様のものが挙げられる。
R
t10〜R
t17で表される有機基としては、例えば、特開2003−261681号公報段落0031に記載の方法により任意の有機基を導入することもできる。
上述したように、第1の工程・第2の工程等、本発明に係る製造方法で得られるポリシランは、分子量分散度(Mw/Mn)が小さい。
第2の工程で得られたポリシランは、第2の工程を複数回繰り返しても分子量分散度及び収量の変動が少なく、品質が安定している。特に、上述したように、溶媒として、上記式(S1)で表されるシクロアルキルアセテートを用いることから、ハロシラン化合物の重合活性が向上し、分子量分散度(Mw/Mn)の小さいポリシラン、例えば4以下、好ましくは1〜3のポリシランを得ることができる。
また、例えば、質量平均分子量(Mw)が、1000〜100000、好ましくは5000〜〜80000、さらに好ましくは6000〜60000程度である。本明細書において、質量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)のスチレン換算による測定値である。なお、第1の工程においてポリシランが得られる場合、ポリシランの質量平均分子量は、第2の工程で得られるポリシランと同程度であり、上記範囲から選択できる。
本発明に係る製法で得られたポリシランには、固体成分(活性金属マグネシウム)や金属マグネシウムなどの金属が含まれている場合がある。その場合、これら金属成分を分離することが好ましく、通常、慣用の分離精製手段、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、吸着、カラムクロマトグラフィーなどの分離精製手段やこれらを組合せた手段により分離精製してもよい。
濾過による精製では、通常、液体ろ過用として市販されている分離媒体を使用することができる。フィルターの形態としては、メンブレンフィルター、中空糸膜フィルター、プリーツ膜フィルター、並びに不織布、セルロース、及びケイソウ土などの濾材を充填したフィルターなどを用いることができる。メンブレンフィルター、中空糸膜フィルター、及びプリーツ膜フィルターのろ材はポリエチレン、超高密度ポリエチレン、及びポリプロピレンなどのポリオレフィン製、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素樹脂製、並びにナイロン製などであることが好ましい。また、それらのフィルターには陽イオン交換樹脂などのイオン交換体や、濾過される溶液にゼータ電位を生じさせるカチオン電荷調節剤などが含まれていてもよい。
上記のフィルターの公称孔径は、1.0μm以下、好ましくは0.5μm以下、より好ましくは0.03μm以下である。また、フィルターの公称孔径の下限値は、特に限定されるものではないが、通常、0.01μmである。ここでいう公称孔径とは、フィルターの分離性能を示す名目上の孔径であり、例えば、バブルポイント試験、水銀圧入法試験、標準粒子補足試験など、フィルターの製造元により決められた試験法により決定される孔径である。市販品を用いた場合、製造元のカタログデータに記載の値である。公称孔径を1.0μm以下程度にすることで、ポリシランを含む溶媒を1回フィルターに通液させた後の溶媒の固体成分(活性金属マグネシウム)及び金属マグネシウムの合計含有量を300ppb以下に低減することができ、ポリシラン中の金属含有量も低減することができる。溶媒及びポリシラン中の金属含有量をより低減させるために、通液工程を2回以上行ってもよい。このように、ポリシラン中の金属の含有量を低減することにより、例えば、このポリシランを原料とする塗布膜を形成する場合、成膜時にアウトガスを低減しやすい。
本発明に係る製法で得られたポリシランは、分子量分散度(Mw/Mn)が小さく、各種基板(金属酸化物含有膜、各種金属含有膜を含む。)を保護する保護膜又は層間膜を形成する用途の組成物として使用し得る。上記各種基板としては、半導体基板、液晶ディスプレイ、有機発光ディスプレイ(OLED)、電気泳動ディスプレイ(電子ペーパー)、タッチパネル、カラーフィルター、バックライトなどのディスプレイ材料の基板(金属酸化物含有膜、各種金属含有膜を含む。)、太陽電池の基板(金属酸化物含有膜、各種金属含有膜を含む。)、光センサなどの光電変換素子の基板(金属酸化物含有膜、各種金属含有膜を含む。)、光電素子の基板(金属酸化物含有膜、各種金属含有膜を含む。)が挙げられる。また、半導体基板の表面に微細な溝を形成させ、その溝の内部に第3の態様に係る組成物を充填して、溝の両側に形成される素子の間を電気的に分離するトレンチ・アイソレーション構造を含め、絶縁膜、パッシベーション膜、平坦化膜、保護膜などを形成する用途として使用し得る。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
[比較例1]
第1の工程;比較活性金属マグネシウム1及び比較ポリシラン1の製造工程
三方コックを装着した内容積1000mlの丸型フラスコに、粒状(粒径20〜1000μm)の金属マグネシウム65.9g(2.71mol)、無水塩化リチウム(LiCl)17.5g、無水塩化亜鉛(ZnCl2)11.3gを仕込み、50℃で1mmHg(=133kPa)に加熱減圧して、混合物を乾燥した後、乾燥アルゴンガスを反応器内に導入し、予めナトリウム−ベンゾフェノンケチルで乾燥したテトラヒドロフラン(表中、THFと記す)500mlを加え、室温で約30分間撹拌した。この混合物に、予め蒸留により精製したメチルフェニルジクロロシラン115g(600mmol)をシリンジで加えた。この場合、使用したマグネシウム量は理論量の4.5倍である。撹拌開始から約3時間後、重合に伴う発熱が始まり、約3時間発熱が継続した。発熱終了後、さらに室温で約16時間撹拌した。反応終了後、反応混合物のデカンテーションを行い、比較固体成分1(比較活性金属マグネシウム1成分)と液体成分(メチルフェニルポリシランを含む)とに分離した。
得られた液体成分について、1N(=1mol/l)の塩酸200ml、さらにトルエン350mlを加えて抽出した。トルエン層を純水150mlで4回洗浄した後、トルエンを留去することにより、低分子量体を含んだメチルフェニルポリシランを得た。メチルフェニルポリシランを良溶媒トルエン100ml及び貧溶媒2−プロパノール500mlを用いて再沈殿させたることで比較ポリシラン1を得た。比較ポリシラン1の重量平均分子量Mw及び分子量分散度(Mw/Mn)は、表1に示す。
[比較例2]
第2の工程;比較活性金属マグネシウム1を用いた比較ポリシラン2の製造
比較例1で得られた比較固体成分1(比較活性金属マグネシウム1成分)に無水塩化リチウム(LiCl)17.5g、無水塩化亜鉛(ZnCl2)11.3g、予めナトリウム−ベンゾフェノンケチルで乾燥したテトラヒドロフラン500mlを加え、室温で約30分間撹拌した。この混合物に、予め蒸留により精製したメチルフェニルジクロロシラン115g(600mmol)をシリンジで加えて撹拌した。メチルフェニルジクロロシラン投入直後から発熱が開始し、3時間発熱が継続したのち、さらに室温で撹拌した結果、8時間後にはポリシラン重合反応が完結していることを確認した。反応終了後、反応混合物のデカンテーションを行い、比較固体成分2(比較活性金属マグネシウム成分2)と液体成分(メチルフェニルポリシランを含む)とに分離した。
得られた液体成分について、比較例1と同様に精製処理を行い、比較ポリシラン2を得た。比較ポリシラン2の重量平均分子量Mw及び分子量分散度(Mw/Mn)は、表1に示す。
[実施例1]
第1の工程;活性金属マグネシウム1及びポリシラン1の製造工程
比較例1におけるテトラヒドロフランをシクロヘキシルアセテートに変更した他は、比較例1と同様にして、固体成分1(活性金属マグネシウム1成分)と液体成分(メチルフェニルポリシランを含む)とを得た。
得られた液体成分について、1N(=1mol/l)の塩酸200ml、さらにシクロヘキシルアセテート350mlを加えて抽出した。シクロヘキシルアセテート層を純水150mlで4回洗浄した後、シクロヘキシルアセテートを留去することにより、低分子量体を含んだメチルフェニルポリシランを得た。メチルフェニルポリシランを良溶媒シクロヘキシルアセテート100ml及び貧溶媒2−プロパノール500mlを用いて再沈殿させたることでポリシラン1を得た。ポリシラン1の重量平均分子量Mw及び分子量分散度(Mw/Mn)は、表1に示す。
[実施例2]
第2の工程;比較活性金属マグネシウム1を用いたポリシラン2の製造
比較例2におけるテトラヒドロフランをシクロヘキシルアセテートに変更した他は、比較例2と同様にして、固体成分1(活性金属マグネシウム1成分)と液体成分(メチルフェニルポリシランを含む)とを得た。
液体成分について、実施例1と同様に精製処理を行い、ポリシラン2を得た。ポリシラン2の重量平均分子量Mw及び分子量分散度(Mw/Mn)は、表1に示す。
[実施例3]
第2の工程;活性金属マグネシウム1を用いたポリシラン3の製造
比較例2における比較固体成分1(比較活性金属マグネシウム1成分)を、実施例1で得た固体成分1(活性金属マグネシウム1成分)に変更した他は、実施例2と同様にして、固体成分2(活性金属マグネシウム2成分)と液体成分(メチルフェニルポリシランを含む)とを得た。
液体成分について、実施例1と同様に精製処理を行い、ポリシラン3を得た。ポリシラン3の重量平均分子量Mw及び分子量分散度(Mw/Mn)は、表1に示す。
[実施例4]
(1)ポリシラン4の製造工程
三方コックを装着した内容積1000mlの丸型フラスコに、粒状(粒径20〜1000μm)の金属マグネシウム65.9g(2.71mol)、第三酢酸鉄5.53g(0.023mol)を仕込み、50℃で1mmHg(=133kPa)に加熱減圧して、混合物を乾燥した後、乾燥アルゴンガスを反応器内に導入し、予めナトリウム−ベンゾフェノンケチルで乾燥したシクロヘキシルアセテート500mlを加え、室温で約30分間撹拌した。この混合物に、予め蒸留により精製したメチルフェニルジクロロシラン115g(600mmol)をシリンジで加え、室温で約22時間撹拌した。
反応終了後、1N(=1mol/l)の塩酸200ml、さらにシクロヘキシルアセテート350mlを加えて抽出した。シクロヘキシルアセテート層を純水150mlで4回洗浄した後、シクロヘキシルアセテートを留去することにより、低分子量体を含んだメチルフェニルポリシランを得た。メチルフェニルポリシランを良溶媒シクロヘキシルアセテート100ml及び貧溶媒2−プロパノール500mlを用いて再沈殿させたることでポリシラン4を得た。ポリシラン4の重量平均分子量Mw及び分子量分散度(Mw/Mn)は、表1に示す。
表1の結果から、溶媒として、シクロヘキシルアセテートを用いた実施例1〜4では、いずれも分子量分散度が2.8以下と小さいポリシランが得られることが確認された。特に、第1の工程及び第2の工程で溶媒にシクロヘキシルアセテートを用い、触媒としてアルカリ金属化合物(LiCl2)と金属ハロゲン化物(ZnCl2)を用いた実施例3では、その効果が大きかった。同様に、溶媒にシクロヘキシルアセテートを用い、触媒として有機金属錯体(第三酢酸鉄)を用いた実施例4でも、その効果が大きかった。これに対し、テトラヒドロフラン(THF)を用いてポリシランを製造した比較例1では、分子量分散度が4.5以上と大きく、分子量の分布幅を狭める効果は小さかった。