本発明の化合物は、上記一般式(1)で表されるものであり、CVD法等の気化工程を有する薄膜製造方法のプレカーサとして好適なものであり、ALD法を用いて薄膜を形成することもできる。本発明の化合物は、常圧30℃で液体又はわずかな加温で液体となり、且つ熱安定性が非常に高い化合物である。熱安定性が高い化合物は、CVD法やALD法等の気化工程を有する薄膜製造方法において、高温条件下で使用することができることから、高品質な金属含有薄膜を製造することができる。
上記一般式(1)において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8で表される炭素原子数1〜4の直鎖又は分岐状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、第2ブチル基、第3ブチル基などが挙げられる。
上記一般式(1)において、R1、R2、R3、R4及びR5で表される炭素原子数3〜12のトリアルキルシリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリブチルシリル基、トリ第2ブチルシリル基、トリ第3ブチルシリル基、ジメチルエチルシリル基、ジメチルプロピルシリル基、ジメチルイソプロピルシリル基、ジメチルブチルシリル基、ジメチル第2ブチルシリル基、ジメチル第3ブチルシリル基、ジエチルプロピルシリル基、ジエチルイソプロピルシリル基、ジエチルブチルシリル基、ジエチル第2ブチルシリル基、ジエチル第3ブチルシリル基、ジプロピルイソプロピルシリル基、ジプロピルブチルシリル基、ジプロピル第2ブチルシリル基、ジプロピル第3ブチルシリル基、ジブチル第2ブチルシリル基、ジブチル第3ブチルシリル基、ジ第2ブチル基第3ブチルシリル基などを挙げることができる。これらのなかでも、炭素原子数3〜6のトリアルキルシリル基が好ましい。
上記一般式(1)において、R1、R2、R3、R4及びR5が、水素、メチル基、エチル基、イソプロピル基、第3ブチル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチルエチルシリル基、ジメチルイソプロピルシリル基及びジメチル第3ブチルシリル基から選択されるものである化合物は、蒸気圧が高く且つ熱安定性が高いことから好ましい。
上記一般式(1)において、R1が水素、メチル基、エチル基、イソプロピル基、第3ブチル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチルエチルシリル基、ジメチルイソプロピルシリル基又はジメチル第3ブチルシリル基であり且つR2、R3、R4及びR5が水素である化合物並びに上記一般式(1)において、R1、R2、R3、R4及びR5がメチル基である化合物は、蒸気圧が高く且つ熱安定性が高いことから好ましい。また、上記一般式(1)において、R6、R7及びR8がメチル基である化合物、上記一般式(1)において、R6及びR7がメチル基であり且つR8がエチル基である化合物、上記一般式(1)において、R6及びR7がメチル基であり且つR8がイソプロピル基である化合物、上記一般式(1)において、R6及びR7がメチル基であり且つR8が第3ブチル基である化合物並びに上記一般式(1)において、R6、R7及びR8がエチル基である化合物は、融点が低く、蒸気圧が高く且つ熱安定性が高いことから好ましい。
上記一般式(1)において、nは1〜4の数であって、n+1はM1で表される金属原子の価数に対応する。例えば、M1で表される金属原子の価数が4であれば、nは3である。
上記一般式(1)において、M1は金属原子を表し、例えば、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム、スカンジウム、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、イットリウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、マンガン、鉄、クロム、モリブデン、タングステン、オスミウム、ルテニウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金、亜鉛、アルミニウム、ガリウム、インジウム、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウムを挙げることができる。なかでも、上記一般式(1)において、M1がジルコニウム原子、チタン原子又はハフニウム原子である化合物は、ALD法へ好ましく適用することができ、融点が低く、蒸気圧が高く且つ熱安定性が高いことから好ましい。
上記一般式(1)において、M1がチタン原子であり且つR1、R2、R3、R4及びR5が水素である場合は、R6は炭素原子数2〜4の直鎖又は分岐状のアルキル基である。炭素原子数2〜4の直鎖又は分岐状のアルキル基としては、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、第2ブチル基、第3ブチル基などが挙げられる。
上記一般式(1)において、M1がハフニウム原子である化合物の好ましい具体例としては、例えば、下記化合物No.1〜No.55が挙げられる。なお、下記化合物No.1〜No.55において、「Me」はメチル基を表し、「Et」はエチル基を表し、「iPr」はイソプロピル基を表し、「tBu」は第3ブチル基を表し、「TMS」はトリメチルシリル基を表し、「DMES」はジメチルエチルシリル基を表し、「DMIS」はジメチルイソプロピルシリル基を表し、「DMBS」はジメチル第3ブチルシリル基を表し、「TES」はトリエチルシリル基を表す。
上記一般式(1)において、M1がジルコニウム原子である化合物の好ましい具体例としては、例えば、下記化合物No.56〜No.110が挙げられる。なお、下記化合物No.56〜No.110において、「Me」はメチル基を表し、「Et」はエチル基を表し、「iPr」はイソプロピル基を表し、「tBu」は第3ブチル基を表し、「TMS」はトリメチルシリル基を表し、「DMES」はジメチルエチルシリル基を表し、「DMIS」はジメチルイソプロピルシリル基を表し、「DMBS」はジメチル第3ブチルシリル基を表し、「TES」はトリエチルシリル基を表す。
上記一般式(1)において、M1がチタン原子である化合物の好ましい具体例としては、例えば、下記化合物No.111〜No.164が挙げられる。なお、下記化合物No.111〜No.164において、「Me」はメチル基を表し、「Et」はエチル基を表し、「iPr」はイソプロピル基を表し、「tBu」は第3ブチル基を表し、「TMS」はトリメチルシリル基を表し、「DMES」はジメチルエチルシリル基を表し、「DMIS」はジメチルイソプロピルシリル基を表し、「DMBS」はジメチル第3ブチルシリル基を表し、「TES」はトリエチルシリル基を表す。
本発明の化合物は、その製造方法により特に制限されることはなく、周知の反応を応用して製造される。例えば、シクロペンタジエニルトリスアルコキシドと、酢酸トリアルキルシリルとを反応させることで得ることができる。より具体的には、上記一般式(1)で表される化合物のうち、M1がハフニウム原子である化合物を製造する場合には、例えば、シクロペンタジエニルトリスアルコキシドハフニウムと、酢酸トリアルキルシリルとを120〜150℃程度の条件下で反応させることで得ることができる。
本発明の化合物の用途は、特に限定されることなく、様々な用途に用いることができる。具体的には、本発明の化合物は、CVD法やALD法に代表される薄膜形成用原料だけでなく、触媒、EL、太陽電池用の素材、医薬品などに利用することもできる。
本発明の薄膜形成用原料は、上記一般式(2)で表される化合物を含有してなる薄膜形成用原料である。
上記一般式(2)において、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15及びR16で表される炭素原子数1〜4の直鎖又は分岐状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、第2ブチル基、第3ブチル基などが挙げられる。
上記一般式(2)において、R9、R10、R11、R12及びR13で表される炭素原子数3〜12のトリアルキルシリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリブチルシリル基、トリ第2ブチルシリル基、トリ第3ブチルシリル基、ジメチルエチルシリル基、ジメチルプロピルシリル基、ジメチルイソプロピルシリル基、ジメチルブチルシリル基、ジメチル第2ブチルシリル基、ジメチル第3ブチルシリル基、ジエチルプロピルシリル基、ジエチルイソプロピルシリル基、ジエチルブチルシリル基、ジエチル第2ブチルシリル基、ジエチル第3ブチルシリル基、ジプロピルイソプロピルシリル基、ジプロピルブチルシリル基、ジプロピル第2ブチルシリル基、ジプロピル第3ブチルシリル基、ジブチル第2ブチルシリル基、ジブチル第3ブチルシリル基、ジ第2ブチル基第3ブチルシリル基などを挙げることができる。これらのなかでも、炭素原子数3〜6のトリアルキルシリル基が好ましい。
上記一般式(2)において、R9、R10、R11、R12及びR13が、水素、メチル基、エチル基、イソプロピル基、第3ブチル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチルエチルシリル基、ジメチルイソプロピルシリル基及びジメチル第3ブチルシリル基から選択されるものである化合物は、蒸気圧が高く且つ熱安定性が高いことから好ましい。
上記一般式(2)において、R9が水素、メチル基、エチル基、イソプロピル基、第3ブチル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチルエチルシリル基、ジメチルイソプロピルシリル基又はジメチル第3ブチルシリル基であり且つR10、R11、R12及びR13が水素である化合物並びに上記一般式(2)において、R9、R10、R11、R12及びR13がメチル基である化合物は、蒸気圧が高く且つ熱安定性が高いことから好ましい。また、上記一般式(2)において、R14、R15及びR16がメチル基である化合物、上記一般式(2)において、R14及びR15がメチル基であり且つR16がエチル基である化合物、上記一般式(2)において、R14及びR15がメチル基であり且つR16がイソプロピル基である化合物、上記一般式(2)において、R14及びR15がメチル基であり且つR16が第3ブチル基である化合物、並びに上記一般式(2)において、R14、R15及びR16がエチル基である化合物は、融点が低く、蒸気圧が高く且つ熱安定性が高いことから好ましい。
上記一般式(2)において、mは1〜4の数であって、m+1はM2で表される金属原子の価数に対応する。例えば、M2で表される金属原子の価数が4であれば、mは3である。
上記一般式(2)において、M2は金属原子を表し、例えば、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム、スカンジウム、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、イットリウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、マンガン、鉄、クロム、モリブデン、タングステン、オスミウム、ルテニウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金、亜鉛、アルミニウム、ガリウム、インジウム、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウムを挙げることができる。なかでも、上記一般式(2)において、M2がジルコニウム原子、チタン原子又はハフニウム原子である化合物は、ALD法へ好ましく適用することができ、融点が低く、蒸気圧が高く且つ熱安定性が高いことから好ましい。
上記一般式(2)において、気化工程を伴わないMOD法による薄膜の製造方法の場合は、R9〜R16は、使用される溶媒に対する溶解性、薄膜形成反応等によって適宜選択することができる。
上記一般式(2)において、M2がハフニウム原子である化合物の好ましい具体例としては、上記した化合物No.1〜No.55が挙げられる。また、上記一般式(2)において、M2がジルコニウム原子である化合物の好ましい具体例としては、上記した化合物No.56〜No.110が挙げられる。また、上記一般式(2)において、M2がチタン原子である化合物の好ましい具体例としては、上記した化合物No.111〜No.164及び下記化合物No.165が挙げられる。
本発明の薄膜形成用原料に用いられる化合物は、その製造方法により特に制限されることはなく、周知の反応を応用して製造される。例えば、シクロペンタジエニルトリスアルコキシドと、酢酸トリアルキルシリルとを反応させることで得ることができる。より具体的には、上記一般式(2)で表される化合物のうち、M2がハフニウム原子である化合物を製造する場合には、例えば、シクロペンタジエニルトリスアルコキシドハフニウムと、酢酸トリアルキルシリルとを120〜150℃程度の条件下で反応させることで得ることができる。
本発明の薄膜形成用原料とは、上記で説明した本発明の化合物を薄膜のプレカーサとしたものであり、その形態は、該薄膜形成用原料が適用される製造プロセスによって異なる。例えば、1種類の金属原子のみを含有する薄膜を製造する場合、本発明の薄膜形成用原料は、上記化合物以外の金属化合物を非含有である。一方、2種類以上の金属及び/又は半金属を含む薄膜を製造する場合、本発明の薄膜形成用原料は、上記化合物に加えて、所望の金属を含む化合物及び/又は半金属を含む化合物(以下、他のプレカーサともいう)を含有してもよい。本発明の薄膜形成用原料は、後述するように、更に、有機溶剤及び/又は求核性試薬を含有してもよい。本発明の薄膜形成用原料は、上記説明のとおり、プレカーサである化合物の物性がCVD法、ALD法に好適であるので、特に化学気相成長用原料(以下、CVD用原料ということもある)として有用である。
本発明の薄膜形成用原料が化学気相成長用原料である場合、その形態は使用されるCVD法やALD法の輸送供給方法等の手法により適宜選択されるものである。
上記の輸送供給方法としては、CVD用原料を該原料が貯蔵される容器(以下、単に原料容器と記載することもある)中で加熱及び/又は減圧することにより気化させて蒸気とし、必要に応じて用いられるアルゴン、窒素、ヘリウム等のキャリアガスと共に、該蒸気を基体が設置された成膜チャンバー内(以下、堆積反応部と記載することもある)へと導入する気体輸送法、CVD用原料を液体又は溶液の状態で気化室まで輸送し、気化室で加熱及び/又は減圧することにより気化させて蒸気とし、該蒸気を成膜チャンバー内へと導入する液体輸送法がある。気体輸送法の場合は、上記一般式(2)で表される化合物そのものをCVD用原料とすることができる。液体輸送法の場合は、上記一般式(2)で表される化合物そのもの又は該化合物を有機溶剤に溶かした溶液をCVD用原料とすることができる。これらのCVD用原料は更に他のプレカーサや求核性試薬等を含んでいてもよい。
また、多成分系のCVD法においては、CVD用原料を各成分独立で気化、供給する方法(以下、シングルソース法と記載することもある)と、多成分原料を予め所望の組成で混合した混合原料を気化、供給する方法(以下、カクテルソース法と記載することもある)がある。カクテルソース法の場合、本発明の化合物と他のプレカーサとの混合物若しくは該混合物を有機溶剤に溶かした混合溶液をCVD用原料とすることができる。この混合物や混合溶液は更に求核性試薬等を含んでいてもよい。
上記の有機溶剤としては、特に制限を受けることはなく周知一般の有機溶剤を用いることができる。該有機溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシエチル等の酢酸エステル類;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジブチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルブチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン類;ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン等の炭化水素類;1−シアノプロパン、1−シアノブタン、1−シアノヘキサン、シアノシクロヘキサン、シアノベンゼン、1,3−ジシアノプロパン、1,4−ジシアノブタン、1,6−ジシアノヘキサン、1,4−ジシアノシクロヘキサン、1,4−ジシアノベンゼン等のシアノ基を有する炭化水素類;ピリジン、ルチジン等が挙げられる。これらの有機溶剤は、溶質の溶解性、使用温度と沸点、引火点の関係等により、単独で用いてもよいし、又は二種類以上を混合して用いてもよい。これらの有機溶剤を使用する場合、プレカーサを有機溶剤に溶かした溶液であるCVD用原料中におけるプレカーサ全体の量が0.01〜2.0モル/リットル、特に0.05〜1.0モル/リットルとなるようにするのが好ましい。プレカーサ全体の量とは、本発明の薄膜形成用原料が、本発明の化合物以外の金属化合物及び半金属化合物を非含有である場合、本発明の化合物の量であり、本発明の薄膜形成用原料が、該化合物に加えて他の金属を含む化合物及び/又は半金属を含む化合物(他のプレカーサ)を含有する場合、本発明の化合物及び他のプレカーサの合計量である。
また、多成分系のCVD法の場合において、本発明の化合物と共に用いられる他のプレカーサとしては、特に制限を受けず、CVD用原料に用いられている周知一般のプレカーサを用いることができる。
上記の他のプレカーサとしては、水素化物、水酸化物、ハロゲン化物、アジ化物、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アルキニル、アミノ、ジアルキルアミノアルキル、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ジアミン、ジ(シリル−アルキル)アミノ、ジ(アルキル−シリル)アミノ、ジシリルアミノ、アルコキシ、アルコキシアルキル、ヒドラジド、ホスフィド、ニトリル、ジアルキルアミノアルコキシ、アルコキシアルキルジアルキルアミノ、シロキシ、ジケトナート、シクロペンタジエニル、シリル、ピラゾレート、グアニジネート、ホスホグアニジネート、アミジナート、ケトイミナート、ジケチミナート、カルボニル及びホスホアミジナートを配位子として有する化合物からなる群から選択される一種類又は二種類以上のケイ素や金属の化合物が挙げられる。
プレカーサの金属種としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム、スカンジウム、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、イットリウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、マンガン、鉄、クロム、モリブデン、タングステン、オスミウム、ルテニウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金、亜鉛、アルミニウム、ガリウム、インジウム、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウムが挙げられる。
上記の他のプレカーサは、当該技術分野において公知のものであり、その製造方法も公知である。製造方法の一例を挙げれば、例えば、有機配位子としてアルコール化合物を用いた場合には、先に述べた金属の無機塩又はその水和物と、該アルコール化合物のアルカリ金属アルコキシドとを反応させることによって、プレカーサを製造することができる。ここで、金属の無機塩又はその水和物としては、金属のハロゲン化物、硝酸塩等を挙げることができ、アルカリ金属アルコキシドとしては、ナトリウムアルコキシド、リチウムアルコキシド、カリウムアルコキシド等を挙げることができる。
上記の他のプレカーサは、シングルソース法の場合は、本発明の化合物と、熱及び/又は酸化分解の挙動が類似している化合物が好ましく、カクテルソース法の場合は、熱及び/又は酸化分解の挙動が類似していることに加え、混合時に化学反応等による変質を起こさないものが好ましい。
また、本発明の薄膜形成用原料には、必要に応じて、本発明の化合物及び他のプレカーサの安定性を付与するため、求核性試薬を含有してもよい。該求核性試薬としては、グライム、ジグライム、トリグライム、テトラグライム等のエチレングリコールエーテル類、18−クラウン−6、ジシクロヘキシル−18−クラウン−6、24−クラウン−8、ジシクロヘキシル−24−クラウン−8、ジベンゾ−24−クラウン−8等のクラウンエーテル類、エチレンジアミン、N,N,N’N’−テトラメチルエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、1,1,4,7,7−ペンタメチルジエチレントリアミン、1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラミン、トリエトキシトリエチレンアミン等のポリアミン類、サイクラム、サイクレン等の環状ポリアミン類、ピリジン、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、N−メチルピロリジン、N−メチルピペリジン、N−メチルモルホリン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサン、オキサゾール、チアゾール、オキサチオラン等の複素環化合物類、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸−2−メトキシエチル等のβ−ケトエステル類又はアセチルアセトン、2,4−ヘキサンジオン、2,4−ヘプタンジオン、3,5−ヘプタンジオン、ジピバロイルメタン等のβ−ジケトン類が挙げられる。これらの求核性試薬の使用量は、プレカーサ全体の量1モルに対して0.1モル〜10モルの範囲が好ましく、1〜4モルの範囲がより好ましい。
本発明の薄膜形成用原料には、これを構成する成分以外の不純物金属元素分、不純物塩素などの不純物ハロゲン分、及び不純物有機分が極力含まれないようにする。不純物金属元素分は、元素毎では100ppb以下が好ましく、10ppb以下がより好ましく、総量では、1ppm以下が好ましく、100ppb以下がより好ましい。特に、LSIのゲート絶縁膜、ゲート膜、バリア層として用いる場合は、得られる薄膜の電気的特性に影響のあるアルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素の含有量を少なくすることが必要である。不純物ハロゲン分は、100ppm以下が好ましく、10ppm以下がより好ましく、1ppm以下が最も好ましい。不純物有機分は、総量で500ppm以下が好ましく、50ppm以下がより好ましく、10ppm以下が最も好ましい。また、水分は、化学気相成長用原料中でのパーティクル発生や、薄膜形成中におけるパーティクル発生の原因となるので、プレカーサ、有機溶剤及び求核性試薬については、それぞれの水分の低減のために、使用の際にあらかじめできる限り水分を取り除いた方がよい。プレカーサ、有機溶剤及び求核性試薬それぞれの水分量は、10ppm以下が好ましく、1ppm以下がより好ましい。
また、本発明の薄膜形成用原料は、形成される薄膜のパーティクル汚染を低減又は防止するために、パーティクルが極力含まれないようにするのが好ましい。具体的には、液相での光散乱式液中粒子検出器によるパーティクル測定において、0.3μmより大きい粒子の数が液相1mL中に100個以下であることが好ましく、0.2μmより大きい粒子の数が液相1mL中に1000個以下であることがより好ましく、0.2μmより大きい粒子の数が液相1mL中に100個以下であることが最も好ましい。
本発明の薄膜形成用原料を用いて薄膜を製造する本発明の薄膜の製造方法としては、本発明の薄膜形成用原料を気化させた蒸気、及び必要に応じて用いられる反応性ガスを、基体が設置された成膜チャンバー内に導入し、次いで、プレカーサを基体上で分解及び/又は化学反応させて金属を含有する薄膜を基体表面に成長、堆積させるCVD法によるものである。原料の輸送供給方法、堆積方法、製造条件、製造装置等については、特に制限を受けるものではなく、周知一般の条件及び方法を用いることができる。
上記の必要に応じて用いられる反応性ガスとしては、例えば、酸化性のものとしては酸素、オゾン、二酸化窒素、一酸化窒素、水蒸気、過酸化水素、ギ酸、酢酸、無水酢酸等が挙げられ、還元性のものとしては水素が挙げられ、また、窒化物を製造するものとしては、モノアルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン、アルキレンジアミン等の有機アミン化合物、ヒドラジン、アンモニア等が挙げられ、これらは1種類又は2種類以上使用することができる。
また、上記の輸送供給方法としては、前述した気体輸送法、液体輸送法、シングルソース法、カクテルソース法等が挙げられる。
また、上記の堆積方法としては、原料ガス又は原料ガスと反応性ガスを熱のみにより反応させ薄膜を堆積させる熱CVD、熱とプラズマを使用するプラズマCVD、熱と光を使用する光CVD、熱、光及びプラズマを使用する光プラズマCVD、CVDの堆積反応を素過程に分け、分子レベルで段階的に堆積を行うALDが挙げられる。
上記基体の材質としては、例えば、シリコン;窒化ケイ素、窒化チタン、窒化タンタル、酸化チタン、窒化チタン、酸化ルテニウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化ランタン等のセラミックス;ガラス;金属ルテニウム等の金属が挙げられる。基体の形状としては、板状、球状、繊維状、鱗片状が挙げられる。基体表面は、平面であってもよく、トレンチ構造等の三次元構造となっていてもよい。
また、上記の製造条件としては、反応温度(基体温度)、反応圧力、堆積速度等が挙げられる。反応温度については、本発明の化合物が充分に反応する温度である100℃以上が好ましく、150℃〜1000℃がより好ましい。加熱のみで分解させる場合には500℃〜1000℃が特に好ましく、反応性ガスと反応させて分解させる場合には、400〜1000℃が特に好ましい。また、反応圧力は、熱CVD又は光CVDの場合、大気圧〜10Paが好ましく、プラズマを使用する場合、2000Pa〜10Paが好ましい。
また、堆積速度は、原料の供給条件(気化温度、気化圧力)、反応温度、反応圧力によりコントロールすることができる。堆積速度は、大きいと得られる薄膜の特性が悪化する場合があり、小さいと生産性に問題を生じる場合があるので、0.01〜100nm/分が好ましく、1〜50nm/分がより好ましい。また、ALD法の場合は、所望の膜厚が得られるようにサイクルの回数でコントロールされる。
上記の製造条件として更に、薄膜形成用原料を気化させて蒸気とする際の温度や圧力が挙げられる。薄膜形成用原料を気化させて蒸気とする工程は、原料容器内で行ってもよく、気化室内で行ってもよい。いずれの場合においても、本発明の薄膜形成用原料は0〜150℃で蒸発させることが好ましい。また、原料容器内又は気化室内で薄膜形成用原料を気化させて蒸気とする場合に原料容器内の圧力及び気化室内の圧力はいずれも1〜10000Paであることが好ましい。
本発明の薄膜の製造方法は、ALD法を採用して、上記の輸送供給方法により、薄膜形成用原料を気化させて蒸気とし、該蒸気を成膜チャンバー内へ導入する原料導入工程のほか、該蒸気中の上記化合物により上記基体の表面に前駆体薄膜を形成する前駆体薄膜成膜工程、未反応の化合物ガスを排気する排気工程及び該前駆体薄膜を反応性ガスと化学反応させて、該基体の表面に金属を含有する薄膜を形成する金属含有薄膜形成工程を有していてもよい。
以下では、上記の各工程について、金属酸化物薄膜を形成する場合を例に詳しく説明する。金属酸化物薄膜をALD法により形成する場合は、まず、前記で説明した原料導入工程を行う。薄膜形成用原料を蒸気とする際の好ましい温度や圧力は上記で説明したものと同様である。次に、堆積反応部に導入した化合物により、基体表面に前駆体薄膜を成膜させる(前駆体薄膜成膜工程)。このときに、基体を加熱するか、堆積反応部を加熱して、熱を加えてもよい。この工程で成膜される前駆体薄膜は、本発明の薄膜形成用原料から生成した薄膜であるか、又は、本発明の薄膜形成用原料の一部が分解及び/又は反応して生成した薄膜であり、目的の金属酸化物薄膜とは異なる組成を有する。本工程が行われる際の基体温度は、100〜1000℃が好ましく、400〜1000℃がより好ましい。本工程が行われる際の系(成膜チャンバー内)の圧力は1〜10000Paが好ましく、10〜1000Paがより好ましい。
次に、未反応の化合物ガスや副生したガスを堆積反応部から排気する(排気工程)。未反応の化合物ガスや副生したガスは、堆積反応部から完全に排気されるのが理想的であるが、必ずしも完全に排気される必要はない。排気方法としては、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスにより系内をパージする方法、系内を減圧することで排気する方法、これらを組み合わせた方法などが挙げられる。減圧する場合の減圧度は、0.01〜300Paが好ましく、0.01〜100Paがより好ましい。
次に、堆積反応部に酸化性ガスを導入し、該酸化性ガスの作用又は酸化性ガス及び熱の作用により、先の前駆体薄膜成膜工程で得た前駆体薄膜から金属酸化物薄膜を形成する(金属酸化物含有薄膜形成工程)。本工程において熱を作用させる場合の温度は、室温〜1000℃が好ましく、400〜1000℃がより好ましい。本工程が行われる際の系(成膜チャンバー内)の圧力は1〜10000Paが好ましく、10〜1000Paがより好ましい。本発明の化合物は、酸化性ガスとの反応性が良好であるため、残留炭素含有量が少ない高品質な金属酸化物薄膜を得ることができる。
本発明の薄膜の製造方法において、上記のようにALD法を採用した場合、上記の原料導入工程、前駆体薄膜成膜工程、排気工程及び金属酸化物含有薄膜形成工程からなる一連の操作による薄膜堆積を1サイクルとし、このサイクルを必要な膜厚の薄膜が得られるまで複数回繰り返してもよい。この場合、1サイクル行った後、上記排気工程と同様にして、堆積反応部から未反応の化合物ガス及び反応性ガス(金属酸化物薄膜を形成する場合は酸化性ガス)、更に副成したガスを排気した後、次の1サイクルを行うことが好ましい。
また、金属酸化物薄膜のALD法による形成においては、プラズマ、光、電圧などのエネルギーを印加してもよく、触媒を用いてもよい。該エネルギーを印加する時期及び触媒を用いる時期は、特には限定されず、例えば、原料導入工程における化合物ガス導入時、前駆体薄膜成膜工程又は金属酸化物含有薄膜形成工程における加温時、排気工程における系内の排気時、金属酸化物含有薄膜形成工程における酸化性ガス導入時でもよく、上記の各工程の間でもよい。
また、本発明の薄膜の製造方法においては、薄膜堆積の後に、より良好な電気特性を得るために不活性雰囲気下、酸化性雰囲気下又は還元性雰囲気下でアニール処理を行ってもよく、段差埋め込みが必要な場合には、リフロー工程を設けてもよい。この場合の温度は、200〜1000℃であり、250〜800℃が好ましい。
本発明の薄膜形成用原料を用いて薄膜を製造する装置は、周知の化学気相成長法用装置を用いることができる。具体的な装置の例としては図1のようなプレカーサをバブリング供給することのできる装置や、図2のように気化室を有する装置が挙げられる。また、図3及び図4のように反応性ガスに対してプラズマ処理を行うことのできる装置が挙げられる。図1〜図4のような枚葉式装置に限らず、バッチ炉を用いた多数枚同時処理可能な装置を用いることもできる。
本発明の薄膜形成用原料を用いて製造される金属を含有する薄膜は、切削工具、電子材料用の配線や電極に用いられており、例えば、半導体メモリ材料やリチウム空気電池用の電極などに用いることができる。
以下、実施例及び評価例をもって本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明は以下の実施例等によって何ら制限を受けるものではない。
[実施例1]化合物No.1の製造
200mL3つ口フラスコに等圧滴下漏斗、クライゼン連結管、リービッヒ冷却管及びナスフラスコを接続し、Ar雰囲気下でシクロペンタジエニルトリス(第3ブトキシ)ハフニウム34.68gと脱水トルエン68.35gの混合溶液へ酢酸トリメチルシリル30.57gを室温下で5分間かけて等圧滴下漏斗より滴下した。その後、120℃で反応を行い、7.5時間かけて徐々に140℃まで昇温し、反応及び溶媒の留去を行った。更に、脱水トルエン34.52g、酢酸トリメチルシリル1.98gを加えて再度上記の操作を行った。引き続き、減圧蒸留25Pa/65℃の留分を分取し、淡黄色液体の化合物No.1を28.44g得た。
(分析値)
(1)常圧TG−DTA
質量50%減少温度:165℃(Ar流量:100mL/分、昇温10℃/分、サンプル量:9.833mg)
(2)1H−NMR(C6D6)
0.157ppm(s、27H)、6.207ppm(s、5H)
(3)元素分析(金属分析:ICP−AES、CHN分析:CHN分析装置)
ハフニウム含有量:34.5質量%(理論値:34.92質量%)
ケイ素含有量:15.7質量%(理論値:16.48質量%)
C:32.6質量%(理論値:32.9質量%)、H:6.7質量%(理論値:6.31質量%)
[実施例2]化合物No.56の製造
100mL3つ口フラスコに等圧滴下漏斗、クライゼン連結管、リービッヒ冷却管及び1つ口フラスコを接続し、Ar雰囲気下でシクロペンタジエニルトリス(第3ブトキシ)ジルコニウム4.47gと脱水トルエン10.78gの混合溶液へ酢酸トリメチルシリル5.14gを室温下2分間かけて滴下した。その後、100℃で反応を行い、2.5時間かけて徐々に130℃まで昇温し、反応及び溶媒の留去を行った。更に、脱水トルエン10.15g、酢酸トリメチルシリル3.14gを加えて再度上記の操作を行った。引き続き、減圧蒸留27Pa/67℃の留分を分取し、淡黄色液体の化合物No.56を2.87g得た。
(分析値)
(1)常圧TG−DTA
質量50%減少温度:167℃(Ar流量:100mL/分、昇温10℃/分、サンプル量:10.018mg)
(2)1H−NMR(C6D6)
0.155ppm(s、27H)、6.253ppm(s、5H)
(3)元素分析(金属分析:ICP−AES、CHN分析:CHN分析装置)
ジルコニウム含有量:21.05質量%(理論値:21.52質量%)
ケイ素含有量:19.2質量%(理論値:19.88質量%)
C:39.4質量%(理論値:39.67質量%)、H:7.1質量%(理論値:7.61質量%)
[評価例1]化合物の物性評価
化合物No.1、化合物No.56並びに下記に示す比較化合物1及び比較化合物2について、目視によって常圧20℃における各化合物の状態を観察し、固体化合物については微小融点測定装置を用いて融点を測定した。また、比較化合物1及び比較化合物2について、TG−DTAを用いて常圧下で質量が50%減少した際の温度を測定した(Ar流量:100mL/分、昇温:10℃/分、比較化合物1のサンプル量:10.857mg、比較化合物2のサンプル量:12.179mg)。更に、化合物No.1、化合物No.56、比較化合物1及び比較化合物2について、DSCを用いて熱分解が開始する温度を測定した。結果を表1に示す。
上記表1より、化合物No.1及び化合物No.56は常圧20℃の条件下で液体である低融点の化合物であることがわかった。また、常圧TG−DTAの結果から、化合物No.1及び化合物No.56は、化学気相成長用原料として十分な蒸気圧を示すことがわかった。更に、比較化合物1の熱分解が開始する温度が430℃であることに対して、化合物No.1は500℃に加熱した場合であっても熱分解が開始しないことがわかった。また、比較化合物2の熱分解が開始する温度が410℃であることに対して、化合物No.56は500℃に加熱した場合であっても熱分解が開始しないことがわかった。熱安定性が高い化合物は、CVD法やALD法による成膜において高温条件下での成膜を行うことが可能となるため、高品質な金属原子含有薄膜を形成することができる。
[実施例3]ALD法による酸化ハフニウム薄膜の製造
化合物No.1を化学気相成長用原料とし、図1に示す化学気相成長用装置を用いて以下の条件のALD法により、シリコン基板上に酸化ハフニウム薄膜を製造した。得られた薄膜について、X線反射率法による膜厚測定、X線回折法及びX線光電子分光法による薄膜構造及び薄膜組成の確認を行ったところ、膜厚は5〜7nmであり、膜組成は酸化ハフニウム(XPS分析によるHf4fピークで確認)であり、薄膜中の残留炭素含有量は検出下限である0.1atom%よりも少なかった。1サイクル当たりに得られる膜厚は、0.10〜0.15nmであった。
(条件)
反応温度(基板温度);500℃、反応性ガス;オゾン
(工程)
下記(1)〜(4)からなる一連の工程を1サイクルとして、50サイクル繰り返した。
(1)原料容器加熱温度:80℃、原料容器内圧力:80Pa以下の条件で気化させた化学気相成長用原料を成膜チャンバーに導入し、系圧力:80Paで10秒間堆積させる。
(2)20秒間のアルゴンパージにより、未反応原料及び副生ガスを除去する。
(3)反応性ガスを成膜チャンバーに導入し、系圧力:80Paで20秒間反応させる。
(4)30秒間のアルゴンパージにより、未反応原料及び副生ガスを除去する。
[比較例3]ALD法による酸化ハフニウム薄膜の製造
比較化合物1を化学気相成長用原料とし、実施例3と同じ条件下でシリコン基板上に酸化ハフニウム薄膜を試みたが、比較化合物1はALD法への適応性がなく、CVD法のような熱分解による堆積が発生してしまっていた。得られた薄膜について、X線反射率法による膜厚測定、X線回折法及びX線光電子分光法による薄膜構造及び薄膜組成の確認を行ったところ、膜厚は10〜30nmであり、膜組成は酸化ハフニウム(XPS分析によるHf4fピークで確認)であり、薄膜中の残留炭素含有量は5atom%以上であった。
実施例3及び比較例3の結果より、比較化合物1が高温条件下でのALD法原料としての適応性がないことに対して、化合物No.1は高温条件下でのALD法原料としての適応性があることがわかった。また、化合物No.1を用いて製造した薄膜は残留炭素含有量が非常に少なく、高品質な薄膜であることがわかった。
[実施例4]ALD法による酸化ジルコニウム薄膜の製造
化合物No.56を化学気相成長用原料とし、図1に示す化学気相成長用装置を用いて以下の条件のALD法により、シリコン基板上に酸化ジルコニウム薄膜を製造した。得られた薄膜について、X線反射率法による膜厚測定、X線回折法及びX線光電子分光法による薄膜構造及び薄膜組成の確認を行ったところ、膜厚は5〜8nmであり、膜組成は酸化ジルコニウム(XPS分析によるZr4dピークで確認)であり、薄膜中の残留炭素含有量は検出下限である0.1atom%よりも少なかった。1サイクル当たりに得られる膜厚は、0.10〜0.15nmであった。
(条件)
反応温度(基板温度);500℃、反応性ガス;オゾン
(工程)
下記(1)〜(4)からなる一連の工程を1サイクルとして、50サイクル繰り返した。
(1)原料容器加熱温度:80℃、原料容器内圧力:80Pa以下の条件で気化させた化学気相成長用原料を成膜チャンバーに導入し、系圧力:80Paで10秒間堆積させる。
(2)20秒間のアルゴンパージにより、未反応原料及び副生ガスを除去する。
(3)反応性ガスを成膜チャンバーに導入し、系圧力:80Paで20秒間反応させる。
(4)30秒間のアルゴンパージにより、未反応原料及び副生ガスを除去する。
[比較例4]ALD法による酸化ジルコニウム薄膜の製造
比較化合物2を化学気相成長用原料とし、実施例4と同じ条件下でシリコン基板上に酸化ジルコニウム薄膜を製造した。得られた薄膜について、X線反射率法による膜厚測定、X線回折法及びX線光電子分光法による薄膜構造及び薄膜組成の確認を行ったところ、膜厚は4nmであり、膜組成は酸化ジルコニウム(XPS分析によるZr4dピークで確認)であり、薄膜中の残留炭素含有量は3atom%以上であった。1サイクル当たりに得られる膜厚は、0.08nmであった。
実施例4及び比較例4の結果より、化合物No.56及び比較化合物2はいずれも高温条件下でのALD法原料としての適応性があることがわかった。しかし、比較化合物2を用いて高温条件下でのALD法を実施した場合に得られる薄膜は残留炭素含有量が多いことがわかった。一方、化合物No.56を用いて製造された薄膜は残留炭素含有量が非常に少なく、高品質な薄膜であることがわかった。