JP5655895B2 - 基板処理装置及び基板処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、パターンマスクの荒れを改善する基板処理装置及び基板処理方法に関する。
露光処理時にウエハのレジスト膜に照射される光の波動的性質によって、現像後に形成されるレジストパターンにはLWR(Line Width Roughness)と呼ばれる測定寸法のばらつきが生じる。このようにパターンが荒れているレジスト膜をマスクとして下地膜をエッチングすると、エッチング形状がこの荒れに影響され、結果としてエッチングにより形成される回路パターンの形状も荒れてしまい、所望の品質の半導体デバイスが製造できなくなるおそれがある。
そこで、溶剤雰囲気中にレジストパターンを曝して、その表面を膨潤させて溶解させることにより、当該レジストパターンの表面を平滑化することが検討されている。例えば特許文献1には、このような処理を行う装置としてウエハを吸着するチャックと、ウエハ上から気化した溶剤を供給するノズルと、このノズルを前記ウエハの径方向に沿って移動させる移動機構と、ウエハの側周を囲むと共に内部を排気するカップ体と、を備えた基板処理装置について示されている。しかし、前記基板処理装置は前記カップ体やノズルの移動機構を設けることにより、フットプリントが大きくなり、製造コストも比較的高くなっていた。
そのために、ウエハを格納する処理容器と、この処理容器に設けられた吐出口と、前記吐出口から気化した溶剤を供給する供給機構とを備えた基板処理装置を用いてレジストパターンの荒れを改善することが検討されている。しかし、この基板処理装置はウエハの面内に均一性高く処理を行うことが難しいという問題がある。
具体的に説明すると、前記気化した溶剤はウエハに付着しながらウエハ表面を流れるため、前記吐出口の近傍では吐出口から離れた位置よりも溶剤の供給量が多くなる。また、前記吐出口と処理容器に設けられた排気口との配置によりウエハの面内において気化した溶剤の流速にばらつきが生じ、濃度分布が異なり、溶剤の分子がウエハに衝突する割合が高くなる箇所がある。それによって、当該レジストパターンが過大に膨潤して倒れたり、溶解してしまうおそれがある。特に下地膜に微細な回路パターンを形成するために、レジストパターンの線幅を小さくすると、パターンの厚さに対して溶剤が染みこむ厚さ領域の比率が大きくなるため、このようなパターンの倒れや溶解が起こりやすくなると考えられる。その一方で、ウエハの前記吐出口から離れた位置や流速のばらつきにより前記衝突する割合が小さい位置では、供給される溶剤が少ないため、十分にレジストパターンの荒れを解消できないおそれがある。
特許文献1には、上記の問題を解決する手法については記載されていない。また、特許文献2にもノズルから気化した溶剤を供給する基板処理装置について記載されているが、この問題を解決する手法については記載されていない。
特許第4343018(段落0039、図4など) 特許第4328667(図4など)
本発明はこのような事情の下になされたものであり、その目的は基板に形成されたパターンマスクの溶解を防ぐと共に、基板の面内で当該パターンマスクの表面を均一に平滑化させることができる技術を提供することである。
本発明の基板処理装置は、露光、現像処理されてパターンマスクが形成された基板に対して、前記パターンマスクの荒れを改善するために処理を行う装置において、
処理容器内に設けられ、前記基板を載置するステージと、
前記ステージに載置された基板の中央部の温度が当該基板の周縁部の温度よりも高くなるように温度勾配を形成して、当該基板を加熱する基板加熱機構と、
前記ステージに載置された基板に対向して設けられ、前記パターンマスクを膨潤させる溶剤ガスを前記基板の表面に供給する溶剤ガス供給部と、
前記溶剤ガスを基板の周囲から排気する排気部と、
前記溶剤ガス供給部により前記溶剤ガスを前記基板に供給しながら前記排気部により排気する第1のステップと、前記基板加熱機構により当該基板に前記温度勾配を形成する第2のステップと、を並行して行うように制御信号を出力する制御部と、
を備えることを特徴とする。
溶剤ガス供給部は、例えば前記パターンマスクを膨潤させるための溶剤ガスを前記基板の表面の中央部に供給する。
本発明の基板処理方法は、露光、現像処理されてパターンマスクが形成された基板に対して、前記パターンマスクの荒れを改善するために処理を行う方法において、
前記基板を処理容器内のステージに載置して基板を加熱する工程と、
次いで前記パターンマスクを膨潤させるために、溶剤ガスを前記基板の表面に供給しながら基板の周囲から排気する工程と、
この工程を行いながら、前記ステージを介して基板の中央部の温度が基板の周縁部の温度よりも高くなるように基板に温度勾配を形成する工程と、を含むことを特徴とする。
本発明の他の基板処理装置は、露光、現像処理されてパターンマスクが形成された基板に対して、前記パターンマスクの荒れを改善するために処理を行う装置において、
処理容器内に設けられ、前記基板を載置するステージと、
前記パターンマスクを膨潤させるための溶剤ガスを加熱するガス加熱機構と、
前記ガス加熱機構により前記ステージに載置された基板の温度よりも高い温度に加熱された前記溶剤ガスを、当該基板の表面の中央部に供給する溶剤ガス供給部と、
前記溶剤ガスを基板の周囲から排気する排気部と、
前記溶剤ガスを乾燥させるための乾燥用のガスを基板の中央部に供給する乾燥ガス供給部と、
前記溶剤ガス供給部により前記溶剤ガスを前記基板の中央部に供給しながら前記排気部により基板の周囲から排気するステップと、次いで前記乾燥ガス供給部により乾燥ガスを前記基板の中央部に供給しながら前記排気部により基板の周囲から排気するステップと、を複数回繰り返し行うステップを行うように制御信号を出力する制御部と、
を備えることを特徴とする。
本発明のさらに他の基板処理装置は、露光、現像処理されてパターンマスクが形成された基板に対して、前記パターンマスクの荒れを改善するために処理を行う装置において、
処理容器内に設けられ、前記基板を載置するステージと、
前記ステージに載置された前記基板の中央部の温度が当該基板の周縁部の温度よりも高くなるように基板に温度勾配を形成して、当該基板を加熱するための基板加熱機構と、
前記パターンマスクを膨潤させるための溶剤ガスを前記基板の表面の周縁部に供給する溶剤ガス供給部と、
前記溶剤ガスを基板の中央部の上方から排気する排気部と、
前記溶剤ガス供給部により前記溶剤ガスを前記基板に供給しながら前記排気部により排気する第1のステップと、前記基板加熱機構により当該基板に前記温度勾配を形成する第2のステップと、を並行して行うように制御信号を出力する制御部と、
を備えることを特徴とする。
本発明のさらに他の基板処理装置は、露光、現像処理されてパターンマスクが形成された基板に対して、前記パターンマスクの荒れを改善するために処理を行う装置において、
処理容器内に設けられ、前記基板を載置するステージと、
前記ステージに載置された前記基板の一端部の温度が当該基板の他端部の温度よりも高くなるように基板に温度勾配を形成して、当該基板を加熱する基板加熱機構と、
前記パターンマスクを膨潤させるための溶剤ガスを前記基板の表面の一端側に供給する溶剤ガス供給部と、
前記溶剤ガスを基板の他端側から排気する排気部と、
前記溶剤ガス供給部により前記溶剤ガスを前記基板に供給しながら前記排気部により排気する第1のステップと、前記基板加熱機構により当該基板に前記温度勾配を形成する第2のステップと、を並行して行うように制御信号を出力する制御部と、
を備えることを特徴とする。
本発明のさらに他の基板処理装置は、露光、現像処理されてパターンマスクが形成された基板に対して、前記パターンマスクの荒れを改善するために処理を行う装置において、
処理容器内に設けられ、前記基板を載置するステージと、
前記パターンマスクを膨潤させるための溶剤ガスを加熱するガス加熱機構と、
前記ガス加熱機構により前記ステージに載置された基板の温度よりも高い温度に加熱された前記溶剤ガスを、当該基板の表面の一端側に供給する溶剤ガス供給部と、
前記溶剤ガスを基板の他端側から排気する排気部と、
前記溶剤ガス供給部により前記溶剤ガスを前記基板に供給しながら、前記排気部により排気する第1のステップを行うように制御信号を出力する制御部と、
を備えることを特徴とする。
上記の各基板処理装置の具体的態様は、例えば下記の通りである。
(a)基板に前記温度勾配を形成するために、前記ステージの温度を調整する調整機構が設けられるか、あるいは前記ステージにおいてその表面の中央部周縁部よりも高く構成される。
(b)前記溶剤ガスを乾燥させるための乾燥用のガスを基板の中央部に供給する乾燥ガス供給部を備え、
前記第1のステップは、前記溶剤ガス供給部により前記溶剤ガスを前記基板に供給しながら前記排気部により排気するステップである代わりに、
前記溶剤ガス供給部により前記溶剤ガスを前記基板の中央部に供給しながら前記排気部により基板の周囲から排気するステップと、次いで前記乾燥ガス供給部により乾燥ガスを前記基板の中央部に供給しながら前記排気部により基板の周囲から排気するステップと、を複数回繰り返し行うステップである。
(c)前記溶剤ガスを乾燥させるための乾燥用のガスを基板の周囲に供給する乾燥ガス供給部が設けられ、
前記第1のステップは、前記溶剤ガス供給部により前記溶剤ガスを前記基板に供給しながら前記排気部により排気するステップである代わりに、
前記溶剤ガス供給部により前記溶剤ガスを前記基板の周囲に供給しながら前記排気部により基板の中央部から排気するステップと、次いで前記乾燥ガス供給部により乾燥ガスを前記基板の周囲に供給しながら前記排気部により基板の中央部から排気するステップと、を複数回繰り返し行うステップである。
(d)前記溶剤ガスを乾燥させるための乾燥用のガスを基板の一端側に供給する乾燥ガス供給部が設けられ、
前記第1のステップは、前記溶剤ガス供給部により前記溶剤ガスを前記基板に供給しながら前記排気部により排気するステップである代わりに、
前記溶剤ガス供給部により前記溶剤ガスを基板の一端側に供給しながら前記排気部により基板の他端側から排気するステップと、次いで前記乾燥ガス供給部により当該基板の一端側に乾燥用のガスを供給しながら前記排気部により基板の他端側から排気するステップと、を複数回繰り返すステップである。

本発明によれば、基板の表面に溶剤ガスを供給するにあたり、基板を加熱して、当該溶剤ガスの濃度が高く、溶剤の分子がマスクパターンに衝突しやすい箇所の温度を、溶剤ガスの濃度が低く、溶剤の分子がマスクパターンに衝突しにくい箇所の温度よりも高くなるように基板に温度勾配を形成する。このように温度勾配を形成することで、前記溶剤の分子がマスクパターンに衝突しやすい箇所では衝突しにくい箇所に比べて多くの量の溶剤が揮発する。従って、パターンマスクの溶解を防ぎ、その表面を均一性高く平滑化させることができるので、歩留りの低下を抑えることができる。また、基板の温度よりも高い温度に加熱された溶剤ガスを、基板の中央部から基板の周囲、または基板の一側部から他端側に向けて供給する。溶剤ガスの供給側では、排気側に比べて当該溶剤ガスの温度が高いため、基板に溶剤が抑えられる結果として、同様にパターンマスクの溶解を防ぎ、その表面を均一性高く平滑化させることができる。
本発明に係る溶剤供給装置の縦断側面図である。 前記溶剤供給装置の平面図である。 前記溶剤供給装置に設けられた熱板の裏面を示す平面図である。 前記溶剤供給装置のガス供給部の縦断側面図である。 前記溶剤供給装置の処理容器のガスの流れを示す説明図である レジストの動きやすさと、溶剤濃度との関係を示すグラフ図である。 ウエハ表面の溶剤分子の動きを示す説明図である。 ウエハ表面の溶剤分子の動きを示す説明図である。 ウエハ表面の溶剤分子の動きを示す説明図である。 前記溶剤供給装置による処理を示す工程図である。 前記溶剤供給装置による処理を示す工程図である。 前記溶剤供給装置による処理を示す工程図である。 前記溶剤供給装置による処理を示す工程図である。 前記溶剤供給装置による処理を示す工程図である。 前記溶剤供給装置による処理を示す工程図である。 前記溶剤供給装置による処理を示す工程図である。 レジストパターンの状態を示す模式図である。 前記溶剤供給装置によるガス供給及び動作を示すタイムチャートである。 熱板の他の構成を示す縦断側面図である。 熱板の他の構成を示す縦断側面図である。 熱板の他の構成を示す縦断側面図である。 ステージの他の構成を示す縦断側面図である。 移動プレートの横断平面図である。 前記溶剤供給装置を構成する処理容器の他の構成を示す縦断側面図である。 前記処理容器のステージに載置されたウエハの平面図である。 前記溶剤供給装置を構成する処理容器のさらに他の構成を示す縦断側面図である。 前記処理容器の横断平面図である。 評価試験の結果を示すグラフ図である。
(第1の実施形態)
本発明の実施の形態に係る溶剤供給装置1について、その縦断側面図、横断平面図である図1、図2を参照しながら説明する。溶剤供給装置1は、ウエハWを処理するための処理容器2と、処理容器2と溶剤供給装置1の外部との間で基板であるウエハWを搬送する搬送機構6と、を備えている。この処理容器2に搬送されるウエハW表面にはレジスト膜が形成されている。レジスト膜は露光、現像処理を受けており、パターンマスクであるレジストパターンが形成されている。
処理容器2は扁平な円形状に形成され、容器本体21と、蓋体41とを備えている。容器本体21は、その周縁部をなす側壁部22と、側壁部22の下端から内側方向に突出した底壁部23と、を備えており、底壁部23上にはステージ24が設けられている。ステージ24の表面はウエハWを水平に載置する熱板31により構成されている。熱板31の裏面側の中央部には図3に示すようにステージ24の温調機構をなすリング状のヒータ32が夫々設けられている。ヒータ32は電熱線により構成されているが、図では便宜上板状の部材として示している。ヒータ32は当該ヒータ32に供給する電力を独立して制御する電力コントローラ35に接続されている。
図1、2に戻って説明を続けると、ステージ24に設けられた3つの各孔26にはピン27が挿通されている。これらピン27は、昇降機構28によりステージ24上にて突没し、搬送機構6との間でウエハWを受け渡す。
側壁部22の表面にはその周方向に沿って多数のパージガス吐出口29が開口している。側壁部22の下方にはパージガス吐出口29に連通するリング状の空間36が形成され、当該空間36の下方には周方向に間隔をおいて、複数のパージガス供給管37の一端が接続されている。各パージガス供給管37の他端は、パージガスとしてN2ガスを圧送する不図示の供給機構に接続され、供給機構から空間31に供給されたパージガスは、当該空間36を広がって各パージガス吐出口29から吐出される。
蓋体41は昇降機構11により昇降自在に構成されている。蓋体41は、その周縁部をなす側壁部42と、その側壁部42に囲まれる上壁部43とを備えており、側壁部42の下端は上壁部43の下端よりも下方に位置している。ウエハWに処理を行うときには、蓋体41が図1に示す処理位置に移動し、上壁部43の下端と、容器本体21の側壁部22の上端とが隙間12を介して互いに近接する。
上壁部43の裏面側中央部は下方に突出し、ガス供給部4を形成している。図4に示すように、このガス供給部4の側周には周方向に沿って多数のガス吐出口44が開口し、ステージ24に載置されたウエハWの中央部から周縁部に向かってガスを吐出し、ウエハW全体にガスを供給することができる。図2中では点線の矢印でガス吐出口44から吐出されるガスの流れを示している。
蓋体41の上部にはガス供給管45の下流端が接続され、ガス供給管45の上流側は分岐してガス供給管45A、45Bを構成している。ガス供給管45Aの上流側は、流量制御機構47Aを介して溶剤供給源48Aに接続されている。溶剤供給源48Aはレジストを膨潤させることができる溶剤が貯留されたタンクをなし、貯留された溶剤の液相にN2ガスを供給するN2ガス供給部49に接続されている。
N2ガス供給部49からN2ガスが前記タンク内に供給されると当該タンク内が加圧されると共に溶剤が気化し、気化した溶剤と前記N2ガスとからなる処理ガスが、流量制御機構47Aでその流量が制御され、ガス吐出口44からウエハWに供給される。また、ガス供給管45Bの上流側はガス流量制御機構47Bを介して、乾燥用ガスであるN2ガスを下流側に圧送するN2ガス供給源48Bに接続されている。圧送された乾燥用ガスは、ガス流量制御機構47Bでその流量が制御されてガス吐出口44からウエハWに供給される。
蓋体41の側壁部42の下端には、パージガス吐出口29に重なる位置にリング状の凹部51が形成されている。複数の排気路52を介して処理容器蓋体41の上部に開放されており、各排気路52は前記周方向に複数設けられている。また、側壁部42の下端において、凹部51の内側には多数の排気口53がウエハWの周方向に配列されている。この排気口53は排気機構54に接続されている。
図5ではウエハW処理中の処理容器2の処理ガスの流れを実線の矢印で、パージガスの流れを点線の矢印で各々示している。パージガス吐出口29から吐出されたパージガスは、その一部が凹部51に流れ込んで処理容器2の外部へと流通すると共にその一部が排気口53により吸引されて処理容器2の内側へ向かい、当該排気口53に流れ込んで排気される。このようにパージガスの流れが形成されている状態で、処理ガスがガス吐出口44から吐出され、ウエハWの中央部から周縁部へと横方向に広がり、排気口53へ向かう。排気口53の外側では、上記のようにパージガスの外側から内側へ向かう流れが形成されているため、処理ガスはこの流れに阻まれて排気口53の外側へ出ることなく、当該排気口53により除去される。処理ガスの流れについて説明したが、乾燥用ガスをウエハWに供給するときにも、パージガスが同様に処理容器2に供給され、当該乾燥用ガスは処理ガスと同様に処理容器2を流れて排気される。
図1、図2に戻って説明する。処理容器2の外部には基台61が設けられ、この基台61に前記搬送機構6が設けられている。搬送機構6は、水平な移動プレート62と、移動プレート62を基台61上に支持する支持部63と、移動機構64とにより構成されている。支持部63は移動プレート62から基台61の下方に伸び、移動機構64に接続されている。図1及び図2に示した移動プレート62の位置を待機位置とすると、当該移動機構64により移動プレート62は待機位置と、処理容器2のステージ24上との間で水平に移動することができる。図中65は、この移動を妨げないように基台61に設けられたスリットである。
移動プレート62について説明する。移動プレート62の内部にはヒータ66が設けられており、表面に載置されたウエハWを予め設定された温度に加熱する。図中67はスリットであり、ステージ24との間でウエハWを受け渡すためにピン27が通過する。図中68は切り欠きであり、溶剤供給装置1にウエハWを搬送する搬送アーム13との間でウエハWを受け渡すために設けられている。
図2に示す搬送アーム13は、搬送アーム13は、ウエハWの側周を囲む扁平なフォーク14と、当該フォーク14から内側に突出してウエハWの裏面を支持する支持部15と、を備えている。搬送アーム13は、移動プレート62に対して前後(図2中上下)移動、昇降移動自在に構成され、これらの動作を組み合わせて移動プレート62との間でウエハWを受け渡す。
溶剤供給装置1は、コンピュータからなる制御部10を備えている。制御部10は、制御部10は溶剤供給1の各部に制御信号を送り、各種のガスの給断及び各ガスの供給量、移動プレート62及びステージ24でのウエハWの温度、処理容器2と移動プレート62とステージ24との間でのウエハWの受け渡し、処理容器2内の排気、電力コントローラ35を介してヒータ32への供給電力などの動作を制御して、後述のように溶剤供給装置1での処理を進行させるように命令(各ステップ)が組み込まれている。このプログラムは、コンピュータ記憶媒体例えばフレキシブルディスク、コンパクトディスク、ハードディスク、MO(光磁気ディスク)等の記憶媒体に格納されて制御部10にインストールされる。
上記の溶剤供給装置1の処理の概要を説明するために、図6のグラフを参照しながら、溶剤供給装置1によりウエハWに既述の処理ガスを供給したときのウエハW表面のレジストパターン中の溶剤の濃度とレジストを構成するポリマーの動きやすさとの関係を説明する。グラフの縦軸、横軸が前記動きやすさ、溶剤濃度を夫々示している。
レジストパターンに処理ガスを供給するとき、処理ガスの持つ温度エネルギーに応じて溶剤の分子は運動しているが、当該溶剤の分子がレジストパターンに衝突すると、その瞬間にこの分子とレジストパターンとの間で熱の授受が起こる。それによって、溶剤ガスは速やかにウエハWの温度になり、分子はレジストパターンの表面に付着する。つまり、レジストパターンに処理ガスを供給すると、レジストパターンの表面に溶剤が浸透する。しかし、処理ガスの供給量が少なく、レジストパターン中の溶剤濃度が所定の閾値以下の範囲(グラフ中範囲L1)であると、前記ポリマーはほとんど流動しない。例えばグラフ中の点Aの状態のレジストパターンは溶剤濃度が前記閾値にあり、そのようにポリマーがほとんど流動しない状態にある。前記閾値よりもレジストパターン中の溶剤濃度が高くなると、前記ポリマーの流動性が高くなり、レジストパターンの表面が膨潤し、前記荒れが改善される。例えばグラフ中の点Bでは、最適なポリマーの流動性が得られる状態を示している。
処理ガスの供給が続けられ、溶剤濃度が高くなりすぎると、溶剤はレジストパターンの内部に向けて浸透し、レジストパターンの膨潤量が過大になる。このように過大に膨潤したレジストパターンはその形状を保てずに湾曲し、背景技術の項目で説明したように溶解してしまう。グラフ中の点Cではパターンの形状が保たれているが、さらに溶剤濃度が高くなると、そのようなパターンの溶解が起こる。グラフ中ではパターンが改善される溶剤濃度の範囲をL2で示し、パターンの溶解が起こる溶剤濃度の範囲をL3で夫々示している。
従って、ウエハWの面内においてレジストパターンの荒れを均一性高く改善するには、レジストパターン中の溶剤濃度をグラフ中L2で示す範囲内の所定の濃度に揃うように処理を行うことが求められる。ここで、溶剤供給装置1は、吐出口43から連続して処理ガスを吐出すると、当該吐出口43付近、つまりウエハWの中央部では、ウエハWの周縁部に比べて処理ガスが供給される量が多くなるので、当該中央部の溶剤の濃度が周縁部の溶剤の濃度よりも高くなってしまう。
より具体的に説明すると、吐出口43に近いウエハW中央部では比較的処理ガスの流速が高く、処理ガスの濃度が高くなるため、上記のように溶剤の分子がレジストパターンへ衝突し、付着する割合(確率)が高くなり、結果としてウエハWの中央部ではレジストパターンの膨潤が進む。しかし、処理ガスは周縁部へと拡散するため、周縁部では処理ガスの流速が低下し、その濃度が低くなる。従って、溶剤の分子がレジストパターンへ衝突し、付着する割合が低く、中央部に比べてレジストパターンが膨潤しにくい。
そこで、溶剤供給装置1では処理ガス供給時において、ヒータ32によりウエハWの中央部の温度が周縁部の温度よりも高くなるように制御する。図7〜図9の模式図を使い、このように温度制御したときのウエハW表面の様子を説明する。図7に示すように処理ガスの供給が開始されると、処理ガスはウエハWの中央部へ供給される量が多いので、図8に示すように溶剤の分子70は周縁部よりも当該中央部に付着しやすい。しかし、ウエハWの中央部は温度が高いため、当該中央部からの揮発量が多い。
より詳しく説明すると、上記のようにレジストパターンに衝突し、付着した溶剤の分子がレジストパターンから離れる量、つまり溶剤ガスとしてレジストパターンから揮発する量は、ウエハW直上の気層の溶剤濃度とレジストパターン中の溶剤濃度とのつり合いに影響される。このつり合いとは、レジストパターン中の液体の溶剤と前記気層中の気体の溶剤との気液平衡である。ウエハWの温度を上昇させることによって、ウエハW直上の雰囲気の溶剤濃度が低くなり、前記気液平衡によりレジストパターンから溶剤の揮発が進行する。
つまり、図9に示すように多くの分子70がウエハWの表面から離れ、ガス流に乗って排気される。それに対してウエハWの周縁部では中央部に比べて温度が低いので、処理ガスが結露しやすい。つまり付着した分子70の揮発量が少ない。従って、ウエハWの中央部と周縁部との間で溶剤の濃度を揃えることができる。また、処理ガスの供給時間が長くなることにより、溶剤がレジストパターンの内部に浸透するが、これを防ぐ目的と、レジストパターンの表面の溶剤濃度が前記グラフ中の範囲L2に収まる時間を十分に確保する目的とから、処理ガスの供給によるレジストパターンの膨潤と、前記乾燥用ガスの供給及び移動プレート62による加熱からなる乾燥処理とを繰り返し行う。吐出口44から供給される乾燥用ガスは、溶剤ガス同様に吐出口44に近いウエハWの中央部側の流速が高くなるため、ウエハWの中央部直上の気層の溶剤濃度がウエハWの周縁部直上の溶剤濃度よりも低くなり、それによって前記気液平衡によりウエハWの中央部から溶剤の揮発が促進される。前記乾燥用ガスは、本実施形態ではN2ガスを用いているが、これに限られず例えばドライエアでもよい。
以下、各工程の溶剤供給装置1の動作を示す図10〜図16と、処理の各段階のレジストパターンの模式図である図17とを参照しながら溶剤供給装置1の作用について具体的に説明する。また、図18も適宜参照しながら説明を行う。図18は、溶剤供給装置1でウエハWが処理される区間と、ステージ24のピンが昇降するタイミングと、処理ガスが供給される区間と、N2ガスが供給される区間と、移動プレート62の位置及び移動方向とを互いに対応付けて示したタイムチャートである。このタイムチャート中、移動プレート62の位置及び移動方向については、ステージ24上に位置しているとき及びステージ24に向かって移動しているときを「IN」として示し、前記待機位置に位置しているとき及びステージ24上から当該待機位置に移動しているときを「OUT」として示している。
先ず、搬送アーム13により、ウエハWが待機位置にある移動プレート62に受け渡される(図18中時刻t1)。図14に状態1として示すように、ウエハWのレジストパターン71の表面72は荒れており、凹凸が形成されている。図10に示すように移動プレート62がステージ24上へと移動する(図18中時刻t2)(ステップS1)。ヒータ32により、ステージ24の熱板31の温度が上昇し、熱板31の中央部の温度が周縁部の温度よりも高くなる。そして、ピン27が上昇してウエハWを受け取ると(図18中時刻t3)、移動プレート62が待機位置に戻り、図11に示すように前記ピン27が下降してウエハWがステージ24に載置される(図18中時刻t4)。熱板31によりウエハWが温調され、ウエハWの中央部の温度が周縁部よりも高くなる(ステップS2)。前記中央部の温度は例えば30度〜50度であり、前記周縁部の温度は例えば23度〜45度である。
ウエハWの温調に並行して蓋体41の下降、パージガス吐出口29からのパージガスが吐出及び排気口53からの排気が行われる。ウエハWがステージ24に載置されてから例えば10秒経過すると、図12に示すようにガス供給部4の吐出口44から処理ガスがウエハWの中央部に供給され(図18中時刻t5)(ステップS3)、既述したようにウエハWの周縁部へと流れてパージガスと共に排気される。なお、この図12などの作用図では、図が煩雑化することを防ぐためにウエハWの周囲のガスの流れのみ矢印で示しているが、実際には処理容器2内では図5に示すようにガス流が形成される。
処理ガスに曝されて、図17の状態2に示すようにレジストパターン71の表面72が膨潤する。図7〜図9で説明したようにウエハWの中央部では、処理ガスの供給量がウエハWの周縁部に比べて多いが、当該中央部の表面は周縁部に比べて溶剤の揮発量が多い。逆に言えばウエハWの周縁部では処理ガスの供給量がウエハWの中央部に比べて少ないが、中央部に比べて揮発せずに付着する溶剤の量が多い。従って、ウエハWの中央部と周縁部とでレジストパターン71の表面72に付着、浸透する溶剤の量が揃い、これら中央部と周縁部との間で均一性高く表面72が膨潤し、表面72が溶解する。
処理ガス供給開始後、例えば5〜10秒経過すると、吐出口44から処理ガスの供給が停止し、図13に示すようにガス供給部4の吐出口44から乾燥用ガスがウエハWの中央部に吐出され、周縁部へと流れてパージガスと共に排気される(図18中時刻t6)(ステップS4)。図17に状態3として示すように、この乾燥用ガスに曝されることでレジストパターン71の表面72に浸透した溶剤が揮発し、乾燥する。この乾燥用ガスは吐出口43から供給されることで、ウエハWの周縁部よりも中央部への供給量が多くなるため、ウエハWの中央部は周縁部に比べて乾燥速度が速く、より確実にウエハWの面内でレジストパターン71の表面72の膨潤量が揃う。
乾燥用ガス供給開始後、例えば5〜10秒経過すると吐出口44から乾燥用ガスの供給及びパージガス吐出口29からのパージガスの供給が停止し、蓋体41が上昇し、図14に示すようにピン27がウエハWを上昇させ、移動プレート62がステージ24上に移動する(図18中時刻t7)(ステップS4)。ヒータ66により移動プレート62がステージ24よりも高い温度に制御され、ピン27が下降して図15に示すように移動プレート62にウエハWが載置されると(図18中時刻t8)、ウエハW全体が例えば60度に加熱される。それによって、図17の状態4に示すようにウエハWの中央部及び周縁部におけるレジストパターン71の表面72がさらに乾燥すると共に、ウエハWの温度が上昇することでレジストパターンを構成するポリマーの流動性が高くなり、凹凸の改善が進行する。そして、溶剤が揮発して表面72の乾燥が進行すると、前記ポリマーの流動性が低下し、レジストパターン71内への溶剤の浸透が抑制される(ステップS5)。
ウエハWが移動プレート62に載置されてから例えば10〜60秒経過すると、ピン27が上昇してウエハWが移動プレート62から持ち上げられ(図18中時刻t9)、移動プレート62は待機位置へ移動する。ピン27が下降してウエハWがステージ24に載置されると共に(図18中時刻t10)、処理容器2の蓋体41が下降し、図16に示すようにステージ24によりウエハWが温調される(ステップS7)。つまり再度上記ステップS2が行われる。
以降、図18のタイムチャートに示すように、ステップS3の処理ガスの供給(図18中時刻t11)、ステップS4の乾燥用ガスの供給(図18中時刻t12)、ステップS5の移動プレート62へのウエハWの受け渡し(図18中時刻t13)、ステップS6のウエハWの加熱が行われ、前記ステップS6終了後は、さらにステップS2〜S6の処理が繰り返し行われる。それによって、ウエハWの中央部及び周縁部でレジストパターン71は、図17の状態2〜状態4の各状態に繰り返しおかれ、次第にレジストパターンの凹凸が均され、状態5のように表面72が平滑化される。例えば3回目のステップS2〜S6が行われると、移動プレート62はウエハWを載置したまま待機位置へと戻り(図18中時刻t14)、搬送アーム13がウエハWを受け取り、当該ウエハWを溶剤供給装置1の外部へと搬送する(図18中時刻t15)。その後、溶剤を完全に除去するために、ウエハWは例えば加熱装置に搬送され、移動プレート62の加熱温度よりも高い温度で加熱される。
この溶剤供給装置1によれば、ウエハW中央部の吐出口28から処理ガスを供給する際にウエハWの中央部を周縁部よりもその温度が高くなるように加熱し、ウエハWに温度勾配を形成する。それによってウエハWの中央部では周縁部に比べて溶剤の揮発量が多くなるので、ウエハWの面内でパターンの膨潤量を揃えることができる。従って、ウエハWの面内でレジストパターンの溶解を抑えることができ、均一性高くレジストパターンの表面の荒れを改善することができる。
また、この溶剤供給装置1では、この処理ガス及び乾燥用ガスの供給を1枚のウエハWに繰り返し行っている。それによって、レジストパターンの内部への溶剤の浸透を抑え、より確実にウエハWの面内でレジストパターンの溶解を抑えることができ、且つレジストパターンの表面の荒れを改善することができる。
また、この溶剤供給装置1では乾燥用ガスの供給後、移動プレート62によりウエハWの加熱を行うことで、溶剤の乾燥速度が大きくなるためスループットが向上する。移動プレート62により加熱を行う代わりにステージ24の温度を高く設定してもよいが、処理ガス供給時にウエハWからの溶剤の揮発量が多くなりすぎてしまうことを防ぐため、このようにステージ24よりも高く温度調整した移動プレート62にウエハWを移動させて乾燥を行うことが有効である。ただし、この移動プレート62にウエハWを移動させず、乾燥用ガスの供給を続けることでレジストパターンを乾燥させてもよい。
(第1の実施形態の変形例)
以下、第1の実施形態の各変形例について説明する。図19は熱板31を加熱する熱源をLED群81により構成した第1の変形例を示している。LED群81は、熱板31の下方全体に亘って設けられた多数のLED82からなり、各LED82は赤外線を熱板31に照射して、熱板31を加熱する。LED群81のうち、図中点線83で囲った熱板31の中央部を加熱するLED82は、他のLED82よりも出力が高く設定され、それによってウエハWの中央部が周縁部に比べて高い温度に加熱される。
図20には第2の変形例を示している。図20中の熱板84の表面は湾曲しており、中央部の表面が周縁部の表面よりも高く構成されている。それによって、ウエハWの周縁部と熱板84までの距離が、ウエハWの中央部と熱板84までの距離よりも大きくなるように構成されている。そして、熱板84の裏面には、ヒータ32を囲うように互いに径の異なるリング状のヒータ85、86がヒータ32に対して同心円状に配置されている。これらヒータ32、85、86により、熱板84の表面が均一な温度になるように制御されるが、上記の距離の大きさの違いによるウエハWへの伝熱量の差により、ウエハWの中央部の温度が周縁部の温度に比べて高くなる。それによって、ウエハWの周縁部よりも中央部における溶剤の乾燥量を大きくすることができる。
図21には第3の変形例を示している。図21の熱板31には既述のヒータ32、85、86が設けられており、これらヒータ32、85、86により熱板31の表面は均一な温度に加熱される。また、既述の処理容器2に接続されるガス供給管45にはヒータ80が設けられており、当該ガス供給管45を流通する処理ガスを加熱する。ウエハWを処理するときには、ヒータ80により処理容器2内に供給される処理ガスの温度が、熱板31により温調されたウエハWの温度よりも高くなるように制御される。
そして、ウエハWの中央部に供給された処理ガスはウエハW表面を流通する間に冷却されるため、処理ガス中の溶剤はウエハWの周縁部に向かうほどウエハWに結露して付着しやすくなる。従って、ウエハWの面内で膨潤量を揃えることができる。この第3の変形例は、第1の実施形態や第1の実施形態の他の変形例で示した、熱板31によりウエハWに温度分布を形成する手法と組み合わせることができる。ところで、この第1の実施形態や後述の各実施形態及びそれらの変形例においては、適切な処理が行われるように、例えばこのようなヒータ80を設けて処理ガスの温度を適切な温度に調整してもよい
また、図22は第4の変形例であり、ステージ24において、熱板31の下面中央部にN2ガスを吐出するノズル87と、ノズル87付近にて当該ノズル87を囲む複数の排気口88とが設けられている。N2ガスの供給源89とノズル87とを接続する流路には前記ヒータ80が設けられている。ヒータ80により加熱されてノズル86に供給されたN2ガスは、図中に矢印で示すように排気口88から排気される。これによって、ウエハWの中央部が周縁部よりも高い温度に加熱される。また、熱板31の中央部を加熱するためには、熱板31の下面中央部に液体の流路を形成し、温調された液体を当該流路に流通させてもよい。
第5の変形例として、処理ガス供給時だけでなく移動プレート62による加熱時にも温度勾配を形成する例を説明する。図23は移動プレート62の横断平面図である。この図に示すように移動プレート62の中央部にリング状のヒータ90Aが設けられ、周縁部に複数のヒータ90Bが設けられている。各ヒータ90Bはリングが周方向に分割されたように形成され、ヒータ90Aを囲っている。ヒータ90Aの出力は、ヒータ90Bの出力よりも高く設定され、ウエハWの中央部が周縁部よりも高い温度に加熱される。このように移動プレート62を構成することで、移動プレート62に載置されたときにウエハWの中央部では周縁部に比べて溶剤の揮発が促進されるため、より確実にレジストパターンの膨潤量を揃えることができる。
(第2の実施形態)
以下、他の実施形態について、第1の実施形態との差異点を中心に説明する。溶剤供給装置1において、処理容器を図24に示すように構成してもよい。この図24では処理容器2とは異なる方向に処理ガスを供給する処理容器91の縦断側面図を示している。この処理容器91を構成する蓋体92にはウエハWの外方に、当該ウエハWを囲むようにリング状のガス吐出口93が設けられている。また、ウエハWの中央部の上方には排気口94が開口しており、ガス吐出口93から吐出された処理ガス及び乾燥用ガスは、図中矢印で示すようにウエハWの中央部に向かい、排気口94から排気される。図中95はシール部材である。
ガス吐出口93から吐出された処理ガスは、排気されてウエハWの中央部に集まってくる。従って、ウエハWの中央部では周縁部よりも処理ガスの流速が高くなり、それによって当該処理ガスの濃度が大きくなるため、レジストパターンに処理ガスの分子が衝突する割合が大きくなり、膨潤量が大きくなりやすい。そこで、図24、図25に示すようにヒータ32を第1の実施形態と同様にウエハWの中央部下方に配置し、ウエハWの中央部が周縁部よりも高い温度になるように構成している。
このような構成により、ウエハW中央部では周縁部よりも溶剤の揮発が促進され、第1の実施形態と同様にウエハWの面内でレジストパターンの膨潤量を揃えることができる。また、この第2の実施形態においても、例えば第1の実施形態と同様に処理ガスの供給と乾燥用ガス及び移動プレートによる乾燥処理とを交互に繰り返し行う。乾燥用ガスは処理ガスと同方向に供給されるので、ガス吐出口83に近いウエハWの中央部では、乾燥用ガスの流速及び濃度が高くなる。つまり、ウエハWの周縁部よりも中央部の方が、当該乾燥ガスによる乾燥速度が大きいため、ウエハWの面内でレジストパターンの膨潤量をより確実に揃えることができる。そして、各ガスを交互に繰り返し供給することで、第1の実施形態と同様にレジストパターンの内部への溶剤の浸透を抑え、且つより確実にレジストパターンの荒れを改善することができる。この第2の実施形態においても第1の実施形態で示した各変形例を適用して、熱板31、84によりウエハWの中央部を周縁部よりも高い温度に加熱することができる。
(第3の実施形態)
図26、図27には処理容器101の縦断側面図、横断平面図を夫々示している。図中102はステージ24の一端側に設けられたガス供給部であり、その上面にはガス吐出口103が形成されている。図中104はステージ24の他端側に設けられた排気部であり、排気口105を備えている。ガス吐出口103から吐出された処理ガス及び乾燥用ガスは、ステージ24と処理容器101の蓋体106の天板との間をウエハWの一端側から他端側へ向かい、排気される。
このように処理ガスを一方向に流す処理容器101では、処理ガスを周縁部側から中央部側または中央部側から周縁部側へと流す処理容器に比べてウエハW表面における流速の分布が抑えられるため、ウエハWの面内においてレジストパターンの溶剤濃度の勾配が形成されにくいが、ガス吐出口103から吐出された処理ガスは、含まれる溶剤分子がウエハWに吸収されながら排気口105へと向かっていく。従って、ウエハWの表面上において処理ガスの下流側に向かうほど僅かずつ溶剤の濃度が低くなる。つまり、ガス吐出口103に近いウエハWの一端部では溶剤分子の衝突する割合(確率)が、排気口105に近いウエハWの他端部における溶剤分子の衝突する割合(確率)に比べて高くなる。そこで、この例では熱板31の下面の前記一端側にヒータ107を設けている。
このヒータ107は、処理ガスの流通方向と直交する方向に伸びている。このヒータ107によって、処理ガス供給時にウエハWの一端部の温度が他端部の温度よりも高くなり、当該一端部では他端部よりも溶剤の揮発が促進され、第1の実施形態と同様にウエハWの面内でレジストパターンの膨潤量を揃えることができる。また、この第3の実施形態においても、例えば第1の実施形態と同様に処理ガスの供給と乾燥用ガス及び移動プレートによる乾燥処理とを交互に繰り返し行う。乾燥用ガスは処理ガスと同方向に供給され、溶剤雰囲気を取り込みながら排気口105へと向かっていくことで、前記一端部の方が他端部よりもその濃度が高くなる。従って、ウエハWの一端部の乾燥力が他端部よりも高くなる。ウエハWの面内でレジストパターンの膨潤量をより確実に揃えることができる。また、処理ガスの供給と乾燥処理とを交互に繰り返し行うことで、第1の実施形態と同様にレジストパターンの内部への溶剤の浸透を抑え、且つより確実にレジストパターンの荒れを改善することができる。
この第3の実施形態にも、第2の実施形態と同様に第1の実施形態で示した各変形例を適用して、ウエハWの中央部の温度を周縁部の温度より高くする代わりにウエハWの前記一端部の温度を他端部の温度よりも高くすることができるし、ウエハWの温度よりも高い温度に調整された処理ガスをガス吐出口103から供給すると共に排気口105から排気することができる。このように処理ガスの温度制御を行う手法は、第1の実施形態と同様に熱板に温度分布を形成する手法と組み合わせることができる。また、第5の実施形態を適用する場合を具体的に説明すると、図23に示すヒータ90Bのうち、ウエハWの一端部の下方に位置するヒータ90Bを、他のヒータ90Bよりも高い温度に昇温させる。
上記の各例では処理ガスの吐出口と乾燥用ガスの吐出口とが共用されているが、処理ガスの流通方向と乾燥用ガスの流通方向とが同じであれば、既述の効果が得られるので、これら吐出口は別々に形成してもよい。また各処理容器を排気して真空雰囲気とし、その真空雰囲気に各ガスを供給してもよい。また、ウエハWの中央部から周縁部に向けて処理ガス及び乾燥用ガスを供給する場合、第1及び第2の実施形態のようにウエハWの全周に排気口を設けることに限られず、ウエハWの一端側、他端側に排気口を設け、これら一端側及び他端側から排気を行ってもよい。
[参考試験]
続いて本発明に関連して行った参考試験について説明する。レジストパターンが形成されたウエハW(ウエハA1とする)の径方向に沿った複数箇所において、当該レジストパターンの測定寸法のばらつき(LWR)を測定した。LWRはばらつきの標準偏差の3倍(3シグマ)で示す。また、ウエハA1と同様にレジストパターンが形成されたウエハA2、A3を用意した。ウエハA2については温度を均一にした熱板31に載置し、第1の実施形態に従って各ガスの供給処理を行い、ウエハA1と同様に測定を行って、各部のレジストパターンの粗さの3シグマを算出した。また、ウエハA3については処理ガスと乾燥ガスとの繰り返し供給を行わず、連続して所定の時間ウエハWに処理ガスを供給した後、加熱処理を行い、ウエハA1、A2と同様に各部の3シグマを算出した。
図28のグラフは、この評価試験の結果を示している。横軸はウエハWの測定位置を示している。横軸中の−150、+150が夫々ウエハWの一端、他端であり、0がウエハWの中心である。縦軸が算出された3シグマを示し、単位はnmである。このグラフに示すようにウエハA2は、ウエハA1に比べて各測定箇所の3シグマが小さい。即ちウエハWの面内でレジストパターンの粗さのばらつきが小さい。また、ウエハA3はウエハWの中央部の3シグマがウエハA1の値よりも大きくなっていた。これはウエハA3の中央部ではレジストパターンの溶解が起きたためである。この評価試験の結果から、処理ガスの供給と乾燥ガスの供給とを繰り返し行うことにより、ウエハWの面内で均一性高くレジストパターンの粗さを改善することができることが示された。
W ウエハ
1 溶剤供給装置
10 制御部
2 処理容器
24 ステージ
25 ヒータ
4 ガス供給部
44 ガス吐出口
6 搬送機構
62 移動プレート
66 ヒータ
71 レジストパターン

Claims (12)

  1. 露光、現像処理されてパターンマスクが形成された基板に対して、前記パターンマスクの荒れを改善するために処理を行う装置において、
    処理容器内に設けられ、前記基板を載置するステージと、
    前記ステージに載置された基板の中央部の温度が当該基板の周縁部の温度よりも高くなるように温度勾配を形成して、当該基板を加熱する基板加熱機構と、
    前記ステージに載置された基板に対向して設けられ、前記パターンマスクを膨潤させる溶剤ガスを前記基板の表面に供給する溶剤ガス供給部と、
    前記溶剤ガスを基板の周囲から排気する排気部と、
    前記溶剤ガス供給部により前記溶剤ガスを前記基板に供給しながら前記排気部により排気する第1のステップと、前記基板加熱機構により当該基板に前記温度勾配を形成する第2のステップと、を並行して行うように制御信号を出力する制御部と、
    を備えることを特徴とする基板処理装置。
  2. 露光、現像処理されてパターンマスクが形成された基板に対して、前記パターンマスクの荒れを改善するために処理を行う方法において、
    前記基板を処理容器内のステージに載置して基板を加熱する工程と、
    次いで前記パターンマスクを膨潤させるために、溶剤ガスを前記基板の表面に供給しながら基板の周囲から排気する工程と、
    この工程を行いながら、前記ステージを介して基板の中央部の温度が基板の周縁部の温度よりも高くなるように基板に温度勾配を形成する工程と、を含むことを特徴とする基板処理方法。
  3. 露光、現像処理されてパターンマスクが形成された基板に対して、前記パターンマスクの荒れを改善するために処理を行う装置において、
    処理容器内に設けられ、前記基板を載置するステージと、
    前記ステージに載置された基板の中央部の温度が当該基板の周縁部の温度よりも高くなるように温度勾配を形成して、当該基板を加熱する基板加熱機構と、
    前記パターンマスクを膨潤させるための溶剤ガスを前記基板の表面の中央部に供給する溶剤ガス供給部と、
    前記溶剤ガスを基板の周囲から排気する排気部と、
    前記溶剤ガス供給部により前記溶剤ガスを前記基板に供給しながら前記排気部により排気する第1のステップと、前記基板加熱機構により当該基板に前記温度勾配を形成する第2のステップと、を並行して行うように制御信号を出力する制御部と、
    を備えることを特徴とする基板処理装置。
  4. 基板に前記温度勾配を形成するために、前記ステージの温度を調整する調整機構が設けられるか、あるいは前記ステージにおいてその表面の中央部周縁部よりも高く構成されることを特徴とする請求項3記載の基板処理装置。
  5. 露光、現像処理されてパターンマスクが形成された基板に対して、前記パターンマスクの荒れを改善するために処理を行う装置において、
    処理容器内に設けられ、前記基板を載置するステージと、
    前記パターンマスクを膨潤させるための溶剤ガスを加熱するガス加熱機構と、
    前記ガス加熱機構により前記ステージに載置された基板の温度よりも高い温度に加熱された前記溶剤ガスを、当該基板の表面の中央部に供給する溶剤ガス供給部と、
    前記溶剤ガスを基板の周囲から排気する排気部と、
    前記溶剤ガスを乾燥させるための乾燥用のガスを基板の中央部に供給する乾燥ガス供給部と、
    前記溶剤ガス供給部により前記溶剤ガスを前記基板の中央部に供給しながら前記排気部により基板の周囲から排気するステップと、次いで前記乾燥ガス供給部により乾燥ガスを前記基板の中央部に供給しながら前記排気部により基板の周囲から排気するステップと、を複数回繰り返し行うステップを行うように制御信号を出力する制御部と、
    を備えることを特徴とする基板処理装置。
  6. 前記溶剤ガスを乾燥させるための乾燥用のガスを基板の中央部に供給する乾燥ガス供給部を備え、
    前記第1のステップは、前記溶剤ガス供給部により前記溶剤ガスを前記基板に供給しながら前記排気部により排気するステップである代わりに、
    前記溶剤ガス供給部により前記溶剤ガスを前記基板の中央部に供給しながら前記排気部により基板の周囲から排気するステップと、次いで前記乾燥ガス供給部により乾燥ガスを前記基板の中央部に供給しながら前記排気部により基板の周囲から排気するステップと、を複数回繰り返し行うステップであることを特徴とする請求項3または4記載の基板処理装置。
  7. 露光、現像処理されてパターンマスクが形成された基板に対して、前記パターンマスクの荒れを改善するために処理を行う装置において、
    処理容器内に設けられ、前記基板を載置するステージと、
    前記ステージに載置された前記基板の中央部の温度が当該基板の周縁部の温度よりも高くなるように基板に温度勾配を形成して、当該基板を加熱する基板加熱機構と、
    前記パターンマスクを膨潤させるための溶剤ガスを前記基板の表面の周縁部に供給する溶剤ガス供給部と、
    前記溶剤ガスを基板の中央部の上方から排気する排気部と、
    前記溶剤ガス供給部により前記溶剤ガスを前記基板に供給しながら前記排気部により排気する第1のステップと、前記基板加熱機構により当該基板に前記温度勾配を形成する第2のステップと、を並行して行うように制御信号を出力する制御部と、
    を備えることを特徴とする基板処理装置。
  8. 基板に前記温度勾配を形成するために、前記ステージの温度を調整する調整機構が設けられるか、あるいは前記ステージにおいてその表面の中央部周縁部よりも高く構成されることを特徴とする請求項7記載の基板処理装置。
  9. 露光、現像処理されてパターンマスクが形成された基板に対して、前記パターンマスクの荒れを改善するために処理を行う装置において、
    処理容器内に設けられ、前記基板を載置するステージと、
    前記ステージに載置された前記基板の一端部の温度が当該基板の他端部の温度よりも高くなるように基板に温度勾配を形成して、当該基板を加熱する基板加熱機構と、
    前記パターンマスクを膨潤させるための溶剤ガスを前記基板の表面の一端側に供給する溶剤ガス供給部と、
    前記溶剤ガスを基板の他端側から排気する排気部と、
    前記溶剤ガス供給部により前記溶剤ガスを前記基板に供給しながら前記排気部により排気する第1のステップと、前記基板加熱機構により当該基板に前記温度勾配を形成する第2のステップと、を並行して行うように制御信号を出力する制御部と、
    を備えることを特徴とする基板処理装置。
  10. 露光、現像処理されてパターンマスクが形成された基板に対して、前記パターンマスクの荒れを改善するために処理を行う装置において、
    処理容器内に設けられ、前記基板を載置するステージと、
    前記パターンマスクを膨潤させるための溶剤ガスを加熱するガス加熱機構と、
    前記ガス加熱機構により前記ステージに載置された基板の温度よりも高い温度に加熱された前記溶剤ガスを、当該基板の表面の一端側に供給する溶剤ガス供給部と、
    前記溶剤ガスを基板の他端側から排気する排気部と、
    前記溶剤ガスを乾燥させるための乾燥用のガスを基板の一端側に供給する乾燥ガス供給部と、
    前記溶剤ガス供給部により前記溶剤ガスを基板の一端側に供給しながら前記排気部により基板の他端側から排気するステップと、次いで前記乾燥ガス供給部により当該基板の一端側に乾燥用のガスを供給しながら前記排気部により基板の他端側から排気するステップと、を複数回繰り返すステップを行うように制御信号を出力する制御部と、
    を備えることを特徴とする基板処理装置。
  11. 前記溶剤ガスを乾燥させるための乾燥用のガスを基板の周囲に供給する乾燥ガス供給部が設けられ、
    前記第1のステップは、前記溶剤ガス供給部により前記溶剤ガスを前記基板に供給しながら前記排気部により排気するステップである代わりに、
    前記溶剤ガス供給部により前記溶剤ガスを前記基板の周囲に供給しながら前記排気部により基板の中央部から排気するステップと、次いで前記乾燥ガス供給部により乾燥ガスを前記基板の周囲に供給しながら前記排気部により基板の中央部から排気するステップと、を複数回繰り返し行うステップであることを特徴とする請求項7または8に記載の基板処理装置。
  12. 前記溶剤ガスを乾燥させるための乾燥用のガスを基板の一端側に供給する乾燥ガス供給部が設けられ、
    前記第1のステップは、前記溶剤ガス供給部により前記溶剤ガスを前記基板に供給しながら前記排気部により排気するステップである代わりに、
    前記溶剤ガス供給部により前記溶剤ガスを基板の一端側に供給しながら前記排気部により基板の他端側から排気するステップと、次いで前記乾燥ガス供給部により当該基板の一端側に乾燥用のガスを供給しながら前記排気部により基板の他端側から排気するステップと、を複数回繰り返すステップであることを特徴とする請求項記載の基板処理装置。
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