JP5655269B2 - 無酸素銅巻線及び無酸素銅巻線の製造方法 - Google Patents

無酸素銅巻線及び無酸素銅巻線の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、外周面にエナメル等の絶縁膜が形成されて使用される無酸素銅巻線及びこの無酸素銅巻線の製造方法に関するものである。
従来、前述の巻線を製造する際の素材として用いられる巻線用銅荒引線としては、タフピッチ銅からなるものが広く使用されている。ところが、タフピッチ銅は0.02〜0.05質量%の酸素を含有していることから、巻線を溶接して使用するような場合には、水素脆化が発生してしまうため使用することができなかった。よって、溶接を行う用途においては、酸素量が、質量百万分率で20ppm以下とされた無酸素銅からなる巻線用銅荒引線(巻線用無酸素銅荒引線)が用いられている。
一方、前述の巻線においては、外周面にエナメル等の絶縁膜が塗布されて使用される。このため、巻線の表面に微小な傷等の欠陥が存在すると、エナメル膜と巻線との間に空隙が生じ、この空隙内のガス成分が加熱時に膨張することによって、エナメル膜が膨れてしまう「フクレ」と呼ばれる欠陥が生じることになる。すなわち、巻線においては、一般の銅線よりも厳しい表面品質が要求されるのである。
そこで、巻線用無酸素銅荒引線としては、比較的表面品質が良好であるDIPフォーミング材や押出材が用いられている。
また、無酸素銅荒引線を効率的に製造する方法として、特許文献1に記載されているように、ベルトキャスター方式の連続鋳造圧延機を用いた方法が提案されている。
特許第3651386号公報
しかしながら、DIPフォーミング材においては、溶銅中に芯線を通過させて荒引銅線を形成することから、芯線とディップによって形成された部分との境界部に隙間が生じることがあり、この隙間を起因とした「フクレ」が生じるおそれがある。また、DIPフォーミング材や押出材においては、通常、非酸化雰囲気で圧延加工が行われるため、表面に酸化膜が形成されず、その後の引き抜き加工時において用いられるダイスの寿命が短くなってしまうといった問題があった。さらに、これらDIPフォーミング材や押出材においては、製造コストが大幅に上昇してしまうことになる。
一方、ベルトキャスター方式の連続鋳造圧延機を用いて製造された無酸素銅荒引線においては、圧延時に表面欠陥が生じやすいため、巻線用の荒引銅線としては使用できなかった。
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、引き抜き加工等の冷間加工後の表面品質が良好であって、フクレ欠陥等の発生を抑制することが可能な無酸素銅巻線及びこの無酸素銅巻線の製造方法を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するために、本発明の無酸素銅巻線は、量百万分率で、Zr及びMgのうち少なくとも1種を3〜20ppmを含み、かつ、Oが10ppm以下とされ、残部がCu及び不可避不純物からなり、断面積減少率20%以上の引き抜き加工を加えた後に熱処理によって完全軟化させた銅線の引き抜き方向に直交する断面において、<111>方位が引き抜き方向に対して±10°以内を向いている結晶が、全結晶の30%以下とされており、ベルトキャスター方式の連続鋳造機を用いて長尺の棒状鋳塊を連続的に製出し、この棒状鋳塊を連続的に圧延することで製造された無酸素銅荒引線を素材とすることを特徴としている。
この構成の巻線用無酸素銅荒引線においては、Zr及びMgのうち少なくとも1種を3〜20ppmを含んでいる。これらZr及びMgは、銅中に不可避不純物のひとつとして存在する元素であるS(硫黄)と化合物を形成し、S(硫黄)が銅の母相中に固溶することを防止する作用を有する元素である。また、S(硫黄)が銅の母相中に固溶された場合には、銅の再結晶が阻害されることが知られている。したがって、Zr及びMgを添加することでS(硫黄)の銅中への固溶を防止し、銅の再結晶を促進することができるのである。よって、引き抜き加工等の冷間加工を行う際に、適宜、熱処理を施すことによって加工組織を再結晶させることが可能となるので、引き抜き加工等の冷間加工後の銅線において、割れ等の欠陥の発生を抑制することができる。
なお、Zr及びMgが3ppm未満では、前述の効果を得ることができず、20ppmを超えると巻線用無酸素銅荒引線の導電率が低下するため、Zr及びMgの含有量は3〜20ppmとすることが好ましい。より望ましくは、Zr及びMgの含有量は10〜15ppmが良い。
また、O(酸素)が10ppm以下とされているので、易酸化元素であるZr及びMgの酸化によるロスを防止することができる。さらに、一般的な無酸素銅にZr及びMgを添加することによって本発明の巻線用無酸素銅荒引線を製造することができる。なお、酸化ロスを確実に防止するためには、O(酸素)を5ppm以下とすることが望ましい。
ここで、前述の巻線用無酸素銅荒引線においては、断面積減少率20%以上の引き抜き加工を加えた後に熱処理によって完全軟化させた銅線の引き抜き方向に直交する断面において、<111>方位が引き抜き方向に対して±10°以内を向いている結晶が、全結晶の30%以下とされていることが好ましい。
荒引銅線に対して引き抜き加工を行った場合、結晶の<111>方位が引き抜き方向(銅線の延在方向)を向くように、結晶が回転することになる。このため、<111>方位が引き抜き方向を向く結晶の割合が多くなった後に、さらに引き抜き加工を施した場合には、結晶がこれ以上回転することができず、銅線の表面に割れ等が生じることになる。
そこで、断面積減少率20%以上の引き抜き加工を加えた後に熱処理によって完全軟化させた銅線の引き抜き方向に直交する断面において、<111>方位が引き抜き方向に対して±10°以内となる結晶が、全結晶の30%以下とすることにより、引き抜き加工の途中に、完全軟化させる熱処理を行うことで、その後の引き抜き加工においても結晶を回転させることができ、表面割れ等の欠陥の発生を抑制することが可能となる。すなわち、熱処理によって再結晶させ、<111>方位が引き抜き方向を向いた結晶を減少させているのである。
また、前述の巻線用無酸素銅荒引線は、ベルトキャスター方式の連続鋳造機を用いて製造されることが好ましい。
この場合、ベルトキャスター方式の連続鋳造機によって長尺の棒状鋳塊を連続的に製出し、この棒状鋳塊を連続的に圧延することで、無酸素銅荒引線を製出することができるので、製造コストの低い巻線用無酸素銅荒引線を提供することができる。また、連続圧延時に、巻線用無酸素銅荒引線の表面に厚さ0.005〜0.05μm程度の酸化膜が形成されることになり、その後の引き抜き加工において使用されるダイスの寿命延長を図ることができる。
本発明の無酸素銅巻線の製造方法は、原料を溶解して銅溶湯を生成する銅溶湯生成工程と、前記銅溶湯の酸素含有量を10ppm以下とする脱酸工程と、脱酸処理された前記銅溶湯にZr及びMgのうち少なくとも1種を添加して、Zr及びMgのうち少なくとも1種の含有量を質量百万分率で3〜20ppmとするZr及びMg添加工程と、Zr及びMgのうち少なくとも1種が添加された前記銅溶湯から鋳塊を得る鋳造工程と、前記鋳塊を加工して無酸素銅荒引線を得る加工工程と、前記無酸素銅荒引線に対して引き抜き加工を行う引き抜き加工工程を備えており、前記鋳造工程は、ベルトキャスター方式の連続鋳造機を用いて鋳塊を連続的に製出する連続鋳造工程であり、前記加工工程は、前記鋳塊を連続的に圧延する連続圧延工程であり、断面積減少率20%以上の引き抜き加工を加えた後に熱処理によって完全軟化させた銅線の引き抜き方向に直交する断面において、<111>方位が引き抜き方向に対して±10°以内を向いている結晶が、全結晶の30%以下とされていることを特徴としている。
この構成の巻線用無酸素銅荒引線の製造方法によれば、銅溶湯生成工程で得られた銅溶湯の酸素含有量を10ppm以下とする脱酸工程の後に、Zr及びMgの少なくとも1種を添加するZr及びMg添加工程を有しているので、易酸化元素であるZr及びMgを歩留まり良く添加することができ、Zr及びMgの含有量を質量百万分率で3〜20ppmに精度良く調整することができる。
ここで、前記鋳造工程を、ベルトキャスター方式の連続鋳造機を用いて鋳塊を連続的に製出する連続鋳造工程とし、前記加工工程を、前記鋳塊を連続的に圧延する連続圧延工程とすることが好ましい。
この場合、ベルトキャスター方式の連続鋳造機によって長尺の棒状鋳塊を連続的に製出し、この棒状鋳塊を連続的に圧延することで、無酸素銅荒引線を製出することができるので、本発明の巻線用無酸素銅荒引線を低コストで製造することができる。また、連続圧延時に、巻線用無酸素銅荒引線の表面に厚さ0.005〜0.05μm程度の酸化膜が形成されることになり、その後の引き抜き加工において使用されるダイスの寿命延長を図ることができる。
本発明によれば、引き抜き加工等の冷間加工後の表面品質が良好であって、フクレ欠陥等の発生を抑制することが可能な無酸素銅巻線及びこの無酸素銅巻線の製造方法を提供することができる。
本発明の実施形態である巻線用無酸素銅荒引線を製出する製造装置の説明図である。 本発明の実施形態である巻線用無酸素銅荒引線の製造方法のフロー図である。 実施例2の結果を示すグラフである。
以下に、本発明の実施形態に係る巻線用無酸素銅荒引線及び巻線用無酸素銅荒引線の製造方法について説明する。
本実施形態に係る巻線用無酸素銅荒引線50は、外周面にエナメル膜(絶縁膜)が形成される巻線を製造する際に用いられる巻線用銅荒引線であって、質量百万分率で、Zr及びMgのうち少なくとも1種を3〜20ppmを含み、かつ、Oが10ppm以下とされ、残部がCu及び不可避不純物からなる無酸素銅で構成されている。
ここで、この巻線用無酸素銅荒引線50は、断面積減少率20%以上の引き抜き加工を加えた後に熱処理によって完全軟化させた銅線の引き抜き方向に直交する断面において、<111>方位が引き抜き方向に対して±10°以内を向いている結晶が、全結晶の30%以下とされている。なお、結晶の方位については、電子後方散乱回折像(Electron Back Scatter Diffraction Patterns)法(EBSP法)によって測定することができる。このEBSP法は、SEM(走査電子顕微鏡)にEBSP検出器を接続し、収束電子ビームを試料表面に照射したときに発生する個々の結晶の回折像(EBSP)の方位を解析、方位データと測定点の位置情報から材料の結晶方位を測定する方法である。その測定結果は結晶方位マップ(IPF(Inverse Pole Figure)Map)として示される。
次に、本実施形態である巻線用無酸素銅荒引線50を製造する巻線用無酸素銅荒引線50の製造装置について、図1を参照にして説明する。
図1に示す巻線用無酸素銅荒引線50の製造装置は、溶解炉Aと、保持炉Bと、鋳造樋Cと、ベルト・ホイール式連続鋳造機Dと、連続圧延装置Eと、コイラーFとを有している。
溶解炉Aとして、本実施形態では、円筒形の炉本体を有するシャフト炉を用いている。炉本体の下部には円周方向に複数のバーナ(図示略)が上下方向に多段状に配備されている。そして、炉本体の上部から原料である電気銅が装入され、前記バーナの燃焼によって電気銅が溶解され、銅溶湯が連続的につくられる。
保持炉Bは、溶解炉Aでつくられた銅溶湯を、所定の温度で保持したままで一旦貯留し、一定量の銅溶湯を鋳造樋Cに送るためのものである。
鋳造樋Cは、保持炉Bから送られた銅溶湯を、ベルト・ホイール式連続鋳造機Dの上方に配置されたタンディシュ11まで移送するものである。この鋳造樋Cは、例えばAr 等の不活性ガス又は還元性ガスでシールされている。なお、この鋳造樋Cには、不活性ガスによって銅溶湯を攪拌する攪拌手段(図示なし)が設けられている。
タンディシュ11の銅溶湯の流れ方向終端側には、注湯ノズル12が配置されており、この注湯ノズル12を介してタンディシュ11内の銅溶湯がベルト・ホイール式連続鋳造機Dへと供給される。
ベルト・ホイール式連続鋳造機Dは、外周面に溝が形成された鋳造輪13と、この鋳造輪13の外周面の一部に接触するように周回移動される無端ベルト14とを有しており、前記溝と無端ベルト14との間に形成された空間に、注湯ノズル12を介して供給された銅溶湯を注入して冷却し、棒状鋳塊21を連続的に鋳造するものである。
そして、このベルト・ホイール式連続鋳造機Dは、連続圧延装置Eに連結されている。この連続圧延装置Eは、ベルト・ホイール式連続鋳造機Dから製出された棒状鋳塊21を連続的に圧延して、所定の外径の巻線用無酸素銅荒引線50を製出するものである。連続圧延装置Eから製出された巻線用無酸素銅荒引線50は、洗浄冷却装置15および探傷器16を介してコイラーFに巻き取られる。
洗浄冷却装置15は、連続圧延装置Eから製出された巻線用無酸素銅荒引線50をアルコール等の洗浄剤で表面を洗浄するとともに冷却するものである。
また、探傷器16は、洗浄冷却装置15から送られた巻線用無酸素銅荒引線50の傷を探知するものである。
このような構成とされた巻線用無酸素銅荒引線50の製造装置を用いた本実施形態である巻線用無酸素銅荒引線50の製造方法について、図1及び図2を参照して説明する。
まず、溶解炉Aに、4N(純度99.99%)の電気銅を投入して溶解し、銅溶湯を得る(銅溶湯生成工程S1)。この銅溶湯生成工程S1では、シャフト炉の複数のバーナの空燃比を調整して溶解炉Aの内部を還元雰囲気とすることにより、銅溶湯の酸素含有量を20ppm以下とする。
溶解炉Aによって得られた銅溶湯は、保持炉B及び鋳造樋Cを介してタンディシュまで移送される。
ここで、不活性ガス又は還元性ガスでシールされた鋳造樋Cを通過する銅溶湯は、前述の攪拌手段によって攪拌されることによって、銅溶湯と不活性ガス又は還元性ガスとの反応が促進され、酸素含有量は10ppm以下にまで、より好ましくは5ppm以下にまで低下することになる(脱酸工程S2)。
このようにして酸素含有量が10ppm以下に低減された銅溶湯にZr及びMgが連続的に添加され、Zr及びMgのうち少なくとも1種の含有量が3〜20ppmに調整される(Zr及びMg添加工程S3)。なお、Zr及びMgのうち少なくとも1種の含有量は10〜15ppmに調整することが好ましい。
このように成分調整された銅溶湯は、ベルト・ホイール式連続鋳造機Dに注湯ノズル12を介して供給され、棒状鋳塊21が連続的に製出される(鋳造工程S4)。ここで、鋳造工程S4では、鋳造輪13に形成された前記溝と無端ベルト14との間に形成された空間が台形状をなしていることから、断面略台形状をなす棒状鋳塊21が製出されることになる。
この棒状鋳塊21は、連続圧延装置Eに供給されてロール圧延加工が施され、所定の外径(本実施形態では直径8mm)の巻線用無酸素銅荒引線50が製出される(加工工程S5)。この巻線用無酸素銅荒引線50が洗浄冷却装置15によって洗浄・冷却され(洗浄工程S6)、探傷器16によって外傷の有無が検査される(検査工程S7)。
以上のようにして、本実施形態である巻線用無酸素銅荒引線50が製出されることになる。
本実施形態である巻線用無酸素銅荒引線50は、さらに引き抜き加工が施されて直径0.5〜3.2mmの細線とされ、さらに平角加工によって2.0mm×2.0mmの平角線(巻線)とされる。そして、平角線(巻線)の外周面にエナメル塗装が施され、エナメル膜(絶縁膜)が形成される。エナメル膜(絶縁膜)が形成された平角線(巻線)は、芯部材に巻き付けられてコイル等を形成することになる。
このような構成とされた本実施形態である巻線用無酸素銅荒引線50及び巻線用無酸素銅荒引線50の製造方法によれば、質量百万分率で、Zr及びMgのうち少なくとも1種を3〜20ppmを含み、より好ましくは、10〜15ppmを含んでいるので、Zr及びMgによって、S(硫黄)が銅の母相中に固溶することを防止することができ、熱処理時における銅の再結晶を促進することが可能となる。よって、その後の引き抜き加工を行う際に、適宜、熱処理を施すことによって加工組織を再結晶させることが可能となり、引き抜き加工後の巻線において、割れ等の欠陥の発生を抑制することができる。
さらに、O(酸素)が10ppm以下とされているので、易酸化元素であるZr及びMgの酸化によるロスを防止することができる。また、一般的な無酸素銅にZr及びMgを添加することによって本発明の巻線用無酸素銅荒引線50を製造することができる。
また、本実施形態では、断面積減少率20%以上の引き抜き加工を加えた後に熱処理によって完全軟化させた銅線の引き抜き方向に直交する断面において、<111>方位が引き抜き方向に対して±10°以内を向いている結晶が、全結晶の30%以下とされているので、引き抜き加工の途中に、完全軟化させる熱処理を行うことで、その後の引き抜き加工においても結晶を回転させることができ、表面欠陥の発生を抑制することが可能となる。よって、熱処理後の引き抜き加工において表面割れ等が発生することがなく、表面品質が良好な巻線を提供することができる。
さらに、本実施形態である巻線用無酸素銅荒引線50の製造方法においては、銅溶湯生成工程S1で得られた銅溶湯の酸素含有量を10ppm以下とする脱酸工程S2の後に、Zr及びMgの少なくとも1種を添加するZr及びMg添加工程S3を有しているので、易酸化元素であるZr及びMgを歩留まり良く添加することができ、Zr及びMgの含有量を質量百万分率で3〜20ppmに精度良く調整することができる。
また、ベルト・ホイール式の連続鋳造機を用いて棒状鋳塊を連続的に製出する鋳造工程S4と、この棒状鋳塊を連続的に圧延する加工工程S5とを備えているので、本実施形態である巻線用無酸素銅荒引線50を低コストで製出することができる。さらに、加工工程S5において、大気雰囲気で連続圧延を行うことにより、巻線用無酸素銅荒引線50の表面に厚さ0.005〜0.05μm程度の酸化膜が形成され、その後の引き抜き加工において使用されるダイスの寿命延長を図ることができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施形態では、鋳造工程S4をベルト・ホイール式連続鋳造機Dによる連続鋳造工程とし、加工工程S5を連続圧延装置Eによる連続圧延工程としたものとして説明したが、これに限定されることはなく、他の製造方法であってもよい。
また、溶解炉Aをシャフト炉としたもので説明したが、これに限定されることはなく、低周波誘導炉等の溶解炉であってもよい。
さらに、連続圧延工程において巻線用無酸素銅荒引線の表面に厚さ0.005〜0.05μm程度の酸化膜が形成されるものとして説明したが、これに限定されることはなく、酸化膜が必ずしも形成されていなくてもよい。
以下に、前述した本実施形態である巻線用無酸素銅荒引線に対して引き抜き加工を実施した結果について説明する。
直径8mmの無酸素銅荒引線を直径2.6mmにまで伸線加工を行い、500℃×1時間の熱処理によって完全軟化させた。熱処理後の試料について、伸線方向に直交する断面における結晶方位を電子後方散乱回折像(Electron Back Scatter Diffraction Patterns)法(EBSP法)によって測定した。そして、<111>方位が引き抜き方向に対して±10°以内とされた結晶の割合を算出した。なお、EBSP法には、オックスフォード・インストゥルメンツ株式会社製のINCACrystal(EBSP解析装置)を用いて行った。
また、熱処理後の直径2.6mmの銅線に対して、平角ダイスを用いて引き抜き加工を行い、2mm×2mmの平角線(巻線)を製出した。このとき、製出された巻線の外観検査を、目視とストッキングを用いた手触り試験によって行い、表面傷の個数を検出した。
従来例として、Zr及びMgを含まない無酸素銅荒引線を準備した。
比較例1、2として、Zr及びMgが、本発明の上限値から外れた無酸素銅荒引線を準備した。
本発明例1〜6として、Zr及びMgが、本発明の範囲内とされた無酸素銅荒引線を準備した。
評価結果を表1に示す。
Figure 0005655269
本発明例1〜6においては、EBSP法による結晶方位の解析の結果、<111>方位が引き抜き方向に対して±10°以内とされた結晶の割合が30%以下とされていることが確認される。
そして、この本発明例1〜6においては、表面傷の発生個数が100kg当たり0〜4個と少なく、表面傷の発生が抑制されている。
一方、Zr及びMgを含まない従来例においては、<111>方位が引き抜き方向に対して±10°以内とされた結晶の割合が45%と多くなっており、表面傷の発生個数が100kg当たり30個と多くなっている。
また、Zr及びMgが本発明の上限値から外れた比較例1、2においては、<111>方位が引き抜き方向に対して±10°以内とされた結晶の割合が30%を超えており、表面傷の発生個数が100kg当たり35個、28個と多くなっている。
以上のことから、Mg及びZrを適量添加することによって、断面積減少率20%以上の引き抜き加工を加えた後に熱処理によって完全軟化させた銅線の引き抜き方向に直交する断面において、<111>方位が引き抜き方向に対して±10°以内を向いている結晶が、全結晶の30%以下となることが確認された。
また、本発明の巻線用無酸素銅荒引線によれば、巻線に加工した際の表面傷の発生個数を大幅に低減することができ、いわゆる「フクレ」欠陥の発生を抑制することができることが確認された。
つぎに、前述の従来例、本発明例2、本発明例4の試料について、断面加工率90%の引抜加工後の軟化特性を評価した。
その結果を図3に示す。
Zr及びMgを含まない従来例においては、軟化温度が220−230℃程度とされているのに対して、Zr及びMgを含有する本発明例2、本発明例4においては、軟化温度が190℃程度とされている。
すなわち、Zr及びMgを含有することで軟化温度が低下しており、低い温度条件で再結晶させ得ることが確認された。
21 棒状鋳塊
50 巻線用無酸素銅荒引線
D ベルト・ホイール式連続鋳造機
E 連続圧延装置
S1 銅溶湯生成工程
S2 脱酸工程
S3 Zr及びMg添加工程
S4 鋳造工程
S5 加工工程

Claims (2)

  1. 量百万分率で、Zr及びMgのうち少なくとも1種を3〜20ppmを含み、かつ、Oが10ppm以下とされ、残部がCu及び不可避不純物からなり、
    断面積減少率20%以上の引き抜き加工を加えた後に熱処理によって完全軟化させた銅線の引き抜き方向に直交する断面において、<111>方位が引き抜き方向に対して±10°以内を向いている結晶が、全結晶の30%以下とされており、
    ベルトキャスター方式の連続鋳造機を用いて長尺の棒状鋳塊を連続的に製出し、この棒状鋳塊を連続的に圧延することで製造された無酸素銅荒引線を素材とすることを特徴とする無酸素銅巻線。
  2. 原料を溶解して銅溶湯を生成する銅溶湯生成工程と、前記銅溶湯の酸素含有量を10ppm以下とする脱酸工程と、脱酸処理された前記銅溶湯にZr及びMgのうち少なくとも1種を添加して、Zr及びMgのうち少なくとも1種の含有量を質量百万分率で3〜20ppmとするZr及びMg添加工程と、Zr及びMgのうち少なくとも1種が添加された前記銅溶湯から鋳塊を得る鋳造工程と、前記鋳塊を加工して無酸素銅荒引線を得る加工工程と、前記無酸素銅荒引線に対して引き抜き加工を行う引き抜き加工工程を備えており、
    前記鋳造工程は、ベルトキャスター方式の連続鋳造機を用いて鋳塊を連続的に製出する連続鋳造工程であり、前記加工工程は、前記鋳塊を連続的に圧延する連続圧延工程であり、
    断面積減少率20%以上の引き抜き加工を加えた後に熱処理によって完全軟化させた銅線の引き抜き方向に直交する断面において、<111>方位が引き抜き方向に対して±10°以内を向いている結晶が、全結晶の30%以下とされていることを特徴とする無酸素銅巻線の製造方法。
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