JP5653554B1 - 二成分混和型イオン徐放性義歯床用関連材料組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】歯科用義歯床用関連材料組成物にイオン徐放性ガラスを含有することによって硬化後における高い表面硬さを発現するために形態修正時における切削感が良好であり、またフッ化物イオンを含む各種イオンの徐放による残存歯質の強化と二次的な齲蝕の発生抑制、細菌・真菌の付着及び増殖抑制等の予防的機能を兼備した歯科用義歯床用関連材料組成物の提供。【解決手段】粉材と液材から成る二成分混和型イオン徐放性義歯床用関連材料組成物であって、(a)非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマー、(b)イオン徐放性ガラス、を含む粉材成分と(c)単官能性(メタ)アクリレート系重合性単量体、を含む液材成分とから構成され少なくともいずれかの一方に(d)重合開始材を含んでいる義歯床用関連材料組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、二成分から構成される歯科用義歯床用関連材料組成物、例えば義歯床用レジン、義歯床用裏装材、即時重合レジン、床矯正用レジン等に関するものである。より具体的には、本発明は歯科用義歯床用関連材料組成物にイオン徐放性ガラスを含有することによって硬化後における高い表面硬さを発現するために形態修正時における切削感が良好であり、またフッ化物イオンを含む各種イオンの徐放による残存歯質の強化と二次的な齲蝕の発生抑制、細菌・真菌の付着及び増殖抑制等の予防的機能を兼備した歯科用義歯床用関連材料組成物に関する。
歯牙を喪失した患者に装着する補綴装置である全部床義歯及び部分床義歯は、人工歯と呼ばれる歯牙に相当する部分と、義歯床と呼ばれる歯肉に相当する部分に分けられる。そのうち義歯床は義歯床の大半を占める義歯床用レジンと、顎堤との適合が悪くなった義歯床の粘膜面を裏打ちする裏装材、または義歯床を補修する即時重合レジンから構成される。さらには、人工歯と組み合わせることなく使用される義歯床用関連材料として、矯正した歯牙の位置が後戻りしないために口蓋部に装着する保定装置(リテーナー)を作製する床矯正用レジンと呼ばれるものも知られている。
これら義歯床用関連材料には様々な材料がそれぞれの使用方法で用いられており、その詳細は以下の通りである。
義歯床用レジンとしてはアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂等があり、症例等によって歯科医師が選択して使用している。その中でも人工歯と化学的な接着性を有している観点からアクリル樹脂が最も多く使用されている。このアクリル樹脂から成る義歯床用レジンは、非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマーを主成分とする粉材と、単官能性(メタ)アクリレート系重合性単量体を主成分とする液材から構成される。この粉材と液材を混合・膨潤させて餅状レジンと呼ばれる状態に変化させた後、人工歯が配列された鋳型に填入し、加熱・加圧することにより重合・硬化させて義歯が作製される。
アクリル樹脂から成る義歯床用裏装材は、義歯床用レジンと同様に、非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマーを主成分とする粉材と、単官能性(メタ)アクリレート系重合性単量体を主成分とする液材から構成される。この粉材と液材を混合し、流動性があるうちに義歯床の粘膜面に流し込み、そのまま義歯を口腔内に装着させ一定時間保持した後、義歯を口腔外に取り出し、余剰分のトリミング後に硬化させて義歯床を裏打ちする方法が一般に行われている。なお、裏装材の重合・硬化は粉材と液材を混合後、室温で進行するが、50〜60℃の硬化促進材水溶液と呼ばれる化学重合触媒を溶解させた温水に浸せきさせることにより最終硬化させる方法も行われている。
アクリル樹脂から成る即時重合レジンは、義歯床用レジンと同様に、非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマーを主成分とする粉材と、単官能性(メタ)アクリレート系重合性単量体を主成分とする液材から構成される。義歯床の補修は、この即時重合レジンを用いて、筆積法と呼ばれる手技によって一般に行われる。具体的には、筆を用いて義歯床の補修部位に液材を塗布し、再び液材を含ませた筆先で粉材を適量採取し、筆先にできた混合物を補修部位に置くことを繰り返す方法である。なお、即時重合レジンにおいては、粉材と液材を混合することにより室温で重合・硬化が進行する。
アクリル樹脂から成る床矯正用レジンは、義歯床用レジンと同様に、(メタ)アクリレート系ポリマーを主成分とする粉材と、単官能性(メタ)アクリレート系重合性単量体を主成分とする液材から構成される。保定装置(リテーナー)作製時においては、口蓋部石こう模型上に所定量の粉材を振りかけた後、上から液材を滴下する、ふりかけ法と呼ばれる方法がよく用いられている。なお、床矯正用レジンの重合・硬化は、粉材に液材を振りかけることにより室温で進行するが、50〜60℃の温水中で加熱・加圧させることにより最終硬化させる方法が一般に行われている。
これら従来の義歯床用関連材料は、非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマーが主成分であるために、硬化後における材料の硬さが低く、形態修正時における切削性に課題があることが知られている。例えば、義歯作製後に形態修正をする際、切削性が悪いと研削材の回転部に義歯床用関連材料の一部が絡みつき作業性が悪いばかりでなく、長時間研削・研磨した摩擦熱により義歯が変形してしまうケースも認められ、口腔粘膜に対する適合性等、義歯の機能低下が懸念される。また、誤って義歯を落としてしまった場合、表面硬さが低いと容易に傷がついてしまい、そこから義歯が破損する危険性があるばかりでなく、傷による審美性の低下も懸念される。義歯表面に多くの傷が存在する場合は、プラーク等の汚れが付着しやすくなり、かつ細菌や真菌等が増殖することから、衛生面においても大きな課題を有していた。
さらに部分床義歯の場合、鈎歯と呼ばれる残存歯にクラスプを掛けて義歯を固定するが、その鈎歯が清掃しにくく、また義歯の存在により不潔部位となるために、う蝕が発症しやすいことも課題であった。
特許文献1には、分子内にウレタン結合を有するジ(メタ)アクリレート、分子内にオキシエチレン単位を有するジ(メタ)アクリレート、揮発性化合物、α−ケトカルボニル化合物から構成され、トリ−n−ブチルホウ素化合物の部分酸化物を重合開始材とした歯科用硬化性組成物の表面を被覆することを目的とした、優れた表面硬さを有するコーティング材組成物が開示されている。しかし、義歯表面をコーティングすることによって、容易に傷が付くことに関する課題は改善されるものの、切削作業性及び義歯の変形は改善されず、またコーティングという追加作業工程を必要とする問題が発生する。
一方、グラスアイオノマーセメントに代表される、フッ素徐放性材料は微量ながらフッ素イオンを持続的に放出するという特徴があり、二次齲蝕の抑制または歯質強化等の予防的な効果を有していることが知られている。
特許文献2には、フッ素含有環式ホスファゼン化合物、または該化合物を繰り返し単位とするポリマー及びコポリマーを配合することによりフッ素徐放性を有する、部分床義歯または裏装材に利用可能な歯科用レジン組成物が開示されている。しかし、この特許においては、歯科用組成物に有機成分であるホスファゼン化合物を配合することにより、フッ素徐放性を付与させる特徴があるものの、切削性及び表面硬さについては従来の義歯床用関連材料と同等であり、容易に傷が付く課題は解消されない。よって、審美性の低下及び傷へのプラーク付着等に由来する衛生的な問題が発生する。
特許文献3には無機粉末、重合性単量体、及び重合開始材に加えて、金属フッ化物またはフッ素含有ホスファゼンモノマー等を含み、歯科用接着材、歯科用充填材、及び歯科用コーティング材等に利用可能な歯科用フッ素イオン徐放性組成物が開示されている。
しかし、この特許においては、歯科用組成物に金属フッ化物またはフッ素含有ホスファゼンモノマー等を含有することにより、フッ素徐放性を付与させる特徴があるものの、切削性及び表面硬さを向上させる効果は不十分であり、容易に傷が付く課題は解消されない。よって、従来の義歯床用関連材料と同様に、審美性の低下及び傷へのプラーク付着等に由来する衛生的な問題が発生する。
特許文献4にはフッ化ピッチ等のフッ素化芳香族化合物を配合することによりフッ素徐放性を有する、歯科用組成物等が開示されている。
しかし、この特許においては、歯科用組成物に有機成分であるフッ素化芳香族化合物を配合することにより、フッ素徐放性を付与させる特徴があるものの、そのフッ素徐放性は乏しい。また切削性及び表面硬さについては従来の義歯床用関連材料と同等であり、容易に傷が付く課題は解消されない。よって、審美性の低下及び傷へのプラーク付着等に由来する衛生的な問題が発生する。
特許文献5にはフルオロアルキル基を両末端に有する鎖状化合物、重合性単量体、重合開始材を含むことにより、プラーク等の付着を抑制することを特徴とする歯面または歯科用補綴物へのコーティング用重合性組成物が開示されている。しかし、この特許においては、歯科用組成物にフルオロアルキル基を両末端に有する鎖状化合物を配合することにより、プラークの付着は抑制できるものの、切削性及び表面硬さについては従来の義歯床用関連材料と同等であり、容易に傷が付く課題は解消されない。よって、審美性の低下及び傷へのプラーク付着等に由来する衛生的な問題が発生する。
特許第4562819 特許第3452613 特許第5443688 特開平09-315922 特許第4673310
そのため、硬化後において高い材料硬さを有しつつ形態修正時の切削感が良好であり、また材料表面にプラーク等の汚れがつきにくく、さらに細菌や真菌等の繁殖を抑制し、かつフッ化物イオンを含む各種イオンの徐放性を有する予防的機能を兼備した歯科用義歯床用関連材料が望まれていた。そこで本発明の目的は、優れた切削性と高い表面硬さ、さらに部分床義歯において不潔部位になりやすい鈎歯の脱灰を抑制できるフッ化物イオンを含む各種イオンのイオン徐放性を有した歯科用義歯床用関連材料を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意研究した結果、非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマー、イオン徐放性ガラス、単官能性(メタ)アクリレート系重合性単量体、及び重合開始材を含む二成分混和型イオン徐放性義歯床用関連材料組成物を提供することにより、この課題を解決するに至った。本発明は上記知見に基づくものである。すなわち、本発明者らは本発明において以下の発明を提供する。
具体的には、
粉材と液材から成る二成分混和型イオン徐放性義歯床用関連材料組成物であって、
(a)非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマー、
(b)イオン徐放性ガラス、
を含む粉材成分と
(c)単官能性(メタ)アクリレート系重合性単量体、
を含む液材成分とから構成され、
少なくともいずれかの一方に(d)重合開始材を含んでいることを特徴とする二成分混和型イオン徐放性義歯床用関連材料組成物である。
また、前記二成分混和型イオン徐放性義歯床用関連材料組成物に液材成分として(e)多官能性(メタ)アクリレート系重合性単量体を含んでいることを特徴とする二成分混和型イオン徐放性義歯床用関連材料組成物である。
また、前記二成分混和型イオン徐放性義歯床用関連材料組成物に液材成分として(f)有機溶媒を含んでいることを特徴とする二成分混和型イオン徐放性義歯床用関連材料組成物である。
また、前記二成分混和型イオン徐放性義歯床用関連材料組成物に粉材成分として(g)充填材を含んでいることを特徴とする二成分混和型イオン徐放性義歯床用関連材料組成物である。
また、(b)イオン徐放性ガラスが少なくともフッ化物イオンを徐放することを特徴とする二成分混和型イオン徐放性義歯床用関連材料組成物である。
また、(b)イオン徐放性ガラスがフッ化物イオンを徐放し、更に2〜4価の金属イオン及びホウ酸イオンのうち一種類以上のイオンを徐放するイオン徐放性ガラスであることが好ましい。
また、(b)イオン徐放性ガラスがフッ化物イオンを徐放し、さらにストロンチウムイオン、アルミニウムイオン及びホウ酸イオンの内から一種類以上のイオンを徐放するイオン徐放性ガラスであることが好ましい。さらに、少なくともフッ化物イオン、ストロンチウムイオン及びホウ酸イオンを徐放することが好ましい。
さらに(a)非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマーの重量平均分子量が50万〜150万であることを特徴とする二成分混和型イオン徐放性義歯床用関連材料組成物である。
上記の本発明により以下の諸効果がもたらされる。本発明の二成分混和型イオン徐放性義歯床用関連材料組成物は、非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマー及びイオン徐放性ガラスを含む粉材と、単官能性(メタ)アクリレート系重合性単量体を含む液材から構成され、少なくとも一方に重合開始材を含有することによって、硬化後の形態修正時における切削感が良好であり、さらに高い表面硬さを発現させることができる。そして良好な切削性を有することから、作業性に優れるだけでなく、研削・研磨時間が短縮されることにより義歯の熱変形が少ないため、口腔粘膜に対する適合に優れた義歯を提供できる。また硬化物の表面硬さが向上することにより、表面に傷がつきにくく、細菌・真菌等の増殖が抑制されるため、審美的・衛生的にも優れた義歯を提供できる。さらにイオン徐放性ガラスを含有することにより、フッ化物イオンや他のイオン種が持続的に徐放するだけでなく、各種イオンを外部から取り込んで再度徐放することができるリチャージャブル義歯床用関連材料組成物であり、特に部分床義歯において不潔部位になりやすい鈎歯の脱灰抑制に加えて、周辺部位においても歯質強化、二次齲蝕抑制、脱灰抑制、再石灰化、細菌の活性抑制、歯周病の発症等にも影響を与えるなど口腔内環境の健全化に対して優れた効果を発現することも期待できる。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の二成分混和型イオン徐放性義歯床用関連材料組成物は、
(a)非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマー、
(b)イオン徐放性ガラス、
を含む粉材成分と、
(c)単官能性(メタ)アクリレート系重合性単量体、
を含む液材成分とから構成され、
少なくともいずれかの一方に(d)重合開始材を含んでいることを特徴とする。
本発明の二成分混和型イオン徐放性義歯床用関連材料組成物に用いることができる(a)非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマーは単官能性(メタ)アクリレート系重合性単量体により膨潤するものであれば特に限定されず、単官能性(メタ)アクリレート系重合性単量体を単独に重合させたポリマーや数種類の単官能性(メタ)アクリレート系重合性単量体を共重合させたポリマー、さらに単官能性(メタ)アクリレート系重合性単量体と他の単官能性重合性単量体と共に共重合させたポリマー等が何等制限なく用いることができる。それらの非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマーを具体的に例示するとポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリプロピル(メタ)アクリレート、ポリイソプロピル(メタ)アクリレート、ポリイソブチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート等の単独重合ポリマーやメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の中から二種類以上組み合わせた共重合コポリマー等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマーは単独だけでなく、複数を組み合わせて用いることができる。
これらの非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマーの中でもポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、メチルメタクリレートとエチルメタクリレートの共重合コポリマーを用いることが好ましい。
これら非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマーの重合方法については何等制限はなく、乳化重合、懸濁重合等のいずれの重合方法で製造されたものであっても何等問題なく用いることができる。これらの非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマーの形状は球状、破砕状、中空状のいずれの形状であっても何等制限なく用いることができるが、好ましくは球状である。非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマーの平均粒子径(50%)は1〜300μmの範囲であれば何等制限なく用いることができるが、好ましくは1〜200μmの範囲、さらに好ましくは5〜150μmの範囲である。また、非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマーの重量平均分子量は10万〜200万の範囲であれば何等制限なく用いることができるが、好ましくは30万〜170万の範囲であり、さらに好ましくは50万〜150万である。
また、有機充填材、無機充填材、有機・無機複合充填材、有機・無機化合物、有機・無機顔料等の表面を前記非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマーで被覆する等の表面改質処理や複合化処理等を行う等の二次的な加工を施したものについても、何等制限なく用いることができる。
本発明の二成分混和型イオン徐放性義歯床用関連材料組成物における非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマーの含有量は10〜80重量%の範囲であれば何等制限なく用いることができるが、好ましくは20〜80重量%、さらに好ましくは30〜70重量%である。
非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマーの含有量が10重量%未満の場合は単官能性(メタ)アクリレート系重合性単量体が過剰となりレジン成分の重合収縮が大きくなるため、義歯床の適合性等、寸法精度が低下する等の問題がある。一方、80重量%を越える場合は、非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマーが過剰となり、硬化が均一に起こらないため、材料強度が低下する等の問題がある。
本発明の二成分混和型イオン徐放性義歯床用関連材料組成物はイオン徐放性ガラスを含み、そのガラスからガラス組成に基因したイオンが持続的に徐放することを特徴とする。
本発明に用いるイオン徐放性ガラスはガラス骨格を形成する1種類以上のガラス骨格形成元素とガラス骨格を修飾する1種類以上のガラス修飾元素を含んだガラスであれば何等制限なく用いることができる。また、本発明においてはガラス組成によってガラス骨格形成元素又はガラス修飾元素になりうる元素、いわゆるガラス両性元素はガラス骨格形成元素の範疇として含めるものである。イオン徐放性ガラスに含まれるガラス骨格形成元素を具体的に例示するとシリカ、アルミニウム、ボロン、リン等が挙げられるが、単独だけでなく複数を組み合わせて用いることができる。また、ガラス修飾元素を具体的に例示するとフッ素、臭素、ヨウ素等のハロゲン類元素、ナトリウム、リチウム等のアルカリ金属類元素、カルシウム、ストロンチウム等のアルカリ土類金属類元素等が挙げられるが、単独だけでなく複数を組み合わせて用いることができる。これらの中でもガラス骨格形成元素としてシリカ、アルミニウム、ボロンを含み、且つガラス修飾元素としてフッ素、ナトリウム、ストロンチウムを含むことが好ましく、具体的にはストロンチウム、ナトリウムを含んだシリカガラス、フルオロアルミノシリケートガラス、フルオロボロシリケートガラス、フルオロアルミノボロシリケートガラス等が挙げられる。さらに、フッ化物イオン、ストロンチウムイオン、アルミニウムイオン、ホウ酸イオンを徐放する観点から、より好ましくはナトリウム、ストロンチウムを含んだフルオロアルミノボロシリケートガラスであり、そのガラス組成範囲はSiO2 15〜35質量%、Al2O3 15〜30質量%、B2O3 5〜20質量%、SrO 20〜45質量%、F 5〜15質量%、Na2O 0〜10質量%となる。このガラス組成は元素分析、ラマンスペクトルおよび蛍光X線分析等の機器分析を用いることにより確認することができるが、いずれかの分析方法による実測値がこれらの組成範囲に合致していれ何等問題はない。
これらのガラスの製造方法においては特に制限はなく、溶融法あるいはゾルーゲル法等の製造方法で製造することができる。その中でも溶融炉を用いた溶融法で製造する方法が原料の選択も含めたガラス組成の設計のし易さから好ましい。
本発明に用いるイオン徐放性ガラスは非晶質構造であるが、一部結晶質構造を含んでいても何等問題はなく、さらにそれらの非晶質構造を有するガラスと結晶構造を有するガラスの混合物であっても何等問題はない。ガラス構造が非晶質であるか否かの判断はX線回折分析や透過型電子顕微鏡等の分析機器を用いて行うことができる。その中でも本発明に用いるイオン徐放性ガラスは外部環境におけるイオン濃度との平衡関係により各種イオンが徐放することから、均質な構造である非晶質構造であることが好ましい。
本発明に用いるイオン徐放性ガラスからの各種イオンの徐放はガラスの粒子径によって影響を受けるため湿式又は/及び乾式の粉砕、分級、篩い分け等の方法により粒子径を制御する必要がある。そのため本発明に用いるイオン徐放性ガラスの粒子径(50%)は0.01〜100μmの範囲であれば特に制限はないものの、好ましくは0.01〜50μmの範囲、さらに好ましくは0.1〜5μmの範囲である。また、ガラスの形状は球状、板状、破砕状、鱗片状等の任意の形状でよく、特に何等制限はないが、好ましくは球状あるいは破砕状である。
さらにイオン徐放性ガラスからのイオン徐放性を高めるために、ガラス表面を表面処理することにより機能化してイオン徐放性を向上させることが好ましい態様である。表面処理に用いる表面処理材を具体的に例示すると界面活性剤、脂肪酸、有機酸、無機酸、モノマー、ポリマー、各種カップリング材、シラン化合物、金属アルコキシド化合物及びその部分縮合物等が挙げられる。好ましくは酸性ポリマー及びシラン化合物を表面処理材として用いることである。
この酸性ポリマー及びシラン化合物を表面処理材として用いてイオン徐放性ガラスを表面処理する製造方法、具体的にはシラン化合物によりイオン徐放性ガラス表面を被覆した後に、酸性ポリマーにより表面処理する方法を以下に例示する。

粉砕等によって所望の平均粒径に微粉砕されたイオン徐放性ガラスを含有する水性分散体中に、一般式(I)
Figure 0005653554
(式中、ZはRO-、Xはハロゲン、YはOH-、Rは炭素数が8以下の有機基、n、m、Lは0から4の整数で、n+m+L=4である)で表されるシラン化合物を混合し、これを系中で加水分解または部分加水分解してシラノール化合物を経て、次いでこれを縮合させて、イオン徐放性ガラス表面を被覆する。
上記のポリシロキサン処理方法は、シラン化合物の加水分解及び縮合とガラス表面へのポリシロキサン処理を同一系内で同時に行っているが、シラン化合物の加水分解及び縮合を別の系で行って低縮合シラン化合物(オリゴマー)を生成させ、それをイオン徐放性ガラスを含有する水性分散体に混合する表面処理方法でも効率よくイオン徐放性ガラス表面にポリシロキサン被膜を形成することが可能である。より好ましくは市販の低縮合シラン化合物(オリゴマー)を用い、低縮合生成過程を経ず混合するポリシロキサン処理方法である。この方法が好ましい理由としては、シラン化合物単量体を用いる場合はポリシロキサン処理工程で多量の水が存在することから、縮合が3次元的に起こり、自己縮合が優位に進行し、均一なポリシロキサン被膜をガラス表面に形成することができないと考えられる。
一方低縮合シラン化合物(オリゴマー)を用いる場合は、ある長さのポリシロキサン主鎖を有するユニット単位でガラス表面にポリシロキサン被膜を均一に形成することが可能と考えられる。またこの低縮合シラン化合物(オリゴマー)の形状は特に制限はないが3次元体のものよりも直鎖状の方が良く、またその重合度においても長いものほど縮合反応性が劣り、イオン徐放性ガラス表面上のポリシロキサン被膜の形成が悪くなることから、好ましい重合度は2〜20の範囲であり、より好ましくは2〜6である。その時の分子量は500〜600の範囲である。
上記水性分散体中でのポリシロキサン処理は比較的低速の撹拌状態下で行われ、温度は室温から100℃の範囲、より好ましくは室温から50℃の範囲であり、撹拌時間は通常数分から数十時間、より好ましくは30分〜4時間の範囲で行われる。撹拌は特別な方法を必要とするものではなく、一般業界で通常に使用されている設備を採用して行うことができる。例えば万能混合撹拌機やプラネタリーミキサー等のスラリー状のものを撹拌できる撹拌機を用いて撹拌すればよい。撹拌温度は水性媒体が揮発しない温度、つまり水性媒体の沸点以下の温度であれば何等問題はない。撹拌時間はシラン化合物または低縮合シラン化合物の種類または添加量、ガラスの種類、粒子径及びその水性分散体中に占める割合、水性媒体の種類及び水性分散体中に占める割合により、縮合して形成するゲル化速度が影響を受けることから、調節しなければならなく、またゲルが形成されるまで行わなければならない。撹拌速度は速すぎるとゲル構造が崩れ、均一な被膜が形成されないため、低速で行う必要がある。
また上記の水性媒体とは水及びアルコールから構成される。アルコールを加えることにより乾燥工程においてイオン徐放性ガラスの凝集性を軽減させ、より解砕性を向上させる多大な効果がある。好ましいアルコールとしては炭素数2〜10のアルコール類であるが、炭素数が10以上のアルコールの添加は沸点が高く溶媒を乾燥除去するために長時間を要する。具体的なアルコールとしては、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、iso−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコール、iso−アミルアルコール、n−ヘキシルアルコールn−ヘプチルアルコール、n−オクチルアルコール、n−ドデシルアルコールが挙げられ、より好ましくは炭素数2〜4のアルコール、例えばエチルアルコール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコールが好適に使用される。上記アルコールの添加量は水に対して5〜100重量部、好ましくは5〜20重量部である。添加量が100重量部以上になると乾燥工程が複雑になる等の問題が生じる。またガラスの含有量は水性媒体に対して25〜100重量部の範囲であり、好ましくは30〜75重量部の範囲である。含有量が100重量部を超える場合は縮合によるゲル化速度が速く、均一なポリシロキサン被膜層を形成しにくく、また25重量部より少ない場合、撹拌状態下でガラスが沈降したり水性媒体中で相分離が発生したりする。また、イオン徐放性ガラス表面を被覆するシラン化合物の添加量はイオン徐放性ガラス100重量部に対して、シラン化合物のSiをSiO2 換算して0.1〜10重量部の範囲であり、好ましくは0.1〜4重量部である。添加量が0.1重量部以下の場合は、ポリシロキサン被膜層形成の効果がなく、一次粒子まで解砕できず凝集したものになり、10重量部以上では乾燥後の固化物が硬すぎて解砕することができない。
「ゲル」状態にある系を、乾燥し水性媒体を除去して固化させる。乾燥は、熟成と焼成の2段階からなり、前者はゲル構造の生長と水性媒体の除去を、後者はゲル構造の強化を目的としている。前者はゲル構造にひずみを与えず、かつ水性媒体を除去することから静置で行う必要があり、箱型の熱風乾燥器等の設備が好ましい。熟成温度は室温から100℃の範囲で、より好ましくは40〜80℃の範囲である。温度がこの範囲以下の場合は、水性媒体除去が不十分であり、範囲以上の場合は急激に揮発し、ゲル構造に欠陥が生じたり、ガラス表面から剥離したりする恐れがある。熟成時間は乾燥器等の能力にもよるため、水性媒体が充分除去できる時間ならば何等問題はない。
一方焼成工程は昇温と係留に分かれ、前者は目標温度まで徐々に長時間かけて昇温する方がよく、急激な温度はゲル分散体の熱伝導が悪いため、ゲル構造内にクラックが生じる可能性がある。後者は一定温度での焼成である。焼成温度は100〜350℃の範囲であり、よりこのましくは100〜200℃である。
以上のように乾燥によりゲルから水性媒体を除去し、収縮した固化物が得られる。固化物はイオン徐放性ガラスの凝集状態ではあるが、単なるイオン徐放性ガラスの凝集物ではなく、個々の微粒子の境界面には縮合により形成されたポリシロキサンが介在している。したがって次の工程としてこの固化物をポリシロキサン処理前のイオン徐放性ガラス相当に解砕すると、その表面がポリシロキサンで被覆されたイオン徐放性ガラスが得られる。ここで「ポリシロキサン処理前のイオン徐放性ガラス相当に解砕する」とは、ポリシロキサンで被覆されたイオン徐放性ガラスの一次粒子に解砕することであり、元のイオン徐放性ガラスと異なる点は個々の微粒子がポリシロキサンで被覆されていることである。ただし、問題ない程度なら2次凝集物を含んでもよい。固化物の解砕は、せん断力または衝撃力を加えることにより容易に可能であり、解砕方法としては、例えばヘンシェルミキサー、クロスロータリミキサー、スーパーミキサー等を用いて行いことができる。
一般式(I)で表されるシラン化合物の例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラアリロキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラキス(2-エチルヘキシロキシ)シラン、トリメトキシクロロシラン、トリエトキシクロロシラン、トリイソプロポキシクロロシラン、トリメトキシヒドロキシシラン、ジエトキシジクロロシラン、テトラフェノキシシラン、テトラクロロシラン、水酸化ケイ素(酸化ケイ素水和物)等が例示でき、より好ましくはテトラメトキシシランおよびテトラエトキシシランである。また一般式(I)で表されるシラン化合物で示される凝集体であることがより好ましい。
また一般式(I)で表されるシラン化合物の低縮合体であることがより好ましい。例えばテトラメトキシシランおよびテトラエトキシシランを部分加水分解して縮合させた低縮合シラン化合物である。これらの化合物は単独または組み合わせて使用することができる。
またポリシロキサン処理時に一般式(I)で表されるシラン化合物の一部としてオルガノシラン化合物も添加することができる。具体的にオルガノシロキサン化合物を例示すると、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メトキシトリプロピルシラン、プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメトキシシラン、γメルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン等が例示でき、特に好ましくはメチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリクロロシランである。これらの化合物は単独または組み合わせて使用することができる。しかしこれらはポリシロキサン層内において有機基が存在するため、ポリシロキサン層形成時のひずみを受ける可能性があり、機械的強度に問題が生じることがある。このため少量の添加にとどめておく必要がある。またポリシロキサン処理時に一般式(I)で表されるシラン化合物の一部として、他の金属のアルコキシド化合物、ハロゲン化物、水和酸化物、硝酸塩、炭酸塩も添加することができる。
前記工程で得られたポリシロキサンで被覆されたイオン徐放性ガラスは酸性ポリマーと反応させる酸性ポリマー処理を施すことによって本発明の最も好ましい表面処理イオン徐放性ガラスを得ることができる。酸性ポリマー処理は乾式流動型の撹拌機であれば業界で一般に使用されている設備を用いることができ、ヘンシルミキサー、スーパーミキサー、ハイスピードミキサー等が挙げられる。ポリシロキサン被膜が形成されたイオン徐放性ガラスへの酸性ポリマーの反応は、酸性ポリマー溶液を含浸や噴霧等により接触させることにより行うことができる。例えばポリシロキサン被覆イオン徐放性ガラスを乾式流動させ、その流動させた状態で上部から酸性ポリマー溶液を分散させ、十分撹拌するだけでよい。このとき酸性ポリマー溶液の分散法は特に制限はないが、均一に分散できる滴下またはスプレー方式がより好ましい。また反応は室温付近で行うことが好ましく、温度が高くなると酸反応性元素と酸性ポリマーの反応が速くなり、酸性ポリマー相の形成が不均一になる。
熱処理後、熱処理物の解砕は剪断力または衝撃力を加えることにより容易に可能であり、解砕方法としては上記反応に用いた設備などで行うことができる。
反応に用いる酸性ポリマー溶液の調製に用いる溶媒は、酸性ポリマーが溶解する溶媒であれば何等問題はなく、水、エタノール、エタノール、アセトン等が挙げられる。これらの中で特に好ましいのは水であり、これは酸性ポリマーの酸性基が解離し、イオン徐放性ガラスの表面と均一に反応することができる。
酸性ポリマー溶液中に溶解したポリマーの重量分子量は2000〜50000の範囲であり、5000〜40000の範囲にある。2000未満の重量平均分子量を有する酸性ポリマーで処理した表面処理イオン徐放性ガラスはイオン徐放性が低くなる傾向にある。50000を超える重量平均分子量を有する酸性ポリマーは酸性ポリマー溶液の粘性が上がり、酸性ポリマー処理を行うことが困難となる。また酸性ポリマー溶液中に占める酸性ポリマー濃度は3〜25重量%の範囲が好ましく、より好ましくは8〜20重量%の範囲である。酸性ポリマー濃度3重量%未満になると上記で述べた酸性ポリマー相が脆弱になる。また酸性ポリマー濃度が25重量%を超えるとポリシロキサン層(多孔質)を拡散しにくくなる反面、イオン徐放性ガラスに接触すると酸−塩基反応が速く、反応中に硬化が始まり凝集が起こる等の問題が生じる。またポリシロキサンで被覆されたイオン徐放性ガラスに対する酸性ポリマー溶液の添加量は6〜40重量%の範囲が好ましく、より好ましくは10〜30重量%である。この添加量で換算するとポリシロキサン被覆イオン徐放性ガラスに対する酸性ポリマー量は1〜7重量%、また水量は10〜25重量%の範囲が最適値である。
上記の方法によりポリシロキサンで被覆されたイオン徐放性ガラスの表面に酸性ポリマー反応相を形成するために用いることのできる酸性ポリマーは、酸性基として、リン酸残基、ピロリン酸残基、チオリン酸残基、カルボン酸残基、スルホン酸基等の酸性基を有する重合性単量体の共重合体または単独重合体である。このような重合性単量体としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、2-クロロアクリル酸、3-クロロアクリル酸、アコニット酸、メサコン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマール酸、グルタコン酸、シトラコン酸、4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシカルボニルフタル酸、4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシカルボニルフタル酸無水物、5-(メタ)アクリロイルアミノペンチルカルボン酸、11-(メタ)アクリロイルオキシ-1,1-ウンデカンジカルボン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、10-(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート、20-(メタ)アクリロイルオキシエイコシルジハイドロジェンホスフェート、1,3-ジ(メタ)アクリロイルオキシプロピル-2-ジハイドロジェンホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルリン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル2'-ブロモエチルリン酸、(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルホスホネート、ピロリン酸ジ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンジチオホスホスフェート、10-(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンチオホスフェート等が列挙できる。これらの重合体の中でも酸反応性元素との酸-塩基反応が比較的遅い、α-β不飽和カルボン酸の単独重合体または共重合体が好ましい。より好ましくはアクリル酸重合体、アクリル酸-マレイン酸共重合体、アクリル酸-イタコン酸共重合体である。
本発明に用いるイオン徐放性ガラスはガラス組成に基因したイオン種を持続的に徐放することが特徴であり、金属フッ化物等の水への溶解によって一時的に多量を放出するものとは異なるものである。
以下の手法によってイオン徐放性ガラス又は他のフィラーがイオン徐放性を有しているか否かを判断することができる。
蒸留水100gに対してイオン徐放性ガラス又は他のフィラーを0.1g加え、1時間撹拌させた時の蒸留水中に徐放したイオン濃度(F1)又はイオン種に起因した元素濃度(F1)と、2時間撹拌した時の蒸留水中に徐放したイオン濃度(F1)又はイオン種に起因した元素濃度(F2)が下式(1)の関係を満足する場合をイオン徐放とみなすことができる。
F2 > F1 ・・・・式(1)

また、イオン徐放性ガラスから徐放するイオンが複数ある場合は、すべてのイオン濃度又は元素濃度が式(1)を満足する必要はなく、少なくとも一つのイオン濃度又は元素濃度が式(1)を満足した場合をイオン徐放とみなすことができる。
本発明に用いるイオン徐放性ガラスはイオン徐放の効果に基因する酸中和能を有していることが好ましい。酸中和能はpHを4.0に調整した乳酸水溶液10gに対してイオン徐放性ガラスを0.1g加え、5分間撹拌させた時のpH変化を測定することにより確認することできる。その時のpHが5.5以上、より好ましくは6.0以上、最も好ましくは6.5以上を示したとき酸中和能が発現するとみなすことができる。
イオン徐放性ガラスの含有量は、二成分混和型イオン徐放性義歯床用関連材料組成物の総量に対して1〜60重量%であることが好ましく、さらに好ましくは3〜60重量%の範囲である。イオン徐放性ガラスの含有量が1重量%未満の場合はイオン徐放量が不足し歯質強化、二次齲蝕抑制等の効果が期待できない。一方、60重量%を越える場合は二成分混和型イオン徐放性義歯床用関連材料組成物の粘度が高くなり操作性の低下等の問題が生じる
本発明の二成分混和型イオン徐放性義歯床用関連材料組成物に用いることができる(c)単官能性(メタ)アクリレート系重合性単量体は、一般に歯科分野で用いられている公知の単官能性アクリレート基及び/またはメタクリレート基を有する(メタ)アクリレート系重合性単量体のうちから何等制限なく使用することができる。なお、本発明においては単官能性(メタ)アクリレート系重合性単量体はアクリロイル基含有重合性単量体とメタクリロイル基含有重合性単量体の両者を包括的に表記する。
単官能性(メタ)アクリレート系重合性単量体を具体的に例示するとメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1、2−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1、3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2、3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等のシラン化合物類、2−(N、N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等の窒素含有化合物が挙げられる。
本発明の二成分混和型イオン徐放性義歯床用関連材料組成物における単官能性(メタ)アクリレート系重合性単量体の含有量は20〜90重量%の範囲であれば何等制限なく含有することができ、好ましくは20〜60重量%の範囲、さらに好ましくは20〜40重量%の範囲である。単官能性(メタ)アクリレート系重合性単量体の含有量が20重量%未満の場合はレジン成分の硬化性が低下し、硬化物の材料特性に問題が生じる。一方、90重量%を超える場合は、レジン成分の重合収縮が大きくなるため、義歯床の適合性等、寸法精度が低下する等の問題がある。
本発明の二成分混和型イオン徐放性義歯床用関連材料組成物に用いることができる(d)重合開始材は特に限定されず、歯科分野で用いられている公知のラジカル発生材を何等制限なく用いることができる。重合開始材としては混合することにより重合を開始させるもの(化学重合開始材)、加熱により重合を開始させるもの(熱重合開始材)、光照射により重合を開始させるもの(光重合開始材)に大別されるが、本発明においてはいずれの重合開始材も何等制限なく用いることができる。またこれらの重合開始材は重合様式や重合方法に関係なく、単独だけでなく、複数を組み合わせて用いることができる。
熱重合開始材として具体的に例示するとベンゾイルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ターシャリーブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジハイドロパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ターシャリーブチルパーオキシベンゾエート等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル、アゾビスシアノ吉草酸等のアゾ化合物類が好適に使用される。これらの中でも有機過酸化物の使用が好ましく、より好ましくはベンゾイルパーオキサイドである。さらにこれらの重合開始材は(a)成分である非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマーの製造段階においても使用するものであり、その時に残存する重合開始材を本発明の二成分混和型イオン徐放性義歯床用関連材料組成物の(d)重合開始材として用いても何等問題はない。つまり、非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマー中に製造段階で残存した重合開始材が残存する場合は、新たに本発明の二成分混和型イオン徐放性義歯床用関連材料組成物の粉材に重合開始材を配合しなくてもよい。
これらの重合開始材は重合方法に関係なく、単独だけでなく、複数を組み合わせて用いることができる。また、これらの重合開始材は重合の安定化や重合の遅延等を実現するためにマイクロカプセルに内包する等の二次的な処理を施しても何等問題なく用いることができる。
光重合開始材としては、光増感材からなるもの、光増感材/光重合促進材等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
上記光増感材を具体的に例示すると、ベンジル、カンファーキノン、α−ナフチル、アセトナフセン、p,p´−ジメトキシベンジル、p,p´−ジクロロベンジルアセチル、ペンタンジオン、1,2−フェナントレンキノン、1,4−フェナントレンキノン、3,4−フェナントレンキノン、9,10−フェナントレンキノン、ナフトキノン等のα−ジケトン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾインアルキルエーテル類、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−メトキシチオキサントン、2−ヒドロキシチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類、ベンゾフェノン、p−クロロベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド類、2−ベンジル−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ベンジル−ジエチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−プロパノン−1等のα−アミノアセトフェノン類、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、ベンジル(2−メトキシエチルケタール)等のケタール類、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(1−ピロリル)フェニル〕−チタン、ビス(シクペンタジエニル)−ビス(ペンタンフルオロフェニル)−チタン、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−ジシロキシフェニル)−チタン等のチタノセン類等が挙げられる。
また、上記光重合促進材を具体的に例示すると、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジ−n−ブチルアニリン、N,N−ジベンジルアニリン、p−N,N−ジメチル−トルイジン、m−N,N−ジメチル−トルイジン、p−N,N−ジエチル−トルイジン、p−ブロモ−N,N−ジメチルアニリン、m−クロロ−N,N−ジメチルアニリン、p−ジメチルアミノベンズアルデヒド、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノベンゾイックアシッド、p−ジメチルアミノベンゾイックアシッドエチルエステル、p−ジメチルアミノベンゾイックアシッドアミノエステル、N,N−ジメチルアンスラニリックアシッドメチルエステル、N,N−ジヒドロキシエチルアニリン、p−N,N−ジヒドロキシエチル−トルイジン、p−ジメチルアミノフェニルアルコール、p−ジメチルアミノスチレン、N,N−ジメチル−3,5−キシリジン、4−ジメチルアミノピリジン、N,N−ジメチル−α−ナフチルアミン、N,N−ジメチル−β−ナフチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルヘキシルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミン、N,N−ジメチルステアリルアミン、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、2,2´−(n−ブチルイミノ)ジエタノール等の第三級アミン類、N−フェニルグリシン等の第二級アミン類、5−ブチルバルビツール酸、1−ベンジル−5−フェニルバルビツール酸等のバルビツール酸類、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズジバーサテート、ジオクチルスズビス(メルカプト酢酸イソオクチルエステル)塩、テトラメチル−1,3−ジアセトキシジスタノキサン等のスズ化合物類、ラウリルアルデヒド、テレフタルアルデヒド等のアルデヒド化合物類、ドデシルメルカプタン、2−メルカプトベンゾオキサゾール、1−デカンチオール、チオサルチル酸等の含イオウ化合物等が挙げられる。
さらに、光重合促進能の向上のために、上記光重合促進材に加えて、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グリコール酸、グルコン酸、α−オキシイソ酪酸、2−ヒドロキシプロパン酸、3−ヒドロキシプロパン酸、3−ヒドロキシブタン酸、4−ヒドロキシブタン酸、ジメチロールプロピオン酸等のオキシカルボン酸類の添加が効果的である。
これらの重合開始材は重合方法に関係なく、単独だけでなく、複数を組み合わせて用いることができる。また、これらの重合開始材は重合の安定化や重合の遅延等を実現するためにマイクロカプセルに内包する等の二次的な処理を施しても何等問題なく用いることができる。
一方、化学重合開始材としては、有機過酸化物/アミン化合物または有機過酸化物/アミン化合物/スルフィン酸塩、有機過酸化物/アミン化合物/ボレート化合物からなるレドックス型の重合開始系、酸素や水と反応して重合を開始する有機金属型の重合開始材系が挙げられ、さらにはスルフィン酸塩類やボレート化合物類は酸性基を有する重合性単量体との反応により重合を開始させることもできるが、これらに限定されるものではない。
上記有機過酸化物を具体的に例示すると、ベンゾイルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ターシャリーブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジハイドロパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ターシャリーブチルパーオキシベンゾエート等が挙げられる。
また、上記アミン化合物を具体的に例示すると、アミン基がアリール基に結合した第二級または第三級アミンが好ましく、具体的に例示するとp−N,N−ジメチル−トルイジン、N,N−ジメチルアニリン、N−β−ヒドロキシエチル−アニリン、N,N−ジ(β−ヒドロキシエチル)−アニリン、p−N,N−ジ(β−ヒドロキシエチル)−トルイジン、N−メチル−アニリン、p−N−メチル−トルイジン等が挙げられる。
また、スルフィン酸塩類を具体的に例示すると、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、ベンゼンスルフィン酸リチウム、p−トルエンスルフィン酸ナトリウム等が挙げられる。
また、ボレート化合物を具体的に例示すると、トリアルキルフェニルホウ素、トリアルキル(p−フロロフェニル)ホウ素(アルキル基はn−ブチル基、n−オクチル基、n−ドデシル基等)のナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩等が挙げられる。
さらに有機金属型の重合開始材を具体的に例示すると、トリフェニルボラン、トリブチルボラン、トリブチルボラン部分酸化物等の有機ホウ素化合物類等が挙げられる。
これらの重合開始材は重合方法に関係なく、単独だけでなく、複数を組み合わせて用いることができる。また、これらの重合開始材は重合の安定化や重合の遅延等を実現するためにマイクロカプセルに内包する等の二次的な処理を施しても何等問題なく用いることができる。
加熱重合により硬化させる加熱重合型義歯床用レジン以外の義歯床用材料においては、これらの重合開始材の中でも、使用直前に混合することにより重合を開始させる化学重合開始材を用いることが好ましく、その簡便性から最も好適に使用される。また、化学重合開始材の中でも、有機過酸化物と第三級アミンの組み合わせがより好ましく、ベンゾイルパーオキサイドとp−N、N−ジメチル−トルイジンまたはp−N、N−ジ(β−ヒドロキシエチル)−トルイジンなど第三級アミンの組み合わせが最も好ましい。
本発明の二成分混和型イオン徐放性義歯床用関連材料組成物における重合開始材の含有量は、使用用途に応じて適宜選択することができるが、総重合性単量体100重量%に対して0.1〜5重量%の範囲が好ましく、より好ましくは0.1〜2重量%の範囲である。重合開始材の含有量が0.1%未満の場合は重合硬化性が不十分になり意図した材料特性や性能が発揮することができない。一方、5重量%を越える場合は重合硬化が速くなるために、操作時間が短くなる等の操作性、または急速に重合して残留応力が大きくなるために、作製後の義歯が変形する等の寸法安定性に問題が発生する。
本発明の二成分混和型イオン徐放性義歯床用関連材料組成物に用いることができる(e)多官能性(メタ)アクリレート系重合性単量体は、一般に歯科分野で用いられている公知の多官能性アクリレート基及び/またはメタクリレート基を有する(メタ)アクリレート系重合性単量体のうちから何等制限なく使用することができる。なお、本発明においては多官能性(メタ)アクリレート系重合性単量体はアクリロイル基含有重合性単量体とメタクロイル基含有重合性単量体の両者を包括的に表記する。
多官能性(メタ)アクリレート系重合性単量体を具体的に例示すれば次の通りである。
芳香族系二官能性(メタ)アクリレート系重合性単量体としては、2、2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロパン、2、2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2、2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2、2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2、2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)プロパン、2、2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、2(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)−2(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2(4−(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2(4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)−2(4−(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2、2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、2、2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシイソプロポキシフェニル)プロパン等が挙げられる。
脂肪族系二官能性(メタ)アクリレート系重合性単量体としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1、3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1、4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1、6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル−1、3−ジ(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル−1、2−ジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、2−トリメチルアンモニウムエチル(メタ)アクリルクロライド、(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、ポリエチレングルコールジ(メタ)アクリレート(オキシエチレン基の数が9以上のもの)等が挙げられる。
三官能性(メタ)アクリレート系重合性単量体としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
四官能性(メタ)アクリレート系重合性単量体としては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
ウレタン系(メタ)アクリレート系重合性単量体としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ハイドロキシプロピル(メタ)アクリレートのような水酸基を有する重合性単量体と、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジイソシアネートメチルメチルベンゼン、4、4−ジフェニルメタンジイソシアネートのようなジイソシアネート化合物との付加物から誘導される二官能性または三官能性以上のウレタン結合を有するジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
本発明の二成分混和型イオン徐放性義歯床用関連材料組成物における多官能性(メタ)アクリレート系重合性単量体の含有量は1〜60重量%の範囲であれば何等制限なく含有することができ、好ましくは1〜50重量%の範囲、さらに好ましくは1〜30重量%の範囲である。多単官能性(メタ)アクリレート系重合性単量体の含有量が1重量%未満の場合は、レジン成分の架橋密度が低いなど、多官能性(メタ)アクリレート系重合性単量体の添加効果が得られない。一方、60重量%を超える場合は、添加量が過剰であるためにレジン成分の重合収縮が大きくなり、義歯作製時の変形等を伴う問題が発生する。
本発明の二成分混和型イオン徐放性義歯床用関連材料組成物に用いることができる(f)有機溶媒は特に限定されず、公知のものが何等制限なく用いることができる。有機溶媒を具体的に例示すると、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール等のアルコール類、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン類、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化アルキル類が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの有機溶媒は単独だけでなく、複数を組みわせて用いることができる。
これら有機溶媒の中でもアルコール類が好ましく、より好ましくはエタノール、イソプロピルアルコール等である。
本発明の二成分混和型イオン徐放性義歯床用関連材料組成物における有機溶媒の含有量は使用方法、使用目的、組成等によって適宜調整することができるが、0.1〜30重量%の範囲であれば何等制限なく、用いることができる。好ましくは0.1〜10重量%の範囲、さらに好ましくは0.1〜5重量%の範囲である。有機溶媒の含有量が0.1%未満の場合は、有機溶媒が未配合の場合と膨潤特性等の性状が変わらず、有機溶媒の添加効果が得られない。一方、30重量%を越える場合は硬化物の強度が低下する等、材料特性に問題が生じる。
本発明の二成分混和型イオン徐放性義歯床用関連材料組成物に用いることができる(g)充填材は特に限定されず、単官能性(メタ)アクリレート系重合性単量体に対して膨潤しないものであれば有機成分、無機成分及びそれらの混合物または複合物でも何等制限なく使用することができる。
充填材を具体的に例示すると水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム等の炭酸塩、酸化アルミニウム等の金属酸化物、フッ化バリウム、フッ化カルシウム、フッ化ストロンチウム等の金属フッ化物、タルク、カオリン、クレー、雲母、ヒドロキシアパタイト、シリカ、石英等の無機系充填材、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、スチレンーブタジエンゴム等のエラストマー類、単官能性(メタ)アクリレート系重合性単量体と二個以上の官能基を有する重合性単量体を共重合させた架橋性(メタ)アクリレート系ポリマー等の有機系充填材、無機充填材の表面を重合性単量体により重合被覆したもの、無機充填材と重合単量体を混合・重合させた後、適当な粒子径に粉砕したもの、あるいは、予め重合性単量体中に充填材を分散させて乳化重合または懸濁重合させたもの等、有機‐無機複合系充填材等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
これらの充填材は単独だけでなく、複数を組み合わせて用いることができる。
これら充填材は球状、針状、板状、破砕状、鱗片状等の任意の形状の充填材を用いることができる。また充填材の平均粒子径(50%)は0.1〜100μmの範囲であれば特に制限はないものの、好ましくは1〜50μmの範囲、さらに好ましくは1〜10μmの範囲である。
さらに充填材の表面を、表面処理剤等を用いた表面処理法により多機能化してもよく、これらの表面処理充填材も何等制限なく用いることができる。充填材の表面を多機能化するために用いる表面処理剤を具体的に例示すると界面活性剤、脂肪酸、有機酸、無機酸、各種カップリング材、金属アルコキシド化合物等が挙げられる。また表面処理方法を具体的に例示すると充填材を流動させた状態で上部から表面処理剤を噴霧する方法、表面処理剤を含んだ溶液中に充填材を分散させる方法及び充填材表面に数種類の表面処理剤を多層処理する方法等が挙げられる。しかしながら表面処理剤及び表面処理方法は、これらに限定されるものではない。また、これらの表面処理剤や表面処理方法はそれぞれ単独または複合的に組み合わせて用いることができる。
本発明の二成分混和型イオン徐放性義歯床用関連材料組成物における充填材の含有量は特に限定されないものの、二成分混和型イオン徐放性義歯床用関連材料組成物の総量に対しての1〜50重量%の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは1〜20重量%の範囲である。充填材の含有量が1重量%未満の場合はその添加効果が得られず、表面硬さ及び切削性がほとんど向上しない。一方、50重量%を越える場合は二成分混和型イオン徐放性義歯床用関連材料組成物中における非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマーの含有量が少なくなるために、単官能性(メタ)アクリレート系重合性単量体等の浸透・膨潤が均一に起こらず、その結果材料特性に問題が生じる。さらに硬化物の透明性も低下し、審美性的な問題が発生する。
また、本発明の二成分混和型イオン徐放性義歯床用関連材料組成物には、上記の(a)〜(g)の成分以外に、フュームドシリカに代表される賦形材、2−ヒドロキシ−4−メチルベンゾフェノンのような紫外線吸収材、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2、5−ジターシャリーブチル−4−メチルフェノール等の重合禁止材、変色防止材、抗菌材、着色顔料、その他の従来公知の添加材等の成分を必要に応じて任意に添加できる。
以下に本発明の実施例及び比較例について具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例及び比較例にて調製した2二成分混和型イオン徐放性義歯床用関連材料組成物の性能を評価する試験方法は次の通りである。
〔切削性〕
目的:二成分混和型イオン徐放性義歯床用関連材料組成物の硬化物の切削性を評価する。
方法:本発明の二成分混和型イオン徐放性義歯床用関連材料組成物を粉材:液材=2:1の割合で混合・膨潤させて餅状レジンと呼ばれる状態に変化させた後、混合物をステンレス製金型(20φ×2mm:円盤状)に充填した後、各使用目的に応じた条件で重合させることにより試験体を作製した。試験体を技工用カーバイドバーにより切削し、その切削性を以下の4段階で評価した。
◎・・・切削性が非常に良好であり、時間を要しない。
○・・・切削性が良好であるものの、義歯床用レジンの硬化物がわずかに研削材に絡みつく。
△・・・義歯床用レジンの硬化物が研削材に絡みつき、切削しにくい。
×・・・切削に時間を要し、義歯表面が高温になる。
〔表面硬さ〕
目的:二成分混和型イオン徐放性硬化性組成物の硬化物の表面硬さを評価する。
方法:本発明の二成分混和型イオン徐放性義歯床用関連材料組成物を粉材:液材=2:1の割合で混合・膨潤させて餅状レジンと呼ばれる状態に変化させた後、混合物をステンレス製金型(15φ×1mm:円盤状)に充填した後、各使用目的に応じた条件で重合させることにより試験体を作製した。試験体表面をマイクロビッカース硬さ試験機(HM-102,ミツトヨ社製)用いてビッカース硬さを測定した。
〔フッ素放出量の測定評価〕
目的:二成分混和型イオン徐放性義歯床用関連材料組成物の硬化物からのフッ素放出特性を評価する。
方法:本発明の二成分混和型イオン徐放性義歯床用関連材料組成物を粉材:液材=2:1の割合で混合・膨潤させて餅状レジンと呼ばれる状態に変化させた後、混合物をステンレス製金型(15φ×1mm:円盤状)に充填した後、各使用目的に応じた条件で重合させることにより試験体を作製した。試験体を5mLの蒸留水が入ったプラスチック製容器に入れ、密封後37℃恒温器中に1週間放置した。1週間後容器を恒温器から取り出し、円盤状試験体から溶出したフッ素量をフッ素イオン複合電極(Model 96-09:オリオンリサーチ社製)及びイオンメーター(Model 720A:オリオンリサーチ社製)を用いて測定した。測定時にイオン強度調整剤としてTISABIII(オリオンリサーチ社製)を0.5mL添加した。また検量線の作成は0.02、0.1、1、10、50ppmの標準液を用いて行った。フッ素放出量は0.2ppm以上が好ましく、0.5ppm以上がさらに好ましい。
〔イオン放出量の測定評価〕
目的:二成分混和型イオン徐放性義歯床用関連材料組成物の硬化物からのイオン放出特性を評価する。
方法:本発明の二成分混和型イオン徐放性義歯床用関連材料組成物を粉材:液材=2:1の割合で混合・膨潤させて餅状レジンと呼ばれる状態に変化させた後、混合物をステンレス製金型(15φ×1mm:円盤状)に充填した後、各使用目的に応じた条件で重合させることにより試験体を作製した。試験体を5mLの蒸留水が入ったプラスチック製容器に入れ、密封後37℃恒温器中に1週間放置した。1週間後容器を恒温器から取り出し、円盤状試験体から溶出したイオン量についてICP発光分析装置を用いて測定した。なお、各金属イオン量は、各イオンの標準試料(1ppm、2.5ppm、5ppm、10ppm)から求めた検量線を用いて換算した。
(使用目的に応じた重合条件)
義歯床用レジン :2.0tの圧力条件下、70℃−30分、その後100℃−30分で加熱した。
裏装材 :両面にカバーグラスを置きガラス練板で圧接した後、室温に30分放置した。その後、さらに50〜60℃の硬化促進材水溶液に10分間、浸せきした。
即時重合レジン :両面にカバーグラスを置きガラス練板で圧接した後、室温に30分放置した。
床矯正用レジン :両面にカバーグラスを置きガラス練板で圧接した後、室温に30分放置した。その後、さらに50〜60℃の温水中に30分間、浸せきした。
本発明の実施例及び比較例に使用した成分名及びその略号を以下に示す。
PMMA100:ポリメチルメタクリレート(平均粒子径(D50):100μm、重量平均分子量:90万、形状:球状)
PMMA100L:ポリメチルメタクリレート(平均粒子径(D50):100μm、重量平均分子量:40万、形状:球状)
PMMA100H:ポリメチルメタクリレート(平均粒子径(D50):100μm、重量平均分子量:170万、形状:球状)
PEMA40:ポリエチルメタクリレート(平均粒子径(D50):40μm、重量平均分子量:65万、形状:球状)
PEMA40L:ポリエチルメタクリレート(平均粒子径(D50):40μm、重量平均分子量:35万、形状:球状)
PEMA40H:ポリエチルメタクリレート(平均粒子径(D50):40μm、重量平均分子量:160万、形状:球状)
コポリマー50:MMA/EMA=50/50のコポリマー(平均粒子径(D50):70μm、重量平均分子量:60万、形状:球状)
コポリマー50L:MMA/EMA=50/50のコポリマー(平均粒子径(D50):70μm、重量平均分子量:30万、形状:球状)
コポリマー50H:MMA/EMA=50/50のコポリマー(平均粒子径(D50):70μm、重量平均分子量:155万、形状:球状)
コポリマー80:MMA/EMA=80/20のコポリマー(平均粒子径(D50):65μm、重量平均分子量:50万、形状:球状)
コポリマー80L:MMA/EMA=80/20のコポリマー(平均粒子径(D50):65μm、重量平均分子量:40万、形状:球状)
コポリマー80H:MMA/EMA=80/20のコポリマー(平均粒子径(D50):65μm、重量平均分子量:180万、形状:球状)

F1:イオン徐放性ガラス1
F2:イオン徐放性ガラス2
F3:イオン徐放性ガラス3
MMA:メタクリル酸メチル
MMES:メタクリロイルオキシエチルコハク酸メチル
BPO:過酸化ベンゾイル
DMPT:p−N、N−ジメチル−トルイジン
1G:エチレングリコールジメタクリレート
HX:1、6−ヘキサンジオールジメタクリレート
EtOH:エタノール
PMMA−C:架橋ポリメチルメタクリレート(MMA:95部及び1G5部から成るポリメチルメタクリレート、平均粒子径(D50):10μm、形状:球状)

[イオン徐放性ガラス1の製造]
二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ホウ素、フッ化ナトリウム、炭酸ストロンチウムの各種原料(ガラス組成:SiO2 23.8質量%、Al2O3 16.2質量%、B2O3 10.5質量%、SrO 35.6質量%、Na2O 2.3質量%、F11.6質量%)をボールミルを用いて均一に混合し原料混合品を調製した後、その原料混合品を溶融炉中で1400℃にて溶融した。その融液を溶融炉から取り出し冷鋼板上、ロールまたは水中で冷却してガラスを生成した。4連式振動ミルのアルミナポット(内容積3.6リットル)中に直径6mmφのアルミナ玉石4kgを投入後、上記で得たガラスを500g投入して40時間粉砕を行い、イオン徐放性ガラス1を得た。このイオン徐放性ガラス1の50%平均粒子径をレーザー回折式粒度測定機(マイクロトラックSPA:日機装社製)により測定した結果、1.2μmであった。このイオン徐放性ガラス1から放出されるイオンに基因した元素量(フッ化物イオンのみイオン量)を測定し、(1)式への適合性を確認した。その結果を表1に示した。
[イオン徐放性ガラス2の製造]
以下に示すポリシロキサン処理及び酸性ポリマー処理を行い表面処理したイオン徐放性ガラス2を得た。
前述のイオン徐放性ガラス1を500g、シラン化合物(予めテトラメトキシシラン5g、水1000g及びエタノール100gを2時間室温で撹拌し得られたシラン化合物の低縮合物)を万能混合攪拌機に投入し、90分間撹拌混合した。その後、140℃にて熱処理を30時間施し、熱処理物を得た。この熱処理物をヘンシェルミキサーを用いて解砕し、ポリシロキサン被覆イオン徐放性ガラスを得た。このポリシロキサンで被覆されたイオン徐放性ガラス500gを撹拌しつつ、酸性ポリマー水溶液(ポリアクリル酸水溶液:ポリマー濃度13重量%、重量平均分子量20000;ナカライ社製)をヘンシェルミキサーを用いて噴霧した。その後、熱処理(100℃3時間)を施し、表面処理したイオン徐放性ガラス2を製造した。このイオン徐放性ガラス2の50%平均粒子径をレーザー回折式粒度測定機(マイクロトラックSPA:日機装社製)により測定した結果、1.3μmであった。この表面処理したイオン徐放性ガラス2から放出されるイオンに基因した元素量(フッ化物イオンのみイオン量)を測定し、(1)式への適合性を確認した。その結果を表1に示した。
[イオン徐放性ガラス3の製造]
二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ホウ素、フッ化ナトリウム、炭酸ストロンチウムの各種原料を混合後、1400℃にてその混合物を溶融してガラス(ガラス組成:SiO2 19.8質量%、Al2O3 19.8質量%、B2O3 11.7質量%、SrO 35.0質量%、Na2O 2.3質量%、F11.4質量%)を得た。次に生成したガラスを振動ミルを用いて10時間粉砕し、ガラス3を得た。前述のガラス3を500g、シラン化合物(予めテトラメトキシシラン10g、水1500g、エタノール100g、メタノール70g及びイソプロパノール50gを2時間室温で撹拌し得られたシラン化合物の低縮合物)を万能混合攪拌機に投入し、90分間撹拌混合した。その後、140℃にて熱処理を30時間施し、熱処理物を得た。この熱処理物をヘンシェルミキサーを用いて解砕し、ポリシロキサンで被覆したイオン徐放性ガラスを得た。このポリシロキサンで被覆したガラス500gを撹拌しつつ、酸性ポリマー水溶液(ポリアクリル酸水溶液:ポリマー濃度13重量%、重量平均分子量20000;ナカライ社製)をヘンシェルミキサーを用いて噴霧した。その後、熱処理(100℃3時間)を施し、表面処理したイオン徐放性ガラス3を製造した。
この表面処理したイオン徐放性ガラス3の50%平均粒子径をレーザー回折式粒度測定機(マイクロトラックSPA:日機装社製)により測定した結果、3.1μmであった。この表面処理したイオン徐放性ガラス3から放出されるイオンに基因した元素量(フッ化物イオンのみイオン量)を測定し、(1)式への適合性を確認した。その結果を表1に示した。
Figure 0005653554
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実施例1〜9は本発明の構成要件(a)〜(e)及び(g)を含有した二成分混和型イオン徐放性義歯床用関連材料組成物であり、表4に示すように、良好な切削性を有し、また表面硬さも向上することが確認できる。さらに表5に示すように、イオン徐放性ガラスを含有している効果によりフッ化物イオンを含む6種類のイオンが徐放していることが認められ、特に部分床義歯においては不潔部位になりやすい鈎歯の脱灰抑制が期待できる。
実施例7は本発明の構成要件の中でも(d)重合開始材を含んでいない二成分混和型イオン徐放性義歯床用関連材料組成物である。しかし、(a)非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマー中に製造段階で残存した重合開始材が残存するため、重合開始材が未配合であっても良好な切削性を有し、また表面硬さも向上している。
実施例8は本発明の構成要件の中でも(a)非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマーの重量平均分子量が小さいイオン徐放性義歯床用関連材料組成物であり、表4が示すように(a)非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマーの重量平均分子量が50万〜150万の範囲であるイオン徐放性義歯床用関連材料組成物と比較して切削性はやや悪いものの、良好な切削性を有し、また表面硬さも向上することが確認できる。さらに表5に示すように、イオン徐放性ガラスを含有している効果によりフッ化物イオンを含む6種類のイオンが徐放していることが認められ、特に部分床義歯においては不潔部位になりやすい鈎歯の脱灰抑制が期待できる。
実施例9は本発明の構成要件の中でも(a)非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマーの分子量が大きいイオン徐放性義歯床用関連材料組成物であり、表4が示すように(a)非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマーの重量平均分子量が50万〜150万の範囲であるイオン徐放性義歯床用関連材料組成物と比較して、フッ素を含むイオン徐放性はやや低いものの、切削性は良いことが確認された。
比較例1は本発明の構成要件の中でも(b)イオン徐放性ガラスを含んでいない二成分混和型イオン徐放性義歯床用関連材料組成物であり、表4が示すように実施例と比較して切削性が悪く、かつフッ素を含むイオン徐放性を有しないことが確認された。
Figure 0005653554
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実施例10〜15は本発明の構成要件(a)〜(e)を含有した二成分混和型イオン徐放性義歯床用関連材料組成物であり、表6に示すように、良好な切削性を有し、また表面硬さも向上することが確認できる。さらにさらに表7に示すように、イオン徐放性ガラスを含有している効果によりフッ化物イオンを含む6種類のイオンが徐放していることが認められ、残存歯のプラーク付着及び細菌・真菌の増殖抑制が期待できる。
実施例14は本発明の構成要件の中でも(a)非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマーの重量平均分子量が小さいイオン徐放性義歯床用関連材料組成物であり、表6が示すように(a)非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマーの重量平均分子量が50万〜150万の範囲であるイオン徐放性義歯床用関連材料組成物と比較して切削性はやや悪いものの、良好な切削性を有し、また表面硬さも向上することが確認できる。さらに表7に示すように、イオン徐放性ガラスを含有している効果によりフッ化物イオンを含む6種類のイオンが徐放していることが認められ、特に部分床義歯においては不潔部位になりやすい鈎歯の脱灰抑制が期待できる。
実施例15は本発明の構成要件の中でも(a)非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマーの分子量が大きいイオン徐放性義歯床用関連材料組成物であり、表6が示すように(a)非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマーの重量平均分子量が50万〜150万の範囲であるイオン徐放性義歯床用関連材料組成物と比較して、フッ素を含むイオン徐放性はやや低いものの、切削性は良いことが確認された。
比較例2は本発明の構成要件の中でも(b)イオン徐放性ガラスを含んでいない二成分混和型イオン徐放性義歯床用関連材料組成物であり、表6が示すように切削性が悪く、かつフッ素を含むイオン徐放性を有しないことが確認された。
比較例3は本発明の構成要件の中でも(d)重合開始材を含んでいない二成分混和型イオン徐放性義歯床用関連材料組成物であり、表6が示すように切削性が悪く、さらに十分に硬化していないため、表面硬さが測定不可能であることが確認された。
Figure 0005653554
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実施例17〜25は本発明の構成要件(a)〜(f)を含有した二成分混和型イオン徐放性義歯床用関連材料組成物であり、表8に示すように、良好な切削性を有し、また表面硬さも向上することが確認できる。さらにさらに表9に示すように、イオン徐放性ガラスを含有している効果によりフッ化物イオンを含む6種類のイオンが徐放していることが認められ、残存歯のプラーク付着及び細菌や真菌の増殖抑制が期待できる。
実施例24は本発明の構成要件の中でも(a)非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマーの重量平均分子量が小さいイオン徐放性義歯床用関連材料組成物であり、表8が示すように(a)非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマーの重量平均分子量が50万〜150万の範囲であるイオン徐放性義歯床用関連材料組成物と比較して切削性はやや悪いものの、良好な切削性を有し、また表面硬さも向上することが確認できる。さらに表9に示すように、イオン徐放性ガラスを含有している効果によりフッ化物イオンを含む6種類のイオンが徐放していることが認められ、特に部分床義歯においては不潔部位になりやすい鈎歯の脱灰抑制が期待できる。
実施例25は本発明の構成要件の中でも(a)非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマーの分子量が大きいイオン徐放性義歯床用関連材料組成物であり、表8が示すように(a)非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマーの重量平均分子量が50万〜150万の範囲であるイオン徐放性義歯床用関連材料組成物と比較して、フッ素を含むイオン徐放性はやや低いものの、切削性は良いことが確認された。
比較例4は本発明の構成要件の中でも(b)イオン徐放性ガラスを含んでいない二成分混和型イオン徐放性義歯床用関連材料組成物であり、表8が示すように切削性が悪く、かつフッ素を含むイオン徐放性を有しないことが確認された。
比較例5は本発明の構成要件の中でも(d)重合開始材を含んでいない二成分混和型イオン徐放性義歯床用関連材料組成物であり、表8が示すように切削性が悪く、さらに十分に硬化していないため、表面硬さが測定不可能であることが確認された。
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実施例26〜35は本発明の構成要件(a)〜(e)を含有した二成分混和型イオン徐放性義歯床用関連材料組成物であり、表10に示すように、良好な切削性を有し、また表面硬さも向上することが確認できる。さらにさらに表11に示すように、イオン徐放性ガラスを含有している効果によりフッ化物イオンを含む6種類のイオンが徐放していることが認められ、残存歯のプラーク付着及び細菌や真菌の増殖抑制が期待できる。
実施例34は本発明の構成要件の中でも(a)非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマーの重量平均分子量が小さいイオン徐放性義歯床用関連材料組成物であり、表10が示すように(a)非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマーの重量平均分子量が50万〜150万の範囲であるイオン徐放性義歯床用関連材料組成物と比較して切削性はやや悪いものの、良好な切削性を有し、また表面硬さも向上することが確認できる。さらに表11に示すように、イオン徐放性ガラスを含有している効果によりフッ化物イオンを含む6種類のイオンが徐放していることが認められ、特に部分床義歯においては不潔部位になりやすい鈎歯の脱灰抑制が期待できる。
実施例35は本発明の構成要件の中でも(a)非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマーの分子量が大きいイオン徐放性義歯床用関連材料組成物であり、表10が示すように(a)非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマーの重量平均分子量が50万〜150万の範囲であるイオン徐放性義歯床用関連材料組成物と比較して、フッ素を含むイオン徐放性はやや低いものの、切削性は良いことが確認された。
比較例6は本発明の構成要件の中でも(b)イオン徐放性ガラスを含んでいない二成分混和型イオン徐放性義歯床用関連材料組成物であり、表11が示すように切削性が悪く、かつフッ素を含むイオン徐放性を有しないことが確認された。
比較例7は本発明の構成要件の中でも(d)重合開始材を含んでいない二成分混和型イオン徐放性義歯床用関連材料組成物であり、表11が示すように切削性が悪く、さらに十分に硬化していないため、表面硬さが測定不可能であることが確認された。

 

Claims (8)

  1. 粉材と液材から成る二成分混和型イオン徐放性義歯床用関連材料組成物であって、
    (a)非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマー、
    (b)イオン徐放性ガラス、
    を含む粉材成分と
    (c)単官能性(メタ)アクリレート系重合性単量体、
    を含む液材成分とから構成され、
    少なくともいずれかの一方に(d)重合開始材を含んでおり、
    イオン徐放性ガラス (b)の組成範囲は
    SiO2 15〜35質量%、
    Al2O3 15〜30質量%、
    B2O3 5〜20質量%、
    SrO 20〜45質量%、
    F 5〜15質量%、
    Na2O 0〜10質量%であり、シラン化合物によりイオン徐放性ガラス表面を被覆した後に、酸性ポリマーにより表面処理されていることを特徴とする二成分混和型イオン徐放性義歯床用関連材料組成物。
  2. 二成分混和型イオン徐放性義歯床用関連材料組成物に液材成分として(e)多官能性(メタ)アクリレート系重合性単量体を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の二成分混和型イオン徐放性義歯床用関連材料組成物。
  3. 二成分混和型イオン徐放性義歯床用関連材料組成物に液材成分として(f)有機溶媒を含んでいることを特徴とする請求項1〜2に記載の二成分混和型イオン徐放性義歯床用関連材料組成物。
  4. 二成分混和型イオン徐放性義歯床用関連材料組成物に粉材成分として(g)充填材を含んでいることを特徴とする請求項1〜3に記載の二成分混和型イオン徐放性義歯床用関連材料組成物。
  5. (a)非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマーの重量平均分子量が50万〜150万であることを特徴とする請求項1に記載の二成分混和型イオン徐放性義歯床用関連材料組成物。
  6. イオン徐放性ガラス (b)が
    pHを4.0に調整した乳酸水溶液10gに対してイオン徐放性ガラスを0.1g加え、5分間撹拌させた時のpH変化を測定することにより確認することできる。その時のpHが5.5以上であることを特徴とする請求項1に記載の二成分混和型イオン徐放性義歯床用関連材料組成物。
  7. ポリシロキサン被覆イオン徐放性ガラスに対する酸性ポリマーの量は1〜7重量%であることを特徴とする請求項1に記載の二成分混和型イオン徐放性義歯床用関連材料組成物。
  8. イオン徐放性ガラス表面を被覆するシラン化合物の添加量はイオン徐放性ガラス100重量部に対して、シラン化合物のSiをSiO2に換算して0.1〜10重量部であることを特徴とする請求項1に記載の二成分混和型イオン徐放性義歯床用関連材料組成物。
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