図1は、基板処理システムの一例の電気的構成を模式的に示すブロック図である。図2は、図1の基板処理システムの機械的構成を模式的に示す平面図である。図2および後述する図面では、XY直交座標軸が適宜示される。また、以下では、各座標軸の矢印方向を正方向と適宜称するとともに、各座標軸の矢印と逆方向を負方向と適宜称する。
この基板処理システム1000では、X軸方向(図2)に直列に並ぶ印刷機100、3台の実装機200(m)および炉300から構成されるラインLb、Lf(基板生産ライン)が、2本並列に並んでいる。また、基板処理システム1000は、印刷機100、実装機200(m)および炉300等の基板処理装置を統括的に制御するホストコンピュータ400(図1)を備える。ここで、括弧内の「m」は、実装機200を、1、2、3、…の番号により分類する正の整数である。
印刷機100は、機内に搬入されてきた基板Sに対して半田を印刷し、印刷済みの基板Sを機外へ搬出するものであり、例えば特開2010−56141号公報等に記載の印刷機と同様に構成することができる。実装機200(m)は、機内に搬入されてきた半田印刷済みの基板Sに対して部品を実装し、部品実装済みの基板Sを機外へ搬出するものであり、例えば特開2010−272549号公報に記載の実装機と同様に構成することができる。また、炉300は、炉内に搬入されてきた部品実装済みの基板Sに対してリフローを行って、実装部品と基板Sとを半田接合するものであり、例えば特開2008−300526号公報に記載のリフロー炉と同様に構成することができる。
図2に示すように、Y軸方向に並ぶ2つのラインLb、Lfの基板搬送方向Db、Dfは互いに平行でかつ逆向きとなっている。詳しくは、ラインLbの基板搬送方向DbはX軸正方向を向いており、ラインLfの基板搬送方向DfはX軸負方向を向いている。そして、各ラインLb、Lfでは、それぞれの基板搬送方向Db、Dfに沿って、印刷機100、3台の実装機200(m)および炉300がこの順番で間隔を空けて並んでいる。つまり、ラインLbでは、X軸正方向(基板搬送方向Db)に向かって印刷機100、3台の実装機200(m)および炉300がこの順番で間隔を空けて並ぶ一方、ラインLfでは、X軸負方向(基板搬送方向Df)に向かって印刷機100、3台の実装機200(m)および炉300がこの順番で間隔を空けて並ぶ。
この際、ラインLbを構成する5台の基板処理装置100、200(m)、300と、ラインLfを構成する5台の基板処理装置100、200(m)、300とは、基板処理装置100と基板処理装置300、基板処理装置200(m)と基板処理装置200(m)が、それぞれY軸方向に一対一で隣り合うように配置されている。見方を変えれば、異なるラインLb、Lfに属しつつY軸方向に隣り合う2台の同一機種あるいは異なる機種の基板処理装置100、200、300からなる装置対1が、X軸方向に間隔を空けて5つ並んでいる。そして、X軸方向に並ぶ装置対1の間には、Y軸方向に延びる2本のレールをX軸方向に並べたレール対2が2対ずつ、ラインLb、Lfを跨ぐように配置されている。
各レール対2には、当該レール対2に沿ってY軸方向に移動自在な可動テーブル3が2つずつ設けられている。また、この可動テーブル3の上面には、X軸方向に基板Sを搬送可能な2本のコンベアをY軸方向に並べたコンベア対4が設けられている。したがって、コンベア対4は、可動テーブル3と一体的にY軸方向に移動自在となっている。
基本的には、このコンベア対4は、図2に示すように、X軸方向に隣り合う基板処理装置100、200(m)、300の間の受渡位置P(n)に位置して、基板搬送方向Db、Dfに搬送されてきた基板Sを受け取る。ここで、括弧内の「n」は、受渡位置Pを、1、2、3、…の番号により分類する正の整数である。そして、各コンベア対4は、一方のラインLb、Lfの受渡位置P(n)に搬送されてきた基板Sを他方のラインLf、Lbの受渡位置P(n)へ受け渡す受渡動作と、一方のラインLb、Lfの受渡位置P(n)に搬送されてきた基板Sを他方のラインLf、Lbの受渡位置P(n)へ受け渡さずに、一方のラインLb、Lfの基板搬送方向Db、Dfに向けて送り出す送出動作とを、選択的に実行することが可能となっている。したがって、基板処理システム1000は、ラインLb、Lfのそれぞれで独立して基板生産を行う独立生産動作のほか、ラインLb、Lfの間で基板Sを受け渡しつつ基板生産を行うこともできる。
ここで、ラインLbの印刷機100(複数の基板処理機100,200、300のうちの最上流機)を搬送起点として、複数の実装機200を経由してラインLbあるいはラインLfの炉300に至る基板の搬送経路をRa(m)で表し、ラインLfの印刷機100(同最上流機)を搬送起点として、複数の実装機200を経由してラインLfあるいはラインLbの炉300に至る基板の搬送経路をRb(n)で表すとする。ここで、括弧内の「m」は、ラインLbの印刷機100を搬送起点とする搬送経路を、1、2、3、…の番号により分類する正の整数であり、括弧内の「n」は、ラインLfの印刷機100を搬送起点として搬送経路を、1、2、3、…の番号により分類する正の整数である。
ラインLb上の複数の基板処理機100,200、300のみを使う基板生産と、ラインLf上の複数の基板処理機100,200、300のみを使う基板生産を、独立並行して実施する独立生産動作(以下ライン毎の独立生産動作と言う)の際は、各コンベア対4は送出動作を実行して、基板搬送方向Db、Dfに沿って受渡位置P(n)に搬送されてきた基板Sを、そのまま受渡位置P(n)から基板搬送方向Db、Dfへと送り出す。つまり、ラインLb、Lfは、それぞれの印刷機100を搬送起点としてそれぞれの基板搬送方向Db、Dfに沿った搬送経路Ra(1)、Rb(1)にそれぞれ基板を搬送しつつ、基板処理装置100、200、300に基板Sへの処理(印刷、部品実装、リフロー)を実行させる。こうしてライン毎の独立生産動作では、ラインLb、Lfに沿った各搬送経路Ra(1)、Rb(1)へ重複したタイミングでそれぞれ基板Sを搬送しつつ、各搬送経路Ra(1)、Rb(1)(すなわち各ラインLb、Lf)でそれぞれ基板Sへの処理を実行する。
一方、図2の矢印で示すように、基板処理システム1000は、一部のコンベア対4に上述の受渡動作を実行させることで、ライン毎の独立生産動作の搬送経路とは異なる2つの搬送経路でそれぞれ基板Sを搬送しつつ、印刷、部品実装、リフローの一連の処理を基板Sに実行する、それぞれラインLb、Lfの両方に跨る2つの搬送経路を使った独立生産動作をすることができる。図2に示す例では、基板処理システム1000は、受渡位置P(3)で基板Sを受け取ったコンベア対4に受渡動作を実行させて、ラインLbからラインLfへ基板Sを受け渡す。具体的には、ラインLbにおいて、搬送起点となる印刷機100で半田印刷を受けた基板Sは、基板搬送方向Dbに搬送されつつ、実装機200(1)による部品実装を受けて、受渡位置P(3)に到る(図2の1段目の状態)。この状態から、受渡位置P(14)に位置していたコンベア対4が受渡位置P(14)からY軸負方向に退避するのに伴って、受渡位置P(3)で基板Sを受け取ったコンベア対4がY軸負方向に受渡位置P(14)にまで移動する(図2の2段目の状態)。
こうして、ラインLbの受渡位置P(3)からラインLfの受渡位置P(14)へと受け渡された基板Sは、ラインLfにおいて、基板搬送方向Dfへ搬送されつつ、実装機200(6)による部品実装を受けた後に、炉300によるリフローを受ける。こうして、基板処理システム1000は、図2に示す動作を実行して、ラインLbからラインLfへ基板Sを受け渡すことで、ライン毎の独立生産動作での搬送経路Ra(1)とは異なる搬送経路Ra(2)で基板Sを搬送しつつ、印刷、部品実装、リフローの一連の処理を実行できる。
ちなみに、ラインLbにおいて受渡位置P(3)より基板搬送方向Dbの下流側に存在する基板処理装置200(2)、200(3)、300の台数(3台)と、受渡位置P(14)より基板搬送方向Dfの下流側で搬送経路Raに存在する基板処理装置200(6)、300の台数(2台)とは異なっている。したがって、ライン毎の独立生産動作で基板処理を行うラインLbの基板処理装置100、200(m)、300の台数(5台)と、搬送経路Ra(2)に沿って存在する基板処理装置100、200、300の台数(4台)とは異なることとなる。このように、基板Sの搬送経路を適宜切り換えることで、基板Sへの処理を行う基板処理装置100、200、300の台数を変更することが可能となっている。
特に、この実施形態では、ラインLbにおいて受渡位置P(3)より基板搬送方向Dbの下流側に存在する実装機200(m)の台数(2台)と、受渡位置P(14)より基板搬送方向Dfの下流側で搬送経路Ra(2)に存在する実装機200の台数(1台)とは異なっている。したがって、ライン毎の独立生産動作で部品実装を行う搬送経路Ra(1)での実装機200(m)の台数(3台)と、搬送経路Ra(2)に搬送される基板Sへの部品実装を行なう実装機200の台数(2台)とは異なることとなる。このように、基板Sの搬送経路を適宜切り換えることで、基板Sへ部品実装を行う実装機200(m)の台数を変更することが可能となっている。
また、ラインLbからラインLfへの基板Sの受け渡しと同様にして、基板処理システム1000は、ラインLfからラインLbへ基板Sを受け渡すことで、ライン毎の独立生産動作の搬送経路Rb(1)とは異なる搬送経路Rb(2)で基板Sを搬送することもできる。この場合、搬送経路Rb(2)を使って基板処理を行う基板処理装置100、200(m)、300の台数や実装機200(m)の台数が、ライン毎の独立生産動作の搬送経路Rb(1)の場合と比較して異なる点は、ラインLbの印刷機100を搬送起点とする場合と同様である。こうして、2つの搬送経路Ra(2)、Rb(2)にそれぞれ基板Sを搬送しつつ、各搬送経路Ra(2)、Rb(2)でそれぞれ基板Sへの処理を独立して実行する、それぞれラインLb、Lfの両方に跨る2つの搬送経路を使った(ライン相互乗り入れの)独立生産動作を実行できる。すなわち、2つの搬送経路Ra(2)、Rb(2)におけるそれぞれの搬送は、搬送のタイミングを重複させても、重複させなくても可能である。
なお、この独立生産動作は、基板処理装置100と基板処理装置200(1)の間、基板処理装置200(m-1)と基板処理装置200(m)の間、基板処理装置200(mmax)と基板処理装置300のそれぞれの間に、レール対2と、コンベア対4が設けられた可動テーブル3からなる基板受渡装置が2機X方向に並べて配置されており、互いに独立且つ並行して基板の受け渡しが可能とされているからである。ここで、「mmax」は、基板処理装置を分類する正の整数「m」のうち、対象となるラインでの最大値を表し、図2の例では、ラインLbのmmaxは3であり、ラインLfのmmaxは6である。
このように、基板処理システム1000では、2本のラインLb、Lfが設けられており、ラインLb、Lfそれぞれで独立して基板Sへの処理を実行する動作や、ラインLb、Lfの間で基板Sを受け渡して搬送経路Ra(2)、Rb(2)それぞれで基板Sの処理を実行する動作を、選択的に実行することができる。すなわち、各搬送経路Ra(1)、Rb(1)でそれぞれ基板Sへの処理を、並行且つ独立して実行するように基板Sを搬送し基板Sに処理する搬送処理パターンと、各搬送経路Ra(2)、Rb(2)でそれぞれ基板Sへの処理を、並行且つ独立して実行するように基板を搬送する搬送処理パターンの2通りの搬送処理パターンの内、より適切な方で、複数の搬送経路で基板Sへの処理を独立且つ並行して実行することができる。
また、図2に示すように、基板Sの受け渡しは、上述した受渡位置P(3)、P(13)以外の受渡位置P(n)、例えば受渡位置P(5)、P(11)の組み合わせによっても、受渡位置P(3)、P(11) の組み合わせによっても実行可能である。すなわち、受渡位置P(3)、P(13)以外の受渡位置P(n)で基板SをラインLb、Lfの間で受け渡すことで、上述した搬送経路Ra(1)、Rb(1)の組み合わせからなる搬送処理パターンや搬送経路Ra(2)、Rb(2)の組み合わせからなる搬送処理パターン以外の、搬送経路Ra(m)、Rb(n)の組み合わせからなる搬送処理パターンで、基板Sをそれぞれ搬送経路Ra(m)と搬送経路Ra(n)に搬送することができ、搬送経路Ra(m)と搬送経路Ra(n)においてそれぞれ基板Sへの処理を独立且つ並行して実行することができる。
なお、ラインLbの印刷機100を搬送起点とする搬送実装Aの搬送経路の内、受渡位置P(7)あるいは受渡位置P(8)で受け渡す場合には、実装機200(1)〜200(6)の6台で実装する一方、ラインLfの印刷機100を搬送起点とする搬送実装Bを実施せず、基板Sへの印刷も実装もしないことも可能である。
つまり、ラインLbの印刷機100を搬送起点とする搬送実装Aの搬送経路で4通り(受け渡しなし、受渡位置P(3)で受け渡し、受渡位置P(5)で受け渡し、および受渡位置P(7)あるいは受渡位置P(8)で受け渡し)、ラインLfの印刷機100を搬送起点とする搬送実装Bの搬送経路で4通りのパターン(受け渡しなし、受渡位置P(11)で受け渡し、受渡位置P(13)で受け渡し、および受渡位置P(15) あるいは受渡位置P(16)で受け渡し)がある。そして、搬送実装Aと搬送実装Bとを同時並行して実施する場合の、搬送起点を別とする、搬送経路を組み合わせた搬送処理パターンには4通り(搬送実装A、Bともに途中受け渡しなし、搬送実装Aの途中受渡位置P(3)で受け渡すとともに搬送実装Bの途中受渡位置P(13)で受け渡し、搬送実装Aの途中受渡位置P(3)で受け渡すとともに搬送実装Bの途中受渡位置P(11)で受け渡し、搬送実装Aの途中受渡位置P(5)で受け渡すとともに搬送実装Bの途中受渡位置P(11)で受け渡し)が有る。これらの2つの搬送経路を使った独立の生産動作によれば、所定時間当たりに実装完了することができる基板枚数を多くできる。
なお、これらの2つの搬送経路を使った独立の生産動作以外に、搬送実装Aのみ、あるいは搬送実装Bのみによる生産動作も有りえる。すなわち、搬送実装Aの搬送経路で受渡位置P(7)あるいは受渡位置P(8)で受け渡しする一方、搬送実装Bは実施せずと、搬送実装Bの搬送経路で受渡位置P(15)あるいは受渡位置P(16)で受け渡しする一方、搬送実装Aは実施せずの2通りがある。、これらの1つの搬送経路を使った搬送処理パターンによっても、生産動作において6台の実装機200を使い分担して実装ができるので、所定時間当たりに実装完了することができる基板枚数を多くできる。
そして、このような構成では、6通り複数の搬送処理パターンから適切な搬送処理パターンを選択することができる。そして、選択された搬送パ処理ターンが示す一つあるいは複数の搬送経路それぞれに基板Sを搬送しつつ、各搬送経路の基板処理装置100、200(m)、300に基板Sへの処理を実行させることができる。特にこの実施形態では、ホストコンピュータ400が、複数の搬送処理パターンから候補となる搬送処理パターンを決定して作業者に提示する。続いては、複数の搬送処理パターンから候補となる搬送処理パターンを決定する構成および動作について詳述する。
図3は、搬送処理パターンの候補を提示するホストコンピュータの構成を模式的に示すブロック図である。図3に示すように、ホストコンピュータ400は、演算処理を司るコントローラ410の他に、ユーザーインターフェース420を備える。ユーザーインターフェース420は、キーボードおよびマウスからなる入力機器と、ディスプレイからなる出力機器を有している。したがって、作業者は、出力機器の表示を確認しながら入力機器を介してホストコンピュータ400に各種情報を入力したり、ホストコンピュータ400の演算結果を出力機器の表示により確認したりすることができる。
コントローラ410は、CPU(Central Processing Unit)やメモリー等で構成された演算処理部430と、ハードディスク等で構成された記憶部440を有する。演算処理部430では、搬送処理パターン算出部431および所要値算出部432が構築されている。具体的には、ホストコンピュータ400のコントローラ410は、メディア500に記憶されたプログラム600を読み出して、このプログラム600に従って各算出部431、432を演算処理部430に構築する。このメディア500としては、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、USB(Universal Serial Bus)メモリー等の種々のものを使用可能である。
搬送処理パターン算出部431は、基板処理システム1000において実行可能な複数の搬送処理パターンC(k)を算出する。ここで、括弧内の「k」は、搬送処理パターンCを、1、2、3、…の番号により分類する正の整数である。搬送実装Aを行う搬送経路Ra(m)において、基板処理装置100、200(m)、300のそれぞれにおいて、基板を順次処理する際、基板が順次搬入されるタイミングの時間ピッチと、基板が処理を終えて順次搬出されるタイミングの時間ピッチとは等しくされ、この時間ピッチがタクトタイムTtacAとなる。なお、基板処理装置100、200(m)においては、搬入された基板が処理を終えて搬出されるまでの時間がタクトタイムTtacAと一致するようにされることが多い一方、基板処理装置300においては、搬入された基板が処理を終えて搬出されるまでの時間はタクトタイムTtacAよりかなり長くされる。所要値算出部432は、搬送経路Ra(m)におけるタクトタイムTtacAと、このタクトタイムTtacAと同様に定義される搬送実装Bを行う搬送経路Rb(m)においてのタクトタイムTtacBに基づき、複数の搬送処理パターンC(k)それぞれに対応した仮想のタクトタイムTtac(搬送実装Aによる基板と搬送実装Bによる基板とに拘わらず、基板システム1000により連続生産される基板の平準化された処理の時間ピッチ)を算出する。
すなわち搬送処理パターンC(k)において並行実施される場合の搬送実装AのタクトタイムTtacAと、同じく搬送処理パターンC(k)において並行実施される場合の搬送実装BのタクトタイムTtacBから、搬送処理パターンC(k)におけるタクトタイムTtac は、TtacA×TtacB/(TtacA+TtacB)で算出される。但し、搬送実装Aと搬送実装Bのいずれか一方が実施されない場合は、他方のタクトタイムがそのままタクトタイムTtacとなる。
そして、コントローラ410は、搬送処理パターンC(k)毎に算出されたタクトタイムTtac(k)に基づいて、複数の搬送処理パターンC(k)から候補となる搬送処理パターンCoを選択して、記憶部440に記憶する。
一方、記憶部440には、この候補となる搬送処理パターンCo以外に、マシン情報441、コンベア配置情報442および実装プログラム443が記憶されている。マシン情報441は、実装機200(m)が実装可能な部品の種類等を示す情報であり、コンベア配置情報442は、コンベア対4の場所を示す情報である。実装プログラム443は、基板処理システム1000で実行される基板Sへの部品実装を制御するプログラムであり、この実装プログラム443に基づいて基板処理システム1000の各実装機200(m)は部品の実装を行う。
図4は、搬送処理パターンの候補を決定するためにホストコンピュータが実行するフローを示すフローチャートである。このフローチャートは、プログラム600に組み込まれており、演算処理部430によって実行される。ステップS101では、演算処理部430が、搬送処理パターンC(k)の候補を決定するために必要となる各種情報を取得する。具体的には、演算処理部430は、マシン情報441、コンベア配置情報442、実装プログラム443等を記憶部440から取得する。
ステップS102では、搬送処理パターン算出部431が、実行可能な複数の搬送処理パターンC(k)を各種情報に基づいて選出する。具体的には、コンベア配置情報442からコンベア対4の場所が特定され、この特定結果から所定条件の下で取りうる搬送経路が全て求められる。この所定条件としては、各搬送経路で実行される受渡動作の上限回数を例えば1回にするといった条件や、同じ位置の基板処理装置100、200(m)、300で1枚の基板Sが処理を受ける上限回数を例えば1回にするといった条件等が設定可能である。そして、これらの搬送経路のうちから、異なるラインLb、Lfのそれぞれ印刷機100を搬送起点としてそれぞれ基板Sを搬送可能な2つの搬送経路の組み合わせ(例えば、上述した搬送経路Ra、Rb)が全て算出され、それぞれが搬送処理パターンC(k)として求められる。
こうして求められた全ての搬送処理パターンC(1)、C(2)、…について、ステップS103〜S107のループが実行される。ステップS104では、所要値算出部432が、ループ対象の搬送処理パターンC(k)が示す1つあるいは2つの搬送経路それぞれのタクトタイムTtacA、タクトタイムTtacB、および搬送処理パターンC(k)としてのタクトタイムTtacをマシン情報に基づいて算出して、その算出の成否を判断する。具体的には、実装機200(m)のそれぞれが部品を基板Sに搭載するのに要する部品搭載時間が、部品の種類毎にマシン情報441として記憶されている。そして、所要値算出部432は、基板Sへの搭載部品の種類および個数を実装プログラム443から取得するとともに、算出対象搬送経路の各実装機200において、搭載部品個数に部品搭載時間を乗じた値を基板Sに搭載される全種類の部品について足し合わせることで、基板1枚毎に処理を行う各実装機200の処理時間が計算でき、さらに、基板1枚毎に処理を行う印刷機での印刷時間を含めたこれらの処理時間の最大のものに、基板処理機100、200(m)、300の間で、次の基板処理機に基板を並行して搬送するために搬送時間を加えた時間が、タクトタイムTtacA、あるいはタクトタイムTtacBとなる。このようにして算出した各搬送経路のタクトタイムTtacA、あるいは/およびタクトタイムTtacBから、搬送処理パターンC(k)に対応する平準化されたタクトタイムTtacを算出する。
ちなみに、基板Sに実装すべき部品を搭載できる実装機200(m)を算出対象の搬送経路を有さない場合は、タクトタイムTtacA、あるいはタクトタイムTtacBの算出が失敗することとなる。そこで、所要値算出部432は、タクトタイム算出の成否を判断し、成功した場合はステップS105に進む一方、失敗した場合はステップS107に進む。
ステップS105では、演算処理部430は、算出したタクトタイムTtacが、自身のメモリーに保持する保持値より短いか否かを判断する。ステップS105における演算処理部430の具体的動作は次のとおりである。まず、演算処理部430は、搬送処理パターンC(k)が示す各搬送経路の各基板処理装置100、200、300を駆動する実行プログラム433に基づき、搬送実装AのタクトタイムTtacA、および搬送実装BのタクトタイムTtacBを算出し、さらに、搬送処理パターンC(k)としてのタクトタイムTtacをTtacA×TtacB/(TtacA+TtacB)により算出する(搬送実装Aのみ実施する場合は、Ttac=TtacA、搬送実装Bのみ実施する場合は、Ttac=TtacBとする)。
そして、既に演算処理部430に保持されている他の搬送処理パターンのタクトタイムTtacと比較して、ここで求めた搬送処理パターンC(k)のタクトタイムTtacが短いか否かが判断される。そして、短い場合(ステップS105で「YES」の場合)はステップS106に進んでこのタクトタイムTtacを演算処理部430に更新・保持した後にステップS107に進む。一方、短くない場合(ステップS105で「NO」の場合)は、ステップS106をとばして、ステップS107に進む。
このようなステップS104〜S106は、全ての搬送処理パターンC(1)、C(2)、…について実行され、タクトタイムTtacが最短となる搬送処理パターンが候補の搬送処理パターンCo(選択搬送処理パターン)と決定される。そして、ステップS108では、候補となる搬送処理パターンCoの示す各搬送経路が、ユーザーインターフェース420のディスプレイに表示される。
なお、タクトタイムTtacそのものではなく、搬送処理パターンC(k)を使って所定数の基板Sの全てに実装を完了させるのに必要な予想処理時間Tpを各搬送処理パターンC(k)について求め、予想処理時間Tpを求めた各搬送処理パターンC(k)の内、予想処理時間Tpが最短となる搬送処理パターンを候補の搬送処理パターンCo(選択搬送処理パターン)として決定することもできる。
まず、演算処理部430は、搬送処理パターンC(k)が示す各搬送経路で処理を行う基板Sの枚数(搬送実装Aを行う基板枚数はNsA,搬送実装Bを行う基板枚数はNsB)と、基板SをラインLbの印刷機100に投入してから、その基板が搬送実装Aの全ての処理を終えて炉300から出てくるまでの総処理時間TAと、基板SをラインLfの印刷機100に投入してから、その基板が搬送実装Bの全ての処理を終えて炉300から出てくるまでの総処理時間TBとを、実装プログラム443から取得する。なお、総処理時間TAと総処理時間TBを演算により求めることもできる。
そして、タクトタイムTtacAと(NsA−1)の積に基板1枚への総処理時間TAを加えたものが、ラインLbの印刷機100を搬送起点とする搬送実装Aにより基板枚数NsAの基板S全てに実装処理を行うための予想処理時間TpAとなり、タクトタイムTtacBと(NsB−1)の積に基板1枚への総処理時間TBを加えたものが、ラインLfの印刷機100を搬送起点とする搬送実装Bにより基板枚数NsBの全てに実装処理を行うための予想処理時間TpBとなる。演算処理部430は、各搬送処理パターンC(k)毎にこれらの予想処理時間TpAとTpBを算出するとともに、予想処理時間TpAと予想処理時間TpBの内長い方を最長の予想処理時間Tpxとして求める。
すなわち、搬送実装Aを行う基板枚と搬送実装Bを行う基板が互いに異種の場合は、以上のようにして最長の予想処理時間Tpxを求めることができる。しかしながら、同一基板Sに両搬送実装A、Bを行う場合には、予想処理時間TpA=予想処理時間TpBを満足するよう、基板枚数NsAと基板枚数NsBが決められるのが望ましく、この場合は、最長予想処理時間Tpx=予想処理時間TpA=予想処理時間TpBとなる。
そして、既に演算処理部430に保持されている他の搬送処理パターンの最長予想処理時間と比較して、ここで求めた搬送処理パターンC(k)の最長予想処理時間Tpxが短いか否かが判断される。そして、短い場合(ステップS105で「YES」の場合)はステップS106に進んでこの最長予想処理時間Tpxを演算処理部430に更新・保持した後にステップS107に進む。一方、短くない場合(ステップS105で「NO」の場合)は、ステップS106をとばして、ステップS107に進む。
このようなステップS104〜S106は、全ての搬送処理パターンC(1)、C(2)、…について実行され、最長予想処理時間Tpxが最短となる搬送処理パターンを候補の搬送パ処理ターンCo(選択搬送処理パターン)と決定する。そして、ステップS108では、候補となる搬送処理パターンCoの示す各搬送経路が、ユーザーインターフェース420のディスプレイに表示される。
以上に説明したように、この実施形態では、基板Sを基板搬送方向Db、Dfに搬送しつつ基板搬送方向Db、Dfに並ぶ複数の基板処理装置100、200(m)、300で基板Sへの処理を実行するラインLb、Lfが複数並べられている。そして、基板処理システム1000は、異なるラインLb、Lfの間で基板Sを受け渡して基板Sの搬送経路を切換可能であって、異なるラインLb、Lfの基板処理装置(印刷機)100を搬送起点とする複数の搬送経路それぞれに基板Sを搬送し並行して実装基板を生産する搬送処理パターンC(k)を複数通り実行可能となっている。したがって、複数通りの搬送処理パターンC(k)から適切な選択搬送処理パターンCoを選択することができ、換言すれば、この選択搬送処理パターンCoが示す搬送経路を、適切な搬送経路として選択することができる。しかも、この選択搬送処理パターンCoに従って基板搬送を行なうことで、異なるラインLb、Lfの基板処理装置(印刷機)100を搬送起点とする複数の搬送経路それぞれに基板Sを搬送し並行して実装基板を生産することができる。その結果、基板処理を効率的に行うことができる。こうして、この実施形態では、適切な搬送経路で基板処理を実行可能としつつ、基板処理の効率性を高めることが可能となっている。
なお、基板Sによっては、ラインLb、Lfのいずれか一方の基板処理装置(印刷機)100を搬送起点とする一つの搬送経路のみからなる搬送処理パターンC(k)で、基板処理を効率的に行うことができる場合(搬送経路中の基板処理装置(印刷機)100の処理時間が短く、且つ搬送経路中の実装機200(m)の数が増えることでタクトタイムTtacAあるいはタクトタイムTtacBが大きく短くなる場合)がある。これも、上記した通り複数通りの搬送処理パターンC(k)に含ませて、適切な選択搬送処理パターンCoを選択するようにしており、適切な搬送経路で基板処理を実行可能としつつ、基板処理の効率性を高めることが可能となっている。
また、この実施形態では、ラインLbの基板処理装置(印刷機)100を搬送起点とする複数の搬送経路と、ラインLfの基板処理装置(印刷機)100を搬送起点とする複数の搬送経路とから、それぞれ一つを組み合わせる複数通りの搬送処理パターンC(k)のうちから、選択した選択搬送処理パターンCoが示す、複数の搬送経路それぞれに基板Sを搬送し並行して実装基板を生産することができる複数の搬送経路の組み合わせを候補として決定する構成(ホストコンピュータ400)が設けられている。したがって、複数通りの搬送処理パターンC(k)から選択された選択搬送処理パターンCoが示す搬送経路の組み合わせの候補を、適切な搬送経路の組み合わせとして選択することができる。そして、候補となった2つ搬送経路それぞれに基板Sを搬送することで、2つの搬送経路のそれぞれで実装基板の生産を並行して実行することができるとともに、基板処理を効率的に行うことができる。つまり、かかる構成を備えることは、適切な搬送経路で基板処理を実行可能としつつ、基板処理の効率性を高めることを可能とするにあたって有利となる。
ちなみに、複数通りの搬送処理パターンC(k)から選択搬送処理パターンCoを選択する基準は種々のものが考えられる。そこで、この実施形態では、複数の搬送経路それぞれにおいて1枚の基板Sに対して必要な処理が完了するのに要するタクトタイムTtacA, タクトタイムTtacBを、搬送処理パターンC(k)毎に予測し、さらにタクトタイムTtacA, タクトタイムTtacBにより算出される基板処理システム1000としてのタクトタイムTtacを予測した結果に基づいて、選択搬送処理パターンCoが選択される。
この際、2つの搬送経路それぞれで、基板処理の進捗が平準化されることが好適となる。なぜなら、一の搬送経路の基板処理の進捗が極端に遅いと、これがボトルネックとなって基板処理システム1000全体の処理能力を低下させるおそれがあるからである。
なお、2つの搬送経路それぞれにおける基板処理枚数NsA、NsBの差も基板処理システム1000全体の処理能力に影響する。そこで、この実施形態では、ラインLbの印刷機100を搬送起点とする搬送実装Aにより基板枚数NsAの基板S全てに実装処理を行うための予想処理時間TpAと、ラインLfの印刷機100を搬送起点とする搬送実装Bにより基板枚数NsBの全てに実装処理を行うための予想処理時間TpBが求められ、さらに、予想処理時間TpAと予想処理時間TpBのうち長い方が、その搬送処理パターンC(k)における最長予想処理時間Tpxとして求められる。これらの演算が、複数の搬送処理パターンC(k)に対して行なわれ、この複数の搬送処理パターンC(k)において最長予想処理時間Tpxが最短である搬送処理パターンが、選択搬送処理パターンCoとして選択される。このような構成では、複数の搬送経路それぞれで基板処理の進捗を比較的平準化することができ、基板処理システム1000全体の処理能力を向上することができる。
以上のとおり、この実施形態では、ホストコンピュータ400が本発明の「基板搬送経路候補決定装置」に相当し、基板処理システム1000が本発明の「基板処理システム」に相当し、メディア500が本発明の「記録媒体」に相当し、プログラム600が本発明の「プログラム」に相当し、基板処理装置100、200(m)、300が本発明の「基板処理手段」に相当し、コントローラ410が本発明の「候補決定手段」に相当し、コンベア対4が本発明の「切換手段」に相当し、ラインLb、Lfが本発明の「ライン」に相当し、基板搬送方向Db、Dfが本発明の「基板搬送方向」に相当し、基板Sが本発明の「基板」に相当し、搬送処理パターンC(k)が本発明の「搬送処理パターン」に相当し、搬送処理パターンCoが本発明の「選択搬送処理パターン」に相当する。
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、上述したもの以外に種々の変更を行なうことが可能である。例えば、上記実施形態では、ステップS102において、搬送処理パターン算出部431が取りうる全ての搬送処理パターンC(k)を算出して、複数の搬送処理パターンC(1)、C(2)、…を求めていた。しかしながら、作業者において、複数の搬送処理パターンC(1)、C(2)、…を設定するように構成しても良い。
また、図2において、レール対2と、コンベア対4が設けられた可動テーブル3からなり、ラインLbとラインLfの間で基板Sを受け渡す基板受渡装置を、1機のみ基板処理装置100と基板処理装置200(1)の間、基板処理装置200(m-1)と基板処理装置200(m)の間、基板処理装置200(mmax)と基板処理装置300のそれぞれの間に配置するようにしても良い。
この場合は、搬送実装AにおけるタクトタイムTtacAと搬送実装BにおけるタクトタイムTtacBは長い方に共通化し、搬送実装Aにおける一斉の基板搬送中に、ラインLbとラインLfとの間の基板S受け渡しも行なう一方、搬送実装Bにおける各基板処理装置100,200での処理を一斉に実施することと、搬送実装Bにおける一斉の基板搬送中に、ラインLbとラインLfとの間の基板S受け渡しも行なう一方、搬送実装Aにおける各基板処理装置100,200での処理を一斉に実施することとが、交互に実施される。搬送実装Aにおける基板処理装置300,および搬送実装Bにおける基板処理装置300のそれぞれの基板搬入,および基板搬出は、それぞれの一斉の基板搬送中に実施するようにし、それぞれの基板への処理は、他の基板処理装置100,200での処理の複数回分の時間実施される。
この場合でも、複数の搬送処理パターンC(1)、C(2)、…それぞれにおけるタクトタイムTtacA(=タクトタイムTtacB)を比較し、短いタクトタイムとなる搬送処理パターンC(k)が選択搬送処理パターンCoとして選択される。あるいは、複数の搬送処理パターンC(1)、C(2)、…それぞれにおける搬送実装Aにより基板枚数NsAの基板S全てに実装処理を行うための予想処理時間TpAと、搬送実装Bにより基板枚数NsBの全てに実装処理を行うための予想処理時間TpBと、これらの予想処理時間TpAと予想処理時間TpBのうち長い方から最長予想処理時間Tpxとを求め、求められる複数の最長予想処理時間Tpxを比較し、短い最長予想処理時間Tpxとなる搬送処理パターンC(k)が選択搬送処理パターンCoとして選択されるようにしても良い。このような構成により、複数の搬送経路それぞれで基板処理の進捗を比較的平準化することができ、基板処理システム1000全体の処理能力を向上することができる。
図5は、複数の搬送処理パターンの設定方法の変形例を示す図であり、ユーザーインターフェース420のディスプレイに示される搬送処理パターンの設定画面700を例示する。この設定画面700では、ライン1とはラインLbを示し、ライン2とはラインLbを示す。また、実装機1、2、3は、対応するラインLb、Lfにおいて基板搬送方向Db、Dfの上流側から数えて該当数字の位置にある実装機200(m)を示す。例を挙げると、ライン2の実装機1は、図2の実装機200(4)を示す。
この変形例では、基板Sが搬送される実装機200(m)の順序を指定することで、複数通り(ここでは10通り)の搬送処理パターンC(1)、C(2)、…を作業者が設定することができる。つまり、各搬送処理パターンC(k)のラインLbの印刷機100を搬送起点とする搬送実装Aの搬送経路Raと、ラインLfの印刷機100を搬送起点とする搬送実装Bの搬送経路Rbそれぞれについて、1台目〜6台目までの実装機200(m)が設定可能となっている。具体的には、マウスでポインタ710を動かして、対応する台数の欄の右端にある三角マークをクリックすることで、列挙された実装機200(m)から所望の実装機を選択することができる。また、例えば実装機200(m)を3台のみ用いた搬送経路を設定する場合には、4台目以後の欄について「なし」を選択すれば良い。
こうして、例えば、10通りの搬送処理パターンC(k)が作業者により設定されると、演算処理部430は、この10通りの搬送処理パターンC(k)について図4のステップS103〜S108の処理を実行する。これによって、この変形例においても、候補となる搬送処理パターンCoの示す各搬送経路を、ユーザーインターフェース420のディスプレイに表示することができる。
また、基板処理システムの具体的構成についても適宜変更が可能である。図6は、変形例にかかる基板処理システムの機械的構成を模式的に示す平面図である。図6に示す例では、レール対2は、X軸方向に並ぶ装置対1の間に1対ずつ設けられている。そして、各レール対2に、2つのコンベア対4がY軸方向に並んで設けられている。さらに、ラインLb、Lfの間には、コンベア対5が設けられている。より詳しくは、このコンベア対5は、複数のレール対2の各間に配置され、両端の2つのレール対2の間でX軸方向に基板Sを搬送するものである。したがって、上述したラインLb、Lfのそれぞれライン毎の独立生産動作と同様の動作を実行できることはもちろんのこと、可動テーブル3、コンベア対4、5を動作させることで、ラインLbの受渡位置P(1)〜P(4)とラインLfの受渡位置P(5)〜P(8)との間で相互に基板Sを受け渡しながら、ラインLbの印刷機100を搬送起点とする搬送実装Aか、あるいはラインLfの印刷機100を搬送起点とする搬送実装Bのいずれかを単独で実施することができる。
図6の矢印の動作を例示して説明すると次のとおりである。基板処理システム1000は、受渡位置P(2)で基板Sを受け取ったコンベア対4に受渡動作を実行させて、ラインLbからラインLfへ基板Sを受け渡す。具体的には、ラインLbにおいて、印刷機100による半田印刷を受けた基板Sは、基板搬送方向Dbに搬送されつつ、実装機200による部品実装を受けて、受渡位置P(2)に到る(図6の1段目の状態)。この状態から、受渡位置P(2)で基板Sを受け取ったコンベア対4が、可動テーブル3の移動によりY軸負方向に中継位置Pbにまで移動する(図6の2段目の状態)。
続いて、中継位置Pbに移動してきた基板Sは、コンベア対5によって中継位置Paへと向けてX軸負方向に搬送される。これに並行して、受渡位置P(5)に位置していたコンベア対4が可動テーブル3の移動により中継位置Paに移動して、コンベア対5によって中継位置Paへと搬送されてきた基板Sを受け取る(図6の3段目の状態)。そして、中継位置Paで基板Sを受け取ったコンベア対4は、可動テーブル3の移動によりY軸負方向に移動して受渡位置P(5)にまで基板Sを搬送する(図6の4段目の状態)。
こうして、ラインLbの受渡位置P(2)からラインLfの受渡位置P(5)へと受け渡された基板Sは、ラインLfにおいて、基板搬送方向Dfへ搬送されつつ、3台の実装機200による部品実装を受けた後に、炉300によるリフローを受ける。こうして、基板処理システム1000は、図6に示す動作を実行して、ラインLbからラインLfへ基板Sを受け渡すことで、ラインLb、Lfのそれぞれライン毎の独立生産動作での搬送実装AにおいてラインLb(あるいは搬送実装BにおいてラインLf)の実装機200のみを経由する搬送経路とは異なる、搬送実装AにおいてラインLfの実装機200(搬送実装BにおいてラインLbの実装機200)を経由する搬送経路Rcで基板Sを搬送しつつ、印刷、部品実装、リフローの一連の処理を実行できる。なお、基板処理を行う基板処理装置100、200(m)、300の台数や実装機200(m)の台数が、ラインLb、Lfのそれぞれライン毎の独立生産動作と比較して異なる点は、図2を用いて説明した上記実施形態と同様である。
そして、図6から理解できるように、このような基板Sの搬送経路の切り換えは、ラインLbの受渡位置P(1)〜P(4)それぞれとラインLfの受渡位置P(5)〜P(8)それぞれの間で相互に実行することができる。また、炉300は共に同じ方向にあるので、基板Sの搬送経路の切り換えをコンベア対5も使って行う場合には、ラインLbの印刷機100を搬送起点とする搬送実装Aの搬送経路におけるいずれかの実装機200と、ラインLbの印刷機100を搬送起点とする搬送実装Bの搬送経路における実装機200とが重複することになるので、搬送実装Aと搬送実装Bを並行して行うためには、重複する実装機200においては、搬送実装Aと搬送実装Bのいずれか一方の基板Sへの実装中は、他方の基板Sは重複する実装機200の上流側で待機する必要があり、タクトタイムTtacA、TtacBが長くなってしまう。それでも基板処理システム1000全体として基板処理の効率性を高めることができる場合がある。
つまり、図6に示す変形例においても、異なるラインLb、Lfの間で基板Sを受け渡して基板Sの搬送経路を切換可能であって、異なるラインLb、Lfを搬送起点とする複数の搬送経路それぞれに基板Sを搬送する搬送処理パターンC(k)を複数通り実行可能となっている。したがって、複数通りの搬送処理パターンC(k)から適切な選択搬送処理パターンCoを選択して、この選択搬送処理パターンCoが示す複数の搬送経路のそれぞれで、基板Sへの処理を実行することができ、基板処理を効率的に行うことができる。こうして、適切な搬送経路で基板処理を実行可能としつつ、基板処理の効率性を高めることが可能となっている。さらに、図6に示す変形例においても、図4と同様のフローチャートを実行することで、基板処理システム1000で実行可能な複数の搬送処理パターンC(k)から、候補の搬送処理パターンCoを決定して作業者に提示するように構成することもできる。
また、図6をさらに変形して、ラインLb、LfをX軸方向に相互にずらして配置しても良い。具体的には、例えば、X軸方向における基板処理装置100、200(m)、300の配列ピッチ分だけ、ラインLbに対してラインLfをX軸正方向にずらしても良い。このようにずらして構成した場合、受渡位置P(2)と受渡位置P(5)とがY軸方向に直線状に並ぶため、コンベア対5を介さずに、受渡位置P(2)と受渡位置P(5)との間で基板Sを受け渡すことができる。
なお、図6に示す変形例では、ラインLbの印刷機100を搬送起点としてラインLbからラインLfへと基板Sを受け渡す搬送経路と、ラインLfの印刷機100を搬送起点としてラインLfからラインLbへと基板Sを受け渡す搬送経路が、途中、同じ可動テーブル3、あるいは実装機200を経由する場合、この部分を経由させる時、同じタイミングで重複させることは不可能であり、基板Sの移動あるいは基板Sへの実装において待ち時間が発生する。このため、タクトタイムTtacA,タクトタイムTtacBは長くなり、結果として、選択搬送処理パターンCoとして選択される可能性が少なくなる。
しかしながら、可動テーブル3の移動やコンベア対5を介した搬送経路による、ラインLbの印刷機100を搬送起点とする搬送実装Aか、あるいはラインLfの印刷機100を搬送起点とする搬送実装Bのいずれかを単独で実施する場合において、タクトタイムTtacA、あるいはタクトタイムTtacBが、ラインLb、Lfのそれぞれライン毎の独立生産動作でのタクトタイムTtacより短くできる場合があり、選出対象の複数通りの搬送処理パターンC(k)とすると良い。
ところで、上述の実施形態では、ステップS104において、搭載部品個数に部品搭載時間を乗じた値を基板Sに搭載される全種類の部品について足し合わせることで、搬送処理パターンC(k)が示す各搬送経路のタクトタイムTtacが算出されていた。しかしながら、タクトタイムTtacの算出方法はこれに限られず、種々の方法を採用可能である。具体的には、算出対象となる搬送経路に対して、例えば特開2006−324421等に記載の最適化を行なって、当該搬送経路のタクトタイムTtacを算出しても良い。
また、上記実施形態では、複数の搬送処理パターンC(k)から候補となる搬送処理パターンCoを選択する基準についても、上述のものに限られず種々の変形が可能である。具体的には、搬送処理パターンC(k)における複数の搬送経路それぞれのタクトタイムのうち最長となるタクトタイムTtacmを搬送処理パターンC(k)毎に求め、最長タクトタイムTtacmが最短である搬送処理パターンを、候補の搬送処理パターンCoとして選択するように構成しても良い。このような構成によっても、複数の搬送経路それぞれで基板処理の進捗を比較的平準化することができ、基板処理システム1000全体の処理能力を向上することができる。特に、基板Sの処理枚数Nsを用いずに候補の搬送処理パターンCoを決定できるため、処理枚数Nsの情報が得られないような場合においても、適切な搬送処理パターンCoを決定することができる。
また、上記実施形態では、装置対1を構成する2台の基板処理装置100、200(m)、300がY軸方向に隣接して配置されていた。この際に、Y軸方向に隣接して装置対1を構成する2台の基板処理装置100、200、300を一体的に構成して、装置対1を特開2011−151222号公報に記載のようなデュアルレーン構造の基板処理装置に仕上げても良い。
また、上記の説明では特に言及しなかったが、実装機200(m)の種類としては、汎用機、高速器、異型機等の種々のものを採用することができる。したがって、ラインLb、Lfそれぞれを、異なる種類の実装機200(m)を組み合わせて構成しても良い。具体例を挙げると、図2の構成において、実装機200(1)を汎用機、実装機200(2)を汎用機、実装機(3)を異型機、実装機200(4)を高速機、実装機(5)を高速機、実装機(6)を汎用機としても良い。この場合、ラインLb、Lfのそれぞれライン毎の独立生産時には、ラインLbを起点とする経路(すなわち、ラインLbそのもの)では、汎用機、汎用機、異型機の順に基板Sは搬送され、ラインLfを起点とする経路(すなわち、ラインLfそのもの)では、高速機、高速機、汎用機の順に基板Sは搬送される。また、搬送経路Ra、Rbで重複したタイミングで基板Sを搬送する搬送処理パターンC(k)を採用した場合、ラインLbの印刷機100を起点とする経路(すなわち、搬送経路Ra)では、汎用機、汎用機の順に基板Sは搬送され、ラインLfの印刷機100を起点とする経路(すなわち、搬送経路Rb)では、高速機、高速機、汎用機、異型機の順に基板Sは搬送される。こうして、2つの搬送経路の間で、基板Sへ実装を行なう実装機200(m)の種類の組み合わせを変更できるとともに、搬送処理パターンを変更することで、さらにこの組み合わせを変更することもできる。
また、上記実施形態では、ステップS102において、所定条件の下で取りうる全ての搬送経路が求められていた。この際の所定条件としては、上述した以外の条件を適宜用いることができる。したがって、各搬送経路で実行される受渡動作の上限回数を例えば2回以上にしたり、同じ位置の基板処理装置100、200(m)、300で1枚の基板Sが処理を受ける上限回数を例えば2回以上にしても良い。あるいは、特定の実装機200(m)については用いないこととしても良い。
また、上記実施形態では、装置対1の各間の全てにコンベア対4が配置されていた。しかしながら、コンベア対4の配置場所や個数についても種々の変更が可能である。例えば、装置対1の各間のうち一部に対してのみコンベア対4を設けても良い。
基板処理装置100、200(m)、300の個数も適宜変更が可能であり、ラインLf、Lbで実装機(m)の個数が互いに異なっても良い。
また、受渡位置Pの間で基板を搬送する構成は、コンベア対4に限られず、例えば単軸ロボット等のその他の搬送手段を用いることもできる。
また、ラインLb、Lfを構成する基板処理装置は上述のものに限られず、例えば、基板を検査する検査機を基板処理装置として、印刷機100の基板搬送方向Db、Dfの下流側に配置したり、炉300の基板搬送方向Db、Dfの下流側に配置したりしても良い。
また、上記実施形態では、図2のように、Y軸方向に並ぶ2つのラインLb、Lfの基板搬送方向Db、Dfが互いに平行でかつ逆向きとなっている基板処理システム1000や、図6のように、基板搬送方向Db、Dfが互いに平行でかつ同一向きとなっている基板処理システム1000を例示したが、基板処理システム1000は、Y軸方向に並ぶラインを3つ以上の複数とし、各ラインの基板搬送方向を適宜決定し、各ライン間で可動テーブル3で基板Sを受渡し可能にしたものでも良い。
この場合での、各ラインにおける印刷機100を搬送起点とする搬送実装A、B、C、・・・において、可動テーブル3によるライン間の基板Sの受け渡しにより、それぞれ複数の搬送経路Ra1,Ra2,・・・、Rb1,Rb2,・・・、Rc1,Rc2,・・・が存在するし、各搬送実装A、B、C・・にそれぞれ搬送経路Ram、Rbn,Rco,・・・・を対応付けた組み合わせである搬送処理パターンが複数ある場合、上記実施形態と同様、各搬送処理パターンにおけるタクトタイムTtacmを求め、タクトタイムTtacmが小さい搬送処理パターンを選択搬送処理パターンとして選択するか、各搬送処理パターンにおける最長予想処理時間Tpxが短い搬送処理パターンを、候補の搬送処理パターンCoとして選択するように構成しても良い。
また、図4に示すフローチャートにおけるステップS103において全搬送処理パターンC(1)、C(2)、…についてステップS104〜S106を実行するのではなく、例えば作業者が選択する一部(少なくとも2つ以上)の搬送パ処理ターンについてステップS104〜S106を実行し、タクトタイムTtacが短い搬送処理パターン、あるいは最長予想処理時間Tpxが短い搬送処理パターンを、候補の搬送処理パターンCoとして選択するように構成しても良い。
さらにまた、搬送実装Aにおける時間当たりの基板への処理が終わり基板処理装置300から搬出される時間当たりの基板枚数であるスループットTpA(タクトタイムTtacAの逆数)と搬送実装BのスループットTpBを算出し、さらに、搬送処理パターンC(k)としてのスループットTpを(TpA+TpB)で算出し、このスループットTpが多い搬送処理パターンを、候補の搬送処理パターンCoとして選択するように構成しても良い。