JP5649098B1 - 回転位置検出装置 - Google Patents
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Abstract
本発明の回転位置検出装置は、ハウジング(6)と、ロータと、ステータコア(1)と、インシュレータ(2)と、トランスコア(5)と、を備える。ハウジング(6)は、軸心(14)を有する筒状であって、軸心(14)に沿って伸びる内周面(6a)を有する。ステータコア(1)は、ハウジング(6)内に収納されて、内周面(6a)と向い合う外側表面(1c)を有する。内周面(6a)と外側表面(1c)とは、50μm以上、150μm以下の範囲の隙間(18)を有して位置する。隙間(18)には、嫌気性接着剤(7)を有する。
Description
本発明は、導体が巻線として巻回されたステータコアを、トランスを備えるハウジングに固定される回転位置検出装置(「レゾルバ」ともいう。Resolver)に関する。
従来、レゾルバのような回転位置検出装置は、産業用ロボットなどの駆動部に使用されてきた。具体的には、回転位置検出装置は、産業用ロボットが作業を行う際、作業位置を決める駆動部に使用される。また、回転位置検出部は、ネジ締め作業を行う駆動部に使用される。回転位置検出装置は、ハウジングの内部にステータコアを備える。
回転位置検出装置は、検出する位置情報などの精度を維持することが求められる。また、回転位置検出装置は、高い耐久性を確保することが求められる。これらの要求を満たすために、回転位置検出装置内において、ステータコアは、低い応力でハウジングに対して確実に固定される必要がある。
回転位置検出装置において、ステータコアがハウジングに固定される方法として、焼嵌め工法、圧入方法、溶接方法などがある。
焼嵌め工法とは、つぎのとおりである。すなわち、ハウジングが加熱されると、ハウジングは熱膨張する。熱膨張したハウジングの内部に、ステータコアが挿入される。ステータコアが挿入されたハウジングは、冷却される。ハウジングが冷却されると、ハウジングは収縮する。その結果、ハウジングの内部にステータコアが固定される。
しかし、焼嵌め工法では、ハウジングが冷却されて収縮する際に、ステータコアに大きな応力が加えられる。ステータコアに大きな応力が加えられると、ステータコアの透磁率が低下する。その結果、焼嵌め工法で作成された回転位置検出装置は、位置情報を検出する機能が低下することがある。
また、圧入方法とは、つぎのとおりである。すなわち、ハウジングの内部に、ステータコアが単純に圧入される。圧入されたステータコアは、ハウジングの内部に固定される。
圧入方法では、ハウジングの内部にステータコアが圧入される際、ステータコアに加えられた外力により、ステータコアが変形する。ステータコアが変形すると、更に、変形による応力が発生する。よって、ステータコアの透磁率が低下する。その結果、圧入方法で作成された回転位置検出装置は、位置情報を検出する機能が低下することがある。
更に、溶接方法とは、つぎのとおりである。すなわち、ハウジングの内部にステータコアが配置される。配置されたステータコアとハウジングとは、溶接により固定される。
溶接方法では、溶接に寄与したステータコアの透磁率が低下する。局部的にステータコアの透磁率が低下するため、ステータコアは、磁気的にアンバランスが生じる。その結果、溶接方法で作成された回転位置検出装置は、位置情報を検出する機能が低下することがある。
また、ステータコアをハウジングに固定する方法として、特許文献1や特許文献2で開示されたものがある。
特許文献1には、つぎのビス止め方法が開示される。ステータコアには、穴があけられる。あけられた穴にネジを用いて、ステータコアが回転装置の本体に固定される。
また、特許文献2には、つぎの方法が開示される。ステータコアには、接着剤が塗布される。接着剤が塗布されたステータコアは、ハウジングに固定される。
本発明の回転位置検出装置は、ハウジングと、ロータと、ステータコアと、インシュレータと、トランスコアと、を備える。
ハウジングは、軸心を有する筒状であって、軸心に沿って伸びる内周面を有する。
ロータは、ハウジング内に収納されて、軸心に沿って回転軸を有する。
ステータコアは、ハウジング内に収納されて、ロータと向い合う内側表面と、内周面と向い合う外側表面と、軸心方向に位置する第一平面と、第一平面の反対側であって軸心方向に位置する第二平面と、を有する。
インシュレータは、第一平面と第二平面の各々に設置されて、巻線が巻回される。
トランスコアは、巻線に一次電圧が励磁されるとき、二次電圧が誘起される。
さらに、内周面と外側表面とは、50μm以上、150μm以下の範囲の隙間を有して位置する。隙間には、嫌気性接着剤を有する。
本発明の実施の形態における回転位置検出装置は、ハウジングの内部にステータコアを固定するにあたり、嫌気性接着剤を用いる。この嫌気性接着剤が硬化して収縮する際、ステータコアに加えられる応力は緩和される。その結果、高い耐久性と、位置情報を高い精度で検出する機能と、を備える回転位置検出装置が提供できる。
つまり、従来の回転位置検出装置には、つぎの改善点があった。すなわち、特許文献1に記載された構成では、ステータコアから生じる磁路の中に、ネジを固定する穴を設けることになる。よって、ステータコアから生じる磁路に、広い箇所と狭い箇所とが生じる。つまり、ステータコアから生じる磁路に、磁気的なアンバランスが発生する。その結果、位置情報を検出する機能が低下するため、検出された位置情報の精度が悪化する。
また、特許文献2では、ステータコアの外周に接着剤を塗布して、ステータコアをハウジングに固定する方法が提案されている。特許文献2に記載された方法では、ステータコアの外周に接着剤を塗布する際、塗布された接着剤には厚さのバラツキが生じる。よって、接着剤が硬化する時に、ステータコアには、不均一な収縮による応力が加えられる。ステータコアに不均一な収縮による応力が加えられると、ステータコアの透磁率が局部的に低下する。従って、ステータコアには、磁気的なアンバランスが発生する。特に、高い精度で位置情報を検出することが求められる用途では、上述した磁気的なアンバランスに起因する、検出された位置情報の精度が悪化することについて、改善が求められる。
しかも、ステータコアとハウジングとを固定する強度は、回転位置検出装置としての耐久性という点については、考慮されていなかった。
そこで、後述する本発明の実施の形態である回転位置検出装置により、検出された位置情報の精度が低下することを抑制する。
以下、本発明の実施の形態について、図面及び表を用いて説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術範囲を限定するものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における回転位置検出装置の概要を示す斜視組立図である。図2は、本発明の実施の形態1における回転位置検出装置の要部を示す断面図である。
図1は、本発明の実施の形態1における回転位置検出装置の概要を示す斜視組立図である。図2は、本発明の実施の形態1における回転位置検出装置の要部を示す断面図である。
図1、図2に示すように、本発明の回転位置検出装置10は、ハウジング6と、ロータ12と、ステータコア1と、インシュレータ2と、トランスコア5と、を備える。
ハウジング6は、軸心14を有する筒状であって、軸心14に沿って伸びる内周面6aを有する。
ロータ12は、ハウジング6内に収納されて、軸心14に沿って回転軸16を有する。
ステータコア1は、ハウジング6内に収納されて、ロータ12と向い合う内側表面1bと、内周面6aと向い合う外側表面1cと、軸心方向に位置する第一平面1dと、第一平面1dの反対側であって軸心方向に位置する第二平面1eと、を有する。
インシュレータ2は、第一平面1dと第二平面1eの各々に設置されて、巻線8が巻回される。
トランスコア5は、巻線8に一次電圧が励磁されるとき、二次電圧が誘起される。
さらに、内周面6aと外側表面1cとは、50μm以上、150μm以下の範囲の隙間18を有して位置する。図2中、幅Lは、内周面6aと外側表面1cとの距離を示す。隙間18には、嫌気性接着剤7を有する。
特に、顕著な作用、効果を得る構成は以下のとおりである。
トランスコア5は、第一トランスコアと第二トランスコアとを有する。第一トランスコアと第二トランスコアとは、トランス巻線を覆うように配置される。第一トランスコアと第二トランスコアとは、磁束が漏れないように、磁気的につながっている。
トランスコア5が、第一トランスコアと第二トランスコアとを有する構成であれば、巻線8に一次電圧が誘起されるとき、第一トランスコアと第二トランスコアには、二次電圧が誘起される。
嫌気性接着剤7は、粘度が500mPa・s以上、3000mPa・s以下の範囲である。
巻線8は、巻線8の端部を取り付ける基板3を有する。
特に、インシュレータ2は、巻線8の端部を取り付ける巻線取付部を有してもよい。巻線8は、巻線8の端部を、巻線取付部を介して基板3に取り付けてもよい。
さらに、図2を用いて、詳細に説明する。
本実施の形態1において、ステータコア1は、板厚0.35mmのコアシート1aが積層される。ステータコア1は、10枚のコアシート1aがカシメられて積層される。ステータコア1には、図2中、上下に位置する第一平面1dと第二平面1eとに、インシュレータ2が取り付けられる。インシュレータ2には、巻線8が巻き回される。ハウジング6には、予め、トランスコア5が備えられる。ステータコア1とハウジング6との間には、嫌気性接着剤7が存在する。ステータコア1とハウジング6とは、嫌気性接着剤7を介して固定される。ステータコア1の内側には、回転自在のロータコアが配置される。
センサコア4は、ステータコア1と、インシュレータ2と、巻線8と、基板3とを有する。インシュレータ2には、巻線8が巻き回される。トランスコア5側に位置するインシュレータ2には、基板3が取り付けられる。基板3は、巻線8を結線することに用いられる。
インシュレータ2は、巻線取付部であるピンを有する。ピンには、巻線8の端部が機械によって、自動的に巻き回される。ピンは、基板3に半田付けされるため、基板3とインシュレータ2とは固定される。基板3は、インシュレータ2の端部と接することで、位置が固定される。
以下、本発明が特徴とする部分について、表1から表4を用いて、具体的に説明する。
表1は、ステータコア1とハウジング6とを固定する方法を比較した表である。
比較例である焼嵌め工法とは、既に説明したとおりである。焼嵌め工法では、ハウジングが冷却されて収縮する際に、ステータコアに大きな応力が加えられる。よって、ステータコアの透磁率が低下する。その結果、焼嵌め工法で作成された回転位置検出装置は、位置情報を検出する機能が低下することがある。
比較例である圧入方法とは、既に説明したとおりである。圧入方法では、ハウジングの内部にステータコアが圧入される際、ステータコアに加えられた外力により、ステータコアが変形する。また、ハウジングの締め付け力により、ステータコアに変形が生じる。ステータコアに変形が生じると、ステータコアの変形に伴う応力が発生する。よって、ステータコアの透磁率が低下する。その結果、圧入方法で作成された回転位置検出装置は、位置情報を検出する機能が低下することがある。
比較例であるビス止め方法は、ステータコアに穴があけられる。あけられた穴にネジを用いて、ステータコアが回転位置検出装置の本体に固定される。このビス止め方法では、ステータコアに応力が加えられることなく、ステータコアを回転位置検出装置の本体に固定できる。しかし、ステータコアから生じる磁路の中にネジを固定する穴を設けることになる。よって、ステータコアから生じる磁路が、広い箇所と狭い箇所とが生じる。つまり、ステータコアから生じる磁路に、磁気的なアンバランスが生じる。その結果、位置情報を検出する機能が低下することがある。
比較例である溶接方法では、溶接に寄与したステータコアの透磁率が低下する。溶接に寄与した箇所では、局所的に、熱ストレスによるステータコアへの応力が加えられる。よって、ステータコアは、磁気的にアンバランスが生じる。その結果、溶接方法で作成された回転位置検出装置は、位置情報を検出する機能が低下することがある。
本発明の実施の形態1で示す接着方法は、嫌気性接着剤7を用いてハウジング6にステータコア1を固定する。この接着方法では、磁気回路へ悪影響を与えることはない。また、嫌気性接着剤7が硬化して収縮する時に、ステータコア1に加えられる応力の影響が緩和される。よって、回転位置検出装置10は、高い耐久性を有することができる。また、回転位置検出装置10は、位置情報を検出する機能が低下することを防止できる。
表2は、接着剤の硬化形態を比較した表である。
比較例として、2つの液体を混合させることで硬化する接着剤、すなわち、2液混合硬化性の接着剤が用いられる形態がある。2液混合硬化性の接着剤が用いられて、ステータコア1とハウジング6とは固定される。この形態では、接着剤が硬化して収縮する時に、ステータコア1に大きな応力が加えられる。よって、ステータコア1の透磁率は低下する。その結果、2液混合硬化性の接着剤が用いられる形態では、回転位置検出装置は、位置情報を検出する機能が低下することがある。また、2液混合硬化性の接着剤が用いられる場合、混合される2種類の接着剤は、使用される量を管理することが求められる。使用される量の管理は、規定された割合で混合されていることを重量比にて管理される。
さらに、一度、混合された2液混合硬化性の接着剤は、硬化が進行する。よって、混合された2液混合硬化性の接着剤は、作り置きすることができない。換言すれば、混合された2液混合硬化性の接着剤は、未使用であっても、再利用をすることができない。つまり、2液混合硬化性の接着剤を、余すことなく、適正量を使用することは困難であり、作業性という点で大きな課題がある。
比較例として、加えられる熱の変化により硬化する接着剤、すなわち、熱硬化性の接着剤が用いられる形態がある。熱硬化性の接着剤が用いられて、ステータコア1とハウジング6とが固定される。この形態では、各材料が有する線膨張係数に留意する必要がある。つまり、熱硬化性の接着剤が塗布される金属材料と、熱硬化性の接着剤とは、異なる材料から成る。よって、材料が異なるため、線膨張係数も異なる。線膨張係数の違いが原因となり、ステータコア1に応力が加えられることがある。従って、ステータコア1の透磁率が低下する。その結果、熱硬化性の接着剤が用いられる形態では、回転位置検出装置は、位置情報を検出する機能が低下することがある。
さらに、熱硬化性の接着剤を硬化させるために、熱硬化性の接着剤に熱を加えた際、ハウジング6にも熱が伝わる。ハウジング6に伝わった熱により、ハウジング6が変形して歪むことがある。ハウジング6に歪みが生じると、ハウジング6内にて磁気的なアンバランスが発生する。その結果、回転位置検出装置は、位置情報を検出する機能が低下することがある。
比較例として、紫外線を照射することで硬化する接着剤、すなわち、紫外線硬化性の接着剤が用いられる形態がある。紫外線硬化性の接着剤が用いられて、ステータコア1とハウジング6とが固定される。この形態では、ステータコア1とハウジング6との間に施された紫外線硬化性の接着剤において、表面にのみ紫外線が照射される。つまり、ステータコア1とハウジング6との間に施された紫外線硬化性の接着剤において、深部には紫外線が届かない。よって、ステータコア1とハウジング6との間に施された紫外線硬化性の接着剤は、表面は硬化が進む。しかし、ステータコア1とハウジング6との間に施された紫外線硬化性の接着剤は、深部は硬化が進まない。従って、ステータコア1とハウジング6とが接着する強度が不足する。その結果、紫外線硬化性の接着剤が用いられる形態では、回転位置検出装置は、位置情報を検出するために求められる耐久性を満たすことができない。
比較例として、空気中の水分などと反応して硬化する接着剤、すなわち、湿気硬化性の接着剤が用いられる形態がある。湿気硬化性の接着剤が用いられて、ステータコア1とハウジング6とが固定される。この形態では、ステータコア1とハウジング6との間に施された湿気硬化性の接着剤において、空気と接している接着剤の表面のみ、湿気による接着剤の硬化が進行する。しかし、ステータコア1とハウジング6との間に施された湿気硬化性の接着剤は、接着剤の内部まで、湿気による接着剤の硬化が進まない。従って、ステータコア1とハウジング6とが接着する強度が不足する。その結果、湿気硬化性の接着剤が用いられる形態では、回転位置検出装置は、位置情報を検出するために求められる耐久性を満たすことができない。
本発明の実施の形態1として、嫌気性接着剤7を用いてステータコア1とハウジング6とを固定する形態がある。
ハウジング6は、内周面6a上、ハウジング6の内側に突き出た係止部6bを有する。係止部6bは、内周面6aに沿って円周状に突き出ている。ハウジング6の内部に挿入されたステータコア1は、係止部6bで仮止めされる。なお、ハウジング6の内側にステータコア1が仮止めできれば、ステータコア1の内周面の形状は、特に問わない。また、ステータコア1を仮止めできれば、係止部6bは、内周面6aに沿って部分的に突き出る形状でもよい。
ステータコア1の内側にステータコア1が仮止めされた状態を維持するために、ステータコア1とハウジング6との間に嫌気性接着剤7が注入される。嫌気性接着剤7を用いることで、ステータコア1とハウジング6とは、十分に接着に必要な強度を確保できる。よって、回転位置検出装置10は、回転位置検出装置としての耐久性が満たされる。また、嫌気性接着剤7は、常温下にて、被対象物どうしを接着して硬化する。しかも、金属と接着剤との材料が異なることに起因する線膨張係数の違いにより、ステータコア1に応力が加えられることもない。従って、嫌気性接着剤7が、硬化して収縮する時に、ステータコア1に加えられる応力による影響を緩和できる。この結果、回転位置検出装置10は、位置情報を検出する精度が低下することを防止できる。
この作業は、ステータコア1とハウジング6との間に、嫌気性接着剤7を塗布することにより、嫌気性接着剤7内部を空気から遮断できる。つまり、この作業は、容易に実施できる。
表3は、嫌気性接着剤7を用いて、ステータコア1とハウジング6とを固定する際、ステータコア1とハウジング6とのクリアランスを変化させたことによる影響を比較した表である。なお、後述する表3の説明において、クリアランスとは、図2中、幅Lで示した寸法をいう。
ステータコア1とハウジング6との間のクリアランスが30μmの場合、後述する理由により、総合判断は不適切となった。
すなわち、ステータコア1をハウジング6へ挿入する際、ステータコア1がハウジング6に対して微小に傾くことがある。このとき、クリアランスが狭いため、ステータコア1の外側表面1cとハウジング6の内周面6aとが接触する不具合が生じる。以後、部品同士が接触する不具合をカジリという。
また、本実施の形態において、基板3は樹脂製の部品で構成される。従って、基板3は、高精度な部品の寸法を確保して作成することは困難である。よって、クリアランスが狭すぎると、基板3をハウジング6へ挿入する際、基板3の外周部とハウジング6の内周面6aとの間にカジリが発生し易くなる。そこで、カジリの発生を抑制するためには、慎重な作業が求められるので、作業性が悪くなる。なお、ステータコア1の外側表面1cにカジリが生じた場合、ステータコア1には応力が加えられるため、ステータコア1には磁気的なアンバランスが生じる。その結果、回転位置検出装置10は、位置情報を検出する機能が低下することがある。
ところで、回転位置検出装置10で検出された結果を出力信号とする。この出力信号を受信して入力信号とし、この入力信号に基いて制御を行う制御回路もある。一般的に、基板3がセンサコア4に取り付けられない回転位置検出装置では、リード線と巻線8とを接続する場合、直接、巻線8がリード線に半田などで固定される。巻線8をリード線に半田付けする作業は、作業者による手作業となることがある。この作業を行う場合、巻線8とリード線とを接続するために、巻線8やリード線の端部には、ある程度の長さを有した引き回し部が必要になる。この引き回し部に要する巻線8やリード線の端部の長さは、作業者に依存するため、一定の長さを確保できないことがある。また、引き回し部に要した巻線8やリード線の端部は、回転位置検出装置の構造上、インシュレータ2の内部に収納しなければならない。このような作業は自動化できないため、作業性が悪い。また、作業者によるバラツキが発生するため、回転位置検出装置で検出された位置情報にもバラツキが生じる。換言すれば、回転位置検出装置で出力される位置情報の精度が確保し難くなる。
これに対して、基板3がセンサコア4に取り付けられる構成とすれば、機械による接続作業が可能となる。つまり、巻線8の端部は、基板3に設けられた巻線取付部であるピンに接続される。リード線の端部も基板3に接続される。巻線8の端部は、基板3を介して、リード線の端部に接続される。このような結線作業は、機械による自動化が可能である。よって、結線作業は、作業性がよくなるとともに、回転位置検出装置で検出される精度にもバラツキが少なくなる。換言すれば、基板3を用いれば、作業性が向上し、センシングの精度も向上する点で好ましい。
また、クリアランスが狭い場合、ステータコア1の軸心とハウジング6の軸心との間に同軸ズレが生じると、ステータコア1の磁気的バランスに悪影響を与えることがある。つまり、ステータコア1の軸心とハウジング6の軸心とが同軸上に位置せず、僅かに同軸ズレが生じることがある。この同軸ズレは、ステータコア1の外側表面1cとハウジング6の内周面6aとの間の隙間18が有する幅Lを不均一にすることがある。よって、隙間18が有する幅Lが不均一になれば、隙間18に施される嫌気性接着剤7の厚みも不均一になる。嫌気性接着剤7の厚みが不均一になれば、嫌気性接着剤7が収縮する過程において、ステータコア1に加えられる応力も不均一性が大きくなる。その結果、ステータコア1は磁気的なアンバランスが大きくなる。
ステータコア1とハウジング6との間のクリアランスが200μmの場合、後述する理由により、総合判断は不適切となった。
すなわち、ステータコア1とハウジング6との間には、幅Lを有する隙間18が位置する。隙間18には、嫌気性接着剤7が注入される。幅Lで示されるクリアランスが広くなると、ステータコア1とハウジング6との間に施される嫌気性接着剤7の厚みが厚くなる。
ところで、嫌気性接着剤7が硬化して収縮する過程では、嫌気性接着剤7からステータコア1へ応力が加えられる。嫌気性接着剤7の厚みが厚くなると、嫌気性接着剤7が硬化して収縮する過程で生じる、ステータコア1へ加えられる応力が大きくなる。よって、ステータコア1は透磁率が低下する。その結果、回転位置検出装置は、位置情報を検出する機能が低下することがある。
さらに、ステータコア1とハウジング6との間のクリアランスが400μmの場合、後述する理由により、総合判断を不適切とした。
すなわち、クリアランスが400μmの場合、ステータコア1の外側表面1cとハウジング6の内周面6aとの間が、嫌気性接着剤7で硬化できるクリアランスを超えることになる。よって、ステータコア1とハウジング6との間を接着して硬化させることができない。つまり、ステータコア1とハウジング6とを接着する強度が不足するため、回転位置検出装置は、求められる高い耐久性を満たすことができない。
ステータコア1とハウジング6との間のクリアランスが、50μm以上、150μm以下の範囲となる場合、後述する理由により、総合判断は適切となる。
すなわち、ステータコア1をハウジング6に挿入する際、ステータコア1がハウジング6に対して傾くことがある。このとき、ステータコア1とハウジング6との間には、ステータコア1の外側表面1cとハウジング6の内周面6aとが接触しない程度のクリアランスが確保されている。つまり、ステータコア1の外側表面1cとハウジング6の内周面6aとの間で、カジリは発生しない。よって、ステータコア1をハウジング6に挿入する作業は、必要以上に慎重に行う必要がなくなるため、容易になる。しかも、嫌気性接着剤7が硬化して収縮する時に、ステータコア1に加えられる応力の影響を最小限に留めることができる。その結果、回転位置検出装置は、位置情報を検出する精度が低下することを防止できる。
換言すれば、ステータコア1とハウジング6との間のクリアランスが、50μm以上とすれば、ステータコア1をハウジング6の内部に挿入する際、部品間にカジリ等が生じることを抑制できる。部品間にカジリ等が生じることを抑制すれば、カジリが要因で発生していた、ステータコア1へ加えられる応力を抑制できる。
また、ステータコア1とハウジング6との間のクリアランスが、150μm以下とすれば、隙間18に施される嫌気性接着剤7の使用量を最小限に抑えることができる。よって、嫌気性接着剤7が硬化して収縮する過程において、ステータコア1に加えられる応力の不均一化を低減できる。
従って、ハウジング6とステータコア1との間に位置する隙間18を50μm以上、150μm以下の範囲に設定する。本構成により、ステータコア1に加えられる応力を低減できる。よって、回転位置検出装置は、位置情報を検出する精度を向上できる。
表4は、接着剤の粘度を比較した表である。
粘度150mPa・sの嫌気性接着剤7を用いた場合、後述する理由により、総合判断は不適切となった。
すなわち、ステータコア1の外側表面1cには、嫌気性接着剤7が塗布される。嫌気性接着剤7の粘度は低いため、塗布された嫌気性接着剤7が、積層された板厚0.35mmのコアシート1aの間に流れ込む。コアシート1aの間に流れ込んだ嫌気性接着剤7は、ステータコア1の軸心14側に漏れ出してしまう。よって、ステータコア1とロータコアとのクリアランスが確保できなくなる。この結果、粘度150mPa・sの嫌気性接着剤7を用いた態様では、回転位置検出装置として機能しなくなる。
また、粘度150mPa・sの嫌気性接着剤7を用いた態様では、つぎの課題もある。
すなわち、嫌気性接着剤7が塗布されたステータコア1を、ハウジング6の内部に挿入する。このとき、嫌気性接着剤7の粘度が低いため、塗布された嫌気性接着剤7はステータコア1から垂れてしまう。垂れた嫌気性接着剤7が、他の部品へ付着することがないよう、配慮する必要があるため、作業性に大きな課題がある。
粘度5000mPa・sの嫌気性接着剤7を用いた場合、後述する理由により、総合判断は不適切となった。
すなわち、ステータコア1の外側表面1cには、嫌気性接着剤7が塗布される。嫌気性接着剤7の粘度は高いため、濡れ性は悪い。よって、塗布された嫌気性接着剤7は、ステータコア1の表面を広がり難い。この嫌気性接着剤7をステータコア1の表面上に広げる作業が必要となる。つまり、作業性に大きな課題を有する。
また、嫌気性接着剤7は、濡れ性が悪いため、ステータコア1の表面上に嫌気性接着剤7を広げることは容易ではない。よって、ステータコア1に嫌気性接着剤7を塗布した場合、ステータコア1の表面では、嫌気性接着剤7が塗られている箇所と嫌気性接着剤7が塗られていない箇所とができる。つまり、ステータコア1の表面上、塗布された嫌気性接着剤7にはむらが生じる。よって、ステータコア1とハウジング6との間で、安定した接着に必要な強度を得ることができない。この結果、粘度5000mPa・sの嫌気性接着剤7を用いた態様では、回転位置検出装置は、求められる高い耐久性を満たすことができない。
粘度500mPa・s以上、3000mPa・s以下の範囲の嫌気性接着剤7を用いた場合、後述する理由により、総合判断は適切となった。
すなわち、粘度500mPa・s以上、3000mPa・s以下の範囲の嫌気性接着剤7は、適度な濡れ性を有する。よって、ステータコア1の表面に嫌気性接着剤7が塗布された場合、塗布された嫌気性接着剤7は、ステータコア1の表面上、むらなく広がる。よって、ステータコア1とハウジング6との間で、嫌気性接着剤7は均一に広がる。また、嫌気性接着剤7は、嫌気性接着剤7が硬化するまで垂れ落ちることもない。
従って、ハウジング6とステータコア1との間において、嫌気性接着剤7の量を、均一に管理することが容易となる。また、ステータコア1に加えられる応力のバラツキを最小限に抑えることができる。この結果、粘度500mPa・s以上、3000mPa・s以下の範囲の嫌気性接着剤7を用いた態様では、回転位置検出装置は、位置情報を検出する精度が低下することを防止できる。
換言すれば、粘度500mPa・s以上の嫌気性接着剤7を用いた場合、つぎの効果を得ることができる。
すなわち、ハウジング6とステータコア1との間に位置する隙間18において、塗布した嫌気性接着剤7が硬化するまでの期間で、嫌気性接着剤7が垂れ落ちることを防止できる。よって、隙間18に施す嫌気性接着剤7の量を均一にできる。隙間18に施す嫌気性接着剤7の量が均一になれば、ステータコア1に加えられる応力のバラツキを抑制できる。
また、粘度3000mPa・s以下の嫌気性接着剤7を用いた場合、つぎの効果を得ることができる。
すなわち、ハウジング6とステータコア1との間に施した嫌気性接着剤7が、隙間18内を均等に濡れ広がる。よって、ステータコア1に加えられる応力のバラツキを抑制できる。
従って、粘度500mPa・s以上、3000mPa・s以下の範囲の嫌気性接着剤7を用いることで、回転位置検出装置は、位置情報を検出する精度が低下することを防止できる。
以上の説明から明らかなように、ハウジングの内周面とステータコアの外側表面とは、50μm以上、150μm以下の範囲の隙間を有して位置する。本構成により、ステータコアをハウジングの内部に挿入する際、部品間のカジリ等が生じることを抑制できる。よって、部品間のカジリ等が要因となって生じていた、ステータコアに加えられる応力を防止できる。しかも、接着剤が硬化して収縮する過程で生じていた、ステータコアに加えられる応力の不均一化を低減できる。
特に、接着剤を嫌気性接着剤とすれば、ハウジングとステータコアとの間に施される嫌気性接着剤の量を均一に管理することが容易となる。しかも、常温下で、嫌気性接着剤は、接着して硬化することができる。従って、金属と嫌気性接着剤との間において、材料が異なることによる線膨張係数の違いで、ステータコアに加えられる応力を抑制できる。その結果、回転位置検出装置は、位置情報を検出する精度が低下することを防止できる。
(実施の形態2)
図3は、本発明の実施の形態2における回転位置検出装置の要部を示す断面図である。
図3は、本発明の実施の形態2における回転位置検出装置の要部を示す断面図である。
本実施の形態2における回転位置検出装置は、さらに、ハウジング26は、挿入口20を有する。挿入口20は、ハウジング26の一方の開口である。挿入口20は、ステータコア1をハウジング26内へ挿入する開口である。
挿入口20の内周面6aは、テーパ面22を含む。ハウジング26の開口側の径Raは、軸心14とは直交する面24aとテーパ面22とが交差して形成するものである。ハウジング26の中心側の径Rbは、軸心14とは直交する面24bとテーパ面22とが交差して形成するものである。テーパ面22は、ハウジング26の開口側の径Raがハウジング26の中心側の径Rbよりも大きい。
なお、本実施の形態1における回転位置検出装置と同様の構成については、同じ符号を付して、説明を援用する。
以下、図3を用いて、詳細に説明する。
ステータコア1とハウジング26との間のクリアランスが狭い場合、次の改善が求められる。
すなわち、ステータコア1には、嫌気性接着剤7が塗布される。ステータコア1は、ハウジング26の挿入口20を介して、ハウジング26の内部に挿入される。このとき、ステータコア1とハウジング26との間のクリアランスが狭いため、ステータコア1が、挿入口20などに接触することがある。ステータコア1が挿入口20などに接触すると、ステータコア1に塗布された嫌気性接着剤7が削ぎ落とされることがある。ステータコア1に塗布された嫌気性接着剤7が削ぎ落とされると、ステータコア1とハウジング26とを固定する強度が不足することがある。
そこで、ハウジング26の挿入口20側であって、ハウジング26の内周面6aにテーパ面22を設ける。ステータコア1が挿入される挿入口20において、ハウジング26とステータコア1との間のクリアランスは広くなる。本構成により、嫌気性接着剤7が削ぎ落とされることを防止できる。
本実施の形態2において、テーパ角度θは7°である。本構成とすれば、回転位置検出装置は、求められる高い耐久性が確保できる。また、ステータコア1とハウジング26との間に施される嫌気性接着剤7が、削ぎ落とされることも防止できる。よって、ハウジング26とステータコア1との間で生じる隙間18の全周にわたり、嫌気性接着剤7の厚みを均一にすることができる。従って、ステータコア1に加えられる応力のばらつきを抑制できる。この結果、回転位置検出装置は、位置情報を検出する精度が低下することを防止できる。
なお、テーパ角度θは、小さくなると、嫌気性接着剤7がそぎ落とされることが多くなる。一方、テーパ角度θが大きくなると、ハウジング26の剛性が低下する。ハウジング26の剛性が低下すれば、回転位置検出装置としての耐久性も低下する。
以上の説明から明らかなように、本実施の形態2における回転位置検出装置は、ハウジングの内周面にテーパ面が設けられる。本構成により、ステータコアがハウジングの内側に挿入される際、ステータコアに塗布された嫌気性接着剤が削ぎ落とされることを防止できる。よって、ハウジングとステータコアとの間では、接着剤が均一に塗布される。嫌気性接着剤が均一に塗布されると、ステータコアに加えられる応力は、バラツキが最小限に留められる。その結果、回転位置検出装置は、位置情報を検出する精度が低下することを抑制できる。
本発明の実施の形態における回転位置検出装置は、位置情報を検出するセンサとしての精度が低下することを防止できる。特に、産業用に使用されるサーボモータのように、高精度な位置検出を求められる用途に有効である。
1 ステータコア
1a コアシート
1b 内側表面
1c 外側表面
1d 第一平面
1e 第二平面
2 インシュレータ
3 基板
4 センサコア
5 トランスコア
6,26 ハウジング
6a 内周面
6b 係止部
7 嫌気性接着剤
8 巻線
10 回転位置検出装置
12 ロータ
14 軸心
16 回転軸
18 隙間
20 挿入口
22 テーパ面
24a,24b 直交する面
1a コアシート
1b 内側表面
1c 外側表面
1d 第一平面
1e 第二平面
2 インシュレータ
3 基板
4 センサコア
5 トランスコア
6,26 ハウジング
6a 内周面
6b 係止部
7 嫌気性接着剤
8 巻線
10 回転位置検出装置
12 ロータ
14 軸心
16 回転軸
18 隙間
20 挿入口
22 テーパ面
24a,24b 直交する面
Claims (5)
- 軸心を有する筒状であって、前記軸心に沿って伸びる内周面を有するハウジングと、
前記ハウジング内に収納されて、前記軸心に沿って回転軸を有するロータと、
前記ハウジング内に収納されて、前記ロータと向い合う内側表面と、前記内周面と向い合う外側表面と、前記軸心方向に位置する第一平面と、前記第一平面の反対側であって前記軸心方向に位置する第二平面と、を有するステータコアと、
前記第一平面と前記第二平面の各々に設置されて、巻線が巻回されるインシュレータと、
前記巻線に一次電圧が励磁されるとき、二次電圧が誘起されるトランスコアと、を備え、
前記内周面と前記外側表面とは50μm以上、150μm以下の範囲の隙間を有して位置し、
前記隙間には嫌気性接着剤を有する回転位置検出装置。 - 前記嫌気性接着剤は、粘度が500mPa・s以上、3000mPa・s以下の範囲である請求項1に記載の回転位置検出装置。
- さらに、前記ハウジングは、前記ハウジングの一方の開口として、前記ステータコアを前記ハウジング内へ挿入する挿入口を有し、
前記挿入口の前記内周面はテーパ面を含み、
前記テーパ面は、前記軸心とは直交する面と前記テーパ面とが交差して形成する径において、前記ハウジングの開口側の径が前記ハウジングの中心側の径よりも大きい請求項1に記載の回転位置検出装置。 - さらに、前記巻線は、前記巻線の端部を取り付ける基板を有する請求項1に記載の回転位置検出装置。
- さらに、前記インシュレータは、前記巻線の端部を取り付ける巻線取付部を有し、前記巻線は、前記巻線の端部を前記巻線取付部を介して前記基板に取り付ける請求項4に記載の回転位置検出装置。
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