JP5647599B2 - 生物学的試料中の物質を検出する方法 - Google Patents

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Description

本発明は、生物学的試料中の物質を定性的、及び/又は、定量的に検出する方法に関する。本発明の方法により、特に生物学的試料中に微量に存在し、通常は検出が困難な物質の検出も可能である。
被検物質に特異的に結合するタンパク質を疎水結合、共有結合等により結合させた担体を利用した物質の検出方法
生物学的試料中の物質を検出するために、当該物質(被検物質)に対し特異的に結合する物質を利用する方法が、従来より広く用いられている。被検物質に特異的に結合させる物質としては、抗体やその他のタンパク質などが多く用いられる。これらはマイクロプレートや微小ビーズ、あるいはセンサーチップなどの担体に固定化されうる。固定化の汎用的な方法として、疎水結合、共有結合などが知られている。
「疎水結合」は、担体の疎水性表面と、検出すべき物質と特異的に結合するタンパク質(以下、「特異的タンパク質」と呼称する場合がある)の疎水性部分との相互作用を利用して、担体と特異的タンパク質とを結合させるものであり、特別な試薬を必要としない点で簡便である。しかしながら、概して結合力は弱く、ELISA(Enzyme linked immunosorbent assay)等に用いる場合、結合後の洗浄操作等で、タンパク質が担体から離れてしまうことが多い。また、疎水結合により特異的タンパク質と担体を結合させた場合、タンパク質の多くが、その機能を完全に、あるいは部分的に失ってしまう場合がある。
「共有結合」は、特異的タンパク質中の官能基(例えばアミノ基)と担体表面に配置された官能基(例えばカルボキシル基)との相互作用を利用するものであり、結合力は強い。しかし、共有結合により特異的タンパク質と担体とを結合させた場合、疎水結合の場合と同様に、多くのタンパク質において、その機能は完全に、あるいは部分的に失われてしまう。
疎水結合や共有結合の他にも、複数のヒスチジンをタンパク質の末端に融合させ、このヒスチジンタグをもつ融合タンパク質を、表面にニッケルが配置された、例えばプロテインチップ等の基板などに結合させる方法が知られている。しかしながら、ヒスチジンタグとニッケルイオンの相互作用はあまり強くなく、さらにニッケルイオンには、様々な生体分子との非特異的な結合が知られている。
一般に、こうした被検物質に特異的に結合するタンパク質を疎水結合または共有結合により結合させた固相を用いた特異的結合アッセイ系において、バックグラウンドシグナルの原因となる非特異結合を低減させることは、重要な課題である。この課題を解決する方法として、例えば、細菌成分抽出液を検出用試薬に含有させる方法(特開昭59−99257)、被検物質に特異的に結合する組換えタンパク質産生に使用したベクターと同種でありかつ当該タンパク質をコードする遺伝子を含まないベクターが導入された宿主細胞の培養成分を試料に添加する方法(特開平8−43392)、被検物質に特異的に結合する組換えタンパク質を産生した細胞と同種であり、かつ当該タンパク質を含まない細胞からの水抽出液を加熱処理した後、その水溶性画分を試料に添加する方法(特開2004−301646)などが提案されている。これらの方法により、非特異結合の抑制には一定の効果が見られている。
アビジン−ビオチン結合を利用した物質の検出方法
アビジンは、卵白由来の糖タンパク質でビオチン(ビタミンH)に極めて強く結合する。アビジンとビオチンの相互作用は最も強い非共有結合の一つである(Green (1975) Adv Protein Chem 29: 85−133)。一方、ストレプトアビジンは放線菌由来のアビジン様タンパク質で、やはりビオチンと強く結合する。これまでに(ストレプト)アビジン−ビオチンの相互作用は、その作用力の強さから、例えば、抗原や抗体の検出など分子生物学や生化学の分野で、広範に用いられている(Green (1990) Methods Enzymol 184: 51−67)。
このアビジンやストレプトアビジンのビオチン結合性を利用して、タンパク質を担体に結合させる方法が考案されている。すなわち(ストレプト)アビジンを共有結合や疎水結合によりマイクロプレートなどのような基板に結合し、さらにビオチン化したタンパク質と結合させることにより固定化させる方法である。
また、ビオチンを結合させた基板に、まずアビジンタンパク質を、アビジン−ビオチン結合によって結合させ、ここへビオチン化した所望のタンパク質を結合させ、アビジンの別のビオチンポケットに結合させることで、基板−ビオチン−アビジン−ビオチン−所望のタンパク質という順序で固定させる技術が報告されている(特開平4−236353)。このような方法で固定化したプレートを用いて被検物質を検出することができる。
しかしながら、アビジン−ビオチン結合を利用したアッセイも、被検物質に特異的にタンパク質を疎水結合、共有結合等により結合させた固相を用いたアッセイと同様に、バックグラウンドシグナルへの対処が大きな問題である。これに対し、上述の非特異抑制方法に加え、不活性化した(ストレプト)アビジンを結合させた固相に試料を接触させた後に、活性(ストレプト)アビジンを結合させた固相に接触させる方法(特開平8−114590)、アビジン結合固相にビオチン化物質を結合させた後に、ポリエチレングリコールとビオチンとの抱合体を接触させる方法(特開平11−211727)やビオチン含有溶液を接触させる方法(特開2002−48794)などが提案されている。しかしながら、実用上の効果は十分とは言えなかった。
これまで、タンパク質の標識、診断マーカーや細胞特異的標的化因子としての使用を目的に、アビジンまたはストレプトアビジンを用いた融合タンパク質が作成されてきた(Airenne et al. (1999) Biomol Eng 16: 87−92)。これらのうち特にアビジンまたはストレプトアビジンと、scFvやFab断片、IgGのような抗体との融合タンパク質は、ガン細胞等への薬剤の特異的標的への応用研究が進んでいる。また、ストレプトアビジンとscFvとの融合タンパク質を用いて、scFvをアビジン−ビオチン結合を介して固定化したカラムの発想が記載されている(Kiprivanov et al. (1995) Hum Antib Hybrid 6: 93−101、Dubel et al. (1995) J Immunol Methods 178: 201−209)。しかし、ビオチン結合性タンパク質による固定化を利用して生体試料中の被検物質を検出した例は知られていない。ストレプトアビジン融合タンパク質をビオチン化プレートに固定化し、融合させたタンパク質を抗原とする抗体を用いてELISAを行った例(WO2002/046395)は報告されているが、これは、ストレプトアビジン融合タンパク質を担体に、活性を失わせることなく固定化することが可能であることを示したに過ぎない。
特開昭59−99257 特開平8−43392 特開2004−301646 特開平8−114590 特開平11−211727 特開2002−48794 WO2002/046395 WO02/072817
Green (1975) Adv Protein Chem 29: 85−133 Green (1990) Methods Enzymol 184: 51−67 Airenne et al. (1999) Biomol Eng 16: 87−92 Kiprivanov et al. (1995) Hum Antib Hybrid 6: 93−101 Dubel et al. (1995) J Immunol Methods 178: 201−209 Takakura et al. (2009) FEBS J 276: 1383−1397
本発明は、生物学的試料中の物質を定性的、及び/又は、定量的に検出する方法を提供することを目的とする。
本発明は特に、生物学的試料中に微量に存在する物質を、バックグラウンドシグナルを抑えつつ、定性的、及び/又は、定量的に検出・測定する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意研究に努めた結果、ビオチン−ビオチン結合性タンパク質間の結合を用いて、披検物質と特異的に結合するタンパク質とビオチン結合性タンパク質との融合タンパク質を担体に固定化した系を開発した。そして、当該系において、特に生物学的試料中に微量に存在する物質を検出するためには、バックグラウンドシグナルへの対処が大きな問題となることを見出し、これを低下する工夫を行って、本発明を想到した。具体的には、生物学的試料に細胞破砕抽出液及びビオチン結合性タンパク質を添加した場合において、非特異結合を下げる効果が顕著であった。あるいは、ビオチン結合性タンパク質を添加する代わりに、遺伝子工学技術によりビオチン結合性タンパク質を発現させた細胞から調製した細胞破砕抽出液を添加しても同様の効果が得られた。
また、本発明者らは、検出物質と特異的に結合するタンパク質とビオチン結合性タンパク質との融合タンパク質を担体に固定化した系において、生物学的試料を添加する前に、ビオチン結合性タンパク質を該担体に接触(ブロッキング)させることにより、より低濃度の物質を、バックグラウンドシグナルを抑えつつ、安定して測定することができることを見出した。
本発明は、以上の知見に基づき、アビジン−ビオチン結合を用いて、披検物質を特異的に検出する物質を担体に固定化した系において、非特異結合を減少させたより感度の高い検出方法を提供するものである。
限定されるわけではないが、本発明は以下の態様を含む。
[態様1]
生物学的試料中の物質を検出する方法であって、
1) ビオチンを結合させた担体、及び、検出すべき物質と特異的に結合するタンパク質とビオチン結合性タンパク質との融合タンパク質を準備し;
2) ビオチン−ビオチン結合性タンパク質間の結合を介して、工程1)で準備した担体に融合タンパク質を結合させて、融合タンパク質が結合した担体を作成し;
3) 工程2)で作成した融合タンパク質が結合した担体に、
(a) 生物学的試料、及び
(b−i) 工程1)の融合タンパク質を発現させるのに利用した宿主細胞と同種の細胞より調製した細胞破砕抽出液と、ビオチン結合性タンパク質、あるいは
(b−ii) 工程1)の融合タンパク質を発現させるのに利用した宿主細胞と同種の細胞に遺伝子工学技術によりビオチン結合性タンパク質を発現させた細胞から調製した細胞破砕抽出液
を混合して添加する;そして、
4) 融合タンパク質中の検出すべき物質と特異的に結合するタンパク質に結合した披検物質を検出する
ことを含む、前記方法。
[態様2]
生物学的試料中の物質を検出する方法であって、
1) ビオチンを結合させた担体、及び、検出すべき物質と特異的に結合するタンパク質とビオチン結合性タンパク質との融合タンパク質を準備し;
2) ビオチン−ビオチン結合性タンパク質間の結合を介して、工程1)で準備した担体に融合タンパク質を結合させて、融合タンパク質が結合した担体を作成し;
3) 工程2)で作成した融合タンパク質が結合した担体に、ビオチン結合性タンパク質を接触させて担体のブロッキングを行い;
4) 工程3)のブロッキング工程後、融合タンパク質が結合した担体に、生物学的試料を添加し、そして、
5) 融合タンパク質中の検出すべき物質と特異的に結合するタンパク質に結合した披検物質を検出する
ことを含む、前記方法。
[態様3]
生物学的試料中の物質を検出する方法であって、
1) ビオチンを結合させた担体、及び、検出すべき物質と特異的に結合するタンパク質とビオチン結合性タンパク質との融合タンパク質を準備し;
2) ビオチン−ビオチン結合性タンパク質間の結合を介して、工程1)で準備した担体に融合タンパク質を結合させて、融合タンパク質が結合した担体を作成し;
3) 工程2)で作成した融合タンパク質が結合した担体に、ビオチン結合性タンパク質を接触させて担体のブロッキングを行い;
4) 工程3)のブロッキング工程後、融合タンパク質が結合した担体に、
(a) 生物学的試料、及び
(b−i) 工程1)の融合タンパク質を発現させるのに利用した宿主細胞と同種の細胞より調製した細胞破砕抽出液と、ビオチン結合性タンパク質、あるいは
(b−ii) 工程1)の融合タンパク質を発現させるのに利用した宿主細胞と同種の細胞に遺伝子工学技術によりビオチン結合性タンパク質を発現させた細胞から調製した細胞破砕抽出液
を混合して添加する;そして、
5) 融合タンパク質中の検出すべき物質と特異的に結合するタンパク質に結合した披検物質を検出する
ことを含む、前記方法。
[態様4]
態様1の工程3(b−i)又は態様3の工程4(b−i)において、細胞破砕抽出液として、任意のベクターを含む細胞から抽出した細胞破砕抽出液を添加する、態様1又は3に記載の方法。
[態様5]
ビオチン結合性タンパク質がタマビジン又はその変異体である、態様1ないし4のいずれか1項に記載の方法。
[態様6]
生物学的試料が、血液、血清、脳脊髄液、唾液、汗、尿、涙、リンパ液、及び母乳からなる群から選択される、態様1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
[態様7]
生物学的試料中の物質を検出するための担体であって、
1) ビオチンを結合させた担体、及び、検出すべき物質と特異的に結合するタンパク質とビオチン結合性タンパク質との融合タンパク質を準備し;
2) ビオチン−ビオチン結合性タンパク質間の結合を介して、工程1)で準備した担体に融合タンパク質を結合させて、融合タンパク質が結合した担体を作成し;
3) 工程2)で作成した融合タンパク質が結合した担体に、ビオチン結合性タンパク質を接触させて担体のブロッキングを行う
ことを含む方法によって調製された、検出すべき物質と特異的に結合するタンパク質とビオチン結合性タンパク質との融合タンパク質が、ビオチン−ビオチン結合性タンパク質間結合によって結合している、担体。
[態様8]
生物学的試料中の物質を検出するためのキットであって、
A) 検出すべき物質と特異的に結合するタンパク質とビオチン結合性タンパク質との融合タンパク質が、ビオチン−ビオチン結合性タンパク質間結合によって結合している、担体;並びに、
B−i) A)の融合タンパク質を発現させるのに利用した宿主細胞と同種の細胞より調製した細胞破砕抽出液と、ビオチン結合性タンパク質、若しくは
B−ii) A)の融合タンパク質を発現させるのに利用した宿主細胞と同種の細胞に遺伝子工学技術によりビオチン結合性タンパク質を発現させた細胞から調製した細胞破砕抽出液を含む、生物学的試料を希釈するための剤;および/又は
C) ビオチン結合性タンパク質を含むブロッキング剤
を含むキット。
本発明の方法により、生物学的試料中の被検物質の検出において、バックグラウンドシグナルを抑え、より高感度な検出を安定的に行うことができる。本発明の方法により、特に生物学的試料中に微量に存在し、通常は検出が困難な物質の検出も可能になる。
図1は、ビオチン結合性タンパク質によるブロッキングの模式図である。白丸はビオチンを、黒い楕円はビオチン結合性タンパク質を、白い楕円は被検物質と特異的に結合するタンパク質を示す。 図1A:ビオチン結合性タンパク質によるブロッキングなし、融合タンパク質の固定化あり; 図1B:ビオチン結合性タンパク質によるブロッキングなし、融合タンパク質の固定化なし; 図1C:ビオチン結合性タンパク質によるブロッキングあり、融合タンパク質の固定化あり; 図1D:ビオチン結合性タンパク質によるブロッキングあり、融合タンパク質の固定化なし。 図2は、大腸菌で発現させたSITH−1とTM2の融合タンパク質をウェスタンブロットにより検出したものである。対照として、ベクターのみを導入した大腸菌を用いた。 図3は、非特異的結合に及ぼす血清への大腸菌破砕抽出液の添加効果や、タマビジン2によるブロッキング効果を示す。 図3−1は、BSA(のみ)でブロッキングした場合の結果を示す。即ち、SITH−1−TM2融合タンパク質固定化プレート(0.5% BSA Blocking)における測定値から、何も固定化していないビオチン化プレート(0.5% BSA Blocking)における測定値を差し引いた結果を示す。図3−2は、BSAとTM2でブロッキングした場合の結果を示す。即ち、SITH−1−TM2融合タンパク質固定化プレート(50μg/ml TM2/0.5% BSA Blocking)における測定値から、何も固定化していないビオチン化プレート(50μg/ml TM2/0.5% BSA Blocking)における測定値を差し引いた結果を示す。 図4のレーン2は、大腸菌で発現させたHarpinとTM2の融合タンパク質をウェスタンブロットにより検出したものである。対照として、ベクターのみを導入した大腸菌を用いた(レーン1)。
I.本発明の検出方法(態様1)
本発明の検出方法(態様1)は、生物学的試料中の物質を検出する方法であって、
1) ビオチンを結合させた担体、及び、検出すべき物質と特異的に結合するタンパク質とビオチン結合性タンパク質との融合タンパク質を準備し;
2) ビオチン−ビオチン結合性タンパク質間の結合を介して、工程1)で準備した担体に融合タンパク質を結合させて、融合タンパク質が結合した担体を作成し;
3) 工程2)で作成した融合タンパク質が結合した担体に、
(a) 生物学的試料、及び
(b−i) 工程1)の融合タンパク質を発現させるのに利用した宿主細胞と同種の細胞より調製した細胞破砕抽出液と、ビオチン結合性タンパク質、あるいは
(b−ii) 工程1)の融合タンパク質を発現させるのに利用した宿主細胞と同種の細胞に遺伝子工学技術によりビオチン結合性タンパク質を発現させた細胞から調製した細胞破砕抽出液
を混合して添加する;そして、
4) 融合タンパク質中の検出すべき物質と特異的に結合するタンパク質に結合した被検物質を検出する
ことを含む。
生物学的試料中の検出物質
本発明は、生物学的試料中の物質を検出する方法に関する。
本発明における生物学的試料としては、検出対象となる物質が含まれうるものであれば特段限定されない。生物から採取された細胞、組織またはその破片等を含む試料、例えば体液、さらに好ましくは、血液、血清、脳脊髄液、唾液、汗、尿、涙、リンパ液、及び母乳などである。
これらの体液は、必要に応じ希釈して用いる。希釈率は通常2倍ないし10000倍程度、好ましくは100倍ないし1000倍程度であるが、これに限定されない。希釈するための溶液は任意の緩衝液が使用されうるが、適当なブロッキング剤を含んでも良い。ブロッキング剤としては、非特異的な結合を抑制する効果が高いものが良く、BSAやカゼイン等、当業者に周知のブロッキング剤を使用することができる。なお、本発明の態様2は、ブロッキング剤としてビオチン結合性タンパク質を使用する。これについては後述する。
本発明の被検物質としては、生物学的試料中の検出または測定が望まれる物質であれば特段の制限はないが、抗体や抗原などのタンパク質やその断片、ペプチド、核酸、糖質、糖脂質などを好ましく使用することができる。
本発明は生物学的試料中、濃度が低く従来の方法では検出や正確な定量が困難であった物質の測定も可能となる。例えば、披検物質が例えば血清中の抗体であって、さらにその抗体価が低い場合(例えば、血清を1000倍希釈した場合には検出が難しいが、100倍希釈した場合に、ようやく検出が可能となるような低い抗体価の場合)には、血清の希釈率を抑制することが必要となり、その結果、血清中成分に由来する非特異的な結合も増加してしまうため、既存の方法では当該抗体の検出や定量は困難であるが、本発明の方法によって容易に検出、あるいはより正確に定量することが可能となる。
限定されるわけではないが、本発明における被検物質として、例えば、Small protein encoded by the Intermediate Transcript of HHV−6 (HHV−6の潜伏感染中間段階転写物によってコードされる小タンパク質)(SITH−1)に対する抗体が含まれる。その他にも、ヘルペスウイルスの上記以外の抗原に対する抗体、サイトメガロウイルス、肝炎ウイルス、HIVウイルス、HTLVウイルス、麻疹ウイルス、インフルエンザウイルスなどに由来するウイルス関連抗原に対する抗体、あるいはヘリコバクター・ピロリ菌などに由来する細菌関連抗原に対する抗体、あるいは菌類関連抗原に対する抗体などが挙げられる。
PCT/JP2008/67300及び米国仮出願No.61/102441の記載内容に基づくSITH−1
(1)SITH−1タンパク質、核酸
SITH−1タンパク質、核酸の構造及び機能は、PCT/JP2008/67300に開示されており、その全内容が本明細書中に援用される。
SITH−1は、ヘルペスウイルスの潜伏感染に関与する因子、より詳細にはヘルペスウイルスの潜伏感染時に特異的に発現するタンパク質である。ここで「ヘルペスウイルスの潜伏感染時に特異的に発現する」とは、ヘルペスウイルスが感染している宿主において、ヘルペスウイルスが潜伏感染している(増殖感染していない)際に、特異的に、ヘルペスウイルス由来の遺伝子又は遺伝子産物が発現することをいう。
SITH−1のタンパク質及び核酸としては、例えば、(a)配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質、及びこのタンパク質をコードする核酸が挙げられる。
配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるSITH−1タンパク質は、後述する参考例に示すように、ヒトヘルペスウイルス−6(HHV−6)の潜伏感染時に特異的に発現するタンパク質として単離・同定されたものである。SITH−1タンパク質は、配列番号1に示すアミノ酸配列を有し、159アミノ酸からなる、分子量約17.5kDaのタンパク質である。
SITH−1タンパク質は、SITH−1遺伝子の核酸によってコードされている。このSITH−1遺伝子のcDNAは、配列番号3に示すように、1795塩基対(約1.79kbp)のサイズを有しており、954番目から956番目の塩基配列が開始コドン(Kozak ATG)であり、1431番目から1433番目の塩基配列が終止コドン(TAA)である。したがって、上記SITH−1核酸は、配列番号3に示す塩基配列のうち、954番目から1430番目までの塩基配列をオープンリーディングフレーム(ORF)として有しており、このORFは、477塩基対(約0.48kbp)のサイズを有している。SITH−1のcDNAのうち、ORF領域を表す塩基配列を配列番号2に示す。なお、配列番号2に示す塩基配列は、ストップコドンの3塩基を含んで記載している。
SITH−1核酸は、HHV−6が潜伏感染している細胞の細胞質において常に発現している一方、増殖感染細胞では発現が認められない。SITH−1タンパク質をコードする核酸は、これまでに報告したHHV−6潜伏感染特異的遺伝子(H6LT)と相補鎖の関係にあるDNAにコードされ、その発現は、HHV−6の潜伏感染の中間段階において増強する。これらの事実から、SITH−1タンパク質は、HHV−6の潜伏感染時に特異的に発現するタンパク質であると考えられる。
SITH−1タンパク質は、宿主タンパク質であるCAML(calcium−modulating cyclophilin ligand、Accesion #; U18242、)と結合し、グリア細胞内カルシウム濃度を上昇させる。CAMLは宿主生体内において、脳とリンパ球に多く存在し、細胞内のカルシウム濃度を上昇させることが知られているタンパク質である。また、SITH−1タンパク質の発現による細胞内カルシウム濃度の上昇は、潜伏感染細胞内の全般的なシグナル伝達の活性化をもたらし、HHV−6の効率的な再活性化に寄与するものと考えられる。
HHV−6は脳内のグリア細胞で潜伏感染することが知られており、潜伏感染時や活性の高い潜伏感染状態である中間段階にあるHHV−6がSITH−1を発現させると、グリア細胞内のカルシウム濃度が上昇するものと考えられる。脳の細胞における細胞内カルシウム濃度の上昇は、気分障害などの精神障害と大いに関係するものと考えられている(理研年報2003)。
SITH−1タンパク質は、宿主のタンパク質であるCAMLと結合する活性を保持し、細胞内カルシウム濃度を上昇させる機能を有するものである。また、SITH−1タンパク質を、このタンパク質が最も強く発現すると考えられる脳内のグリア細胞で発現させることにより、精神障害を誘導できる。それゆえ、SITH−1タンパク質は、ヘルペスウイルスの潜伏感染時または再活性化初期に発現し、宿主に精神障害を生じさせる機能を有すると考えられる。
(2)SITH−1に対する抗体
SITH−1に対する抗体は、SITH−1タンパク質又はその変異体、あるいはそれらの部分ペプチドを抗原として、公知の方法によりポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体として得られる。公知の方法としては、例えば、文献(Harlowらの「Antibodies : A laboratory manual(Cold Spring Harbor Laboratory, New York(1988))、岩崎らの「単クローン抗体 ハイブリドーマとELISA、講談社(1991)」」に記載の方法が挙げられる。このようにして得られる抗体は、SITH−1タンパク質の検出・測定などに利用できる。
用語「抗体」は、免疫グロブリン(IgA、IgD、IgE、IgG、IgM及びこれらのFabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fcフラグメント)を意味し、例としては、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単鎖抗体、抗イディオタイプ抗体及びヒト化抗体が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
用語「SITH−1タンパク質を認識する抗体」は、SITH−1タンパク質に特異的に結合し得る完全な分子及び抗体フラグメント(例えば、Fab及びF(ab’)2フラグメント)を含むことを意味する。Fab及びF(ab’)2並びにSITH−1抗体の他のフラグメントは、本明細書中で開示される方法、又は公知の方法に従って使用され得る。このようなフラグメントは、代表的には、パパイン(Fabフラグメントを生じる)又はペプシン(F(ab’)2フラグメントを生じる)のような酵素を使用するタンパク質分解による切断によって産生される。
気分障害患者、又は、気分障害の可能性のある個体は、SITH―1タンパク質の発現量が増加しており、その結果SITH−1抗体価も上昇していると考えられる。本発明は、一態様において、生物学的試料中のSITH−1抗体を検出することにより、気分障害患者又は気分障害の可能性のある個体を同定することを可能にする。
検出すべき物質と特異的に結合するタンパク質とビオチン結合性タンパク質との融合タンパク質が結合した担体(態様1の工程1)及び2))
本発明の検出方法は、検出すべき物質と特異的に結合するタンパク質とビオチン結合性タンパク質との融合タンパク質が、ビオチン−ビオチン結合性タンパク質間結合によって結合している、担体を利用する。
本発明の担体は、
1) ビオチンを結合させた担体、及び、検出すべき物質と特異的に結合するタンパク質とビオチン結合性タンパク質との融合タンパク質を準備し;
2) ビオチン−ビオチン結合性タンパク質間の結合を介して、工程1)で準備した担体に融合タンパク質を結合させて、融合タンパク質が結合した担体を作成する、
ことを含む方法によって作成することができる。
ビオチンを結合させた担体
「ビオチン」とは、D−[(+)−cis−ヘキサヒドロ−2−オキソ−1H−チエノ−(3,4)−イミダゾール−4−吉草酸]の一般名称である。ビタミンB群に分類される水溶性ビタミンの一種で、Vitamin B7(ビタミンB7)とも呼ばれる、あるいは、ビタミンH、補酵素Rとも言われることもある。ビオチンは卵白中に含まれる糖タンパク質の一種、アビジンと非常に強く結合し、その吸収が阻害される。そのため、生卵白の大量摂取によってビオチン欠乏症を生じることがある。
本明細書中において「ビオチン」とは、上記ビオチンの他、イミノビオチン(iminobiotin)(Hofmann et al. (1980) Proc Natl Acad Sci USA 77:4666−4668)や、デスチオビオチン(desthiobiotin)(Hirsch et al. (2002) Anal Biochem 308: 343−357)、あるいはビオシチン(biocytin)やBiotin sulfoxide等のビオチン類縁体も含む。
ビオチン−アビジン(ビオチン結合性タンパク質)複合体を用いたシステムは、組織免疫学やDNA分析、臨床検査などの分野で広く利用されている。本発明のタンパク質を担体に結合する方法は、ビオチン結合性タンパク質に所期のタンパク質を結合させた融合タンパク質を、ビオチン−アビジン結合を利用して、担体に結合させるものである。本発明の方法では、従来のビオチン−アビジン結合を利用した結合と比較して、タンパク質の機能を損なうことなく、遥かに効率良く作用させることが可能になる。
固体担体を構成する材料は、セルロース、テフロン(登録商標) 、ニトロセルロース、アガロース、デキストラン、キトサン、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリプロピレン、ナイロン、ポリジビニリデンジフルオライド、ラテックス、シリカ、ガラス、ガラス繊維、金、白金、銀、銅、鉄、ステンレススチール、フェライト、シリコンウエハ、ポリエチレン、ポリエチレンイミン、ポリ乳酸、樹脂、多糖類、タンパク(アルブミン等)、炭素またはそれらの組合せ、などを含むがこれらに限定されない。また、一定の強度を有し、組成が安定し、かつ非特異結合が少ないものが好ましい。
固体担体の形状は、ビーズ、磁性ビーズ、薄膜、微細管、フィルター、プレート、マイクロプレート、カーボンナノチューブ、センサーチップなどを含むがこれらに限定されない。薄膜やプレートなどの平坦な固体担体は、当該技術分野で知られているように、ピット、溝、フィルター底部などを設けてもよい。
発明の一態様において、ビーズは、約25nm〜約1mmの範囲の球体直径を有しうる。好ましい態様では、ビーズは約50nm〜約10μmの範囲の直径を有する。ビーズのサイズは特定の適用に応じて選択されうる。いくらかの細菌スポアは約1μmのオーダーのサイズを有するので、かかるスポアを捕捉するための好ましいビーズは1μmよりも大きい直径を有する。
限定されるものではないが、例えば、高い検出感度が望まれる場合においては、検出すべき物質とこれに特異的に結合する物質との接触頻度や洗浄操作の容易性といった観点から、固体担体として上記のようなビーズを好ましくは使用することができる。
ビオチンを担体に結合させる方法として、例えばビオチン化試薬を用いる方法が挙げられる。ビオチン化試薬として例えば、PIERCE社製の(カッコ内は順にリンカー長、反応基) EZ−Link(登録商標) Sulfo−NHS−Biotin(13.5Å、1級アミン)、EZ−Link(登録商標) Sulfo−NHS−LC−Biotin(22.4Å、1級アミン)、EZ−Link(登録商標) Sulfo−NHS−LCLC−Biotin(30.5Å、1級アミン)、EZ−Link(登録商標) PFP−Biotin(9.6Å、アミン)、EZ−Link(登録商標) Maleimide−PEO2−Biotin(29.1Å、チオール基)、EZ−Link(登録商標) Biotin−PEO2 Amine(20.4Å、カルボキシル基)、EZ−Link(登録商標) Biotin−PEO3−LC Amine(22.9Å、カルボキシル基)、EZ−Link(登録商標) Biotin−Hydrazide(15.7Å、アルデヒド基)、EZ−Link(登録商標) Biotin−LC−Hydrazide(24.7Å、アルデヒド基)、EZ−Link(登録商標) NHS−Iminobiotin(13.5Å、1級アミン)などを利用できるが、これらに限定されるものではない。
上記ビオチン化試薬を用いて、マイクロプレート、微小ビーズ、あるいはセンサーチップなど所望の担体に、公知の方法を使用してビオチンを結合させることができる。例えば、アミノ基、カルボキシル基、チオール基、トシル基、エポキシ基、マレイミド基、活性化エステルなど種々の官能基を持つ担体(例えば磁性ビーズ、セファロースビーズ、アガロースビーズ、ラテックスビーズ、マイクロタイタープレートなど)を用いる方法がある。この場合例えば、NHSエステルを含むビオチン化試薬を用いる場合は、DMSO(demethylsulfoxide)のような有機溶媒か、pH7−9のリン酸緩衝液で溶解し、アミノ基を持つ固定化担体に添加することによってビオチンを結合させることができる。また、例えばアミノ基を含むビオチン化試薬を用いる場合は、EDC(1−ethyl−3−(3−dimethylaminopropyl) carbodiimide hydrochloride)のようなカルボジイミドを用いて固定化担体のカルボキシル基を活性化エステルに変換させた後、pH5付近の緩衝液で溶解したビオチン化試薬を添加して、ビオチンを結合させてもよい。なお、ビオチン化した固定化担体は、好ましくは未反応の官能基を不活性化した後、BSAなどでブロッキングする。
また、ビオチン化された市販担体を利用することもできる。ビオチン化されたマイクロプレートとしては、例えば、Reacti−BindTM Biotin Coated Polystyrene Plates(PIERCE社製)を利用できるが、これに限定されるものではない。ビオチン化された微小ビーズとしては、例えば、磁性ビーズとして、BioMag Biotin(Polysciences社製)が、ナノ磁性ビーズとして、コアフロント社製のnanomag(登録商標)−D biotin、nanomag(登録商標)−silica biotinが、ポリスチレン製マイクロビーズとして、Beadlyte(登録商標) Biotin Beads(Upstate社製)が、アガロースとしてSigma社製の、Biotin Agarose、2−iminobiotin−Agaroseが、高架橋アガロースとして、Biotin−Sepharose(バイオリサーチテクノロジー社製)を利用できるが、これらに限定されるものではない。
担体とビオチンと繋ぐリンカーの長さは、少なくとも5Åより長いことが好ましく、より好ましくは13.5Å以上、より好ましくは22.4Å以上、さらにより好ましくは30.5Å以上である。
検出すべき物質と特異的に結合するタンパク質
被検物質と特異的に結合するタンパク質(以下、「特異的タンパク質」と呼称する場合がある)は、特に限定されない。当該発明による一つの態様としては、例えばこれらに限定されるものではないが、抗原と抗体、ホルモン等のリガンドと受容体、レクチンと糖、核酸の相補的結合等において、その一方を、他方との特異的な複合体形成能力を利用して、被検試料から選択的に分析する。
より詳細には、例えばタンパク質としては、抗体、抗原タンパク質、レクチン、ペプチド、あるいはプロテインA、プロテインG、プロテインL、受容体、酵素タンパク質などが挙げられる。抗体としては、IgGの他、scFvやFab等の抗原結合部位を含む抗体断片が、抗原タンパク質としては、B型・C型肝炎ウイルス、HIV、インフルエンザ、ヘルペスウイルス等のウイルス由来のタンパク質や、ヘリコバクター・ピロリ等の細菌由来のタンパク質、あるいはCEA、PSA等の腫瘍マーカー、性ホルモンなどが挙げられる。レクチンは、糖結合性タンパク質であり、マンノース特異的レクチン、GalNAc特異的レクチン、GlcNAc特異的レクチン、フコース特異的レクチン、シアル酸特異的レクチンなどの単糖特異的レクチン、オリゴ糖特異的レクチンなどが挙げられる。また、DNA/RNA結合タンパク質等も挙げられる。更にペプチドとしては、2〜100アミノ酸からなるもの、好ましくは4〜50アミノ酸からなるもの、より好ましくは6〜30アミノ酸からなるものが、例として挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、限定されるわけではないが、本発明において、被検物質と特異的に結合するタンパク質の例として、SITH−1タンパク質を挙げることができる。
ビオチン結合性タンパク質
本発明は、ビオチン−ビオチン結合性タンパク質の間の結合を利用して、被検物質と特異的に結合するタンパク質を担体に固定することを含む。本発明において、「ビオチン−ビオチン結合性タンパク質の間の結合」を「アビジン−ビオチン結合」と呼称する場合がある。
ビオチン結合性タンパク質としては、アビジン、ストレプトアビジン、ニュートラアビジン、AVRタンパク質(Biochem. J.,(2002), 363: 609−617)、ブラダビジン(Bradavidin)(J. Biol. Chem.,(2005), 280: 13250−13255)、リザビジン(Rhizavidin)(Biochem. J., (2007),405:397−405)、タマビジン(WO02/072817)やこれらの変異体等、ビオチンと強く結合するタンパク質であれば、いずれも好適に使用することができる。好ましくは、少なくともビオチンとの解離定数(KD)が10-6、さらに好ましくは10-8以下、さらに好ましくは10-10以下である。但し、被検試料に添加するビオチン結合性タンパク質、ならびに担体ブロッキングに使用するビオチン結合性タンパク質については、後述のとおりである。
ビオチン結合性タンパク質として、特に、大腸菌で高発現するタマビジンとその変異体を好ましく用いることができる。タマビジンは、食用キノコである担子菌タモギタケ(Pleurotus conucopiae)から発見されたビオチン結合性タンパク質である(WO02/072817、Takakura et al. (2009) FEBS J 276: 1383−1397)。タマビジンの変異体としては、例えば、高結合能・低非特異結合タマビジン(PCT/JP2009/64302)等が挙げられる。
本発明における「タマビジン」は、タマビジン1、タマビジン2、またはそれらの変異体を意味する。具体的には、本発明のタマビジンは典型的には、配列番号5もしくは配列番号7のアミノ酸配列を含んでなるタンパク質、または、配列番号4もしくは配列番号6の塩基配列を含んでなる核酸によってコードされるタンパク質、であってよい。あるいは、本発明のタマビジンは、配列番号5もしくは配列番号7のアミノ酸配列を含んでなるタンパク質、または、配列番号4もしくは配列番号6の塩基配列を含んでなる核酸によってコードされるタンパク質、の変異体であって、タマビジン1または2と同様のビオチン結合活性を有するタンパク質、あるいは、高結合能・低非特異結合の活性を有するタンパク質であってよい。本明細書において、タマビジン1、タマビジン2、およびそれらの変異体を総称して、単にタマビジンと呼ぶことがある。
タマビジン1または2の変異体は、配列番号5または7のアミノ酸配列において、1または複数のアミノ酸の欠失、置換、挿入および/または付加を含むアミノ酸配列を含んでなるタンパク質であって、タマビジン1または2と同様のビオチン結合活性を有するタンパク質であってもよい。置換は、保存的置換であってもよく、これは、特定のアミノ酸残基を類似の物理化学的特徴を有する残基で置き換えることである。保存的置換の非限定的な例には、Ile、Val、LeuまたはAla相互の置換のような脂肪族基含有アミノ酸残基の間の置換、LysおよびArg、GluおよびAsp、GlnおよびAsn相互の置換のような極性残基の間での置換などが含まれる。
アミノ酸の欠失、置換、挿入および/または付加による変異体は、野生型タンパク質をコードするDNAに、例えば周知技術である部位特異的変異誘発(例えば、Nucleic Acid Research, Vol.10, No. 20, p.6487−6500, 1982参照、引用によりその全体を本明細書に援用する)を施すことにより作成することができる。本明細書において、「1または複数のアミノ酸」とは、好ましくは部位特異的変異誘発法により欠失、置換、挿入および/または付加できる程度のアミノ酸を意味する。また、本明細書において「1または複数のアミノ酸」とは、場合により、1または数個のアミノ酸を意味してもよい。限定されるわけではないが、「1または複数のアミノ酸」とは、50個以内、好ましくは、40個以内、30個以内、20個以内、10個以内、8個以内、5個以内、3個以内のアミノ酸を意味する。 タマビジン1または2の変異体はさらに、配列番号5または7のアミノ酸配列と少なくとも60%以上、好ましくは65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上または99%以上、より好ましくは99.3%以上のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるタンパク質であって、タマビジン1または2と同様のビオチン結合活性を有するタンパク質、あるいは、高結合能・低非特異結合の活性を有するタンパク質であってもよい。
2つのアミノ酸配列の同一性%は、視覚的検査および数学的計算によって決定してもよい。あるいは、2つのタンパク質配列の同一性パーセントは、Needleman, S. B. 及びWunsch, C. D. (J. Mol. Biol., 48: 443−453, 1970)のアルゴリズムに基づき、そしてウィスコンシン大学遺伝学コンピューターグループ(UWGCG)より入手可能なGAPコンピュータープログラムを用い配列情報を比較することにより、決定してもよい。GAPプログラムの好ましいデフォルトパラメーターには:(1)Henikoff, S. 及びHenikoff, J. G. (Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89: 10915−10919, 1992)に記載されるような、スコアリング・マトリックス、blosum62;(2)12のギャップ加重;(3)4のギャップ長加重;及び(4)末端ギャップに対するペナルティなし、が含まれる。
当業者に用いられる、配列比較の他のプログラムもまた、用いてもよい。同一性のパーセントは、例えばAltschulら(Nucl. Acids. Res., 25, p.3389−3402, 1997)に記載されているBLASTプログラムを用いて配列情報と比較し決定することが可能である。当該プログラムは、インターネット上でNational Center for Biotechnology Information(NCBI)、あるいはDNA Data Bank of Japan(DDBJ)のウェブサイトから利用することが可能である。BLASTプログラムによる同一性検索の各種条件(パラメーター)は同サイトに詳しく記載されており、一部の設定を適宜変更することが可能であるが、検索は通常デフォルト値を用いて行う。または、2つのアミノ酸配列の同一性%は、遺伝情報処理ソフトウエアGENETYX Ver.7(ゼネティックス製)などのプログラム、または、FASTAアルゴリズムなどを用いて決定してもよい。その際、検索はデフォルト値を用いてよい。
2つの核酸配列の同一性%は、視覚的検査と数学的計算により決定可能であるか、またはより好ましくは、この比較はコンピュータ・プログラムを使用して配列情報を比較することによってなされる。代表的な、好ましいコンピュータ・プログラムは、遺伝学コンピュータ・グループ(GCG;ウィスコンシン州マディソン)のウィスコンシン・パッケージ、バージョン10.0プログラム「GAP」である(Devereux, et al., 1984, Nucl. Acids Res., 12: 387)。この「GAP」プログラムの使用により、2つの核酸配列の比較の他に、2つのアミノ酸配列の比較、核酸配列とアミノ酸配列との比較を行うことができる。
なお、担体に結合させる融合タンパク質を構成する「ビオチン結合性タンパク質」は、ビオチン−ビオチン結合性タンパク質間の結合を介して、担体に融合タンパク質を結合させて、融合タンパク質が結合した担体を作成するために利用されるものである。よって、限定されるわけではないが、上記タマビジン1又はタマビジン2の変異体は、これらの野生型を利用して融合タンパク質を形成した場合と比較して、ビオチン結合活性が大きく減少していないことが好ましい。
よって、非限定的に、タマビジン1の変異体は、配列番号5のアミノ酸配列において、N14、S18、Y34、S36、S78、W82、W98、W110、D118が改変されないことが好ましい。なお表記の、例えばY34は、配列番号5のアミノ酸配列の第34番目のチロシン残基を意味する。あるいは、これらを改変する場合には、性質あるいは構造が類似したアミノ酸に改変することが好ましく、例えばアスパラギン(N14)の場合は、グルタミン(Q)やアスパラギン酸(D)へ、好ましくはアスパラギン酸へ、セリン(S18、S36、S78)の場合は、スレオニン(T)あるいはチロシン(Y)へ、好ましくはスレオニンへ、チロシン(Y34)の場合は、セリン(S)やスレオニン(T)あるいはフェニルアラニン(F)へ、好ましくはフェニルアラニンへ、トリプトファン(W82、W98、W110)の場合は、フェニルアラニン(F)へ、アスパラギン酸(D118)の場合は、グルタミン酸(E)やアスパラギン(N)へ、好ましくはアスパラギンへ、それぞれ改変することが好ましい。
また、タマビジン2の変異体は、配列番号7のアミノ酸配列において、4つのトリプトファン残基(W69、W80、W96、W108)が改変されないことが好ましい。あるいは、これらを改変する場合には、性質あるいは構造が類似したアミノ酸、例えばフェニルアラニン(F)への改変が好ましい。また、ビオチンと直接相互作用すると考えられるアミノ酸残基(N14、S18、Y34、S36、S76、T78、D116)についても改変されないことが望ましい。あるいは、これらを改変する場合にはビオチンとの結合を維持できるよう、性質あるいは構造が類似したアミノ酸に改変することが好ましく、例えばアスパラギン(N14)の場合は、グルタミン(Q)やアスパラギン酸(D)へ、好ましくはアスパラギン酸へ、アスパラギン酸(D40)の場合は、アスパラギン(N)へ、セリン(S18、S36、S76)の場合は、スレオニン(T)あるいはチロシン(Y)へ、好ましくはスレオニンへ、チロシン(Y34)の場合は、セリン(S)やスレオニン(T)あるいはフェニルアラニン(F)へ、好ましくはフェニルアラニンへ、スレオニン(T78)の場合は、セリン(S)やチロシン(Y)へ、好ましくはセリンへ、アスパラギン酸(D116)の場合は、グルタミン酸(E)やアスパラギン(N)へ、好ましくはアスパラギンへ、それぞれ改変することが好ましい。
本発明において、好ましいタマビジン改変体には以下のものが含まれる。(PCT/JP2009/64302)。
配列番号7に記載のアミノ酸配列、あるいはこの配列中に1から数個のアミノ酸変異を有するアミノ酸配列、又はこの配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、ビオチン結合活性を示すタンパク質において、以下のグループ
1)配列番号7の104番目のアルギニン残基;
2)配列番号7の141番目のリジン残基;
3)配列番号7の26番目のリジン残基;及び
4)配列番号7の73番目のリジン残基
から選択される1または複数の残基が、酸性アミノ酸残基又は中性アミノ酸残基に置換されていることを特徴とする、改変型ビオチン結合タンパク質である。
より好ましくは、配列番号7において、104番目のアルギニン残基がグルタミン酸残基に置換されており、そして、141番目のリジン残基がグルタミン酸残基に置換されている、改変型ビオチン結合タンパク質(R104E−K141E);
配列番号7において、40番目のアスパラギン酸残基がアスパラギン残基に置換されており、そして、104番目のアルギニン残基がグルタミン酸残基に置換されている、改変型ビオチン結合タンパク質(D40N−R104E);
配列番号7において、40番目のアスパラギン酸残基がアスパラギン残基に置換されており、そして、141番目のリジン残基がグルタミン酸残基に置換されている、改変型ビオチン結合タンパク質(D40N−K141E);並びに、
配列番号7において、40番目のアスパラギン酸残基がアスパラギン残基に置換されており、104番目のアルギニン残基がグルタミン酸残基に置換されており、そして、141番目のリジン残基がグルタミン酸残基に置換されている、改変型ビオチン結合タンパク質(D40N−R104E−K141E)、
からなるグループから選択される、改変型ビオチン結合タンパク質である。
被検物質と特異的に結合するタンパク質とビオチン結合性タンパク質との融合タンパク質
本発明は、被検物質と特異的に結合するタンパク質とビオチン結合性タンパク質との融合タンパク質(以下、「ビオチン結合性タンパク質融合タンパク質」、又は「融合タンパク質」と呼称する場合がある。)を担体に固定する。
ビオチン結合性タンパク質融合タンパク質の準備の方法は特に限定されず、例えば公知の遺伝子工学的手法を用いて発現させてもよい。例えば、ビオチン結合性タンパク質と所望のタンパク質との融合タンパク質をコードする遺伝子を、大腸菌等の発現システムを用いて発現することによって取得することができる。なお大腸菌で高発現させるにはタマビジンやその変異体が好適である。
ビオチン結合性タンパク質融合タンパク質において、ビオチン結合性タンパク質と所望のタンパク質は直接結合していてもよく、あるいはリンカーを介して結合していてもよいが、アミノ酸のリンカーを介した結合が好ましい。このリンカーの長さは、少なくとも1アミノ酸以上であればよいが、好ましくは5アミノ酸以上、さらに好ましくは6アミノ酸以上である。また、担体と結合しているビオチンとタマビジンとの結合力を一層向上させるためには、好ましくは10アミノ酸以上、より好ましくは12アミノ酸以上、15アミノ酸以上、18アミノ酸以上、更に好ましくは25アミノ酸以上である。また、このようなリンカーはタマビジン融合タンパク質の活性をも向上させると推測される。このリンカーを構成するアミノ酸は特に限定されないが、好ましくは、グリシン、セリン、あるいはアラニンのような中性アミノ酸の繰り返しからなる。例えば、これらに限定されないが、GGGGS、GGSGG、GASAG、GSGAA、GSGSA、GGGGSG、GGGSGGS、GGSGGGGS、AAAAGSGAA、GGGGSGGGGSGGGGS、GGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号8−18)などが挙げられる。
またビオチン結合性タンパク質は、所望のタンパク質のN末端側、もしくはC末端側のどちらに結合させても良い。また所望のタンパク質を発現させるにあたり、例えば大腸菌の細胞質よりもペリプラズム空間の方が適する場合には、ペリプラズムに標的するためのリーダー配列を用いても良い。このようなリーダー配列として、PelB(Lei et al. (1987) J Bacteriol 169: 4379−4383)やOmpA(Gentry−Weeks et al. (1992) J Bacteriol 174: 7729−7742)等があるが、これらに限定されるものではない。
ビオチン結合性タンパク質融合タンパク質が可溶性画分から得られる場合は、粗タンパク抽出液を精製することなく、ビオチン化担体と接触させ、融合タンパク質をビオチン化担体に結合させてもよい。これをその後十分に洗浄することで、融合タンパク質の精製と担体への固定化が一度でできる。あるいはイミノビオチン等(Hofmann et al. (1980) Proc Natl Acad Sci USA 77: 4666−4668)のビオチン類縁体の結合したカラムを用いて精製してから、ビオチン化担体に結合させることもできる。
あるいはまた、ビオチン結合性タンパク質融合タンパク質のN末端若しくはC末端に、さらに精製用のタグを付加しても良い。このようなタグとして例えば、c−mycエピトープタグ(Munro and Pelham (1986) Cell 46: 291−300)やヒスチジンタグ(Hochuli et al (1988) Bio/Technol 6: 1321−1325、Smith et al. (1988) J Biol Chem 263: 7211−7215)、Haloタグ(Los and Wood (2007) Methods Mol Biol 356: 195−208)、Flagタグ(Einhauer and Jungbauer (2001) J Biochem Biophys Methods 49: 455−465)等があり、あるいはそれらの組合せも考えられるが、これらに限定されるものではない。
融合タンパク質が不溶性画分から得られる場合は、例えば尿素や塩酸グアニジンのようなカオトロピック塩を用いて、一度タンパク質を可溶化し、その後透析等を用いて、カオトロピック塩を徐々に抜きながら、タンパク質のリフォルディング(refolding)を促す、公知の方法が取られる(Sano and Cantor (1991) Bio/Technology 9: 1378−1381、Sano et al. (1992) Proc Natl Acad Sci USA 89: 1534−1538)。
あるいはまた、所望のタンパク質が大腸菌内で不溶性画分に発現する場合、例えば、マルトース結合タンパク質(Bach et al. (2001) J Mol Biol 312: 79−93)や、チオレドキシン(Jurado et al. (2006) J Mol Biol 357: 49−61)、グルタチオンSトランスフェラーゼ(Tudyka and Skerra (1997) Protein Sci 6: 2180−2187)、あるいはIdeno et al (2004) Appl Microbiol Biotechnol 64: 99−105に記載されているようなシャペロン類を共発現させるか、もしくは融合タンパク質にさらにシャペロンを融合させた3連融合タンパク質を作製してもよい。なお、マルトース結合タンパク質、チオレドキシン、グルタチオンSトランスフェラーゼは精製用のタグとしても利用できる。
融合タンパク質の発現システムとして、昆虫細胞や植物細胞、哺乳類細胞、酵母細胞、枯草菌細胞、無細胞発現系など、他の公知の発現系で発現させてもよい。特に融合相手のタンパク質が植物細胞で発現する場合(例えば植物レクチンなど)は、当該融合タンパク質も植物細胞の発現系で発現させることが好ましい。当業者は、融合相手のタンパク質の性質を考慮し適切な発現系を選択することが可能である。
融合タンパク質の担体への結合
本発明においては、ビオチンを結合させた担体と、ビオチン結合性タンパク質融合タンパク質を準備し、両者を接触させることにより、アビジン−ビオチン結合を介して担体にタンパク質を結合させることができる。
限定されるわけではないが、ビオチン結合性タンパク質融合タンパク質を含む細胞破砕粗抽出液を、0.1mg/mlないし5mg/ml、好ましくは0.2mg/mlないし2mg/mlの総タンパク質濃度で準備する。これを、10℃ないし40℃で、好ましくは20℃ないし30℃で、5分ないし2時間、好ましくは30分ないし1時間、ビオチンを結合させた担体と接触させる。あるいはまた、0.1μg/mlないし5μg/mlの濃度の精製したビオチン結合性タンパク質融合タンパク質を、ビオチンを結合させた担体と接触させてもよい。
担体への生物学的試料の添加(態様1の工程3)
本発明の態様1の方法は、融合タンパク質が結合した担体を準備した後に、工程3)として、
工程2)で作成した融合タンパク質が結合した担体に、
(a) 生物学的試料、及び
(b−i) 工程1)の融合タンパク質を発現させるのに利用した宿主細胞と同種の細胞より調製した細胞破砕抽出液と、ビオチン結合性タンパク質、あるいは
(b−ii) 工程1)の融合タンパク質を発現させるのに利用した宿主細胞と同種の細胞に遺伝子工学技術によりビオチン結合性タンパク質を発現させた細胞から調製した細胞破砕抽出液
を混合して添加する、ことを含む。
一般に、担体を利用した検出方法において、バックグラウンドシグナルの原因となる非特異結合を低減させるため、細菌成分抽出液を検出用試薬に含有させる方法(特開昭59−99257)、被検物質に特異的に結合する組換えタンパク質産生に使用したベクターと同種でありかつ当該タンパク質をコードする遺伝子を含まないベクターが導入された宿主細胞の培養成分を試料に添加する方法(特開平8−43392)、被検物質に特異的に結合する組換えタンパク質を産生した細胞と同種であり、かつ当該タンパク質を含まない細胞からの水抽出液を加熱処理した後、その水溶性画分を試料に添加する方法(特開2004−301646)などが知られている。
本発明者らは、上記の方法を融合タンパク質の系に試みたが、十分な効果を得ることができなかった。しかし、鋭意研究の結果、より顕著な効果を得る方法を想到した。具体的には、被検試料を担体に接触させる際に、細胞破砕抽出液、並びにビオチン結合性タンパク質の両方を同時に存在させると好ましいことを見いだした。
一態様において、融合タンパク質を発現させるのに利用した宿主細胞と同種の細胞より調製した細胞破砕抽出液と、ビオチン結合性タンパク質を、生物学的試料と混合して添加する。被検試料に、ビオチン結合性タンパク質と細胞の破砕抽出液を加える場合、いずれを先に添加してもよく、また同時に添加してもよい。あるいはビオチン結合性タンパク質と細胞の破砕抽出液を混合した後に被検試料に添加してもよい。
別の一態様において、融合タンパク質を発現させるのに利用した宿主細胞と同種の細胞に遺伝子工学技術によりビオチン結合性タンパク質を発現させた細胞から調製した細胞破砕抽出液を被検試料に混合して添加してもよい。具体的には、ビオチン結合性タンパク質をコードする核酸を発現ベクターに組み込んで、組換えタンパク質を細胞に発現させ、この細胞の破砕抽出液を用いても良い。
被検試料が血清等の場合、通常血清を細胞破砕抽出液で10倍から10000倍、好ましくは100倍から1000倍、より好ましくは100倍から500倍に希釈して用いる。
細胞破砕抽出液が由来する細胞は、大腸菌細胞、酵母細胞、哺乳類細胞、昆虫細胞、植物細胞など、特段の制限はないが、融合タンパク質を発現させるのに利用した宿主細胞と同種の細胞であることが好ましい。例えば、融合細胞を大腸菌で調製した場合、細胞破砕抽出液も大腸菌から調製することが望ましい。また、無細胞系により融合タンパク質を発現させた場合は、使用した細胞破砕抽出液をそのまま、あるいは所望の緩衝液に懸濁して、使用することができる。
より好ましくは、細胞は、生物学的試料が由来する生物とは異なる種の生物由来の細胞であることは好ましい。例えば、生物学的試料がヒト由来の試料である場合、好ましくは、細胞破砕抽出液もヒト以外の生物に由来する細胞から調製するのが好ましい。しかしながら、例えば、融合タンパク質を哺乳動物細胞で発現させる場合、特定の癌細胞等から調製した培養細胞株を使用する場合が一般的である。このような場合、ヒト培養細胞株と生物学的試料が由来する(例えば)生体中のヒト細胞は内容物が実質的に大きく異なるため、ヒト由来の培養細胞株から細胞破砕抽出液を利用した場合でも、本発明の効果を得ることが可能である。
また、細胞破砕抽出液を調製するための細胞は、任意のベクター、好ましくは空ベクターを含んでもよい。空ベクターとは、被検物質と特異的に結合するタンパク質またはその融合タンパク質を発現させた時に用いたベクターと同種で、かつこれらのタンパク質をコードする遺伝子を含まないベクターであってもよく、また、例えば、これらの空ベクターにさらに任意の核酸を含む、任意のベクターであってもよい。また、被検物質と特異的に結合するタンパク質またはその融合タンパク質を発現させた時に用いたベクターとは、無関係の公知の任意のベクターであってもよい。
細胞の破砕抽出液としては、細胞に由来する成分であれば特に制限されず、例えば、そのタンパク質成分、糖質成分、脂質成分又はその混合成分を使用することができる。好ましくは、細胞の可溶性抽出物を使用することができる。
細胞の破砕抽出液の調製方法としては、特に制限されず、各種の方法を使用することができる。通常、適切な培地で培養した細胞を、超音波などの物理的手段あるいは界面活性剤などを用いた化学的手段あるいは酵素処理等で破砕若しくは可溶化し、遠心分離又は濾過等の操作により、可溶性成分として調製することができる。また、保存寿命をのばすためには、遠心分離又は濾過等により清澄にした液に、例えばプロテアーゼインヒビターの添加、又はオートクレーブ処理等の加熱処理を施して、細胞由来の各種酵素等を抑制又は失活させることが好ましい。細胞の破砕抽出液を加える濃度は、生じる非特異反応の強さに応じて変えてもよく、該非特異反応を吸収するに充分な濃度を適宜設定することができる。
細胞破砕抽出液を調製する具体的な方法の例としては、これに限定されるわけではないが、例えば大腸菌細胞の場合、大腸菌(ベクターを含んでもよく、またベクターにはビオチン結合性タンパク質をコードする遺伝子を含んでも良い)を、抗生物質を含むLB培地に接種し、OD600における吸光度が0.25ないし1、好ましくは0.4ないし0.6に達するまで、25℃ないし37℃で振とう培養した後、0.1mMないし5mM、好ましくは0.5mMないし1mMのIPTGを添加し、さらに25℃ないし37℃で、2時間ないし24時間、好ましくは4時間ないし16時間振とう培養を行う。培養液から遠心にて菌体を回収し、菌体を所望の緩衝液中に懸濁後、破砕し、破砕液を遠心し、その上清を大腸菌粗抽出液として回収すればよい。
担体への生物学的試料、及び、細胞破砕抽出液の添加は任意の方法で行うことができる。ただし、生物学的試料が担体と接触するよりも前に、生物学的試料が細胞破砕抽出液と接触しなければならない。すなわち、生物学的試料と細胞破砕抽出液が十分に接触すればよく、細胞破砕抽出液由来の成分は必ずしも最終的に生物学的試料とともに担体に添加される必要はない。例えば、細胞破砕抽出液成分を結合した担体を作成し、そこへ生物学的試料を処理したものを使用してもよい。具体的には、生物学的試料を、細胞破砕抽出液成分カラムに通す、などの態様が挙げられる。
生物学的試料に、細胞破砕粗抽出液を混合する場合、限定されるわけではないが、試料に、所望の緩衝液(BSAやカゼイン、市販のブロッキング剤などを含んでも良い)で0.05mg/mlないし5mg/ml、好ましくは0.5mg/mlないし5mg/mlの総タンパク質濃度に調製した細胞破砕粗抽出液を、10℃ないし30℃で、好ましくは20℃ないし30℃で、30分ないし4時間、好ましくは1時間ないし2時間反応させる。なお、生物学的試料が血清の場合、これに限定されるわけではないが、上記細胞破砕粗抽出液で100倍ないし1000倍に希釈すると良い。
被検試料へのビオチン結合性タンパク質の添加
本発明はその特徴の1つとして、生物学的試料へ融合タンパク質を発現させるのに利用した宿主細胞と同種の細胞から調製した細胞破砕抽出液、並びにビオチン結合性タンパク質を混合して担体に添加する(工程b−i)か、あるいは、融合タンパク質を発現させるのに利用した宿主細胞と同種の細胞に遺伝子工学技術によりビオチン結合性タンパク質を発現させた細胞から調製した細胞破砕抽出液を被検試料に混合して担体に添加する(工程b−ii)。
本発明の方法において、被検試料にビオチン結合性タンパク質を添加することにより、最終的にバックグラウンドシグナルを抑制することができる。
このようなビオチン結合性タンパク質は、融合タンパク質を構成するビオチン結合性タンパク質と、同じであっても異なっていてもよい。また、野生型であっても変異体であってもよく、ビオチン結合能は野生型と比較して、同等であっても、高くてもよく、低くてもよい。
また、添加の態様として、ビオチン結合性タンパク質(天然由来でも、遺伝子工学的に発現させたものでもよい)の粉末を直接添加してもよく、適当な液に溶解してから添加してもよい。また例えば、ビオチン結合性タンパク質を試料に直接添加するのではなく、試料と細胞破砕抽出液の混合物をビオチン結合性タンパク質を固定した担体で処理する(例えばカラムに通す)態様でもよい。(工程b−i)。
ビオチン結合性タンパク質を細胞破砕粗抽出液に添加する場合、これに限定されるわけではないが、ビオチン結合性タンパク質の濃度は最終濃度で、1μg/mlないし500μg/ml、好ましくは10μg/mlないし100μg/mlで添加する。当該細胞中でビオチン結合性タンパク質を遺伝子工学的に発現させる場合の、ビオチン結合性タンパク質の濃度に関しても、これに限定されるわけではないが、同様の濃度であっても良い。
あるいは、ビオチン結合性タンパク質をコードする遺伝子を宿主細胞に導入し発現させ、当該宿主細胞を破砕して得られたビオチン結合性タンパク質を含む細胞抽出液として使用してもよい(工程b−ii)。この場合、ビオチン結合性タンパク質は所望の宿主で、当業者に周知の方法で発現されば良いが、被検物質と特異的に結合するタンパク質ビオチン結合性タンパク質との融合タンパク質を遺伝子工学的に発現させた場合は、その宿主と同種のものが好ましい。
宿主が大腸菌の場合、ビオチン結合性タンパク質をコードする遺伝子を発現ベクターに組み込み、これを大腸菌に導入し、タンパク質発現を誘導しつつ、大腸菌の培養を行なう。発現ベクターや宿主大腸菌株、培地成分、IPTG濃度や培養温度などの誘導条件は、適宜選択すればよい。
被検物質の検出方法(態様1の工程4)
本発明の検出方法は、融合タンパク質中の検出すべき物質と特異的に結合するタンパク質に結合した披検物質を検出する。
被検物質を検出する方法は、所望のタンパク質の性質に基づき、当業者が適切に選択できる。好ましいものとして、酵素結合免疫吸着アッセイ法(ELISA、サンドイッチELISA法を含む)や放射性イムノアッセイ法(RIA)などのイムノアッセイ法、核酸ハイブリダイゼーションアッセイ法、表面プラズモン共鳴法などのようなアッセイ法が挙げられる。アビジン−ビオチン結合を用いて固相化された、被検物質と特異的に結合・相互作用する物質に対し、被検試料を反応させた後、当該被検物質を検出する。
イムノアッセイにおいて、例えば測定すべき物質が抗体の場合、抗原を固相化し、被検試料中に存在する抗体を抗原と反応させ、当業者に周知の方法で検出される。例えば被検試料がヒト由来の場合、抗原に結合したヒト抗体を、抗ヒト抗体を用いて検出する。この際、この抗ヒト抗体は、蛍光や酵素、あるいは放射性同位元素で標識しておくことで、最終的に蛍光量や酵素活性、あるいは放射性量を測定することで、間接的に抗体の量を測定、定量する。また測定すべき物質が抗原の場合、その抗原のある部分(エピトープ)に対する抗体を固相化し、被検試料中に存在する抗原と反応させた後、さらにその抗原の別のエピトープに対する抗体を反応させる。この別のエピトープに対する二次抗体を上記のように標識しておけば、間接的に抗原の量を測定することが出来る。あるいはまた、核酸ハイブリダイゼーションアッセイでは、測定すべき核酸と相補的な配列領域を有する数十から数百、あるいは数千塩基の核酸をアビジン−ビオチン結合を用いて固相化しておく。ここへ予め蛍光や放射性同位元素で標識した核酸を含む被検試料を反応させ、蛍光量や放射性量を測定する。
上記標識は当業者に周知の方法で行えばよく、また市販の、蛍光や酵素標識された抗ヒト抗体等を用いてもよい。蛍光標識としては例えばフルオレセインおよびローダミンなどによる標識や、GFPなどの蛍光タンパク質による標識も考えられる。酵素標識としてはペルオキシダーゼやアルカリフォスファターゼ、あるいはルシフェラーゼやグルコースオキシダーゼ等が利用され得るがこれらに限定されない。これらの酵素による測定のための基質は市販されており、例えばペルオキシダーゼの場合、TBAやケミルミネッセンス用の基質を用いることが出来る。また、放射性同位元素として例えば、ヨウ素(125I、121I)、炭素(14C)、イオウ(35S)、およびトリチウム(3H)、核酸の場合はリン(32P)などが挙げられる。
生物学的試料(サンプル)中に存在する抗原や抗体の量は、例えば、直線回帰コンピューターアルゴリズムを使用して、標準的な調製物(例えば臨床検体の場合、健常者の標準試料若しくは典型的な患者の標準試料)中に存在する量との比較によって簡易に算出され得る。抗原や抗体を検出するためのこのようなアッセイ法は、例えば、ELISAについて、Iacobelliら、Breast Cancer Research and Treatment 11: 19−30 (1988) に記載されている。
あるいは、例えば、生物学的試料中の検出すべき物質、例えば、抗体が少ない場合(抗体価が低い場合)や、血清などの生物学的試料そのものに非特異的な結合が多い場合には、非特異結合によるバックグラウンドシグナルの影響が大きくなる。そのため、測定値よりバックグラウンドシグナルを適切に差し引くことで、検出したい物質をより正確に測定することが可能になる。差し引くバックグラウンドは実験系に応じて当業者が適切に判断しうる。
例えば、このような態様の例として、血清中に存在するコラーゲンに対する抗体を検出する「ヒト/サル抗I型及びII型コラーゲンIgG抗体測定キット」(Chondrex社製)がある。このキットではサンプル測定値からバックグラウンドの値(血清は加えず二次抗体のみによる測定値)を差し引いて算出する。
また、血清のように、生物学的試料そのものに非特異的な結合が多い場合には、そのような非特異反応によるバックグラウンドを差し引くために、実施例2に記載したように、SITH−1抗原(検出すべき物質と特異的に結合するタンパク質)とタマビジンの融合タンパク質を固定化した担体(プレート)における測定値から、SITH−1抗原を固定化していない区(ただしSITH−1抗原を固定化した区と同様に、BSAなどによるブロッキング操作は行われ、かつ抗SITH−1抗体(生物学的試料中の検出したい物質)を含む血清(生物学的試料)を添加した区)の測定値を差し引く態様も有効である。あるいは、実施例2または実施例3に記載したように、SITH−1抗原とタマビジンの融合タンパク質を固定化した担体(プレート又は磁性ビーズ)における測定値から、タマビジンのみを固定化(結合)した担体における測定値を差し引いて算出してもよい。
サンプルに固有の非特異反応を差し引くための態様のさらなる例としては、上述の「ヒト/サル抗I型及びII型コラーゲンIgG抗体測定キット」のように、コラーゲンを固定化したマイクロタイタープレートのウェルを用いた血清中コラーゲン抗体の測定値から、コラーゲンを固定化していないウェルの測定値を差し引く場合もある。さらに、類似の態様を取るキットとして、血清又は血漿中の抗単純ヘルペスウイルスIgM型抗体の検出に用いる「ウイルス抗体EIA「生研」ヘルペスIgM」(デンカ生研社製)がある。
また、好ましくは、試料が由来する生物(例えば、SITH−1の場合はヒト)が抗体を有しない任意のタンパク質(制限されるものではないが、上記生物が哺乳類の場合は、例えばGFPなどを挙げることができる)を固相化した区の測定値を差し引くことで、より正確に求めることが出来る。固相化の方法としては、特に限定はされないが、ビオチン結合性タンパク質との融合タンパク質を作製し、ビオチン化担体に、ビオチン-アビジン結合により固相化することが好ましい。
以上のような算出方法は、生物学的試料の性質や使用する抗体の特徴などを踏まえ、当業者が適切に設計、選択することができる。
本発明の検出方法は、好ましくは血清中の抗体価の低い抗体を特異的に検出することが可能である。
本発明の態様1の効果は、例えば、実施例2において図3−1のTM2/pTrc99A/BL21細胞破砕抽出液(黒三角)の結果を、PBS(白四角)またはpTrc99A/BL21細胞破砕抽出液(黒丸)の結果と比較することによって理解される。さらに、実施例3において表3のTM2/pTrc99A導入BL21粗抽出液のS/N比を、PBSまたはpTrc99A導入BL21細胞破砕抽出液のS/N比と比較することによっても理解される。
II.本発明の検出方法(態様2)
本発明の検出方法(態様2)は、生物学的試料中の物質を検出する方法であって、
1) ビオチンを結合させた担体、及び、検出すべき物質と特異的に結合するタンパク質とビオチン結合性タンパク質との融合タンパク質を準備し;
2) ビオチン−ビオチン結合性タンパク質間の結合を介して、工程1)で準備した担体に融合タンパク質を結合させて、融合タンパク質が結合した担体を作成し;
3) 工程2)で作成した融合タンパク質が結合した担体に、ビオチン結合性タンパク質を接触させて担体のブロッキングを行い;
4) 工程3)のブロッキング工程後、融合タンパク質が結合した担体に、生物学的試料を添加し、そして、
5) 融合タンパク質中の検出すべき物質と特異的に結合するタンパク質に結合した被検物質を検出する
ことを含む。
本発明の態様2の方法において、工程1および2の、融合タンパク質が結合した担体の調製方法は、態様1と同様である。また、最後の融合タンパク質中の検出すべき物質と特異的に結合するタンパク質に結合した被検物質を検出する工程(態様1の工程4、態様2の工程5)も同様である。
態様2の方法は、生物学的試料を担体に添加する前に、担体のブロッキング工程(態様2の工程3)を行うことを特徴とする。
本発明において、融合タンパク質が結合した担体に、生物学的試料を担体に添加する前に、更にビオチン結合性タンパク質を担体に接触させることにより、一層バックグラウンドシグナルを抑制することができる。理論に拘束されるわけではないが、これは、担体表面において、融合タンパク質が結合しておらず遊離の状態(free)になっているビオチン部分に、ビオチン結合性タンパク質が結合するためと考えられる(図1)。
結合担体に接触させるビオチン結合性タンパク質は、融合タンパク質を構成するビオチン結合性タンパク質と、同じであっても異なっていてもよい。また野生型であっても変異体であっても構わない。ビオチン結合能は、野生型と比較して、同等であっても、高くてよく、低くてもよいが、好ましくは同等又はそれ以下である。限定されるわけではないが、例えば、野生型タンパク質よりもビオチン結合能が低く、かつ、ビオチンとの解離定数(KD)が10-5(M)よりも小さいタンパク質であってもよい。このようなビオチン結合タンパク質を作製するためには、化学的に修飾する方法(US−A−5051356)などがあるが、アミノ酸配列を改変する方法が最も好ましい(Qureshi et al. (2002) J. Biol. Chem.、276、46422−46428)。
本発明において、ビオチン結合性タンパク質を結合担体に接触させる場合、その方法に特段の制限はない。すなわち、ビオチン結合性タンパク質を直接添加してもよいし、適当な液に溶解して担体と接触させてもよい。さらにBSAやカゼイン等、当業者に周知のブロッキング剤を同時に使用しても良い。
限定されるわけではないが、所望の緩衝液(例えば0.02%ないし1%、好ましくは0.1ないし0.5%の濃度のTween−20やTritonを含むTBSやPBS)に、最終濃度で1μg/mlないし500μg/ml、好ましくは10μg/mlないし100μg/mlのビオチン結合性タンパク質を添加する。またここへ最終濃度で1μg/mlないし50μg/ml、好ましくは5μg/mlないし10μg/mlのBSAやカゼインを添加してもよい。このブロッキング溶液を、10℃ないし40℃で、好ましくは20℃ないし30℃で、10分ないし2時間、好ましくは30分ないし1時間、ビオチン結合性タンパク質融合タンパク質を、アビジン−ビオチン結合により結合させた担体と接触させる。
本発明の態様2の効果は、例えば、実施例2において、抗体が0の際の図3−1と図3−2のpTrc99A/BL21細胞破砕抽出液(黒丸)の値を比較することによって、理解される。抗体が0の場合には抗体が存在しないため、仮に非特異的結合がなければ、蛍光は0になるはずである。ここにおいて、図3−1と図3−2の抗体0における黒丸同士を比較すると、TM2による担体のブロッキングが行われた場合には、蛍光値が半分近くまで下がっており、非特異的結合が大幅に低下していることが理解される。また、TM2による担体のブロッキングを行った図3−2では、図3−1に比較して、グラフ全体が下方にシフトしている。さらに、実施例2の表2のpTrc99A/BL21細胞破砕抽出液の結果について、「BSAによるブロッキング」の値と「BSAとTM2によるブロッキング」の値とを比較することによっても理解される。
III.本発明の検出方法(態様3)
本発明の検出方法(態様3)は、生物学的試料中の物質を検出する方法であって、
1) ビオチンを結合させた担体、及び、検出すべき物質と特異的に結合するタンパク質とビオチン結合性タンパク質との融合タンパク質を準備し;
2) ビオチン−ビオチン結合性タンパク質間の結合を介して、工程1)で準備した担体に融合タンパク質を結合させて、融合タンパク質が結合した担体を作成し;
3) 工程2)で作成した融合タンパク質が結合した担体に、ビオチン結合性タンパク質を接触させて担体のブロッキングを行い;
4) 工程3)のブロッキング工程後、融合タンパク質が結合した担体に、
(a) 生物学的試料、及び
(b−i) 工程1)の融合タンパク質を発現させるのに利用した宿主細胞と同種の細胞より調製した細胞破砕抽出液と、ビオチン結合性タンパク質、あるいは
(b−ii) 工程1)の融合タンパク質を発現させるのに利用した宿主細胞と同種の細胞に遺伝子工学技術によりビオチン結合性タンパク質を発現させた細胞から調製した細胞破砕抽出液
を混合して添加する;そして、
5) 融合タンパク質中の検出すべき物質と特異的に結合するタンパク質に結合した被検物質を検出する
ことを含む。
態様3は、態様1と態様2を組み合わせた態様である。具体的には、態様1の細胞破砕抽出液及びビオチン結合性タンパク質の添加、と態様2のビオチン結合性タンパク質による担体のブロッキングの双方を行うものである。
本発明の態様3の効果は、例えば、実施例2において図3−2のTM2/pTrc99A/BL21細胞破砕抽出液(黒三角)の結果を、図3−1、図3−2中の他の結果、例えば、PBS(白四角)の結果と比較することによって理解される。さらに、実施例4において、表5のTM2/pTrc99A導入BL21粗抽出液のS/N比を、他の結果、すなわち、PBS、大腸菌(BL21)またはpTrc99A導入BL21細胞破砕抽出液のS/N比と比較することによって理解される。
IV.融合タンパク質が結合した担体
本発明はまた、生物学的試料中の物質を検出するための担体を提供する。本発明の担体は、
1) ビオチンを結合させた担体、及び、検出すべき物質と特異的に結合するタンパク質とビオチン結合性タンパク質との融合タンパク質を準備し;
2) ビオチン−ビオチン結合性タンパク質間の結合を介して、工程1)で準備した担体に融合タンパク質を結合させて、融合タンパク質が結合した担体を作成し;
3) 工程2)で作成した融合タンパク質が結合した担体に、ビオチン結合性タンパク質を接触させて担体のブロッキングを行う
ことを含む方法によって調製された、検出すべき物質と特異的に結合するタンパク質とビオチン結合性タンパク質との融合タンパク質が、ビオチン−ビオチン結合性タンパク質間結合によって結合している、ことを特徴とする。本発明の担体は、生物学的試料を添加する前に予めビオチン結合性タンパク質によりブロッキングされている。
よって、本発明の担体は、好ましくは、検出すべき物質と特異的に結合するタンパク質とビオチン結合性タンパク質との融合タンパク質がアビジン−ビオチン結合により結合しており、さらに担体上の未反応のビオチンに、ビオチン結合性タンパク質がアビジン−ビオチン結合により結合している。
VII.キット
本発明はまた、生物学的試料中の物質を検出するためのキットを提供する。本発明のキットは、
A) 検出すべき物質と特異的に結合するタンパク質とビオチン結合性タンパク質との融合タンパク質が、ビオチン−ビオチン結合性タンパク質間結合によって結合している、担体;並びに、
B−i) A)の融合タンパク質を発現させるのに利用した宿主細胞と同種の細胞より調製した細胞破砕抽出液と、ビオチン結合性タンパク質、若しくは
B−ii) A)の融合タンパク質を発現させるのに利用した宿主細胞と同種の細胞に遺伝子工学技術によりビオチン結合性タンパク質を発現させた細胞から調製した細胞破砕抽出液を含む、生物学的試料を希釈するための剤;および/又は
C) ビオチン結合性タンパク質を含むブロッキング剤
を含む。
生物学的試料を希釈するための剤は、細胞破砕抽出液(及びビオチン結合性タンパク質)そのものであってよく、あるいは、細胞破砕抽出液を生物学的試料とともにさらに希釈する剤であって、適当な緩衝液や市販の細胞希釈液あるいは血清希釈液などの溶剤を含んでもよい。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の技術的範囲を限定するためのものではない。当業者は本明細書の記載に基づいて容易に本発明に修飾・変更を加えることができ、それらは本発明の技術的範囲に含まれる。
本実施例1、2では、ヒトヘルペスウイルス6(HHV−6)由来のSITH−1タンパク質とタマビジン2との融合タンパク質を大腸菌で発現させ、超音波破砕により得られた大腸菌粗抽出液を直接ビオチン化マイクロプレートに反応させ、融合タンパク質をタマビジンービオチン結合により固定化させた。こうして得られたSITH−1プレートに、大腸菌粗抽出液で希釈したヒト血清(ウサギ抗SITH−1抗体を含む。本試験では市販のヒト血清にウサギの抗SITH−1抗体(抗血清)を段階希釈して加えた血清を、擬似臨床検体として用いた。)を反応させ、ヒト血清中に含まれる抗SITH−1抗体量を測定した。
実施例1 SITH−1遺伝子とタマビジン2の融合タンパク質発現用ベクターの構築
本実施例では、SITH−1のC末側にリンカーを介して、タマビジン2(以下、TM2)が配置された融合タンパク質をコードする遺伝子を設計した。
1−1.プライマーの設計
SITH1−TM2融合遺伝子構築のために、まず、SITH−1とTM2の両遺伝子をリンカー(5xlinker: GGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS)(配列番号18)を介し融合させるためのプライマーを設計した。
即ち、5’側にSITH−1の C末端部位、中央にリンカー、3’側にTM2の N末端部位をコードするDNA配列からなるプライマー(SITH1C−5xlink−TM2N−F)(配列番号19)、5’側にTM2 のN末端部位、リンカー、3’側にSITH−1の C末端部位を逆向きにコードするDNA配列からなるプライマー(SITH1C−5xlink−TM2N−R)(配列番号20)を設計した。
次に、SITH−1のN末端部位を含む5’部分と、その上流にEcoR I制限酵素切断部位(CCATGG)が配置されたプライマー(SITH1 5’ EcoRI−F(配列番号21))、また、TM2遺伝子の3’部分とその下流にBamH I制限酵素切断部位(GGATCC)をコードする配列からなるプライマー(TM2CtermBam)(配列番号22)を設計した。SITH−1とTM2との融合遺伝子構築用プライマーを表1にまとめた。
1−2.PCR
SITH1−TM2融合遺伝子を構築するために、二段階のPCRを行った。
一段階目のPCRは、SITH−1遺伝子(ORF)(配列番号2)がFLAG Expression Vector (SIGMA)に組み込まれているプラスミドを鋳型にして、プライマーSITH1 5’ EcoRI−FとSITH1C−5xlink−TM2N−Rを用いてSITH−1部位の増幅を、また、TM2遺伝子がベクターpTrc99Aに組み込まれたプラスミド(WO02/072817)を鋳型にして、プライマーSITH1C−5xlink−TM2N−FとTM2CtermBamを用いてTM2部位の増幅をそれぞれ行った。
PCR反応条件は、20μlの反応液中に鋳型DNAを500ng、10(ExTaq buffer(TaKaRa社)を2μl、2.5mM dNTPを1.6μl、プライマーを各20pmoles、5U/μl Ex Taqを0.1(l添加し、GeneAmp PCR System 9600(PERKIN ELMER)を用いて96℃、3分を1回、95℃、1分,60℃、1分,72℃、2分を20回、72℃、6分を1回行った。その結果、SITH−1部分においては、579bp、TM2部分においては528bpのPCR産物が得られた。これらのPCR産物をTAE緩衝液中で、アガロースゲル電気泳動を用い分画した。各PCR産物をゲルごと切り出し、QIAEX IIゲル抽出キット(QIAGEN)を用いてそれら産物を回収した。抽出方法はキット添付の説明書に従った。
上記2つのPCR産物を鋳型にして、プライマーSITH1 5’ EcoRI−FとTM2CtermBamを用いて二段階目のPCRを行った。反応条件は、20μlの反応液中に鋳型DNAを各500ng、10(Pyrobest buffer(TaKaRa社)を2μl、2.5mM dNTPを1.6μl、プライマーを各20pmoles、5U/(l Pyrobest DNA polymeraseを0.1μl添加し、GeneAmp PCR System 9600(PERKIN ELMER)を用いて96℃、3分を1回、95℃、1分,60℃、1分,72℃、2分を20回、72℃、6分を1回行った。その結果、990bpのPCR産物が得られた。
1−3.クローニング
PCRによって得られたSITH1−TM2融合遺伝子をベクターpCR4Blunt TOPO(Invitrogen社製)にクローニングした。
具体的には先ず、ベクターキット添付の説明書に従って、ライゲーション反応をおこなった。大腸菌TB1にエレクトロポレーション法を用いてDNAを導入し、常法(Sambrook et al. 1989, Molecular Cloning, A laboratory manual, 2nd edition)に従ってプラスミドDNAを抽出した。インサートの存在が確認されたプラスミドに関してM13プライマー(TaKaRa社)と、ABI PRISM蛍光シークエンサー(Model 310 Genetic Analyzer, Perkin Elmer社)を用いて塩基配列を決定し、設計した遺伝子の配列と比較して、変異がないことを確認した。融合遺伝子が組み込まれたプラスミドをEcoRIとBamHIで二重消化し、前述と同様の方法でアガロースゲル電気泳動と精製を行い、DNA断片を回収した。この断片を予めEcoRIとBamHIで消化しておいた大腸菌用の発現ベクターpTrc99A(Pharmacia社製)に、Ligation Kit(TaKaRa社製)を用いてライゲーションさせた。ライゲーション産物を大腸菌TB1に形質転換し、プラスミドDNAを抽出し、さらに大腸菌BL21に形質転換した。得られた大腸菌コロニーを鋳型に、SITH1 5’ EcoRI−FとTM2CtermBamを用いてPCRによる挿入遺伝子部位の増幅を行い、挿入遺伝子の有無を確認した。
以上のように、SITH−1とTM2の融合タンパク質発現用のベクターSITH1−TM2/pTrc99Aを完成させた。発現用のベクターSITH1−TM2/pTrc99A中のSITH1−TM2をコードする塩基配列を配列番号23に、コードされるアミノ酸配列を配列番号24に示す。
SITH1−TM2は、5'側については、EcoRI部位を用いてpTrc99Aに組み込んだため、翻訳開始メチオニンの後ろに2つのアミノ酸残基が付加されている(配列番号23の塩基番号4−9、配列番号24のアミノ酸残基番号2−3)。次いで、SITH−1の配列(配列番号23の塩基番号10−483、配列番号24のアミノ酸残基番号4−161)、5xlinker(配列番号23の塩基番号484−558、配列番号24のアミノ酸残基番号162−186)、TM2の配列(Metを除去したもの)(配列番号23の塩基番号559−981、配列番号24のアミノ酸残基番号187−326)が続く。
1−4.大腸菌発現
SITH1−TM2/pTrc99Aを導入した大腸菌BL21を、抗生物質アンピシリン(最終濃度100μg/ml)を含むLB培地50mlに接種し、OD600における吸光度が0.5に達するまで30℃で振とう培養した。その後、1mM IPTGを添加し、さらに30℃で5時間振とう培養した。培養液50mlから遠心にて菌体を回収した。菌体は0.1M HEPES/KOH(pH7.4)3ml中に懸濁後、超音波により破砕した。破砕液を遠心(15,000rpm)し、その上清を大腸菌粗抽出液とした。TM2融合SITH−1タンパク質の発現を確認するため、粗抽出液中に含まれるタンパク質をSDS−PAGEで分画し、ウェスタンブロッティングにより解析した。
SITH−1の検出にはウサギ抗SITH−1抗体(大腸菌で発現させたSITH−1を精製し、ウサギに免疫して作成した抗SITH−1抗体(抗血清))とアルカリフォスファターゼ標識抗ウサギIgG抗体(BIO RAD社製)を各々1000倍希釈して用いた。結果を図2に示す。TM2融合SITH−1発現大腸菌からは35kDa付近にバンドが検出された。このサイズはTM2融合SITH−1の分子量34.8kDaとほぼ一致した。なお、pTrc99AやTM2/pTrc99Aを導入した大腸菌BL21(Takakura et al. (2009)FEBS J.276:1383−1397)に関しても上記と同様に、IPTG存在下で培養後、大腸菌粗抽出液を調製した。
実施例2 ELISAによるヒト血清存在下での抗SITH−1抗体の検出
実施例1で得られたTM2融合SITH−1を発現した大腸菌粗抽出液を2mg総可溶性タンパク質/mlとなるように0.1M HEPES/KOH(pH7.4)で希釈し、ビオチンプレート(住友ベークライト社製)に100μlずつ添加した。室温で1時間静置し、タマビジン‐ビオチン結合によりTM2融合SITH−1タンパク質をビオチンプレートに固定化した。その後、プレートの各ウェルを0.1% Tween20を含むTBS緩衝液(TBST)で3回洗浄し、5μg/ml BSA/TBST溶液もしくは50μg/ml 精製TM2/5μg/ml BSA/TBST溶液を各ウェルに250μl添加し、室温で1時間静置し、ブロッキングを行った。その後、各ウェルはTBSTで3回洗浄した。
次に、ヒト血清(Human Serum pool,Cosmo−Bio社製)をPBS、あるいは、実施例1−4で調製した5mg総可溶性タンパク質/mlのpTrc99A導入大腸菌粗抽出液、又は、5mg総可溶性タンパク質/mlのTM2/pTrc99A導入大腸菌粗抽出液で100倍希釈した溶液に、ウサギ抗SITH−1抗体(抗血清)を体積比で0.002、0.001、0.0005、0.00025となるように段階希釈して加え、TM2融合SITH−1を固定化したプレートに100μlずつ添加し、1時間室温で反応させた。
ウサギ抗SITH−1抗体(抗血清)の血清中抗体価は、典型的なうつ病(気分障害)患者の血清中抗SITH−1抗体価に比べ、およそ50倍程度高いと推定される。従って市販(健常者)ヒト血清に体積比で1/50量のウサギ抗SITH−1抗体(抗血清)を混ぜると、典型的なうつ病患者血清の擬似検体となると考えられる。よって、上記の抗体希釈率は、うつ病患者血清をおよそ10倍から80倍希釈して用いる場合と同程度とみなすことができる。
対照として、何も固定化していないビオチンプレートに、上記BSAのみによるブロッキングと、BSAとTM2によるブロッキングの、2種類のブロッキング操作をそれぞれ行った区を設けた。なお、タマビジンを含む溶液でブロッキング操作を行った場合においては、ブロッキング溶液中のタマビジンの一部がプレート上のビオチンに特異的に結合しるため、タマビジン固定化プレートを利用しているのと同じ状態になると考えられる。その後、上記と同様にPBS溶液や、pTrc99A導入あるいは TM2/pTrc99A導入大腸菌粗抽出液(5mg総可溶性タンパク質/ml)で100倍希釈したヒト血清に、段階的に希釈したウサギ抗SITH−1抗体を加えたものを100μlずつ添加し、室温で1時間反応させた。ヒト血清存在下で、ウサギ抗SITH−1抗体をTM2融合SITH−1と反応させた後、TBSTで3回洗浄した。
その後、プレートにタマビジンを介して固定化されたSITH−1に、反応・結合したウサギ抗SITH−1抗体、ならびに各ウェル中で非特異的に結合していると考えられる血清中のヒトIgGを、それぞれ検出するために、西洋ワサビペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ウサギIgG抗体、ならびにペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ヒトIgG抗体を、それぞれTBSTで5000倍希釈した混合溶液を100μlずつ添加し、1時間室温で静置した。その後、TBSTで3回洗浄し、ペルオキシダーゼ活性を検出した。活性は各ウェルに、SuperSignal ELISA Pico Chemiluminescent Substrate(PIERCE)を100μlずつ添加し、5分間室温で静置した後発光量をプレートリーダーInfinite M200(TECAN社製)によって測定した。
なお、データ値としては、ウサギ抗SITH−1抗体の各濃度区それぞれにおいて、対照区(TM2融合SITH−1を固定していないが、BSAまたはBSAとTM2によりブロッキング操作は行なわれ、かつ各濃度の抗SITH−1抗体を含むヒト血清を処理した区)の各発光量の測定も併せて行い、その対照区の値を、TM2融合SITH−1を固定化した区の発光量の値から差し引いた。これを血清中に含まれる抗SITH−1抗体の検出量とした。
非特異結合に及ぼす、血清への大腸菌破砕抽出液の添加効果や、TM2によるブロッキング効果の結果を図3に示す。図3では、血清を、PBSで100倍希釈した区を白四角、発現ベクターのみを持つ大腸菌破砕抽出液で100倍希釈した区を黒丸、TM2を発現させた大腸菌破砕抽出液で100倍希釈した区を黒三角で示した。各グラフの縦軸(ルミネッセンス)は抗SITH−1抗体の検出量を示し、横軸は段階希釈した抗SITH−1抗体の希釈割合を示す。
図3−1は、ビオチン結合性タンパク質(TM2)によるブロッキングを行わない場合において、ヒト血清をPBS(白四角)、pTrc99A導入大腸菌粗抽出液(黒丸)、又はTM2/pTrc99A導入大腸菌粗抽出液(黒三角)で希釈した場合の、血清中抗SITH−1抗体量の検出の結果を示す。
図3−2は、ビオチン結合性タンパク質(TM2)によるブロッキングを行った場合において、ヒト血清をPBS(白四角)、pTrc99A導入大腸菌粗抽出液(黒丸)、又はTM2/pTrc99A導入大腸菌粗抽出液(黒三角)で希釈した場合の、血清中抗SITH−1抗体量の検出の結果を示す。
さらに、ブロッキングの効果や各血清希釈液の効果の比較を行うために、S/N比を以下に示す式によって算出した。
S/N比=抗SITH−1抗体を各濃度で加えた区の抗SITH−1抗体検出量/抗SITH−1抗体を加えない区の抗SITH−1抗体検出量
従って、S/N比が大きいほど検出感度が高いことを示している。
各区におけるS/N比の計算結果を表2に示す。
血清中に含まれる抗SITH−1抗体は、血清をPBSで希釈した区では、非特異結合が多く、抗SITH−1抗体を添加していない区でも高い発光量が検出された。一方、pTrc99A導入大腸菌粗抽出液やTM2/pTrc99A導入大腸菌粗抽出液を添加した区においては、SITH−1抗体を加えない区におけるルミネッセンス値が相当低く、非特異結合が劇的に減少していた。特にTM2/pTrc99A導入大腸菌粗抽出液を添加した区においては非特異結合が低かった(図3−1、図3−2)。この場合、BSAのみのブロッキングよりもTM2をさらに添加したブロッキング(BSA+TM2)の方が、特に低濃度(希釈率0.0005以下)の抗体の検出に定量性が見られた(図3−2)。
さらにpTrc99A導入大腸菌粗抽出液を添加した区、ならびにTM2/pTrc99A導入大腸菌粗抽出液を添加した区においては、TM2を加えたBSAでブロッキングするとS/N比が上昇し、より高感度に抗SITH−1抗体を検出できることが明らかとなった(表2)。特にTM2/pTrc99A導入大腸菌粗抽出液を添加した区においてはS/N比の上昇が顕著であった。
以上のことから、TM2融合SITH−1固定化プレートを、TM2を含む溶液でブロッキングした後、TM2が発現している大腸菌粗抽出液でヒト血清を希釈することで、ヒト血清由来非特異結合を減少させ、極めて低い濃度の抗SITH−1抗体も感度良く安定的かつ定量的に検出できることが示された。
実施例3 磁性ビーズを用いたELISAによるヒト血清存在下での抗SITH−1抗体の検出
本実施例では、非常に薄い濃度のSITH−1抗体を検出する場合について、TM2融合SITH−1をビオチン化磁性ビーズへ固定化した系における各種血清希釈液の効果を調査した。
3−1.TM2融合SITH−1固定化磁性ビーズの調製
磁性ビーズのDynabeads M−270 Amine (DynalBiotech社製)1mL(30mgビーズ/mL)に、10mM NHS−Lc−Lc−Biotin (PIERCE社製)1mLを添加した。室温で30分間転倒混和することでアミノ基とNHS活性エステル基を反応させ、ビオチンと磁性ビーズを共有結合させた。その後、磁性ビーズを0.1% BSA/ 0.01% Tween20/ PBS溶液で2回洗浄し、最後にPBS緩衝液に懸濁した。得られた磁性ビーズ(30mgビーズ/mL PBS)をビオチン化磁性ビーズとした。
TM2融合SITH−1を上述の実施例1−4と同様に大腸菌で発現させ、調製した大腸菌粗抽出液を、総可溶性タンパク質濃度が5mg/mlとなるように0.1M HEPES/KOH (pH7.4)で希釈し、ここにビオチン化磁性ビーズを添加した。室温で1時間転倒混和することで、タマビジンービオチン結合によりTM2融合SITH−1を磁性ビーズに固定化した。その後、磁性ビーズを0.2% Tween20を含むTBS緩衝液(TTBS)で3回洗浄した。
さらに、TM2が発現した大腸菌(Takakura et al. (2009) FEBS J 276: 1383−1397)の粗抽出液を、総可溶性タンパク質濃度が5mg/mlとなるように0.1M HEPES/KOH(pH7.4)で希釈し、ここへビオチン化磁性ビーズを添加した。室温で1時間転倒混和することで、タマビジンービオチン結合によりTM2を固定化した。上記と同様に洗浄後、完成したTM2固定化磁性ビーズ(30mgビーズ/mL PBS)は血清サンプル固有の非特異結合を差し引くために用いられた。
3−2.磁性ビーズを用いたELISA分析
市販のヒト血清(Human Serum pool、Cosmo−Bio社製)に、実施例2のウサギ抗SITH−1抗体を1/50量加えて、SITH−1抗体を含むヒト血清を調製した。一方、SITH−1抗体を加えないヒト血清を対照とした。
ヒト血清もしくは、ウサギSITH−1抗体を含むヒト血清を、PBSもしくは、総可溶性タンパク質濃度が5mg/mlとなるように0.1M HEPES/KOH(pH7.4)で調整したpTrc99Aベクター産物発現大腸菌粗抽出液、もしくは総可溶性タンパク質濃度が5mg/mlとなるように0.1M HEPES/KOH(pH7.4)で調整したTM2発現大腸菌粗抽出液で、1000倍に希釈した溶液に、さらに、最終濃度が2%(w/v)となるようにBSAを添加した。なお、上記実施例2においては、ヒト血清を100倍希釈した後に、その希釈後の血清に対する体積比で0.00025から0.002となるようにウサギ抗SITH−1抗体を加えた。しかしながら、本実施例3−2では、ウサギ抗SITH−1抗体をヒト血清に1/50量(体積比で0.02)を加えてから、1000倍希釈しているので、ウサギSITH−1抗体の希釈率は1/50000となる。従って、上記の抗体希釈率は、うつ病患者血清をおよそ1000倍希釈して用いる場合と同程度となる。
こうして調製した希釈血清1mLに、TM2融合SITH−1固定化磁性ビーズ、もしくはTM2固定化磁性ビーズを各10μlずつ添加し、1時間室温で転倒混和し反応させた。TBSTで3回洗浄した後、磁性ビーズに固定化したSITH−1抗原に結合したウサギ抗SITH−1抗体を検出するために、西洋ワサビペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ウサギIgG抗体を、また、各磁性ビーズに非特異結合しているヒトIgGを検出するために、ペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ヒトIgG抗体を、それぞれ2%BSAを含むTBSTで5000倍希釈してから混合し、このペルオキシダーゼ標識二次抗体混合溶液を各磁性ビーズに1000μlずつ添加し、1時間室温で転倒混和した。その後さらにTBSTで3回洗浄し、検出試薬1 step ELISA ultraTMB (PIERCE)を100μl添加し、室温で1分間反応させた。2M硫酸を100ul添加することで反応を停止させ、発色度合い(波長450nmにおける吸光度、A450)をプレートリーダーInfinite M200(TECAN社製)によって測定した。測定は処理区ごとに2回実施し平均値を求めた。
データ値としては、TM2融合SITH−1固定化磁性ビーズにおいて、各血清希釈液(PBS、pTrc99Aベクター産物発現大腸菌粗抽出液、TM2発現大腸菌粗抽出液)を用いた場合のA450の値から、各血清希釈液ごとにそれぞれ、TM2固定化磁性ビーズを用いた場合のA450の値を差し引いたものを用いた。結果を表3に示す。
その結果、表3に示したように、ヒト血清中のSITH−1抗体のA450の値(S)は、血清希釈液としてPBSを用いた場合が、最も高い値を示したが、同時にSITH−1抗体を含まない血清におけるA450値(N)も極めて高く、結果、PBSではS/N比(ウサギ抗SITH−1抗体を加えたヒト血清における発色度合い/ウサギ抗SITH−1抗体を加えない血清における発色度合い)は最も低かった。
一方、TM2発現大腸菌粗抽出液を血清希釈液として用いた場合は、SITH−1抗体を含まない血清におけるA450値が最も低く、非特異結合を大きく抑制することができた。さらに、S/N比はTM2発現大腸菌粗抽出液を血清希釈液として用いた場合が最も高く、値として10を越えた。このことから、TM2融合SITH−1固定化磁性ビーズを用いた場合、TM2発現大腸菌粗抽出液をヒト血清に混合することで、非特異結合を減少させ、高感度で抗SITH−1抗体を検出できることが示された。
なお、SITH−1抗体の定量によりうつ病(気分障害)の診断を行う場合を想定すると、本明細書中において用いた、ウサギSITH−1抗体を加えたヒト血清、ウサギSITH−1抗体を加えないヒト血清は、それぞれうつ病(気分障害)患者血清、健常者血清とみなすこともできる。ここで表3において、血清希釈液としてPBSを用いた場合は、うつ病患者(S)で0.64、健常者(N)で0.25という値となり、一方血清希釈液として、TM2/pTrc99A導入BL21粗抽出液を用いた場合は、うつ病患者(S)で0.22、健常者(N)で0.02という値となる。多くの臨床検体(血清)の中には、健常者であっても非特異結合の高い血清が含まれ、さらにうつ病であっても、SITH−1抗体価がはっきり高くない血清も含まれると考えられる。従って、それらの差を検出するための測定方法としては、極力非特異結合(N)が少なく、かつ特異的な結合(S)も確実に検出できる測定方法が望ましい。本実施例におけるS/N比は、このような観点からの、各血清希釈液などの効果を比較するためにも有効な指標となる。
実施例4. Harpinとタマビジンとの融合タンパク質を用いたELISAにおけるヒト血清存在下での抗Harpin抗体の検出
本実施例では植物病原細菌由来タンパク質であるHarpin(hrpZpssタンパク、Takakuraら、2004、Physiol. Mol. Plant Pathol. 64, 83(89)とタマビジン2(TM2)との融合タンパク質を大腸菌で発現させ、ビオチン化マイクロプレートにタマビジンービオチン結合により固定化させた。こうして得られたHarpinプレートに、タマビジン2によるブロッキングを行った上で、各種大腸菌粗抽出液で希釈した血清(ウサギ抗Harpin抗体とヒト血清を混合した血清)を反応させた後、ペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ヒトIgG抗体と西洋ワサビペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ウサギIgG抗体により抗Harpin抗体を検出した。以下、詳細に説明する。
4−1.Harpinとタマビジン2の融合タンパク質発現用ベクターの構築と大腸菌発現
PCRを用いてTM2の配列をHarpinのC末端側に接続させた融合タンパク質をコードする遺伝子を構築した。Harpin−TM2融合遺伝子構築のために、Harpin、TM2両遺伝子をリンカー(5xlinker: GGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS)(配列番号18)を介し結合させるためのプライマーを設計した。設計したプライマーを表4に示す。
表4に示した通り、5’側にHarpin C末端部位、中央にリンカー、3’側にTM2 N末端部位からなるプライマー(HarpinC−5xlink−TM2N−F、表4、配列番号27)、5’側にTM2 N末端部位、中央にリンカー、3’側にHarpin C末端部位を逆向きにコードするDNA配列からなるプライマー(HarpinC−5xlink−TM2N−R、表4、配列番号26)を設計した。また、HarpinのN末端部位のプライマーHarpinNtermEcoRI−F(5’末端にEcoRI切断配列を含む、表4、配列番号25)を設計した。
Harpin−TM2融合遺伝子を構築するために、二段階のPCRを行った。一段階目のPCRは、Harpin遺伝子(ORF)(配列番号28)(コードアミノ酸配列:配列番号29)がpCR2.1 Vector (Invitrogen)に組み込まれているプラスミド(Takakuraら、2004、Physiol. Mol. Plant Pathol. 64, 83(89)を鋳型にして、プライマーHarpinNtermEcoRI−FとHarpinC−5xlink−TM2N−Rを用いてHarpin部位の増幅を行った。また、別個に、TM2遺伝子がベクターpTrc99Aに組み込まれたプラスミド(WO02/072817)を鋳型にして、プライマーHarpinC−5xlink−TM2N−FとTM2CtermBamを用いてTM2部位の増幅を行った。
PCR反応条件は、20μlの反応液中に鋳型DNAを100ng、10(ExTaq buffer(TaKaRa社)を2μl、2.5mM dNTPを1.6μl、プライマーを各20pmoles、5U/μl Ex Taqを0.1(l添加し、GeneAmp PCR System 9600(PERKIN ELMER)を用いて、94℃、60℃、72℃各30秒を25回行った。その結果、Harpin部分においては、約1kbp、TM2部分においては約0.5kbpのPCR産物が得られた。これらのPCR産物をTAE緩衝液中で、アガロースゲル電気泳動を用い分画した。各PCR産物をゲルごと切り出し、QIAEX IIゲル抽出キット(QIAGEN)を用いてそれら産物を回収した。抽出方法はキット添付の説明書に従った。
上記2つのPCR産物を鋳型にして、プライマーHarpinNtermEcoRI−FとTM2CtermBamを用いて二段階目のPCRを行った。反応条件は、20μlの反応液中に鋳型DNAを各100ng、10(Pyrobest buffer(TaKaRa社)を2μl、2.5mM dNTPを1.6μl、プライマーを各20pmoles、5U/μl Pyrobest DNA polymeraseを0.1μl添加し、GeneAmp PCR System 9600(PERKIN ELMER)を用いて94℃、30秒,60℃、1分,72℃、1.5分を25回行った。その結果、約1.5kbpのPCR産物が得られた。
PCRによって得られたharpin−TM2融合遺伝子をベクターpCR4Blunt TOPO(Invitrogen社製)にクローニングした。塩基配列を確認した後、融合遺伝子が組み込まれたプラスミドをEcoRIとBamHIで二重消化し、前述と同様の方法でアガロースゲル電気泳動と精製を行い、DNA断片を回収した。この断片を予めEcoRIとBamHIで消化しておいた大腸菌用の発現ベクターpTrc99A(Pharmacia社製)に、Ligation Kit(TaKaRa社製)を用いてライゲーションさせた。ライゲーション産物を大腸菌BL21(DE3)に形質転換し、塩基配列を確認した。
以上のように、harpinとTM2の融合タンパク質発現用のベクターharpin−TM2/pTrc99Aを完成させた。harpin−TM2をコードする塩基配列を配列番号30に、コードされるアミノ酸配列を配列番号31に示す。
Harpin−TM2/pTrc99Aを導入した大腸菌BL21(DE3)を、抗生物質アンピシリン(最終濃度100μg/ml)を含むLB培地50mlに接種し、OD600における吸光度が0.5に達するまで30℃で振とう培養した。その後、1mM IPTGを添加し、さらに30℃で5時間振とう培養した。培養液50mlから遠心にて菌体を回収した。菌体は0.1M HEPES/KOH(pH7.4)3ml中に懸濁後、超音波により破砕した。破砕液を遠心(15,000rpm)し、その上清を大腸菌粗抽出液とした。TM2融合harpinタンパク質の発現を確認するため、粗抽出液中に含まれるタンパク質をSDS−PAGEで分画し、ウェスタンブロッティングにより解析した。
Harpinの検出にはウサギ抗harpin抗体(Takakuraら、2004、Physiol. Mol. Plant Pathol. 64,83(89)とアルカリフォスファターゼ標識抗ウサギIgG抗体(BIO RAD社製)を各々1000倍希釈して用いた。
結果を図4に示す。インサートを含まない発現ベクターのみを発現させた大腸菌抽出液からは、特異的なバンドが検出されなかったが(図4レーン1)、一方TM2融合harpin発現大腸菌からは、約50kDa付近にバンドが検出された(図4レーン2)。このサイズはTM2融合harpinの分子量51.4kDaとほぼ一致した。
4−2. ELISAによるヒト血清存在下での抗Harpin抗体の検出
TM2融合Harpin大腸菌粗抽出液を、総可溶性タンパク質濃度が1mg/mlとなるように0.1M HEPES/KOH(pH7.4)で希釈し、これをビオチンプレート(住友ベークライト)に100μlずつ添加した。室温で1時間静置することでタマビジンービオチン結合によりTM2融合Harpinを固定化した。その後、プレートの各ウェルを0.1% Tween20を含むTBS緩衝液(TBST)で3回洗浄した。50μg/ml 精製TM2(WO02/072817)/0.5%BSA/TBST溶液を各ウェルに250ul添加し、室温で1時間静置することで、TM2とBSAでブロッキングを行った。ブロッキング後、各ウェルはTBSTで3回洗浄した。
次にヒト血清(Human Serum pool、Cosmo−Bio社製)を、PBSもしくは5mg総可溶性タンパク質/ml(0.1M HEPES/KOH、pH7.4)の大腸菌粗抽出液、5mg総可溶性タンパク質/ml(0.1M HEPES/KOH pH7.4)のpTrc99Aベクター産物発現大腸菌粗抽出液もしくは5mg総可溶性タンパク質/ml(0.1M HEPES/KOH、pH7.4)のTM2発現大腸菌粗抽出液で100倍希釈した。さらにこの溶液に1%BSAを添加後、1/500量のウサギ抗Harpin抗体を加え、抗Harpin抗体含有血清を調製した。なお、Harpin抗体を加えない血清を対照とした。
これらの血清をTM2融合Harpinを固定化したプレートに100ulずつ添加し、1時間室温で静置し反応させた後、TBSTで3回洗浄した。Harpin抗原に結合したウサギ抗Harpin抗体を検出するために、西洋ワサビペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ウサギIgG抗体を、また、ウェルに非特異結合しているヒトIgGを検出するために、ペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ヒトIgG抗体を、それぞれ1%BSAを含むTBSTで5000倍希釈してから混合し、このペルオキシダーゼ標識二次抗体混合溶液を各ウェルに100ulずつ添加し、1時間室温で静置し、反応させた。その後、さらにTBSTで3回洗浄し、検出試薬 1step ELISA ultraTMB (PIERCE)を100ul添加し、室温で5分間反応させた。2M硫酸を100ul添加することで反応を停止させ、発色度合い(波長450nmにおける吸光度、A450)をプレートリーダーInfinite M200(TECAN社製)によって測定した。測定は処理区ごとに3回実施し平均値を求めた。なお、本実施例においては、抗体の濃度が比較的高く、また非特異結合も少ない系となったため、抗原を固相化していない区の測定値を差し引く必要がなかった。
結果を表5に示す。
表5に示したように、ヒト血清中のharpin抗体のA450の値(S)は、各血清希釈液間で大きな差はなかったが、対照としたharpin抗体を含まない血清における値(N)は、TM2/pTrc99A導入BL21粗抽出液、pTrc99A導入BL21粗抽出液、大腸菌(BL21)粗抽出液、PBSの順に低かった。このことは、TM2/pTrc99A導入BL21粗抽出液が最も非特異結合を抑制することができたことを示す。また、S/N比(ウサギ抗Harpin抗体を加えたヒト血清における発色度合い/ウサギ抗Harpin抗体を加えない血清における発色度合い)についても、タマビジン2を発現させた大腸菌抽出液(TM2/pTrc99A導入BL21粗抽出液)を血清希釈液として用いた場合が最も高かった。
以上のことから、タマビジン2を発現させた大腸菌抽出液を用いてヒト血清を希釈することで、非特異的な結合が抑制され、感度の高い検出ができることが示された。
配列番号1:SITH−1のアミノ酸配列。
配列番号2:SITH−1 ORFの塩基配列。
配列番号3:SITH―1 cDNAの塩基配列。
配列番号4:タマビジン1の塩基配列。
配列番号5:タマビジン1のアミノ酸配列。
配列番号6:タマビジン2の塩基配列。
配列番号7:タマビジン2のアミノ酸配列。
配列番号8:リンカー配列の例。
配列番号9:リンカー配列の例。
配列番号10:リンカー配列の例。
配列番号11:リンカー配列の例。
配列番号12:リンカー配列の例。
配列番号13:リンカー配列の例。
配列番号14:リンカー配列の例。
配列番号15:リンカー配列の例。
配列番号16:リンカー配列の例。
配列番号17:リンカー配列の例。
配列番号18:リンカー配列の例(実施例で使用)。
配列番号19:プライマーSITH1C−5xlink−TM2N−Fの塩基配列。
配列番号20:プライマーSITH1C−5xlink−TM2N−Rの塩基配列。
配列番号21:プライマーSITH1 5’ EcoRI−Fの塩基配列。
配列番号22:プライマーTM2CtermBamの塩基配列。
配列番号23:SITH−1―TM2の塩基配列。
配列番号24:SITH−1−TM2のアミノ酸配列。
配列番号25:プライマーHarpinNtermEcoRI−Fの塩基配列。
配列番号26:プライマーHarpinC−5xlink−TM2N−Rの塩基配列。
配列番号27:プライマーHarpinC−5xlink−TM2N−Fの塩基配列。
配列番号28:Harpin遺伝子(ORF)の塩基配列。
配列番号29:Harpin遺伝子(ORF)によってコードされるアミノ酸配列。
配列番号30:harpin−TM2の塩基配列。
配列番号31:harpin−TM2のアミノ酸配列。

Claims (7)

  1. 生物学的試料中の物質を検出する方法であって、
    1) ビオチンを結合させた担体、及び、検出すべき物質と特異的に結合するタンパク質とビオチン結合性タンパク質との融合タンパク質を準備し;
    2) ビオチン−ビオチン結合性タンパク質間の結合を介して、工程1)で準備した担体に融合タンパク質を結合させて、融合タンパク質が結合した担体を作成し;
    3) 工程2)で作成した融合タンパク質が結合した担体に、
    (a) 生物学的試料、及び
    (b−i) 工程1)の融合タンパク質を発現させるのに利用した宿主細胞と同種の細胞より調製した細胞破砕抽出液と、ビオチン結合性タンパク質、あるいは
    (b−ii) 工程1)の融合タンパク質を発現させるのに利用した宿主細胞と同種の細胞に遺伝子工学技術によりビオチン結合性タンパク質を発現させた細胞から調製した細胞破砕抽出液
    を混合して添加する;そして、
    4) 融合タンパク質中の検出すべき物質と特異的に結合するタンパク質に結合した披検物質を検出する
    ことを含む、前記方法。
  2. 生物学的試料中の物質を検出する方法であって、
    1) ビオチンを結合させた担体、及び、検出すべき物質と特異的に結合するタンパク質とビオチン結合性タンパク質との融合タンパク質を準備し;
    2) ビオチン−ビオチン結合性タンパク質間の結合を介して、工程1)で準備した担体に融合タンパク質を結合させて、融合タンパク質が結合した担体を作成し;
    3) 工程2)で作成した融合タンパク質が結合した担体に、ビオチン結合性タンパク質を接触させて担体のブロッキングを行い;
    4) 工程3)のブロッキング工程後、融合タンパク質が結合した担体に、
    (a) 生物学的試料、及び
    (b−i) 工程1)の融合タンパク質を発現させるのに利用した宿主細胞と同種の細胞より調製した細胞破砕抽出液と、ビオチン結合性タンパク質、あるいは
    (b−ii) 工程1)の融合タンパク質を発現させるのに利用した宿主細胞と同種の細胞に遺伝子工学技術によりビオチン結合性タンパク質を発現させた細胞から調製した細胞破砕抽出液
    を混合して添加する;そして、
    5) 融合タンパク質中の検出すべき物質と特異的に結合するタンパク質に結合した披検物質を検出する
    ことを含む、前記方法。
  3. 請求項1の工程3(b−i)又は請求項2の工程4(b−i)において、細胞破砕抽出液として、任意のベクターを含む細胞から抽出した細胞破砕抽出液を添加する、請求項1又は2に記載の方法。
  4. ビオチン結合性タンパク質がタマビジン又はその変異体である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 生物学的試料が、血液、血清、脳脊髄液、唾液、汗、尿、涙、リンパ液、及び母乳からなる群から選択される、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 生物学的試料中の物質を検出するためのキットであって、
    A) 検出すべき物質と特異的に結合するタンパク質とビオチン結合性タンパク質との融合タンパク質が、ビオチン−ビオチン結合性タンパク質間結合によって結合している、担体;並びに、
    B−i) A)の融合タンパク質を発現させるのに利用した宿主細胞と同種の細胞より調製した細胞破砕抽出液と、ビオチン結合性タンパク質、若しくは
    B−ii) A)の融合タンパク質を発現させるのに利用した宿主細胞と同種の細胞に遺伝子工学技術によりビオチン結合性タンパク質を発現させた細胞から調製した細胞破砕抽出液を含む、生物学的試料を希釈するための剤
    を含むキット。
  7. さらに、C) ビオチン結合性タンパク質を含むブロッキング剤を含む、請求項6に記載のキット。
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