JP5647063B2 - リチウムイオン二次電池の負極構造及びリチウムイオン二次電池の負極構造の製造方法 - Google Patents

リチウムイオン二次電池の負極構造及びリチウムイオン二次電池の負極構造の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、リチウムイオン二次電池の負極構造及びその製造方法に関する。
リチウムイオン二次電池の市場は、主に携帯電話用電源及びノートPC用の電源であったが、最近では、電池の開発が進むにつれて、家電製品、ハイブリッド自動車及び電気自動車、産業機械、電力貯蔵蓄電システム等に市場が拡大している。
このリチウムイオン二次電池の負極構造体には、炭素系材料が用いられており、一般的には黒鉛等の比較的安価な材料が使用されている。黒鉛を用いた負極構造体は、例えば黒鉛粉末を結着剤及び液状の分散媒とともに混合してペースト状とし、銅箔に塗布して乾燥することにより形成される(例えば特許文献1参照)。
特開平10−116619号公報
しかし、リチウムイオン二次電池は、その多様な用途ゆえに求められる電池特性が異なり、現段階で開発又は研究されているリチウムイオン二次電池の特性は、高いエネルギー密度が要求されるエネルギー密度指向型、大出力が求められる出力指向型、長寿命が求められる寿命指向型に大きく分けられる。そのうち、出力指向型の電池は、容量の向上が求められているが、従来から用いられていた黒鉛では、実用レベルでの容量向上にも限界があった。
本発明は、上記した従来の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、電池容量を向上することができるリチウムイオン二次電池の負極構造及びリチウムイオン二次電池の負極構造の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するための手段及びその作用効果を以下に説明する。
請求項1に記載の発明は、銅からなる集電体層と、前記集電体層に積層されたアルミニウム層と、前記アルミニウム層に積層され、Ti,V,Cr,Zr,Nb,Mo,Hf,Ta,W及びそれら金属元素の窒化物のうち少なくとも一つからなる助触媒層と、前記助触媒層に積層された鉄からなる触媒層と、前記触媒層上に形成され、長手方向が前記助触媒層の主面に対して垂直な方向に配向したカーボンナノチューブとを備えたことを要旨とする。
請求項1に記載の発明によれば、アルミニウム層と触媒層との間に設けられた助触媒層により、触媒層の触媒機能が高められるため、高密度で長いカーボンナノチューブを成長させることができる。従って、負極構造体におけるリチウムイオンの吸蔵量を増大させることが可能となるため、該負極構造体を用いた電池の容量を向上することができる。
請求項2に記載の発明は、前記触媒層の膜厚に対する前記助触媒層の膜厚の比率は、0.2以上0.5以下であることを要旨とする。
請求項2に記載の発明によれば、助触媒層の膜厚を上記比率に基づく厚さにしたため、触媒層の触媒機能を最適化することができる。
請求項3に記載の発明は、アルミニウム層の膜厚は、10nm以上20nm以下であることを要旨とする。
請求項3に記載の発明によれば、アルミニウム層の膜厚を上記範囲にしたため、集電体層の銅の拡散を抑制するとともに、不必要に膜厚が大きくならないようにすることができる。
請求項4に記載の発明は、リチウムイオン二次電池の負極構造の製造方法において、銅からなる集電体層を形成する工程と、前記集電体層に、アルミニウム層を積層する工程と、前記アルミニウム層に、Ti,V,Cr,Zr,Nb,Mo,Hf,Ta,W及びそれら金属元素の窒化物のうち少なくとも一つからなる助触媒層を積層する工程と、前記助触媒層に、鉄からなる触媒層を積層する工程と、触媒層上に原料となる炭素含有ガスを供給し、カーボンナノチューブの成長温度まで昇温して、前記触媒層上に長手方向が前記助触媒層の主面に対して垂直な方向に配向したカーボンナノチューブを形成する工程とを有する。
請求項4に記載の発明によれば、アルミニウム層と触媒層との間に設けられた助触媒層により、触媒層の触媒機能が高められるため、高密度で長いカーボンナノチューブを成長させることができる。従って、負極構造体におけるリチウムイオンの吸蔵量を増大させることが可能となるため、該負極構造体を用いた電池の容量を向上することができる。
請求項5に記載の発明は、カーボンナノチューブを形成する工程は、2℃/秒以上の速度で600℃以上800℃以下の温度まで昇温することを要旨とする。
請求項5に記載の発明によれば、カーボンナノチューブを形成する際、2℃/秒以上の速度で上記温度範囲の温度まで昇温したため、集電体層の銅が触媒層まで拡散することを抑制することができる。
本発明に係る負極構造体を模式的に示す断面図。 同負極構造体の充放電に伴うリチウムイオンの移動を示す模式図。 同負極構造体の製造工程を説明するフローチャート。 アルミニウム層の膜厚とカーボンナノチューブの密度との関係を示すグラフ。 (a)は助触媒層形成工程、(b)は触媒層形成工程、(c)は加熱工程、(d)はカーボンナノチューブ形成工程を説明する模式図。 触媒層の膜厚に対する助触媒層の膜厚の比率とカーボンナノチューブの密度との関係を示すグラフ。 実施例の負極構造体に形成されたカーボンナノチューブの断面をSEM(走査型電子顕微鏡)により撮影した画像。 実施例で成長時間を変更した際のカーボンナノチューブの重量と長さ(膜厚)との関係を示すグラフ。 実施例の負極構造体を用いたリチウム二次電池の充放電曲線。 比較例の負極構造体に形成されたカーボンナノチューブの断面をSEM(走査型電子顕微鏡)により撮影した画像。 比較例の負極構造体を用いたリチウム二次電池の充放電曲線。 実施例の負極構造体を用いた電池及び比較例の負極構造体を用いた電池の容量を各レート毎に示すグラフ。
以下、本発明のリチウムイオン二次電池の一実施形態を図1〜図6にしたがって説明する。
図1に示すように、リチウムイオン二次電池の負極構造体10は、金属からなる基材11と、基材11上に積層された集電体層12とを有している。集電体層12は、箔状の銅(Cu)からなる。
また、集電体層12には、アルミニウム(Al)層13が積層されている。このアルミニウム層13は、集電体層12中のCuが上層側に拡散するのを抑制するために形成されている。
このアルミニウム層13には、アルミニウム層13の厚さに比べ膜厚が小さい助触媒層15が積層されている。この助触媒層15は、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)及びタングステン(W)といった遷移金属元素及びそれら遷移金属元素の窒化物のうち少なくとも一つからなる。即ち、助触媒層15を、上記遷移金属元素単体又は複数の上記遷移金属元素から構成してもよいし、上記遷移金属元素の窒化物単体又は複数の上記遷移金属元素の窒化物から構成してもよい。或いは、上記遷移金属元素の少なくとも1つと、上記遷移金属元素の窒化物の少なくとも1つとを組み合わせて構成してもよい。
助触媒層15には、鉄(Fe)からなる触媒層16が積層されている。この触媒層16は、加熱により触媒金属が凝集した微粒子16Pから構成されている。この触媒層16の触媒機能は、助触媒層15によってより向上される。
そして、触媒層16の上には、微粒子16Pを核として成長したカーボンナノチューブ20が形成されている。カーボンナノチューブ20は、グラファイト構造を有する有蓋筒状を呈し、その長手方向が助触媒層15の主面に対して垂直となるように配向している。また、カーボンナノチューブ20は、2層以上のグラファイト層によって構成される、いわゆるマルチウォールナノチューブ(MWNT)である。
この積層構造を有する負極構造体10は、例えばリチウムやコバルト酸リチウム等のリチウム化合物を用いた正極構造体、セパレータ及び電解液とともにケース等に封入される。
この負極構造体10の作用について説明する。充放電時には、正極構造体から電解液中に放出されたリチウムイオンが移動することにより電池反応が進行する。図2に示すように、充電時には、カーボンナノチューブ20のグラファイト層Gの層間にリチウムイオンIを吸蔵し、放電時には、リチウムイオンIを層間から放出する。この負極構造体10におけるリチウムイオンの吸蔵量や移動性によって、電池容量の大きさが左右される。
即ち、上記したようにカーボンナノチューブ20を助触媒層15の主面に対して垂直配向させると、カーボンナノチューブ20の長手方向にリチウムイオンの吸蔵空間及び移動経路が確保される。これに対し、粉末状のカーボンナノチューブを分散させた負極構造体では、一方向に延びる吸蔵空間及び移動経路が確保されない。従って、カーボンナノチューブ20を垂直配向させたリチウム二次電池では、リチウムイオンの吸蔵量及び移動性が良好となる。
また、負極構造体10にアルミニウム層13及び助触媒層15を介在させること等により、カーボンナノチューブ20を、負極構造体10の単位面積当たりの本数がおよそ1×1011本以上、カーボンナノチューブ20の層における比重が1.0g/cm以上といった高い密度で成長させることができる。このように、カーボンナノチューブ20が高密度に成長した層が形成されれば、グラファイト層間の吸蔵サイト(吸蔵空間)及び移動経路も増えることになるため、負極構造体10の単位面積当たりのリチウムイオンの吸蔵量が大きくなり、放電容量を増大させることができる。また、一方向に延びる吸蔵サイトが確保されるため、電気抵抗を低下させることができ、携帯電話やノートPC等に要求される充電レートで充電した際に良好な放電容量を確保できるだけでなく、電気自動車の二次電池等、高速充電が要求される状況下でも、実用レベルの放電容量を確保することができる。
次に、負極構造体10の製造方法について説明する。図3に示すように、まず基材11に対してCu箔からなる集電体層12を積層する集電体層形成工程を行う(ステップS1)。集電体層12は、電子ビーム蒸着等の各種蒸着方法や、スパッタ等を含む物理気相成長法、熱CVD等の化学気相成長法により形成可能である。
集電体層12が形成されると、アルミニウム層形成工程を行う(ステップS2)。アルミニウム層13は、電子ビーム蒸着等の各種蒸着方法や、スパッタ等を含む物理気相成長法、熱CVD等の化学気相成長法により形成可能である。
このアルミニウム層13の膜厚は、上記したように、Cuに対するバリア機能をもたせるために、10nm以上20nm以下が好ましい。この範囲にすることにより、集電体層12中のCuが触媒層16側に拡散するのを抑制することができる。Cuが触媒層16に拡散すると、カーボンナノチューブ20の成長を妨げることがわかっている。
図4に示すように、アルミニウム層13の膜厚が10nm未満では、カーボンナノチューブ20の密度が上記した好ましい密度に到達しない。膜厚が10nm以上から15nmでは徐々に増加し、膜厚が15nm以上になるとカーボンナノチューブ20の密度は一定となる。このため、アルミニウム層13の膜厚は少なくとも10nmあれば十分であり、20nmよりも大きくすると負極構造体10を厚み方向に不必要に大きくしてしまい、リチウム二次電池が大型化してしまう。
また、アルミニウム層13に替えて、例えばTi,Ni,Pt等といったAl以外の金属の層を設けた場合、それらの金属層は集電体層12との密着性が低く、Cuに対するバリア機能を有する層が形成できないか、若しくは形成しても剥離してしまう。このため、集電体層12と助触媒層15との間に介在する金属層は、バリア機能及びCuとの密着性の上で、Alが好ましい。
アルミニウム層形成工程が完了すると、図3に示すように、助触媒層形成工程を行う(ステップS3)。助触媒層15は、上記したように触媒層16の触媒機能を向上させ、カーボンナノチューブ20の成長を促進するために設けられている。その機構は、カーボンナノチューブ20の原料となる炭素含有ガスの分解を促すため、又は触媒層16を構成するFeへの炭素含有ガスへの溶解を促すためと推測される。この助触媒層15は、電子ビーム蒸着等の各種蒸着方法や、スパッタ等を含む物理気相成長法、熱CVD等の化学気相成長法により形成可能である。この助触媒層15は、図5(a)に示すように、アルミニウム層13上に島状(又は間欠的)に成膜されるが、その機能は十分に確保される。
この助触媒層15の膜厚は、触媒層16の膜厚に対して、0.2以上0.5以下の比率であることが好ましい。即ち、触媒層16の膜厚が1nmである場合、助触媒層15は、0.2nm以上0.5nm以下の範囲である。図6に示すように、助触媒層15の膜厚の比率を上記範囲にするとカーボンナノチューブ20の密度を1.0g/cm以上の必要密度にすることができる。膜厚の比率が0.2未満である場合には、触媒層16の機能を十分に向上することができず、カーボンナノチューブ20の密度が必要密度に到達することができない。また、膜厚の比率が0.5超である場合に密度が小さくなる理由は明らかとなっていないが、逆にカーボンナノチューブ20の成長を停滞させてしまうような作用が働いている可能性がある。
助触媒層形成工程を完了すると、図3に示すように、基材11、集電体層12、アルミニウム層13及び助触媒層15からなる積層体L1(図5(a)参照)に対し、触媒層形成工程を行う(ステップS4)。Feからなる触媒層16は、電子ビーム蒸着等の各種蒸着方法や、スパッタ等を含む物理気相成長法、熱CVD等の化学気相成長法により形成可能である。その結果、図5(b)に示すように、平面状の触媒層16が形成される。
触媒層形成工程が完了すると、図3に示すようにその積層体L2を加熱する加熱工程を行う(ステップS5)。この際、積層体は、触媒層16を形成するための装置から、カーボンナノチューブ20を形成する装置である熱CVD装置に搬送される。装置内に搬送された積層体L2は、不活性ガス(例えばAr)の供給により所定圧力(例えば1000Pa)に調整された反応室内で、Feの凝集温度(300℃〜400℃)以上に加熱される。その結果、図5(c)に示すように、Feが凝集して、多数の微粒子16Pからなる触媒層16が形成される。
加熱工程が完了すると、図3に示すようにカーボンナノチューブ形成工程を行う(ステップS6)。この工程では、600℃以上800℃以下のカーボンナノチューブ成長温度に反応室内を加熱しつつ、アセチレン(C)ガス等、カーボンナノチューブ20の原料となる炭素含有ガスを、Ar等の希釈ガスによって希釈し、熱CVD装置の反応室内に供給する。このとき、反応室内を、2℃/秒以上の速度で上記成長温度まで昇温することが好ましい。例えば反応室内を、室温から上記成長温度まで昇温する場合には、5分以内で昇温することが好ましい。また、上記凝集温度付近から上記成長温度まで昇温する場合には、2分〜3分以内で昇温することが好ましい。反応室内を上記成長温度に昇温するまでの時間が長いと、集電体層12のCuが触媒層16まで拡散してしまい、カーボンナノチューブ20の成長を妨げる。このため、比較的大きな昇温速度で昇温することが好ましい。
反応室内に炭素含有ガス及び希釈ガスを供給すると、積層体の触媒層16上で、炭素含有ガスが熱分解される。原料ガスの熱分解によって生成された炭素又は炭素化合物は、微粒子16Pに吸着し、溶解する。そして、微粒子中の炭素の濃度が、微粒子に溶解可能な濃度を超えて過飽和になったとき、微粒子の該表面に炭素が析出して、グラファイト構造を有する有蓋筒状のカーボンナノチューブ20が形成される。
一旦、微粒子の外表面にカーボンナノチューブ20が形成されると、カーボンナノチューブ20の微粒子側の端部に新たな炭素が結合することで、その長手方向にカーボンナノチューブ20が延長される。その結果、図5(d)に示すように、カーボンナノチューブ20が基材11側と反対の方向に伸長していく。このように、カーボンナノチューブ20は、微粒子16Pに沿って形成され且つ成長することから、カーボンナノチューブ20の直径は、微粒子の直径に略等しい大きさになる。
このように形成された負極構造体10は、正極構造体、セパレータ及び電解液とともにケース内に封入され(いずれも図示略)、リチウムイオン二次電池となる。
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態では、負極構造体10を、銅からなる集電体層12と、アルミニウム層13と、助触媒層15と、鉄からなる触媒層16と、触媒層16に対して垂直配向させたカーボンナノチューブ20の層とを積層することにより構成した。また、助触媒層15は、Ti,V,Cr,Zr,Nb,Mo,Hf,Ta,W及びそれら金属元素の窒化物のうち少なくとも一つから形成した。従って、助触媒層15がアルミニウム層13及び触媒層16の間に介在することにより、触媒層16の触媒機能が高められ、長いカーボンナノチューブを高密度で成長させることができる。このため、負極構造体10のリチウムイオンの吸蔵量を増大させ、電池容量を向上することができる。
(2)上記実施形態では、触媒層16の膜厚に対する助触媒層15の膜厚の比率を、0.2以上0.5以下とした。このため、触媒層16の触媒機能を最も効率よく向上することができる。
(3)上記実施形態では、アルミニウム層13の膜厚を、10nm以上20nm以下とした。このため、集電体層12のCuの拡散を抑制することができるとともに、不必要に膜厚を大きくせず、負極構造体10を厚さ方向に薄くすることができる。
(4)上記実施形態では、カーボンナノチューブ20を形成する工程で、熱CVD装置内をカーボンナノチューブ20の成長温度に到達させる際に、2℃/秒以上の速度で昇温した。このため、銅の触媒層16への拡散を抑制することができるため、カーボンナノチューブ20の成長を妨げないようにすることができる。
[実施例]
[実施例1]
Cuからなる集電体層に対し、下記の各層を電子ビーム蒸着により積層した。
アルミニウム層:Al 10nm
助触媒層:V 0.2nm
触媒層:Fe 1nm
さらに、熱CVD法により、下記の条件でカーボンナノチューブを成長させて、負極構造体を作製した。
・カーボンナノチューブ成長温度:700度
・昇温時間:5分(室温〜700度、昇温速度:2.26℃/秒)
・圧力:1気圧
・原料ガス及び流量:アセチレン 40sccm
・希釈ガス及び流量:Ar 200sccm
・成長時間:4分
図7に示すSEM写真では、10nm〜20nmの直径のカーボンナノチューブが、1×1011本/cm以上の高い密度で成長していることがわかる。
図8に示すように、バッチ毎に成長時間を変更してカーボンナノチューブの長さを変更した場合には、各バッチによるばらつきはあるものの、その長さ(カーボンナノチューブ20の層としての膜厚)と単位面積当たりの重量との関係は同一直線上若しくはその付近に分布している。このグラフから、カーボンナノチューブ20自体の密度は、1.2g/cmといった高い密度で一定となっていることがわかる。
この負極構造体を用いたリチウム二次電池の評価を行った。電池構造の詳細を下記に示す。
形状:2032コインセル(直径20mm、高さ3.2mm)
正極:リチウム(Li)金属箔(直径16mm)
負極:カーボンナノチューブ電極(直径14mm)
電解液:1M LiPF6/エチレンカーボネート(EC):ジエチルカーボネート(DEC)
セパレータ:セルガード #2400(セルガード株式会社 製)
このリチウム二次電池に、1C,10C,100Cレートの定電流を供給し、電圧変化を測定して、図9に示す放電曲線及び充電曲線を得た。図中、実線で示す曲線は、100Cレートでの充電曲線C100と放電曲線D100であって、1点鎖線で示す曲線は、10Cレートでの充電曲線C10と放電曲線D10である。また、2点鎖線で示す曲線は、1Cレートでの充電曲線C1と放電曲線D1である。尚、単位「C」とは、電池を、未充電の状態から満充電の状態まで1時間で充電できる電流の大きさ(電流レート(A;アンペア))を表すとともに、1時間で電流値が0になるまで充電された容量を1時間で放電するための電流の大きさを表す。
各レートにおける定電流値から、各レートにおける活物質単位重量当たりの容量を求めた。1Cレートでは、130mAh/g、10Cレートでは、82mAh/g、100Cレートでは、37mAh/gの容量を得た。
[比較例1]
Cuからなる集電体層に対し、下記の膜厚で各層を電子ビーム蒸着により積層した。即ち、比較例1の負極構造体は、助触媒層を設けていない。
アルミニウム層:Al 10nm
触媒層:Fe 1nm
さらに、熱CVD法により、下記の条件でカーボンナノチューブを成長させた。カーボンナノチューブの成長条件は、実施例1と同様にした。
図10に示すSEM写真では、10nm〜20nmの直径のカーボンナノチューブが、3×1010本/cm程度の密度で、まばらに成長していることがわかる。
[比較例2]
負極構造体を実施例1とは異なる材料及び構成とした。黒鉛粉末、アセチレンブラック、結着剤(PolyVinylidene DiFluoride:ポリフッ化ビニリデン)を、8:1:1といった質量比で混合し、有機溶媒(N-methylpyrrolidone、NMP:N-メチル-2-ピロリドン)に分散させペースト状にした。さらに、そのペースト状の電極前駆体を、Cu箔上にドクターブレード法で50μmの厚さで均一に塗布した。塗布したものを、大気中80℃で1時間乾燥させることで黒鉛塗布電極を得た。
また、その黒鉛塗布電極を直径14mmの大きさに加工して、実施例1と同様にリチウム二次電池を製造し、該電池の評価を行った。電池構造の詳細は実施例1と同様にした。この比較例2のリチウム二次電池に、実施例1と同様に、1Cレート,10Cレートの定電流を供給して、図11に示す放充電曲線を得た。図中1点差線で示す曲線は、10Cレートでの充電曲線C10と放電曲線D10であって、2点鎖線で示す曲線は、1Cレートでの充電曲線C1と放電曲線D1である。尚、比較例2のリチウム二次電池は、その小さい容量のため、100Cといった急速充電を行うことができなかった。1Cレートでは、187mAh/g、10Cレートでは26mAh/gの容量を得た。
図12に示すように、実施例1のリチウム二次電池及び比較例2のリチウム二次電池の0.1Cレートで得られる各容量をそれぞれ100%の利用可能容量としたとき、1Cレートでは、実施例1のリチウム二次電池は、同リチウム二次電池の上記利用可能容量に対して59%の容量となる。比較例2のリチウム二次電池は、上記利用可能容量に対して50%の容量となる。尚、0.1Cレートは、携帯電話やノートPC等の充電レート(1Cレート程度)よりも低いレートである。
また、高速充電の充電レートに相当する10Cレートでは、実施例1のリチウム二次電池は、同リチウム二次電池の上記利用可能容量に対して37%の容量となった。また、比較例1のリチウム二次電池は、同リチウム二次電池の上記利用可能容量に対して7%の容量となる。100Cレートでは、実施例1のリチウム二次電池は、同リチウム二次電池の上記利用可能容量に対して17%の容量となった。即ち、実用レベルでの電池容量を向上することができた。
比較例2のリチウム二次電池が急速充放電ができず、レートを上げていく毎に容量が急速に小さくなったのは、黒鉛粉末を活物質とした電池では、負極構造体内で炭素の活物質が分散し、いわば点接触となることで電気抵抗が増大したためと考えられる。また、その比表面積が小さいため、電解液との接触面積が小さく、イオン伝導量が減少したためであると考えられる。
尚、上記各実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、基材11を金属から形成したが、セラミックス、シリコン基材、耐熱性を有する樹脂等、他の材料から形成してもよいし、基材11自体を省略してもよい。
・上記実施形態では、カーボンナノチューブ20は、マルチウォールナノチューブとしたが、シングルウォールナノチューブ(SWNT)でもよい。
・上記実施形態では、基材11の上に集電体層12を形成したが、集電体層を有する金属板からなるケースに、集電体層12を除く上記負極構造体10を封入するようにしてもよい。
10…負極構造体、12…集電体層、13…アルミニウム層、15…助触媒層、16…触媒層、20…カーボンナノチューブ。

Claims (5)

  1. 銅からなる集電体層と、
    前記集電体層に積層されたアルミニウム層と、
    前記アルミニウム層に積層され、Ti,V,Cr,Zr,Nb,Mo,Hf,Ta,W及びそれら金属元素の窒化物のうち少なくとも一つからなる助触媒層と、
    前記助触媒層に積層された鉄からなる触媒層と、
    前記触媒層上に形成され、長手方向が前記助触媒層の主面に対して垂直な方向に配向したカーボンナノチューブとを備えたことを特徴とするリチウムイオン二次電池の負極構造。
  2. 前記触媒層の膜厚に対する前記助触媒層の膜厚の比率は、0.2以上0.5以下である請求項1に記載のリチウムイオン二次電池の負極構造。
  3. 前記アルミニウム層の膜厚は、10nm以上20nm以下である請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池の負極構造。
  4. リチウムイオン二次電池の負極構造の製造方法において、
    銅からなる集電体層を形成する工程と、
    前記集電体層に、アルミニウム層を積層する工程と、
    前記アルミニウム層に、Ti,V,Cr,Zr,Nb,Mo,Hf,Ta,W及びそれら金属元素の窒化物のうち少なくとも一つからなる助触媒層を積層する工程と、
    前記助触媒層に、鉄からなる触媒層を積層する工程と、
    前記触媒層上に原料となる炭素含有ガスを供給し、カーボンナノチューブの成長温度まで昇温して、前記触媒層上に長手方向が前記助触媒層の主面に対して垂直な方向に配向したカーボンナノチューブを形成する工程とを有することを特徴とするリチウムイオン二次電池の負極構造の製造方法。
  5. 前記カーボンナノチューブを形成する工程は、2℃/秒以上の速度で600℃以上800℃以下の温度まで昇温する請求項4に記載のリチウムイオン二次電池の負極構造の製造方法。
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