以下、図面を参照して、本発明に係るインクジェット装置の実施形態について説明する。まず、インクジェット装置1の構成について説明する。図1は、本実施形態に係るインクジェット装置1の全体構成を示す説明図である。図2は、記録部20及び用紙搬送部30の平面図である。図3は、ノズルユニット210の概略断面図である。図4は、インクジェット装置1の電気的な構成を示すブロック図である。図5(A)〜(D)は、64〜255階調の画素を印字するための駆動信号を示す波形図である。
図1に示すように、本実施形態のインクジェット装置1は、本体2の内部に、主要部として、記録部20と、用紙搬送部30と、を備える。また、インクジェット装置1は、給紙カセット3と、給紙ローラー4と、用紙搬送路5と、レジストローラー対6と、乾燥装置7と、排紙ローラー対8と、排紙口9と、排紙トレイ10と、を備える。
用紙搬送部30は、搬送ベルト31と、駆動ローラー32と、従動ローラー33と、テンションローラー34と、を備える。
搬送ベルト31は、用紙Tを記録ヘッド22(後述)に沿って水平に搬送するベルトである。搬送ベルト31としては、両端部を接合して無端状としたベルトや、継ぎ目のないシームレスのベルト等が用いられる。搬送ベルト31は、駆動ローラー32、従動ローラー33及びテンションローラー34に掛け渡されている。
駆動ローラー32は、搬送ベルト31を回転させるローラーである。駆動ローラー32は、搬送ベルト31の搬送方向において下流側に設けられている。駆動ローラー32は、駆動用モーター(不図示)から付与された駆動力により回転する。従動ローラー33は、搬送ベルト31と連動して回転するローラーである。従動ローラー33は、搬送ベルト31の搬送方向において上流側に設けられている。テンションローラー34は、従動ローラー33と駆動ローラー32との間で搬送ベルト31が弛まないように張力を与えるローラーである。
搬送ベルト31を間に挟んで、記録ヘッド22と反対側には、吸着ユニット(不図示)が設けられている。吸着ユニットは、搬送ベルト31に形成された通気孔(不図示)に吸引力(下向きの気流)を発生させ、搬送ベルト31の表面において用紙Tを吸着する装置である。搬送ベルト31に送り出された用紙Tは、吸着ユニットで発生する吸引力により、搬送ベルト31の載置搬送面31A(図2参照)に吸着された状態で記録ヘッド22の下を搬送される。このように、搬送ベルト31の載置搬送面31Aに吸着された状態で搬送される用紙Tに向けて、記録ヘッド22からインクをインク液滴として吐出することにより、用紙Tに画像が形成される。
給紙カセット3は、記録媒体としての用紙Tを積載した状態で収容する。給紙カセット3は、本体2の内部において、下方に配置されている。給紙ローラー4は、給紙カセット3の上方に配置されている。給紙ローラー4は、給紙カセット3に積載された用紙Tを1枚ずつ取り出し、搬送路5へ送り出す。給紙ローラー4は、駆動用モーター(不図示)から付与された駆動力により回転する。
用紙搬送路5、レジストローラー対6、記録部20及び用紙搬送部30は、給紙カセット3よりも、用紙Tの搬送方向Pの下流側に配置されている。給紙カセット3から送り出された用紙Tは、用紙搬送路5を通過してレジストローラー対6に到達する。レジストローラー対6は、用紙Tの斜め送りを矯正し、用紙Tを搬送方向Pへ送り出す。
乾燥装置7は、用紙Tに形成された画像のインクを乾燥させる装置である。乾燥装置7は、用紙搬送部30よりも、用紙Tの搬送方向Pの下流側に配置されている。
排紙ローラー対8、排紙口9及び排紙トレイ10は、乾燥装置7よりも、用紙Tの搬送方向Pの下流側に配置されている。乾燥装置7によりインクの乾燥が終了した用紙Tは、排紙ローラー対8により搬送方向Pの下流側に送られる。更に、用紙Tは、排紙口9から排紙トレイ10に送られ、本体2の外部に排出される。
記録部20は、イエロー用の記録ヘッド22Y、マゼンタ用の記録ヘッド22M、シアン用の記録ヘッド22C及びブラック用の記録ヘッド22Kを備える。記録部20は、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックのインク液滴を、記録ヘッド22Y、22M、22C及び22Kから用紙Tに向けて吐出する。記録ヘッド22Y、22M、22C及び22Kは、図2に示すように、用紙Tの搬送方向P(水平方向X)と直交する方向(用紙幅方向Y)に沿って延出している。記録ヘッド22Y、22M、22C及び22Kは、図2に示すように、ヘッドフレーム21を介して、本体2に固定されている。
また、記録ヘッド22Y、22M、22C及び22Kは、図2に示すように、インク吐出部としてのノズルユニット210を複数備える。記録ヘッド22Y、22M、22C及び22Kにおいて、ノズルユニット210は、用紙Tの搬送方向P(水平方向X)と直交する方向(用紙幅方向Y)に沿って、ライン状に配置されている。図2では、記録ヘッド22Yを代表してノズルユニット210を図示する。なお、図2では、ノズルユニット210の配置を模式的に示している。
記録ヘッド22Y、22M、22C及び22Kに配置された各ノズルユニット210は、用紙Tに向けてインク液滴を吐出する。記録ヘッド22Y、22M、22C及び22Kは、それぞれ1行分のインク液滴を一括して吐出する。ノズルユニット210から吐出されるインク液滴の色は、ノズルユニット210が配置された記録ヘッド22Y、22M、22C及び22Kに対応する。例えば、記録ヘッド22Yに配置された各ノズルユニット210からは、イエローのインク液滴が吐出される。
なお、以下の説明において、4色の記録ヘッド22Y、22M、22C及び22Kの識別記号である「Y」、「M」、「C」及び「K」を省略して、適宜に「記録ヘッド22」と記載する。
次に、ノズルユニット210の構造について説明する。ここでは、1画素分のインク液滴を吐出するノズルユニット210の構造について説明する。
図3に示すように、ノズルユニット210は、加圧室216と、ノズル217と、圧電素子218と、個別電極219と、を備える。
加圧室216は、ノズル217(後述)に連通して設けられる。加圧室216は、内部にインク215が充填される。加圧室216は、供給口220を介して共通流路214と連通している。共通流路214には、1つの記録ヘッド22に配置されたすべてのノズルユニット210と連通する。
また、共通流路214には、インクタンク23Y、23M、23C及び23K(後述)から延出された供給チューブが接続される。1つの記録ヘッド22において、対応する色のインクタンク23Y、23M、23C及び23Kからそれぞれ送り出されたインクは、共通流路214を介して各ノズルユニット210の加圧室216に供給される。
加圧室216の上壁には、振動板221が設けられている。振動板221は、複数の加圧室216(不図示)に渡って形成されている。振動板221の上には、共通電極222が積層されている。共通電極222は、複数の加圧室216に渡って形成されている。共通電極222の上には、圧電素子218が積層されている。圧電素子218は、加圧室216毎に個別に設けられている。圧電素子218としては、例えば、ピエゾ素子を用いることができる。更に、圧電素子218の上には、共通電極222と共に圧電素子218を挟むように個別電極219が積層されている。個別電極219は、加圧室216毎に個別に設けられている。
ノズル217は、用紙Tに向けてインク液滴を吐出する円錐状の流路である。ノズル217の先端には、インク液滴の吐出口213が設けられている。吐出口213は、ノズル面211に形成された円形の開口である。ノズル面211において、吐出口213を除く領域には、インクの付着を防止する撥水膜212が形成されている。
ノズルユニット210の各圧電素子218は、記録ヘッド駆動部60(後述)とフレキシブルケーブル(不図示)により電気的に接続されている。各圧電素子218には、記録ヘッド駆動部60から駆動信号が個別に印加される。圧電素子218に駆動信号が印加されると、圧電素子218が変形(振動)し、その変形が振動板221へ伝えられる。振動板221が変形すると、加圧室216が圧縮される。そして、加圧室216の圧縮により、加圧室216の内部に充填されたインク215が加圧される。その結果、インク215は、ノズル217から吐出口213に押し出され、インク液滴となって用紙T(不図示)の上に吐出される。
なお、圧電素子218の変形量は、印加される駆動信号の電圧値(及びパルス幅)に比例する。従って、圧電素子218に印加される駆動信号の電圧値が小さい場合には、圧電素子218の変形量が小さいため、インク215の吐出量は少なくなる。また、圧電素子218に印加される駆動信号の電圧値が大きい場合には、圧電素子218の変形量が大きくなるため、インク215の吐出量は多くなる。
また、図1に示すように、用紙搬送部30の下方には、記録ヘッド22Y、22M、22C及び22Kのそれぞれに対応して、4台のインクタンク23Y、23M、23C及び23Kが配置されている。4色のインクは、それぞれ4台のインクタンク23Y、23M、23C及び23Kから供給チューブ(不図示)を介して、対応する記録ヘッド22Y、22M、22C及び22Kに供給される。
上述した記録ヘッド22は、記録ヘッド駆動部60(後述)から印加される駆動信号に基づいて、4色のインクを順次吐出する。記録ヘッド22からインクを吐出するタイミングと、搬送ベルト31が用紙Tを搬送するタイミングとを同期させることにより、用紙Tには、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの4色のインクが重ね合わせられる。これにより、用紙Tにカラー画像が印刷される。
次に、インクジェット装置1の電気的な構成について説明する。図4に示すように、インクジェット装置1は、記録部20、用紙搬送部30、記憶部40、画像処理部50、記録ヘッド駆動部60、入力操作部70、ネットワークI/F部80、及び制御部100を備える。
記憶部40は、インクジェット装置1の機能を実現するためのプログラムやデータを記憶する。また、記憶部40は、駆動信号記憶手段として、画素の階調(濃度)に基づいて設定された駆動信号(後述)を記憶する。
記憶部40は、画素の階調に基づいて設定された複数の駆動信号として、64階調の画素を印字するための駆動信号、128階調の画素を印字するための駆動信号、192階調の画素を印字するための駆動信号及び255階調の画素を印字するための駆動信号を記憶する。なお、以下の説明において、印字の対象となる画素を「印字画素」ともいう。この印字画素には、後述する「通常印字画素」及び「強調印字画素」が含まれる。
このうち、64階調〜192階調の画素を印字するための駆動信号は、ベタ画像において、通常印字画素(後述)を印字する際に使用される通常印字用の駆動信号である。また、255階調の画素を印字するための駆動信号は、ベタ画像において、強調印字画素(後述)を印字する際に使用される強調印字用の駆動信号である。255階調の画素を印字するための駆動信号は、通常印字画素を印字する際には使用されず、強調印字画素を印字する際にのみ使用される。なお、ゼロ階調(白画素)で表現される画素は、非印字画素である。非印字画素にはインクを吐出しないため、駆動信号は設定されていない。
上述した64階調〜255階調の画素を印字するための駆動信号は、図5(A)〜(D)に示すように、それぞれ電圧値が異なる。本実施形態では、64階調〜255階調の印字画素について、それぞれに設定された駆動信号が選択される。図5(A)〜(D)において、横軸は時間(μs)、縦軸は電圧(V)を示している。
図5(A)は、64階調の画素を印字するための駆動信号であり、電圧値V1を有する。図5(B)は、128階調の画素を印字するための駆動信号であり、電圧値V1よりも大きな電圧値V2を有する。図5(C)は、192階調の画素を印字するための駆動信号であり、電圧値V2よりも大きな電圧値V3を有する。図5(D)は、255階調の画素を印字するための駆動信号であり、電圧値V3よりも大きな電圧値V4を有する。
上述したように、圧電素子218の変形量は、印加される駆動信号の電圧値に比例する。このため、電圧値V1、電圧値V2、電圧値V3、電圧値V4の順にインク液滴の吐出量は多くなる。インク液滴の吐出量が多くなるほど、印字される画素の面積が大きくなる。
再び、図4によりインクジェット装置1の電気的な構成について説明する。
画像処理部50は、パーソナルコンピューター等の外部装置(不図示)から受信した画像データに対して各種の画像処理を実施する。画像処理部50は、画像処理を行う専用回路としてのASIC51と、画像データを一時的に記憶する画像メモリー52と、を備える。
ASIC51は、RGB形式で表現された画像データを、YMCKで表現された画像データに変換する。また、ASIC51は、YMCKで表現された画像データに基づいて、画素毎にインク液滴量データを演算する。また、ASIC51は、インク液滴量データを量子化することにより、0〜255階調の画素を5段階(0階調、64階調、128階調、192階調、255階調)の画素に変換する。更に、ASIC51は、記録ヘッド22の1ライン毎に画素を形成する順序を決定し、各画素をその順序で並び替える。ここでは、画像データの各画素が1ライン毎に並び替えられる。ASIC51により画像処理された画像データは、記憶部40に記憶される。記憶部40に記憶される画像データには、画素毎の階調に関する情報が付加されている。なお、以下の説明において、記憶部40に記憶されている画像データは、上述した画像処理が施されたデータとする。
記録ヘッド駆動部60は、記録ヘッド制御部102(後述)の制御により、記録ヘッド22の各ノズルユニット210(圧電素子218)に、64階調〜255階調の画素を印字するための駆動信号を印加する。記録ヘッド駆動部60において、用紙Tに1画素を形成する際に、記録ヘッド22の各ノズルユニット210(圧電素子218)に印加する駆動信号を切り換えることにより、ノズル217から吐出されるインク液滴の量及び吐出速度を調節することができる。
入力操作部70は、各種のメッセージを表示する表示パネルや、電源キー、リセットキー等の操作ボタン等(いずれも不図示)を備える。また、入力操作部70には、ユーザーが画像データの種類を選択(又は指示)するキーやボタン等が備えられていてもよい。
ネットワークI/F部80は、LANボード等(不図示)の通信モジュールにより構成される。ネットワークI/F部は、接続されたネットワーク(不図示)を介して、外部装置との間で相互にデータの送受信を行う。
制御部100は、CPU、ROM及びRAM等を備えたマイクロプロセッサにより構成される。制御部100は、用紙搬送部30、記憶部40、画像処理部50、記録ヘッド駆動部60、入力操作部70、及びネットワークI/F部80と電気的に接続されている。
制御部100は、用紙搬送部30を構成する各駆動部(例えば、給紙ローラー4や駆動ローラー32の駆動用モーター)と電気的に接続されている。制御部100は、記憶部40に記憶されているインクジェット装置1の制御プログラムに従って、各駆動部の駆動量や駆動タイミング等を制御する。
また、制御部100は、画素抽出手段としての画素抽出部101と、記録ヘッド制御手段としての記録ヘッド制御部102と、を備える。
画素抽出部101は、ASIC51により画像処理された画像データを記憶部40から取得し、画像の輪郭部を含む輪郭域に位置する画素を強調印字画素(後述)として抽出する。具体的には、画素抽出部101は、画像データの形状的な特徴に基づいて、画像データの種類を特定する。そして、画素抽出部101は、特定した画像データの種類に応じて、ベタ画像の輪郭部に位置する第1輪郭画素D1、輪郭部から1画素分だけ内側に位置する第2輪郭画素D2、及び輪郭部から2画素分だけ内側に位置する第3輪郭画素D3(いずれも後述)のうちのいずれか1つを強調印字画素として抽出する。
本実施形態において、画素抽出部101は、画像データを解析することにより画像データの種類を特定する。画像データの種類は、例えば、領域分割やエッジ検出等の公知の解析方法により特定することができる。このほか、入力操作部70から入力された指示情報(ユーザーによるボタン操作)により画像データの種類を特定してもよい。
また、画素抽出部101は、強調印字画素を除く印字画素を通常印字画素(後述)として抽出する。画素抽出部101は、画像データの全画素について、強調印字画素又は通常印字画素を抽出する処理を実施する。そして、画素抽出部101は、画素毎に強調印字画素又は通常印字画素を識別する情報を付加して、記憶部40に記憶する。
ここで、ベタ画像及びベタ画像の輪郭部を含む輪郭域に位置する強調印字画素について説明する。図6は、ベタ画像AをN−1番目の階調を表現する画素で印字した例を示す模式図である。図7は、ベタ画像Aの輪郭部並びに第1輪郭画素D1、第2輪郭画素D2及び第3輪郭画素D3を示す模式図である。
本実施形態では、N−1番目の階調を実質的な最大階調とし、図6に示すように、このN−1番目の階調を表現する画素を隙間なく印字することによりベタ画像Aを形成する。図6において、画素DN−1は、N−1番目の階調を表現する画素を表している。図6において、格子を囲む矩形枠は、ベタ画像Aが形成されている画像領域を示す。また、格子の各交点(以下、「格子点」という)は、ノズル217から吐出されたインク液滴が着弾する画素の位置を示している(図7、図10、図13〜図16についても同じ)。
本実施形態では、記録ヘッド22Kにより二値(白画素及び黒画素)のベタ画像Aを印字する例について説明する。ベタ画像Aは、N−1番目の階調(192階調)を表現する画素及びN番目の階調(255階調)を表現する画素により印字される。以下の説明において、N−1番目の階調(192階調)を表現する画素を「通常印字画素」ともいう。また、N番目の階調(255階調)を表現する画素により印字される。N番目の階調を表現する画素を「強調印字画素」ともいう。
なお、以下に説明する図7では、強調印字画素及び通常印字画素をすべて同じ大きさで描いている。しかし、N−1番目の階調を表現する画素(通常印字画素)よりも、N番目の階調を表現する画素(強調印字画素)の方が印字される面積は大きくなる。
図7において、ハッチングの部分は、ベタ画像Aの輪郭部Eを示す。図7において、ドットで表された画素D1は、ベタ画像Aの輪郭部Eに位置する第1輪郭画素である。この第1輪郭画素D1が強調印字画素となる場合に、第1輪郭画素D1の面積は、後述する第2輪郭画素D2及び第3輪郭画素D3よりも大きくなる。
また、図7において、ドットで表された画素D2は、ベタ画像Aの輪郭部から1画素分だけ内側に位置する第2輪郭画素である。この第2輪郭画素D2が強調印字画素となる場合に、第2輪郭画素D2の面積は、第1輪郭画素D1及び第3輪郭画素D3よりも大きくなる。
更に、図7において、ドットで表された画素D3は、ベタ画像Aの輪郭部から2画素分だけ内側に位置する第3輪郭画素である。この第3輪郭画素D3が強調印字画素となる場合に、第3輪郭画素D3の面積は、第1輪郭画素D1及び第2輪郭画素D2よりも大きくなる。
本実施形態では、後述するように、ベタ画像Aの形状的な特徴に基づいて、第1輪郭画素D1、第2輪郭画素D2及び第3輪郭画素D3のいずれかを強調印字画素として抽出し、それ以外の画素はすべて通常印字画素として抽出する。例えば、第1輪郭画素D1を強調印字画素として抽出した場合に、第2輪郭画素D2及び第3輪郭画素D3は通常印字画素として抽出される。
本実施形態において、第1輪郭画素D1、第2輪郭画素D2及び第3輪郭画素D3が位置する領域が「輪郭域」となる。図7に示すベタ画像Aでは、画素数が少ないため、ベタ画像Aのすべてが輪郭域となる。ベタ画像Aにおいて、第3輪郭画素D3の内側に更に画素が存在していてもよい。
なお、画素抽出部101(図4参照)において、画像の輪郭部を含む輪郭域に位置する強調印字画素(第1輪郭画素D1、第2輪郭画素D2及び第3輪郭画素D3)を抽出する処理については後述する。
次に、画像データの形状的な特徴と強調印字画素として抽出する画素との関係について説明する。図8は、画像データの形状的な特徴と強調印字画素として抽出する画素との組み合わせ例を示す説明図である。図8は、コントラストの向上に適した組み合わせか否かを4段階で示している。図8において、「◎」は、最も良好な組み合わせを示す。「○+(プラス)」は、良好な組み合わせを示す。「○」は、良好ではあるが、○+に比べて効果がやや少ない組み合わせを示す。「×」は、あまり好ましくない組み合わせを示す。なお、文字については、フォントサイズだけでなく、線の太さも画像の見え方に影響を及ぼす。ここでは、フォントサイズに適した太さの線が設定されているものとして説明する。
小さいフォントの文字では、輪郭部を太くすると、フォントサイズが大きくなったように感じられることがあり、文字の印象が大きく変化してしまう。このため、小さいフォントの文字については、コントラストを向上させるためには、第2輪郭画素D2を強調印字画素とすることが好ましい。
中程度のフォントの文字では、輪郭部を太くすることにより、文字のコントラストを向上させることができる。このため、中程度のフォントの文字については、第1輪郭画素D1を強調印字画素とすることが好ましい。
大きいフォントの文字では、輪郭域のどの画素を太くしても、効果に大きな差は生じない。そのため、大きいフォントの文字については、第1輪郭画素D1、第2輪郭画素D2又は第3輪郭画素D3のいずれを強調印字画素としてもよい。
グラフィック(グラフ等)では、線の太さに係わらず、輪郭部を太くすることによりコントラストを向上させることができる。このため、グラフィックの場合には、第1輪郭画素D1を強調印字画素とすることが好ましい。なお、グラフィックの場合に、第2輪郭画素D2又は第3輪郭画素D3を強調印字画素とした場合でも、輪郭域をすべて通常印字画素で印字する場合に比べて、コントラストを向上させる効果を得ることができる。
イメージ(写真)では、画像領域の全体に印字されることが多く、また階調が緩やかに変化している領域も多い。このため、後述する輪郭部を抽出する処理の手法では、輪郭部が抽出できない場合もある。そのため、例えば、隣接する画素間の色差に基づいて輪郭部を抽出する手法等を用いることができる(カラー画像の場合、色毎に輪郭部の抽出を行うとより効果的と考えられる)。そのようにして抽出されたイメージの輪郭部については、大きいフォントの文字と同様に、第1輪郭画素D1、第2輪郭画素D2又は第3輪郭画素D3のいずれを強調印字画素としてもよい。
なお、図8に示す組み合わせは一例である。画像データの形状的な特徴と強調印字画素として抽出する画素との組み合わせは、これ以外の組み合わせであってもよい。
再び、図4の構成について説明する。
記録ヘッド制御部102は、記憶部40から画像データを取得し、それぞれの画素の階調に関する情報を取得する。そして、記録ヘッド制御部102は、印字画素にインク液滴を吐出するノズル217に設けられた圧電素子218に、それぞれの画素の階調を表現する駆動信号を印加するように記録ヘッド駆動部60を制御する。
記録ヘッド制御部102は、印字画素が64階調〜192階調の通常印字画素の場合には、それぞれの階調に応じて設定された駆動信号を選択する。すなわち、64階調の画素を印字するための駆動信号、128階調の画素を印字するための駆動信号、192階調の画素を印字するための駆動信号のうち1つを選択する。また、記録ヘッド制御部102は、印字画素が255階調の強調印字画素の場合には、255階調の画素を印字するための駆動信号を選択する。これらの駆動信号(図5参照)は、上述したように、記憶部40に記憶されている。
記録ヘッド制御部102は、印字画素が通常印字画素の場合には、記憶部40に記憶されている通常印字用の駆動信号のうちの1つを選択して、印字画素にインク液滴を吐出するノズルユニット210の圧電素子218(図3参照)に印加するように記録ヘッド駆動部60をする。また、記録ヘッド制御部102は、印字画素が強調印字画素の場合には、記憶部40に記憶されている強調印字用の駆動信号を、印字画素にインク液滴を吐出するノズルユニット210の圧電素子218に印加するように記録ヘッド駆動部60を制御する。
なお、上述したように、本実施形態では、二値(白画像及び黒画像)のベタ画像Aを印字する例について説明する。そのため、記録ヘッド制御部102は、ベタ画像Aの印字画素が通常印字画素の場合には、記憶部40に記憶されている通常印字用の駆動信号のうち、192階調の画素を印字するための駆動信号を選択する。また、記録ヘッド制御部102は、ベタ画像Aの印字画素が強調印字画素の場合には、記憶部40に記憶されている強調印字用の駆動信号として、255階調の画素を印字するための駆動信号を選択する。
次に、制御部100において、ベタ画像の輪郭部を抽出する処理について説明する。図9は、制御部100がベタ画像の輪郭部を抽出する場合の処理手順を示すフローチャートである。図10(A)〜(E)は、ベタ画像Aの輪郭部を抽出する処理の主な段階を示す模式図である。なお、以下に示す処理は、主に制御部100の画素抽出部101(図4参照)により実行される。
なお、図9を参照した説明では、図4に示す構成を除いて、例えば「輪郭追跡開始画素」のように符号を付さずに記載し、図10を参照した説明では、「輪郭追跡開始画素Dx1」のように符号を付して記載する。
図9に示すステップST101において、制御部100は、記憶部40から対象となる画像データを取得し、輪郭追跡開始画素を決定する。画像データには、図10の各分図に示すベタ画像Aが含まれる。輪郭追跡開始画素とは、ベタ画像Aの輪郭部を抽出する際に基点となる画素である。後述するように、輪郭追跡開始画素となる画素は、処理の進行と共に順次入れ替わる。
ステップST101の処理において、制御部100は、図10(A)に示すように、画像データの各画素を1ライン毎に順に検索して、ベタ画像Aの輪郭追跡開始画素となる画素を決定する。制御部100は、画像データの各画素を1ライン毎に順に検索した際に、最初に出現した有効画素を輪郭追跡開始画素とする。有効画素とは、印字画素(ゼロ階調で表現される画素を除いた画素)である。制御部100は、各画素の階調に関する情報を参照することにより、その画素が有効画素であるか否かを判定することができる。
制御部100は、図10(A)に示すように、画像領域Fの各ラインLにおいて、矢印方向に左端から右端に向けて1画素毎に輪郭追跡開始画素となる画素を検索する。制御部100は、画像領域Fにおいて、最上位にあるラインLsから最下位のラインLeに向けて1ライン毎に輪郭追跡開始画素となる画素を検索する。すなわち、制御部100は、画像領域Fの左上から右下に向けて輪郭追跡開始画素を検索する。図10(A)において、黒地の丸は、最初に輪郭追跡開始画素として決定された画素(輪郭追跡開始画素Dx1)を表している。
制御部100は、後述するステップST102において、輪郭追跡開始画素に隣接する8箇所に有効画素が検出されない場合には、輪郭追跡開始画素として決定した次の画素を輪郭追跡開始画素とする。例えば、図10(A)では、輪郭追跡開始画素Dx1の右隣に位置する画素が次の輪郭追跡開始画素(Dx2)となる。
図9に示すステップST102において、制御部100は、輪郭追跡開始画素に隣接する8箇所の画素の中から有効画素を検出する。制御部100は、各画素の階調に関する情報を参照することにより、有効画素を検出することができる。具体的に、制御部100は、図10(B)に示すように、輪郭追跡開始画素Dx1の左下から反時計回りに各画素を検索することにより、有効画素を検出する。図10(B)に示す例では、輪郭追跡開始画素Dx1の周囲に4つの有効画素が検出されている。
図9に示すステップST103において、制御部100は、輪郭追跡開始画素Dx1に隣接する8箇所から有効画素が検出された否かを判定する。このステップST103において、制御部100により、有効画素が検出された(YES)と判定された場合に、処理はステップST104へ移行する。また、ステップST103において、制御部100により、有効画素が検出されない(NO)と判定された場合に、処理はステップST101へ戻る。
なお、処理がステップST101へ戻った場合に、制御部100は、次の輪郭追跡開始画素を決定する。その後、制御部100は、決定した輪郭追跡開始画素において有効画素が検出されるまで、ステップST101〜ステップST103の処理を繰り返し実行する。この間、輪郭追跡開始画素となる画素は、処理の進行に伴い順次入れ替わる。
ステップST104(ステップST103:YES判定)において、制御部100は、ステップST102で輪郭追跡開始画素の左下から反時計回りに各画素を検索した際に、白画素から有効画素に初めて変化した箇所がある場合には、その箇所に位置する有効画素を次の輪郭追跡開始画素とする。図10(B)に示す4つの有効画素において、白画素から有効画素に初めて変化した箇所は、輪郭追跡開始画素Dx1の左下となる。そのため、制御部100は、図10(C)に示すように、輪郭追跡開始画素Dx1の左下に位置する画素を次の輪郭追跡開始画素Dx2とする。
図9に示すステップST105において、制御部100は、新たな輪郭追跡開始画素が最初の輪郭追跡開始画素と一致するか否かを判定する。このステップST105において、制御部100により、新たな輪郭追跡開始画素が最初の輪郭追跡開始画素と一致する(YES)と判定された場合に、処理はステップST106へ移行する。また、ステップST105において、制御部100により、新たな輪郭追跡開始画素が最初の輪郭追跡開始画素と一致しない(NO)と判定された場合に、処理はステップST102へ戻る。
処理がステップST102へ戻った場合に、制御部100は、新たな輪郭追跡開始画素に隣接する8箇所の画素の中から有効画素を検出する。これにより、図10(D)に示すように、輪郭追跡開始画素Dx2の真下に位置する画素が次の輪郭追跡開始画素Dx3となる。また、処理がステップST102へ戻り、ステップST103において、制御部100により、有効画素が検出されない(NO)と判定された場合には、処理はステップST101へ戻る。そして、制御部100は、図10(E)に示すように、新たな輪郭追跡開始画素Dxnが、最初の輪郭追跡開始画素Dx1と一致するまで、ステップST101〜ステップST105の処理を繰り返し実行する。
図9に示すステップST106(ステップST105:YES)において、制御部100は、検出したすべての輪郭追跡開始画素の座標情報を、画像データと関連付けて記憶部40の予め設定された記憶エリアに記憶する。
ステップST107において、制御部100は、画像データのすべての画素を参照した否かを判定する。このステップST107において、制御部100により、画像データのすべての画素を参照した(YES)と判定された場合に、本フローチャートの処理は終了する。また、ステップST107において、制御部100により、画像データのすべての画素を参照していない(NO)と判定された場合に、処理はステップST101へ戻る。
上述した図9に示すフローチャートの処理を実行することにより、制御部100は、ベタ画像Aの輪郭部に位置する第1輪郭画素を抽出することができる。図10(E)において、黒地の丸で示す画素がベタ画像Aの輪郭部に位置する第1輪郭画素となる。
また、制御部100(画素抽出部101)は、ベタ画像Aの輪郭部から1画素分だけ内側に位置する第2輪郭画素、及びベタ画像Aの輪郭部から2画素分だけ内側に位置する第3輪郭画素を抽出することができる。
例えば、ベタ画像Aの輪郭部から1画素分だけ内側に位置する第2輪郭画素を抽出する場合には、上述したベタ画像Aの輪郭部に位置する第1輪郭画素を抽出したときの画像データからすべての第1輪郭画素を消去して、新たに第2画像データを作成する。そして、この第2画像データについて、上述した図9に示すフローチャートの処理を実行することにより、元のベタ画像Aの輪郭部から1画素分だけ内側に位置する第2輪郭画素を抽出することができる。
また、ベタ画像Aの輪郭部から更に2画素分だけ内側に位置する第3輪郭画素を抽出する場合には、上述した第2画像データからすべての第1輪郭画素を消去して、新たに第3画像データを作成する。そして、この第3画像データについて、上述した図9に示すフローチャートの処理を実行することにより、元のベタ画像Aの輪郭部から更に2画素分だけ内側に位置する第3輪郭画素を抽出することができる。
上述したように、ベタ画像Aの輪郭部に位置する輪郭画素を抽出した後、画像データからその輪郭画素を消去して、その画像データについて更に輪郭画素を抽出するという処理を必要な回数だけ繰り返し実行することにより、ベタ画像Aの輪郭部からn(nは3以上の整数)画素分だけ内側に位置する第n輪郭画素を抽出することができる。
次に、制御部100において、画像データに基づいて強調印字画素を決定する処理について説明する。図11は、制御部100が画像データに基づいて強調印字画素を決定する場合の処理手順を示すフローチャートである。なお、以下に示す処理は、主に制御部100の画素抽出部101(図4参照)により実行される。また、説明を簡単にするため、画像データがグラフィック(グラフ等)であれば第1輪郭画素D1を選択し、画像データがフォント(大中小を含む)であれば第2輪郭画素D2を選択し、更に画像データがイメージ(写真)であれば第3輪郭画素D3を選択する例について説明する。
図11に示すステップST201において、制御部100は、記憶部40から画像データを取得し、その画像データを解析することにより、画像データの種類を特定する。
ステップST202において、制御部100は、画像データがグラフィックか否かを判定する。このステップST202において、制御部100により、画像データがグラフィックである(YES)と判定された場合に、処理はステップST203へ移行する。また、ステップST203において、制御部100により、画像データがグラフィックでない(NO)と判定された場合に、処理はステップST206へ移行する。
ステップST203(ステップST202:YES判定)において、制御部100は、強調印字画素として、画像データに含まれるベタ画像の輪郭部に位置する第1輪郭画素D1を抽出する。このステップST203では、図9に示すフローチャートの処理が実行される。
ステップST204において、制御部100は、画像データに含まれるベタ画像から、強調印字画素を除く印字画素を通常印字画素として抽出する。
ステップST205において、制御部100は、画素毎に強調印字画素又は通常印字画素を識別する情報を付加して、記憶部40に記憶する。このステップST205の後、本フローチャートの処理は終了する。
一方、ステップST206(ステップST202:NO判定)において、制御部100は、画像データが文字か否かを判定する。このステップST206において、制御部100により、画像データが文字である(YES)と判定された場合に、処理はステップST207へ移行する。また、ステップST206において、制御部100により、画像データが文字でない(NO)と判定された場合に、処理はステップST208へ移行する。
ステップST207(ステップST206:YES判定)において、制御部100は、画像データに含まれるベタ画像の輪郭部から1画素分だけ内側に位置する第2輪郭画素D2を抽出する。このステップST207では、上述したように、図9に示すフローチャートの処理を2回繰り返すことにより、ベタ画像の輪郭部から1画素分だけ内側に位置する第2輪郭画素D2を抽出することができる。ステップST207の後、処理はステップST204へ移行する。
また、ステップST208(ステップST206:NO判定)において、制御部100は、画像データがイメージか否かを判定する。このステップST208において、制御部100により、画像データがイメージである(YES)と判定された場合に、処理はステップST209へ移行する。また、ステップST208において、制御部100により、画像データがイメージでない(NO)と判定された場合に、本フローチャートの処理は終了する。
ステップST209(ステップST208:YES判定)において、制御部100は、画像データに含まれるベタ画像の輪郭部から2画素分だけ内側に位置する第3輪郭画素D3を抽出する。このステップST209では、上述したように、図9に示すフローチャートの処理を3回繰り返すことにより、ベタ画像の輪郭部から2画素分だけ内側に位置する第2輪郭画素D2を抽出することができる。ステップST209の後、処理はステップST204へ移行する。
なお、ステップST208でNO判定となった場合には、強調印字画素を抽出する処理を実行せずに、すべての画素を通常印字画素として印字する。
また、ステップST208でNO判定となった場合に、画像データに含まれるベタ画像の輪郭部から1画素分だけ内側に位置する第2輪郭画素D2を抽出するようにしてもよい。図8に示すように、第2輪郭画素D2を強調印字画素とした場合には、画像データがグラフィック、文字又はイメージのいずれであっても良好な効果が得られるからである。
次に、制御部100において、画像データを印字する場合の動作について説明する。図12は、制御部100が画像データを印字する場合の処理手順を示すフローチャートである。上述したように、本実施形態では、二値(白画素及び黒画素)のベタ画像を印字する例について説明する。ベタ画像は、N−1番目の階調(192階調)を表現する画素及びN番目の階調(255階調)を表現する画素により印字される。また、以下に示す処理は、主に制御部100の記録ヘッド制御部102(図4参照)により実行される。
図12に示すステップST301において、制御部100は、記憶部40に記憶されている画像データを取得する。そして、制御部100は、画像データに含まれる印字画素を1ライン毎に順に抽出する。ここで、ゼロ階調となる画素(非印字画素)は、印字画素として抽出されない。
ステップST302において、制御部100は、抽出した印字画素が通常印字画素か否かを判定する。このステップST302において、制御部100により、印字画素が通常印字画素である(YES)と判定された場合に、処理はステップST303へ移行する。また、ステップST302において、制御部100により、印字画素が通常印字画素でない(NO)と判定された場合に、処理はステップST306へ移行する。
ステップST303(ステップST302:YES判定)において、制御部100は、192階調の画素を印字するための駆動信号を選択する。
ステップST304において、制御部100は、抽出した印字画素にインク液滴を吐出するノズル217に設けられた圧電素子218に、192階調(N−1番目の階調)の画素を印字するための駆動信号を供給するように記録ヘッド駆動部60を制御する。これにより、通常印字画素において、N−1番目の階調を表現する画素が印字される。
ステップ305において、制御部100は、画像データから抽出したすべての印字画素について処理を終了したか否かを判定する。このステップST305において、制御部100により、すべての印字画素について処理を終了した(YES)と判定された場合に、本フローチャートの処理は終了する。また、ステップST305において、制御部100により、すべての印字画素について処理を終了していない(NO)と判定された場合に、処理はステップST301へ戻る。
一方、ステップST306(ステップST302:NO判定)において、制御部100は、抽出した印字画素が強調印字画素か否かを判定する。このステップST306において、制御部100により、印字画素が強調印字画素である(YES)と判定された場合に、処理はステップST307へ移行する。
また、ステップST306において、制御部100により、抽出した印字画素が強調印字画素でない(NO)と判定された場合に、処理はステップST305へ移行する。この場合、制御部100は、抽出した印字画素を非印字画素として扱う。
なお、ステップST306においてNO判定の場合に、抽出した印字画素を通常印字画素として扱ってもよい。その場合に、処理はステップST306からステップST303へ移行する。
ステップST307(ステップST306:YES判定)において、制御部100は、抽出した印字画素にインク液滴を吐出するノズル217に設けられた圧電素子218に、255階調(N番目の階調)の画素を印字するための駆動信号を供給するように記録ヘッド駆動部60を制御する。これにより、強調印字画素において、N番目の階調を表現する画素が印字される。なお、ステップST307の後、処理はステップST304へ移行する。
次に、本実施形態のインクジェット装置1によりベタ画像を印字した場合の具体例について説明する。図13は、ベタ画像の輪郭部に位置する第1輪郭画素D1を強調印字画素とした例を示す模式図である。図14は、ベタ画像の輪郭部から1画素分だけ内側に位置する第2輪郭画素D2を強調印字画素とした例を示す模式図である。図15は、ベタ画像の輪郭部から2画素分だけ内側に位置する第3輪郭画素D3を強調印字画素とした例を示す模式図である。各図において、DN−1は、N−1番目の階調で表現された通常印字画素を示す。また、DNは、N番目の階調で表現された強調印字画素を示す。
図13に示すように、ベタ画像Aの輪郭部に位置する第1輪郭画素D1を強調印字画素DNとして印字した場合に、第1輪郭画素D1の面積は、内側に位置する通常印字画素DN−1よりも大きくなる。このため、特に中程度のフォントの文字及びグラフィック(グラフ等)においてコントラストを向上させることができる。
また、図14に示すように、ベタ画像Aの輪郭部から1画素分だけ内側に位置する第2輪郭画素D2を強調印字画素DNとして印字した場合に、第2輪郭画素D2の面積は、ベタ画像Aの輪郭部に位置する通常印字画素DN−1及び内側に位置する通常印字画素DN−1(図14では符号を省略する)よりも大きくなる。このため、特に小さいフォントの文字においてコントラストを向上させることができる。
また、図15に示すように、ベタ画像Aの輪郭部から2画素分だけ内側に位置する第3輪郭画素D3を強調印字画素DNとして印字した場合に、第3輪郭画素D3の面積は、外側に位置する通常印字画素DN−1よりも大きくなる(図15の例では、第3輪郭画素D3が最も内側の画素となる)。このため、主に小さいフォントの文字においてコントラストを向上させることができる。
上述した実施形態に係るインクジェット装置1によれば、例えば、以下のような効果が奏される。
本実施形態に係るインクジェット装置1において、制御部100は、ベタ画像の輪郭部を含む輪郭域に位置する画素を強調印字画素として抽出し、強調印字画素を除く印字画素を通常印字画素として抽出する。そして、制御部100は、印字画素が通常印字画素であれば、192階調(N−1番目の階調)の画素を印字する駆動信号でインク液滴を吐出するように記録ヘッド駆動部60を制御し、印字画素が強調印字画素であれば、255階調(N番目の階調)の画素を印字する駆動信号でインク液滴を吐出するように記録ヘッド駆動部60を制御する。
これによれば、ベタ画像の輪郭部を含む輪郭域に位置する強調印字画素のみに多くのインクが吐出されるので、インク量の増加を最小限に抑制しつつ、コントラストの高い画像を得ることができる。また、ベタ画像の輪郭部を含む輪郭域に位置する画素は、輪郭追跡開始画素を順に特定する計算手法(図9参照)により容易に抽出することができる。
従って、本実施形態に係るインクジェット装置1では、インク量の増加を極力少なくし且つ複雑な制御を行うことなしに、コントラストの高い画像を印字することができる。
また、制御部100は、画像の形状的な特徴に基づいて、ベタ画像の輪郭部に位置する第1輪郭画素D1、輪郭部から1画素分だけ内側に位置する第2輪郭画素D2、及び輪郭部から2画素分だけ内側に位置する第3輪郭画素D3のうちのいずれか1つを強調印字画素として抽出する。
これによれば、画像の種類に応じて、コントラストの向上に最適な強調印字画素を抽出することができるため、画像の種類に係わらず、常にコントラストの高い画像を印字することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されることなく、種々の形態で実施することができる。
本実施形態では、画像の形状的な特徴に基づいて、ベタ画像の輪郭部に位置する第1輪郭画素D1、輪郭部から1画素分だけ内側に位置する第2輪郭画素D2、及び輪郭部から2画素分だけ内側に位置する第3輪郭画素D3のうちのいずれか1つ以上を強調印字画素として抽出する例について説明した。しかし、強調印字画素は、画像の形状的な特徴に基づいて抽出しなくてもよい。すなわち、第1輪郭画素D1、第2輪郭画素D2及び第3輪郭画素D3のうちのいずれか1つを強調印字画素として抽出するように設定してもよい。
また、本実施形態では、画像の形状的な特徴に基づいて、第1輪郭画素D1、第2輪郭画素D2及び第3輪郭画素D3のうちのいずれか1つを強調印字画素として抽出する例について説明した。これに限らず、第1輪郭画素D1、第2輪郭画素D2及び第3輪郭画素D3のうちのいずれか1つ以上を強調印字画素として抽出してもよい。例えば、図8に示す「小さいフォントの文字」において、第1輪郭画素D1及び第2輪郭画素D2を強調印字画素として抽出してもよい。小さいフォントの文字では、輪郭部の画素よりも内側の画素を強調する方がコントラストの向上に効果があるからである。
また、本実施形態では、255階調(N番目の階調)を表現する画素を強調印字画素とし、192階調(N−1番目の階調)を表現する画素を通常印字画素とする例について説明した。しかし、通常印字画素は、N−1番目以下の階調を表現する画素であればよい。このため、例えば、128階調(N−2番目の階調)を表現する画素を通常印字画素としてもよい。
また、本実施形態では、255階調(N番目の階調)を表現する画素を強調印字画素とした例について説明した。これに限らず、例えば、192階調(N−1番目の階調)を表現する画素を強調印字画素としてもよい。
図16は、ベタ画像の輪郭部に位置する第1輪郭画素D1を192階調(N−1番目の階調)の強調印字画素とした例を示す模式図である。図16において、DN−1は、192階調(N−1番目の階調)で表現された強調印字画素を示す。また、DN−2は、128階調(N−2番目の階調)で表現された通常印字画素を示す。図16は、ベタ画像Aの輪郭部に位置する第1輪郭画素D1を192階調(N−1番目の階調)の強調印字画素DN−1として印字し、その内側に位置する第2輪郭画素D2及び第3輪郭画素D3を128階調(N−2番目の階調)で表現された通常印字画素DN−2として印字した例を示している。
このように、255階調(N番目の階調)を表現する画素を強調印字画素とする場合に限らず、192階調(N−1番目の階調)を表現する画素を強調印字画素としてもよいし、128階調(N−2番目の階調)を表現する画素を強調印字画素としてもよい。
本実施形態では、ブラック用の記録ヘッド22Kにより二値(白画素及び黒画素)のベタ画像Aを印字する例について説明した。これに限らず、イエロー用の記録ヘッド22Y、マゼンタ用の記録ヘッド22M、又はシアン用の記録ヘッド22Cにより二値のベタ画像を印字するようにしてもよい。
本実施形態では、4色の記録ヘッド22Y、22M、22C及び22Kにおいて、それぞれ1個の記録ヘッドが配置された例について説明した。これに限らず、4色の記録ヘッド22Y、22M、22C及び22Kにおいて、それぞれ3個の記録ヘッドが、例えば、用紙幅方向Yに沿って千鳥状に配置されていてもよい。
本実施形態では、4色の記録ヘッド22Y、22M、22C及び22Kを備えたインクジェット装置1について説明した。これに限らず、1つの記録ヘッドを備えたモノクロ(白黒)用のインクジェット装置に適用してもよい。
本発明に係るインクジェット装置は、プリンターに限らず、コピーやファクシミリに適用することもできる。また、コピー機能、ファクシミリ機能、プリンター機能及びスキャナー機能を備えた複合機に適用することもできる。