以下、図面を参照して、本発明に係るインクジェット装置の実施形態について説明する。まず、インクジェット装置1の構成について説明する。図1は、本実施形態に係るインクジェット装置1の全体構成を示す説明図である。図2は、記録部20及び用紙搬送部30の平面図である。図3は、ノズルユニット210の概略断面図である。図4は、インクジェット装置1の電気的な構成を示すブロック図である。
図1に示すように、本実施形態のインクジェット装置1は、本体2の内部に、主要部として、記録部20と、用紙搬送部30と、を備える。また、インクジェット装置1は、給紙カセット3と、給紙ローラー4と、用紙搬送路5と、レジストローラー対6と、乾燥装置7と、排紙ローラー対8と、排紙口9と、排紙トレイ10と、を備える。
用紙搬送部30は、搬送ベルト31と、駆動ローラー32と、従動ローラー33と、テンションローラー34と、を備える。
搬送ベルト31は、用紙Tを記録ヘッド22(後述)に沿って水平に搬送するベルトである。搬送ベルト31としては、両端部を接合して無端状としたベルトや、継ぎ目のないシームレスのベルト等が用いられる。搬送ベルト31は、駆動ローラー32、従動ローラー33及びテンションローラー34に掛け渡されている。
駆動ローラー32は、搬送ベルト31を回転させるローラーである。駆動ローラー32は、搬送ベルト31の搬送方向において下流側に設けられている。駆動ローラー32は、駆動用モーター(不図示)から付与された駆動力により回転する。従動ローラー33は、搬送ベルト31と連動して回転するローラーである。従動ローラー33は、搬送ベルト31の搬送方向において上流側に設けられている。テンションローラー34は、従動ローラー33と駆動ローラー32との間で搬送ベルト31が弛まないように張力を与えるローラーである。
搬送ベルト31を間に挟んで、記録ヘッド22と反対側には、吸着ユニット(不図示)が設けられている。吸着ユニットは、搬送ベルト31に形成された通気孔(不図示)に吸引力(下向きの気流)を発生させ、搬送ベルト31の表面において用紙Tを吸着する装置である。搬送ベルト31に送り出された用紙Tは、吸着ユニットで発生する吸引力により、搬送ベルト31の載置搬送面31A(図2参照)に吸着された状態で記録ヘッド22の下を搬送される。このように、搬送ベルト31の載置搬送面31Aに吸着された状態で搬送される用紙Tに向けて、記録ヘッド22からインク液滴を吐出することにより、用紙Tに画像が形成される。
給紙カセット3は、記録媒体としての用紙Tを積載した状態で収容する。給紙カセット3は、本体2の内部において、下方に配置されている。給紙ローラー4は、給紙カセット3の上方に配置されている。給紙ローラー4は、給紙カセット3に積載された用紙Tを1枚ずつ取り出し、搬送路5へ送り出す。給紙ローラー4は、駆動用モーター(不図示)から付与された駆動力により回転する。
用紙搬送路5、レジストローラー対6、記録部20及び用紙搬送部30は、給紙カセット3よりも、用紙Tの搬送方向Pの下流側に配置されている。給紙カセット3から送り出された用紙Tは、用紙搬送路5を通過してレジストローラー対6に到達する。レジストローラー対6は、用紙Tの斜め送りを矯正し、用紙Tを搬送方向Pへ送り出す。
乾燥装置7は、用紙Tに形成された画像のインクを乾燥させる装置である。乾燥装置7は、用紙搬送部30よりも、用紙Tの搬送方向Pの下流側に配置されている。
排紙ローラー対8、排紙口9及び排紙トレイ10は、乾燥装置7よりも、用紙Tの搬送方向Pの下流側に配置されている。乾燥装置7によりインクの乾燥が終了した用紙Tは、排紙ローラー対8により搬送方向Pの下流側に送られる。更に、用紙Tは、排紙口9から排紙トレイ10に送られ、本体2の外部に排出される。
記録部20は、イエロー用の記録ヘッド22Y、マゼンタ用の記録ヘッド22M、シアン用の記録ヘッド22C及びブラック用の記録ヘッド22Kを備える。記録部20は、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックのインク液滴を、記録ヘッド22Y、22M、22C及び22Kから用紙Tに向けて吐出する。記録ヘッド22Y、22M、22C及び22Kは、図2に示すように、用紙Tの搬送方向P(水平方向X)と直交する方向(用紙幅方向Y)に沿って延出している。記録ヘッド22Y、22M、22C及び22Kは、図2に示すように、ヘッドフレーム21を介して、本体2に固定されている。
また、記録ヘッド22Y、22M、22C及び22Kには、図2に示すように、用紙Tの搬送方向P(水平方向X)と直交する方向(用紙幅方向Y)に沿って複数のノズルユニット210がライン状に配置されている。図2では、記録ヘッド22Yを代表してノズルユニット210を図示する。なお、図2では、ノズルユニット210の配置を模式的に示している。
記録ヘッド22Y、22M、22C及び22Kに配置された各ノズルユニット210は、用紙Tに向けてインク液滴を吐出する。記録ヘッド22Y、22M、22C及び22Kは、1行分のインク液滴を一括して吐出する。なお、ノズルユニット210から吐出されるインク液滴の色は、ノズルユニット210が配置された記録ヘッド22Y、22M、22C及び22Kに対応する。例えば、記録ヘッド22Yに配置された各ノズルユニット210からは、イエローのインク液滴が吐出される。
なお、以下の説明において、4色の記録ヘッド22Y、22M、22C及び22Kの識別記号である「Y」、「M」、「C」及び「K」を省略して、適宜に「記録ヘッド22」と記載する。
次に、ノズルユニット210の構造について説明する。ここでは、1画素分のインク液滴を吐出するノズルユニット210の構造について説明する。
図3に示すように、ノズルユニット210は、加圧室216と、ノズル217と、圧電素子218と、個別電極219と、を備える。
加圧室216は、ノズル217(後述)に連通して設けられる。加圧室216は、内部にインク215が充填される。加圧室216は、供給口220を介して共通流路214と連通している。共通流路214には、1つの記録ヘッド22に配置されたすべてのノズルユニット210と連通する。
また、共通流路214には、インクタンク23Y、23M、23C及び23K(後述)から延出された供給チューブが接続される。1つの記録ヘッド22において、対応する色のインクタンク23Y、23M、23C及び23Kからそれぞれ送り出されたインクは、共通流路214を介して各ノズルユニット210の加圧室216に供給される。
加圧室216の上壁には、振動板221が設けられている。振動板221は、複数の加圧室216(不図示)に渡って形成されている。振動板221の上には、共通電極222が積層されている。共通電極222は、複数の加圧室216に渡って形成されている。共通電極222の上には、圧電素子218が積層されている。圧電素子218は、加圧室216毎に個別に設けられている。圧電素子218としては、例えば、ピエゾ素子を用いることができる。更に、圧電素子218の上には、共通電極222と共に圧電素子218を挟むように個別電極219が積層されている。個別電極219は、加圧室216毎に個別に設けられている。
ノズル217は、用紙Tに向けてインク液滴を吐出する円錐状の流路である。ノズル217の先端には、インク液滴の吐出口213が設けられている。吐出口213は、ノズル面211に形成された円形の開口である。ノズル面211において、吐出口213を除く領域には、インクの付着を防止する撥水膜212が形成されている。
ノズルユニット210の各圧電素子218は、記録ヘッド駆動部60(後述)とフレキシブルケーブル(不図示)により電気的に接続されている。各圧電素子218には、記録ヘッド駆動部60から駆動信号が個別に供給される。圧電素子218に駆動信号が供給されると、圧電素子218が変形(振動)し、その変形が振動板221へ伝えられる。振動板221が変形すると、加圧室216が圧縮される。そして、加圧室216の圧縮により、加圧室216の内部に充填されたインク215が加圧される。その結果、インク215は、ノズル217から吐出口213に押し出され、インク液滴となって用紙T(不図示)の上に吐出される。
また、図1に示すように、用紙搬送部30の下方には、記録ヘッド22Y、22M、22C及び22Kのそれぞれに対応して、4台のインクタンク23Y、23M、23C及び23Kが配置されている。4色のインクは、それぞれ4台のインクタンク23Y、23M、23C及び23Kから供給チューブ(不図示)を介して、対応する記録ヘッド22Y、22M、22C及び22Kに供給される。
上述した記録ヘッド22は、記録ヘッド駆動部60(後述)から供給される駆動信号に基づいて、4色のインクを順次吐出する。記録ヘッド22からインクを吐出するタイミングと、搬送ベルト31が用紙Tを搬送するタイミングとを同期させることにより、用紙Tには、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの4色のインクが重ね合わせられる。これにより、用紙Tにカラー画像が印刷される。
次に、インクジェット装置1の電気的な構成について説明する。図4に示すように、インクジェット装置1は、記録部20、用紙搬送部30、記憶部40、画像処理部50、記録ヘッド駆動部60、入力操作部70、ネットワークI/F部80と、制御部100と、を備える。
記憶部40は、インクジェット装置1の機能を実現するためのプログラムやデータを記憶する。また、記憶部40は、駆動信号記憶手段として、画素の階調に応じた複数の駆動信号(後述)を記憶する。
記憶部40は、64階調の画素を形成する駆動信号、128階調の画素を形成する駆動信号、192階調の画素を形成する駆動信号及び255階調(黒画素)の画素を形成する駆動信号を記憶する。このうち、64階調〜192階調の画素を形成する駆動信号は、中間トーンの画素を形成する駆動波形である。255階調の画素を形成する駆動信号は、黒画素を形成する駆動波形である。
上述した64階調〜255階調の画素は、すべて印字画素である。これに対し、ゼロ階調(白画素)となる画素は、非印字画素である。非印字画素にはインクを吐出しないため、記録ヘッド22に駆動信号は供給されない。なお、後述するように、255階調の印字画素は、対象画素とも呼ばれる。
記録部20では、用紙Tに1画素を形成する際に、記録ヘッド22の各ノズルユニット210(圧電素子218)に供給する駆動信号を切り換えることにより、ノズル217から吐出されるインク液滴の量及び吐出速度を変化させることができる。本実施形態では、1画素において、5段階(0階調、64階調、128階調、192階調、255階調)の階調表現が可能となる。
上述した64階調〜255階調の駆動信号は、それぞれ電圧値が異なる。本実施形態では、64階調〜192階調の印字画素については、駆動信号制御部103(後述)において、それぞれに対応して設定された1つの駆動信号が選択される。また、255階調(黒画素)の印字画素(対象画素)については、駆動信号制御部103において、周辺画素(後述)の階調に基づいて、2つの駆動信号のうちの1つが選択される。2つの駆動信号の1つは、ノズル217から主滴のみを吐出させる第1駆動信号である。もう1つは、ノズル217から主滴を吐出させると共に、当該主滴に付随するサテライト滴の発生を許容する第2駆動信号である。
ここで、255階調の印字画素において選択される第1駆動信号及び第2駆動信号について説明する。図5(A)は、第1駆動信号の波形図である。図5(B)は、第2駆動信号の波形図である。図5(A)及び(B)において、横軸は時間(μs)、縦軸は電圧(V)を示している。
図5(A)に示す第1駆動信号は、電圧値V1を有する。この電圧値V1は、ノズル217から主滴を吐出させた際に、サテライト滴を発生させることのない電圧値である。このため、電圧値V1により圧電素子218(図3参照)を駆動した場合には、ノズル217から主滴のみを吐出させることができる。第1駆動信号は、主に、黒画素と白画素との境目となる領域(例えば、最終行となる領域)の印字画素を形成する場合に選択される。第1駆動信号により圧電素子218を駆動した場合に、ノズル217から吐出されるインクの吐出速度は、後述する第2駆動信号で駆動した場合よりも遅くなる。従って、電圧値V1により圧電素子218を駆動した場合には、ノズル217から主滴のみが吐出され、当該主滴に付随するサテライト滴の発生は抑制される。
一方、図5(B)に示す第2駆動信号は、電圧値V2を有する。第2駆動信号の電圧値V2は、第1駆動信号の電圧値V1よりも大きな電圧値である。圧電素子218に供給する電圧値を大きくするに従い、ノズル217から吐出するインクの吐出速度は速くなる。そのため、電圧値V2により圧電素子218を駆動した場合には、ノズル217から主滴が吐出されると共に、当該主滴に付随するサテライト滴が発生しやすくなる。第2駆動信号は、主に、黒画素が密集しているベタ部(後述)の印字画素を形成する場合に選択される。なお、上述した第1駆動信号により形成された画像及び第2駆動信号により形成された画像については後述する。
再び、図4の構成について説明する。
画像処理部50は、パーソナルコンピューター等の外部装置(不図示)から受信した画像データに対して各種の画像処理を実施する。画像処理部50は、画像処理を行う専用回路としてのASIC51と、画像データを一時的に記憶する画像メモリー52と、を備える。
ASIC51は、RGB形式で表現された画像データを、YMCKで表現された画像データに変換する。また、ASIC51は、YMCKで表現された画像データに基づいて、画素毎にインク液滴量データを演算する。また、ASIC51は、インク液滴量データを量子化することにより、0〜255階調の画素を5段階(0階調、64階調、128階調、192階調、255階調)の画素に変換する。更に、ASIC51は、記録ヘッド22の1ライン毎に画素を形成する順序を決定し、各画素をその順序で並び替える。ここでは、画像データの各画素が1ライン毎に並び替えられる。ASIC51により画像処理された画像データは、画像メモリー52に記憶される。画像メモリー52に記憶される画像データには、画素毎の階調に関する情報も含まれる。
記録ヘッド駆動部60は、駆動信号制御部103(後述)の制御により、記録ヘッド22の各ノズルユニット210(圧電素子218)に、64階調〜255階調の印字画素を形成する駆動信号を供給する。
入力操作部70は、各種のメッセージを表示する表示パネルや、電源キー、リセットキー等の操作ボタン等(いずれも不図示)を備える。
ネットワークI/F部80は、LANボード等(不図示)の通信モジュールにより構成される。ネットワークI/F部は、接続されたネットワーク(不図示)を介して、外部装置との間で相互にデータの送受信を行う。
制御部100は、CPU、ROM及びRAM等を備えたマイクロプロセッサにより構成される。制御部100は、用紙搬送部30、記憶部40、画像処理部50、記録ヘッド駆動部60、入力操作部70、ネットワークI/F部80と電気的に接続されている。
制御部100は、用紙搬送部30においては、各駆動部(例えば、給紙ローラー4や駆動ローラー32の駆動用モーター)と電気的に接続されている。制御部100は、記憶部40に記憶されているインクジェット装置1の制御プログラムに従って、各駆動部の駆動量や駆動タイミング等を制御する。
また、制御部100は、対象画素抽出手段としての対象画素抽出部101と、周辺階調取得手段としての周辺階調取得部102と、駆動信号制御手段としての駆動信号制御部103と、を備える。
対象画素抽出部101は、ASIC51により画像処理された画像データを記憶部40から読み出し、画素の並び順に従って1画素ずつ画素の階調を取得する。対象画素抽出部101は、画像データから読み出した画素のうち、主滴を吐出する画素、すなわち64階調〜255階調の画素を印字画素として抽出する。
また、対象画素抽出部101は、印字画素の中から、更に対象画素を抽出する。対象画素は、駆動信号として前記第1又は第2駆動信号が設定される印字画素である。本実施形態では、64階調〜255階調の印字画素の中から255階調(黒画素)の印字画素を対象画素として抽出する。最大階調となる255階調の画素は、他の階調に比べてサテライト滴が発生しやすいためである。なお、対象画素は、本実施形態のように255階調に限らず、64階調〜192階調の印字画素の中から適宜に設定することができる。
周辺階調取得部102は、対象画素抽出部101で抽出された対象画素(255階調の画素)に隣接する周辺画素の階調を取得する。本実施形態では、用紙Tの搬送方向P(図2参照)において、対象画素よりも上流側で隣接する画素を周辺画素とし、この周辺画素の階調を取得する。
駆動信号制御部103は、印字画素(対象画素を含む)に主滴を吐出するノズル217に設けられた圧電素子218に選択した駆動信号を供給するように記録ヘッド駆動部60を制御する。
駆動信号制御部103は、64階調〜192階調の印字画素については、それぞれの階調数に対応した駆動信号を選択する。すなわち、64階調の印字画素を形成する駆動信号、128階調の印字画素を形成する駆動信号、192階調の印字画素を形成する駆動信号のうち1つを選択する。そして、駆動信号制御部103は、印字画素に主滴を吐出するノズル217に設けられた圧電素子218に選択した駆動信号を供給するように記録ヘッド駆動部60を制御する。
また、駆動信号制御部103は、対象画素抽出部101で抽出された対象画素については、周辺階調取得部102で取得された周辺画素の階調に応じて駆動信号を選択する。
すなわち、駆動信号制御部103は、対象画素に隣接する周辺画素の階調が128階調未満(64階調以下)であれば、第1駆動信号を選択する。これは、周辺画素の階調が128階調未満(比較的明るい画素)の場合には、主滴の着弾の乱れよりも、サテライト滴を目立ちにくくすることを優先するためである。そして、駆動信号制御部103は、対象画素に主滴を吐出するノズル217に設けられた圧電素子218に第1駆動信号を供給するように記録ヘッド駆動部60を制御する。
また、駆動信号制御部103は、対象画素に隣接する周辺画素の階調が128階調以上であれば、第2駆動信号を選択する。周辺画素の階調が128階調以上(比較的暗い画素)の場合には、サテライト滴の発生よりも、黒筋や白筋を目立ちにくくすることを優先するためである。そして、駆動信号制御部103は、対象画素に主滴を吐出するノズル217に設けられた圧電素子218に第2駆動信号を供給するように記録ヘッド駆動部60を制御する。
次に、制御部100において、印字画素の階調に基づいて駆動信号を選択する場合の動作について説明する。図6は、制御部100が印字画素の階調に基づいて駆動信号を選択する場合の処理手順を示すフローチャートである。
図6に示すステップST101において、制御部100(対象画素抽出部101)は、画像メモリー52に記憶されている画像データを読み出し、1画素ずつ順番に画素の階調を取得する。そして、制御部100(対象画素抽出部101)は、画像データから読み出した画素の中から、印字画素(64階調〜255階調の画素)を抽出する。ここで、ゼロ階調となる画素(非印字画素)は、印字画素として抽出されない。
ステップST102において、制御部100(対象画素抽出部101)は、抽出した印字画素の階調が255階調未満であるか否かを判定する。このステップST102において、制御部100により、印字画素の階調が255階調未満である(YES)と判定された場合に、処理はステップST103へ移行する。また、ステップST102において、制御部100により、印字画素の階調が255階調以上である(NO)と判定された場合に、処理はステップST106へ移行する。このステップST102において、制御部100(対象画素抽出部101)は、階調が255階調の印字画素を対象画素として抽出する。
ステップST103において、制御部100(駆動信号制御部103)は、抽出した印字画素の階調に対応する駆動信号を選択する。すなわち、制御部100は、印字画素の階調に応じて、64階調の印字画素を形成する駆動信号、128階調の印字画素を形成する駆動信号、192階調の印字画素を形成する駆動信号から1つを選択する。
ステップST104において、制御部100(駆動信号制御部103)は、印字画素(対象画素を含む)に主滴を吐出するノズル217に設けられた圧電素子218に選択した駆動信号を供給するように記録ヘッド駆動部60を制御する。
ステップST105において、制御部100は、画像データのすべての画素について処理を終了したか否かを判定する。このステップST105において、制御部100により、すべての画素について処理を終了した(YES)と判定された場合に、本フローチャートの処理は終了する。また、ステップST105において、制御部100により、すべての画素について処理を終了していない(NO)と判定された場合に、処理はステップST101へ戻る。
一方、ステップST106(ステップST102:NO判定)において、制御部100(周辺階調取得部102)は、対象画素に隣接する周辺画素の階調を取得する。
ステップST107において、制御部100(駆動信号制御部103)は、取得した周辺画素の階調が128階調未満か否かを判定する。このステップST107において、制御部100により、取得した周辺画素の階調が128階調未満である(YES)と判定された場合に、処理はステップST108へ移行する。また、ステップST107において、制御部100により、取得した周辺画素の階調が128階調以上である(NO)と判定された場合に、処理はステップST109へ移行する。
ステップST108(ステップST107:YES判定)において、制御部100(駆動信号制御部103)は、対象画素の駆動信号として第1駆動信号を選択する。このように、周辺画素が128階調未満(すなわち64階調以下)の場合には、サテライト滴が目立ちやすい。そのため、制御部100は、サテライト滴の発生を抑制するために第1駆動信号を選択する。
一方、ステップST109(ステップST107:NO判定)において、制御部100(駆動信号制御部103)は、対象画素の駆動信号として第2駆動信号を選択する。このように、周辺画素が128階調以上の場合には、サテライト滴が目立ちにくい。そのため、制御部100は、サテライト滴が発生しても、主滴の着弾の乱れが少なくなるように第2駆動信号を選択する。
ステップST108及びステップST109に続いて、処理はステップST104へ移行する。
次に、本実施形態のインクジェット装置1により画像を形成する場合の具体例について説明する。図7は、第1駆動信号のみで形成された画像の例を示す模式図である。図8は、第2駆動信号のみで形成された画像の例を示す模式図である。図9は、第1及び第2駆動信号により形成された画像の例を示す模式図である。
図7〜図9において、格子の各交点(以下、「格子点」という)は、主滴が着弾すべき画素の位置を示している。また、図7〜図9において、ドットで描かれた主滴Dmは、黒画素(255階調)を表している。
図7に示すように、ノズル217(図3参照)から主滴のみを吐出させる第1駆動信号により画素を形成した場合には、主滴Dmのみが着弾しており、サテライト滴Dsは着弾していない。しかし、記録ヘッド22において、ノズル217から吐出されるインクの吐出方向や吐出量は必ずしも均一ではなく、ノズル217毎にばらつきがある。このため、着弾精度の悪いノズル217が存在する場合には、図7に示すように、主滴Dmが格子点に対して上下左右の様々な方向にずれてしまう。
すなわち、図7に示すように、Laの領域は白筋に、またLbの領域は黒筋のように視認されてしまう。白筋や黒筋は、黒画素が密集している領域A(ベタ部)において目立ちやすい。このように、第1駆動信号を供給して主滴Dmの吐出速度を遅くした場合は、サテライト滴Dsの発生を抑制することができる。しかし、主滴Dmの着弾の乱れは多くなる。このため、第1駆動信号により画素を形成した場合には、主滴Dmの着弾の乱れにより画像が劣化する。
一方、図8に示すように、ノズル217から主滴を吐出させると共に、当該主滴に付随するサテライト滴の発生を許容する第2駆動信号により画素を形成した場合、各格子点に主滴Dmが着弾するが、同時にサテライト滴Dsも発生する。図8に示す例において、サテライト滴Dsは、用紙Tの搬送方向Pにおいて、主滴Dmの着弾する位置よりも上流側に発生する。
なお、図8に示すように、黒画素が密集している領域Bでは、サテライト滴Dsと主滴Dmとが重なる。このため、サテライト滴Dsが単独のドットとして視認されにくくなる。しかし、最終ラインLsにおいては、サテライト滴Dsが主滴Dmと重なっていない。このため、サテライト滴Dsが、単独のドットとして視認される場合もある。このように、第2駆動信号を供給して主滴Dmの吐出速度を速くした場合には、主滴Dmの飛翔が安定する。このため、着弾の乱れを少なくすることができる。しかし、サテライト滴Dsが発生しやすくなる。従って、第2駆動信号により画像を形成した場合には、サテライト滴Dsの発生により画像が劣化する。
一方、本実施形態においては、図9に示すように、黒画素が密集している領域Bでは、主滴Dmの着弾の乱れが少ない第2駆動信号により画素が形成される。黒画素が密集している領域Bは、対象画素に隣接する周辺画素の階調が128階調以上となる領域である。なお、図9では、領域Bにおける周辺画素のすべてが255階調となる例を示す。
上述したように、第2駆動信号により画素を形成した場合には、サテライト滴Dsは発生するが、主滴Dmの着弾の乱れが少なくなる。このため、白筋や黒筋が視認されにくくなる。また、サテライト滴Dsが発生しても、サテライト滴Dsと主滴Dmとが重なる。このため、サテライト滴Dsが単独のドットとして視認されにくくなる。
また、本実施形態では、最終行となる領域Aでは、サテライト滴画が発生しにくい第1駆動信号により画素が形成される。最終行となる領域Aは、対象画素に隣接する周辺画素の階調が128階調未満となる領域である。なお、図9では、領域Aにおける周辺画素のすべてが0階調となる例を示す。
上述したように、第1駆動信号で画素を形成した場合には、サテライト滴Dsが発生しにくくなる。また、第1駆動信号で画素を形成した場合には、主滴Dmの着弾の乱れは多くなるが、最終行は1ラインである。このため、図7に示すような白筋や黒筋は視認されにくくなる。
本実施形態においては、黒画素が密集している領域Bでは第2駆動信号により画素が形成され、最終行となる領域Aでは第1駆動信号により画素が形成されるため、主滴Dmの着弾の乱れやサテライト滴Dsの発生による画像の劣化を低減することができる。
なお、サテライト滴Dsによる画像の劣化は、上述したベタ部に限らず、文字等の細線を表現する領域でも起こり得る。ここで、アルファベットの「A」を印字する例について説明する。図10は、第2駆動信号のみで形成された文字画像の例を示す模式図である。図11は、第1及び第2駆動信号により形成された文字画像の例を示す模式図である。
なお、図を分かり易くするため、図10では、ドットで表された主滴Dmが第2駆動信号により形成した黒画素を示す。また、同じくドットで表されたサテライト滴Dsは、第2駆動信号により発生したサテライト滴を示す。主滴Dmとサテライト滴Dsが重なる部分は濃いドットで表している。図11では、ドットで表された主滴Dmが第1駆動信号により形成した黒画素を示し、白地で表された主滴Dmが第2駆動信号により形成した黒画素を示す。また、ドットで表されたサテライト滴Dsは、第2駆動信号により発生したサテライト滴を示す。
図10に示すように、第2駆動信号により画素を形成した場合には、各格子点に主滴Dmが着弾するが、同時にサテライト滴Dsも発生する。図10に示す例では、画像の中に黒画素を形成しない領域Cにサテライト滴Dsが発生している。このため、領域Cでは、サテライト滴Dsにより細線がつぶれたように視認されてしまう場合がある。
しかし、図11に示すように、第1駆動信号及び第2駆動信号により画素を形成した場合には、領域Cにおけるサテライト滴Dsの発生を抑制することができる。このため、図11に示す文字画像では、領域Cがサテライト滴Dsによりつぶれることがなく、白地の領域として視認される。
上述した実施形態に係るインクジェット装置1によれば、例えば、以下のような効果が奏される。
本実施形態に係るインクジェット装置1において、制御部100は、対象画素に近接する周辺画素の階調が128階調(基準値)未満の場合には第1駆動信号により画素を形成させ、周辺画素の階調が128階調以上の場合には第2駆動信号により画素を形成させる。
これによれば、周辺画素の階調が128階調以上となる対象画素では、ノズル217から主滴Dmを吐出させると共に、サテライト滴Dsの発生を許容する第2駆動信号により画素が形成される。そのため、対象画素では主滴Dmの着弾の乱れが少なくなり、白筋や黒筋が視認されにくくなる。また、周辺画素の階調が128階調未満となる対象画素では、ノズル217から主滴Dmのみを吐出させる第1駆動信号により画素が形成される。そのため、階調の低い周辺画素においてサテライト滴Dsが発生しにくくなる。また、第1及び第2駆動信号は、周辺画素の階調に基づいて容易に選択することができる。
従って、本実施形態に係るインクジェット装置1では、複雑な制御を行うことなしに、主滴Dmの着弾の乱れやサテライト滴Dsの発生による画像の劣化を低減することができる。
また、制御部100は、対象画素に隣接する画素を周辺画素とし、この周辺画素の階調を取得する。これによれば、例えば、黒画素の領域と白画素の領域との境目の領域において、サテライト滴Dsの発生が抑制される。このため、白画素にサテライト滴Dsが発生することによる画質の劣化をより効果的に低減することができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されることなく、種々の形態で実施することができる。
本実施形態では、用紙Tの搬送方向P(図2参照)において、対象画素よりも上流側で隣接する画素を周辺画素とした。しかし、サテライト滴Dsは、図8に示すように、主滴Dmの上流側の領域で発生するとは限らない。サテライト滴Dsは、主滴Dmの下流側の領域や主滴Dmの横方向で発生することもある。これは、ノズルから吐出されたインク液滴が1つにまとまりきれずに分断されてしまう際に、先行して吐出されたインク液滴の量や吐出速度等の影響を受けるためである。そのため、記録ヘッド22において、サテライト滴Dsがどの方向に発生するかを事前に試験印字等で把握することにより、周辺画素とすべき画素の位置を適切に決めることができる。例えば、用紙Tの搬送方向Pにおいて、対象画素よりも下流側でサテライト滴Dsが発生する場合には、対象画素よりも下流側に隣接する画素を周辺画素とすればよい。
本実施形態では、対象画素に隣接する画素を周辺画素とする例について説明した。しかし、周辺画素の位置は、サテライト滴Dsの発生する位置に応じて適宜に設定することができる。例えば、サテライト滴Dsが対象画素から1画素以上離れた位置に発生する場合には、対象画素から1画素離れた位置(対象画素から2画素目)に存在する画素を周辺画素としてもよい。対象画素から何画素離れた画素を周辺画素とするかは、画素データを展開するラインバッファ(不図示)の容量に応じて適宜に選択することができる。
本実施形態では、周辺画素の階調が128階調未満の場合に第1駆動信号を選択する例について説明した。これに限らず、例えば、周辺画素の階調がゼロ階調の場合にのみ第1駆動信号を選択するようにしてもよい。この場合に、周辺画素の階調が64階調以上であれば、すべて第2駆動信号が選択される。
また、本実施形態では、周辺画素の階調が128階調以上の場合に第2駆動信号を選択する例について説明した。これに限らず、例えば、周辺画素の階調が255階調の場合にのみ第2駆動信号を選択するようにしてもよい。この場合に周辺画素の階調が192階調以下であれば、すべて第1駆動信号が選択される。
本実施形態では、対象画素の階調が255階調の場合に、周辺画素の階調に応じて第1又は第2駆動信号を選択する例について説明した。この例に限らず、例えば、対象画素の階調が192階調以上の場合に、周辺画素の階調に応じて第1又は第2駆動信号を選択するようにしてもよい。この場合には、192階調の駆動信号と、255階調の駆動信号とにおいて、それぞれ個別に第1駆動信号と第2駆動信号が設定される。
本実施形態では、ASIC51の画像処理において、0〜255階調の画素を5段階(0階調、64階調、128階調、192階調、255階調)の画素に変換する例について説明した。これに限らず、0〜255階調の画素をn段階(n>5又はn<5)の画素に変換してもよい。
本実施形態では、ゼロ階調(白画素)の画素を形成する場合には、記録ヘッド22に駆動信号を供給しない例について説明した。これに限らず、ゼロ階調の画素を形成する場合において、ノズル217からインクが吐出しない程度にインク液面を振動させるような駆動波形の駆動信号を記録ヘッド22に供給してもよい。これにより、ノズル217におけるインクの目詰まりを抑制することができる。
本実施形態では、4色の記録ヘッド22Y、22M、22C及び22Kにおいて、それぞれ1個の記録ヘッドが配置された例について説明した。これに限らず、4色の記録ヘッド22Y、22M、22C及び22Kにおいて、それぞれ3個の記録ヘッドが、例えば、用紙幅方向Yに沿って千鳥状に配置されていてもよい。
本実施形態では、4色の記録ヘッド22Y、22M、22C及び22Kを備えたインクジェット装置1について説明した。これに限らず、1つの記録ヘッドを備えたモノクロ(白黒)用のインクジェット装置に適用してもよい。この場合には、対象画素に隣接する周辺画素の階調が最小、すなわちゼロ階調(255階調未満)の場合に第1駆動信号を選択する。また、周辺画素の階調が最大、すなわち255階調(255階調以上)の場合に第2駆動信号を選択する。このように、本発明をモノクロ(二値)のインクジェット装置に適用した場合には、255階調が基準値となる。また、本発明は、モノクロにより0〜255階調の画素を形成可能なインクジェット装置に適用することもできる。
本発明をモノクロ用のインクジェット装置に適用した場合において、255階調の黒画素が形成される領域では、白筋や黒筋がより視認されにくくなる。また、ゼロ階調の白画素が形成される領域では、サテライト滴Dsがより目立ちにくくなる。従って、主滴Dmの着弾の乱れやサテライト滴Dsの発生による画像の劣化を低減することができる。
本発明に係るインクジェット装置は、プリンターに限らず、コピーやファクシミリに適用することもできる。また、コピー機能、ファクシミリ機能、プリンター機能及びスキャナ機能を備えた複合機に適用することもできる。