JP5639854B2 - 研磨パッドおよび研磨パッドの製造方法 - Google Patents
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Description
本実施形態の研磨パッド10は、図1に示すように、湿式凝固法により形成された1枚の樹脂シート2を備えている。樹脂シート2は、湿式凝固法による成膜時に形成されたスキン層2aと、スキン層2aより内側(図1の下側)で多数の微細孔4が形成された発泡樹脂部2bと、発泡樹脂部2bに均等に分散するように形成された球状樹脂3(凝集樹脂)と、を有している。
and R. L. Scott著、“The Solubility of Nonelectrolytes”、Reinhold Publishing Corp.出版、1950年発行)により提唱されたもので、SP値δ[単位:(cal・cm3)1/2]が下式(1)で表される。式(1)において、ΔEは分子凝集エネルギー(単位:cal/mol)、Vはモル容積(単位:ml/mol)を示しており、SP値は凝集エネルギー密度の平方根に相当する。2種の樹脂を混合する場合では、SP値が近い樹脂ほど凝集エネルギー密度が小さく、親和性が高くなることとなる。また、Hansenら(J.
Paint Technology、39巻505号、104〜117ページおよび511号、505〜514ページ、1967年発行)やHoy(J. Paint
Technology、42巻541号、76〜118ページ、1970年発行)によって、双極子間力や水素結合力も考慮し、分子引力定数法に基づくと、SP値を下式(2)で算出することができる。式(2)において、ΔFは分子引力定数の総和(単位:(Cal・cm3)1/2mol−1)である(各原子団の分子引力定数については、例えば、Hoy法 材料技術研究会編集委員会編「プラスチックの塗装・印刷便覧」41ページ(総合技術出版発行)、沖津ら 接着研究発表会講演要旨集27巻125〜126ページ(1989年6月発行)、日本接着学会年次大会講演要旨集28巻85〜86ページ(1990年6月発行)、に記載されている。)。また、複数の樹脂を混合した樹脂全体のSP値については、下式(3)により算出することができる。式(3)において、δmixは混合樹脂全体のSP値、Xnは成分nのモル分率、Vnは成分nのモル容積、δnは成分nのSP値である。以上のことから、研磨パッド10では、樹脂シート2を極性溶媒に溶解し、ゲル濾過等で各樹脂成分を分取し、それぞれの分子構造解析を行うことで各樹脂成分のSP値および混合樹脂全体のSP値を算出することができる。
図2に示すように、研磨パッド10は、湿式凝固法により1枚のシート状の樹脂シート2を形成し、樹脂シート2と両面テープ7とを貼り合わせることで製造される。湿式凝固法では、樹脂を準備する準備工程、樹脂を溶解させた樹脂溶液を成膜基材に塗布する塗布工程、成膜基材に塗布した樹脂溶液を一定時間の間隔をあけることで樹脂の凝集を開始させる凝集開始工程、樹脂溶液を凝固液中で凝固させシート状の樹脂を形成するシート形成工程、シート状の樹脂を洗浄し乾燥させる洗浄・乾燥工程を経て樹脂シート2が作製される。以下、工程順に説明する。
準備工程では、ポリウレタン樹脂、ポリサルホン樹脂と、水混和性の極性溶媒と、添加剤とを準備する。極性溶媒としては、SP値が9〜13の範囲のものを使用する。例えば、SP値が12.1のN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、SP値が10.8のN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、SP値が9.1のテトラヒドロフラン(THF)、SP値が12.0のジメチルスルホキシド(DMSO)、SP値が9.9のアセトン、SP値が11.9のアセトニトリル、SP値が11.3のN−メチルピロリドン(NMP)等を用いることができる。SP値が9より小さい、または、13より大きいと、凝固再生時の貧溶媒(水)との置換が不十分となりシート作製が難しくなるため好ましくない。本例では、極性溶媒としてDMFを用いる。ポリウレタン樹脂としては、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリカーボネート系等の樹脂を用いることができるが、本例では、SP値が10.5、引張弾性率が24MPaのポリエステル/ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)系のポリウレタン樹脂を用いる。ポリサルホン樹脂としては、エーテル系、フェニル系等の樹脂を用いることができるが、本例では、SP値が11.8、引張弾性率が2480MPaのポリエーテルサルホン樹脂を用いる。添加剤としては、微細孔4の大きさや量(個数)を制御するため、カーボンブラック等の顔料、微細孔4の形成を促進させる親水性界面活性剤、樹脂の凝固再生を安定化させる疎水性界面活性剤等を用いることができる。
塗布工程では、まず、準備工程で準備した各材料で樹脂溶液を調製する。すなわち、ポリウレタン樹脂とポリサルホン樹脂とを質量比5:5で混合し、固形分濃度が30質量%(wt%)となるようにDMFに溶解させる。各材料が均一となるように十分に混合し得られた溶液を減圧下で脱泡して樹脂溶液を得る。得られた樹脂溶液を、均一な混合状態を保持したまま、常温下で成膜基材にシート状に均一な厚みとなるように塗布する。このとき、ナイフコータ等の塗布装置を用い、ナイフコータ等と成膜基材との間隙(クリアランス)を調整することで、樹脂溶液の塗布厚み(塗布量)を調整する。成膜基材としては、可撓性を有する樹脂フィルム、布帛や不織布等を用いることもできるが、本例では、表面平滑性を有するPET製フィルムを用いる。
樹脂溶液は、塗布工程で成膜基材に塗布されてから、次工程で凝固液中に浸漬させるまでの間に、成膜基材に塗布された状態で一定時間の間隔があけられる。この時間間隔により、樹脂溶液中で樹脂の凝集を開始させる。すなわち、凝集開始工程では、前工程の塗布工程と次工程のシート形成工程との間に一定時間があけられる。このとき、例えば、連続的に製造する場合は、搬送速度を遅くすることで搬送時間を長くするようにしてもよい。時間間隔は、2分間〜12時間の間で設定すればよく、本例では、30分間に設定する。この間に、均一な混合状態の樹脂溶液中では、2種の樹脂が局所的に偏在し凝集し始めることとなる。
シート形成工程では、成膜基材に塗布された後30分間の間隔をあけた樹脂溶液を、水を主成分とする凝固液中に案内し浸漬させる。凝固液には、樹脂の凝固再生速度を調整するために、上述した極性溶媒が30wt%以上45wt%以下の割合で含有されている。本例では、水と、35wt%のDMFとが混合された凝固液を使用する。凝固液中で樹脂溶液が凝固し、連続状のミクロポーラス構造を有するシート状の樹脂が再生する。凝固液中では、まず、樹脂溶液と凝固液との界面に皮膜が形成され、被膜の直近の樹脂中にスキン層2aが形成される。その後、樹脂溶液中のDMFの凝固液中への拡散と、樹脂への水の浸入の協調現象とにより樹脂の凝固再生が進行する。
図2に示すように、洗浄・乾燥工程では、凝固再生したシート状の樹脂(以下、成膜樹脂という。)を水等の洗浄液中で洗浄して成膜樹脂中に残留しているDMFを除去した後、乾燥させる。成膜樹脂の乾燥には、本例では、内部に熱源を有するシリンダを備えたシリンダ乾燥機が用いられる。成膜樹脂がシリンダの周面に沿って通過することで乾燥する。得られた樹脂シート2をロール状に巻き取る。
次に、本実施形態の研磨パッド10の作用等について説明する。
実施例1では、樹脂シート2の作製に引張弾性率が24MPaでSP値が10.5のポリエステル/ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)系のポリウレタン樹脂と、引張弾性率が2480MPaでSP値が11.8のポリエーテルサルホン樹脂とを用いた。ポリウレタン樹脂とポリサルホン樹脂とを質量比5:5で混合し、固形分濃度が30wt%となるようにDMFに溶解させた後、さらに固形分濃度が22wt%となるように酢酸エチルを添加して十分に混合し樹脂溶液を調製した。塗布工程における塗布装置のクリアランスを1.2mmに設定し、凝集開始工程での時間間隔を30分間とした。凝固液としては、水と、35wt%のDMFとの混合液を用いた。成膜後に表面側にバフ処理を施し、得られた厚さ0.8mmの樹脂シート2とPET製の基材を有する両面テープ7とを貼り合わせ、研磨パッド10を製造した。得られた樹脂シート2を走査型電子顕微鏡で倍率1000倍に拡大して観察した結果、図3に示すように、多数の微細孔が形成された発泡樹脂部2bに球状樹脂3が均等に分散するように形成されていることが確認された。
実施例2〜実施例3では、凝集開始工程での時間間隔を変える以外は実施例1と同様にして研磨パッド10を製造した。すなわち、時間間隔を、実施例2では2分間、実施例3では12時間にそれぞれ調整した。得られた樹脂シート2を走査型電子顕微鏡で観察した結果、実施例2、実施例3のいずれについても、上述した実施例1の樹脂シート2と同様のミクロポーラス構造、球状樹脂3が確認された。
比較例1では、実施例1と同じポリウレタン樹脂のみを用い、塗布工程で成膜基材に塗布された樹脂溶液を時間間隔をあけることなく直ちに凝固液中で凝固させた以外は実施例1と同様にして研磨パッドを製造した。得られた樹脂シートを走査型電子顕微鏡で観察した結果、微細孔4が確認されたものの、拡大して観察しても球状樹脂3の形成は認められなかった。
比較例2では、実施例1で用いたポリエーテルサルホン樹脂に代えて、引張弾性率が3000MPaでSP値が10.2の2−ヒドロキシエチルメタクリレート系アクリル樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして研磨パッドを製造した。得られた樹脂シートを走査型電子顕微鏡で観察した結果、微細孔4が確認されたものの、拡大して観察しても球状樹脂3の形成は認められなかった。
比較例3では、実施例1で用いたポリウレタン樹脂のみを用い、塗布工程で成膜基材に塗布された樹脂溶液を時間間隔をあけることなく直ちに凝固液中で凝固させた以外は実施例1と同様にして研磨パッドを製造した。すなわち、比較例3の研磨パッドは、従来のウレタン樹脂製のシート材を用いた研磨パッドである。
各実施例および比較例の研磨パッドについて、以下の研磨条件で研磨加工を行い、研磨レート、うねりWaおよびスクラッチの有無を測定した。被研磨物としては、ニッケル−リンメッキが施された磁気記録媒体用アルミニウムディスク基板を用いた。研磨レートは、1分間あたりの研磨量を厚さで表したものであり、研磨加工前後の基板の重量減少から求めた研磨量、基板の研磨面積および比重から算出した。また、光学式非接触表面粗さ計(Zygo社製、New View 5022)で0〜80μmの短波長域、80〜450μmの中波長域でそれぞれ単位面積あたりの表面像のうねり量をオングストローム(Å)単位で求めた。また、研磨加工する前のうねり量についても同様に測定した。スクラッチの評価では、研磨加工後のアルミニウム基板について、高輝度ハロゲンランプによる光を照射して目視にて表面におけるスクラッチの有無を評価した。研磨レート、うねりWaおよびスクラッチの有無の測定結果を下表1に示す。
(研磨条件)
使用研磨機:スピードファム社製、DSM9B−5P−1V
研磨速度(回転数):30rpm
加工圧力:100g/cm2
スラリ:コロイダルシリカスラリ(pH:1.5)
2 樹脂シート
2a スキン層
2b 発泡樹脂部
3 球状樹脂(凝集樹脂)
4 微細孔
10 研磨パッド
Claims (9)
- 湿式凝固法により形成され一面側に研磨面を有する樹脂シートを備えた研磨パッドにおいて、前記樹脂シートは、
軟質樹脂と、前記軟質樹脂が可溶な溶媒に対する可溶性を有し該軟質樹脂より硬質な物性の樹脂とを含む少なくとも2種の樹脂により一体形成されてシート状に成膜されたものであり、
多数の微細孔が連通するように形成されており、かつ、前記微細孔の平均径より大きい平均径を有する球状で緻密な凝集樹脂が均等に分散するように形成されていることを特徴とする研磨パッド。 - 前記凝集樹脂は、前記軟質樹脂より硬質な物性の樹脂を主体として凝集し形成されていることを特徴とする請求項1に記載の研磨パッド。
- 前記凝集樹脂は、直径が200μm未満で前記微細孔と比べて微孔状および無孔状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の研磨パッド。
- 前記軟質樹脂より硬質な物性の樹脂は、前記軟質樹脂の引張弾性率より30MPa以上大きい引張弾性率を有することを特徴とする請求項3に記載の研磨パッド。
- 前記少なくとも2種の樹脂は、溶解度係数を示すSP値の差が1〜3の範囲であることを特徴とする請求項4に記載の研磨パッド。
- 前記少なくとも2種の樹脂は、ポリウレタン樹脂とポリサルホン樹脂との2種が混合されたものであることを特徴とする請求項5に記載の研磨パッド。
- 前記ポリウレタン樹脂とポリサルホン樹脂との混合割合は、質量比が2:8〜8:2の範囲であることを特徴とする請求項6に記載の研磨パッド。
- 請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の研磨パッドの製造方法であって、
軟質樹脂と該軟質樹脂より硬質な物性の樹脂とを含む少なくとも2種の樹脂を準備する準備ステップと、
前記準備ステップで準備した樹脂を極性溶媒に均一となるように混合し溶解させた樹脂溶液をシート状の基材に塗布する塗布ステップと、
前記塗布ステップで基材に塗布された樹脂溶液を水系凝固液中で凝固させシート状に成膜された樹脂シートを形成させるシート形成ステップと、
を含み、
前記塗布ステップ後に一定時間の間隔をあけることで、前記シート形成ステップより前に前記樹脂溶液中で前記樹脂の凝集を開始させることを特徴とする製造方法。 - 前記塗布ステップ後の一定時間を2分間〜12時間の範囲とすることを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
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