しかしながら、このようなシートベルトベルト補助装置は、乗員が着座するたびに両方の補助ベルトのフック部をフック引掛部に引っ掛けなくてはならず面倒である。
本発明は、上記事実を考慮して、乗員の体型が標準的でなくても乗員の腰部にラップベルトを掛け回し易く、しかも、そのための操作が簡単なシートベルト装置を得ることが目的である。
請求項1に記載の本発明に係るシートベルト装置は、長尺帯状に形成されたウエビングベルトと、前記ウエビングベルトに設けられたタングと、車両のシートの側方に設けられて前記タングが装着されるバックルと、先端側に前記バックルが取り付けられたガイド手段としてのバックル支持部材と、前記シートに取り付けられると共にガイド孔が形成されて、前記バックル支持部材の基端側が係合して前記バックル支持部材の基端側を中心に前記シートの幅方向を軸方向とする軸周りに前記バックル支持部材を回動可能に支持すると共に、前記シートに着座した乗員が通常の状態で前記ウエビングベルトを装着する際の前記バックル支持部材の回動位置である第1タング装着位置と、前記バックルに対する前記タングの装着方向が前記第1タング装着位置よりも前記シートの下方側へ傾斜すると共に前記ガイド孔を介して前記第1タング装着位置に繋がった前記バックル支持部材の回動位置である第2タング装着位置と、の間で前記バックルを案内し、且つ、前記第2タング装着位置における前記バックル支持部材の回動中心位置が前記第1タング装着位置における前記バックル支持部材の回動中心位置に対して回動半径方向に変位した位置に設定されると共に、前記バックル支持部材が前記第2タング装着位置よりも下方の回動位置まで回動されることによって前記第1タング装着位置に対応する回動中心位置と前記第2タング装着位置に対応する回動中心位置との間で前記バックル支持部材の基端側の変位が許容されるガイド手段としてのガイド部材と、を備えている。
請求項1に記載の本発明に係るシートベルト装置では、シートに着座した乗員がウエビングベルトを身体に掛け回してウエビングベルトに設けられているタングをバックルに装着することで乗員の身体に対するウエビングベルトの装着状態となり、ウエビングベルトによって乗員の身体が拘束される。
このタングが装着されるバックルは、ガイド孔が形成されたガイド手段によって案内されつつ移動することで、通常の状態でウエビングベルトを装着する際のバックルの位置である第1タング装着位置と、バックルに対するタングの装着方向が第1タング装着位置よりもシートの下方側へ傾斜すると共にガイド孔を介して第1タング装着位置と繋がった第2タング装着位置との間で移動可能とされている。
このため、例えば、比較的腹部がシート前方に張り出した乗員(一例としては、妊婦や肥満体系の乗員)がウエビングベルトを装着する場合には、ガイド手段のガイド孔にバックルを案内させて第1タング装着位置から第2タング装着位置へ移動させ、この状態でバックルにタングを装着すると、上記のような乗員であってもウエビングベルトによる骨盤の拘束が容易になる。
また、本発明に係るシートベルト装置では、上記のような乗員がウエビングベルトを装着する場合に、第1タング装着位置から第2タング装着位置にバックルを移動させるだけでよいので操作も簡単であり、更には、ウエビングベルトに特別な部材を係止して強制的にウエビングベルトを変位させる構成とは異なり、自然な状態でウエビングベルトを装着できる。
さらに、本発明に係るシートベルト装置によれば、バックル支持部材の先端側にバックルが取り付けられる。このバックル支持部材の基端側はガイド部材によってシートの幅方向を軸方向とする軸周りに回動可能に支持される。このようにガイド部材に支持されたバックル支持部材がガイド部材に案内されつつ第1タング装着位置に対応したバックル支持部材の回動位置と第2タング装着位置に対応したバックル支持部材の回動位置との間を移動することで、バックルが第1タング装着位置と第2タング装着位置との間を移動する。
このように、本発明に係るシートベルト装置では、比較的腹部がシート前方に張り出した乗員(一例としては、妊婦や肥満体系の乗員)がウエビングベルトを装着するにあたり、第1タング装着位置から第2タング装着位置へ移動させる場合にも、バックルが取り付けられたバックル支持部材をガイド部材に案内させて移動させるだけでよいので、上記のような乗員であってもウエビングベルトによる腰部の拘束が容易になる。
また、本発明に係るシートベルト装置によれば、バックルを第2タング装着位置から第1タング装着位置に移動させるには、先ず、バックル支持部材が第2タング装着位置に対応した回動位置よりも下側(すなわち、第2タング装着位置に対応したバックル支持部材の回動位置を介して第1タング装着位置に対応したバックル支持部材の回動位置とは反対側)の回動位置までバックル支持部材が回動させられる。
この状態で、バックル支持部材がガイド部材に案内されて、バックル支持部材の回動半径方向にバックル支持部材の回動中心が移動させられる。このように回動中心が変位した状態でバックル支持部材が第1タング装着位置に対応した回動位置に回動させられることでバックルが第1タング装着位置に到達する。
このように、本発明に係るシートベルト装置によれば、第1タング装着位置よりも下方に設定される第2タング装着位置から第1タング装着位置にバックルを移動させるには、第2タング装着位置に対応した回動位置よりも下側の回動位置までバックル支持部材を回動させることになる。バックルにタングを装着した状態でウエビングベルトを引っ張るとバックルはタングを介して上方へ引っ張られるが、このような引っ張りがバックルに付与されても、バックルが第2タング装着位置から第1タング装着位置へ不用意に移動することがない。
なお、本発明において第1タング装着位置及び第2タング装着位置は、ガイド手段によるバックルの移動範囲内の特定の位置であってもよいし、このような特定の位置を含んだバックルの移動範囲内の特定の範囲であってもよい。
請求項2に記載の本発明に係るシートベルト装置は、請求項1に記載の本発明において、前記バックル支持部材の基端側に設けられた軸部と、前記軸部よりも前記バックル支持部材の先端側に設けられた係合部と、を含めて前記バックル支持部材を構成すると共に、前記第1タング装着位置から前記第2タング装着位置へ前記バックルが移動した際の前記軸部の移動軌跡に内周形状が対応した溝状又は孔状に形成されて、前記軸部を回動可能で且つ前記第1タング装着位置に対応した位置と前記第2タング装着位置に対応した位置との間で前記軸部を移動可能に支持する前記ガイド孔としての第1ガイド孔と、前記第1タング装着位置から前記第2タング装着位置へ前記バックルが移動した際の前記係合部の移動軌跡に内周形状が対応した溝状又は孔状に形成されて、前記第1タング装着位置に対応した位置と前記第2タング装着位置に対応した位置との間で前記係合部を案内する前記ガイド孔としての第2ガイド孔と、を前記ガイド部材に形成している。
請求項2に記載の本発明に係るシートベルト装置によれば、バックル支持部材の基端側には軸部が形成されており、ガイド部材に形成された溝状又は孔状の第1ガイド孔に入り込んでいる。第1ガイド孔の内周形状は第1タング装着位置から第2タング装着位置へバックルが移動した際の軸部の移動軌跡に対応しおり、バックルが第1タング装着位置から第2タング装着位置へ、又は、第2タング装着位置から第1タング装着位置へ移動する際には、軸部が第1ガイド孔に案内されて移動する。
また、バックル支持部材における軸部よりも先端側には係合部が形成されており、ガイド部材に形成された溝状又は孔状の第2ガイド孔に入り込んでいる。第2ガイド孔の内周形状は第1タング装着位置から第2タング装着位置へバックルが移動した際の係合部の移動軌跡に対応しおり、バックルが第1タング装着位置から第2タング装着位置へ、又は、第2タング装着位置から第1タング装着位置へ移動する際には、係合部が第2ガイド孔に案内されて移動する。
このように、本発明に係るシートベルト装置では、バックルが第1タング装着位置と第2タング装着位置との間で移動する際に、バックル支持部材の基端側から先端側への向きに互いに離間した軸部と係合部がそれぞれガイド部材に形成された第1ガイド孔及び第2ガイド孔に案内されるので、バックルが第1タング装着位置と第2タング装着位置との間で移動する際のバックル支持部材の姿勢や動きが特定の姿勢や特定の動きとなる。このため、第1タング装着位置と第2タング装着位置との間でバックルを移動させる際にバックルが安定して操作しやすくなる。
また、第1タング装着位置や第2タング装着位置にバックルが位置した状態で、バックルに装着されたタングを介してウエビングベルトに付与された引っ張り力がバックルに伝わった場合、この引っ張り力が軸部においては第1ガイド孔の内周部にて受け止められ、係合部においては第2ガイド孔の内周部にて受け止められる。このように、上記の引っ張り力が第1ガイド孔の内周部と第2ガイド孔の内周部とに分散して受け止められることで、上記の引っ張り力に対して機械的に高い強度を得ることができる。
以上説明したように、本発明に係るシートベルト装置は、乗員の体型が標準的でなくても乗員の腰部にラップベルトを掛け回し易く、しかも、そのための操作が簡単である。
<本実施の形態の構成>
図1には本発明の一実施の形態に係るシートベルト装置10の全体構成が車両側方側からの側面図により示されている。
この図に示されるシートベルト装置10はウエビング巻取装置12を備えている。ウエビング巻取装置12は車両のセンターピラーの下側で車体に固定されたフレーム14を備えている。このフレーム14には軸方向が略車両前後方向に沿ったスプール16が自らの軸周りに回転可能に直接又は間接的に支持されている。このスプール16には長尺帯状のウエビングベルト18の長手方向基端部が係止されている。
スプール16は自らの軸周りの一方である巻取方向に回転するとスプール16がウエビングベルト18をその長手方向基端側から巻き取り、ウエビングベルト18が巻き取られた状態でウエビングベルト18がその先端側へ引っ張られるとスプール16に巻き取られたウエビングベルト18が引き出されつつ、上記の巻取方向とは反対の引出方向にスプール16が回転する。
上記のスプール16に基端部が係止されたウエビングベルト18はセンターピラーに沿ってセンターピラーの上方側へ延ばされている。センターピラーの上端部近傍ではショルダアンカ20が車体に取り付けられている。ショルダアンカ20はスリップジョイント22を備えている。センターピラーの上端部近傍まで延ばされたウエビングベルト18、スリップジョイント22のスリット孔24を通過して折り返され車両の下方側へ延ばされている。スリップジョイント22にて折り返されたウエビングベルト18の先端部はアンカ26の先端部に一体的に固定されている。アンカ26の基端部は本シートベルト装置10が搭載された車両の車体や、本シートベルト装置10が対応するシート28のフレーム30等(本実施の形態では車体)に機械的に連結されている。
一方、図1に示されるように、アンカ26に固定されたウエビングベルト18の先端とスリップジョイント22での折り返し部分との間ではウエビングベルト18にタング32が設けられている。このタング32に対応して本シートベルト装置10はバックル40を備えている。バックル40はシート28を介してウエビング巻取装置12やアンカ26とは反対側に設けられている。バックル40はその先端側からタング32の挿入が可能な構造になっていると共に、その内側にはロック手段としてのラッチが設けられており、バックル40に挿入されたタング32にラッチが係合することでバックル40からタング32が抜け出ることを規制できる。
図4や図6に示されるように、ウエビングベルト18がシート28に着座した乗員42の身体に掛け回されて、タング32がバックル40に装着されると、乗員42に対するウエビングベルト18の装着状態となる。この装着状態で、ウエビングベルト18は、タング32とスリップジョイント22との間が乗員42の肩部や胸部を拘束するショルダベルト44となり、タング32とアンカ26との間が乗員42の腰部を拘束するラップベルト46となる。
一方、図1に示されるように、バックル40はバックル支持プレート50の先端側に一体的に固定されている。バックル支持部材としてガイド手段を構成するバックル支持プレート50は長手方向が基端側から先端側へ向きに沿った細幅板状に形成されており、このバックル支持プレート50の厚さ方向一方の側(本実施の形態では、バックル支持プレート50のシート28と反対側)にはガイド部材としてガイド手段を構成するガイドプレート52が設けられている。
ガイドプレート52はボルト等の図示しない締結手段によってシート28のフレーム30に一体的に固定されている。図3、図5、及び図7に示されるように、ガイドプレート52には第1ガイド孔としてのガイド孔54が形成されている。ガイド孔54はガイドプレート52の厚さ方向に貫通している。ガイド孔54は幅方向が概ねシート28の上下方向に沿い、長手方向がシート28の前後方向に沿ったスライドガイド部56により構成されている。
図1に示されるように、これらのガイド孔54の内側に対応してバックル支持プレート50の長手方向基端側には軸部としてのリベット60が設けられている。図2及び図3に示されるように、リベット60はその本体部分62の外径(外周の直径)寸法がスライドガイド部56(ガイド孔54)の幅方向(内幅)寸法よりも極僅かに小さな円柱形状に形成されており、その軸方向はバックル支持プレート50の厚さ方向に沿っている。このリベット60の本体部分62はバックル支持プレート50の長手方向基端側でバックル支持プレート50を貫通する円孔64を通過している。このリベット60の本体部分62の軸方向一端側はバックル支持プレート50の厚さ方向一方の面から更にバックル支持プレート50の厚さ方向一方の側へ突出しており、一方のガイドプレート52に形成されたスライドガイド部56(ガイド孔54)を通過している。
ガイドプレート52を介してバックル支持プレート50とは反対側ではリベット60に抜け止め部66が形成されている。抜け止め部66は外径(外周部の直径)寸法がスライドガイド部56(ガイド孔54)の内幅寸法よりも充分に大きな円板状とされ、抜け止め部66がガイドプレート52に干渉されることで、抜け止め部66が形成されている側とは反対側へのリベット60の変位を規制している。
これに対して、図2に示されるように、リベット60の本体部分62の軸方向他端側には抜け止め部68が形成されている。抜け止め部68は外径(外周部の直径)寸法がバックル支持プレート50を貫通する円孔64の内径寸法(内周部の直径寸法)よりも大きな円板状とされ、バックル支持プレート50のガイドプレート52とは反対側で抜け止め部68がバックル支持プレート50に干渉されることで、抜け止め部66側へのリベット60の変位を規制している。
一方、図1に示されるように、ガイドプレート52には第2ガイド孔としてのガイド孔74が形成されている。図3、図5、及び図7に示されるように、ガイド孔74はガイドプレート52の厚さ方向に貫通している。ガイド孔74は回動ガイド部76を備えている。回動ガイド部76はガイド孔54の長手方向後端(シート28の後方側におけるスライドガイド部56の端部)にリベット60が位置した状態でのリベット60の本体部分62が曲率の中心となるように湾曲した弧状に形成されている。この回動ガイド部76の先端(下端)からは連続してスライドガイド部78が形成されている。
スライドガイド部78は長手方向がシート28の前後方向に沿っており、その長手寸法は概ねスライドガイド部56と同じ長さとされている。このスライドガイド部78の回動ガイド部76とは反対側には回動ガイド部80が設けられている。回動ガイド部80は下端部がスライドガイド部78における回動ガイド部76とは反対側の端部と連通している。この回動ガイド部80はガイド孔54の長手方向前端(シート28の前方側におけるスライドガイド部56の端部)にリベット60が位置した状態でのリベット60の本体部分62が曲率の中心となるように湾曲した弧状に形成されている。
図1に示されるように、ガイド孔74に対応して、バックル支持プレート50における円孔64の形成位置よりも先端側には係合部としてのリベット90が設けられている。図2及び図3に示されるように、リベット90はその本体部分92の外径(外周の直径)寸法がガイド孔74の幅方向(内幅)寸法よりも極僅かに小さな円柱形状に形成されており、その軸方向はバックル支持プレート50の厚さ方向に沿っている。このリベット90の本体部分92はバックル支持プレート50の長手方向基端側でバックル支持プレート50を貫通する円孔94を通過している。このリベット90の本体部分92の軸方向一端側はバックル支持プレート50の厚さ方向一方の面から更にバックル支持プレート50の厚さ方向一方の側へ突出しており、一方のガイドプレート52に形成されたガイド孔74を通過している。
ガイドプレート52を介してバックル支持プレート50とは反対側ではリベット90に抜け止め部98が形成されている。抜け止め部98は外径(外周部の直径)寸法がガイド孔74の内幅寸法よりも充分に大きな円板状とされ、抜け止め部98がガイドプレート52に干渉されることで、抜け止め部98が形成されている側とは反対側へのリベット90の変位を規制している。
これに対して、図2に示されるように、リベット90の本体部分92の軸方向他端側には抜け止め部100が形成されている。抜け止め部100は外径(外周部の直径)寸法がバックル支持プレート50を貫通する円孔94の内径寸法(内周部の直径寸法)よりも大きな円板状とされ、バックル支持プレート50のガイドプレート52とは反対側で抜け止め部100がバックル支持プレート50に干渉されることで、抜け止め部98側へのリベット90の変位を規制している。
<本実施の形態の作用、効果>
次に、本実施の形態の作用並びに効果について説明する。
本実施の形態に係るシートベルト装置10では、図3及び図7に示されるように、第1タング装着位置にバックル40が位置する状態で軸部としてのリベット60の本体部分62は図3におけるスライドガイド部56(ガイド孔54)の後端部(図7における「A1」位置)に位置している。また、この状態で係合部としてのリベット90の本体部分92はガイド孔74を構成する回動ガイド部76における下端部よりも上方(図7における「Bb」位置よりも「B1」位置側の任意の位置)で、更に言えば、回動ガイド部76における回動ガイド部80の上端部(図7における「B2」位置)とスライドガイド部56(ガイド孔54)の前端部(図7における「A2」位置)との間の位置(図7における「Ba」位置)と、回動ガイド部76の上端部(図7における「B1」位置)との間の任意の位置に位置している。
通常の体型の乗員42がウエビングベルト18を装着する場合には、第1タング装着位置にバックル40が位置する状態で乗員42によりタング32と共にウエビングベルト18が引っ張られる。これによりウエビング巻取装置12のスプール16から引き出されたウエビングベルト18のうちタング32とスリップジョイント22との間のショルダベルト44が乗員42の肩部や胸部に掛け回されて、タング32とアンカ26との間のラップベルト46が乗員42の腰部に掛け回される。
この状態でタング32がバックル40に装着されると、図4に示されるように、乗員42の身体に対するウエビングベルト18の装着状態となり、乗員42の肩部や胸部はショルダベルト44によって拘束されて、乗員42の腰部はラップベルト46によって拘束される。
これに対して、比較的腹部がシート前方に張り出した乗員42(一例としては、妊婦や肥満体系の乗員)がウエビングベルト18を装着する場合には、第1タング装着位置から第2タング装着位置へバックル40が移動させられる。このバックル40の移動に際しては、先ず、図3における回動ガイド部76の下端部(図7における「Bb」位置)へリベット90の本体部分92が移動させられる。
ここで、回動ガイド部76は、スライドガイド部56(ガイド孔54)の長手方向後端(図7における「A1」位置)に位置したリベット60の本体部分62が曲率の中心となるように湾曲した弧状に形成されている。このため、第1タング装着位置にタング32が位置した状態で、タング32を押し下げると、リベット90の本体部分92は回動ガイド部76に案内されて回動ガイド部76の下端部(図7における「Bb」位置)へ移動する。
次いで、この状態からリベット90の本体部分92は図3におけるガイド孔74を構成するスライドガイド部78の長手方向前端部(図7における「Bc」位置)へ移動させられる。スライドガイド部78は長手方向がスライドガイド部56(ガイド孔54)と同様にシート28の前後方向に沿っており、しかも、その長手寸法は概ねスライドガイド部56と同じ長さである。このため、リベット90の本体部分92がスライドガイド部78に案内されてスライドガイド部78の長手方向前端部(図7における「Bc」位置)へ移動されると、リベット60の本体部分62がスライドガイド部56(ガイド孔54)に案内されてスライドガイド部56(ガイド孔54)の前端部(図7における「A2」位置)へ移動する。
次いで、この状態からバックル40を引き上げてガイド孔74を構成する回動ガイド部80の上端部(図7における「B2」位置)へリベット90の本体部分92が移動させる。回動ガイド部80はスライドガイド部56(ガイド孔54)の長手方向前端(図7における「A2」位置」)に位置したリベット60の本体部分62が曲率の中心となるように湾曲した弧状に形成されている。
このため、リベット90の本体部分92がスライドガイド部78の長手方向前端部(図7における「Bc」位置)に位置してリベット60の本体部分62がスライドガイド部56(ガイド孔54)の前端部(図7における「A2」位置)に位置した状態でタング32を引き上げると、リベット90の本体部分92は回動ガイド部80に案内されて回動ガイド部80の上端部(図7における「B2」位置)へ移動する。
このように、リベット60の本体部分62がスライドガイド部56(ガイド孔54)の前端部(図7における「A2」位置)に位置し、リベット90の本体部分92が回動ガイド部80の上端部(図7における「B2」位置)に位置した状態がバックル40の第2タング装着位置とされる。比較的腹部がシート前方に張り出した乗員42がウエビングベルト18を装着する場合には、図6に示されるように、この状態でタング32がバックル40に装着される。
この第2タング装着位置でリベット90の本体部分92が通過する回動ガイド部80の上端部(図7における「B2」位置)は、第1タング装着位置でリベット90の本体部分92が通過するが回動ガイド部76の上端部(図7における「B1」位置)よりもスライドガイド部78からの回動角度が小さく、このため、バックル40の先端側はシート28の下方側へ傾斜する。このため、この状態でバックル40にタング32を装着してウエビングベルト18を乗員42の身体に装着すると、上記のような比較的腹部がシート前方に張り出した乗員42であっても容易で且つ自然な状態で骨盤をラップベルト46で拘束できる。
また、バックル40が第2タング装着位置に位置する状態でウエビングベルト18を装着するが、ガイド孔54にリベット60の本体部分62を案内させつつガイド孔74にリベット90の本体部分92を案内させるだけで第1タング装着位置と第2タング装着位置との間でバックル40を容易に移動させることができる。しかも、バックル40を移動させるだけでよいので操作も簡単である。
一方、バックル40にタング32が装着されて乗員42の身体に対するウエビングベルト18の装着状態になると、ウエビング巻取装置12においてスプール16を巻取方向に付勢してウエビングベルト18をその長手方向基端側へ引っ張る付勢手段の付勢力等でバックル40が上方へ引っ張られる。しかしながら、第1装着位置ではリベット90の本体部分92が回動ガイド部76の上端部(図7における「B1」位置)に位置し、第2装着位置ではリベット90の本体部分92が回動ガイド部80の上端部(図7における「B2」位置)に位置している。
このため、バックル40が第1装着位置及び第2装着位置の何れにあっても、リベット90の本体部分92はそれ以上上方へ移動することができない。これにより、タング32を介してウエビングベルト18がバックル40を上方へ引っ張っても、バックル40が第1装着位置や第2装着位置から上方へ移動することがなく、ラップベルト46による乗員42の腰部の拘束を安定させることができる。
さらに、第1タング装着位置と第2タング装着位置との間では、回動ガイド部76の下端部と回動ガイド部80の下端部との間でのスライドガイド部78内での本体部分92(リベット90)の移動がある。したがって、第1タング装着位置と第2タング装着位置との間でバックル40を移動させるには、バックル40を意図的に前後に移動させなくてはならない。このため、第1タング装着位置と第2タング装着位置との間でバックル40が不用意に移動することがない。
また、このように、バックル40が第1タング装着位置や第2装着位置からリベット90の本体部分92が回動ガイド部76や回動ガイド部80バックル40に案内されつつ下方へ移動しても、この状態で意図的にバックル40を前後に移動させなければ、バックル40をそのまま引き上げることで第1タング装着位置及び第2装着位置のうち元の位置に戻すことができる。このため、例えば、比較的腹部がシート前方に張り出した乗員42が一旦降車した後、再び、その乗員42が乗車してウエビングベルト18を装着する場合には、バックル40を引き上げるだけでよいので、更に操作が簡単になる。
一方、車両が急減速した場合には、ウエビングベルト18がタング32及びバックル40を介してバックル支持プレート50をシート28の前方側で且つ上方側へ引っ張る。ここで、このような引っ張りがバックル支持プレート50に作用した場合、回動ガイド部76及び回動ガイド部80のうちリベット90の本体部分92が通過している方の内周部がリベット90の本体部分92に干渉し、ガイド孔54の内周部がリベット60の本体部分62に干渉することで、上記の引っ張り荷重がガイドプレート52に受け止められる。このように、引っ張り荷重はガイドプレート52において2箇所に分散された状態で受け止められるので、ガイドプレート52そのものの機械的強度を特に高く設定しなくても、このような引っ張り荷重に対する機械的強度を確保できる。
なお、本実施の形態では、第1ガイド孔としてのガイド孔54を通過するリベット60及び第2ガイド孔としてのガイド孔74を通過するリベット90とによってガイドプレート52とバックル支持プレート50とを連結している。このような構成に対して、更に、バックル40を意図的に引き上げたり、押し下げたり、更には前後にスライドさせたりしない場合には、バックル40を保持してその位置に留まらせる保持手段を設ける構成としてもよい。
例えば、リベット60の頭部及びリベット90の頭部の少なくとも何れかの一方と、ガイドプレート52及びバックル支持プレート50の少なくとも何れか一方との間に波形座金(ウエーブワッシャ)やばね座金(スプリングワッシャ)を設け、このような波形座金やばね座金を保持手段としてもよい。このような構成では、波形座金やばね座金の付勢力がガイドプレート52に対するバックル支持プレート50の不用意な変位を防止又は抑制する。このため、例えば、バックル40からタング32を抜き取った後にも、バックル40が不用意に下方へ変位することがない。このため、例えば、シート28に着座する乗員42が同じ場合等には、タング32を抜き取ったときと同じ位置でバックル40が保持されるので、タング32をバックル40に挿入しやすいというメリットがある。
また、このような波形座金(ウエーブワッシャ)やばね座金(スプリングワッシャ)の代わりに、図9に示されるように、リベット60周りにバックル支持プレート50を上方へ付勢する引っ張りコイルばねや捩じりコイルばね等の付勢手段を保持手段として設けて、意図的にバックル40を下方へ押圧しなければ、回動ガイド部76や回動ガイド部80の上端(図7における「B1」位置や「B2」位置)にリベット90が位置する状態で保持する構成としてもよい。
さらに、上述した本実施の形態では、回動ガイド部80の中心(図7の「A2」位置)が回動ガイド部76の中心(図7の「A1」位置)よりもシート前方に位置し、回動ガイド部80が回動ガイド部76よりも前方に位置した構成であった。しかしながら、図8に示されるように、回動ガイド部80の中心(図8の「A2」位置)を回動ガイド部76の中心(図7の「A1」位置)よりもシート後方に設定して、回動ガイド部80が回動ガイド部76よりも後方に設定する構成であってもよい。