JP5638792B2 - 農業用ポリオレフィン系フィルム及びそれを用いた植物栽培方法 - Google Patents

農業用ポリオレフィン系フィルム及びそれを用いた植物栽培方法 Download PDF

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Description

本発明は、太陽光利用の施設園芸用ハウスにおいて使用する、波長成分として少なくとも600〜700nmの可視光成分を放射することのできる特定の蛍光物質を0.1〜5重量%含有する樹脂組成物からなる基材フィルム上に、無機微粒子及び/又は合成樹脂バインダーを主成分とする防曇剤組成物からなる層を形成してなることを特徴とする農業用ポリオレフィン系多層もしくは単層フィルムに関する。本発明の農業用フィルムは、防曇剤との拮抗作用を抑制しながら、良好な防曇作用を示し、フィルム表面に凝縮した水滴による乱反射を抑制する為、非常に良好な波長変換効果を示す。
近年、国内農業人口は高齢化に伴い減少の一途を辿っており、農業生産の新たな担い手が、安定的な所得を得る仕組みが求められている。食料安全保障の観点からも、農業生産方法を改善し、単位面積あたりの収量を増やし、安定的かつ効率的に農業生産可能な仕組みを構築する必要性に迫られている。
そんななか、いわゆる完全制御型植物工場と呼ばれる、建築物の中で人工光源を照射して作物を栽培する農業生産形態が注目されてきている。完全制御型植物工場では、単位面積当たりの収量を上げるため、多段式の栽培方式となり、背の高くなる作物が栽培しにくい上、初期投資額が膨大になる。このような制約条件により、栽培期間が短く回転率の高い、葉菜類栽培を中心に利用されてきた。この栽培形態では、最適な温湿度、光環境、養液等環境管理により、極めて短期間で作物栽培可能であるが、栽培作物が非常に限定され、果菜類や花卉類には使用出来ない。又、一度病害虫が発生すると、その防除に膨大な手間と費用が発生する難点があった。このため、病害虫の発生原因を無菌の施設内に持ち込ませないように、エアシャワー等の高額な設備を準備する必要があった。
一方で、樹脂フィルム等を使用した施設園芸による栽培形態は、露地栽培と比較して、農業所得を安定的に得られる為、様々な作物の栽培形態に合わせて進化してきた。単位面積当たりの収量増には、作業効率上や栽培環境管理上の観点から、農業用ハウスの大型化が効果的であり、このような大型ハウスをフィルムで覆うためのフィルム展張作業は多くの人手を要するようになってきている。しかしながら、農業従事者の数は年々減少すると共に高齢化が進行しており、毎年の展張作業に人手を確保することは容易ではない状況にある。この様な状況に鑑み、太陽光利用型植物工場に使用されるハウスに展張するフィルムとして、展張作業が容易で極力張り替えまでの使用期間の長いフィルム、言いかえれば、2年以上の長寿命を有し、長期間にわたり当初性能を保持できる高性能な農業用被覆資材の開発のみならず、内部資材の劣化保護により、例えば内部使用される内張り資材についても長期間使用可能である事が求められてきている。
また、病害菌やカビの繁殖抑制、害虫防除性をハウス内環境に付与することにより減農薬栽培を行なう試みがなされてきている。灰色カビ病や菌核病はハウス内で発生する代表的な病害であり、様々な農作物の茎、葉、花、実等を枯死させる被害を与えている。オンシツコナジラミ、ミナミキイロアザミウマ、ミカンキイロアザミウマは、トマト、キュウリ、メロン、イチゴ、花卉類等ハウス内で広く栽培されている作物の代表的な害虫であり、食害、葉や果実の変色、変形の外にも、排泄物へのすす病菌寄生、トマト黄化えそウイルス病などのウイルス病を媒介等、多大な被害を発生させている。近年の農作物への安全要求から、減農薬栽培を行ううえで、これら病虫害の具体的抑制方法が望まれており、これら病害虫対策は、施設園芸において非常に重要な問題となっている。
品質リスクを低減しながら単位面積当たりの収量を増加する方法として、曇天時、補光により光合成に必要な光量を補う方法が注目されてきている。例えば、栽培上の日照不足を補うための照明装置として、白熱電球、蛍光灯、高圧ナトリウムランプ、ハロゲンランプ、発光ダイオード(LED)などが用いられることもあるが、これらの照明装置は、太陽光と比較すると照度が低い事が多く、照度を得る為には多量のエネルギーを必要とし、経済効率が悪くなるデメリットがあった。更に、光源からの光は局所的照射となる為、照射効果を栽培面積全体の植物体に及ぼす事が困難であった。一方、栽培作物全体を照射しようと照射装置の数を多くするとその装置自体の影響で非効率となり問題となっていた。
このような電気エネルギーコストの問題や局所照射の問題を解決する手段として、例えば特開平7−123870号公報の様な波長変換フィルムが挙げられている。これら波長変換フィルムは、蛍光物質を用いて、短波長のエネルギーの高い光を、長波長の特に光合成時に光受容体が吸収するような光に変換する事により、栽培性改良を狙ったものである。中でも、600〜700nmの赤色光を増光する検討例が多く、波長変換により積み増しされる光量は、補光装置を用いた場合に比較すると極端に小さいが、照射面積は逆に補光装置を用いた場合よりも著しく大きくなるために、植物体全体で見た場合の使用効果の大小は、いかに波長変換効率を高く且つ長く持続させるかに依存する。しかしながら従来技術を用いた波長変換フィルムは、商品化されたものであっても、波長変換効果が十分でない上、4ヶ月程度で波長変換効果が消失し、フィルム単価が高い割りに効果が持続しない事が問題となっていた。その他、特開2007−135583号公報にも同様の波長変換資材が提案されているが、実際には実施例で使用されているペリレン系波長変換物質は効果持続性が低い上に、ポリエステル系の樹脂には相容するものの、ポリオレフィン系樹脂には相溶せず、幅広フィルムが作成できない等実用上の問題があった。
また、波長変換物質は熱等に不安定である事が多く、波長変換効果を有する化合物であっても、実際には熱分解によって加工できなかったり、分解しない温度レベル迄、加工温度を低下させても、熱による変性により、添加量見合いでの波長変換効果が劣ったりするケースもあった。又、樹脂選択が不適切であるために樹脂流動性のバランスを逸し、透明性を非常に損なう為、波長変換効果による可視光成分の積み増し分を相殺してしまう為、栽培性改良効果が不十分であるか、逆に光合成産量を落とし、栽培性が低下するケースもあった。この様に、高い透明性と波長変換効果持続性を両立しつつ、広幅成形可能な農業用ポリオレフィン系フィルムの具体的な作成方法が求められていた。
さらに、波長変換物質は光エネルギーを吸収して、長波長の植物の光受容体に吸収されやすい光として再放射することが目的の機能となる為に、波長変換効率が重要となる。従来の波長変換物質の例は、波長変換効果の有無については言及があるものの、具体的態様により、どのように高い波長変換効率を得るかまでは言及が無く、農業用フィルムとしての具体的な作成方法が求められていた。
他方、栽培方法により単位面積当たりの収量を増加する方法として、例えば、バラの水耕栽培においては、特開平3−191716号公報には、栽培初期に最初に伸びた枝のツボミだけを取り、その枝は株元付近で人為的に曲げて倒伏状態を維持せしめ、その株元付近から発生するベーサルシュートを枝として生育させてその枝の葉がついていない基部から切断採花し、最初の採花以後は、採花しないすべての枝の葉がついていない基部から発生するベーサルシュートを枝として生育させてその枝の葉がついていない基部から切断採花することを繰り返す栽培方法が開示されている。この栽培方法は、アーチング法として命名され、養液栽培技術の普及と共に広がりを見せている。
この様な栽培方法では、通常の土耕栽培に対して、高品質のバラを安定的に収穫する事が出来る為に非常に有用であり普及が進んでいるが、折り曲げ枝を光合成のソースとして使用するために、単位面積あたりの収量増加には限度があり、更なる増収方法の具体的な提案が求められていた。
特開平7−123870号公報 特開2007−135583号公報 特開平3−191716号公報
このように、波長変換フィルムを用いた栽培に関わる従来技術を使用しても、実際に満足の行く効果が得られることは少なかったことから、実現可能な、園芸施設を利用した栽培技術の提案が求められていた。
本発明者は、初期投資の少ない農業用ハウスを利用した補光栽培において、特殊な光線透過特性を有する被覆資材により、電気エネルギーコストをかけずに、補光装置よりも照射範囲が広いという波長変換フィルムの特徴を生かしながら、高い波長変換効率を保つことができ、長期間に亘って効果的に補光することができる手段を検討したところ、特定の蛍光物質が長期間に亘って効果的に補光することができることを見出したが、この蛍光物質は、以外にも、防曇剤と拮抗作用を有することを知見した。そして、本発明者の更なる検討の結果、この拮抗作用の回避可能な手段を見出すことができた。
しかして、本発明は、波長成分として少なくとも600〜700nmの可視光成分を含む光を放射することのできる特定の蛍光物質を0.1〜5重量%含有する樹脂組成物からなる基材フィルム上に、無機微粒子及び/又は合成樹脂バインダーを主成分とする防曇剤組成物からなる層を形成してなることを特徴とするポリオレフィン系多層もしくは単層農業用フィルム、又は当該特定の蛍光物質を含有し、熱可塑性樹脂からなる通気性の農作物栽培用資材を用いて栽培植物に対して補光栽培を行うことにより、効果的に増収効果が得られ、更に、病虫害防除効果や内部資材劣化保護効果も得ながら、花色への影響を回避することが可能な具体的な方法を見出した。
更に、本発明においては、特定の紫外線吸収剤と組み合わせた場合に、波長変換効果の持続性のみならず、農業用資材として好適な性能をバランスよく発揮することができる。また、本発明は、特にバラ科の生育促進効果を長期間に渡り得ることが出来る上、赤色の花色の発色に影響を与えない為、花卉類の高品質生産と、単位面積当たりの収量増加との両立に貢献し、更にハウス内資材の劣化防止性ばかりか、病虫害防除効果にも優れた作物栽培方法に関するものである。更には前記樹脂組成物を使用した通気性の農作物栽培用資材に関し、又、当該フィルムをハウスの外張りや内張りフィルムとして使用して効率的に栽培する方法に関する。
本発明の農業用ポリオレフィン系フィルムは、ハウス内層側の防曇性が非常に良好であり、水滴による光散乱による光量不足に起因した栽培性低下及び水滴落下に起因する病害発生を防止しながら、高い栽培性改良効果を得る事が可能な農業用資材であり、更に特定の紫外線吸収剤と組み合わせることにより、バラ花色に影響を及ぼすことなく、高い栽培性改良効果を長期間得ることができる為、非常に好ましい。本発明の農業用資材は、ハウス、トンネル、マルチング用、袋掛用等の農業用フィルム及びネット等として好適に使用することができる。
各種蛍光物質の初期透過率(150μm厚PO系フィルム) 各種蛍光物質の負荷試験(90時間)後の透過率(150μm厚PO系フィルム) 太陽光下での波長変換フィルムの効果 蛍光物質と防曇剤との拮抗作用を示すグラフ 波長変換フィルムの負荷試験後の透過率(実施例3) 波長変換フィルムの負荷試験後の透過率(実施例2) LEDを使用した比較例の実施態様 1・・・株元 2・・・倒伏状態を維持せしめた枝 本発明のフィルムを使用した実施例の実施態様 本発明の農業用ポリオレフィン系フィルムを使用する好適な例
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の農業用ポリオレフィン系フィルムの基材フィルムは、下記式(1)で表される蛍光物質を含有したポリオレフィン系樹脂組成物よりなる事を特徴とする。
Figure 0005638792
(式中、R1〜R2は、それぞれ独立して水素原子、又は炭素数1〜10のアルキル基を表す。)
中でも、R1、R2はメチル基であるのが好ましい。
式(1)の化合物は公知の方法で合成する事が出来るが、例えば、Chemistry Letters 2000、P1426「Synthesis and Nonlinear Optical Properties of p-(Dimethylamino)benzylidene Dyes Containing Different Acceptors」等に記載の方法でも合成する事が出来る。その際、副生物として、下記式(3)の化合物を生成する事がある。
Figure 0005638792
(式中、R8〜R9は、それぞれ独立して水素原子、又は炭素数1〜10のアルキル基を表す)
その場合、式(1) / 式(3)の割合が、60%以上、好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上であることがポリオレフィン系樹脂との相溶性の観点から好ましい。
本発明においては、基材フィルムを構成するポリオレフィン系樹脂組成物において式(1)で表される蛍光物質を0.1〜5重量%、好ましくは0.5〜3重量%含有する。なお、該基材フィルムは単層であっても、多層であっても良いが、多層の場合、該蛍光物質は全ての層に配合される必要は無い。農業用フィルムとしてよく使用される3層の場合は、中間層に配合されると、耐侯性等から環境の影響を受けにくいので好ましい。また、多層の場合、蛍光物質の含有量は、全ての層の樹脂組成物に対する量を示す。
本発明に使用されるポリオレフィン系樹脂としては、α−オレフィン系の単独重合体、α−オレフィンを主成分とする異種単量体との共重合体、α−オレフィンと共役ジエンまたは非共役ジエン等の多不飽和化合物、アクリル酸、メタクリル酸、酢酸ビニル等との共重合体などがあげられ、例えば高密度、低密度または直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体等が挙げられる。これらのうち、密度が0.910〜0.935の低密度ポリエチレンやエチレン−α−オレフィン共重合体および酢酸ビニル含有量が30重量%以下のエチレン−酢酸ビニル共重合体が、透明性や耐候性および価格の点から農業用フィルムとして好ましい。
また、本発明において、ポリオレフィン系樹脂の少なくとも一成分としてメタロセン触媒で共重合して得られるエチレン−α−オレフィン共重合樹脂を使用することが好ましい。
これは、通常、メタロセンポリエチレンといわれているものであり、エチレンとブテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテンなどのα−オレフィンとの共重合体であり、例えば下記の(A法)や(B法)により得られる。
(A法)特開昭58−19309号、特開昭59−95292号、特開昭60−35005号、特開昭60−35006号、特開昭60−35007号、特開昭60−35008号、特開昭60−35009号、特開昭61−130314号、特開平3−163088号の各公開公報、ヨーロッパ特許出願公開第420436号明細書、米国特許第5055438号明細書及び国際公開WO91/04247号明細書などに記載されている方法、即ちメタロセン触媒、特にメタロセン・アルモキサン触媒、又は、例えば、国際公開WO92/01723号明細書等に開示されているような、メタロセン化合物と、メタロセン化合物と反応して安定なイオンとなる化合物からなる触媒、又は、更には、特開平5−295020号、特開平5−295022号などに記載されているような、メタロセン化合物を無機化合物に担持させた触媒などを使用して、主成分のエチレンと従成分の炭素数4〜20のα−オレフィンとを、得られる共重合体の密度が0.880〜0.930g/cm3 となるように共重合させる方法である。この重合方法としては、高圧イオン重合法、溶液法、スラリー法、気相法などを挙げることができる。これらの中では高圧イオン重合法で製造するのが好ましい。
なお、この高圧イオン重合法とは、特開昭56−18607号、特開昭58−25106号の各公報に記載されているが、圧力が100kg/cm 以上、好ましくは300〜1500kg/cm で、温度が125℃以上、好ましくは150〜200℃の反応条件下に高圧イオン重合法により製造されるものである。
(B法)特開平6−9724号、特開平6−136195号、特開平6−136196号、特開平6−207057号の各公開公報に記載されているメタロセン触媒成分、有機アルミニウムオキシ化合物触媒成分、微粒子状担体、および必要に応じて有機アルミニウム化合物触媒成分、イオン化イオン性化合物触媒成分を含む、オレフィン重合用触媒の存在下に、気相、またはスラリー状あるいは溶液状の液相で種々の条件でエチレンとα−オレフィン、具体的には炭素原子数3〜20のα−オレフィンとを、得られる共重合体の密度が0.900〜0.930g/cm cm3となるように共重合させる方法。
フィルムの良好な初期透明性及び透明持続性が得られる点では上記(A)法、(B)法に拘泥されることなく、メタロセン化合物を用いて重合されたポリオレフィン系樹脂、即ち、メタロセンポリエチレンを用いることが出来る。
これらメタロセンポリエチレンを始めとするポリエチレン樹脂は、温度上昇溶離分別(TREF:Temperature Rising Elution Fractionation)、MFR、密度、分子量分布、その他各種物性の測定によって分類される。
温度上昇溶離分別(TREF)による溶出曲線の測定
上記温度上昇溶離分別(Temperature Rising Elution Fractionation:TREF)による溶出曲線の測定は、「Journal of Applied Polymer Science.Vol 126,4, 217−4,231(1981)」、「高分子討論会予稿集2P1C09(昭和63年)」等の文献に記載されている原理に基づいて実施される。すなわち、先ず対象とするポリエチレンを溶媒中で一度完全に溶解させる。その後、冷却し、不活性担体表面に薄いポリマー層を生成させる。かかるポリマー層は結晶し易いものが内側(不活性担体表面に近い側)に形成され、結晶し難いものが外側に形成されてなるものである。次に、温度を連続又は段階的に昇温することにより、先ず、低温度では対象ポリマー中の非晶部分から、すなわち、ポリマーの持つ短鎖分岐の分岐度の多いものから溶出する。溶出温度が上昇すると共に、徐々に分岐度の少ないものが溶出し、ついには分岐の無い直鎖状の部分が溶出して測定は終了する。この各温度での溶出成分の濃度を連続的に検出して、その溶出量と溶出温度によって描かれるグラフ(溶出曲線)のピークによって、ポリマーの組成分布を測定することができるものである。
本発明のポリオレフィン系樹脂として好ましく使用されるエチレン−α−オレフィン共重合体は、以下の物性を示すものである。
メルトフローレート(MFR)
JIS−K7210により測定されたMFRが0.01〜10g/10分、好ましくは0.1〜5g/10分の値を示すものである。該MFRがこの範囲より大きいと成形時にフィルムが蛇行し安定しない。また、該MFRがこの範囲より小さすぎると成形時の樹脂圧力が増大し、成形機に負荷がかかるため、生産量を減少させて圧力の増大を抑制しなければならず、実用性に乏しい。
密度
JIS−K7112により測定された密度が0.880〜0.930g/cm 、好ましくは0.880〜0.920g/cm の値を示すものである。該密度がこの範囲より大きいと透明性が悪化する。また、密度がこの範囲より小さいと、フィルム表面のべたつきによりブロッキングが生じ実用性に乏しくなる。
分子量分布
ゲルパーミュレーションクロマトグラフィー(GPC)によって求められる分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)は1.5〜3.5、好ましくは1.5〜3.0の値を示すものである。該分子量分布がこの範囲より大きいと機械的強度が低下し好ましくない。該分子量分布がこの範囲より小さいと成形時にフィルムが蛇行し安定しない。
本発明で用いられるエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂は、酢酸ビニル含有量が10〜25重量%の範囲であり、好ましくは12〜20重量%の範囲である。酢酸ビニル含有量がこの範囲より小さいと、得られるフィルムが硬くなりハウスへの展張時にシワや弛みが出来やすく、防曇性に悪影響が出るため実用性に乏しく、また、酢酸ビニル含有量がこの範囲より大きいと、樹脂の融点が低いためハウス展張時に夏場の高温下でフィルムが弛み、風等でばたつきが起こり、ハウス構造体との擦れ等により破れが生じやすくなるため実用性に乏しい。
本発明においては、ポリオレフィン系樹脂に、エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体を配合することにより、長期耐候性、耐ブリードアウト性に優れ、且つ防曇性被膜の密着性が良好で被膜の剥離による防曇不良が起き難い農業用フィルムを得ることが出来る。前記エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体は、一般的農業用フィルムに用いられるヒンダードアミン系耐候剤と比較して、格段に長期耐候性を向上させる光安定剤としての効果を奏するばかりでなく、防曇性被膜を始めとする塗膜表面との密着性を向上する役割を果たす。
本発明で使用できるエチレン・環状アミノビニル化合物共重合体は、エチレン(A)及び環状アミノビニル化合物(B)との共重合体、エチレン(A)と下記式(3)のビニル化合物の共重合体を使用することができる。該エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体は、多量添加することによりポリオレフィン系フィルムの表面性(水滴接触角等)を変えることができるので、本発明の目的に好適に使用することが出来る。
Figure 0005638792
上記式(3)中、R1及びR2は、それぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、R3は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。好ましくは、R1及びR2はそれぞれ水素原子又はメチル基であり、R3は水素原子である。
式(3)で表されるビニル化合物(B)は公知であり、公知の方法、例えば特公昭47−8539号、特開昭48−65180号公報等に記載された方法にて合成することができる。
式(3)で表されるビニル化合物(B)の代表例としては、4−アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−1−エチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−1−プロピル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−1−ブチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−メタクリロイルオキシ−1−エチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メタクリロイルオキシ−1−ブチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−1−プロピル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等を挙げることができる。
前記エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体の好ましいものとしては、そのエチレン(A)と環状アミノビニル化合物(B)との和に対する該(B)の割合が0.0005〜0.85モル%、より好ましくは0.001〜0.55モル%であるものが挙げられる。すなわち、本共重合体の好ましいものは、側鎖にヒンダードアミン基を有するビニルモノマー(環状アミノビニル化合物(B))の含有量が少ない割に高い光安定性を有するものである。環状アミノビニル化合物(B)の濃度は0.0005モル%で充分に光安定化効果を発揮し、一方、0.85モル%を超えると実質的に不経済となる傾向にある。
環状アミノビニル化合物(B)の存在確認は、特開平4−80215号公報に記載されている通り、次のようにして行われる。13C−NMR(例えば日本電子製JNM−GSX270 Spectrometer)にて、公知の方法(例えば、化学同人発行「機器分析のてびき(1)」53〜56頁(1985)参照)に従い、文献記載のポリアクリル酸エチル(朝倉書店発行「高分子分析ハンドブック」969頁(1985)参照)及びエチレン−アクリル酸ヒドロキシエチル共重合体(Eur. Poly. J.25巻、4号、411〜418頁(1989)参照)の化学シフトを用いて、TMS基準における32.9ppmのピークを孤立したビニル化合物(B)の分岐点からα位にあるメチレン基によるものとし、35.7ppmのピークを連続した二つのビニル化合物(B)の分岐点に挟まれたメチレン基によるものと帰属した。これら二つのシグナルを用いて、エチレン(A)とビニル化合物(B)との共重合体においてビニル化合物(B)が孤立して存在する割合を、下記計算式によって算出することができる。
Figure 0005638792
上記により見積もった側鎖にヒンダードアミン基を有するビニル化合物(B)由来の構造単位が2個以上連続せず、孤立して存在する割合が、共重合体中のビニル化合物(B)の総量に対して83%以上であることが好ましい。側鎖にヒンダードアミン基を有するビニルモノマーが2個以上連続せず、孤立して存在する割合が83%未満であると、側鎖にヒンダードアミン基を有するビニルモノマーの含量が少ない割に高い光安定性を有するという特徴が発揮されない場合がある。
前記エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体のMFR(JIS−K6760(190℃、2.16kg荷重)に準拠して測定した値)は、0.1〜200g/10分、好ましくは0.5〜20g/10分、より好ましくは1〜5g/10分である。MFRが上記範囲未満では、ポリオレフィン系樹脂とのなじみが悪く、ブレンドした場合、フィッシュアイやブツなどフィルム用途での可視欠点の原因となる。一方、MFRが上記範囲を超えると、分子量が大きい共重合体といえども拡散透失によるブリード、ブルーム現象が生起したり、ポリオレフィン系樹脂とブレンドした場合、得られる樹脂組成物の強度低下したりする原因となる。
さらに、前記エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体は、GPCを用い、単分散ポリスチレンにて検量線を作成し決定した、重量平均分子量と数平均分子量との比をもって表示されるMw/Mn(Q値)は3〜120の範囲にあることが望ましい。特に好ましい範囲は5〜20である。
前記エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体は、所要単量体を共重合条件に付すことによって製造されるが、高圧法低密度ポリエチレン製造装置での製造が可能である。通常はラジカル重合で製造され、使用される触媒は遊離基発生開始剤、例えばジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド類、パーオキシエステル類、ケトンパーオキサイド類、パーオキシケタール類、ハイドロパーオキサイド類、アゾ化合物等が有用である。重合装置はエチレンの高圧ラジカル重合法で一般的に用いられている連続攪拌式槽型反応器又は連続式管型反応器等を使用することができる。重合圧力は1000〜5000kg/cm程度、重合温度は100〜400℃程度である。
本発明において、ポリオレフィン系樹脂組成物中における前記エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体の含有量は、前記ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し2〜10重量部、好ましくは2〜8重量部である。この含有量が上記範囲未満では耐候性が劣るので好ましくなく、上記範囲を超えると経済性の点で好ましくない。
本発明において、基材フィルムが多層フィルムである場合、用いられる前記エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体は、コスト的な観点から、必ずしも多層フィルムの全層に含有されている必要はなく、少なくとも1層含有されていればよい。また、このエチレン・環状アミノビニル化合物共重合体は、農業用として通常用いられる一種又は二種以上のヒンダードアミン系耐候剤と組み合わせて用いることができる。更に、エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体を含有しない層に対して、通常用いられる一種又は二種以上のヒンダードアミン系耐候剤を用いることもできる。例えば最内層と最外層(ハウスの外張り用フィルムとして使用する場合はハウス外面に相当)に含有させ、その他の層には農業用として通常配合されるヒンダードアミン系光安定剤を含有させることもできる。
また、本発明で基材フィルムとして用いられるポリオレフィン系樹脂フィルム中には、通常合成樹脂に使用される各種添加剤を併用することができる。それらの添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、耐候剤、上記エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体以外のヒンダードアミン系化合物、赤外線吸収剤(保温剤)、防霧剤、充てん剤、金属の有機酸塩、塩基性有機酸塩および過塩基性有機酸塩、ハイドロタルサイト化合物、エポキシ化合物、β−ジケトン化合物、多価アルコール、ハロゲン酸素酸塩、硫黄系、フェノール系およびホスファイト系などの酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、着色剤、アンチブロッキング剤、などがあげられる。
本発明において使用可能なヒンダードアミン化合物としては、例えば、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−ブチル−2−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、テトラ(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブタンテトラカルボキシレート、テトラ(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)ブタンテトラカルボキシレート、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシカルボニルオキシ)ブチルカルボニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{トリス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルオキシカルボニルオキシ)ブチルカルボニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、1,5,8,12−テトラキス〔4,6−ビス{N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミノ}−1,3,5−トリアジン−2−イル〕−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノール/コハク酸ジメチル縮合物、2−第三オクチルアミノ−4,6−ジクロロ−s−トリアジン/N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサメチレンジアミン縮合物、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサメチレンジアミン/ジブロモエタン縮合物などがあげられる。
本発明において使用可能な、農業用として通常用いられる市販のヒンダードアミン系化合物を例示すれば、TINUVIN770、TINUVIN780、TINUVIN144、TINUVIN622LD、TINUVIN NOR 371、CHIMASSORB119FL、CHIMASSORB944(以上、チバガイギー社製)、サノールLS−765(三共(株)製)、MARK LA−63、MARK LA−68、MARK LA−68、MARK LA−62、MARK LA−67、MARK LA−57、LA−900、T−1167L(以上、旭電化(株)製)、UV−3346、UV−3529、UV−3581、UV−3853(以上、サイテック社製)等が挙げられる。これらのピペリジン環含有ヒンダードアミン化合物は、一種又は二種以上で用いられる。
上記ピペリジン環含有ヒンダードアミン系化合物の含有量は、熱可塑性樹脂100重量%に対して、0.001〜5重量%、好ましくは0.01〜1重量%である。該含有量が0.001重量%未満では十分な効果が得られず、5重量%よりも多くても効果の向上がみられないばかりか、フィルムの物性を低下させるなどの悪影響を与える。
本発明において用いられる前記ヒンダードアミン系化合物は、コスト的な観点から、例えば多層フィルムに使用される場合、必ずしも多層フィルムの全層に含有されている必要はなく、少なくとも1層含有されていればよい。例えば多層フィルムの場合、塗膜に対する影響は、塗膜に接している層に添加された添加剤以外にも、他の層から移行、転写された添加剤からも及ぶことから、添加層は全層又は内外層が好ましいが、内層のみ、中間層のみ、外層のみ又はその任意の組み合わせでも構わない。
上記紫外線吸収剤として、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、5,5’−メチレンビス(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)等の2−ヒドロキシベンゾフェノン類;2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ第三ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ第三ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−第三ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−第三オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’.5’−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス(4−第三オクチル−6−ベンゾトリアゾリル)フェノール等の2−(2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類;フェニルサリシレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4−ジ第三ブチルフェニル−3’,5’−ジ第三ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、2,4−ジ第三アミルフェニル−3’,5’−ジ第三ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート類;2−エチル−2’−エトキシオキザニリド、2−エトキシ−4’−ドデシルオキザニリド等の置換オキザニリド類;エチル−α−シアノ−β,β−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレート等のシアノアクリレート類;2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチロキシ)フェノール等のトリアジン類等があげられる。これらの紫外線吸収剤は、一種又は二種以上で用いられる。
中でも、トリアジン型紫外線吸収剤は、紫外線カット効果の持続性の観点から好ましく使用できる。特に、トリアリールトリアジン型紫外線吸収剤が下記一般式(2)記載のトリアリールトリアジン型紫外線吸収剤である場合、吸収波長がベンゾトリアゾール型紫外線吸収剤よりも短波長にあるため、紫外線カットによる病虫害防除効果だけでなく、バラ等花き類栽培における花色発色(特に、アントシアニン系色素発現への阻害)に影響を及ぼさないので非常に好ましい。
Figure 0005638792
(式中、R3〜R7は、それぞれ独立して水素原子、又は炭素数1〜10のアルキル基を表す。)
本発明で用いるフィルムにおいては、相溶性等の観点から更に好ましくは、前記式(2)におけるR3がオクチル基であり、R4〜R7がメチル基である場合と、前記式(2)におけるR3がヘキシル基であり、R4〜R7が水素原子であるものが挙げられる。
紫外線吸収剤の含有量は、前記ポリオレフィン系樹脂100重量%に対し0.001重量%より多く2重量%未満、好ましくは0.01〜1重量%、更に好ましくは0.01〜0.8重量%である。含有量が上記範囲未満では耐候性改良効果が低く、上記範囲を超えると、ブリードアウトによる透明性低下等問題がある。
本発明において一般式(2)で示される紫外線吸収剤を使用する場合は、コスト的な観点から、例えば多層フィルムに使用される場合、必ずしも多層フィルムの全層に含有されている必要はなく、少なくとも1層含有されていればよい。また、該一般式(2)で示される紫外線吸収剤は、一種又は二種以上のその他の紫外線吸収剤と組み合わせて用いることができる。
本発明において用いることができる赤外線吸収剤(保温剤)は、赤外線吸収能を有する無機微粒子であり、これらは一種又は二種以上で組み合わせて用いることができる。用いることの出来る無機微粒子は特に制限はないが、成分:Si,Al,Mg,Ca,Liから選ばれた少なくとも1つの原子を含有する無機化合物を用いることが出来る。例えば、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化珪素、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、燐酸リチウム、燐酸カルシウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、アルミン酸カルシウム、アルミン酸マグネシウム、アルミノ珪酸ナトリウム、アルミノ珪酸カリウム、アルミノ珪酸カルシウム、カオリン、クレー、タルク、マイカ、ゼオライト、ハイドロタルサイト類化合物、リチウム・アルミニウム複合水酸化物、アルミニウム・リチウム・マグネシウム複合炭酸塩化合物、アルミニウム・リチウム・マグネシウム複合珪酸塩化合物、マグネシウム・アルミニウム・珪素複合水酸化物、マグネシウム・アルミニウム・珪素複合硫酸塩化合物、マグネシウム・アルミニウム・珪素複合炭酸塩化合物、複数種アニオンを含有する金属複合水酸化物塩等が挙げられる。これらは結晶水を脱水したものであってもよい。
上記赤外線吸収剤(保温剤)は天然物であってもよく、また合成品であってもよい。また、上記無機微粒子は、その結晶構造、結晶粒子径などに制限されることなく使用することが可能である。
上記赤外線吸収剤(保温剤)の入手方法は特に限定されず、市販のものを使用することができ、例えば、DHT4A(協和化学(株)製)、HT−P(堺化学(株)製)、オプティマ(戸田工業(株)製)やミズカラック(水澤化学工業(株)製)等が挙げられる。
また、上記赤外線吸収剤(保温剤)は、その表面をステアリン酸のごとき高級脂肪酸、オレイン酸アルカリ金属塩のごとき高級脂肪酸金属塩、ドデシルベンゼンスルホン酸アルカリ金属塩のごとき有機スルホン酸金属塩、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステルまたはワックスなどで被覆したものも使用できる。
上記赤外線吸収剤(保温剤)は、単独または2種以上組み合わせて使用することが出来る。その平均粒子径は好ましくは、0.05〜15μm、より好ましくは0.1〜10μmの範囲である。赤外線吸収剤(保温剤)の平均粒子径が上記範囲より小さいと、樹脂中での分散性が劣りブツ(無機物の2次凝集物)が生成してフィルム外観が悪化すると共に、樹脂との混練時の粉立ちが激しくハンドリング性が劣る。逆に、赤外線吸収剤(保温剤)の平均粒子径が上記範囲より大きいと、透明性で劣ったり押出し機ブレーカースクリーン部で目詰まりが生じたりして、生産性が悪化する。
上記赤外線吸収剤(保温剤)の含有量は、前記ポリオレフィン系樹脂100重量%に対し好ましくは0.1重量%より多く15重量%未満、更に好ましくは1〜12重量%である。含有量が0.1重量%以下では保温性改良効果が低く、15重量%以上では透明性低下等問題がある。
基材フィルムの添加剤として使用される金属の有機酸塩、塩基性有機酸塩および過塩基性有機酸塩を構成する金属種としては、Li,Na,K,Ca,Ba,Mg,Sr,Zn,Cd,Sn,Cs,Al,有機Snがあげられ、有機酸としては、カルボン酸、有機リン酸類またはフェノール類があげられ、該カルボン酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ネオデカン酸、2−エチルヘキシル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、イソステアリン酸、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ベヘニン酸、モンタン酸、エライジン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、チオグリコール酸、メルカプトプロピオン酸、オクチルメルカプトプロピオン酸、安息香酸、モノクロル安息香酸、p−第三ブチル安息香酸、ジメチルヒドロキシ安息香酸、3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸、トルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、クミン酸、n−プロピル安息香酸、アセトキシ安息香酸、サリチル酸、p−第三オクチルサリチル酸等の一価カルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバチン酸、マレイン酸、フマール酸、シトラコン酸、メタコン酸、イタコン酸、アコニット酸、チオジプロピオン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、オキシフタル酸、クロルフタル酸等の二価のカルボン酸あるいはこれらのモノエステル又はモノアマイド化合物、ブタントリカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、ヘミメリット酸、トリメリット酸、メロファン酸、ピロメリット酸等の三価又は四価カルボン酸のジ又はトリエステル化合物などがあげられ、また該有機リン酸類としては、モノまたはジオクチルリン酸、モノまたはジドデシルリン酸、モノまたはジオクタデシルリン酸、モノまたはジ−(ノニルフェニル)リン酸、ホスホン酸ノニルフェニルエステル、ホスホン酸ステアリルエステルなどがあげられ、また該フェノール類としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、メチルプロピルフェノール、メチル第三オクチルフェノール、エチルフェノール、イソプロピルフェノール、第三ブチルフェノール、n−ブチルフェノール、ジイソブチルフェノール、イソアミルフェノール、ジアミルフェノール、イソヘキシルフェノール、オクチルフェノール、イソオクチルフェノール、2−エチルヘキシルフェノール、第三オクチルフェノール、ノニルフェノール、ジノニルフェノール、第三ノニルフェノール、デシルフェノール、ドデシルフェノール、オクタデシルフェノール、シクロヘキシルフェノール、フェニルフェノールフェノール、クレゾール、エチルフェノール、シクロヘキシルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノールなどがあげられる。
上記充てん剤としては、フィルムのベタツキを抑制するために、あるいは保温性をさらに高めるために、例えばシリカ、タルク、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、カオリンクレー、マイカ、アルミナ、炭酸マグネシウム、アルミン酸ナトリウム、導電性酸化亜鉛、リン酸リチウムなどが用いられる。これらの充てん剤は1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ第三ブチル−p−クレゾール、2,6−ジフェニル−4−オクタデシロキシフェノール、ステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、ジステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホネート、チオジエチレングリコールビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサメチレンビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサメチレンビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド〕、4,4’−チオビス(6−第三ブチル−m−クレゾール) 、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−第三ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−第三ブチルフェノール)、ビス〔3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)ブチリックアシッド〕グリコールエステル、4,4’−ブチリデンビス(6−第三ブチル−m−クレゾール)、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ第三ブチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(4−第二ブチル−6−第三ブチルフェノール) 、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタン、ビス〔2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェニル〕テレフタレート、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−第三ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドルキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル〕イソシアヌレート、テトラキス〔メチレン−3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−アクリロイルオキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル) フェノール、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5. 5〕ウンデカン、トリエチレングリコールビス〔(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート〕、n−オクタデシル3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシメチル]メタン等があげられる。
上記硫黄系酸化防止剤としては、例えば、チオジプロピオン酸ジラウリル、ジミリスチル、ジステアリル等のジアルキルチオジプロピオネート類及びペンタエリスリトールテトラ(β−ドデシルメルカプトプロピオネート)等のポリオールのβ−アルキルメルカプトプロピオン酸エステル類があげられる。
上記ホスファイト系酸化防止剤としては、例えば、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ホスファイト、トリス〔2−第三ブチル−4−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニルチオ)−5−メチルフェニル〕ホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、ジ(デシル)モノフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノ(ジノニルフェニル)ビス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジ(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジ (ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ第三ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(トリデシル)イソプロピリデンジフェノールジホスファイト、テトラ(トリデシル)イソプロピリデンジフェノールジホスファイト、テトラ(C 12-15 混合アルキル)−4,4’−n−ブチリデンビス(2−第三ブチル−5−メチルフェノール) ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)−1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタントリホスファイト、テトラキス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)( オクチル) ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレン−ジ−ホスホナイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト等があげられる。
上記着色剤としては例えば、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ハンザイエロー、アリザリンレーキ、酸化チタン、亜鉛華、群青、パーマネントレッド、キナクリドン、カーボンブラック等を挙げることができる。
本発明で使用可能なアンチブロッキング剤としては、無機系微粒子や有機系微粒子等を使用することが出来る。無機系微粒子の構成元素成分としてSi,Mg,Al,Li,Caの内から選ばれる少なくとも一つを含有する無機フィラーを使用することが出来る。中でも通常アンチブロッキング剤として使用することが出来る珪藻土、天然シリカ、合成シリカ、タルク、マイカ、ゼオライト等を好適に使用することが出来る。有機系微粒子としては、例えば熱可塑性樹脂を主成分としてなるポリマービーズを使用することが出来る。中でもアクリレート、メタクリレート、スチレン、ナイロンの重合体及び/又はこれら共重合体を好適に使用することが出来る。
また、本発明の防曇性被膜による防曇効果を補助する目的で、本発明の蛍光物質との拮抗作用を及ぼさない範囲であれば、界面活性剤(フッ素系界面活性剤を含む)を添加することができる。
上記界面活性剤としては、公知の種々の非イオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤等を始めとする、多価アルコールと高級脂肪酸類とから成る多価アルコール部分エステル系のもの、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤が好適である。このような防曇剤の具体例としては、例えば非イオン系界面活性剤、例えばソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノミリステート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノベヘネート、ソルビタンとアルキレングリコールの縮合物と脂肪酸とのエステルなどのソルビタン系界面活性剤やグリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノラウレート、ジグリセリンモノパルミテート、グリセリンジパルミテート、グリセリンジステアレート、ジグリセリンモノパルミテート・モノステアレート、トリグリセリンモノステアレート、トリグリセリンジステアレートあるいはこれらのアルキレンオキシド付加物等などのグリセリン系界面活性剤やポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールモノパルミテート、ポリエチレングリコールアルキルフェニルエーテルなどのポリエチレングリコール系界面活性剤やその他トリメチロールプロパンモノステアレートなどのトリメチロールプロパン系界面活性剤やペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレートなどのペンタエリスリトール系界面活性剤、アルキルフェノールのアルキレンオキシド付加物;ソルビタン/グリセリンの縮合物と脂肪酸とのエステル、ソルビタン/アルキレングリコールの縮合物と脂肪酸とのエステル;ジグリセリンジオレートナトリウムラウリルサルフェート、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ドデシルアミン塩酸塩、ラウリン酸ラウリルアミドエチルリン酸塩、トリエチルセチルアンモニウムイオダイド、オレイルアミノジエチルアミン塩酸塩、ドデシルピリジニウム塩などやそれらの異性体を含むものなどを挙げることができる。
上記フッ素系界面活性剤としては、通常の界面活性剤の疎水基のCに結合したHの代わりにその一部または全部をFで置換した界面活性剤で、特にパーフルオロアルキル基またはパーフルオロアルケニル基を含有する界面活性剤である。以上の各種添加剤は、それぞれ1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。パーフルオロアルキル基を有する含フッ素化合物としては、例えば、アニオン系含フッ素界面活性剤、カチオン系含フッ素界面活性剤、両性含フッ素界面活性剤、ノニオン系含フッ素界面活性剤、含フッ素オリゴマーなどがあげられる。
本発明で用いる基材フィルムは、一般式(1)の蛍光物質とポリオレフィン系樹脂に、上述した成分が組み合わされてなり、更に下記の任意成分を、必要に応じて含有させることができる。任意成分とは、その他安定剤、耐衝撃性改善剤、架橋剤、充填剤、発泡剤、帯電防止剤、造核剤、プレートアウト防止剤、表面処理剤、難燃剤、その他の螢光剤、防黴剤、殺菌剤、金属不活性剤、離型剤、顔料、加工助剤などを挙げることができる。
本発明で使用する基材に、各種添加剤を配合する方法として、各々必要量秤量し、リボンブレンダー、バンバリーミキサー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、単軸又は二軸押出機、ロールなどの配合機や混練機その他従来から知られている配合機、混合機を使用すればよい。このようにして得られた樹脂組成物をフィルム化するには、それ自体公知の方法、例えば、溶融押出し成形法(Tダイ法、インフレーション法を含む)、カレンダー加工、ロール加工、押出成型加工、ブロー成型、インフレーション成型、溶融流延法、加圧成型加工、ペースト加工、粉体成型等の方法を好適に使用することができる。
式(1)で表される蛍光物質を含有する樹脂組成物を200℃以上で加工すると、熱分解するため、農業用ポリオレフィン系フィルムの基材フィルムに成形する際に、発泡によるフィルムの強度低下、透明性低下を招くことがある。従って、樹脂温度として、好ましくは180℃以下、更に好ましくは160℃以下で成形するのがよい。例えば、160℃の成形温度では、メルトフラクチャー等の外観不良が問題になることがあるが、樹脂組成を適切に選択することにより、回避できる。
本発明の農業用ポリオレフィン系フィルムは、上記基材フィルム上に無機微粒子及び/又は合成樹脂バインダーを主成分とする防曇剤組成物からなる層を形成してなることを特徴とする。該防曇剤組成物からなる層としては、例えば、特開2001−89751記載の防曇性被膜や、バインダー樹脂の無い特開2005−96430のタイプ、更に、特開2007−282625や特開2008−67645記載のような多層構造の防曇性被膜も好適に使用できる。更に、蒸着や効果微粒子デポジットと呼ばれるような乾式の塗布方法も適用可能である。
無機微粒子は金属、金属酸化物、金属水酸化物、金属硫酸塩、金属炭酸塩等、金属複合水酸化物等、フィルム表面への親水性付与を阻害しない範囲で公知のものを使用することが出来る。
無機微粒子は、湿式塗布の場合、無機質コロイド状物質を好ましく使用することができる。無機質コロイド状物質としては、シリカ、アルミナ、水不溶性リチウムシリケート、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、水酸化鉄、水酸化スズ、酸化チタン、酸化アンチモン、硫酸バリウム、アンチモン酸亜鉛等の無機質水性コロイド粒子を、種々の方法で、水又は親水性媒体中に分散させた、水性ゾルが挙げられる。中でも好ましく用いられるのは、コロイダルシリカとコロイダルアルミナで、これらは、単独で用いても併用しても良い。これらのうち、光触媒作用の強い無機微粒子は、他の無機微粒子との併用により実質の添加濃度を減らすか、親水性を阻害しない範囲での表面処理を施すことにより、基材や合成樹脂バインダーへの影響を少なくする必要がある。
上記無機質コロイド状物質は、乾燥時における無機質コロイドゾル同士や無機質コロイドゾルと合成樹脂バインダー間の接着性向上の為に、フィルム表面への親水性付与を阻害しない範囲で、表面処理を施すことが出来る。コロイダルシリカ表面への表面処理の方法としては、公知のものが使用できるが、中でもシランカップリング剤を始めとするシラン化合物を好適に用いることが出来る。
本発明における合成樹脂バインダーに使用されるバインダー樹脂としては、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂等が挙げられるが、ポリオレフィン系樹脂から成るる基材フィルムとの相性から、特に、アクリル系樹脂、及び/又はウレタン系樹脂を用いることが好ましく、更に好ましくは後述する(a)親水性アクリル系樹脂からなるもの、(c)疎水性アクリル系樹脂からなるもの、(e)疎水性アクリル系樹脂と、ポリウレタンエマルジョンからなるもの、が以下に示す各々の特質から、好ましい。
アクリル系樹脂としては、(a)親水性アクリル系樹脂からなるもの、(b)一分子内に疎水性分子鎖ブロックと親水性分子鎖ブロックとを含むブロック共重合体からなるもの、(c)疎水性アクリル系樹脂からなるものが挙げられるが、特に(a)が、初期の防曇濡れが早い点で好ましいが、流失しやすい傾向にあるので、架橋反応等で塗膜にある程度の耐水性を付与することが必要となる。一方(c)については、耐水性に優れており、防曇持続性に関しては好ましいが、疎水性アクリル系樹脂による表面疎水化を抑制する為に、バインダー樹脂と無機質コロイド状物質の比率を調整する必要がある。
(a)の親水性アクリル系樹脂としては、水酸基含有ビニル単量体成分を主成分(好ましくは60重量%〜99.9重量%、更に好ましくは65重量%〜95重量%)とし、酸基含有ビニル単量体成分を0.1〜30重量%含有する共重合体、その部分中和物または完全中和物が挙げられる。水酸基含有ビニル単量体成分としては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類があげられ、例えば、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等があげられる。これらは単独重合体であってもよく、これらヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類を主成分とし、これらと共重合しうる他の単量体との共重合体であってもよい。
これらヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類と共重合しうる酸基含有単量体としては、カルボン酸類、スルホン酸類、ホスホン酸類が挙げられ、特に好ましくは、カルボン酸に属する(メタ)アクリル酸である。
その他の共重合体成分としては、たとえばスチレン、ビニルテルエン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酸化ビニル、(メタ)アクリル酸エステル類、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ビニルピリジン等があげられる。これらに加え架橋部位を含有するモノマーを共重合させておき、適切な架橋剤を適切な架橋温度で反応させることにより、架橋密度を向上させ、耐水性を向上させることが出来る。
(c)の疎水性アクリル系樹脂としては、少なくとも合計60重量%のアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル類からなる単量体、またはアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル類とアルケニルベンゼン類との単量体混合物及び0〜40重量%の共重合しうるα、β−エチレン性不飽和単量体とを、通常の重合条件に従って、例えば乳化剤の存在下に、水系媒質中で乳化重合させて得られる水分散性の重合体または共重合体を挙げることができる。
疎水性アクリル系樹脂の製造に用いられるアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル類としては、アクリル酸メチルエステル、アクリル酸エチルエステル、アクリル酸−n−プロピルエステル、アクリル酸イソプロピルエステル、アクリル酸−n−ブチルエステル、アクリル酸−2−エチルヘキシルエステル、アクリル酸デシルエステル、メタクリル酸メチルエステル、メタクリル酸エチルエステル、メタクリル酸−n−プロピルエステル、メタクリル酸イソプロピルエステル、メタクリル酸−n−ブチルエステル、メタクリル酸−2−エチルヘキシルエステル、メタクリル酸デシルエステル等が挙げられ、一般には、アルキル基の炭素数が1〜20個のアクリル酸アルキルエステル及び/又はアルキル基の炭素数が1〜20個のメタクリル酸アルキルエステルが使用される。アルケニルベンゼン類としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられる。
疎水性アクリル系樹脂を得るために用いるα、β−エチレン性不飽和単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸等のα、β−エチレン性不飽和カルボン酸類;エチレンスルホン酸等のα、β−エチレン性不飽和スルホン酸類;2−アクリルアミド−2−メチルプロパン酸;α、β−エチレン性不飽和ホスホン酸類;アクリル酸又はメタクリル酸のヒドロキシエチル等の水酸基含有ビニル単量体;アクリロニトリル類;アクリルアマイド類;アクリル酸又はメタクリル酸のグリシジルエステル類等が挙げられる。これら単量体は、単独で用いても、または2種以上の併用でもよく、0〜40重量%の範囲で使用するのが好ましい。使用量が多すぎると、防曇性能を低下させることがあり、好ましくない。
アクリル系樹脂は、公知の乳化剤、例えば陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤の中から選ばれる1種もしくは2種以上の存在下、水系媒質中で、乳化重合させる方法、反応性乳化剤を用いて重合させる方法、乳化剤を含有せずオリゴソープ理論に基づいて重合させる方法等によって得ることができる。乳化剤の存在下での重合方法の場合、これら乳化剤は、単量体の仕込み合計量に対し0.1〜10重量%の範囲で使用するのが、重合速度の調整、合成される樹脂の分散安定性の点から好ましい。
アクリル系樹脂の製造に好ましく用いられる重合開始剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;アセチルパーオキサイド、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物等が挙げられる。これらは、単量体の仕込み合計量に対して0.1〜10重量%の範囲で使用することができる。
疎水性アクリル系樹脂は、特に、ガラス転移温度が35〜80℃のものを用いるのが好ましい。ガラス転移温度が低すぎると無機質コロイド粒子が数次凝集して不均一な分散状態をとりやすく、高すぎる場合、透明性のある均一な塗膜を得るのが困難となりやすい。
疎水性アクリル系樹脂は水系エマルジョンとして用いるのが好ましい。各単量体を水系媒質中での重合によって得られた水系エマルジョンをそのまま使用しても良く、更にこのものに液状分散媒を加えて希釈したものでもよく、また上記のような重合によって生じた重合体を分別採取し、これを液状分散媒に再分散させて水系エマルジョンとしたものでもよい。
一方、本発明に用いることができるウレタン系樹脂としては、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系のアニオン性ポリウレタンの水性組成物、エマルジョンが挙げられるが、防曇性被膜の基体ポリオレフィン系樹脂フィルムとの密着性、耐水性及び耐傷付き性の点でポリカーボネート系のアニオン性ポリウレタンエマルジョンが好ましく、更なる防曇性被膜の耐水性、耐傷付き性向上並びに防曇性を発現するまでの時間及び防曇持続性の点でシラノール基を含有するポリカーボネート系のアニオン性ポリウレタンエマルジョンがより好ましい。これらは1種または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
シラノール基を含有するポリカーボネート系のアニオン性ポリウレタンエマルジョンとは分子内に少なくとも1個のシラノール基を含有するポリウレタン樹脂と、硬化触媒として強塩基性第3級アミンとを含有してなり、具体的には水相中にシラノール基含有ポリウレタン樹脂及び前記強塩基性第3級アミンが溶解しているもの、又は微粒子状に分散しているコロイド分散系のもの(エマルジョン)をいう。
ポリウレタン水性組成物は、その配合量を固形分重量比で疎水性アクリル系樹脂に対して0.01以上、2以下、更に好ましくは0.01以上1以下にすることが好ましい。0.01に満たないときには耐傷付き性の向上が見られにくく、また、防曇性を発現するまでの時間が長く、十分な防曇効果が発揮しにくい。また、多すぎるときは、耐傷付き性が配合量に比例して向上しにくいばかりでなく、塗布後に形成される塗膜が白濁化し光線透過率を低下させやすく、また、コスト面でも不利であり好ましくない。
本発明における防曇剤組成物を調製するときに、本発明の効果を阻害しない範囲で、陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤、高分子界面活性剤等の界面活性剤を添加することができる。特にこれら界面活性剤は、基材に添加すると、蛍光物質と拮抗作用を示すことがあり、これを避ける観点からも、防曇剤組成物からなる層を形成することにより防曇性を付与することが好ましい。
陰イオン系界面活性剤としては、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム等の脂肪酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等の高級アルコール硫酸エステル類;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩及びアルキルナフタレンスルホン酸塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;ジアルキルスルホコハク酸塩;ジアルキルホスフェート塩;ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンサルフェート塩等が挙げられる。
陽イオン系界面活性剤としては、エタノールアミン類;ラウリルアミンアセテート、トリエタノールアミンモノステアレートギ酸塩;ステアラミドエチルジエチルアミン酢酸塩等のアミン塩;ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩等が挙げられる。
非イオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンラウリルアルコール、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレン高級アルコールエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェノール、ポリオキシエチレンノニルフェノール等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類;ポリエチレングリコールモノステアレート等のポリオキシエチレンアシルエステル類;ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物;ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノベンゾエート等のソルビタン脂肪酸エステル類;ジグリセリンモノパルミテート、ジグリセリンモノステアレート等のジグリセリン脂肪酸エステル類;グリセリンモノステアレート等のグリセリン脂肪酸エステル類;ペンタエリスリトールモノステアレート等のペンタエリスリトール脂肪酸エステル類;ジペンタエリスリトールモノパルミテート等のジペンタエリスリトール脂肪酸エステル類;ソルビタンモノパルミテート・ハーフアジペート、ジグリセリンモノステアレート・ハーフグルタミン酸エステル等のソルビタン及びジグリセリン脂肪酸・2塩基酸エステル類;またはこれらとアルキレンオキサイド、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオンオキサイド等の縮合物、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシプロピレンソルビタンモノステアレート等;ポリオキシエチレンステアリルアミン、ポリオキシエチレンオレイルアミン、ポリオキシエチレンステアリン酸アミド等のポリオキシエチレンアルキルアミン・脂肪酸アミド類;シュガーエステル類等が挙げられる。
高分子界面活性剤としては、ポリアクリル酸塩、ポリメタクリル酸塩、セルロースエーテル類等が挙げられる。
これら界面活性剤の添加は、バインダー樹脂と無機質コロイドゾルとを容易にかつ速やかに均一に分散することができ、また無機質コロイドゾルと併用することにより、疎水性のポリオレフィン系樹脂フィルム表面に親水性を付与する機能を果たす。界面活性剤の添加量は、樹脂の固形分100重量部に対し0.1〜50重量部の範囲で選ぶと良い。
本発明に係る防曇剤組成物を調製するときに、架橋剤を添加することができる。架橋剤は、特にアクリル系樹脂同士を架橋させ、被膜の耐水性を向上させる効果がある。架橋剤としては、フェノール樹脂類、アミノ樹脂類、カルボジイミド系化合物、アミン化合物類、アジリジン化合物類、アゾ化合物類、イソシアネート化合物類、エポキシ化合物類、シラン化合物類等が挙げられるが、特にアミン化合物類、アジリジン化合物類、エポキシ化合物類が好ましく使用できる。
アミン化合物類としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ポリアミン;3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノシクロヘキシルメタン、イソホロンジアミン等の脂環式アミン;4−4’−ジアミノジヘニルメタン、m−フェニレンジアミン等の芳香族アミンが使用される。アジリジン化合物類としては、トリス−2,4,6−(1−アジリジニル)−1,3,5−トリアジン、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリス[1−(2−メチル)−アジリジニル]ホスフィンオキシド、ヘキサ[1−(2−メチル)−アジリジニル]トリホスファトリアジン等が使用される。
エポキシ化合物類としては、ビスフェノールA又はビスフェノールFとエピクロルヒドリンとの反応生成物、フェノール(又は置換フェノール)とホルムアルデヒドとの樹脂反応生成物とエピクロルヒドリンの反応により生成されるエポキシ化ノボラック樹脂、エピクロルヒドリン及び脂肪族多価アルコール例えばグリセロール、1,4−ブタンジオール、ポリ(オキシプロピレン)グリコール又は類似の多価アルコール成分から生成される樹脂状反応生成物及び過酢酸を用いるエポキシ化により得られる樹脂等が使用される。エポキシ化合物類では、さらに三級アミン類や四級アンモニウム塩類を触媒として併用することができる。これら架橋剤は、その添加量がアクリル系樹脂固形分に対して0.1〜30重量%の範囲で使用することができる。
本発明における防曇剤組成物には、必要に応じて、液状分散媒を配合することができる。かかる液状分散媒としては、水を含む親水性ないし水混合性溶媒がふくまれ、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、等の1価アルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類;ベンジルアルコール等の環式アルコール類;セロソルブアセテート類;ケトン類等が挙げられる。これら液状分散媒は単独で用いても併用しても良い。
本発明における防曇剤組成物には、通常の塗料に配合することが出来る顔料、顔料分散剤、充填剤、沈降防止剤、たれ防止剤、消泡剤、レベリング剤、ハジキ防止剤、密着性向上剤、防腐剤、防藻剤、防菌剤、防臭剤、紫外線吸収剤、耐候剤、可塑剤、造膜助剤、造粘剤、カップリング剤その他各種添加剤を配合することが出来る。添加量は特に限定されず、本発明の効果に影響しない範囲で適宜選択すればよい。
本発明における防曇剤組成物の配合方法は、特に限定されないが、均一混合されることが好ましく、配合時の温度及び混合方法は適宜適切な方法を選択することが出来る。
また、基材フィルムと防曇剤組成物からなる層との接着性が充分でない場合には、基材フィルムに表面処理を施しておいてもよい。基材フィルムの表面に施す処理の方法としては、コロナ放電処理、スパッタエッチング処理、ナトリウム処理、サンドブラスト処理等の方法が挙げられる。コロナ放電処理法は、針状あるいはナイフエッジ電極と対極間で放電を行わせ、その間に試料を入れて処理を行い、フィルム表面にアルデヒド、酸、アルコールパーオキサイド、ケトン、エーテル等の酸素を含む官能基を生成させる処理である。スパッタエッチング処理は、低気圧グロー放電を行っている電極間に試料を入れ、グロー放電によって生じた正イオンの衝撃によりフィルム上に多数の微細な突起を形成するものである。サンドブラスト処理は、フィルム面に微細な砂を吹きつけて、表面上に多数の微細な凹凸を形成するものである。これら表面処理の中では、塗布層との密着性、作業性、安全性、コスト等の点から、コロナ放電処理が好適である。
本発明における基材フィルムの最表面に防曇剤組成物からなる層を形成するには、公知の湿式、乾式の塗布方法を任意に選択することができるが、幅広塗工可能で、且つ塗工設備が簡易な湿式塗工が好ましく用いられる。湿式塗工の場合、一般に防曇剤組成物の溶液または分散液をそれぞれドクターブレードコート法、ロールコート法、ディップコート法、スプレーコート法、ロッドコート法、バーコート法、ナイフコート法、ハケ塗り法等それ自体公知の塗布方法を採用し、塗布後乾燥すればよい。
塗布後の乾燥方法は、自然乾燥及び強制乾燥のいずれの方法を採用してもよく、強制乾燥方法を採用する場合、通常50〜200℃、好ましくは70〜180℃の、更に好ましくは70〜150℃の温度範囲で乾燥すればよい。乾燥温度が200℃より高い場合、短い乾燥時間であっても、基材内の蛍光物質の熱劣化を引き起こし、基材フィルムの融解や熱収縮等変形の問題が生じる可能性がある。加熱乾燥には、熱風乾燥法、赤外線乾燥法、遠赤外線乾燥法、及び紫外線硬化法等適宜方法を採用すればよく、乾燥速度、安定性を勘案すれば熱風乾燥法を採用するのが有利である。
湿式乾燥の場合、防曇剤組成物の塗工量は、特に限定されないが、乾燥時の単位面積あたりの塗工量として、好ましくは0.01〜10g/m、更に好ましくは0.1〜5g/mである。この範囲以下では良好な防曇性を得にくく、この範囲を超えると白化による透明性低下を引き起こす為、好ましくない。
湿式乾燥の場合の防曇剤組成物からなる層(「防曇性被膜」ともいう。)の厚みは、基材フィルムの1/10以下を目安に選択するとよいが、必ずしもこの範囲に限定されるものではない。防曇性被膜の合計厚さが基材フィルムの1/10より大であると、基材フィルムと被膜とでは屈曲性に差があるため、被膜が基材フィルムから剥離する等の現象がおこりやすく、また、被膜に亀裂が生じて基材フィルムの強度を低下させるという現象が生起し、好ましくない。
本発明の農業用ポリオレフィン系フィルムは、防曇性被膜に加え、それ以外の塗膜を形成することが出来る。例えば防曇性被膜をハウス内面に、防塵性塗膜をハウス外面に形成しても良い。その場合、ブロッキング防止効果が防塵性塗膜により更に向上する場合がある。
本発明の農業用ポリオレフィン系フィルムの厚みについては、強度やコストの点で0.01〜1mmの範囲のものが好ましく、0.05〜0.5mmのものがより好ましく、更に好ましくは0.05〜0.2mmである。この範囲未満では強度的に問題があり、この範囲を超えると成形が困難なうえ、展張作業性に問題がある。
また、本発明の農業用ポリオレフィン系フィルムは単層または多層フィルムのいずれであってもよい。多層フィルムの場合は、3層から5層が各層のバランスをとりやすい。3層フィルムを構成する層比としては、成形性や透明性及び強度の点から1/0.5/1〜1/5/1の範囲が好ましく、1/2/1〜1/4/1の範囲がより好ましい。また、外層と内層の比率としては、特に規定されるものではないが、得られるフィルムのカール性から同程度の比率とするのが好ましい。
本発明に係る農業用ポリオレフィン系フィルムを、実際に使用するにあたっては、防曇性被膜の設けられた側をハウス又はトンネルの内側となるようにして展張するのがよい。
本発明において農作物栽培用資材とは、少なくともポリオレフィン系樹脂と蛍光物質とから構成される樹脂組成物を原材料として成形することによって得られるフィルム自体、及び、該フィルムを裁断して得られる長尺フィルム、該フィルムをさらに加工して得られるフラットヤーン、モノフィラメント、及び/又は複合モノフィラメント等を素材として作製された織編布を包含するものである。
本発明の農作物栽培用資材を作製するのに使用されるフィルムあるいは素材の製造法としては、特に限定されるわけではなく、押出成形、射出成形、圧縮成形などが適用可能であり、特に押出し成形が好ましく使用される。織編布としては、特にネットを挙げることができるが特に限定されない。本発明における農作物栽培用資材は、例えば、特開2007−135583号に記載されている方法により製造することができる。
本発明においては、前記農作物栽培用資材は、少なくとも熱可塑性樹脂と式(1)で表される蛍光物質とから構成される樹脂組成物を原材料として成形することによって得られるフィルムを裁断して得られるが、当該フィルムとして、好適には、該蛍光物質を含有する樹脂組成物を、樹脂温度として、好ましくは180℃以下、更に好ましくは160℃以下で成形して得られたものを用いるのがよい。これにより、フィルム成形時に発泡の発生を防ぐことができ、発泡によるフィルムの強度低下、透明性低下を回避でき、その結果、強度低下のない農作物栽培用資材を得ることができる。
本発明の農業用ポリオレフィン系フィルム及び農作物栽培用資材を使用することができる植物としては、長日植物(長日に反応して花芽形成を調節する植物)でも、短日植物(短日に反応して花芽形成を調節する植物)でも、中性植物(光周期に反応しない植物)でも特に限定されずに適用できる。具体的には、花き園芸植物、果菜類、果樹類及び穀物類が挙げられ、例えば、ファレノプシス、シンビジウム、デンドロビウムをはじめとするラン類、サボテン類、バラ、カーネーション、ガーベラ、カスミソウ、ユリ、スターチス等の切り花用途の花き類、及び、パンジー、プリムラ、ベゴニア、ペチュニア、シクラメン等の鉢花用途の花き類;トマト、キュウリ、メロン、イチゴ、ピーマン等の果菜類;ナシ、リンゴ、ブドウ等の果樹類;及びトウモロコシ、コムギ等の穀物類などにも適用可能である。特に本発明の効果を最大限に活用するには、花芽形成が遅い植物、自然状態での花芽形成数が少ない植物、あるいは特別に通常状態よりも多くの実生が必要な状態になった植物を対象とすることが考えられる。
対象植物の栽培方法としては、とくに限定されるものではなく、培土をつめたトレイやポットを用いて発芽・育苗したものを圃場に定植し栽培する方法、スポンジキューブ上で発芽させた後、そのまま水耕栽培する方法、養分を含んだ寒天上で無菌的に組織培養し育苗する方法等、植物の種類や栽培の目的に応じた栽培法を用いることが出来る。
また、本発明の農業用ポリオレフィン系フィルム及び農作物栽培用資材を使用することができる好適な植物は、バラ科の植物、中でもバラ亜科の植物であり、具体的には、バラ、ハマナス、オニシモツケ、クマイチゴ、シロヤマブキ、ヤマブキ、イチゴ、ワレモコウ、キジムシロであり、特に、バラおよびイチゴの栽培に好適に使用される。
本発明の農業用ポリオレフィン系フィルム及び農作物栽培用資材は、好ましくは、バラの切花栽培やイチゴ栽培、より好ましくは上述したバラのアーチング法による栽培において効果的に使用することができる。
バラのアーチング法による栽培方法として、特開平3−191716号公報に記載の方法、特開平4−330231号公報、特開平4−341123号公報、実開平7−39356号公報などがあるが、本発明の農業用ポリオレフィン系フィルム及び農作物栽培用資材は、これらを含む公知のバラのアーチング法による栽培法に好適に使用される。
例えば、栽培初期に最初に伸びた枝のツボミだけを取り、その枝は株元付近で人為的に曲げて倒伏状態を維持せしめ、その株元付近から発生するベーサルシュートを枝として生育させてその枝の葉がついていない基部から切断採花し、最初の採花以後は、採花しないすべての枝の葉がついていない基部から発生するベーサルシュートを枝として生育させてその枝の葉がついていない基部から切断採花することを繰り返すアーチング法によるバラの栽培方法を行う場合に、本発明の農業用ポリオレフィン系フィルムを、施設園芸用ハウスにおいて、内張り又は外張りフィルムとして使用することができる。
本発明の農業用ポリオレフィン系フィルムは、ハウス内層側の防曇性が非常に良好であり、水滴による光散乱による光量不足に起因した栽培性低下及び水滴落下に起因する病害発生を防止しながら、高い栽培性改良効果を得る事が可能な農業用資材であり、更に特定の紫外線吸収剤と組み合わせることにより、バラ花色に影響を及ぼすことなく、高い栽培性改良効果を長期間得ることができる為、非常に好ましい。本発明の農業用資材は、ハウス、トンネル、マルチング用、袋掛用等の農業用フィルム及びネット等として好適に使用することができる。本発明の農業用ポリオレフィン系フィルムは、外張り用、内張り用いずれにも使用することができる。また、本発明の農業用ポリオレフィン系フィルムを使用する好適な例を図9に示す。なお、本発明の農業用ポリオレフィン系フィルムは波長変換する機能を有するため、外張り用フィルムとして使用する場合は、栽培作物の色によっては実際のものと見た目で異なる色に見えることがあるため、フィルムを展張したままでは収穫時期を性格に判断しづらいことがあるが、外張りに使用することで太陽光を多く取り入れることができるため赤色光をより多く取り込むことができるという利点がある。
以下、本発明を実施例、参考例、比較例を用いて詳細に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
(1)蛍光物質の評価
以下の組成を有するポリオレフィン系三層フィルム(内層/中間層/外層の厚み=1/3/1、総厚み:150μm)を三層インフレーション成形により調製する。なお、本試験に先立ち、加工温度(押し出し機とダイスの設定温度)を150℃と200℃の場合について三層インフレーション成形試験をしたところ、150℃では発泡がなかったが、200℃では発泡が発生したことを確認した。そこで、本試験では、成形温度については、ダイス温度を160℃、押し出し機温度を150℃とした。
フィルムの主な構成は下記の通りとした。その他に特に記載しないが、農業用フィルムを構成するのに必要な添加剤(アンチブロッキング剤や酸化防止剤等の添加剤)は市販のものを通常量使用した。
ハウス内外層:メタロセンPE=メタロセン触媒で製造したエチレン・αオレフィン共重合体(MFR:2g/10分、密度:0.912)
ハウス中間層:EVA=エチレン・酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含有量15重量%、MFR2g/10分)
ここで、蛍光物質は、以下のものを用いた。
参考例1:SMART LIGHT RL1000(チバ製)(式(1)において、R1=R2=メチル基である化合物) 中間層中1.67%
比較例1:TIOPAL OB(チバ製) 中間層中1.67%
比較例2:ルモゲンF レッド305(BASF製) 中間層中0.0167%(ポリオレフィン系樹脂に相溶しない為、添加量を減らして使用した。)
比較例3:SX−103(シンロイヒ(株)製) 中間層中1.67%
このようにして得た参考例1、比較例1〜3のポリオレフィン系多層フィルムの初期の全光線透過率を図1に、負荷試験(90時間)後の全光線透過率を図2に示す。全光線透過率は分光光度計(日立製作所製、U3500型)により測定した。また、負荷試験は次の条件で行った。
(a)60℃、湿度70%の条件下、295〜780nmの波長分布の光を80mW/cm2の照射強度で5時間
(b)30℃、98%(シャワーによる水噴霧あり)の条件下、照射無しで1時間のサイクルで、各記載の時間、負荷試験を実施した
ここで、図1は、参考例1、比較例1〜3のフィルムは350nm〜600nm付近の波長において吸収があり、これは紫外部から緑色域の光が吸収されたことを示している。なお、全光線透過率を測定した機器は波長をスキャンするタイプの分光光度計であるため発光を測定することができないが、吸収エネルギーが大きいことを発光エネルギーが大きいこととみなせる。図1より、参考例1及び比較例1のフィルムが350nm〜600nm付近の波長域での吸収エネルギーが大きいことから、600nm以上(赤色域)での発光が大きいことが理解できる。
この点について確認するために、参考例1のフィルムと蛍光物質を添加しないフィルム(比較例4:蛍光物質を添加しない点以外は上記した樹脂組成と同じである)を使用して太陽光での波長変換を調べる試験を行った。試験は、英弘精機(株)製分光放射計「MS−720」を使用して1nm毎の値に換算した照度を測定した。また、試験の方法としては、短時間での太陽光の照度が変化しにくい気候条件を選んで、受光部分全体をフィルムで覆って照度を測定した。この結果を図3に示す。図3から、参考例1のフィルムでは、350nm〜600nm付近の波長では比較例4に対して吸収エネルギーが大きく、600nm付近〜700nm付近の波長では吸収エネルギーが小さくなっている。このことは、参考例1のフィルムは紫外部〜緑色の光を吸収して赤色光に変換していることを示している。
また、図1と図2によると、比較例1では、350nm〜600nmでの吸収エネルギーが顕著に減少しているのに対して、参考例1のフィルムの当該波長域での吸収エネルギーはほとんど減少していない。この結果から、参考例1のフィルムは負荷試験後も350nm〜600nmの波長の光を吸収して、600nm〜700nm付近の光に変換して効率的に発光するものである。以上から、本発明で使用する蛍光物質が、他の蛍光物質に比べて所望の波長変換性能、及び安定性に優れることがわかる。
(2)防曇剤の拮抗作用の評価
蛍光物質と防曇剤との拮抗作用及び防曇性被膜形成によるその回避を調べるため以下の構成を有するポリオレフィン系多層フィルムを調製した。なお、通常農業用フィルムを構成するのに必要なその他の添加剤(アンチブロッキング剤や酸化防止剤等の添加剤)として市販のものを通常量使用した。
樹脂組成
ハウス内層:EVA=エチレン・酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含有量5重量%、MFR2.3g/10分)
ハウス外層:メタロセンPE=メタロセン触媒で製造したエチレン・α−オレフィン共重合体(MFR:2g/10分、密度0.912)
ハウス中間層:EVA=エチレン・酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含有量15重量%、MFR2g/10分)
主要添加剤
蛍光物質:SMART LIGHT RL1000 中間層中に1.67%を添加
光安定剤:tinuvin NOR 371 FF 中間層中に0.4%を添加
エチレン・環状アミノビニル化合物(日本ポリエチレン株式会社製XJ100H):内層及び外層にそれぞれ8%を添加
紫外線吸収剤:tinuvin 1577 ED 中間層中に0.09%を添加
防曇剤:ソルビタンパルミチン酸エステル0.5モルPO付加物 内層及び中間層中にそれぞれ1.5%添加
ジグリセリンジステアレート/モノグリセリンモノステアレート:内層中に0.5%を添加
上記組成に基づいて、以下の3種類のフィルムを調製した。
実施例1:蛍光物質添加あり、防曇性被膜あり、防曇剤添加無し
比較例5:蛍光物質添加あり、防曇性被膜無し、防曇剤添加あり
比較例6:蛍光物質添加無し、防曇性被膜あり、防曇剤添加無し
なお、防曇性被膜は、以下の要領により形成した。
防曇性被膜の形成(防曇性被膜塗布タイプ)
防曇剤組成物の配合組成
無機質コロイドゾル(コロイダルシリカ) 4.0
熱可塑性樹脂(サンモールSW−131) 3.0
架橋剤(T.A.Z.M) 0.1
分散媒(水/エタノール=3/1) 93
(注)無機質コロイドゾルの配合量は、無機質粒子量で示し熱可塑性樹脂の配合量は重合体固形分量で示す。
コロイダルシリカ:日産化学社製スノーテックス30、平均粒子径15mμ
サンモールSW−131:三洋化成社製アクリルエマルジョン
T.A.Z.M:相互薬工社製アジリジン系化合物
基体フィルムの表面に、上記の防曇剤組成物を#5バーコーターを用いて各々塗布した。塗布したフィルムを80℃のオーブン中に1分間保持して、液状分散媒を揮発させ防曇性被膜を形成した。得られた各フィルムの塗膜の厚みは約1μmであった。
上記のフィルムについて全光線透過率を測定した結果を図4に示す。この図から、比較例5は400〜500nmでの吸収エネルギーが低下しているのに対して、実施例1のフィルムは十分な吸収エネルギーを有することが分かる。従って、本発明における蛍光物質を含有する基材フィルムに防曇性被膜を形成させることにより、基材フィルムへの防曇剤添加による拮抗作用を回避しながら、フィルムに優れた防曇性を付与できることが理解できる。
(3)紫外線吸収剤添加による効果の評価
以下のサンプルを調製した。
中間層にトリアリールトリアジン型紫外線吸収剤(tinuvin 1577 ED 一般式(2)においてR3がヘキシル基で、R4−R7が水素原子を示す)を0.4%及び別のトリアリールトリアジン型紫外線吸収剤(UV1164 一般式(2)において、R3がオクチル基、R4−R7がメチル基を示す)を0.2%添加した以外は参考例1と同じ構成の多層フィルムに上記(2)の防曇性被膜を形成させたフィルム(実施例2)
参考例1のフィルムに防曇性被膜を形成させたフィルム(実施例3)
上記のフィルムについて初期の全光線透過率と負荷試験(250時間)後での全光線透過率を測定した。負荷試験は上記(1)(蛍光物質の評価)で行った試験方法に準じて行った。実施例3のフィルムについての結果を図5に、実施例2のフィルムについての結果を図6に示す。図5から、紫外線吸収剤を添加しない場合は、負荷試験(250時間)後の350〜600nmの波長域での吸収はある程度減少することが分かる。これに対して、図6は、負荷試験(250時間)後の350〜600nmの波長域での吸収が僅かにしか減少しないことを示している。これらの結果から、特定の蛍光物質と特定の紫外線吸収剤(トリアリールトリアジン型紫外線吸収剤)を組み合わせることにより負荷試験後においてもより良好な波長変換性能を維持できることが分かる。
(4)栽培試験
本発明のポリオレフィン系農業用フィルム及び蛍光物質を含有するが防曇性被膜を形成していないフィルムを太陽光の波長変換フィルムとしてハウス内張りフィルムとして使用した場合(図8)、及び市販の赤色LED1(京セミ株式会社製:KED661M53(ガリウム・アルミニウム・ヒ素系)、発光ピーク:660nm、発光出力(駆動電流20mA):3mW))、及び市販の赤色LED2(昭和電工株式会社製:HRP−350F(アルミニウム・ガリウム・インジウム・リン系)、発光ピーク:660nm、発光出力(駆動電流20mA):11mW))、蛍光ランプ処理、無処理区(内張りフィルム無し、LED、蛍光ランプ無し)を設けてバラのアーチング栽培試験を次のように行った。
栽培試験方法
供試品種:リトルマーベル(3年株)
処理方法
(1)処理時間は、いずれの区も17:00〜翌日8:00の15時間とした。
(2)処理時期は、2009年9月28日開始〜2009年11月15日まで。
(3)蛍光ランプは1灯を光源から株元の距離10cmとして株元照射した。
(4)各発光ダイオードは、1パッケージ(発光単位)あたり10個の発光ダイオードチップを実装し、幅4cm、120cm長さのアルミ基板上に、長さ方向5cm間隔で1パッケージを配置した。これにより、合計約240個の発光ダイオードチップを実装したLEDパネルを作製した。
(5)上記LEDパネルを、株元及び株元から曲げた枝の葉が混み合っている部分(同化専用枝)へ各1枚配置し照射した。光源から株元または葉への距離は10cmとした。各発光ダイオードの照射部での光量子束密度は次の通りであった。
市販の赤色LED1:40〜50μmol・m−2・s−1
市販の赤色LED2:120〜150μmol・m−2・s−1
(6)蛍光ランプの処理については、隣への影響を防止するため、ベンチ中央に発泡板にて間仕切りした。図7はバラの枕元、同化専用枝に照射する様子を示す模式図である。また、波長変換フィルムを用いる場合には、紫外線吸収剤を配合していない塗布型農業用ポリオレフィンフィルムを外張りフィルムとしてハウスに展張し、本発明の波長変換フィルム(実施例2のフィルム)を、通常の内張りカーテンの巻き上げ装置に設置して内張りフィルムとして使用した。その模式図を図8に示す。また、比較として、参考例1の多層フィルム(防曇性被膜を設けないフィルム)を内張りフィルムとして用いた場合についても試験をした。
耕種概要
(1)定植:2009年4月24日
(2)栽培密度:910mm×200mm×75mmのロックウールマット1枚当たり6株定植、マットは60cm幅のベンチに2列平行に並べた。
(3)養液管理:EC0.8〜1.5ds/m
給液回数11回/日
(4)温度管理:25℃で換気、最低気温18℃
(5)区制:各区 12株、反復なし、切り花調査は5株を対象とした。
Figure 0005638792






上の表に示すように、実施例2のフィルムを用いると、ハウス内層側の防曇性が非常に良好であることから水滴による光散乱による光量不足に起因した栽培性低下を防止しながら、高い栽培性改良効果を得る事ができた。一方、参考例1のフィルム(防曇性被膜なし)を用いると、ハウス内層側に水滴が付着して光散乱が起こるため、光量が不足してしまい期待する波長変換効果を得ることができず、栽培性は大きく向上しなかった。
(5)トリアリールトリアジン型紫外線吸収剤添加の効果
上記(3)の試験で示したように、蛍光物質の寿命向上には紫外線吸収剤の添加が有益であり、このことは、紫外線吸収材により蛍光物質の劣化原因となる紫外線を吸収させることができるためである。一方、バラ等の栽培において花色を保つには紫外線がある程度必要である。そこで、紫外線吸収剤の種類とバラ花色への影響について調べた。
以下のフィルムサンプルを準備して、ハウスの外張り用フィルムに使用して赤色バラの栽培試験を実施した。
(実施例5)
透過タイプ三層ポリオレフィン系フィルム(150μm厚み):UV剤添加なし
(実施例6)
部分UVカット三層ポリオレフィン系フィルム(150μm厚み):tinuvin326を中間層に0.06%添加(ベンゾトリアゾール型紫外線吸収剤)
(実施例7)
360nm以下UVカット三層ポリオレフィン系フィルム(150μm厚み):tinuvi1577EDを中間層に0.4%添加、UV1164を中間層に0.2%添加(共にトリアリールトリアジン型紫外線吸収剤)
(実施例8)
380nm以下UVカット三層ポリオレフィン系フィルム(150μm厚み):tinuvin326を中間層に0.9%添加(ベンゾトリアゾール型紫外線吸収剤)
実施例5〜8のフィルムはいずれも蛍光物質(SMART LIGHT RL1000)を中間層中に1.67%添加した。また、これらフィルムの主な構成は以下の通りであり、その他農業用フィルムを構成するのに必要な添加剤(アンチブロッキング剤や酸化防止剤等)は市販のものを使用した。また、実施例5〜8のいずれのフィルムにおいても上記(2)(防曇剤の拮抗作用の評価)に記載した要領で防曇性被膜を形成させた。
ハウス内外層:メタロセンPE=メタロセン触媒で製造したエチレン・αオレフィン共重合体(MFR:2g/10分、密度:0.912)
ハウス中間層:EVA=エチレン・酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含有量15重量%、MFR2g/10分)
試験結果を以下の表に記す。
Figure 0005638792
上記の結果から、特定の紫外線吸収剤(トリアリールトリアジン型紫外線吸収剤)の添加により、バラ花色(アントシアニン系色素発現)への阻害を回避可能であることが示される。
本発明の農業用ポリオレフィン系フィルムは、ハウス内層側の防曇性が非常に良好であり、水滴による光散乱による光量不足に起因した栽培性低下及び水滴落下に起因する病害発生を防止しながら、高い栽培性改良効果を得る事が可能な農業用資材であり、更に特定の紫外線吸収剤と組み合わせることにより、バラ花色に影響を及ぼすことなく、高い栽培性改良効果を長期間得ることができる為、非常に好ましい。本発明の農業用資材は、ハウス、トンネル、マルチング用、袋掛用等の農業用フィルム及びネット等として好適に使用することができる。

Claims (9)

  1. 式(1)で表される蛍光物質を0.1〜5重量%含有するポリオレフィン系樹脂組成物からなる基材フィルム上に、無機微粒子及び/又は合成樹脂バインダーを主成分とする防曇剤組成物からなる層を形成してなることを特徴とする農業用ポリオレフィン系フィルム。
    Figure 0005638792
    (式中、R1〜R2は、それぞれ独立して水素原子、又は炭素数1〜10のアルキル基を表す。)
  2. 式(1)におけるR1、R2がメチル基である、請求項1に記載の農業用ポリオレフィン系フィルム。
  3. 前記樹脂組成物がトリアリールトリアジン型紫外線吸収剤の少なくとも一種を含有することを特徴としてなる請求項1又は2に記載の農業用ポリオレフィン系フィルム。
  4. トリアリールトリアジン型紫外線吸収剤が下記一般式(2)で表されるトリアリールトリアジン型紫外線吸収剤であることを特徴とする請求項3に記載の農業用ポリオレフィン系フィルム。
    Figure 0005638792
    (式中、R3〜R7は、それぞれ独立して水素原子、又は炭素数1〜10のアルキル基を表す。)
  5. 式(2)におけるR3がヘキシル基であり、R4〜R7が水素原子である、請求項4に記載の農業用ポリオレフィン系フィルム。
  6. 式(2)におけるR3がオクチル基であり、R4〜R7がメチル基である、請求項4に記載の農業用ポリオレフィン系フィルム。
  7. 基材フィルム中の全ポリオレフィン系樹脂の重量に基づき、前記式(2)で表されるトリアリールトリアジン型紫外線吸収剤を0.01%より多く2.00%未満含有してなることを特徴とする、請求項3〜6のいずれか一項に記載の農業用ポリオレフィン系フィルム。
  8. バラ科の栽培において、請求項1〜7のいずれか一項に記載の農業用ポリオレフィン系フィルムを、施設園芸用ハウスにおいて、内張り又は外張りフィルムとして使用することを特徴としてなる栽培方法。
  9. バラ科の栽培方法が、栽培初期に最初に伸びた枝のツボミだけを取り、その枝は株元付近で人為的に曲げて倒伏状態を維持せしめ、その株元付近から発生するベーサルシュートを枝として生育させてその枝の葉がついていない基部から切断採花し、最初の採花以後は、採花しないすべての枝の葉がついていない基部から発生するベーサルシュートを枝として生育させてその枝の葉がついていない基部から切断採花することを繰り返すアーチング法による栽培方法であることを特徴とする請求項8に記載の栽培方法。
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