JP5637813B2 - リチウムイオン二次電池ラミネートケース用オーステナイト系ステンレス鋼箔および製造法 - Google Patents

リチウムイオン二次電池ラミネートケース用オーステナイト系ステンレス鋼箔および製造法 Download PDF

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Description

本発明は、リチウムイオン二次電池のセルを収納するためのラミネート型のケースに用いる金属箔、およびその製造法に関する。
リチウムイオン二次電池はエネルギー密度が高く、高出力特性を有することから、ノート型パソコン、携帯電話、モバイル機器などの小型電池として広く用いられている。電池には小型軽量化が求められるため、電池のセルを収納するケースにはラミネート型のものが採用されることが多い。
一般的なラミネート型の電池ケースは、金属箔の表面にポリプロピレン等の耐酸性樹脂フィルム層を形成したラミネートシートをプレス成形して、周辺部に耳を残した状態でカップ状とした部材(プレス成形体)で構成される。電池は、このようなプレス成形体を2つ用意し、双方の部材のカップ部分(凹部)の間に電池セルを収容して、電極タブを外部に出した状態で耳部同士を熱融着することにより製造される。上記の金属体の素材としては、アルミニウム合金が使用されることが一般的である。
特開2004−52100号公報
最近では、リチウムイオン二次電池を電気自動車やハイブリッド自動車に搭載する検討が進められ、すでに実用化段階にある。また、太陽電池で発電した電気エネルギーを蓄電するための電力用途においても、今後リチウムイオン二次電池の適用が見込まれる。これら用途に使用するリチウムイオン二次電池では、出力容量の増大に伴い活性な電解質の含有量が増加するため、その電池ケースには、小型電池の場合よりもさらに優れた堅牢性・耐久性が要求される。
アルミニウム合金箔をベースとした従来一般的なラミネート型の電池ケースにおいて、その強度を向上させる手段としては、箔の素材をステンレス鋼に変更することが有効である。特許文献1にはオーステナイト系ステンレス鋼箔を用いた電池用ケースが記載されている。ただし、プレス成形性を付与するために、ステンレス鋼箔の最終焼鈍では表面の窒化を極力防止すべきであることが教示されている。
特許文献1の技術によればアルミニウム合金箔を用いる場合と比べ、ラミネート型電池ケースの強度向上が実現される。しかしながら発明者らの調査によれば、オーステナイト系ステンレス鋼箔をベースとするラミネートシートを用いた電池ケースでは、熱融着部の剥離強度(ヒートシール強度)が従来よりも低下する場合があることがわかった。また、ラミネートシートをプレス成形すると、表面の樹脂フィルム層が白く変色するという不具合(白化現象)が生じやすいことがわかった。白化現象は樹脂フィルムに微細な亀裂が生じることによって起こる現象である。
本発明は、リチウムイオン二次電池のケースに用いるラミネートシートにおいて、プレス成形性が良好であり、プレス成形時に樹脂フィルム層の白化現象が抑止され、プレス成形体の耳部同士を熱融着した場合の熱融着部での耐剥離性に優れ、かつアルミニウム箔を用いたものよりも強度が高いものを実現しようというものである。
上記目的は、質量%で、C:0.03〜0.15%、Si:1.00%以下、Mn:1.50%以下、Ni:5.0〜10.0%、Cr:15.0〜20.0%、Cu:0.05〜0.50%、Mo:0〜0.50%、N:0.10%以下、残部Feおよび不可避的不純物からなり、かつ下記(1)式で表されるMd値が0.0〜40.0である組成を有する厚さ40〜150μmのステンレス鋼箔であって、厚さ方向に存在する結晶粒の平均個数が5.0個以上であり、表層2nm領域の平均窒素濃度が5.0〜9.5質量%であるリチウムイオン二次電池ラミネートケース用オーステナイト系ステンレス鋼箔によって達成される。
Md値=551−462(C+N)−9.2Si−8.1Mn−29(Ni+Cu)−13.7Cr−18.5Mo …(1)
ここで、Mo含有量の下限「0%」はMoが無添加である(製鋼工程における通常の分析手法において検出されない)場合を意味する。(1)式の元素記号の箇所には質量%で表される当該元素の含有量の値が代入される。無添加の元素については0(ゼロ)が代入される。
「厚さ方向に存在する結晶粒の平均個数」は、箔の圧延方向および厚さ方向に垂直な断面(L断面)についての厚さ全体が視野に入る金属組織観察画像上に、厚さ方向の直線を等間隔でn本引き(ただしn≧10とする)、各直線について、直線と結晶粒界の交点の数mを求め、m+1の値をその直線位置での厚さ方向の結晶粒の数aとし、各直線についてのa値の総和を直線の数nで除することにより求めることができる。ただし、圧延方向の測定距離(両端の直線の圧延方向距離)は箔の平均厚さの5倍以上とする。また、箔の表面は結晶粒界とみなさない。
「表層2nm領域の平均窒素濃度」は、高周波グロー放電発光分析装置(GDS)を用いて測定した深さ方向の「光強度−時間」プロファイルを標準試料による検量線によって定量演算して「含有率(質量%)−深さ(nm)」プロファイルを作成し、最表面から2nmまでの窒素濃度の平均値を算出することにより求めることができる。
また、上記のリチウムイオン二次電池ラミネートケース用オーステナイト系ステンレス鋼箔の製造法として、冷間圧延により厚さが調整されたステンレス鋼箔に対して非酸化性雰囲気中での最終焼鈍を施すに際し、雰囲気ガス中の窒素濃度を15〜30体積%、炉内温度を1000〜1100℃とし、箔の温度が980℃以上となる保持時間が3sec以上確保され、かつ厚さ方向に存在する結晶粒の平均個数が5.0個以上となる範囲に在炉時間を設定する手法が提供される。在炉時間は、箔の温度が980℃以上となる保持時間を3〜15secとすることがより好ましい。
ここで、炉内温度は、炉内に長時間入れられた材料が最終的に到達する温度である。箔の温度は、箔自体の材料温度であり、箔の場合は昇温過程での表面と内部の温度差は非常に小さいことから、表面温度を採用することができる。
本発明を利用して提供されるラミネートシートは、ステンレス鋼箔を使用しているにもかかわらずプレス成形性が良好であり、かつプレス時に樹脂フィルム層の白化現象(微細亀裂の発生)が顕著に抑止されるものである。このラミネートシートを用いた電池ケースは、従来一般的なラミネート型電池ケースよりも強度が高く、熱融着部の耐剥離性も十分に確保される。したがって本発明は、電気自動車、ハイブリッド自動車をはじめとする大型機器への電力供給用途や、太陽電池発電システムの電力貯蔵用途などにおいて、リチウムイオン二次電池の普及に貢献しうる。
ヒートシール強度測定のために成形したカップの中心軸を含む断面を模式的に示した図。 ヒートシール強度測定用の引張試験片断面を模式的示した図。
オーステナイト系ステンレス鋼箔をベースとするラミネートシートを用いる場合に、まず克服しなければならない問題として、プレス成形性の向上が挙げられる。発明者らの詳細な検討の結果、オーステナイト安定度が高い鋼種を採用するよりも、準安定な組成を有するオーステナイト系鋼種を採用することが、電池ケースのプレス成形には有利であることが確認された。電池ケースのプレス成形は張出し要素が強い加工となり、準安定な鋼種の方が成形高さの向上には有利となる。
また、電池ケースのプレス成形は完全な張出し加工ではなく、深絞り加工の要素を有する複合成形となる。そのため、パンチが材料に当たった直後にフランジ部がスムーズに引き込まれることが、良好な成形性を得る上で重要となる。種々検討の結果、箔の表層部に窒化層が十分に形成されていることが、フランジの引き込みに極めて有効であることがわかった。表面の窒化層により変形初期の加工誘起マルテンサイト変態が抑制され、表面の平滑性が高い状態で引き込まれるので、フランジ部の引き込みはよりスムーズに行われ、これが加工高さの向上に有効に機能する。
さらに、箔の表層部に窒化層を十分に形成しておくことによって、表層部での加工誘起マルテンサイト変態はプレス成形終了時点まで顕著に抑制される。このため、箔表面に密着している樹脂フィルム層は、プレス成形の過程において、下地ステンレス鋼箔のマルテンサイト変態に伴う凹凸発生に起因した局所的な引張応力から解放され、微細亀裂の形成が抑制される。樹脂フィルム層における微細亀裂が抑制されることは、同時に白化現象が防止されることを意味する。また、下地ステンレス鋼箔表面と樹脂フィルム層との密着性も高く維持される。その結果、プレス成形体の耳部同士の熱融着部において耐剥離性(ヒートシール強度)の低下が防止される。
特許文献1の教示によれば、オーステナイト系ステンレス鋼箔表面の窒化をできるだけ防止することがプレス成形性を向上させる上で重要であるという。しかしこの場合、表層部の加工誘起マルテンサイト変態に起因する白化現象や、熱融着部での耐剥離性の低下については、未解決のままである。本発明では、準安定な組成を有するオーステナイト系鋼種からなる箔を採用する手法と、その箔の表層部を十分に窒化させておく手法とを組み合わせることによって、プレス成形性の向上、白化現象の防止、熱融着部での耐剥離性の低下防止を一挙に実現した。
〔化学組成〕
本発明の対象であるオーステナイト系ステンレス鋼の成分組成について簡単に説明する。以下、鋼の成分組成に関する「%」は特に断らない限り「質量%」を意味する。
Cは、鋼の強度を高く維持するために必要な元素である。本発明では箔が対象であるため、C含有量が低すぎると変形速度の大きい大量生産現場でのプレス成形加工において、強度不足に起因した箔の「破れ」が生じやすく、結果的に成形性の低下に繋がる。種々検討の結果、C含有量は0.03%以上とする必要がある。一方、過剰のC含有は硬化による成形性の低下や、耐食性低下を招く要因となるので、0.15%以下の範囲とする。0.12%以下に管理してもよい。
Siは、脱酸剤として添加される元素である。ただし、過剰のSi含有は成形性低下の要因となる。種々検討の結果、Si含有量は1.00%以下に制限される。Si含有量の下限については特にこだわらないが、例えば0.03%以上、あるいは0.10%以上に管理してもよい。
Mnは、脱酸剤として有効であるとともに、Sを固定する作用により熱間加工性や耐食性の向上に有効である。これらの効果を十分に発揮させるためには、0.05%以上のMn含有を確保することがより効果的であり、0.10%以上とすることがさらに効果的である。0.50%以上に管理してもよい。ただし、過剰のMn含有は成形性低下の要因となる。種々検討の結果、Mn含有量は1.50%以下の範囲に制限される。
Niは、準安定オーステナイト系ステンレス鋼としてのプレス成形性や耐食性を確保する上で必須の元素である。そのためには5.0%以上のNi含有量を確保する必要がある。ただし、多量のNi含有はコスト増を招くとともに、オーステナイト安定度を過剰に安定化させる要因となるので、10.0%以下の範囲に制限される。
Crは、ステンレス鋼の耐食性を維持する上で必須の元素であり、ここではCr含有量15.0%以上の鋼が対象となる。ただし、過剰のCr含有は鋼板製造性の低下やプレス成形性の低下を招く要因となるので、20.0%以下に制限される。より好ましいCr含有量の範囲は16.0〜19.0%である。
Cuは、加工誘起マルテンサイト相を軟質化させる作用を有し、電池ケースへのプレス成形性を向上させる上で有効である。種々検討の結果、Cu含有量は0.05%以上確保する必要がある。0.10%以上とすることがより効果的であり、0.15%以上とすることが一層効果的である。ただし、過剰のCu含有は逆にプレス成形性を阻害する要因となるので、0.50%以下の範囲に制限される。0.35%以下に管理してもよい。
Moは、耐食性の向上に有効であることから、必要に応じて添加することができる。その場合、0.05%以上のMo含有量を確保することがより効果的である。ただし、過剰のMo添加はコスト増となるので、Mo含有量は0.50%以下とする。0.25%以下の範囲に管理しても構わない。
Nは、鋼の強度向上および耐食性向上に有効であり、例えば0.005%以上のN含有量を確保することがより効果的である。ただし、過剰のN含有はプレス成形性の低下を招く要因となるので、N含有量は0.10%以下の範囲に制限される。0.05%以下に管理してもよい。
下記(1)式で表されるMd値は、オーステナイト安定度の指標である。Md値が低いほどオーステナイトが安定となる。逆にMd値が高くなるほど加工誘起マルテンサイト変態が生じやすくなる。
Md値=551−462(C+N)−9.2Si−8.1Mn−29(Ni+Cu)−13.7Cr−18.5Mo …(1)
本発明では前述のように表面を十分に窒化させる手法により熱融着部での耐剥離性(ヒートシール強度)を確保する。窒化層によって阻害されるとされるプレス成形性(特に張出し加工性)は、オーステナイトがある程度不安定な準安定オーステナイト系鋼を限定的に使用することにより、十分に回避できることがわかった。詳細な検討の結果、Md値が0.0〜40.0に調整された鋼を使用する必要がある。Md値が上記範囲を外れる鋼を使用すると、後述の適正な製造条件に従った場合でも、十分なプレス成形性を安定して確保することが難しくなる。Md値は0.0〜30.0、あるいは0.0〜25.0の範囲に管理してもよい。
〔箔の厚さ〕
上記の化学組成を有する準安定オーステナイト系ステンレス鋼箔を使用した電池ケースにおいては、プレス成形前の段階での箔の厚さを40μm以上確保する必要がある。それより薄いと、最終焼鈍において厚さ方向の結晶粒の平均個数を所定範囲に確保することが難しくなり、成形性が悪くなる。また電池ケースの強度レベルも低下する。一方、過剰に厚くなると成形加工に対する負荷が増大し、また電池ケースの質量増加にも繋がる。種々検討の結果、厚さ150μm以下の箔を使用することが望まれる。
〔厚さ方向に存在する結晶粒の平均個数〕
箔の加工においては、結晶粒の大きさが加工性に影響を及ぼしやすい。発明者らの研究によれば、上記の準安定な組成を有し、かつ上記の厚さ範囲にある箔を採用する場合、厚さ方向に存在する結晶粒の平均個数を5.0個以上とすることにより、電池ケースへの加工に要求される加工性を確保することが可能となる。6.0個以上とすることがより好ましい。結晶粒の大きさは主として最終焼鈍の条件によってコントロールすることができる。
〔窒化層〕
上述のように、箔の表層部に窒化層を形成させることにより、プレス成形時における表層部のマルテンサイト変態が抑制され、当該変態に伴う表面凹凸の形成が大幅に回避される。それにより、従来オーステナイト系ステンレス鋼箔を用いたラミネートシートで問題となりやすかった熱融着部での耐剥離性の低下や、樹脂フィルム層の白化現象を回避することが可能となる。また、成形性(特に深絞り要素に関わる加工性)の向上にも繋がる。詳細な検討の結果、樹脂フィルムと接合する側の箔表面において、表層2nm領域の平均窒素濃度を5.0質量%以上とすることが必要となる。ただし、表層部を過度に窒化させると、成形性(特に低下を張出し要素に関わる加工性)が低下する要因となり、十分な成形高さを安定して得ることが難しくなる。そのため、表層2nm領域の平均窒素濃度は9.5質量%以下の範囲に抑えることが望ましい。表層部の窒素濃度は非酸化性雰囲気で行う最終焼鈍の条件によってコントロールすることができる。
〔製造工程〕
上記の構成を備えたオーステナイト系ステンレス鋼箔は、従来からステンレス鋼箔の製造に使用されている製造設備を利用して製造することができる。一般的には、成分調整されたステンレス鋼の鋼帯に、中間焼鈍および冷間圧延を複数回施して所定厚さの箔とし、非酸化性雰囲気での最終焼鈍を行うことによって製造される。その際、最終焼鈍条件を厳密に調整することが重要となる。なお、最終焼鈍後には必要に応じて調質圧延を施すこともできる。
最終焼鈍の具体的条件は以下のとおりである。
〔雰囲気ガス〕
非酸化性雰囲気としては、従来のBA焼鈍と同様、水素+窒素ガス雰囲気が適用できる。ただし、雰囲気中の窒素濃度を15〜30体積%の範囲に設定する必要がある。20〜30体積%とすることがより好ましい。窒素濃度が低すぎると、表層2nm領域の平均窒素濃度が5.0質量%以上となるような窒化処理を、結晶粒が粗大化しない範囲で行うことが難しくなる。逆に雰囲気ガス中の窒素濃度が高すぎると窒化が過度になり、良好な成形性を有する箔が得られない。
〔炉内温度〕
最終焼鈍の炉内温度は、1000〜1100℃とする。これより低温であると材料の最高到達温度が低くなりすぎ、窒化が不十分となりやすい。一方、雰囲気温度が1100℃を超えると結晶粒の粗大化が非常に進行しやすくなる。すなわち、雰囲気温度が1000〜1100℃の範囲を外れると、所定の窒化層の形成と、結晶粒粗大化の防止とを両立させるための適正在炉時間を見出すことが難しくなる。
〔在炉時間〕
種々検討の結果、最終焼鈍においては箔の温度(以下「箔温」ということがある)が980℃以上となる保持時間を3sec以上確保することが必要となる。箔温がこの温度域に保持される時間が3secより短いと、安定して十分に窒化を行うことが難しくなる。実際の操業では、使用する炉に特有の昇温曲線に応じて、箔温が980℃以上となる保持時間が3sec以上確保されるように在炉時間(材料が炉内に滞在する時間)をコントロールすればよい。一方、在炉時間が長くなりすぎると、結晶粒が過大となりやすい。したがって、厚さ方向に存在する結晶粒の平均個数が5.0個以上となる範囲に在炉時間を設定することが肝要である。具体的な在炉時間の範囲は、雰囲気温度によって相違するが、予め種々の条件での予備実験を行うことにより適正な在炉時間を設定することができる。前述の炉内温度の範囲であれば、通常、箔温が980℃以上となる保持時間が3〜15secとなるように在炉時間を設定すれば結晶粒の過度な粗大化を防止できる。
表1に示すステンレス鋼を溶製し、通常の工程において厚さ30〜100μmの箔(冷間圧延仕上げ材)を製造した。この箔に対して、非酸化性雰囲気での最終焼鈍を種々の条件で施し、供試材を得た。
Figure 0005637813
各供試材について、GDS(株式会社リガク製;GDA750)により表面分析を行って表層2nm領域の窒素濃度を測定した。また、L断面の金属組織観察を行い、L断面画像について厚さ方向の直線を等間隔でn本引くという前述の手法に従い、厚さ方向の結晶粒平均個数を求めた。ここでは直線の本数をn=10本とした。
各供試材の上記窒素濃度を測定した側の表面に、樹脂フィルム層を形成し、ラミネートシートを得た。樹脂フィルム層は、ステンレス鋼側から、酸変性ポリプロピレンフィルム(厚さ30μm)と、ポリプロピレンフィルム(厚さ30μm)の2層構造とした。このラミネートシートを用いて下記の方法にて「成形高さ」および「ヒートシール強度」を測定した。
〔成形高さ〕
下記の条件で円筒絞りを行い、材料破断が生じない限界の絞り深さを求め、これを成形高さとした。その際、ポンチを押し当てる面をラミネートシートの樹脂フィルム層側の面とした。
(条件)ブランク:φ70mm、パンチ:φ40mm、R=2mm、ダイス:R=2mm、クリアランス:30%、しわ押さえ:10kN、パンチ速度:500mm/min
この条件にて成形高さ10mm以上が得られる場合には、リチウムイオン二次電池用ラミネートケースとして良好なプレス成形性を有していると評価できる。したがって、成形高さ10mm以上のものを合格と判定した。
〔ヒートシール強度〕
下記の条件で円筒絞りを行い、絞り深さ8mmの成形体(耳部が残っているカップ)を得た。その際、ポンチを押し当てる面をラミネートシートの樹脂フィルム層側の面とした。
(条件)ブランク:φ70mm、パンチ:φ40mm、R=2mm、ダイス:R=2mm、クリアランス:30%、しわ押さえ:10kN、パンチ速度:5mm/min、絞り深さ:8mm
図1に、カップの中心軸を含む断面を模式的に示す。ステンレス鋼箔1の片側表面に樹脂フィルム層2を有するラミネートシートを絞り加工することにより、樹脂フィルム層2を内側に持つカップが形成されている。この図において、ステンレス鋼箔1および樹脂フィルム層2の厚さは極めて誇張して描いてある(後述図2において同じ)。カップには耳部3が存在している。
このカップを切断することにより、幅15mmの短冊状試料を採取した。その際、短冊状試料の幅方向中央に図1に示した断面が位置するようにした。この短冊状試料を長手方向中央部で2分割して、耳部3を有する2つの試料を得た。これら2つの試料の耳部3の樹脂フィルム層2同士を密着させて150℃で熱融着し、ヒートシール強度測定用の引張試験片を得た。図2に、引張試験片の断面構造を模式的に示す。この試験片を用いて、図2の矢印方向に引張速度2mm/minで破断するまで引張試験を行い、そのときに記録された最大荷重の値(N)をヒートシール強度とした。試験数n=3で試験を行い、得られたヒートシール強度のうち最も低い値をその供試材についてのヒートシール強度成績値として採用した。この試験において、ヒートシール強度20N以上が得られる場合には、リチウムイオン二次電池用ラミネートケースとして良好な熱融着部での耐剥離性を有していると評価できる。したがって、ヒートシール強度20N以上のものを合格と判定した。
これらの結果を表2に示す。
Figure 0005637813
表2からわかるように、本発明で規定する化学組成、厚さ、表層2nm領域の平均窒素濃度および厚さ方向の結晶粒平均個数を満たすステンレス鋼箔を用いたもの(本発明例)では、良好な成形高さおよびヒートシール強度が実現された。これらのサンプルではプレス成形時の白化現象も観測されなかった。
これに対し、No.A5は雰囲気温度が高すぎたことにより結晶粒が粗大化し、成形高さが小さかった。A6は雰囲気温度が低すぎたため箔温980℃以上の保持時間が確保できず、表層2nm領域の平均窒素濃度が不十分となった結果、成形高さおよびヒートシール強度に劣った。A7は雰囲気温度が高めである割りに箔温980℃以上の保持時間を長くしすぎたことにより結晶粒か粗大化し、成形高さおよびヒートシール強度に劣った。A8は箔の厚さが薄すぎたことにより厚さ方向の結晶粒平均個数が少なく、また箔の強度が不足したため、成形高さおよびヒートシール強度に劣った。A9、B2、C2はいずれも水素雰囲気で最終焼鈍を行ったものであり、窒化層の形成が不十分であったために成形高さおよびヒートシール強度に劣った。A10は焼鈍雰囲気の窒素濃度が過剰であったことにより表層2nm領域の平均窒素濃度が高くなりすぎ、成形高さが小さかった。D1、E1はそれぞれMd値が本発明規定範囲を外れる鋼を採用したため、十分な成形高さを得ることができなかった。F1はCu含有量が過剰な鋼を、またH1はSi、Mn、Cu含有量が過剰な鋼を採用したため、これらはいずれも成形高さが不十分となった。G1はC含有量が過小な鋼を採用したことにより箔の強度レベルが低くなり、成形時に破れが生じて十分な成形高さを得ることができなかった。
1 ステンレス鋼箔
2 樹脂フィルム層
3 耳部

Claims (3)

  1. 質量%で、C:0.03〜0.15%、Si:1.00%以下、Mn:1.50%以下、Ni:5.0〜10.0%、Cr:15.0〜20.0%、Cu:0.05〜0.50%、Mo:0〜0.50%、N:0.10%以下、残部Feおよび不可避的不純物からなり、かつ下記(1)式で表されるMd値が0.0〜40.0である組成を有する厚さ40〜150μmのステンレス鋼箔であって、厚さ方向に存在する結晶粒の平均個数が5.0個以上であり、表層2nm領域の平均窒素濃度が5.0〜9.5質量%であるリチウムイオン二次電池ラミネートケース用オーステナイト系ステンレス鋼箔。
    Md値=551−462(C+N)−9.2Si−8.1Mn−29(Ni+Cu)−13.7Cr−18.5Mo …(1)
  2. 冷間圧延により厚さが調整されたステンレス鋼箔に対して非酸化性雰囲気中での最終焼鈍を施すに際し、雰囲気ガス中の窒素濃度を15〜30体積%、炉内温度を1000〜1100℃とし、箔の温度が980℃以上となる保持時間が3sec以上確保され、かつ厚さ方向に存在する結晶粒の平均個数が5.0個以上となる範囲に在炉時間を設定する、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池ラミネートケース用オーステナイト系ステンレス鋼箔の製造法。
  3. 冷間圧延により厚さが調整されたステンレス鋼箔に対して非酸化性雰囲気中での最終焼鈍を施すに際し、雰囲気ガス中の窒素濃度を15〜30体積%、炉内温度を1000〜1100℃とし、箔の温度が980℃以上となる保持時間を3〜15secとする、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池ラミネートケース用オーステナイト系ステンレス鋼箔の製造法。
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