JP7257794B2 - ステンレス鋼板及びその製造方法、燃料電池用セパレータ、燃料電池セル、並びに燃料電池スタック - Google Patents
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Description
(1)燃料ガス、酸化性ガスを電極面内に均一に供給する”流路”としての機能、
(2)カソード側で生成した水を、反応後の空気、酸素といったキャリアガスとともに燃料電池から効率的に排出する”流路”としての機能、
(3)電極膜と接触して電気の通り道となり、さらに単セル間の電気的”コネクタ”となる機能、
(4)隣接するセル間で、一方のセルのアノード室と隣接する、他方のセルのカソード室との間の”隔壁”としての機能、及び
(5)水冷型燃料電池では、冷却水流路と隣接するセルとの”隔壁”としての機能。
Cr2O3+5H2O→2HCrO4 -+8H++6e-
0.1≦Cr/Fe≦0.5 (1)
Cr/N≦1.8 (2)
0.8≦CNp/CNa≦1.6 (3)
式(1)及び式(2)のCr、Fe、及びNには、前記ステンレス鋼板の表面からのグロー放電発光分光分析によって得られるCr、Fe、及びN含有量が原子%で代入される。式(3)のCNp及びCNaの単位は、原子%である。最大偏値CNpは、深さ3/8t~5/8tの範囲の最大値CNp1と、同じ範囲の最小値CNp2とのうち、CNaとの差が大きい方の値である。
t2/31≦HoT≦t2/15 (4)
式(4)において、tには前記圧延鋼板の厚みがμmで代入される。HoTの単位は秒である。
[化学組成]
本発明の一実施形態によるステンレス鋼板は、以下に説明する化学組成を有する。以下の説明において、元素の含有量の「%」は、特に断りの無い限り、質量%を意味する。
クロム(Cr)は、ステンレス鋼の表面でCr2O3不動態皮膜を形成して耐食性を向上させる作用を有する。Cr含有量の下限は20%とする。20%未満では、窒素吸収によりオーステナイト相化させた組織にマルテンサイト相が多く含まれる可能性がある。一方、Cr含有量の増加にしたがって、変形抵抗は高くなる。Cr含有量の上限を26%とするのは、工業的な製造プロセスの冷間圧延等で30μm程度までの薄い板厚の鋼板の安定製造性を担保するためである。Cr含有量の下限は、好ましくは23%である。23%未満では、強加工を行うと加工誘起マルテンサイト相が生成する可能性がある。Cr含有量の上限は、好ましくは25%である。これは、より安定した製造性(特に板厚の薄い鋼板の平坦性)を担保するためである。
窒素(N)は、ステンレス鋼中で窒化物を生成しない範囲で添加することで、耐食性を向上させる作用を有する。また、ステンレス鋼のオーステナイト化を促進する元素でもある。N含有量の下限は、0.6%である。これは、Fe-Cr-N系でオーステナイト相を得るために必要な最低窒素量を確保するためである。N含有量の上限は2.0%である。これは、結晶粒内にCr2NやCrNのような窒化物の生成を抑制するためである。N含有量の下限は、好ましくは0.8%である。N含有量の上限は、好ましくは1.6%である。
シリコン(Si)は、添加しなくてもよい。Siは、ステンレス鋼の加工性を劣化させる元素であることから、通常は積極的に添加する元素ではない。一方、濃厚硝酸等のような強酸化性の環境で使用する場合には、添加することがある。Siは、ステンレス鋼が過不動態腐食環境に曝されると表面でSiO2を生成し、Cr2O3不動態皮膜を被覆して保護する作用を発揮する。そのため、過不動態腐食が特に懸念される環境に曝される可能性がある場合には添加してもよい。添加する場合であっても、Si含有量の上限は2.0%とする。Si含有量が2.0%を超えると、加工性の劣化や、製造中に脆いσ相が析出しやすくなり、鋼板への加工工程で割れが発生する場合や、平坦性が悪くプレス加工に適さない形状になる場合がある。Si含有量の上限は、好ましくは1.5%である。
炭素(C)は、添加しなくてもよい。Cは、固溶強化元素であり、ステンレス鋼の強度向上に寄与する。しかし、本実施形態のステンレス鋼板ではNを一定量以上含有させるため、Nによる固溶強化が十分であり、強度のためにCを添加する必要はない。C含有量が多くなると、製造過程で炭化物が多数生成され、これら炭化物が破壊の起点となって、鋼の成形性が劣化する。そのため、C含有量は0.040%以下とする。C含有量の上限は、好ましくは0.030%である。
リン(P)は、不純物である。Pは凝固時に粒界に偏析し、凝固割れ感受性を高める。したがって、P含有量はできるだけ低い方が好ましい。そのため、P含有量は0.030%以下とする。
硫黄(S)は、不純物である。Sは凝固時に粒界に偏析し、凝固割れ感受性を高める。したがって、S含有量はできるだけ低い方が好ましい。そのため、S含有量は0.030%以下とする。
マンガン(Mn)は、添加しなくてもよい。Mnは、Sによる熱間加工性の低下を抑制する。Mnはさらに、ステンレス鋼を脱酸する。しかし、Mn含有量が多くなると、σ相等の金属間化合物相の析出が促進される。σ相の析出によって組織安定性が低下するとともに、ステンレス鋼の靱性及び延性が低下する。そのため、Mn含有量は1.5%以下とする。Mn含有量の上限は、好ましくは1.0%であり、さらに好ましくは0.5%である。
銅(Cu)は、添加しなくてもよい。Cuは粒界に偏析しやすく、また、オーステナイト安定化元素である。Cu含有量が多くなると、鋳造時の凝固中にフェライト生成が抑制され、凝固割れ感受性が高まる。また、Cu含有量が多いと、熱間加工性が低下する恐れがある。そのため、Cu含有量は0.50%以下とする。
モリブデン(Mo)は、添加しなくてもよい。Moは、ステンレス鋼の耐食性を高める効果を有する。しかし、Moはレアメタルに分類される高価な元素であり、経済性に優れた材料を提供するうえでは好ましくない。また、Mo含有量が多くなると、オーステナイト相を主とする組織が得られない場合がある。そのため、Mo含有量は0.50%以下とする。Mo含有量の上限は、好ましくは0.30%である。
ニッケル(Ni)は、添加しなくてもよい。Niは、ステンレス鋼のオーステナイト化を促進する元素である。しかし、Niはレアメタルに属する元素であり、経済性に優れた材料を提供するうえで好ましくない。また、Niイオンが溶出することによって、白金触媒と高分子電解質膜との界面での酸素還元反応速度を低下させる恐れがある。そのため、Ni含有量は0.10%以下とする。
カルシウム(Ca)は、不純物である。ステンレス鋼の腐食の起点になりうる非金属介在物としては、一般にCaSやMnSが知られている。腐食起点となるCaSを多量に生成させないために、Ca含有量は50ppm未満とする。
アルミニウム(Al)は、添加しなくてもよい。Alは、ステンレス鋼を脱酸する。しかし、Al含有量が高すぎれば、鋼の清浄度が低下し、ステンレス鋼の加工性及び延性が低下する。したがって、Al含有量は、300ppm未満である。なお、本明細書において、Al含有量は酸可溶Al(sol.Al)の含有量を意味する。
本実施形態によるステンレス鋼板は、30~110μmの厚みを有する。厚みは、平均厚みとする。
本実施形態によるステンレス鋼板の組織は、オーステナイト相を主とする。具体的には、フェライト相、マルテンサイト相等のオーステナイト相以外の鉄の相、及びCr2NやCrN等の化合物相の割合が低く、X線回折(XRD)で検出可能なすべての相に対するオーステナイト相の占める割合(以下「γ相分率」という。)が80体積%以上である。γ相分率は、好ましくは90体積%以上であり、理想的には100体積%(組織がオーステナイト単相)である。γ相分率を高くすることによって、良好なプレス加工性(延性)が得られる。
本実施形態によるステンレス鋼板は、表面からのグロー放電発光分光分析によって得られるCr、Fe、及びN含有量が、スパッタ深さ0~0.05μmの範囲の深さ方向分析において、下記の式(1)及び式(2)を満たす。
0.1≦Cr/Fe≦0.5 (1)
Cr/N≦1.8 (2)
式(1)及び式(2)のCr、Fe、及びNには、ステンレス鋼板の表面からのグロー放電発光分光分析によって得られるCr、Fe、及びN含有量が原子%で代入される。
本実施形態によるステンレス鋼板は、表面から深さ方向のグロー放電発光分光分析によって得られるN含有量プロファイルにおいて、ステンレス鋼板の厚みをtとして、深さ3/8t~5/8tの範囲の最大偏値CNpと、深さ1/8t~3/8tの範囲の平均値CNaとが、下記の式(3)を満たす。
0.8≦CNp/CNa≦1.6 (3)
ここで、最大偏値CNpとは、深さ3/8t~5/8tの範囲の最大値CNp1と、同じ範囲の最小値CNp2のうち、CNaとの差が大きい方の値を取る。すなわち、|CNp1-CNa|-|CNa-CNp2|が正ならばCNp=CNp1となり、負ならばCNp=CNp2となる。
本実施形態によるステンレス鋼板は、良好なプレス加工性を有する。本実施形態によるステンレス鋼板は、好ましくは、引張試験による伸び(破断伸び)が15%以上であり、より好ましくは20%以上である。ここで、引張試験は、ASTM A370に準拠し、1×10-3/秒の歪速度で行う引張試験をいう。
本実施形態によるステンレス鋼板は、少なくとも一方の面に、導電性の炭素質材を含む導電層を備えることができる。これにより、ガス拡散層との接触抵抗がより低くなる。
本実施形態によるステンレス鋼板は、ステンレス鋼板の表面と導電層との間に、接着剤層をさらに備えていてもよい。
図1は、本発明の一実施形態によるステンレス鋼板の製造方法を示すフロー図である。この製造方法は、スラブを準備する工程(ステップS1)と、スラブを熱間圧延及び冷間圧延することによって、厚み30~110μmの圧延鋼板を得る工程(ステップS2)と、圧延鋼板を窒素を含むガス雰囲気下で焼鈍して冷却する工程(ステップS3)と、非酸化性酸を含む溶液で酸洗する酸洗工程(ステップS4)とを備えている。以下、各工程を詳述する。
化学組成が、質量%で、Cr:20~26%、N:0.1%以下、Si:2.0%以下、C:0.040%以下、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Mn:1.5%以下、Cu:0.50%以下、Mo:0.50%以下、Ni:0.10%以下、Ca:50ppm未満、sol.Al:300ppm未満、残部:Fe及び不純物であるスラブを準備する(ステップS1)。
スラブを熱間圧延及び冷間圧延することによって、厚み30~110μmの圧延鋼板を得る(ステップS2)。熱間圧延及び冷間圧延はそれぞれ繰り返し行ってもよく、必要に応じて焼鈍等の中間熱処理や、酸洗を行ってもよい。また、熱間圧延及び冷間圧延に加えて、必要に応じて熱間鍛造や切削加工をさらに行ってもよい。
圧延鋼板を、窒素を含むガス雰囲気下で焼鈍して冷却する(ステップS3)。この工程によって、鋼板の表面から窒素を吸収させて、鋼板の組織をオーステナイト相化する。
t2/31≦HoT≦t2/15 (4)
ここで、tには、ステンレス鋼板の厚みがμmで代入される。HoTの単位は秒である。
焼鈍工程後の鋼板を、非酸化性酸を含む溶液で酸洗する(ステップS4)。酸洗には、鋼板の表面を酸化させないため、非酸化性の酸を使用する。使用できる酸は例えば、(1)フッ化水素酸、(2)硫酸、(3)塩酸、及びこれらの酸の混酸である。
フッ化水素酸の濃度は、好ましくは1~5質量%である。処理温度は、好ましくは35~75℃である。35℃未満では、処理が長時間になる可能性がある。また、夏季は酸洗時発熱による昇温を制御しきれず、外気温に左右されて安定な処理ができない可能性がある。一方、75℃よりも高くすると、処理液から腐食性のヒュームが発生する場合がある。処理温度は、より好ましくは40~55℃である。処理時間は、好ましくは2~10分である。
硫酸の濃度は、好ましくは10~40質量%である。処理温度は、好ましくは35~75℃である。35℃未満では、処理が長時間になる可能性がある。また、夏季は酸洗時発熱による昇温を制御しきれず、外気温に左右されて安定な処理ができない可能性がある。一方、75℃よりも高くすると、処理液から有害なSOxガスが発生する場合がある。濃度は、より好ましくは、15~30質量%である。処理温度は、より好ましくは50~60℃である。処理時間は、好ましくは2~10分である。
塩酸の濃度は、好ましくは4~15質量%である。処理温度は、好ましくは35~75℃である。35℃未満では処理が長時間になる可能性がある。また、夏季は酸洗時発熱による昇温を制御しきれず、外気温に左右されて安定な処理ができない可能性がある。一方、75℃よりも高くすると、処理液から腐食性のヒュームが発生する場合がある。濃度は、より好ましくは、4~12質量%である。処理温度は、より好ましくは40~55℃である。処理時間は、好ましくは2~15分である。
ステンレス鋼板に導電性の炭素質材を有する導電層を形成する場合は、以下の方法を用いることができる。
本発明の一実施形態による燃料電池用セパレータは、本実施形態によるステンレス鋼板を備える。本実施形態による燃料電池用セパレータは、より具体的には、本実施形態によるステンレス鋼板に、流路として機能する凹凸等が形成されたものである。本実施形態による燃料電池用セパレータは、本実施形態によるステンレス鋼板をプレス加工して製造することができる。
本発明の一実施形態による燃料電池セルは、本実施形態による燃料電池用セパレータを備える。本発明の一実施形態による燃料電池スタックは、本実施形態による燃料電池セルを複数備える。
[圧延鋼板の製造]
表2に示す8種の化学組成の鋼を、高周波誘導加熱方式の30kg真空溶融炉で溶解し、直径Φ125~115mm、高さが320mmの略円錐台形状の鋳造インゴットを製造した。
各圧延鋼板から幅70mm×長さ200mmの素材を切り出し、連続焼鈍シミュレータ装置によって、光輝焼鈍処理を施すとともに固相状態での窒素吸収処理(以下「焼鈍処理」という。)を実施した。
焼鈍後の素材を、表5に示す条件で酸洗した。
各ステンレス鋼板の板厚中央部分から試料を採取し、N含有量を測定した。
BGk:k番目の選択回折線のバックグランド強度
Icalc k:k番目の選択回折線の計算強度比
γ相分率は、
γ相分率=[γ相強度]/([γ相強度]+[α’あるいはα相強度]+[Cr2N相強度])
各ステンレス鋼板から、原厚、長さ100mmのASTMハーフサイズ試験片を切り出した。ASTM A370に準拠して、1×10-3/秒の歪速度で引張試験を実施し、耐力、引張強度、伸び(破断時伸び)を測定した。伸びが15%以上であれば、プレス加工性が良好と評価した。
ステンレス鋼板の製造直後の抵抗値と、電池環境を模擬した耐久試験後の抵抗値とを測定した。耐久試験は具体的には、ステンレス鋼板を90℃、pH2のH2SO4に96時間浸漬させて行い、その後、十分に水洗し乾燥させた。ステンレス鋼板の耐食性が良好でない場合、表面の不動態皮膜が発達することによって接触抵抗が上昇する。耐久試験の前後で、接触抵抗が10mΩ・cm2以下であれば、低接触抵抗と評価した。
孔食電位の測定は、JIS G0577に準拠して行った。試験浴液は3.5%NaCl水溶液とした。脱気した試験浴液中にステンレス鋼板を完全に浸し、10分間放置後、自然電位から電位掃引速度20mV/分の動電位法で、アノード分極させた。電流密度100μAcm-2に対応する電位を孔食電位とした。孔食電位が0.75V vs SCEよりも高ければ、耐孔食性に優れると評価した。
耐過不動態腐食性の評価は、電池環境を模擬した80℃、pH3のH2SO4溶液にステンレス鋼板を浸漬し、Arガスを吹き込み脱気状態にして、自然電位状態に10分間保持後、20mV/分の掃引速度で、自然電位から1.4V vs SHEまでアノード分極を行った。ステンレス鋼板では、約0.9V vs SHEから過不動態腐食による電流密度増加が観察される。過不動態域に入ったと考えられる0.9V以上での最大電流密度を、耐過不動態腐食性の指標とした。0.9V以上での最大電流密度が100μA/cm2未満であれば、耐過不動態腐食性に優れると評価した。
表6で示した番号7~9及び11のステンレス鋼板を用いて、酸洗処理後に下記の方法で導電層を両面に付着させた。片面あたりの導電層厚さは、表10に示すとおりとした。
接着剤層を形成するための接着剤組成物として、変性ポリオレフィン樹脂接着剤(三井化学株式会社製、ユニストール(商品名))を用いた。酸洗後のステンレス鋼板の表面に、卓上コーターを用いて塗布厚5μmとなるように変性ポリオレフィン樹脂接着剤を塗布し、室温で10分乾燥させ、接着剤層を形成した。裏面にも同様にして接着剤層を形成した。
導電性の炭素質材として、球状黒鉛粉末(伊藤黒鉛工業株式会社製SG―BH(商品名)、平均粒子径:20μm)及び膨張黒鉛粉末(伊藤黒鉛工業株式会社製、EC100(商品名)、平均粒子径:160μm)を使用した。マトリックス樹脂として、ポリプロピレン樹脂(PP)粉末(住友精化株式会社製、フローブレンHP-8522(商品名))を使用した。球状黒鉛粉末を60体積%、膨張黒鉛粉末を10体積%、及びポリプロピレン樹脂粉末を30体積%となるように混合して粉末混合物とした。粉末混合物0.2g又は0.06gを、プレス装置(東洋精機製作所製卓上ホットプレスMP-SCL)の50×50×20mmの容積を持つ雌型金型に均等に投入し、前プレスとしてのホットプレス(圧力:2MPa、温度:180℃)を行い、シート状(厚さ:50μm又は15μm)とした。得られたシートを、前記で準備した接着剤層付きの基材の両面に重ね、加熱温度180℃及び圧力5MPaで押圧した(本プレス、成型時間10分)。
導電層形成後のステンレス鋼板についても、上記の接触抵抗、耐久試験、孔食電位測定、過不動態電流測定を実施した。結果を表10に示す。
10 セル
2 固体高分子電解質膜
3 アノード
4 カソード
5a,5b セパレータ
6a,6b 流路
Claims (7)
- ステンレス鋼板であって、
化学組成が、質量%で、
Cr:20~26%、
N :0.6~2.0%、
Si:2.0%以下、
C :0.040%以下、
P :0.030%以下、
S :0.030%以下、
Mn:1.5%以下、
Cu:0.50%以下、
Mo:0.50%以下、
Ni:0.10%以下、
Ca:50ppm未満、
sol.Al:300ppm未満、
残部:Fe及び不純物であり、
前記ステンレス鋼板は、30~110μmの厚みを有し、
ミクロ組織が、オーステナイト相の占める割合が80体積%以上の組織であり、
オーステナイト結晶粒の平均結晶粒径が、前記ステンレス鋼板の厚みの2分の1以下であり、
前記ステンレス鋼板の表面からのグロー放電発光分光分析によって得られるCr、Fe、及びN含有量が、スパッタ深さ0~0.05μmの範囲の深さ方向分析において、下記の式(1)及び式(2)を満たし、
前記ステンレス鋼板の表面から深さ方向のグロー放電発光分光分析によって得られるN含有量のプロファイルにおいて、前記ステンレス鋼板の厚みをtとして、深さ3/8t~5/8tの範囲の最大偏値CNpと、深さ1/8t~3/8tの範囲の平均値CNaとが、下記の式(3)を満たす、ステンレス鋼板。
0.1≦Cr/Fe≦0.5 (1)
Cr/N≦1.8 (2)
0.8≦CNp/CNa≦1.6 (3)
式(1)及び式(2)のCr、Fe、及びNには、前記ステンレス鋼板の表面からのグロー放電発光分光分析によって得られるCr、Fe、及びN含有量が原子%で代入される。式(3)のCNp及びCNaの単位は、原子%である。最大偏値CNpは、深さ3/8t~5/8tの範囲の最大値CNp1と、同じ範囲の最小値CNp2とのうち、CNaとの差が大きい方の値である。 - 請求項1に記載のステンレス鋼板であって、
少なくとも一方の面に、導電性の炭素質材を含む導電層をさらに備える、ステンレス鋼板。 - 請求項2に記載のステンレス鋼板であって、
前記導電層は、マトリックス樹脂中に前記炭素質材を分散して有する炭素-樹脂複合層である、ステンレス鋼板。 - 請求項1~3のいずれか一項に記載のステンレス鋼板を備える、燃料電池用セパレータ。
- 請求項4に記載の燃料電池用セパレータを備える、燃料電池セル。
- 請求項5に記載の燃料電池セルを複数備える、燃料電池スタック。
- 請求項1に記載のステンレス鋼板の製造方法であって、
化学組成が、質量%で、Cr:20~26%、N:0.1%以下、Si:2.0%以下、C:0.040%以下、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Mn:1.5%以下、Cu:0.50%以下、Mo:0.50%以下、Ni:0.10%以下、Ca:50ppm未満、sol.Al:300ppm未満、残部:Fe及び不純物であるスラブを準備する工程と、
前記スラブを熱間圧延及び冷間圧延することによって、厚み30~110μmの圧延鋼板を得る工程と、
前記圧延鋼板を、窒素を含むガス雰囲気下で焼鈍して冷却する焼鈍工程と、
前記焼鈍工程後の圧延鋼板を、非酸化性酸を含む溶液で酸洗する工程とを備え、
前記焼鈍工程の保持時間HoTが、下記の式(4)を満たす、製造方法。
t2/31≦HoT≦t2/15 (4)
式(4)において、tには前記圧延鋼板の厚みがμmで代入される。HoTの単位は秒である。
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