JP2009245719A - 電池ケース用改質Al系めっき鋼材並びに電池ケースおよびリチウムイオン二次電池 - Google Patents

電池ケース用改質Al系めっき鋼材並びに電池ケースおよびリチウムイオン二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】正極ケース型リチウムイオン二次電池のケース材料に適した安価な材料を提供する。
【解決手段】上記課題は、溶融Al系めっき層を持つ鋼材を加熱処理した鋼材であって、鋼素地の上にFe−Al系合金層が連続的に形成されている電池ケース用改質Al系めっき鋼材によって達成される。具体的には、めっき付着量5〜100g/m2好ましくは15〜60g/m2の溶融Al系めっき層を持つ鋼材を450℃以上かつめっき金属の液相線温度未満の温度域で5分〜10時間加熱処理することにより、鋼素地の上にFe−Al系合金層を成長させて改質Al系めっき層を形成したものが好適な対象となる。Fe−Al系合金層の上にはめっき金属層が存在していても構わない。
【選択図】図2

Description

本発明は、リチウムイオン二次電池の正極電位が付与される電池ケースに用いる改質Al系めっき鋼材、並びにその改質Al系めっき鋼材を使用した電池ケースおよびリチウムイオン二次電池に関する。
リチウムイオン二次電池に金属製の電池ケースが用いられる場合、電池ケースが負極端子を兼ねているか負極と同じ電位となる構造の「負極ケース型」と、電池ケースが正極端子を兼ねているか正極と同じ電位となる構造の「正極ケース型」がある。
負極ケース型では、ケース材料としてNiめっき鋼板を使用したものが多く、ステンレス鋼板を使用したものもある。
他方、正極ケース型に用いるケース材料には、正極と同じ電位がかかった状態で電解液に触れた場合の耐食性が要求され、Niめっき鋼板やステンレス鋼板は使用できない。現在、Al合金または純Alが使用されている。
特許文献1には、正極ケース型リチウムイオン二次電池のケース材料として、溶融Alめっきステンレス鋼板を使用することが記載されている。
特開2006−80028号公報
正極ケース型リチウムイオン二次電池のケース材料として、現在使用されているAl合金材や純Al材の代わりに、溶融Al系めっき鋼板を適用することが可能になれば、コスト面、強度面および体積面で非常に有利となる。しかし、めっき層には通常、ピンホール等の欠陥が存在する。また、製品取扱い時に疵が付いたり、成形加工の段階でめっき層にクラックが生じたりして鋼素地が露出することが想定される。したがって、溶融Al系めっき鋼板をそのまま正極電池ケースに使用することは、鋼素地露出部での耐食性が問題となり、困難である。
一方、特許文献1に記載のステンレス鋼板を原板とする溶融Alめっき鋼板は、材料コストが高いことから、コストダウンを目的とする代替材料としては採用しにくい面がある。また、Alめっき層に疵が付いた場合など、鋼素地が露出したときのリチウムイオン電解液に対する耐食性については、さらなる向上が望まれるところである。
本発明は、正極ケース型リチウムイオン二次電池のケース材料に適した安価な材料を提供しようというものである。
発明者らは研究の結果、Fe−Al合金において、リチウムイオン電解液中での優れた耐食性を示す場合があることを発見した。より詳細に調査したところ、Fe−Al系金属間化合物の中でも、FeAl3金属間化合物等の比較的Al含有率の高い金属間化合物が表面に形成されているときに、リチウムイオン電解液中での耐食性が顕著に向上しているものと推察された。すなわち、溶融Al系めっき鋼板の鋼素地/めっき金属層の間に介在するFe−Al系合金層はFe2Al5金属間化合物を主体とするもの、あるいはそれに近い組成・構造を有するものであると考えられ、溶融Al系めっき鋼板に加熱処理を施し、このFe−Al系合金層を十分に厚く成長させた場合には、表面のAl層にクラックが入っている状態でも、リチウムイオン電解液に対する優れた耐食性を呈することが確認された。
また、さらなる検討を重ねた結果、以下の知見を得た。すなわち、溶融Al系めっき鋼板に曲げ加工や絞り成形加工などを行うと、最表面のAl層とともにFe−Al系合金層にもクラックが入った状態になる場合があり、この場合、鋼素地が露出するため電解液中での耐食性に劣るという課題があった。しかしながら、加工でクラックが入った状態の溶融Al系めっき鋼板であっても、加熱処理を施して新たに鋼素地の上にFe−Al系合金層を十分に厚く成長させた場合には、リチウムイオン電解液に対する優れた耐食性を呈することが確認された。
一方、めっき層中にSiを含む溶融Al系めっき鋼材の場合には、このめっき層中のSiがリチウムイオン電解液中で溶出するという問題があり、従来、基本的にリチウムイオン二次電池ケースとしての使用は困難であると考えられたが、めっき後に加熱処理を施して新たにFe−Al系合金層を成長させると、めっき層中のSiがFe−Al系合金層中に取り込まれ、そのFe−Al系合金層がリチウムイオン電解液に対する優れた耐食性を担うとともにめっき金属層のSiが溶出するという問題も解消されることが明らかとなった。本発明はこのような新規な知見に基づいて完成したものである。
すなわち、上記目的は、溶融Al系めっき層を持つ鋼材を加熱処理した鋼材であって、鋼素地の上にFe−Al系合金層が連続的に形成されている電池ケース用改質Al系めっき鋼材によって達成される。具体的には、めっき付着量5〜100g/m2好ましくは15〜60g/m2の溶融Al系めっき層を持つ鋼材を450℃以上かつめっき金属の液相線温度未満の温度域で5分〜10時間加熱処理することにより、鋼素地の上にFe−Al系合金層を成長させて改質Al系めっき層を形成したものが好適な対象となる。Fe−Al系合金層の上にはめっき金属層が存在していても構わない。
ここで、「Al系めっき」は、溶融純Alめっき浴またはSiを13質量%以下の範囲で含有する溶融Al−Si合金めっき浴に鋼材を浸漬することにより形成されるめっきである。「溶融Al系めっき層」は、溶融Al系めっきを施して形成される被覆層であり、「溶融めっきにより鋼素地の上に形成されたFe−Al系合金層(極めて薄い場合もある)」と、「めっき金属層」からなる層である。「Fe−Al系合金層」は、FeとAlが濃化した合金で構成される層であり、代表的にはFeAl3金属間化合物あるいはそれに近い組成を有する合金で構成される。Fe2Al5、FeAl2等の金属間化合物が含まれていることもある。Siを含有するめっき層を形成した場合には、Fe−Al合金層中には通常Siも存在する。この場合はFe−Al−Si系合金層と言うことができるが、本明細書ではそれも含めてFe−Al系合金層と呼んでいる。「めっき金属層」は、Al系めっき金属(Al、あるいはAlとSi)をマトリクスとする層であり、そのマトリクス中にはFeとAlの反応あるいはFeとAlとSiの反応によって生じたFe−Al系合金の相が断片的に存在していて構わない。「めっき金属の液相線温度」は、その溶融Al系めっき浴組成の金属の液相線温度とする。
また本発明では、前記改質Al系めっき鋼材からなり、ケース内面に前記改質Al系めっき層を有するリチウムイオン二次電池用の正極電池ケースが提供される。さらに、その電池ケースを、電池の正極電位が付与される状態に配置したリチウムイオン二次電池が提供される。「正極電池ケース」は、電池において、電池ケースが正極端子を兼ねているか正極端子と同じ電位となる状態で使用される電池ケースである。
本発明によれば、正極ケース型リチウムイオン二次電池に使用する電池ケースとして、従来より強度に優れかつ低コストのものが実現される。また、鋼材を使用した従来の正極電池ケース(特許文献1)に比べて、リチウムイオン電解液に対する耐食性を一層向上させたものが提供可能になる。したがって本発明は、正極ケース型リチウムイオン二次電池の普及に寄与するものと期待される。
〔基材となる鋼材〕
溶融Al系めっきに供する鋼材としては、従来一般に溶融Al系めっき鋼板のめっき原板に使用されている鋼板が適用できる。例えば、弱脱酸鋼、アルミキルド鋼、Ti添加IF鋼などが適用できる。成分組成を例示すれば、例えば、質量%でC:0.15%以下、Si:0.1%以下、Mn:0.6%以下、P:0.05%以下、S:0.5%以下であり、必要に応じてAl:0.5%以下、Ni:1%以下、Cr:1%以下、Cu:0.1%以下、Ti:0.5%以下、Nb:0.5%以下、N:0.05%以下の1種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成が挙げられる。
耐食性を重視する場合は、ステンレス鋼板をめっき原板に使用することが効果的である。オーステナイト系、フェライト系等の種々のステンレス鋼種が適用可能である。ここで、ステンレス鋼とは、JIS G0203:2000の番号4201に記載されるように、Cr含有量が10.5質量%以上の鋼である。Cr含有量の上限は概ね32質量%程度とすることが望ましい。既存の規格鋼種としては、JIS G4305:2005に規定されるオーステナイト系、フェライト系等の鋼種が挙げられる。
オーステナイト系ステンレス鋼の成分組成を例示すると、質量%で、C:0.12%以下、Si:4%以下とくに1%以下、Mn:5%以下とくに2%以下、P:0.045%以下、S:0.03%以下、Ni:6〜28%とくに8〜14%、Cr:15〜32%とくに16〜26%、N:0.3%以下であり、必要に応じてMo:7%以下とくに3%以下、Cu:4%以下とくに2%以下、Ti+Nb+Zrの合計:0.8%以下、B:0.1%以下、V:1%以下、Ca:0.1%以下、Mg:0.1%以下、Y:0.1%以下、REM(希土類元素):0.1%以下の1種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を挙げることができる。
フェライト系ステンレス鋼の成分組成を例示すると、C:0.12%以下、Si:1%以下、Mn:1%以下、P:0.04%以下、S:0.03%以下、Cr:10.5〜32%とくに11〜20%であり、必要に応じてMo:3%以下、Cu:1%以下、Ti+Nb+Zrの合計:0.8%以下、Ni:0.6%以下、B:0.1%以下、V:1%以下、Ca:0.1%以下、Mg:0.1%以下、Y:0.1%以下、REM(希土類元素):0.1%以下の1種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を挙げることができる。
〔溶融Al系めっき〕
従来一般的に使用されている溶融Al系めっき浴を採用することができる。具体的には純Alめっき浴またはSiを13質量%以下の範囲で含有する溶融Al−Si合金めっき浴が適用できる。大量生産においては、めっき原板を鋼帯の状態で連続溶融めっきラインに通板することにより溶融Al系めっき鋼板が製造されており、本発明でもそのような公知の手法を利用することができる。めっき付着量はガスワイピング法などで調整される。
本発明に適用する溶融Al系めっき鋼板は、片面のめっき付着量が5〜100g/m2に調整されていることが望ましい。15〜60g/m2とすることがより好ましい。めっき付着量が少なすぎるとリチウムイオン電解液に対する耐食性を安定して確保することが難しくなる。すなわち、後述する加熱処理を行ったときに、鋼素地の上に十分な厚さのFe−Al系合金層を有する表面構造を実現することが難しくなる。一方、過剰のめっき付着量としても、リチウムイオン電解液に対する耐食性をさらに増大させることは難しく、不経済となる。また、めっき浴にSiを含有する場合、めっき付着量が多くなりすぎるとめっき層中のSiが加熱処理によっても合金層に取り込まれずにめっき金属層中に残留するようになり、リチウムイオン電解液中でのSi溶出を安定して防止することが難しくなる。
〔合金層を成長させる加熱処理〕
上記の溶融Al系めっき鋼板を450℃以上かつめっき金属の液相線温度未満の温度域で5分〜10時間加熱処理する。加熱温度は560℃以上かつめっき金属の液相線温度未満の範囲にコントロールしても構わない。加熱時間は2〜10時間としてもよい。この加熱処理により、めっき付着量が前述の5〜100g/m2に調整されている方のめっき被覆において、鋼素地中のFeと、めっき金属層中のAlあるいはAl、Siとが反応して、鋼素地とめっき金属層との間にFe−Al系合金層が成長する。その際、加熱温度および時間を上記の範囲とすることにより、リチウムイオン電解液に対する耐食性を安定して確保するに足る十分な厚さのFe−Al系合金層を形成させることができる。溶融Al系めっき層を厚さ全域にわたって全てFe−Al系合金層に変化させても構わないし、めっき金属層が残留していても構わない。加熱温度が低すぎる場合や加熱時間が短すぎる場合は、Fe−Al系合金層の成長が不十分となり、所望の耐食性を安定して確保することが難しくなる。一方、加熱温度は液相線未満の温度域とする。めっき層が溶融しても表面に酸化皮膜が形成されること、および固相が共存していることにより適度な粘性が確保されるものと考えられ、液相線温度未満の温度域であれば溶融しためっき金属は流れ落ちないことが確認されている。「液相線温度−5℃」以下の加熱温度とすることがより好ましい。液相線温度は純Alで約660℃、Al−9質量%Si合金で約610℃である。また、加熱時間が長すぎるとFe−Al系合金層の厚さが過剰に厚くなるとともに、表面に必要なめっき金属層の厚さが薄くなってしまうので好ましくない。なお、加熱雰囲気は大気とすればよい。
このようにして鋼素地の上に形成された、下層の「Fe−Al系合金層」+上層の「Al系めっき金属層」の複層構造、あるいは溶融Al系めっき層の全部が変化してなる「Fe−Al系合金層」を、本明細書では「改質Al系めっき層」と呼んでいる。本発明に係る改質Al系めっき鋼材は、鋼素地の上に改質Al系めっき層を有する鋼材である。Fe−Al系合金層は、連続的な皮膜であることが必要であり、平均膜厚2μm以上であることが好ましい。例えば平均膜厚2〜25μm程度とすればよく、5〜15μm程度とすることがより好ましい。なお、最表面には公知の化成処理皮膜を形成することもできる。
〔電池ケースおよび電池〕
本発明の電池ケースは、少なくとも内面に改質Al系めっき層を有していることが必要である。この電池ケースは、リチウムイオン二次電池において、電池の正極電位が付与される状態に配置される。
めっき原板として、以下の組成を有する板厚0.5mmの冷延鋼帯を用意した。この鋼帯を分割して、複数のコイルとした。
〔めっき原板〕
質量%で、C:0.003%、Al:0.038%、Si:0.003%、Mn:0.12%、P:0.012%、S:0.122%、Ni:0.02%、Cr:0.02%、Cu:0.01%、Ti:0.073%、N:0.0023%、残部Feおよび不可避的不純物
溶融Al系めっき浴として、以下の2種類を用意した。
〔純Alめっき浴〕
質量%で、Fe:2%、残部Alおよび残部不可避的不純物
〔Al−9%Siめっき浴〕
質量%で、Si:9%、Fe:2%、残部Alおよび不可避的不純物
上記めっき原板のコイルを用いて、連続溶融めっきラインにて、上記それぞれのめっき浴により溶融Al系めっき鋼板(純Alめっき鋼板、およびAl−9%Si合金めっき鋼板)を製造した。めっき付着量はガスワイピング法にて調整し、いずれのめっき鋼板も、片面あたり35g/m2とした。両サイドのめっき付着量は同じとした。
純Alめっき鋼板、およびAl−9%Si合金めっき鋼板から平板試料を切り出した。一部の平板試料には90°曲げ加工を施して故意に溶融Al系めっき層にクラックを生じさせ、曲げ加工部に鋼素地露出部を有する曲げ加工試料とした。これらの平板試料および曲げ加工試料のうち、一部のものについて、合金層を成長させる加熱処理を施し、改質Al系めっき鋼板を得た。この加熱処理の温度は、純Alめっき材、Al−9%Si合金めっき材とも600℃とした。いずれも加熱雰囲気は大気、加熱時間(在炉時間)は5時間とした。観察の結果、純Alめっき材、Al−9%Si合金めっき材いずれも、溶融Al系めっき層はほとんど全部がFe−Al系合金層に変化していた。
このようにして、各めっき材の溶融Al系めっき鋼板(加熱処理前)および改質Al系めっき鋼板(加熱処理後)について、それぞれ平板試料および曲げ加工試料を得た。
各試料を電気化学試験に供するために、各試料にリード線を取り付け、試料の測定領域となるめっき層表面を、めっき金属が残るように研磨したのちアセトンで脱脂し、0.5cm2の測定領域を残して他の部分はテフロン(登録商標)樹脂製のシール材で被覆絶縁処理した。曲げ加工試料については、90°曲げ加工部の曲げ外側の表面を測定領域に含むようにした。
リチウムイオン二次電池の電解液を模した液として、EC(エチレンカーボネート)とDEC(ジエチレンカーボネート)を1:1の体積比で混合した溶媒中にLiPF6を1M濃度で溶解させた電解液を用意し、PFAジャーの中に電解液を入れ、試料を用いた作用極と金属リチウム箔からなる対極を電解液に浸漬して両極の間隔を10mmとした。両極間にリチウム箔からなる参照極をセットした。その後PFAジャーを密閉し、酸素および水分濃度がそれぞれ1ppm以下に保持されたArガスを気相部にパージした状態とした。この状態で液温25℃においてサイクリックボルタンメトリ法による分極曲線を測定した。電位の走査範囲は自然電位と4.8Vの間とし、走査速度は10mV/sec、走査回数は5回とした。すなわち、自然電位から4.8Vまで10mV/secで掃引したときの分極曲線を記録し、次いで4.8Vから自然電位までを10mV/secで掃引したときの分極曲線を記録するというサイクルを引き続いて5回行った。最大電位4.8Vは、充電時に正極の電位が4.2V程度になることから、さらにそれより高めの電位までを測定することとしたものである。なお、本明細書における電位は対金属リチウム基準の電位である。
図1〜図4に分極曲線を例示する。各図において、(a)は溶融Al系めっき鋼板(加熱処理前)、(b)は改質Al系めっき鋼板(加熱処理後)である。各図には全サイクルの分極曲線を重ねて表示してある。全ての図で縦軸のレンジを揃えるために、一部の図では分極曲線の高電流密度領域が図からはみ出ているが、各サイクルの分極曲線は全てつながっている。薄いコントラストで表示した曲線は、電位降下時の分極曲線である。
図1からわかるように、純Alめっき材の平板試料では、加熱処理前(a)および加熱処理後(b)のいずれも、リチウムイオン二次電池の電解液中において優れた耐食性を示した。これはAlバルク材と同等の特性である。
図2からわかるように、純Alめっき材の曲げ加工試料では、加熱処理前(a)において鋼素地露出部でのFeの溶解(腐食)が認められた。ところが、加熱処理後(b)においては、めっき層に亀裂が生じていたにもかかわらず、鋼素地に上にFe−Al系合金層が成長したことにより優れた耐食性を呈するようになった。すなわち、改質Al系めっき層を形成したものは、加熱処理前の溶融Al系めっき層に亀裂が生じていても、加熱後に形成された連続的なFe−Al系合金層によってはリチウムイオン二次電池の電解液に対する優れた耐食性が確保されることが確認された。
図3からわかるよいうに、Al−9%Si合金めっき材の平板試料では、加熱処理前(a)においてSiの溶出が認められた。ところが、加熱処理後(b)においてはSiの溶出が顕著に抑制された。これは、鋼材表面がSiを含むFe−Al系合金層(金属間化合物層)で構成される改質Al系めっき層に被覆されたためであると推察される。
図4からわかるように、Al−9%Si合金めっき材の曲げ加工試料では、加熱処理前(a)においてSiに加え鋼素地露出部でのFe溶解(腐食)が認められた。ところが、加熱処理後(b)においては、めっき層に亀裂が生じていたにもかかわらず、鋼素地に上にSiを含む連続的なFe−Al系合金層が成長したことにより顕著な耐食性向上効果が認められた。したがって、アルスター(登録商標)で知られ、広く普及している溶融Al−Si合金めっき鋼板も、加熱処理を施すことによりリチウムイオン二次電池の正極電池ケースに適用できるものと期待される。
純Alめっき材の平板試料について加熱処理前(a)および加熱処理後(b)のリチウムイオン電解液中でのサイクリックボルタンメトリによる分極曲線を示したグラフ。 純Alめっき材の曲げ加工試料について図1と同様の分極曲線を示したグラフ。 Al−9%Si合金めっき材の平板試料について図1と同様の分極曲線を示したグラフ。 Al−9%Si合金めっき材の曲げ加工試料について図1と同様の分極曲線を示したグラフ。

Claims (4)

  1. 溶融Al系めっき層を持つ鋼材を加熱処理した鋼材であって、鋼素地の上にFe−Al系合金層が連続的に形成されている電池ケース用改質Al系めっき鋼材。
  2. めっき付着量5〜100g/m2の溶融Al系めっき層を持つ鋼材を450℃以上かつめっき金属の液相線温度未満の温度域で5分〜10時間加熱処理することにより、鋼素地の上にFe−Al系合金層を成長させて改質Al系めっき層を形成した電池ケース用改質Al系めっき鋼材。
  3. 請求項1または2に記載の改質Al系めっき鋼材からなり、ケース内面に前記改質Al系めっき層を有するリチウムイオン二次電池用の正極電池ケース。
  4. 請求項3に記載の電池ケースを、電池の正極電位が付与される状態に配置したリチウムイオン二次電池。
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