JP2010275634A - Zn−Mg系めっき鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】Al:0.1〜2.0%、Mg:3.0〜10.0%、残部がZnおよび不可避不純物からなるめっき層を鋼板表面に有し、前記めっき表面に露出している共晶組織中の金属間化合物を除くZn-Mg系金属間化合物相のめっき表面全体に対する面積割合が5%以上80%以下である。また、このような溶融Zn−Mg系めっき鋼板は、質量%で、Al:0.1〜2.0%、Mg:3.0〜10.0%、残部がZnおよび不可避不純物からなるめっき浴にて、めっき浴中温度を、めっき浴組成の合金の液相線温度より10℃〜80℃高くしてめっき処理を行い、次いで、めっき浴組成の合金の液相線温度から所定の温度までの冷却を1℃/s以上100℃/s以下の冷却速度で行うことで得られる。
【選択図】図3
Description
また、近年、自動車製造工程においては、従来のスポット溶接などに変わり接着接合による鋼板の接合が増えつつある。このような状況で、溶融亜鉛めっき鋼板はめっき/鋼板界面のせん断強度が合金化溶融亜鉛めっき鋼板に比べて高いため、より強度の高い接着剤の使用が可能となるなどの利点がある。さらに、溶融亜鉛めっき鋼板が外板として使用された場合、チッピング性も合金化溶融亜鉛めっき鋼板に比べて良好な性能を示す。このように溶融亜鉛めっき鋼板は優れた性能を有するため、自動車用鋼板としての使用は年々増加している。
また、特許文献3および特許文献4にも低Al濃度の組成範囲を含めて耐食性や化成処理性に優れたZn−Al−Mg系めっき鋼板が提案されている。
めっき中のAl濃度が2%以上である場合は、スポット溶接を必要とする自動車用途への適用が連続打点性の低下などの理由のため難しい。
Al濃度が2%以下の場合は、Mg添加による耐食性や化成処理性の影響ついては確認されているが、自動車用途を視野に入れためっき層の加工性について十分な検討がなされていない。
Zn−Mg系めっきには、通常MgZn2などの硬いZn−Mg系金属間化合物がめっき層中に存在する。そのため、めっき層が加工を受けた際に、この硬いZn−Mg系金属間化合物とめっき母相との硬度差が原因となり、クラックが入りやすいという問題を有する。また、クラックからの腐食因子の侵入などが原因となり、耐食性が劣化する。
めっき鋼板の耐食性の確保には、めっき層中のMg濃度を確保する必要があるが、上記加工性はMg濃度の増加に伴い劣化する。従って、高耐食性と加工性を両立させることが困難となっている。
本発明は、かかる事情に鑑みなされたもので、優れた耐食性を確保しつつ、溶融亜鉛めっき鋼板と同等の加工性を有するZn−Mg系めっき鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
単に高耐食性を確保するためにめっき層中のMg量を規定するだけでは高耐食性と加工性を両立することは難しい。そして、耐食性と加工性を兼備するためには、めっき層の組織、特に耐食性と加工性に大きな影響を及ぼすZn−Mg系金属間化合物の大きさを規定することが重要であり、Zn−Mg系金属間化合物のめっき表面に露出している面積率を規定することによりはじめて耐食性と加工性を兼備したZn−Mg系めっき鋼板が得られることになる。
[1]質量%で、Al:0.1〜2.0%、Mg:3.0〜10.0%、残部がZnおよび不可避不純物からなるめっき層を鋼板表面に有し、前記めっき表面に露出している共晶組織中の金属間化合物を除くZn-Mg系金属間化合物相のめっき表面全体に対する面積割合が5%以上80%以下であることを特徴とするZn-Mg系めっき鋼板。
[2]質量%で、Al:0.5〜2.0%、Mg:3.4〜7.0%、残部がZnおよび不可避不純物からなるめっき層を鋼板表面に有し、前記めっき表面に露出している共晶組織中の金属間化合物を除くZn-Mg系金属間化合物相のめっき表面全体に対する面積割合が5%以上80%以下であることを特徴とするZn-Mg系めっき鋼板。
[3]前期[1]または[2]において、前記めっき層は、さらに、質量%で、Si、 Fe、 Pb、 Ti、 Ni、 Cu、 Co、 Mn、 Cr、 Mo、 V、 Sr、 B、 Bi、 Cd、 Sn、 REMのいずれか1種類以上を合計で1%以下含有することを特徴とする溶融Zn−Mg系めっき鋼板。
[4]質量%で、Al:0.1〜2.0%、Mg:3.0〜10.0%、残部がZnおよび不可避不純物からなるめっき浴にて、めっき浴中温度を、めっき浴組成の合金の液相線温度より10℃〜80℃高くしてめっき処理を行い、次いで、めっき浴組成の合金の液相線温度[A]から下式(1)を満たす温度[C]までの冷却を1℃/s以上100℃/s以下の平均冷却速度で行うことを特徴とするZn-Mg系めっき鋼板の製造方法。
[C]=[A]−{([A]−[B])÷2} ―――式(1)
ただし、[A]:めっき浴組成の合金の液相線温度、[B]:共晶温度364℃)である。
なお、本発明において、溶融Zn−Mg系めっき鋼板とは、めっき中にAlを0.1〜2.0質量%含むめっき鋼板も含むものである。また、本明細書において、めっき層中の成分濃度を示す%は、すべて質量%である。
また、Al量を従来の建材用途で用いられてきたZn−Al−Mg系めっきに比べて低めに設定することにより溶接性も確保でき、家電、建材用途に加えて自動車用防錆鋼板としても最適である。本発明のZn−Mg系めっき鋼板を自動車用途に適用した場合、生産性を損なうことなく、自動車の防錆性能を向上することが期待される。
めっき層中の成分濃度
めっき層中のMg濃度は、3.0から10.0%とする。Mg濃度の下限は、耐食性確保に必要な濃度である。一方、10.0%を超えると耐食性が逆に劣化する。また、加工性、特に曲げ加工時のクラックの発生程度を従来の溶融亜鉛めっき鋼板水準に保つために上限10.0%は必要な濃度である。特に好ましいMg濃度は3.4から7.0%である。Mg濃度が3.4%以上では、めっき中のZn-Mg系金属間化合物の分布が安定し、Mg濃度の増加とともに耐食性がより一層向上するので好適である。7.0%を超えると、耐食性の増加はわずかであり、コスト高になる場合がある。まためっきの密着性も7%以降、低下する傾向にある。従って、好適なMg濃度は3.4〜7.0%である。
しかしながら、単にめっき層中のMg濃度を規定しただけでは、本発明の目的、すなわち耐食性と加工性の両立を達成することはできない。Zn−Mg系金属間化合物の大きさを規定し、かつ、めっき層中のMg濃度を規定することによって、初めて耐食性と加工性の両立が可能となる。Zn−Mg系金属間化合物の大きさについての詳細は後述する。
めっき層中のAl濃度は、0.1から2.0%とする。Al濃度の下限は、めっき密着性確保に必要な濃度である。一方、上限は良好なスポット溶接性を確保するために規定される濃度である。特に、Al濃度0.5%以上で密着性がより一層良好となり加工性や耐チッピング性に優れた皮膜となるため、好ましくは0.5から2.0%である。なお本発明のAl濃度は、従来のZn−Mg−Al系めっき鋼板に比べて自動車用途での溶接性確保の観点からめっき中のAl量を低減して2.0%以下にしたものである。さらにAl濃度が2.0%超えでは、Mg組成との関係やめっきの凝固条件によって、初晶としてAl相またはAlリッチAl-Zn相が、析出する。これらの相はめっき相の中で優先的に腐食するが、Zn−Mg系金属間化合物のように腐食生成物を安定化し、耐食性を向上する効果がなく、むしろ耐食性を低下させてしまう。したがってこのような初晶Al相またはAlリッチAl-Zn相が析出せず、Zn-Mg系金属間化合物または共晶組織からなるめっき組織に制御しなければならない。
また、めっき層中には、Si、 Fe、 Pb、 Ti、 Ni、 Cu、 Co、 Mn、 Cr、 Mo、 V、 Sr、 B、 Bi、 Cd、 Sn、 REM(レアア−スメタル)のいずれか1種類以上を合計で1%以下含有することができる。合計で1%超えで含む場合には浴組成の不安定化による操業上の問題や表面外観を損なう品質上の問題を招く可能性が高い。よって、Si、 Fe、 Pb、 Ti、 Ni、 Cu、 Co、 Mn、 Cr、 Mo、 V、 Sr、 B、 Bi、 Cd、 Sn、 REM(レアア−スメタル)のいずれか1種類以上を含有する場合は、合計で1%以下とする。
Zn−Mg系金属間化合物は、めっきの腐食過程において優先的に腐食が始まる。このときに溶出するMgは、主にめっきの酸化物や水酸化物を主体とする腐食生成物を安定化させ、その後のめっき全体の腐食を抑制する。
Zn-Mg系金属間化合物相のめっき表面全体に対する面積割合が5%以上とすることで、めっきの腐食過程においてめっき中のZn−Mg系金属間化合物からMgがめっき表面全体に供給され、腐食生成物を速やかに安定化させることができる。これにより本発明のZn-Mg系めっき鋼板の耐食性は、従来の溶融亜鉛めっき鋼板に比べて著しく向上する。一方、Zn-Mg系金属間化合物相のめっき表面全体に対する面積割合が80%超えでは、加工時に金属間化合物にクラックが入り脱離してしまうため耐食性が逆に劣化する。さらに脱離した金属間化合物は硬質であるため、加工品に表面欠陥が発生することもある。また金属間化合物層が脱離しない場合でも、表面の電位が卑になるため金属間化合物相は瞬時に溶解してしまうため、耐食性の向上が見込めない。加えてZn-Mg金属間化合物相が多くなることは、安定化させるべき酸化物や水酸化物の主成分となる亜鉛の量が少ないことを意味するので、Zn-Mg系めっきの高耐食性は発現しない。
なお、めっき処理後の冷却過程において、冷却速度を制御することにより、上記Zn−Mg金属間化合物のめっき表面全体に対する面積割合は制御することができる。
本発明において、Zn−Mg系金属間化合物とは、ZnとMgを主成分とする金属間化合物であり、特に限定しない。例えば、MgZn2、Mg2Zn11、MgZnなどの他にMg32(AlZn)49などのAlや不可避成分を含有する金属間化合物も含まれる。
また、めっき表面に露出している共晶組織中の金属間化合物を除くZn−Mg系金属間化合物は、以下の方法で確認することができる。例えば、SEMに付属するエネルギ−分散X線分析装置(EDX)により確認する。Zn−Mg系金属間化合物は、ZnとMgのピ−クが現れる相であり、SEMの反射電子像では暗い像として容易に識別できる。Zn-Mg金属間化合物は、共晶組織中にも含まれるが、それ以外のZn-Mg系金属間化合物は共晶組織に比べて寸法が大きいので区別ができる。
そして、Zn−Mg系金属間化合物相のめっき表面全体に対する面積割合は、以下の方法により求めることができる。面積割合を算出するにあたっては、例えば、SEM像やEPMAのマッピング像を2値化して求めることができる。例えば、異なる任意の3視野で撮影したSEM像を2値化し、これらの視野におけるZn-Mg系金属間化合物の面積率を平均して求めることができる。なお、測定するにあたっては、SEMの観察倍率は、表面の組織の大きさによって適宜選択すればよい。また加速電圧は極端に表面や深い領域の情報とならない5〜20kVが好適である。
本発明の溶融Zn−Mg系めっき鋼板は、鋼板に所定の条件でめっき処理を施し、次いで、めっき浴組成の合金の液相線温度[A]から下式(1)を満たす温度[C]までの冷却を1℃/s以上100℃/s以下の平均冷却速度で行うことことにより得られる。以下に詳細を説明する。
[C]=[A]−{([A]−[B])÷2} ―――式(1)
ただし、[A]:めっき浴組成の合金の液相線温度、[B]:共晶温度364℃である。
めっき処理
めっき浴の組成は、Al:0.1〜2.0%、Mg:3.0〜10.0%、残部がZnおよび不可避不純物からなり、このようなめっき浴組成になるように適宜制御する。さらに耐食性および加工性や耐チッピング性により一層優れるめっきを得るためには、Al:0.5〜2.0%、Mg:3.4〜7.0%、残部がZnおよび不可避不純物からなる組成のめっき浴が好適である。
めっき浴中温度は、めっき浴組成の合金の液相線温度より10℃〜80℃高くする。例えば、例えばめっき浴をZn-Mg二元系とみなし、図1に示されるZn−Mg二元系状態図(Thaddeus B. Massalski : Binary Alloy Phase Diagrams Second Edition, ASM International, Vol.3, p2572(1990). )上のめっき浴中Mg含有量に対応する液相線温度から決定してもよい。
下限は、浴粘度によるワイピングのしやすさから決定される。上限は浴中でのZn−Fe合金化反応を抑制するために決定される。
めっき浴に侵入する板温は特に限定はしないが、めっき浴温〜めっき浴温+20℃程度が操業しやすい観点から好ましい。
1℃/s以上100℃/s以下の平均冷却速度でめっき浴組成の合金の液相線温度[A]から下式(1)を満たす温度[C]まで冷却する。
[C]=[A]−{([A]−[B])÷2} ―――式(1)
ただし、[A]:めっき浴組成の合金の液相線温度、[B]:共晶温度364℃である。
平均冷却速度を1℃/s以上とすることにより、Zn-Mg系金属間化合物の面積割合を80%以下とすることができる。平均冷却速度が1℃/s未満では、本来共晶組織中に取り込まれるべきZn-Mg系金属間化合物までもが表層に析出し、薄く表面を覆ってしまい上述のように耐食性を発現し得ない。また、Mg濃度が高い場合にはZn-Mg系金属間化合物が加工時に脱離し、耐食性が劣化するだけでなく加工品の表面欠陥にもなり得る。一方、平均冷却速度を100℃/s以下とすることで、表層において共晶組織よりも初晶のZn-Mg系金属間化合物を成長させて、面積割合を5%以上にすることができる。平均冷却速度を100℃/s超えで急冷すると表層の凝固が完了するまでの時間が短く、Zn-Mg系金属間化合物が十分に成長しない。
なお、めっき浴組成の合金の液相線温度[A]から上式(1)を満たす温度[C]までとは、めっき材がめっき浴を出て上記液相線温度から共晶温度364℃まで冷却する過程における、液相線温度から共晶温度364℃の冷却温度差の50%に相当する高温部分(以下、冷却温度差50%相当域と称することもある)であり、この温度域の平均冷却速度を制御することでめっき全体に先んじて表層部において、特に初晶Zn-Mg系金属間化合物の析出を制御することができ、めっき表面の面積割合を変えることができる。
なお、Zn-Mg系金属間化合物の面積割合を増加させるには冷却速度を低くすることが有効と考えられるが、ワイピングガスの温度を高くすることなども有効である。例えば、100℃の窒素でワイピングすることにより、通常より冷却速度を遅く設定することができる。
さらに規定する組成範囲で金属間化合物の大きさを規定の範囲に安定的に制御するための平均冷却速度は、1から60℃/sが望ましい。
なお、めっき浴の酸化防止のために、浴上の酸素濃度は0.1%以下とすることが望ましい。具体的には窒素でパ−ジし酸素濃度を低減することやフラックスを用いて浴直上の酸素を遮断する方法などが好適である。
また、めっきの母材となる鋼板の種類は特に限定しない。軟鋼のみならず各種の高強度鋼板にも適用できる。
また、めっき付着量は、特に限定しない。10から300g/m2の範囲に適用可能であり、鋼板の用途に応じて適宜調整を行うことができる。
極低炭素軟鋼を素材とし実験室にてめっき実験を行い、Zn−Mg系めっき鋼板を作製した。得られためっき鋼板のめっき層および採取しためっき浴を各々1g塩酸で溶解し、処理液をICP分析することで、めっきおよびめっき浴の化学組成を測定した。表1に作製した供試材のめっき組成とこれらの作製条件を示す。めっき浴温度は、めっき浴組成の合金の液相線温度+60℃以下の範囲で設定した。また鋼板のめっき浴への進入温度は、めっき浴温度+10℃とした。また、冷却温度差50%相当域を冷却するときの平均冷却速度を変化させることにより、Zn-Mg系金属間化合物の表面の分布状態が異なる供試材を作製した。なお、これらの温度を決定するにあたっては、図1に示すZn−Mg二元系状態図を用いた。また、図2はサンプルNo3の冷却過程の一例であり、ここで規定する冷却速度は冷却温度差50%相当域で制御される温度域での平均冷却速度であり、図の枠外左に示した矢印で示される過程である。また、いずれの供試材もめっき付着量は50±5g/m2以内であった。
Zn−Mg系金属間化合物は、サンプル表面をSEMの反射電子像で観察し、暗い像として周辺のZn相や共晶組織と区別することで確認した。図3に、供試材のめっき組織の一例として、サンプルNo3のめっき表面のSEM反射電子像を示す。また、Zn−Mg系金属間化合物のめっき表面全体に対する面積割合は、例えば図4のようにSEM像を2値化して求めることができる。ここでは、異なる任意の3視野で撮影したSEM像を2値化し、これらの視野におけるZn-Mg系金属間化合物の面積率を平均して求めた。図3の共晶組織とZn相が図4では白い部分に、図3のMgZn2金属間化合物相が図4の黒い部分に対応する。Zn−Mg系金属間化合物相のめっき表面全体に対する面積割合の調査結果を表2に示す。
<耐食性>
表3に示す現行の自動車用防錆鋼板を比較材として用いることで耐食性を評価した。自動車用途を視野に鋼板合わせ部における穴あき耐食性を評価するため、2枚の同種のめっき鋼板をスポット溶接し、自動車の鋼板合わせ部を模擬した試験片を作製し、複合サイクル試験に供した。腐食試験の条件は、SAE(Society of Automotive Engineers)の腐食試験規格である SAE J2334を用いた。腐食試験片の概略図および腐食試験のサイクル条件を図5および6に示す。腐食試験120サイクル後、溶接部を分解した鋼板合わせ部内側の腐食生成物を除去し、腐食孔の深さをポイントマイクロメ−タ−で測定した。評価は、めっき付着量が最も多い比較材R3よりも最大腐食深さが小さい供試材を◎、最大腐食深さがR1とR2の平均の最大腐食深さの80%より小さく、R3以上のものを○、最大腐食深さが、R1とR2の平均の最大腐食深さの80%以上で、R1、R2とほぼ同等の耐食性とみなしたものを−とした。なお、腐食試験片の形状、サイクル条件および評価方法は、本実施例の条件に限定されるものではなく、本発明のめっき鋼板が適用される環境や耐食性評価に用いる規格により適宜選択する。例えば、塗装鋼板に傷を入れた試験片を腐食試験に供し、傷部からの最大塗膜膨れ幅を測定するなどの方法を用いてもよい。
<加工性>
表3に示す、めっき付着量が同程度のR1およびR2を比較材とし、図7に示すような曲げ曲げ戻し変形をともなうドロ−ビ−ド試験を行い評価した。30×175mmに加工した試験片に防錆油R352Lを塗油し、ビ−ド先端R0.5mm、ビ−ド高さ4.0mmの工具を500kgfで押し付け、試験片を引き抜き速度200mm/minで引き抜いた。評価は、加工後のめっき皮膜の損傷状態を表面および断面からSEMで観察し、R2 と同等以上のものを◎、R1同等以上でR2よりも劣るものを○、R1よりも劣るものを×とした。
<スポット溶接性>
表3に示す、めっき付着量が同程度のR1およびR2を比較材とし、以下に示す溶接条件によりスポット溶接時の連続打点数の調査を行った。なお、連続打点性調査における溶接電流値は、板厚をt(mm)とした時の4√t で示されるナゲット径が得られる電流値 I1(kA)および溶着電流値 I2(kA)の平均値を用いた。連続打点性は、ナゲット径が4√tをきるまでの打点数とした。評価は、R1同等以上の連続打点が可能なものを◎、R2同等以上でR1よりも劣るものを○、R2よりも劣るものを×とした。
(溶接条件)
電極 CF型
先端径 4.5mmφ
先端角 120°
外径 13mmφ
材質 Cu−Cr
通電時間 10サイクル
加圧力 170kgf
加圧条件
通電前 30サイクル
通電後 7 サイクル
アップダウンスロ−プなし
以上により得られた結果を表4に示す。
以上により得られた供試材に対して、実施例1と同様に、Zn-Mg系金属間化合物相のめっき表面全体に対する面積割合を調査した。
次いで、以上により得られた供試材に対して、耐食性、加工性およびスポット溶接性を測定、評価した。
耐食性は実施例1と同様の方法で、表3に示す現行の自動車用防錆鋼板を比較材として評価した。
加工性は実施例1と同様に、表3に示す、めっき付着量が同程度のR1およびR2を比較材とし、図7に示すような曲げ曲げ戻し変形をともなうドロ−ビ−ド試験を行い評価した。ただし、評価は、いずれのZn-Mgめっき鋼板サンプルもR1より優れ、R2より劣っていたため、ドロービード試験後のめっき剥離量がR1の剥離量の半分未満であったものを◎、R1の剥離量の半分以上であったものを○として評価した。
スポット溶接性は、実施例1と同様の試験方法および評価方法により評価した。
溶接性は、いずれも判定は○であり、R2同等以上でR1よりも劣るという結果であった。
以上より、本発明例では、Al濃度0.5から2.0%、Mg濃度3.4から7.0%において、より一層耐食性と加工性に優れたZn−Mgめっき鋼板が得られることが分かる。
Claims (4)
- 質量%で、Al:0.1〜2.0%、Mg:3.0〜10.0%、残部がZnおよび不可避不純物からなるめっき層を鋼板表面に有し、前記めっき表面に露出している共晶組織中の金属間化合物を除くZn-Mg系金属間化合物相のめっき表面全体に対する面積割合が5%以上80%以下であることを特徴とするZn-Mg系めっき鋼板。
- 質量%で、Al:0.5〜2.0%、Mg:3.4〜7.0%、残部がZnおよび不可避不純物からなるめっき層を鋼板表面に有し、前記めっき表面に露出している共晶組織中の金属間化合物を除くZn-Mg系金属間化合物相のめっき表面全体に対する面積割合が5%以上80%以下であることを特徴とするZn-Mg系めっき鋼板。
- 前記めっき層は、さらに、質量%で、Si、 Fe、 Pb、 Ti、 Ni、 Cu、 Co、 Mn、 Cr、 Mo、 V、 Sr、 B、 Bi、 Cd、 Sn、 REMのいずれか1種類以上を合計で1%以下含有することを特徴とする請求項1または2に記載のZn-Mg系めっき鋼板。
- 質量%で、Al:0.1〜2.0%、Mg:3.0〜10.0%、残部がZnおよび不可避不純物からなるめっき浴にて、めっき浴中温度を、めっき浴組成の合金の液相線温度より10℃〜80℃高くしてめっき処理を行い、次いで、めっき浴組成の合金の液相線温度[A]から下式(1)を満たす温度[C]までの冷却を1℃/s以上100℃/s以下の平均冷却速度で行うことを特徴とするZn-Mg系めっき鋼板の製造方法。
[C]=[A]−{([A]−[B])÷2} ―――式(1)
ただし、[A]:めっき浴組成の合金の液相線温度、[B]:共晶温度364℃である。
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