JP5055547B2 - 高強度ステンレス鋼並びに高強度ステンレス鋼の製造方法 - Google Patents
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即ち本発明の高強度ステンレス鋼は、マルテンサイト相と、マルテンサイト相の周囲に位置するオーステナイト相とを有する高強度ステンレス鋼であって、表層領域の窒素濃度が中心領域の窒素濃度よりも高いものである。
ケイ素は、脱酸剤として利用され、耐酸化性の向上に有効な元素であり、0.2〜1.0%含有される。また、ケイ素はCr(クロム)と同様に代表的なフェライト形成元素であり、過剰に含有させるとNi(ニッケル)などオーステナイト形成元素の含有量を増加させることになるので、含有量の上限は2%であることが好ましい。
マンガンは、脱酸剤として有効であり、オーステナイト形成元素でもあるため、0.5〜2.0%含有される。しかし、マンガンは過剰に含有させると耐食性を低下させる作用もあるので、含有量の上限は3%であることが好ましい。
リンには強度を向上させる作用があり、このような作用を発揮させるには0.03%以上含有させることが好ましい。しかし、リンを過剰に含有させると溶接性が損なわれるため、含有量の上限は0.05%であることが好ましい。
硫黄は不純物であり熱間加工性と靭性を低下させる作用があるので、その含有量は0.03%以下とすることが好ましい。
Mo(モリブデン)
モリブデンはフェライト形成元素であると共に、耐食性を著しく向上させる作用があるので、必須元素ではないが、含有量は0.2%以上とすることが好ましい。しかし、過剰に含有させると強度低下を招く可能性があるので、含有量の上限は1%であることが好ましい。
銅はオーステナイト形成元素であり、オーステナイト相の強度調整に有効な元素であるが、熱間脆性を引き起こすという問題があるので、含有量は不可避的に混入する0.5%以下とすることが好ましい。
ニオブ及びチタンはフェライト形成元素であると共に、炭素及び窒素を固定して焼鈍時や溶接時の鋭敏化現象を抑制する作用を奏するので、必須元素ではないが、含有量はそれぞれニオブ0.01%以上、チタン0.003%以上とすることが好ましい。他方、ニオブやチタンを過剰に含有させると鋼中の炭素や窒素を固定して強度低下を招く可能性があるので、含有量はそれぞれニオブ0.1%以下、チタン0.05%以下とすることが好ましい。
バナジウムは強度を得るために効果的な元素であるので、必須元素ではないが含有量は0.05%以上とすることが好ましく、また、0.2%を超えると効果が飽和するので含有量は0.2%以下とすることが好ましい。
窒素は代表的なオーステナイト形成元素であるため、0.02〜0.06%含有される。
Al(アルミニウム)
アルミニウムは脱酸剤として有効な元素であるが、熱間圧延及び冷間圧延時に表面疵を誘発する可能性があるので、含有量は0.05%以下とすることが好ましい。
希土類元素
鋼の耐酸化性や熱間加工性を向上させる元素であるが、含有量は0.1%以下が好ましい。
そして残部がFe及び不可避的不純物である。
先ず、表1に化学組成(単位は質量%)を示す2mm厚のオーステナイト系ステンレス鋼(SUS304)の冷間圧延鋼板を脱脂及び洗浄する。なお、残部はFeである。
Md30(℃)=413−462[%C+%N]−9.2[%Si]−8.1[%Mn]−13.7[%Cr]−9.5[%Ni]−18.5[%Mo] (1)
図6に示すように、冷間圧延されたオーステナイト系ステンレス鋼板は、窒素吸収の有無によらず、表層領域及び中心領域どちらにおいても同等のビッカース硬度を示しており、中心領域において強度の高いマルテンサイト相が形成されていることが判る。
図8に示すように、窒素ガスを吸収させていない冷間圧延材のマルテンサイト量は、表層領域から中心領域まで近似した量であるが、窒素ガスを3600秒間吸収させた冷間圧延材のマルテンサイト量は、表面からの距離が200μmを過ぎたあたりから急激増加し、中心領域においてピークに達していることが判る。なお、窒素ガスを10800秒間吸収させた冷間圧延材のマルテンサイト量は、表面からの距離が200μmを過ぎたあたりから確認されているが、中心領域までほとんど増えていなかった。
また、一般的に腐食しやすいとされるステンレス鋼の表層領域に、窒素を0.2質量%以上含有させているので、ステンレス鋼の耐食性を向上できる。
また、オーステナイト系ステンレス鋼を加工することでマルテンサイト相を形成して高強度化を図っているので、効率よく強度を上げることができる。
2 加工硬化オーステナイト相
3 加工誘起マルテンサイト相
4 窒素ガス雰囲気炉
5 安定オーステナイト相
6 ロール
7 冷間圧延材
7A 第1の範囲
7B 第2の範囲
8 エックス線照射方向
Claims (6)
- マルテンサイト相と、該マルテンサイト相の周囲に位置するオーステナイト相とを有する高強度ステンレス鋼であって、
表層領域の窒素濃度が中心領域の窒素濃度よりも高く、
前記表層領域の窒素濃度が0.2質量%超1.5質量%以下である
高強度ステンレス鋼。 - 質量%で、C:0.15%以下、Cr:16〜20%、Ni:6〜10%、Si:2%以下、Mn:3%以下、P:0.05%以下、S:0.03%以下、Mo:1%以下、Cu:0.5%以下、Nb:0.1%以下、Ti:0.05%以下、V:0.2%以下、N:0.15%以下、Al:0.05%以下、希土類元素:0.1%以下、残部がFe及び不可避的不純物からなり、
前記表層領域の窒素濃度が0.2質量%超1.5質量%以下である
請求項1に記載の高強度ステンレス鋼。 - オーステナイト系ステンレス鋼を窒素ガス雰囲気中で焼鈍する焼鈍工程と、
該焼鈍工程後に前記オーステナイト系ステンレス鋼を加工する工程とを有する高強度ステンレス鋼の製造方法であって、
前記焼鈍工程は表層領域の窒素濃度を中心領域の窒素濃度よりも高くする
高強度ステンレス鋼の製造方法。 - 組成を、質量%で、C:0.15%以下、Cr:16〜20%、Ni:6〜10%、Si:2%以下、Mn:3%以下、P:0.05%以下、S:0.03%以下、Mo:1%以下、Cu:0.5%以下、Nb:0.1%以下、Ti:0.05%以下、V:0.2%以下、N:0.15%以下、Al:0.05%以下、希土類元素:0.1%以下、残部がFe及び不可避的不純物と成し、前記表層領域の窒素濃度を0.2質量%超1.5質量%以下にする
請求項3に記載の高強度ステンレス鋼の製造方法。 - 前記オーステナイト系ステンレス鋼の加工が、板材加工である
請求項3または請求項4に記載の高強度ステンレス鋼の製造方法。 - 前記オーステナイト系ステンレス鋼の加工が、線材加工である
請求項3または請求項4に記載の高強度ステンレス鋼の製造方法。
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